説明

汚泥から水を分離する方法及びその装置

【課題】汚泥からの効率的な水の分離、さらには天日乾燥の効率化及び天日乾燥時間の短縮化を図る。
【解決手段】内部に空間を形成する枠体と、この枠体に形成した多数の透孔とを有する槽本体5と、この槽本体5に前記透孔を塞ぐように張り付けられた濾布6とを備えた濾過分離槽1を用意し、この濾過分離槽1を天日乾燥床10内の敷砂11の上に設置する。汚泥12が濾過分離槽1の外側に位置するように濾過分離槽1を配置することにより、濾過分離槽1の外側に位置する汚泥を濾布6で濾過し、濾過分離槽1内に濾過水を集める。この濾過水を排水口8から排出して敷砂11に浸透させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場や下水処理場、あるいは河川、ため池などで発生する汚泥から水を分離する方法及びその装置に関し、詳しくは、汚泥の天日乾燥に好適な、汚泥から水を分離する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥の天日乾燥方法として、コンクリートプール(天日乾燥床)の底部に砂を敷き詰め、この敷砂の上に含水率の高い汚泥を投入し、汚泥の水分を敷砂に浸透させて、底部の排水口から水をプール外へ排出するとともに天日で時間をかけて乾燥させている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−299499号公報(第2頁、図9)
【特許文献2】特開平10−235400号公報(第2頁、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような汚泥の天日乾燥方法では、1回分当たりの汚泥を乾燥させるのに季節によって長短があるが、年平均で5〜6ヶ月の長い日数を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、効率的に汚泥から水を分離することができ、天日乾燥方法又は装置に適用する場合には、天日乾燥の効率化、乾燥処理時間の短縮化を図ることができる汚泥からの水の分離方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、汚泥から水を分離する方法であって、
内部に空間を形成する枠体と、この枠体に内外貫通状に形成した多数の透孔とを有する槽本体と、この槽本体に前記透孔を塞ぐように張り付けられた濾布とを備えた濾過分離槽を用意するとともに、汚泥を収容するプールを用意し、
前記濾過分離槽を汚泥が外側に位置するように前記プール内に配置することにより、前記濾過分離槽の外側に位置する汚泥を前記濾布で濾過し、該濾過分離槽内に濾過水を集めるようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、濾布を通して濾過分離槽の外側から掛かる含水汚泥の圧力により汚泥中の水分を効率的に濾過分離することができる。特に、含水率の高い汚泥の場合、本発明の効果は極めて高い。
【0008】
なお、本願において、「汚泥」には、文字通りの汚泥だけでなく、スラッジ、汚水、廃水、上水汚泥、下水汚泥等も含まれる。また、鉄やマンガン等の重金属を含有する汚泥又は汚水も、ここにいう「汚泥」に含まれる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記濾過分離槽の底部に、前記濾過分離槽内に集めた濾過水を外部に排出する排水口が設けられており、該排水口から濾過水をプール外へ排出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、濾過分離槽内に集めた濾過水を排水口からプール外へ排出することができるので、汚泥からの水分の分離及び分離した水分の排出を効率的に行うことができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記汚泥を収容するプールが敷砂を底部に敷き詰めた天日乾燥床であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、敷砂上に投入される汚泥は敷砂で汚泥と水に濾過分離されるだけでなく、敷砂の上に設置される濾過分離槽の濾布によっても濾過分離されるので、汚泥からの水分除去を促進することができ、天日乾燥効率が飛躍的に向上する。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記排水口に下方突出状の排水管が設けられており、該排水管を天日乾燥床の敷砂に差し込むことにより、前記濾過分離槽内に集めた濾過水をプール外へ排出するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、排水管は濾過分離槽内に集めた濾過水を敷砂中に排出する本来の機能のほかに、濾過分離槽を敷砂上に垂直姿勢に支持する機能をも発揮することができる。また、排水管を敷砂に抜き差しすることにより簡単に濾過分離槽を設置又は取り外すことができるので、天日乾燥床の適宜の箇所に濾過分離槽を設置することができ、設置及び移動の自由度が向上する。
【0015】
請求項5に係る発明は、汚泥から水を分離する装置であって、
内部に空間を形成する枠体と、この枠体に内外貫通状に形成した多数の透孔とを有する槽本体と、この槽本体に前記透孔を塞ぐように張り付けられた濾布とを備えた濾過分離槽と、
汚泥を収容するプールとを具備し、
前記濾過分離槽を汚泥が外側に位置するように前記プール内に配置することにより、前記濾過分離槽の外側に位置する汚泥を前記濾布で濾過し、該濾過分離槽内に濾過水を集めるようにしたことを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、濾布を通して濾過分離槽の外側から掛かる含水汚泥の圧力により汚泥中の水分を効率的に濾過分離することができる。特に、含水率の高い汚泥の場合、本発明の効果は極めて高い。
【0017】
請求項6に係る発明は、内部に空間を形成する枠体と、この枠体に内外貫通状に形成した多数の透孔とを有する槽本体と、この槽本体に前記透孔を塞ぐように張り付けられた濾布と、前記枠体の内部空間に集めた濾過水を外部に排出する排水口とを備えたことを特徴とする濾過分離槽である。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、濾過分離槽を多数の透孔を有する槽本体に濾布を張り付けてユニット化しているので、既存の汚泥乾燥用プールに適用することができる。
特に、請求項7に記載のように、前記排水口が底部に設けられているとともに、該排水口に下方突出状の排水管が設けられており、該排水管は天日乾燥床の敷砂に差し込むようになっている場合には、特別な工事を要することなく既存の天日乾燥床に容易に設置することができて便利である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、濾過分離槽により、汚泥から効率的に水分を分離除去することができる。したがって、天日乾燥方法又は天日乾燥装置に適用した場合は、天日乾燥の効率化、乾燥処理時間の短縮化を図ることができて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例に使用される濾過分離槽を一部破断状態で示す正面図である。
【図2】図1の濾過分離槽の一部破断状態の側面図である。
【図3】本発明の一実施例に使用される天日乾燥床の断面図である。
【図4】図1の濾過分離槽の天日乾燥床への配置パターンの一例を示す平面図である。
【図5】本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。
【0022】
図1、図2において、本発明の一実施例に使用される濾過分離槽1は、内部に空間を形成する枠体2と、この枠体2に内外貫通状に形成した多数の透孔4とを有する槽本体5と、この槽本体5の外表面に透孔4を塞ぐように張り付けられて砂の通過を阻止し且つ水の通過を許容するメッシュ状の濾布6とを備えている。濾布6は槽本体5に着脱可能に張り付けて、破損等に際し取替え可能にすることもできる。
【0023】
枠体2は、ガラス繊維強化プラスチック等のプラスチック材で成形したり、または鋼材等金属製の棒材や板材等で編んだり、組んだりすることにより形成した四角形の正面体2a、左右側面体2b,2c、背面体2d、上面体2eおよび底面体2fの六面体からなる。そして、槽本体5はこの六面体で内部に空間を有する比較的薄型のパネル形状に形成してなる。正面体2a、左右側面体2b,2c、および背面体2dはそれぞれ多数の内外貫通状の籠目等の透孔4を有する多孔体に形成する。濾布6はこれら多孔体である正面体2a、左右側面体2b,2c、背面体2dの外表面に張り付けられる。上面体2eは開放状に形成し(つまり濾布を張っていない)、底面体2fは多孔体又は盲壁体に形成する。底面体2fを多孔体に形成する場合はこの底面体2fにも濾布6を張り付ける。濾過分離槽1の大きさの一例を挙げると、1m×1m×100mm程度である。しかし、これに限られるものではない。
【0024】
濾過分離槽1の底部には枠体2の内部空間と連通する1個又は2個以上の排水口8が設けられており、各排水口8にはそれぞれ下方突出状の排水管7が取り付けられている。排水管7の先端(最下端)7aは先鋭に形成して後述する天日乾燥床10の敷砂11に差し込み易くしている。
【0025】
次に、上記構成の濾過分離槽1を用いて汚泥から水を分離する方法、さらには汚泥を天日乾燥する方法について説明する。
図3に示すように、コンクリートプール等の天日乾燥床10の底部に川砂や海砂等の敷砂11を敷き詰め、この敷砂11上の適宜箇所に、該敷砂11への高含水の汚泥12の投入前または投入後に濾過分離槽1を設置する。その際、濾過分離槽1は排水管7を敷砂11に差し込むことで敷砂11上に垂直姿勢に支持される。汚泥12の投入に先立って濾過分離槽1が設置された場合は、濾過分離槽1の設置後に汚泥12が投入される。
【0026】
しかるときは、敷砂11の上に投入される汚泥12は、敷砂11で汚泥と水に濾過分離されるとともに、敷砂11上に設置される各濾過分離槽1の濾布6によっても濾過分離され、濾布6により濾過分離された水は濾過分離槽1内で濾布6の内面を滴下して排水管7から敷砂11中に浸透する。敷砂11に浸透した水は天日乾燥床10の底部に設けた排出口13を経て図外の集中排水溝から乾燥床10外へ排出される。本実施例では、濾過分離槽1の上面2eが開放されているので、濾過分離槽1内に集めた濾過水を上面2eからも天日乾燥(蒸発)させることができる。
【0027】
このように天日乾燥床10の敷砂11上の数箇所に濾過分離槽1を設置して天日乾燥することにより、汚泥12の濾過分離を促進できるため、従来、1回分当たりの汚泥を乾燥させるのに年平均で5〜6ヶ月の長い日数を要していたのに対し、1ヶ月程度の短い日数で乾燥できるに至った。
濾布6の外表面に付着した汚泥は天日乾燥時間の経過に伴い脱水乾燥して剥離することで、濾布6の目詰まりを解消できる。
【0028】
濾過分離槽1は多数の透孔4を有する槽本体5に濾布6を張り付けてユニット化しているので、特別な工事を要することなく既存の天日乾燥床10に容易に設置することができる。
【0029】
また、このようなユニット化した濾過分離槽1は、排水管7を敷砂中に差し込むことにより天日乾燥床10の適宜箇所に設置することができ、排水管7を敷砂中から引き抜くことにより簡単に取り外すことができるので、設置及び移動の自由度が飛躍的に向上する。これにより、天日乾燥床10において季節による日照変化に伴う処理変化によく対応できる。
【0030】
天日乾燥床10への濾過分離槽1の配置パターンとしては、例えば、図4に示すように敷砂11上の数箇所の各箇所において四台の濾過分離槽1を十字状に配置することができるが、その他に天日乾燥床10の広さに対応して敷砂11上の縦横に任意間隔で配置するなどいろいろなバリエーションが考えられる。
【0031】
尚、一つの濾過分離槽1の全体形状については、天日乾燥床10への設置面積をできる限り少なくして、汚泥12との接触面積を広くするうえで、上記実施例のように濾過分離槽1の槽本体5は六面体で比較的薄型のパネル形状(内部空洞)に形成することが好ましいが、これに限られず、その他の多角形、あるいは円筒形状、角筒形状、円錐形状、角錐形状などに形成するものであってもよい。また、汚泥と接触し水分を透過させる面(透孔4及び濾布6を有する面)は、水の分離効率を向上させるためにはできるだけ広い方が好ましいが、設ける部位は任意である。
【0032】
濾過分離槽1の高さ寸法については、濾過分離槽1の開放上面2eから未濾過処理の汚泥12が濾過分離槽1内に入るのを防ぐうえで、天日乾燥床10に投入される汚泥12の上面12a(図3参照)よりも高く設定することが好ましいが、上面2eが閉塞されている場合(濾布6による閉塞の場合又は盲壁による密閉の場合を問わない)には、必ずしもこれに限られない。
【0033】
図5は、本発明の変形例を示している。図5において、先の実施例と同一の部材には同一の符号が付してある。
この変形例では、コンクリートプール20の底部に敷砂が敷き詰められていない点で、図3の実施例と異なる。
また、図3の実施例では、排水管7が敷砂11中に抜差し可能に構成されていたが、この変形例では、濾過分離槽1の底面の各排水口8が集合管7bに一体に連通されている。濾過分離槽1内に集められた濾過水は、この集合管7bを通して排出口13からプール20外へ排出されるようになっている。
【0034】
このような構成の変形例によっても、濾過分離槽1により汚泥から効率的に水分を分離することができ、天日乾燥の効率化、乾燥処理時間の短縮化を図ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 濾過分離槽
2 枠体
4 透孔
5 槽本体
6 濾布
7 排水管
8 排水口
10 天日乾燥床
11 敷砂
12 汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥から水を分離する方法であって、
内部に空間を形成する枠体と、この枠体に内外貫通状に形成した多数の透孔とを有する槽本体と、この槽本体に前記透孔を塞ぐように張り付けられた濾布とを備えた濾過分離槽を用意するとともに、汚泥を収容するプールを用意し、
前記濾過分離槽を汚泥が外側に位置するように前記プール内に配置することにより、前記濾過分離槽の外側に位置する汚泥を前記濾布で濾過し、該濾過分離槽内に濾過水を集めるようにしたことを特徴とする汚泥から水を分離する方法。
【請求項2】
前記濾過分離槽の底部に、前記濾過分離槽内に集めた濾過水を外部に排出する排水口が設けられており、該排水口から濾過水をプール外へ排出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の汚泥から水を分離する方法。
【請求項3】
前記汚泥を収容するプールが敷砂を底部に敷き詰めた天日乾燥床であることを特徴とする請求項2に記載の汚泥から水を分離する方法。
【請求項4】
前記排水口に下方突出状の排水管が設けられており、該排水管を天日乾燥床の敷砂に差し込むことにより、前記濾過分離槽内に集めた濾過水をプール外へ排出するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の汚泥から水を分離する方法。
【請求項5】
汚泥から水を分離する装置であって、
内部に空間を形成する枠体と、この枠体に内外貫通状に形成した多数の透孔とを有する槽本体と、この槽本体に前記透孔を塞ぐように張り付けられた濾布とを備えた濾過分離槽と、
汚泥を収容するプールとを具備し、
前記濾過分離槽を汚泥が外側に位置するように前記プール内に配置することにより、前記濾過分離槽の外側に位置する汚泥を前記濾布で濾過し、該濾過分離槽内に濾過水を集めるようにしたことを特徴とする汚泥から水を分離する装置。
【請求項6】
内部に空間を形成する枠体と、この枠体に内外貫通状に形成した多数の透孔とを有する槽本体と、この槽本体に前記透孔を塞ぐように張り付けられた濾布と、前記枠体の内部空間に集めた濾過水を外部に排出する排水口とを備えたことを特徴とする濾過分離槽。
【請求項7】
前記排水口が底部に設けられているとともに、該排水口に下方突出状の排水管が設けられており、該排水管は天日乾燥床の敷砂に差し込むようになっていることを特徴とする請求項6に記載の濾過分離槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−83662(P2011−83662A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236407(P2009−236407)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(500046841)株式会社エムケイ (10)
【Fターム(参考)】