説明

油中水乳化剤形の皮膚外用剤

【課題】下記式に表される化合物の溶状を安定に保つ製剤を提供する。
【解決手段】2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール等で例示できる下記式の化合物及び/又はその塩と、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライト等の有機変性粘土鉱物とを皮膚外用剤に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料などに好適な皮膚外用剤に関し、更に詳細には、油中水剤形の皮膚外用剤に好適な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚におけるシミ、ソバカスや日焼け後の色素沈着は、皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)の活性化によりメラニン生成が著しく亢進した状態である。この様なメラノサイトの亢進に起因するメラニンの過剰産生を防止又は改善する目的で、アスコルビン酸類、過酸化水素、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン又はカテコール等を配合した皮膚外用剤(特に美白剤)が知られている(例えば、非特許文献1、非特許文献2を参照)。しかしながら、これらの美白剤は何れも、美白効果、安定性及び安全性等の面から問題を有する場合が存したり、或いは、その効果が限られた症状にしか有効でなかったりする場合が存しており、これらの効果のみでは充分とは言えない状況にあると言える。又、美白作用の特徴としては、チロシナーゼ阻害効果、チロシナーゼ関連蛋白の分解、メラノサイトのデンドライトの伸長抑制によるメラニンの移送阻害など種々のものが存し、阻害点が多数存すると同時に阻害の回避経路も存し、単一な阻害では充分には効果を奏さない場合が存し、加えて、それぞれに適した化学構造が存すると考えられる。この様な観点に立って、本発明者らは、美白効果を有する新規の母核構造の化合物として、一般式(1)に表される化合物群を見出している。一般式(1)に表される化合物には、公知の化合物が存し、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノールであれば、前記美白作用以外に、抗酸化作用、プロスタグランディンの抑制を機序とする抗炎症作用、抗アレルギー作用や抗リウマチ作用を有することは知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献3、非特許文献4を参照)。この様な一般式(1)に表される化合物においては、前記の有用な性質が存するにもかかわらず、製剤成分との相溶性の問題から、実用製剤化に大きな課題が存した。かかる化合物を溶解せしめる方法として、ベンジルアルコールやセバシン酸ジイソプロピルなどの溶剤成分の使用が検討され(例えば、特許文献4を参照)、改善は見たが実用に適する製剤とはなり得なかった。これは製剤による溶状の安定が完全には確保されなかったためであると推察する。製剤中には製剤安定性を確保するために固体脂が配合されるが、前記溶剤が存在しても、固体脂との相互作用により一般式(1)に表される化合物の油相相溶性が低下するのがその原因であると、本発明者らは推察している。即ち、一般式(1)に表される化合物の製剤での溶状の安定性を確保した製剤の開発が望まれていたと言える。
【0003】
【化1】

一般式(1)
(但し、式中R1、R2はそれぞれ独立に炭素数3〜6のアルキル基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜4のアシル基又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R4は芳香族性を有する基を表す。)
【0004】
一方、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどの有機変性粘土鉱物は、油性成分とゲルを形成し、このゲル中に水を取り込む性質が存し、この性質を利用して、乳化成分として使用されている。(例えば、特許文献5、特許文献6を参照)この様な乳化系に於いては、前記粘土鉱物の作るゲル構造により、系の安定性が維持されることから、固体脂に安定性が依存しない特徴が存する。しかしながら、この様な乳化系に一般式(1)に表される化合物を配合した例は全く知られていないし、この様な系に於いて、一般式(1)に表される化合物が安定に溶状を保つのかも全く知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開昭53−141265号公報
【特許文献2】特開昭63−008380号公報
【特許文献3】特表平06−501919号公報
【特許文献4】特開昭63−502281号公報
【特許文献5】特開平11−76799号公報
【特許文献6】特開平10−194924号公報
【非特許文献1】George N, Ziakas et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 14, 5616-5624 (2006)
【非特許文献2】Shaukath Ara. Khanum et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 14, 5351-5355 (2004)
【非特許文献3】Agents and Action, Vol.12, No.5, 674-683, (1982)
【非特許文献4】Bioorganic & Medicinal Chemistry, Vol.11, 4207-4216, (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、前記一般式(1)に表される化合物の溶状を安定に保つ製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、前記一般式(1)に表される化合物の製剤において、溶状を安定に保つ手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、有機変性粘土鉱物を利用した油中水乳化剤形に含有せしめることにより、かかる安定化が為しうることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>1)前記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩と、2)有機変性粘土鉱物とを含有することを特徴とする油中水乳化剤形の皮膚外用剤。
<2>前記一般式(1)で表される化合物が、次に示す、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、<1>に記載の皮膚外用剤。
【0008】
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R1及びR2は一般式(1)と同じ基を表し、R5は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシルオキシ基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0009】
【化3】

一般式(3)
(但し、式中R6は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、水酸基、メルカプト基、トリフルオロメチル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アルキルアミド基、スルフェニル基、スルホニル基又はハロゲン原子を表す。)
【0010】
<3>前記一般式(1)に表される化合物が、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものであることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の皮膚外用剤。
<4>前記有機変性粘土鉱物が、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトであることを特徴とする、<1>〜<3>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
<5>更に、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物から選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする、<1>〜<4>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
<6>前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物が、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、ビタミンD2、ビタミンD3、レチノール、レチナール、レチノイン酸、4−メトキシ桂皮酸乃至はその誘導体、アミノ安息香酸乃至はその誘導体、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、ケイヒ酸メチル、リリアール、アニソール、シクラメンアルデヒド、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、サリチル酸イソペンチル、サリチル酸ベンジル、フェニル酢酸、酢酸スチラリル、2−イソブチル−3−メトキシピラジン、バニリン及びジャスミナールから選択されるものであることを特徴とする、<5>に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記一般式(1)に表される化合物の溶状を安定に保つ製剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須構成成分である一般式(1)で表される化合物
本発明の皮膚外用剤は一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩を含有することを特徴とする。前記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数3〜6のアルキル基、より好ましくは分岐構造を有する、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、アミル基などのアルキル基、特に好ましくはtert−ブチル基を表し、R3は水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基などの炭素数1〜4のアシル基又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基を表し、R4は芳香族性、より好ましくは、炭素数5〜15の芳香族性を有する基を表す。R4においては芳香族基のみで構成されていても良いし、脂肪族基を介在させていても良い。前記芳香族基は炭化水素であっても良いし、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などの複素原子を有する複素芳香族基であっても良い。この芳香族基の種類により、本発明の皮膚外用剤の必須成分である一般式(1)に表される化合物は、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)に表される化合物に大別される。
【0013】
前記一般式(2)において、R1及びR2は一般式(1)と同じ基を表し、R5は水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはメチル基、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基などの炭素数1〜4のアシル基、より好ましくはアセチル基、又はメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基などのアルキルオキシ基を表し、より好ましくは水素原子を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子、より好ましくは硫黄原子を表す。この様な一般式(2)で表される化合物の内、特に好ましいものは、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール(化合物1)である。かかる一般式(2)で表される化合物は、フリー体で本発明の皮膚外用剤に使用することもできるが、アルカリなどを用いて塩とし、使用することも可能である。たとえばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
【0014】
【化4】

2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール(化合物(1))
【0015】
また、これらの化合物は、任意の方法で製造することができ、例えば下記スキーム1又は2で概略される方法で製造することができるが、これらの方法に限定されない。勿論、置換基の種類などに応じて、適宜製造方法を目的に適した形に変更することも可能である。
【0016】
【化5】

スキーム1
【0017】
スキーム1における反応について簡単に説明する。
3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドを塩化チオニルを用いて常法にて処理することにより、3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドの酸クロリド体(A)とする。この酸クロリド体(A)を二硫化炭素などの適当な溶媒中で、塩化アルミニウム、四塩化チタンなどのルイス酸で処理する。次いで、チオフェン(B)を添加して、フリーデルクラフト反応させることで、一般式(2)の化合物を得ることができる。
【0018】
3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドとしては、例えば、シグマ−アルドリッチ社より市販されている3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドを使用することができる。化合物(B)としては、R5が水素原子である無置換体やメチルチオフェン、メトキシチオフェンなどの置換体を使用することができる。ここで、化合物(B)としてチオフェンを用いた場合(X=S)には、一般式(2)で表される化合物が得られ、さらに、化合物(A)として3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドの酸クロリド体を用いた場合には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2’−テノイル)フェノール(化合物(1))が得られる。
【0019】
【化6】

スキーム2
【0020】
スキーム2における反応について簡単に説明する。
チオフェンカルボン酸を塩化チオニルを用いて常法にて処理することにより、チオフェンカルボン酸の酸クロリド体(C)とする。この酸クロリド体(C)を二硫化炭素などの適当な溶媒中で、塩化アルミニウム、四塩化チタンなどのルイス酸で処理する。次いで、2,6−ジアルキルフェノール(D)を添加して、フリーデルクラフト反応させることで一般式(2)の化合物を得ることができる。化合物(C)を得るためには、シグマ−アルドリッチ社より市販されているR5が水素原子である2−チオフェンカルボン酸や3−メチル−2−チオフェンカルボン酸、5−メチル−2−チオフェンカルボン酸などを使用することができる。ここで、化合物(C)として、2−チオフェンカルボン酸の酸クロリドを用いた場合(X=S)には、一般式(2)で表される化合物が得られる。2,6−ジアルキルフェノール(D)としては、シグマ−アルドリッチ社より市販されている2,6−ジ−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−イソプロピルフェノールなどを使用することができる。化合物(C)として2−チオフェンカルボン酸の酸クロリド、化合物(D)として2,6−ジ−tert−ブチル−フェノールを用いた場合には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2’−テノイル)フェノール(化合物(1))が得られる。
【0021】
前記チオフェン、チオフェンカルボン酸をフラン、フランカルボン酸に置き換えることにより、Xが酸素原子である、一般式(2)に表される化合物を製造することができる。
【0022】
一般式(3)において、R6は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、より好ましくはメチル基、ビニル基、プロペニル基、n−ブテニル基などのアルケニル基、より好ましくはプロペニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基などのアルキルオキシ基、より好ましくはメトキシ基、水酸基、メルカプト基、トリフルオロメチル基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、iso−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基などのアルキルアミノ基、より好ましくはtert−ブチルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、メチルアミド基、スルフェニル基、スルホニル基又はハロゲン原子、より好ましくは塩素原子を表す。この様な一般式(3)で表される化合物の具体的な例としては、例えば、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−フェニルベンゾフェノン、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メタノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものが好ましく例示できる。これらの内、より好ましいものは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものである。
【0023】
かかる一般式(3)で表される化合物は、フリー体で本発明の皮膚外用剤に使用することもできるが、アルカリなどを用いて塩とし、使用することも可能である。たとえばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
【0024】
また、これらの一般式(3)で表される化合物は、任意の方法で製造することができ、例えば前記スキーム1又は2で概略される方法を適宜応用することによって製造することができるが、これらの方法に限定されない。
【0025】
例えば、前記スキーム1において、(置換)チオフェンの代わりに、種々の芳香族炭化水素を用いて、これと3,5−ジ−tert−ブチル−4−ベンゾイックアシッドの酸クロリド体を反応させることによって製造することが可能である。また、前記スキーム2において、チオフェンカルボン酸の代わりに、(置換)ベンゾイックアシッドを用いて、これを酸クロリド体とし、これを3,5−ジ−tert−ブチルフェノールと反応させることによって製造することが可能である。
【0026】
本発明の皮膚外用剤における一般式(1)で表される化合物の好ましい含有率は、総量で0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、上限は3質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下である。これはかかる量範囲において、前記のメラニン産生抑制作用を、安定して発現するからである。
【0027】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分である有機変性粘土鉱物
本発明の皮膚外用剤は有機変性粘土鉱物を必須成分として含有することを特徴とする。ここで有機変性とは、粘土鉱物の一部に有機化合物の一部を共有結合乃至はイオン結合を介して強固乃至は緩やかな結合を生ぜしめ、有機化合物の性質の一部乃至は全部を粘土鉱物に付与させることを意味し、この様な変性としては4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法、カルボキシル基と粘土鉱物のカチオン部分を結合させる方法等が例示でき、4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法が特に好ましく例示できる。
【0028】
粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物としては、特に限定されるわけではないが、クオタニウムと称される化合物が例示される。クオタニウムとは、低分子の置換第4級アンモニウム塩であって、国際基準化粧品原材料(INCI)に登録された化粧料原料が好ましい。さらに、粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物は、クオタニウム化合物のなかでも、従来の皮膚外用剤に含有されるクオタニウム化合物であることが好ましい。従来の皮膚外用剤で使用されているクオタニウム化合物としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等が好ましく例示される。ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等は、粘土鉱物とともに安定な油中水性成分乳化構造を形成することができるので好ましい。特に、水性成分が水中油乳化物であった場合には、前記水中油乳化物にあまり影響を与えずに連続相を油相とする乳化物を形成できるので、油中水中油乳化剤形には好ましい。
【0029】
一方、4級アミノ基を有する化合物で変性される粘土鉱物(未変性粘土鉱物)としては、従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物であれば特段の限定無く使用することができる。従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物としては、スメクタイト系のヘクトライト、ベントナイトやモンモリロナイト;カオリナイト;イライト;マリーン粘土鉱物(海泥);デザートローズ粘土鉱物;パスカライトなどが好ましく挙げられる。これらのうち、油中水乳化構造を安定化させることができるベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト又はカオリナイトが好ましく例示される。
【0030】
本発明の皮膚外用剤に含有される4級アミノ基を有する化合物で変性された粘土鉱物の製造方法の一例を以下に説明する。
前記未変性粘土鉱物を分散媒に分散させる。該分散剤は水系の溶媒であることが好ましく、水であってもよい。分散未変性粘土鉱物を含む分散液に、さらに4級アミノ基を有する化合物を加え、よく撹拌する。4級アミノ基を有する化合物は、水に溶解されて加えられてもよい。加えられる4級アミノ基を有する化合物の量は、分散未変性粘土鉱物の量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましい。この様な構成を取ることにより、乳化系において、好ましい使用感を呈するためである。撹拌後、分散質を濾取し、脱水、乾固することにより本発明における変性粘土鉱物を得ることができる。あるいは、分散質を濾取することなく、減圧濃縮することにより分散剤を除去して乾固させることにより、本発明における変性粘土鉱物を得ることもできる。得られた変性粘土鉱物は、好ましくは所望のサイズ(粒径が1〜1000μmであることが好ましい)に粉砕され、本発明の皮膚外用剤に含有される。
【0031】
本発明における変性粘土鉱物は、前述したように調製して使用されることもできるが、市販されているものを使用することもできる。市販されている変性粘土鉱物には、化粧料などの皮膚外用剤などとして用いられているものもある。市販されている変性粘土鉱物としては、例えば、エレメンティス社より「ベントン38V」の名称で販売されている、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどが好ましく例示される。
【0032】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分は0.5〜10質量%好ましく含有され、より好ましくは1〜5質量%含有される。かかる範囲において、前記一般式(1)に表される化合物の溶状を安定させて、油中水乳化剤形へと製剤化することが出来る。ここで、本発明に言う油中水乳化剤形とは、最外相に油相が存在する乳化剤形の総称であり、油相中に水相滴が分散する形態、油相中に水中油乳化滴が分散する形態の何れも採用しうる。
【0033】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有し、油中水乳化剤形であることを特徴とする。又、この様な構成を採用することにより、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の溶状を安定に含有することが出来る。この様な効果をより如実に実現するためには、一般式(1)に表される化合物と相溶性の優れる成分を同時に含有することが例示できる。この様な相溶性に優れる成分としては、例えば、結晶性の芳香族と親和性を有する、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物が例示できる。この様な化合物の具体例としては、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、ビタミンD2、ビタミンD3、レチノール、レチナール、レチノイン酸、p−メトキシ桂皮酸、p−メトキシ桂皮酸エチルエステル、p−メトキシ桂皮酸−2エチルヘキシルエステルのようなp−メトキシ桂皮酸乃至その誘導体、p−アミノ安息香酸−2エチルヘキシルエステル、N、N−ジメチル−p−アミノ安息香酸−2エチルヘキシルエステルのようなp−アミノ安息香酸乃至その誘導体、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、ケイヒ酸メチル、リリアール、アニソール、シクラメンアルデヒド、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、サリチル酸イソペンチル、サリチル酸ベンジル、フェニル酢酸、酢酸スチラリル、2−イソブチル−3−メトキシピラジン、バニリン及びジャスミナールなどが好ましく例示できる。これらの中では、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、4−メトキシ桂皮酸−2エチルヘキシルエステル、フェノキシエタノールが、より好ましく、δ−トコフェロール、4−メトキシ桂皮酸−2エチルヘキシルエステルが特に好ましい。かかる成分の好ましい含有率は、総量で0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。一方、上限は10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。又、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の含有量との関係においては、前記一般式(1)に表される化合物の含有量の和と、前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物の含有量の和との比が、質量比で1:1〜1:10であることが好ましい。これは、前記一般式(1)で表される化合物の結晶性が高く油剤等への溶解性が悪いため、これを安定に溶解しておくには(特に低温溶解性)、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物を、この範囲で共存させることが好ましいからである。
【0034】
本発明の皮膚外用剤に於いては、前記成分以外にも、通常化粧料などの皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;メチルパラベン等の抗菌剤などが好ましく例示できる。かかる成分を常法に従って処理することにより、本発明の皮膚外用剤は製造できる。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で投与されるものであれば特段の限定無く適用でき、例えば、医薬部外品を包含する化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が例示でき、化粧料に適用することが特に好ましい。
【0035】
以下に実施例及び試験例を参照して、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれらの実施例及び試験例によって限定を受けないことは言うまでもない。
【0036】
「参考例」
<製造例1>
2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2’−テノイル)フェノール(化合物(1))の製造
3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッド23.2gに塩化チオニル60gを加え、室温にて1時間撹拌した後、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去した。これに二硫化炭素300mlを加えて溶解し、さらに塩化アルミニウム13.5gを添加した。40℃で、30分間撹拌した後に、チオフェン88.2gを添加した。次いで、反応液を10%塩酸中に注ぎ込み、ジクロロメタンにて抽出し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムにて分画精製し、化合物(1)を得た。
【0037】
<製造例2>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン(化合物(2))の製造
ベンゾイルクロリド1.45gと2,6−ジ−tert−ブチルフェノール2.06gを塩化メチレン12mlに溶解し、塩化アルミニウム1.40gを添加し、室温で40分間撹拌した。反応液を氷水中に注ぎ込み、ジクロロメタンにて抽出し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムにて分画、精製し、化合物(2)を得た。
【0038】
<製造例3>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン(化合物(3))の製造
4−フルオロベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(3)を得た。
【0039】
<製造例4>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン(化合物(4))の製造
4−クロロベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(4)を得た。
【0040】
<製造例5>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン(化合物(5))の製造
4−メチルベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(5)を得た。
【0041】
<製造例6>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン(化合物(6))の製造
4−メトキシベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(6)を得た。
【0042】
<製造例7>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン(化合物(7))の製造
2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(7)を得た。
【0043】
<製造例8>3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン(化合物(8))の製造
ジメチルホルムアミド3mlにナトリウムエタンチオレート0.34gを氷冷下、加えた。これに製造例6で製造した3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン0.53gを加え、4時間、加熱還流し、さらに一晩室温にて撹拌した。反応液を希塩酸に注ぎ込み、塩化メチレンにて抽出した。塩化メチレン層を無水硫酸ナトリウムにて、乾燥し、濃縮後、シリカゲルカラムにて分画精製し、化合物(8)を得た。
【0044】
<製造例9>3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン(化合物(9))の製造
2,6−ジ−tert−ブチルベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(9)を得た。
【0045】
<製造例10>(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノン(化合物(10))の製造
2−ナフチルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(10)を得た。
【0046】
<製造例11>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−フェニルベンゾフェノン(化合物(11))の製造
4−ビフェニルカルボニルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(11)を得た。
【実施例1】
【0047】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、油中水乳化剤形である化粧料を製造した。即ち、イ、ロの成分を80℃に加温し、イの中にハを加えて溶解させ、混練りしてゲルを形成させ、これに攪拌下徐々にロを加えて乳化し、攪拌冷却して、本発明の皮膚外用剤である、油中水乳化剤形の化粧料1を得た。
【0048】
【表1】

【0049】
<比較例1>
比較のために、従来技術である、ベンジルアルコールやアジピン酸ジイソプロピルなどの溶剤の溶剤効果を利用して一般式(1)に表される化合物の溶状安定性を確保する製剤を作成した。即ち、イ、ロの成分を80℃に加熱し、攪拌下イに徐々にロを加え、攪拌冷却して水中油乳化剤形の化粧料を得た。
【0050】
【表2】

【0051】
<試験例1>
化粧料1と、比較例1について、経時変化を観察した。即ち、これらの検体を5℃、20℃、40℃、20℃→40℃→20℃の温度周期変動保存庫(高温エージング)に3ヶ月保存し、20℃に戻した後、20mgをスライドグラス(2×5cm)に取り、上からスライドグラスをかぶせ、スライドグラスで挟まれた部分における、ゲル状塊(半透明に抜ける部分)、固形析出物(白く際だつ部分)を計数した。結果を表3に示す。何れのサンプルも実使用上は不都合はないが、比較例1においては、ゲル状塊、固形析出物ともに検知され、長期に亘る使用期間中、使用性に影響を与えることが危惧された。
【0052】
【表3】

【実施例2】
【0053】
実施例1と同様に、下記に示す処方に従って、油中水剤形の皮膚外用剤である、化粧料2を作成した。高温エージングで3ヶ月保存したところ、固形析出物が3個観察されたが、ゲル状塊は観察されなかった。共役結合を3つ以上有する成分を共存させることが好ましいことが分かった。
【0054】
【表4】

【実施例3】
【0055】
実施例1と同様に、下記に示す処方に従って、油中水乳化剤形の皮膚外用剤である、化粧料3〜を作成した。評価は実施例2に準じて行った。結果を表6に示す。何れの製剤も一般式(1)の化合物の溶状を安定に保持することが分かる。
【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【実施例4】
【0058】
実施例1と同様に下記の処方に従って、油中水乳化剤形の皮膚外用剤である化粧料14を作成した。このものは、高温エージング3ヶ月保存でゲル状塊も、固形析出物も認めなかった。
【0059】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)次の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩と、2)有機変性粘土鉱物とを含有することを特徴とする油中水乳化剤形の皮膚外用剤。
【化1】

一般式(1)
(但し、式中R1、R2はそれぞれ独立に炭素数3〜6のアルキル基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜4のアシル基又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R4は芳香族性を有する基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、次に示す、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R1及びR2は一般式(1)と同じ基を表し、R5は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシルオキシ基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化3】

一般式(3)
(但し、式中R6は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、水酸基、メルカプト基、トリフルオロメチル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アルキルアミド基、スルフェニル基、スルホニル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)に表される化合物が、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記有機変性粘土鉱物が、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトであることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
更に、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物から選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物が、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、ビタミンD2、ビタミンD3、レチノール、レチナール、レチノイン酸、4−メトキシ桂皮酸乃至はその誘導体、アミノ安息香酸乃至はその誘導体、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、ケイヒ酸メチル、リリアール、アニソール、シクラメンアルデヒド、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、サリチル酸イソペンチル、サリチル酸ベンジル、フェニル酢酸、酢酸スチラリル、2−イソブチル−3−メトキシピラジン、バニリン及びジャスミナールから選択されるものであることを特徴とする、請求項5に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2008−297206(P2008−297206A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141346(P2007−141346)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】