説明

汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理方法及び装置

【課題】熱分解ガス燃焼炉へ導入される燃焼空気及び乾燥機排ガス量を適正に制御し、NOx量の低減が可能である汚泥炭化処理装置における熱分解ガス処理方法及び装置を導入する。
【解決手段】乾燥機で乾燥した汚泥を炭化処理することによって生成される熱分解ガスを熱分解ガス燃焼炉2に導入し、該熱分解ガス燃焼炉で、前記乾燥機で発生する乾燥機排ガスの一部を導入しながら1次空気39を導入して還元雰囲気で1次燃焼処理を行い、ついで前記還元雰囲気の燃焼ガスに2次空気76を導入して酸化雰囲気で2次燃焼処理を行う汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理方法において、炭化炉で生成される熱分解ガス発生量を検知し、該検知量に応じて前記1次空気導入量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理方法及び装置に関し、特に乾燥機で乾燥した汚泥を炭化処理することによって生成される熱分解ガスを熱分解ガス燃焼炉に導入し、該熱分解ガス燃焼炉で、前記乾燥機で発生する乾燥機排ガスの一部を導入しながら1次空気を導入して還元雰囲気で1次燃焼処理を行い、ついで前記還元雰囲気の燃焼ガスに2次空気を導入して酸化雰囲気で2次燃焼処理を行い、さらに前記乾燥機排ガスの残りを導入し、処理を行なう汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場等で発生する下水汚泥などの汚泥を炭化する場合、一般的には原料を乾燥処理した後、炭化炉で炭化処理を行う。前記炭化炉で発生する熱分解ガスは、熱分解ガス燃焼炉で燃焼されて無害化され、その一部は前記乾燥機及び炭化炉の熱源として用いられる。
このような汚泥を炭化し、その際に発生する熱分解ガスを燃焼させる熱分解ガス燃焼炉においては、還元多段燃焼及び前記乾燥機から発生するNHを含む乾燥機排ガスによる無触媒脱硝により熱分解ガス燃焼炉出口でのNO濃度を所定の濃度以下とすることが行われている。
【0003】
上記のような熱分解ガス燃焼炉での熱分解ガスの燃焼時における炉出口でのNO濃度を低減させた技術は例えば特許文献1に開示されている。
図6は従来技術における下水汚泥の炭化処理装置の系統図である。
図6に示す従来技術に係る下水汚泥の炭化処理装置は、主として、汚泥を脱水する脱水機110、脱水した汚泥を乾燥する乾燥機120、乾燥した汚泥を炭化処理する炭化炉101、及び該炭化炉101で生成した熱分解ガスを燃焼する熱分解ガス燃焼炉102から構成されている。
【0004】
図6に示した炭化処理装置を用いて汚泥を炭化処理する方法及び炭化炉101で生成する熱分解ガスの処理方法について説明する。
まず脱水機110に下水汚泥などの汚泥を導入し、汚泥の水分が約70〜80%程度になるまで脱水する。次いで、脱水した汚泥を乾燥機120に送り、汚泥の水分が約20〜30%になるまで乾燥する。該乾燥機120での乾燥は、前記熱分解ガス燃焼炉102からの燃焼排ガスライン141から分岐されたライン105を通して導入される後述する燃焼排ガスを、汚泥に直接接触させることにより行う。
前記乾燥機120で発生した乾燥機排ガスはライン111を通じて循環ガス予熱器107に送られ、前記熱分解ガス燃焼炉102からの燃焼排ガスライン141から分岐されたライン109を通じて導入される後述する燃焼排ガスと熱交換されて加温され、熱分解ガス燃焼炉102へ導入される。
【0005】
一方、前記乾燥機120で乾燥させた汚泥は、ライン121を通して炭化炉101に導入される。炭化炉101では、汚泥を酸素が欠乏した雰囲気下で約300〜600℃に加熱して炭化処理を行い、熱分解ガスと固体燃料である炭化物106とを生成する。該炭化物106はライン133を通して排出される。
【0006】
前記炭化炉101で汚泥の炭化処理を行なった後の炭化炉排ガスは、ライン118を通って空気予熱器138に導入される。該空気予熱器138においては、ファン113により導入された燃焼空気を炭化炉排ガスによって予熱して前記熱分解ガス燃焼炉102に送り込む。この場合、前記空気予熱器138で予熱された燃焼空気は、該空気予熱器138出口の燃焼空気ライン138aから燃焼空気ライン139、176、177に分岐されて前記熱分解ガス燃焼炉102に、1次空気及び2次空気として送り込まれる。
【0007】
一方、前記炭化炉101で生成された熱分解ガスは、ライン119を通してサイクロン132を経て、熱分解ガスバーナ(不図示)より前記熱分解ガス燃焼炉102に導入される。
前記熱分解ガス燃焼炉102の最上部から炉内に導入された熱分解ガスは、炉内を下方に向けて流動する。また、前記熱分解ガス燃焼炉102の上側部からは燃焼空気ライン139を経て1次空気が導入される。
さらに、前記熱分解ガス焼却炉102の入口から後述する燃焼空気ライン176を経た2次空気の導入口までの領域は還元域で、該還元域に導入される1次空気は、空気比1.0未満(0.7〜0.8)の条件で導入される。
【0008】
したがって、前記還元域においては、1次空気の導入によって還元雰囲気を形成し、前記乾燥機排ガスの導入によって還元域の温度を熱分解ガス中のNHを分解することが可能かつ1200℃以下の温度に調整することで、熱分解ガス燃焼時におけるNO発生量を低減するとともに熱分解ガス燃焼炉の炉壁を保護している。
【0009】
そして、前記還元域での還元燃焼後の炉内ガス(熱分解ガス)に空気比0.35〜0.6程度の2次空気を吹き込み、未燃成分の完全燃焼を図るとともに乾燥機排ガスによる無触媒脱硝に必要な酸素濃度を確保する。その後に、前記乾燥排ガスを吹き込む。
以上の処理により、前記熱分解ガス焼却炉102出口の燃焼排ガスの温度を950℃程度に保持する。
これにより、多量の乾燥排ガス中のNHによる自己脱硝作用によって、NOを還元して、低NO燃焼をなすことが可能となる。
【0010】
次に、熱分解ガス焼却炉102の動作について図6及び図7を用いて説明する。図7は従来の熱分解ガス燃焼炉102における動作説明図である。
前記空気予熱器138からの燃焼空気ライン138aは、還元雰囲気を形成しつつ前記熱分解ガスバーナに導入する一次空気ライン139と、酸化雰囲気を形成する二次空気ライン176、177(図7では176のみ図示)とにそれぞれを一定の割合にて分岐している。一次空気と二次空気を合算した導入量は、熱分解ガス燃焼炉102出口の酸素濃度を酸素濃度計142によって連続的に測定し、該測定結果に基づいて前記熱分解ガス燃焼炉102出口の酸素濃度が二次空気によって熱分解ガス燃焼炉内に酸化雰囲気が形成されるような酸素濃度となるように燃焼炉コントローラ143によって前記燃焼空気ライン138aに設けられたダンパー138bの開度を調整することで一次空気と二次空気を合算した空気導入量をコントロールしている。
また、乾燥機排ガスについては熱分解ガスバーナ設置位置直後の還元域に温度調整のため導入されるものと、酸化雰囲気形成後に脱硝用に導入するものとに分岐している。
また、前記補助燃料に関しては、前記熱分解ガス燃焼炉102出口のライン141上に設けられた温度計144により、熱分解ガス燃焼炉102出口の温度の変動を検知し、該温度の変動に応じてコントローラ145によって補助燃料導入ライン182上に設けたダンパー182aの開度を調整し、熱分解ガス燃焼炉2へ導入する補助燃料量を調整することで、前記温度計144によって検出される燃焼排ガス温度が、所定の温度(2次燃焼域においてNHを還元剤としたNOの無触媒脱硝が可能な温度)となるように調整する。
なお、本従来例においては前記ライン141上にO濃度計142を設けたが、前記O濃度計142に変えて代えてCO濃度計を用いることもできる。CO濃度計を用いる場合にはCOの発生を抑えるように前記ダンパー138b開度を調整する。
前記燃焼空気(一次空気及び二次空気)と乾燥機排ガスの分配の割合については試運転時などに適正と思われる配分に調整される。
【0011】
【特許文献1】特開2007−225223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記燃焼空気と乾燥機排ガスの分配の割合については、試運転時などに適正と思われる配分に調整されているものの、各種運転条件の変動による個別の調整は行われていないため、運転の変動によっては適正な流量配分でない条件で運転をする恐れがある。
例えば、乾燥機での変動あるいは、炭化炉での変動により、導入する熱分解ガス、乾燥機排ガス又は燃焼空気のバランスが崩れた際にNO濃度が基準値を超える可能性もある。
【0013】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、熱分解ガス燃焼炉へ導入される燃焼空気及び乾燥機排ガス量を適正に制御し、NOx量の低減が可能である汚泥炭化処理装置における熱分解ガス処理方法及び装置を導入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明においては、
乾燥機で乾燥した汚泥を炭化処理することによって生成される熱分解ガスを熱分解ガス燃焼炉に導入し、該熱分解ガス燃焼炉で、前記乾燥機で発生する乾燥機排ガスの一部を導入しながら1次空気を導入して還元雰囲気で1次燃焼処理を行い、ついで前記還元雰囲気の燃焼ガスに2次空気を導入して酸化雰囲気で2次燃焼処理を行う汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理方法において、炭化炉で生成される熱分解ガス発生量を検知し、該検知量に応じて前記1次空気導入量を制御することで、前記熱分解ガス燃焼炉内に還元雰囲気を形成するとともに、前記1次燃焼域の燃焼温度を検知し、該検知温度に応じて前記1次燃焼域に導入する乾燥機排ガス量を制御することで、前記1次燃焼域の燃焼温度を熱分解ガス中のNH等窒素化合物を分解できる温度とすることを特徴とする。
【0015】
前記熱分解ガス発生量に応じて一次空気量の制御を行うことで、前記1次燃焼域で確実に還元燃焼雰囲気を形成することができる。なお、前記熱分解ガスの発生量を直接検知することは困難であるため、熱分解ガスの発生量に代えて熱分解ガスの発生量に応じて変動する値を検知してもよく、例えば炭化炉から熱分解ガス燃焼炉に至る熱分解ガスの流通するライン中の流量を検知してもよく、また熱分解ガスにはタール分も含まれており前記ライン中の流量を検知することも困難である場合には前記炭化炉から熱分解ガス燃焼炉に至る熱分解ガスの流通するライン中の圧力変動を検知するようにすると好適である。
【0016】
また、一次燃焼域の燃焼温度に応じて一次燃焼域に導入する乾燥炉排ガス量を調整することで、前記一次燃焼域の温度が所定値を保つことができる。これにより、一次燃焼域において熱分解ガス中のNH等窒素化合物を分解でき且つ炉壁の焼損を防止することができる温度に保ち、NOの発生抑制ならびに炉壁の焼損を防止することができる。前記乾燥機排ガスを投入することによって一次燃焼域を1200℃程度に保つと、熱分解ガス中のNH等窒素化合物を分解することができ、且つ炉壁の焼損を防止することができる。
【0017】
また、前記熱分解ガス燃焼炉出口の酸素濃度を検知し、該検知濃度に応じて前記2次空気の導入量を制御することで、前記2次燃焼域に酸化雰囲気を形成することを特徴とする。
これにより、2次燃焼域で確実に酸化雰囲気を形成することができる。
【0018】
さらにまた、前記熱分解ガス燃焼炉出口の燃焼排ガス温度を検知し、該検知温度に応じた量の補助燃料を前記1次燃焼域に導入することで、前記2次燃焼域の燃焼温度をNHを還元剤としたNOの無触媒脱硝が可能な温度とすることを特徴とする。
これにより、2次燃焼域では、乾燥排ガス中のNHによる自己脱硝作用によって、NOを還元して、低NO燃焼をなすことが可能となる。NHは900〜1000℃で特にNOを還元するため、前記補助燃料量の制御により2次燃焼域の燃焼温度を900〜1000℃とすることが最適である。
【0019】
また、課題を解決するための装置発明として、
乾燥機で乾燥した汚泥を炭化処理することによって生成される熱分解ガスを燃焼する熱分解ガス燃焼炉を備え、該熱分解ガス燃焼炉は、前記乾燥機で発生する乾燥機排ガスの一部を導入しながら1次空気を導入して還元雰囲気で燃焼処理を行う1次燃焼域と、該1次燃焼域の燃焼ガスに2次空気を導入して酸化雰囲気で燃焼処理を行う2次燃焼域から形成される汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理装置において、炭化炉で生成される熱分解ガス発生量を検知する手段と、該検知量に応じて前記1次空気導入量を制御する手段とを設け、前記1次空気導入量の制御によって前記熱分解ガス燃焼炉内に還元雰囲気を形成するとともに、前記1次燃焼域の燃焼温度を検知する手段と、該検知温度に応じて前記1次燃焼域に導入する乾燥機排ガス量を制御する手段とを設け、前記1次燃焼域に導入する乾燥機排ガス量の制御によって1次燃焼域の燃焼温度を熱分解ガス中のNH等窒素化合物を分解できる温度とすることを特徴とする。
【0020】
また、前記熱分解ガス燃焼炉出口の酸素濃度を検知する手段と、該検知濃度に応じて前記2次空気の導入量を制御する手段とを設け、前記2次空気の導入量の制御によって前記2次燃焼域に酸化雰囲気を形成することを特徴とする。
【0021】
前記熱分解ガス燃焼炉出口の燃焼排ガス温度を検知する手段と、該検知温度に応じた量の補助燃料を前記1次燃焼域に導入する制御手段とを設け、前記補助燃料導入量の制御によって前記2次燃焼域の燃焼温度をNHを還元剤としたNOの無触媒脱硝が可能な温度とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上記載のごとく本発明によれば、熱分解ガス燃焼炉へ導入される燃焼空気及び乾燥機排ガス量を適正に制御し、NOx量の低減が可能である汚泥炭化処理装置における熱分解ガス処理方法及び装置を導入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0024】
図1は実施例1に係る下水汚泥の炭化処理装置の系統図であり、図2は実施例1に係る熱分解ガス燃焼炉2における動作説明図である。
まず図1に基づき実施例1に係る下水汚泥の炭化処理装置の構成について説明する。
図1に示すように、実施例1に係る炭化処理装置は、主に下水汚泥を脱水する脱水機10と、脱水した下水汚泥に熱風を接触させて乾燥する乾燥機20と、乾燥させた下水汚泥を炭化処理する炭化炉1と、該炭化炉1で生成した熱分解ガスを燃焼する熱分解ガス燃焼炉2とから構成されている。なお前記炭化炉1は、間接加熱式ロータリーキルン型が好適であるが、特にこれに限定されるものではなく他の形態の炭化炉とすることもできる。
【0025】
前記乾燥機20と炭化炉1とはライン21で接続されており、前記炭化炉1と前記熱分解ガス燃焼炉2とは、該炭化炉1内で発生した熱分解ガスの配管である熱分解ガスライン19で接続されている。また、前記炭化炉1の炭化物出口にはライン33が設けられており、該ライン33は炭化物コンベア6a、後処理装置6bとを介してタンク6Cに接続されている。
【0026】
前記熱分解ガス燃焼炉2出口に接続される燃焼排ガスライン41は、炭化炉用の加熱炉3への燃焼排ガスライン4と、前記乾燥機20への燃焼排ガスライン5と、後述する循環ガス予熱器7への燃焼排ガスライン9とに分岐されている。
前記加熱炉3は、前記熱分解ガス燃焼炉2からの燃焼排ガスを、補助燃料によって加熱して昇温し炭化炉1 に導入するために設けられている。
【0027】
また、39、76は前記熱分解ガス燃焼炉2にそれぞれ一次空気、二次空気を送り込むラインであり、82は前記熱分解ガス燃焼炉2内に助燃料を導入するための助燃料導入ラインである。
【0028】
また、11は前記乾燥機20で汚泥を乾燥させ200℃程度まで降温された後の乾燥機排ガスを、循環ガス予熱器7に送給する乾燥炉排ガスラインである。前記循環ガス予熱器7には、前記熱分解ガス燃焼炉2出口の燃焼排ガスライン41から分岐した燃焼排ガスライン9を通して、950℃程度の高温ガスが導入されて前記乾燥機排ガスを加熱し、該加熱された乾燥機排ガスは乾燥機排ガスライン71及び該乾燥機排ガスライン71から分岐された2つの乾燥炉排ガスライン73、74を通じて前記熱分解ガス燃焼炉2に導入されるように構成されている。
前記循環ガス予熱器7出口の乾燥機排ガスライン71から、前記2つの乾燥炉排ガスライン73、74への乾燥機排ガス流量の分配割合については後述する。
【0029】
8は排煙処理塔で、前記循環ガス予熱器7で前記熱分解ガス燃焼炉2に導入される乾燥機排ガスを加熱したライン9からの燃焼排ガス及び炭化炉1の排ガスを処理する。該排煙処理塔8で処理されたガスはブロワ80によって煙突に送られて大気放出される。
【0030】
次に、実施例1に係る下水汚泥の炭化処理装置を用いて、下水汚泥を炭化処理する方法及び熱分解ガスの処理方法について説明する。
まず脱水機10に下水汚泥を導入し、下水汚泥の水分が約70〜80%程度になるまで脱水する。次いで、脱水した下水汚泥を乾燥機20に送り、汚泥の水分が約20〜30%になるまで乾燥する。該乾燥機20での乾燥は、前記熱分解ガス燃焼炉2からの燃焼排ガスライン41から分岐されたライン5を通して導入される燃焼排ガスを、汚泥に直接接触させることにより行う。
前記乾燥機20で発生した乾燥機排ガスはライン11を通じて循環ガス予熱器7に送られ、前記熱分解ガス燃焼炉2からの燃焼排ガスライン41から分岐されたライン9を通じて導入される燃焼排ガスと熱交換されて加温され、熱分解ガス燃焼炉2へ導入される。
【0031】
一方、前記乾燥機20で乾燥させた下水汚泥は、ライン21を通して炭化炉1に導入される。炭化炉1では、下水汚泥を酸素が欠乏した雰囲気下で約300〜600℃に加熱して炭化処理を行い、熱分解ガスと固体燃料である炭化物とを生成する。該炭化物は前記ライン33、コンベア6a及び後処理装置6bとを経てタンク6Cに貯蔵される。
【0032】
前記炭化炉1で下水汚泥の炭化処理を行った後の炭化炉排ガスは、ライン18を通り、前記排煙処理塔8で処理された後、ブロワ80によって煙突に送られて大気放出される。
一方、前記炭化炉1で生成された熱分解ガスは、熱分解ガスライン19を通して熱分解ガスバーナ(不図示)より前記分解ガス燃焼炉2に導入されて炉内を流動する。また、前記熱分解ガス燃焼炉2には燃焼空気ライン39を経て1次空気が導入される。
なお、前記熱分解ガス焼却炉2の入口から後述する燃焼空気ライン76を経て2次空気の導入される2次空気導入口までの領域は還元域2aで、該還元域に導入される1次空気は、空気比1.0未満(0.7〜0.8)の条件で導入される。
また、前記還元域2aにはライン71から分岐されたライン73を経て乾燥機排ガスが導入される。
さらに必要に応じてライン82から補助燃料が導入される。
【0033】
前記還元域2aにおいては、1次空気の導入によって還元雰囲気を形成し、前記乾燥機排ガスの導入によって還元域の温度を熱分解ガス中のNHを分解することが可能かつ1200℃以下の温度に調整することで、熱分解ガス燃焼時におけるNO量を低減するとともに灰分の溶着及び耐火材の熱損などしないようにして熱分解ガス燃焼炉の炉壁を保護している。
【0034】
そして、前記還元域での燃焼処理後の炉内ガス(熱分解ガス)に燃焼空気ライン76を経て空気比0.35〜0.6程度の2次空気を吹き込み、未燃分の完全燃焼を図るとともに乾燥機排ガスによる自己脱硝に必要な酸素濃度を確保する。その後に、ライン71から分岐されたライン74を経て乾燥機排ガスが吹き込まれる。なお2次空気導入以降が酸化域2aにとなり、さらに脱硝用の乾燥機排ガス導入以降が脱硝域2bとなる。
以上の処理により、前記熱分解ガス焼却炉2出口の燃焼排ガスの温度を950℃程度に保持する。
これにより、脱硝域2bでは、多量の乾燥排ガス中のNHによる自己脱硝作用によって、NOを還元して、低NO燃焼をなすことが可能となる。
【0035】
次に、熱分解ガス燃焼炉2の動作について図2を用いて説明する。
前記燃焼空気ライン38は、還元雰囲気を形成しつつ前記熱分解ガスバーナに導入する一次空気ライン39と、酸化雰囲気を形成する二次空気ライン76とに分岐している。前記一次空気に関しては、前記炭化炉1内で発生した熱分解ガスの配管である熱分解ガスライン19上に設けられた圧力計19aによって熱分解ガスの発生量に応じて変動する熱分解ガスライン19の圧力変動を検知し、該圧力変動に応じてコントローラ19bによって燃焼空気ライン39上に設けたダンパー39aの開度を調整し、熱分解ガス燃焼炉2へ導入する一次空気流量を制御する。熱分解ガスの発生量に応じて変動する熱分解ガスライン19の圧力変動に応じて一次空気流量を制御する、即ち熱分解ガス発生量に応じて制御を行うことで、確実に還元雰囲気を形成することができる。なお、本実施例においては前記熱分解ガスライン19上に圧力計19aを設けたが、熱分解ガスの発生量又は熱分解ガスの発生量の変動に対応して変動する値を検出する検出手段を圧力計19aに代えて用いることもできる。
【0036】
また、熱分解ガス燃焼炉2の還元域2aに導入する乾燥機排ガスについては、還元域2aに設けた温度計2cにより、還元域2aの温度変動を検知し、該温度変動に応じてコントローラ2dによって乾燥炉排ガスライン73上に設けたダンパー73aの開度を調整し、熱分解ガス燃焼炉2の還元域2aへ導入する乾燥炉排ガス量を制御することで、前記還元域の温度が所定温度を保つようにする。該所定値は熱分解ガス中のNH等窒素化合物を分解でき且つ炉壁の焼損が起こらない温度とし、1200℃程度とすることが好ましい。これにより、還元燃焼域を所定の温度に保ち、NOの発生抑制、炉壁への飛灰の溶着ならびに炉壁の焼損の確実な防止が可能となる。
なお、脱硝域2bに導入する乾燥機排ガスについては、還元域2aに導入される排ガスの残りになり、流量が従来よりも低減する可能性もあるが、上記制御により還元・酸化域2aでのNOx発生量を確実に低減でき、脱硝域2bで脱硝すべきNO量が少なくなるため特に問題とはならない。
【0037】
また、前記二次空気に関しては、前記熱分解ガス燃焼炉2出口のライン41上に設けられたO濃度計42により、熱分解ガス燃焼炉2出口のO濃度の変動を検知し、該O濃度の変動に応じてコントローラ43によって燃焼空気ライン76上に設けたダンパー76aの開度を調整し、熱分解ガス燃焼炉2へ導入する二次空気流量を制御することで、前記O濃度計42によって検出されるO濃度が所定値を保ち、脱硝域に酸化雰囲気を形成させる。
なお、本実施例においては前記ライン41上にO濃度計42を設けたが、前記O濃度計42に変えて代えてCO濃度計を用いることもできる。CO濃度計を用いる場合にはCOの発生を抑えるように前記ダンパー76a開度を調整する。
【0038】
なお、補助燃料に関する温度計44、コントローラ45の動作については従来例における温度計144、コントローラ145と同様であるため説明を省略する。
【0039】
上記のように、還元域2aにおいては、1次空気の導入量の制御によって確実に還元雰囲気を形成するとともに、乾燥機排ガスの導入量の制御によって熱分解ガス中のNH等窒素化合物を分解でき且つ炉壁の焼損が起こらない燃焼温度に確実に調整することができる。
また酸化域2aにおいては2次空気の導入量の制御によって確実に酸化雰囲気を形成し、未燃分の完全燃焼を図るとともに、補助燃料の導入量の制御によってNHを還元剤としたNOの無触媒脱硝が可能な燃焼温度に確実に調整することができる。
従って、乾燥機での変動あるいは、炭化炉での変動などが発生しても、熱分解ガス、乾燥機排ガス又は燃焼空気のバランスが崩れず、低NO濃度運転が可能である。
【0040】
図3は前記コントローラ19bを用いた一次空気導入量制御を示すグラフであり、横軸はダンパー39aの開度(%)、縦左軸は一次空気流量(kg/h)、縦右軸は熱分解ガス発生量(kg/h)である。このようにして、熱分解ガスの発生量が少なければダンパー39a開度を小さくして一次空気流量を小さくすることで、前述の通り前記還元域2aで確実に還元燃焼雰囲気を形成することができる。
【0041】
図4は前記コントローラ43を用いた二次空気導入量制御を示すグラフであり、一次空気流量が一定である場合を表している。横軸はダンパー43の開度(%)、縦左軸は二次空気流量(kg/h)、縦右軸は前記熱分解ガス燃焼炉2出口のライン41上のO濃度(%)である。図4に示したように、ダンパー7aの開度を大きくするほど二次空気量が多くなり、ライン41上のO濃度(%)も大きくなる。O濃度の変動に応じてコントローラ43によって燃焼空気ライン76上に設けたダンパー76aの開度を調整し、熱分解ガス燃焼炉2へ導入する二次空気流量を調整することで、前記O濃度計42によって検出されるO濃度が所定値を保つようにする。
【0042】
図5は前記コントローラ2dを用いた乾燥機排ガス導入量制御を示すグラフであり、横軸はダンパー73aの開度(%)であり該開度が大きいほどライン71を流れる乾燥機排ガスのうちライン73側から熱分解ガス燃焼炉2へ導入される乾燥機排ガスの割合が大きくなる。縦左軸は熱分解ガス燃焼炉2の還元域2aにおける燃焼温度(℃)、縦右軸は前記熱分解ガス燃焼炉2の出口NOx濃度(ppm)である。ダンパー73aの開度を大きくするほど乾燥機排ガスが還元域2aへ導入される乾燥機排ガスが多くなるため還元域2aにおける燃焼温度が下がり、熱分解ガス燃焼炉2出口でのNOx温度が下がる。しかし、図5には示していないが還元域2aにおける燃焼温度を下げすぎると還元域2aにおけるNHの分解に支障が出てNO濃度が上がる可能性があるため、還元域2aを炉壁の焼損が発生せず且つNHの分解に支障がでない所定の温度に保つようにする。なお、前記所定の温度は1200℃程度とすることが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
熱分解ガス燃焼炉へ導入される燃焼空気及び乾燥機排ガス量を適正に制御し、NOx量の低減が可能である汚泥炭化処理装置における熱分解ガス処理方法及び装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1に係る下水汚泥の炭化処理装置の系統図である。
【図2】実施例1に係る熱分解ガス燃焼炉2における動作説明図である。
【図3】一次空気導入量制御を示すグラフである。
【図4】二次空気導入量制御を示すグラフである。
【図5】乾燥機排ガス導入量制御を示すグラフである。
【図6】従来技術における下水汚泥の炭化処理装置の系統図である。
【図7】従来の熱分解ガス燃焼炉における動作説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 炭化炉
2 熱分解ガス燃焼炉
19 熱分解ガスライン
20 乾燥機
39 一次空気ライン
76 二次空気ライン
71、73、74 乾燥機排ガスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機で乾燥した汚泥を炭化処理することによって生成される熱分解ガスを熱分解ガス燃焼炉に導入し、該熱分解ガス燃焼炉で、前記乾燥機で発生する乾燥機排ガスの一部を導入しながら1次空気を導入して還元雰囲気で1次燃焼処理を行い、ついで前記乾燥機排ガスの一部を導入しながら前記還元雰囲気の燃焼ガスに2次空気を導入して酸化雰囲気で2次燃焼処理を行う汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理方法において、
炭化炉で生成される熱分解ガス発生量を検知し、該検知量に応じて前記1次空気導入量を制御することで、前記熱分解ガス燃焼炉内に還元雰囲気を形成するとともに、
前記1次燃焼域の燃焼温度を検知し、該検知温度に応じて前記1次燃焼域に導入する乾燥機排ガス量を制御することで、前記1次燃焼域の燃焼温度を1次燃焼域中のNH等窒素化合物を分解できる温度とすることを特徴とする汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理方法。
【請求項2】
前記熱分解ガス燃焼炉出口の酸素濃度を検知し、該検知濃度に応じて前記2次空気の導入量を制御することで、前記2次燃焼域に酸化雰囲気を形成することを特徴とする請求項1記載の汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理方法。
【請求項3】
前記熱分解ガス燃焼炉出口の燃焼排ガス温度を検知し、該検知温度に応じた量の補助燃料を前記1次燃焼域に導入することで、前記2次燃焼域の燃焼温度をNHを還元剤としたNOの無触媒脱硝が可能な温度とすることを特徴とする請求項1又は2記載の汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理方法。
【請求項4】
乾燥機で乾燥した汚泥を炭化処理することによって生成される熱分解ガスを燃焼する熱分解ガス燃焼炉を備え、
該熱分解ガス燃焼炉は、前記乾燥機で発生する乾燥機排ガスの一部を導入しながら1次空気を導入して還元雰囲気で燃焼処理を行う1次燃焼域と、該1次燃焼域の燃焼ガスに前記乾燥機排ガスの一部を導入しながら2次空気を導入して酸化雰囲気で燃焼処理を行う2次燃焼域から形成される汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理装置において、
炭化炉で生成される熱分解ガス発生量を検知する手段と、該検知量に応じて前記1次空気導入量を制御する手段とを設け、前記1次空気導入量の制御によって前記熱分解ガス燃焼炉内に還元雰囲気を形成するとともに、
前記1次燃焼域の燃焼温度を検知する手段と、該検知温度に応じて前記1次燃焼域に導入する乾燥機排ガス量を制御する手段とを設け、前記1次燃焼域に導入する乾燥機排ガス量の制御によって1次燃焼域の燃焼温度を1次燃焼域中のNH等窒素化合物を分解できる温度とすることを特徴とする汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理装置。
【請求項5】
前記熱分解ガス燃焼炉出口の酸素濃度を検知する手段と、該検知濃度に応じて前記2次空気の導入量を制御する手段とを設け、前記2次空気の導入量の制御によって前記2次燃焼域に酸化雰囲気を形成することを特徴とする請求項4記載の汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理装置。
【請求項6】
前記熱分解ガス燃焼炉出口の燃焼排ガス温度を検知する手段と、該検知温度に応じた量の補助燃料を前記1次燃焼域に導入する制御手段とを設け、前記補助燃料導入量の制御によって前記2次燃焼域の燃焼温度をNHを還元剤としたNOの無触媒脱硝が可能な温度とすることを特徴とする請求項4又は5記載の汚泥炭化処理設備における熱分解ガス処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−243714(P2009−243714A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88034(P2008−88034)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】