説明

油中水型化粧料

【課題】耐水性を損ねることなく、洗浄剤による洗浄時に化粧膜を容易に除去できる化粧料の提供を課題とする。
【解決手段】圧縮強度5.0MPa以下の有機樹脂粉末及び特定の界面活性剤及びシリコーン油を組み合わせた油中水型化粧料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐水性に優れながらも洗浄剤での洗浄時には容易に除去することが可能な油中水型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油中水型化粧料は耐水性や化粧崩れを防ぐため、粉末をシリコーン油で疎水化して、撥水性を高める(例えば特許文献1参照)、あるいは油性の高分子樹脂を配合し、油性膜を肌上に構成するような方法が行われていた(例えば特許文献2、3、4、5、6参照)。
しかしながら、これらの従来の化粧料は耐水性や化粧崩れは解消されるものの、洗浄性に関する考慮は特になされておらず、洗浄時にはクレンジングオイルなどの専用洗浄剤を使用するか、あるいはボディタオルなどで物理的に擦るなどの措置が必要であった。又、このような従来の技術においては、耐水性を維持するために化粧膜が厚くなり、かつ被膜感があり皮膚上での違和感や異物感があるという問題もあった。
【特許文献1】特公昭63−28408号公報
【特許文献2】特開2000−290154号公報
【特許文献3】特開平5−262634号公報
【特許文献4】特許第3515872号公報
【特許文献5】特開平9−255543号公報
【特許文献6】特開平8−259430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の耐水性を上げることを目的として調製された油中水型化粧料が洗浄剤を用いた洗浄時においてその化粧膜除去が困難であったことに鑑みなされたものであって、耐水性を損ねることなく、洗浄性を高めた油中水型化粧料の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、圧縮強度5.0MPa以下の有機樹脂粉末及び特定の界面活性剤及びシリコーン油を組み合わせることで耐水性を保持しながらも洗浄剤での洗浄時に化粧膜が容易に除去できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)次の成分A)〜成分D)を含むことを特徴とする油中水型化粧料。
A)1種又は2種以上の圧縮強度5.0MPa以下の有機樹脂粉末
B)1種又は2種以上のHLB2〜12の非シリコーン系非イオン界面活性剤
C)1種又は2種以上のポリエーテル変性シリコーン油
D)1種又は2種以上のポリグリセリン変性シリコーン油
(2)成分B)の非シリコーン系非イオン界面活性剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである上記(1)に記載の油中水型化粧料。
(3)成分A)が1.0〜20.0重量%、成分B)が0.1〜10.0重量%、成分C)が0.1〜10.0重量%含まれている上記(1)又は(2)に記載の油中水型化粧料。
【発明の効果】
【0005】
本発明の化粧料は、耐水性及び洗浄性に優れるため、これを用いれば化粧崩れが少なく、また洗浄剤を用いた洗浄時に化粧膜が容易に除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
成分A)について
本発明の圧縮強度は、微小硬度計にて粉末粒子の直径が10%変形するのに要した力を測定し、次の式、によって求められる。
圧縮強度(MPa)=27.5×P/πd2
P=粒子を10%変形させるのに必要な荷重(N)
d=粒子径(mm)
本発明の油中水型化粧料に用いられる有機樹脂粉末は、圧縮強度が5.0MPa以下の有機粉末であり、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。材料は特に限定されないが、例えば塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸アルキル、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、等が挙げられる。かかる有機樹脂粉末として、例えば市販のマツモト マイクロスフェアS−100(松本油脂製薬製、圧縮強度=0.4MPa)、ACX−1502C(積水化成品工業製、圧縮強度=0.25MPa)、を使用することもできる。これらの有機樹脂粉末は、単独で、若しくは2種以上を組み合わせて用いる。
有機樹脂粉末は、任意の粒子径のものを、目的に応じて選択することができ、特に1〜20μm程度の粒子径のものが好ましく用いられる。1μm未満あるいは20μmを超えると洗浄性が低下し、のび、なめらかさなどの使用感も低下する。また、任意の形状のものを目的に応じて選択することができるが、圧縮強度が低く、洗浄性に優れることから球状が好ましい。
本発明の有機樹脂粉末の圧縮強度は5.0MPa以下である。そのうちでも、1.0MPa以下が望ましく、特に、0.5MPa以下の有機樹脂粉末を使用すると、洗浄性に優れ好ましい。5.0MPaを超えると洗浄性が低下し、のび、なめらかさなどの使用感が劣る。
本発明の有機樹脂粉末の配合量は1.0〜20.0重量%が好ましく、3.0〜10.0重量%が特に好ましい。1.0重量%未満の場合は洗浄性が低下し、20.0重量%を超えると使用性、耐水性が低下するからである。
【0007】
成分B)について
本発明の非イオン界面活性剤としては、非シリコーン系のものが用いられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、ポリグリセリンの脂肪酸エステル類が挙げられる。中でも、特にポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく用いられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンが約2〜10個重合したものに、脂肪酸でエステル化したものが主に用いられる。
本発明に用いる非イオン界面活性剤のHLB(親水性新油性バランス)は、2以上12以下である。さらに好ましくは2以上6以下である。HLBが12を超えると耐水性、洗浄性が低下する。HLBが2未満では顔料の分散性、洗浄性が低下する。
非イオン界面活性剤の配合量は0.1〜10.0重量%が好ましい。0.1重量%未満では、洗浄性、顔料分散性が低下し、10.0重量%を超えると耐水性が低下する。
【0008】
成分C)について
本発明に用いるポリエーテル変性シリコーン油としては、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン重合体等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明で用いるポリエーテル変性シリコーン油は、市販されているものを使用することもでき、例えば、KF−6011、6017、6019(信越化学工業社製)、SH3775C、BY22−008、BY22−012、BY11−030(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)などが挙げられる。
本発明のポリエーテル変性シリコーン油の配合量は0.1〜10.0重量%が好ましい。0.1重量%以下では洗浄性、顔料分散性が低下し、10.0重量%を超えると耐水性が低下する。
【0009】
成分D)について
本発明のポリグリセリン変性シリコーン油は下記一般式で表され、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0010】
【化1】

式中、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基から成る群から選択される、同種または異種の有機基を表し、R2は下記一般式
【0011】
【化2】

を表し(式中d、eはそれぞれ0≦d≦15、1≦e≦20の整数を表す。)、R3は下記一般式
【0012】
【化3】

で表されるオルガノシロキサンを表し(式中、Rは上記と同様であり、f及びgはそれぞれ1≦f≦5、及び0≦g≦500の整数を表す。)、a、b及びcはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、及び0.001≦c≦1.5を表す。
本発明のポリグリセリン変性シリコーン油は、特開2002−179798に開示されている方法で製造することができる。
具体的には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、例えば下記一般式
【0013】
【化4】

で表されるアリルエーテル化合物、
下記一般式
【0014】
【化5】

で表されるビニルシリコーン化合物、場合によってはさらにヘキセンなどのアルキレン化合物とを白金触媒又はロジウム触媒の存在下に付加反応させることにより容易に合成することができる。
ポリグリセリン変性シリコーン油の中でも、ポリグリセリルポリジメチルシロキシエチルジメチコンが好適に用いられ、市販品としては信越化学工業製KF−6100(粘度20,000〜50,000mm/s、HLB10)、KF−6104(粘度1,000〜7,000mm/s、HLB2〜3)を用いることができる。
本発明のポリグリセリン変性シリコーン油の配合量は0.1〜10.0重量%が好ましい。0.1重量%未満では、洗浄性、顔料分散性が低下し、10.0重量%を超えると耐水性が低下する。
【0015】
本発明の油中水型化粧料には、紫外線散乱剤として、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化ジルコニウム等の無機粉末を配合することができる。
【0016】
本発明の油中水型化粧料には、体質顔料、有機粉末、パール剤、無機顔料、有機顔料等を用いることができる。例えば、タルク、マイカ、カオリン、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、スチレンパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、デンプン、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、雲母チタン、酸化チタン、酸化鉄雲母チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ等が挙げられる。
【0017】
本発明の油中水型化粧料には、さらに、多価アルコールを使用することができ、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンなどが例示できる。
【0018】
本発明の油中水型化粧料には、炭化水素油、エステル油、ロウ、シリコーン油、動植物油等の化粧料に通常用いられる油剤を用いることができる。
本発明の油中水型化粧料には、界面活性剤として非イオン界面活性剤以外にカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
本発明の油中水型化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられている成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、保香剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤その他の美容成分、薬効成分などを配合することができる。
【0019】
本発明の化粧料としては、サンスクリーンクリーム、サンスクリーンローション、サンオイル、サンケアスプレー、サンスクリーンエマルジョン、サンスクリーンムース、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、メーキャップベース、リキッドアイシャドウ、リキッドチークカラー等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
本発明を利用した化粧料を調製し、耐水性試験、洗浄性試験、安定性試験及び実使用試験を行った。
[耐水性試験]
上腕内側部の皮膚上の一定部分を色差計(Σ90、日本電色製)にて測色し、ブランクとする。次に、同じ部分に4mg/cm2になるように化粧料を塗布し、色差計にて測色する。その後、15℃〜25℃の流水に10分間さらした後、軽く水気を拭き取り30分間乾燥させる。乾燥後、さらに色差計にて測色し、次の式により化粧料の残存率とし、これが高いほど耐水性が高いと評価した。
残存率(%)=ΔEC-A/ΔEB-A×100
ΔEB-A:塗布後とブランクの色差
ΔEC-A:流水処理後とブランクの色差
【0021】
[洗浄性試験]
上腕内側部の皮膚上の一定部分を色差計(Σ90、日本電色製)にて測色し、ブランクとする。次に、同じ部分に4mg/cm2になるように化粧料を塗布し、色差計にて測色する。その後、ボディシャンプーで泡立てた上で手の平で数回擦り、15℃〜25℃の水で洗浄する。この操作を2回繰り返した後、軽く水気を拭き取り30分間乾燥させる。乾燥後、さらに色差計にて測色し、次の式により化粧料の残存率とし、これが低いほど洗浄性が高いと評価した。
残存率(%)=ΔEC-A/ΔEB-A×100
ΔEB-A:塗布後とブランクの色差
ΔEC-A:ボディシャンプー洗浄後とブランクの色差
【0022】
[安定性試験]
調製した化粧料を瓶に入れ密封し、40℃、50℃、5℃に3ヶ月間放置し、分離の有無、粘度変化の有無などを確認し、以下に示す3段階で評価した。
○:変化なし
△:やや変化あり
×:変化あり
【0023】
[実使用試験]
女子被験者(25〜40歳)20人に本発明の化粧料、及び比較例の化粧料を使用させて、使用感(のび、保湿感、べたつき感、被膜感)を官能評価し、以下の評価基準に準じて判定した。
◎:20人中、16名以上が良好と評価した。
○:20人中、12名以上15名以下が良好と評価した。
△:20人中、8名以上11名以下が良好と評価した。
×:20人中、7名以下が良好と評価した。
【0024】
[実施例1、2、比較例1、2、3、4〕
表1の各成分について下記製法によりサンスクリーンクリームを調整し、各試験を行った。結果を表1に示す。
【0025】
(製法)
成分4〜10を80°Cに加熱し、均一に混合し(a)、次に成分1〜3、11〜15をaに添加して混合する(b)。成分16〜19を80°Cに加熱し、均一に混合した後、これをbに添加、乳化混合して室温まで冷却する。
【0026】
【表1】

表1の結果より、実施例1、2のサンスクリーンクリームは耐水性、洗浄性、安定性に優れ、使用感にも優れていることがわかった。
【0027】
[実施例3、比較例5,6〕
表2の各成分について下記製法によりサンスクリーンローションを調整し、各試験を行った。結果を表2に示す。
(製法)
成分1〜10を均一に混合し(a)、次に、成分11〜13を均一に混合した後、これをaに添加して乳化混合する。
【0028】
【表2】

表2の結果より、実施例3のサンスクリーンローションは耐水性、洗浄性、安定性に優れ、使用感にも優れていることがわかった。
【0029】
[実施例4〕
下記組成及び製法によりサンスクリーンローションを調整し、各試験を行った。
この結果、実施例4のサンスクリーンローションは耐水性、洗浄性、安定性に優れ、使用感にも優れていることがわかった。
(組成)
(質量%)
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 10
(2)ステアリン酸処理微粒子酸化チタン 10
(3)シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 20
(4)メチルポリシロキサン 5
(5)オクタン酸セチル 5
(6)ソルビタンセスキオレイン酸エステル 2
(7)ポリオキシエチレン変性シリコーン(KF-6017) 2
(8)ポリグリセリン変性シリコーン(KF-6100) 2
(9)アクリル酸アクリルコポリマー(マツモト マイクロスフェアーS-100) 10
(10)グリセリン 5
(11)1,2−ペンタンジオール 2
(12)精製水 適量
(製法)
上記成分(1)〜(9)を均一に混合し(a)、次に、成分(10)〜(12)を均一に混合した後、これをaに添加して乳化混合する。
【0030】
[実施例5〕
下記組成及び製法によりリキッドファンデーションを調整し、各試験を行った。
この結果、実施例5のリキッドファンデーションは耐水性、洗浄性、安定性に優れ、使用感にも優れていることがわかった。
(組成)
(質量%)
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 10
(2)シリコーン処理酸化チタン 8
(3)シリコーン処理ベンガラ 2
(4)シリコーン処理黄酸化鉄 3.5
(5)シリコーン処理黒酸化鉄 0.5
(6)メチルポリシロキサン 5
(7)メチルフェニルポリシロキサン 5
(8)ジイソステアリン酸ポリクグリセリル−3(HLB5) 1
(9)ポリオキシエチレン変性シリコーン(KF-6016) 2
(10)ポリグリセリン変性シリコーン(KF-6100) 2
(11)ナイロン(ナイロンパウダーSNP、メタルカラー製) 2
(圧縮強度0.8MPa)
(12)グリセリン 5
(13)硫酸マグネシウム 0.5
(14)精製水 適量
(製法)
上記成分(1)〜(11)を均一に混合し(a)、次に成分(12)〜(14)を均一に混合した後、これをaに添加して乳化混合する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、耐水性及び洗浄性に優れ、化粧崩れが少なく、また洗浄剤を用いた洗浄時の化粧膜の除去が容易な化粧料を提供することができる。従って、特に日焼け止め用の化粧料に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分A)〜成分D)を含むことを特徴とする油中水型化粧料。
A)1種又は2種以上の圧縮強度5.0MPa以下の有機樹脂粉末
B)1種又は2種以上のHLB2〜12の非シリコーン系非イオン界面活性剤
C)1種又は2種以上のポリエーテル変性シリコーン油
D)1種又は2種以上のポリグリセリン変性シリコーン油
【請求項2】
B)の非シリコーン系非イオン界面活性剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1に記載の油中水型化粧料。
【請求項3】
成分A)が1.0〜20.0重量%、成分B)が0.1〜10.0重量%、成分C)が0.1〜10.0重量%含まれている請求項1又は2に記載の油中水型化粧料。

【公開番号】特開2006−213619(P2006−213619A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26371(P2005−26371)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】