説明

沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴

【課題】シャッタ羽根の駆動手段又は絞り羽根の駆動手段を用いて、沈胴状態では、ズーム用のレンズ群の一つを、撮影光路から光軸を横切る方向へ移動させておくようにした沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴を提供すること。
【解決手段】第3レンズ群37のレンズ保持部材35は、第2移動部材25の軸25eに取り付けられていて、ばね38によって反時計方向へ回転するように付勢され、当接部35cがストッパーピン27bに当接するようになっている。ステップモータ32によって回転させられる駆動リング28は、撮影時には、初期位置からの時計方向への回転で、3枚の絞り羽根29を回転させて絞り開口を変化させ、沈胴時には、初期位置からの反時計方向への回転で、押動部28bが被押動ピン35bを押し、レンズ保持部材35を時計方向へ回転させる。シャッタ羽根30,31は、モータ33によって開閉作動をさせられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズを備えた沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴に関する。
【背景技術】
【0002】
第1のモータにより、第1レンズ群と第2レンズ群との相対的な間隔を変えてズーミングを行い、鏡胴内に備えられた第2のモータにより、第3レンズ群を移動させて焦点調節を行うようにしたカメラ用レンズ鏡胴であって、カメラを使用しないときには、第1のモータによって、全てのレンズ群を固定筒内に収容して沈胴状態とするようにした沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴が、下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
また、特許文献1に記載のレンズ鏡胴は、シャッタ装置を備えているが、そのほかに絞り機構を備えるようにすることも知られている。そして、下記の特許文献2には、沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴ではないが、ズーミングを行う鏡胴内に駆動用のモータと共に絞り機構を配置するようにした具体的な構成例が記載されている。
【0004】
更に、下記の特許文献3には、絞り(シャッタ)を備えていて、第1レンズ群と第2レンズ群との相対間隔を変えることによってズーミングを行い、第3レンズ群を移動させて焦点調節を行うようにしたカメラ用レンズ鏡胴において、全てのレンズ群を固定筒内に収容して沈胴状態とするときには、第2レンズ群を光軸を横切る方向へ移動させ、第3レンズ群の径方向位置に配置させるようにした沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴が記載されている。
【0005】
本発明は、このように、ズーミングを行えるように構成されている鏡胴内に、シャッタ羽根だけを有するシャッタ装置、又はシャッタ羽根と絞り羽根とを有するシャッタ装置を備えたカメラ用レンズ鏡胴であって、全てのレンズ群を固定筒内に収容し沈胴状態とするときには、ズーミングを行うためのレンズ群の一つを、撮影光路から光軸を横切る方向へ移動させることによって、光軸方向の収容寸法を小さくするようにした沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴に関するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2003−57705号公報
【特許文献2】特開2001−290190号公報
【特許文献3】特開2003−315861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、特許文献3には、沈胴状態とするときに、ズーミングに際して移動される第2レンズ群を撮影光路上から退避させ、焦点調節に際して移動される第3レンズ群の径方向位置に配置させるようにした構成が記載されている。そして、第2レンズ群を撮影光路上から退避させるための駆動源は、第1レンズ群と第2レンズ群を光軸方向に移動させるためのモータである。また、第2レンズ群の保持部材(退避レンズ枠)と、固定部材(CCD枠)には、光軸と平行な軸を中心にした円弧状であって且つ軸方向に高さの変化するカム面を形成しておき、第2レンズ群の保持部材は、沈胴作動時に、両者のカム面のカム作用によって、回転させられるように構成されている。
【0008】
ところが、沈胴作動時に、そのようなカム構成で第2レンズ群の保持部材を好適に回転させるためには、両者のカム面の軸方向の高さを高くして、カム面同士が接触してからの軸方向のストロークを大きくする必要がある。しかしながら、沈胴作動開始直前の状態においては、第2レンズ群と第3レンズ群とは、比較的近い相対位置関係にあるため、そのようにストロークを大きくし、しかも第3レンズ群に衝突する前に第2レンズ群の保持部材を回転させてしまうようにすることは、配置設計上、極めて難しい。また、反対に、第3レンズ群に衝突する前に第2レンズ群の保持部材を回転させてしまうようにするためには、両者のカム面の軸方向の高さを低くしてストロークを小さくて済むようにする必要があるが、そのようにすると、沈胴作動の駆動源であるモータに大きな負荷を与えてしまうことになる。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シャッタ羽根の駆動源又は絞り羽根の駆動源を用いて、ズーミング時に移動させられるレンズ群の一つを、沈胴作動時においては撮影光路外へ退避させることによって、沈胴状態における光軸方向の収容寸法を小さくするようにした沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴は、同一形状のカム溝を複数有していて本体部材の被写体側に固定されている第1筒と、複数種類の形状のカム溝を複数ずつ有していて前記第1筒の内側に配置されており第1駆動手段によって回転させられたとき前記第1筒のカム溝に案内されて光軸方向へも移動させられ前記第1筒に出入りする第2筒と、一番被写体側に配置された第1レンズ群を保持して前記第2筒の内側に配置されており前記第2筒が回転させられたとき前記第2筒の所定の種類のカム溝に案内されて光軸方向へ移動させられ前記第2筒に出入りする第3筒と、レンズ群を保持して前記第2筒の内側に配置されており前記第2筒が回転させられたとき前記第2筒の所定の種類のカム溝に案内されて光軸方向へ移動させられ前記第1レンズ群を含むレンズ群同士の相対位置を変化させてズーミングを行う少なくとも一つの移動部材と、を備えたレンズ鏡胴であって、前記移動部材の一つは、第2駆動手段と、光軸を中心にして回転可能に配置されていて該第2駆動手段によって初期位置から両方向に往復回転させられる駆動リングと、該駆動リングが初期位置から一方へ往復回転することによって撮影光路を開閉する少なくとも1枚のシャッタ羽根と、前記レンズ群を取り付けていて該駆動リングが初期位置から他方へ往復回転するとその往動時にはばねの付勢力に抗して回転させられて前記レンズ群を撮影光路外へ退避させ復動時には該ばねの付勢力によって撮影光路内に前記レンズ群を進出させるレンズ保持部材と、を取り付けているようにする。
【0011】
その場合、前記移動部材の一つには地板が取り付けられており、前記第2駆動手段と、前記駆動リングと、前記少なくとも1枚のシャッタ羽根とは、該地板に取り付けられていて、シャッタ装置ユニットを構成しているようにしてもよい。また、前記少なくとも1枚のシャッタ羽根が、光軸を中心にして開閉作動を行う複数枚のシャッタ羽根であって、該複数枚のシャッタ羽根は、撮影に先立って前記駆動リングが初期位置から一方へ往動したとき撮影光路の全開位置から閉じ作動を開始させられ、該撮影光路を閉鎖する前に一旦停止させられて撮影が行われ、撮影終了時には前記駆動リングの往動再開によって撮影光路を閉鎖するようにした絞り羽根兼用のシャッタ羽根であるようにしてもよい。また、前記少なくとも1枚のシャッタ羽根が、光軸を中心にして撮影光路の開閉作動を行う複数枚のシャッタ羽根であって、該複数枚のシャッタ羽根は、撮影に際して前記駆動リングが初期位置から一方へ往動したとき撮影光路の閉鎖位置から開き作動を開始させられ、該撮影光路を全開にする前に前記駆動リングが復動したときには該撮影光路の閉じ作動を行うようにした絞り羽根兼用のシャッタ羽根であるようにしてもよい。
【0012】
また、前記少なくとも1枚のシャッタ羽根が、少なくとも1枚の絞り羽根であって、該絞り羽根を取り付けている前記移動部材には、さらに、シャッタ羽根と、該シャッタ羽根に開閉作動を行わせる第3駆動手段とが取り付けられているようにしてもよい。そして、その場合にも、前記移動部材には地板が取り付けられており、前記第2駆動手段と、前記駆動リングと、前記絞り羽根と、前記第3駆動手段と、前記シャッタ羽根とは、該地板に取り付けられていて、シャッタ装置ユニットを構成しているようにしてもよい。
【0013】
また、上記の沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴において、光軸と平行に直線状に形成された複数種類のキー溝を複数ずつ有していて前記第2筒の内側に配置されており前記第2筒の回転によって光軸方向へのみ前記第2筒と共に移動する第4筒を備えていて、前記第3筒と前記移動部材とは、該第3筒の内側に配置され、前記第2筒が回転したとき、前記第2筒に形成された各々の所定の種類のカム溝と該第3筒に形成された各々のキー溝の両方に案内されて、光軸方向へ個々に移動されるようにしてもよい。
【0014】
更に、前記固定筒内において、前記本体部材には、第4駆動手段と、焦点調節用レンズ群を保持していて該第4駆動手段によって光軸方向へ移動させられる焦点調節用レンズ枠と、が取り付けられていて、前記レンズ保持部材を取り付けている前記移動部材は、該焦点調節用レンズ枠の被写体側に配置されており、前記レンズ保持部材に保持されている前記レンズ群は、前記第2筒が前記第1筒に収容されたとき、撮影光路外へ退避させられて、前記焦点調節用レンズ枠の径方向位置に配置されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明における沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴は、沈胴作動時においては、シャッタ羽根の駆動源又は絞り羽根の駆動源となるモータ等の駆動手段を用いることによって、ズーミング時に移動させられるレンズ群を、撮影光路外へ退避させるようにしたので、従来のように、沈胴作動の駆動源となるモータに負荷を与えることがないという利点がある。また、本発明によれば、退避させられるレンズ群を保持しているレンズ保持部材を、シャッタ機構又は絞り機構を構成している部材で直接回転させるように構成することができるので、鏡胴内での配置設計が容易であり、コスト面でも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。尚、本発明における沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴は、銀塩フィルムを使用するカメラにもデジタルカメラにも採用することが可能であるが、実施例は、デジタルカメラに採用されるものとして構成されたものである。
【実施例】
【0017】
図1〜図8を用いて本実施例を説明するが、図1は、実施例の沈胴状態(カメラの不使用状態)を示した断面図であり、図2は、図2(a)が図1に示されているカム筒を展開して内側から見た図であり、図2(b)が図1に示されているキー筒を展開して内側から見た図である。また、図3は、図1の沈胴状態において、第2移動部材に取り付けられている部材を撮像装置側から見て示した平面図であり、図4は、図3の状態における絞り機構と、第3レンズ群の保持部材とを分かり易く示した平面図である。また、図5は、第1〜第3レンズ群が、図1の位置から広角端撮影位置に繰り出された状態を示した断面図であり、図6は、図5の状態を、図3と同じようにして示した平面図である。更に、図7は、第1〜第3レンズ群の望遠端撮影位置を示した断面図であり、図8は、絞り羽根が、図4,図6に示された最大絞り開口制御位置から所定の絞り開口制御位置へ作動させられた状態を示した平面図である。
【0018】
尚、図1,図5,図7の断面図は、全く同じ箇所を切断して示したものではなく、少ない図面で全体の構成を理解し易くするために、便宜的に、異なる箇所で切断したり、構成の一部だけを、異なる箇所の断面で示したりしたものである。また、図3,図6,図8は、羽根室内の構成を分かり易くするために、後述するカバー板27を取り外して示したものである。
【0019】
そこで先ず、本実施例の構成を説明する。図1,図5,図7に示されている本体部材1は、カメラボディーに直接取り付けられる部材であって、その略中央部には撮像装置2を取り付けている。周知のように、この撮像装置2は、CCDなどの固体撮像素子を備えていて、通常は、その被写体側に、ローパスフィルタなどのフィルタ板や、透明なカバー板などを配置している。また、図5に示されているように、モータ取付板3は、往復回転可能なモータ4を取り付けており、ビス5によって本体部材1の被写体側の面に取り付けられている。そして、モータ4の出力軸4aには、リードスクリュー6が取り付けられている。また、焦点調節用の第4レンズ群7を保持しているレンズ枠8は、そこに取り付けられているナット部材9の雌ねじを、リードスクリュー6の雄ねじに螺合させており、モータ4を回転させると、本体部材1の被写体側に立設された案内ピン1aに案内され、第4レンズ群7を光軸方向に移動させるようになっている。尚、モータ4は、本実施例のように完全に鏡胴内に収容しなくてもよく、例えば特許文献1に記載されているように、その一部だけを収容するようにしてもよいし、鏡胴外に設置するようにしても構わない。
【0020】
本体部材1の被写体側の面には、図示していない手段によって固定筒10が一体的に取り付けられている。また、図5に示されているように、その固定筒10の外側には、本体部材1と固定筒10の間に軸11が取り付けられており、そこに、図示していないカメラ本体側のモータによって往復回転させられる歯車12が取り付けられている。そして、歯車12は、その外周に形成された歯の一部を、光軸と平行に形成されている固定筒10の長孔から内部に挿入している。また、その全体形状が明示されていないが、固定筒10の内周面には、周知のように、等間隔の角度位置に、後述の回転筒13が回転しながら光軸方向へも移動することを可能にするための同一形状をした三つのカム溝10aが形成されているが、図1には、それらのカム溝10aの断面形状だけが分かるように示されている。また、固定筒10の内周面には、そのような回転筒13とカム筒14の一体的な移動に伴って後述のキー筒15が光軸方向へ直線的に移動することを可能にするために、光軸と平行な三つのキー溝10bが、カム溝10aとは干渉しない角度位置に形成されているが、それらのうちの一つが図1に示されている。
【0021】
固定筒10の内側には、回転筒13が配置され、その内側にはカム筒14が配置されている。この回転筒13とカム筒14とは、従来、一つの部材として構成されていたが、本実施例では二つの部材に分離されている。その理由は、本発明と直接関係がないので説明を省略するが、本実施例のように二つの部材で構成されていても、両者は相互に固定されていて、一部材の場合と全く同じようにして一体的に作動する。そのため、本発明における第2筒は、一つの部材であっても、本実施例のように二つの部材で構成されたものであっても、差し支えないものである。そこで先ず、本実施例の回転筒13は、図5に示されているように、撮像装置2側の端部に、所定の角度範囲にわたって、平歯の部分歯車13aを有していて、上記の歯車12に噛合している。また、回転筒13の外周面には、等間隔の角度位置に三つのピン13bが設けられていて、それらは固定筒10に設けられた上記のカム溝10aに夫々嵌合している。そのため、回転筒13は、図示していないモータが往復回転すると、それに伴って往復回転させられ、固定筒10のカム溝10aに案内されて、光軸方向へも往復作動するようになっている。
【0022】
次に、上記の回転筒13と一体化されているカム筒14について説明する。図2(a)は、カム筒14を展開して内側から見た図であるが、左側が被写体側であり、右側が撮像装置2側である。そのため、図2(a)には、回転筒13に接する面の形状が詳しく示されていないが、回転筒13の内側に形成された図示していない孔に連結させるための、斜面付きの三つの突起14aだけが示されている。そして、このカム筒14には、撮像装置2側の等間隔の角度位置に可撓性を有する三つのフック部14bが形成されているが、それらのうちの一つが図8において断面で示されている。また、カム筒14には、カム形状の異なる4種類のカム溝14c,14d,14e,14fが、等間隔の角度位置に三つずつ形成されているが、それらのうち、カム溝14dは貫通溝であるが、残りの3種類のカム溝14c,14e,14fは、上記の固定筒10のカム溝10aと同様に、貫通をしていない有底溝である。
【0023】
カム筒14の内側には、キー筒15が配置されていて、カム筒14が回転筒13と共に回転すると、光軸方向に直線的に移動するように構成されている。図2(b)は、そのキー筒15を展開して内側から見た図であるが、左側が被写体側であり、右側が撮像装置2側である。このキー筒15のカム筒14側の面には、環状に溝15aが形成されていて、図7に示されているように、そこに、カム筒14のフック部14bの先端が入っている。また、このキー筒15には、等間隔の角度位置に三つのキー15bが形成されていて、図1に示すように、それらを固定筒10のキー溝10bに嵌合させている。そのため、このキー筒15は、回転筒13とカム筒14とが回転しながら固定筒10のカム溝10aによって光軸方向へ移動するとき、固定筒10のキー溝10bに案内されて、光軸方向へだけ直線的に移動させられることになる。そして、このキー筒15には、光軸と平行に形成された4種類のキー溝15c,15d,15e,15fが、等間隔の角度位置に三つずつ貫通して形成されている。
【0024】
キー筒15の内側には補助筒16が配置され、その内側には直進筒17が配置されている。そこで先ず、補助筒16について説明する。この補助筒16は、図1から分かるように、キー筒15と直進筒17の間において、キー筒15の内側に形成された肉薄部に入り込んで、格納されるように構成されている。また、この補助筒16の外周面には、等間隔の角度位置に三つのピン16aが設けられていて、それらは、キー筒15のキー溝15cを貫通し、それらの先端を、カム筒14の有底のカム溝14cに嵌合させている。そのため、この補助筒16は、回転筒13とカム筒14とが回転しながら固定筒10のカム溝10aによって光軸方向へ移動するとき、ピン16aがカム筒14のカム溝14cに案内されて移動するが、キー筒15のキー溝15cにも案内されることになるため、光軸方向へだけ直線的に移動させられることになる。そして、その移動量は、カム溝14cの形状によって、回転筒13とカム筒14の光軸方向の移動量とは異なる。
【0025】
次に、直進筒17について説明する。直進筒17の外周には、等間隔の角度位置に三つのピン17aが設けられており、それらは、キー筒15のキー溝15dを貫通し、先端をカム筒14の貫通したカム溝14dに嵌合させている。そのため、この直進筒17は、回転筒13とカム筒14とが回転すると、ピン17aがカム溝14dに案内されて移動するが、キー筒15のキー溝15dにも案内されることになるため、光軸方向へだけ直線的に移動させられることになる。そして、その移動量は、カム溝14dの形状によって、回転筒13とカム筒14の光軸方向の移動量とは異なる。また、この直進筒17の被写体側には、略中央部に撮影光路用の開口部18aを形成した前板18が取り付けられており、カバー板19との間に、2枚構成のバリア羽根20,21を配置しているが、バリア機構は、本発明とは直接関係がないので、具体的な構成を図示しておらず、説明も省略する。そして、この直進筒17には、第1レンズ群22を保持しているレンズ枠23が、光軸方向へ移動可能に取り付けられている。
【0026】
キー筒15の内側には、被写体側から順に、第1移動部材24と第2移動部材25が配置されている。そこで先ず、第1移動部材24を説明する。この第1移動部材24の外周部には、等間隔の角度位置に三つのピン24a(図1参照)が設けられており、それらは、キー筒15のキー溝15eを貫通し、先端をカム筒14の有底のカム溝14eに嵌合させている。そのため、この第1移動部材24は、回転筒13とカム筒14とが回転すると、ピン24aがカム溝14eに案内されて移動するが、キー筒15のキー溝15eにも案内されるため、光軸方向へだけ直線的に移動させられることになる。そして、その移動量は、カム溝14eの形状によって、回転筒13とカム筒14の光軸方向の移動量とは異なる。そして、この第1移動部材24は、そのレンズ保持部24bに、第2レンズ群26を取り付けている。尚、明示されていないが、上記の直進筒17には、第1移動部材24のピン24aの立設部が衝突しないようにするために、逃げ部が形成されている。
【0027】
次に、第2移動部材25について説明する。第2移動部材25の外周部には、等間隔の角度位置に三つのピン25a(図5,図7参照)が設けられており、それらは、キー筒15のキー溝15fを貫通し、先端をカム筒14の有底のカム溝14fに嵌合させている。そのため、この第2移動部材25は、回転筒13とカム筒14とが回転すると、ピン25aがカム溝14fに案内されて移動するが、キー筒15のキー溝15fにも案内されるため、光軸方向へだけ直線的に移動させられることになる。そして、その移動量は、カム溝14fの形状によって、回転筒13とカム筒14の光軸方向の移動量とは異なるようになっている。そして、この第2移動部材25には、多くの部材が取り付けられているが、それらの取付構成は、主に、図3,図4を用いて、以下に説明する。尚、明示されていないが、上記の直進筒17には、上記の第1移動部材24のピン24aの立設部に対する逃げ部と同様に、第2移動部材25のピン25aの立設部との衝突を避けるため、逃げ部が形成されている。
【0028】
図1に示されているように、第2移動部材25には、カバー板27が取り付けられていて、両者の間に羽根室を構成している。そして、その羽根室には、後述する駆動リング28と、3枚の絞り羽根29と、2枚のシャッタ羽根30,31が配置されているが、図1,図5,図7においては、駆動リング28のみを示し、3枚の絞り羽根29と2枚のシャッタ羽根30,31の図示を省略してある。そして、図3は、第2移動部材25と、そこに取り付けられている部材とを、図1の撮像装置2側から見て、カバー板27を取り除いて示した平面図であり、図4は、図3の状態における絞り機構と、第3レンズ群の保持部材とだけを示した平面図である。
【0029】
図3に示されているように、第2移動部材25は、その外周部に、上記した三つのピン25aを設けていて、その中央部には、円形をした撮影光路用の開口部25bを有している。しかしながら、図示を省略したカバー板27にも、二点鎖線で示した撮影光路用の開口部27aが形成されているため、実際の露光開口は、カバー板27の開口部27aによって規制されるようになっている。また、図5,図7に示されているように、カバー板27には、撮像装置2側にストッパーピン27bが立設されているが、図3においては、そのストッパーピン27bの位置を分かるようにするために、二点鎖線で示してある。
【0030】
第2移動部材25とカバー板27との間に構成された羽根室には、第2移動部材25側から順に、駆動リング28と、3枚の絞り羽根29と、2枚のシャッタ羽根30,31が配置されている。先ず、光軸を中心にして回転可能に配置されている駆動リング28は、等間隔の角度位置に三つの貫通したカム溝28aを有しており、外周部には押動部28bと、所定の角度範囲にわたって形成された歯部28cとを有している。また、3枚の絞り羽根29は、各々、第2移動部材25側に、羽根軸29aと係合ピン29bとを有していて、羽根軸29aを、第2移動部材25に形成された孔に回転可能に嵌合させ、係合ピン29bを、駆動リング28のカム溝28aに挿入させているが、図3,図6,図8においては、1枚の絞り羽根にだけ符号を付けてある。更に、2枚のシャッタ羽根30,31は、第2移動部材25に立設された二つの軸25c,25dに回転可能に取り付けられている。
【0031】
第2移動部材25には、例えば、特開2005−284102号公報に記載されているような周知のステップモータ32と、特開2005−287159号公報に記載されているような周知の電流制御式のモータ33が取り付けられている。それらのうち、ステップモータ32は、駆動リング28を往復回転させるためのものであり、コイル32a,32bを巻回した二つのヨーク32c,32dは、第2移動部材25の被写体側の面に取り付けられ、出力歯車32eを一体化した回転子32fは、羽根室側に配置されている。そして、その出力歯車32fは、駆動リング28の歯部28cに噛合している減速用の2段歯車34に噛合している。また、電流制御式のモータ33は、コイル33aを巻回したヨーク33bと、回転子33cとからなっていて、第2移動部材25の被写体側の面に取り付けられており、回転子33cと一体の出力ピン33dを羽根室内に挿入し、周知のようにして、シャッタ羽根30,31に形成された長孔の両方に嵌合させている。
【0032】
第2移動部材25の撮像装置2側の面であって羽根室外の面には、軸25eが立設されている。レンズ保持部材35は、その軸25eに、ビス36によって抜け止めされ、カバー板27よりも撮像装置2側の面で回転できるようにして取り付けられている。また、このレンズ保持部材35は、レンズ保持部35aと、そのレンズ保持部35aよりも根元側の被写体側の面に設けた被押動ピン35bと、先端に設けた当接部35cとを有していて、レンズ保持部35aには第3レンズ群37が取り付けられている。そして、このレンズ保持部材35は、第2移動部材25との間に掛けられたばね38によって、図3において反時計方向へ回転するように付勢されている。尚、図5,図7においては、ばね38の図示を省略してある。
【0033】
次に、本実施例の作動を説明する。図1及び図3は、カメラの不使用状態を示したものであって、第1〜第4レンズ群22,26,37,7は、図1に示されているように、全て固定筒10内に収容され、いわゆる沈胴状態となっている。そして、このとき、図3に示されているように、2枚のシャッタ羽根30,31は、モータ33によって相反する方向へ回転させられ、露光開口を規制しているカバー板27の開口部27aを全開にしている。また、駆動リング28は、ステップモータ32によって反時計方向への極限位置に回転させられている。そのため、3枚の絞り羽根29は、羽根軸29aを中心にして反時計方向へ回転させられ、開口部27aを全開にしており、また、レンズ保持部材35は、その被押動ピン35bが駆動リング28の押動部28bに押され、ばね38の付勢力に抗して時計方向へ回転させられており、第3レンズ群37を、光軸を横切る方向へ退避させていると同時に、図1から分かるように、第3レンズ群7の径方向位置に置いている。そのため、本実施例は、沈胴状態における光軸方向の収容寸法が極めて小さくなっている。
【0034】
このような沈胴状態から撮影可能状態とするためには、カメラの電源スイッチをオンにする。それによって、図示していないモータが回転させられるので、図5に示されている歯車12を介して、回転筒13とカム筒14が回転させられる。このとき、回転筒13とカム筒14は、回転だけではなく被写体側にも移動させられるが、キー筒15,補助筒16,直進筒17,第1移動部材24,第2移動部材25は、キー筒15のキー15bが、固定筒10のキー溝10bに案内されるため、回転することなく、被写体側に直進させられていく。また、このとき、回転筒13,カム筒14,キー筒15は、同じ速度で被写体側へ移動するが、補助筒16,直進筒17,第1移動部材24,第2移動部材25は、各々、カム筒14のカム溝14c〜14fの形状によって、回転筒13,カム筒14,キー筒15よりも、全体としては速く移動させられていく。
【0035】
また、第2移動部材25が被写体側へ移動させられてゆき、第3レンズ群37が第4レンズ群7よりも被写体側に移動すると、ステップモータ32にパルスが供給され、図3において、回転子32fが時計方向へ回転させられるため、駆動リング28は、2段歯車34を介して時計方向へ回転させられる。このようにして、駆動リング28が時計方向へ回転すると、その押動部28bがレンズ保持部材35の被押動ピン35bから離れていこうとするので、レンズ保持部材35は、それに追従して、ばね38の付勢力によって反時計方向へ回転していく。そして、このようなレンズ保持部材35の回転は、先端の当接部35cがカバー板27のストッパーピン27bに当接することによって停止され、第3レンズ群37が、光軸上に配置されたことになる。
【0036】
他方、駆動リング28の三つのカム溝28aには、3枚の絞り羽根29の係合ピン29bが挿入されているが、それらのカム溝28aの形状は、第3レンズ群37が撮影光路内への移動を完了するまで、又は撮影光路から退避し終わるまでは、光軸を中心にした円弧状に形成されているため、3枚の絞り羽根29は全く回転させられない。そして、駆動リング28は、レンズ保持部材35が停止した後、僅かに回転した位置で停止させられる。図6は、そのときの状態を示したものであって、この状態での位置が駆動リング28にとっての初期位置である。
【0037】
また、このようにして、第1〜第3レンズ群22,26,37が被写体側に移動させられていく段階で、モータ4も回転させられ、リードスクリュー6を介して、第4レンズ群7のレンズ枠8も被写体側へ移動させられる。そして、図1に示した沈胴状態から、全てのレンズ群を繰り出して停止した状態が、図5に示された状態であり、本実施例の場合には、この状態が広角端での撮影待機状態である。また、図1に示された状態から図5に示された状態になる過程で、バリア板20,21は、図示していない機構を介して作動させられ、開口部18aを開放している。
【0038】
撮影を行うに際してズーミングを行う場合には、撮影レンズと連動しているズームファインダを覗きながら、図示していないモータによって回転筒13を正・逆転させ、カム筒14に形成されているカム溝14d,14e,14fの形状によって、第1〜第3レンズ群22,26,37の相対位置関係を変化させる。また、焦点調節は、モータ4を正・逆転させ、リードスクリュー6を介して、レンズ枠8を所定の位置まで移動させるようにする。図7は、そのようにして制御された各レンズ群の望遠端での撮影位置を示したものである。
【0039】
ところで、本実施例においては、焦点調節用の第4レンズ群のほかに、ズーム比を大きくするためにズーム用のレンズは3群からなっていて、望遠端での撮影時においては、2群の場合に比較して、第1レンズ群22を大きく被写体側へ繰り出すようにしているため、直進筒17の光軸方向の長さが全体として長くなっている。ところが、そのようにすると、ズーミングを行うときや、沈胴状態にするときに、直進筒17の撮像装置2側の端部が、第1移動部材24のピン24aの立設部や第2移動部材25のピン25aの立設部に干渉してしまうことになる。そのため、明示していないが、直進筒17には、それらの立設部と干渉せず、それらの立設部が撮像装置2側から入り込めるようにしたスロット状の六つの逃げ部が形成されている。しかしながら、そのようすると、図7に示す状態にしたとき、スロット状の逃げ部の一部(図7における直進筒17の上方右端部)が、回転筒13の被写体側の端部よりも被写体側に露出してしまうことになる。そこで、本実施例の場合には、補助筒16を設け、その露出してしまうスロット状の逃げ部を覆い隠すようにしている。
【0040】
このようにして、ズーミングが行われた後、カメラのレリーズボタンが押されると、測光回路によって、先ず、絞り開口の大きさが決定される。そして、最大絞り開口の場合には、直ちに撮影に入るが、開口部27aよりも小さい絞り開口で撮影する場合には、ステップモータ32に所定のパルス信号が与えられるので、回転子32fが、図6において時計方向へ回転させられ、2段歯車34を介して、駆動リング28を初期位置から時計方向へ回転させる。そのため、3枚の絞り羽根29は、それらの係合ピン29bを駆動リング28のカム溝28aに押されることによって同時に時計方向へ回転させられ、所定の絞り開口形成位置で停止する。図8は、そのようにして所定の絞り開口に設定された状態を示したものである。
【0041】
上記のようにして、所定の絞り開口が設定されると、それまでに撮像装置2の固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出することによって撮影が開始されるが、所定の露光時間が経過すると、モータ33のコイル33aに正方向の電流が供給され、回転子33cが、図8において反時計方向へ回転させられるので、シャッタ羽根30,31は、出力ピン33dによって相反する方向へ回転させられ、絞り開口を閉鎖する。そして、その閉鎖状態において、撮像情報が画像記憶装置に転送されると、今度は、コイル33aに対して先ほどとは逆方向に電流が供給されるため、回転子33cは時計方向へ回転し、出力ピン33dによってシャッタ羽根30,31に開き作動を行わせ、図8の状態に復帰させる。他方、ステップモータ32のコイル32a,32bにも、回転子32fを先ほどとは逆方向へ回転させるパルス信号が与えられるため、回転子32fは、2段歯車34を介して駆動リング28を反時計方向へ回転させ、図6に示した初期位置へ復帰させて、次の撮影に備えることになる。
【0042】
このようにして、撮影が行われた後、もはや撮影を続けないことにした場合は、カメラの電源スイッチをオフにするが、その場合でも遅延回路が働いていて、所定の時間だけはオン状態が継続するようになっており、各モータは回転し得るようになっている。そこで先ず、モータ4が回転すると、レンズ枠8は、リードスクリュー6を介して、撮像装置2側へ直進させられ、第4レンズ群7を撮像装置2の前面に接近させた状態で停止させられる。他方、駆動リング28を回転させるステップモータ32と、回転筒13を回転させる図示していないモータも回転させられる。このとき、ステップモータ32の回転子32fは、図6において反時計方向へ回転させられるので、駆動リング28も2段歯車34を介して初期位置から反時計方向へ回転させられるが、3枚の絞り羽根29は上記した理由によって回転させられることはない。ところが、この回転によって、押動部28bが被押動ピン35bを押すことになるので、レンズ保持部材35は、ばね38の付勢力に抗して時計方向へ回転させられ、第3レンズ群37を、光軸を横切る方向へ移動させ、図3に示された状態に退避させる。
【0043】
また、鏡胴外に配置されている図示していないモータが歯車12を回転させると、一体化されている回転筒13とカム筒14とが、固定筒10のカム溝10aに案内されて、回転しながら撮像装置2側へも移動させられるが、キー筒15は回転せず、固定筒10のキー溝10bに案内されて撮像装置2側へ直進させられる。また、補助筒16,直進筒17,第1移動部材24,第2移動部材25は、カム筒14のカム溝14c,14d,14e,14fとキー筒15のキー溝15c,15d,15e,15fとに案内されて撮像装置2側へ直進させられる。このようにして、第1〜第3レンズ群22,26,37は固定筒10内に沈胴していくが、それと並行して、図示していないバリア装置も作動させられ、バリア板20,21が第1レンズ群22の前面にある開口部18aを覆っていく。そして、図1に示された沈胴状態になったことを、図示していないセンサーが検出すると、上記の図示していない鏡胴外のモータの回転が停止させられる。
【0044】
尚、上記の実施例は、デジタルカメラ用のレンズ鏡胴であるが、銀塩フィルムを使用するカメラに採用する場合には、周知のように、撮像装置2の位置には開口部が設けられているだけにし、その開口部をフィルムの前面に配置するようにしてカメラ本体に取り付けることになる。そして、その場合には、本実施例の場合と異なり、撮影前においては、シャッタ羽根30,31は、開口部27aを閉鎖しており、撮影に際して開き作動と閉じ作動とを連続的に行わされることになる。また、本実施例の場合には、2枚のシャッタ羽根30,31を備えているが、羽根の大きさを若干大きくして、いずれか一方だけにしても構わない。
【0045】
また、本実施例は、駆動リング28と、3枚の絞り羽根29と、2枚のシャッタ羽根30,31と、二つのモータ32,33とを、いずれも第2移動部材25に直接取り付けるようにしているが、本発明は、周知のシャッタ装置ユニットと同様に、それらをカバー板27との間に羽根室を構成する地板に取り付け、その地板を、第2移動部材25に取り付けるようにしても構わない。また、本実施例の場合には、3枚の絞り羽根29を備えていて、絞り開口を多段的に変化させ得るようにしているが、それらの絞り羽根29に代えて、開口部27aよりも小さな絞り開口を形成した1枚の絞り羽根を備えるようにし、1段階だけ絞れる絞り機構としても構わない。
【0046】
また、本実施例の3枚の絞り羽根29は、シャッタ羽根とすることが可能である。その理由は、本実施例の3枚の絞り羽根29は、図4から分かるように、駆動リング28側から1枚ずつ単純に重ねてあるだけであるから、駆動リング28を、図8の位置から、さらに時計方向へ回転させていくと、カム溝28aをそのまま長く形成したり傾斜角度を急峻に形成したりすれば、3枚の絞り羽根29によって開口部27aを閉鎖することが可能になるからである。そして、そのようにした場合には、絞り機構を設けないようにしても構わないが、本実施例のシャッタ羽根30,31の1枚を絞り羽根として採用し、上記のように、開口部27aよりも小さな絞り開口を形成するようにしても構わない。
【0047】
また、上記のように、本実施例の3枚の絞り羽根29をシャッタ羽根とした場合には、絞り羽根兼用のシャッタ羽根とすることが可能になる。そして、そのように構成したレンズ鏡胴をデジタルカメラに採用した場合には、駆動リング28を、例えば図8の状態で一旦停止させて撮影を開始し、撮影の終了時には、駆動リング28をさらに時計方向へ回転させて、シャッタ羽根に開口部27aを閉鎖させることになる。また、銀塩フィルムを使用するカメラに採用する場合には、駆動リング28のカム溝28aの形状を変えておき、駆動リング28が初期位置にあるときには、シャッタ羽根は開口部27aを閉鎖しており、
撮影開始の信号で、駆動リング28を初期位置から時計方向へ回転させて、シャッタ羽根に開口部27aの開き作動を行わせ、開口部27aが全開になる前に駆動リング28を初期位置へ復帰させ、シャッタ羽根に開口部27aを閉鎖させることになる。
【0048】
更に、本実施例の場合には、キー筒15を設けているが、それは、一体化されている回転筒13とカム筒14が回転させられるとき、補助筒16,直進筒17,第1移動部材24,第2移動部材25が回転しないようにするためである。特に、第2移動部材には、二つのモータ32,33が取り付けられているため、電源の接続上、回転してしまうのは決して好ましいとはいえない。しかしながら、第2移動部材が回転しても、その回転角度が小さい場合や、好適な電源との接続方法が講じられる場合には、必ずしもキー筒15を必要としない。また、上記したように、本実施例は、三つのレンズ群によってズーミングを行うようにしているが、本発明は、特許文献1に記載されているような二つのレンズ群によってズーミングを行うものにも適用される。更に本実施例では第3レンズ群を、光軸を横切る方向へ退避させているが、第1移動部材にシャッタ装置等を取り付けるようにして、第2レンズ群を、第1レンズ群と同様な構成によって退避させるようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例の沈胴状態(カメラの不使用状態)における断面図である。
【図2】図2(a)は図1に示されているカム筒を展開して内側から見た図であり、図2(b)は図1に示されているキー筒を展開して内側から見た図である。
【図3】図1の沈胴状態において、第2移動部材に取り付けられている部材を撮像装置側から見て示した平面図である。
【図4】図3の状態における絞り機構と、第3レンズ群の保持部材とを分かり易く示した平面図である。
【図5】第1〜第3レンズ群が、図1の位置から広角端撮影位置に繰り出された状態を示した断面図である。
【図6】図5の状態を、図3と同じようにして示した平面図である。
【図7】第1〜第3レンズ群の望遠端撮影位置を示した断面図である。
【図8】絞り羽根が、図4,図6に示された最大絞り開口制御位置から所定の絞り開口制御位置へ作動させられた状態を示した平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 本体部材
1a 案内ピン
2 撮像装置
3 モータ取付板
4,33 モータ
4a 出力軸
5,36 ビス
6 リードスクリュー
7 第4レンズ群
8,23 レンズ枠
9 ナット部材
10 固定筒
10a,14c,14d,14e,14f,28a カム溝
10b,15c,15d,15e,15f キー溝
1125c,25d,25e 軸
12 歯車
13 回転筒
13a 部分歯車
13b,16a,17a,24a,25a ピン
14 カム筒
14a 突起
14b フック部
15 キー筒
15a 溝
15b キー
16 補助筒
17 直進筒
18 前板
18a,25b,27a 開口部
19,27 カバー板
20,21 バリア板
22 第1レンズ群
24 第1移動部材
24b,35a レンズ保持部
25 第2移動部材
26 第2レンズ群
27b ストッパーピン
28 駆動リング
28b 押動部
28c 歯部
29 絞り羽根
29a 羽根軸
29b 係合ピン
30,31 シャッタ羽根
32 ステップモータ
32a,32b,33a コイル
32c,32d,33b ヨーク
32e 出力歯車
32f,33c 回転子
33d 出力ピン
34 2段歯車
35 レンズ保持部材
35b 被押動ピン
35c 当接部
37 第3レンズ群
38 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状のカム溝を複数有していて本体部材の被写体側に固定されている第1筒と、複数種類の形状のカム溝を複数ずつ有していて前記第1筒の内側に配置されており第1駆動手段によって回転させられたとき前記第1筒のカム溝に案内されて光軸方向へも移動させられ前記第1筒に出入りする第2筒と、一番被写体側に配置された第1レンズ群を保持して前記第2筒の内側に配置されており前記第2筒が回転させられたとき前記第2筒の所定の種類のカム溝に案内されて光軸方向へ移動させられ前記第2筒に出入りする第3筒と、レンズ群を保持して前記第2筒の内側に配置されており前記第2筒が回転させられたとき前記第2筒の所定の種類のカム溝に案内されて光軸方向へ移動させられ前記第1レンズ群を含むレンズ群同士の相対位置を変化させてズーミングを行う少なくとも一つの移動部材と、を備えたレンズ鏡胴であって、前記移動部材の一つは、第2駆動手段と、光軸を中心にして回転可能に配置されていて該第2駆動手段によって初期位置から両方向に往復回転させられる駆動リングと、該駆動リングが初期位置から一方へ往復回転することによって撮影光路を開閉する少なくとも1枚のシャッタ羽根と、前記レンズ群を取り付けていて該駆動リングが初期位置から他方へ往復回転するとその往動時にはばねの付勢力に抗して回転させられて前記レンズ群を撮影光路外へ退避させ復動時には該ばねの付勢力によって撮影光路内に前記レンズ群を進出させるレンズ保持部材と、を取り付けていることを特徴とする沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項2】
前記移動部材の一つには地板が取り付けられており、前記第2駆動手段と、前記駆動リングと、前記少なくとも1枚のシャッタ羽根とは、該地板に取り付けられていて、シャッタ装置ユニットを構成していることを特徴とする請求項1に記載の沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項3】
前記少なくとも1枚のシャッタ羽根が、光軸を中心にして開閉作動を行う複数枚のシャッタ羽根であって、該複数枚のシャッタ羽根は、撮影に先立って前記駆動リングが初期位置から一方へ往動したとき撮影光路の全開位置から閉じ作動を開始させられ、該撮影光路を閉鎖する前に一旦停止させられて撮影が行われ、撮影終了時には前記駆動リングの往動再開によって撮影光路を閉鎖するようにした絞り羽根兼用のシャッタ羽根であることを特徴とする請求項1又は2に記載の沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項4】
前記少なくとも1枚のシャッタ羽根が、光軸を中心にして撮影光路の開閉作動を行う複数枚のシャッタ羽根であって、該複数枚のシャッタ羽根は、撮影に際して前記駆動リングが初期位置から一方へ往動したとき撮影光路の閉鎖位置から開き作動を開始させられ、該撮影光路を全開にする前に前記駆動リングが復動したときには該撮影光路の閉じ作動を行うようにした絞り羽根兼用のシャッタ羽根であることを特徴とする請求項1又は2に記載の沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項5】
前記少なくとも1枚のシャッタ羽根が、少なくとも1枚の絞り羽根であって、該絞り羽根を取り付けている前記移動部材には、さらに、シャッタ羽根と、該シャッタ羽根に開閉作動を行わせる第3駆動手段とが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項6】
前記移動部材には地板が取り付けられており、前記第2駆動手段と、前記駆動リングと、前記絞り羽根と、前記第3駆動手段と、前記シャッタ羽根とは、該地板に取り付けられていて、シャッタ装置ユニットを構成していることを特徴とする請求項5に記載の沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項7】
光軸と平行に直線状に形成された複数種類のキー溝を複数ずつ有していて前記第2筒の内側に配置されており前記第2筒の回転によって光軸方向へのみ前記第2筒と共に移動する第4筒を備えていて、前記第3筒と前記移動部材とは、該第3筒の内側に配置され、前記第2筒が回転したとき、前記第2筒に形成された各々の所定の種類のカム溝と該第3筒に形成された各々のキー溝の両方に案内されて、光軸方向へ個々に移動されるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項8】
前記固定筒内において、前記本体部材には、第4駆動手段と、焦点調節用レンズ群を保持していて該第4駆動手段によって光軸方向へ移動させられる焦点調節用レンズ枠と、が取り付けられていて、前記レンズ保持部材を取り付けている前記移動部材は、該焦点調節用レンズ枠の被写体側に配置されており、前記レンズ保持部材に保持されている前記レンズ群は、前記第2筒が前記第1筒に収容されたとき、撮影光路外へ退避させられて、前記焦点調節用レンズ枠の径方向位置に配置されるようにしたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の沈胴式のカメラ用レンズ鏡胴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−40161(P2008−40161A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214794(P2006−214794)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】