説明

油性化粧料

【課題】多量のフッ素系油剤を安定に配合でき、使用感、耐水性、耐油性等の化粧持続効果、衣類や食器等への色移り防止効果に優れた油性化粧料を提供する。
【解決手段】成分(A)フッ素系油剤、成分(B)硫酸カルシウム二水塩の板状粉体及び成分(C)油剤を含有し、且つ成分(A)と成分(B)との配合比(A)/(B)が質量比で0.04〜1.0である油性化粧料である。上記のフッ素系油剤の含有量は、2〜25質量%が好ましい。上記の硫酸カルシウム二水塩の板状粉体は、長径30〜100μm、短径20〜50μm、厚さ1〜3μmの大きさのものが好ましい。また、この油性化粧料は、フッ素系油剤と硫酸カルシウム二水塩の板状粉体を予め混合し、この混合物を配合して調製してなるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関し、詳細には、多量のフッ素系油剤を安定に配合でき、使用感、化粧持続効果、衣類や食器等への色移り防止効果に優れた油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性化粧料の中には、例えば、口紅のごとく、耐水性・耐油性がよく、化粧持続効果に優れ、また衣類や食器等への色移り防止効果を有することが望まれるものがある。そして、油性化粧料に、化粧持続効果や色移り防止効果を付与するために、シリコーン樹脂と揮発性シリコーン油とを配合することが行われていたが、更に化粧持続効果や色移り防止効果を向上させるべく、フッ素系油剤を配合することが提案されている。
【0003】
ところが、フッ素系油剤は、化粧料に配合される他の油剤との相溶性に乏しいため、化粧料中に安定に配合することができなく、耐水性・耐油性、化粧持続効果や色移り防止効果を充分に付与するに足る多量のフッ素系油剤を配合することは困難であった。そのため、従来から、フッ素系油剤を化粧料中に安定に配合する油性化粧料が種々提案されている。例えば、無機微粒子粉末を含む樹脂のシェルにフッ素系油剤を内包させた圧縮崩壊性軟質樹脂カプセルを含有する油性化粧料が提案されている(特許文献1)。また、IOB値が0.2以上で且つ常温で液体の油性基剤、フッ素系油剤、グリコール類、粉体、並びにカルボキシビニルポリマーを含有する油性化粧料が提案されている(特許文献2)。また、フッ素系油剤、フッ素系油剤と相溶しない油剤及び表面張力が20~50mN/mの粉体を撥水撥油化処理した粉体を含有する粉体スラリー組成物が提案されている(特許文献3)。また、フッ素系油剤60〜99.8重量%と化粧用粉体0.2〜40.0重量%を含有する口紅組成物が知られている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平4−300811号公報
【特許文献2】特開平9−175925号公報
【特許文献3】特開2003−82220号公報
【特許文献4】特開平7−53329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フッ素系油剤を多量に且つ安定に配合でき、耐水性・耐油性が良く、化粧持続効果に優れ、衣類や食器等への色移り防止効果に優れた油性化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々実験した結果、硫酸カルシウム二水塩の板状粉体を存在させることによって、フッ素油剤を、化粧料に配合する他の油剤中に安定に配合できることを知見し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(C);
(A)フッ素系油剤
(B)硫酸カルシウム二水塩の板状粉体
(C)油剤
を含有し、且つ成分(A)と成分(B)との配合比(A)/(B)が質量比で0.04〜1.0であることを特徴とする油性化粧料である。
【0006】
本発明の上記の油性化粧料において、フッ素系油剤の含有量は、2〜25質量%が好ましい。フッ素系油剤は、パーフルオロメチルイソプロピルが好ましい。また、硫酸カルシウム二水塩の板状粉体は、長径30〜100μm、短径20〜50μm、厚さ1〜3μmの大きさのものが好ましい。また、この油性化粧料は、フッ素系油剤と硫酸カルシウム二水塩の板状粉体を予め混合し、この混合物を配合して調製してなるものが好ましい。この油性化粧料の剤型は固形が好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油性化粧料には、硫酸カルシウム二水塩の板状粉体を存在させたため、多量のフッ素系油剤を安定に配合できる。そのため、本発明の油性化粧料は、耐水性・耐油性が良く、化粧持続効果に優れており、また衣類や食器等への色移り防止効果に優れている。また、硫酸カルシウム二水塩の板状粉体の存在により使用感がよい。また、本発明の油性化粧料、例えば口紅で口唇に塗膜を形成した場合、硫酸カルシウム二水塩の板状粉体の中に取り込まれたフッ素系油剤が、唇上の水分と置換され、塗膜表面に押し出されて塗膜を覆うため、より一層、耐水性・耐油性が向上し、化粧持続効果、色移り防止効果が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いる成分(A)のフッ素系油剤は、パーフルオロポリエーテル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有する撥水性・撥油性のフッ素化合物である。このような化合物としては、例えば、パーフルオロメチルイソプロピル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロヒドロキシエチル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロヒドロキシエチルPEGリン酸、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロメチルジステアラミド、メチルパーフルオロブチルエーテル、フッ素変性シリコーン、部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン、パーフルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、耐水性・耐油性、化粧持続効果、色移り防止効果に優れるという観点から、パーフルオロメチルイソプロピルが好ましい。
【0009】
上記のフッ素化合物は、市販されている。例えば、パーフルオロメチルイソプロピルは、FOMBLIN HC/04(SOLVAY SOLEXIS社製)、FOMBLIN HC/25(SOLVAY SOLEXIS社製)、FOMBLIN HC/R(SOLVAY SOLEXIS社製)などの商標名で市販されている。また、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロヒドロキシエチルは、FOMBLIN HC/OH-1000(SOLVAY SOLEXIS社製)などの商標名、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロヒドロキシエチルPEGリン酸はFOMBLIN HC/P2-1000(SOLVAY SOLEXIS社製)などの商標名、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロメチルジステアラミドはFOMBLIN HC/SA-18(SOLVAY社製) などの商標名で市販されている。また、メチルパーフルオロブチルエーテルは、CF-61(3M社製)、CF-76(3M社製)などの商品名で市販されている。部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサンとしては、INCI 名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)で、(トリフルオロプロピルジメチコン/トリフルオロプロピルジビニルジメチコン)クロスポリマーが挙げられる。また、パーフルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサンとしては、INCI名で、トリフルオロプロピルシクロテトラシロキサン/トリフルオロプロピルシクロペンタシロキサン(KF-5002:信越化学工業社製)が挙げられる。
【0010】
成分(A)フッ素系油剤は、1種又は2種以上を用いることができる。その配合量は、化粧料に付与する性質やフッ素系油剤の種類などに応じて変わるが、油性化粧料に、充分な耐水性・耐油性を発揮させ、また化粧持続効果、色移り防止効果を充分に発揮させるには、2質量%(以下、単に「%」と略す。)以上、特に5%以上が好ましい。成分(A)の配合量が2%以下では、耐水性、耐油性等の化粧持続効果、色移り防止効果に劣る。また、成分(A)の配合量の上限は、安定性の理由から25%である。25%を超えると安定性が悪くなる。
【0011】
本発明に用いる成分(B)の硫酸カルシウム二水塩の板状粉体は、硫酸カルシウム二水塩の板状の粒子からなる粉体(粉末)である。硫酸カルシウム二水塩の板状粉体を存在させることによって、フッ素系油剤を、これと相溶性がない他の油剤中に、多量に且つ安定に分散させることができる。硫酸カルシウム二水塩の板状粉体を構成する粒子の大きさの範囲は、フッ素系油剤を相溶性がない他の油剤中に安定に分散させる作用を発揮させるという観点、また化粧料の性質を損なわないという観点から、長径30〜100μm、短径20〜50μm、厚さ1〜3μmのものが好ましい。より好ましくは、長径30〜70μm、短径20〜40μm、厚さ1〜2μmである。
【0012】
成分(B)の硫酸カルシウム二水塩の板状粉体の製造には、炭酸カルシウムと硫酸を用いて粒子径の大きな板状硫酸カルシウム粉体を合成する方法が用いられる。例えば、炭酸カルシウムと硫酸溶液を室温下で徐々に滴下する方法によって、30〜40μmの柱状又は板状の半水板状硫酸カルシウムが合成できる。また、炭酸カルシウムを水に懸濁させ、この懸濁液中に室温下で徐々に硫酸溶液を滴下する方法によって、長径30μm、短径10〜15μmの板状の二水硫酸カルシウム粉体が合成できる。さらに、合成時の反応温度を70℃に上げると、長径は100μmまで増大し、併せて合成時に0.1〜1.0%の硫酸アルミニウムを添加すると、添加量の増加に伴い粒子径は増大し、150〜300μmに増大させることが可能である。
【0013】
成分(B)の配合量は、油性化粧料中に2〜50%が好ましく、5〜30%が特に好ましい。この配合量範囲であれば、油性化粧料に、化粧持続効果、色移り防止効果を充分に発揮させ得る量のフッ素系油剤を、油性化粧料に安定に配合できる。
【0014】
本発明においては、成分(A)のフッ素系油剤と成分(B)の硫酸カルシウム二水塩の板状粉体との配合比も重要である。成分(A)と成分(B)との配合比(A/(B)は、質量比で0.04〜1.0が好ましく、更に好ましくは、0.1〜1.0である。1.0以上では、フッ素系油剤を安定に配合することが困難となり、また0.04未満ではフッ素系油剤の配合量が少ないために、油性化粧料の化粧持続効果、色移り防止効果が劣る。
【0015】
油性化粧料中に、成分(B)の硫酸カルシウム二水塩の板状粉体を存在させることによって、成分(A)のフッ素系油剤を、これと相溶性がない他の油剤中に、多量に且つ安定に分散させることができるが、成分(A)と成分(B)を予め混合して粉末状の組成物となし、この粉末組成物を油性化粧料の調製の配合に用いるのが好ましい。成分(A)と成分(B)とを、配合比(A)/(B)が質量比で0.04〜1.0の範囲で混合した組成物は、粉末状である。この粉末組成物は、取り扱いやすく、また攪拌・混合処理の過程で不均一な状態が少なく、均質な化粧料を手早く調製するのに適する利点がある。そこで、成分(A)と成分(B)を予め混合して粉末状の組成物となし、これを油性化粧料の調製時に配合成分として使用するのが便利である。前記の粉末状の組成物を得るには、成分(A)を成分(B)に加え、剪断力下で混合処理するのが好ましく、製造機器としてはヘンシェルミキサーが特に好ましい。
【0016】
また、成分(A)のフッ素系油剤は、油性化粧料に通常用いられる他の油剤成分に比し比重が大きい。例えばパーフルオロメチルイソプロピルは、比重(20℃)が1.850〜1.940と大きい。そのため、油性化粧料中に配合したとき、化粧料中で沈降、分離等の濃度勾配を起こす。ところが、成分(A)と成分(B)と予め混合して粉末組成物にし、これを配合することで、化粧料中でも沈降、分離等の濃度勾配を起こすことなく、より安定に配合することができる。
【0017】
成分(A)と成分(B)を予め混合して粉末状にした上記の組成物は、成分(B)の硫酸カルシウム二水塩の板状粉体中に、成分(A)のフッ素系油剤を抱え込んだ状態にある。そして、この粉末組成物は、水分の存在下では、組成物中の成分(A)のフッ素系油剤が水と置換して、成分(B)の硫酸カルシウム二水塩の板状粉体から押し出されるという特性を有する。そのため、例えば口紅の場合、口紅塗膜の中の硫酸カルシウム二水塩の板状粉体の中に取り込まれたフッ素系油剤が、唇上の水分と置換され、塗膜表面に押し出されて塗膜を覆うため、より一層、耐水性・耐油性が向上し、化粧持続効果、色移り防止効果が向上するものと考えられる。
【0018】
成分(A)と成分(B)を予め混合して調製した粉末状の組成物の油性化粧料への配合量は、4〜50%が好ましく、5〜30%が更に好ましい。この範囲であれば、多量のフッ素油剤を安定に配合し、使用感、耐水性、耐油性等の化粧持続効果、衣類や食器等への色移り防止効果を発現できる。
【0019】
本発明に用いる成分(C)の油剤は、油性化粧料に通常用いられる液状油、半固形油又は固形油である。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャトロプシュワックス、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブテン、ポリブテン等の炭化水素類;カルナウバロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、キャンデリラ等の天然ロウ類;トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリスリットエステル、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等のエステル類;ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類;セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類;オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、モクロウ等の油脂類;ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0020】
成分(C)は、油性化粧料の基剤である。本発明では、成分(B)の硫酸カルシウム二水塩の板状粉体を存在させることによって、成分(A)のフッ素系油剤を、成分(C)の油剤中に多量に且つ安定に分散させることができる。成分(C)の配合量は、化粧料中50〜96%である。
【0021】
本発明の油性化粧料には、前記成分の外に、例えば、アルコール類、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤類、染料、天然色素等の色素類、香料、ビタミン、ホルモン、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤、植物抽出物、酵素、酸、アルカリ、塩類等の特殊成分類、高分子物質、増粘剤、キレート剤等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【0022】
粉体としては、通常、化粧料に用いられる粉体が用いられ、板状、球状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、また多孔質、無孔質等の粒子構造等により限定されない。無機粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、有機顔料被覆マイカチタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸アルキル、オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリメチルセスキオキサン、架橋型シリコーン・網状シリコーンブロック共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体、ポリエチレン、ウレタン、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロースパウダー、N−アシルリジンパウダー等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有無水ケイ酸、酸化亜鉛含有無水ケイ酸等の複合粉体等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。なお、これら粉体は、フッ素化合物、シリコーン化合物、界面活性剤等の通常公知の処理剤により表面処理を施して用いても良い。
【0023】
界面活性剤としては、通常、化粧料に用いる界面活性剤が用いられ、具体的には、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等の非イオン性界面活性剤類;アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アルキルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩等の陰イオン性界面活性剤類;アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノイルアミン脂肪酸誘導体、アルキルアンモニウム塩、脂環式アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤類;レシチン、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤類等が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0024】
油ゲル化剤としては、通常、化粧料に用いられる油ゲル化剤が用いられる。具体的には、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、部分架橋型シリコーン重合体等が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0025】
紫外線吸収剤としては、通常、化粧料に用いられる紫外線吸収剤が用いられる。具体的には、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリアニリノ−p−(カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン等のベンゾフェノン系、サリチル酸−2−エチルヘキシル等のサリチル酸系、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等のPABA系、4−tert−4’−メトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系等が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0026】
水溶性高分子としては、通常、化粧料に用いられる水溶性高分子が用いられ、具体的には、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体類、アルギン酸ソーダ、カラギーナン、クインスシートガム、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、ローガストビーンガム、ペクチン、ジェランガム等の天然高分子、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、メタクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸グリセリンエステル、ポリビニルピロリドン等の合成高分子類等が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0027】
本発明で言う油性化粧料とは、実質的に水を含まない、連続相が油剤である化粧料を意味する。本発明の油性化粧料は、固形状、固形粉末状、スティック状、液状、クリーム状、多層状、シート状等の形態のものが挙げられる。なお、本発明の効果が顕著に発揮される形態及び剤型は固形の油性化粧料である。本発明の油性化粧料は、例えばファンデーション、白粉、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ、コンシーラー、口紅、マスカラ、アイライナー等であるが、その中でも口紅が好ましい。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0028】
実施例1〜3及び比較例1〜3:口紅
表1に示す組成の口紅を調整し、「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」、「色移り防止効果」、「安定性」について以下に示す評価方法及び判断基準により評価し、結果を併せて表1に示した。
【0029】
【表1】

注1:FOMBLIN HC/04(SOLVAY SOLEXIS社製)
注2:PERFORMALENE 500(ニューフェーズテクノロジー社製)
(製造方法)
A:成分1〜3をヘンシェルミキサー(三井三池社製)にて混合する。
B:成分4〜9を100℃にて均一に溶解混合する。
C:Bに成分10〜15とAを添加し、均一に分散する。
D:Cを容器に流し込み、冷却してスティック状口紅を得た。
【0030】
実施例1〜10で用いた硫酸カルシウム二水塩の板状粉体の製造方法
炭酸カルシウムを水に懸濁させた中に40℃で徐々に硫酸溶液を滴下し、長径30〜50μm、短径20〜25μm、厚さ1〜3μmの板状の二水硫酸カルシウムを合成した。
比較例3で用いた硫酸カルシウム二水塩の不定形粉体の製造方法
硫酸カルシウム半水塩84.3質量部と水15.7質量部とを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一混合し、反応させる。得られた反応物をハンマーミルにて粉砕し、篩(開口目開き150μm)にかけ、粒子径が5〜100μmの硫酸カルシウム二水塩の不定形粉体を得た。
【0031】
(評価方法1):「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」及び「色移り防止効果」
化粧品評価専門パネル20名に市販の口紅を塗布した上に各試料を使用してもらい、「滑らかな使用感」、「3時間後の化粧持続効果」及び「色移り防止効果」について、各自が以下の評価基準に従って7段階に評価し、サンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って4段階に判定した。なお、「色移り防止効果」については、各試料をヒト上腕部に市販の口紅を長さ3cmに2回塗布し、ティッシュを軽く押し付けて、ティッシュへの色移りを観察し、色移り防止効果を判断した。
(評価基準)
(評点) (評価)
6 : 非常に良い
5 : 良い
4 : やや良い
3 : 普通
2 : やや悪い。
1 : 悪い。
0 : 非常に悪い。
(判定基準)
(評点の平均点) (判定)
5.0以上 :◎(非常に良好)
3.5以上5.0未満 :○(良好)
1.0以上3.5未満 :△(普通)
1.0未満 :×(不良)
【0032】
(評価方法2):「安定性」
前記実施例及び比較例の口紅を50℃恒温室にて2週間静置した時の安定性(発汗)を確認した。
(評価基準)
[評価] :[判定]
室温放置品と50℃放置品の差がなく、安定である : ◎
室温放置品と50℃放置品の差が著しく、不安定である : ×
【0033】
表1の結果から明らかなように、実施例1から3の口紅は、「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」、「色移り防止効果」、「安定性」の全ての項目において優れた口紅であった。一方、パーフルオロメチルイソプロピルの配合量が2%未満の比較例1は、滑らかな使用感、安定性に優れるものの、化粧持続効果、色移り防止効果に劣っていた。また、パーフルオロメチルイソプロピルの配合量が、硫酸カルシウム二水塩の板状粉体に対して1.0以上の配合量となる比較例2は、滑らかな使用感、化粧持続効果、色移り防止効果に優れるものの、安定性に劣っていた。また、硫酸カルシウム二水塩の板状粉体に代えて硫酸カルシウム二水塩の不定形粉末を配合した比較例3は、「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」、「色移り防止効果」、「安定性」の全ての項目において劣っていた。
【0034】
実施例4:油性ファンデーション
(成分) (%)
1.硫酸カルシウム二水塩の板状粉体 10.0
2.パーフルオロメチルイソプロピル(注3) 5.0
3.タルク 15.0
4.カオリン 10.0
5.酸化チタン 10.0
6.ベンガラ 1.0
7.黄酸化鉄 4.0
8.黒酸化鉄 0.2
9.ポリエチレンワックス(注4) 5.0
10.ポリエチレンワックス(注5) 6.0
11.マイクロクリスタリンワックス(注6) 7.0
12.トリイソステアリン酸ジグリセリル 10.0
13.スクワラン 5.0
14.ワセリン 5.0
15.トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 残量
16.香料 適量
注3:FOMBLIN HC/25(SOLVAY SOLEXIS社製)
注4:PERFORMALENE 500(ニューフェーズテクノロジー社製)
注5:PERFORMALENE 655(ニューフェーズテクノロジー社製)
注6:ムルチワックスW−445(SONNEBORN社製)
【0035】
(製造方法)
A:9〜14を加熱溶解する。
B:Aに成分3〜8,15を均一に分散させる。
C:Bに成分2,1,16を順次に加え、均一に分散後、溶解、脱泡後皿状容器に充填する。
得られた油性ファンデーションは、「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」、「色移り防止効果」、「安定性」に優れた油性ファンデーションであった。
【0036】
実施例5:油性アイクリーム
(成分) (%)
1.硫酸カルシウム二水塩の板状粉体 5.0
2.ポリパーフルオロエトキシメトキシ
ジフルオロヒドロキシエチル(注7) 2.0
3.ポリエチレンワックス(注4) 2.0
4.エチレン・プロピレンコポリマー(注8) 7.0
5.パラフィンワックス(注9) 1.0
6.12−ヒドロキシステアリン酸 2.0
7.トリイソステアリン酸ジグリセリル 10.0
8.ジカプリン酸プロピレングリコール 10.0
9.マカデミアナッツ油 35.0
10.酢酸トコフェロール 0.1
11.油溶性ローズマリー抽出液 0.1
12.ヒアルロン酸水溶液 0.1
13.雲母チタン(注10) 0.1
14.デカメチルシクロペンタシロキサン 残量
15.香料 0.01
注7:FOMBLIN HC/OH-1000(SOLVAY SOLEXIS社製)
注8:EP-1100(Baker Petrolite社製)
注9:PARACERA256(PARAMENT社製)
注10:FLAMENCO BLUE(エンゲルハート社製)
【0037】
(製造方法)
A:成分1〜2をヘンシェルミキサーにて混合する。3〜9を加熱溶解する。
B:成分3〜9を加熱溶解する。
C:Bに成分10〜15とAを添加し、均一に分散する。
D:Cを容器に充填する。
得られた油性アイクリームは、「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」、「色移り防止効果」、「安定性」に優れた油性アイクリームであった。
【0038】
実施例6:ペースト状リップグロス
(成分) (%)
1.硫酸カルシウム二水塩の板状粉体 2.0
2.パーフルオロメチルイソプロピル(注1) 2.0
3.ポリエチレンワックス(注4) 1.5
4.フィッシャートロプシュワックス(注11) 1.5
5.トリイソステアリン酸ジグリセリル 1.0
6.リンゴ酸ジイソステアリル 10.0
7.乳酸ステアリル 10.0
8.水添ポリイソブテン(注12) 30.0
9.トリエチルヘキサノイン 残量
10.流動パラフィン 5.0
11.12−ヒドロキシステアリン酸 0.1
12.α−オレフィン・ビニルピロリドン共重合体(注13) 0.5
13.無水ケイ酸(注14) 3.5
14.ベンガラ 0.1
15.赤色201号 0.3
16.黒酸化鉄 0.05
17.酸化チタン 0.2
18.大豆リン脂質 0.01
19.p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 3.0
20.防腐剤 適量
21.香料 適量
注11:CIREBELLE108(CIREBELLE社製)
注12:平均分子量1000
注13:ANTARON V-220(ISP社製)
注14:AEROSIL 200(日本アエロジル社製)
【0039】
(製造方法)
A:成分1〜2をヘンシェルミキサーにて混合する。
B:成分3〜12を100℃で溶解混合する。
C:BにAと成分13〜21を添加し、均一に分散する。
D:Cをチューブに流し込み、冷却してペースト状リップグロスを得た。
得られたペースト状リップグロスは、「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」、「色移り防止効果」、「安定性」に優れたペースト状リップグロスであった。
【0040】
実施例7:油性アイカラー
(成分) (%)
1.硫酸カルシウム二水塩の板状粉体 2.0
2.トリフルオロプロピルシクロテトラシロキサン/
トリフルオロプロピルシクロペンタシロキサン(注15) 2.0
3.デキストリン脂肪酸エステル(注16) 2.0
4.ポリエチレンワックス(注4) 2.0
5.オゾケライトワックス(注17) 5.0
6.トリイソステアリン酸ジグリセリル(注2) 15.5
7.ミリスチン酸デキストリン 2.0
8.ベヘニン酸デキストリン 5.0
9.流動パラフィン 残量
10.水添ポリイソブテン(注18) 1.5
11.無水ケイ酸 6.0
12.ナイロン末 5.0
13.シリコーン処理タルク(注19) 5.5
14.赤色202号 0.05
15.黄色4号アルミニウムレーキ 0.05
16.青色1号アルミニウムレーキ 0.05
17.雲母チタン 1.5
18.防腐剤 適量
19.香料 適量
注15:KF−5002(信越化学工業社製)
注16:レオパール TT(千葉製粉社製)
注17:OZOKERITE WAX SP−273P(STRAHL&PITSCH INC社製)
注18:平均分子量2000
注19:ジメチルポリシロキサン 5%処理
【0041】
(製造方法)
A:成分1〜2をヘンシェルミキサーにて混合する。
B:成分3〜10を100℃で溶解混合する。
C:Bに成分11〜19を添加し、均一に混合分散する。
D:Cを容器に流し込み、冷却固化してアイカラーを得た。
得られたアイカラーは、「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」、「色移り防止効果」、「安定性」に優れたアイカラーであった。
【0042】
実施例8:スティック状コンシーラー
(成分) (%)
1.硫酸カルシウム二水塩の板状粉体 5.0
2.ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロ
ヒドロキシエチルPEGリン酸(注20) 5.0
3.ポリエチレンワックス(注4) 5.0
4.ポリエチレンワックス(注5) 5.0
5.キャンデリラロウ 2.0
6.トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 10.0
7.トリイソステアリン酸ジグリセリル(注2) 5.0
8.メチルフェニルポリシロキサン 15.0
9.酢酸液状ラノリン 10.0
10.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
11.酸化チタン 20.0
12.黄酸化鉄 2.0
13.ベンガラ 0.5
14.黒酸化鉄 0.2
15.マイカ 2.0
16.防腐剤 適量
注20:FOMBLIN HC/P2-1000(SOLVAY SOLEXIS社製)
【0043】
(製造方法)
A:成分1〜2をヘンシェルミキサーにて混合する。
B:成分3〜10を100℃で溶解混合する。
C:Bに、Aと成分11〜16を加え、90℃で3本ローラーにて混練処理し、均一に混合する。
D:Cを容器に流し込み、冷却固化してアイカラーを得た。
得られたスティック状コンシーラーは、「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」、「色移り防止効果」、「安定性」に優れたスティック状コンシーラーであった。
【0044】
実施例9:アイシャドウ(固形粉末状)
(成分) (%)
1.シリコーン処理合成金雲母(注19) 20.0
2.シリコーン処理タルク(注19) 残量
3.酸化チタン被覆雲母 10.0
4.窒化ホウ素 5.0
5.ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・
エポキシ積層末 5.0
6.硫酸カルシウム二水塩の板状粉体 50.0
7.群青 2.0
8.黄色401号 0.5
9. 架橋型シリコーン・網状シリコーン共重合体 1.0
10.防腐剤 適量
11.流動パラフィン 2.0
12.ワセリン 1.0
13.ジメチルポリシロキサン 3.0
14.パーフルオロメチルイソプロピル(注3) 2.0
15.香料 適量
【0045】
(製造方法)
A.:成分6,14をヘンシェルミキサーにて混合する。
B:Aに成分1〜5及び成分7〜10を加え、均一に混合分散する。
C:成分11〜13を加熱し、成分15を加え、均一に分散する。
D:Bをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、Cを添加し、均一分散する。
E:Dをパルベライザーで粉砕する。
F:Eを金皿に充填し、圧縮成形し、アイシャドウを得た。
得られたアイシャドウは、「滑らかな使用感」、「化粧持続効果」、「色移り防止効果」、「安定性」に優れたアイシャドウであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C);
(A)フッ素系油剤
(B)硫酸カルシウム二水塩の板状粉体
(C)油剤
を含有し、且つ成分(A)と成分(B)との配合比(A)/(B)が質量比で0.04〜1.0であることを特徴とする油性化粧料。
【請求項2】
フッ素系油剤の含有量が2〜25質量%である請求項1記載の油性化粧料。
【請求項3】
フッ素系油剤がパーフルオロメチルイソプロピルである請求項1又は2記載の油性化粧料。
【請求項4】
硫酸カルシウム二水塩の板状粉体が、長径30〜100μm、短径20〜50μm、厚さ1〜3μmの板状粉体である請求項1〜3のいずれかに記載の油性化粧料。
【請求項5】
フッ素系油剤と硫酸カルシウム二水塩の板状粉体を予め混合し、この混合物を配合してなる請求項1〜4のいずれかに記載の油性化粧料。
【請求項6】
油性化粧料が固形である請求項1〜5のいずれかに記載の油性化粧料。

【公開番号】特開2009−234989(P2009−234989A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83333(P2008−83333)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】