説明

汚泥減容処理方法及び装置

【課題】生物処理槽内で、余剰汚泥を発生させない、あるいは最大限減少させる。
【解決手段】この方法及び装置では、生物処理槽1内に、有機性廃水と隔離された処理区画A内で液体の高速旋回流5を発生させてその旋回中心に高速旋回する空洞部6を形成し、さらに処理区画Aに空洞部6を通して酸素を含む気体7を通過させるとともに、この空洞部6を流体力学的な制御によって切断、粉砕することにより、マイクロバブル8を発生させ、汚泥3を空洞部6に通して高速旋回流5のせん断・破砕力により破壊するとともに、処理区画Aから発生するマイクロバブル8により廃水2中に酸素を溶存させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥減容処理方法及び装置に関し、特に、産業廃水や公共下水などの有機性廃棄物、有機性廃水の好気処理、嫌気処理に伴って発生する汚泥の減容に威力を発揮する汚泥減容処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業廃水や公共下水などの有機性廃水の処理には、活性汚泥法などの生物学的処理法が採用されて、水質の浄化が行われている。この種の処理方法では、活性汚泥処理槽内の有機性廃水に空気ポンプで空気を吹き込む曝気処理を行い、有機性廃水中の有機物質を微生物により分解して、沈殿槽にて処理水と汚泥に分離する。この活性汚泥処理により活性汚泥処理槽内で発生する汚泥の一部は、余剰汚泥となって、処理システムの系外に抜き出し、その大部分を産業廃棄物として処分する。この余剰汚泥は水分含有率が高く、取り扱いが困難で、悪臭の原因となるため、その処分に際しては、余剰汚泥の脱水処理により水分含有率を減じ、そのまま、あるいは焼却処理して、埋め立て処分することになる。このため、余剰汚泥の脱水処理・焼却処理・埋め立て処分の手間と費用が膨大なものとなり、また、他面で、この余剰汚泥を受け入れる処分場は無くなる一方で、余剰汚泥の処分先を確保することが極めて困難な状況になっている。
【0003】
近時、このような状況から、余剰汚泥を出さない、あるいはできる限り少なくする処理方法が求められ、活性汚泥処理槽内で発生する汚泥を活性汚泥処理槽内で減容化する方法が検討されている。現時点で実用化されている技術を整理してみると、この種の汚泥の減容処理では、一般的に2段階の工程を踏まえて行われている。まず、第1工程において、活性汚泥の主体となる微生物の死骸などを微生物が食べやすい内容物(基質)にするために、細胞膜を損傷させて可溶化処理を行う。続いて第2工程において、その処理後の汚泥を再び生物反応槽(曝気槽)に戻して生物学的処理を行い、基質をCО2とH2Оに分解して、その結果として余剰汚泥を減容化する。この場合、第1工程の汚泥の可溶化処理の方法は、「物理化学的手法」と「生物学的手法」に大きく分けられる。「物理化学的手法」は、余剰汚泥の一部を酸化剤やオゾン、また機械的なすりつぶしなどで処理する手法であり、「生物学的手法」は、余剰汚泥の一部を好気性、好熱性細菌が生成する酵素で処理する手法である。この種の技術は特許文献1などに開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−51883公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種の汚泥の減容処理方法では、第1工程が「物理化学的手法」又は「生物学的手法」のいずれであっても、この工程で汚泥を構成する微生物を基質化(微生物の細胞膜を損傷させて可溶化)するため、一時的に水の負荷が上がり、その結果、生物反応層で汚泥の減容効率が低下したり、水質を悪化させたりするなど、水処理に支障をきたす場合があり、これが問題になっている。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するもので、この種の汚泥減容処理方法及び装置において、生物処理槽内で、汚泥を発生させない、あるいは最大限減少させること、併せて水の負荷が上昇した場合でも、水処理に支障をきたすことなく、汚泥を安定して減容化すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するために、本発明の汚泥減容処理方法は、有機性廃水を生物処理槽内で生物処理する工程で発生する汚泥を減容化する汚泥減容処理方法において、前記生物処理槽内で前記廃水と隔離された筒形の処理区画内に液状体の高速旋回流を生じせしめてその旋回中心に空洞部を形成し、前記汚泥を前記処理区画に前記空洞部を通して通過させ、前記汚泥を前記高速旋回流のせん断・破砕力により破壊することを要旨とする。また、この方法においては、前記汚泥とともに気体を前記処理区画に前記空洞部を通して通過させ、この空洞部を流体力学的な制御によって切断、粉砕することにより、前記処理区画からマイクロバブルを発生させ、このマイクロバブルにより前記廃水中に酸素を溶存させることが好ましい。また、この方法においては、前記液状体に前記廃水又は前記汚泥を使用することができる。また、この方法においては、前記汚泥を前記空洞部に通す前に、前記汚泥を構成する微生物を不完全に破壊する前処理を行う場合がある。
【0008】
また、上記の問題を解決するために、本発明の汚泥減容処理装置は、有機性廃水を生物処理槽内で生物処理する工程で発生する汚泥を減容化する汚泥減容処理装置において、前記生物処理槽内に設置され、前記廃水と隔離された筒形の処理区画と、前記処理区画内に液状体の高速旋回流を生じせしめ、その旋回中心に空洞部を形成する手段と、前記汚泥を前記処理区画に前記空洞部を通して通過させる手段とを備え、前記汚泥を前記高速旋回流のせん断・破砕力により破壊することを要旨とする。また、この装置は、前記汚泥とともに気体を前記処理区画に前記空洞部を通して通過させる手段と、前記空洞部を流体力学的な制御によって切断、粉砕する手段とを備え、前記処理区画からマイクロバブルを発生させ、このマイクロバブルにより前記廃水中に酸素を溶存させることが好ましい。また、この装置は、前記汚泥を構成する微生物を不完全に破壊する手段を備えてもよい。
【0009】
なお、この発明において、生物処理槽とは、曝気槽、汚泥貯留槽など生物処理に関わる処理槽をいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明の汚泥減容処理方法及び装置は、上記の方法及び装置構成により、生物処理槽内で廃水と隔離された筒形の処理区画内に液状体の高速旋回流を生じせしめてその旋回中心に空洞部を形成し、汚泥をこの処理区画に当該空洞部を通して通過させ、汚泥を高速旋回流のせん断・破砕力により破壊するので、生物処理槽内で汚泥を効果的に分散化し、基質化することができ、生物処理槽内の微生物を活性化して、生物処理槽内で、汚泥を発生させない、あるいは最大限減少させることができる、という効果を奏する。また、この方法及び装置では、汚泥とともに気体を処理区画に当該空洞部を通して通過させ、この空洞部を流体力学的な制御によって切断、粉砕することにより、処理区画からマイクロバブルを発生させ、このマイクロバブルにより廃水中に酸素を溶存させることで、生物処理槽内で微生物の基質化により水の負荷が上昇した場合でも、水処理に支障をきたすことなく、汚泥を安定して減容化することができる、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施の形態について、図1を用いて説明する。この実施の形態では、産業廃水や公共下水などの有機性廃水(以下、単に廃水という。)を生物処理槽内で生物処理する工程で発生する汚泥を、当該生物処理槽内で減容化する汚泥の減容処理方法及び装置(以下、単に方法及び装置という。)を例示している。
【0012】
この方法は、生物処理槽1内で廃水2と隔離された筒形の処理区画A内に液状体の高速旋回流5を生じせしめて、その旋回中心に高速旋回する空洞部6を形成し、廃水2中の汚泥3を処理区画Aに空洞部6を通して通過させ、汚泥3を高速旋回流5のせん断・破砕力により破壊する。また併せて、汚泥3とともに酸素を含む気体7を処理区画Aに空洞部6を通して通過させるとともに、この空洞部6を流体力学的な制御によって切断、粉砕することにより、処理区画Aからマイクロバブル8を発生させ、このマイクロバブル8により廃水2中に酸素を溶存させる。また、この場合、汚泥3を空洞部6に通す前に、汚泥3を構成する微生物を不完全に破壊する前処理を行うこともある。
【0013】
この処理を行うため、装置は、生物処理槽1内に設置され、廃水2と隔離された筒形の処理区画Aと、この処理区画A内に液状体の高速旋回流5を生じせしめ、その旋回中心に高速旋回する空洞部6を形成する手段Bと、汚泥3を処理区画Aに空洞部6を通して通過させる手段Cと、併せて汚泥3とともに気体7を処理区画Aに空洞部6を通して通過させる手段Dと、空洞部6を流体力学的な制御によって切断、粉砕する手段Eとを備える。また、この装置は、汚泥3を構成する微生物を不完全に破壊する手段Fを備えてもよい。
【0014】
この装置の場合、筒形の処理区画Aと各手段B〜Eは、公知技術のマイクロバブル発生器81と、複数の管821、822、841等及び図示されないポンプを利用して構成される。この種のマイクロバブル発生器には、高速旋回流方式、キャビテーション方式、さらにベンチェリー管方式などの方式があり、特に前2者の方式は、旋回などの「力」と停止、その後の力(圧力)の開放で「慣性力」が働き、マイクロバブルを発生するという点で共通する。ここでは特に、高速旋回流方式のマイクロバブル発生器が採用される。このマイクロバブル発生器80の場合、基本構成として、円筒形の密閉空間を画成された容器本体81と、容器本体81の一端中心に形成され、密閉空間に汚泥3を導入し、気体7を吸引する汚泥及び気体の入口82と、容器本体81の他端中心から外周方向に向けて形成され、密閉空間から外部へ汚泥及び気体を放出する汚泥及び気体の出口83と、容器本体81の外周面に形成され、密閉空間内に液状体を導入する液状体導入口84とを備える。なお、このマイクロバブル発生器80は生物処理槽1内に容器本体81の汚泥及び気体の入口82を上に、汚泥及び気体の出口83を下にして設置される。この容器本体81(汚泥及び気体の入口82、汚泥及び気体の出口83、液状体導入口84を含む。)により(円)筒形の処理区画Aが構成される。汚泥及び気体の入口82に、汚泥導入管822と気体吸入管821及び空気の流量を制御する調節バルブ(図示省略)がそれぞれ接続される。この場合、汚泥導入管822の汚泥導入元の端部は生物処理槽1外部に設置される図示されない汚泥導入用のポンプの吐出し口に接続される。この汚泥導入用のポンプは水流を発生させるポンプで、この場合、通常の低圧の水流ポンプでもよく、高圧の水流ポンプでもかまわない。このポンプは生物処理槽1の外部、例えば生物処理槽1の上面上部に設置される。そして、このポンプの吐出し口に汚泥導入管822が連結されて、この汚泥導入管822がマイクロバブル発生器80の汚泥及び気体の入口82に又は後述する気体吸入管821に接続され、また、このポンプの吸込み口に汚泥供給管823が接続されてこの汚泥供給管823が生物処理槽1内に配置される。この汚泥導入管822、図示されない汚泥導入用のポンプ、及び汚泥供給管823により上記手段Cが構成される。気体吸入管821の気体吸入元の端部は生物処理槽1外部に空気を吸入可能に配置される。この場合、空気を自吸式で吸入するようにしたが、必要に応じてポンプなどを用いて空気を圧送するようにしてもよい。なお、気体として酸素やオゾンを送り込んでもよい。この気体吸入管821(及び図示されないポンプ)により上記手段Dが構成される。また、液状体導入口84に液状体送給管841が接続される。この場合、液状体送給管841の液状体送給元の端部は生物処理槽1外部に設置される図示されない液状体送給用のポンプの吐出し口に接続される。この液状体送給用のポンプは水流を発生させるポンプで、この場合、通常の低圧の水流ポンプでもよく、高圧の水流ポンプでもかまわない。このポンプは生物処理槽1の外部、例えば、生物処理槽1の上面上部に設置され、このポンプの吐出し口には既述のとおり、液状体送給管841が連結されてマイクロバブル発生器80の液状体導入口84に接続される。一方、このポンプの吸込み口は図示されない液状体供給管を介して液状体供給源に接続される。この液状体供給源は、生物処理槽1の外部にポンプで液状体と気体を供給する設備として設置されてもよく、また、生物処理槽1内の廃水2又はこの生物処理系の返送汚泥や余剰汚泥を利用して、生物処理槽1又はこの生物処理系からポンプで廃水2又は汚泥を供給するようにしてもよい。この液状体送給管841、図示されない液状体送給用のポンプ及び液状体供給管により上記手段Bが構成される。
【0015】
この装置は、次の2段階の流体力学的な制御によって、汚泥に作用し、汚泥を減容する。
(第1段階)
まず、液状体送給用のポンプにより、液状体を、液状体送給管841を介してマイクロバブル発生器80の容器本体81内に送り込むことにより、容器本体81内部で液状体の高速旋回流5を発生させ、その遠向心分離によって、容器本体81の中心部に高速旋回する空洞部6を形成する。この場合、この空洞部6をさらに圧力で竜巻状に細くして、より高速に旋回する強力な旋回流(回転せん断流)を発生させる。続いて、この空洞部6に、汚泥導入管822により導入された汚泥と、気体吸入管821により吸引した空気を、汚泥及び気体の入口82を通じて注入し、容器本体81の中心の空洞部6を通過させる。
(第2段階)
そして、この高速旋回する空洞部6を流体力学的な制御によって切断、粉砕する。なお、この空洞部6の切断、粉砕は、この空洞部6の回転制御作用で、空洞部6の出口83付近における内外の気液二相流体の旋回速度差を発生させることにより行う。この回転制御作用により上記手段Eが構成される。この空洞部6の切断、粉砕により、汚泥及び気体の出口83を通じて、廃水2中に大量のマイクロバブル8を発生する。
【0016】
さらに、この装置の場合、汚泥の減容能力をさらに高めるために、前処理設備85を備える。前処理設備85は薬剤処理設備、加熱処理設備、機械的破壊処理設備、又はこれらの設備のうち2以上の設備からなる複合設備などで、汚泥3をマイクロバブル発生源に通す前に、薬剤その他の手段により、汚泥3中の微生物を不完全に破壊する前処理を行う。この前処理設備85により上記手段Fが構成され、この前処理で、事前に、微生物の細胞膜を破壊しやすくしておくこともある。
【0017】
このようにして生物処理槽1に、マイクロバブル発生器80、及びその付帯設備(汚泥導入管822、汚泥供給管823及び汚泥導入用のポンプ、気体吸入管821、液状体送給管841、液状体供給管及び液状体送給用のポンプなど)を備え、この生物処理槽内1で廃水2を生物処理する工程で発生する汚泥3を減容化する。この処理の流れは次のとおりである。
【0018】
生物処理槽1では、既述のとおり、廃水2が通常の生物処理、すなわち有機物が微生物によって生物処理され、この処理の工程で生物処理槽1内に汚泥3が発生し、蓄積されていく。この生物処理と並行して、生物処理槽1内でマイクロバブル発生器80及び各部のポンプを作動させる。すなわち、生物処理槽1上で液状体送給用のポンプを起動し、液状体送給管841を通じてマイクロバブル発生器80に送液する。容器本体81内部で液状体の高速旋回流5が発生し、その遠向心分離によって、容器本体81の中心部に高速旋回する気体の空洞部6が形成される。続いて、この空洞部6を圧力で竜巻状に細くし、より高速に旋回する強力な旋回流(回転せん断流)を発生させる。このマイクロバブル発生器80への送液により、生物処理槽1外部から空気が気体吸入管821を通じ、また、調節バルブで流量を制御されながら吸入されて、マイクロバブル発生器80の汚泥及び気体の入口82から容器本体81内部に引き込まれ、空洞部6を通過する。そして、この高速旋回する空洞部6の回転制御作用により、空洞部6の出口83付近における内外の気液二相流体の旋回速度差を発生させ、この空洞部6を切断、粉砕することにより、水中に大量のマイクロバブル8を発生する。このマイクロバブル8により生物処理槽1内は曝気処理される。
【0019】
このマイクロバブル発生器80の作動に伴い、汚泥導入用のポンプを起動する。このポンプにより生物処理槽1内から廃水2を吸引し、汚泥3をマイクロバブル発生器80へ圧送して、汚泥及び気体の入口82を通じて空洞部6に注入し、この空洞部6を通過させる。この高速旋回する空洞部6により、汚泥3をせん断し、破砕して、汚泥3を分散化し、汚泥3を構成する微生物の細胞膜を破壊(基質化)する。そして、この空洞部6を通過した汚泥3を含む気液によりマイクロバブル8を発生し、この空洞部6の中で分散化、基質化した汚泥3をマイクロバブル8とともに廃水2中に放出する。この廃水2中に発生したマイクロバブル8はさらに、生物処理槽1内の廃水2および汚泥3中の溶存酸素濃度を上昇させて、汚泥3を構成する微生物を活性化する。これにより、生物処理槽1内で水の負荷が上がった場合でも、生物処理が安定し、汚泥3の減容化を促進して、生物処理槽1内で汚泥3を出さなくする、あるいは汚泥量を最大限減少させる。さらに、この装置の場合、微生物を不完全に破壊する前処理設備85として、薬剤処理設備、又は加熱処理設備、又は機械的破壊処理設備、又はこれらの設備のうち2以上の設備からなる複合設備を備え、汚泥3をマイクロバブル発生源に通す前に、予め汚泥3中の微生物を不完全に破壊する前処理を行うことで、このマイクロバブルを利用した汚泥の減容処理の効果はさらに増大する。
【0020】
以上説明したように、この方法及び装置によれば、マイクロバブル発生器80、及びその付帯設備(汚泥導入管822、汚泥供給管823及び汚泥導入用のポンプ、気体吸入管821、液状体送給管841、液状体供給管及び液状体送給用のポンプなど)を利用して、生物処理槽1内で廃水2と隔離された処理区画A内に液状体の高速旋回流5を発生させて、その中心に高速旋回する空洞部6を形成し、汚泥3をこの空洞部6を通して、そのせん断力及び破砕力により破壊するので、生物処理槽1内で汚泥3を分散化し、基質化することができ、生物処理槽1内の微生物を活性化して、生物処理槽1内で汚泥3を出さなくする、あるいは最大限少なくすることができる。併せて、処理区画Aの空洞部6に気体を通すとともに、この空洞部6を流体力学的な制御によって切断、粉砕することにより、廃水2中にマイクロバブル8を発生させ、このマイクロバブル8により廃水2中及び汚泥3中を高い溶存酸素濃度に維持して、微生物を活性化するので、生物処理槽1内で微生物の基質化により、水の負荷が上昇した場合でも、水処理に支障をきたすことなく、汚泥3を安定して減容化することができる。さらに、この方法及び装置では、薬剤処理設備、加熱処理設備、機械的破壊処理設備、これらの設備のうち2以上の設備からなる複合設備など、前処理設備85を備え、汚泥3をマイクロバブル発生源に通す前に、汚泥3中の微生物を不完全に破壊する前処理を行うことができ、この前処理により、汚泥の減容能力をさらに増大させ、難分解性の汚泥でも出さない、あるいは著しく少なくすることができ、汚泥3の減容率をさらに向上させることができる。従来、汚泥を産業廃棄物として、事業者が高いコストを負担して処分していたが、この汚泥の減容処理方式の採用により、汚泥3の処分量を大幅に減らし、コストを大幅に削減することができ、その実用的効果は極めて大きなものとなる。
【0021】
なお、上記実施の形態では、生物処理槽1内で廃水2と隔離された処理区画A内に液状体の高速旋回流5を発生させてその中心に高速旋回する空洞部6を形成し、併せて空洞部6に気体7を通し、この空洞部6を流体力学的な制御によって切断、粉砕して、処理区画Aからマイクロバブル8を発生させているが、これは既述のとおり、一つの装置で一連の工程として行ってもよく、また、同一の又は異なる生物処理槽内で、各別の装置により、処理区画内に液状体の高速旋回流を発生させる第1の工程と、処理区画に気体を通してマイクロバブルを発生させる第2の工程に分けて行ってもよい。また、汚泥3を液状体の高速旋回流5の空洞部6に通すだけでも、汚泥3を高速旋回流5のせん断・破砕力により破壊して、汚泥3を十分に減容することができるので、マイクロバブル8は必要に応じて選択的に発生させてもよい。さらに、これら一連の又は各別の工程を、生物処理槽内に複数の装置を略水平方向に又は略垂直方向に並べて設置して、複数の装置で行ってもよい。またさらに、これら一連の又は各別の工程を、廃水の生物的処理を行う処理系の生物処理槽以外の経路上、例えば活性汚泥法の処理系における、汚泥沈殿槽の汚泥の引き抜き部分、返送汚泥の返送経路上、余剰汚泥の貯留、搬出までの経路上などで行ってもよい。
【0022】
また、上記実施の形態では、気体7を筒形の処理区画Aに対して軸方向に通して、空洞部6を通過させているが、処理区画Aの外周方向から通して、空洞部6を通過させてもかまわない。汚泥3を空洞部に通す場合も同様である。なお、汚泥3を空洞部3に通す場合、汚泥3は連続的に送り込んでもよく、また、間欠的に送り込んでもよい。
【0023】
さらに、上記実施の形態では、前処理設備85を汚泥導入管822の途中に設けているが、この設備85を汚泥供給管823の途中に介在させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態における汚泥の減容処理方法及び装置の概念図
【符号の説明】
【0025】
1 生物処理槽
2 有機性廃水(廃水)
3 汚泥
A 処理区画
B 処理区画内に液状体の高速旋回流を生じせしめ、その旋回中心に高速旋回する空洞部を形成する手段
C 汚泥を処理区画に空洞部を通して通過させる手段
D 汚泥とともに気体を処理区画に空洞部を通して通過させる手段
E 空洞部を流体力学的な制御によって切断、粉砕する手段
F 汚泥を空洞部に通す前に、汚泥を構成する微生物を不完全に破壊する手段
5 高速旋回流
6 空洞部
7 気体
8 マイクロバブル
80 マイクロバブル発生器
81 容器本体
82 汚泥及び気体の入口
821 気体吸入管
822 汚泥導入管
823 汚泥供給管
83 汚泥及び気体の出口
84 液状体導入口
841 液状体送給管
85 前処理設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃水を生物処理槽内で生物処理する工程で発生する汚泥を減容化する汚泥減容処理方法において、
前記生物処理槽内で前記廃水と隔離された筒形の処理区画内に液状体の高速旋回流を生じせしめてその旋回中心に空洞部を形成し、
前記汚泥を前記処理区画に前記空洞部を通して通過させ、前記汚泥を前記高速旋回流のせん断・破砕力により破壊することを特徴とする汚泥減容処理方法。
【請求項2】
前記汚泥とともに気体を前記処理区画に前記空洞部を通して通過させ、この空洞部を流体力学的な制御によって切断、粉砕することにより、前記処理区画からマイクロバブルを発生させ、このマイクロバブルにより前記廃水中に酸素を溶存させる請求項1に記載の汚泥減容処理方法。
【請求項3】
前記液状体に前記廃水又は前記汚泥を使用する請求項1又は2に記載の汚泥減容処理方法。
【請求項4】
前記汚泥を前記空洞部に通す前に、前記汚泥を構成する微生物を不完全に破壊する前処理を行う請求項1乃至3のいずれかに記載の汚泥減容処理方法。
【請求項5】
有機性廃水を生物処理槽内で生物処理する工程で発生する汚泥を減容化する汚泥減容処理装置において、
前記生物処理槽内に設置され、前記廃水と隔離された筒形の処理区画と、
前記処理区画内に液状体の高速旋回流を生じせしめ、その旋回中心に空洞部を形成する手段と、
前記汚泥を前記処理区画に前記空洞部を通して通過させる手段とを備え、
前記汚泥を前記高速旋回流のせん断・破砕力により破壊することを特徴とする汚泥減容処理装置。
【請求項6】
前記汚泥とともに気体を前記処理区画に前記空洞部を通して通過させる手段と、前記空洞部を流体力学的な制御によって切断、粉砕する手段とを備え、前記処理区画からマイクロバブルを発生させ、このマイクロバブルにより前記廃水中に酸素を溶存させる請求項5に記載の汚泥減容処理装置。
【請求項7】
前記汚泥を構成する微生物を不完全に破壊する手段を備える請求項5又は6に記載の汚泥減容処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−39638(P2009−39638A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206494(P2007−206494)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】