説明

治療用キノリンおよびナフタレン誘導体

下記の式(I)で示される安定な化合物を開示する:



(I)
また、該化合物に関連する処置方法、組成物および医薬も開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
スフィンゴシンは、下記一般式で示され、式中、Yが水素である化学構造を有する化合物である。スフィンゴシンを構成成分とする様々なスフィンゴ脂質が生体(神経系の細胞の細胞膜表面上を包含する)に広く分布することが知られている。
【化1】

【0002】
スフィンゴ脂質は、生体内で重要な役割を果たす脂質の一つである。リピドーシスと称される疾患は、特定のスフィンゴ脂質が体内に蓄積することによって起こる。細胞膜上に存在するスフィンゴ脂質は、細胞増殖を調節し、細胞の成長および分化に関与し、神経に作用し、細胞の感染および悪性に関与する、等の作用を示す。スフィンゴ脂質の生理学的機能の多くは今後の解明が待たれる。最近、スフィンゴシンの誘導体であるセラミドが細胞シグナル伝達メカニズムにおいて重要な役割を果たす可能性が示され、アポトーシスおよび細胞周期に対するその作用に関する研究報告がなされている。
【0003】
スフィンゴシン−1−リン酸は、(動物細胞中で)デノボ合成またはスフィンゴミエリンサイクルの一部として合成されるセラミドから誘導される、重要な細胞代謝産物である。これは、昆虫、酵母および植物においても見出されている。
【0004】
酵素セラミダーゼはセラミドに作用してスフィンゴシンを分離させ、スフィンゴシンはサイトゾルおよび小胞体内のユビキタス酵素スフィンゴシンキナーゼによってリン酸化されてスフィンゴシン−1−リン酸となる。逆の反応もスフィンゴシンホスファターゼの作用によって起こり得、これら酵素が共同で該代謝産物の細胞内濃度(この濃度は常に低い)をコントロールするよう作用する。血漿中ではその濃度は0.2〜0.9μMに達し得、該代謝産物はリポタンパク質、特にHDLと関連して見出される。また、スフィンゴシン−1−リン酸生成はスフィンゴイド塩基の異化における必須段階であることに注意すべきである。
【0005】
スフィンゴシン−1−リン酸はその前駆体と同様、おそらく独特に細胞内および細胞間の両方で作用する強力なメッセンジャー分子であるが、セラミドおよびスフィンゴシンとは機能が非常に異なる。これらの様々なスフィンゴ脂質代謝産物間のバランスが、健康にとって重要でありうる。例えば、細胞内でスフィンゴシン−1−リン酸は細胞分裂(有糸分裂)を促進する一方で、細胞死(アポトーシス)を抑制する。細胞内で、スフィンゴシン−1−リン酸はまた、様々な細胞外刺激に応答してカルシウム代謝および細胞増殖を調節するよう機能する。現在の見解では、細胞内でのスフィンゴシン−1−リン酸およびセラミドおよび/またはスフィンゴシンのレベルのバランスが、細胞の生存能力にとって重要であることが示唆されているようである。構造的に幾分類似するリゾリン脂質、特にリゾホスファチジン酸と同様に、スフィンゴシン−1−リン酸はその細胞外作用の多くを、細胞表面上の5つの特異的Gタンパク質結合型受容体との相互作用を介してなす。これらは、新しい血管の成長、血管成熟、心臓発育および免疫、並びに方向付けられた細胞運動にとって重要である。
【0006】
スフィンゴシン−1−リン酸は、その異化に与る酵素を持たないヒト血小板中に比較的高濃度で蓄積し、生理学的刺激、例えば成長因子、サイトカイン並びに受容体アゴニストおよび抗原による活性化により血流中に放出される。スフィンゴシン−1−リン酸は血小板凝集および血栓症においても重要な役割を担い得、心血管障害を悪化させうる。一方、高密度リポタンパク質(HDL)中の比較的高濃度の該代謝産物は、アテローム発生にとって有益な関連性を示しうる。例えば、最近示唆されているところでは、スフィンゴシン−1−リン酸は他のリゾ脂質、例えばスフィンゴシルホスホリルコリンおよびリゾスルファチドと共に、血管内皮による強力な抗アテローム発生シグナリング分子一酸化窒素の生成を刺激することによって、HDLの有益な臨床効果に関与する。さらに、スフィンゴシン−1−リン酸はリゾホスファチジン酸と同様、ある種の癌のマーカーであり、細胞分化または増殖におけるその役割が癌の発生に影響を及ぼしうるという証拠が挙げられている。このようなことは医学研究者が非常に興味を持っているところの現在のトピックスであり、スフィンゴシン−1−リン酸代謝への治療的介入の可能性が活発に探究されているところである。
【0007】
真菌および植物はスフィンゴ脂質を持ち、それら生体に含まれる主要なスフィンゴシンは下記式で示される。これら脂質が真菌および植物の細胞増殖に重要な役割を果たすことが知られているが、その詳細は今後の解明が待たれる。
【化2】

【0008】
スフィンゴ脂質の誘導体およびそれらの関連化合物が、代謝経路の阻害または刺激によって様々な生物学的活性を示すことが最近わかった。そのような化合物は、タンパク質キナーゼC阻害剤、アポトーシス誘導剤、免疫抑制化合物、抗真菌化合物などを包含する。そのような生物学的活性を有する物質は、種々の疾患に有用な化合物であることが期待される。
【発明の概要】
【0009】
下記の構造を有する安定な化合物を開示する:
【化3】

[式中、
nは、0、1または2であり;
mは、1または2であり;
oは、0〜5であり;
R1およびR2の一方は、式C1-9H0-23N0-4O0-4S0-4F0-6Cl0-4Br0-4I0-4を持ち、下記から選択され:環に5個または6個の原子を有する置換または非置換複素環;ならびに、Cy、-S-Cy、-NH-Cyおよび-O-Cy(ここで、Cyは、置換もしくは非置換炭素環、または置換もしくは非置換複素環である);
R1およびR2の一方は、水素、または式C0-12H0-26N0-2O0-4S0-1P0-1F0-6Cl0-1Br0-1I0-1を持つ置換基であり;
各R3、R4およびR5は、独立に、式C0-12H0-26N0-2O0-4S0-1P0-1F0-6Cl0-1Br0-1I0-1を持つ置換基であり;
Yは、N、C-H、またはC-R4であり;
Xは、O、S、NH、1〜4個の炭素原子を有するN-アルキル、または結合であり;
Zは、式C1-8H4-17を持つヒドロカルビルである]。
【0010】
これらの化合物は、緑内障、ドライアイ、血管新生、心臓血管系の症状および疾患、創傷および痛みのような疾患または症状の処置に有用である。化合物は、投与形態または薬剤に組み込まれ、それを必要とする哺乳動物、例えばヒトに投与される。種々のタイプの好適な投与形態および薬剤が、当分野において周知であり、本明細書に開示されている化合物の送達のために容易に適合させることができる。
【0011】
本開示において、「処置する」、「処置すること」または「処置」は、疾患または他の望ましくない症状の、診断、治癒、緩和、治療または予防における、化合物、組成物、処置活性剤または薬物の使用を意味する。
【0012】
安定とは、化合物が、室温で常圧下に少なくとも12時間ボトル中に保存されるように充分に安定であるか、または本明細書に記載する任意の目的に有用であるのに充分に安定であることを意味する。
【0013】
他に指定しない限り、化合物という用語は、記載されている構造または化学名の化学種の、医薬的に許容される塩、プロドラッグ、互変異性体、異なる固体形態、非共有結合複合体、およびそれらの組合せを包含するものと広く解釈すべきである。
【0014】
医薬的に許容される塩は、動物またはヒトへの投与に好適な、親化合物の任意の塩である。医薬的に許容される塩は、酸、別の塩、または酸もしくは塩に変換されるプロドラッグの投与の結果として、生体内で形成され得る任意の塩も意味する。塩は、1つ以上の対応する対イオンを伴う、当該化合物の1つ以上のイオン型、例えば、共役酸または塩基を含む。塩は、1つ以上の脱プロトン化酸性基(例えば、カルボン酸)、1つ以上のプロトン化塩基性基(例えば、アミン)、またはそれらの両方(例えば、両性イオン)から生成し得るかまたはそれを組み込み得る。
【0015】
プロドラッグは、投与後に処置活性化合物に変換される化合物である。例えば、変換は、エステル基または他の何らかの生物学的不安定基の加水分解によって起こり得る。プロドラッグの調製は、当分野において周知である。例えば、「Prodrugs and Drug Delivery Systems」(Richard B. Silverman, Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action、第2版、Elsevier Academic Press:Amsterdam, 2004の p.496−557の章)は、これについてさらに詳しく記載している。
【0016】
互変異性体は、相互に急速平衡で存在する異性体である。例えば、互変異性体には、プロトン、水素原子または水素化物イオンの移動が関係し得る。
【0017】
立体化学が明確に示されない限り、構造は、純粋な、または任意の可能な混合物における、あらゆる可能な立体異性体を包含するものとする。
【0018】
異なる固体形態は、本明細書に記載されている手順を実施して得られるであろうものと異なる固体形態である。例えば、異なる固体形態は、多形、種々の非晶質固体形態、ガラス等であってよい。
【0019】
非共有結合複合体は、化合物と1つ以上のさらなる化学種とで形成され得る複合体であって、その化合物とさらなる化学種との共有結合相互作用を伴わない複合体である。それらは、化合物とさらなる化学種との間に特定比率を有してもよく有さなくてもよい。その例は、溶媒和物、水和物、電荷移動錯体等を包含し得る。
【0020】
複素環は、N、OおよびSから選択される少なくとも1個の原子を環に有する置換または非置換環である。複素環は、芳香族または非芳香族であってよい。芳香族複素環はヘテロアリールとも称される。
【0021】
炭素環は、環の全ての原子が炭素である置換または非置換環である。その例は、フェニル、シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等である。
【0022】
置換された環または部分は、水素が置換基で置き替えられていることを意味する。例えば、置換炭素環または複素環は、水素に代わって環に直接結合した置換基を有する。
【0023】
R1、R2、R3、R4およびR5は全て置換基である。置換基の例は、その部分または置換基に関して本明細書に規定する制限を受ける下記の置換基である:
A. ヒドロカルビル:これは、炭素および水素だけから成る部分を意味し、下記の基を包含するがそれらに限定されない:
1. アルキル、例えば、
・ 直鎖アルキル、即ち、炭素および水素から成り、二重結合を有さない部分、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等;
・ 分岐鎖アルキル、例えば、イソプロピル、t-ブチルおよび他の分岐鎖ブチル異性体、分岐鎖ペンチル異性体等;
・ シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等;
・ 直鎖、分岐鎖および/またはシクロアルキルの組合せ;
2. アルケニル、例えば、1個以上の二重結合を有するヒドロカルビルであって、直鎖、分岐鎖またはシクロアルケニルを包含する;
3. アルキニル、例えば、1個以上の三重結合を有するヒドロカルビルであって、直鎖、分岐鎖またはシクロアルキニルを包含する;
4. アルキル、アルケニルおよび/またはアルキニルの組合せ;
【0024】
B. アルキル-CN、例えば、-CH2-CN、-(CH2)2-CN、-(CH2)3-CN等;
C. ヒドロキシ、-OH;
D. ヒドロキシアルキル、即ちアルキル-OH、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル等;
E. エーテル置換基であって、-O-アルキル、アルキル-O-アルキル等を包含する;
F. チオエーテル置換基であって、-S-アルキル、アルキル-S-アルキル等を包含する;
【0025】
G. アミン置換基であって、-NH2、-NH-アルキル、-N-アルキル1アルキル2(即ち、アルキル1およびアルキル2は同じかまたは異なり、両方ともNに結合している)、アルキル-NH2、アルキル-NH-アルキル、アルキル-N-アルキル1アルキル2等を包含する;
H. アミノアルキルであって、アルキル-アミンを意味し、例えば、アミノメチル(-CH2-アミン)、アミノエチル等;
I. エステル置換基であって、-CO2-アルキル、-CO2-フェニル等を包含する;
J. 他のカルボニル置換基であって、アルデヒド、ケトンを包含し、例えば、アセチル、プロピオニルおよびベンゾイル置換基を包含するアシルが考えられる;
【0026】
K. フルオロカーボンまたはヒドロフルオロカーボン、例えば、-CF3、-CH2CF3等;
L. 他の窒素含有置換基、例えば、-CNおよび-NO2
M. 他の硫黄含有置換基、例えば、スルフィド、スルホニルまたはスルホキシド;
N. アリール;
O. 規定される制限を受ける前記の組合せも可能である;
P. あるいは、置換基は-F、-Cl、-Brまたは-Iであってもよい。
【0027】
1つの実施形態において、Cl、BrまたはIが芳香環の炭素に直接結合している場合を除いて、R1、R2、R3、R4およびR5は、Cl、BrおよびIを有さない部分である。言い換えれば、R1、R2、R3、R4またはR5が、Cl、BrまたはIを含有する場合、該部分は、-Cl、-Brまたは-Iから成るか、または環の炭素原子に直接結合した-Cl、-Brまたは-Iを有する芳香環または芳香族複素環である。
【0028】
アリールは、任意の置換もしくは非置換芳香環または芳香族複素環または環系である。アリールのいくつかの例は、下記の基である:置換または非置換ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、フラン、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イソオキサゾール、ナフタレン、キノリン、テトラリン、クロマン、チオクロマン、テトラヒドロキノリン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、クロメン、チオクロメン、ジヒドロキノリン、インダン、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、クマリン、クマリノン等。
【0029】
ヒドロカルビル置換メチレンは
【化4】

であり、ここで、各R10は独立にHまたはヒドロカルビルである。
【0030】
式C1-9H0-23N0-4O0-4S0-4F0-6Cl0-4Br0-4I0-4は、この式で示される部分が下記の原子から構成されることを意味する:
・ 1〜9個の炭素原子;
・ 0〜23個の水素原子;
・ 0〜4個の窒素原子;
・ 0〜4個の酸素原子;
・ 0〜4個の硫黄原子;
・ 0〜6個のフッ素原子;
・ 0〜4個の塩素原子;
・ 0〜4個の臭素原子;および
・ 0〜4個のヨウ素原子。
【0031】
同様に、式C0-12H0-26N0-2O0-4S0-1P0-1F0-6Cl0-1Br0-1I0-1は、この式で示される部分が下記の原子から構成されることを意味する:
・ 0〜12個の炭素原子;
・ 0〜26個の水素原子;
・ 0または2個の窒素原子;
・ 0〜4個の酸素原子;
・ 0または1個の硫黄原子;
・ 0または1個の燐原子;
・ 0〜6個のフッ素原子;
・ 0または1個の塩素原子;
・ 0または1個の臭素原子;および
・ 0または1個のヨウ素原子。
【0032】
同様に、式C1-8H4-17は、この式で示される部分が下記の原子から成ることを意味する:
・ 1〜8個の炭素原子;および
・ 4〜17個の水素原子。
【0033】
化学種がイオンである場合、式の他の原子に共有結合している原子だけがカウントされる。例えば、化学種がナトリウム対イオンと会合しているカルボキシレートの場合、ナトリウムは式の一部としてカウントされないか、または化学種が塩化物対イオンと会合しているアンモニウムイオンである場合、塩化物は式の一部としてカウントされない。
【0034】
1つの実施形態において、nは0である。
別の実施形態において、nは1である。
別の実施形態において、nは2である。
【0035】
別の実施形態において、mは1である。
別の実施形態において、mは2である。
【0036】
別の実施形態において、oは0である。
別の実施形態において、oは1である。
別の実施形態において、oは2である。
別の実施形態において、oは3である。
別の実施形態において、oは4である。
別の実施形態において、oは5である。
【0037】
1つの実施形態において、R5は下記の基である:直鎖または分岐鎖アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルヒドロキシ(-アルキル-OH)、アルキルカルボニル(-C(O)-アルキル)、ホルミル、オキシカルボニル(-OC(O)-ヒドロカルビル)、カルボキシル、アルキルカルボキシレート(-CO2-アルキル)、アルキルアミド、アミノカルボニル(-NR2C(O)-ヒドロカルビル;ここでRはヒドロカルビルである)、アミノ、シアノ、ジアゾ、ニトロ、ホスフェート、チオ、スルホキシル(-S(O)-ヒドロカルビル)、またはスルホニル(-S(O)2-ヒドロカルビル)。
【0038】
別の実施形態において、各R5は、独立に、下記の基である:直鎖または分岐鎖アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルヒドロキシ(-アルキル-OH)、アルキルカルボニル(-C(O)-アルキル)、ホルミル、オキシカルボニル(-OC(O)-ヒドロカルビル)、カルボキシル、アルキルカルボキシレート(-CO2-アルキル)、アルキルアミド、アミノカルボニル(-NR2C(O)-ヒドロカルビル;ここでRはヒドロカルビルである)、アミノ、シアノ、ジアゾ、ニトロ、ホスフェート、チオ、スルホキシル(-S(O)-ヒドロカルビル)、またはスルホニル(-S(O)2-ヒドロカルビル)。
【0039】
別の実施形態において、R3は下記の基である:直鎖または分岐鎖アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルヒドロキシ、アルキルカルボニル、ホルミル、オキシカルボニル、カルボキシル、アルキルカルボキシレート、アルキルアミド、アミノカルボニル、アミノ、シアノ、ジアゾ、ニトロ、ホスフェート、チオ、スルホキシル、スルホニル、または下記から選択される基:
【化5】

【0040】
別の実施形態において、各R3は下記の基である:直鎖または分岐鎖アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルヒドロキシ、アルキルカルボニル、ホルミル、オキシカルボニル、カルボキシル、アルキルカルボキシレート、アルキルアミド、アミノカルボニル、アミノ、シアノ、ジアゾ、ニトロ、ホスフェート、チオ、スルホキシル、スルホニル、または下記から選択される基:
【化6】

【0041】
別の実施形態において、R4は下記の基である:直鎖または分岐鎖アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルヒドロキシ、アルキルカルボニル、ホルミル、オキシカルボニル、カルボキシル、アルキルカルボキシレート、アルキルアミド、アミノカルボニル、アミノ、シアノ、ジアゾ、ニトロ、ホスフェート、チオ、スルホキシル、スルホニル、または下記から選択される基:
【化7】

【0042】
別の実施形態において、各R4は下記の基である:直鎖または分岐鎖アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルヒドロキシ、アルキルカルボニル、ホルミル、オキシカルボニル、カルボキシル、アルキルカルボキシレート、アルキルアミド、アミノカルボニル、アミノ、シアノ、ジアゾ、ニトロ、ホスフェート、チオ、スルホキシル、スルホニル、または下記から選択される基:
【化8】

【0043】
R1およびR2は異なる基である。この2つのうちの1つ、R1およびR2の一方は、式C1-9H0-23N0-4O0-4S0-4F0-6Cl0-4Br0-4I0-4を持ち、下記から選択される:環に5個または6個の原子を有する置換または非置換複素環;ならびに、Cy、-S-Cy、-NH-Cyおよび-O-Cy(ここで、Cyは置換もしくは非置換炭素環、または置換もしくは非置換複素環である)。
R1およびR2の他方は、水素であるか、またはR3、R4およびR5と同様に定義される。
【0044】
言い換えれば、下記の構造が考えられ、式中、qは0〜3であり、Hyは環に5個または6個の原子を有する置換または非置換複素環であり、Hy、Cy、-S-Cy-、-NH-Cyおよび-O-Cyは式C1-9H0-23N0-4O0-4S0-4F0-6Cl0-4Br0-4I0-4を持つ:
【化9】

【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
Hyのいくつかの例は、下記のものである:
【化12】

【0048】
Cyのいくつかの例は、下記のものである:
【化13】

【0049】
1つの実施形態において、R1およびR2の一方は、式C1-9H0-23N0-4O0-4S0-4F0-6を持ち、下記から選択される:環に5個または6個の原子を有する置換または非置換複素環;ならびに、Cy、-S-Cy、-NH-Cyおよび-O-Cy(ここで、Cyは置換もしくは非置換炭素環、または置換もしくは非置換複素環である)。
【0050】
Yは、N、C-HまたはC-R4である。従って、下記の構造を有する化合物が考えられる:
【化14】

【0051】
Xは、O、S、NH、1〜4個の炭素原子を有するN-アルキル、または結合である。従って、下記の構造を有する化合物が考えられる:
【化15】

【0052】
Zは、式C1-8H4-17を持つヒドロカルビルである。従って、下記の構造を有する化合物が考えられる:
【化16】

【0053】
1つの実施形態において、ZはC1-8アルキルである。
【0054】
1つの実施形態は、下記の構造によって示される化合物である:
【化17】

[式中、
R30は、フェニル、ヘテロアリール、またはt-ブチルであり;
R40は、C1-6アルキル、C1-7カルボキシレート、またはC1-7アルキルカルボニルであり;
Cyは、置換もしくは非置換炭素環、または置換もしくは非置換複素環である]。
【0055】
下記の構造の1つで示される化合物が考えられる(式中、R20はC1-6アルキルである):
【化18】

【0056】
有用な化合物の仮定的な例を以下に示す:
【化19】

【0057】
【化20】

【0058】
これらの化合物の一般的製造方法の一例を反応式1に示す:
【化21】

【0059】
化合物AおよびBは、購入されるか、または従来の方法によって調製される。これらの化合物を、塩基、次に酸触媒での処理によって、縮合して、キノリニル核構造(化合物C)を得る。AおよびCのメトキシ部分は、どちらがO-Cy構造を有するかに依存してR1またはR2の先駆体として機能する。メトキシを除去し、通常の求核置換反応によってCy部分を付加して、Dを得る。あるいは、保護された窒素原子または硫黄原子を使用して、-S-Cyまたは-NH-Cy部分を得てもよい。次に、Dのエステルを開裂し、Eを付加して、最終化合物Fを得る。
【0060】
Cのナフチル類似体は、対応するヒドロキシルナフトアルデヒドを酸化し、反応式1のようにEを付加することによって製造しうる。これらの化合物の製造法は既知であり、例えば、Chamontinら(Tetrahedron 55(1999)5821-5830)に、使用しうる方法が示されている。
【0061】
反応式1の方法を使用する1つの仮定的例を、下記の反応式2に示す。
【化22】

【0062】
ヒトS1P受容体を安定に発現するT24細胞において、ヒトS1P受容体を活性化または遮断活性化する化合物の能力を、次の方法で評価しうる。384ウェルのポリ−D−リジンコーティングしたプレートに、1ウェル当たり1万個の細胞を、使用の1日前にプレーティングする。S1P受容体発現セルラインの増殖培地は、10%活性炭処理ウシ胎仔血清(FBS)、1%抗生物質−抗真菌剤、および400μg/mlのgeneticinを補充したMcCoyの5A培地である。実験当日に、20mM HEPESを補充したハンクス液(HBSS/Hepes緩衝液)で細胞を2回洗う。次いで、1.25mMプロベネシドを含有するHBSS/Hepes緩衝液で希釈した2μM Fluo−4で、細胞に色素導入し、37℃で40分間インキュベートする。細胞プレートを4回洗うことによって細胞外の色素を除去した後、プレートをFLIPR(蛍光イメージングプレートリーダー、Molecular Devices)に配置する。384ウェルマイクロプレート内で、リガンドをHBSS/Hepes緩衝液で希釈し調製する。正の対照であるスフィンゴシン−1−リン酸(S1P)は、脂肪酸不含有ウシ血清アルブミン4mg/mlを含むHBSS/Hepes緩衝液で希釈する。FLIPRは、12.5μlをリガンドのマイクロプレートから細胞のプレートに移し、蛍光測定を75秒間にわたり毎秒、次いで2.5分間にわたり10秒毎に行う。薬物を0.61〜10000nMの濃度範囲で試験する。Ca+2応答のデータを任意蛍光単位で得、Ca+2濃度に変換はしない。Levenberg Marquardtアルゴリズムを用いる線形回帰分析によってIC50値を求める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造を有する安定な化合物:
【化1】

[式中、
nは、0、1または2であり;
mは、1または2であり;
oは、0〜5であり;
R1およびR2の一方は、式C1-9H0-23N0-4O0-4S0-4F0-6Cl0-4Br0-4I0-4を持ち、下記から選択され:環に5個または6個の原子を有する置換または非置換複素環;ならびに、Cy、-S-Cy、-NH-Cyおよび-O-Cy(ここで、Cyは、置換もしくは非置換炭素環、または置換もしくは非置換複素環である);
R1およびR2の一方は、水素、または式C0-12H0-26N0-2O0-4S0-1P0-1F0-6Cl0-1Br0-1I0-1を持つ置換基であり;
各R3、R4およびR5は、独立に、式C0-12H0-26N0-2O0-4S0-1P0-1F0-6Cl0-1Br0-1I0-1を持つ置換基であり;
Yは、N、C-H、またはC-R4であり;
Xは、O、S、NH、1〜4個の炭素原子を有するN-アルキル、または結合であり;
Zは、式C1-8H4-17を持つヒドロカルビルである]。
【請求項2】
Cl、BrまたはIが芳香環の炭素に直接結合している場合を除いて、R1、R2、R3、R4およびR5は、Cl、BrおよびIを有さない基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1およびR2の一方が、H、メチル、CHO、CO2H、COCH3、F、Cl、Br、OH、SH、SCH3、OCH3、NH2およびNO2であり;各R3およびR5が、独立に、メチル、CHO、CO2H、COCH3、F、Cl、Br、OH、SH、SCH3、OCH3、NH2およびNO2から選択される請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Zが-CH2-である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
YがCHである請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
YがNである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
XがOである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
下記の構造を有する請求項2に記載の化合物:
【化2】

[式中、
R30は、フェニル、ヘテロアリール、またはt-ブチルであり;
R40は、C1-6アルキル、C1-7カルボキシレート、またはC1-7アルキルカルボニルであり;
Cyは、置換もしくは非置換炭素環、または置換もしくは非置換複素環である]。
【請求項9】
XがNHである請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R30がフェニルである請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
下記の構造を有する請求項10に記載の化合物:
【化3】

【請求項12】
下記から選択される請求項11に記載の化合物:
【化4】

【請求項13】
ZがC1-8アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
哺乳動物の疾患または症状を処置するための医薬の製造における、請求項1〜13のいずれかに記載の化合物の使用であって、疾患または症状が、緑内障、ドライアイ、血管新生、心臓血管系の症状および疾患、創傷および痛みから選択される使用。
【請求項15】
哺乳動物がヒトである請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれかに記載の化合物を、必要とする哺乳動物に投与することを含んで成る疾患または症状の処置方法であって、疾患または症状が、緑内障、ドライアイ、血管新生、心臓血管系の症状および疾患、創傷および痛みから選択される方法。
【請求項17】
哺乳動物がヒトである請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2010−536872(P2010−536872A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522010(P2010−522010)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/073798
【国際公開番号】WO2009/026408
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】