説明

油圧無断変速機用スラスト軸受

【課題】軸受の軌道輪の破損を防止することができる油圧式無段変速機用スラスト軸受を提供する。
【解決手段】スラスト玉軸受は、第1の軌道面11を有する第1の軌道輪12と、第2の軌道面13を有する第2の軌道輪14と、第1の軌道面11及び第2の軌道面13間に転動自在に配置された複数の玉15と、複数の玉15を円周方向に亘って等間隔に保持する保持器16とを備える。第1の軌道輪12と第2の軌道輪14は、同一部品によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧無断変速機(HST:hydro static transmission)用スラスト軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧無断変速機に使用されるスラスト軸受としては、保持器の形状を改良した種々のものが考案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。一般に、スラスト軸受の外輪と内輪は、少なくとも内径寸法において異なっている。
【特許文献1】特開2004−353775号公報
【特許文献2】特開2005−69322号公報
【特許文献3】特開2005−127342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、油圧式無段変速機に組み込まれるスラスト軸受は高荷重条件下で使用されるため、耐荷重性の弱い方の軌道輪が破損するという問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、軸受の軌道輪の破損を防止することができる油圧式無断変速機用スラスト軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、下記構成により達成される。
(1) 第1の軌道面を有する第1の軌道輪と、第2の軌道面を有する第2の軌道輪と、前記第1の軌道面及び前記第2の軌道面間に転動自在に配置された複数の転動体と、前記複数の転動体を円周方向に亘って等間隔に保持する保持器とを備え、油圧式無断変速機に組み込まれる油圧式無断変速機用スラスト軸受において、
前記第1の軌道輪と前記第2の軌道輪とは同一部品によって構成されることを特徴とする油圧式無断変速機用スラスト軸受。
(2) 前記転動体は、玉ところのいずれか一方であることを特徴とする(1)に記載の油圧式無断変速機用スラスト軸受。
【発明の効果】
【0006】
本発明の油圧式無断変速機用スラスト軸受によれば、第1の軌道輪と第2の軌道輪とは同一部品によって構成されるので、荷重を受ける側の軌道輪と荷重を逃がす側の軌道輪の応力分布が同じとなり、結果的に剛性を向上することができ、軌道輪の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る油圧式無断変速機用スラスト軸受について詳細に説明する。
【0008】
図1に示されるように、油圧式無段変速機構30は、図示しないエンジンから入力軸31に伝達された回転駆動力を油圧力に変換する可変容量ポンプ32と、油圧力を回転駆動力に戻して出力軸40に伝達する可変容量モータ41とを備えており、入力軸31に伝達された回転駆動力を前進側、後進側の駆動力に無段階に変更して出力軸40から出力したり、この出力を停止したりする。
【0009】
可変容量ポンプ32は、入力軸31と一体回動するシリンダブロック33と、シリンダブロック33の周方向複数箇所に配置され、ピストン室34内を往復動するノーズピストン35と、ガイドブロック36のガイド面に沿って回動する斜板37とを備えている。可変容量ポンプ32は、斜板37が回動操作することで、ノーズピストン35の往復動ストロークを変化し、ピストン室34が吐出する油量を変化している。斜板37には、スラスト軸受10がノーズピストン35の先端部と接触する位置に配置されており、スラスト軸受10は斜板37と共に回動する。
【0010】
具体的に、図2に示すように、スラスト軸受10は、軸受外側の端面21においてノーズピストン35の先端部と接触し、第1の軌道面11を有する第1の軌道輪12と、斜板37に固定され、第2の軌道面13を有する第2の軌道輪14と、第1の軌道面11と第2の軌道面13との間に転動自在に配置された複数の転動体である玉15とを備える。さらに、スラスト玉軸受10は、複数の玉15を円周方向に亘って等間隔に保持する保持器16を備える。
【0011】
このため、スラスト軸受10はノーズピストン35から受ける高荷重を第1の軌道輪12で受け、玉13を介して、斜板37に固定された第2の軌道輪14側へ逃がしている。
【0012】
ここで、第1の軌道輪12と第2の軌道輪14とは、同一材料、同一形状、同一寸法からなる同一部品によって構成されており、荷重が負荷される際の両軌道輪12,14の応力分布が等しくなる。このため、スラスト軸受10の剛性を高めることができ、各軌道輪12,14の破損を防止することができる。
【0013】
なお、本発明は、以上に説明した各実施の形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
本実施形態では、転動体を玉としてスラスト玉軸受が例示されているが、転動体をころとしたスラストころ軸受であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るスラスト玉軸受が組み込まれた油圧式無段変速機の例を示す断面図である。
【図2】本発明のスラスト軸受を示す断面図である。
【符号の説明】
【0015】
10 スラスト玉軸受
12 第1の軌道輪
14 第2の軌道輪
15 玉(転動体)
16 保持器
30 油圧式無段変速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軌道面を有する第1の軌道輪と、第2の軌道面を有する第2の軌道輪と、前記第1の軌道面及び前記第2の軌道面間に転動自在に配置された複数の転動体と、前記複数の転動体を円周方向に亘って等間隔に保持する保持器とを備え、油圧式無断変速機に組み込まれる油圧式無断変速機用スラスト軸受において、
前記第1の軌道輪と前記第2の軌道輪とは同一部品によって構成されることを特徴とする油圧式無断変速機用スラスト軸受。
【請求項2】
前記転動体は、玉ところのいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の油圧式無断変速機用スラスト軸受。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−215566(P2008−215566A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56854(P2007−56854)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】