説明

油溶性櫛型ポリマー

本発明は、主鎖中に、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来する繰り返し単位とを包含している櫛型ポリマーであって、この際、モル分枝度は0.1〜10モル%の範囲内にあり、この櫛型ポリマーは、繰り返し単位の質量に対して合計して少なくとも80質量%の、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来する繰り返し単位とを包含している、櫛型ポリマーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油溶性櫛型ポリマー、その製造法並びにその使用に関する。
【0002】
ポリアクリル(メタ)アクリレート(PAMAs)−一般に種々のアルキルメタクリレート(AMAs)の混合物の単純ラジカル共重合により合成される−は、油添加剤として、分子量及び組成に応じて、他の粘度指数改良剤(VIIs)に比べて優れている低温特性と対になって粘度指数(VI)を高める作用をする(R.M.Mortier,S.T.Orszulik(eds), Chemistry and Technology of Lubricants, Blackie Academic & Professional,Ist ed., London 1993, 124-159 & 165-167参照)。油添加剤としての使用可能性の基本前提は、平凡に、PAMAsの場合には典型的にC−原子数6〜24を有するアルキル側鎖の充分大きい数の存在に基づくポリマーの油溶性である。PAMAのVIを高めるために、屡々短鎖アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレート又はブチルメタクリレートを共重合することに移行している(EP0637332、EP0937769又はEP0979834参照)。しかしながらこれらの短鎖成分によって、低温における溶解性は低下されるので、例えばメチルメタクリレートの割合は約25質量%までに限定されている。この櫛型ポリマーのこうして達成可能なVIsは、濃度、永久剪断安定性−指数(PSSI)及び基油タイプに依存して、150〜250の範囲である。
【0003】
もう一つのクラスのVIIは、スチレン−無水マレイン酸−コポリマーを典型的なC〜C24アルコールでポリマー類似エステル化することによって得られる、スチレン−アルキルマレエート−コポリマーを用いて得られている。このエステル化は、ブタノールの添加の下で、約95%の変換率まで行なわれる。酸官能価の完全な反応は、アミンの添加によって、アミド又はイミド基の形成下に可能である(US3702300、EP0969077)。
【0004】
鉱油又は合成油中のポリマー溶液の粘度は、大いに分子量に依存している。このことは、粘度の温度依存性を低下するか又はVIが分子量上昇に伴い増加する結果をも有している(J.Bartz,Additive fuer Schmierstoffe,Expert-Verlag,Renningen-Malmshein 1994, 197-252)。温度上昇と関連して、もつれた結節をほどいて伸びた芋虫様分子にするほぐし(Entknaeueln)も記載されている。
【0005】
しかしながら、分子量と平行して、剪断安定性は、高い剪断下での連鎖切断によって低下される。この対向する作用効果の結果として、手による操作−、自動的操作−、圧媒油−又はエンジンオイルに要求されるような剪断安定なVIIsは、PAMAsのような慣用のポリマータイプのベースの場合には、高い添加量を用いてのみ実現可能である。従って、低温での低い粘度貢献、40〜100℃のVI−範囲での正常の粘稠性、100℃を上回る高い粘度貢献及び同時に確保される全温度範囲での良好な油溶性を有するVIIsが、特別重要である。
【0006】
PAMAsのような線状の櫛型様のポリマーと並んで、真の櫛型ポリマーをベースとするVIIsも特許文献中に既に公知である。EP0744457は、側枝自体がオリゴマーPAMAから成っている純粋PAMA−ベースの高次の櫛型ポリマーを記載している。更に、この特許文献から、側鎖が飽和の又は水素化ポリオレフィンから成り、幹(Rueck-grat)が短鎖モノマー、例えばAMAs又はアルキルスチレンから成っている櫛型ポリマーに関する他の2特許を知ることができる。例えばEP0621293は、側鎖が好ましくは水素化ポリブタジエンから構成されている櫛型ポリマーを記載している。同様に、EP0699694中には、好ましくは飽和オレフィンモノマーをベースとする側枝を有する櫛型ポリマー、例えばポリイソブチレン又はアタクチックポリプロピレンが開示されている。
【0007】
広い意味では、A−B−A 3ブロックコポリマーも、単に2個の側枝を有する櫛型ポリマーとみなすことができる。例えば3ブロックコポリマーは、純粋PAMA−ベースとするVII(P.Callais S.Schmidt,N.Macy, SAE Technical Paper Series, No. 2004-01-3047)としても、ポリブチルメタクリレート核及び水素化ポリブタジエン−又はポリイソプレン枝をベースとするVIIとしても記載されている(US5002676)。ポリスチレン核と例えば水素化ポリイソプレン枝を有するアニオン製造されたA−B−Aブロックコポリマーは、むしろVIIsとして市場で使用されている(US4788361)。水素化スチレン−ジエン−コポリマーのクラスもこのようなVIIsに属する。
【0008】
VIIとしての前記用途と並んで、水素化された又は飽和の側枝を有する櫛型ポリマーも、全く他の用途で公知である。例えばDE19631170は、耐衝撃性成形材料用の櫛型ポリマーを記載しており、ここで、このポリマーは、付加的な短鎖の幹モノマーを有しないポリイソブチレン含有マクロモノマーの相互配列を示している。この特許文献中には、スチレン−無水マレイン酸−幹にポリマー類似反応で官能化されたポリプロピレンを結合させて、軟かい高蒸発性の櫛型ポリマーゲルを形成させる工程も記載されており(EP0955320);この場合の使用ポリプロピレンの分子量は極めて高く、300000g/モルまでである。接着剤の化学からの1例中に、水素化ポリブタジエン−又はイソプレン枝を有する櫛型ポリマーが記載されており、ここでは、幹がAMAsと共にアクリル酸をも含有している(US5625005)。
【0009】
先に記載のポリマーは多様に市場で使用されている。相応して、大抵のこれらポリマーは、満足しうる特性像を示している。いずれにせよ、潤滑油中での添加剤のできるだけ少ない使用量で、ポリマーの早期分解によってそれらの特性が損なわれることなしに、広い温度範囲に渡る所望の粘度を得るために、粘稠化作用、粘度指数及び剪断安定性の関係を改良する努力が絶えずなされている。
【0010】
更に、これらポリマーは簡単かつコスト的に好適に製造できるべきであり、この際には殊に、市場で入手可能な成分が使用されるべきである。この場合にその製造は、そのために新たな、かつコストのかかる装置を必要とすることなしに、大工業的に行うことができるべきである。
【0011】
これらの並びに詳細には記載されていないが先に検討されている関連から直ちに推考可能又は明らかである課題は、特許請求の範囲1に記載の全ての特徴を有する櫛型ポリマーによって解決される。本発明の櫛型ポリマーの有利な変形は、請求の範囲1の従属請求項中で保護される。櫛型ポリマーの製造法に関しては、請求項18が根底の課題の解決を提供し、請求項26は、本発明の櫛型ポリマーを含有する潤滑油組成物を保護する。
【0012】
モル分枝度(molar Verzweigungsgrad)が0.1〜10モル%の範囲内にあり、かつ、この櫛型ポリマーが、繰り返し単位の質量に対して合計して少なくとも80質量%の、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位及び炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート、並びのこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来する繰り返し単位を包含していることによって、直ちに予測可能ではない方法で、主鎖中にポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位及び炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来する繰り返し単位を包含しており、高い粘稠化作用の場合の低い剪断敏感性を有する、櫛型ポリマーを提供することができる。
【0013】
同時に本発明による櫛型ポリマーによって、一連の更なる利点を得ることができる。これには、特に次のものが属する:
》本発明による櫛型ポリマーは、潤滑油中で特別高い粘度指数改良作用を有する、
》本発明の櫛型ポリマーは、特に容易に、かつ簡単に製造することができ、この際、慣用の大工業的装置を使用することができる。
【0014】
ここで使用される概念「櫛型ポリマー」は自体公知であり、この際、ポリマー主鎖(屡々"幹(Rueckgrat)"又は"バックボーン"とも称される)に、長い側鎖が結合している。この場合に、本発明によるポリマーは、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位少なくとも1個を有する。正確な割合は、モル分枝度から明らかである。概念「主鎖」は、必ずしも必要ではないが、主鎖の鎖長が側鎖のそれよりも大きいことを意味する。むしろこの概念は、その連鎖の組成に関連している。側鎖は、非常に高い割合のオレフィン系繰り返し単位、殊にアルケン、アルカジエン、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、ブタジエン、イソプレンに由来する単位を有するが、主鎖は、大割合の前記の極性不飽和モノマーを包含する。
【0015】
概念「繰り返し単位」は当業界で充分公知である。本発明の櫛型ポリマーは、有利にマクロモノマー(Makromonomer)及び低分子量モノマーのラジカル重合によって得ることができる。この場合に、二重結合は共有結合の形成下に開かれる。相応して、使用モノマーから繰り返し単位が生じる。いずれにせよ、本発明の櫛型ポリマーは、ポリマー類似反応及び/又はグラフト共重合によって得ることもできる。この場合に、主鎖の反応した繰り返し単位は1個のポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位に属する。グラフト共重合による本発明の櫛型ポリマーの製造の場合にも同様なことが当て嵌まる。
【0016】
本発明は、有利に高い油溶性を有する櫛型ポリマーを記載している。概念「油溶性」とは、基油(Grundoel)と本発明の櫛型ポリマーとの混合物が、巨視的な相形成なしに製造可能であり、本発明の櫛型ポリマー少なくとも0.1質量%、有利には少なくとも0.5質量%を含有していることを意味する。この混合物中では櫛型ポリマーは分散されて及び/又は溶解されて存在することができる。油溶性は、殊に親油性側鎖の割合並びに基油に依存する。この特性は当業者には公知であり、その都度の基油に関して容易に親油性モノマーの割合によって調節することができる。
【0017】
本発明の櫛型ポリマーは、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位を包含している。ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーは当業界では公知である。この繰り返し単位は、ポリオレフィンに由来する基少なくとも1個を包含している。ポリオレフィンは当業界では公知であり、この際、これは元素炭素及び水素から成っているアルケン及び/又はアルカジエン、例えばC〜C10−アルケン、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、ノルボルネン及び/又はC〜C10−アルカジエン、例えばブタジエン、イソプレン、ノルボルナジエンの重合により得ることができる。ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の質量に対して有利に少なくとも70質量%、特別好ましくは少なくとも80質量%、全く特別好ましくは少なくとも90質量%のアルケン及び/又はアルカジエンに由来する基を包含している。この場合に、これらポリオレフィン系の基は、殊に水素化されて存在することもできる。アルケン及び/又はアルカジエンに由来する基と並んで、このポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は更なる基を包含することができる。小割合の共重合可能なモノマーがこれに属する。これらモノマーは自体公知であり、特にアルキル(メタ)アクリレート、スチレンモノマー、フマレート、マレエート、ビニルエステル及び/又はビニルエーテルを包含する。共重合可能なモノマーをベースとする基の割合は、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の質量に対して、有利には最大で30質量%、特別好ましくは最大で15質量%である。更に、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、官能化作用をするか又はポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の製造によって限定されている始端基及び/又は末端基を包含することができる。これら始端基及び/又は末端基の割合は、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の質量に対して有利には最大で30質量%、特に好ましくは最大で15質量%である。
【0018】
ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の分子量の数平均は、500〜50000g/モル、特に好ましくは700〜10000g/モル、殊に1500〜4900g/モル及び全く特別好ましくは2000〜3000g/モルの範囲内にあるのが有利である。
【0019】
これらの値は、低分子量及び巨大分子量のモノマーの共重合による櫛型ポリマーの製造の場合に、巨大分子量モノマーの特性に由来する。ポリマー類似反応の場合に、この特性は、例えば、主鎖の反応した繰り返し単位の考慮の下での使用マクロアルコール及び/又はマクロアミンからこの特性が生じる。グラフト共重合の場合には、生じたポリオレフィンの、主鎖中に取り込まれなかった割合から、ポリオレフィンの分子量分布を推測することができる。
【0020】
ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、有利に低い融点を有し、この際、これはDSCにより測定される。好ましくは、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の融点は、−10℃以下、殊に好ましくは−20℃以下、特別好ましくは−40℃以下である。全く特別好ましくはポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位においては、DSCによって融点を測定することはできない。
【0021】
ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と並んで、本発明の櫛型ポリマーは、炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来する繰り返し単位を包含している。これらのモノマーは、当業界で従来公知である。
【0022】
表現「低分子量」とは、櫛型ポリマーの幹の繰り返し単位の一部分が低い分子量を有することを意味する。この分子量はそれぞれ、製造後にポリマーの製造のために使用されたモノマーの分子量に由来することができる。低分子量繰り返し単位又は低分子量モノマーの分子量は、有利に最大で400g/モル、特に好ましくは最大で200g/モル及び全く特別好ましくは最大で150g/モルである。
【0023】
炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマーの例は、スチレン、側鎖中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、環にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロムスチレン及びテトラブロムスチレンである。
【0024】
概念「(メタ)アクリレート」には、アクリレート及びメタアクリレート並びにアクリレートとメタアクリレートとの混合物が包含される。アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレートには、殊に飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソ−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート;不飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、例えば2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレートがこれに属する。
【0025】
好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、アルコール基中に炭素原子数1〜8、特に好ましくは1〜4を有する。この際、アルコール基は、線状であっても又は分枝していてもよい。
【0026】
アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステルの例は、特に蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルである。
【0027】
好ましいビニルエステルは、アシル基中に炭素原子数2〜9、特別好ましくは2〜5を有する。この際、アシル基は、線状であっても又は分枝していてもよい。
【0028】
アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテルの例は、特にビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテルである。好ましいビニルエーテルは、アルコール基中に炭素原子数1〜8、特に好ましくは1〜4を有する。この際、アルコール基は、線状であっても又は分枝していてもよい。
【0029】
(ジ)エステルなる記載は、殊にフマル酸及び/又はマレイン酸のモノエステル、ジエステル並びにエステルの混合物が使用できることを意味している。アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレートには、特にモノメチルフマレート、ジメチルフマレート、モノエチルフマレート、ジエチルフマレート、メチルエチルフマレート、モノブチルフマレート、ジブチルフマレート、ジペンチルフマレート及びジヘキチルフマレートがこれに属する。好ましい(ジ)アルキルフマレートは、アルコール基中に炭素原子数1〜8、特に好ましくは1〜4を有する。この際、アルコール基は、線状であっても又は分枝していてもよい。
【0030】
アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエートには、特にモノメチルマレエート、ジメチルマレエート、モノエチルマレエート、ジエチルマレエート、メチルエチルマレエート、モノブチルマレエート、ジブチルマレエートがこれに属する。好ましい(ジ)アルキルマレエートは、アルコール基中に炭素原子数1〜8、特に好ましくは1〜4を有する。この際、アルコール基は、線状であっても又は分枝していてもよい。
【0031】
先に記載の繰り返し単位と並んで本発明の櫛型ポリマーは、他のコモノマーに由来する更なる繰り返し単位を包含してしよく、この際、その割合は、繰り返し単位の質量に対して最大で20質量%、好ましくは最大で10質量%、特に好ましくは最大で5質量%である。
【0032】
これには、特にアルコール基中に炭素原子数11〜30を有するアルキル(メタ)アクリレート、殊に次のものに由来する繰り返し単位もこれに属する:ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソ−プロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート及び/又はエイコシルテトラトリアコニチル(メタ)アクリレート。
【0033】
特に次に例示されているような分散酸素−及び窒素−官能化されたモノマーに由来する繰り返し単位もこれに属する:
更に、特にアミノアルキル(メタ)アクリレート、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位がこれに属する。
【0034】
更に、特にアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位がこれに属する。
【0035】
更に、特にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位がこれに属する。
【0036】
更に、特にヘテロ環式(メタ)アクリレート、例えば2−(1−イミダゾイル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン、N−メタクリロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノンに由来する繰り返し単位がこれに属する。
【0037】
更に、特にヘテロ環式ビニル化合物、例えば2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾールに由来する繰り返し単位がこれに属する。
【0038】
前記のエチレン系不飽和モノマーは、個々に又は混合物として使用することができる。更に、定義の構造、例えばブロックコポリマーを得るために、主鎖の重合の間にモノマー組成を変じることが可能である。
【0039】
本発明によれば、櫛型ポリマーは、0.1〜10モル%、有利には0.8〜6モル%、特に好ましくは0.8〜3.4モル%、殊に好ましくは1.0〜3.1、全く特別好ましくは1.4〜2.8のモル分枝度(molar Verzweigungsgrad)を有する。櫛型ポリマーのこのモル分枝度fbranchは、次式により算出される:
【数1】

[式中、
A=ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位のタイプ数、
B=炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来する繰り返し単位のタイプ数、
a=櫛型ポリマー中の、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来するタイプaの繰り返し単位の数、
b=櫛型ポリマー中の、炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来するタイプbの繰り返し単位の数]。
【0040】
このモル分枝度は、一般に、櫛型ポリマーが低分子量及び巨大分子量のモノマーの共重合によって製造された場合には、使用モノマーの割合に由来する。この場合に、計算のために、マクロモノマーの分子量の数平均を使用することができる。
【0041】
本発明の特別な1実施態様によれば、櫛型ポリマー、殊に櫛型ポリマーの主鎖は、−60〜110℃の範囲、好ましくは−30〜100℃の範囲、特に好ましくは0〜90℃の範囲、全く特別好ましくは20〜80℃の範囲のガラス転移温度を有することができる。このガラス転移温度はDSCにより測定される。このガラス転移温度は、相応するホモポリマーのガラス化温度を介して、主鎖中の繰り返し単位の割合を考慮して概算することができる。
【0042】
櫛型ポリマーがポリマー類似反応により又はグラフト共重合により得られた場合には、このモル分枝度は、公知の変換率の測定法を介して得られる。
【0043】
炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択されるモノマーに由来する低分子量繰り返し単位少なくとも80質量%、有利には少なくとも90質量%及びポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の割合は、繰り返し単位の質量に関連している。繰り返し単位と並んで、更にポリマーは一般に、開始反応及び停止反応により生じることのできる始端基及び末端基を含有する。従って、本発明の特別な1実施態様によれば、炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択されるモノマーに由来する低分子量の繰り返し単位の少なくとも80質量%、有利には少なくとも90質量%の数値及びポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の数値は、櫛型ポリマーの全質量に関連している。櫛型ポリマーの多分散性は、当業者には明らかである。従って、これらの数値は、全ての櫛型ポリマーの平均値に関連している。
【0044】
本発明による櫛型ポリマーは、種々の方法で製造することができる。有利な1方法は、低分子量モノマー及び巨大分子量モノマーの自体公知のラジカル共重合である。
【0045】
従って、これらポリマーは、殊にラジカル重合並びにコントロールされたラジカル重合の関連法、例えばATRP(=原子移動ラジカル重合)又はRAFT(=可逆的付加分画連鎖移動)によって達成することができる。
【0046】
慣用のラジカル重合は、特にUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7th Edition中に記載されている。一般にこのために、重合開始剤並びに連鎖移動剤が使用される。
【0047】
使用可能な開始剤には次のものがこれに属する:特に当業界で充分公知のアゾ開始剤、例えばAIBN及び1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル並びにペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、前記化合物2種以上の相互の混合物並びに前記化合物と記載されていないが同様にラジカルを形成することのできる化合物との混合物。連鎖移動剤としては、殊に油溶性メルカプタン、例えばn−ドデシルメルカプタン又は2−メルカプトエタノール又はテルペンの群からの連鎖移動剤、例えばテルピノールが好適である。
【0048】
ATRP−法は自体公知である。ここでこれは、そのメカニズムの記載により限定されるべきではない「活性(lebende)」のラジカル重合であると仮定される。この方法では、遷移金属化合物が移動可能な原子団を有する化合物と反応される。この際に、移動可能な原子団が遷移金属化合物上に移行され、これによって金属が酸化される。この反応時に、エチレン系の基に付加するラジカルが生じる。しかしながら、原子団の遷移金属化合物上への移動は可逆性であるので、この原子団は成長するポリマー連鎖上に逆移動され、これによってコントロールされた重合系が形成される。相応して、ポリマーの構造、分子量及び分子量分布を制御することができる。
【0049】
この反応実施は、例えばJ-S.Wang,et al.によりJ.Am.Chem. Soc. vol.117,p.5614-5615(1995)に、MatyjaszewskiによりMacromolecules,vol.28,p.7901-7910 (1995)に記載されている。更に、特許出願WO96/30421、WO94/47661、WO97/18247、WO98/40415及びWO99/10387は、先に説明されたATRPの変法を開示している。
【0050】
更に、本発明のポリマーは、例えばRAFT−法によって得ることもできる。この方法は、例えばWO98/01478及びWO2004/083169中に詳細に示されているので、開示の目的のために参照できることは明白である。
【0051】
この重合は、常圧、減圧又は加圧下に実施することができる。この重合温度も厳密でなない。しかしながらこれは一般に、−20〜200℃、有利には50〜150℃、特に好ましくは80〜130℃の範囲内である。
【0052】
重合は溶剤を用いて又は用いないで実施することができる。この場合に溶剤の概念は広く理解すべきである。溶剤の選択は、使用モノマーの極性に応じて行われ、この際、好ましくは100N−オイル、軽質ガス油及び/又は芳香族炭化水素、例えばトルエン又はキシレンを使用することができる。
【0053】
ラジカル共重合で本発明の櫛型ポリマーを製造するために使用できる低分子量モノマーは、一般に市場で得られる。
【0054】
本発明により使用可能なマクロモノマーは、有利に末端に正に1個の二重結合を有する。
【0055】
ここで、二重結合は、マクロモノマーの製造によって限定的に存在することができる。例えばイソブチレンのカチオン重合の場合には、1個の末端二重結合を有するポリイソブチレン(PIB)が生じる。
【0056】
更に、官能化されたポリオレフィン基を、適当な反応によってマクロモノマーに変換することができる。
【0057】
例えばポリオレフィンをベースとするマクロアルコール及び/又はマクロアミンを、少なくとも1個の不飽和エステル基を含有する低分子量モノマー、例えばメチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートを用いて、エステル交換又はアミノ分解することができる。
【0058】
このエステル交換は充分公知である。例えばこのために、不均一系触媒、例えば水酸化リチウム/酸化カルシウム−混合物(LiOH/CaO)、純粋な水酸化リチウム(LiOH)、リチウムメタノレート(LiOMe)又はナトリウムメタノレート(NaOMe)又は均一系触媒、例えばイソプロピルチタネート(Ti(OiPr))又はジオクチル錫オキシド(Sn(Oct)O)を使用することができる。この反応は平衡反応である。従って通常は、遊離された低分子量アルコールは、例えば蒸留によって除去される。
【0059】
更に、これらマクロモノマーは、例えばメタクリル酸又は無水メタクリル酸から出発する直接エステル化又は直接アミド化により、好ましくはp−トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸による酸性触媒作用下で、又は遊離メタクリル酸からDCC−法(Dicyclo-hexylcarbodiimid)によって得ることができる。
【0060】
更に、存在するアルコール又はアミドは、酸クロリド、例えば(メタ)アクリル酸クロリドとの反応によりマクロモノマーに変じることができる。
【0061】
更に、マクロアルコールを、カチオン重合されたPIBの場合に生じるような末端位PIB−二重結合と無水マレイン酸との反応(EN−反応)及び引き続くα,ω−アミノアルコールとの反応によって製造することも可能である。
【0062】
更に、好適なマクロモノマーは、末端PIB−二重結合とメタクリル酸との反応又はスチレンのPIB−二重結合のフリーデル−クラフト−アルキル化によって得ることができる。
【0063】
前記のマクロモノマーの製造の場合に、重合阻害剤、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−オキシル−ラジカル及び/又はヒドロキノンモノメチルエーテルを使用するのが有利である。
【0064】
先に記載の反応のために使用すべき、ポリオレフィンをベースとするマクロアルコール及び/又はマクロアミンは、公知の方法で製造することができる。
【0065】
更に、これらのマクロアルコール及び/又はマクロアミンの一部は市場で得られる。
【0066】
市場で得られるマクロアミンには、例えばKerocom(R)PIBA 03.が挙げられる。Kerocom(R)PIBA 03は、Mn=1000g/モルの約75質量%NH−官能化されたポリイソブチレン(PIB)であり、これは脂肪族炭化水素中の約65質量%の濃縮物として、BASF AG(Ludwigshafen,Deutschland)から供給されている。
【0067】
もうひとつの製品は、Kraton Polymers GmbH(Eschborn, Deutschland)からのKraton Liquid(R)L−1203、Mn=4200g/モルの、1,2−繰り返し単位及び1,4−繰り返し単位それぞれ約50%を有する、約98質量%OH−官能化された水素化ポリブタジエン(オレフィンコポリマーOCPとも称される)である。
【0068】
水素化ポリブタジエンをベースとする好適なマクロアルコールの更なる提供者は、Cray Valley (Paris) als Tocher der Total(Paris)又はSartomer Company (Exton/PA /USA)である。
【0069】
マクロアミンの製造は、例えばBASF AGのEP0244616中に記載されている。この場合に、マクロアミンの製造は、有利にポリイソブチレンのヒドロホルミル化(Oxierung;Hydroformilation)及びアミノ化により行なわれる。ポリイソブチレンは、低い温度で結晶化を示さない利点を提供する。
【0070】
有利なマクロアルコールは、更にBASF AGの公知特許により、高割合の末端α−二重結合を含有する高反応性ポリイソブチレンHR−PIB(EP0628575)のヒドロホウ素化(WO2004/067583)を経るか又はヒドロホルミル化に引き続く水素化(EP0277345)によって製造することができる。ヒドロホウ素化は、ヒドロホルミル化及び水素化に比べて高いアルコール官能価を生じさせる。
【0071】
水素化ポリブタジエンをベースとする好ましいマクロアルコールは、Shell Inter-nationale Research MaatschappijのGB2270317に従って得ることができる。約60%以上の1,2−繰り返し単位の高割合は、明らかに低い結晶化温度をもたらすことができる。
【0072】
前記のマクロモノマーは、部分的に市場でも得られ:例えばKraton Liquid(R)L−1203から製造されたKraton Liquid(R)L−1253、Kraton Polymers GmbH(Eschborn,Deutschland)の、それぞれ約50%の1,2−繰り返し単位及び1,4−繰り返し単位を有する、約96質量%がメタクリレート−官能化された水素化ポリブタジエンである。
【0073】
Kraton Liquid(R)L−1253の合成は、Shell Internationale Research MaatschappijのGB2270317に従って行われた。
【0074】
ポリオレフィンベースのマクロモノマー及びその製造については、EP0621293及びEP0699694中にも記載されている。
【0075】
前記のマクロモノマー及び低分子量モノマーのラジカル共重合と並んで、本発明の櫛型ポリマーは、ポリマー類似反応(polymeranaloge Umsetzung)によって得ることができる。
【0076】
この場合には、差し当たり公知方法で低分子量モノマーからポリマーを製造し、引き続きこれを反応させる。この場合に櫛型ポリマーの幹は、反応性モノマー、例えば無水マレイン酸、メタクリル酸又はグリシジルメタクリレート及び他の不反応性の短鎖幹モノマーから合成することができる。この場合に、前記の開始剤、例えばt−ブチルペルベンゾエート又はt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート及び調整剤、例えばn−ドデシルメルカプタンを使用することができる。
【0077】
もう一つの工程で、例えばアルコール分解又はアミノ分解で、枝とも称される側鎖を生じさせることができる。この場合に、前記のマクロアルコール及び/又はマクロアミンを使用することができる。
【0078】
差し当たり形成された幹ポリマーとマクロアルコール及び/又はマクロアミンとの反応は、本質的に前記のマクロアルコール及び/又はマクロアミンと低分子量化合物との反応に相当する。
【0079】
従って、マクロアルコール及び/又はマクロアミンは、例えば、幹ポリマー中に存在する無水マレイン酸−又はメタクリル酸−官能価への自体公知のグラフト反応によって、例えばエステル、アミド又はイミドにするp−トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸による触媒反応下で、本発明の櫛型ポリマーに変換することができる。低分子量アルコール及び/又はアミン、例えばn−ブタノール又はN−(3−アミノプロピル)−モルホリンの添加によって、このポリマー類似反応は、殊に無水マレイン酸−幹の場合には完全に反応される。
【0080】
幹中のグリシジル官能価の場合には、マクロアルコール及び/又はマクロアミンの付加を実施することができ、櫛型ポリマーが生じる。
【0081】
更に、マクロアルコール及び/又はマクロアミンは、櫛型ポリマーを生じるために、ポリマー類似アルコール分解又はアミノ分解によって、短鎖エステル官能価を含有する幹と反応させることができる。
【0082】
幹ポリマーと巨大分子量化合物との反応と並んで、低分子量モノマーの反応により得られた好適な官能化されたポリマーを他の低分子量モノマーと反応させて、櫛型モノマーを形成させることができる。この場合には、差し当たり製造された幹ポリマーが多重グラフト重合(multiplen Pfropfpolymerisation)の開始剤として作用する多官能価を有する。
【0083】
従って、ポリオレフィン−側枝を有する櫛型ポリマーをもたらすi−ブテンの多重カチオン重合を開始させることができる。このようなグラフト共重合のために、特定の構造を有する櫛型ポリマーを得るための前記のATRP−及び/又はRAFT−法も好適である。
【0084】
本発明の櫛型ポリマーは、本発明の特別な1実施態様によれば、小割合のオレフィン系二重結合を有する。櫛型ポリマー1g当たり0.2g以下、特別好ましくは櫛型ポリマー1g当たり0.1g以下のヨウ素価が有利である。この割合は、DIN53241に従い、分散媒油(Traegeroel)及び残留低分子量モノマーを真空中180℃で24時間除去の後に測定することができる。
【0085】
本発明の特別な1実施態様によれば、櫛型ポリマーは有利に、スチレンに由来する繰り返し単位及びn−ブチルメタクリレートに由来する繰り返し単位を有する。
【0086】
スチレン−繰り返し単位とn−ブチルメタクリレート−繰り返し単位との質量比は、90:10〜10:90、特に好ましくは80:20〜20:80の範囲にあるのが有利である。
【0087】
本発明のもう一つの有利な実施態様によれば、この櫛型ポリマーは、スチレンに由来する繰り返し単位及びn−ブチルアクリレートに由来する繰り返し単位を有するのが有利である。スチレン−繰り返し単位とn−ブチルアクリレート−繰り返し単位との質量比は、90:10〜10:90、特に好ましくは80:20〜20:80の範囲にあるのが有利である。
【0088】
本発明のもう一つの有利な観点によれば、この櫛型ポリマーは、メチルメタクリレートに由来する繰り返し単位及びn−ブチルメタクリレートに由来する繰り返し単位を有するのが有利である。メチルメタクリレート−繰り返し単位とn−ブチルメタクリレート−繰り返し単位との質量比は、50:50〜0:100、特に好ましくは30:70〜0:100の範囲内にあるのが有利である。
【0089】
有利に本発明の櫛型ポリマーは、潤滑油組成物中で使用することができる。潤滑油組成物は、少なくとも1種の潤滑油を含有する。
【0090】
潤滑油には、殊に鉱油、合成油及び天然油がこれに属する。
【0091】
鉱油は自体公知であり、市場で得られる。これらは一般に石油又は原油から蒸留及び/又は精留及び場合によっては更なる精製−及び後処理法によって得られ、この際、鉱油の概念には、殊に原油又は石油の高沸点分がこれに該当する。一般に、鉱油の沸点は5000Pa.で200℃より高く、有利には300℃より高い。頁岩油の低温乾留、石炭のコークス化、褐炭の空気遮断下での蒸留並びに石炭又は褐炭の水素化による製造も同様に可能である。僅かな割合の鉱油は、植物(ジョジョバ、菜種)又は動物(例えば牛脚油)起源の原料からからも製造される。相応して、鉱油は、起源に応じて種々の割合の芳香族、環状、分枝及び線状の炭化水素を有する。
【0092】
一般に、原油又は鉱油中のパラフィンベース、ナフテン系及び芳香族分は区別され、この際、概念バラフィンベース分は長鎖又は著しく分枝されたイソ−アルカンに関し、ナフテン系分はシクロアルカンに関する。更に鉱油は、起源及び後処理に応じて、種々の割合のn−アルカン、低い分枝度を有するイソ−アルカン、いわゆるモノメチル分枝したパラフィン及びヘテロ原子、殊にO、N及び/又はS(極性はこれらに依存する)を有する化合物を含有している。しかしながら、個々のアルカン分子は、長鎖の分枝基をもシクロアルカン基及び芳香族分をも有することがあるので、その指定(Zuordnung)は困難である。本発明の目的のために、この指定はDIN51378に従って行うことができる。極性分は、ASTM D2007によっても測定することができる。
【0093】
好ましい鉱油中のn−アルカン分は3質量%よりも少なく、O、N及び/又はS−含有化合物分は6質量%よりも少ない。芳香族分及びモノメチル分枝したパラフィン分は、一般にそれぞれ0〜40質量%の範囲内にある。重要な1実施態様によれば、鉱油には、主として、一般に13を上回る、好ましくは18を上回る、全く特別好ましくは20を上回る炭素原子数を有するナフテン系及びパラフィンベースのアルカンが包含される。これらの化合物の割合は、それにより限定されるべきではないが、一般に≧60質量%、有利には≧80質量%である。好ましい鉱油は、芳香族分0.5〜30質量%、ナフテン分15〜40質量%、パラフィンベース分35〜80質量%、n−アルカン3質量%まで及び極性化合物0.05〜5質量%(それぞれ鉱油の全質量に対して)を含有する。
【0094】
慣用の方法、例えば尿素分離及びシリカゲルでの液体クロマトグラフィを用いて行われた、特別好ましい鉱油の分析結果は、例えば次の成分を示す(ここで、百分率の数値はそれぞれ、使用されている鉱油の全質量に対する):
C−原子数約18〜31を有するn−アルカン: 0.7〜1.0%、
C−原子数約18〜31を有する僅かに分枝したアルカン: 1.0〜8.0%、
C−原子数約14〜32を有する芳香族化合物: 0.4〜10.7%、
C−原子数約20〜32を有するイソ−及びシクローアルカン:60.7〜82.4%、
極性化合物: 0.1〜0.8%、
残分: 6.9〜19.4%。
【0095】
鉱油の分析並びに偏った組成を有する鉱油の計数に関する重要な情報が、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition on CD-ROM,1997,中の"lubricants and related products"に存在する。
【0096】
合成油には、特に有機エステル、例えばジエステル及びポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成炭化水素、殊にポリオレフィン(その内、ポリアルファオレフィン(PAO)が有利である)、シリコーン油及びペルフルオロアルキルエーテルが包含される。これらは大抵、鉱油よりもいくらか高価であるが、その性能に関して利点を有する。
【0097】
天然油は、動物又は植物油であり、例えば牛脚油又はジョジョバ油である。
【0098】
これらの潤滑油は、混合物としても使用でき、多様に市場で得られている。
【0099】
潤滑油組成物中の櫛型ポリマーの濃度は、この組成物の全質量に対して有利に0.1〜40質量%の範囲、特に好ましくは1〜20質量%の範囲である。
【0100】
前記の成分と並んで、潤滑油組成物は、他の添加剤及び添加物を含有することができる。
【0101】
これら添加剤には、特に酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤、抗−摩耗成分、染料、色安定剤、界面活性剤、凝固点低下剤及び/又はDI−添加剤がこれに属する。
【0102】
更に、これら添加剤には、粘度指数改良剤、凝固点改良剤、分散助剤及び/又は摩擦変更剤(摩擦改良剤)が包含され、これらは、特に好ましくはアルコール基中に炭素原子数1〜30を有する線状ポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとすることができる。これら線状のポリアルキル(メタ)アクリレートは、殊に先に述べた技術水準に記載されており、その際、これらポリマーは分散モノマーを有することができる。
【0103】
好ましい潤滑油組成物は、ASTM D445に従い40℃で測定された、10〜120mm/sの範囲、特に好ましくは22〜100mm/sの範囲の粘度を有する。
【0104】
本発明の特別な1実施態様によれば、好ましい潤滑油組成物は、ASTM D2270により測定された、100〜400の範囲、特に好ましくは150〜350の範囲、全く特別好ましくは200〜300の範囲の粘度指数を有する。
【0105】
以下に本発明を実施例につき詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0106】
A)マクロモノマーの製造
種々のマクロモノマーを製造したか又は市場で入手した。第I表中には、マクロモノマーの製造のために使用したマクロアルコール及び/又はマクロアミンの特性がまとめて記載されている。
【0107】
マクロアミン1は、Kerocom(R)PIBA03(これはBASF AGから市場で得た)中のポリイソブチレンをベースとするマクロアミンである。
【0108】
マクロアルコール2は、EP0277345により得られた、ポリイソブチレンをベースとするマクロアルコールである。
【0109】
マクロアルコール3及び4は、WO2004/067583により得られた、ポリイソブチレンをベースとするマクロアルコールである。
【0110】
マクロアルコール5は、GB2270317により得られた、水素化ポリブタジエンをベースとするマクロアルコールである。
【0111】
は、同じ化学品のポリオレフィン標準に対するGPCによって又は浸透圧法によって、蒸気圧又は膜浸透圧と同様に測定することができる、数平均分子量を表す。動粘度はνで記載され、動力学的粘度はηで記載される(ASTM D445)。(水素化)ポリブタジエンに関すると同様にH−NMR−分光法により測定可能であるような、1,2−繰り返し単位及び1,4−繰り返し単位からの合計に対する1,2−繰り返し単位(ビニル−繰り返し単位)の割合は、fvinylとして示される。fvinylと関連しているDSCによる融点は、Tmとして示される。
【0112】
【表1】

【0113】
略字「n.a.」は、融点が測定できなかったことを意味している。
【0114】
マクロアミンに由来するマクロモノマーは、MMAのアミノ分解によって製造される。このために、Kerocom(R)PIBA03(脂肪族炭化水素35%を含有)1850gを、MMA1200g中に、撹拌下に60℃で溶かす。この溶液に、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.6g及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−オキシル−ラジカル0.12gを加えた。安定化性空気導通下にMMA−還流まで加熱(約100℃)の後に、共沸乾燥のためにMMA約30gを留去した。冷却後にSn(Oct)O 24gを添加し、加温してMMA−還流させる。この温度で3時間反応させる。冷却後に水1000gを加えて触媒を沈殿させ、かつ4時間撹拌する。2相混合物を分離ロート中で分離させ、下の水相を捨てる。上の有機相を、シリカゲル(Celatom(R)FW−80)10gと共に撹拌し、加圧フィルター(Seitz K800)を通して濾過する。過剰のMMA及び脂肪族炭化水素を、真空回転蒸留装置で除去し、生成物からガス抜きする。マクロモノマー1300gが得られた。
【0115】
マクロアルコールに由来するマクロモノマーを、MMAのエステル交換により製造する。このために、その都度マクロアルコール約350gをMMA350g中に、60℃で12時間撹拌下に溶解させる。この溶液に、ヒドロキノンモノメチルエーテル200mg及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−オキシル−ラジカル20mgを加える。安定化性空気導通下にMMA−還流まで加熱(約100℃)の後に、共沸乾燥のためにMMA約30gを留去した。冷却後にLiOMe2.7gを加え、メタノール/MMA−共沸物の還流まで加温(約64℃)する。メタノール/MMA−共沸物を、約100℃の一定の塔頂温度が生じるまで絶えず留去する。この温度でなお1時間、後反応させる。冷却後に不溶の触媒残分を、熱時加圧濾過(Seitz T1000深フィルター)によって分離除去する。引き続き、生成物を真空回転蒸発器でガス抜きする。マクロモノマー350gが得られた。
【0116】
高分子量のマクロアルコールの場合には、KPE100N−オイルの添加は、マクロモノマー合成の開始を助ける作用することができる。下記の櫛型ポリマー合成に引き込まれたKPE100N−オイルの含分を相応して考慮すべきである。
【0117】
Kraton Liquid(R)L−1253は、メタクリレート−官能化された水素化ポリブタジエンであり、これは、OH−官能化された水素化ポリブタジエンKraton Liquid(R)L−1203から製造され、Kraton Polymers GmbH(Eschborn, Deutschland)から市場で入手された。
【0118】
それぞれのマクロモノマーのマクロモノマー官能価fMMは、櫛型ポリマーのGPC−曲線自体から得られた。櫛型ポリマーの質量平均分子量M並びに多分散性指数PDIの測定のためのGPC−法を以下に記載する。この測定は、テトラヒドロフラン中、35℃の温度で、≧25標準(Polymer Standards Service bzw.Polymer Laboratories)のセットからのポリメチルメタクリレート−校正曲線(そのMpeakは、対数的に5・10〜2・10g/モルの範囲に渡り一様に分配されて存在した)に対して行われた。6カラムの組み合わせ(Polymer Standards Service SDV 100Å/2×SDV LXL/2×SDV100Å/Shodex KF−800D)を使用した。信号記録のために、RI−デテクタ(Agilent 1100 シリーズ)を使用した。次いで、マクロモノマー官能価fMMを、GPCトレース下でのマクロモノマーの残留積分面積とマクロモノマー及び特有の櫛型ポリマーの下での総積分面積との間の比fからの簡単な計算により、fMM=1−f/WMMとして測定した。ここで、WMMは、全てのモノマーに対するマクロモノマーの秤取フラクシヨン質量である。マクロモノマー官能価fMMの測定値が、第2表中に集録されている。ここでは、全ての繰り返し単位に同じ応答計数が仮定された。櫛型ポリマー合成の重合を、低分子量幹−モノマー(nBMA、Sty、nBA、MMA又はDiBF)の変換率>99%(HPLC)の完全変換率に達するまで実施した。
【0119】
得られた化合物の特性が、第2表中に示されている。
【0120】
【表2】

【0121】
B)櫛型ポリマーの合成
例1〜7及び比較例1〜4
四首フラスコ及びKPG−サーベル攪拌機を備えた装置中に、低分子量モノマー及びマクロモノマーからの150g−混合物(その組成は第3表中に記載されている)並びにShell Risella 907オイル65g及びKPE100N−オイル35gを装入した。窒素気下に120℃まで加熱の後に、t−ブチルペルベンゾエート0.9gを添加し、この温度を保持する。最初の開始剤添加の3時間及び6時間後に、それぞれt−ブチルペルベンゾエート0.3gを再度添加し、120℃で一晩撹拌する。次の日に、KPE100オイル125gで希釈する。鉱油中の櫛型ポリマーの40%溶液375gが得られた。
【0122】
例8〜11
四首フラスコ及びKPG−サーベル攪拌機を備えた装置中に、低分子量モノマー及びマクロモノマーからの150g−混合物(その組成は第3表中に記載されている)並びにShell Risella 907オイル65g及びKPE100N−オイル35gを装入した。窒素気下に90℃まで加熱の後に、t−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート0.3gを添加し、この温度を保持する。最初の開始剤添加の3時間及び6時間後に、それぞれt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート0.3gを再度添加し、90℃で一晩撹拌する。次の日に、KPE100オイル125gで希釈する。鉱油中の櫛型ポリマーの40%溶液375gが得られた。
【0123】
例12及び13
四首フラスコ及びKPG−サーベル攪拌機を備えた装置中に、低分子量モノマー及びマクロモノマーからの150g−混合物(その組成は第3表中に記載されている)並びにトルエン100gを装入した。窒素気下に90℃まで加熱の後に、t−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート0.3gを添加し、この温度を保持する。最初の開始剤添加の2時間、4時間、6時間及び8時間後に、それぞれt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート0.3gを再度添加し、90℃で一晩撹拌する。次の日に、KPE100N−オイル225gで希釈し、真空回転蒸発器でのガス抜きによりトルエンを除去する。鉱油中の櫛型ポリマーの40%溶液375gが得られた。
【0124】
マクロモノマーと低分子量モノマーとに由来する総体−組成物150g並びにマクロモノマー官能価fMMの考慮の下に、各々の櫛型ポリマーに関して、質量割合の正味−組成物並びに更なるモノマー分子量の考慮下に、モル分枝度fbranchを測定した。得られた値が、第3表中に示されている。更に、前記方法による、櫛型ポリマーの全てのセグメントにとって良好な溶剤であるテトラヒドロフラン中でのGPCによる分子量及びPDIsが記載されている。
【0125】
更に、分散媒油(Traegeroel)及び残留低分子量モノマーを真空中180℃で24時間留去の後に、この櫛型ポリマーをDSCにより分析した。このために、10mgの試料量を、穿孔DSC−パン中で、−80℃〜+130℃の範囲、10K/min(Pyris 1、Perkin-Emer)で測定した。それぞれ、第2の熱曲線から、幹のガラス転移温度TGが測定された(第3表)。
【0126】
【表3】

【0127】
第3表中で省略文字は次のものを表す:
Sty: スチレン
MMA: メチルメタクリレート
nBMA: n−ブチルメタクリレート
nBA: n−ブチルアクリレート
DiBF: ジイソブチルフマレート
C12-15MA:アルコール基中に炭素原子数12〜15を有するアルキルメタクリレート
−混合物
C12/14/16/18MA:アルコール基中に炭素原子数12、14、16及び18を有するア
ルキルメタクリレート−混合物。
【0128】
【表4】

【0129】
櫛型ポリマーの評価
得られた櫛型ポリマー−添加剤の特性付けは、ASTM D2270によるVI−測定によって、及び150N基油(KV40=31.68mm/s、KV100=5.42mm/s、VI=105)中の100℃で調節された動粘度KV100=14.0mm/s(ASTM D445)の溶液のASTM D2603 Ref.B(12.5分超音波)又はDIN 51381(30サイクル、ボッシュポンプ)によるPSSI−測定によって行なわれる。
【0130】
本発明の櫛型ポリマーは、技術水準でEP069969により製造されたポリマーよりも本質的に良好なVI、PSSI及び固体含有率の関係を有することが明らかである。得られた評価の結果が、第4表中に示されている。
【0131】
【表5】

【0132】
更に、本発明による櫛型ポリマーを、線状の極めて剪断安定なPAMA(比較例5)と比較した。この場合に、ポリマーの固体含有率を、ポリアルファオレフィンとヒドロクラックオイルとからのVII−不含のD/I−パケット含有API群III基油(KV100=5.15mm/s、KV40=25.30mm/s、VI=137、ASTM D97による凝固点−45℃)中のKV100=13.15mm/sの溶液粘度に合わせて調節した。ここで、ポリマー含有率でも、VIでも比較可能な利点又はDIN51350パート6(20時間又は192時間、テーパころ軸受け)による全く良好なPSSIさえも明らかである。DIN51398による−40℃での動力学的低温粘度又はASTM D97による凝固点でも、この櫛型ポリマーの極めて有利な値が明らかである。加えて、例12に対する例6の比較から、高割合の1,2−繰り返し単位のOCP−マクロモノマーをベースとする櫛型ポリマーが、低温特性において明白に良好であることが明らかである。前記の検査で得られた結果が第5表中に示されている。
【0133】
【表6】

【0134】
更に、API群I 100N/600N−オイルをベースとするISO46/VI160圧媒油処方物中で、櫛型ポリマーを、VIIとして使用し、DIN51350(パート6、20時間、テーパころ軸受け)によるPSSIで、線状PAMAと比較した(比較例6)。同じ又は僅かに改良されたPSSIで、必要固体含有率を、33%を下回るまで極めて著しく減少することが可能であることが明らかである。圧媒油処方物の組成及びこの検査で得られた結果が第6表中に示されている。
【0135】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖中にポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来する繰り返し単位とを包含する櫛型ポリマーであって、モル分枝度は0.1〜10モル%の範囲内にあり、この櫛型ポリマーは、繰り返し単位の質量に対して合計して少なくとも80質量%の、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来する繰り返し単位とを包含していることを特徴とする、櫛型ポリマー。
【請求項2】
主鎖は−30〜100℃の範囲のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1に記載の櫛型ポリマー。
【請求項3】
ポリオレフィンをベースとするマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、700〜10000g/モルの範囲の数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の櫛型ポリマー。
【請求項4】
櫛型ポリマーは、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来し、かつ炭素原子数8〜17を有するスチレンモノマー、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に炭素原子数1〜11を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有するビニルエーテル、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に炭素原子数1〜10を有する(ジ)アルキルマレエート並びにこれらモノマーの混合物から成る群から選択される低分子量モノマーに由来する繰り返し単位少なくとも90質量%を包含していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項5】
モル分枝度は、0.8%〜6.0%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項6】
モル分枝度は、0.8%〜3.4%の範囲内にあることを特徴とする、請求項5に記載の櫛型ポリマー。
【請求項7】
ヨウ素価は、櫛型ポリマー1g当たり0.2gに等しいかまたはそれを下回っていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項8】
ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、C〜C10−アルケン及び/又はC〜C10−アルカジエンから成る群から選択されるモノマーに由来する基を包含していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項9】
ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の質量に対して少なくとも80質量%の、C〜C10−アルケン及び/又はC〜C10−アルカジエンから成る群から選択されるモノマーに由来する基を包含していることを特徴とする、請求項8に記載の櫛型ポリマー。
【請求項10】
ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、スチレン、(メタ)アクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、フマレート及びマレエートから成る群から選択される非オレフィン系モノマーに由来する基を包含していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項11】
ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位は、繰り返し単位の質量に対して最大で20質量%の、スチレン、(メタ)アクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、フマレート及びマレエートから成る群から選択される非オレフィン系モノマーに由来する基を包含していることを特徴とする、請求項10に記載の櫛型ポリマー。
【請求項12】
ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の融点は、−10℃に等しいか又はそれを下回っていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項13】
ポリオレフィン−ベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位の融点は測定できないことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項14】
櫛型ポリマーは、スチレンに由来する繰り返し単位及びn−ブチルメタクリレートに由来する繰り返し単位を有していることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項15】
櫛型ポリマーは、スチレンに由来する繰り返し単位及びn−ブチルアクリレートに由来する繰り返し単位を有していることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項16】
櫛型ポリマーは、メチルメタクリレートに由来する繰り返し単位及びn−ブチルメタクリレートに由来する繰り返し単位を有していることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項17】
櫛型ポリマーは、500000〜500000g/モルの範囲の質量平均分子量を有していることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマー。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマーを製造する方法であって、マクロモノマー及び低分子量モノマーを共重合させることを特徴とする、櫛型ポリマーを製造する方法。
【請求項19】
先ず、低分子量モノマーから形成される官能化された主鎖ポリマーを製造し、引き続きこの製造された主鎖ポリマーをポリマー類似反応によって反応させることを特徴とする、請求項1から17でのいずれか1項に記載の櫛型ポリマーを製造する方法。
【請求項20】
ポリマー類似反応は、マクロアルコールによるアルコール分解及び/又はマクロアミンによるアミノ分解であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
主鎖ポリマーは、酸基、アミド基、エステル基及び/又は無水酸基を包含していることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
方法を非連続的に実施することを特徴とする、請求項18から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
反応を溶解補助分散媒の存在下に実施することを特徴とする、請求項18から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
分散媒を、ガス油及び/又は芳香族炭化水素の群から選択することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
反応を、調整剤無しで実施することを特徴とする、請求項18から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1から17までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマーを含有している、潤滑油処方物。
【請求項27】
潤滑油処方物は、API 群I、II、III、IV及び/又は群Vの基油を含有していることを特徴とする、請求項26に記載の潤滑油処方物。
【請求項28】
粘度指数は、少なくとも200であることを特徴とする、請求項26又は27に記載の潤滑油処方物。
【請求項29】
ASTM D2603 Ref.BによるPSSIは、45に等しいか又はそれを下回っていることを特徴とする、請求項26から28までのいずれか1項に記載の潤滑油処方物。
【請求項30】
潤滑油処方物は、請求項1から17までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマーではない付加的な添加剤少なくとも1種を含有していることを特徴とする、請求項26から29までのいずれか1項に記載の潤滑油処方物。
【請求項31】
添加剤は、粘度指数改良剤、凝固点改良剤、分散助剤及び/又は摩擦変更剤(摩擦改良剤)であることを特徴とする、請求項30に記載の潤滑油処方物。
【請求項32】
添加剤は、アルコール基中に炭素原子数1〜30を有する線状ポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとしていることを特徴とする、請求項30又は31に記載の潤滑油処方物。
【請求項33】
粘度指数改良剤、凝固点改良剤、分散助剤及び/又は摩擦変更剤としての、請求項1から17までのいずれか1項に記載の櫛型ポリマーの使用。

【公表番号】特表2008−546894(P2008−546894A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518648(P2008−518648)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003213
【国際公開番号】WO2007/003238
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(399020957)エボニック ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (38)
【氏名又は名称原語表記】Evonik RohMax Additives GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】