説明

油を含有する食品を製造するための油組成物

本発明は、油およびブロスを含む油組成物、それの調製方法、ならびに油を含有する食肉ベース製品および油を含有するエマルジョンタイプの食品を製造するためのそれの使用に関する。さらに本発明は、本発明の油組成物を用いて油を含有する食肉ベース製品を製造する方法、およびそれにより得られる、油を含有する食肉ベース製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油およびブロスを含む油組成物、それの調製方法、ならびに油を含有する食肉ベース製品(meat−based product)および油を含有するエマルジョンタイプの食品を製造するためのそれの使用に関する。さらに本発明は、本発明の油組成物を用いて油を含有する食肉ベース製品を製造する方法、およびそれにより得られる、油を含有する食肉ベース製品に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
動物脂肪の代替として食用油、特に食用植物油を含有する食品、特に食肉ベース製品は、ダイエット/健康の観点から望ましい;それらはより低いコレステロール含量およびより高い不飽和脂肪酸−対−飽和脂肪酸比をもつからである。基本的に、それらの食肉ベース製品は2つの異なる方法、すなわち、油の直接装入に基づく方法および油の間接装入に基づく方法により製造される。
【0003】
油の直接装入に基づく方法によれば、ある量の純粋な未処理油を、目的とする食肉ベース製品の製造に用いる食肉または食肉素材に直接導入する。しかし、食肉ベース製品への油の安定装入を確実にするためには、食肉ベース製品の製造に際して種々の決定的なプロセスパラメーターに厳密に従わなければならない(たとえば、European Patent No.1361804を参照)。さらに、多くの場合、最終製品からの油滲出の発生を避けるために、加工助剤、たとえば大豆タンパク質および乳タンパク質の使用が必要である。
【0004】
油の間接装入に基づく方法では、食肉ベース製品の製造に用いる油にまず予備乳化プロセスを施し、これにより油を水および乳化剤で予備乳化する。この予備乳化した油を、次いで目的とする食肉ベース製品の製造に用いる食肉または食肉素材に導入する(たとえば、J. G. Bloukas and E. D. Paneras, Journal of Food Sciences, Volume 58, No. 4, 1993, p. 705-709; E. D. Paneras and J. G. Bloukas, Journal of Food Sciences, Volume 59, No. 4, 1994, p. 725-733; US−A−005238701を参照)。しかし、油を水および乳化剤で予備乳化するために用いられる一般に80〜120℃の適用乳化温度は、食肉ベース製品の官能特性に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
したがって本発明の目的は、油を含有する食品、特に油を含有する食肉ベース製品を製造するための方法であって、加工助剤を使用しなくても食品に油を安定に装入できかつ最終製品の優れた官能特性を可能にする、新規方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1〜4に記載する油組成物、請求項5に記載する、その油組成物を調製するための方法、および請求項6〜17に記載する、油を含有する食品、特に油を含有する食肉ベース製品の製造のための、油組成物の使用により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の種々の例示態様および本発明による油組成物の使用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
したがって、第1観点によれば、本発明は油およびブロスを含む油組成物に関する。好ましくは、油とブロスの比率は1:1から1:3までの範囲である。特に、本発明の油組成物の油とブロスの比率は1:1から1:2.5まで、より好ましくは1:1から1:2まで、最も好ましくは1:1から1:1.5までの範囲である。ただし、本発明に関して、3:1から1:3までの範囲の油とブロスの比率も可能である。
【0009】
本発明の油組成物は、食用油を、油の官能パラメーター、ダイエットパラメーターおよび栄養パラメーターをほとんど変化させることなく技術的に可能な最大量で、食肉ベース製品、マヨネーズタイプの製品またはサラダドレッシングなどの食品に導入することができる。特に、本発明の油組成物は、調理ソーセージ、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージ、ペーストリー、パテ、生鮮(生)ソーセージ、および粗砕(またはミンス)食肉ベース製品の食肉素材に、あるいは調理済み全筋肉組織ベース製品、ドライ(発酵)全筋肉組織ベース製品(生(ドライ)全筋肉組織ベース製品と同じ)および生鮮(生)全筋肉組織ベース製品の食肉片に、本質的に相分離による油滲出を発生することなく安定に装入できる。
【0010】
本発明に関して、用語“油(oil)”には、ヒトが摂取するのに適したいずれかの食用油が含まれる。好ましくは、本発明の油組成物に含有される油は食用植物油、食用動物油またはその混合物である。しかし、ダイエットの観点からは食用植物油がより好ましい。本発明に従って使用できる多種多様な食用植物油のうちの若干には、下記のものが含まれる:オリーブ油、パーム油、ダイズ油、カノラ油(canola oil)、カボチャ種油、トウモロコシ油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油、ラッカセイ油、クルミ油、麦芽油、ブドウ種油、ゴマ油、アルガン油(argan oil)、米ぬか油、およびその混合物。しかし、調理に用いられる他の多種多様な植物油も本発明の油組成物に含有させることができる。前記の油のうち、オリーブ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、菜種油、およびその混合物が特に好ましく、オリーブ油が最も好ましい。さらに、本発明の油組成物中に使用する油は有機油であることが好ましい。
【0011】
本発明に従って用いる用語“ブロス(bross)”には、ヒトが摂取するのに適したいずれかのブロスが含まれる。本発明の油組成物中に含有させることができる多種多様なブロスのうちの若干には、下記のものが含まれる:牛肉ブロス、豚肉ブロス、鶏肉ブロス、子牛肉(veal)ブロス、子羊肉(lamb)ブロス、鴨肉(canard)ブロス、ガチョウ肉(goose)ブロス、野菜ブロス、およびその混合物。しかし、ヒトが摂取するのに適した他の食用種で調製する他の多数のブロスも本発明の油組成物に含有させることができる。好ましくは、本発明による油組成物のブロスは牛肉ブロス、豚肉ブロス、鶏肉ブロス、野菜ブロス、またはその混合物である。本発明の好ましい態様によれば、ブロスは低い脂肪含量をもつ。特に、ブロスの脂肪含量は5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。
【0012】
本発明の油組成物に含有されるブロスは、当技術分野で周知の方法に従って調製できる。食肉ブロスを調製するための方法の例は下記のものである:牛、豚、鶏、子牛、子羊、鴨、ガチョウ、またはヒトが摂取するのに適した他の動物種からの屠殺体部分(carcass item)であって、横紋筋、脂肪および結合組織(腱、筋膜)が付着した長骨(牛の長骨を除く)からなるものを水と共にボイラーに入れ、その屠殺体部分の種類およびサイズに応じて適宜な時間ボイルする。得られたブロスを濾過してブロスの固形分を除去し、その後、冷却する。ブロスの脂肪含量を低下させるために、冷却後にブロス中に生じた固体脂肪粒子を場合により分離する。この方法によれば、屠殺体部分と水の最適量比は1:2から1:6までの範囲であり、1:4が特に好ましい。さらに、屠殺体部分のボイリングを90から100℃までの温度で約4〜12時間行なうのが好ましく、一方、ブロスを0℃から8℃までの微生物学的基準に適合する範囲の温度に冷却することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の油組成物が少なくとも1種類の追加成分を含むことが本発明の範囲に含まれる。好ましくは、この少なくとも1種類の追加成分は、塩類、特にNaCl、野菜、抗酸化剤、安定剤、保存剤、香味増強剤、酸性化剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、加工助剤、糖類、調味料、スパイス、およびその混合物からなる群から選択される。
【0014】
さらに他の観点によれば、本発明は、本発明の油組成物を調製するための方法であって、下記の工程を含む方法に関する:
(a)油を用意し、
(b)ブロスを用意し、
(c)油とブロスを1:1〜1:3の比率で混合する。
【0015】
本発明方法の工程(a)および(b)で用意する油およびブロスは、前記に定めたものである。本発明によれば、本発明方法の油とブロスを混合する工程(工程(c))は、緩和な温度条件下で、激しい混合装置、たとえばブレンダー、ミキサーまたはカッターを用いて行なわれる。本発明の油組成物の調製に際して用いる温度は、通常は0℃から室温までの範囲、好ましくは0℃から15℃まで、より好ましくは0℃から10℃まで、最も好ましくは0℃から4℃までの範囲である。特に、油とブロス、および場合により前記に定めた少なくとも1種類の追加成分の混合は、1000rpmを超える、好ましくは2000rpmを超える、より好ましくは3000rpmを超える、最も好ましくは4000rpmを超える混合速度で行なわれる。混合時間は一般に、使用する油の種類、使用するブロスの種類、ならびに油およびブロスの適用量に依存する。しかし、10分以下、好ましくは8分以下、より好ましくは5分以下、最も好ましくは3分以下の混合時間が適切である。本発明の油組成物の調製のために用いる油とブロスの比率は、1:1から1:3まで、好ましくは1:1から1:2.5まで、より好ましくは1:1から1:2まで、最も好ましくは1:1から1:1.5までの範囲である。
【0016】
本発明の油組成物において、ブロスは食用油のキャリヤーとして作用する。本発明の油組成物の調製に際して用いる緩和な条件(温度:0〜25℃)のため、食用油の特性、特に油の官能パラメーター、ダイエットパラメーターおよび栄養パラメーターはほとんど変化せず、したがって本発明の油組成物を含有する食品にそのまま容易に伝達することができる。
【0017】
他の観点において、本発明は、油を含有する食肉ベース製品を製造するための、本発明による油組成物の使用に関する。
本発明の油組成物の使用により、食用油を相分離による油滲出が生じることのない技術的に可能な最大量で食肉ベース製品に安定に導入することができる。したがって、油を含有する食肉マトリックスを安定化するための加工助剤、たとえば大豆タンパク質および乳タンパク質の使用は、もはや本質的に不必要である。さらに、本発明の油組成物を含有する食肉ベース製品に、油の官能特性、ダイエット特性および栄養特性をそのまま伝達することができる。
【0018】
本発明によれば、食肉ベース製品は好ましくは、調理ソーセージ、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージ、調理およびドライ(発酵)および生鮮(生)全筋肉組織ベース製品、ペーストリー、パテ、生鮮(生)ソーセージ、ならびに粗砕(またはミンス)食肉ベース製品からなる群から選択される。しかし、具体的には述べないが、油を含有する他のいずれの食肉ベース製品も本発明の油組成物を用いて製造できる。
【0019】
本発明に関して、用語“調理ソーセージ”は、本明細書中で用いる場合は常に、いかなる調理ソーセージも含み、好ましくはフランクフルト(frankfurter)、パリゼー(parizer)、モルタデッラ(mortadella)、ブラットブルスト(bratwurst)タイプのソーセージ、カントリーソーセージなどからなる群から選択される。用語“発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージ”は、本明細書中で用いる場合は常に、いかなる発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージも含み、好ましくはサラミ(salami)、チョリソ(chorizo)、レフカダ(lefkada)およびハンガリー(hungarian)タイプなどからなる群から選択される。さらに、用語“調理済み全筋肉組織ベース製品”は、本明細書中で用いる場合は常に、いかなる調理済み全筋肉組織ベース製品も含み、好ましくは調理ハム、シチメンチョウのフィレット(fillet)、ローストビーフ、ローストチキン、シュニッツェル(schnitzel)、ナゲット(nugget)などからなる群から選択される。さらに、用語“ドライ(発酵)全筋肉組織ベース製品”は、本明細書中で用いる場合は常に、いかなるドライ(発酵)全筋肉組織ベース製品も含み、好ましくはパルマ(parma)ハム、セラーノ(serano)ハム、コッパ(coppa)、ウェストファーリア(westphalian)ハム、パンチェッタ(pancetta)などからなる群から選択される。さらに、用語“生鮮(生)全筋肉組織ベース製品”は、本明細書中で用いる場合は常に、いかなる生鮮(生)全筋肉組織ベース製品も含み、好ましくはシュニッツェル、ナゲット、ゴードンブルー(Gordon blue)、ギロス(gyros)タイプの製品(たとえば、ギリシャ・ギロス)、ケバブ(kebab)、スブラキ(souvlaki)などからなる群から選択される。用語“ペーストリー”は、本明細書中で用いる場合は常に、いかなるペーストリーも含み、好ましくはパイ、ロール、詰め物(filled product)などからなる群から選択される。用語“パテ”は、本明細書中で用いる場合は常に、いかなるパテも含み、好ましくはパテ、パテ・ド・カンパーニュ(pate de campagne)、アルデネパテ(pate ardennais)、コンフィ・ド・フォア(confit de foie)などからなる群から選択される。さらに、用語“生鮮(生)ソーセージ”は、本明細書中で用いる場合は常に、いかなる生鮮(生)ソーセージも含み、好ましくはブラットブルストタイプ、ロンガニサ(Longaniza)タイプ、チョリソ(Chorizo)タイプ、ブレックファスト(Breakfast)ソーセージタイプなどからなる群から選択される。さらに、用語“粗砕(またはミンス)食肉ベース製品”は、本明細書中で用いる場合は常に、いかなる粗砕(またはミンス)食肉ベース製品も含み、好ましくはドネル・ケバブ(doener kebab)、ミートボール、バーガーパッティー(burger patty)などからなる群から選択される。
【0020】
本発明によれば、本発明の油組成物を、前記の食肉ベース製品の製造に一般に用いられる動物脂肪の代替として使用することが好ましい。しかし、本発明の油組成物は追加脂肪源として動物脂肪と共に使用することもできる。
【0021】
油を含有する食肉ベース製品を製造するために用いる本発明の油組成物の量は、特に油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに製造する食肉ベース製品の油の予定最終濃度に依存する。本発明による油組成物の量の例は、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%、最も好ましくは25〜35重量%である。特に、こうして製造される食肉ベース製品の油の最終濃度は、1から30重量%まで、好ましくは2から20%まで、より好ましくは2から15重量%まで、最も好ましくは4から15重量%までの範囲である。
【0022】
本発明による油組成物を、当技術分野で既知の常法に従って、食肉素材に直接添加することにより(たとえば、調理ソーセージ、ペーストリー、パテ、生鮮(生)ソーセージ、粗砕(またはミンス)食肉ベース製品)、あるいは食肉組織に注入することにより(たとえば、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージ、調理およびドライ(発酵)および生鮮(生)全筋肉組織ベース製品)、食肉ベース製品に装入できる。調理済み全筋肉組織ベース製品の場合、全筋肉組織ベース製品の製造に一般に用いられるブライン水(brine water)の全部または一部の代替として、本発明の油組成物を使用できる。その場合、本発明の油組成物は、好ましくは追加のブライン成分を含み、あるいは好ましくは使用前にブラインと混合される。
【0023】
さらに、他の観点において本発明は、本発明の油組成物を用いて油を含有する食肉ベース製品を製造するための方法に関する。好ましくは、本発明方法に従って製造される食肉ベース製品は、調理ソーセージ、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージ、調理およびドライ(発酵)および生鮮(生)全筋肉組織ベース製品、ペーストリー、パテ、生鮮(生)ソーセージ、粗砕(またはミンス)食肉ベース製品からなる群から選択される。しかし、具体的には述べないが、油を含有する他のいずれの食肉ベース製品も、本発明に従って製造できる。
【0024】
好ましくは、本発明方法に従って製造される、油を含有する食肉ベース製品は、前記の食肉ベース製品に一般に含有される動物脂肪の代替として食用油を含有する。しかし、本発明方法に従って製造される食肉ベース製品は、食用油と動物脂肪の両方を含有することもできる。
【0025】
油を含有する食肉ベース製品の製造に用いられる本発明の油組成物の量は、特に油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに製造する食肉ベース製品の油の予定最終濃度に依存する。本発明による油組成物の量の例は、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%、最も好ましくは25〜35重量%である。特に、本発明方法により製造される食肉ベース製品の油の最終濃度は、1から30重量%まで、好ましくは2から20%まで、より好ましくは2から15重量%まで、最も好ましくは4から15重量%までの範囲である。
【0026】
本発明方法によれば、当技術分野で既知の常法に従って、本発明の油組成物を食肉素材に直接添加することにより(たとえば、調理ソーセージ、ペーストリー、パテ、生鮮(生)ソーセージ、粗砕(またはミンス)食肉ベース製品)、あるいは細断前の食肉組織に適宜ないずれかの時点で注入することにより(たとえば、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージ、調理およびドライ(発酵)および生鮮(生)全筋肉組織ベース製品)、食肉ベース製品に装入できる。調理済み全筋肉組織ベース製品の場合、全筋肉組織ベース製品の製造に一般に用いられるブライン水の全部または一部の代替として、本発明の油組成物を使用できる。その場合、本発明の油組成物は、好ましくは追加のブライン成分を含み、あるいは好ましくは使用前にブラインと混合される。
【0027】
本発明の好ましい態様において、本発明方法は調理ソーセージの製造のためのものであり、下記の工程を含む:
(a)食肉、好ましくは低脂肪肉(赤身肉)(lean meat)、本発明による油組成物、および追加成分を含む、細砕(finely comminuted)食肉ペーストを用意し、
(b)この細砕食肉ペーストを充填材料(stuffing material)に詰め、
(c)この充填した食肉ペーストに加熱処理を施し、そして
(d)最終製品を冷却および包装する。
【0028】
上記方法の工程(a)において、食肉、好ましくは低脂肪肉、本発明による油組成物、および他の成分を用いて、細砕食肉ペーストを調製する。これに関して用いる用語“低脂肪肉”は、脂肪含量が最高10重量%、好ましくは最高8重量%、より好ましくは最高5重量%、最も好ましくは最高3重量%の食肉を表わす。好ましくは、食肉は牛肉、豚肉、鶏肉、子羊肉、子牛肉、鴨肉、ガチョウ肉、もしくはヒトが摂取するのに適した他の動物種、および/またはその混合物から得られる食肉から選択される。これに関して用いる用語“他の成分”は、調理ソーセージの製造のために一般に用いられるいずれかの成分、たとえば塩類、特にNaClまたはブライン成分、抗酸化剤、安定剤、保存剤、香味増強剤、酸性化剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、加工助剤、糖類、調味料、スパイス、およびその混合物を含む。
【0029】
本発明によれば、上記方法の工程(a)は、調理ソーセージの製造に適した細砕食肉ペーストを調製する技術分野で既知の常法に従って実施される。細砕食肉ペーストを調製するための方法の例は下記のものである:目に見える脂肪を含まない低脂肪肉を、食卓塩および亜硝酸塩の存在下にカッターのボウル内で、本発明の油組成物および水/氷を連続添加および混合しながら細砕する。調味料ならびに場合により抗酸化剤および/または他の二次成分を添加し、目標とする細断効果が達成されるまで次第に切断速度を高めることにより混合物の完全なホモジナイゼーションに達すると、この調製は完了する。リン酸塩混合物(二リン酸塩、三リン酸塩、トリポリリン酸塩および/またはポリリン酸塩など)または他の加工助剤(たとえば植物タンパク質、乳タンパク質および卵タンパク質、デンプンなど)の使用が可能であるが、必須ではない。目に見える脂肪および/または食肉粒子を含む調理ソーセージの場合、得られた食肉ペーストにその後、脂肪および/または食肉粒子を添加して混ぜ込む。細砕食肉ペーストを調製する際の温度は、15℃を、より好ましくは12℃を、最も好ましくは8℃を超えないことが好ましい。
【0030】
細砕食肉ペーストを調製するために使用する本発明の油組成物の量は、特に油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに最終製品の油の予定濃度に依存する。本発明の油組成物の量の例は、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%、最も好ましくは25〜35重量%である。
【0031】
上記方法の工程(b)、(c)および(d)において、細砕食肉ペーストを充填材料に詰め、加熱処理を施し、そして包装する。本発明によれば、これらの工程は調理ソーセージを製造する技術分野で既知の常法に従って実施される。好ましくは、加熱処理に際して、調理ソーセージのコア温度は75℃を超えない。
【0032】
本発明方法に従って製造した、油を含有する調理ソーセージの例を、実施例2および3に詳細に記載する。
本発明の他の好ましい態様において、本発明方法は発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージの製造のためのものであり、下記の工程を含む:
(a)食肉(好ましくは低脂肪肉)片に、本発明による油組成物を注入し、
(b)食肉、好ましくは低脂肪肉、注入済み食肉片、および追加成分を含む、挽肉素材(ground meat mass)を用意し、
(c)この挽肉素材を充填材料に詰め、
(d)この充填した食肉素材を熟成させ、そして
(e)最終製品を包装する。
【0033】
上記方法の工程(a)において、食肉(好ましくは低脂肪肉)片に、本発明による油組成物を注入する。これに関して用いる用語“低脂肪肉”は、脂肪含量が最高10重量%、好ましくは最高8重量%、より好ましくは最高5重量%、最も好ましくは最高3重量%の食肉を表わす。好ましくは、食肉は牛肉、豚肉、鶏肉、子羊肉、子牛肉、鴨肉、ガチョウ肉、もしくはヒトが摂取するのに適した他の動物種、および/またはその混合物から得られる食肉から選択される。
【0034】
本発明によれば、上記方法の工程(a)は、物質を食肉片に注入する技術分野で既知の常法に従って実施される。本発明の油組成物を注入するための方法の例は、適切な注入装置、たとえばマルチニードルインジェクター(Multi Needles injector)を用いる。食肉片に注入するために使用する本発明の油組成物の量は、油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに最終製品の油の予定濃度に依存する。本発明の油組成物の量の例は、5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは5〜12重量%、最も好ましくは5〜10重量%である。
【0035】
上記方法の工程(b)において、食肉、好ましくは低脂肪肉、および工程(a)の注入済み食肉片、ならびに追加成分を用いて、挽肉素材を調製する。これに関して用いる用語“追加成分”は、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージの製造のために一般に用いられるいずれかの成分、たとえば塩類、特にNaClまたはブライン成分、抗酸化剤、安定剤、保存剤、香味増強剤、酸性化剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、加工助剤、糖類、調味料、スパイス、乳酸スターター培養物、およびその混合物を含む。
【0036】
本発明によれば、上記方法の工程(b)は、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージの製造に適した挽肉素材の調製の技術分野で既知の常法に従って実施される。挽肉素材を調製するための方法の例は下記のものである:適切な装置、たとえばカッターまたはグラインダー−ミキサーの組合せを用いて低脂肪肉を細断および混合する。適切な乳酸スターター培養物、調味料および糖類を添加する。続いて、注入済み低脂肪肉片を添加する。必要な塩類、たとえばNaCl、亜硝酸塩および硝酸塩、アスコルビン酸ナトリウムを添加して、混合プロセスは終了する。挽肉素材を調製する際の温度は、15℃を、より好ましくは12℃を、最も好ましくは8℃を超えないことが好ましい。
【0037】
上記方法の工程(c)、(d)および(e)において、挽肉素材を充填材料に詰め、熟成させ(発酵および脱水条件)、そして包装する。本発明によれば、これらの工程は、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージの製造の技術分野で既知の常法に従って実施される。本発明に従って使用するのに適した熟成条件の例を表5および6に示す。
【0038】
本発明方法に従って製造した、油を含有する発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージの例を、実施例5に記載する。
本発明のさらに他の好ましい態様において、本発明方法は調理済み全筋肉組織ベース製品の製造のためのものであり、下記の工程を含む:
(a)全筋肉組織に本発明による油組成物を注入し、
(b)この注入済み全筋肉組織にマッサージ工程を施し、
(c)工程(b)の全筋肉組織を充填材料に詰め、
(d)この充填した全筋肉組織に加熱処理を施し、そして
(e)最終製品を冷却および包装する。
【0039】
上記方法の工程(a)において、全筋肉組織に本発明による油組成物を注入する。本発明に従って用いる全筋肉組織は、牛肉、豚肉、鶏肉、子羊肉、子牛肉、鴨肉、ガチョウ肉、もしくはヒトが摂取するのに適した他の動物種、および/またはその混合物から得られる食肉から選択される。本発明によれば、注入に使用する本発明の油組成物は、好ましくはブラインと混合され、あるいはブライン成分を含有する。
【0040】
本発明によれば、上記方法の工程(a)は、物質を食肉片に注入する技術分野で既知の常法に従って実施される。本発明の油組成物を注入するための方法の例は、適切な注入装置、たとえばマルチニードルインジェクターを用いる。全筋肉組織に注入するために使用する本発明の油組成物の量は、油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに最終製品の油の予定濃度に依存する。本発明による油組成物の量の例は、2〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%、最も好ましくは2〜10重量%である。
【0041】
上記方法の工程(b)、(c)および(d)において、注入済み全筋肉組織にマッサージ工程を施し、加熱処理し、冷却および包装する。本発明によれば、これらの工程は調理済み全筋肉組織ベース製品を製造する技術分野で既知の常法に従って実施される。好ましくは、加熱処理に際して、調理済み全筋肉組織ベース製品のコア温度は75℃を超えない。
【0042】
本発明によれば、この方法は、調理ハム、シチメンチョウのフィレット、ローストビーフ、ローストチキンなどからなる群から選択される調理済み全筋肉組織ベース製品の製造のために特に好ましい。本発明方法に従って製造した、油を含有する調理済み全筋肉組織ベース製品の例を、実施例4に記載する。
【0043】
全筋肉組織ベース製品を製造する技術分野で一般に用いられている方法に優る上記方法の利点は、全筋肉組織ベース製品の製造に際して通常用いられるブラインの水の代替として、本発明の油組成物を添加できることである。この代替は部分的であってもよく、あるいは完全(すなわち100%)であってすら、本発明の油組成物がブライン成分に対する分散剤として作用して、相分離(油/水の分離)のリスクがない。
【0044】
本発明の別態様において、本発明方法は同様に調理済み全筋肉組織ベース製品の製造のためのものであり、下記の工程を含む:
(a)全筋肉組織に本発明による油組成物を注入し、
(b)この注入済み全筋肉組織をさらに加工して最終製品にする。
【0045】
上記方法の工程(a)において、全筋肉組織に本発明による油組成物を注入する。本発明に従って用いる全筋肉組織は、牛肉、豚肉、鶏肉、子羊肉、子牛肉、鴨肉、ガチョウ肉、もしくはヒトが摂取するのに適した他の動物種、および/またはその混合物から得られる食肉から選択される。本発明によれば、注入に使用する本発明の油組成物は、ブラインと混合してもよく、あるいはブライン成分を含有してもよい。
【0046】
本発明によれば、上記方法の工程(a)は、物質を食肉片に注入する技術分野で既知の常法に従って実施される。本発明の油組成物を注入するための方法の例は、適切な注入装置、たとえばマルチニードルインジェクターを用いる。全筋肉組織に注入するために使用する本発明の油組成物の量は、油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに最終製品の油の予定濃度に依存する。本発明による油組成物の量の例は、2〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%、最も好ましくは2〜10重量%である。
【0047】
上記方法の工程(b)において、注入済み全筋肉組織をさらに加工して最終製品にする。本発明によれば、この工程は調理済み全筋肉組織ベース製品を製造する技術分野で既知の常法に従って実施される。好ましい方法は、たとえばマッサージ、調理、ベーキング、グリリング、ディープフライングであり、その後、冷却および包装する。
【0048】
本発明によれば、この方法は、シュニッツェル、ナゲット、ゴードンブルー、ギロスタイプの製品(たとえば、ギリシャ・ギロス)、ケバブ、スブラキなどからなる群から選択される調理済み全筋肉組織ベース製品の製造のために特に好ましい。
【0049】
本発明の他の好ましい態様において、本発明方法は生鮮(生)全筋肉組織ベース製品の製造のためのものであり、下記の工程を含む:
(a)全筋肉組織に本発明による油組成物を注入し、
(b)この注入済み全筋肉組織をさらに加工して最終製品にする。
【0050】
上記方法の工程(a)において、全筋肉組織に本発明による油組成物を注入する。本発明に従って用いる全筋肉組織は、牛肉、豚肉、鶏肉、子羊肉、子牛肉、鴨肉、ガチョウ肉、もしくはヒトが摂取するのに適した他の動物種、および/またはその混合物から得られる食肉から選択される。本発明によれば、注入に使用する本発明の油組成物は、ブラインと混合してもよく、あるいはブライン成分を含有してもよい。
【0051】
本発明によれば、上記方法の工程(a)は、物質を食肉片に注入する技術分野で既知の常法に従って実施される。本発明の油組成物を注入するための方法の例は、適切な注入装置、たとえばマルチニードルインジェクターを用いる。全筋肉組織に注入するために使用する本発明の油組成物の量は、油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに最終製品の油の予定濃度に依存する。本発明による油組成物の量の例は、2〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%、最も好ましくは2〜10重量%である。
【0052】
上記方法の工程(b)において、注入済み全筋肉組織をさらに加工して最終製品にする。本発明によれば、この工程は生鮮(生)全筋肉組織ベース製品を製造する技術分野で既知の常法に従って実施される。好ましい方法は、たとえば場合によりマッサージし、その後、整形(forming)およびブレッディング(breading)もしくは成形(moulding)し、または串(skewer)上に配置し、続いて冷却もしくは冷凍、および包装するものである。
【0053】
本発明によれば、この方法は、シュニッツェル、ナゲット、ゴードンブルー、ギロスタイプの製品(たとえば、ギリシャ・ギロス)、ケバブ、スブラキなどからなる群から選択される生鮮(生)全筋肉組織ベース製品の製造のために特に好ましい。
【0054】
本発明の他の好ましい態様において、本発明方法はドライ(発酵)全筋肉組織ベース製品の製造のためのものであり、下記の工程を含む:
(a)全筋肉組織に本発明による油組成物を注入し、
(b)この注入済み全筋肉組織をさらに加工して最終製品にする。
【0055】
上記方法の工程(a)において、全筋肉組織に本発明による油組成物を注入する。本発明に従って用いる全筋肉組織は、牛肉、豚肉、鶏肉、子羊肉、子牛肉、鴨肉、ガチョウ肉、もしくはヒトが摂取するのに適した他の動物種、および/またはその混合物から得られる食肉から選択される。
【0056】
本発明によれば、上記方法の工程(a)は、物質を食肉片に注入する技術分野で既知の常法に従って実施される。本発明の油組成物を注入するための方法の例は、適切な注入装置、たとえばマルチニードルインジェクターを用いる。全筋肉組織に注入するために使用する本発明の油組成物の量は、油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに最終製品の油の予定濃度に依存する。本発明による油組成物の量の例は、2〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%、最も好ましくは2〜10重量%である。
【0057】
上記方法の工程(b)において、注入済み全筋肉組織をさらに加工して最終製品にする。本発明によれば、この工程はドライ(発酵)全筋肉組織ベース製品を製造する技術分野で既知の常法に従って実施される。好ましい方法は、たとえばキュアリング(curing)、バーニング(burning)および熟成である。
【0058】
本発明方法に従って製造した、油を含有するドライ(発酵)全筋肉組織ベース製品の例を、実施例6に記載する。
本発明の他の好ましい態様において、本発明方法は生鮮(生)ソーセージの製造のためのものであり、下記の工程を含む:
(a)食肉、本発明による油組成物、および追加成分を含む、細砕および/または粗砕食肉ペーストを用意し、
(b)この細砕および/または粗砕食肉ペーストを充填材料に詰め、そして
(c)最終製品を冷却または冷凍、および包装する。
【0059】
上記方法の工程(a)において、食肉、好ましくは低脂肪肉、本発明の油組成物、および他の成分を用いて、細砕および/または粗砕食肉ペーストを調製する。これに関して用いる用語“低脂肪肉”は、脂肪含量が最高10重量%、好ましくは最高8重量%、より好ましくは最高5重量%、最も好ましくは最高3重量%の食肉を表わす。好ましくは、食肉は牛肉、豚肉、鶏肉、子羊肉、子牛肉、鴨肉、ガチョウ肉、もしくはヒトが摂取するのに適した他の動物種、および/またはその混合物から得られる食肉から選択される。これに関して用いる用語“他の成分”は、生鮮(生)ソーセージの製造のために一般に用いられるいずれかの成分、たとえば塩類、特にNaCl、抗酸化剤、安定剤、保存剤、香味増強剤、酸性化剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、加工助剤、糖類、調味料、スパイス、他の補助成分、およびその混合物を含む。
【0060】
本発明によれば、上記方法の工程(a)は、生鮮(生)ソーセージの製造に適した細砕もしくは粗砕食肉ペーストまたはその混合物を調製する技術分野で既知の常法に従って実施される。生鮮(生)ソーセージの製造に適した食肉ペーストを調製するための方法の例は下記のものである:食肉を、食卓塩および亜硝酸塩の存在下にカッターのボウル内で、本発明の油組成物および水/氷を連続添加および混合しながら砕く。調味料ならびに場合により抗酸化剤および/または他の二次成分を添加し、目標とする細断効果が達成されるまで次第に切断速度を高めることにより混合物の完全なホモジナイゼーションに達すると、この調製は完了する。リン酸塩混合物(二リン酸塩、三リン酸塩、トリポリリン酸塩および/またはポリリン酸塩など)または他の加工助剤(たとえば植物タンパク質、食肉タンパク質、乳タンパク質、デンプン、ラスク(rusk)、卵または卵二次製品(derivative of egg)、デキストロースなど)の使用が可能であるが、必須ではない。細砕食肉ペーストを調製する際の温度は、15℃を、より好ましくは12℃を、最も好ましくは8℃を超えないことが好ましい。
【0061】
食肉ペーストを調製するために使用する本発明の油組成物の量は、特に油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに最終製品の油の予定濃度に依存する。本発明の油組成物の量の例は、2〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、最も好ましくは10〜20重量%である。
【0062】
上記方法の工程(b)および(c)において、食肉ペーストを充填材料に詰め、冷却または冷凍し、そして包装する。本発明によれば、これらの工程は生鮮(生)ソーセージを製造する技術分野で既知の常法に従って実施される。
【0063】
本発明方法に従って製造した、油を含有する生鮮(生)ソーセージの例を、実施例8に詳細に記載する。
さらに、本発明の他の好ましい態様において、本発明方法は粗砕(またはミンス)食肉ベース製品の製造のためのものであり、下記の工程を含む:
(a)食肉、本発明による油組成物、および追加成分を含む、粗砕(またはミンス)食肉素材を用意し、
(b)粗砕(またはミンス)食肉素材を整形し、そして
(c.1)最終製品を冷却または冷凍、および包装するか、あるいは
(c.2)最終製品を調理、冷却または冷凍、および包装する
上記方法の工程(a)において、食肉、好ましくは低脂肪肉、本発明の油組成物、および他の成分を用いて、粗砕(またはミンス)食肉素材を調製する。これに関して用いる用語“低脂肪肉”は、脂肪含量が最高10重量%、好ましくは最高8重量%、より好ましくは最高5重量%、最も好ましくは最高3重量%の食肉を表わす。好ましくは、食肉は牛肉、豚肉、鶏肉、子羊肉、子牛肉、鴨肉、ガチョウ肉、もしくはヒトが摂取するのに適した他の動物種、および/またはその混合物から得られる食肉から選択される。これに関して用いる用語“他の成分”は、粗砕(またはミンス)食肉ベース製品の製造のために一般に用いられるいずれかの成分、たとえば塩類、特にNaCl、抗酸化剤、安定剤、保存剤、香味増強剤、酸性化剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、加工助剤、糖類、調味料、スパイス、他の補助成分、およびその混合物を含む。
【0064】
本発明によれば、上記方法の工程(a)は、粗砕(またはミンス)食肉ベース製品の製造に適した粗砕(またはミンス)食肉素材を調製する技術分野で既知の常法に従って実施される。粗砕(またはミンス)食肉素材を調製するための方法の例は下記のものである:食肉を適切な装置(グラインダー)によって希望する粒度にミンスし、次いでミキサー内で塩(塩類)および本発明の油組成物と混合する。調味料ならびに場合により抗酸化剤および/または他の二次成分を添加して、この調製は完了する。リン酸塩混合物(二リン酸塩、三リン酸塩、トリポリリン酸塩および/またはポリリン酸塩など)または他の加工助剤(たとえば植物タンパク質、乳タンパク質、食肉タンパク質、デンプン、ラスク、卵または卵二次製品、デキストロースなど)の使用が可能であるが、必須ではない。場合により、希望するサイズに刻んだ野菜(たとえばタマネギ)を添加してもよい。粗砕食肉素材を調製する際の温度は、15℃を、より好ましくは12℃を、最も好ましくは8℃を超えないことが好ましい。
【0065】
粗砕食肉素材を調製するために使用する本発明の油組成物の量は、特に油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに最終製品の油の予定濃度に依存する。本発明の油組成物の量の例は、2〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、最も好ましくは10〜20重量%である。
【0066】
上記方法の工程(b)および(c)において、粗砕(またはミンス)食肉素材を整形し、場合により調理し、冷却または冷凍し、そして包装する。本発明によれば、これらの工程は粗砕(またはミンス)食肉ベース製品を製造する技術分野で既知の常法に従って実施される。
【0067】
本発明方法に従って製造した粗砕(またはミンス)食肉ベース製品の例を、実施例9に詳細に記載する。
さらに、本発明の他の好ましい態様において、本発明方法はパテの製造のためのものであり、下記の工程を含む:
(a)肝臓または肝臓と食肉の混合物、本発明による油組成物、および追加成分を含む、細砕ペーストを用意し、
(b)この細砕ペーストを充填または缶詰し、そして
(c)この充填または缶詰したペーストに加熱処理を施し、そして
(d)最終製品を冷却/冷蔵および包装する。
【0068】
上記方法の工程(a)において、肝臓または肝臓と食肉の混合物、本発明による油組成物、および他の成分を用いて、細砕ペーストを調製する。好ましくは、肝臓は牛、豚、鶏、子羊、子牛、鴨、ガチョウ、もしくはヒトが摂取するのに適した他の動物種から得られる肝臓、および/またはその混合物から選択される。これに関して用いる用語“他の成分”は、パテの製造のために一般に用いられるいずれかの成分、たとえば塩類、特にNaCl、抗酸化剤、安定剤、保存剤、香味増強剤、酸性化剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、加工助剤、糖類、調味料、スパイス、他の補助成分、およびその混合物を含む。
【0069】
本発明によれば、上記方法の工程(a)は、パテの製造に適したペーストを調製する技術分野で既知の常法に従って実施される。肝臓または肝臓と食肉の混合物を含む細砕ペーストを調製するための方法の例は下記のものである:肝臓を、食卓塩および亜硝酸塩の存在下にカッターのボウル内で、本発明の油組成物を連続添加および混合しながら細砕する。調味料ならびに場合により抗酸化剤および/または他の二次成分を添加し、目標とする細断効果が達成されるまで次第に切断速度を高めることにより混合物の完全なホモジナイゼーションに達すると、この調製は完了する。リン酸塩混合物(二リン酸塩、三リン酸塩、トリポリリン酸塩および/またはポリリン酸塩など)または他の加工助剤(たとえば植物タンパク質、乳タンパク質および卵タンパク質、デンプンなど)の使用が可能であるが、必須ではない。カントリーパテなど製造するパテの種類によっては、目に見える粒子の外観を与えるために、予備調理した食肉または肝臓の粒子を含有させる。細砕食肉ペーストを調製する際の温度は、15℃を、より好ましくは12℃を、最も好ましくは8℃を超えないことが好ましい。
【0070】
細砕ペーストを調製するために使用する本発明の油組成物の量は、特に油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに最終製品の油の予定濃度に依存する。本発明の油組成物の量の例は、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%、最も好ましくは25〜35重量%である。
【0071】
上記方法の工程(b)、(c)および(d)において、細砕ペーストを充填または缶詰し、そして加熱処理する。加熱処理条件は、既知の常法に従った低温殺菌(pasteurization)(充填の後)または殺菌(sterilization)(缶詰の後)を表わす。続いて、加熱処理済みの充填または缶詰したペーストを冷却または冷蔵し、そして包装する。本発明によれば、これらの工程はパテを製造する技術分野で既知の常法に従って実施される。
【0072】
本発明方法に従って製造したパテの例を、実施例7に詳細に記載する。
本発明の他の観点によれば、本発明は、前記の本発明方法により得られる、油を含有する食肉ベース製品に関する。
【0073】
さらに、他の観点において本発明は、油を含有するエマルジョンタイプの食品を製造するための、本発明による油組成物の使用に関する。
本発明の油組成物の使用により、食用油を技術的に可能な最大量でエマルジョンタイプの食品に容易かつ安定に導入することができる。こうして製造したエマルジョンタイプの食品は、相分離を生じる傾向がほとんどない。
【0074】
本発明によれば、エマルジョンタイプの食品は、サラダドレッシング、マヨネーズタイプの製品などからなる群から選択される。しかし、具体的には述べないが、油を含有する他のいずれのエマルジョンタイプの食品も、本発明の油組成物を用いて製造できる。
【0075】
好ましくは、本発明による油組成物を、前記のエマルジョンタイプの食品の製造に一般に用いられる油および/または脂肪の代替として使用する。しかし、本発明の油組成物は油および/または脂肪と共に使用することもできる。
【0076】
油を含有するエマルジョンタイプの食品を製造するために用いる本発明の油組成物の量は、特に油の種類、ブロスの種類、ならびに本発明の油組成物の油とブロスの比率、ならびに製造するエマルジョンタイプの食品の油の予定最終濃度に依存する。本発明による油組成物の量の例は、5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜50重量%、最も好ましくは25〜50重量%である。特に、こうして製造されるエマルジョンタイプの食品の油の最終濃度は、1から75重量%まで、好ましくは2から60%まで、より好ましくは2から50重量%まで、最も好ましくは5から35重量%までの範囲である。
【0077】
本発明による油組成物は、当技術分野で既知の常法に従って、油組成物を、目的とするエマルジョンタイプの食品の製造のために用いる他の成分と混合することにより、エマルジョンタイプの食品に装入することができる。
【0078】
本発明方法に従って製造したエマルジョンタイプの食品の例を、実施例8に詳細に記載する。
【実施例】
【0079】
本発明を図1及び以下の実施例によってさらに説明する。
実施例1:本発明による油組成物の調製
以下に、本発明による豚肉ブロスおよび鶏肉ブロスの調製例を記載する:横紋筋、脂肪および結合組織(腱、筋膜)が付着した長骨からなる豚または家禽の屠殺体部分を、水および場合により香味増強のための野菜または調味料と共に、水4部および屠殺体部分1部の比率でボイラーに入れ、その物体の種類およびサイズに応じて90〜95℃で約8時間のボイリングを行なった。次いでブロスを0〜4℃の範囲の温度に冷却した。この後、ブロスを混合装置(ブレンダー、カッターまたはミキサー)内へ移してホモジナイゼーションを達成した。次いで、十分に混合しながら(混合速度:>4000rpmで約4〜6分、最高温度:10℃)、油が完全に取り込まれて混合物がホモジナイズされるまで、オリーブ油を漸次/徐々に添加した。成分の最も一般的な混合比は、油1部−対−ブロス1部であった。しかし、1:2または1:3の比率の油/ブロスの混合物も可能であった。調合物中のブロスのこれより大きい割合は、最終製品中の油の相対量が著しく低下するので有意義とは考えられなかった。
【0080】
ブロス組成物の例を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
この油組成物は、4℃の温度で4時間保持した際に大きな安定性を示し(相分離がなかった)、一方では食肉バッター(meat batter)に直接添加するか、あるいは必要な装置(たとえばマルチニードルインジェクター)を用いて筋肉組織に注入することによって、容易に装入できた。さらに、この油組成物は、全筋肉組織ベース製品の製造に一般に用いられるブライン水の部分的または完全な代替としても、直接注入法(たとえばマルチニードルインジェクターBELAM MI 450、作動圧:1.5バール)により使用できた。
【0083】
実施例2:細砕食肉系からの調理(すなわちエマルジョンタイプ)ソーセージ(フランクフルト)の製造
以下に、加工助剤を用いた、および用いない、フランクフルトソーセージの製造方法の例を記載する:目に見える脂肪を含まない低脂肪肉を食卓塩/亜硝酸塩の存在下に、本発明による油組成物(たとえば実施例1を参照、温度:0〜4℃)および水/氷を連続添加および混合しながら、カッターボウル内で細砕した(約2分、ナイフ速度:1500rpm)。リン酸塩混合物(二リン酸塩、三リン酸塩、トリポリリン酸塩および/またはポリリン酸塩など)または他の加工助剤(たとえば植物タンパク質、食肉タンパク質、乳タンパク質および卵タンパク質、デンプンなど)の使用が可能であるが、必須ではなかった。調味料、抗酸化剤および他の二次成分を添加し、目標とする細断効果が達成されるまで次第に切断速度を高めることにより混合物の完全なホモジナイゼーションに達すると、この調製は完了した。指標となる細断時間は約8〜12分であり、目標とする最終温度は<12℃であった。次いで、当技術分野で既知の一般法に従ってこの調製済み食肉バッターを加工した:たとえば充填、熱処理(すなわち低温殺菌)、冷却および包装。食肉/油組成物の最適比率は4:1〜2:1の範囲であり、装入した油のパーセントは約5〜17重量%であった。熱処理中の水の減量に比例して、装入された油のパーセントが増大した。
【0084】
【化1】

【0085】
【化2】

【0086】
本発明による油組成物を用いて製造したこのカテゴリーの食肉製品は、油の直接装入法により製造した製品より明らかに改良された官能特性を示した。この官能特性の改良は、動物脂肪を含有する一般的な調理ソーセージがもつものと類似する望ましいテキスチャーおよび口当たり(噛みごたえ)効果を与える本発明の油組成物が実質的に存在することによるものである。したがって、本発明による油組成物は食肉ベース製品の製造において動物脂肪の代替として有効に作用することができる。
【0087】
2つの同等なフランクフルトソーセージ、すなわち一方は前記の方法で本発明の油組成物を用いて製造したもの、他方はオリーブ油の直接装入によるものについての感覚評価の結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
20人の熟練したテスターによる盲検法
** (平均)0から5まで漸増する等級;嗜好性を反映。
実施例3:細砕食肉系からの調理(すなわちエマルジョンタイプ)2相ソーセージ(パリゼー(parizer)およびモルタデッラ(mortadella))の製造
以下に、パリゼーまたはモルタデッラの製造方法の例を記載する:目に見える脂肪を含まない低脂肪肉を食卓塩/亜硝酸塩の存在下に、本発明による油組成物(たとえば実施例1を参照、温度:0〜4℃)および水/氷を連続添加および混合しながら、カッターボウル内で細砕した(約2分、ナイフ速度:1500rpm)。リン酸塩混合物(二リン酸塩、三リン酸塩、トリポリリン酸塩および/またはポリリン酸塩など)または他の加工助剤(たとえば植物タンパク質、食肉タンパク質、乳タンパク質および卵タンパク質、デンプンなど)の使用が可能であるが、必須ではなかった。調味料、抗酸化剤および他の二次成分を添加し、目標とする細断効果が達成されるまで次第に切断速度を高めることにより混合物の完全なホモジナイゼーションに達すると、この調製は完了した。指標となる細断時間は約8〜12分であり、目標とする最終温度は<12℃であった。次いで、目に見える脂肪および/または食肉粒子を添加し、混和した。次いで、当技術分野で既知の一般法に従ってこの調製済み食肉バッターを加工した:たとえば充填、熱処理(すなわち低温殺菌)、冷却および包装。食肉/油組成物の最適比率は4:1〜2:1の範囲であり、装入した油のパーセントは約5〜17重量%であった。熱処理中の水の減量に比例して、装入された油のパーセントが増大した。
【0090】
実施例4:調理済み全筋肉組織ベース製品の製造
以下に、調理済み全筋肉組織ベース製品、たとえばハム、シチメンチョウフィレットまたはローストビーフの製造方法の例を記載する:ある量の本発明による油組成物(たとえば実施例1を参照)を、ブラインまたはブライン成分と混合し、調理済み全筋肉組織ベース製品の製造に適した低脂肪全筋肉組織片に、注入装置(たとえばマルチニードルインジェクター、温度:0〜4℃、5.7<pH<6.3)により注入した。続いて、この低脂肪全筋肉組織片にマッサージ処理を施した(マッサージ条件の選択は当業者の判断次第であった)。次いで、低脂肪全筋肉組織を充填し、続いて当技術分野で既知の一般法に従って熱処理した(指標となる製品コア温度は、製品のタイプおよび製品のサイズに応じて69〜72℃であった)。食肉に装入した本発明による油組成物のパーセントは10〜50重量%の範囲であり、それぞれの添加した油のパーセントは約2〜20重量%の範囲であった。
【0091】
全筋肉組織ベース製品を製造するための技術分野で一般に用いられている方法に優るこの方法の利点は、全筋肉組織ベース製品を製造する際に通常用いられるブラインの水の代替として本発明の油組成物を添加できることである。この代替は部分的であってもよく、あるいは完全(すなわち100%)であってすら、本発明の油組成物がブライン成分に対する分散剤として作用して、相分離(油/水の分離)のリスクがない。
【0092】
表3a、3b、および4a、4bは、燻製ハム(本発明の油組成物のパーセント:16重量%を注入、リン酸塩/加工助剤なし;最終収量105kg、これは注入済み食肉116kgから105kgの最終製品が得られたことを意味する)および調理シチメンチョウ(本発明の油組成物のパーセント:45%の注入レベル;最終収量145kg)の製造を示す。
【0093】
【表3】

【0094】
【表4−1】

【0095】
【表4−2】

【0096】
さらに、前記の全筋肉組織への本発明の油組成物の注入は、細断した食肉のパーセントが10重量%に及ぶいわゆる“切断および整形”カテゴリーの製品にも、全筋肉組織に対応する注入法を用い、続いて食肉を適切なカッターで目的サイズ(たとえば13〜20mm)に切断することによって、有効に適用できた。冷却または冷凍下に保存した製品、たとえばナゲット、豚肉または牛肉のシュニッツェルは、これに従い、その後、ブレッディング、調理(フライイング、ボイリング、グリリング)、および冷却(温度:0〜4℃)および/または冷凍(温度:<−18℃)の一般法を用いて製造できる。ギロス(gyros)タイプまたはケバブ(kebab)タイプの食肉ベース製品も、本発明の油組成物を全筋肉組織に注入することにより製造できる。特に、前記の全筋肉組織への本発明の油組成物の注入は、ギロスタイプまたはケバブタイプの食肉製品(たとえば、ギリシャ・ギロス)にも、対応する注入法を全筋肉組織に用い、続いてタンブリングまたはマッサージし、得られた製品を切断してスライスまたはダイスにし、型に充填し、または串棒上に配置し、冷却(温度:0〜4℃)および/または冷凍(温度:<−18℃)する一般法を用いて、有効に適用できた。食肉/油組成物の最適比率は6:1〜3:1の範囲であり、装入した油のパーセントは2〜20重量%の範囲であった。
【0097】
実施例5:細断食肉系からの発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージ(ドライおよびセミドライ−サラミ)の製造
以下に、ドライおよびセミドライ−サラミ(たとえば、レフカダ(lefkada)タイプのサラミおよびチョリソ(chorizo)タイプのサラミ)の製造方法の例を記載する:発酵製品の製造に適した約−10℃の成体動物肉を、適切な装置(カッターまたはグラインダー−ミキサーの組合せ)を用いて細断および混合した(直径:4〜13mm)。次いで、適切な乳酸スターター培養物、調味料および糖類を添加した。その後、予め本発明による油組成物(たとえば実施例1を参照)を注入した目的サイズ(たとえば8mm)に切断した第2量の低脂肪肉を添加した。必要な塩類(たとえば、食卓塩、亜硝酸塩および硝酸塩、アスコルビン酸ナトリウム)を添加して、混合プロセスは終了した。これに続いて、発酵ソーセージの製造のための技術分野で既知の一般法を実施した。
【0098】
ドライサラミに用いた代表的な熟成条件を含む表を以下に示す(表5)。セミドライサラミに関しては、時間および温度に関する発酵期条件は、製品のタイプ、直径、および市販のスターター培養物(それを製品の調合に使用する場合)の製造業者の推奨に応じて異なる。表6は、ビアブルスト(Bierwurst)タイプのサラミの製造に用いる次の加工工程の例を示す。
【0099】
【表5】

【0100】
r.h 相対湿度, no r.h 湿度なし, hours 時間
ビアブルストタイプのセミドライサラミに用いる代表的な加工工程の例を下記に示す。
【0101】
【表6】

【0102】
実施例6:ドライ(発酵)全筋肉組織ベース製品の製造
以下に、パルマ(parma)ハムまたはセラーノ(serano)ハムの製造方法の例を記載する:ある量の本発明による油組成物(たとえば実施例1を参照)を、食肉ベースの発酵製品の製造に適した成体動物の屠殺体(豚肉)からの低脂肪全筋肉組織片に注入した。筋肉組織中の油組成物の装入パーセントは10〜15重量%の範囲であり、したがって油の装入は約3〜7.5重量%になった。水の減量(通常は30〜35%)により、最終製品中に装入された油のパーセントが増大した。注入後、ドライ(発酵)全筋肉組織ベース製品の製造のための技術分野で既知の一般法に従って食肉を処理した:たとえば、キュアリング(食肉キュアリング成分:食卓塩、糖類、亜硝酸塩および硝酸塩、調味料、抗酸化剤および乳酸スターター培養物)、バーニング(バーニングにより全食肉素材中の塩平衡含量がもたらされ、したがって製品の微生物安定性が促進され、特徴的な香味、肉の軟化および色の安定化が生じる)、熟成(適切な温度と湿度の条件下で、製品の脱水および目的とする官能特性の発生を達成する)。
【0103】
パルマハムに用いた特徴的な熟成条件を表7に、セラーノハムに用いたものを表8に示す。
【0104】
【表7】

【0105】
r.h 相対湿度
【0106】
【表8】

【0107】
r.h 相対湿度
実施例7:パテの製造
以下に、パテの製造方法の例を記載する:豚、アヒル(duck)、またはヒトが摂取するのに適した他の食用種の肝臓を、食卓塩/亜硝酸塩の存在下に、カッターにより約2分間、1500rpm(ナイフ回転数)で、本発明による油組成物(たとえば実施例1を参照、温度:0〜4℃)および水/氷を連続添加および混合しながら細砕した。リン酸塩混合物(二リン酸塩、三リン酸塩、トリポリリン酸塩および/またはポリリン酸塩など)または他の加工助剤の使用が可能であるが、必須ではなかった。調味料、抗酸化剤および他の二次成分を添加し、目標とする細断効果が達成されるまで次第に切断速度を高めることにより混合物の完全なホモジナイゼーションに達すると、この調製は完了した。カントリーパテなど製造するパテの種類に従って、予備調理した食肉または肝臓の粒子を装入した。次いで製品を充填または缶詰し、そして当技術分野で既知の方法に従って熱処理した(それぞれ、低温殺菌または殺菌)。
【0108】
実施例8:新鮮(生)ソーセージの製造
以下に、新鮮(生)ソーセージ、たとえばブラットブルスト(Bratwurst)タイプ、ロンガニサ(Longaniza)タイプ、チョリソ(Chorizo)タイプ、ブレックファスト(Breakfast)ソーセージタイプなどの製造方法の例を記載する:温度<3℃の食肉、好ましくは低脂肪肉を、食卓塩の存在下にカッターボウル内で細砕および/または粗砕した(約2分、ナイフ速度:1500rpm)。その後、ある量の本発明による油組成物をそれに添加し、混入した。リン酸塩混合物(たとえば二リン酸塩、三リン酸塩、トリポリリン酸塩、ポリリン酸塩、またはそのいずれかの混合物)または他の加工助剤(たとえば植物タンパク質、食肉タンパク質、デンプン、ラスク、卵または卵二次製品、デキストロースなど)の使用が可能であるが、必須ではなかった。調味料、抗酸化剤および他の二次成分を添加し、目標とする細断効果が達成されるまで次第に切断速度を高めることにより混合物の完全なホモジナイゼーションに達すると、この調製は完了した。指標となる細断時間は約2〜5分であり、目標とする最終温度は<6℃であった。次いで、当技術分野で既知の一般法に従ってこの調製済み食肉生地(meat dough)を加工した:たとえば充填、場合により部分熟成、冷却または冷凍。食肉/油組成物の最適比率は5:1〜3:1の範囲であり、装入した油のパーセントは約2〜20重量%の範囲であった。
【0109】
実施例9:粗砕(またはミンス)食肉ベース製品の製造
以下に、粗砕(またはミンス)食肉ベース製品、たとえばドネル・ケバブ(doener kebab)製品、ミートボールおよびバーガーパッティー(burger patty)などの製造方法の例を記載する:約<3℃の温度の食肉、好ましくは低脂肪肉を、適切な装置、たとえばカッターまたはグラインダー−ミキサーの組合せを用いて細断および混合した。食卓塩の存在下に混合ボウルまたはカッターボウル内で混合を行なった(約1分、ナイフ速度:1500rpm)。その後、ある量の本発明の油組成物をそれに添加し、混入した。リン酸塩混合物(たとえば二リン酸塩、三リン酸塩、トリポリリン酸塩、ポリリン酸塩、またはそのいずれかの混合物)または他の加工助剤(たとえば植物タンパク質、食肉タンパク質、デンプン、ラスク、卵または卵二次製品、デキストロースなど)の使用が可能であるが、必須ではなかった。場合により、希望するサイズに刻んだ野菜(たとえばタマネギ)も添加した。調味料、抗酸化剤および他の二次成分を添加し、混合物の完全なホモジナイゼーションに達すると、この調製は完了した。指標となる細断時間は約2〜5分であり、目標とする最終温度は<6℃であった。次いで、当技術分野で既知の一般法に従ってこの調製済み食肉混合物を加工した:たとえばi)整形および冷却もしくは冷凍、またはii)整形、調理、および冷却/冷凍。たとえばドネル・ケバブ用には、本発明の油組成物を含有する、得られたミンス食肉混合物を適切な整形型に充填し、この整形した調製品をi)冷却/冷凍し、またはii)調理、および冷却/冷凍した。食肉/油組成物の最適比率は6:1〜3:1の範囲であり、装入した油のパーセントは約2〜20重量%であった。
【0110】
実施例10:油を含有するエマルジョンタイプの食品の製造
以下に、油を含有するエマルジョンタイプの食品、たとえばサラダドレッシングまたはマヨネーズタイプの製品の製造方法の例を記載する:エマルジョンタイプの食品、すなわちマヨネーズタイプのドレッシングの例は、次表に記載する成分組成をもつ(表9)。油組成物(1部のヒマワリ油:3部のブロス)を含めないすべての含有成分を、緩和な温度条件下で、激しい混合装置、たとえばブレンダーまたはミキサーを用いて、約1分間、本発明による油組成物(たとえば実施例1を参照、温度:0〜4℃)を連続添加および混合しながら、完全にホモジナイズした混合物が得られるまで互いに混合する。次いで、このホモジナイズした混合物を、当業者に既知であるマヨネーズタイプのドレッシングの製造のための一般的な製造工程に従って処理する。最終製品は、一般のマヨネーズタイプのドレッシングより良好な官能特性(すなわち、香り、味、テキスチャーなど)を示す。
【0111】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油およびブロスを含み、油とブロスの比率が1:1から1:3までの範囲であることを特徴とする、油組成物。
【請求項2】
油が、オリーブ油、パーム油、ダイズ油、カノラ油、カボチャ種油、トウモロコシ油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油、ラッカセイ油、クルミ油、麦芽油、ブドウ種油、ゴマ油、アルガン油、米ぬか油、およびその混合物からなる群から選択される植物油である、請求項1に記載の油組成物。
【請求項3】
ブロスが、牛肉ブロス、豚肉ブロス、鶏肉ブロス、子牛肉ブロス、子羊肉ブロス、鴨肉ブロス、ガチョウ肉ブロス、またはヒトが摂取するのに適した他の食用種で調製するブロス、野菜ブロス、およびその混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の油組成物。
【請求項4】
ブロスの脂肪含量が5重量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の油組成物。
【請求項5】
(a)油を用意し、
(b)ブロスを用意し、
(c)油とブロスを1:1〜1:3の比率で混合する
工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物を調製するための方法。
【請求項6】
油を含有する食肉ベース製品を製造するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物の使用。
【請求項7】
食肉ベース製品が、調理ソーセージ、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージ、調理およびドライ(発酵)および生鮮(生)全筋肉組織ベース製品、ペーストリー、パテ、生鮮(生)ソーセージ、ならびに粗砕(またはミンス)食肉ベース製品からなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物を使用する、油を含有する食肉ベース製品を製造するための方法。
【請求項9】
食肉ベース製品が、調理ソーセージ、発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージ、調理およびドライ(発酵)および生鮮(生)全筋肉組織ベース製品、ペーストリー、パテ、生鮮(生)ソーセージ、ならびに粗砕(またはミンス)食肉ベース製品からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
食肉ベース製品が調理ソーセージであり、
(a)食肉、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物、および追加成分を含む、細砕食肉ペーストを用意し、
(b)この細砕食肉ペーストを充填材料に詰め、
(c)この充填した食肉ペーストに加熱処理を施し、そして
(d)最終製品を冷却および包装する
工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
食肉ベース製品が発酵ドライまたはセミドライ−ソーセージであり、
(a)食肉片に請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物を注入し、
(b)食肉、注入済み食肉片および追加成分を含む、挽肉素材を用意し、
(c)この挽肉素材を充填材料に詰め、
(d)この充填した食肉素材を熟成させ、そして
(e)最終製品を包装する
工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
食肉ベース製品が調理済み全筋肉組織ベース製品であり、
(a)全筋肉組織に請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物および追加成分を注入し、
(b)この注入済み全筋肉組織にマッサージ工程を施し、
(c)工程(b)の全筋肉組織を充填材料に詰め、
(d)この充填した全筋肉組織に加熱処理を施し、そして
(e)最終製品を冷却および包装する
工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
食肉ベース製品がドライ(発酵)全筋肉組織ベース製品であり、
(a)全筋肉組織に請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物を注入し、
(b)この注入済み全筋肉組織をさらに加工して最終製品にする
工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
食肉ベース製品が生鮮(生)ソーセージであり、
(a)食肉、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物、および追加成分を含む、細かいおよび/または粗い食肉ペーストを用意し、
(b)この食肉ペーストを充填材料に詰め、そして
(c)最終製品を冷却または冷凍、および包装する
工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
食肉ベース製品が粗砕(またはミンス)食肉ベース製品であり、
(a)食肉、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物、および追加成分を含む、粗砕食肉素材を用意し、
(b)粗砕食肉素材を整形し、そして
(c.1)最終製品を冷却または冷凍、および包装するか、あるいは
(c.2)最終製品を調理、冷却または冷凍、および包装する
工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれか1項に記載の方法により得られる、油を含有する食肉ベース製品。
【請求項17】
油を含有するエマルジョンタイプの食品、好ましくはマヨネーズタイプの製品、サラダドレッシングなどからなる群から選択されるものを製造するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−501635(P2012−501635A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525566(P2011−525566)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061493
【国際公開番号】WO2010/026231
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(511058121)クレタ・ファーム・ソシエテ・アノニム・インダストリアル・アンド・コマーシャル,トレーディング・アズ,クレタ・ファーム・ソシエテ・アノニム (3)
【Fターム(参考)】