説明

油中水型マイクロゲルエマルジョン

【課題】
従来のアミジン系マイクロゲル製造方法では、架橋剤存在下で重合を行い、重合後、酸加水分解するため架橋が切断し、意図した架橋構造した高分子を得られ難いという問題点がある。従って本発明の課題は、高分子を変性する過程において平行して伴う架橋反応を利用し、エマルジョン粒子が水不溶性となる油中水型マイクロゲルエマルジョンを製造することにある。
【解決手段】
(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行うとともに、非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう乳化し調製したことを特徴とするアミジン構造単位を有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンによって達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミジン構造を含有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンに関するものであり、詳しくは前記アミジン構造を含有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンが、水に非混和性の有機液体を連続相、N−ビニルカルボン酸アミド、(メタ)アクリロニトリルおよび架橋性単量体を含む単量体水溶液混合物を分散相となるよう界面活性剤により乳化し重合した後、得られる油中水滴型エマルジョンを、酸により加水分解し、アミジン化反応を行い製造したものであることを特徴とする油中水型マイクロゲルエマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
油中水滴型ゲルエマルジョンを作成する方法は、種々開示されている。例えば
過硫酸塩と、アクリロイル構造を有する少なくとも一種の水溶性ビニルモノマーとを含有する水溶液を調製し、次いで、当該水溶液に紫外線を照射してゲル化させる(特許文献1)、有機溶媒又は油分を分散媒とし水溶性エチレン性不飽和モノマー水溶液を分散相とする組成物からなるラジカル重合系において、ジメチルアクリルアミドのような熱架橋性単量体を含有させ重合し水膨潤性高分子を作成する(特許文献2)、水溶性高分子化合物、カルボニル基含有アクリル系樹脂、および重量平均分子量5,000以上で、かつ分子内に3以上のヒドラジノ基を有するヒドラジノ基含有高分子化合物を含む合成樹脂エマルジョン組成物であり、加熱することにより水不溶性樹脂とする(特許文献3)方法などがある。
【0003】
すなわち重合時、架橋性単量体を含有させ架橋性ゲル粒子エマルジョンを作成するか(特許文献1、2)、エマルジョン粒子中に高分子物質と架橋反応を発生させる物質を含有しておき、加熱などにより架橋性ゲル粒子エマルジョンとする方法である(特許文献3)。これら架橋性ゲル粒子エマルジョンの応用としては、ゲル粒子に機能物質を包含するため、ゲル粒子を吸着剤とするため、あるいは塗布し耐水性架橋コーテイング膜を表面に加工するためなどがある。本発明の出願人は、アクリルアミドとアクリロニトリル共重合物をホフマン反応し、その後アミジン化反応を行い、アミジン構造単位含有水溶性高分子を製造する方法に関する特許出願をしているが(特許文献4、5)、高分子を変性する過程において架橋反応が伴い、結果としてエマルジョン粒子が水不溶性となる化学反応を利用し油中水型マイクロゲルエマルジョンとする例はまだ見られない。架橋構造を有するアミジン系高分子は、特許文献6に開示されているが、重合後、酸加水分解するため架橋が切断し、意図した架橋構造した高分子を得られ難い問題点がある。
【特許文献1】特開2004−099789号公報
【特許文献2】特開2004−051739号公報
【特許文献3】特開2007−016218号公報
【特許文献4】特開2008−156541号公報
【特許文献5】特開2008−156542号公報
【特許文献6】特開2001−120908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアミジン系マイクロゲル製造方法では、架橋剤存在下で重合を行い、重合後、酸加水分解するため架橋が切断し、意図した架橋構造した高分子を得られ難いという問題点がある。従って本発明の課題は、高分子を変性する過程において平行して伴う架橋反応を利用し、エマルジョン粒子が水不溶性となる油中水型マイクロゲルエマルジョンを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の発明に達した。
すなわち請求項1の発明は、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行うとともに、非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう乳化し調製したことを特徴とするアミジン構造単位を有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンである。
【0006】
請求項2の発明は、前記(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行った後、水溶液のpHを4以上、6以下に調整した後、水に非混和性の有機液体および界面活性剤を各々添加し、油中水型マイクロエマルジョンを調製したことを特徴とする請求項1に記載の油中水型マイクロゲルエマルジョンである。
【0007】
請求項3の発明は、前記(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行った後、水溶液のpHを4以上、6以下に調整した後、水に非混和性の有機液体および界面活性剤を各々添加し、油中水型マイクロエマルジョンを調製した後、加熱してマイクロゲル形成を促進することを特徴とする請求項1に記載の油中水型マイクロゲルエマルジョンである。
【0008】
請求項4の発明は、前期(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行った後、酸を添加し、水溶液のpHを4以上、6以下に調整した後、反応混合物を濃縮しその後水に非混和性の有機液体および界面活性剤を各々添加し、油中水型マイクロエマルジョンを調製し、その後還元剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の油中水型マイクロゲルエマルジョンである。
【0009】
請求項5の発明は、前期(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行い、還元剤を添加した後に酸を添加し、水溶液のpHを4以上、6以下に調整した後、反応混合物を濃縮しその後水に非混和性の有機液体および界面活性剤を各々添加し、油中水型マイクロエマルジョンを調製し、その後還元剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の油中水型マイクロゲルエマルジョンである。
【0010】
請求項6の発明は、フミン質を含有する水に、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行うとともに、非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう乳化し調製したアミジン構造単位を有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンを、フミン質を含有する水に添加し前記フミン質を吸着させた後、水からマイクロゲルを分離することを特徴とするフミン質の除去方法である。
【0011】
請求項7の発明は、染料排水に、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行うとともに、非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう乳化し調製したアミジン構造単位を有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンを添加し前記染料をマイクロゲルに吸着させた後、水からマイクロゲルを分離することを特徴とする染料排水の処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
従来のアミジン系マイクロゲル製造方法では、架橋剤存在下で重合を行い、重合後、酸加水分解するため架橋が切断し、意図した架橋構造した高分子を得られ難い。しかし本発明の(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行うとともに、非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう乳化し調製した油中水型マイクロゲルエマルジョンでは、確実な架橋反応により、安定したゲルエマルジョンを製造することができる。
【0013】
また上水あるいは用水分野では、フミン質の除去剤として使用できる。すなわち水溶性のカチオン性高分子に代えて、本発明のマイクロゲルからなる油中水型エマルジョンを使用すれば、フミン質吸着後、マイクロゲルを除去すれば簡単に分離ができる。さらに染料排水に、水溶性のカチオン性高分子に代えて、本発明のマイクロゲルからなる油中水型エマルジョンを使用すれば、簡単な分離が可能であるなど利用価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の油中水型マイクロゲルエマルジョンは、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物をホフマン反応後、アミジン化反応を行い、その後水に非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう製造したものであることを特徴とする。すなわちホフマン反応の過程で起こる副反応の架橋反応を利用し、水不溶性、水膨潤性の微細ゲルを油中水型マイクロエマルジョンとして作成するものである。
この微細ゲルは、アミジン構造単位を含有しカチオン性に帯電していることがもう一つの特徴としてあげられる。
【0015】
初めに(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物を逐次ホフマン反応、アミジン化反応と行い、アミジン構造単位を含有する高分子を作成する高分子反応に関して説明する。(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合比としては、アクリルアミド60〜90モル%、(メタ)アクリロニトリル10〜40モル%であり、好ましくはアクリルアミド60〜80モル%、(メタ)アクリロニトリル20〜40モル%である。またポリアミジン化反応に影響がない範囲で他の共重合可能な単量体を共重合することができる。さらにホフマン反応は強アルカリ性領域で実施するので、共重合体中に耐アルカリ加水分解性がなければ成らない。そのような単量体の例としては、エチレン、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸あるいはマレイン酸などである。従ってそのような単量体の範囲としては、0〜10モル%である。
【0016】
ホフマン反応前の共重合体の重合方法は、既知の重合法である水溶液重合法あるいは油中水型エマルジョン重合法などにより合成することができるが、油中水型エマルジョン重合法は、高分子の変性時に油中水型エマルジョンが破壊する可能性が高く、水溶液重合法で実施し、ホフマン反応時に油中水型エマルジョン変換していく方法が好ましい。そのため重合濃度としては、5〜60重量%までの範囲実施が可能であるが、水溶液重合法を考慮すると好ましくは15〜30質量%で行うのが適当である。また、反応の温度としては、10〜100℃の範囲で行うことができる。
【0017】
ホフマン反応前の共重合体の重合を開始させるラジカル重合開始剤はアゾ系、過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)などがあげられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。これら開始剤で最も好ましいものは、水溶性のアゾ系開始剤である2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物などである。
【0018】
ホフマン反応前のポリアクリルアミド系共重合体の重量平均分子量は、任意に調節することが可能であるが、溶液粘度を考慮すると約10万〜1000万であり、好ましくは10万〜500万であり、この範囲であれば製造上の問題はない。
【0019】
次ぎにホフマン反応の条件について説明する。使用する次亜ハロゲン酸塩の例としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜臭素ナトリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜ヨウ素酸ナトリウム、次亜ヨウ素酸カリウムなどである。共存させるアルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどである。次亜ハロゲン酸の添加量は、対アミド基10モル%〜150モル%であり、好ましくは20基%〜120モル%である。また、共存させるアルカリの量としては、アミド基に対し10〜250モル%である。反応後は溶液pHを0.5〜6.0の範囲に中和する。これは、次工程のアミジン化反応を考慮してのpH範囲である。
【0020】
ホフマン反応の反応温度は、0〜50℃の範囲の中から選択可能であるが、0〜30℃である方がより好ましい。反応時間は、反応温度、および反応溶液中のポリマー濃度に依存するため一概には言えないが、例えばポリマー濃度が10質量%の場合、5℃では数十分以内、20℃では数分以内で十分である。さらに高分子濃度が高くなれば、反応時間はより短くてすむ。
【0021】
次に上記した条件でホフマン反応を行った後、副反応の進行を抑制するために反応を停止することが望ましい。反応停止の方法としては、(1)還元剤を添加する、(2)冷却する、(3)溶液のpHを酸添加により低下させる、等の方法を単独あるいは組み合わせて用いることができる。(1)は残存する次亜ハロゲン酸塩等を還元剤との反応により失活させる方法である。使用する還元剤の具体例として、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、マロン酸エチル、チオグリセロール、トリエチルアミン等が挙げられる。その還元剤の使用量は、通常反応に使用された次亜ハロゲン酸塩に対して、0.005〜0.15倍モル、好ましくは0.01〜0.10倍モルである。(2)は冷却により反応進行を抑える方法であり、その方法としては、熱交換器を用いて冷却する、または冷水で希釈する等の方法が挙げられる。そのときの温度は、通常50℃以下、好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。(3)は、通常pH12〜13のアルカリ性を示す反応終了液を、酸を用いてpHを下げることによりホフマン反応を停止させ、同時に加水分解の進行を抑制する方法である。そのときのpHは中性以下であればよくpH0.5〜6の範囲であればよいが、後のアミジン化反応を考慮するとpH0.5〜4であることが好ましい。pH調整で使用する酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の鉱酸、あるいはギ酸、酢酸、クエン酸等の有機酸があげられる。また最も好ましい酸は、塩酸である。
【0022】
ホフマン反応後高分子中の一級アミノ基の含有量としては、5モル%〜60モル%であり、好ましくは10モル%〜50モル%である。5モル%未満であると、アミジン化反応が進行し難くなり好ましくない。また、50モル%より高く一級アミノ基を導入しようとすると、(メタ)アクリルアミドの共重合比を増加しなくてはならず、その結果(メタ)アクリロニトリルの共重合比が低下する。
【0023】
ホフマン反応の後、反応溶液を酸性にしてアミジン化反応を行う。この条件として温度を20〜100℃、好ましくは30〜80℃、pH0.5〜6、好ましくはpH0.5〜4の範囲に反応物を保持することによりアミジン化反応を行うことができる。使用する酸は、塩酸、硝酸、スルファミン酸などの強酸が好ましく、塩酸であることが最も好ましい。具体的条件としては、例えば、共重合物中の置換アミノ基に対して通常0.7〜5.0倍、好ましくは1.0〜2.5倍当量の強酸を加え、通常20〜100℃、好ましくは30〜80℃の温度で、通常0.5〜20時間加熱することによりアミジン単位を有するカチオン化高分子とすることができる。これは側鎖官能基である一級アミノ基とシアノ基が反応しイミノ基となりアミジン化することによる。一般に置換アミノ基に対する強酸の当量比が大きいほど、かつ、反応温度は比較的高いほうがアミジン化は進行する。また、アミジン化に際しては反応に供する共重合体に対し、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上の水を反応系内に存在させるとよい。
【0024】
本発明のアミジン構造単位を有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンは、上記ホフマン反応およびアミジン化反応の過程で副反応として起こる架橋反応を利用し、水溶性高分子をゲル化させ水膨潤性の水性ゲルとし、これら反応と平行し、非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう乳化し調製する。
【0025】
高分子水溶液が塊状のゲル体とならない前に乳化し、ゲル自体は微細な粒子として有機液体中に分散している状態にすることが重要である。十分に架橋反応させるためには加熱が必要である。水に非混和性の有機液体および界面活性剤を各々添加し、水溶液相を分散相として全体がゲル化塊状とならない前に油中水型エマルジョンとし、その後加熱することを特徴とする。
【0026】
ゲルをカチオン性にするためには溶液を酸性にする必要がある。従って水溶液に酸を加えてカチオン化する。使用する酸は、ホフマン反応の説明のところで記載した酸類を使用する。酸を添加する際に、溶液のpHが4より小さいとゲル化に必要な時間が長くなり、さらにpHが2以下ではゲル化しない。また、pHが6より高いとカチオン量が低くなるため有効ではない。カチオン性のゲルを効率良く製造するためには溶液のpHを4以上、6以下に調整する必要がある。
【0027】
ホフマン反応のところで説明したように、残存する次亜ハロゲン酸塩等を還元剤との反応により失活させる。添加する還元剤は、酸により中和した後、添加しても良いし、また酸により中和しつつ添加しても良い。使用する還元剤の具体例として、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、マロン酸エチル、チオグリセロール、トリエチルアミン等が挙げられる。その還元剤の使用量は、通常反応に使用された次亜ハロゲン酸塩に対して、0.005〜0.50倍モル、好ましくは0.01〜0.50倍モルである。すなわち残存している次亜ハロゲン酸塩に対しては、0.5〜50倍モル、好ましくは1.0〜50倍モルとなる。
【0028】
本発明のマイクロゲルからなる油中水型高分子エマルジョンは、水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させ重合することにより調製することができる。
【0029】
また分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物があげられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜35質量%の範囲である。
【0030】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB1〜8のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレ−ト、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−トなどがあげられる。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0031】
この場合、高HLB界面活性剤により乳化させ油中水型エマル
ジョンを形成させ重合したエマルジョンは、このままで水となじむので転相剤
を添加する必用がない。これら界面活性剤のHLBは、9〜20のもの、好ま
しくは11〜20のものを使用する。そのような界面活性剤の例としては、カ
チオン性界面活性剤やHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオ
キシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレン
アルコールエ−テル系などである。
【0032】
低HLBの界面活性剤により乳化、重合した場合は重合後、転相剤である親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系などである。
【0033】
本発明のマイクロゲルからなる油中水型エマルジョンは、カチオン性に帯電しているため種々の用途に用いることができる。例えば農業分野における肥料の除放性、化粧品分野における添加剤、製紙工業分野におけるインクジェット用印刷用紙の表面塗布液中への耐水化剤および定着剤用添加剤、あるいは土木分野用などが考えられる。
【0034】
また上水あるいは用水分野では、フミン質の除去剤として使用できる。フミン質は、トリハロメタンの原因物質になること、排水中にCOD成分として含まれることなどから、その除去が必要とされる。上水においては一般的にフミン質を活性炭吸着除去する、あるいは塩素処理後分解物を活性炭処理する等の方法がとられているが、フミン質は活性炭の吸着性能を低下させ結果として大量の活性炭を必要とするという問題があるが、本発明のマイクロゲルからなる油中水型エマルジョンを使用すれば、吸着後マイクロゲルを除去すれば簡単に分離ができる。
【0035】
さらに染料排水に、アミジン構造を含有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンを添加し染料を吸着させた後、該水膨潤性高分子よりなるマイクロゲルを水から分離することもできる。従来、染料排水は、重縮合系ポリアミン、ポリエチレンイミン、あるいはポリビニルアミン、ポリアミジンなど水溶性高分子物質を使用してきたが、生成した凝集フロックを高分子量ポリアクリルアミドによって、更に大きなフロックを生成させ分離していた。
しかし本発明のマイクロゲルからなる油中水型エマルジョンを使用すれば、簡単な分離が可能である。
【0036】
(実施例)以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
撹拌機、窒素導入管、冷却管を備えた500mlの四つ口フラスコに、表−1に示すモル分率のアクリロニトリルを含有する、アクリロニトリルとアクリルアミドの混合物60.0gおよび240.0gの脱塩水を入れた。窒素ガス気流中、撹拌しつつ30℃に昇温したのち、1%の2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパン・2塩化水素水溶液0.3gを添加した。30℃で4時間、撹拌保持した後、50℃に昇温し、更に3時間保持し、水中に重合体が析出した懸濁物を得た。次に反応溶液を10重量%に希釈した後、温度を10℃に冷却し次亜塩素酸ナトリウムをアクリルアミドに対し100モル%、水酸化ナトリウムをアクリルアミドに対し200モル%それぞれ添加しホフマン反応を実施した。反応が始まると、溶液の温度が上昇するため、溶液温度を氷水浴にて冷却し、30℃に保持して反応機の攪拌を60分間継続させた後、仕込み時の次亜塩素酸ナトリウムに対するホフマン反応後の残存次亜塩素酸ナトリウムの量をヨード法により求めると、仕込みに対し、0.93%が残存していた。次に酸化剤として亜硫酸水素ナトリウムを残留次亜塩素酸ナトリウムに対して過剰量である10倍モル添加して、残留塩素を除去した。次に反応物の温度を20℃未満に調節しながら塩酸をpHが4.5になるまで添加した。その後、5℃に3時間保持し高分子層と水層に分離した。上澄み液をデカンテーションによって除去し、純分20.3質量%、288gの析出物を得た。
【0038】
これに沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン80.0gおよびソルビタンモノオレート9.2gを加え、ホモジナイザーにて1000rpmで15分間攪拌乳化した。油中水型エマルジョン調製後の高分子濃度は、15.7質量%である。調製した油中水型エマルジョンを50℃、4時間保持し、その後油中水型エマルジョンをアセトン中に添加し、析出せしめ、これを真空乾燥して試作−1を得た。乾燥後水に分散すると「どろどろ」とした分散液となり、粒子状のゲルが観察された。同様に試作−2〜試作−4を合成した。
【0039】
生成したマイクロゲルの分析は、以下のように行った。アミジン化を行う前の各原料重合体の組成は、13C−NMRスペクトル(13C−該磁気共鳴スペクトル)の各モノマー単位に対応した吸収ピークの積分値より算出した。アミジン化後の重合体A〜Eの組成は、13C−NMRスペクトルの各繰り返し単位に対応した吸収ピークの積分値より算出した。なお、繰り返し単位(1)と(2)は区別することなく、その総量として求めた。繰り返し単位(7)と(8)も区別することなく、その総量として求めた。
【0040】
また、繰り返し単位(1)と(2)、(3)及び(7)と(8)の吸収ピークは170〜185ppm付近の非常に近接した位置に認められるため、以下のような方法により各吸収ピークに対応する構造を帰属した。即ち、重合体の元素分析、水分量の測定により質量収支を確認し、更に、重合体の13C−NMRスペクトルの他にIRスペクトルも測定し、重合体のスペクトルとアミジン基、アミド基及びラクタム基等を有する既知化合物でのスペクトルとを詳細に比較検討する方法を採用したものである。結果を表1に示す。
【0041】
(表1)

AAM;アクリルアミド、AN;アクリロニトリル、1+2;アミジン、3;酸アミド、4;ニトリル基、5;一級アミノ基、6;カルボキシル基、7+8;ラクタム基、
【実施例2】
【0042】
フミン酸(和光純薬製)0.002g、1N水酸化ナトリウム0.014g、脱塩水100mlを混合、溶解した後、不溶部分をNo2濾紙で除去し、さらに脱塩水で2000mlに希釈し1ppmフミン酸水溶液とした。実施例1で試作した試料−1および試料−3を0.1質量%の分散液として調製した。また比較試料としてアクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロリド重合物(比較−1、光散乱法による分子量は約37万)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド重合物(比較−2、光散乱法による分子量は約85万)をそれぞれ0.1質量%になるように溶解した。上記フミン酸水溶液50mlに、0.1%に溶解した上記高分子水溶液をフミン酸水溶液に対し所定濃度となるように添加し5分間攪拌した。その後GS−25(東洋濾紙株式会社製)で濾過し、波長254nmでのろ液の吸光度を測定した。この数値と、フミン酸水溶液に高分子を添加せずにGS−25でろ過した濾液の吸光度から除去率を求めた。結果を表2に示す。
【0043】
(表2)

【実施例3】
【0044】
300mlビーカーに染料溶液(直接染料アルファノール・ファースト・ブリリアント・レッドを50ppm含有するもの)200mlを入れ、試作−1〜試作−4を対液100ppm、200ppm添加し、攪拌機を用いて200rpmで60秒攪拌し、その後硫酸バンドを対液100ppm添加60秒攪拌、最後にアニオン性凝集剤(アニオン化度20モル%ポリアクリルアミド、重量平均分子量1200万)を対液50ppm添加し60秒攪拌した後60秒間静置し、上澄み液の吸光度を分光光度計(UV1600(株)島津製作所製、波長660nmを測定に使用)を用いて測定した。除色率は、処理液上澄みの吸光度を処理前の染料溶液吸光度で除した値を100(%)から引いた数値とした。結果を表3に示す。
【0045】
(比較試験1)実施例と同様な操作により、比較−1(ジシアンジアミド/ホルマリン縮合物)、比較−2(ジメチルアミン/ペンタエチレンヘキサミン/エピクロロヒドリン縮合物)、マイクロゲルではない水溶液タイプのアミジン構造単位を有するN−ビニルホルムアミド/アクリルニトリルより合成したポリアミジン(アミジン化度;75モル%、重量平均分子量300万)に関して試験した。結果を表3に示す。
【0046】
(表3)

添加率;対液ppm、除色率;%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行うとともに、非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう乳化し調製したことを特徴とするアミジン構造単位を有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョン。
【請求項2】
前記(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行った後、水溶液のpHを4以上、6以下に調整した後、水に非混和性の有機液体および界面活性剤を各々添加し、油中水型マイクロエマルジョンを調製したことを特徴とする請求項1に記載の油中水型マイクロゲルエマルジョン。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行った後、水溶液のpHを4以上、6以下に調整した後、水に非混和性の有機液体および界面活性剤を各々添加し、油中水型マイクロエマルジョンを調製した後、加熱してマイクロゲル形成を促進することを特徴とする請求項1に記載の油中水型マイクロゲルエマルジョン。
【請求項4】
前期(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行った後、酸を添加し、水溶液のpHを4以上、6以下に調整した後、反応混合物を濃縮しその後水に非混和性の有機液体および界面活性剤を各々添加し、油中水型マイクロエマルジョンを調製し、その後還元剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の油中水型マイクロゲルエマルジョン。
【請求項5】
前期(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行い、還元剤を添加した後に酸を添加し、水溶液のpHを4以上、6以下に調整した後、反応混合物を濃縮しその後水に非混和性の有機液体および界面活性剤を各々添加し、油中水型マイクロエマルジョンを調製し、その後還元剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の油中水型マイクロゲルエマルジョン。
【請求項6】
フミン質を含有する水に、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行うとともに、非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう乳化し調製したアミジン構造単位を有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンを、フミン質を含有する水に添加し前記フミン質を吸着させた後、水からマイクロゲルを分離することを特徴とするフミン質の除去方法。
【請求項7】
染料排水に、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリロニトリルの共重合物に、次亜ハロゲン酸塩と苛性アルカリを共存させ、ホフマン反応とアミジン化反応を平行して行うとともに、非混和性の有機液体と界面活性剤を各々添加し、有機液体を連続相、共重合物水溶液を分散相となるよう乳化し調製したアミジン構造単位を有する水膨潤性高分子よりなる油中水型マイクロゲルエマルジョンを添加し前記染料をマイクロゲルに吸着させた後、水からマイクロゲルを分離することを特徴とする染料排水の処理方法。

【公開番号】特開2010−229362(P2010−229362A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80786(P2009−80786)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】