説明

汚泥の処理方法及び該方法により得られた肥料

【課題】 汚泥、特に浚渫汚泥や青粉汚泥の有効利用に資する汚泥の処理方法及び該方法により得られる肥料を提供する。
【解決手段】 汚泥に少なくとも下記成分を下記重量割合で含む凝集剤を添加し攪拌混合して、水と泥分を主成分とする凝集体とに分離する。
二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、酸化チタン0.01〜2.0重量部。ここで、汚泥として浚渫汚泥又は青粉汚泥とし、青粉汚泥は青粉を含有する被処理液を電気分解処理して得るとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫汚泥や青粉汚泥などの汚泥の処理方法及び該方法により得られた肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、汚泥に凝集剤を添加処理して砂を製造する方法を開発している(特許文献1)。この方法は、砂を製造するための方法であって肥料等に利用するものではない。
汚泥、例えば浚渫汚泥には、植物の葉などの養分が含まれており、これを肥料などとして利用できれば、汚泥の有効利用に資する。また、青粉は、池や沼などの湖沼に繁殖して水を緑色にする微小な淡水藻であるが、かかる青粉にも栄養分が多量に含まれており、これを肥料として利用できれば、湖沼の水の浄化と併せ、有意義である。
【0003】
青粉の処理方法として、従来は微生物による処理方法が知られている。この方法は、青粉を含む被処理液に青粉を分解する能力をもつ微生物を投入し、青粉を分解処理する方法であるが、処理に長時間を要し、効率的でない。
ところで、本発明者は被処理水の浄化方法として、高周波交流電圧と直流電圧とを同時に印加して浄水処理する浄水装置を既に開発している(特許文献2)。かかる処理装置を用いて青粉を含む被処理液から青粉と水とを効率よく分離することが望まれていた。
【特許文献1】特願2005−259424号
【特許文献2】特開2004−130294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、汚泥、特に浚渫汚泥や青粉汚泥の有効利用に資する汚泥の処理方法及び該方法により得られる肥料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明による汚泥の処理方法は、汚泥に少なくとも下記成分を下記重量割合で含む凝集剤を添加し攪拌混合して、水と泥分を主成分とする凝集体とに分離すること、を特徴としている。
二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、酸化チタン0.01〜2.0重量部。
ここで、汚泥として浚渫汚泥を用いるとよい。
また、汚泥は青粉汚泥であり、該青粉汚泥は、青粉を含有する被処理液を電気分解処理して得たものとするとよい。
ここで、電気分解処理は、被処理液を収容した水槽内に3極以上の電極を配し、その電極の内少なくとも2以上の電極間に高周波交流電圧を、前記電極の内少なくとも2以上の電極間に直流電圧を、同時に印加して行うとよい。
また、電極はアルミニウム電極を用いるとよい。
また、本発明による肥料は、上記の汚泥の処理方法により得られた(分離された)泥分を主成分とする凝集体からなるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明による汚泥の処理方法によれば、汚泥に所定の組成を有する凝集剤を添加し攪拌混合して、水と泥分を主成分とする凝集体とに分離するようにしたので、水を多量に含んだべちゃべちゃ状態の汚泥を、水と含水率の低い凝集体とに分離することができる。得られた凝集体は、含水率が低く(30〜60%程度)土砂に近い状態であるので、トラックなどに積んで運搬し易く、取り扱いが容易で、有効利用できる。
汚泥として浚渫汚泥を用いると、浚渫汚泥には養分を含むので、得られた凝集体も養分を含み肥料などとして有効に利用することができる。
また、汚泥は青粉汚泥であり、該青粉汚泥は、青粉を含有する被処理液を電気分解処理して得た青粉汚泥とすれば、青粉にも多量の栄養分が含まれているので、青粉汚泥から得られた凝集体は、肥料などとして有効に利用することができる。
電気分解処理によれば、短時間で処理が可能で、効率よく青粉汚泥を得ることができる。ここで、電気分解処理は、水槽内に3極以上の電極を配し、その電極の内少なくとも2以上の電極間に高周波交流電圧を、前記電極の内少なくとも2以上の電極間に直流電圧を、同時に印加して行うようにすれば、交流電圧による電気分解と直流電圧による電気分解との相乗効果により、より効率よく電気分解できる。
また、電極としてアルミニウム電極を用いれば、透明な水と青粉とにきれいに分離でき、青粉を含む被処理液を十分にかつ効率よく浄化できる。
青粉を含む汚れた水をこのように十分にかつ効率よく浄化できるこの方法は、青粉が大量に発生した湖沼の浄化方法として極めて有効で、従来にない画期的な処理方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。図1は電気分解処理装置の概略図、図2は他の例による電気分解処理装置の概略図、図3はビーカー内に収容した被処理液の電気分解前後の様子を示す概略図である。
【0008】
本発明による汚泥の処理方法は、汚泥に所定の組成を有する凝集剤を添加し攪拌混合して、水と泥分を主成分とする凝集体とに分離することからなるものである。
汚泥としては浚渫汚泥又は青粉汚泥が好ましい。浚渫汚泥や青粉汚泥には、有機物からなる栄養分が含まれており、かかる汚泥から得られる凝集体もまた栄養分を含むので、肥料として有効に利用することができる。
【0009】
本発明において用いる凝集剤は、少なくとも下記成分を下記重量割合で含むものである。二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、酸化チタン0.01〜2.0重量部。
【0010】
より好ましくは、少なくとも下記成分を下記重量割合で含むものである。
二酸化珪素20.0〜30.0重量部、酸化アルミニウム25.0〜35.0重量部、酸化第二鉄2.0〜7.0重量部、酸化カルシウム25.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜3.0重量部、酸化カリウム0.5〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.5〜1.5重量部、リン酸1.0〜2.0重量部、酸化チタン0.05〜1.0重量部。
【0011】
かかる組成をもつ凝集剤は、汚泥に含まれる泥分を疎水化して凝集させる、即ち、固形分としての泥分が保持する水分量(含水率)の調整を図る水分調整機能(疎水機能)と、凝集された泥分(固形分)に適度な親水性を付与し、残留水分によって硬結晶化させる凝結機能と、凝結した泥分の硬化を促進させる硬化促進機能とを有する。
【0012】
本発明において用いる凝集剤は、このような機能をもつため、短時間で効率よく汚泥を凝集させることができる。そして、得られた凝集体は、土砂に近い状態で、取り扱いが容易で、運搬も容易である。
また、本発明において用いる凝集剤は、水に分散させても、ほぼ中性域にあり、分離された水のpHを変化させることがないので、分離された水を処理する際にpH調整等も不要である。
【0013】
汚泥に添加する凝集剤の添加量は、汚泥(含水率80〜300%)100重量部に対して、凝集剤5〜20重量部の割合で添加する。汚泥の種類や含水率に応じて凝集剤の添加量も上記範囲内において適宜変更する。得られる凝集体の含水率は30〜60%程度である。このようにして得た凝集体は水を含んではいるものの、べちゃべちゃ状態ではなく、固まった状態で、トラックの荷台に積んで運搬することができる。
【0014】
浚渫汚泥や青粉汚泥には有機物など栄養分が含まれているので、かかる汚泥から得られた凝集体にも栄養分が含まれており、これを肥料として利用することができ、汚泥の有効利用に資する。
【0015】
図1は青粉を含有する被処理液の電気分解処理装置を示し、水槽1内には被処理液2が収容され、また、水槽1内には第1電極3a、第2電極3b及び第3電極3cからなる3個の電極が配されている。この内第1電極3aと第2電極3b間には交流高周波電源4から高周波の交流電圧が、第3電極3cと第1電極3a間及び第3電極3cと第2電極3b間には直流電源5から直流電圧が、それぞれ同時に印加される。これにより、それぞれの電極間には直流電流と交流電流が同時に流れ、水槽1内の被処理液2が電気分解されて、青粉が上方に浮上して水と分離される。なお、図1中、符号6はスイッチである。
【0016】
ここで、交流は60〜250kHzの高周波で30〜110Vの電圧、直流は30〜150Vの電圧条件で電気分解処理を行うのが好ましい。また、電極3a,3b,3cとしては、種々の導電性材料、例えば、チタン、アルミニウム、白金、ステンレス、鉄、黒鉛などが使用可能であるが、青粉を含有する被処理液の電気分解処理には、特にアルミニウムが好ましい。
【0017】
図2は他の例による電気分解処理装置を示し、水槽1内には被処理液2が収容され、また、2個の交流高周波電源14a,14bと1個の直流電源15をもち、水槽1内には第1電極13a、第2電極13b、第3電極13c及び第4電極13dからなる4個の電極が配されている。この内第1電極13aと第2電極13b間及び第3電極13cと第4電極13d間には交流高周波電源14a,14bから高周波の交流電圧が、第3電極13cと第1電極13a間、第3電極13cと第2電極13b間、第4電極13dと第1電極13a間及び第4電極13dと第2電極13b間には直流電源15から直流電圧が、それぞれ同時に印加される。交流の周波数や電圧、直流電圧、電極等については上述と同様である。
【0018】
青粉を含む被処理液の電気分解処理実験
図1に示す電気分解処理装置を用いて、青粉を含む被処理液2の電気分解処理実験を行った。具体的には、1リットルのビーカー(水槽1)に青粉を含んだ被処理液2(掛川市の八ヶ切堀池から採取した)1リットルを入れ、第1電極3a、第2電極3b、第3電極3c共にアルミニウム電極を用い、第1電極3a−第2電極3b間には105kHz、60.5Vの高周波交流電圧を、第3電極3c−第1電極3a間及び第3電極3c−第2電極3b間には102Vの直流電圧を、それぞれ同時に印加して被処理液2の電気分解を行った。このとき、交流側の電流は3.4A、直流側の電流は7.9Aであった。
かかる電気分解処理を3分間行うことにより、当初ビーカー内全体が緑色であった被処理液2(図3(a))は、青粉7が上方に浮上し透明な水8と分離できた(図3(b))。こうして上方に浮上した青粉7を回収し、これを後述する実施例2における青粉汚泥として用いた。
なお、電極としてチタン、白金、ステンレス、鉄などの電極を用いて実験したが、いずれも水は濁った状態で透明には至らず分離が不十分で、アルミニウム電極を用いた場合に、透明な水と青粉とにきれいに分離できた。
【実施例1】
【0019】
含水率約200%の浚渫汚泥1000kgに凝集剤150kgを添加し、多軸型混合機で攪拌混合して、含水率約50%の凝集体と水とに分離できた。得られた凝集体は、土砂に近い状態で取り扱いが容易で、トラックの荷台に載せて運搬することもできた。
用いた凝集剤の組成は、二酸化珪素22.0重量部、酸化アルミニウム30.0重量部、酸化第二鉄4.0重量部、酸化カルシウム32.0重量部、酸化ナトリウム1.6重量部、酸化カリウム0.8重量部、酸化マグネシウム1.0重量部、リン酸1.5重量部、酸化チタン0.1重量部、その他の成分7.0重量部であった。
【実施例2】
【0020】
含水率約200%の青粉汚泥1kgに凝集剤100gを添加し、攪拌混合して、含水率約50%の凝集体と水とに分離できた。得られた凝集体は、土砂に近い状態で取り扱いが容易で、トラックの荷台に載せて運搬することもできた。用いた凝集剤の組成は、実施例1で用いたものと同じである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電気分解処理装置の概略図。
【図2】他の例による電気分解処理装置の概略図。
【図3】ビーカー内に収容した被処理液の電気分解前後の様子を示す概略図。
【符号の説明】
【0022】
1 水槽
2 被処理液
3a,13a 第1電極
3b,13b 第2電極
3c,13c 第3電極
13d 第4電極
4,14a,14b 交流高周波電源
5,15 直流電源
6,16 スイッチ
7 青粉
8 透明な水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に少なくとも下記成分を下記重量割合で含む凝集剤を添加し攪拌混合して、水と泥分を主成分とする凝集体とに分離することを特徴とする汚泥の処理方法。
二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、酸化チタン0.01〜2.0重量部。
【請求項2】
汚泥は浚渫汚泥である請求項1に記載の汚泥の処理方法。
【請求項3】
汚泥は青粉汚泥であり、該青粉汚泥は、青粉を含有する被処理液を電気分解処理して得たものである請求項1に記載の汚泥の処理方法。
【請求項4】
電気分解処理は、被処理液を収容した水槽内に3極以上の電極を配し、その電極の内少なくとも2以上の電極間に高周波交流電圧を、前記電極の内少なくとも2以上の電極間に直流電圧を、同時に印加して行う請求項3に記載の汚泥の処理方法。
【請求項5】
電極はアルミニウム電極を用いる請求項4に記載の汚泥の処理方法。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の汚泥の処理方法により得られた泥分を主成分とする凝集体からなる肥料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−301458(P2007−301458A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131513(P2006−131513)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(502291562)
【出願人】(506158795)
【Fターム(参考)】