説明

汚泥の分析要素量測定方法及び汚泥の分析要素量測定装置

【課題】 測定対象の汚泥の発熱量等の分析要素量を直接的に測定できるようにし、演算効率を向上させるとともに測定精度の向上を図る。
【解決手段】 汚泥を保持する汚泥保持部1と、汚泥保持部1に保持された汚泥に近赤外領域の光を照射する照光部2と、この汚泥からの反射光あるいは透過光を受光する受光部3と、受光部3が受光した光の吸光度と予め算出しておいた回帰式とから汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち少なくとも何れか1つの分析要素量を算出する制御部20とを備え、上記回帰式は、測定に係る分析要素量既知のサンプル汚泥に近赤外線を照射し、該サンプル汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により当該測定に係る分析要素量に直接起因する帰属波長に係る式としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水,し尿や産業排水処理施設などから発生する汚泥の発熱量等の分析要素量を測定する技術に係り、特に、近赤外領域の光を用いて測定することのできる汚泥の分析要素量測定方法及び汚泥の分析要素量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、下水,し尿や産業排水処理施設などから発生する汚泥は、ベルトプレス型脱水機,遠心脱水機あるいはフィルタプレス等を用いて脱水処理されて脱水汚泥とされ、その後、この脱水汚泥は、例えば焼却処理される。この脱水汚泥の焼却処理においては、焼却の際の燃料の使用量に影響を及ぼす。
【0003】
従来、この種の汚泥の発熱量の測定方法としては、例えば、特許文献1(特許第3525013号公報)に記載されたものが知られている。
これは、測定対象汚泥に向けて蛋白質、脂質、繊維質、及び、水分の各含有比率に応じた吸収特性を夫々示す複数波長の赤外光を個別に照射し、測定対象汚泥を透過又は反射した各波長の赤外光を受光し、得られた各波長の赤外光の光量に基づいて測定対象汚泥の有機物含有率及び水分含有率を演算し、演算された測定対象汚泥の有機物含有率及び水分含有率に基づいて、測定対象汚泥の発熱量を演算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3525013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の汚泥の発熱量の測定方法においては、蛋白質、脂質、繊維質、及び、水分の各含有比率に応じた吸収特性を夫々示す複数波長の赤外光を個別に照射し、有機物含有率及び水分含有率に基づいて発熱量を演算しているので、算出の工程が間接的で複雑になっており、それだけ、演算効率が悪く、測定精度に劣っているという問題があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、測定対象の汚泥の発熱量等の分析要素量を直接的に測定できるようにし、演算効率を向上させるとともに測定精度の向上を図った汚泥の分析要素量測定方法及び汚泥の分析要素量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本発明の汚泥の分析要素量測定方法は、測定対象の汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、近赤外領域の波長に対する吸光度を測定し、この測定値に基づいて汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち少なくとも何れか1つの分析要素量を測定する汚泥の分析要素量測定方法であって、
予め、測定に係る分析要素量既知のサンプル汚泥に近赤外線を照射し、該サンプル汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により当該測定に係る分析要素量に直接起因する帰属波長に係る回帰式を算出しておき、
測定対象の汚泥に近赤外線を照射し、測定対象の汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、これらの吸光度と上記回帰式とから当該測定対象の汚泥の測定に係る分析要素量を算出する構成としている。
本願発明は、例えば、低位発熱量の特定においては、下水試験法による規算出方法によって行われるが、JIS他の何れの算出方法に対しても対応できる。
【0007】
本発明による測定方法の特徴は、汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち少なくとも何れか1つの分析要素量に直接帰属する近赤外線の波長域を見出し、その波長域を用いて分析要素量を測定する点である。そのため、測定対象の汚泥の発熱量等の分析要素量を直接的に測定できるようになり、演算効率が向上させられ、測定精度の向上が図られる。
また、高位発熱量及び低位発熱量については、水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の値が分かれば、計算によって算出することができ、そのため、各分析要素量を利用して、検算することができ、それだけ測定精度の向上を図ることができる。
この結果、測定データを用いて、汚泥の状態を把握でき、例えば脱水汚泥の焼却の際に使用する燃料の量の制御を確実に行うことができるようになる。また、脱水汚泥の炉投入汚泥総発熱量の変化と炉燃料使用量の関係をフィードバック制御でのみコントロールするのに対して、炉投入総発熱量を事前に把握することができるので、フィードフォワード制御もできるようになる。
【0008】
より具体的には、本発明は、上記回帰式を、互いに相関係数の高い第1〜n波長の吸光度を変数とする下記の一般式で構成し、
【0009】
【数2】

【0010】
(一般式において、Cは分析要素量(高位発熱量、低位発熱量はJ/g、水分量は重量%−WB、水素量他は重量%−DB)、λは波長、A(λ1)は第1波長(λ1)の吸光度、A(λ2)は第2波長(λ2)の吸光度、・・・A(λn)は第n波長(λn)の吸光度、K0,K1,K2・・・Knは、充分に多い母集団において測定された吸光度及び実測分析要素量を用いて最小二乗法で決定された係数である。また、K0は脱水汚泥の温度による測定値ドリフトも含まれる)
【0011】
上記一般式において、第1波長(λ1)乃至第n波長(λn)を選択するに当たり、先ず、多種類の汚泥の被検体の化学分析による既知の分析要素量値と当該各被検体の吸光度との重回帰分析によって求められた上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し相関係数が0.7以上になる第1波長(λ1)の近赤外線の波長域を選択し、次に、当該第1波長(λ1)の近赤外線の波長域と、1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって、上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第2波長(λ2)の近赤外線の波長域を選択し、次に、上記第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域と、1100nm〜2000nmの範囲の波長域との重回帰分析によって、上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第3波長(λ3)の近赤外線の波長域を選択し、このように、上記第1波長(λ1)乃至第(n−1)波長(λn−1)の近赤外線の波長域と、1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって、上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第n波長(λn)の近赤外線の波長域を選択する。
【0012】
本発明は、既に化学分析による分析要素量が判っている多くの分析要素量既知のサンプル汚泥との重回帰分析によって、先ず、相関係数の高い第1波長を求め、次に、相関係数の高い第2〜n波長を求める。各波長は、試料の吸光度と化学分析による既知の分析要素量による重回帰分析によって、例えば相関係数が0.7以上を示す領域でもって決定する。これらの波長領域は、単一波長として使用しても、分析要素量の標準誤差の範囲を広く設定すれば、分析要素量の測定が可能であると推定される。しかしながら、相関係数の高い第2〜n波長を求めることで、精度が向上させられる。
即ち、本発明は、汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量を、近赤外線の1100nm〜2200nmの範囲の波長域でもって直接的に算出しており、従来のように汚泥の有機物含有率及び水分含有率に基づいて発熱量を演算しているのとは算出の概念を異にする。
【0013】
そして、必要に応じ、測定に係る分析要素量が高位発熱量である場合、
第1波長(λ1)を1200〜1222nm、1376〜1390nm、1418〜1498nm、1612〜1696nm、1744〜1752nm、1762〜1776nm、1806〜1810nm、1826〜1868nm、1894〜1910nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を2158〜2164nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1370〜1392nm、1416〜1490nm、1538nm、1578〜1580nm、1616〜1618nm、1624nm、1658〜1668nm、1746nm、1766〜1780nm、1824〜1914nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1324〜1326nm、1502〜1516nmの波長範囲から選択し、且つ、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにしている。
【0014】
この場合、第1波長(λ1)を1750nm±2nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を2160nm±2nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1390nm±2nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1510nm±2nmの波長範囲から選択したことが有効である。
【0015】
また、必要に応じ、測定に係る分析要素量が低位発熱量である場合、
第1波長(λ1)を1202〜1226nm、1234〜1248nm、1650〜1678nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を1602〜1636nm、1718〜1736nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1808〜1834nm、1994〜2008nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1330〜1386nm、2058〜2066nmの波長範囲から選択し、且つ、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにしている。
【0016】
この場合、第1波長(λ1)を1668nm±2nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を1726nm±2nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を2002nm±2nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を2062nm±2nmの波長範囲から選択したことが有効である。
【0017】
更に、必要に応じ、測定に係る分析要素量が水分量である場合、第1波長(λ1)を1718〜1732nm、2002〜2044nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を1558〜1600nm、1624〜1696nm、2060〜2068nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1720〜1736nm、2120〜2160nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1290〜1302nm、1394〜1408nmの波長範囲から選択し、且つ、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにしている。
【0018】
この場合、第1波長(λ1)を2014nm±2nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を2064nm±2nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1730nm±2nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1396nm±2nmの波長範囲から選択したことが有効である。
【0019】
更にまた、必要に応じ、測定に係る分析要素量が水素量である場合、
第1波長(λ1)を1140〜1144nm、1190〜1226nm、1236〜1258nm、1302〜1336nm、1366〜1390nm、1414〜1502nm、1610〜1696nm、1744〜1752nm、1760〜1778nm、1806〜1868nm、1892〜1910nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を1746〜1752nm、2160〜2164nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1306〜1334nm、1344〜1390nm、1404〜1496nm、1552〜1630nm、1654〜1668nm、1746nm、1764〜1784nm、1822〜1868nm、1886〜1914nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1984〜1994nmの波長範囲から選択し、且つ、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにしている。
【0020】
この場合、第1波長(λ1)を1748nm±2nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を2162nm±2nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1388nm±2nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1988nm±2nmの波長範囲から選択したことが有効である。
【0021】
そしてまた、必要に応じ、測定対象の汚泥の測定時の温度をT、予め設定した基準温度をT0としたとき、基準温度T0の時の分析要素量C0を、温度Tにおける分析要素量Ctから温度補正して算出する構成としている。
温度変化があっても、例えば、一日の温度変化、季節ごとの温度変化などの温度変化あっても、その測定の変化量は比較的少ないが、基準温度における分析要素量を算出するので、汚泥の状態を安定的に把握でき、例えば脱水汚泥の焼却の際に使用する燃料の量の制御を確実に行うことができるようになる。
【0022】
この場合、必要に応じ、温度補正算出式: C0=a+b(T−T0)+Ct
(Tは測定対象の汚泥の測定時の温度、T0は予め設定した基準温度、Ct,C0は該当する温度の分析要素量(高位発熱量、低位発熱量はJ/g、水分量は重量%−WB、水素量他は重量%−DB)、a,bは温度と測定値との最小二乗法の解)
により算出する。
【0023】
また、上記の目的を達成するため、本発明の汚泥の分析要素量測定装置は、測定対象の汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、近赤外領域の波長に対する吸光度を測定し、この測定値に基づいて汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち少なくとも何れか1つの分析要素量を測定する汚泥の分析要素量測定装置であって、
測定対象の汚泥を保持する汚泥保持部と、該汚泥保持部に保持された測定対象の汚泥に近赤外領域の光を照射する照光部と、この汚泥からの反射光あるいは透過光を受光する受光部と、該受光部が受光した光の吸光度に基づいて汚泥の分析要素量を算出する制御部とを備え、
上記制御部を、予め、測定に係る分析要素量既知のサンプル汚泥に近赤外線を照射されるとともに該サンプル汚泥から反射あるいは透過された光の近赤外線領域の波長に対する吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により算出され当該測定に係る分析要素量に直接起因する帰属波長に係る回帰式を記憶する回帰式記憶機能と、上記受光部が受光した光の吸光度と上記回帰式とから当該測定対象の汚泥の測定に係る分析要素量を演算する分析要素量演算機能とを備えて構成している。
【0024】
上記と同様に、汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち少なくとも何れか1つの分析要素量に直接帰属する近赤外線の波長域を見出し、その波長域を用いて分析要素量を測定するので、測定対象の汚泥の発熱量等の分析要素量を直接的に測定できるようになり、演算効率が向上させられ、測定精度の向上が図られる。
【0025】
この装置において、具体的には、上記制御部における回帰式記憶機能が記憶する回帰式と選択される近赤外線の波長の組み合わせは、上記の回帰式と波長との組み合わせである。
【0026】
また、必要に応じ、上記制御部は、測定対象の汚泥の測定時の温度をT、予め設定した基準温度をT0としたとき、基準温度T0の時の分析要素量C0を、温度Tにおける分析要素量Ctから温度補正して算出する機能を備えた構成としている。
温度変化があっても、例えば、一日の温度変化、季節ごとの温度変化などの温度変化あっても、その測定の変化量は比較的少ないが、基準温度における分析要素量を算出するので、汚泥の状態を安定的に把握でき、例えば脱水汚泥の焼却の際に使用する燃料の量の制御を確実に行うことができるようになる。
【0027】
そして、必要に応じ、上記受光部を複数設け、上記制御部は、上記複数の受光部からの光の吸光度に基づいて汚泥の分析要素量を算出する構成としている。例えば、複数の吸光度データの平均値により分析要素量を算出することができ、それだけ、より一層測定精度の向上が図られる。
【0028】
また、必要に応じ、上記汚泥保持部を、汚泥を上記照光部に対して連続的に移動させて保持する構成にしている。連続移動する汚泥についてリアルタイムで分析要素量を算出するので、逐一サンプルを取り出して測定するバッチ式に比較して、測定作業が容易になるとともに搬送される汚泥の状態を確実に把握することができ、例えば脱水汚泥の焼却の際に使用する燃料の量の制御をより一層確実に行うことができるようになる。
【0029】
この場合、必要に応じ、上記汚泥保持部を、汚泥が搬送される管体で構成し、該管体に光を透過可能なウインドウを設け、該ウインドウに上記照光部及び受光部を付設した構成としている。管体なので汚泥に搬送のための圧力が生じていても搬送を阻害することなく、また、この移動する汚泥からウインドウを介してデータを取得できる。
この構成において、上記ウインドウを、石英,サファイアガラス,ダイヤモンドから選択される材料で形成したことが有効である。耐圧性が良く、また、光の透過性に優れ、データ取得を確実に行うことができる。
【0030】
また、必要に応じ、上記汚泥保持部を、汚泥が搬送されるベルトコンベアで構成している。ベルトコンベアなので、構造を簡単にすることができる。
【0031】
更にまた、必要に応じ、上記制御部は、汚泥の搬送速度に基づいて汚泥の搬送量を算出する機能を備えた構成としている。搬送した汚泥の総分析要素量値、例えば、焼却炉を運転している場合に必要な炉投入汚泥総発熱量を算出できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち少なくとも何れか1つの分析要素量に直接帰属する近赤外線の波長域を見出し、その波長域を用いて分析要素量を測定するので、測定対象の汚泥の発熱量等の分析要素量を直接的に測定できるようになり、演算効率を向上させ、測定精度を向上させることができる。
また、高位発熱量及び低位発熱量については、水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の値が分かれば、計算によって算出することができ、そのため、各分析要素量を利用して、検算することができ、それだけ測定精度の向上を図ることができる。
この結果、測定データを用いて、汚泥の状態を把握でき、例えば脱水汚泥の焼却の際に使用する燃料の量の制御を確実に行うことができるようになる。また、脱水汚泥の炉投入汚泥総発熱量の変化と炉燃料使用量の関係をフィードバック制御でのみコントロールするのに対して、炉投入総発熱量を事前に把握することができるので、フィードフォワード制御もできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る汚泥の分析要素量測定装置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る汚泥の分析要素量測定装置の汚泥保持部を示す要部図であり、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る汚泥の分析要素量測定装置における制御部の通信部の接続状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る汚泥の分析要素量測定装置における汚泥保持部の別の例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)中X−X線断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る分析要素量測定方法において、高位発熱量に係る回帰式の第1波長(λ1)を選択する際に用いた分析値と近赤外線の波長との相関を示すグラフ図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る分析要素量測定方法において、低位発熱量に係る回帰式の第1波長(λ1)を選択する際に用いた分析値と近赤外線の波長との相関を示すグラフ図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る分析要素量測定方法において、水分量に係る回帰式の第1波長(λ1)を選択する際に用いた分析値と近赤外線の波長との相関を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る分析要素量測定方法において、水素量に係る回帰式の第1波長(λ1)を選択する際に用いた分析値と近赤外線の波長との相関を示すグラフ図である。
【図9】本発明の実施例1に係る高位発熱量の回帰式の算出に関し、化学分析値と分光分析値との関係を示すグラフ図である。
【図10】本発明の実施例2に係る低位発熱量の回帰式の算出に関し、化学分析値と分光分析値との関係を示すグラフ図である。
【図11】本発明の実施例3に係る水分量の回帰式の算出に係り、化学分析値と分光分析値との関係を示すグラフ図である。
【図12】本発明の実施例4に係る水素量の回帰式の算出に係り、化学分析値と分光分析値との関係を示すグラフ図である。
【図13】本発明の実施例5に係る高位発熱量の回帰式の算出に関し、化学分析値と分光分析値との関係を示すグラフ図である。
【図14】本発明の実施例6に係る低位発熱量の回帰式の算出に関し、化学分析値と分光分析値との関係を示すグラフ図である。
【図15】本発明の実施例7に係る水分量の回帰式の算出に係り、化学分析値と分光分析値との関係を示すグラフ図である。
【図16】本発明の実施例8に係る水素量の回帰式の算出に係り、化学分析値と分光分析値との関係を示すグラフ図である。
【図17】実験例1に係り、高位発熱量、低位発熱量、水分量、水素量について求めた実施例5乃至8に係る回帰式(検量線)にて、成分量の未知の脱水汚泥を測定した値と、その脱水汚泥について化学分析にて成分量を測定した値とを比較した結果を示す図である。
【図18】実験例2に係り、低位発熱量について求めた実施例6に係る回帰式(検量線)にて、成分量の未知の脱水汚泥を測定した値と、高位発熱量、水分量、水素量を個別に測定した値から下水処理法を用いて計算した値とを比較した結果を示す図である。
【図19】実験例3に係り、高位発熱量について、温度補正する前(実測値)と温度補正した後の値の違いを示すグラフ図である。
【図20】実験例3に係り、脱水汚泥温度と発熱量測定値との関係を示すグラフ図である。
【図21】実験例3に係り、脱水汚泥温度変化量と脱水汚泥高位発熱量測定値の変化量との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る汚泥の分析要素量測定方法及び汚泥の分析要素量測定装置を説明する。本汚泥の分析要素量測定方法は、本汚泥の分析要素量測定装置によって実現されるので、本汚泥の分析要素量測定装置の作用において説明する。
実施の形態に係る汚泥の分析要素量測定装置は、下水,し尿や産業排水処理施設などから発生する汚泥の処理システムに用いられる。この処理システムにおいては、汚泥は、ベルトプレス型脱水機,遠心脱水機あるいはフィルタプレス等を用いて脱水処理されて脱水汚泥として生成され、その後、この脱水汚泥は、例えば焼却炉で焼却処理される。実施の形態に係る汚泥の分析要素量測定装置は、焼却炉に搬送管を通して搬送される測定対象の汚泥(脱水汚泥)からの反射光あるいは透過光を受光し、近赤外領域の波長に対する吸光度を測定し、この測定値に基づいて汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち少なくとも何れか1つの分析要素量を測定する。
【0035】
詳しくは、図1及び図2に示すように、実施の形態に係る汚泥の分析要素量測定装置は、測定対象の汚泥を保持する汚泥保持部1と、汚泥保持部1に保持された測定対象の汚泥に近赤外領域の光を照射する照光部2と、この汚泥からの反射光あるいは透過光を受光する受光部3と、受光部3が受光した光の吸光度に基づいて汚泥の分析要素量を算出する制御部20とを備えて構成されている。
【0036】
汚泥保持部1は、図2に示すように、汚泥を照光部2に対して連続的に移動させて保持するもので、汚泥の搬送管の途中に介装され汚泥が搬送される管体4で構成されている。この管体4には、光を透過可能なウインドウ5が設けられている。管体4なので汚泥に搬送のための圧力が生じていても搬送を阻害することなく、また、この移動する汚泥からウインドウ5を介してデータを取得できる。また、ウインドウ5は、石英,サファイアガラス,ダイヤモンドから選択される材料で形成されている。耐圧性が良く、また、光の透過性に優れ、データ取得を確実に行うことができる。符号6はウインドウ5の周囲をシールする押さえブロックである。
【0037】
ウインドウ5には、照光部2及び受光部3が付設されている。照光部2及び受光部3は白色光が伝送される光ファイバ7,8の端部で構成されており、照受光プローブ10に保持されている。受光部3は、例えば、照光部2を中心とした同心円上に等角度関係で複数設けられている。各光ファイバ7,8は束ねられてファイバ結合部11に至る。照受光プローブ10は押さえブロック6に設けられた取付部12に取り付けられている。符号13は、照光プローブ10,取付部12及び押さえブロック6を遮光して覆うカバーである。
【0038】
図1に示すように、照光部2の光ファイバ7はファイバ結合部11から分岐して光源ボックス15に至っており、制御ケーブル16を介して制御部20からの制御により適時に光を照光する。受光部3の光ファイバ8はファイバ結合部11から分岐して並列に分光部17に接続され、分光部17から制御ケーブル18を介して制御部20内の信号処理を行なう電気回路に接続されている。符号19は管体4に設けられ汚泥の温度を計測する温度センサである。また、符号21は制御部20に接続され各種表示を行う表示部、22は汚泥保持部1、照受光プローブ10、カバー13等の測定に係る部分周辺を撮像し機器の監視を行って異常の有無を確認する撮像部である。符号23は通信部であり、図3に示すように、通信部23は例えばインターネットなどの通信網を介した遠隔地にある端末24と接続されており、制御部20の制御を遠隔で行うため端末からの制御信号を受信するとともに制御部20からのデータを送信する。
【0039】
制御部20は、予め、測定に係る分析要素量既知のサンプル汚泥に近赤外線を照射されるとともに該サンプル汚泥から反射あるいは透過された光の近赤外線領域の波長に対する吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により算出され当該測定に係る分析要素量に直接起因する帰属波長に係る回帰式を記憶する回帰式記憶機能と、受光部3が受光した光の吸光度と上記回帰式とから当該測定対象の汚泥の測定に係る分析要素量を演算する分析要素量演算機能とを備えて構成されている。この場合、制御部の分析要素量演算機能は、複数の受光部からの光の吸光度に基づいて汚泥の分析要素量を算出する。例えば、複数の吸光度データの平均値により分析要素量を算出することができ、それだけ、より一層測定精度の向上が図られる。
全体の信号処理は以下のようにして行なわれる。各受光部3によって拡散反射光が検出され、受光部3の光ファイバ8によって分光部17に送られる。この分光部17では、光を波長域毎に分光するとともに、その光の強さによる電気信号に変換して抽出する。その後、制御ケーブル18を介して制御部20内の電気回路に接続され、所定の処理を行う。
【0040】
次に、制御部20の回帰式記憶機能が記憶する回帰式の設定について説明する。回帰式は、汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち、測定に係る分析要素量において設定される。回帰式は、予め、測定に係る分析要素量既知のサンプル汚泥に近赤外線を照射し、このサンプル汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により当該測定に係る分析要素量に直接起因する帰属波長に係る式として算出される。
【0041】
詳しくは、回帰式を、互いに相関係数の高い第1〜n波長の吸光度を変数とする下記の一般式で構成する。
【0042】
【数3】

【0043】
(一般式において、Cは分析要素量(高位発熱量、低位発熱量はJ/g、水分量は重量%−WB、水素量他は重量%−DB)、λは波長、A(λ1)は第1波長(λ1)の吸光度、A(λ2)は第2波長(λ2)の吸光度、・・・A(λn)は第n波長(λn)の吸光度、K0,K1,K2・・・Knは、充分に多い母集団において測定された吸光度及び実測分析要素量を用いて最小二乗法で決定された係数である。また、K0は脱水汚泥の温度による測定値ドリフトも含まれる。)
【0044】
上記一般式において、第1波長(λ1)乃至第n波長(λn)を選択するに当たり、先ず、多種類の汚泥の被検体の化学分析による既知の分析要素量値と当該各被検体の吸光度との重回帰分析によって求められた上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し相関係数が0.7以上になる第1波長(λ1)の近赤外線の波長域を選択し、次に、当該第1波長(λ1)の近赤外線の波長域と、1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって、上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第2波長(λ2)の近赤外線の波長域を選択し、次に、上記第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域と、1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって、上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第3波長(λ3)の近赤外線の波長域を選択し、このように、上記第1波長(λ1)乃至第(n−1)波長(λn−1)の近赤外線の波長域と、1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって、上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第n波長(λn)の近赤外線の波長域を選択する。
【0045】
次に、汚泥の分析要素量ごとの波長の選択について説明する。
<高位発熱量>
測定に係る分析要素量が高位発熱量である場合、先ず、第1波長(λ1)においては、図5に示すように、高位発熱量の分析値と高い相関係数−0.7以下、0.7以上を示す波長範囲を選択する。即ち、第1波長(λ1)を1200〜1222nm、1376〜1390nm、1418〜1498nm、1612〜1696nm、1744〜1752nm、1762〜1776nm、1806〜1810nm、1826〜1868nm、1894〜1910nmの波長範囲から選択する。
【0046】
次に、第2波長(λ2)を2158〜2164nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1370〜1392nm、1416〜1490nm、1538nm、1578〜1580nm、1616〜1618nm、1624nm、1658〜1668nm、1746nm、1766〜1780nm、1824〜1914nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1324〜1326nm、1502〜1516nmの波長範囲から選択する。これらの選択においては、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにする。
【0047】
望ましくは、第1波長(λ1)を1750nm±2nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を2160nm±2nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1390nm±2nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1510nm±2nmの波長範囲から選択する。
【0048】
<低位発熱量>
測定に係る分析要素量が低位発熱量である場合、先ず、第1波長(λ1)においては、図6に示すように、低位発熱量の分析値と高い相関係数−0.7以下、0.7以上を示す波長範囲を選択する。即ち、第1波長(λ1)を1202〜1226nm、1234〜1248nm、1650〜1678nmの波長範囲から選択する。
次に、第2波長(λ2)を1602〜1636nm、1718〜1736nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1808〜1834nm、1994〜2008nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1330〜1386nm、2058〜2066nmの波長範囲から選択する。これらの選択においては、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにする。
【0049】
望ましくは、第1波長(λ1)を1668nm±2nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を1726nm±2nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を2002nm±2nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を2062nm±2nmの波長範囲から選択する。
【0050】
<水分量>
測定に係る分析要素量が水分量である場合、先ず、第1波長(λ1)においては、図7に示すように、水分量の分析値と高い相関係数−0.7以下、0.7以上を示す波長範囲を選択する。即ち、第1波長(λ1)を1718〜1732nm、2002〜2044nmの波長範囲から選択する。
次に、第2波長(λ2)を1558〜1600nm、1624〜1696nm、2060〜2068nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1720〜1736nm、2120〜2160nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1290〜1302nm、1394〜1408nmの波長範囲から選択する。これらの選択においては、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにする。
【0051】
望ましくは、第1波長(λ1)を2014nm±2nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を2064nm±2nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1730nm±2nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1396nm±2nmの波長範囲から選択する。
【0052】
<水素量>
測定に係る分析要素量が水素量である場合、先ず、第1波長(λ1)においては、図8に示すように、水素量の分析値と高い相関係数−0.7以下、0.7以上を示す波長範囲を選択する。即ち、第1波長(λ1)を1140〜1144nm、1190〜1226nm、1236〜1258nm、1302〜1336nm、1366〜1390nm、1414〜1502nm、1610〜1696nm、1744〜1752nm、1760〜1778nm、1806〜1868nm、1892〜1910nmの波長範囲から選択する。
【0053】
次に、第2波長(λ2)を1746〜1752nm、2160〜2164nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1306〜1334nm、1344〜1390nm、1404〜1496nm、1552nm〜1630nm、1654〜1668nm、1746nm、1764〜1784nm、1822〜1868nm、1886〜1914nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1984〜1994nmの波長範囲から選択する。この選択においては、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにする。
【0054】
望ましくは、第1波長(λ1)を1748nm±2nmの波長範囲から選択し、第2波長(λ2)を2162nm±2nmの波長範囲から選択し、第3波長(λ3)を1388nm±2nmの波長範囲から選択し、第4波長(λ4)を1988nm±2nmの波長範囲から選択する。
【0055】
また、灰分量,イオウ分量,炭素分量の分析要素量についての回帰式も、同様の手法で決定する。
【0056】
また、制御部20は、測定対象の汚泥の測定時の温度をT、予め設定した基準温度をT0としたとき、基準温度T0の時の分析要素量C0を、温度Tにおける分析要素量Ctから温度補正して算出する機能を備えている。上記の汚泥保持部1の管体4には、管体4内の汚泥の温度を測定する温度センサ19が内蔵されており、制御部20は、この温度センサ19の検知温度に基づいて、必要に応じ、温度補正を行う。
【0057】
制御部20は、例えば、補正式 C0=a+b(T−T0)+Ct
(Tは測定対象の汚泥の測定時の温度、T0は予め設定した基準温度、Ct,C0は該当する温度の分析要素量(高位発熱量、低位発熱量はJ/g、水分量は重量%−WB、水素量他は重量%−DB)、a,bは温度と測定値との最小二乗法の解)
により算出する。
温度変化があっても、例えば、一日の温度変化、季節ごとの温度変化などの温度変化あっても、その測定の変化量は比較的少ないが、基準温度における分析要素量を算出するので、汚泥の状態を安定的に把握でき、例えば脱水汚泥の焼却の際に使用する燃料の量の制御を確実に行うことができるようになる。
【0058】
また、制御部20は、汚泥の搬送速度に基づいて汚泥の搬送量を算出する機能を備えている。これにより、搬送した汚泥の総分析要素量値、例えば総発熱量を算出できる。
【0059】
従って、この実施の形態に係る分析要素量測定装置により、汚泥の分析要素量を測定するときは、例えば、高位発熱量を測定する場合で説明すると、以下のようになる。制御部20においては、回帰式記憶機能が記憶する回帰式と、選択される近赤外線の波長の組み合わせが設定されている。汚泥は搬送されて汚泥保持部1の管体4内を移動している。この状態で、制御部20から適時に測定開始指令が発せられると、照光部2から光が照射され、この汚泥からの反射光あるいは透過光が受光部3により受光される。受光部3で受光した光は、光ファイバ8を通って分光部17に至り、光が波長域毎に分光され、その光の強さによる電気信号に変換されて、制御ケーブル18を介して制御部20内の電気回路に送出される。制御部20においては、上記の回帰式での演算処理が行なわれる。即ち、汚泥の吸光度が求められ、所定の帰属波長による回帰式により高位発熱量が算出される。必要に応じ、上記の温度補正が行われる。
【0060】
このように算出された高位発熱量は、汚泥の高位発熱量に直接帰属する近赤外線の波長域を用いて特定されるので、測定対象の汚泥の分析要素量を直接的に測定できるようになり、演算効率が向上させられ、測定精度の向上が図られる。即ち、既に化学分析による分析要素量が判っている多くの分析要素量既知のサンプル汚泥との重回帰分析によって、先ず、相関係数の高い第1波長を求め、次に、相関係数の高い第2〜n波長を求める。各波長は、試料の吸光度と化学分析による既知の分析要素量による重回帰分析によって、例えば相関係数が0.7以上を示す領域でもって決定する。これらの波長領域は、単一波長として使用しても、分析要素量の標準誤差の範囲を広く設定すれば、分析要素量の測定が可能であると推定される。しかしながら、相関係数の高い第2〜n波長を求めることで、精度が向上させられるのである。高位発熱量以外の分析要素量の測定においても同様に行われる。また、算出された高位発熱量が、温度補正が行われた数値である場合には、汚泥の状態を安定的に把握することができる。この算出された高位発熱量は、例えば脱水汚泥の焼却の際に使用する燃料の量の制御に供される。
【0061】
この測定においては、汚泥保持部1が汚泥が搬送される管体4で構成され、この管体4に光を透過可能なウインドウ5を設け、このウインドウ5に照光部2及び受光部3が付設されているので、連続移動する汚泥についてリアルタイムで分析要素量を算出することができ、バッチ式に比較して、搬送される汚泥の状態を確実に把握することができ、例えば脱水汚泥の焼却の際に使用する燃料の量の制御をより一層確実に行うことができるようになる。また、管体4なので汚泥に搬送のための圧力が生じていても搬送を阻害することなく、この移動する汚泥からウインドウ5を介してデータを取得できる。
【0062】
図4には、汚泥保持部1の別の例を示している。この汚泥保持部1は、汚泥が搬送されるベルトコンベア30で構成されている。ベルトコンベア30なので、構造を簡単にすることができる。そして、ベルトコンベア30の汚泥の経路の途中には、光ファイバ7,8からなる照光部2及び受光部3が設けられた照受光プローブ10が設けられている。照受光プローブ10は取付部12に取り付けられており、この取付部12は、ベルトコンベア30の基台31に支持され汚泥を覆って遮光するカバー32に設置されている。このベルトコンベア30からなる汚泥保持部1によっても、上記と同様の作用,効果を奏する。
【実施例】
【0063】
次に、実施例について説明する。
実施例は、30種類の脱水汚泥について予め成分量を化学分析し、基準温度を20℃とし、この基準温度と同じ20℃に調整した汚泥サンプルに、1100〜2200nmの近赤外線を脱水汚泥に照射しその反射光を光検出器で検出するような近赤外線分光分析システムを用いて各波長での光強度を得て吸光度算出、ノイズ処理、二次微分処理を施し、二次微分スペクトルと高位発熱量、低位発熱量、水分量、水素量について、重回帰分析により回帰式を求めた。
【0064】
(実施例1)
高位発熱量の回帰式の算出に係り、第1波長(λ1)を1418〜1498nmの範囲から選択し、1440nmとした。第2波長(λ2)を2158〜2164nmから選択し、2162nmとした。第3波長(λ3)を1370〜1392nmから選択し、1372nmとした。第4波長(λ4)を1502〜1516nmから選択し、1504nmとした。図9に示すように、この条件において、回帰係数がK0=19438.61、K1=−399500.00、K2=−1464952.64、K3=−102432.58、K4=−75560.21で、重相関係数は0.965、標準誤差1154.272となる検量線を構築した。
【0065】
(実施例2)
低位発熱量の回帰式の算出に係り、第1波長(λ1)を1234〜1248nmから選択し、1238nmとした。第2波長(λ2)を1718〜1736nmから選択し、1726nmとした。第3波長(λ3)を1994〜2008nmから選択し、2002nmとした。第4波長(λ4)を2058〜2066nmから選択し、2062nmとした。図10に示すように、この条件において、回帰係数がK0=−1223.83、K1=982305.99、K2=−141170.16、K3=255168.71、K4=−410541.72で、重相関係数0.951、標準誤差446.359となる検量線を構築した。
【0066】
(実施例3)
水分量の回帰式の算出に係り、第1波長(λ1)を1718〜1732nmから選択し、1726nmとした。第2波長(λ2)を2060〜2068nmから選択し、2062nmとした。第3波長(λ3)を2120〜2160nmから選択し、2142nmとした。第4波長(λ4)を1394〜1408nmから選択し、1394nmとした。図11に示すように、この条件において、回帰係数がK0=77.335、K1=1518.19、K2=600.23、K3=−1357.24、K4=324.20で、重相関係数0.930、標準誤差2.323となる検量線を構築した。
【0067】
(実施例4)
水素量の回帰式の算出に係り、第1波長(λ1)を1440nm、第2波長(λ2)を1750nm、第3波長(λ3)を1584nm、第4波長(λ4)を1986nmとした。図12に示すように、この条件において、回帰係数がK0=1.54、K1=−81.58、K2=144.07、K3=−211.49、K4=174.66で、重相関係数0.922、標準誤差0.420となる検量線を構築した。
【0068】
(実施例5)
高位発熱量の回帰式の算出に係り、第1波長(λ1)を1750nm、第2波長(λ2)を2160nm、第3波長(λ3)を1390nm、第4波長(λ4)を1510nmとした。図13に示すように、この条件において、回帰係数がK0=21380.59、K1=452677.54、K2=−1365790.6、K3=155574.9、K4=−214934.3で、重相関係数は0.963、標準誤差1195.789となる検量線を構築した。
【0069】
(実施例6)
低位発熱量の回帰式の算出に係り、第1波長(λ1)を1668nm、第2波長(λ2)を1726nm、第3波長(λ3)を2002nm、第4波長(λ4)を2062nmとした。図14に示すように、この条件において、回帰係数がK0=−2139.80、K1=171764.30、K2=−141741.66、K3=306325.42、K4=−303717.60で、重相関係数0.967、標準誤差369.070となる検量線を構築した。
【0070】
(実施例7)
水分量の回帰式の算出に係り、第1波長(λ1)を2014nm、第2波長(λ2)を2064nm、第3波長(λ3)を1730nm、第4波長(λ4)を1396nmとした。図15に示すように、この条件において、回帰係数がK0=79.93、K1=−2660.45、K2=2853.30、K3=693.51、K4=104.14で、重相関係数0.928、標準誤差2.354となる検量線を構築した。
【0071】
(実施例8)
水素量の回帰式の算出に係り、第1波長(λ1)を1748nm、第2波長(λ2)を2162nm、第3波長(λ3)を1388nm、第4波長(λ4)を1988nmとした。図16に示すように、この条件において、回帰係数がK0=4.54、K1=56.78、K2=−279.66、K3=46.99、K4=170.61で、重相関係数0.967、標準誤差0.278となる検量線を構築した。
【0072】
(実験例1)
次に実験例を示す。上記の高位発熱量、低位発熱量、水分量、水素量について求めた実施例5乃至8に係る回帰式(検量線)にて、成分量の未知の脱水汚泥を測定し、その脱水汚泥について化学分析にて成分量を特定し比較した。結果を図17に示す。この結果から、高位発熱量では相関係数0.930、標準誤差1172.8、低位発熱量では相関係数0.920、標準誤差460.6、水分量では相関係数0.930、標準誤差3.0、水素量では相関係数0.976、標準誤差0.2という結果となり、高位発熱量、低位発熱量、水分量、水素量の何れにおいても相関係数も高く、標準誤差(SEP)も低い値を示しており、優位であることが証明された。
【0073】
(実験例2)
低位発熱量(Hu)は、例えば、下水処理法に基づき、高位発熱量(HuB)、水分量、水素量を用いた下記の数式により計算し利用されている。
数式・・・Hu=HuB×(100−W)/100−600(9h(%)+W(%))/100
実験例2では、低位発熱量を直接近赤外分光分析で測定したものと、高位発熱量、水分量、水素量を個別に測定した値から下水処理法を用いて計算した結果の化学分析値と比較した。その結果を図18に示す。図18に示すように、相関係数0.906、標準誤差498.0となり、直接測定のほうがより正確に測定が可能であると判断できる。
【0074】
(実験例3)
高位発熱量について、温度補正する前(実測値)と温度補正した後の値の違いを調べた。一般にフィールドで実施する場合は、環境温度が一定でない場合が多く、物質の分子の運動エネルギーも変化する。その場合は近赤外線分光分析で得られた測定値について、その測定の変化量は比較的少ないが、例えば、上記の補正式C0=a+b(T−T0)+Ctを用いて温度補正を施すことで、基準温度での測定値が得られる。
例えば、高位発熱量について、最小二乗法により一次方程式を解き、a、bそれぞれの係数を求めるとa=14.609、b=−307.31となり、温度変化による高位発熱量の変化量が求まる。この温度補正式を用いて高位発熱量について温度補正を施す。結果を図19に示す。また、脱水汚泥温度と発熱量測定値との関係を図20に、脱水汚泥温度変化と脱水汚泥高位発熱量測定値の変化量との関係を図21に示す。
【0075】
尚、上記実施の形態において、分析要素量の測定においては汚泥からの反射光を測定しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、汚泥の性質によって、透過光を受光して測定してもよく適宜変更して差し支えない。更にまた、上記実施の形態に係る回帰式において、高位発熱量、低位発熱量はJ/g、水分量は重量%−WB、水素量他は重量%−DBとしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、要するに、提示した数式の関係を満たす式であれば、分析要素量Cの単位をどのように設定しても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 汚泥保持部
2 照光部
3 受光部
4 管体
5 ウインドウ
6 押さえブロック
7,8 光ファイバ
10 照受光プローブ
11 ファイバ結合部
12 取付部
13 カバー
15 光源ボックス
16 制御ケーブル
17 分光部
18 制御ケーブル
19 温度センサ
20 制御部
21 表示部
22 撮像部
23 通信部
24 端末
30 ベルトコンベア
31 基台
32 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、近赤外領域の波長に対する吸光度を測定し、この測定値に基づいて汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち少なくとも何れか1つの分析要素量を測定する汚泥の分析要素量測定方法であって、
予め、測定に係る分析要素量既知のサンプル汚泥に近赤外線を照射し、該サンプル汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により当該測定に係る分析要素量に直接起因する帰属波長に係る回帰式を算出しておき、
測定対象の汚泥に近赤外線を照射し、測定対象の汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、これらの吸光度と上記回帰式とから当該測定対象の汚泥の測定に係る分析要素量を算出することを特徴とする汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項2】
上記回帰式を、互いに相関係数の高い第1〜n波長の吸光度を変数とする下記の一般式で構成し、
【数1】

(一般式において、Cは分析要素量(高位発熱量、低位発熱量はJ/g、水分量は重量%−WB、水素量他は重量%−DB)、λは波長、A(λ1)は第1波長(λ1)の吸光度、A(λ2)は第2波長(λ2)の吸光度、・・・A(λn)は第n波長(λn)の吸光度、K0,K1,K2・・・Knは、充分に多い母集団において測定された吸光度及び実測分析要素量を用いて最小二乗法で決定された係数である。また、K0は脱水汚泥の温度による測定値ドリフトも含まれる)
上記一般式において、第1波長(λ1)乃至第n波長(λn)を選択するに当たり、先ず、多種類の汚泥の被検体の化学分析による既知の分析要素量値と当該各被検体の吸光度との重回帰分析によって求められた上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し相関係数が0.7以上になる第1波長(λ1)の近赤外線の波長域を選択し、次に、当該第1波長(λ1)の近赤外線の波長域と、1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって、上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第2波長(λ2)の近赤外線の波長域を選択し、次に、上記第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域と、1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって、上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第3波長(λ3)の近赤外線の波長域を選択し、このように、上記第1波長(λ1)乃至第(n−1)波長(λn−1)の近赤外線の波長域と、1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって、上記多種類の汚泥の分析要素量に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第n波長(λn)の近赤外線の波長域を選択することを特徴とする請求項1記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項3】
測定に係る分析要素量が高位発熱量である場合、
第1波長(λ1)を1200〜1222nm、1376〜1390nm、1418〜1498nm、1612〜1696nm、1744〜1752nm、1762〜1776nm、1806〜1810nm、1826〜1868nm、1894〜1910nmの波長範囲から選択し、
第2波長(λ2)を2158〜2164nmの波長範囲から選択し、
第3波長(λ3)を1370〜1392nm、1416〜1490nm、1538nm、1578〜1580nm、1616〜1618nm、1624nm、1658〜1668nm、1746nm、1766〜1780nm、1824〜1914nmの波長範囲から選択し、
第4波長(λ4)を1324〜1326nm、1502〜1516nmの波長範囲から選択し、
且つ、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにしたことを特徴とする請求項2記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項4】
第1波長(λ1)を1750nm±2nmの波長範囲から選択し、
第2波長(λ2)を2160nm±2nmの波長範囲から選択し、
第3波長(λ3)を1390nm±2nmの波長範囲から選択し、
第4波長(λ4)を1510nm±2nmの波長範囲から選択したことを特徴とする請求項3記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項5】
測定に係る分析要素量が低位発熱量である場合、
第1波長(λ1)を1202〜1226nm、1234〜1248nm、1650〜1678nmの波長範囲から選択し、
第2波長(λ2)を1602〜1636nm、1718〜1736nmの波長範囲から選択し、
第3波長(λ3)を1808〜1834nm、1994〜2008nmの波長範囲から選択し、
第4波長(λ4)を1330〜1386nm、2058〜2066nmの波長範囲から選択し、
且つ、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにしたことを特徴とする請求項2記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項6】
第1波長(λ1)を1668nm±2nmの波長範囲から選択し、
第2波長(λ2)を1726nm±2nmの波長範囲から選択し、
第3波長(λ3)を2002nm±2nmの波長範囲から選択し、
第4波長(λ4)を2062nm±2nmの波長範囲から選択したことを特徴とする請求項5記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項7】
測定に係る分析要素量が水分量である場合、
第1波長(λ1)を1718〜1732nm、2002〜2044nmの波長範囲から選択し、
第2波長(λ2)を1558〜1600nm、1624〜1696nm、2060〜2068nmの波長範囲から選択し、
第3波長(λ3)を1720〜1736nm、2120〜2160nmの波長範囲から選択し、
第4波長(λ4)を1290〜1302nm、1394〜1408nmの波長範囲から選択し、
且つ、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにしたことを特徴とする請求項2記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項8】
第1波長(λ1)を2014nm±2nmの波長範囲から選択し、
第2波長(λ2)を2064nm±2nmの波長範囲から選択し、
第3波長(λ3)を1730nm±2nmの波長範囲から選択し、
第4波長(λ4)を1396nm±2nmの波長範囲から選択したことを特徴とする請求項7記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項9】
測定に係る分析要素量が水素量である場合、
第1波長(λ1)を1140〜1144nm、1190〜1226nm、1236〜1258nm、1302〜1336nm、1366〜1390nm、1414〜1502nm、1610〜1696nm、1744〜1752nm、1760〜1778nm、1806〜1868nm、1892〜1910nmの波長範囲から選択し、
第2波長(λ2)を1746〜1752nm、2160〜2164nmの波長範囲から選択し、
第3波長(λ3)を1306〜1334nm、1344〜1390nm、1404〜1496nm、1552〜1630nm、1654〜1668nm、1746nm、1764〜1784nm、1822〜1868nm、1886〜1914nmの波長範囲から選択し、
第4波長(λ4)を1984〜1994nmの波長範囲から選択し、
且つ、第1波長(λ1)乃至第4波長(λ4)の組み合わせの相関係数が0.9以上になるようにしたことを特徴とする請求項2記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項10】
第1波長(λ1)を1748nm±2nmの波長範囲から選択し、
第2波長(λ2)を2162nm±2nmの波長範囲から選択し、
第3波長(λ3)を1388nm±2nmの波長範囲から選択し、
第4波長(λ4)を1988nm±2nmの波長範囲から選択したことを特徴とする請求項9記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項11】
測定対象の汚泥の測定時の温度をT、予め設定した基準温度をT0としたとき、基準温度T0の時の分析要素量C0を、温度Tにおける分析要素量Ctから温度補正して算出することを特徴とする請求項1乃至10何れかに記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項12】
温度補正算出式: C0=a+b(T−T0)+Ct
(Tは測定対象の汚泥の測定時の温度、T0は予め設定した基準温度、Ct,C0は該当する温度の分析要素量(高位発熱量、低位発熱量はJ/g、水分量は重量%−WB、水素量他は重量%−DB)、a,bは温度と測定値との最小二乗法の解)
により算出することを特徴とする請求項11記載の汚泥の分析要素量測定方法。
【請求項13】
測定対象の汚泥からの反射光あるいは透過光を受光し、近赤外領域の波長に対する吸光度を測定し、この測定値に基づいて汚泥の高位発熱量,低位発熱量,水分量,灰分量,イオウ分量,水素量,炭素分量の分析要素量のうち少なくとも何れか1つの分析要素量を測定する汚泥の分析要素量測定装置であって、
測定対象の汚泥を保持する汚泥保持部と、該汚泥保持部に保持された測定対象の汚泥に近赤外領域の光を照射する照光部と、この汚泥からの反射光あるいは透過光を受光する受光部と、該受光部が受光した光の吸光度に基づいて汚泥の分析要素量を算出する制御部とを備え、
上記制御部を、予め、測定に係る分析要素量既知のサンプル汚泥に近赤外線を照射されるとともに該サンプル汚泥から反射あるいは透過された光の近赤外線領域の波長に対する吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により算出され当該測定に係る分析要素量に直接起因する帰属波長に係る回帰式を記憶する回帰式記憶機能と、上記受光部が受光した光の吸光度と上記回帰式とから当該測定対象の汚泥の測定に係る分析要素量を演算する分析要素量演算機能とを備えて構成したことを特徴とする分析要素量測定装置。
【請求項14】
上記制御部における回帰式記憶機能が記憶する回帰式と選択される近赤外線の波長の組み合わせは、上記請求項2乃至12何れかに記載の回帰式と波長との組み合わせであることを特徴とする請求項13記載の汚泥の分析要素量測定装置。
【請求項15】
上記制御部は、測定対象の汚泥の測定時の温度をT、予め設定した基準温度をT0としたとき、基準温度T0の時の分析要素量C0を、温度Tにおける分析要素量Ctから温度補正して算出する機能を備えたことを特徴とする請求項13または14記載の汚泥の分析要素量測定装置。
【請求項16】
上記受光部を複数設け、上記制御部は、上記複数の受光部からの光の吸光度に基づいて汚泥の分析要素量を算出することを特徴とする請求項13乃至15何れかに記載の汚泥の分析要素量測定装置。
【請求項17】
上記汚泥保持部を、汚泥を上記照光部に対して連続的に移動させて保持する構成にしたことを特徴とする請求項13乃至16何れかに記載の汚泥の分析要素量測定装置。
【請求項18】
上記汚泥保持部を、汚泥が搬送される管体で構成し、該管体に光を透過可能なウインドウを設け、該ウインドウに上記照光部及び受光部を付設したことを特徴とする請求項17記載の汚泥の分析要素量測定装置。
【請求項19】
上記ウインドウを、石英,サファイアガラス,ダイヤモンドから選択される材料で形成したことを特徴とする請求項18記載の汚泥の分析要素量測定装置。
【請求項20】
上記汚泥保持部を、汚泥が搬送されるベルトコンベアで構成したことを特徴とする請求項17記載の汚泥の分析要素量測定装置。
【請求項21】
上記制御部は、汚泥の搬送速度に基づいて汚泥の搬送量を算出する機能を備えたことを特徴とする請求項13乃至20何れかに記載の汚泥の分析要素量測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2012−184950(P2012−184950A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46582(P2011−46582)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(305061092)株式会社 カロリアジャパン (6)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】