説明

油圧制御装置

【課題】適切なタイミングで電動ポンプを停止させることのできる油圧制御装置を提供すること。
【解決手段】油圧制御装置2に、車両1のエンジン10と駆動輪44との間の回転トルクの伝達を遮断することができるクラッチC1と、クラッチC1の係合制御時に用いる油圧をエンジン10で発生する動力を用いて発生させることができるメカポンプ56と、電気で作動することによりクラッチC1の係合制御時に用いる油圧を発生させることができる電動ポンプ52と、メカポンプ56で発生する油圧と、電動ポンプ52で発生する油圧と、により駆動されるプライマリシーブ32及びセカンダリシーブ34と、電動ポンプ52を制御することができると共に、クラッチC1の係合制御とプライマリシーブ32等の駆動とを共に行う場合に、メカポンプ56で発生する油圧のみで行うことができると判断された場合には、電動ポンプ52を停止させる走行制御部74と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源で発生した動力によって走行する車両では、動力源としてエンジンが用いられる場合が多いが、エンジンは、回転が停止している状態から回転数を上昇させて動力を発生させることはできず、運転を継続することができる最低回転数以上で運転する必要がある。一方、車両の走行時には車速が0になり、駆動輪の回転が停止する場合がある。このため、車両には、エンジンから駆動輪までの間の動力伝達経路に、係合状態を切り替えることにより動力の伝達や遮断を切り換えるクラッチが設けられており、車両の走行時には、このクラッチの係合状態を切り替えながら走行する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された制動力回生装置では、エンジンと変速機との間に配設されるトルクコンバータにクラッチの一例であるロックアップ機構が備えられており、車両の走行状態に応じてロックアップ機構の係合と開放とを切り替えている。また、この特許文献1に記載された制動力回生装置では、エンジンに備えられる補機に対してトルクコンバータの両側から動力を伝達することが可能になっており、つまり、補機に対してエンジン側の動力と車輪側の動力とを伝達可能になっている。
【0004】
さらに、制動力回生装置には、補機に伝達するエンジン側の動力と車輪側の動力とのそれぞれの回転数のうち、より高い回転数側の動力を補機に伝達する回転数選択手段が設けられている。このため、ロックアップ機構を開放状態にした場合には、補機にはエンジン側の動力と車輪側の動力とのうち、いずれかの動力が伝達され、伝達された動力によって作動する。これにより、車輪の回転速度が低回転の場合でも、補機をより適切に作動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−207243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、近年では、燃料消費量の低減等を目的として、車両の走行中にエンジンを停止する技術が開発されている。このような車両では、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられるクラッチは、エンジンの停止時には開放させ、動力を発生しないエンジンを回転させることによるフリクションロスを低減している。また、停止しているエンジンを始動する場合には、エンジンに備えられるスタータによって始動し、クラッチを係合することにより、エンジンで発生する動力を駆動輪側に伝達する。
【0007】
さらに、このように動力の伝達状態を切り替えるクラッチは、油圧源となるポンプで発生する油圧によって作動させ、係合力を発生させる。ここで、ポンプは、一般的にエンジンで発生する動力で作動するが、走行中にエンジンを停止する車両では、エンジンを停止した場合、エンジンの動力でポンプを作動させることができなくなり、油圧を発生させることができなくなる。このため、走行中にエンジンを停止させる車両では、エンジンで発生する動力によって作動するポンプであるメカポンプの他に、モータで発生する動力によって作動する電動ポンプを備えており、エンジンの停止時に油圧によってクラッチ等を作動させる場合には、電動ポンプの油圧によって作動させる。
【0008】
走行中にエンジンを停止させる車両では、このようにメカポンプと電気ポンプとを併用するが、電動ポンプは、運動エネルギを一旦電気エネルギに変換した後、電気エネルギを再び運動エネルギに変換するため、メカポンプと比較して効率が悪くなっている。このため、このような車両では、電動ポンプの使用は最小限に抑えており、車両の走行中にエンジンを停止することにより電動ポンプを作動させている場合、エンジンを再始動したら、極力早めに電動ポンプを停止してメカポンプで油圧を発生させる。
【0009】
しかし、電動ポンプを停止する際に、不適切なタイミングで停止した場合、油圧で作動する装置に付与する油圧が不適切になるため、所望の動作を行わせることが困難になる場合がある。例えば、車両の走行中におけるエンジンの停止時には開放させ、エンジンの始動時には係合させることによってエンジンで発生する動力を駆動輪側に伝達するクラッチに付与する油圧の油圧源を電動ポンプからメカポンプに切り替える際に、電動ポンプの停止が早過ぎる場合、クラッチの係合力が一時的に低下する場合がある。この場合、エンジンから駆動輪への動力の伝達率が低下するため、所望の駆動力を発生させることができなくなり、加速のもたつきが発生する場合がある。このように、メカポンプと電動ポンプとを併用する車両において作動中の電動ポンプを停止する場合、適切なタイミングで停止する必要があるが、従来の車両では、電動ポンプの停止タイミングは未考慮になっていた。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、適切なタイミングで電動ポンプを停止させることのできる油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る油圧制御装置は、車両のエンジンと駆動輪との間の回転トルクの伝達を遮断することができるクラッチと、前記クラッチの係合制御時に用いる油圧を前記エンジンで発生する動力を用いて発生させることができる機械式ポンプと、電気で作動することにより前記クラッチの係合制御時に用いる油圧を発生させることができる電動ポンプと、前記機械式ポンプで発生する油圧と、前記電動ポンプで発生する油圧と、により駆動される補機と、前記電動ポンプを制御することができると共に、前記クラッチの係合制御と前記補機の駆動とを共に行う場合に、前記機械式ポンプで発生する油圧のみで行うことができると判断された場合には、前記電動ポンプを停止させるポンプ制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、上記油圧制御装置において、さらに、前記クラッチの係合時における滑りを検出する滑り検出手段を備えており、前記ポンプ制御手段は、前記クラッチの滑りを前記滑り検出手段で検出した場合には、前記電動ポンプの停止を禁止することが好ましい。
【0013】
また、上記油圧制御装置において、さらに、前記クラッチの発熱量を検出する発熱量検出手段を備えており、前記ポンプ制御手段は、前記発熱量が所定値以上の場合には、前記電動ポンプの停止を禁止することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る油圧制御装置は、適切なタイミングで電動ポンプを停止させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態1に係る油圧制御装置を備える車両の概略図である。
【図2】図2は、油圧制御装置の処理手順の概略を示すフロー図である。
【図3】図3は、実施形態2に係る油圧制御装置の処理手順の概略を示すフロー図である。
【図4】図4は、実施形態3に係る油圧制御装置の処理手順の概略を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る油圧制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る油圧制御装置を備える車両の概略図である。本実施形態1に係る油圧制御装置2は、車両1に搭載されている。この車両1は、走行時における動力源として内燃機関であるエンジン10が設けられており、このエンジン10と車両1の駆動輪44との間には、双方の間で回転トルクを伝達することにより、エンジン10で発生した動力を駆動輪44に伝達する動力伝達経路が設けられている。
【0018】
動力伝達経路を構成する装置類について説明すると、エンジン10は、トルクの増幅手段及びトルクの断続手段としての機能を兼ねるトルクコンバータ16に接続されている。このトルクコンバータ16は、トルクコンバータ16から伝達された回転トルクの回転方向を任意の方向に切り替えて他の装置に伝達することのできる前後進切替機構20に接続されている。さらに、前後進切替機構20は、当該前後進切替機構20とで自動変速機を構成する無段変速機30に接続されている。この無段変速機30は、前後進切替機構20から伝達される回転トルクの入力回転数と出力回転数との変速比を無段階に変速可能な変速装置であるCVT(Continuously Variable Transmission)として設けられており、トルクの伝達にベルトを用いるベルト式無段変速機になっている。このように設けられる無段変速機30は、変速比を変更することにより、エンジン10側から入力された回転トルクの回転速度を変速して車両1の駆動輪44側に出力可能に設けられている。
【0019】
詳しくは、無段変速機30は、回転トルクの入力側と出力側とで一対のシーブを有しており、即ち、前後進切替機構20から伝達される回転トルクによって回転するプライマリシーブ32と、プライマリシーブ32から伝達される回転トルクによって回転するセカンダリシーブ34と、を有している。これらのプライマリシーブ32とセカンダリシーブ34とには、共にベルト36が巻き掛けられており、プライマリシーブ32の回転トルクは、このベルト36を介してセカンダリシーブ34に伝達される。また、これらのプライマリシーブ32とセカンダリシーブ34とは、共にベルト36の幅方向におけるは挟圧力を調節可能になっており、この挟圧力を調節することにより、巻き掛けられるベルト36の回転半径を調節することができる。無段変速機30は、このように、プライマリシーブ32とセカンダリシーブ34との間でベルト36を介して回転トルクを伝達する際におけるベルト36の回転半径を、プライマリシーブ32とセカンダリシーブ34との双方で調節することにより、シーブ間の変速比の変更が可能になっている。
【0020】
このように設けられる無段変速機30は、さらに減速装置40に接続されており、セカンダリシーブ34の回転トルクを減速装置40に伝達可能になっている。この減速装置40は、無段変速機30から伝達される回転トルクを減速して差動装置42に伝達可能になっており、差動装置42は、減速装置40から伝達された回転トルクを左右の駆動輪44に伝達可能になっている。これらのように、エンジン10と駆動輪44との間には、複数の装置等によって動力伝達経路が構成されている。
【0021】
動力伝達経路を構成する各装置のうち、前後進切替機構20や無段変速機30は、油圧によって作動させることが可能になっている。このため、これらの装置には、バルブ類等を有することにより、それぞれの装置に付与する油圧を調節することができる油圧回路50が接続されており、油圧回路50には、吸引したオイルを吐出することにより油圧を発生させるポンプが接続されている。このうち、ポンプは、電気によって作動するモータ54で発生する動力を用いて油圧を発生する電動ポンプ52と、エンジン10の作動に伴って作動し、油圧を発生する機械式ポンプであるメカポンプ56と、が設けられている。これらの油圧回路50や、電動ポンプ52、メカポンプ56、さらに、前後進切替機構20等の油圧によって作動する各装置は、油圧経路58によって接続されている。
【0022】
また、油圧経路58における電動ポンプ52の吐出側と油圧回路50との間には、電動ポンプ52で吐出したオイルが流れる方向を切り替える方向切替弁60が設けられている。この方向切替弁60は、オイルの流入側は電動ポンプ52に接続されており、オイルの流出側は、油圧回路50に接続される油圧経路58と、前後進切替機構20に接続される潤滑経路62とに接続されている。このように、油圧経路58と潤滑経路62とに接続されている方向切替弁60は、オイルの流れ方向を切り替えることが可能になっており、電動ポンプ52で吐出したオイルを、油圧回路50の方向、または、前後進切替機構20の方向に流れるように切り替えることが可能になっている。
【0023】
また、油圧で作動する装置のうち、動力伝達経路におけるエンジン10と無段変速機30との間に配設される前後進切替機構20は、例えば、摩擦係合を行うことにより、トルクコンバータ16と無段変速機30との間の回転トルクの伝達や遮断を切り替えることができるクラッチC1の係合を、油圧によって行うことができるように設けられている。このため、前後進切替機構20は、クラッチC1の係合状態を、油圧を調節することにより切替え可能になっている。また、このクラッチC1の係合状態を切り替える際に用いる油圧は、電動ポンプ52やメカポンプ56で発生する油圧を使用する。換言すると、電動ポンプ52とメカポンプ56とは、クラッチC1の係合制御時に用いる油圧を発生させることができる。なお、前後進切替機構20に接続される潤滑経路62は、当該潤滑経路62を流れるオイルによって、このクラッチC1の潤滑を行うことが可能に設けられている。
【0024】
また、無段変速機30は、プライマリシーブ32やセカンダリシーブ34の挟圧力は、電動ポンプ52で発生する油圧とメカポンプ56で発生する油圧とによって発生可能になっており、この挟圧力は、付与する油圧を調節することにより、調節することができる。つまり、無段変速機30は、油圧を調節することにより、変速比の調節が可能になっている。また、電動ポンプ52やメカポンプ56は、これらのようにクラッチC1以外の制御に用いる油圧の油圧源として設けられており、プライマリシーブ32とセカンダリシーブ34とは、電動ポンプ52で発生する油圧と、メカポンプ56で発生する油圧と、により駆動される補機として設けられている。
【0025】
また、エンジン10には、エンジン10が停止している場合に、エンジン10のクランクシャフト(図示省略)に回転トルクを入力することによりエンジン10を始動することができるスタータ12が備えられている。このスタータ12は、車両1に装備される各電気機器の電源として用いられるバッテリ(図示省略)から供給される電気によって作動するモータ、及びモータで発生した動力をエンジン10に伝達する伝達機構によって設けられている。このように設けられるスタータ12は、バッテリからの電気によってモータが作動し、このモータで発生した動力を、停止している状態のエンジン10のクランクシャフトに対して伝達機構から伝達してクランクシャフトを回転させることにより、エンジン10を始動する。即ち、スタータ12は、停止中のエンジン10に回転トルクを伝達することによりエンジン10の始動が可能に設けられている。
【0026】
また、エンジン10には、エンジン回転数を検出する回転数検出手段であるエンジン回転数センサ14が設けられており、エンジン10の運転時における回転数の検出を行うことが可能になっている。
【0027】
これらのように設けられるエンジン10等の機関や装置、センサ類は、車両1に搭載されると共に車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)70に接続されている。また、ECU70には、車両1のドライバの運転操作の状態を検出するセンサ類も接続されており、例えば、ドライバが駆動力を調節する際に操作をするアクセルペダル66の開度を検出するアクセルセンサ68が接続されている。
【0028】
このように各装置やセンサ類が接続されるECU70は、これらの装置等との間で情報や信号のやり取りが可能になっており、これにより、車両1の各部は、センサ類での検出結果に基づいて、ECU70により制御されて作動する。例えば、エンジン10は、吸入空気量やインジェクタ(図示省略)による燃料噴射量、点火時期が、アクセルセンサ68で検出するアクセルペダル66の開度や、エンジン回転数センサ14で検出するエンジン回転数、エンジン冷却水温度等に応じて制御されることにより作動する。
【0029】
このように各部を制御可能なECU70のハード構成は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部等を備えた公知の構成であるため、説明は省略する。
【0030】
また、このように設けられるECU70の処理部は、車両1の走行状態や運転者の運転操作の状態を取得する走行状態取得部72と、車両1の走行制御を行う走行制御部74と、車両1の走行中にエンジン10を停止させる制御であるエンジン停止制御を行うエンジン停止制御部76と、車両1の走行状態や運転者の運転操作の状態に基づく各種の判定を行う走行状態判定部78と、を有している。
【0031】
この実施形態1に係る油圧制御装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の走行時には、ドライバが操作をするアクセルペダル66の操作量であるアクセル開度をアクセルセンサ68で検出し、この検出結果を、ECU70が有する走行状態取得部72で取得する。走行状態取得部72で取得したアクセル開度は、ECU70が有する走行制御部74に伝達される。走行制御部74は、走行状態取得部72で取得した運転操作の状態等に基づいて、車両1の走行制御を行う。車両1の走行制御を行う場合には、走行状態取得部72から伝達された走行状態等に応じて、エンジン10で発生する動力や、無段変速機30の変速比を調節する。
【0032】
例えば、エンジン10の動力を調節する場合には、エンジン10が有するスロットルバルブ(図示省略)の開度を調節したり、燃料インジェクタ(図示省略)から噴射する燃料の噴射量を調節したりすることにより、所望の動力をエンジン10に発生させる。また、無段変速機30の変速比を調節する場合には、油圧回路50を制御してプライマリシーブ32やセカンダリシーブ34に付与する油圧を調節し、それぞれのシーブによるベルト36に対する挟圧力を調節することにより、ベルト36の回転半径を調節し、変速比を調節する。このようにドライバによる運転操作の状態等に基づいて、走行制御部74でエンジン10等を制御することにより、エンジン10で発生した動力は無段変速機30等の動力伝達経路を介して駆動輪44に伝達され、駆動輪44で所望の駆動力を発生する。
【0033】
また、電動ポンプ52で吐出したオイルの経路には方向切替弁60が設けられているが、電動ポンプ52でオイルを吐出しつつ、方向切替弁60を切り替えることにより、電動ポンプ52を、各油圧装置の油圧源として用いたり、前後進切替機構20を潤滑する潤滑油を供給する潤滑油供給源として用いたりすることが可能になっている。方向切替弁60は、電動ポンプ52から吐出したオイルの流れ方向を、このように車両1の走行状態に応じて切り替える。
【0034】
また、車両1は、ドライバが車両1を加速させる意思がないと判断できる場合には、エンジン10の運転を停止させて慣性エネルギを用いて惰性で車両1を走行させる制御であるエンジン停止制御を行う。このエンジン停止制御では、エンジン10の運転を停止するのみでなく、エンジン10と駆動輪44との間の動力伝達経路における回転トルクの伝達も遮断する。このように、エンジン10を停止すると共に、エンジン10と駆動輪44との間の回転トルクの伝達も遮断するエンジン停止制御は、走行状態取得部72で取得するドライバの運転操作をECU70が有するエンジン停止制御部76で判定し、ドライバは車両1を加速させる意思がないと判断することができる場合に行う。
【0035】
具体的には、アクセルセンサ68で検出するアクセル開度が0で、且つ、自動変速機の作動状態を選択することにより走行レンジを切り替えることができるセレクトレバー(図示省略)が、エンジン10で発生した動力を駆動輪44の伝達しないレンジであるN(ニュートラル)レンジに操作された場合には、ドライバは車両1を加速させる意思がないと判断することができる。このように、アクセル開度が全閉の状態で、且つ、セレクトレバーがNレンジに操作されている場合には、エンジン停止制御部76はエンジン停止制御を行うと判定する。なお、セレクトレバーがD(ドライブ)レンジであっても、ブレーキを作動させている場合は、クラッチC1を開放してエンジン停止を行う。
【0036】
所定の条件を満たすことによりエンジン停止制御を行うとエンジン停止制御部76で判定した場合には、走行制御部74は、燃料噴射制御や点火制御を停止することにより、エンジン10の運転を停止させる。さらに、走行制御部74は、油圧回路50を制御することにより、前後進切替機構20に設けられるクラッチC1を開放状態にし、これらの制御を行うことによって、惰性走行の制御を行う。
【0037】
エンジン停止制御時は、このように前後進切替機構20に設けられるクラッチC1を開放状態にすることにより、トルクコンバータ16と無段変速機30との間の回転トルクの伝達を遮断する。これにより、駆動輪44とエンジン10とは、回転トルクの伝達が遮断された状態になり、動力を発生しないエンジン10を回転させることによる抵抗が発生しないため、車両1は、走行抵抗が低減した状態で、エンジン停止制御を開始した際における車速に基づく運動エネルギによる惰性走行を続ける。
【0038】
このように、エンジン停止制御によってエンジン10を停止し、惰性走行で車両1を走行させている状態で、ドライバが車両1を加速させる意思があると判断できる場合など、エンジン10を始動させる必要があり場合には、エンジン10を始動する。これにより、エンジン10で発生する動力によって駆動力を発生させる。
【0039】
例えば、自動変速機の走行レンジを切り替えるセレクトレバーが、Dレンジ等、エンジン10で発生した動力を用いて駆動輪44で駆動力を発生させることのできるレンジに操作され、アクセルペダル66が踏み込まれたことをアクセルセンサ68で検出した場合には、ドライバは車両1を加速させる意思があると判断することができる。このように、セレクトレバーが、車両1を走行させる走行レンジに操作され、且つ、アクセル開度が全閉以外の場合には、走行状態判定部78はエンジン停止制御を終了してエンジン10を始動するとの判定を行う。
【0040】
所定の条件を満たすことにより、エンジン10を始動するとの判定を走行状態判定部78で行った場合には、走行制御部74は、エンジン10の燃料噴射制御や点火制御と共に、スタータ12を作動させる。これらのように、エンジン10の各部を制御することによりエンジン10を始動させたら、前後進切替機構20のクラッチC1を係合させ、トルクコンバータ16と無段変速機30との間で回転トルクを伝達可能な状態にする。これにより、エンジン10で発生した動力は無段変速機30等を介して駆動輪44に伝達され、駆動輪44で駆動力を発生することにより、車両1はドライバの運転操作に応じて加速をする。
【0041】
車両1の走行中に停止させているエンジン10を始動する場合には、このようにエンジン10の停止中には開放させていたクラッチC1を係合させるが、このクラッチC1は、電動ポンプ52やメカポンプ56からオイルを吐出することにより発生する油圧によって作動する。一方、メカポンプ56は、エンジン10で発生する動力によって作動する。このため、エンジン10の停止中は、メカポンプ56で油圧を発生させることはできないため、エンジン10の停止中に油圧によってクラッチC1等を作動させる場合には、電動ポンプ52によって油圧を発生させる。また、停止させているエンジン10の始動直後も、エンジン回転数が低いためメカポンプ56を効果的に作動させることができないため、電動ポンプ52を用いて油圧を発生させる。
【0042】
ここで、この電動ポンプ52は、メカポンプ56と比較した場合、効率が悪く、燃費の悪化にもつながるため、電動ポンプ52の使用は最小限に抑えた方が好ましくなっている。このため、エンジン10を始動してメカポンプ56のみで効果的に油圧を発生させることができる状態になったら、電動ポンプ52は停止させる。その際に、電動ポンプ52を停止するタイミングが早過ぎる場合、油圧で作動する装置に対して油圧を適切に付与することができなくなる場合があり、例えば、停止しているエンジン10を始動させた際に係合させるクラッチC1に対して、油圧を適切に付与することができなくなる場合がある。この場合、クラッチC1の係合圧が不足してスリップが発生し、エンジン10で発生した動力の駆動輪44への伝達率が低下する場合があり、エンジン停止制御中にドライバが加速要求を行うことによりエンジン10を始動した際に、加速のもたつきが発生する場合がある。
【0043】
従って、停止しているエンジン10を始動させる際に、燃費の低下を抑制するために電動ポンプ52を停止させる場合には、始動を開始したエンジン10で発生した動力によって作動するメカポンプ56の流量が、所定の流量以上になったら、電動ポンプ52を停止させる。これにより、電動ポンプ52を停止させる際に、クラッチC1等に付与する油圧が低下することに起因して加速のもたつき等の不具合が発生することを抑制する。
【0044】
図2は、油圧制御装置の処理手順の概略を示すフロー図である。次に、本実施形態1に係る油圧制御装置2の制御方法、即ち、当該油圧制御装置2の処理手順の概略について説明する。本実施形態1に係る油圧制御装置2では、まず、エンジン停止制御を実施中であるか否かを判定する(ステップST101)。この判定は、ECU70が有する走行状態判定部78で行う。走行状態判定部78は、所定の条件が満たされた場合にエンジン停止制御を行うエンジン停止制御部76が、エンジン停止制御を実施しているか否かの判定を、エンジン停止制御部76の状態に基づいて行う。なお、このエンジン停止制御を実施中であるか否かの判定は、直接エンジン停止制御部76での制御状態に基づいて行う方法以外の方法によって行ってもよく、例えば、エンジン停止制御の実施状態を示すフラグを設定し、このフラグの状態に基づいて判定してもよい。この走行状態判定部78での判定により、エンジン停止制御は実施中ではないと判定された場合(ステップST101、No判定)には、この処理手順から抜け出る。
【0045】
これに対し、エンジン停止制御は実施中であると走行状態判定部78で判定した場合(ステップST101、Yes判定)には、電動ポンプ52を駆動させる(ステップST102)。即ち、ECU70の走行制御部74で電動ポンプ52に対して制御信号を送信することにより、電動ポンプ52を駆動させ、電動ポンプ52から油圧回路50までの油圧経路58の油圧を確保する。走行制御部74は、このように電動ポンプ52を制御することができるポンプ制御手段としても設けられている。
【0046】
次に、エンジン停止制御からエンジン復帰するか否かを判定する(ステップST103)。この判定は、ECU70の走行状態判定部78で行う。走行状態判定部78は、まず、アクセルセンサ68で検出し、走行状態取得部72で取得したアクセル開度に基づいて、エンジン10の始動要求があるか否かを判定する。つまり、アクセル開度に基づいて、ドライバがアクセルペダル66を踏み込んでいることを検出した場合には、ドライバは加速要求を行っていると判断し、エンジン10の始動要求があると判定する。なお、このようにエンジン復帰するか否かの判定は、アクセル開度に基づく始動要求以外によって判定してもよく、例えば、バッテリの充電量が所定値以下になった場合に、バッテリに充電する電気を発電するために、エンジン復帰を行うとの判定を行ってもよい。
【0047】
走行状態判定部78は、このエンジン10の始動要求があると判定した場合には、エンジン復帰するとの判定を行うと共に、エンジン10の始動要求があることを走行制御部74に伝達する。これにより、走行制御部74は、エンジン10を制御し、燃料噴射制御や点火制御を行いつつ、スタータ12を作動させ、エンジン10を始動させる。
【0048】
走行状態判定部78での判定により、エンジン10の始動要求はなく、エンジン復帰しないとの判定が行われた場合(ステップST103、No判定)には、エンジン復帰するとの判定が行われるまで、エンジン10を停止した状態で電動ポンプ52の駆動を継続し(ステップST102)、この判定を繰り返す。
【0049】
これに対し、エンジン復帰するとの判定を行った場合(ステップST103、Yes判定)には、次に、油圧回路50の流量は所定値以上であるか否かを判定する(ステップST104)。つまり、エンジン10を始動した場合には、エンジン10で発生した動力によってメカポンプ56も作動するため、油圧回路50には、電動ポンプ52から吐出されるオイルのみでなく、メカポンプ56から吐出されるオイルも流入する。
【0050】
ここで、電動ポンプ52は、制御に応じた吐出量でオイルを吐出するのに対し、メカポンプ56は、エンジン回転数が上昇するに従って作動量が増加するため、吐出するオイルの流量も、エンジン回転数の上昇に従って増加する。このため、油圧回路50に流入するオイルの流量は、メカポンプ56のオイルの吐出量によって変化する。また、油圧回路50には、電動ポンプ52から吐出されるオイルと、メカポンプ56から吐出されるオイルとの双方が流入するため、油圧回路50に流入するオイル全体の流量は、メカポンプ56のオイルの吐出量によって変化する。従って、油圧回路50の流量は所定値以上であるか否かを判定する場合には、電動ポンプ52から吐出されるオイルと、メカポンプ56から吐出されるオイルとが合わさった流量が、所定値以上であるか否かを判定する。
【0051】
具体的には、油圧回路50の流量の推定値が、予め設定されてECU70の記憶部に記憶されている所定値以上であるか否かを、走行状態判定部78で判定する。また、油圧回路50の流量の推定値は、走行状態取得部72によって推定し、取得する。
【0052】
走行状態取得部72で油圧回路50の流量を推定する場合には、油圧経路58内のオイルの油温や、油圧回路50からのオイルの漏れ、エンジン回転数、油路径等のパラメータを用いて、マップを用いて推定する。このマップは、これらのパラメータと油圧回路50の流量との関係が予め実験的に求められ、ECU70の記憶部に記憶されている。なお、各パラメータから油圧回路50の流量を推定する場合には、パラメータと流量との関係を示す所定の式を用いて算出し、推定してもよい。
【0053】
また、油圧回路50の流量を推定する際における各パラメータのうち、オイル粘度に関わるパラメータである油温は、油圧によって作動する各装置の作動状態に基づいて推定する。また、メカポンプ56の作動量に関係するパラメータであるエンジン回転数は、エンジン回転数センサ14での検出結果より取得する。また、油圧回路50からのオイルの漏れと油路径は、油圧回路50や油圧経路58の特性として予めECU70の記憶部に記憶されている。
【0054】
また、この判定に用いる所定値は、油圧回路50の流量は、電動ポンプ52を停止し、メカポンプ56のみで油圧を発生させる場合でも、油圧で作動する各装置を適切に作動させることができる流量になっている。換言すると、この所定値は、油圧で作動する各装置を適切に作動させることができる流量に、電動ポンプ52から吐出するオイルの流量を加算した値になっている。走行状態判定部78は、各パラメータより走行状態取得部72で推定した油圧回路50の流量の推定値と記憶部に記憶されている所定値とを比較し、油圧回路50の流量が所定値以上であるか否かを判定する。
【0055】
この判定により、油圧回路50の流量は所定値未満であると判定された場合(ステップST104、No判定)は、油圧回路50の流量は所定値以上であると判定されるまで、この判定を繰り返す。即ち、油圧回路50の流量は、エンジン回転数が上昇してメカポンプ56からのオイルの吐出量が増加するのに伴って増加するため、油圧回路50の流量が所定値以上であると判定されるまで、この判定を繰り返す。
【0056】
これに対し、油圧回路50の流量は所定値以上であると判定された場合(ステップST104、Yes判定)は、電動ポンプ52を停止する(ステップST105)。油圧回路50の流量は所定値以上であると判定された場合には、メカポンプ56から吐出するオイルの流量のみで、油圧で作動する各装置を適切に作動させることがきることを示しているため、この場合は、走行制御部74によって電動ポンプ52を停止する。つまり、走行制御部74は、油圧で作動するプライマリシーブ32やセカンダリシーブ34等の補機の駆動と、クラッチC1の係合制御とを共に行う場合に、メカポンプ56で発生する油圧のみで行うことができると走行状態判定部78で判断した場合には、電動ポンプ52を停止させる。これにより、電動ポンプ52の停止時におけるクラッチC1のスリップを抑制する。
【0057】
以上の油圧制御装置2は、油圧で作動する各装置に供給する油圧をメカポンプ56のみで発生させることができると走行状態判定部78で判断した場合には、電動ポンプ52を停止するため、車両1の加速のもたつき等の不具合が発生することを抑制することができる。つまり、電動ポンプ52のみで油圧を発生可能なエンジン停止制御時における、ドライバの加速要求等によるエンジン10の始動時に、開放状態のクラッチC1を、油圧を用いて係合させる場合には、運転を開始したエンジン10の動力で作動するメカポンプ56のみで所望の油圧を発生させることができるか否かを判断する。エンジン10を始動することによりメカポンプ56で油圧を発生させることができる状態になった場合には、この判断を行うことによってメカポンプ56のみで所望の油圧を発生させることができると判断してから、電動ポンプ52を停止する。これにより、クラッチC1に付与する油圧を確保できるため、電動ポンプ52の停止が早過ぎることに起因してクラッチC1の係合圧が一時的に低下し、エンジン10から駆動輪44への動力の伝達率が低下することに起因して駆動力が低下することを抑制できる。従って、加速のもたつきが発生することを抑制することができ、適切なタイミングで電動ポンプ52を停止させることができる。
【0058】
また、このように、適切なタイミングで電動ポンプ52を停止することにより、メカポンプ56と比較して効率が悪い電動ポンプ52の使用頻度を、車両1の走行状態に影響を与えることなく低減することができる。これにより、車両1の走行状態への悪影響を考慮して不必要に電動ポンプ52で油圧を発生させ続けることを抑制することができ、効率が悪い電動ポンプ52を長時間使用することに起因して電気消費量が増加することを抑制することができる。この結果、電動ポンプ52を作動させることによる電気消費量の増加に伴う燃費の悪化を抑制することができる。
【0059】
[実施形態2]
実施形態2に係る油圧制御装置2は、実施形態1に係る油圧制御装置2と略同様の構成であるが、エンジン停止制御時にエンジン10を復帰させる際に、クラッチC1の係合状態に基づいて電動ポンプ52の制御を行う点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0060】
エンジン停止制御時に、例えば、バッテリの充電量が所定値以下になることによりバッテリに充電するためにエンジン10を始動する場合等、アクセルペダル66がOFFの状態からのエンジン10の復帰時は、ドライバからの加速要求は比較的低くなっている。このため、エンジン停止制御からのエンジン10の復帰時における油圧回路50の実流量が、油圧経路58へのエアの吸い込み等によって推定流量よりも低く、クラッチC1の制御が適切に行われないことにより車両1の加速にもたつきが発生した場合でも、ドライバが感じる違和感はあまり大きくはない。
【0061】
しかし、エンジン停止制御時に、アクセルペダル66をONにすることによるエンジン10の復帰時は、ドライバが強く加速要求をしているため、油圧回路50の実流量が推定流量より低いことに起因してクラッチC1の制御が適切に行われず、加速にもたつきが発生した場合、ドライバの違和感は大きくなる。このため、本実施形態2に係る油圧制御装置2では、油圧回路50の流量に基づいて係合状態が制御されるクラッチC1の状態に応じて電動ポンプ52を制御する。具体的には、油圧回路50の推定流量と、クラッチC1における係合部材同士の回転差である差回転と、の関係を示すマップを予め設定して、ECU70の記憶部に記憶する。
【0062】
エンジン停止制御時にアクセルペダル66をONにすることによるエンジン10の復帰時は、油圧回路50の推定流量と、記憶部に記憶されているマップとに基づいてクラッチC1の差回転の所定値を導出し、クラッチC1の実際の差回転がこの所定値より大きい場合には、電動ポンプ52を停止しない。つまり、クラッチC1の滑りを感知した場合には、電動ポンプ52を停止せず、差回転の度合いによっては電動ポンプ52の出力を大きくする。これにより、油圧回路50の流量を保障することによってクラッチC1の係合制御に用いる油圧を確保し、エンジン停止制御時にアクセルペダル66をONにすることによってエンジン10を復帰する場合における加速にもたつきを抑制する。
【0063】
図3は、実施形態2に係る油圧制御装置の処理手順の概略を示すフロー図である。次に、本実施形態2に係る油圧制御装置2での処理手順の概略について説明する。本実施形態2に係る油圧制御装置2では、まず、エンジン停止制御を実施中であるか否かを走行状態判定部78で判定する(ステップST201)。この走行状態判定部78での判定により、エンジン停止制御は実施中ではないと判定された場合(ステップST201、No判定)には、この処理手順から抜け出る。これに対し、エンジン停止制御は実施中であると走行状態判定部78で判定した場合(ステップST201、Yes判定)には、走行制御部74で電動ポンプ52を駆動させる(ステップST202)。
【0064】
次に、エンジン停止制御からアクセルONでエンジン復帰するか否かを判定する(ステップST203)。この判定は、ECU70の走行状態判定部78で行う。走行状態判定部78は、走行状態取得部72で取得したアクセル開度に基づいて、ドライバがアクセルペダル66を踏み込み、ドライバが加速要求を行うことによるエンジン10の始動要求があるか否かを判定する。また、走行状態判定部78は、アクセルONによるエンジン10の始動要求があると判定した場合には、エンジン復帰するとの判定を行うと共に、エンジン10の始動要求があることを走行制御部74に伝達し、走行制御部74でエンジン10を始動させる。
【0065】
走行状態判定部78での判定により、アクセルONでのエンジン復帰は行われないと判定した場合(ステップST203、No判定)には、この処理手順から抜け出る。この場合、アクセルペダル66が踏み込まれているか否かを含めてエンジン10の復帰判定を行っているが、アクセルON以外でエンジン10の始動要求がある場合も想定される。このため、アクセルONでのエンジン復帰は行われないと判定されることにより、この処理手順から抜け出る場合には、実施形態1に係る油圧制御装置2での処理手順を行う。
【0066】
これに対し、アクセルONでのエンジン復帰を行うとの判定を行った場合(ステップST203、Yes判定)には、次に、実クラッチC1前後差回転は、推定流量に対するクラッチC1の前後差回転の所定値以上であるか否かを判定する(ステップST204)。この判定を行う場合には、まず、エンジン10が運転を開始することによりメカポンプ56も作動している場合における油圧回路50に流入するオイルの流量を走行状態取得部72で推定し、この推定流量と、ECU70の記憶部に記憶されている、油圧回路50の推定流量とクラッチC1の差回転との関係を示すマップとを比較する。これにより、油圧回路50の推定流量に対するクラッチC1の前後差回転の所定値、即ち、クラッチC1におけるエンジン10と共に回転する部材と、駆動輪44と共に回転をする部材との回転差である前後差回転の所定値を導出する。
【0067】
また、この所定値と比較するクラッチC1の実際の前後差回転である実クラッチC1前後差回転を、走行状態取得部72で取得する。走行状態取得部72で実クラッチC1前後差回転を取得する場合には、エンジン回転数センサ14での検出結果と、無段変速機30の出力側の回転数を検出する車速センサ(図示省略)と、現在の無段変速機30の変速比と、に基づいて取得する。なお、このように実クラッチC1前後差回転を取得する場合は、トルクコンバータ16はロックアップ状態にする。また、無段変速機30の入力側の回転数を検出するセンサが設けられている場合には、このセンサの検出結果とエンジン回転数センサ14での検出結果とを比較することにより、実クラッチC1前後差回転を取得してもよい。
【0068】
このように、走行状態取得部72で実クラッチC1前後差回転を取得したら、この実クラッチC1前後差回転と、推定流量に対するクラッチC1の前後差回転の所定値とを、走行状態判定部78で比較する。これにより、実クラッチC1前後差回転は、推定流量に対するクラッチC1の前後差回転の所定値以上であるか否かを判定する。
【0069】
この判定により、実クラッチC1前後差回転は、推定流量に対するクラッチC1の前後差回転の所定値以上であると判定された場合(ステップST204、Yes判定)には、次に、実クラッチC1前後差回転は大きいか否かを判定する(ステップST205)。具体的には、電動ポンプ52の出力をアップするか否かを実クラッチC1前後差回転に基づいて行う場合における判定値が、予め設定されてECU70の記憶部に記憶されている。この判定を行う場合には、走行状態判定部78で、記憶部に記憶されている判定値と実クラッチC1前後差回転とを比較し、実クラッチC1前後差回転が判定値よりも大きい場合には、実クラッチC1前後差回転は大きいとの判定を行う。
【0070】
この判定により、実クラッチC1前後差回転は大きいと判定された場合(ステップST205、Yes判定)には、走行制御部74で電動ポンプ52を制御することにより、電動ポンプ52の出力をアップする(ステップST206)。つまり、推定流量に対するクラッチC1の前後差回転と実クラッチC1前後差回転とが乖離し過ぎている場合には、電動ポンプ52の出力をアップすることにより、クラッチC1に付与する油圧を増加させ、クラッチC1の係合圧を大きくする。
【0071】
これに対し、実クラッチC1前後差回転は大きくないと判定された場合(ステップST205、No判定)には、走行制御部74で電動ポンプ52を制御することにより、電動ポンプ52の出力を維持する(ステップST207)。つまり、電動ポンプ52の出力を、エンジン停止制御の開始時の出力で維持する。
【0072】
これらのように、電動ポンプ52の出力をアップしたり(ステップST206)、電動ポンプ52の出力を維持したり(ステップST207)した後は、実クラッチC1前後差回転は閾値以下であるか否かを判定する(ステップST208)。具体的には、電動ポンプ52を停止するか否かを実クラッチC1前後差回転に基づいて行う場合における所定の閾値が、予め設定されてECU70の記憶部に記憶されており、実クラッチC1前後差回転が、この閾値以下であるか否かを、走行状態判定部78で判定する。つまり、走行状態判定部78は、実クラッチC1前後差回転に基づいてクラッチC1の滑りを検出しており、走行状態判定部78は、このようにクラッチC1の係合時における滑りを検出する滑り検出手段としても設けられている。
【0073】
この判定により、実クラッチC1前後差回転は閾値以下であると判定された場合(ステップST208、Yes判定)には、走行制御部74で電動ポンプ52を制御することにより、電動ポンプ52を停止する(ステップST209)。つまり、実クラッチC1前後差回転が減少してクラッチC1の係合完了が近いと判断したら、電動ポンプ52の出力を停止する。
【0074】
これに対し、実クラッチC1前後差回転は閾値以下ではないと判定された場合(ステップST208、No判定)には、電動ポンプ52で油圧を発生させ続けた状態で、実クラッチC1前後差回転は閾値以下であると判定されるまで、実クラッチC1前後差回転は大きいか否かの判定(ステップST205)を繰り返す。換言すると、クラッチC1の滑りを走行状態判定部78で検出した場合には、走行制御部74は電動ポンプ52の停止を禁止し、クラッチC1は係合完了が近い、または係合していると判断した場合には、電動ポンプ52の停止を許可する。
【0075】
以上の油圧制御装置2は、エンジン停止制御からのエンジン復帰時にクラッチC1を係合させる場合に、クラッチC1に滑りが発生しているか否かを検出し、クラッチC1の滑りの状態に応じて電動ポンプ52を停止させるタイミングを異ならせている。この結果、より適切なタイミングで電動ポンプ52を停止させることができる。
【0076】
また、クラッチC1に滑りが発生していることを検出した場合には、電動ポンプ52の停止を禁止しているため、エンジン復帰時にエンジン10で発生する動力を、より確実に駆動輪44に伝達することができる。この結果、加速要求があった場合における加速のもたつきを、より確実に抑制することができる。
【0077】
また、エンジン停止制御時にドライバがアクセルペダル66を踏み込むことによるエンジン復帰時に、クラッチC1に滑りが発生していることを検出した場合に電動ポンプ52の停止を禁止しているため、ドライバの加速要求があった場合における加速のもたつきを抑制することができる。この結果、エンジン停止制御を行う場合におけるドライバの違和感を、より確実に抑制することができる。
【0078】
また、エンジン停止制御からのエンジン復帰時に、実クラッチC1前後差回転は大きいと判断された場合には、電動ポンプ52の出力をアップさせているため、クラッチC1に滑りが発生している場合に、クラッチC1の滑りをより確実に低減させることができる。この結果、加速要求があった場合における加速のもたつきを、より確実に抑制することができる。
【0079】
また、電動ポンプ52の出力を可変にし、比較的小さい出力で油圧の制御を行うことができる場合には、電動ポンプ52の出力を小さい状態で維持している。これにより、メカポンプ56と比較して効率が悪い電動ポンプ52の使用頻度を低減することができ、電動ポンプ52の使用量の増加に伴う電気消費量の増加を抑制することができる。この結果、燃費の悪化を最小限に抑えることができる。
【0080】
[実施形態3]
実施形態3に係る油圧制御装置2は、実施形態1に係る油圧制御装置2と略同様の構成であるが、エンジン停止制御時にエンジン10を復帰させる際に、クラッチC1の焼損を考慮して電動ポンプ52の制御を行う点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0081】
エンジン停止制御からエンジン復帰を行う場合は、電動ポンプ52でオイルの流量をアシストしながら、開放しているクラッチC1を係合させるが、このクラッチC1は摩擦係合によって係合するため、電動ポンプ52のアシストが無い場合、またはアシストが弱い場合、クラッチC1は半係合状態でスリップする。この場合、クラッチC1は摩擦抵抗によって発熱し、この状態が長いと、クラッチC1は温度が高くなり過ぎて焼損することが考えられる。このため、本実施形態3に係る油圧制御装置2では、エンジン停止制御からエンジン10を復帰させる場合には、クラッチC1の焼損を考慮した制御を行う。
【0082】
クラッチC1の焼損を考慮した制御としては、クラッチC1に供給する潤滑油の流量を増加することが考えられるが、エンジン10を始動した直後はエンジン回転数が低く、メカポンプ56の吐出量が少ないため、潤滑油の流量を増加するのは困難なものになっている。このため、本実施形態3に係る油圧制御装置2では、半係合状態のクラッチC1の発熱量を算出し、発熱量が所定値以上になったら、電動ポンプ52で吐出するオイルを、クラッチC1の潤滑油として使用するように、方向切替弁60を切り替える。即ち、電動ポンプ52で吐出するオイルが流れる方向を、油圧経路58の方向から潤滑経路62の方向に切り替える。これにより、クラッチC1を潤滑する潤滑油の流量を増加させる。
【0083】
図4は、実施形態3に係る油圧制御装置の処理手順の概略を示すフロー図である。次に、本実施形態3に係る油圧制御装置2での処理手順の概略について説明する。本実施形態3に係る油圧制御装置2では、まず、エンジン停止制御を実施中であるか否かを走行状態判定部78で判定する(ステップST301)。この走行状態判定部78での判定により、エンジン停止制御は実施中ではないと判定された場合(ステップST301、No判定)には、この処理手順から抜け出る。これに対し、エンジン停止制御は実施中であると走行状態判定部78で判定した場合(ステップST301、Yes判定)には、走行制御部74で電動ポンプ52を駆動させる(ステップST302)。
【0084】
次に、エンジン停止制御からエンジン復帰するか否かを走行状態判定部78で判定する(ステップST303)。走行状態判定部78は、エンジン10の始動要求があるか否かによりこの判定を行い、エンジン10の始動要求があることにより、エンジン復帰をするとの判定を行った場合には、走行制御部74によってエンジン10を始動させる。走行状態判定部78での判定により、エンジン復帰しないとの判定が行われた場合(ステップST303、No判定)には、エンジン復帰するとの判定が行われるまで、エンジン10を停止した状態で電動ポンプ52の駆動を継続し(ステップST302)、この判定を繰り返す。
【0085】
これに対し、エンジン復帰するとの判定を行った場合(ステップST303、Yes判定)には、次に、クラッチC1の計算発熱量は、所定値以上であるか否かを判定する(ステップST304)。この判定を行う場合には、まず、現在のエンジントルクと実クラッチC1前後差回転とより、クラッチC1の発熱量を計算する。この場合に用いる実クラッチC1前後差回転は、実施形態2に係る油圧制御装置2において取得している手法と同様の手法で取得する。また、エンジントルクは、現在のエンジン回転数や燃料噴射量等に基づいて推定する。クラッチC1の発熱量を計算する場合には、これらのエンジントルクと実クラッチC1前後差回転とを用いて走行状態取得部72で計算する。走行状態取得部72は、このようにクラッチC1の発熱量を検出する発熱量検出手段としても設けられている。
【0086】
また、クラッチC1の発熱量と比較する所定値は、クラッチC1の温度が高くなり過ぎる可能性があると判断することができる閾値として予め設定され、ECU70の記憶部に記憶されている。走行状態取得部72でクラッチC1の発熱量を計算し、算出したら、この算出した発熱量と、記憶部に記憶されている所定値とを走行状態判定部78で比較し、クラッチC1の発熱量は所定値以上であるか否かを判定する。
【0087】
なお、このクラッチC1の発熱量を計算する場合に用いるエンジントルクは、エンジン回転数等に基づいて推定するのではなく、エンジン10の始動時における目標エンジントルクを用いてもよい。エンジン10の始動直後は、推定した現在のエンジントルクよりも目標エンジントルクの方が大きくなり易いので、クラッチC1の発熱量の算出値は大きくなり易くなる。このため、目標エンジントルクに基づいて算出した発熱量と所定値とを比較することにより、発熱量は所定値以上であると判定され易くなる条件で判定を行うことができるため、焼損の予防性を高くすることができる。
【0088】
この判定により、クラッチC1の計算発熱量は所定値以上であると判定された場合(ステップST304、Yes判定)には、次に、電動ポンプ52の吐出を潤滑に切り替える(ステップST305)。この電動ポンプ52の吐出の切り替えは、走行制御部74で方向切替弁60を制御することにより行う。方向切替弁60は、電動ポンプ52で吐出したオイルの流れ方向を、油圧経路58の方向、または潤滑経路62の方向に切り替えることが可能になっているため、この場合は、電動ポンプ52で吐出したオイルが潤滑経路62の方向に流れるように方向切替弁60を切り替える。潤滑経路62は、潤滑経路62を流れるオイルによってクラッチC1の潤滑を行うことが可能に設けられているため、走行制御部74は、方向切替弁60をこのように切り替えることにより、電動ポンプ52の吐出を潤滑に切り替える。
【0089】
次に、クラッチC1は係合したか否かを判定する(ステップST306)。クラッチC1が係合したか否かの判定は、走行状態取得部72で取得する実クラッチC1前後差回転に基づいて走行状態判定部78で行う。つまり、クラッチC1が完全に係合している場合は、実クラッチC1前後差回転は0になるので、実クラッチC1前後差回転に基づいて係合したか否かを判定する場合には、実クラッチC1前後差回転が、0に近い所定の判定値以下になった場合に、係合しているとの判定を行う。この場合における判定値は、クラッチC1の係合状態を実クラッチC1前後差回転に基づいて行う場合における所定値として予め設定され、ECU70の記憶部に記憶されており、走行状態判定部78は、実クラッチC1前後差回転が、この判定値以下であるか否かにより、クラッチC1は係合したか否かを判定する。
【0090】
この判定により、クラッチC1は係合していないと判定された場合(ステップST306、No判定)には、電動ポンプ52の吐出を潤滑に切り替えた状態を維持する(ステップST305)。クラッチC1が係合していない場合、即ち、クラッチC1がスリップした状態が継続している場合、クラッチC1は発熱量が大きい状態が維持される。このため、クラッチC1は係合していないと判定された場合には、係合したと判定されるまで、電動ポンプ52で吐出するオイルの流れ方向が潤滑経路62方向になるように方向切替弁60の状態を維持し続ける。即ち、走行制御部74は、クラッチC1の発熱量が所定値以上の場合には、電動ポンプ52の停止を禁止し、電動ポンプ52で吐出するオイルを潤滑経路62に流し続ける。
【0091】
これに対し、クラッチC1は係合したと判定された場合(ステップST306、Yes判定)は、電動ポンプ52を停止する(ステップST307)。クラッチC1の係合が完了した場合、クラッチC1の発熱量は低減するので、クラッチC1は係合したと判定したら、電動ポンプ52の出力を停止する。
【0092】
また、これらに対し、クラッチC1の計算発熱量は所定値以上ではないと走行状態判定部78で判定した場合(ステップST304、No判定)には、上述した実施形態1に係る油圧制御装置2でのステップST104、または、実施形態2に係る油圧制御装置2でのステップST204に移行する(ステップST308)。つまり、エンジン復帰した際におけるクラッチC1の発熱量が所定値未満の場合には、クラッチC1の発熱に対する制御は不要になるため、この場合は、実施形態1に係る油圧制御装置2での処理手順、または、実施形態2に係る油圧制御装置2での処理手順と同様の処理手順を実行し、電動ポンプ52を適切なタイミングで停止させる制御を行う。
【0093】
具体的には、ステップST303でエンジン復帰するとの判定を行った際に、アクセルOFFで復帰した場合には、実施形態1に係る油圧制御装置2での処理手順におけるステップST104に移行し、アクセルONで復帰した場合には、実施形態2に係る油圧制御装置2での処理手順におけるステップST204に移行する。
【0094】
以上の油圧制御装置2は、エンジン停止制御からエンジン復帰した際に、クラッチC1の発熱量が所定値以上の場合には、電動ポンプ52を駆動させた状態で方向切替弁60を制御することにより、電動ポンプ52の吐出を潤滑に切り替えている。エンジン停止制御からエンジン復帰した直後は、エンジン回転数が低いためメカポンプ56の吐出量も少なく、クラッチC1を係合させる際に大きな油圧を付与し難いことによりクラッチC1にスリップが発生し易くなっている。このため、クラッチC1にスリップが発生して発熱量が大きくなった場合には、電動ポンプ52の吐出を潤滑に切り替えることにより、電動ポンプ52から吐出されるオイルによってクラッチC1を潤滑することができ、発熱量が大きくなり易い状態におけるクラッチC1の発熱を抑えることができる。この結果、クラッチC1が焼損する可能性を抑制することができる。
【0095】
また、クラッチC1の発熱量を計算する際に、目標エンジントルクを用いて発熱量を算出した場合には、エンジントルクの値を用いて算出するよりも発熱量の算出値は大きくなる。このため、電動ポンプ52の吐出を潤滑に切り替えるか否かの判定を、目標エンジントルクを用いて算出した発熱量に基づいて行うことにより、クラッチC1を電動ポンプ52から吐出するオイルによって潤滑する機会を増加させることができ、クラッチC1の発熱を、より確実に抑えることができる。この結果、より安全側でクラッチC1の焼損を抑制することができる。
【0096】
なお、実施形態1〜3に係る油圧制御装置2では、エンジン停止制御からのエンジン復帰時に油圧によって係合するクラッチは、前後進切替機構20のクラッチC1であるが、油圧によって係合するクラッチは、クラッチC1以外のものでもよい。油圧によって係合するクラッチは、エンジン停止制御時には開放状態にすることによりエンジン10側と駆動輪44側との間の回転トルクを遮断し、係合時には駆動輪44側の回転トルクをエンジン10側に伝達することのできるクラッチであれば、前後進切替機構20のクラッチC1以外のものでもよい。
【0097】
また、実施形態1〜3に係る油圧制御装置2では、電動ポンプ52で発生する油圧と、メカポンプ56で発生する油圧と、により駆動される補機の一例としてプライマリシーブ32及びセカンダリシーブ34が挙げられているが、電動ポンプ52やメカポンプ56で発生する油圧によって駆動される補機は、プライマリシーブ32等以外のものでもよい。補機は、車両1の走行中に使用し、電動ポンプ52で発生する油圧、及びメカポンプ56で発生する油圧のいずれによっても駆動するものであれば、プライマリシーブ32等以外のものであってもよい。
【0098】
また、実施形態1〜3に係る油圧制御装置2では、変速装置の一例としてベルト式の無段変速機30が用いられている場合について説明しているが、変速装置はベルト式の無段変速機30以外のものを用いてもよい。変速装置は、エンジン10が停止している場合でも、駆動輪44側の回転トルクをエンジン10側に伝達することができる変速装置であれば、その形態はベルト式の無段変速機30にとらわれない。
【符号の説明】
【0099】
1 車両
2 油圧制御装置
10 エンジン
12 スタータ
14 エンジン回転数センサ
16 トルクコンバータ
20 前後進切替機構
30 無段変速機
32 プライマリシーブ
34 セカンダリシーブ
36 ベルト
44 駆動輪
50 油圧回路
52 電動ポンプ
56 メカポンプ
58 油圧経路
60 方向切替弁
62 潤滑経路
66 アクセルペダル
70 ECU
72 走行状態取得部
74 走行制御部
76 エンジン停止制御部
78 走行状態判定部
C1 クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンと駆動輪との間の回転トルクの伝達を遮断することができるクラッチと、
前記クラッチの係合制御時に用いる油圧を前記エンジンで発生する動力を用いて発生させることができる機械式ポンプと、
電気で作動することにより前記クラッチの係合制御時に用いる油圧を発生させることができる電動ポンプと、
前記機械式ポンプで発生する油圧と、前記電動ポンプで発生する油圧と、により駆動される補機と、
前記電動ポンプを制御することができると共に、前記クラッチの係合制御と前記補機の駆動とを共に行う場合に、前記機械式ポンプで発生する油圧のみで行うことができると判断された場合には、前記電動ポンプを停止させるポンプ制御手段と、
を備えることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
さらに、前記クラッチの係合時における滑りを検出する滑り検出手段を備えており、
前記ポンプ制御手段は、前記クラッチの滑りを前記滑り検出手段で検出した場合には、前記電動ポンプの停止を禁止することを特徴とする請求項1に記載の油圧制御装置。
【請求項3】
さらに、前記クラッチの発熱量を検出する発熱量検出手段を備えており、
前記ポンプ制御手段は、前記発熱量が所定値以上の場合には、前記電動ポンプの停止を禁止することを特徴とする請求項1に記載の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163141(P2012−163141A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23030(P2011−23030)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】