治療用ミクロ粒子
選択的塞栓形成処置に有用であるような、カテーテル系を介した注入に適合された生体分解可能な耐圧縮性ミクロ粒子。ミクロ粒子は任意には、標的体液に対して中立に不溶性であることが可能である。ミクロ粒子内には、種々の活性物質、例えば塞栓形成処置中の痛みを軽減することができる麻酔薬を含むことができる。本発明はさらに、耐圧縮性ミクロ粒子を試験して送達する方法及び装置を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の疾患及びその他の医学的状態を治療するために、注入可能な粒子、特にミクロ粒子を使用する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
塞栓療法は、過剰血管新生化腫瘍及び動静脈奇形の術前管理を含めて、種々の脈管病理を治療するために実施される、侵襲性が最小限の処置である。過剰血管新生化腫瘍は、循環を可能にする異常に多数の血管を有し、また、悪性又は良性である。動静脈奇形は、動脈と静脈との異常な接続であり、その存在は発作及び死を招くおそれがある。過剰血管新生化腫瘍及び動静脈奇形は脳、乳房、肝臓、子宮、卵巣、脊椎、頭頚部、及び身体の他の部位内で発生し得る。これらの疾病は、ヒト及び動物の両方において発生する。
【0003】
塞栓療法は、術前の補助処置として従来採用されている。外科的切除を必要とする腫瘍の脈管構造供給を意図的に妨害する結果、血液の損失及び処置上の複雑さが低減される。脈管供給を意図的に妨害することによって、例えば、腫瘍の局在化された虚血を誘発し、腫瘍の成長を阻止し、そして腫瘍の容積収縮を誘発することができる。
【0004】
身体の指定部位には、カテーテル器具を通して塞栓剤が一般に送達される。
【0005】
塞栓療法における臨床的な経験は、いくつかの周知の塞栓剤が、十分な送達精度をを有することができず、構造的に許容不能であり、凝集を示し、送達器具を詰まらせ、許容不能な浮揚性を有し、且つ/又は、患者の脈管構造に不都合な影響を及ぼすおそれがあることを明らかにする。
【0006】
再吸収不能なポリビニルアルコール(PVA)発泡体粒子が、塞栓剤として採用されている。PVA発泡体塞栓剤は使用中に血管内で細分化し、集合し、又は凝集することがあり、そしてこのような悪い性能は、所望の塞栓形成位置に達する前に発生するおそれがある。この望ましくない挙動は詰まりを引き起こし、このような詰まりは、血管及び送達器具を閉塞させる。PVA発泡体塞栓剤が所望の位置に塞栓を形成する場合でさえ、PVA発泡体塞栓剤の不規則なサイズ及び形状は、塞栓の完全な閉塞を阻止することがあり、血流が効果的でないPVA発泡体塞栓材料を迂回し、腫瘍への血液供給を続けることを可能にする。周知の塞栓療法は結果として、標的腫瘍への血液供給の閉塞を不適正、不完全、又は無効にし、また、周囲組織の望ましくない壊死、又は死を招くおそれがある。合併症は治療を無効にすることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、塞栓剤技術及び塞栓療法における進歩を提供する。本明細書中に開示された材料、ミクロ粒子、治療、設備及び処置は、女性及び男性のヒト及び動物において利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1観点において、本発明は、1種以上の生体吸収可能な且つ/又は生体再吸収可能なベースポリマーとボイド容積とを有し、そして耐圧縮性を示す、カテーテル送達可能なミクロ粒子を含む。耐圧縮性のカテーテル送達可能なミクロ粒子は、標的体液又は注入媒質に対してほぼ中立に浮揚性であるように設計することができる。耐圧縮性のカテーテル送達可能なミクロ粒子は、塞栓剤として利用することができる。カテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ粒子は、任意には、標的血管に対してサイズを調和することができ、また、標的血管内の沈積に適するようにすることができる。
【0009】
耐圧縮性のカテーテル送達可能なミクロ粒子は、1種又は2種以上の添加剤、1種又は2種以上の生体活性物質(例えば治療薬)、又はこれらの組み合わせを有することができる。さらにいくつかの実施態様の場合、耐圧縮性のカテーテル送達可能なミクロ粒子は、1種以上のコーティングを含む。このようなコーティングも1種又は2種以上の添加剤、生体活性物質、又はこれらの組み合わせを有することができる。
【0010】
1実施態様の場合、少なくともトリメチレンカーボネート部分を有するモノマーの1種以上のコポリマーを有する。別の実施態様の場合、カテーテル送達に適合されたミクロ粒子は、トリメチレンカーボネート部分を有する少なくともポリ(a-ヒドロキシエステル)のホモポリマー又はコポリマーを有する。さらに別の実施態様の場合、カテーテル送達可能なミクロ粒子は、耐圧縮性のミクロ粒子と適合可能なボイド容積及びボイド分布を有する。ボイド、ボイド容積、及びボイド分布はそれぞれ、又は組み合わせにおいて、ミクロ粒子の耐圧縮性に関与するように操作することができる。
【0011】
カテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ球体内で操作することができる別のファクターは、浮揚性である。1実施態様の場合、カテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ粒子は、標的体液に対して中立に浮揚性である比重を有する。
【0012】
さらに別の当該ファクターは、中でも分解速度及びモード、並びに生体活性放出動態を促進するように、ミクロ球体の表面トポグラフィを操作できることである。
【0013】
本発明のいくつかの実施態様は、ミクロ粒子の大型集合又は「ボーラス」(本明細書中では「ボーラス」と呼ぶ)を活用する。このようなボーラスの1実施態様は、1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーとボイド容積とをそれぞれ有する、多数のカテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ粒子を有する。ボイド容積は、ミクロ粒子の表面及び/又は内側のどこでも存在することができ、そして1つ又は2つ以上の個々のボイドを含むことができる。別の実施態様の場合、ボーラスは、標的体液に対して中立に浮揚性である、治療上効果的な数のミクロ粒子を有する。ボーラス内で採用されるミクロ粒子は、任意には、1種以上の添加剤、1種以上の生体活性物質、又はこれらの組み合わせを含むことができる。ボーラスは、患者への製薬上効果的な薬物投与量を送達するのに十分な量の薬物送達ミクロ粒子を有することもできる。本発明の実施態様は、上記構成要件の任意の組み合わせを含むこともできる。
【0014】
本発明の別の実施態様の場合、ボーラスは、密度0.9 g/cc〜1.4 g/ccのミクロ粒子を含む。さらに別の実施態様の場合、ボーラスは、標的体液に対して0.6〜1.4の比重を有するミクロ粒子を含む。さらに別の実施態様の場合、ボーラスは、ボイド容積0 vol %〜98 vol %のミクロ粒子を含む。
【0015】
耐圧縮性に関しては、圧縮に対して抵抗性を有する本発明のミクロ粒子を提供することが望ましいと見なされる。耐圧縮性は、とりわけ、ミクロ粒子が体内の標的部位内に注入されると、十分に予測可能な挙動を提供される。本発明の1実施態様の場合、ボーラスは、所与のミクロ粒子外径(「直径」)を有し、そして10%を上回るそれぞれの外径の変形に対して抵抗性を有するミクロ粒子を含む。いくつかの実施態様の場合、耐圧縮性は、5%、10%又は20%を上回るミクロ粒子外径の変形がそれぞれ、ミクロ球体に破損又は機械的損傷をもたらすという点で、明らかである。
【0016】
本発明のミクロ粒子は複数の相で提供することができる。1実施態様の場合、本発明のカテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ粒子は、1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーと、生体再吸収可能なベースポリマーとは異なる第2の材料と、第2の材料が任意に存在するボイド容積と、標的体液に対して0.6〜1.4の比重とを有する。
【0017】
本発明はまた、カテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ球体のボーラスを有する塞栓ミクロ球体送達システムと、ミクロ球体のボーラス及びキャリア溶液を患者に注入するように構成された、ボーラスを含有する送達装置とを含む。
【0018】
別の観点では、本発明は、受圧下で試験チャネルを通される注入物を形成するキャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子のボーラスを利用して、ミクロ粒子の耐圧縮性を試験する装置を含む。耐圧縮性を試験する1実施態様は、(1)供給端部と流出端部とを備えた、定義済狭窄寸法を有する試験チャネルを通して、キャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子のボーラスを注入し;(2)試験チャネルの流出端部を出たミクロ粒子が無傷であるかどうかを観察し;(3)試験チャネルの流出端部を無傷で出たミクロ粒子を、これが定義済狭窄寸法よりも大きい場合に「圧縮可能」として分類し;そして(4)無傷でない又は試験チャネルを通らないミクロ粒子を「耐圧縮性」として分類することから成る工程を利用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のミクロ粒子(本明細書中では「本発明のミクロ粒子」、「ミクロ粒子」、「ミクロ球体」及び「塞栓剤」と呼ぶ)は、多様な特性及び用途の多種多様な実施態様において使用することができる。このようなミクロ粒子は、再吸収可能であるか又は再吸収不能であってよく、また、溶出物及び添加剤を患者体内の所望の部位に輸送するために使用することができる。ミクロ粒子は研究用途、患者治療用途、及び非医療用途の全範囲に及ぶ実施態様において使用される。医学的な実施態様の場合、ミクロ粒子特性の一例としては、使用しやすさ;標的血管、血管床又は血管組織への送達精度;効果的な生物学的応答の刺激及び支援;及び患者に対するポジティブな処置結果、のうちの1つ又は2つ以上が挙げられる。多くの実施態様の場合、ミクロ粒子はカテーテルで送達可能である。
【0020】
本明細書における図面及び開示内容は、ミクロ粒子の特性を示す。開示された或る特定の観察は人間の眼によって行われる。他の観察は、機器を使用することによって拡大して行われる。光学顕微鏡法又は走査電子顕微鏡法(SEM)を用いることにより画像及び観察が提供される場合、当該倍率の値は「X」又は「倍」と呼ばれる。
【0021】
「溶出」という用語は、ミクロ粒子からの材料の放出を意味するために本明細書中に使用される。放出のために典型的に提供される材料の一例としては、生体活性物質、例えば添加剤、コーティング材料、ベースポリマー、又はミクロ粒子内、ミクロ粒子上、及び/又はミクロ粒子と一緒に担持されるその他の材料が挙げられる。用法としては、いくつかの実施態様において、生体活性物質がミクロ球体から「溶出」されると言うことができる。「溶出速度」は、時間に伴うミクロ球体からの任意の物質の放出又は除去の1つの尺度である。ミクロ球体からの溶出物の溶出速度は一定であるか、或いは、時間とともに且つ/又は変化する条件下で変化する。
【0022】
「塞栓剤」は、人造又は天然の身体管腔又は体腔内に注入される物質である。塞栓剤のいくつかの実施態様は、管腔又は体腔を通る血流又は他の液体流を妨害する。いくつかの実施態様は、容積押し退け、生物学的応答の誘発、及び他の物質又は添加剤の送達、という特性を含む。
【0023】
「ボーラス」という用語は本明細書中で、ミクロ粒子の分量、量又は数として定義される。「ボーラス」という用語は、投与量、量、治療量、及び、ミクロ粒子の量、具体的には治療処置中に一緒に送達されることになるミクロ粒子の蓄積量を特定する類似の用語と同義に使用することができる。ミクロ粒子の「ボーラス」は、in vitroで溶液中に懸濁されるか、又はin vivoで患者体内に送達又は滞留する粉末形状であってよい。
【0024】
本明細書における「流体」という用語は、ミクロ粒子の使用又は形成との関連と調和して定義される。ミクロ粒子が含有され、形成され、又は液相と接触状態にある実施態様の場合、「流体」という用語は、ミクロ粒子と接触している溶液又は液相を意味する。例えば、体液は全ての身体液体を含み、その例としては、血液、血漿、硝子体液、間質液、空気及び腸液又は消化液を含む。「標的体液」はミクロ粒子と相互作用するように意図される身体の任意の流体である。例えば、ミクロ粒子が血流内に注入される実施態様の場合、血液が標的体液であり得る。眼内にミクロ粒子が注入される場合、硝子体液が標的体液であり得る。「標的体液」は、当業者がミクロ粒子の懸濁、又はミクロ粒子とのその他の相互作用を選択することを望む任意の体液である。いくつかの用途において、「標的体液」は、2種以上あり得る。身体に関与しない実施態様の場合、「標的流体」という用語は類似であり、そして当業者によって所望される通り、ミクロ粒子を懸濁し、ミクロ粒子と接触し、又は他の形式でミクロ粒子と相互作用するように意図される任意の流体である。ミクロ粒子の製造において、「流体」の一例としては、製造プロセスにおいて使用されるか、ミクロ粒子中に含まれるか、ミクロ粒子を構成するか、又はミクロ粒子と接触する任意の液相物質が挙げられる。本明細書において流体と考えられる他の液体の例としては、注入物、キャリア流体、保存溶液、ベースポリマー溶液、有機溶剤溶液、水溶液、水、造影剤、造影溶液及び食塩水が挙げられる。「キャリア流体」という用語は、ミクロ粒子を輸送するか、又は輸送しようと意図される任意の流体(液体又は気体)を含む。ミクロ粒子が液体と接触せず、気体によって懸濁又は取り囲まれている(例えばミクロ粒子のエアロゾル分散体中の空気)実施態様の場合、「流体」は、ミクロ粒子を取り囲む又はミクロ粒子内部の任意のガスを含んでよい。
【0025】
「添加剤」という用語は大ざっぱに言って、ミクロ粒子、ミクロ粒子コーティング、ミクロ粒子を構成する物質(例えばベースポリマー)、ミクロ粒子と接触する物質(溶液、液相)、及びミクロ粒子によって含有される物質に添加される任意の物質が挙げられる。「添加剤」は、任意の目的で、ミクロ粒子、又はミクロ粒子の成分(例えばベースポリマー、液相、ボイド容積、コーティング、及びミクロ粒子の任意の他の成分又は物質、ミクロ粒子と接触する任意の他の構成部分又は物質、ミクロ粒子によって含有される任意の他の構成部分又は物質、又はミクロ粒子と相互作用する任意の他の構成部分又は物質)に提供される任意のものを含む、幅広い用語である。
【0026】
本出願全体にわたって使用されるいくつかの略語は:
℃ = 摂氏温度
mm = ミリメートル
μm = ミクロン
cc = 立方センチメートル
ml = ミリリットル
g = グラム
を含む。
【0027】
この開示内容全体を通して、範囲の終点は、当業者の知識において、許容誤差内に他の値を組み入れることは明らかである。これらの他の値の一例としては、本発明に関連するそれぞれの終点とは僅かに異なる値が挙げられる。終点は、値「約」又は「近く」又は「ほぼ」をそれぞれの終点に組み入れると解釈されるべきである。本明細書中に引用した範囲及び比の限界は組み合わせ可能である。例えば1〜100の範囲と5〜25の範囲とは、特定のパラメーターに関して引用される場合、特に断りのない限り、1〜5、1〜25、5〜100及び25〜100の範囲も考えられることは明らかである。
【0028】
本発明のミクロ粒子は、生体再吸収可能なポリマーから製造することができる(この用語は、「再吸収可能」、「再吸収することができる」、「生体吸収可能」、「吸収可能」又は「吸収することができる」を含むものとする)。ミクロ粒子のベースポリマーは典型的には、生体再吸収可能な材料を含む。ベースポリマーは典型的には、制御された生体再吸収(すなわち「生分解」、「再吸収」、「生体吸収」又は「吸収」)を許す1種又は2種以上の生体適合性材料を含む。「ベースポリマー」という用語は、ポリマー、コポリマー及びヘテロポリマーを含む。ベースポリマーの例は、ポリ[α-ヒドロキシエステル]のコポリマー及びホモポリマーを含む。この生体再吸収可能なポリマー群には、ポリ[乳酸-コ-グリコール酸](PLGA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)及びポリ(乳酸)(PLA)のコポリマーが含まれる。ミクロ粒子のいくつかの実施態様では、ポリ(乳酸)とトリメチレンカーボネートとのコポリマー(PLGA-TMC)も使用される。上に特定したコポリマーは架橋を必要としない。ミクロ粒子のいくつかの実施態様は架橋モノマー又はポリマーを全く有しない。他の実施態様は、組成に応じてある程度の架橋を有することができる。非架橋型及び架橋型のベースポリマーのブレンドを利用したベースポリマー及びミクロ粒子が本発明に含有される。本明細書におけるベースポリマーの任意の組み合わせ又は混合物を、本発明のミクロ粒子の製造において採用することができる。
【0029】
いくつかの実施態様の場合、ベースポリマー溶液からポリマーの沈澱によってミクロ粒子を形成することにより、ミクロ粒子、又はコートされた又は多層状のミクロ粒子の実施態様の場合にはミクロ粒子コア(「ミクロ粒子コア」、「ベースポリマーコア」、「コア」とも呼ばれる)を構成する凝集体を形成することができる。ベースポリマー溶液は、有機溶剤(例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、塩化メチレン、酢酸エチルなど)中に溶解された1種又は2種以上のベースポリマーを含有する。これらのポリマーは、「ベースポリマー」又は「ミクロ粒子ベースポリマー」と呼ばれる。
【0030】
本発明のミクロ粒子は1種又は2種以上のベースポリマーを有する。コートされた又は多層状の実施態様の場合、ベースポリマーはミクロ粒子のコア内に含むことができる。ベースポリマーは、任意にはトリメチレンカーボネートを含有するポリ(a-ヒドロキシエステル)のホモポリマーを含む。上述のように、ベースポリマーは典型的には、PLA、PGA、PLGA、PLA-TMC、PGA-TMC、PLGA-TMC、又は他の生体再吸収可能なベースポリマーのうちの1種又は2種以上である。
【0031】
本発明のミクロ粒子のいくつかの実施態様に含まれる、ベースポリマー又はベースポリマーの混合物は、架橋されていない。典型的には、ベースポリマーは、部分的又は全体的な再吸収を許すのに十分に、架橋が不在である直鎖ポリマーである。いくつかのミクロ粒子はポリマー鎖間に架橋を有しない。
【0032】
ミクロ粒子のベースポリマーは、2つ以上のタイプのモノマー、ポリマー又は物質から成っていてよい。このようなベースポリマー組成物は、「混合型ベースポリマー」と呼び、そして本明細書中に開示されたベースポリマーの任意の組み合わせを含むことができる。
【0033】
いくつかの実施態様の場合、埋め込み可能なミクロ粒子が、「コーティング」と呼ばれる1つ又は2つ以上の付加的な層を有することができる。コーティングは一般にミクロ粒子に付着され、又はミクロ粒子によって支持される。いくつかの実施態様のコーティングは、ミクロ粒子表面上に存在し、ベースポリマーコアを取り囲む。ミクロ粒子のコーティングは1種又は2種以上の物質を含むことができる。各コーティング層は、純粋な、又は混合することができる物質から成っている。コーティング物質の一例としては、ゼラチン、キトサン、親水性ポリウレタンヒドロゲル、PLGA-PEG、PVA、コラーゲン、キチン、アルブミン、アルギネート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ペクチン、アミロース、フィブリノゲン及びこれらの組み合わせが挙げられる。2つ以上のコーティング又は層を使用することができる。
【0034】
他のコーティング物質の一例としては、有機及び無機化合物及び分子、アミノ酸、タンパク質、酵素、核酸塩基、バクテリア、ウィルス、抗生物質、抗体、抗原、プリオン、ウィルス、脂肪、栄養物、ビタミン、元素及びこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
コーティング物質を採用することにより、1種又は2種以上の生体活性物質又は添加剤の放出を改変するか、又は付加的な生体活性物質、添加剤又は物質(例えば薬物及び/又は抗体)を外面に付着させるための表面を提供することができる。コーティングは生体活性物質又は添加剤自体であってよい。コーティングを採用することにより、ミクロ粒子表面の機械特性、例えば摩擦係数、弾性率、優先権、平滑さ、又は耐分解性を変えることもできる。コーティングは持続放出の実施態様において使用することができる。
【0036】
図1Aは、ベースポリマー1Bとボイド2とを有する本発明のミクロ粒子1Aを示す。図1Bは、ベースポリマー3と、溶出物5を含有するボイド4とを有する本発明のミクロ粒子1Aを示す。図1Cは、混合型ベースポリマー、又は溶出物又は添加剤6と混合されたベースポリマーと、溶出物8を含有するボイド7とを有する本発明のミクロ粒子1Aを示す。図1Dは、混合型ミクロ粒子ベースポリマー、又は溶出物9又は他の添加剤と混合されたミクロ粒子ベースポリマーと、ボイド10とを有するミクロ粒子1Aを示す。図1Eは、ミクロ粒子ベースポリマー11と、ボイド12と、コーティング13とを有するミクロ粒子1Aを示す。図1Fは、混合型ベースポリマー、又は溶出物14又は他の添加剤と混合されたベースポリマーと、いくつかの実施態様において1種又は2種以上のポリマー、溶出物、添加剤又はこれらの混合物を含有することができるボイド15と、1種又は2種以上のポリマー、溶出物、添加剤又はこれらの混合物を含むコーティング16とを有するミクロ粒子1Aを示す。
【0037】
医療用実施態様において採用される本発明のミクロ粒子として使用するための材料は、典型的には、患者にとって耐容性が良好であるべきであり、そしてヒトの体内(例えば心臓血管系、又は筋肉-骨格系)で使用するのに安全であるべきである。標的脈管構造は、ミクロ粒子のいくつかの実施態様の存在に耐えることができ、しかも、不都合な生物学的結果、例えば持続的な非消散性炎症が生じることはない。いくつかの実施態様のミクロ粒子は、効果的な生物学的応答を促進する。
【0038】
ボイド、封入体、コンボリューション、付加的な材料及び製造ファクター(例えば溶液タイプ、ミクロ粒子組成、加えられる剪断力及びミクロ粒子硬化)を用いて、ミクロ粒子密度を設計する。密度はいくつかの実施態様において、標的溶液又は標的体液に対して所望の浮揚値、例えば中立の浮揚性を達成するように設計される。本発明のミクロ粒子の平均密度は、ミクロ粒子を形成する純粋原料ベースポリマーよりも低くてよい。溶出物を添加されていないミクロ球体の密度に対するベースポリマー密度の比は、いくつかの実施態様において1よりも大きい。ミクロ粒子に溶出物が添加されている実施態様の場合、ミクロ粒子密度に対するベースポリマー密度の比は、1.0よりも大きいか又は小さくてよい。ミクロ粒子が重い溶出物又は添加剤を含む場合には、この比は1.0よりも小さくてよい。より軽い溶出物又は添加剤が使用される場合には、この比は1.0よりも大きくてよい。
【0039】
空のボイドを採用すると、ミクロ粒子の全質量が低下し、そして粒子密度が低くなる。1実施態様の場合、ボイド及び低密度材料を利用すると、ミクロ粒子の密度は、同等の条件下で純粋形態で利用されたベースポリマーの密度よりも40%小さな値まで低減される。
【0040】
1実施態様の場合、95%以上のミクロ粒子の密度が0.9 g/ccを上回るが、しかし1.4 g/cc未満であるミクロ粒子が調製される。別の実施態様におけるミクロ粒子の密度は、0.95 g/cc〜1.1 g/ccである。さらに別の実施態様の場合、ミクロ粒子密度は約1.0 g/ccである。本発明の典型的なミクロ粒子の密度範囲は、約0.5 g/cc〜2.00 g/cc、より好ましくは約0.75 g/cc〜1.5 g/cc、そしてより好ましくは約0.8 g/cc〜1.4 g/ccであってよい。
【0041】
ミクロ粒子密度は製造中に操作することができ、又は、形成済ミクロ粒子に物質を添加することにより改変することもできる。
【0042】
ミクロ粒子の比重を改変又は設計して、ミクロ粒子密度を操作することにより所望の値を有することができる。多くの実施態様の場合、ミクロ粒子が注入される溶液、又はミクロ粒子が注入される標的体液の比重と同様の比重を有するミクロ粒子を製造することが望ましい。注入溶液、注入された標的体液、又はキャリア流体と比較して1.0の比重が、いくつかの実施態様のために利用される。その他の実施態様の比重は、標的体液、又はミクロ粒子が懸濁される溶液の0.6〜1.4、0.75〜2.0、又は0.6〜1.4であってよい。
【0043】
ミクロ粒子のいくつかの実施態様の比重は、X線造影媒質(「コントラスト」、「造影溶液」、「造影剤溶液」とも)と生理食塩水との50:50混合物に対して1.0である。ミクロ粒子の実施態様とともに採用することができる造影溶液の一例は、OMNIPAQUE(登録商標)イオヘキソール(101 Carnegie Center, Princeton, NJ 08540在、Amersham Health, Amersham PLC部門により製造)である。
【0044】
密度及び比重の値の設計を利用して、生体系又はその他の系内でミクロ粒子を使用するのに有益な浮揚性を達成する。本明細書中に開示された製造技術は、ミクロ粒子のベースポリマー純粋原料の固有浮揚値の0%〜100%の浮揚性を有するミクロ粒子の実施態様の製造を含む。中立の浮揚性、又はミクロ粒子が注入される標的体液の10%以内の浮揚値を有するミクロ粒子が、いくつかの実施態様において利用される。
【0045】
浮揚値をキャリア流体注入物の浮揚値に近似させると、標的体液はキャリア流体中の懸濁時間を増大させる(例えば懸濁液中で0-59分間、1時間以上から1日以上、1週間以上、1ヶ月間以上、6ヶ月間以上、1年間以上)。これらの浮揚特性は、低プロフィール・カテーテルを通しての注入を容易にする。
【0046】
ミクロ粒子は、これらが懸濁される溶液、流体系、キャリア流体、ミクロ粒子が配置されるべき標的流体又は標的体液に対して、ほぼ中立の浮揚性(すなわち「中立の重力」は、所望の温度及び圧力において所与の基準溶液、液体組成物、又は流体に対して比重1.0である)を有するように、いくつかの実施態様において調製することができる。1実施態様の場合、密度0.9 g/cc〜1.4 g/ccのミクロ粒子を調製することにより、ミクロ粒子の中立浮揚性が達成される。注入物の10%以内の比重が選択される(例えば50:50の生理食塩水と造影剤溶液)のが典型的である。
【0047】
キャリア溶液は典型的には、アルコール、有機液体、薬物水溶液、又は任意のその他の塞栓剤と適合可能な水溶液を含む1種又は2種以上の液体から成る。流体は、ミクロ粒子が、注入物を形成する注入時に懸濁される溶液(例えば生理食塩水、又は造影剤溶液)として働くことができる。いくつかの実施態様の場合、いくつかの実施態様のミクロ粒子が使用に際して形成、保存、移動、及び調製される液体を、キャリア流体として利用することもできる。
【0048】
ミクロ粒子の密度が、in vitroであるかin vivoであるかに関係なくミクロ粒子が懸濁されている溶液の密度に対して10 %〜15 %以内であると、又は溶液の密度に一層近いと、ミクロ粒子は典型的には、溶液中に均質に懸濁させることができる。10 %〜15 %以内の密度を有するミクロ粒子の実施態様は、臨床的に関連する時間にわたって、注入溶液(キャリア溶液)から容易には分離しない。好ましくは、本発明のミクロ粒子の密度は、溶液の密度に対して5%〜15%である。
【0049】
ミクロ粒子はボイドを有するか又は有さずに形成することができる。ミクロ粒子ボイド容積は0 %〜98 %であってよい。ボイド、ボイド部分、及びボイド分布の存在は、ミクロ粒子の設計された特性であることができる。ボイド形成に影響を与えるように操作することができるファクターは、ベースポリマー組成、溶液粘度及び採用されるエマルジョン技術(例えばシングル・エマルジョン、ダブルエマルジョン、又は多段処理)を含む。
【0050】
任意の外径(数ナノメートル規模から最大2000μm又はそれ以上)を有するミクロ粒子は、空のボイド、又はミクロ粒子の大部分のベースポリマーとは異なる材料で充填されたボイドを含有することができる。ボイドは、ベースポリマーとは異なる相又はタイプの材料を含有することができる。ボイド及び充填型ボイドは、総ミクロ粒子容積の最大98%を占めることができる。ボイド空間の数、サイズ及び濃度は制御することができる。ボイド空間の数は、単一のボイドから数千個以上のボイドであってよい。ボイド直径は数ナノメートルから1ミリメートル以上であってよい。ミクロ粒子容積の5-10%、15-30%、40-60%のボイド容積が、いくつかの実施態様において利用される。ミクロ粒子容積の5%、20%及び45%のボイド容積が典型的である。
【0051】
図2Aは、種々のサイズのボイド20を有し、そしてベースポリマー21を含む20 wt% リドカイン添加型ミクロ球体を150Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図2Aはまた、大きなボイド23と小さなボイド24とを有するミクロ球体を示す。図2Bは、種々の容積のボイドを有し、そしてミクロ粒子ベースポリマー26、大きなボイド27、小さなボイド28、及び中程度のボイド29を含む20 wt% リドカイン添加型ミクロ球体25を500Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。
【0052】
図3Aは、ボイド30を有するリドカイン添加型ミクロ粒子と、大きなボイド31を含む別のミクロ粒子とを150Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図3Bは、ボイド32を有し、そして大きなボイド33と小さなボイド34とを含むリドカイン添加型ミクロ粒子を500Xで画像形成して示す顕微鏡写真である。
【0053】
図4Aは、コンボリューションと種々の容積の内部ボイドと相互連通部40とを有し、そしてミクロ粒子ベースポリマー41と大きなボイド42とを示すリドカイン添加型ミクロ球体を150Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図4Bは、コンボリューションと種々の容積の内部ボイドと相互連通部とを有し、ミクロ粒子ベースポリマー46と相互連通部47とコンボリューション48とボイド49とを示すリドカイン添加型ミクロ球体45を500Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。
【0054】
本発明のミクロ粒子は、滑らか/非詰まり特性(本明細書中では「滑らかさ」と呼ぶ)を示すことができる。滑らかさは、いくつかのミクロ粒子実施態様の低摩擦特性に起因することができ、また、表面積、表面特性、弾性、ミクロ粒子形状及びミクロ粒子成分材料のようなファクターを操作することにより設計することができる。例えば、ミクロ粒子ベースポリマー又はコーティング物質と関連する硬さ、疎水性又は耐圧縮性が、ミクロ粒子の滑らかさに影響を与えることができる。ミクロ粒子の組成、溶出物の性質、ミクロ粒子の内部構造及び形態は、滑らかさに影響を与えることができる。ミクロ粒子を設計することにより、均一な形状を獲得し、粘着性又は付着性でないベースポリマーを構成し、又は概ね球形の形状を達成することができる。これらのファクターのそれぞれは滑らかさに影響を与えることができる。
【0055】
滑らかさは、ミクロ粒子の注入及びカテーテル送達を容易にすることができる。滑らかさは、ミクロ粒子注入中の送達カテーテルの詰まりを低減又は排除することができる。本発明のミクロ粒子は、カテーテル注入によって患者に容易に投与することができる。滑らかなミクロ粒子は、カテーテル・フラッシングの必要を低減又は排除する。滑らかさは、in vitro試験及びin vivo試験、例えばイヌの腎臓梗塞処置中に、塞栓剤としてのミクロ粒子の性能を高めることができる。
【0056】
キャリア溶液に送達される本発明のミクロ粒子が示す、ミクロ粒子のない同じキャリア流体に必要とされる注入圧を上回る注入差圧に対する要件は、極めて低いか又は存在しない。カテーテル器具を通して本発明のミクロ粒子を有するキャリア流体を注入するためにに必要とされる圧力は、ミクロ粒子なしの単独でキャリア流体を患者に投与するために必要となる注入圧以下であるか、又はこの注入圧とは最小限に異なる。いくつかの実施態様では、ミクロ粒子を有するキャリア流体のための注入圧は10%以内である。典型的には注入差圧は、キャリア流体単独の注入圧を1気圧未満だけ上回る。本発明のいくつかの実施態様では、注入差圧のゼロ・パーセントに近い差を達成することができる。
【0057】
いくつかの実施態様の本発明によるミクロ粒子は、標的脈管内部で非凝集性を示す。非凝集性は、滑らかさと一致することができる特性である。
【0058】
ミクロ粒子は、構造安定性、強度、及び破損抵抗を示す。本発明のいくつかの実施態様のミクロ粒子は、高圧力系又は高血圧循環系においても効果的な塞栓剤として機能するのに十分に、これらの構造及び強度を維持することができる。ミクロ粒子安定性は典型的には、塞栓形成又はミクロ粒子による治療(例えば血管の機械的閉鎖、又は閉塞、及び線維形成性応答の完成)の所望の生物学的効果が発現するまで、安定性を維持するのに十分である。薬物送達ミクロ粒子向けの実施態様を製造することができ、これらの実施態様の場合、再吸収速度は、例えば溶出物を送達するか、又は腫瘍症候の慢性的な低減を誘発するのに必要となる時間を上回る。ミクロ粒子が任意の時間にわたって、所期の治療機能又は塞栓機能において機能することができる場合、構造安定性が存在すると考えられるか、又は維持される。ミクロ粒子は、数時間、数日又は数年後に再吸収するように設計することができる。典型的には、ミクロ粒子構造安定性は約5年、より好ましくは約30日〜180日、又は30日〜90日まで維持することができる。
【0059】
本発明のミクロ粒子のいくつかの実施態様は、ボイド又はその他の内部構造を有する場合にも、耐圧縮性を示すことが望ましいと考えられる。耐圧縮性は、破損することなしに変形に抵抗する能力、又は外部負荷が加えられると、予め定義された程度の寸法変化に抵抗する能力として定義される。本発明の耐圧縮性ミクロ粒子のために、有機ミクロ粒子形状を、設計された許容誤差に維持することができる。いくつかの実施態様において、変形に対する許容誤差を超えると、ミクロ粒子は破損することができる。本発明のミクロ粒子の或る特定の実施態様によって、外部物理的負荷0.1、0.03、又は0.07キログラムが抵抗される。最大0.2キログラム以上の外部物理的負荷に対して耐圧縮性のミクロ粒子を、本発明において利用することができる。いくつかの実施態様の場合、元の外径を有するミクロ粒子は、0〜30%から選択された値だけ元の外径を変化させる変形に抵抗する。変形が所望の値を上回る場合には、ミクロ粒子は破損することができる。例えば1実施態様の場合、耐圧縮性ミクロ粒子は、外部物理的負荷0.2 kgに抵抗する。物理的負荷が0.2 kgを超えると、ミクロ粒子は破損することができる。ミクロ粒子のいくつかの実施態様は、0.1キログラム未満の外部物理的負荷による元の外径の約0%〜20%の変形(及び数学的に類似の幾何学的な変位又は変化)に対する抵抗を示すことができる。
【0060】
いくつかの実施態様の場合、ミクロ粒子自体のベースポリマーが耐圧縮性を示す。
【0061】
本発明は、ミクロ粒子の耐圧縮性を測定するための新しい技術を含む。耐圧縮性を測定する方法は、キャリア溶液中にミクロ粒子を提供し、そして特定の内径の円筒形試験チャネルをこれらのミクロ粒子が通るようにすることを含む。内径は、数ナノメートル〜数ミリメートルであってよく、求められる耐圧縮度に応じて選択される。耐圧縮性ミクロ粒子はほとんど破損又は変形することはなく、試験チャネルを通るのに伴って、元の平均ミクロ粒子外径の変形が例えば10%未満であるならば、これは耐圧縮性と考えることができる。耐圧縮性でないミクロ粒子は破損、破断又は顕著な程度、例えば元の平均ミクロ粒子外径の20%を上回る程度まで変形する。
【0062】
図5は、本発明に含まれる、ミクロ粒子耐圧縮性を測定する1つの圧縮試験装置を示す。図5は、ミクロ粒子52を有するキャリア溶液51を含有するシリンジ50と、第1の内径(D1)の管53と、第2の内径(D2)を有する試験チャネル55と、試験シリンダー54とを示す。ミクロ粒子の平均外径とD2とは、所与の耐圧縮度を測定するのに必要な任意の比を有することができる。
【0063】
1実施態様の場合、ミクロ粒子の外径よりも10%小さい内径D2を有する剛性導管を通してミクロ粒子を損傷せずに注入することができなければ、そのミクロ粒子は耐圧縮性であると考えられる。別の実施態様の場合、ミクロ粒子の外径よりも20%小さい内径D2を有する剛性導管を通してミクロ粒子を損傷せずに注入することができなければ、そのミクロ粒子は耐圧縮性であると考えられる。さらに別の実施態様の場合、ミクロ粒子の外径よりも30%小さい内径を有する剛性導管を通してミクロ粒子を損傷せずに注入することができなければ、そのミクロ粒子は耐圧縮性であると考えられる。
【0064】
図26は、耐圧縮性のためのin vitro試験メカニズムの別の実施態様を示す。注入物261を形成するキャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子を充填されたシリンジ260が、圧力計270を有する管262内に注入される。ミクロ粒子は管262を通って移動し、そして単一ミクロ粒子263は試験チャネル264に入る。このミクロ粒子は、テーパされた試験チャネル264を移動して下るために、圧縮することが必要となる。極めて小さな圧力下(例えば0.1 psi)で、ミクロ粒子は、テーパされたチャネル内に、ミクロ粒子外径に一致した地点で押し込まれる。さらに背圧が加えられると、ミクロ粒子は、テーパされたチャネルを移動して下るように変形することができる。テーパは幾何学的に十分に定義されており、元の一致した直径地点から移動した任意の距離は、耐圧縮性の測定を可能にし、そして加えられた背圧と関数の関係にある。十分な背圧が加えられると、耐圧縮性ミクロ粒子は破砕し266、試験チャネル264から出ることができる。耐圧縮性ではないミクロ粒子265は、チャネルを移動して下るにつれて著しく変形することがある。
【0065】
図27は、耐圧縮性のためのin vitro試験メカニズムの別の実施態様を示す。注入物361を形成するキャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子を充填されたシリンジ360が、圧力計370を有する管362内に注入される。ミクロ粒子363は管362を通って移動し、ミクロ粒子直径よりも小さな開口を有するフィルター・スクリーン365を含有するフィルター・ホルダー364に入る。ミクロ粒子363は、フィルター・スクリーンを通過するために圧縮する必要がある。耐圧縮性でないミクロ粒子は、特に背圧下で著しく変形することができ、ミクロ粒子がフィルター・スクリーンを通過することを可能にする。十分な背圧を加えて耐圧縮性ミクロ粒子を破砕させ、破砕片がフィルター・スクリーン365を通過するのを可能にするのでなければ、耐圧縮性であるミクロ粒子はフィルター・スクリーンを通ることはない。
【0066】
図28は、耐圧縮性のためのin vitro試験メカニズムの別の実施態様を示す。圧縮テスターは、ミクロ粒子460に圧縮力を加え、そしてジョーの運動を介して測定可能な歪みを同時に測定するように構成することができる。例えば、ミクロ粒子は、圧縮テスターに接続された2つのジョー462, 463の間に配置することができる。下側ジョー462は所定の位置に固定され、上側ジョー463は運動可能であり、ロードセルに接続されている。ロードセルは、ジョーによって試験片に加えられた力の量を測定することができる。ジョーは、ミクロ粒子460を所定の位置に固定するプラットフォーム464を保持する。圧縮テスターは、ミクロ粒子を圧縮するように上側ジョー463を動かすことにより、ミクロ粒子に測定済の力を加える。加えられた負荷でミクロ粒子の変形を測定するために、ジョー463の変位を同時に測定する。ミクロ粒子460に、これが破砕するまで力を増大しながら加える。1実施態様の場合、耐圧縮性ミクロ粒子の直径は、破砕前に約30%未満変形することになる。別の実施態様の場合、耐圧縮性ミクロ粒子の直径は、破砕前に約25%未満変形することになる。別の実施態様の場合、耐圧縮性ミクロ粒子の直径は、破砕前に約20%未満変形することになる。他の実施態様の場合、ミクロ粒子は、約15%、10%、又は5%未満変形し得る。
【0067】
図6Aは、圧縮可能なミクロ球体61を保持する血管60を示す。図面から明らかなように、ミクロ球体61の圧縮性により、血管の内径が、圧縮されていないミクロ球体61の外径よりも小さいという事実にもかかわらず、血管は変形されていない。圧縮可能なミクロ粒子は、圧縮可能なミクロ粒子によって加えられた外方への力が、血管壁によって加えられた拘束力によって打ち消される平衡点に達する距離まで、血管内を移動することになる。残念ながら、この平衡位置は予測が難しい場合がある。それというのも、この位置は、例えば広範囲の血圧を含めて、極めて可変の多くのパラメーターによって著しく変化させられることがあるからである。
【0068】
本発明の耐圧縮性実施態様は、血管を通して移動する間、ほとんど変形しない。1実施態様の場合、圧縮から生じるミクロ粒子外径の変化は約ゼロであった。他の実施態様の場合、ミクロ粒子外径の変化は25%未満であった。図6Bは、耐圧縮性ミクロ球体63を保持する、変形62を示す血管を示す。ミクロ粒子の耐圧縮性実施態様が利用されると、血管は、ミクロ球体の存在を収容するために変形することができる(図6Bに示す)。耐圧縮性ミクロ粒子は、従動性血管壁によって加えられた内方への力と、ミクロ粒子によって加えられた外方への抵抗力との間の平衡点に達する距離まで、血管内を移動することになる。本発明の非ミクロ粒子を使用することにより、注入前にミクロ粒子性能をより容易に予測することができ、ミクロ粒子の前選択をより容易に成功させることができる。
【0069】
耐圧縮性ミクロ粒子は、標的血管又は組織との正確なサイズ調和を可能にする。耐圧縮性ミクロ粒子と標的血管内径とのサイズ調和は、血管内径とは0 %〜25 %(又はこれ以上)異なる(大きい又は小さい)平均外径を有するミクロ球体を含む。調和には柔軟性が存在する。なぜならば、ミクロ粒子はこれが脈管構造を通って移動するのに伴ってほとんど形状を変化させることがなく、これに対して、直面する血管の内径又は形状はミクロ粒子の存在によって変化又は変形させることができるからである。脈管構造は典型的には、1つ又は2つ以上のミクロ粒子を収容するように変形する。
【0070】
ミクロ粒子は、血管内で沈積させられるか、又は自由に浮揚したままであることが可能である。「沈積」は、系を通るミクロ粒子の運動速度(すなわち速度)がゼロに接近するか又はゼロであるときに生じる。
【0071】
本発明のミクロ粒子は、血管又は組織内の沈積中に、塞栓剤と宿主血管壁又は塞栓形成された体腔又は体孔との間のミクロ粒子外面の0.025%〜90%(線維形成応答前)の接触表面積を有するように適合される。このことは、溶出及び溶出された薬物の取込みを容易にすることを助けることができる。線維形成応答中又は線維形成応答後、沈積されたミクロ粒子全体は、再吸収前及び再吸収中に組織によって全体的に取り囲むことができる(すなわちミクロ粒子外面の表面積接触率は最大100%)。耐圧縮性ミクロ粒子のいくつかの実施態様は、血管内径の変化(例えば血管拡張のような血管状態の付随する変化)又は管腔内圧の変化に関連して押し退けられにくい。
【0072】
本発明のミクロ球体によって示された外部圧縮に対する抵抗は、耐久力のある塞栓を形成するミクロ球体の能力を改善する。いくつかの実施態様の場合、ミクロ球体は、流体(血液)流に対する周囲の血管の効果的な密閉性(最大密閉率100%)を達成する。この結果、完全な、又はほとんど完全な血液閉塞をもたらすことができる。強力な密閉性が、血管再疎通の可能性をほとんど排除することができる。
【0073】
これらの潜在的な利益は、本発明のミクロ粒子を注入された動物から捕集された組織を検討すれば明らかである。図7及び8は、脈管構造に塞栓を形成する本発明のミクロ粒子の画像である。図7は、ミクロ粒子71、ミクロ粒子72、及びミクロ粒子73が配置されている血管70を示す画像顕微鏡写真である。図8は、ミクロ粒子81を保持する血管80、及びミクロ粒子82とミクロ粒子83とが配置されている組織の画像顕微鏡写真である。図7及び図8において明らかなのは、圧縮不能なミクロ球体及び沈積の存在を収容する血管の変形である。
【0074】
本発明のミクロ粒子は、種々様々な構造及び組成を有するように構成することができる。適合し、改変し、そして構成することができるミクロ粒子特性の一例としては、組成、密度、ボイド特性(例えばボイド率、ボイド容積、ボイド・サイズ)、ベースポリマー組成、添加剤及び物質、コーティング、サイズ、表面積、表面トポグラフィ・テクスチャー、有孔率、コンボリューション、亀裂、硬さ、滑らかさ、強度、耐圧縮性、有孔率、分解及び再吸収特性が挙げられる。
【0075】
本発明のミクロ粒子の内部構造の例は、図2A、2B、3A、3B、4A、4B、9A及び9Bに示されている。
【0076】
塞栓剤として使用されるミクロ粒子の実施態様は、特定のジオメトリーを有するように形成又は選択することができる。本発明のミクロ粒子は、不規則又は球形の形態を有することができる。球形に成形された実施態様の場合、ミクロ粒子は典型的には「ミクロ球体」と呼ばれる。マイクロメートル範囲のミクロ粒子を製造するのに用いられる方法は、ナノメートル範囲の外径を有するミクロ粒子の実施態様を製造できる(すなわち「ナノ粒子」又は「ナノ球体」)ように採用することもできる。例えば食細胞を標的とする際には、ナノ粒子が使用される。これらの標的細胞はマクロファージであってよい。典型的には、ミクロ粒子又はミクロ球体は、十分に特徴付けられた一次寸法を有する。一次寸法は、所与の用途又は脈管構造と調和させるように使用することができる。いくつかの実施態様におけるミクロ粒子平均外径は、一次寸法の一例である。ミクロ粒子幾何学的形状(例えば平均外径)及び標的血管寸法と調和させることにより、精密な血管標的付けが達成される。一般に、ミクロ粒子が小さければ小さいほど、治療することができる血管は狭くなる。ミクロ粒子は、外径20ナノメートル〜5 mmで調製することができる。いくつかの実施態様の場合、25〜200ナノメートルの外径のより小さなミクロ粒子が使用される。いくつかの実施態様においてカテーテル注入のために調製される臨床上効果的なミクロ粒子ボーラスは、10μmを上回る平均ミクロ粒子外径を有する。1実施態様の場合、カテーテル注入のためのミクロ粒子の95%以上の外径が、10μmを上回る。
【0077】
ミクロ粒子の平均外径は、ベースポリマー及び連続相のエマルジョンの流体粘度に部分的に依存する。溶液の粘度が高ければ高いほど、ミクロ粒子形成中に剪断力を加えると、一層大きなミクロ粒子を産出することになる。溶液中のポリマーのエマルジョンの粘度が低ければ低いほど、所与の剪断力によって結果として製造されるミクロ粒子は小さくなる。
【0078】
製造プロセス中に導入される剪断力はミクロ粒子サイズに影響を与える。系内に導入される剪断力が大きければ大きいほど、ミクロ粒子は小さくなり、又はナノ粒子も生じる。
【0079】
固有の特性を制御して変数を処理することとは別に、特定の外径のミクロ粒子は、予め調製されたミクロ粒子を篩分けすることにより得ることもできる。ミクロ粒子の異なるバッチからミクロ粒子を篩分けすることにより、所望の外径分布を有するミクロ粒子のボーラスを得ることができる。固有ファクター、製造プロセス及び篩分けのような技術の組み合わせを利用して、所望の外径範囲を有するボーラス又はミクロ粒子を調製することができる。ミクロ粒子の外径は、正確な寸法に密に制御される。篩分けによる外径選択の制御が正確であることが可能であり(すなわち0%の差)、そして標的外径の50%以内(より大きいか又は小さい)まで制御される。いくつかの実施態様の場合、篩分けは硬化工程後に行われる。
【0080】
本発明のミクロ粒子は、塞栓形成目的で約10〜2000 μmの外径で形成することができる。典型的なミクロ粒子外径範囲は、約40〜120、約100〜300、約300〜500、約500〜700、約700〜900、及び約900〜1200μmを含む。1実施態様の場合、外径約2000μmのミクロ粒子が達成される。篩分け済ミクロ粒子と、所望のサイズの製造済ミクロ粒子とを所望の通り組み合わせることができる。
【0081】
薬物送達ビヒクルとして機能する全身性の自由血液循環剤として、ナノ粒子サイズ範囲のミクロ粒子を含むミクロ粒子を使用することもできる。これらは、血流又は組織中への直接的な注入を介して投与することができる。組織塊内への直接的な注入を介して、組織バルカーとしてミクロ粒子(ナノ粒子を含む)を使用することもでき、又はこのミクロ粒子を脈管構造を通して供給することができる。
【0082】
本発明のミクロ粒子は、所望の形状、ジオメトリー及び表面トポグラフィを有するように、設計することができる。本発明の実施態様の一例としては、平滑な球体、ピット含有球体、コンボリュート状球体、不規則球体、添加物及び溶出物によって影響を与えられた球体、及び、使用中又は再吸収中に変化するように、又は改変されるようになるように設計された形状が挙げられる。
【0083】
本発明のミクロ粒子の1実施態様は、走査電子顕微鏡によって最大500 x(500倍)の倍率レベルで見ると、一般に均一で平滑な球体形状を有する。
【0084】
図2A、2B、3A、3B、4A、4B、9A、9B、10A、10B、11B、12A、12B、13A、13B及び14は、ミクロ粒子実施態様の画像を示す。
【0085】
本発明のミクロ粒子の表面積を設計し、適合させ、そして改変することができる。ミクロ粒子は、平滑な球体シェル、又は同等の平均外径の平滑な表面を有する実施態様と比較して表面積が増大されたテクスチャー加工表面を有することができる。ミクロ球体は、孔、粗さ、ピット構成要件、コンボリューション、亀裂、又は多孔質表面を有するテクスチャー加工表面を示すことができる。他の実施態様は多孔質インボリューションを示す。ミクロ粒子の表面構成要件は、専ら1つのタイプとして出現することができ、又は混合タイプを有することもできる。表面構成要件は大部分(すなわち表面の50%超)を占めていてよく、又は僅かな部分(すなわち表面の50%未満)を占めていてよく、又は混合して存在していてもよい。種々の表面トポグラフィ及びテクスチャーは、SEM倍率20〜500 Xの表面試験を介して観察することができる。平滑な粒子に対する平滑でない粒子の表面積比は典型的には1.0を上回る。1実施態様の場合、ミクロ粒子表面は、同等の平均外径の平滑な球形粒子よりも最大25%大きい表面積を提供する。他の実施態様の場合、ミクロ粒子の表面積は、同等の平均外径の平滑な球形粒子よりも50%、75%、又は100%以上大きい。いくつかの実施態様の場合、表面積を増大させると、同等の平均外径及び構造を有する平滑な球形粒子とは対照的に分解速度が増大する。いくつかの実施態様の場合、表面積を増大させると、同等の平均外径及び構造をの平滑な球形粒子を凌いで組織の組み込み状態が改善される。いくつかの実施態様は、同等の又は直径が等価の平滑な実施態様の表面積よりも数百倍又は数千倍大きい表面積を有する。
【0086】
さらに、本発明のいくつかの実施態様の場合、表面構成要件は、ミクロ粒子の状態、及びミクロ粒子が暴露されている環境条件の関数として経時的に変化することができる。いくつかの実施態様の場合、表面構成要件は、一般に一定であり、また、発生し得る任意の再吸収プロセス前に著しく変化することはない。一般に、再吸収はミクロ粒子の表面構造に影響を与える。
【0087】
本発明のミクロ粒子は、増大された表面積を示すように適合されており、この表面積は、同等の平均外径及び構造を有する平滑な球形粒子の溶出プロフィールと比較して生体活性物質の溶出プロフィールを増大させる。
【0088】
ミクロ粒子製造のために使用されるポリマー・ベース溶液の粘度(ポリマー/溶剤の比)は、最終ミクロ粒子の表面トポグラフィに影響を与えるファクターである。低粘度のベースポリマー溶液は、あまり平滑でない高表面積又は「脳様」コンボリュート状トポグラフィを提供する高粘度のポリマー・ベース溶液と比較して、より平滑な表面を有するミクロ粒子を提供する。いくつかのミクロ粒子中で示された脳様表面トポグラフィは、ミクロ粒子表面上の開いた空間から生じる。これらの空間は凝集体のポリマー鎖の間で形成される亀裂の結果である。
【0089】
図13A及び図13Bは、本発明のミクロ粒子全体の走査電子顕微鏡写真(SEM)であり、外面は全体的な球形状を維持しながら明確な脳様テクスチャーを有している。脳様トポグラフィが達成されるベースポリマー溶液は、有機粘性ポリマー溶液である。
【0090】
ミクロ粒子の表面トポグラフィは、ベースポリマー溶液の粘度、水相又は有機相特性、形成中に加えられた剪断力、溶出物特性及びコーティング特性を変化させることにより設計することができる。このことは、技術的に作り出された表面トポグラフィと呼ばれるものをもたらす。
【0091】
例16は、トポグラフィに対する溶液濃度及び粘度の効果を示す。
【0092】
図9A及び9Bは、表面トポグラフィは同等であるが、しかし内部構造が明確に異なる本発明のミクロ球体のミクログラフである。なお、図9Bには、ボイド部分が存在し、図9Aにはボイド部分は存在しない。
【0093】
一貫した表面トポグラフィを使用することが、本発明のいくつかの実施態様において可能ではあるが、図9A及び9Bに示されたように内部ミクロ球体構造を変化させることも可能である。図9Aは、ボイド90なしのミクロ球体の光学顕微鏡写真である。図9Bは、大きなボイド96を有するボイド95を含む、図9Aと同等の外径のミクロ球体の光学顕微鏡写真である。図9Bは、大きなボイド98及び小さなボイド99を有するボイド97を含むミクロ球体の光学顕微鏡写真である。
【0094】
図10Aは、平滑な表面100を有する本発明のミクロ球体を150Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図10Bは、平滑な表面101を有するこれらのミクロ球体を500Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。
【0095】
図11Aは、PVA発泡体粒子(150〜250 μm外径ミクロ粒子サイズ)110の画像である。図11Bは、本発明のミクロ球体(10〜250 μm外径ミクロ球体サイズ)111のミクロ球体を示す画像である。
【0096】
図12Aは、ミクロ多孔質表面120を有するリドカイン添加型ミクロ球体を150Xで画像形成するSEM顕微鏡写真である。図12Aはまた、ミクロ多孔質表面121を有するリドカイン添加型ミクロ球体を示す。図12Bは、ミクロ多孔質表面125を有するリドカイン添加型ミクロ球体を500Xで画像形成するSEM顕微鏡写真であり、また、リドカイン添加型ミクロ球体126を示す。
【0097】
図13Aは、コンボリューション及びコンボリュート状又は「脳様」表面130を有する本発明のミクロ球体を140Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図13Bは、ミクロ粒子ベースポリマー136と、小さなコンボリューション137と、大きなコンボリューション138とを含む、コンボリューション及びコンボリュート状又は「脳様」表面135を有するミクロ球体を500Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。
【0098】
硬さはさらに、本発明において設計することができる更なる特性である。硬さは、ベースポリマー、コーティング、溶出物の性質、添加剤、及びミクロ粒子の製造及び処理に部分的に依存する。
【0099】
ミクロ粒子形成の硬化段階は任意であり、また、液-液抽出技術を通してミクロ球体から有機物又はその他の含まれる物質を除去することができる。有機溶剤、水性溶剤、又は種々異なる溶剤の混合物を含む種々の溶剤を使用することにより、硬化を達成することができる。
【0100】
いくつかの実施態様の場合、ミクロ粒子は粉末形態で使用するために製造され、調製される。粉末は周囲条件下で比較的自由に流動する。この特性はいくつかの実施態様において、粒子充填バイアルを静かに震盪させ、そしてミクロ粒子の自由流動運動に注意することにより観察することができる。
【0101】
ミクロ粒子粉末は使い捨て滅菌バイアル内に含有又は保存することができる。粉末のミクロ粒子は、例えば流体中の懸濁を含む処置技術を用いて溶液中に入れることができる。本発明のミクロ粒子は、臨床指示において使用することができる。これらの再懸濁されたミクロ粒子はカテーテルを通して注入されるか、又は組織床内に直接に塗布される。
【0102】
図14は、本発明の薬物溶出ミクロ球体140と、本発明の放射線不透過性(「ラジオパーク」)ミクロ球体141とを示す写真である。
【0103】
本発明のミクロ粒子は、小内径注入カテーテルを通して注入することができる。本発明のミクロ粒子は、コンベンショナルな低プロフィール注入カテーテルを通して注入することもできる。カテーテル送達のために典型的に選択されるミクロ粒子の実施態様は、耐圧縮性であり、そして非架橋型の生体再吸収可能な材料を含む。
【0104】
塞栓剤は、血管を通る血流を機械的に閉塞するのに使用される物質である。本発明のミクロ粒子は、塞栓剤として利用することができる。本発明の方法は、血流を機械的に閉塞するために、所期の塞栓部位に塞栓剤を、標的を定めた状態で送達するのを可能にする。所望の外径、滑らかさ、耐圧縮性、密度、浮揚性、コーティング、及び注入性に影響を与える他の特性を選択するような手段によって、カテーテルを通して送達するように本発明のミクロ粒子ボーラスを適合させることができる。標的脈管構造の機械的な閉塞は、いくつかの実施態様において、1つ又は2つ以上のミクロ粒子による塞栓形成によって達成することができる。
【0105】
図15は、有茎性粘膜下線維腫151、壁内線維腫152、漿膜下組織線維腫153、粘膜下線維腫154、壁内線維腫155、及び有茎性粘膜下線維腫156を含む線維腫を示す、ヒトの子宮150の図である。
【0106】
本発明の1実施態様の場合、子宮動脈部位にカテーテルが血管造影法によって案内される。次いで、ミクロ粒子を予め充填されたシリンジを子宮動脈内に注入することにより、子宮筋腫を梗塞する。図16は、シリンジ160、ミクロ粒子161を有するキャリア溶液、及びカテーテル162を含むカテーテル系を使用することにより、ヒトの子宮にミクロ粒子を送達することを含む。カテーテルは、大腿動脈163及び子宮動脈164を通って、線維腫脈管構造166が線維腫167に血液供給する、子宮165近くの位置に達する。
【0107】
図17は、筋腫を有する子宮、カテーテルを通した粒子の送達、及び粒子が筋腫を取り囲む局所的組織を梗塞するのに伴う粒子を示す拡大図である。図17は、カテーテル系の使用によって、ヒトの子宮170にミクロ粒子を送達することを示す。図17は、線維腫血管172によって血液供給された線維腫171の治療を示す。カテーテル177によって子宮動脈176を通して、ミクロ粒子173, 174及び175が送達される。
【0108】
図18A及び18Bは、生理食塩水中に懸濁された2つの異なる外径(それぞれ10 μm及び80 μmの19A及び19B)を有するミクロ粒子ボーラスを示す。ミクロ粒子ボーラスは、約100〜150μmの注入側孔を有する1.4-Frミクロ注入カテーテル(例えばNeuroVasX(登録商標) Sub-ミクロ注入カテーテル、モデル100-DG-015)を通してin vitroで注入される。図18Aは、生理食塩水181中の、約100〜150μmの注入側孔180を有するミクロ注入カテーテルの画像である。図18Aは、10 μmのミクロ粒子、例えばミクロ粒子183を送達する注入流182を示す。図18Bは、生理食塩水186中の、約100〜150μmの注入側孔185を有するミクロ注入カテーテルの画像である。図18Bは、80 μmのミクロ粒子、例えばミクロ粒子188を送達するミクロ粒子注入流187を示す。ミクロカテーテルを通して両粒子サイズを送達するには最小限の労力しか必要とならない。
【0109】
いくつかの実施態様におけるミクロ粒子を調製することにより、薬物を局所的に送達する。さらに、いくつかの実施態様の場合、制御された速度で物質を放出するように、ミクロ粒子を設計することができる。本発明のミクロ粒子は、ミクロ粒子から局所的に放出することができる1種又は2種以上の生体活性物質を内蔵又は担持することができる。ミクロ粒子は、1種又は多種の生体活性物質(例えばリドカイン)の制御された持続型送達のための基剤として作用することができる。いくつかの実施態様の場合、ミクロ粒子は、1日当たり数ナノグラムから数ミリグラムの薬物の薬物送達投与量を提供することができ、また、標的部位内の組織及び標的部位を直接に取り囲む組織に局在化することができる。薬物放出は持続することができるか、又は経時的に変化することができる。この薬物送達は、生体活性物質の「溶出」と呼ばれる。ミクロ粒子の表面積はまた、再吸収速度及び/又は薬物溶出プロフィールに影響を与える。
【0110】
生体活性物質及び添加剤は、本発明のミクロ粒子中に内蔵する、ミクロ粒子によって担持するか、ミクロ粒子中に含浸させるか、又はミクロ粒子とともに使用することができる全ての化合物、溶液、材料、純粋な物質及び物質の混合物を含む。製造プロセスの一部として、又は臨床的な使用時に、ミクロ粒子中に生体活性物質を内蔵することができる。多くの生体活性物質の例を別個に又は組み合わせてここに記載する。
【0111】
生体活性物質は、所望の生物学的応答を導き出すように意図された生体活性薬剤を含む。これらの一例としては下記のものが挙げられる:
・ 任意の遺伝子送達ベクター、例えばレトロウィルス、アデノウィルス、アデの随伴ウィルス、単純ヘルペスウィルス、POXウィルス、プラスミドDNA、ネイクドDNA、及びRNA転移ベクターを介して、サイトカイン、抗原、欠陥遺伝子、腫瘍抑制因子、自殺遺伝子、マーカー、受容体又は任意の治療遺伝子(すなわちVEGF又はFGF)をコードする任意の遺伝子又は遺伝子群の送達を含む遺伝子治療薬;
・ 癌組織を局所的に治療するための化学毒素、抗新生物薬(例えばドキソルビシン、シスプラチン、マイトマイシン、アクチノマイシン、パクリタキセルなど);
・ アルキル化剤(例えばカルボプラチン、及び/又はメルファラン);
・ 抗生物質(例えばダウノルビシン、ミトラシン);
・ 代謝拮抗物質(例えばメトトレキサート、ビスホスホネート);
・ ホルモン・アゴニスト/アンタゴニスト(例えばニルタミド);
・ 疼痛管理を容易にするための麻酔薬(例えばリドカイン、ブピバカイン、ジブカイン、キシロカイン、ロピバカイン、ネサカイン、メピバカイン、エチドカイン、テトラカイン又はこれらの混合物);
・ 局所的放射線治療を可能にする放射性同位元素(例えばヨウ素-131、ストロンチウム-89、サマリウム-153、イリジウム-192、ホウ素-10、ルテチウム-177、リン-32、アクチニウム-225、イットリウム-90);
・ 外部から加えられたエネルギー(例えばマイクロ波)を濃縮して治療効果を達成することができるエネルギー吸収材料(例えば温熱療法);
・ ミクロ球体のタイプを区別するための着色剤、例えばFD&C ブルーNo.1(ブリリアント・ブルー FCF)、FD&C レッドNo.2(エリトロシン)及びFD&C No.5(タルトラジン);
・ 抗菌物質(例えば銀、クロロヘキサジン、トリクロサン);
・ 磁界内のミクロ粒子の挙動、磁気共鳴画像形成反復を変化させる磁性物質(例えば鉄類金属);及び
・ 診断画像形成モダリティ(例えばX線写真、超音波)による可視性を高めるための物質(例えば金、タンタル)。
【0112】
ミクロ粒子は、数時間から数カ月間にわたって生体活性物質を持続的に溶出することができる。
【0113】
他の生体活性物質、添加剤、及びミクロ粒子内に内蔵することができる物質の一例としては、有機及び無機化合物、及び分子、アミノ酸、タンパク質、酵素、核酸塩基、バクテリア、ウィルス、抗生物質、抗体、抗原、プリオン、ウィルス、脂肪、栄養物、ビタミン、元素及びこれらの混合物が挙げられる。
【0114】
ミクロ粒子は、生体活性物質又は添加剤の徐放又は持続放出に適合することができる。図25は、本発明の粒子を形成するために使用された製造方法の概観を示すフローダイヤグラムである。分岐点A、B及びCは、薬物、生体活性物質、又は添加剤、及びこれらの混合物を本発明中に添加することができる種々異なる時点を意味する。生体活性物質、薬物、又は添加物及びこれらの混合物を、可溶性又は不溶性形態でベースポリマー中に直接に内蔵するか、可溶性又は不溶性形態でボイド空間内に内蔵するか(19C)、又はミクロ球体上又はミクロ球体内に吸着することができる。
【0115】
生体活性物質及び添加剤が添加される他の典型的な時点は、洗浄後、保存溶液中、輸送溶液中、キャリア溶液中、或いはミクロ粒子又はその成分が任意の生体活性物質又は添加剤と接触又は混合される任意の時点を含む。
【0116】
加えて、本発明のミクロ粒子は、バイオセンサー、診断デバイス又はマイクロ治療マシン(例えばナノボット)をカプセル化するように構成することができる。
【0117】
図19は、ミクロ粒子の1実施態様から得られたリドカインの徐放を示すグラフである。下記例9を参照されたい。図12A及び12Bは、平滑な球形を示す高リドカイン投与粒子の表面SEMを示す。図20は、リン酸緩衝溶液(PBS)中の37℃のプロトタイプ高リドカイン投与粒子から放出されたリドカインの正規化蓄積質量を示す。下記例11を参照されたい。
【0118】
図21A及び図21Bは、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)試験によって実証されたリドカイン安定性を有する実施態様の一例を提供する。図21Aは、ミクロ粒子から溶出されたリドカインのHPLC試験結果を示す。安定性は、3.1分における共通ピーク、及びピーク形状の類似性によって実施される。下記例10を参照されたい。
【0119】
ミクロ粒子による薬物送達によって標的部位内及び標的部位の直接周りの神経シグナルをブロックすることによって、起源部位の虚血性疼痛を達成することができる。
【0120】
本発明によるミクロ粒子によって、視覚化剤を使用することもできる。本発明とともに利用できる視覚化剤の一例としては、着色剤又は色素が挙げられる。1実施態様の場合、ミクロ粒子ボーラスは、フルオロスコープで見ることができる物質を有する視覚化剤を含む。本発明とともに使用することができる、フルオロスコープで見ることができる物質の一例としては、金粒子が挙げられる。
【0121】
ミクロ粒子は「ライフサイクル」、「再吸収プロフィール」又は「分解プロフィール」を有する。患者内への注入後、時間が進むに従って、加水分解的及び/又は酵素的分解が発生する。典型的には、所定の時間後(典型的には30日超)には生理学的に有意な量の所与のミクロ粒子は残らない。270日後には、ミクロ粒子の完全な再吸収が典型的である。
【0122】
ミクロ粒子のライフサイクル、又は分解速度は幅広く変化することができる。患者におけるミクロ粒子ライフサイクルは、数日間から数カ月間、又は数年間であってよい。本発明のミクロ粒子は、脈管構造内部に30日超にわたって存続するように適合することができる。
【0123】
いくつかの実施態様における本発明のミクロ粒子は、塞栓治療効果が達成されてから30日を上回る時間後に、完全に再吸収される。いくつかの実施態様の場合、再吸収は30〜180日で完了する。数時間から数日間オーダーの、より短い再吸収時間を採用することもできる(例えば6時間、12時間、1日間、又は15時間)。再吸収が完了した後には、患者体内には、生理学的に有意な塞栓剤が残されることはない。このような塞栓剤は、近い将来、元の標的部位を超えて隣接する脈管構造内に移動し、健常組織の不当な塞栓形成を引き起こすおそれがある。いくつかの実施態様の場合、塞栓剤の永久残留物は残らない。所望の場合には、ミクロ粒子は、無期限に存続するように構成することができる。
【0124】
ミクロ粒子は典型的には、塞栓処置の臨床目的を達成するのに必要な存続期間(例えば1〜6ヶ月)を上回る再吸収速度を示す。
【0125】
ミクロ粒子の再吸収完了までの時間は、ベースポリマー化学組成の選択に依存する。PLGA実施態様の場合、再吸収速度に影響を与える1組成変数は、グリコール・コポリマーのパーセンテージと比較された乳酸であってよいポリマーのパーセンテージである。グリコール酸に対する乳酸の比は、本明細書内で論じた所望の再吸収特性に従って選択される。グリコール酸に対する乳酸のモル組成は、0モル%〜ほとんど100モル%であってよい。従ってグリコール酸に対する乳酸の比は、0〜ほとんど1.0であってよい。いくつかの実施態様の場合、グリコール酸に対する乳酸のミクロ粒子比は、0.25〜0.75であってよい。再吸収に対する効果は、典型的には短時間、例えば数分間、数時間から最大270日又はそれ以上まで、再吸収時間に適合させることである。乳酸又はグリコール酸は、コポリマー比と比較してより長い分解時間を有する。組成が50モル%乳酸、50モル%グリコール酸(すなわち1:1の比)に接近するにつれて、分解時間は所与の分子量に対応してさらに短くなる。分子量が高ければ高いほど、ポリマーの分解時間は長くなる。高分子量のポリ乳酸は、数年オーダーを必要とし得るのに対して、低分子量のものは、1週間超の時間以内で分解することができる。
【0126】
ミクロ粒子内部の総ボイド容積及びボイド分布が、ミクロ粒子の水和に影響を与えることができる。ミクロ粒子内部の総ミクロ粒子容積及びボイド又は亀裂分布が、水和に影響を与えることができる。典型的には、総容積がより大きくなり、ボイドの分布がより密になり、そしてより多くの相互連通が生じるにつれて、水和速度が高くなる。総容積が小さく、分布されたボイドが少ない実施態様の場合、水和速度は低い(例えば1週間以上の時間)。このことが生じ得る理由は、より固いポリマーを通って水が拡散することにある。
【0127】
ポリマー主鎖のエステル結合は加水分解によって破断され、その結果、個々のポリマー成分、例えば乳酸及びグリコール酸が生成され可溶化されるまで、ポリマー分子量が連続的に減少することになる。
【0128】
ミクロ粒子において、ポリマーが分解し続けると、機械的強度の損失が生じる。1実施態様の場合、30日を超えた時点で、分解の結果、ミクロ粒子がもはや耐圧縮性ではなくなる点に達する。平均ポリマー分子量が15%超だけ低減され、ミクロ粒子がポリマー水溶性鎖の10%以上の総質量損失を被ったときに、1実施態様の耐圧縮性が失われた。
【0129】
本発明のミクロ粒子の1実施態様の場合、ベースポリマー(例えばPLGA)の主鎖をランダムに加水分解することにより、分解が生じ、より少ない程度にin vivoの酵素的分解が生じる。分解生成物(図22では、乳酸及びグリコール酸)が、代謝経路を通して、又は直接的な腎排泄によって、身体から排除される。PLGAベースポリマーの実施態様の場合、分解速度は、PLGAのコポリマーが等モル比に近づくにつれて、非線形に高くなり続けることができる。
【0130】
本発明のいくつかの実施態様におけるミクロ球体は、制御された生体再吸収(すなわち「生分解」、「再吸収」、「生体吸収」又は「吸収」)を可能にする1種又は2種以上の耐圧縮性の生体適合性材料から製造される。
【0131】
1実施態様の場合、ポリマー鎖が可溶性になり、塞栓形成部位及び身体から除去されるので、本発明のミクロ粒子の再吸収が発生する。再吸収は、10,000という低分子量の50モル%:50モル%のd,l-PLGA(d形態:l形態、鏡像異性体比)配合物の場合、再吸収は約30日という短い時間で発生することができ、又はほぼ150,000以上という、より高い分子量のPLAの場合には、再吸収は1年を上回る時間で発生することができる。
【0132】
ミクロ粒子が、顕著な血液量によってはもはや潅流されない組織床内部に塞栓形成されたときには、乳酸及び/又はグリコール酸副産物の除去量が抑えられ、そして局所的な環境が酸性になるにつれて、加水分解速度は自己触媒的になることができる。
【0133】
加えて、加水分解プロセスは粒子全体を分解するので、生物学的に有意な残留異物が、器具レシピエント内部に保持されることはない。ミクロ粒子を構成する材料は最終的には身体から除去され、そして質量保持力は、生物学的に有意ではないレベルにあり、検出不能なほど低い。
【0134】
ミクロ粒子が加水分解するにつれて、これらは典型的には、宿主血管からの管腔内の線維形成性応答を導き出す。線維形成性応答は一般に、沈積から1〜21日以内に開始される。線維形成性応答は耐久性のある組織閉塞を提供することができる。このような閉塞は、元の血管を再疎通しにくく、又は再疎通を防止する。いくつかの実施例の場合、新しい組織は線維性である。
【0135】
本発明のミクロ粒子のいくつかの実施態様は、炎症の特徴的な生体応答を導き出す。
【0136】
図23A〜Cの一連の血管造影画像は、イヌの腎臓の選択的カテーテル法及び急性塞栓に関するin vivoの実証を示す。下記例6を参照されたい。
【0137】
図24A〜Cは、2つの異なるサイズのミクロ粒子で行われるイヌの腎臓の順次的な塞栓形成処置を示す。下記例7を参照されたい。
【0138】
図22は、一般的なPLGA及びポリ(アルファ-ヒドロキシエステル)の分解を示す。ポリマー主鎖のエステル結合(炭素酸素炭素結合)は加水分解によって破断され、その結果、個々のポリマー成分、例えば乳酸及びグリコール酸が生成され可溶化されるまで、ポリマー分子量が連続的に減少することになる。
【0139】
ポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体の生分解、及びこれらのミクロ球体との組織反応が、解剖、及びコンベンショナルな光学顕微鏡法、並びに走査電子顕微鏡法(SEM)、及び透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて、50モル%:50モル%のポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)(d形態:l形態、鏡像異性体比)マイクロカプセル(平均外径=30 μm)のコポリマーの、ラットにおける筋内注入を評価することにより試験される。埋め込み後に、最小限の局在化急性筋炎が注入部位に最初見られた。4日目に数個の小さな異物巨細胞が、最小異物応答に関与して存在した。その後、炎症細胞は減少し、そして個々のマイクロカプセルが未熟線維結合組織及び大型合胞異物巨細胞によって取り囲まれた。35日目までに、内部マトリックスの粒状で僅かに浸食された外観から成る、いくつかのマイクロカプセルの明確な変化がSEMによって見られた。42日目までに、マイクロカプセルの外縁部が広く浸食された。56日目に、炎症性の結合組織反応はほとんど完全に消散し、そして、生分解が続いて、マイクロカプセルの残留片だけが63日目に存在した。ファゴサイトーシスは、生分解プロセスにおいて重要なファクターであるようには見えなかった。
【0140】
ポリ(α-ヒドロキシエステル)系ミクロ球体に対する既知の良性生体応答がある。ポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体分解速度は、乳酸鎖内のグリコール単位含有率に比例して増大する。ラットモデルの肝門脈循環内のin vivo分解時間は、75モル%:25モル%〜90モル%:10モル%のラクチド:グリコシド比を含むミクロ球体配合物に対して、ほぼ6〜12週間であった。
【0141】
既知のポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体の分解時間(すなわち6〜12週間)は、臨床目的及び術前塞栓形成処置の時間枠と調和する。塞栓形成後に神経外科処置が指示される場合、これらの処置は塞栓形成処置に続く第1週に最も頻繁に実施される。しばしば、塞栓形成は手術直前に行われる。塞栓形成から手術までの最大時間は、72〜76日オーダーにあると思われる。従って、ポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体は、生分解にかかわらず、手術が計画された場合に、術前塞栓形成を達成するのに十分に耐久性がある。
【0142】
ベースポリマーの平均分子量が10,000であり、生分解時間がほぼ30日以下である1実施態様の場合、生分解速度は分子量の関数であり得る。平均分子量が150,000である別の実施態様の場合、生分解は、1年超が過ぎるまで発生しなかった。
【0143】
ポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体によって達成される血管閉塞の耐久性は、これらが導き出す生物学的応答によって増大される。ラットの肝臓の塞栓形成後に、組織学的分析は、ミクロ球体分解中に、炎症応答を、中程度の異物反応として特徴付けできたことを示すことが判る。炎症プロセスは、ポリマー配合とは無関係に、3つの工程で発生することが観察された。第1の工程は、マクロファージ、リンパ球、及び場合によっては異物巨細胞がミクロ球体を取り囲む、亜急性炎症である。第2の工程は、炎症反応の増大によって特徴付けられる一方、ミクロ球体は奇形になり、そして塞栓形成された領域は外来巨細胞、リンパ球及び線維芽細胞によって侵入される。第3の工程において、侵入は減小することが観察された。ミクロ球体の分解が完全である場合、観察された炎症残余物はなく、化膿性炎又は出血もなかった。
【0144】
本発明のミクロ粒子の製造は典型的には、下記の工程を伴う。図25はミクロ粒子の典型的な製造工程を示す。
【0145】
1種又は2種以上のベースポリマーが選択される。一般に、本発明のミクロ粒子に関して考えられるべきベースポリマーは、PLA、PGA、PLGA、PLA-TMC、PGA-TMC、PLGA-TMC、又はその他の生体再吸収可能なベースポリマーである。次いで、1種又は2種以上のベースポリマーは、ベースポリマー溶液を形成する溶液中に溶解される。ベースポリマー溶液は、有機溶液、水溶液、又は多相溶液であってよい。溶液の性質は、1種又は2種以上の溶剤の選択及び1種又は2種以上のベースポリマーの選択に照らして変化させることができる。
【0146】
次いで、ポリマー・ベース溶液を水性又は有機内相溶液に添加する。溶解されたポリマーが添加される溶液を、内相溶液と呼ぶ。この内相溶液は、これがポリマー・ベース溶液の特性とは区別可能である限り、水性相又は有機相であってよい。内相溶液は典型的にはカプセル化されるようになり、或いはその形成時にミクロ粒子内部に含有される。なお、本発明のミクロ粒子は、ポリマー・ベース溶液を内相溶液に添加することによってだけ形成可能であるのではなく、いくつかの実施態様では、この代わりに、内相溶液として役立つ溶液をポリマー・ベース溶液に添加することもできる。内相溶液がポリマー・ベース溶液に添加される実施態様の場合、内相溶液は、過剰のポリマー・ベース溶液に多量に添加することができ、或いは、内相溶液は、ミクロ粒子の形成を可能にするのに十分な量で添加することができる。
【0147】
ポリマー・ベース溶液が内相溶液に添加されるか又は一緒にされたら、合体された混合物をブレンドする。この合体された溶液を、ミクロ粒子ベース溶液と呼ぶ。この溶液は、渦流処理、震盪、ブレンド、超音波処理、又は剪断力及び混合力をミクロ粒子ベース溶液に加える任意のその他の手段によって強力に混合することができる。この剪断・混合作用を、ミクロ粒子発生工程と呼ぶ。
【0148】
ミクロ粒子を形成するためにポリマー有機溶液が添加される水性外相は、ポリビニルアルコール(我々の例では0.3 wt%)を含有する。PVAは、乳化剤として作用し、硬化されていないミクロ粒子が融合するのを防止する。また、任意の硬化工程において、製造技術は、イソプロピルアルコール(IPA)の添加を採用することにより、ポリマー有機溶剤から有機物を抽出し、そしてポリマーを沈澱させることができる。この結果、ミクロ粒子を1時間以内にほぼ完全に硬化させることになる。IPAを添加せず、有機相がポリマー有機粒子から水性相に移動し、次いで空気中に移るのに伴って、所定の時間、例えば1時間超から1〜10日間にわたってミクロ粒子を硬化させておくことも可能である。
【0149】
ミクロ粒子の製造中に、任意のコーティング工程を採用することができる。コーティングは、仕上げ済ミクロ粒子上に噴霧されてよく、或いは、コーティングとして堆積されるべきこれらの物質を含有する溶液中に浸すことにより塗布されてもよい。任意には、ミクロ粒子を洗浄することにより、過剰のコーティングを除去することができる。
【0150】
所望のミクロ粒子が製造されたら、これらは典型的には洗浄され、篩分けされ、そして凍結乾燥される。
【0151】
ミクロ粒子の洗浄は、最小サイズが選択された篩上でミクロ粒子を捕捉し、そして水をミクロ粒子上に1〜2分間にわたって流すことを伴う。或いは、ミクロ粒子は、遠心分離管内で捕集し、1分当たりの回転数(RPM)1200以下の速度で、急速にスピンダウンし、デカントし、そして新鮮な水を加えることもできる。このことは必要に応じて繰り返すことができる。
【0152】
ミクロ粒子の篩分けは、上側に最大スクリーンサイズを、そして下側に最小スクリーンサイズを含有する篩のスタック上に、製造されたミクロ粒子を注ぐことを伴う。所望のサイズ範囲は、例えば下側スクリーンの頂面上に集めることができる。凍結乾燥は、凍結乾燥機上に入れる前にミクロ粒子を凍結させることを含む。
【0153】
本発明によるミクロ粒子は、多種多様の生体活性物質及び添加剤を担持することができる。生体活性物質及び添加剤は任意には、最初に選択されたベースポリマー、又はポリマー内部に、また任意には内相溶液内部に存在することができる。生体活性物質及び添加剤は任意には、ベースポリマーが溶解される溶剤中に溶解することにより提供し、ベースポリマー溶液に添加し、内相溶液に添加し、硬化又はコーティング中に添加されたミクロ粒子相内に混合されている溶液に提供し、又は洗浄段階中に添加することができる。さらに生体活性物質及び添加剤は任意には、ミクロ粒子の使用(例えば注入)前又は使用時に添加、吸収又は吸着することができる。
【0154】
本発明のミクロ粒子を製造する際に採用することができる製造プロセスの要約の外観が、添付の図25のフローチャートに提供される。PLGAベースポリマー・ミクロ粒子の場合、既知の生体再吸収可能なベースポリマー塊(すなわちPLGA, Alkermes, Inc.)を有機溶剤クロロホルム(すなわち、CHCl3, Sigma, Inc.)中に溶解し、そして溶液を渦流処理することにより徹底的に混合する。他の有機溶剤、例えば酢酸エチル(すなわちCH3COOCH2 CH3, Sigma, Inc.)又は塩化メチレン(すなわちCH2 Cl2, Sigma Inc.)も共通に使用される。内相のための規定量の水を溶液に添加する。この量は、ポリマー及び有機溶液の総容積未満の総容積を有する。渦流形成及び/又は超音波処理は、水性内相を内蔵する。約4 mlのこの溶液を、約15〜20 mlの0.3水性PVA(Fisher Scientific International, Inc.)を含有する試験管に移し、渦流形成し、そして0.3 wt%の水性PVA 150 mlを含有する300 mlのビーカー内に注ぎ込んだ。この乳化プロセスを必要に応じて繰り返す。
【0155】
PVAを界面活性剤として使用することにより、ミクロ粒子の凝集を防止する。結果として生じた乳化物を、磁気バーを使用して強力に混合する。この再乳化プロセスは、生体再吸収可能なベースポリマーから成る、剪断誘発型球形ミクロ粒子を形成する。続いてこれに、100 mlの2 vol%の水性イソプロパノール(IPA; Fisher Scientific International, Inc)を添加する。ジクロロメタンをアルコール外相に抽出することにより、溶解されたベースポリマーが沈澱するので、ミクロ粒子の硬化が生じる。この系を、溶剤の適切な抽出を保証するのに十分な時間(すなわち1.5〜2時間)にわたって撹拌する。最後に、形成されたミクロ粒子を篩分けして規定のサイズ範囲にし、水中ですすぎ、そして凍結乾燥させることにより、微粉末を製造する。次いで、包装及び滅菌を行うことができる。
【0156】
前記のように、ミクロ粒子製造プロセスの種々の段階で、生体活性物質又は添加剤を添加することができる。生体活性物質は、添加剤の部分集合として考えることができる。例として、生体活性物質、薬物、添加剤及びこれらの組み合わせを、図25に示すように、少なくともA, B及びCの時点で内蔵することができる。生体活性物質又は添加剤は任意には、例えば下記時点で添加することができる:
・ ポリマー有機溶剤(生体活性物質は有機物質中に可溶性又は不溶性であってよい);
・ 水性内相(生体活性物質は水性相中に可溶性又は不溶性であってよい);
・ 粒子が粉末又は乾燥形態である場合、製造最終工程後に下記手段を用いる:
・ 生体活性物質(例えば薬物)又は添加剤との物理的混合(例えば、患者へのミクロ粒子注入前に、生体活性物質が完全又は部分的に溶解された液体を添加することができる);
・ 付加的な注入用液体と合体することができるか、又はできない薬物溶液との物理的混合;
・ 薬物による噴霧コーティング;又は
・ 他の薬物含有材料、例えば他の粒子と薬物との物理的混合。
【0157】
・ コーティング層内又はコーティング層上への内蔵、
・ 使用時におけるミクロ粒子上又はミクロ粒子内への吸着又は吸収。
【0158】
ミクロ粒子の密度操作は、ダブル・エマルジョン技術による製造中に達成することができる。この技術において、一次粒子の形成前に有機ポリマー溶剤中に水性内相が内蔵される。水性内相の代わりに、固形の低密度材料(例えばゼラチン、PLGA-PEG、PVA、コラーゲン、キトサン、キチン、アルブミン、アルギネート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ペクチン、アミロース及びフィブリノゲン)を内蔵することができる。
【0159】
本発明のミクロ球体は、複数の生体活性物質及び/又は複数の生体再吸収可能なポリマー(例えば異なる分解速度を有する同じ群のバイオポリマー)の内蔵を可能にする。
【0160】
1種又は2種以上の薬剤を1日〜45日超にわたって持続制御放出するためのベースポリマーを用いた複数の薬物調製方法がある。
【0161】
図25は、本発明の粒子を形成するために使用された製造方法の概観を示すフローダイヤグラムである。分岐点A、B及びCは、薬物、生体活性物質、又は添加剤、及びこれらの混合物を本発明中に添加することができる種々異なる時点を意味する。生体活性物質を、可溶性又は不溶性形態でベースポリマー中に直接に内蔵するか、可溶性又は不溶性形態でボイド空間内に内蔵するか(19C)、又はミクロ球体上又はミクロ球体内に吸着することができる。
【0162】
生体活性物質及び添加剤が添加される他の典型的な時点は、洗浄後、保存溶液中、輸送溶液中、キャリア溶液中、或いはミクロ粒子又はその成分が任意の生体活性物質又は添加剤と接触又は混合される任意の時点を含む。
【0163】
本発明のミクロ粒子による治療は典型的には、例えば塞栓形成、或いは1種又は2種以上の生体活性物質又は添加剤を有するミクロ粒子の送達を含む。
【0164】
ミクロ粒子は例えば、脳、肝臓、子宮、卵巣、脊椎、頭部、頚部、乳房、及び程度はさほど高くはないが身体の他の部位内でしばしば発生する悪性又は良性組織塊の塞栓形成に使用することができる。ミクロ粒子は、注入によって送達することができる。カテーテル、血管造影、及びシリンジを伴うインターベンショナル・ラジオロジーを利用する同じ処置技術を、本発明のミクロ粒子とともに採用することができる。
【0165】
本発明のミクロ粒子は、注入されて標的部位に達した時に閉塞を形成するミクロ粒子が沈積又は蓄積されると、閉鎖を形成するように構成される。サイズが調和されたミクロ粒子が標的血管内に沈積し、標的血管を通る潅流を阻害するので、結果として、いくつかの実施態様において閉鎖が生じることができる。ミクロ粒子は、標的血管内部で沈積する。標的血管は、標的脈管構造内部に注入されると血流を閉塞するミクロ粒子で膨張して負荷されるようになっている。
【0166】
僅か1つのミクロ粒子から閉鎖を達成することができ、或いは、いくつかの又は多くのミクロ粒子が閉鎖を構成することもできる。
【0167】
本発明のミクロ粒子は、処置目的として導管の塞栓形成を必要としないように利用することもできる。例えば本発明のミクロ粒子は例えば、組織をバルキングする用途で管腔周囲組織内に直接に注入するか、癌又は心筋治療の組織塊内に直接に注入するか、壁内疾患を治療するために血管又は生物学的導管の壁内に注入するか、又は生体活性の利益を達成するために血流内に注入することができる。本発明のミクロ球体は、これらの、及び類似の非塞栓形成用途に適用されやすい。
【0168】
塞栓粒子は、典型的には、経カテーテル注入を介して、選択された塞栓形成部位に送達される。血管標的及び塞栓剤のサイズに適した形態(例えば外径、長さ、形状)を有する送達カテーテルが適している。本発明のミクロ粒子は、ミクロカテーテルを含む、内径が変化する注入カテーテルを通して送達することができる。典型的な実施態様の場合、本発明とともに利用されるカテーテルの内径は、約150μm〜約2 mmのカテーテルである。しかし、これよりも著しく小さな内径(例えば50μm)又は著しく大きな内径(例えば5 mm)のカテーテルを、それぞれナノ粒子又は大きな外径の粒子を送達するために、必要に応じて採用することができる。小口径の100μm〜1000μm内径の注入カテーテルを通して塞栓剤を送達することができる。ミクロカテーテルによる注入は、ミクロ粒子が腫瘍部位に送達されるのを可能にし、そして標的治療を容易にする。ミクロ粒子が小さければ小さいほど、塞栓形成することができる血管も小さくなる。1実施態様は小さな腫瘍を標的にする。より小さなカテーテルは、血管の痙攣を最小限に抑え、塞栓形成成功率を高める。
【0169】
カテーテル送達及び注入処置のフルオロスコープ視覚化は、塞栓形成器具をいくつかの実施態様において正確に配置できることを保証する。ミクロ粒子は、注入の前にラジオパーク造影剤を含むか、又はこれと混合することができる。コンベンショナルな塞栓形成処置と同様に、塞栓粒子に対する注入媒質の比は、塞栓形成処置の臨床目的に依存する。
【0170】
本発明の1実施態様の場合、ミクロ粒子利用のための送達システムは、任意の生体活性物質又は添加剤を有するミクロ粒子ボーラス、ミクロ粒子ボーラスを含有するように適合された、又はミクロ粒子ボーラスを含有する送達装置を含む。さらに、送達装置は、ミクロ粒子ボーラス及びキャリア溶液を患者体内に注入するように構成される。
【0171】
本発明のミクロ粒子は、粉末様形態で供給することができ、或いは、輸送溶液、キャリア溶液、又は注入物中に懸濁することもできる。いくつかの実施態様は、予め測定された量のミクロ粒子を含有する使い捨て滅菌バイアル内で供給することができる(図14)。或いは、ミクロ粒子は、キット型システム内に予め包装することもできる。このシステムは、例えば生体活性物質又は添加剤を任意に有することができるミクロ粒子、予め測定された注射溶液部分(例えばミクロ粒子との使用に対して最適化された密度を有するラジオパーク造影剤及び生理食塩水)、ミクロ球体と注入溶液(例えば、生理食塩水、キャリア溶液、又は造影剤溶液)とを混合する手段、及び、カテーテルを通る懸濁液の注入を容易にする手段を含むことができる。最小限の改変を用いて上記要件を満たすことができる、商業的に入手可能な混合/注入システムは、Becton Dickenson MONOVIAL(登録商標)及びVetter LyoJect(登録商標)シリンジを含む。これらは両方とも、注入前に乾燥薬剤を元に戻すために使用することができる。
【0172】
ミクロ粒子の滅菌は、例えば:輻射線、紫外線、又はエチレンオキシドを含む任意の数の有効な非水和法のうちの1つによって達成することができる。
【0173】
本発明を制限するように意図するものではないが、下記例は、いかにして本発明を形成し試験することができるかを特定する。
【実施例】
【0174】
例1, 2, 3, 7, 16及び18における実施態様のミクロ粒子を、ダブル・エマルジョン溶剤抽出技術の改変形によって製造した。このプロセスは、高密度及び低密度のミクロ粒子、及び、生体再吸収可能なポリマー中に直接に溶解された生体活性物質(例えばリドカイン)を内蔵するミクロ粒子を製造するのを可能にする。
例1:高密度ミクロ粒子の製造
比較的小さな容積のボイドを有する本発明のミクロ粒子を、下記プロセスによって製造した:
1) クロロホルムを有するPLGA(85:15コポリマー・モル比)の75 wt/vol%(重量/容積%)溶液を調製した。
【0175】
2) 2mLの75 wt/vol% PLGAを、20mLのねじ蓋付き試験管内に入れ、そして水道水の下で加熱することにより、粘度を低くした。
【0176】
3) 2mLの75 wt/vol% PLGAに、脱イオン(DI)水0.5 mLを添加した。
【0177】
4) 渦流に対して垂直に管を維持し、そして試験管の頂部を保持しながら、設定#8で1分間にわたって混合物を渦流処理することにより乳化物を形成した。
【0178】
5) 0.3 wt/vol%のPVA 10mLを含有する50mL試験管内に、エマルジョンを迅速に注いだ。
【0179】
6) 渦流に対して垂直に管を維持し、そして試験管の頂部を保持しながら、設定#8で1分間にわたってPLGA/水/PVAエマルジョンを渦流処理することにより、ダブル・エマルジョンを形成した。
【0180】
7) 次いで、0.3 wt/vol%のPVA 250mLを含有する500mLビーカー内に、撹拌しながら、PLGAミクロ粒子を迅速に注いだ。
【0181】
8) 次いで、PLGAミクロ粒子を含有するビーカーに、3.0 wt/vol%のIPA(1:1) 250 mLを添加した。
【0182】
9) PLGAミクロ粒子を、2時間にわたって硬化させておいた。
【0183】
10) USA標準試験用篩(ASTME-11 Spec.)を使用して、ミクロ粒子を篩分けした。90〜180 μmのミクロ粒子を捕集した。
【0184】
11) ミクロ粒子を、多量のCI水で篩内で洗浄した。
【0185】
12) 次いでミクロ粒子を、ねじ蓋付きプラスチック・バイアルに移した。
【0186】
13) ミクロ粒子を-80℃ですぐに凍結した。
【0187】
14) ミクロ粒子を一晩にわたって凍結乾燥させた(ほぼ12時間)。
例2:低密度ミクロ粒子の製造
比較的大きい容積のボイドを有する本発明のミクロ粒子を、下記プロセスによって製造した:
1) クロロホルムを有するPLGA(85:15コポリマー・モル比)の25 wt/vol%溶液を調製した。
【0188】
2) 6mLの25 wt/vol% PLGAを、20mLのねじ蓋付き試験管内に入れ、そして水道水の下で加熱することにより、粘度を低くした。
【0189】
3) 6mLの25 wt/vol% PLGAに、DI水2.0 mLを添加した。
【0190】
4) 上記工程4〜14に従う。
【0191】
例3:可変ボイド容積/可変密度
結果として得られたミクロ粒子形態(球形対非球形)、及び脱イオン(DI)水に対するミクロ粒子密度に対するプロセス変量の効果を評価するために、試験を実施した。この試験において試験されるプロセス変量は、下記のものを含んだ:
1) CHCL3に対するPLGAのwt/vol% (25 wt/vol%〜75 wt/vol%);
2) 水性相添加剤(0.5 ml〜2.0 ml);そして
3) 最初の乳化工程中の補助的な超音波処理
これらの試験に用いられる方法は、上記のものと同一であったが、下記のような改変を伴った:
1) 75 wt/vol%の代わりに85 wt/vol%のPLGAベースポリマーを使用した。
【0192】
2) 図25に示されたフローチャートにおける工程Aで、溶解されたベースポリマー中に添加される、PGLAポリマーに対するリドカイン添加(ほぼ50重量%)を含み、そして、
3) 試料の部分群に超音波処理段階を加える。この試験の結果を下記表(すなわち表A〜D)に示す:
【0193】
【表1】
【0194】
【表2】
【0195】
【表3】
【0196】
【表4】
【0197】
全体的な観察
1) ミクロ粒子は、概ね球形のジオメトリーを示した。
2) ミクロ粒子外径は、数ナノメートルから数ミリメートルへサイズが変化した。
3) ミクロ粒子は、ミクロ粒子内に内蔵された、観察可能なボイド容積を有するように形成された(図16〜18参照)
4) PLGA/クロロホルム乳化相内への水性内相の超音波処理は、機械混合よりも微細且つ均一に分散されたボイド容積を形成した(図17及び18参照)。
5) 可変ボイド容積は、可変密度の異なるミクロ球体形態に関与し、ひいては、DI水中に懸濁されると、異なる浮揚性に関与した。
6) 「中立」な浮揚性(すなわち懸濁されるミクロ粒子と、沈降するミクロ粒子との比が50:50である)を有するいくつかのミクロ粒子が、これらの試験において形成された。プロセス条件の何らかの微調整を用いれば、大部分が「中立に浮揚性である」ミクロ粒子を形成することが可能となる。次いで選択法(例えば篩分け)によって、均一に浮揚性のミクロ粒子を形成することができる。
7) 超音波処理を伴わない場合、CHCL3中45%のwt/vol% PLGA(85:15モル比)は、水性相容積とは無関係に、DI水中に均一に懸濁されたミクロ粒子を生成した。超音波処理を伴う場合、CHCL3中25%のwt/vol% PLGA(85:15モル比)は、0.5 mLの水性相に、DI水中に均一に懸濁されたミクロ粒子を生成した。
8) ミクロ粒子のリドカイン添加は、ミクロ粒子のジオメトリー、浮揚性又は物理的完全性に著しい影響を及ぼすようには見えなかった。
9) ただ1種の薬物添加をこの前の試験において実証したが、複数の親水性及び/又は疎水性薬物をこれらのミクロ粒子内に添加することもできた。例えば、水性内相内には親水性薬物を添加することができ、また油(クロロホルム)相内には疎水性薬物を添加することもできる。
10) 凍結乾燥後、いくつかの表面破壊が観察された。おそらく、これは水性内相の除去によるものであった。このことは、この試験において採用された比較的低速の凍結プロセスによるものかもしれない。液体窒素又はアセトン及びドライアイス中で「急速冷凍」すれば、この現象を最小限に抑えることができるかもしれない。
例4:ミクロ粒子のin vitro注入
本発明のミクロ球体を、小内径注入カテーテルを通して注入することができる。本発明のミクロ粒子は、コンベンショナルな低プロフィール注入カテーテルを通して注入することもできる。
【0198】
図18A及び18Bは、生理食塩水中に懸濁された2つの異なる外径(それぞれ10 μm及び80 μm)を有する本発明のプロトタイプ・ミクロ粒子を示す。ミクロ粒子は、約100〜150μmの注入側孔を有する1.4-Frミクロ注入カテーテル(例えばNeuroVasX(登録商標) Sub-ミクロ注入カテーテル、モデル100-DG-015)を通して注入される。両粒子サイズは、ミクロカテーテルを通して最小限の労力しか必要とせずに送達することができる。
【0199】
例5:in vivo選択的腎臓カテーテル法及び塞栓形成
図23A〜Cの一連の血管造影画像は、イヌの腎臓の選択的カテーテル法及び塞栓形成に関する実証を示す。腎循環は、塞栓剤の利益を実証するための優れた処置モデルである。図23Aは、腎皮質を示すコントラスト血管造影図である。図23Bは、左の腎臓の頭方向極の選択的カテーテル法を示し、続いて腎臓を本発明のプロトタイプ・ミクロ粒子で塞栓形成した。図23Cは、腎循環内へ注入されるミクロ粒子の能力、及びミクロ粒子が、左の腎臓の頭方向極への流れを遮断する急性効力を実証する完成血管造影図である。
例6:in vivo二重注入塞栓形成技術
図24A〜Cは、2つの異なるサイズのミクロ粒子で行われたイヌの腎皮質の順次的塞栓形成処置を示す。上記のように、図24Aは、腎皮質を示すコントラスト血管造影図である。図24Bは、外径80 μmのミクロ粒子を使用した塞栓形成後の血管造影図である(12 mlの50:50の生理食塩水:造影剤中200 mgのミクロ粒子)。ここでは、腎循環の最も外側の周辺部(すなわち最小脈管構造)だけを塞栓形成する。図24Cは、より大きな粒子サイズ(240μm;12 mlの50:50の生理食塩水:造影剤中200 mgのミクロ粒子)で塞栓形成した後の血管造影図であり、腎循環内へ注入される本発明のミクロ粒子の能力、及びより近位側の腎循環の潅流を遮断する本発明のミクロ粒子の能力を実証する。
例7:局所的な薬物送達の例
1種又は2種以上の生体活性物質をミクロ球体内に内蔵することができる。薬物を溶出する実施態様の代表である、リドカイン溶出ミクロ球体の製造を、前述の方法(具体的にはリドカイン(Sigma Chemical, Inc.)を図22のフローチャートの工程Aで添加した)によって実施した。3.6 gのPLGA(75:25コポリマー比)と0.9 gのリドカインとを7.2 mlのクロロホルム中に溶解することにより、均質溶液を形成した。3 mlのアリコートを、0.150 mLのDI水の水性内相とともにミクロ粒子に加工した。理論上の添加を基準として、リドカインは初期配合物の20 wt%を形成するのに対して、実際の添加量は約8 wt%であることが見極められた。次のセクションでは、本発明の生体再吸収可能なミクロ球体に対するリドカイン添加と関連する典型的な発見を実証する。
例8:リドカインの徐放(図19)
PBS溶剤中37℃で1日当たり放出されるリドカインの平均質量を、プロトタイプ・ミクロ粒子で測定した。この例では、ミクロ粒子は8 wt%リドカインを含有することが見極められた。図19に示す放出プロフィールは、ほぼ800マイクログラムが最初の24時間以内のバースト放出として溶出されることを示した。リドカインのこの初期バースト放出に続いて、次の9日間にわたって、1日当たりほぼ70マイクログラムが連続放出された。このプロフィールは、UFE患者に対する臨床的に該当する投薬計画がどのようなものと考えられるかを実証する(なお、キシロカインの使用指示は、産科的な全身鎮痛に対して100 mgの投与を特定する)。
【0200】
例9:HPLC試験によって実証されたリドカイン安定性(図21)
高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)を実施することにより、プロトタイプ・ミクロ粒子から溶出されたリドカインの化学組成(及び機能性)は、標準化されたリドカイン対照と同一であることを検証した。この標準は、水中に溶解された商業的に利用可能なリドカインである。クロマトグラフ(図21A及び21B)は、リドカインが塞栓粒子マトリックス内部で安定であることを実証する。図21Aは、リドカイン標準を示し、そして図21Bはミクロ粒子から溶出されたリドカインを示す。ピーク溶出時間(3.1分)が共通しており、ピーク形状が類似することにより、安定性が証明される。これらのデータは、プロトタイプ・ミクロ粒子から溶出されたリドカインの機能性が、処理全体を通して維持されることを示唆する。
【0201】
例10:高リドカイン投与ミクロ粒子(図12 & 20)
プロトタイプ・ミクロ粒子内に添加することができる最大質量のリドカインを特徴付けするために、初期試験を実施した。図12A及び12Bは、球体状形態を示す高リドカイン投与ミクロ粒子の表面SEMを示す。図20は、PBS中の37℃のプロトタイプ高リドカイン投与粒子から放出されたリドカインの正規化蓄積質量を示す。これらのミクロ粒子は56 wt%のリドカインを含有し、そしてミクロ粒子100 mg当たり56 mgのリドカインを送達することができる。このようなものとして、これらのミクロ粒子は、塞栓ミクロ粒子からのリドカイン送達の上限を形成すると考えられる。薬物送達は、早期バースト相なしで4日間にわたって発生する。
例11:比較臨床例
子宮筋腫は、子宮の筋肉壁内で発達する非癌性(良性)腫瘍である。筋腫が常に症候性であるとは限らないが、これらのサイズ、数及び位置は、痛み及び重い月経出血を含めて、一部の女性に問題を招くおそれがある。筋腫は極めて小さい(<1 cm)サイズから、カンタロープ・メロン又はそれ以上(>20cm)のサイズまである。いくつかの事例において、子宮筋腫は子宮を、妊娠5ヶ月以上のサイズに成長させることがある。図15に示された子宮の種々の部分に、筋腫を配置することができる。
【0202】
子宮筋腫塞栓術(UFE)は、フルオロスコープで案内されながら、子宮動脈内にカテーテルを案内することを伴う(図16)。次いで、医師は、筋腫に血液を供給する動脈内に塞栓剤を注入する。塞栓剤は、腫瘍への血流を遮断し、そして局在化された虚血を引き起こす(図17)。次いで反対側の動脈を、多くのプロトコルに従って治療する。
【0203】
子宮筋腫塞栓術は通常、一晩の入院を必要とする入院による治療処置である。最も共通の副作用である痙攣及び痛みを治療するための処置に続いて、鎮痛薬及び腫れを制御する薬物が処方されるのが典型的である。熱は、時々生じる副作用であり、そして通常アセトアミノフェンで治療される。多くの女性は数日以内に軽い活動を再開し、そして大部分の女性は、1週間以内に正常な活動に戻ることができる。
【0204】
UFE処置の結果、腫瘍は収縮し、そして症状は軽減する。UFE処置を受けた女性の78〜94パーセントが、重い出血、痛み及びその他の症状の有意な又は全面的な軽減を経験する。この処置はまた、複数の筋腫に効果的であると思われる。治療された筋腫の再発は極めて稀であり、患者の約3%だけが今までのところ、治療の失敗により外科的手段に進んだ。
【0205】
本発明のミクロ粒子は、このタイプの処置において成功裡に採用することができ、さらに有望な結果をもたらすものと考えられる。
例12:塞栓形成の効果及び耐圧縮性の例
本発明のミクロ球体は、生理学的負荷による外的な圧縮に対して抵抗性を有する。これらのミクロ球体の圧縮不能な性質の潜在的利益は、従って、in vivo試験によって最良に実証される。この試験は、図25に概略的に示した方法によって製造されたプロトタイプを用いて実施される。2つのin vivoの試験、つまり急性研究及び亜慢性研究から得られる組織学的例を、以下に示す。これらの試験から得られた組織学的結果は、ミクロ球体の存在を収容するための宿主脈管構造の中程度の変形、ミクロ球体自体の顕在的な変形又は圧縮の不在、及び初期注入時(急性)から30日間(亜慢性)を通して、耐久性のある塞栓形成結果を実証する。
【0206】
例13:急性組織学的例
図7は、本発明のミクロ球体を用いた塞栓形成のin vivoメカニズムを実証する顕微鏡写真である。ここに示されているのは、塞栓形成された動脈セグメントの縦断面である。プロトタイプ・ミクロ球体は、赤血球及び凝血塊が散在する血管内部に沈積されているのを観察することができる。明白なのは、ミクロ粒子と動脈管腔との寸法の調和、及びより大きい外径のミクロ球体の存在を収容するための宿主血管の中程度の変形である。
例14:耐圧縮性のin vitro試験
図5は、耐圧縮性を試験するin vitroメカニズムを実証するダイヤグラムである。注入物(51)を形成するキャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子(52)が充填されたシリンジ(50)を、管(53)内に注入する。ミクロ粒子は管(53)を通って移動し、そして試験チャネル(55)を通って移動するために圧縮することが必要とされる。ミクロ粒子が流出物中で無傷のまま出てくると、これらは、耐圧縮性でないと称される。逆に、ミクロ粒子が試験チャネル(55)を通ることができず、そして流出物中に出現しないと、これらは耐圧縮性と称される。
例15:亜慢性動物研究
イヌの腎循環内の塞栓剤として使用されたときの、8±3 wt%のリドカインで負荷された本発明の生体再吸収可能なポリ乳酸(PLA)ミクロ粒子を評価するために、動物研究を実施した。この試験に使用されるミクロ球体の外径は、サイズ範囲150〜250 μmを有した。試験粒子の溶出曲線を図19に示す。4つの(n=4)腎臓をプロトタイプ・ミクロ粒子(12 mlの流体中に懸濁された250 μlのミクロ粒子)で塞栓形成した。1動物当たりほぼ16 mgのリドカインを送達した。
【0207】
塞栓形成からほぼ30日後に、コントラスト血管造影後に全ての動物を回収した。全体評価及び顕微鏡評価を行うことにより、血管(腎動脈)血栓及び腎梗塞の存在及び範囲を特徴付けた。in vivo相の終点は、術後ほぼ30日目における組織学的評価であった。
【0208】
外植試験片の組織学的評価は、プロトタイプ・ミクロ粒子による治療が30日の間中、耐久性を有し、そして管再生の証拠なしに腎梗塞と関連することを示した(図8)。プロトタイプ・ミクロ球体は、小さな梗塞と関連した。これらの梗塞はしばしば腎臓の単一の(頭方向)極に局在化された。試験群における炎症は、プロトタイプ・ミクロ球体自体、リドカイン、又は両成分に対する応答を表すことができる。図7において明白なのは、耐圧縮性ミクロ球体が内部に沈積された管状構造の変形である。
例16:ミクロ粒子のための溶液濃度
脳様コンボリュート状表面及び平滑表面を製造することができる。脳様表面の場合、1.84 gのPLA及び0.16 gのリドカインを5 mlのクロロホルム中に溶解した。溶液の3mlアリコートを試験管に移し、DI水200ミリリットルを添加し、そしてシステムを渦流処理することによりシングル・エマルジョンを製造した。このシングル・エマルジョンを使用することにより、脳様構造をもたらすミクロ粒子を製造した(図13A及び13B)。PLA及びリドカインの同一溶液を調製した。これに、添加量のクロロホルムを添加することにより、粘度を著しく低減し、そして200ミリリットルのDI水の水性内相を有する粒子を形成した。SEM試験時には、低減された粘度を有するように調製されたミクロ粒子の第2バッチが、より平滑な表面をもたらした。
例17:動物における慢性埋め込みのためのリドカイン添加型ミクロ粒子
3.5グラムのPLGA 75:25モル比(Boehringer Ingerlheim RG755による)
0.875グラムのリドカイン(Sigma Chemical)
6 mlのクロロホルム
上記成分を混合し、完全に溶解させておく。定期的に温水浴内に入れ、そして渦流処理する。
【0209】
2.5〜4 mlの部分に分ける。150マイクロリットルのDI水を各部分に添加する。20秒間にわたって渦流処理することにより、第1のエマルジョンを形成する。ほぼ20 mlの0.3 wt% PVA溶液を含有する大型ガラス試験管内に内容物を注ぎ込む。25秒間、渦流処理する。
【0210】
0.3 wt% PVA溶液(ほぼ150 ml)を含有する撹拌棒で、ビーカー内に粒子を注ぎ込む。ほぼ150mlのIPA 3 vol%溶液を添加し、そして2.5時間にわたって硬化させておく。篩で捕集し、DIですすぎ、凍結させ、そして凍結乾燥させる。
例18:リドカインを有する脳様ミクロ粒子
1.84グラムのPLA
0.16 gのリドカイン
5 mlのクロロホルム
混合させ、溶解させておく。3ml溶液に200ミリリットルのDI水を添加し、渦流形成する。前と同じように、PVA溶液中に注ぎ込み、IPA溶液を添加し、そして硬化するのに十分な時間後に捕集する。
例19:480μm内径を有するカテーテルを使用した、圧縮性及び耐圧縮性のミクロ球体の耐圧縮性試験
直径300〜500μmの圧縮可能なポリビニルアルコール(PVA)ミクロ球体であるCONTOUR SE(登録商標)を得た(カタログ番号76-122、Boston Scientific Corporation, Watertown, MA)。これらのミクロ球体のうちのほぼ1 mlを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque(登録商標)造影媒質の混合物中に懸濁させた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。次いで、圧縮可能なミクロ球体、PBS及び造影媒質との混合物を、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に添加した。20 mlシリンジを、4路栓(カタログ番号91045、Mallickrodt Critical Care, Glens Falls, NY)の1ポート上に配置し、そして3mlポリカーボネート・シリンジ(Merit Medical Systems Inc., South Jordan, UT)を栓の別のポート上に配置した。次いで、圧縮可能なミクロ球体を20 mlシリンジから3 mlシリンジに移した。次いで20 mlシリンジを、4路弁ポートのポートから取り外し、血管形成バルーン膨張装置(B. Braun Medical, Inc., Bethlehem, PA)と交換した。4路弁の最後の残りのポート上に、EXCELSIOR(登録商標)1018マイクロカテーテル(Boston Scientific, Fremont, CA)を配置した。EXCELSIOR(登録商標)1018マイクロカテーテルは、剛性熱可塑性材料から形成されたテーパ区分を有した。このテーパ区分は、カテーテルの近位端部に設けられたルエル取付け具と、カテーテルのフレキシブル区分の始端部との間に配置されていた。カテーテルのテーパ区分は、ルエル取付け具の内径約4000μmから、カテーテルのフレキシブル区分が始まる場所の約480μmまで、減径していた。
【0211】
圧縮可能なミクロ球体を3 mlシリンジからマイクロカテーテル内に移した。次いで、血管形成バルーン膨張装置を使用して、約20 mlの水を強制的にマイクロカテーテルに通した。水、ミクロ球体、PBS及び造影媒質がマイクロカテーテルを通過すると、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計には1 atm未満の圧力が記録された。圧力計は0〜30 atmの範囲を有した。
【0212】
ミクロ球体は、マイクロカテーテルの遠位端部からガラスビーカー内に放出されることが観察され、そして、約20 mlの水がマイクロカテーテルを通過した後、圧縮可能なミクロ球体の全てがマイクロカテーテルを通過したように見えた。
【0213】
直径500〜700μmの圧縮可能なPVAミクロ球体であるCONTOUR SE(登録商標)(カタログ番号76-130、Boston Scientific Corporation Watertown, MA)を使用して、同じ処置に従った。直径300〜500μmの圧縮可能なミクロ球体と同様に、これらの500〜700μmの圧縮可能なミクロ球体は、マイクロカテーテルを通って遠位端部で捕集ビーカー内に入ることが観察された。しかし、これらのより大きいミクロ球体を用いた場合、圧縮可能なミクロ球体と、造影媒体混合物を有するPBSとがマイクロカテーテルを通過するのに伴って、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計上で、約1 atmの背圧が観察された。
【0214】
次いで、本発明の耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を使用して、同じ処置に従った。30℃のクロロホルム中の固有粘度が0.65 dl/gmのポリマーを使用して、85 mol% PLA:15 mol % PGAの耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を調製した。ASTM標準仕様E 11に一致した2つの標準試験用篩を使用して、ミクロ球体を乾燥分粒した。2つの篩を重ね合わせた。上側の25番の篩は、約707μm・サイズの開口を有し、下側の35番の篩は、約500μm・サイズの開口を有した。ミクロ粒子を25番の篩上に置き、次いで両篩を、まだ積み重ねた状態で撹拌して、直径707μm未満のミクロ粒子が25番の篩を通って移動するのを促進した。707μm未満ではあるが500μmよりも大きいミクロ粒子は、約500μmのサイズの開口を有する35番の篩である、スタックの下側に位置する篩のスクリーン表面上に蓄積した。35番の篩の表面上に蓄積したミクロ粒子を次いで、in vitro耐圧縮性試験のために捕集した。篩分けプロセスを通して、これらのミクロ粒子は、約500〜707μm・サイズ範囲にあることが見極められた。
【0215】
500〜707μm・サイズのミクロ粒子約0.1 gmを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque造影媒質の混合物約12 ml中に入れた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。Visipaque(登録商標)の密度約1.3 g/mlと、PBSの密度約1.0 g/mlとを基準として、PBSと造影媒質との50 vol%/50 vol%混合物は、約1.2 g/mlの密度を有することが算出された。ミクロ粒子を形成するポリマー、85 mol %のPLA; 15 mol %のPGAポリマーの密度は約1.3 g/mlであった。PBSと造影媒質との混合物中に、500〜707μm・サイズのミクロ粒子を入れた。これらのミクロ粒子を形成するポリマーの密度は、ミクロ粒子が入れられたPBSと造影媒質との混合物よりも高いので、混合物中に懸濁されるか、又は混合物の上側に浮揚するミクロ粒子の嵩密度は、1.3g/m未満であることが見極められた。懸濁されたミクロ粒子又は浮揚するミクロ粒子のバルク密度と、これらのミクロ粒子を形成するポリマーの密度とに差があるのは、ミクロ粒子内のボイド空間の存在によるものであった。
【0216】
PBSと造影媒質との混合物中に浮揚する又は懸濁された耐圧縮性ミクロ粒子を、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に引き込んだ。20 mlシリンジのルエル取付け具を、4路栓(カタログ番号91045、Mallickrodt Critical Care, Glens Falls, NY)の1ポート上に配置し、そして3mlポリカーボネート・シリンジ(Merit Medical Systems Inc., South Jordan, UT)を栓の別のポート上に配置した。次いで、耐圧縮性のミクロ球体を20 mlシリンジから3 mlシリンジに移した。次いで20 mlシリンジを、4路弁ポートのポートから取り外し、血管形成バルーン膨張装置(B. Braun Medical, Inc., Bethlehem, PA)と交換した。4路弁の最後の残りのポート上に、EXCELSIOR(登録商標)1018マイクロカテーテル(Boston Scientific, Fremont, CA)を配置した。EXCELSIOR(登録商標)1018マイクロカテーテルは、剛性熱可塑性材料から形成されたテーパ区分を有した。このテーパ区分は、カテーテルの近位端部に設けられたルエル取付け具と、フレキシブル区分の始端部との間に配置されていた。カテーテルのテーパ区分は、ルエル取付け具の内径約4000μmから、カテーテルのフレキシブル区分が始まる場所の約480μmまで、減径していた。マイクロカテーテルの遠位端部を清潔な150 mlガラスビーカー内に入れた。耐圧縮性ミクロ球体を3 mlシリンジからマイクロカテーテル内に移した。次いで、血管形成バルーン膨張装置を使用して、約20 mlの水を強制的にマイクロカテーテルに通した。水及びミクロ球体がマイクロカテーテルを通過すると、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計には18 atmの背圧が記録された。血管形成バルーン膨張装置上の圧力が逃げることはなかった。このことは、マイクロカテーテルが閉塞されるようになったことを示す。マイクロカテーテルの遠位端部から放出されたミクロ球体は観察されなかった。例18に記載された試験は室温で実施された(約21℃)。
例20:330μm内径を有するカテーテルを使用した、圧縮性及び耐圧縮性のミクロ球体の耐圧縮性試験
直径300〜500μmの圧縮可能なポリビニルアルコール(PVA)ミクロ球体であるCONTOUR SE(登録商標)を得た(カタログ番号76-122、Boston Scientific Corporation, Watertown, MA)。これらのミクロ球体のうちのほぼ1 mlを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque(登録商標)造影媒質の混合物中に懸濁させた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。次いで、圧縮可能なミクロ球体の懸濁液を、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に添加した。20 mlシリンジを、4路栓(カタログ番号91045、Mallickrodt Critical Care, Glens Falls, NY)の1ポート上に配置し、そして3mlポリカーボネート・シリンジ(Merit Medical Systems Inc., South Jordan, UT)を栓の別のポート上に配置した。次いで、圧縮可能なミクロ球体を20 mlシリンジから3 mlシリンジに移した。次いで20 mlシリンジを、4路弁ポートのポートから取り外し、血管形成バルーン膨張装置(B. Braun Medical, Inc., Bethlehem, PA)と交換した。4路弁の最後の残りのポート上に、HYDROLENE(登録商標)を有するELITE SPINNAKER(登録商標)1.8F-S流れ方向付けカテーテル(Boston Scientific, Fremont, CA)を配置した。HYDROLENE(登録商標)を有するELITE SPINNAKER(登録商標)1.8F-S流れ方向付けカテーテルは、剛性熱可塑性材料から形成されたテーパ区分を有した。このテーパ区分は、カテーテルの近位端部に設けられたルエル取付け具と、カテーテルのフレキシブル区分の始端部との間に配置されていた。カテーテルのテーパ区分は、ルエル取付け具の内径約4000μmから、カテーテルのフレキシブル区分が始まる場所の約330μmまで、減径していた。カテーテルの遠位端部を清潔な150 mlガラスビーカー内に入れた。圧縮可能なミクロ球体を3 mlシリンジからマイクロカテーテル内に移した。次いで、血管形成バルーン膨張装置を使用して、約20 mlの水を強制的にマイクロカテーテルに通した。水、ミクロ球体、PBS及び造影媒質がマイクロカテーテルを通過すると、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計には1 atm未満の圧力が記録された。圧力計は0〜30 atmの範囲を有した。ミクロ球体は、マイクロカテーテルの遠位端部からガラスビーカー内に放出されることが観察され、そして、約20 mlの水がマイクロカテーテルを通過した後、ミクロ球体の全てがマイクロカテーテルを通過したように見えた。
【0217】
次いで、本発明の耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を使用して、同じ処置に従った。30℃のクロロホルム中の固有粘度が0.65 dl/gmのポリマーを使用して、85 mol% PLA:15 mol % PGAの耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を調製した。これらを2つの篩分け作業を用いて乾燥分粒した。第1の篩分け作業では、ASTM標準仕様E 11に一致した2つの標準試験用篩、35番の篩と50番の篩とを使用した。2つの篩を重ね合わせた。上側の35番の篩は、約500μm・サイズの開口を有し、下側の50番の篩は、約300μm・サイズの開口を有した。ミクロ球体を35番の篩上に置き、次いで両篩を、まだ積み重ねた状態で撹拌して、直径500μm未満のミクロ球体が35番の篩を通って移動するのを促進した。500μm未満ではあるが300μmよりも大きいミクロ球体は、約300μmのサイズの開口を有する50番の篩である、スタックの下側に位置する篩のスクリーン表面上に蓄積した。50番の篩の表面上に蓄積したミクロ球体を次いで、第2の篩分け作業のために捕集した。この篩分けプロセスを通して、これらのミクロ球体は、約300〜500μm・サイズ範囲にあることが見極められた。第2の篩分け作業では、ASTM標準仕様E 11に一致した、約425μm・サイズの開口を有する40番の篩上に、これらの約300〜500μmのミクロ球体を置いた。40番の篩及びミクロ球体を撹拌して、直径425μm未満のミクロ球体が40番の篩を通って移動するのを促進した。425μmよりも大きい直径のミクロ球体は、スクリーン表面上に蓄積した。40番の篩の表面上に蓄積した直径約425〜500μmのミクロ球体を次いで、in vitro耐圧縮性試験のために捕集した。
【0218】
直径425〜500μmの耐圧縮性ミクロ球体約0.1 gmを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque造影媒質の混合物約12 ml中に入れた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。Visipaque(登録商標)の密度約1.3 g/mlと、PBSの密度約1.0 g/mlとを基準として、PBSと造影媒質との50 vol%/50 vol%混合物は、約1.2 g/mlの密度を有することが算出された。ミクロ球体を形成するポリマー、85 mol %のPLA; 15 mol %のPGAポリマーの密度は約1.3 g/mlであった。PBSと造影媒質との混合物中に、直径約425〜500μmの耐圧縮性ミクロ球体を入れた。これらのミクロ球体を形成するポリマーの密度は、ミクロ球体が入れられたPBSと造影媒質との混合物よりも高いので、混合物中に懸濁されるか又は混合物の上側に浮揚するミクロ球体の嵩密度は、1.3g/m未満であることが見極められた。懸濁されたミクロ球体又は浮揚するミクロ球体のバルク密度と、これらのミクロ球体を形成するポリマーの密度とに差があるのは、ミクロ球体内のボイド空間の存在によるものであった。
【0219】
PBSと造影媒質との混合物中に浮揚する又は懸濁された耐圧縮性ミクロ球体を、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に引き込んだ。20 mlシリンジのルエル取付け具を、4路栓(カタログ番号91045、Mallickrodt Critical Care, Glens Falls, NY)の1ポート上に配置し、そして3mlポリカーボネート・シリンジ(Merit Medical Systems Inc., South Jordan, UT)を栓の別のポート上に配置した。次いで、耐圧縮性のミクロ球体を20 mlシリンジから3 mlシリンジに移した。次いで20 mlシリンジを、4路弁ポートから取り外し、血管形成バルーン膨張装置(B. Braun Medical, Inc., Bethlehem, PA)と交換した。4路弁の最後の残りのポート上に、HYDROLENE(登録商標)を有するELITE SPINNAKER(登録商標)1.8F-S流れ方向付けカテーテル(Boston Scientific, Fremont, CA)を配置した。ELITE SPINNAKER(登録商標)1.8F-Sカテーテルは、剛性熱可塑性材料から形成されたテーパ区分を有した。テーパ区分は、カテーテルの近位端部に設けられたルエル取付け具と、フレキシブル区分の始端部との間に配置されていた。カテーテルのテーパ区分は、ルエル開口の内径約4000μmから、カテーテルのフレキシブル区分が始まる場所の約330μmまで、減径していた。カテーテルの遠位端部を清潔な150 mlガラスビーカー内に入れた。耐圧縮性ミクロ球体を3 mlシリンジからカテーテル内に移した。次いで、血管形成バルーン膨張装置を使用して、水を強制的にカテーテルに通した。水及びミクロ球体がマイクロカテーテルを通過するように試みられると、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計には20 atmの背圧が記録された。血管形成バルーン膨張装置上の圧力が逃げることはなかった。このことは、マイクロカテーテルが閉塞されるようになったことを示す。マイクロカテーテルの遠位端部からガラスビーカー内に放出されたミクロ球体は事実上観察されなかった。例19に記載された試験は室温で実施された(約21℃)。
例21:420μmの開口を有するメッシュスクリーンを使用した、圧縮性及び耐圧縮性のミクロ球体の耐圧縮性試験
直径500〜700μmの圧縮可能なポリビニルアルコール(PVA)ミクロ球体であるCONTOUR SE(登録商標)を得た(カタログ番号76-130、Boston Scientific Corporation, Watertown, MA)。これらのミクロ球体のうちのほぼ1 mlを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque(登録商標)造影媒質の混合物中に懸濁させた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。次いで、圧縮可能なミクロ球体の懸濁液約12 mlを、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に添加した。20 mlシリンジを、直径13 mmのステンレス鋼シリンジ・フィルター(Catalog 番号A-02928-10, Cole Parmer Instrument Co., Vernon Hills, IL)上に配置した。このフィルターは、約420μmの開口を有する40メッシュ・ステンレス鋼スクリーン(カタログ番号S-0770、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を含有した。このスクリーンは、シリンジ・フィルターに適合するようにカットしておいた。次いで、12 mlの圧縮可能なミクロ球体及びPBSを有する造影媒質を、420μmの開口を有する40メッシュスクリーンを約5秒で強制的に通すような速度で、シリンジのプランジャーを押し下げた。シリンジ・フィルターの遠位端部からの流出物を捕集し、そして流出物が多くの圧縮可能なミクロ球体を含有することを見いだした。次いでシリンジ・フィルターを開き、ステンレス鋼メッシュ・スクリーン内及びスクリーンの周りにも、少量の圧縮可能なミクロ球体を見いだした。
【0220】
次いで、本発明の耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を使用して、同じ処置に従った。30℃のクロロホルム中の固有粘度が0.65 dl/gmのポリマーを使用して、85 mol% PLA:15 mol % PGAの耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を調製した。これらを2つの篩分け作業を用いて乾燥分粒した。第1の篩分け作業では、ASTM標準仕様E 11に一致した2つの標準試験用篩、35番の篩と50番の篩とを使用した。2つの篩を重ね合わせた。上側の35番の篩は、約500μm・サイズの開口を有し、下側の50番の篩は、約300μm・サイズの開口を有した。ミクロ球体を35番の篩上に置き、次いで両篩を、まだ積み重ねた状態で撹拌して、約500μm未満のミクロ球体が35番の篩を通って移動するのを促進した。約500μm未満ではあるが約300μmよりも大きいミクロ球体は、約300μmのサイズの開口を有する50番の篩である、スタックの下側に位置する篩のスクリーン表面上に蓄積した。50番の篩の表面上に蓄積したミクロ球体を次いで、第2の篩分け作業のために捕集した。この篩分けプロセスを通して、これらのミクロ球体は、約300〜500μm・サイズ範囲にあることが見極められた。第2の篩分け作業では、ASTM標準仕様E 11に一致した、約425μm・サイズの開口を有する40番の篩上に、これらの約300〜500μmのミクロ球体を置いた。40番の篩及びミクロ球体を撹拌して、直径425μm未満のミクロ球体が40番の篩を通って移動するのを促進した。約425μmよりも大きい直径のミクロ球体は、スクリーン表面上に蓄積した。40番の篩の表面上に蓄積した直径約425〜500μmのミクロ球体を次いで、in vitro耐圧縮性試験のために捕集した。
【0221】
直径425〜500μmの耐圧縮性ミクロ球体約0.1 gmを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque造影媒質の混合物約20 ml中に入れた。この混合物は、10 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び10 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。Visipaque(登録商標)の密度約1.3 g/mlと、PBSの密度約1.0 g/mlとを基準として、PBSと造影媒質との50 vol%/50 vol%混合物は、約1.2 g/mlの密度を有することが算出された。ミクロ球体を形成するポリマー、85 mol %のPLA; 15 mol %のPGAポリマーの密度は約1.3 g/mlであった。PBSと造影媒質との混合物中に、直径約425〜500μmの耐圧縮性ミクロ球体を入れた。これらのミクロ球体を形成するポリマーの密度は、ミクロ球体が入れられたPBSと造影媒質との混合物よりも高いので、混合物中に懸濁されるか又は混合物の上側に浮揚するミクロ球体の嵩密度は、1.3g/m未満であることが見極められた。懸濁されたミクロ球体又は浮揚するミクロ球体のバルク密度と、これらのミクロ球体を形成するポリマーの密度とに差があるのは、ミクロ球体内のボイド空間の存在によるものであった。
【0222】
PBSと造影媒質との混合物中に浮揚する又は懸濁された耐圧縮性ミクロ粒子の混合物約12mlを、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に引き込んだ。20 ml使い捨てシリンジのルエル取付け具を、直径13 mmのステンレス鋼シリンジ・フィルター(Catalog 番号A-02928-10, Cole Parmer Instrument Co., Vernon Hills, IL)上に配置した。このフィルターは、約420μm・サイズの開口を有する40メッシュ・ステンレス鋼のスクリーン(カタログ番号S-0770、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を含有した。このスクリーンは、シリンジ・フィルターに適合するようにカットしておいた。次いで、12 mlの圧縮可能なミクロ球体及びPBSを有する造影媒質を、420μmの開口を有する40メッシュスクリーンを約5秒で強制的に通すような速度で、シリンジのプランジャーを押し下げた。シリンジ・フィルターの遠位端部からの流出物を捕集し、そして流出物が耐圧縮性のミクロ球体を事実上含有しないことを見いだした。次いでシリンジ・フィルターを開き、ステンレス鋼メッシュ・スクリーン内及びスクリーンの周りにも、多くの耐圧縮性ミクロ球体を見いだした。例20に記載された試験は室温で実施された(約21℃)。
例22:ミクロ球体製造
例18〜20に記載された、耐圧縮性試験に使用されたミクロ球体を、概ね下記プロセスに従って調製した:
1) 85/15ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー1.2 gm(Absorbable Polymers International, Pelham, AL)を10 mlのガラスビーカー内に入れた。
2) 7.5 mlの酢酸エチル(Fisher Scientific, Fair Lawn, NJ)を、ポリマーを含有するガラスビーカーに添加した。
3) 酢酸エチル及びポリマーを含有するビーカーに、PARAFILM(登録商標)M (American National Can, Neenah, WI)を被せ、そして室温(約21℃)で一晩(約12時間)にわたって放置した。
4) TEFLON(登録商標)をコーティングされた1.5インチ長の磁気撹拌棒(Cole Parmer Instrument Co., Vernon Hills, IL)を含有する1000 mlガラスビーカー内のDI水150 ml中に、酢酸エチル10.5 mlを混合した。DI水及び酢酸エチルを有するビーカーを、約「3」に速度設定された磁気撹拌板(Model 546725, Barnstead/Thermolyne, Dubuque, IA)上に置いた。酢酸エチルとDI水とを30分間にわたって混合させておいた。
5) 次いで、ポリマー及び酢酸エチルの溶液を、10 mlビーカーから、1000 mlビーカー内の酢酸エチルとDI水との混合物中に注ぎ込んだ。これは約10〜15秒間かかった。磁気撹拌器によってこの時間中、撹拌を続けた。ポリマー・ミクロ球体がこの時に形成された。
6) ポリマー及び酢酸エチルの溶液が、酢酸エチルとDI水との混合物中に完全に注ぎ込まれてから約15秒後に、650 mlのDI水を1000 mlのビーカーに添加し、そして磁気撹拌器の速度を約「7」の設定まで高めた。
7) 混合物を室温(約21℃)で12時間にわたって撹拌させておき、この間、ミクロ球体を硬化させておいた。
8) 32μmの開口を有するASTM E-11 450番の篩を使用して篩分けした(U.S. Standard Sieve Series, Dual Mfg. Co., Chicago, IL)。
9) ミクロ球体を篩内で、多量のDI水で洗浄した。
10) 次いで、ミクロ球体をねじ蓋付きプラスチック・バイアルに移した。
11) ミクロ球体を-80℃ですぐに凍結した。
12) ミクロ球体を一晩(約12時間)にわたって凍結乾燥させ、次いで冷蔵保存した(約3℃)。
【0223】
本発明の特定の実施態様を本明細書中で例示し説明してきたが、本発明はこのような例示及び説明に限定されるべきではない。添付の特許請求の範囲内の本発明の部分として変更及び改変を組み入れ、具体化できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1A】ベースポリマー及びボイドの構成要件を示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1B】ベースポリマーと、生体活性物質又は添加剤を含有するボイドとを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1C】生体活性物質又は添加剤と混合され、そして生体活性物質又は添加剤を含有するボイドを有するベースポリマーを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1D】生体活性物質又は添加剤と混合され、さらにボイドを含むベースポリマーを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1E】生体活性物質又は添加剤から成るコーティングを有し、そしてボイドを有するベースポリマーを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1F】生体活性物質又は添加剤と混合され、そしてコーティング及びボイドの両方を有するベースポリマーを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図2A】本発明のミクロ粒子の1実施態様の断面を150X倍率で画像形成して示す走査電子顕微鏡写真(「SEM」)であり、ミクロ粒子はリドカインを添加され、そして平滑な外面を有する。
【図2B】図2Aのミクロ粒子の断面を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図3A】本発明のミクロ粒子の別の実施態様の断面を150X倍率で画像形成して示す「SEM」であり、ミクロ粒子はリドカインを添加され、そして平滑なミクロ多孔質外面を有する。
【図3B】図3Aのミクロ粒子の断面を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図4A】本発明のミクロ粒子の実施態様の断面を150X倍率で画像形成して示す「SEM」であり、ミクロ粒子はリドカインを添加され、そして「脳様」コンボリュート状外面を有する。
【図4B】図4Aのミクロ粒子の断面を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図5】本発明のミクロ粒子の耐圧縮性を試験するためのin vitroメカニズムの1実施態様を示す概略図である。
【図6A】コンベンショナルな圧縮可能なミクロ粒子を、これが微小血管内で見えるもののように示す概略図である。
【図6B】本発明の耐圧縮性ミクロ粒子の実施態様を、これが微小血管内で見えるもののように示す概略図であり、血管は、圧縮不能なミクロ粒子を収容するためにいくらか変形させられている。
【図7】本発明のミクロ粒子で塞栓形成された動脈セグメントの縦断面を約25X倍率で示す拡大光学顕微鏡写真である。
【図8】イヌの腎臓の血管構造内に沈積した本発明のミクロ粒子の縦断面を約10X倍率で示す拡大光学顕微鏡写真である。
【図9A】内部ボイドの不存在を示す本発明のミクロ粒子の光学顕微鏡写真であり、粒子の直径は約100〜150μmである。
【図9B】ミクロ粒子内部の内部ボイドを示す本発明のミクロ粒子の光学顕微鏡写真であり、粒子の直径は約100〜150μmである。
【図10A】本発明のミクロ粒子の実施態様を150X倍率で画像形成して示すSEMであり、ミクロ粒子はリドカインを添加され、そして平滑な粒子表面を有する。
【図10B】図10Aのミクロ粒子の断面を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図11A】PVA発泡体粒子の岩状形態を示すSEMであり、粒子の幅は約100〜150μmである。
【図11B】本発明のミクロ粒子の1実施態様の平滑な球体状形態を示すSEMであり、粒子の幅は約20〜200μmである。
【図12A】リドカインを添加され、ミクロ多孔質表面形態を有する本発明のミクロ粒子の別の実施態様を150X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図12B】図12Aに示された本発明の実施態様を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図13A】「脳様」コンボリュート状表面形態を有する本発明のミクロ粒子の別の実施態様を140X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図13B】図13Aに示された本発明の実施態様を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図14】粉末状の本発明のミクロ粒子の2つの実施態様を示す拡大写真である。
【図15】ヒトの子宮内に存在する筋腫を示す概略図である。
【図16】子宮筋腫塞栓術を実施するために使用される、本発明の装置を示す概略図である。
【図17】ヒトの子宮動脈内への本発明の塞栓剤の注入を示す概略図である。
【図18A】カテーテルから本発明の10 μmミクロ粒子を注入することを約20X倍率で示す光学顕微鏡写真である。
【図18B】カテーテルから本発明の80 μmミクロ粒子を注入することを約20X倍率で示す光学顕微鏡写真である。
【図19】子宮筋腫塞栓術(「UFE」)を受ける患者のための投与計画の一例を示すグラフである。
【図20】本発明の高リドカイン投与粒子の実施態様から放出されたリドカインの正規化蓄積質量を示すグラフである。
【図21A】水中に溶解されたリドカインに関する高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)標準クロマトグラムである。
【図21B】本発明のミクロ粒子の実施態様から溶出されたリドカインの放出に関する高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)クロマトグラムである。
【図22】ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(「PLGA」)を分解して酪酸とグリコール酸とにする化学プロセスを示す構造式である。
【図23A】正常な血流を示すイヌの左の腎臓の腎皮質を示すコントラスト血管造影図である。
【図23B】本発明のミクロ粒子の1実施態様を採用した、腎臓の頭方向極の選択的カテーテル法を示す、図23Aの腎臓を示すコントラスト血管造影図である。
【図23C】腎臓の完成された選択的塞栓形成を示す、図23Bの腎臓のコントラスト血管造影図である。
【図24A】正常な血流を示すイヌの左の腎臓の腎皮質を示すコントラスト血管造影図である。
【図24B】外径約80 μmの本発明の粒子を使用した、腎皮質の塞栓形成後の図24Aの腎臓を示すコントラスト血管造影図である。
【図24C】外径約240 μmの本発明の粒子を使用した、腎皮質の塞栓形成後の図24Bの腎臓を示すコントラスト血管造影図である。
【図25】本発明のミクロ粒子を製造するための任意の製造方法の例を示すフロー・ダイヤグラムである。
【図26】本発明のミクロ粒子の耐圧縮性を試験するためのin vitroメカニズムに用いられる装置の別の実施態様を示す概略図である。
【図27】本発明のミクロ粒子の耐圧縮性を試験するためのin vitroメカニズムに用いられる装置のさらに別の実施態様を示す概略図である。
【図28】本発明のミクロ粒子の耐圧縮性を試験するためのin vitroメカニズムに用いられる装置のさらに別の実施態様を示す概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の疾患及びその他の医学的状態を治療するために、注入可能な粒子、特にミクロ粒子を使用する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
塞栓療法は、過剰血管新生化腫瘍及び動静脈奇形の術前管理を含めて、種々の脈管病理を治療するために実施される、侵襲性が最小限の処置である。過剰血管新生化腫瘍は、循環を可能にする異常に多数の血管を有し、また、悪性又は良性である。動静脈奇形は、動脈と静脈との異常な接続であり、その存在は発作及び死を招くおそれがある。過剰血管新生化腫瘍及び動静脈奇形は脳、乳房、肝臓、子宮、卵巣、脊椎、頭頚部、及び身体の他の部位内で発生し得る。これらの疾病は、ヒト及び動物の両方において発生する。
【0003】
塞栓療法は、術前の補助処置として従来採用されている。外科的切除を必要とする腫瘍の脈管構造供給を意図的に妨害する結果、血液の損失及び処置上の複雑さが低減される。脈管供給を意図的に妨害することによって、例えば、腫瘍の局在化された虚血を誘発し、腫瘍の成長を阻止し、そして腫瘍の容積収縮を誘発することができる。
【0004】
身体の指定部位には、カテーテル器具を通して塞栓剤が一般に送達される。
【0005】
塞栓療法における臨床的な経験は、いくつかの周知の塞栓剤が、十分な送達精度をを有することができず、構造的に許容不能であり、凝集を示し、送達器具を詰まらせ、許容不能な浮揚性を有し、且つ/又は、患者の脈管構造に不都合な影響を及ぼすおそれがあることを明らかにする。
【0006】
再吸収不能なポリビニルアルコール(PVA)発泡体粒子が、塞栓剤として採用されている。PVA発泡体塞栓剤は使用中に血管内で細分化し、集合し、又は凝集することがあり、そしてこのような悪い性能は、所望の塞栓形成位置に達する前に発生するおそれがある。この望ましくない挙動は詰まりを引き起こし、このような詰まりは、血管及び送達器具を閉塞させる。PVA発泡体塞栓剤が所望の位置に塞栓を形成する場合でさえ、PVA発泡体塞栓剤の不規則なサイズ及び形状は、塞栓の完全な閉塞を阻止することがあり、血流が効果的でないPVA発泡体塞栓材料を迂回し、腫瘍への血液供給を続けることを可能にする。周知の塞栓療法は結果として、標的腫瘍への血液供給の閉塞を不適正、不完全、又は無効にし、また、周囲組織の望ましくない壊死、又は死を招くおそれがある。合併症は治療を無効にすることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、塞栓剤技術及び塞栓療法における進歩を提供する。本明細書中に開示された材料、ミクロ粒子、治療、設備及び処置は、女性及び男性のヒト及び動物において利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1観点において、本発明は、1種以上の生体吸収可能な且つ/又は生体再吸収可能なベースポリマーとボイド容積とを有し、そして耐圧縮性を示す、カテーテル送達可能なミクロ粒子を含む。耐圧縮性のカテーテル送達可能なミクロ粒子は、標的体液又は注入媒質に対してほぼ中立に浮揚性であるように設計することができる。耐圧縮性のカテーテル送達可能なミクロ粒子は、塞栓剤として利用することができる。カテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ粒子は、任意には、標的血管に対してサイズを調和することができ、また、標的血管内の沈積に適するようにすることができる。
【0009】
耐圧縮性のカテーテル送達可能なミクロ粒子は、1種又は2種以上の添加剤、1種又は2種以上の生体活性物質(例えば治療薬)、又はこれらの組み合わせを有することができる。さらにいくつかの実施態様の場合、耐圧縮性のカテーテル送達可能なミクロ粒子は、1種以上のコーティングを含む。このようなコーティングも1種又は2種以上の添加剤、生体活性物質、又はこれらの組み合わせを有することができる。
【0010】
1実施態様の場合、少なくともトリメチレンカーボネート部分を有するモノマーの1種以上のコポリマーを有する。別の実施態様の場合、カテーテル送達に適合されたミクロ粒子は、トリメチレンカーボネート部分を有する少なくともポリ(a-ヒドロキシエステル)のホモポリマー又はコポリマーを有する。さらに別の実施態様の場合、カテーテル送達可能なミクロ粒子は、耐圧縮性のミクロ粒子と適合可能なボイド容積及びボイド分布を有する。ボイド、ボイド容積、及びボイド分布はそれぞれ、又は組み合わせにおいて、ミクロ粒子の耐圧縮性に関与するように操作することができる。
【0011】
カテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ球体内で操作することができる別のファクターは、浮揚性である。1実施態様の場合、カテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ粒子は、標的体液に対して中立に浮揚性である比重を有する。
【0012】
さらに別の当該ファクターは、中でも分解速度及びモード、並びに生体活性放出動態を促進するように、ミクロ球体の表面トポグラフィを操作できることである。
【0013】
本発明のいくつかの実施態様は、ミクロ粒子の大型集合又は「ボーラス」(本明細書中では「ボーラス」と呼ぶ)を活用する。このようなボーラスの1実施態様は、1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーとボイド容積とをそれぞれ有する、多数のカテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ粒子を有する。ボイド容積は、ミクロ粒子の表面及び/又は内側のどこでも存在することができ、そして1つ又は2つ以上の個々のボイドを含むことができる。別の実施態様の場合、ボーラスは、標的体液に対して中立に浮揚性である、治療上効果的な数のミクロ粒子を有する。ボーラス内で採用されるミクロ粒子は、任意には、1種以上の添加剤、1種以上の生体活性物質、又はこれらの組み合わせを含むことができる。ボーラスは、患者への製薬上効果的な薬物投与量を送達するのに十分な量の薬物送達ミクロ粒子を有することもできる。本発明の実施態様は、上記構成要件の任意の組み合わせを含むこともできる。
【0014】
本発明の別の実施態様の場合、ボーラスは、密度0.9 g/cc〜1.4 g/ccのミクロ粒子を含む。さらに別の実施態様の場合、ボーラスは、標的体液に対して0.6〜1.4の比重を有するミクロ粒子を含む。さらに別の実施態様の場合、ボーラスは、ボイド容積0 vol %〜98 vol %のミクロ粒子を含む。
【0015】
耐圧縮性に関しては、圧縮に対して抵抗性を有する本発明のミクロ粒子を提供することが望ましいと見なされる。耐圧縮性は、とりわけ、ミクロ粒子が体内の標的部位内に注入されると、十分に予測可能な挙動を提供される。本発明の1実施態様の場合、ボーラスは、所与のミクロ粒子外径(「直径」)を有し、そして10%を上回るそれぞれの外径の変形に対して抵抗性を有するミクロ粒子を含む。いくつかの実施態様の場合、耐圧縮性は、5%、10%又は20%を上回るミクロ粒子外径の変形がそれぞれ、ミクロ球体に破損又は機械的損傷をもたらすという点で、明らかである。
【0016】
本発明のミクロ粒子は複数の相で提供することができる。1実施態様の場合、本発明のカテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ粒子は、1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーと、生体再吸収可能なベースポリマーとは異なる第2の材料と、第2の材料が任意に存在するボイド容積と、標的体液に対して0.6〜1.4の比重とを有する。
【0017】
本発明はまた、カテーテル送達可能な耐圧縮性のミクロ球体のボーラスを有する塞栓ミクロ球体送達システムと、ミクロ球体のボーラス及びキャリア溶液を患者に注入するように構成された、ボーラスを含有する送達装置とを含む。
【0018】
別の観点では、本発明は、受圧下で試験チャネルを通される注入物を形成するキャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子のボーラスを利用して、ミクロ粒子の耐圧縮性を試験する装置を含む。耐圧縮性を試験する1実施態様は、(1)供給端部と流出端部とを備えた、定義済狭窄寸法を有する試験チャネルを通して、キャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子のボーラスを注入し;(2)試験チャネルの流出端部を出たミクロ粒子が無傷であるかどうかを観察し;(3)試験チャネルの流出端部を無傷で出たミクロ粒子を、これが定義済狭窄寸法よりも大きい場合に「圧縮可能」として分類し;そして(4)無傷でない又は試験チャネルを通らないミクロ粒子を「耐圧縮性」として分類することから成る工程を利用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のミクロ粒子(本明細書中では「本発明のミクロ粒子」、「ミクロ粒子」、「ミクロ球体」及び「塞栓剤」と呼ぶ)は、多様な特性及び用途の多種多様な実施態様において使用することができる。このようなミクロ粒子は、再吸収可能であるか又は再吸収不能であってよく、また、溶出物及び添加剤を患者体内の所望の部位に輸送するために使用することができる。ミクロ粒子は研究用途、患者治療用途、及び非医療用途の全範囲に及ぶ実施態様において使用される。医学的な実施態様の場合、ミクロ粒子特性の一例としては、使用しやすさ;標的血管、血管床又は血管組織への送達精度;効果的な生物学的応答の刺激及び支援;及び患者に対するポジティブな処置結果、のうちの1つ又は2つ以上が挙げられる。多くの実施態様の場合、ミクロ粒子はカテーテルで送達可能である。
【0020】
本明細書における図面及び開示内容は、ミクロ粒子の特性を示す。開示された或る特定の観察は人間の眼によって行われる。他の観察は、機器を使用することによって拡大して行われる。光学顕微鏡法又は走査電子顕微鏡法(SEM)を用いることにより画像及び観察が提供される場合、当該倍率の値は「X」又は「倍」と呼ばれる。
【0021】
「溶出」という用語は、ミクロ粒子からの材料の放出を意味するために本明細書中に使用される。放出のために典型的に提供される材料の一例としては、生体活性物質、例えば添加剤、コーティング材料、ベースポリマー、又はミクロ粒子内、ミクロ粒子上、及び/又はミクロ粒子と一緒に担持されるその他の材料が挙げられる。用法としては、いくつかの実施態様において、生体活性物質がミクロ球体から「溶出」されると言うことができる。「溶出速度」は、時間に伴うミクロ球体からの任意の物質の放出又は除去の1つの尺度である。ミクロ球体からの溶出物の溶出速度は一定であるか、或いは、時間とともに且つ/又は変化する条件下で変化する。
【0022】
「塞栓剤」は、人造又は天然の身体管腔又は体腔内に注入される物質である。塞栓剤のいくつかの実施態様は、管腔又は体腔を通る血流又は他の液体流を妨害する。いくつかの実施態様は、容積押し退け、生物学的応答の誘発、及び他の物質又は添加剤の送達、という特性を含む。
【0023】
「ボーラス」という用語は本明細書中で、ミクロ粒子の分量、量又は数として定義される。「ボーラス」という用語は、投与量、量、治療量、及び、ミクロ粒子の量、具体的には治療処置中に一緒に送達されることになるミクロ粒子の蓄積量を特定する類似の用語と同義に使用することができる。ミクロ粒子の「ボーラス」は、in vitroで溶液中に懸濁されるか、又はin vivoで患者体内に送達又は滞留する粉末形状であってよい。
【0024】
本明細書における「流体」という用語は、ミクロ粒子の使用又は形成との関連と調和して定義される。ミクロ粒子が含有され、形成され、又は液相と接触状態にある実施態様の場合、「流体」という用語は、ミクロ粒子と接触している溶液又は液相を意味する。例えば、体液は全ての身体液体を含み、その例としては、血液、血漿、硝子体液、間質液、空気及び腸液又は消化液を含む。「標的体液」はミクロ粒子と相互作用するように意図される身体の任意の流体である。例えば、ミクロ粒子が血流内に注入される実施態様の場合、血液が標的体液であり得る。眼内にミクロ粒子が注入される場合、硝子体液が標的体液であり得る。「標的体液」は、当業者がミクロ粒子の懸濁、又はミクロ粒子とのその他の相互作用を選択することを望む任意の体液である。いくつかの用途において、「標的体液」は、2種以上あり得る。身体に関与しない実施態様の場合、「標的流体」という用語は類似であり、そして当業者によって所望される通り、ミクロ粒子を懸濁し、ミクロ粒子と接触し、又は他の形式でミクロ粒子と相互作用するように意図される任意の流体である。ミクロ粒子の製造において、「流体」の一例としては、製造プロセスにおいて使用されるか、ミクロ粒子中に含まれるか、ミクロ粒子を構成するか、又はミクロ粒子と接触する任意の液相物質が挙げられる。本明細書において流体と考えられる他の液体の例としては、注入物、キャリア流体、保存溶液、ベースポリマー溶液、有機溶剤溶液、水溶液、水、造影剤、造影溶液及び食塩水が挙げられる。「キャリア流体」という用語は、ミクロ粒子を輸送するか、又は輸送しようと意図される任意の流体(液体又は気体)を含む。ミクロ粒子が液体と接触せず、気体によって懸濁又は取り囲まれている(例えばミクロ粒子のエアロゾル分散体中の空気)実施態様の場合、「流体」は、ミクロ粒子を取り囲む又はミクロ粒子内部の任意のガスを含んでよい。
【0025】
「添加剤」という用語は大ざっぱに言って、ミクロ粒子、ミクロ粒子コーティング、ミクロ粒子を構成する物質(例えばベースポリマー)、ミクロ粒子と接触する物質(溶液、液相)、及びミクロ粒子によって含有される物質に添加される任意の物質が挙げられる。「添加剤」は、任意の目的で、ミクロ粒子、又はミクロ粒子の成分(例えばベースポリマー、液相、ボイド容積、コーティング、及びミクロ粒子の任意の他の成分又は物質、ミクロ粒子と接触する任意の他の構成部分又は物質、ミクロ粒子によって含有される任意の他の構成部分又は物質、又はミクロ粒子と相互作用する任意の他の構成部分又は物質)に提供される任意のものを含む、幅広い用語である。
【0026】
本出願全体にわたって使用されるいくつかの略語は:
℃ = 摂氏温度
mm = ミリメートル
μm = ミクロン
cc = 立方センチメートル
ml = ミリリットル
g = グラム
を含む。
【0027】
この開示内容全体を通して、範囲の終点は、当業者の知識において、許容誤差内に他の値を組み入れることは明らかである。これらの他の値の一例としては、本発明に関連するそれぞれの終点とは僅かに異なる値が挙げられる。終点は、値「約」又は「近く」又は「ほぼ」をそれぞれの終点に組み入れると解釈されるべきである。本明細書中に引用した範囲及び比の限界は組み合わせ可能である。例えば1〜100の範囲と5〜25の範囲とは、特定のパラメーターに関して引用される場合、特に断りのない限り、1〜5、1〜25、5〜100及び25〜100の範囲も考えられることは明らかである。
【0028】
本発明のミクロ粒子は、生体再吸収可能なポリマーから製造することができる(この用語は、「再吸収可能」、「再吸収することができる」、「生体吸収可能」、「吸収可能」又は「吸収することができる」を含むものとする)。ミクロ粒子のベースポリマーは典型的には、生体再吸収可能な材料を含む。ベースポリマーは典型的には、制御された生体再吸収(すなわち「生分解」、「再吸収」、「生体吸収」又は「吸収」)を許す1種又は2種以上の生体適合性材料を含む。「ベースポリマー」という用語は、ポリマー、コポリマー及びヘテロポリマーを含む。ベースポリマーの例は、ポリ[α-ヒドロキシエステル]のコポリマー及びホモポリマーを含む。この生体再吸収可能なポリマー群には、ポリ[乳酸-コ-グリコール酸](PLGA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)及びポリ(乳酸)(PLA)のコポリマーが含まれる。ミクロ粒子のいくつかの実施態様では、ポリ(乳酸)とトリメチレンカーボネートとのコポリマー(PLGA-TMC)も使用される。上に特定したコポリマーは架橋を必要としない。ミクロ粒子のいくつかの実施態様は架橋モノマー又はポリマーを全く有しない。他の実施態様は、組成に応じてある程度の架橋を有することができる。非架橋型及び架橋型のベースポリマーのブレンドを利用したベースポリマー及びミクロ粒子が本発明に含有される。本明細書におけるベースポリマーの任意の組み合わせ又は混合物を、本発明のミクロ粒子の製造において採用することができる。
【0029】
いくつかの実施態様の場合、ベースポリマー溶液からポリマーの沈澱によってミクロ粒子を形成することにより、ミクロ粒子、又はコートされた又は多層状のミクロ粒子の実施態様の場合にはミクロ粒子コア(「ミクロ粒子コア」、「ベースポリマーコア」、「コア」とも呼ばれる)を構成する凝集体を形成することができる。ベースポリマー溶液は、有機溶剤(例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、塩化メチレン、酢酸エチルなど)中に溶解された1種又は2種以上のベースポリマーを含有する。これらのポリマーは、「ベースポリマー」又は「ミクロ粒子ベースポリマー」と呼ばれる。
【0030】
本発明のミクロ粒子は1種又は2種以上のベースポリマーを有する。コートされた又は多層状の実施態様の場合、ベースポリマーはミクロ粒子のコア内に含むことができる。ベースポリマーは、任意にはトリメチレンカーボネートを含有するポリ(a-ヒドロキシエステル)のホモポリマーを含む。上述のように、ベースポリマーは典型的には、PLA、PGA、PLGA、PLA-TMC、PGA-TMC、PLGA-TMC、又は他の生体再吸収可能なベースポリマーのうちの1種又は2種以上である。
【0031】
本発明のミクロ粒子のいくつかの実施態様に含まれる、ベースポリマー又はベースポリマーの混合物は、架橋されていない。典型的には、ベースポリマーは、部分的又は全体的な再吸収を許すのに十分に、架橋が不在である直鎖ポリマーである。いくつかのミクロ粒子はポリマー鎖間に架橋を有しない。
【0032】
ミクロ粒子のベースポリマーは、2つ以上のタイプのモノマー、ポリマー又は物質から成っていてよい。このようなベースポリマー組成物は、「混合型ベースポリマー」と呼び、そして本明細書中に開示されたベースポリマーの任意の組み合わせを含むことができる。
【0033】
いくつかの実施態様の場合、埋め込み可能なミクロ粒子が、「コーティング」と呼ばれる1つ又は2つ以上の付加的な層を有することができる。コーティングは一般にミクロ粒子に付着され、又はミクロ粒子によって支持される。いくつかの実施態様のコーティングは、ミクロ粒子表面上に存在し、ベースポリマーコアを取り囲む。ミクロ粒子のコーティングは1種又は2種以上の物質を含むことができる。各コーティング層は、純粋な、又は混合することができる物質から成っている。コーティング物質の一例としては、ゼラチン、キトサン、親水性ポリウレタンヒドロゲル、PLGA-PEG、PVA、コラーゲン、キチン、アルブミン、アルギネート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ペクチン、アミロース、フィブリノゲン及びこれらの組み合わせが挙げられる。2つ以上のコーティング又は層を使用することができる。
【0034】
他のコーティング物質の一例としては、有機及び無機化合物及び分子、アミノ酸、タンパク質、酵素、核酸塩基、バクテリア、ウィルス、抗生物質、抗体、抗原、プリオン、ウィルス、脂肪、栄養物、ビタミン、元素及びこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
コーティング物質を採用することにより、1種又は2種以上の生体活性物質又は添加剤の放出を改変するか、又は付加的な生体活性物質、添加剤又は物質(例えば薬物及び/又は抗体)を外面に付着させるための表面を提供することができる。コーティングは生体活性物質又は添加剤自体であってよい。コーティングを採用することにより、ミクロ粒子表面の機械特性、例えば摩擦係数、弾性率、優先権、平滑さ、又は耐分解性を変えることもできる。コーティングは持続放出の実施態様において使用することができる。
【0036】
図1Aは、ベースポリマー1Bとボイド2とを有する本発明のミクロ粒子1Aを示す。図1Bは、ベースポリマー3と、溶出物5を含有するボイド4とを有する本発明のミクロ粒子1Aを示す。図1Cは、混合型ベースポリマー、又は溶出物又は添加剤6と混合されたベースポリマーと、溶出物8を含有するボイド7とを有する本発明のミクロ粒子1Aを示す。図1Dは、混合型ミクロ粒子ベースポリマー、又は溶出物9又は他の添加剤と混合されたミクロ粒子ベースポリマーと、ボイド10とを有するミクロ粒子1Aを示す。図1Eは、ミクロ粒子ベースポリマー11と、ボイド12と、コーティング13とを有するミクロ粒子1Aを示す。図1Fは、混合型ベースポリマー、又は溶出物14又は他の添加剤と混合されたベースポリマーと、いくつかの実施態様において1種又は2種以上のポリマー、溶出物、添加剤又はこれらの混合物を含有することができるボイド15と、1種又は2種以上のポリマー、溶出物、添加剤又はこれらの混合物を含むコーティング16とを有するミクロ粒子1Aを示す。
【0037】
医療用実施態様において採用される本発明のミクロ粒子として使用するための材料は、典型的には、患者にとって耐容性が良好であるべきであり、そしてヒトの体内(例えば心臓血管系、又は筋肉-骨格系)で使用するのに安全であるべきである。標的脈管構造は、ミクロ粒子のいくつかの実施態様の存在に耐えることができ、しかも、不都合な生物学的結果、例えば持続的な非消散性炎症が生じることはない。いくつかの実施態様のミクロ粒子は、効果的な生物学的応答を促進する。
【0038】
ボイド、封入体、コンボリューション、付加的な材料及び製造ファクター(例えば溶液タイプ、ミクロ粒子組成、加えられる剪断力及びミクロ粒子硬化)を用いて、ミクロ粒子密度を設計する。密度はいくつかの実施態様において、標的溶液又は標的体液に対して所望の浮揚値、例えば中立の浮揚性を達成するように設計される。本発明のミクロ粒子の平均密度は、ミクロ粒子を形成する純粋原料ベースポリマーよりも低くてよい。溶出物を添加されていないミクロ球体の密度に対するベースポリマー密度の比は、いくつかの実施態様において1よりも大きい。ミクロ粒子に溶出物が添加されている実施態様の場合、ミクロ粒子密度に対するベースポリマー密度の比は、1.0よりも大きいか又は小さくてよい。ミクロ粒子が重い溶出物又は添加剤を含む場合には、この比は1.0よりも小さくてよい。より軽い溶出物又は添加剤が使用される場合には、この比は1.0よりも大きくてよい。
【0039】
空のボイドを採用すると、ミクロ粒子の全質量が低下し、そして粒子密度が低くなる。1実施態様の場合、ボイド及び低密度材料を利用すると、ミクロ粒子の密度は、同等の条件下で純粋形態で利用されたベースポリマーの密度よりも40%小さな値まで低減される。
【0040】
1実施態様の場合、95%以上のミクロ粒子の密度が0.9 g/ccを上回るが、しかし1.4 g/cc未満であるミクロ粒子が調製される。別の実施態様におけるミクロ粒子の密度は、0.95 g/cc〜1.1 g/ccである。さらに別の実施態様の場合、ミクロ粒子密度は約1.0 g/ccである。本発明の典型的なミクロ粒子の密度範囲は、約0.5 g/cc〜2.00 g/cc、より好ましくは約0.75 g/cc〜1.5 g/cc、そしてより好ましくは約0.8 g/cc〜1.4 g/ccであってよい。
【0041】
ミクロ粒子密度は製造中に操作することができ、又は、形成済ミクロ粒子に物質を添加することにより改変することもできる。
【0042】
ミクロ粒子の比重を改変又は設計して、ミクロ粒子密度を操作することにより所望の値を有することができる。多くの実施態様の場合、ミクロ粒子が注入される溶液、又はミクロ粒子が注入される標的体液の比重と同様の比重を有するミクロ粒子を製造することが望ましい。注入溶液、注入された標的体液、又はキャリア流体と比較して1.0の比重が、いくつかの実施態様のために利用される。その他の実施態様の比重は、標的体液、又はミクロ粒子が懸濁される溶液の0.6〜1.4、0.75〜2.0、又は0.6〜1.4であってよい。
【0043】
ミクロ粒子のいくつかの実施態様の比重は、X線造影媒質(「コントラスト」、「造影溶液」、「造影剤溶液」とも)と生理食塩水との50:50混合物に対して1.0である。ミクロ粒子の実施態様とともに採用することができる造影溶液の一例は、OMNIPAQUE(登録商標)イオヘキソール(101 Carnegie Center, Princeton, NJ 08540在、Amersham Health, Amersham PLC部門により製造)である。
【0044】
密度及び比重の値の設計を利用して、生体系又はその他の系内でミクロ粒子を使用するのに有益な浮揚性を達成する。本明細書中に開示された製造技術は、ミクロ粒子のベースポリマー純粋原料の固有浮揚値の0%〜100%の浮揚性を有するミクロ粒子の実施態様の製造を含む。中立の浮揚性、又はミクロ粒子が注入される標的体液の10%以内の浮揚値を有するミクロ粒子が、いくつかの実施態様において利用される。
【0045】
浮揚値をキャリア流体注入物の浮揚値に近似させると、標的体液はキャリア流体中の懸濁時間を増大させる(例えば懸濁液中で0-59分間、1時間以上から1日以上、1週間以上、1ヶ月間以上、6ヶ月間以上、1年間以上)。これらの浮揚特性は、低プロフィール・カテーテルを通しての注入を容易にする。
【0046】
ミクロ粒子は、これらが懸濁される溶液、流体系、キャリア流体、ミクロ粒子が配置されるべき標的流体又は標的体液に対して、ほぼ中立の浮揚性(すなわち「中立の重力」は、所望の温度及び圧力において所与の基準溶液、液体組成物、又は流体に対して比重1.0である)を有するように、いくつかの実施態様において調製することができる。1実施態様の場合、密度0.9 g/cc〜1.4 g/ccのミクロ粒子を調製することにより、ミクロ粒子の中立浮揚性が達成される。注入物の10%以内の比重が選択される(例えば50:50の生理食塩水と造影剤溶液)のが典型的である。
【0047】
キャリア溶液は典型的には、アルコール、有機液体、薬物水溶液、又は任意のその他の塞栓剤と適合可能な水溶液を含む1種又は2種以上の液体から成る。流体は、ミクロ粒子が、注入物を形成する注入時に懸濁される溶液(例えば生理食塩水、又は造影剤溶液)として働くことができる。いくつかの実施態様の場合、いくつかの実施態様のミクロ粒子が使用に際して形成、保存、移動、及び調製される液体を、キャリア流体として利用することもできる。
【0048】
ミクロ粒子の密度が、in vitroであるかin vivoであるかに関係なくミクロ粒子が懸濁されている溶液の密度に対して10 %〜15 %以内であると、又は溶液の密度に一層近いと、ミクロ粒子は典型的には、溶液中に均質に懸濁させることができる。10 %〜15 %以内の密度を有するミクロ粒子の実施態様は、臨床的に関連する時間にわたって、注入溶液(キャリア溶液)から容易には分離しない。好ましくは、本発明のミクロ粒子の密度は、溶液の密度に対して5%〜15%である。
【0049】
ミクロ粒子はボイドを有するか又は有さずに形成することができる。ミクロ粒子ボイド容積は0 %〜98 %であってよい。ボイド、ボイド部分、及びボイド分布の存在は、ミクロ粒子の設計された特性であることができる。ボイド形成に影響を与えるように操作することができるファクターは、ベースポリマー組成、溶液粘度及び採用されるエマルジョン技術(例えばシングル・エマルジョン、ダブルエマルジョン、又は多段処理)を含む。
【0050】
任意の外径(数ナノメートル規模から最大2000μm又はそれ以上)を有するミクロ粒子は、空のボイド、又はミクロ粒子の大部分のベースポリマーとは異なる材料で充填されたボイドを含有することができる。ボイドは、ベースポリマーとは異なる相又はタイプの材料を含有することができる。ボイド及び充填型ボイドは、総ミクロ粒子容積の最大98%を占めることができる。ボイド空間の数、サイズ及び濃度は制御することができる。ボイド空間の数は、単一のボイドから数千個以上のボイドであってよい。ボイド直径は数ナノメートルから1ミリメートル以上であってよい。ミクロ粒子容積の5-10%、15-30%、40-60%のボイド容積が、いくつかの実施態様において利用される。ミクロ粒子容積の5%、20%及び45%のボイド容積が典型的である。
【0051】
図2Aは、種々のサイズのボイド20を有し、そしてベースポリマー21を含む20 wt% リドカイン添加型ミクロ球体を150Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図2Aはまた、大きなボイド23と小さなボイド24とを有するミクロ球体を示す。図2Bは、種々の容積のボイドを有し、そしてミクロ粒子ベースポリマー26、大きなボイド27、小さなボイド28、及び中程度のボイド29を含む20 wt% リドカイン添加型ミクロ球体25を500Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。
【0052】
図3Aは、ボイド30を有するリドカイン添加型ミクロ粒子と、大きなボイド31を含む別のミクロ粒子とを150Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図3Bは、ボイド32を有し、そして大きなボイド33と小さなボイド34とを含むリドカイン添加型ミクロ粒子を500Xで画像形成して示す顕微鏡写真である。
【0053】
図4Aは、コンボリューションと種々の容積の内部ボイドと相互連通部40とを有し、そしてミクロ粒子ベースポリマー41と大きなボイド42とを示すリドカイン添加型ミクロ球体を150Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図4Bは、コンボリューションと種々の容積の内部ボイドと相互連通部とを有し、ミクロ粒子ベースポリマー46と相互連通部47とコンボリューション48とボイド49とを示すリドカイン添加型ミクロ球体45を500Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。
【0054】
本発明のミクロ粒子は、滑らか/非詰まり特性(本明細書中では「滑らかさ」と呼ぶ)を示すことができる。滑らかさは、いくつかのミクロ粒子実施態様の低摩擦特性に起因することができ、また、表面積、表面特性、弾性、ミクロ粒子形状及びミクロ粒子成分材料のようなファクターを操作することにより設計することができる。例えば、ミクロ粒子ベースポリマー又はコーティング物質と関連する硬さ、疎水性又は耐圧縮性が、ミクロ粒子の滑らかさに影響を与えることができる。ミクロ粒子の組成、溶出物の性質、ミクロ粒子の内部構造及び形態は、滑らかさに影響を与えることができる。ミクロ粒子を設計することにより、均一な形状を獲得し、粘着性又は付着性でないベースポリマーを構成し、又は概ね球形の形状を達成することができる。これらのファクターのそれぞれは滑らかさに影響を与えることができる。
【0055】
滑らかさは、ミクロ粒子の注入及びカテーテル送達を容易にすることができる。滑らかさは、ミクロ粒子注入中の送達カテーテルの詰まりを低減又は排除することができる。本発明のミクロ粒子は、カテーテル注入によって患者に容易に投与することができる。滑らかなミクロ粒子は、カテーテル・フラッシングの必要を低減又は排除する。滑らかさは、in vitro試験及びin vivo試験、例えばイヌの腎臓梗塞処置中に、塞栓剤としてのミクロ粒子の性能を高めることができる。
【0056】
キャリア溶液に送達される本発明のミクロ粒子が示す、ミクロ粒子のない同じキャリア流体に必要とされる注入圧を上回る注入差圧に対する要件は、極めて低いか又は存在しない。カテーテル器具を通して本発明のミクロ粒子を有するキャリア流体を注入するためにに必要とされる圧力は、ミクロ粒子なしの単独でキャリア流体を患者に投与するために必要となる注入圧以下であるか、又はこの注入圧とは最小限に異なる。いくつかの実施態様では、ミクロ粒子を有するキャリア流体のための注入圧は10%以内である。典型的には注入差圧は、キャリア流体単独の注入圧を1気圧未満だけ上回る。本発明のいくつかの実施態様では、注入差圧のゼロ・パーセントに近い差を達成することができる。
【0057】
いくつかの実施態様の本発明によるミクロ粒子は、標的脈管内部で非凝集性を示す。非凝集性は、滑らかさと一致することができる特性である。
【0058】
ミクロ粒子は、構造安定性、強度、及び破損抵抗を示す。本発明のいくつかの実施態様のミクロ粒子は、高圧力系又は高血圧循環系においても効果的な塞栓剤として機能するのに十分に、これらの構造及び強度を維持することができる。ミクロ粒子安定性は典型的には、塞栓形成又はミクロ粒子による治療(例えば血管の機械的閉鎖、又は閉塞、及び線維形成性応答の完成)の所望の生物学的効果が発現するまで、安定性を維持するのに十分である。薬物送達ミクロ粒子向けの実施態様を製造することができ、これらの実施態様の場合、再吸収速度は、例えば溶出物を送達するか、又は腫瘍症候の慢性的な低減を誘発するのに必要となる時間を上回る。ミクロ粒子が任意の時間にわたって、所期の治療機能又は塞栓機能において機能することができる場合、構造安定性が存在すると考えられるか、又は維持される。ミクロ粒子は、数時間、数日又は数年後に再吸収するように設計することができる。典型的には、ミクロ粒子構造安定性は約5年、より好ましくは約30日〜180日、又は30日〜90日まで維持することができる。
【0059】
本発明のミクロ粒子のいくつかの実施態様は、ボイド又はその他の内部構造を有する場合にも、耐圧縮性を示すことが望ましいと考えられる。耐圧縮性は、破損することなしに変形に抵抗する能力、又は外部負荷が加えられると、予め定義された程度の寸法変化に抵抗する能力として定義される。本発明の耐圧縮性ミクロ粒子のために、有機ミクロ粒子形状を、設計された許容誤差に維持することができる。いくつかの実施態様において、変形に対する許容誤差を超えると、ミクロ粒子は破損することができる。本発明のミクロ粒子の或る特定の実施態様によって、外部物理的負荷0.1、0.03、又は0.07キログラムが抵抗される。最大0.2キログラム以上の外部物理的負荷に対して耐圧縮性のミクロ粒子を、本発明において利用することができる。いくつかの実施態様の場合、元の外径を有するミクロ粒子は、0〜30%から選択された値だけ元の外径を変化させる変形に抵抗する。変形が所望の値を上回る場合には、ミクロ粒子は破損することができる。例えば1実施態様の場合、耐圧縮性ミクロ粒子は、外部物理的負荷0.2 kgに抵抗する。物理的負荷が0.2 kgを超えると、ミクロ粒子は破損することができる。ミクロ粒子のいくつかの実施態様は、0.1キログラム未満の外部物理的負荷による元の外径の約0%〜20%の変形(及び数学的に類似の幾何学的な変位又は変化)に対する抵抗を示すことができる。
【0060】
いくつかの実施態様の場合、ミクロ粒子自体のベースポリマーが耐圧縮性を示す。
【0061】
本発明は、ミクロ粒子の耐圧縮性を測定するための新しい技術を含む。耐圧縮性を測定する方法は、キャリア溶液中にミクロ粒子を提供し、そして特定の内径の円筒形試験チャネルをこれらのミクロ粒子が通るようにすることを含む。内径は、数ナノメートル〜数ミリメートルであってよく、求められる耐圧縮度に応じて選択される。耐圧縮性ミクロ粒子はほとんど破損又は変形することはなく、試験チャネルを通るのに伴って、元の平均ミクロ粒子外径の変形が例えば10%未満であるならば、これは耐圧縮性と考えることができる。耐圧縮性でないミクロ粒子は破損、破断又は顕著な程度、例えば元の平均ミクロ粒子外径の20%を上回る程度まで変形する。
【0062】
図5は、本発明に含まれる、ミクロ粒子耐圧縮性を測定する1つの圧縮試験装置を示す。図5は、ミクロ粒子52を有するキャリア溶液51を含有するシリンジ50と、第1の内径(D1)の管53と、第2の内径(D2)を有する試験チャネル55と、試験シリンダー54とを示す。ミクロ粒子の平均外径とD2とは、所与の耐圧縮度を測定するのに必要な任意の比を有することができる。
【0063】
1実施態様の場合、ミクロ粒子の外径よりも10%小さい内径D2を有する剛性導管を通してミクロ粒子を損傷せずに注入することができなければ、そのミクロ粒子は耐圧縮性であると考えられる。別の実施態様の場合、ミクロ粒子の外径よりも20%小さい内径D2を有する剛性導管を通してミクロ粒子を損傷せずに注入することができなければ、そのミクロ粒子は耐圧縮性であると考えられる。さらに別の実施態様の場合、ミクロ粒子の外径よりも30%小さい内径を有する剛性導管を通してミクロ粒子を損傷せずに注入することができなければ、そのミクロ粒子は耐圧縮性であると考えられる。
【0064】
図26は、耐圧縮性のためのin vitro試験メカニズムの別の実施態様を示す。注入物261を形成するキャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子を充填されたシリンジ260が、圧力計270を有する管262内に注入される。ミクロ粒子は管262を通って移動し、そして単一ミクロ粒子263は試験チャネル264に入る。このミクロ粒子は、テーパされた試験チャネル264を移動して下るために、圧縮することが必要となる。極めて小さな圧力下(例えば0.1 psi)で、ミクロ粒子は、テーパされたチャネル内に、ミクロ粒子外径に一致した地点で押し込まれる。さらに背圧が加えられると、ミクロ粒子は、テーパされたチャネルを移動して下るように変形することができる。テーパは幾何学的に十分に定義されており、元の一致した直径地点から移動した任意の距離は、耐圧縮性の測定を可能にし、そして加えられた背圧と関数の関係にある。十分な背圧が加えられると、耐圧縮性ミクロ粒子は破砕し266、試験チャネル264から出ることができる。耐圧縮性ではないミクロ粒子265は、チャネルを移動して下るにつれて著しく変形することがある。
【0065】
図27は、耐圧縮性のためのin vitro試験メカニズムの別の実施態様を示す。注入物361を形成するキャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子を充填されたシリンジ360が、圧力計370を有する管362内に注入される。ミクロ粒子363は管362を通って移動し、ミクロ粒子直径よりも小さな開口を有するフィルター・スクリーン365を含有するフィルター・ホルダー364に入る。ミクロ粒子363は、フィルター・スクリーンを通過するために圧縮する必要がある。耐圧縮性でないミクロ粒子は、特に背圧下で著しく変形することができ、ミクロ粒子がフィルター・スクリーンを通過することを可能にする。十分な背圧を加えて耐圧縮性ミクロ粒子を破砕させ、破砕片がフィルター・スクリーン365を通過するのを可能にするのでなければ、耐圧縮性であるミクロ粒子はフィルター・スクリーンを通ることはない。
【0066】
図28は、耐圧縮性のためのin vitro試験メカニズムの別の実施態様を示す。圧縮テスターは、ミクロ粒子460に圧縮力を加え、そしてジョーの運動を介して測定可能な歪みを同時に測定するように構成することができる。例えば、ミクロ粒子は、圧縮テスターに接続された2つのジョー462, 463の間に配置することができる。下側ジョー462は所定の位置に固定され、上側ジョー463は運動可能であり、ロードセルに接続されている。ロードセルは、ジョーによって試験片に加えられた力の量を測定することができる。ジョーは、ミクロ粒子460を所定の位置に固定するプラットフォーム464を保持する。圧縮テスターは、ミクロ粒子を圧縮するように上側ジョー463を動かすことにより、ミクロ粒子に測定済の力を加える。加えられた負荷でミクロ粒子の変形を測定するために、ジョー463の変位を同時に測定する。ミクロ粒子460に、これが破砕するまで力を増大しながら加える。1実施態様の場合、耐圧縮性ミクロ粒子の直径は、破砕前に約30%未満変形することになる。別の実施態様の場合、耐圧縮性ミクロ粒子の直径は、破砕前に約25%未満変形することになる。別の実施態様の場合、耐圧縮性ミクロ粒子の直径は、破砕前に約20%未満変形することになる。他の実施態様の場合、ミクロ粒子は、約15%、10%、又は5%未満変形し得る。
【0067】
図6Aは、圧縮可能なミクロ球体61を保持する血管60を示す。図面から明らかなように、ミクロ球体61の圧縮性により、血管の内径が、圧縮されていないミクロ球体61の外径よりも小さいという事実にもかかわらず、血管は変形されていない。圧縮可能なミクロ粒子は、圧縮可能なミクロ粒子によって加えられた外方への力が、血管壁によって加えられた拘束力によって打ち消される平衡点に達する距離まで、血管内を移動することになる。残念ながら、この平衡位置は予測が難しい場合がある。それというのも、この位置は、例えば広範囲の血圧を含めて、極めて可変の多くのパラメーターによって著しく変化させられることがあるからである。
【0068】
本発明の耐圧縮性実施態様は、血管を通して移動する間、ほとんど変形しない。1実施態様の場合、圧縮から生じるミクロ粒子外径の変化は約ゼロであった。他の実施態様の場合、ミクロ粒子外径の変化は25%未満であった。図6Bは、耐圧縮性ミクロ球体63を保持する、変形62を示す血管を示す。ミクロ粒子の耐圧縮性実施態様が利用されると、血管は、ミクロ球体の存在を収容するために変形することができる(図6Bに示す)。耐圧縮性ミクロ粒子は、従動性血管壁によって加えられた内方への力と、ミクロ粒子によって加えられた外方への抵抗力との間の平衡点に達する距離まで、血管内を移動することになる。本発明の非ミクロ粒子を使用することにより、注入前にミクロ粒子性能をより容易に予測することができ、ミクロ粒子の前選択をより容易に成功させることができる。
【0069】
耐圧縮性ミクロ粒子は、標的血管又は組織との正確なサイズ調和を可能にする。耐圧縮性ミクロ粒子と標的血管内径とのサイズ調和は、血管内径とは0 %〜25 %(又はこれ以上)異なる(大きい又は小さい)平均外径を有するミクロ球体を含む。調和には柔軟性が存在する。なぜならば、ミクロ粒子はこれが脈管構造を通って移動するのに伴ってほとんど形状を変化させることがなく、これに対して、直面する血管の内径又は形状はミクロ粒子の存在によって変化又は変形させることができるからである。脈管構造は典型的には、1つ又は2つ以上のミクロ粒子を収容するように変形する。
【0070】
ミクロ粒子は、血管内で沈積させられるか、又は自由に浮揚したままであることが可能である。「沈積」は、系を通るミクロ粒子の運動速度(すなわち速度)がゼロに接近するか又はゼロであるときに生じる。
【0071】
本発明のミクロ粒子は、血管又は組織内の沈積中に、塞栓剤と宿主血管壁又は塞栓形成された体腔又は体孔との間のミクロ粒子外面の0.025%〜90%(線維形成応答前)の接触表面積を有するように適合される。このことは、溶出及び溶出された薬物の取込みを容易にすることを助けることができる。線維形成応答中又は線維形成応答後、沈積されたミクロ粒子全体は、再吸収前及び再吸収中に組織によって全体的に取り囲むことができる(すなわちミクロ粒子外面の表面積接触率は最大100%)。耐圧縮性ミクロ粒子のいくつかの実施態様は、血管内径の変化(例えば血管拡張のような血管状態の付随する変化)又は管腔内圧の変化に関連して押し退けられにくい。
【0072】
本発明のミクロ球体によって示された外部圧縮に対する抵抗は、耐久力のある塞栓を形成するミクロ球体の能力を改善する。いくつかの実施態様の場合、ミクロ球体は、流体(血液)流に対する周囲の血管の効果的な密閉性(最大密閉率100%)を達成する。この結果、完全な、又はほとんど完全な血液閉塞をもたらすことができる。強力な密閉性が、血管再疎通の可能性をほとんど排除することができる。
【0073】
これらの潜在的な利益は、本発明のミクロ粒子を注入された動物から捕集された組織を検討すれば明らかである。図7及び8は、脈管構造に塞栓を形成する本発明のミクロ粒子の画像である。図7は、ミクロ粒子71、ミクロ粒子72、及びミクロ粒子73が配置されている血管70を示す画像顕微鏡写真である。図8は、ミクロ粒子81を保持する血管80、及びミクロ粒子82とミクロ粒子83とが配置されている組織の画像顕微鏡写真である。図7及び図8において明らかなのは、圧縮不能なミクロ球体及び沈積の存在を収容する血管の変形である。
【0074】
本発明のミクロ粒子は、種々様々な構造及び組成を有するように構成することができる。適合し、改変し、そして構成することができるミクロ粒子特性の一例としては、組成、密度、ボイド特性(例えばボイド率、ボイド容積、ボイド・サイズ)、ベースポリマー組成、添加剤及び物質、コーティング、サイズ、表面積、表面トポグラフィ・テクスチャー、有孔率、コンボリューション、亀裂、硬さ、滑らかさ、強度、耐圧縮性、有孔率、分解及び再吸収特性が挙げられる。
【0075】
本発明のミクロ粒子の内部構造の例は、図2A、2B、3A、3B、4A、4B、9A及び9Bに示されている。
【0076】
塞栓剤として使用されるミクロ粒子の実施態様は、特定のジオメトリーを有するように形成又は選択することができる。本発明のミクロ粒子は、不規則又は球形の形態を有することができる。球形に成形された実施態様の場合、ミクロ粒子は典型的には「ミクロ球体」と呼ばれる。マイクロメートル範囲のミクロ粒子を製造するのに用いられる方法は、ナノメートル範囲の外径を有するミクロ粒子の実施態様を製造できる(すなわち「ナノ粒子」又は「ナノ球体」)ように採用することもできる。例えば食細胞を標的とする際には、ナノ粒子が使用される。これらの標的細胞はマクロファージであってよい。典型的には、ミクロ粒子又はミクロ球体は、十分に特徴付けられた一次寸法を有する。一次寸法は、所与の用途又は脈管構造と調和させるように使用することができる。いくつかの実施態様におけるミクロ粒子平均外径は、一次寸法の一例である。ミクロ粒子幾何学的形状(例えば平均外径)及び標的血管寸法と調和させることにより、精密な血管標的付けが達成される。一般に、ミクロ粒子が小さければ小さいほど、治療することができる血管は狭くなる。ミクロ粒子は、外径20ナノメートル〜5 mmで調製することができる。いくつかの実施態様の場合、25〜200ナノメートルの外径のより小さなミクロ粒子が使用される。いくつかの実施態様においてカテーテル注入のために調製される臨床上効果的なミクロ粒子ボーラスは、10μmを上回る平均ミクロ粒子外径を有する。1実施態様の場合、カテーテル注入のためのミクロ粒子の95%以上の外径が、10μmを上回る。
【0077】
ミクロ粒子の平均外径は、ベースポリマー及び連続相のエマルジョンの流体粘度に部分的に依存する。溶液の粘度が高ければ高いほど、ミクロ粒子形成中に剪断力を加えると、一層大きなミクロ粒子を産出することになる。溶液中のポリマーのエマルジョンの粘度が低ければ低いほど、所与の剪断力によって結果として製造されるミクロ粒子は小さくなる。
【0078】
製造プロセス中に導入される剪断力はミクロ粒子サイズに影響を与える。系内に導入される剪断力が大きければ大きいほど、ミクロ粒子は小さくなり、又はナノ粒子も生じる。
【0079】
固有の特性を制御して変数を処理することとは別に、特定の外径のミクロ粒子は、予め調製されたミクロ粒子を篩分けすることにより得ることもできる。ミクロ粒子の異なるバッチからミクロ粒子を篩分けすることにより、所望の外径分布を有するミクロ粒子のボーラスを得ることができる。固有ファクター、製造プロセス及び篩分けのような技術の組み合わせを利用して、所望の外径範囲を有するボーラス又はミクロ粒子を調製することができる。ミクロ粒子の外径は、正確な寸法に密に制御される。篩分けによる外径選択の制御が正確であることが可能であり(すなわち0%の差)、そして標的外径の50%以内(より大きいか又は小さい)まで制御される。いくつかの実施態様の場合、篩分けは硬化工程後に行われる。
【0080】
本発明のミクロ粒子は、塞栓形成目的で約10〜2000 μmの外径で形成することができる。典型的なミクロ粒子外径範囲は、約40〜120、約100〜300、約300〜500、約500〜700、約700〜900、及び約900〜1200μmを含む。1実施態様の場合、外径約2000μmのミクロ粒子が達成される。篩分け済ミクロ粒子と、所望のサイズの製造済ミクロ粒子とを所望の通り組み合わせることができる。
【0081】
薬物送達ビヒクルとして機能する全身性の自由血液循環剤として、ナノ粒子サイズ範囲のミクロ粒子を含むミクロ粒子を使用することもできる。これらは、血流又は組織中への直接的な注入を介して投与することができる。組織塊内への直接的な注入を介して、組織バルカーとしてミクロ粒子(ナノ粒子を含む)を使用することもでき、又はこのミクロ粒子を脈管構造を通して供給することができる。
【0082】
本発明のミクロ粒子は、所望の形状、ジオメトリー及び表面トポグラフィを有するように、設計することができる。本発明の実施態様の一例としては、平滑な球体、ピット含有球体、コンボリュート状球体、不規則球体、添加物及び溶出物によって影響を与えられた球体、及び、使用中又は再吸収中に変化するように、又は改変されるようになるように設計された形状が挙げられる。
【0083】
本発明のミクロ粒子の1実施態様は、走査電子顕微鏡によって最大500 x(500倍)の倍率レベルで見ると、一般に均一で平滑な球体形状を有する。
【0084】
図2A、2B、3A、3B、4A、4B、9A、9B、10A、10B、11B、12A、12B、13A、13B及び14は、ミクロ粒子実施態様の画像を示す。
【0085】
本発明のミクロ粒子の表面積を設計し、適合させ、そして改変することができる。ミクロ粒子は、平滑な球体シェル、又は同等の平均外径の平滑な表面を有する実施態様と比較して表面積が増大されたテクスチャー加工表面を有することができる。ミクロ球体は、孔、粗さ、ピット構成要件、コンボリューション、亀裂、又は多孔質表面を有するテクスチャー加工表面を示すことができる。他の実施態様は多孔質インボリューションを示す。ミクロ粒子の表面構成要件は、専ら1つのタイプとして出現することができ、又は混合タイプを有することもできる。表面構成要件は大部分(すなわち表面の50%超)を占めていてよく、又は僅かな部分(すなわち表面の50%未満)を占めていてよく、又は混合して存在していてもよい。種々の表面トポグラフィ及びテクスチャーは、SEM倍率20〜500 Xの表面試験を介して観察することができる。平滑な粒子に対する平滑でない粒子の表面積比は典型的には1.0を上回る。1実施態様の場合、ミクロ粒子表面は、同等の平均外径の平滑な球形粒子よりも最大25%大きい表面積を提供する。他の実施態様の場合、ミクロ粒子の表面積は、同等の平均外径の平滑な球形粒子よりも50%、75%、又は100%以上大きい。いくつかの実施態様の場合、表面積を増大させると、同等の平均外径及び構造を有する平滑な球形粒子とは対照的に分解速度が増大する。いくつかの実施態様の場合、表面積を増大させると、同等の平均外径及び構造をの平滑な球形粒子を凌いで組織の組み込み状態が改善される。いくつかの実施態様は、同等の又は直径が等価の平滑な実施態様の表面積よりも数百倍又は数千倍大きい表面積を有する。
【0086】
さらに、本発明のいくつかの実施態様の場合、表面構成要件は、ミクロ粒子の状態、及びミクロ粒子が暴露されている環境条件の関数として経時的に変化することができる。いくつかの実施態様の場合、表面構成要件は、一般に一定であり、また、発生し得る任意の再吸収プロセス前に著しく変化することはない。一般に、再吸収はミクロ粒子の表面構造に影響を与える。
【0087】
本発明のミクロ粒子は、増大された表面積を示すように適合されており、この表面積は、同等の平均外径及び構造を有する平滑な球形粒子の溶出プロフィールと比較して生体活性物質の溶出プロフィールを増大させる。
【0088】
ミクロ粒子製造のために使用されるポリマー・ベース溶液の粘度(ポリマー/溶剤の比)は、最終ミクロ粒子の表面トポグラフィに影響を与えるファクターである。低粘度のベースポリマー溶液は、あまり平滑でない高表面積又は「脳様」コンボリュート状トポグラフィを提供する高粘度のポリマー・ベース溶液と比較して、より平滑な表面を有するミクロ粒子を提供する。いくつかのミクロ粒子中で示された脳様表面トポグラフィは、ミクロ粒子表面上の開いた空間から生じる。これらの空間は凝集体のポリマー鎖の間で形成される亀裂の結果である。
【0089】
図13A及び図13Bは、本発明のミクロ粒子全体の走査電子顕微鏡写真(SEM)であり、外面は全体的な球形状を維持しながら明確な脳様テクスチャーを有している。脳様トポグラフィが達成されるベースポリマー溶液は、有機粘性ポリマー溶液である。
【0090】
ミクロ粒子の表面トポグラフィは、ベースポリマー溶液の粘度、水相又は有機相特性、形成中に加えられた剪断力、溶出物特性及びコーティング特性を変化させることにより設計することができる。このことは、技術的に作り出された表面トポグラフィと呼ばれるものをもたらす。
【0091】
例16は、トポグラフィに対する溶液濃度及び粘度の効果を示す。
【0092】
図9A及び9Bは、表面トポグラフィは同等であるが、しかし内部構造が明確に異なる本発明のミクロ球体のミクログラフである。なお、図9Bには、ボイド部分が存在し、図9Aにはボイド部分は存在しない。
【0093】
一貫した表面トポグラフィを使用することが、本発明のいくつかの実施態様において可能ではあるが、図9A及び9Bに示されたように内部ミクロ球体構造を変化させることも可能である。図9Aは、ボイド90なしのミクロ球体の光学顕微鏡写真である。図9Bは、大きなボイド96を有するボイド95を含む、図9Aと同等の外径のミクロ球体の光学顕微鏡写真である。図9Bは、大きなボイド98及び小さなボイド99を有するボイド97を含むミクロ球体の光学顕微鏡写真である。
【0094】
図10Aは、平滑な表面100を有する本発明のミクロ球体を150Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図10Bは、平滑な表面101を有するこれらのミクロ球体を500Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。
【0095】
図11Aは、PVA発泡体粒子(150〜250 μm外径ミクロ粒子サイズ)110の画像である。図11Bは、本発明のミクロ球体(10〜250 μm外径ミクロ球体サイズ)111のミクロ球体を示す画像である。
【0096】
図12Aは、ミクロ多孔質表面120を有するリドカイン添加型ミクロ球体を150Xで画像形成するSEM顕微鏡写真である。図12Aはまた、ミクロ多孔質表面121を有するリドカイン添加型ミクロ球体を示す。図12Bは、ミクロ多孔質表面125を有するリドカイン添加型ミクロ球体を500Xで画像形成するSEM顕微鏡写真であり、また、リドカイン添加型ミクロ球体126を示す。
【0097】
図13Aは、コンボリューション及びコンボリュート状又は「脳様」表面130を有する本発明のミクロ球体を140Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。図13Bは、ミクロ粒子ベースポリマー136と、小さなコンボリューション137と、大きなコンボリューション138とを含む、コンボリューション及びコンボリュート状又は「脳様」表面135を有するミクロ球体を500Xで画像形成して示すSEM顕微鏡写真である。
【0098】
硬さはさらに、本発明において設計することができる更なる特性である。硬さは、ベースポリマー、コーティング、溶出物の性質、添加剤、及びミクロ粒子の製造及び処理に部分的に依存する。
【0099】
ミクロ粒子形成の硬化段階は任意であり、また、液-液抽出技術を通してミクロ球体から有機物又はその他の含まれる物質を除去することができる。有機溶剤、水性溶剤、又は種々異なる溶剤の混合物を含む種々の溶剤を使用することにより、硬化を達成することができる。
【0100】
いくつかの実施態様の場合、ミクロ粒子は粉末形態で使用するために製造され、調製される。粉末は周囲条件下で比較的自由に流動する。この特性はいくつかの実施態様において、粒子充填バイアルを静かに震盪させ、そしてミクロ粒子の自由流動運動に注意することにより観察することができる。
【0101】
ミクロ粒子粉末は使い捨て滅菌バイアル内に含有又は保存することができる。粉末のミクロ粒子は、例えば流体中の懸濁を含む処置技術を用いて溶液中に入れることができる。本発明のミクロ粒子は、臨床指示において使用することができる。これらの再懸濁されたミクロ粒子はカテーテルを通して注入されるか、又は組織床内に直接に塗布される。
【0102】
図14は、本発明の薬物溶出ミクロ球体140と、本発明の放射線不透過性(「ラジオパーク」)ミクロ球体141とを示す写真である。
【0103】
本発明のミクロ粒子は、小内径注入カテーテルを通して注入することができる。本発明のミクロ粒子は、コンベンショナルな低プロフィール注入カテーテルを通して注入することもできる。カテーテル送達のために典型的に選択されるミクロ粒子の実施態様は、耐圧縮性であり、そして非架橋型の生体再吸収可能な材料を含む。
【0104】
塞栓剤は、血管を通る血流を機械的に閉塞するのに使用される物質である。本発明のミクロ粒子は、塞栓剤として利用することができる。本発明の方法は、血流を機械的に閉塞するために、所期の塞栓部位に塞栓剤を、標的を定めた状態で送達するのを可能にする。所望の外径、滑らかさ、耐圧縮性、密度、浮揚性、コーティング、及び注入性に影響を与える他の特性を選択するような手段によって、カテーテルを通して送達するように本発明のミクロ粒子ボーラスを適合させることができる。標的脈管構造の機械的な閉塞は、いくつかの実施態様において、1つ又は2つ以上のミクロ粒子による塞栓形成によって達成することができる。
【0105】
図15は、有茎性粘膜下線維腫151、壁内線維腫152、漿膜下組織線維腫153、粘膜下線維腫154、壁内線維腫155、及び有茎性粘膜下線維腫156を含む線維腫を示す、ヒトの子宮150の図である。
【0106】
本発明の1実施態様の場合、子宮動脈部位にカテーテルが血管造影法によって案内される。次いで、ミクロ粒子を予め充填されたシリンジを子宮動脈内に注入することにより、子宮筋腫を梗塞する。図16は、シリンジ160、ミクロ粒子161を有するキャリア溶液、及びカテーテル162を含むカテーテル系を使用することにより、ヒトの子宮にミクロ粒子を送達することを含む。カテーテルは、大腿動脈163及び子宮動脈164を通って、線維腫脈管構造166が線維腫167に血液供給する、子宮165近くの位置に達する。
【0107】
図17は、筋腫を有する子宮、カテーテルを通した粒子の送達、及び粒子が筋腫を取り囲む局所的組織を梗塞するのに伴う粒子を示す拡大図である。図17は、カテーテル系の使用によって、ヒトの子宮170にミクロ粒子を送達することを示す。図17は、線維腫血管172によって血液供給された線維腫171の治療を示す。カテーテル177によって子宮動脈176を通して、ミクロ粒子173, 174及び175が送達される。
【0108】
図18A及び18Bは、生理食塩水中に懸濁された2つの異なる外径(それぞれ10 μm及び80 μmの19A及び19B)を有するミクロ粒子ボーラスを示す。ミクロ粒子ボーラスは、約100〜150μmの注入側孔を有する1.4-Frミクロ注入カテーテル(例えばNeuroVasX(登録商標) Sub-ミクロ注入カテーテル、モデル100-DG-015)を通してin vitroで注入される。図18Aは、生理食塩水181中の、約100〜150μmの注入側孔180を有するミクロ注入カテーテルの画像である。図18Aは、10 μmのミクロ粒子、例えばミクロ粒子183を送達する注入流182を示す。図18Bは、生理食塩水186中の、約100〜150μmの注入側孔185を有するミクロ注入カテーテルの画像である。図18Bは、80 μmのミクロ粒子、例えばミクロ粒子188を送達するミクロ粒子注入流187を示す。ミクロカテーテルを通して両粒子サイズを送達するには最小限の労力しか必要とならない。
【0109】
いくつかの実施態様におけるミクロ粒子を調製することにより、薬物を局所的に送達する。さらに、いくつかの実施態様の場合、制御された速度で物質を放出するように、ミクロ粒子を設計することができる。本発明のミクロ粒子は、ミクロ粒子から局所的に放出することができる1種又は2種以上の生体活性物質を内蔵又は担持することができる。ミクロ粒子は、1種又は多種の生体活性物質(例えばリドカイン)の制御された持続型送達のための基剤として作用することができる。いくつかの実施態様の場合、ミクロ粒子は、1日当たり数ナノグラムから数ミリグラムの薬物の薬物送達投与量を提供することができ、また、標的部位内の組織及び標的部位を直接に取り囲む組織に局在化することができる。薬物放出は持続することができるか、又は経時的に変化することができる。この薬物送達は、生体活性物質の「溶出」と呼ばれる。ミクロ粒子の表面積はまた、再吸収速度及び/又は薬物溶出プロフィールに影響を与える。
【0110】
生体活性物質及び添加剤は、本発明のミクロ粒子中に内蔵する、ミクロ粒子によって担持するか、ミクロ粒子中に含浸させるか、又はミクロ粒子とともに使用することができる全ての化合物、溶液、材料、純粋な物質及び物質の混合物を含む。製造プロセスの一部として、又は臨床的な使用時に、ミクロ粒子中に生体活性物質を内蔵することができる。多くの生体活性物質の例を別個に又は組み合わせてここに記載する。
【0111】
生体活性物質は、所望の生物学的応答を導き出すように意図された生体活性薬剤を含む。これらの一例としては下記のものが挙げられる:
・ 任意の遺伝子送達ベクター、例えばレトロウィルス、アデノウィルス、アデの随伴ウィルス、単純ヘルペスウィルス、POXウィルス、プラスミドDNA、ネイクドDNA、及びRNA転移ベクターを介して、サイトカイン、抗原、欠陥遺伝子、腫瘍抑制因子、自殺遺伝子、マーカー、受容体又は任意の治療遺伝子(すなわちVEGF又はFGF)をコードする任意の遺伝子又は遺伝子群の送達を含む遺伝子治療薬;
・ 癌組織を局所的に治療するための化学毒素、抗新生物薬(例えばドキソルビシン、シスプラチン、マイトマイシン、アクチノマイシン、パクリタキセルなど);
・ アルキル化剤(例えばカルボプラチン、及び/又はメルファラン);
・ 抗生物質(例えばダウノルビシン、ミトラシン);
・ 代謝拮抗物質(例えばメトトレキサート、ビスホスホネート);
・ ホルモン・アゴニスト/アンタゴニスト(例えばニルタミド);
・ 疼痛管理を容易にするための麻酔薬(例えばリドカイン、ブピバカイン、ジブカイン、キシロカイン、ロピバカイン、ネサカイン、メピバカイン、エチドカイン、テトラカイン又はこれらの混合物);
・ 局所的放射線治療を可能にする放射性同位元素(例えばヨウ素-131、ストロンチウム-89、サマリウム-153、イリジウム-192、ホウ素-10、ルテチウム-177、リン-32、アクチニウム-225、イットリウム-90);
・ 外部から加えられたエネルギー(例えばマイクロ波)を濃縮して治療効果を達成することができるエネルギー吸収材料(例えば温熱療法);
・ ミクロ球体のタイプを区別するための着色剤、例えばFD&C ブルーNo.1(ブリリアント・ブルー FCF)、FD&C レッドNo.2(エリトロシン)及びFD&C No.5(タルトラジン);
・ 抗菌物質(例えば銀、クロロヘキサジン、トリクロサン);
・ 磁界内のミクロ粒子の挙動、磁気共鳴画像形成反復を変化させる磁性物質(例えば鉄類金属);及び
・ 診断画像形成モダリティ(例えばX線写真、超音波)による可視性を高めるための物質(例えば金、タンタル)。
【0112】
ミクロ粒子は、数時間から数カ月間にわたって生体活性物質を持続的に溶出することができる。
【0113】
他の生体活性物質、添加剤、及びミクロ粒子内に内蔵することができる物質の一例としては、有機及び無機化合物、及び分子、アミノ酸、タンパク質、酵素、核酸塩基、バクテリア、ウィルス、抗生物質、抗体、抗原、プリオン、ウィルス、脂肪、栄養物、ビタミン、元素及びこれらの混合物が挙げられる。
【0114】
ミクロ粒子は、生体活性物質又は添加剤の徐放又は持続放出に適合することができる。図25は、本発明の粒子を形成するために使用された製造方法の概観を示すフローダイヤグラムである。分岐点A、B及びCは、薬物、生体活性物質、又は添加剤、及びこれらの混合物を本発明中に添加することができる種々異なる時点を意味する。生体活性物質、薬物、又は添加物及びこれらの混合物を、可溶性又は不溶性形態でベースポリマー中に直接に内蔵するか、可溶性又は不溶性形態でボイド空間内に内蔵するか(19C)、又はミクロ球体上又はミクロ球体内に吸着することができる。
【0115】
生体活性物質及び添加剤が添加される他の典型的な時点は、洗浄後、保存溶液中、輸送溶液中、キャリア溶液中、或いはミクロ粒子又はその成分が任意の生体活性物質又は添加剤と接触又は混合される任意の時点を含む。
【0116】
加えて、本発明のミクロ粒子は、バイオセンサー、診断デバイス又はマイクロ治療マシン(例えばナノボット)をカプセル化するように構成することができる。
【0117】
図19は、ミクロ粒子の1実施態様から得られたリドカインの徐放を示すグラフである。下記例9を参照されたい。図12A及び12Bは、平滑な球形を示す高リドカイン投与粒子の表面SEMを示す。図20は、リン酸緩衝溶液(PBS)中の37℃のプロトタイプ高リドカイン投与粒子から放出されたリドカインの正規化蓄積質量を示す。下記例11を参照されたい。
【0118】
図21A及び図21Bは、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)試験によって実証されたリドカイン安定性を有する実施態様の一例を提供する。図21Aは、ミクロ粒子から溶出されたリドカインのHPLC試験結果を示す。安定性は、3.1分における共通ピーク、及びピーク形状の類似性によって実施される。下記例10を参照されたい。
【0119】
ミクロ粒子による薬物送達によって標的部位内及び標的部位の直接周りの神経シグナルをブロックすることによって、起源部位の虚血性疼痛を達成することができる。
【0120】
本発明によるミクロ粒子によって、視覚化剤を使用することもできる。本発明とともに利用できる視覚化剤の一例としては、着色剤又は色素が挙げられる。1実施態様の場合、ミクロ粒子ボーラスは、フルオロスコープで見ることができる物質を有する視覚化剤を含む。本発明とともに使用することができる、フルオロスコープで見ることができる物質の一例としては、金粒子が挙げられる。
【0121】
ミクロ粒子は「ライフサイクル」、「再吸収プロフィール」又は「分解プロフィール」を有する。患者内への注入後、時間が進むに従って、加水分解的及び/又は酵素的分解が発生する。典型的には、所定の時間後(典型的には30日超)には生理学的に有意な量の所与のミクロ粒子は残らない。270日後には、ミクロ粒子の完全な再吸収が典型的である。
【0122】
ミクロ粒子のライフサイクル、又は分解速度は幅広く変化することができる。患者におけるミクロ粒子ライフサイクルは、数日間から数カ月間、又は数年間であってよい。本発明のミクロ粒子は、脈管構造内部に30日超にわたって存続するように適合することができる。
【0123】
いくつかの実施態様における本発明のミクロ粒子は、塞栓治療効果が達成されてから30日を上回る時間後に、完全に再吸収される。いくつかの実施態様の場合、再吸収は30〜180日で完了する。数時間から数日間オーダーの、より短い再吸収時間を採用することもできる(例えば6時間、12時間、1日間、又は15時間)。再吸収が完了した後には、患者体内には、生理学的に有意な塞栓剤が残されることはない。このような塞栓剤は、近い将来、元の標的部位を超えて隣接する脈管構造内に移動し、健常組織の不当な塞栓形成を引き起こすおそれがある。いくつかの実施態様の場合、塞栓剤の永久残留物は残らない。所望の場合には、ミクロ粒子は、無期限に存続するように構成することができる。
【0124】
ミクロ粒子は典型的には、塞栓処置の臨床目的を達成するのに必要な存続期間(例えば1〜6ヶ月)を上回る再吸収速度を示す。
【0125】
ミクロ粒子の再吸収完了までの時間は、ベースポリマー化学組成の選択に依存する。PLGA実施態様の場合、再吸収速度に影響を与える1組成変数は、グリコール・コポリマーのパーセンテージと比較された乳酸であってよいポリマーのパーセンテージである。グリコール酸に対する乳酸の比は、本明細書内で論じた所望の再吸収特性に従って選択される。グリコール酸に対する乳酸のモル組成は、0モル%〜ほとんど100モル%であってよい。従ってグリコール酸に対する乳酸の比は、0〜ほとんど1.0であってよい。いくつかの実施態様の場合、グリコール酸に対する乳酸のミクロ粒子比は、0.25〜0.75であってよい。再吸収に対する効果は、典型的には短時間、例えば数分間、数時間から最大270日又はそれ以上まで、再吸収時間に適合させることである。乳酸又はグリコール酸は、コポリマー比と比較してより長い分解時間を有する。組成が50モル%乳酸、50モル%グリコール酸(すなわち1:1の比)に接近するにつれて、分解時間は所与の分子量に対応してさらに短くなる。分子量が高ければ高いほど、ポリマーの分解時間は長くなる。高分子量のポリ乳酸は、数年オーダーを必要とし得るのに対して、低分子量のものは、1週間超の時間以内で分解することができる。
【0126】
ミクロ粒子内部の総ボイド容積及びボイド分布が、ミクロ粒子の水和に影響を与えることができる。ミクロ粒子内部の総ミクロ粒子容積及びボイド又は亀裂分布が、水和に影響を与えることができる。典型的には、総容積がより大きくなり、ボイドの分布がより密になり、そしてより多くの相互連通が生じるにつれて、水和速度が高くなる。総容積が小さく、分布されたボイドが少ない実施態様の場合、水和速度は低い(例えば1週間以上の時間)。このことが生じ得る理由は、より固いポリマーを通って水が拡散することにある。
【0127】
ポリマー主鎖のエステル結合は加水分解によって破断され、その結果、個々のポリマー成分、例えば乳酸及びグリコール酸が生成され可溶化されるまで、ポリマー分子量が連続的に減少することになる。
【0128】
ミクロ粒子において、ポリマーが分解し続けると、機械的強度の損失が生じる。1実施態様の場合、30日を超えた時点で、分解の結果、ミクロ粒子がもはや耐圧縮性ではなくなる点に達する。平均ポリマー分子量が15%超だけ低減され、ミクロ粒子がポリマー水溶性鎖の10%以上の総質量損失を被ったときに、1実施態様の耐圧縮性が失われた。
【0129】
本発明のミクロ粒子の1実施態様の場合、ベースポリマー(例えばPLGA)の主鎖をランダムに加水分解することにより、分解が生じ、より少ない程度にin vivoの酵素的分解が生じる。分解生成物(図22では、乳酸及びグリコール酸)が、代謝経路を通して、又は直接的な腎排泄によって、身体から排除される。PLGAベースポリマーの実施態様の場合、分解速度は、PLGAのコポリマーが等モル比に近づくにつれて、非線形に高くなり続けることができる。
【0130】
本発明のいくつかの実施態様におけるミクロ球体は、制御された生体再吸収(すなわち「生分解」、「再吸収」、「生体吸収」又は「吸収」)を可能にする1種又は2種以上の耐圧縮性の生体適合性材料から製造される。
【0131】
1実施態様の場合、ポリマー鎖が可溶性になり、塞栓形成部位及び身体から除去されるので、本発明のミクロ粒子の再吸収が発生する。再吸収は、10,000という低分子量の50モル%:50モル%のd,l-PLGA(d形態:l形態、鏡像異性体比)配合物の場合、再吸収は約30日という短い時間で発生することができ、又はほぼ150,000以上という、より高い分子量のPLAの場合には、再吸収は1年を上回る時間で発生することができる。
【0132】
ミクロ粒子が、顕著な血液量によってはもはや潅流されない組織床内部に塞栓形成されたときには、乳酸及び/又はグリコール酸副産物の除去量が抑えられ、そして局所的な環境が酸性になるにつれて、加水分解速度は自己触媒的になることができる。
【0133】
加えて、加水分解プロセスは粒子全体を分解するので、生物学的に有意な残留異物が、器具レシピエント内部に保持されることはない。ミクロ粒子を構成する材料は最終的には身体から除去され、そして質量保持力は、生物学的に有意ではないレベルにあり、検出不能なほど低い。
【0134】
ミクロ粒子が加水分解するにつれて、これらは典型的には、宿主血管からの管腔内の線維形成性応答を導き出す。線維形成性応答は一般に、沈積から1〜21日以内に開始される。線維形成性応答は耐久性のある組織閉塞を提供することができる。このような閉塞は、元の血管を再疎通しにくく、又は再疎通を防止する。いくつかの実施例の場合、新しい組織は線維性である。
【0135】
本発明のミクロ粒子のいくつかの実施態様は、炎症の特徴的な生体応答を導き出す。
【0136】
図23A〜Cの一連の血管造影画像は、イヌの腎臓の選択的カテーテル法及び急性塞栓に関するin vivoの実証を示す。下記例6を参照されたい。
【0137】
図24A〜Cは、2つの異なるサイズのミクロ粒子で行われるイヌの腎臓の順次的な塞栓形成処置を示す。下記例7を参照されたい。
【0138】
図22は、一般的なPLGA及びポリ(アルファ-ヒドロキシエステル)の分解を示す。ポリマー主鎖のエステル結合(炭素酸素炭素結合)は加水分解によって破断され、その結果、個々のポリマー成分、例えば乳酸及びグリコール酸が生成され可溶化されるまで、ポリマー分子量が連続的に減少することになる。
【0139】
ポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体の生分解、及びこれらのミクロ球体との組織反応が、解剖、及びコンベンショナルな光学顕微鏡法、並びに走査電子顕微鏡法(SEM)、及び透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて、50モル%:50モル%のポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)(d形態:l形態、鏡像異性体比)マイクロカプセル(平均外径=30 μm)のコポリマーの、ラットにおける筋内注入を評価することにより試験される。埋め込み後に、最小限の局在化急性筋炎が注入部位に最初見られた。4日目に数個の小さな異物巨細胞が、最小異物応答に関与して存在した。その後、炎症細胞は減少し、そして個々のマイクロカプセルが未熟線維結合組織及び大型合胞異物巨細胞によって取り囲まれた。35日目までに、内部マトリックスの粒状で僅かに浸食された外観から成る、いくつかのマイクロカプセルの明確な変化がSEMによって見られた。42日目までに、マイクロカプセルの外縁部が広く浸食された。56日目に、炎症性の結合組織反応はほとんど完全に消散し、そして、生分解が続いて、マイクロカプセルの残留片だけが63日目に存在した。ファゴサイトーシスは、生分解プロセスにおいて重要なファクターであるようには見えなかった。
【0140】
ポリ(α-ヒドロキシエステル)系ミクロ球体に対する既知の良性生体応答がある。ポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体分解速度は、乳酸鎖内のグリコール単位含有率に比例して増大する。ラットモデルの肝門脈循環内のin vivo分解時間は、75モル%:25モル%〜90モル%:10モル%のラクチド:グリコシド比を含むミクロ球体配合物に対して、ほぼ6〜12週間であった。
【0141】
既知のポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体の分解時間(すなわち6〜12週間)は、臨床目的及び術前塞栓形成処置の時間枠と調和する。塞栓形成後に神経外科処置が指示される場合、これらの処置は塞栓形成処置に続く第1週に最も頻繁に実施される。しばしば、塞栓形成は手術直前に行われる。塞栓形成から手術までの最大時間は、72〜76日オーダーにあると思われる。従って、ポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体は、生分解にかかわらず、手術が計画された場合に、術前塞栓形成を達成するのに十分に耐久性がある。
【0142】
ベースポリマーの平均分子量が10,000であり、生分解時間がほぼ30日以下である1実施態様の場合、生分解速度は分子量の関数であり得る。平均分子量が150,000である別の実施態様の場合、生分解は、1年超が過ぎるまで発生しなかった。
【0143】
ポリ(α-ヒドロキシエステル)ミクロ球体によって達成される血管閉塞の耐久性は、これらが導き出す生物学的応答によって増大される。ラットの肝臓の塞栓形成後に、組織学的分析は、ミクロ球体分解中に、炎症応答を、中程度の異物反応として特徴付けできたことを示すことが判る。炎症プロセスは、ポリマー配合とは無関係に、3つの工程で発生することが観察された。第1の工程は、マクロファージ、リンパ球、及び場合によっては異物巨細胞がミクロ球体を取り囲む、亜急性炎症である。第2の工程は、炎症反応の増大によって特徴付けられる一方、ミクロ球体は奇形になり、そして塞栓形成された領域は外来巨細胞、リンパ球及び線維芽細胞によって侵入される。第3の工程において、侵入は減小することが観察された。ミクロ球体の分解が完全である場合、観察された炎症残余物はなく、化膿性炎又は出血もなかった。
【0144】
本発明のミクロ粒子の製造は典型的には、下記の工程を伴う。図25はミクロ粒子の典型的な製造工程を示す。
【0145】
1種又は2種以上のベースポリマーが選択される。一般に、本発明のミクロ粒子に関して考えられるべきベースポリマーは、PLA、PGA、PLGA、PLA-TMC、PGA-TMC、PLGA-TMC、又はその他の生体再吸収可能なベースポリマーである。次いで、1種又は2種以上のベースポリマーは、ベースポリマー溶液を形成する溶液中に溶解される。ベースポリマー溶液は、有機溶液、水溶液、又は多相溶液であってよい。溶液の性質は、1種又は2種以上の溶剤の選択及び1種又は2種以上のベースポリマーの選択に照らして変化させることができる。
【0146】
次いで、ポリマー・ベース溶液を水性又は有機内相溶液に添加する。溶解されたポリマーが添加される溶液を、内相溶液と呼ぶ。この内相溶液は、これがポリマー・ベース溶液の特性とは区別可能である限り、水性相又は有機相であってよい。内相溶液は典型的にはカプセル化されるようになり、或いはその形成時にミクロ粒子内部に含有される。なお、本発明のミクロ粒子は、ポリマー・ベース溶液を内相溶液に添加することによってだけ形成可能であるのではなく、いくつかの実施態様では、この代わりに、内相溶液として役立つ溶液をポリマー・ベース溶液に添加することもできる。内相溶液がポリマー・ベース溶液に添加される実施態様の場合、内相溶液は、過剰のポリマー・ベース溶液に多量に添加することができ、或いは、内相溶液は、ミクロ粒子の形成を可能にするのに十分な量で添加することができる。
【0147】
ポリマー・ベース溶液が内相溶液に添加されるか又は一緒にされたら、合体された混合物をブレンドする。この合体された溶液を、ミクロ粒子ベース溶液と呼ぶ。この溶液は、渦流処理、震盪、ブレンド、超音波処理、又は剪断力及び混合力をミクロ粒子ベース溶液に加える任意のその他の手段によって強力に混合することができる。この剪断・混合作用を、ミクロ粒子発生工程と呼ぶ。
【0148】
ミクロ粒子を形成するためにポリマー有機溶液が添加される水性外相は、ポリビニルアルコール(我々の例では0.3 wt%)を含有する。PVAは、乳化剤として作用し、硬化されていないミクロ粒子が融合するのを防止する。また、任意の硬化工程において、製造技術は、イソプロピルアルコール(IPA)の添加を採用することにより、ポリマー有機溶剤から有機物を抽出し、そしてポリマーを沈澱させることができる。この結果、ミクロ粒子を1時間以内にほぼ完全に硬化させることになる。IPAを添加せず、有機相がポリマー有機粒子から水性相に移動し、次いで空気中に移るのに伴って、所定の時間、例えば1時間超から1〜10日間にわたってミクロ粒子を硬化させておくことも可能である。
【0149】
ミクロ粒子の製造中に、任意のコーティング工程を採用することができる。コーティングは、仕上げ済ミクロ粒子上に噴霧されてよく、或いは、コーティングとして堆積されるべきこれらの物質を含有する溶液中に浸すことにより塗布されてもよい。任意には、ミクロ粒子を洗浄することにより、過剰のコーティングを除去することができる。
【0150】
所望のミクロ粒子が製造されたら、これらは典型的には洗浄され、篩分けされ、そして凍結乾燥される。
【0151】
ミクロ粒子の洗浄は、最小サイズが選択された篩上でミクロ粒子を捕捉し、そして水をミクロ粒子上に1〜2分間にわたって流すことを伴う。或いは、ミクロ粒子は、遠心分離管内で捕集し、1分当たりの回転数(RPM)1200以下の速度で、急速にスピンダウンし、デカントし、そして新鮮な水を加えることもできる。このことは必要に応じて繰り返すことができる。
【0152】
ミクロ粒子の篩分けは、上側に最大スクリーンサイズを、そして下側に最小スクリーンサイズを含有する篩のスタック上に、製造されたミクロ粒子を注ぐことを伴う。所望のサイズ範囲は、例えば下側スクリーンの頂面上に集めることができる。凍結乾燥は、凍結乾燥機上に入れる前にミクロ粒子を凍結させることを含む。
【0153】
本発明によるミクロ粒子は、多種多様の生体活性物質及び添加剤を担持することができる。生体活性物質及び添加剤は任意には、最初に選択されたベースポリマー、又はポリマー内部に、また任意には内相溶液内部に存在することができる。生体活性物質及び添加剤は任意には、ベースポリマーが溶解される溶剤中に溶解することにより提供し、ベースポリマー溶液に添加し、内相溶液に添加し、硬化又はコーティング中に添加されたミクロ粒子相内に混合されている溶液に提供し、又は洗浄段階中に添加することができる。さらに生体活性物質及び添加剤は任意には、ミクロ粒子の使用(例えば注入)前又は使用時に添加、吸収又は吸着することができる。
【0154】
本発明のミクロ粒子を製造する際に採用することができる製造プロセスの要約の外観が、添付の図25のフローチャートに提供される。PLGAベースポリマー・ミクロ粒子の場合、既知の生体再吸収可能なベースポリマー塊(すなわちPLGA, Alkermes, Inc.)を有機溶剤クロロホルム(すなわち、CHCl3, Sigma, Inc.)中に溶解し、そして溶液を渦流処理することにより徹底的に混合する。他の有機溶剤、例えば酢酸エチル(すなわちCH3COOCH2 CH3, Sigma, Inc.)又は塩化メチレン(すなわちCH2 Cl2, Sigma Inc.)も共通に使用される。内相のための規定量の水を溶液に添加する。この量は、ポリマー及び有機溶液の総容積未満の総容積を有する。渦流形成及び/又は超音波処理は、水性内相を内蔵する。約4 mlのこの溶液を、約15〜20 mlの0.3水性PVA(Fisher Scientific International, Inc.)を含有する試験管に移し、渦流形成し、そして0.3 wt%の水性PVA 150 mlを含有する300 mlのビーカー内に注ぎ込んだ。この乳化プロセスを必要に応じて繰り返す。
【0155】
PVAを界面活性剤として使用することにより、ミクロ粒子の凝集を防止する。結果として生じた乳化物を、磁気バーを使用して強力に混合する。この再乳化プロセスは、生体再吸収可能なベースポリマーから成る、剪断誘発型球形ミクロ粒子を形成する。続いてこれに、100 mlの2 vol%の水性イソプロパノール(IPA; Fisher Scientific International, Inc)を添加する。ジクロロメタンをアルコール外相に抽出することにより、溶解されたベースポリマーが沈澱するので、ミクロ粒子の硬化が生じる。この系を、溶剤の適切な抽出を保証するのに十分な時間(すなわち1.5〜2時間)にわたって撹拌する。最後に、形成されたミクロ粒子を篩分けして規定のサイズ範囲にし、水中ですすぎ、そして凍結乾燥させることにより、微粉末を製造する。次いで、包装及び滅菌を行うことができる。
【0156】
前記のように、ミクロ粒子製造プロセスの種々の段階で、生体活性物質又は添加剤を添加することができる。生体活性物質は、添加剤の部分集合として考えることができる。例として、生体活性物質、薬物、添加剤及びこれらの組み合わせを、図25に示すように、少なくともA, B及びCの時点で内蔵することができる。生体活性物質又は添加剤は任意には、例えば下記時点で添加することができる:
・ ポリマー有機溶剤(生体活性物質は有機物質中に可溶性又は不溶性であってよい);
・ 水性内相(生体活性物質は水性相中に可溶性又は不溶性であってよい);
・ 粒子が粉末又は乾燥形態である場合、製造最終工程後に下記手段を用いる:
・ 生体活性物質(例えば薬物)又は添加剤との物理的混合(例えば、患者へのミクロ粒子注入前に、生体活性物質が完全又は部分的に溶解された液体を添加することができる);
・ 付加的な注入用液体と合体することができるか、又はできない薬物溶液との物理的混合;
・ 薬物による噴霧コーティング;又は
・ 他の薬物含有材料、例えば他の粒子と薬物との物理的混合。
【0157】
・ コーティング層内又はコーティング層上への内蔵、
・ 使用時におけるミクロ粒子上又はミクロ粒子内への吸着又は吸収。
【0158】
ミクロ粒子の密度操作は、ダブル・エマルジョン技術による製造中に達成することができる。この技術において、一次粒子の形成前に有機ポリマー溶剤中に水性内相が内蔵される。水性内相の代わりに、固形の低密度材料(例えばゼラチン、PLGA-PEG、PVA、コラーゲン、キトサン、キチン、アルブミン、アルギネート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ペクチン、アミロース及びフィブリノゲン)を内蔵することができる。
【0159】
本発明のミクロ球体は、複数の生体活性物質及び/又は複数の生体再吸収可能なポリマー(例えば異なる分解速度を有する同じ群のバイオポリマー)の内蔵を可能にする。
【0160】
1種又は2種以上の薬剤を1日〜45日超にわたって持続制御放出するためのベースポリマーを用いた複数の薬物調製方法がある。
【0161】
図25は、本発明の粒子を形成するために使用された製造方法の概観を示すフローダイヤグラムである。分岐点A、B及びCは、薬物、生体活性物質、又は添加剤、及びこれらの混合物を本発明中に添加することができる種々異なる時点を意味する。生体活性物質を、可溶性又は不溶性形態でベースポリマー中に直接に内蔵するか、可溶性又は不溶性形態でボイド空間内に内蔵するか(19C)、又はミクロ球体上又はミクロ球体内に吸着することができる。
【0162】
生体活性物質及び添加剤が添加される他の典型的な時点は、洗浄後、保存溶液中、輸送溶液中、キャリア溶液中、或いはミクロ粒子又はその成分が任意の生体活性物質又は添加剤と接触又は混合される任意の時点を含む。
【0163】
本発明のミクロ粒子による治療は典型的には、例えば塞栓形成、或いは1種又は2種以上の生体活性物質又は添加剤を有するミクロ粒子の送達を含む。
【0164】
ミクロ粒子は例えば、脳、肝臓、子宮、卵巣、脊椎、頭部、頚部、乳房、及び程度はさほど高くはないが身体の他の部位内でしばしば発生する悪性又は良性組織塊の塞栓形成に使用することができる。ミクロ粒子は、注入によって送達することができる。カテーテル、血管造影、及びシリンジを伴うインターベンショナル・ラジオロジーを利用する同じ処置技術を、本発明のミクロ粒子とともに採用することができる。
【0165】
本発明のミクロ粒子は、注入されて標的部位に達した時に閉塞を形成するミクロ粒子が沈積又は蓄積されると、閉鎖を形成するように構成される。サイズが調和されたミクロ粒子が標的血管内に沈積し、標的血管を通る潅流を阻害するので、結果として、いくつかの実施態様において閉鎖が生じることができる。ミクロ粒子は、標的血管内部で沈積する。標的血管は、標的脈管構造内部に注入されると血流を閉塞するミクロ粒子で膨張して負荷されるようになっている。
【0166】
僅か1つのミクロ粒子から閉鎖を達成することができ、或いは、いくつかの又は多くのミクロ粒子が閉鎖を構成することもできる。
【0167】
本発明のミクロ粒子は、処置目的として導管の塞栓形成を必要としないように利用することもできる。例えば本発明のミクロ粒子は例えば、組織をバルキングする用途で管腔周囲組織内に直接に注入するか、癌又は心筋治療の組織塊内に直接に注入するか、壁内疾患を治療するために血管又は生物学的導管の壁内に注入するか、又は生体活性の利益を達成するために血流内に注入することができる。本発明のミクロ球体は、これらの、及び類似の非塞栓形成用途に適用されやすい。
【0168】
塞栓粒子は、典型的には、経カテーテル注入を介して、選択された塞栓形成部位に送達される。血管標的及び塞栓剤のサイズに適した形態(例えば外径、長さ、形状)を有する送達カテーテルが適している。本発明のミクロ粒子は、ミクロカテーテルを含む、内径が変化する注入カテーテルを通して送達することができる。典型的な実施態様の場合、本発明とともに利用されるカテーテルの内径は、約150μm〜約2 mmのカテーテルである。しかし、これよりも著しく小さな内径(例えば50μm)又は著しく大きな内径(例えば5 mm)のカテーテルを、それぞれナノ粒子又は大きな外径の粒子を送達するために、必要に応じて採用することができる。小口径の100μm〜1000μm内径の注入カテーテルを通して塞栓剤を送達することができる。ミクロカテーテルによる注入は、ミクロ粒子が腫瘍部位に送達されるのを可能にし、そして標的治療を容易にする。ミクロ粒子が小さければ小さいほど、塞栓形成することができる血管も小さくなる。1実施態様は小さな腫瘍を標的にする。より小さなカテーテルは、血管の痙攣を最小限に抑え、塞栓形成成功率を高める。
【0169】
カテーテル送達及び注入処置のフルオロスコープ視覚化は、塞栓形成器具をいくつかの実施態様において正確に配置できることを保証する。ミクロ粒子は、注入の前にラジオパーク造影剤を含むか、又はこれと混合することができる。コンベンショナルな塞栓形成処置と同様に、塞栓粒子に対する注入媒質の比は、塞栓形成処置の臨床目的に依存する。
【0170】
本発明の1実施態様の場合、ミクロ粒子利用のための送達システムは、任意の生体活性物質又は添加剤を有するミクロ粒子ボーラス、ミクロ粒子ボーラスを含有するように適合された、又はミクロ粒子ボーラスを含有する送達装置を含む。さらに、送達装置は、ミクロ粒子ボーラス及びキャリア溶液を患者体内に注入するように構成される。
【0171】
本発明のミクロ粒子は、粉末様形態で供給することができ、或いは、輸送溶液、キャリア溶液、又は注入物中に懸濁することもできる。いくつかの実施態様は、予め測定された量のミクロ粒子を含有する使い捨て滅菌バイアル内で供給することができる(図14)。或いは、ミクロ粒子は、キット型システム内に予め包装することもできる。このシステムは、例えば生体活性物質又は添加剤を任意に有することができるミクロ粒子、予め測定された注射溶液部分(例えばミクロ粒子との使用に対して最適化された密度を有するラジオパーク造影剤及び生理食塩水)、ミクロ球体と注入溶液(例えば、生理食塩水、キャリア溶液、又は造影剤溶液)とを混合する手段、及び、カテーテルを通る懸濁液の注入を容易にする手段を含むことができる。最小限の改変を用いて上記要件を満たすことができる、商業的に入手可能な混合/注入システムは、Becton Dickenson MONOVIAL(登録商標)及びVetter LyoJect(登録商標)シリンジを含む。これらは両方とも、注入前に乾燥薬剤を元に戻すために使用することができる。
【0172】
ミクロ粒子の滅菌は、例えば:輻射線、紫外線、又はエチレンオキシドを含む任意の数の有効な非水和法のうちの1つによって達成することができる。
【0173】
本発明を制限するように意図するものではないが、下記例は、いかにして本発明を形成し試験することができるかを特定する。
【実施例】
【0174】
例1, 2, 3, 7, 16及び18における実施態様のミクロ粒子を、ダブル・エマルジョン溶剤抽出技術の改変形によって製造した。このプロセスは、高密度及び低密度のミクロ粒子、及び、生体再吸収可能なポリマー中に直接に溶解された生体活性物質(例えばリドカイン)を内蔵するミクロ粒子を製造するのを可能にする。
例1:高密度ミクロ粒子の製造
比較的小さな容積のボイドを有する本発明のミクロ粒子を、下記プロセスによって製造した:
1) クロロホルムを有するPLGA(85:15コポリマー・モル比)の75 wt/vol%(重量/容積%)溶液を調製した。
【0175】
2) 2mLの75 wt/vol% PLGAを、20mLのねじ蓋付き試験管内に入れ、そして水道水の下で加熱することにより、粘度を低くした。
【0176】
3) 2mLの75 wt/vol% PLGAに、脱イオン(DI)水0.5 mLを添加した。
【0177】
4) 渦流に対して垂直に管を維持し、そして試験管の頂部を保持しながら、設定#8で1分間にわたって混合物を渦流処理することにより乳化物を形成した。
【0178】
5) 0.3 wt/vol%のPVA 10mLを含有する50mL試験管内に、エマルジョンを迅速に注いだ。
【0179】
6) 渦流に対して垂直に管を維持し、そして試験管の頂部を保持しながら、設定#8で1分間にわたってPLGA/水/PVAエマルジョンを渦流処理することにより、ダブル・エマルジョンを形成した。
【0180】
7) 次いで、0.3 wt/vol%のPVA 250mLを含有する500mLビーカー内に、撹拌しながら、PLGAミクロ粒子を迅速に注いだ。
【0181】
8) 次いで、PLGAミクロ粒子を含有するビーカーに、3.0 wt/vol%のIPA(1:1) 250 mLを添加した。
【0182】
9) PLGAミクロ粒子を、2時間にわたって硬化させておいた。
【0183】
10) USA標準試験用篩(ASTME-11 Spec.)を使用して、ミクロ粒子を篩分けした。90〜180 μmのミクロ粒子を捕集した。
【0184】
11) ミクロ粒子を、多量のCI水で篩内で洗浄した。
【0185】
12) 次いでミクロ粒子を、ねじ蓋付きプラスチック・バイアルに移した。
【0186】
13) ミクロ粒子を-80℃ですぐに凍結した。
【0187】
14) ミクロ粒子を一晩にわたって凍結乾燥させた(ほぼ12時間)。
例2:低密度ミクロ粒子の製造
比較的大きい容積のボイドを有する本発明のミクロ粒子を、下記プロセスによって製造した:
1) クロロホルムを有するPLGA(85:15コポリマー・モル比)の25 wt/vol%溶液を調製した。
【0188】
2) 6mLの25 wt/vol% PLGAを、20mLのねじ蓋付き試験管内に入れ、そして水道水の下で加熱することにより、粘度を低くした。
【0189】
3) 6mLの25 wt/vol% PLGAに、DI水2.0 mLを添加した。
【0190】
4) 上記工程4〜14に従う。
【0191】
例3:可変ボイド容積/可変密度
結果として得られたミクロ粒子形態(球形対非球形)、及び脱イオン(DI)水に対するミクロ粒子密度に対するプロセス変量の効果を評価するために、試験を実施した。この試験において試験されるプロセス変量は、下記のものを含んだ:
1) CHCL3に対するPLGAのwt/vol% (25 wt/vol%〜75 wt/vol%);
2) 水性相添加剤(0.5 ml〜2.0 ml);そして
3) 最初の乳化工程中の補助的な超音波処理
これらの試験に用いられる方法は、上記のものと同一であったが、下記のような改変を伴った:
1) 75 wt/vol%の代わりに85 wt/vol%のPLGAベースポリマーを使用した。
【0192】
2) 図25に示されたフローチャートにおける工程Aで、溶解されたベースポリマー中に添加される、PGLAポリマーに対するリドカイン添加(ほぼ50重量%)を含み、そして、
3) 試料の部分群に超音波処理段階を加える。この試験の結果を下記表(すなわち表A〜D)に示す:
【0193】
【表1】
【0194】
【表2】
【0195】
【表3】
【0196】
【表4】
【0197】
全体的な観察
1) ミクロ粒子は、概ね球形のジオメトリーを示した。
2) ミクロ粒子外径は、数ナノメートルから数ミリメートルへサイズが変化した。
3) ミクロ粒子は、ミクロ粒子内に内蔵された、観察可能なボイド容積を有するように形成された(図16〜18参照)
4) PLGA/クロロホルム乳化相内への水性内相の超音波処理は、機械混合よりも微細且つ均一に分散されたボイド容積を形成した(図17及び18参照)。
5) 可変ボイド容積は、可変密度の異なるミクロ球体形態に関与し、ひいては、DI水中に懸濁されると、異なる浮揚性に関与した。
6) 「中立」な浮揚性(すなわち懸濁されるミクロ粒子と、沈降するミクロ粒子との比が50:50である)を有するいくつかのミクロ粒子が、これらの試験において形成された。プロセス条件の何らかの微調整を用いれば、大部分が「中立に浮揚性である」ミクロ粒子を形成することが可能となる。次いで選択法(例えば篩分け)によって、均一に浮揚性のミクロ粒子を形成することができる。
7) 超音波処理を伴わない場合、CHCL3中45%のwt/vol% PLGA(85:15モル比)は、水性相容積とは無関係に、DI水中に均一に懸濁されたミクロ粒子を生成した。超音波処理を伴う場合、CHCL3中25%のwt/vol% PLGA(85:15モル比)は、0.5 mLの水性相に、DI水中に均一に懸濁されたミクロ粒子を生成した。
8) ミクロ粒子のリドカイン添加は、ミクロ粒子のジオメトリー、浮揚性又は物理的完全性に著しい影響を及ぼすようには見えなかった。
9) ただ1種の薬物添加をこの前の試験において実証したが、複数の親水性及び/又は疎水性薬物をこれらのミクロ粒子内に添加することもできた。例えば、水性内相内には親水性薬物を添加することができ、また油(クロロホルム)相内には疎水性薬物を添加することもできる。
10) 凍結乾燥後、いくつかの表面破壊が観察された。おそらく、これは水性内相の除去によるものであった。このことは、この試験において採用された比較的低速の凍結プロセスによるものかもしれない。液体窒素又はアセトン及びドライアイス中で「急速冷凍」すれば、この現象を最小限に抑えることができるかもしれない。
例4:ミクロ粒子のin vitro注入
本発明のミクロ球体を、小内径注入カテーテルを通して注入することができる。本発明のミクロ粒子は、コンベンショナルな低プロフィール注入カテーテルを通して注入することもできる。
【0198】
図18A及び18Bは、生理食塩水中に懸濁された2つの異なる外径(それぞれ10 μm及び80 μm)を有する本発明のプロトタイプ・ミクロ粒子を示す。ミクロ粒子は、約100〜150μmの注入側孔を有する1.4-Frミクロ注入カテーテル(例えばNeuroVasX(登録商標) Sub-ミクロ注入カテーテル、モデル100-DG-015)を通して注入される。両粒子サイズは、ミクロカテーテルを通して最小限の労力しか必要とせずに送達することができる。
【0199】
例5:in vivo選択的腎臓カテーテル法及び塞栓形成
図23A〜Cの一連の血管造影画像は、イヌの腎臓の選択的カテーテル法及び塞栓形成に関する実証を示す。腎循環は、塞栓剤の利益を実証するための優れた処置モデルである。図23Aは、腎皮質を示すコントラスト血管造影図である。図23Bは、左の腎臓の頭方向極の選択的カテーテル法を示し、続いて腎臓を本発明のプロトタイプ・ミクロ粒子で塞栓形成した。図23Cは、腎循環内へ注入されるミクロ粒子の能力、及びミクロ粒子が、左の腎臓の頭方向極への流れを遮断する急性効力を実証する完成血管造影図である。
例6:in vivo二重注入塞栓形成技術
図24A〜Cは、2つの異なるサイズのミクロ粒子で行われたイヌの腎皮質の順次的塞栓形成処置を示す。上記のように、図24Aは、腎皮質を示すコントラスト血管造影図である。図24Bは、外径80 μmのミクロ粒子を使用した塞栓形成後の血管造影図である(12 mlの50:50の生理食塩水:造影剤中200 mgのミクロ粒子)。ここでは、腎循環の最も外側の周辺部(すなわち最小脈管構造)だけを塞栓形成する。図24Cは、より大きな粒子サイズ(240μm;12 mlの50:50の生理食塩水:造影剤中200 mgのミクロ粒子)で塞栓形成した後の血管造影図であり、腎循環内へ注入される本発明のミクロ粒子の能力、及びより近位側の腎循環の潅流を遮断する本発明のミクロ粒子の能力を実証する。
例7:局所的な薬物送達の例
1種又は2種以上の生体活性物質をミクロ球体内に内蔵することができる。薬物を溶出する実施態様の代表である、リドカイン溶出ミクロ球体の製造を、前述の方法(具体的にはリドカイン(Sigma Chemical, Inc.)を図22のフローチャートの工程Aで添加した)によって実施した。3.6 gのPLGA(75:25コポリマー比)と0.9 gのリドカインとを7.2 mlのクロロホルム中に溶解することにより、均質溶液を形成した。3 mlのアリコートを、0.150 mLのDI水の水性内相とともにミクロ粒子に加工した。理論上の添加を基準として、リドカインは初期配合物の20 wt%を形成するのに対して、実際の添加量は約8 wt%であることが見極められた。次のセクションでは、本発明の生体再吸収可能なミクロ球体に対するリドカイン添加と関連する典型的な発見を実証する。
例8:リドカインの徐放(図19)
PBS溶剤中37℃で1日当たり放出されるリドカインの平均質量を、プロトタイプ・ミクロ粒子で測定した。この例では、ミクロ粒子は8 wt%リドカインを含有することが見極められた。図19に示す放出プロフィールは、ほぼ800マイクログラムが最初の24時間以内のバースト放出として溶出されることを示した。リドカインのこの初期バースト放出に続いて、次の9日間にわたって、1日当たりほぼ70マイクログラムが連続放出された。このプロフィールは、UFE患者に対する臨床的に該当する投薬計画がどのようなものと考えられるかを実証する(なお、キシロカインの使用指示は、産科的な全身鎮痛に対して100 mgの投与を特定する)。
【0200】
例9:HPLC試験によって実証されたリドカイン安定性(図21)
高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)を実施することにより、プロトタイプ・ミクロ粒子から溶出されたリドカインの化学組成(及び機能性)は、標準化されたリドカイン対照と同一であることを検証した。この標準は、水中に溶解された商業的に利用可能なリドカインである。クロマトグラフ(図21A及び21B)は、リドカインが塞栓粒子マトリックス内部で安定であることを実証する。図21Aは、リドカイン標準を示し、そして図21Bはミクロ粒子から溶出されたリドカインを示す。ピーク溶出時間(3.1分)が共通しており、ピーク形状が類似することにより、安定性が証明される。これらのデータは、プロトタイプ・ミクロ粒子から溶出されたリドカインの機能性が、処理全体を通して維持されることを示唆する。
【0201】
例10:高リドカイン投与ミクロ粒子(図12 & 20)
プロトタイプ・ミクロ粒子内に添加することができる最大質量のリドカインを特徴付けするために、初期試験を実施した。図12A及び12Bは、球体状形態を示す高リドカイン投与ミクロ粒子の表面SEMを示す。図20は、PBS中の37℃のプロトタイプ高リドカイン投与粒子から放出されたリドカインの正規化蓄積質量を示す。これらのミクロ粒子は56 wt%のリドカインを含有し、そしてミクロ粒子100 mg当たり56 mgのリドカインを送達することができる。このようなものとして、これらのミクロ粒子は、塞栓ミクロ粒子からのリドカイン送達の上限を形成すると考えられる。薬物送達は、早期バースト相なしで4日間にわたって発生する。
例11:比較臨床例
子宮筋腫は、子宮の筋肉壁内で発達する非癌性(良性)腫瘍である。筋腫が常に症候性であるとは限らないが、これらのサイズ、数及び位置は、痛み及び重い月経出血を含めて、一部の女性に問題を招くおそれがある。筋腫は極めて小さい(<1 cm)サイズから、カンタロープ・メロン又はそれ以上(>20cm)のサイズまである。いくつかの事例において、子宮筋腫は子宮を、妊娠5ヶ月以上のサイズに成長させることがある。図15に示された子宮の種々の部分に、筋腫を配置することができる。
【0202】
子宮筋腫塞栓術(UFE)は、フルオロスコープで案内されながら、子宮動脈内にカテーテルを案内することを伴う(図16)。次いで、医師は、筋腫に血液を供給する動脈内に塞栓剤を注入する。塞栓剤は、腫瘍への血流を遮断し、そして局在化された虚血を引き起こす(図17)。次いで反対側の動脈を、多くのプロトコルに従って治療する。
【0203】
子宮筋腫塞栓術は通常、一晩の入院を必要とする入院による治療処置である。最も共通の副作用である痙攣及び痛みを治療するための処置に続いて、鎮痛薬及び腫れを制御する薬物が処方されるのが典型的である。熱は、時々生じる副作用であり、そして通常アセトアミノフェンで治療される。多くの女性は数日以内に軽い活動を再開し、そして大部分の女性は、1週間以内に正常な活動に戻ることができる。
【0204】
UFE処置の結果、腫瘍は収縮し、そして症状は軽減する。UFE処置を受けた女性の78〜94パーセントが、重い出血、痛み及びその他の症状の有意な又は全面的な軽減を経験する。この処置はまた、複数の筋腫に効果的であると思われる。治療された筋腫の再発は極めて稀であり、患者の約3%だけが今までのところ、治療の失敗により外科的手段に進んだ。
【0205】
本発明のミクロ粒子は、このタイプの処置において成功裡に採用することができ、さらに有望な結果をもたらすものと考えられる。
例12:塞栓形成の効果及び耐圧縮性の例
本発明のミクロ球体は、生理学的負荷による外的な圧縮に対して抵抗性を有する。これらのミクロ球体の圧縮不能な性質の潜在的利益は、従って、in vivo試験によって最良に実証される。この試験は、図25に概略的に示した方法によって製造されたプロトタイプを用いて実施される。2つのin vivoの試験、つまり急性研究及び亜慢性研究から得られる組織学的例を、以下に示す。これらの試験から得られた組織学的結果は、ミクロ球体の存在を収容するための宿主脈管構造の中程度の変形、ミクロ球体自体の顕在的な変形又は圧縮の不在、及び初期注入時(急性)から30日間(亜慢性)を通して、耐久性のある塞栓形成結果を実証する。
【0206】
例13:急性組織学的例
図7は、本発明のミクロ球体を用いた塞栓形成のin vivoメカニズムを実証する顕微鏡写真である。ここに示されているのは、塞栓形成された動脈セグメントの縦断面である。プロトタイプ・ミクロ球体は、赤血球及び凝血塊が散在する血管内部に沈積されているのを観察することができる。明白なのは、ミクロ粒子と動脈管腔との寸法の調和、及びより大きい外径のミクロ球体の存在を収容するための宿主血管の中程度の変形である。
例14:耐圧縮性のin vitro試験
図5は、耐圧縮性を試験するin vitroメカニズムを実証するダイヤグラムである。注入物(51)を形成するキャリア溶液中に懸濁されたミクロ粒子(52)が充填されたシリンジ(50)を、管(53)内に注入する。ミクロ粒子は管(53)を通って移動し、そして試験チャネル(55)を通って移動するために圧縮することが必要とされる。ミクロ粒子が流出物中で無傷のまま出てくると、これらは、耐圧縮性でないと称される。逆に、ミクロ粒子が試験チャネル(55)を通ることができず、そして流出物中に出現しないと、これらは耐圧縮性と称される。
例15:亜慢性動物研究
イヌの腎循環内の塞栓剤として使用されたときの、8±3 wt%のリドカインで負荷された本発明の生体再吸収可能なポリ乳酸(PLA)ミクロ粒子を評価するために、動物研究を実施した。この試験に使用されるミクロ球体の外径は、サイズ範囲150〜250 μmを有した。試験粒子の溶出曲線を図19に示す。4つの(n=4)腎臓をプロトタイプ・ミクロ粒子(12 mlの流体中に懸濁された250 μlのミクロ粒子)で塞栓形成した。1動物当たりほぼ16 mgのリドカインを送達した。
【0207】
塞栓形成からほぼ30日後に、コントラスト血管造影後に全ての動物を回収した。全体評価及び顕微鏡評価を行うことにより、血管(腎動脈)血栓及び腎梗塞の存在及び範囲を特徴付けた。in vivo相の終点は、術後ほぼ30日目における組織学的評価であった。
【0208】
外植試験片の組織学的評価は、プロトタイプ・ミクロ粒子による治療が30日の間中、耐久性を有し、そして管再生の証拠なしに腎梗塞と関連することを示した(図8)。プロトタイプ・ミクロ球体は、小さな梗塞と関連した。これらの梗塞はしばしば腎臓の単一の(頭方向)極に局在化された。試験群における炎症は、プロトタイプ・ミクロ球体自体、リドカイン、又は両成分に対する応答を表すことができる。図7において明白なのは、耐圧縮性ミクロ球体が内部に沈積された管状構造の変形である。
例16:ミクロ粒子のための溶液濃度
脳様コンボリュート状表面及び平滑表面を製造することができる。脳様表面の場合、1.84 gのPLA及び0.16 gのリドカインを5 mlのクロロホルム中に溶解した。溶液の3mlアリコートを試験管に移し、DI水200ミリリットルを添加し、そしてシステムを渦流処理することによりシングル・エマルジョンを製造した。このシングル・エマルジョンを使用することにより、脳様構造をもたらすミクロ粒子を製造した(図13A及び13B)。PLA及びリドカインの同一溶液を調製した。これに、添加量のクロロホルムを添加することにより、粘度を著しく低減し、そして200ミリリットルのDI水の水性内相を有する粒子を形成した。SEM試験時には、低減された粘度を有するように調製されたミクロ粒子の第2バッチが、より平滑な表面をもたらした。
例17:動物における慢性埋め込みのためのリドカイン添加型ミクロ粒子
3.5グラムのPLGA 75:25モル比(Boehringer Ingerlheim RG755による)
0.875グラムのリドカイン(Sigma Chemical)
6 mlのクロロホルム
上記成分を混合し、完全に溶解させておく。定期的に温水浴内に入れ、そして渦流処理する。
【0209】
2.5〜4 mlの部分に分ける。150マイクロリットルのDI水を各部分に添加する。20秒間にわたって渦流処理することにより、第1のエマルジョンを形成する。ほぼ20 mlの0.3 wt% PVA溶液を含有する大型ガラス試験管内に内容物を注ぎ込む。25秒間、渦流処理する。
【0210】
0.3 wt% PVA溶液(ほぼ150 ml)を含有する撹拌棒で、ビーカー内に粒子を注ぎ込む。ほぼ150mlのIPA 3 vol%溶液を添加し、そして2.5時間にわたって硬化させておく。篩で捕集し、DIですすぎ、凍結させ、そして凍結乾燥させる。
例18:リドカインを有する脳様ミクロ粒子
1.84グラムのPLA
0.16 gのリドカイン
5 mlのクロロホルム
混合させ、溶解させておく。3ml溶液に200ミリリットルのDI水を添加し、渦流形成する。前と同じように、PVA溶液中に注ぎ込み、IPA溶液を添加し、そして硬化するのに十分な時間後に捕集する。
例19:480μm内径を有するカテーテルを使用した、圧縮性及び耐圧縮性のミクロ球体の耐圧縮性試験
直径300〜500μmの圧縮可能なポリビニルアルコール(PVA)ミクロ球体であるCONTOUR SE(登録商標)を得た(カタログ番号76-122、Boston Scientific Corporation, Watertown, MA)。これらのミクロ球体のうちのほぼ1 mlを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque(登録商標)造影媒質の混合物中に懸濁させた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。次いで、圧縮可能なミクロ球体、PBS及び造影媒質との混合物を、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に添加した。20 mlシリンジを、4路栓(カタログ番号91045、Mallickrodt Critical Care, Glens Falls, NY)の1ポート上に配置し、そして3mlポリカーボネート・シリンジ(Merit Medical Systems Inc., South Jordan, UT)を栓の別のポート上に配置した。次いで、圧縮可能なミクロ球体を20 mlシリンジから3 mlシリンジに移した。次いで20 mlシリンジを、4路弁ポートのポートから取り外し、血管形成バルーン膨張装置(B. Braun Medical, Inc., Bethlehem, PA)と交換した。4路弁の最後の残りのポート上に、EXCELSIOR(登録商標)1018マイクロカテーテル(Boston Scientific, Fremont, CA)を配置した。EXCELSIOR(登録商標)1018マイクロカテーテルは、剛性熱可塑性材料から形成されたテーパ区分を有した。このテーパ区分は、カテーテルの近位端部に設けられたルエル取付け具と、カテーテルのフレキシブル区分の始端部との間に配置されていた。カテーテルのテーパ区分は、ルエル取付け具の内径約4000μmから、カテーテルのフレキシブル区分が始まる場所の約480μmまで、減径していた。
【0211】
圧縮可能なミクロ球体を3 mlシリンジからマイクロカテーテル内に移した。次いで、血管形成バルーン膨張装置を使用して、約20 mlの水を強制的にマイクロカテーテルに通した。水、ミクロ球体、PBS及び造影媒質がマイクロカテーテルを通過すると、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計には1 atm未満の圧力が記録された。圧力計は0〜30 atmの範囲を有した。
【0212】
ミクロ球体は、マイクロカテーテルの遠位端部からガラスビーカー内に放出されることが観察され、そして、約20 mlの水がマイクロカテーテルを通過した後、圧縮可能なミクロ球体の全てがマイクロカテーテルを通過したように見えた。
【0213】
直径500〜700μmの圧縮可能なPVAミクロ球体であるCONTOUR SE(登録商標)(カタログ番号76-130、Boston Scientific Corporation Watertown, MA)を使用して、同じ処置に従った。直径300〜500μmの圧縮可能なミクロ球体と同様に、これらの500〜700μmの圧縮可能なミクロ球体は、マイクロカテーテルを通って遠位端部で捕集ビーカー内に入ることが観察された。しかし、これらのより大きいミクロ球体を用いた場合、圧縮可能なミクロ球体と、造影媒体混合物を有するPBSとがマイクロカテーテルを通過するのに伴って、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計上で、約1 atmの背圧が観察された。
【0214】
次いで、本発明の耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を使用して、同じ処置に従った。30℃のクロロホルム中の固有粘度が0.65 dl/gmのポリマーを使用して、85 mol% PLA:15 mol % PGAの耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を調製した。ASTM標準仕様E 11に一致した2つの標準試験用篩を使用して、ミクロ球体を乾燥分粒した。2つの篩を重ね合わせた。上側の25番の篩は、約707μm・サイズの開口を有し、下側の35番の篩は、約500μm・サイズの開口を有した。ミクロ粒子を25番の篩上に置き、次いで両篩を、まだ積み重ねた状態で撹拌して、直径707μm未満のミクロ粒子が25番の篩を通って移動するのを促進した。707μm未満ではあるが500μmよりも大きいミクロ粒子は、約500μmのサイズの開口を有する35番の篩である、スタックの下側に位置する篩のスクリーン表面上に蓄積した。35番の篩の表面上に蓄積したミクロ粒子を次いで、in vitro耐圧縮性試験のために捕集した。篩分けプロセスを通して、これらのミクロ粒子は、約500〜707μm・サイズ範囲にあることが見極められた。
【0215】
500〜707μm・サイズのミクロ粒子約0.1 gmを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque造影媒質の混合物約12 ml中に入れた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。Visipaque(登録商標)の密度約1.3 g/mlと、PBSの密度約1.0 g/mlとを基準として、PBSと造影媒質との50 vol%/50 vol%混合物は、約1.2 g/mlの密度を有することが算出された。ミクロ粒子を形成するポリマー、85 mol %のPLA; 15 mol %のPGAポリマーの密度は約1.3 g/mlであった。PBSと造影媒質との混合物中に、500〜707μm・サイズのミクロ粒子を入れた。これらのミクロ粒子を形成するポリマーの密度は、ミクロ粒子が入れられたPBSと造影媒質との混合物よりも高いので、混合物中に懸濁されるか、又は混合物の上側に浮揚するミクロ粒子の嵩密度は、1.3g/m未満であることが見極められた。懸濁されたミクロ粒子又は浮揚するミクロ粒子のバルク密度と、これらのミクロ粒子を形成するポリマーの密度とに差があるのは、ミクロ粒子内のボイド空間の存在によるものであった。
【0216】
PBSと造影媒質との混合物中に浮揚する又は懸濁された耐圧縮性ミクロ粒子を、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に引き込んだ。20 mlシリンジのルエル取付け具を、4路栓(カタログ番号91045、Mallickrodt Critical Care, Glens Falls, NY)の1ポート上に配置し、そして3mlポリカーボネート・シリンジ(Merit Medical Systems Inc., South Jordan, UT)を栓の別のポート上に配置した。次いで、耐圧縮性のミクロ球体を20 mlシリンジから3 mlシリンジに移した。次いで20 mlシリンジを、4路弁ポートのポートから取り外し、血管形成バルーン膨張装置(B. Braun Medical, Inc., Bethlehem, PA)と交換した。4路弁の最後の残りのポート上に、EXCELSIOR(登録商標)1018マイクロカテーテル(Boston Scientific, Fremont, CA)を配置した。EXCELSIOR(登録商標)1018マイクロカテーテルは、剛性熱可塑性材料から形成されたテーパ区分を有した。このテーパ区分は、カテーテルの近位端部に設けられたルエル取付け具と、フレキシブル区分の始端部との間に配置されていた。カテーテルのテーパ区分は、ルエル取付け具の内径約4000μmから、カテーテルのフレキシブル区分が始まる場所の約480μmまで、減径していた。マイクロカテーテルの遠位端部を清潔な150 mlガラスビーカー内に入れた。耐圧縮性ミクロ球体を3 mlシリンジからマイクロカテーテル内に移した。次いで、血管形成バルーン膨張装置を使用して、約20 mlの水を強制的にマイクロカテーテルに通した。水及びミクロ球体がマイクロカテーテルを通過すると、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計には18 atmの背圧が記録された。血管形成バルーン膨張装置上の圧力が逃げることはなかった。このことは、マイクロカテーテルが閉塞されるようになったことを示す。マイクロカテーテルの遠位端部から放出されたミクロ球体は観察されなかった。例18に記載された試験は室温で実施された(約21℃)。
例20:330μm内径を有するカテーテルを使用した、圧縮性及び耐圧縮性のミクロ球体の耐圧縮性試験
直径300〜500μmの圧縮可能なポリビニルアルコール(PVA)ミクロ球体であるCONTOUR SE(登録商標)を得た(カタログ番号76-122、Boston Scientific Corporation, Watertown, MA)。これらのミクロ球体のうちのほぼ1 mlを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque(登録商標)造影媒質の混合物中に懸濁させた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。次いで、圧縮可能なミクロ球体の懸濁液を、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に添加した。20 mlシリンジを、4路栓(カタログ番号91045、Mallickrodt Critical Care, Glens Falls, NY)の1ポート上に配置し、そして3mlポリカーボネート・シリンジ(Merit Medical Systems Inc., South Jordan, UT)を栓の別のポート上に配置した。次いで、圧縮可能なミクロ球体を20 mlシリンジから3 mlシリンジに移した。次いで20 mlシリンジを、4路弁ポートのポートから取り外し、血管形成バルーン膨張装置(B. Braun Medical, Inc., Bethlehem, PA)と交換した。4路弁の最後の残りのポート上に、HYDROLENE(登録商標)を有するELITE SPINNAKER(登録商標)1.8F-S流れ方向付けカテーテル(Boston Scientific, Fremont, CA)を配置した。HYDROLENE(登録商標)を有するELITE SPINNAKER(登録商標)1.8F-S流れ方向付けカテーテルは、剛性熱可塑性材料から形成されたテーパ区分を有した。このテーパ区分は、カテーテルの近位端部に設けられたルエル取付け具と、カテーテルのフレキシブル区分の始端部との間に配置されていた。カテーテルのテーパ区分は、ルエル取付け具の内径約4000μmから、カテーテルのフレキシブル区分が始まる場所の約330μmまで、減径していた。カテーテルの遠位端部を清潔な150 mlガラスビーカー内に入れた。圧縮可能なミクロ球体を3 mlシリンジからマイクロカテーテル内に移した。次いで、血管形成バルーン膨張装置を使用して、約20 mlの水を強制的にマイクロカテーテルに通した。水、ミクロ球体、PBS及び造影媒質がマイクロカテーテルを通過すると、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計には1 atm未満の圧力が記録された。圧力計は0〜30 atmの範囲を有した。ミクロ球体は、マイクロカテーテルの遠位端部からガラスビーカー内に放出されることが観察され、そして、約20 mlの水がマイクロカテーテルを通過した後、ミクロ球体の全てがマイクロカテーテルを通過したように見えた。
【0217】
次いで、本発明の耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を使用して、同じ処置に従った。30℃のクロロホルム中の固有粘度が0.65 dl/gmのポリマーを使用して、85 mol% PLA:15 mol % PGAの耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を調製した。これらを2つの篩分け作業を用いて乾燥分粒した。第1の篩分け作業では、ASTM標準仕様E 11に一致した2つの標準試験用篩、35番の篩と50番の篩とを使用した。2つの篩を重ね合わせた。上側の35番の篩は、約500μm・サイズの開口を有し、下側の50番の篩は、約300μm・サイズの開口を有した。ミクロ球体を35番の篩上に置き、次いで両篩を、まだ積み重ねた状態で撹拌して、直径500μm未満のミクロ球体が35番の篩を通って移動するのを促進した。500μm未満ではあるが300μmよりも大きいミクロ球体は、約300μmのサイズの開口を有する50番の篩である、スタックの下側に位置する篩のスクリーン表面上に蓄積した。50番の篩の表面上に蓄積したミクロ球体を次いで、第2の篩分け作業のために捕集した。この篩分けプロセスを通して、これらのミクロ球体は、約300〜500μm・サイズ範囲にあることが見極められた。第2の篩分け作業では、ASTM標準仕様E 11に一致した、約425μm・サイズの開口を有する40番の篩上に、これらの約300〜500μmのミクロ球体を置いた。40番の篩及びミクロ球体を撹拌して、直径425μm未満のミクロ球体が40番の篩を通って移動するのを促進した。425μmよりも大きい直径のミクロ球体は、スクリーン表面上に蓄積した。40番の篩の表面上に蓄積した直径約425〜500μmのミクロ球体を次いで、in vitro耐圧縮性試験のために捕集した。
【0218】
直径425〜500μmの耐圧縮性ミクロ球体約0.1 gmを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque造影媒質の混合物約12 ml中に入れた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。Visipaque(登録商標)の密度約1.3 g/mlと、PBSの密度約1.0 g/mlとを基準として、PBSと造影媒質との50 vol%/50 vol%混合物は、約1.2 g/mlの密度を有することが算出された。ミクロ球体を形成するポリマー、85 mol %のPLA; 15 mol %のPGAポリマーの密度は約1.3 g/mlであった。PBSと造影媒質との混合物中に、直径約425〜500μmの耐圧縮性ミクロ球体を入れた。これらのミクロ球体を形成するポリマーの密度は、ミクロ球体が入れられたPBSと造影媒質との混合物よりも高いので、混合物中に懸濁されるか又は混合物の上側に浮揚するミクロ球体の嵩密度は、1.3g/m未満であることが見極められた。懸濁されたミクロ球体又は浮揚するミクロ球体のバルク密度と、これらのミクロ球体を形成するポリマーの密度とに差があるのは、ミクロ球体内のボイド空間の存在によるものであった。
【0219】
PBSと造影媒質との混合物中に浮揚する又は懸濁された耐圧縮性ミクロ球体を、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に引き込んだ。20 mlシリンジのルエル取付け具を、4路栓(カタログ番号91045、Mallickrodt Critical Care, Glens Falls, NY)の1ポート上に配置し、そして3mlポリカーボネート・シリンジ(Merit Medical Systems Inc., South Jordan, UT)を栓の別のポート上に配置した。次いで、耐圧縮性のミクロ球体を20 mlシリンジから3 mlシリンジに移した。次いで20 mlシリンジを、4路弁ポートから取り外し、血管形成バルーン膨張装置(B. Braun Medical, Inc., Bethlehem, PA)と交換した。4路弁の最後の残りのポート上に、HYDROLENE(登録商標)を有するELITE SPINNAKER(登録商標)1.8F-S流れ方向付けカテーテル(Boston Scientific, Fremont, CA)を配置した。ELITE SPINNAKER(登録商標)1.8F-Sカテーテルは、剛性熱可塑性材料から形成されたテーパ区分を有した。テーパ区分は、カテーテルの近位端部に設けられたルエル取付け具と、フレキシブル区分の始端部との間に配置されていた。カテーテルのテーパ区分は、ルエル開口の内径約4000μmから、カテーテルのフレキシブル区分が始まる場所の約330μmまで、減径していた。カテーテルの遠位端部を清潔な150 mlガラスビーカー内に入れた。耐圧縮性ミクロ球体を3 mlシリンジからカテーテル内に移した。次いで、血管形成バルーン膨張装置を使用して、水を強制的にカテーテルに通した。水及びミクロ球体がマイクロカテーテルを通過するように試みられると、血管形成バルーン膨張装置上に設けられた圧力計には20 atmの背圧が記録された。血管形成バルーン膨張装置上の圧力が逃げることはなかった。このことは、マイクロカテーテルが閉塞されるようになったことを示す。マイクロカテーテルの遠位端部からガラスビーカー内に放出されたミクロ球体は事実上観察されなかった。例19に記載された試験は室温で実施された(約21℃)。
例21:420μmの開口を有するメッシュスクリーンを使用した、圧縮性及び耐圧縮性のミクロ球体の耐圧縮性試験
直径500〜700μmの圧縮可能なポリビニルアルコール(PVA)ミクロ球体であるCONTOUR SE(登録商標)を得た(カタログ番号76-130、Boston Scientific Corporation, Watertown, MA)。これらのミクロ球体のうちのほぼ1 mlを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque(登録商標)造影媒質の混合物中に懸濁させた。この混合物は、6 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び6 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。次いで、圧縮可能なミクロ球体の懸濁液約12 mlを、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に添加した。20 mlシリンジを、直径13 mmのステンレス鋼シリンジ・フィルター(Catalog 番号A-02928-10, Cole Parmer Instrument Co., Vernon Hills, IL)上に配置した。このフィルターは、約420μmの開口を有する40メッシュ・ステンレス鋼スクリーン(カタログ番号S-0770、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を含有した。このスクリーンは、シリンジ・フィルターに適合するようにカットしておいた。次いで、12 mlの圧縮可能なミクロ球体及びPBSを有する造影媒質を、420μmの開口を有する40メッシュスクリーンを約5秒で強制的に通すような速度で、シリンジのプランジャーを押し下げた。シリンジ・フィルターの遠位端部からの流出物を捕集し、そして流出物が多くの圧縮可能なミクロ球体を含有することを見いだした。次いでシリンジ・フィルターを開き、ステンレス鋼メッシュ・スクリーン内及びスクリーンの周りにも、少量の圧縮可能なミクロ球体を見いだした。
【0220】
次いで、本発明の耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を使用して、同じ処置に従った。30℃のクロロホルム中の固有粘度が0.65 dl/gmのポリマーを使用して、85 mol% PLA:15 mol % PGAの耐圧縮性の生体吸収可能なミクロ球体を調製した。これらを2つの篩分け作業を用いて乾燥分粒した。第1の篩分け作業では、ASTM標準仕様E 11に一致した2つの標準試験用篩、35番の篩と50番の篩とを使用した。2つの篩を重ね合わせた。上側の35番の篩は、約500μm・サイズの開口を有し、下側の50番の篩は、約300μm・サイズの開口を有した。ミクロ球体を35番の篩上に置き、次いで両篩を、まだ積み重ねた状態で撹拌して、約500μm未満のミクロ球体が35番の篩を通って移動するのを促進した。約500μm未満ではあるが約300μmよりも大きいミクロ球体は、約300μmのサイズの開口を有する50番の篩である、スタックの下側に位置する篩のスクリーン表面上に蓄積した。50番の篩の表面上に蓄積したミクロ球体を次いで、第2の篩分け作業のために捕集した。この篩分けプロセスを通して、これらのミクロ球体は、約300〜500μm・サイズ範囲にあることが見極められた。第2の篩分け作業では、ASTM標準仕様E 11に一致した、約425μm・サイズの開口を有する40番の篩上に、これらの約300〜500μmのミクロ球体を置いた。40番の篩及びミクロ球体を撹拌して、直径425μm未満のミクロ球体が40番の篩を通って移動するのを促進した。約425μmよりも大きい直径のミクロ球体は、スクリーン表面上に蓄積した。40番の篩の表面上に蓄積した直径約425〜500μmのミクロ球体を次いで、in vitro耐圧縮性試験のために捕集した。
【0221】
直径425〜500μmの耐圧縮性ミクロ球体約0.1 gmを、50 vol %のリン酸緩衝生理食塩水:50 vol %のVisipaque造影媒質の混合物約20 ml中に入れた。この混合物は、10 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO, Life Technologies, Inc., Rockville, MD)、及び10 mlのVisipaque(登録商標)320mg I/mlのヨードキシノール造影媒質(Amersham Health, Cork, Ireland)とから形成した。Visipaque(登録商標)の密度約1.3 g/mlと、PBSの密度約1.0 g/mlとを基準として、PBSと造影媒質との50 vol%/50 vol%混合物は、約1.2 g/mlの密度を有することが算出された。ミクロ球体を形成するポリマー、85 mol %のPLA; 15 mol %のPGAポリマーの密度は約1.3 g/mlであった。PBSと造影媒質との混合物中に、直径約425〜500μmの耐圧縮性ミクロ球体を入れた。これらのミクロ球体を形成するポリマーの密度は、ミクロ球体が入れられたPBSと造影媒質との混合物よりも高いので、混合物中に懸濁されるか又は混合物の上側に浮揚するミクロ球体の嵩密度は、1.3g/m未満であることが見極められた。懸濁されたミクロ球体又は浮揚するミクロ球体のバルク密度と、これらのミクロ球体を形成するポリマーの密度とに差があるのは、ミクロ球体内のボイド空間の存在によるものであった。
【0222】
PBSと造影媒質との混合物中に浮揚する又は懸濁された耐圧縮性ミクロ粒子の混合物約12mlを、20ml ポリプロピレン・シリンジ(Tyco Healthcare/Kendall, Joliet, IL)内に引き込んだ。20 ml使い捨てシリンジのルエル取付け具を、直径13 mmのステンレス鋼シリンジ・フィルター(Catalog 番号A-02928-10, Cole Parmer Instrument Co., Vernon Hills, IL)上に配置した。このフィルターは、約420μm・サイズの開口を有する40メッシュ・ステンレス鋼のスクリーン(カタログ番号S-0770、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を含有した。このスクリーンは、シリンジ・フィルターに適合するようにカットしておいた。次いで、12 mlの圧縮可能なミクロ球体及びPBSを有する造影媒質を、420μmの開口を有する40メッシュスクリーンを約5秒で強制的に通すような速度で、シリンジのプランジャーを押し下げた。シリンジ・フィルターの遠位端部からの流出物を捕集し、そして流出物が耐圧縮性のミクロ球体を事実上含有しないことを見いだした。次いでシリンジ・フィルターを開き、ステンレス鋼メッシュ・スクリーン内及びスクリーンの周りにも、多くの耐圧縮性ミクロ球体を見いだした。例20に記載された試験は室温で実施された(約21℃)。
例22:ミクロ球体製造
例18〜20に記載された、耐圧縮性試験に使用されたミクロ球体を、概ね下記プロセスに従って調製した:
1) 85/15ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー1.2 gm(Absorbable Polymers International, Pelham, AL)を10 mlのガラスビーカー内に入れた。
2) 7.5 mlの酢酸エチル(Fisher Scientific, Fair Lawn, NJ)を、ポリマーを含有するガラスビーカーに添加した。
3) 酢酸エチル及びポリマーを含有するビーカーに、PARAFILM(登録商標)M (American National Can, Neenah, WI)を被せ、そして室温(約21℃)で一晩(約12時間)にわたって放置した。
4) TEFLON(登録商標)をコーティングされた1.5インチ長の磁気撹拌棒(Cole Parmer Instrument Co., Vernon Hills, IL)を含有する1000 mlガラスビーカー内のDI水150 ml中に、酢酸エチル10.5 mlを混合した。DI水及び酢酸エチルを有するビーカーを、約「3」に速度設定された磁気撹拌板(Model 546725, Barnstead/Thermolyne, Dubuque, IA)上に置いた。酢酸エチルとDI水とを30分間にわたって混合させておいた。
5) 次いで、ポリマー及び酢酸エチルの溶液を、10 mlビーカーから、1000 mlビーカー内の酢酸エチルとDI水との混合物中に注ぎ込んだ。これは約10〜15秒間かかった。磁気撹拌器によってこの時間中、撹拌を続けた。ポリマー・ミクロ球体がこの時に形成された。
6) ポリマー及び酢酸エチルの溶液が、酢酸エチルとDI水との混合物中に完全に注ぎ込まれてから約15秒後に、650 mlのDI水を1000 mlのビーカーに添加し、そして磁気撹拌器の速度を約「7」の設定まで高めた。
7) 混合物を室温(約21℃)で12時間にわたって撹拌させておき、この間、ミクロ球体を硬化させておいた。
8) 32μmの開口を有するASTM E-11 450番の篩を使用して篩分けした(U.S. Standard Sieve Series, Dual Mfg. Co., Chicago, IL)。
9) ミクロ球体を篩内で、多量のDI水で洗浄した。
10) 次いで、ミクロ球体をねじ蓋付きプラスチック・バイアルに移した。
11) ミクロ球体を-80℃ですぐに凍結した。
12) ミクロ球体を一晩(約12時間)にわたって凍結乾燥させ、次いで冷蔵保存した(約3℃)。
【0223】
本発明の特定の実施態様を本明細書中で例示し説明してきたが、本発明はこのような例示及び説明に限定されるべきではない。添付の特許請求の範囲内の本発明の部分として変更及び改変を組み入れ、具体化できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1A】ベースポリマー及びボイドの構成要件を示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1B】ベースポリマーと、生体活性物質又は添加剤を含有するボイドとを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1C】生体活性物質又は添加剤と混合され、そして生体活性物質又は添加剤を含有するボイドを有するベースポリマーを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1D】生体活性物質又は添加剤と混合され、さらにボイドを含むベースポリマーを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1E】生体活性物質又は添加剤から成るコーティングを有し、そしてボイドを有するベースポリマーを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図1F】生体活性物質又は添加剤と混合され、そしてコーティング及びボイドの両方を有するベースポリマーを示す、本発明のミクロ粒子の概略図である。
【図2A】本発明のミクロ粒子の1実施態様の断面を150X倍率で画像形成して示す走査電子顕微鏡写真(「SEM」)であり、ミクロ粒子はリドカインを添加され、そして平滑な外面を有する。
【図2B】図2Aのミクロ粒子の断面を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図3A】本発明のミクロ粒子の別の実施態様の断面を150X倍率で画像形成して示す「SEM」であり、ミクロ粒子はリドカインを添加され、そして平滑なミクロ多孔質外面を有する。
【図3B】図3Aのミクロ粒子の断面を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図4A】本発明のミクロ粒子の実施態様の断面を150X倍率で画像形成して示す「SEM」であり、ミクロ粒子はリドカインを添加され、そして「脳様」コンボリュート状外面を有する。
【図4B】図4Aのミクロ粒子の断面を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図5】本発明のミクロ粒子の耐圧縮性を試験するためのin vitroメカニズムの1実施態様を示す概略図である。
【図6A】コンベンショナルな圧縮可能なミクロ粒子を、これが微小血管内で見えるもののように示す概略図である。
【図6B】本発明の耐圧縮性ミクロ粒子の実施態様を、これが微小血管内で見えるもののように示す概略図であり、血管は、圧縮不能なミクロ粒子を収容するためにいくらか変形させられている。
【図7】本発明のミクロ粒子で塞栓形成された動脈セグメントの縦断面を約25X倍率で示す拡大光学顕微鏡写真である。
【図8】イヌの腎臓の血管構造内に沈積した本発明のミクロ粒子の縦断面を約10X倍率で示す拡大光学顕微鏡写真である。
【図9A】内部ボイドの不存在を示す本発明のミクロ粒子の光学顕微鏡写真であり、粒子の直径は約100〜150μmである。
【図9B】ミクロ粒子内部の内部ボイドを示す本発明のミクロ粒子の光学顕微鏡写真であり、粒子の直径は約100〜150μmである。
【図10A】本発明のミクロ粒子の実施態様を150X倍率で画像形成して示すSEMであり、ミクロ粒子はリドカインを添加され、そして平滑な粒子表面を有する。
【図10B】図10Aのミクロ粒子の断面を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図11A】PVA発泡体粒子の岩状形態を示すSEMであり、粒子の幅は約100〜150μmである。
【図11B】本発明のミクロ粒子の1実施態様の平滑な球体状形態を示すSEMであり、粒子の幅は約20〜200μmである。
【図12A】リドカインを添加され、ミクロ多孔質表面形態を有する本発明のミクロ粒子の別の実施態様を150X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図12B】図12Aに示された本発明の実施態様を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図13A】「脳様」コンボリュート状表面形態を有する本発明のミクロ粒子の別の実施態様を140X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図13B】図13Aに示された本発明の実施態様を500X倍率で画像形成して示すSEMである。
【図14】粉末状の本発明のミクロ粒子の2つの実施態様を示す拡大写真である。
【図15】ヒトの子宮内に存在する筋腫を示す概略図である。
【図16】子宮筋腫塞栓術を実施するために使用される、本発明の装置を示す概略図である。
【図17】ヒトの子宮動脈内への本発明の塞栓剤の注入を示す概略図である。
【図18A】カテーテルから本発明の10 μmミクロ粒子を注入することを約20X倍率で示す光学顕微鏡写真である。
【図18B】カテーテルから本発明の80 μmミクロ粒子を注入することを約20X倍率で示す光学顕微鏡写真である。
【図19】子宮筋腫塞栓術(「UFE」)を受ける患者のための投与計画の一例を示すグラフである。
【図20】本発明の高リドカイン投与粒子の実施態様から放出されたリドカインの正規化蓄積質量を示すグラフである。
【図21A】水中に溶解されたリドカインに関する高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)標準クロマトグラムである。
【図21B】本発明のミクロ粒子の実施態様から溶出されたリドカインの放出に関する高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)クロマトグラムである。
【図22】ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(「PLGA」)を分解して酪酸とグリコール酸とにする化学プロセスを示す構造式である。
【図23A】正常な血流を示すイヌの左の腎臓の腎皮質を示すコントラスト血管造影図である。
【図23B】本発明のミクロ粒子の1実施態様を採用した、腎臓の頭方向極の選択的カテーテル法を示す、図23Aの腎臓を示すコントラスト血管造影図である。
【図23C】腎臓の完成された選択的塞栓形成を示す、図23Bの腎臓のコントラスト血管造影図である。
【図24A】正常な血流を示すイヌの左の腎臓の腎皮質を示すコントラスト血管造影図である。
【図24B】外径約80 μmの本発明の粒子を使用した、腎皮質の塞栓形成後の図24Aの腎臓を示すコントラスト血管造影図である。
【図24C】外径約240 μmの本発明の粒子を使用した、腎皮質の塞栓形成後の図24Bの腎臓を示すコントラスト血管造影図である。
【図25】本発明のミクロ粒子を製造するための任意の製造方法の例を示すフロー・ダイヤグラムである。
【図26】本発明のミクロ粒子の耐圧縮性を試験するためのin vitroメカニズムに用いられる装置の別の実施態様を示す概略図である。
【図27】本発明のミクロ粒子の耐圧縮性を試験するためのin vitroメカニズムに用いられる装置のさらに別の実施態様を示す概略図である。
【図28】本発明のミクロ粒子の耐圧縮性を試験するためのin vitroメカニズムに用いられる装置のさらに別の実施態様を示す概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチレンカーボネート部分を有する少なくともポリ(a-ヒドロキシエステル)のコポリマー又は少なくともポリ(a-ヒドロキシエステル)のホモポリマーを含むミクロ粒子であって、該ミクロ粒子がカテーテル送達に適合されている、ミクロ粒子。
【請求項2】
前記ミクロ粒子が塞栓剤である、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項3】
前記ミクロ粒子が、粒子のボーラスを送達するのに必要な時間にわたって標的体液に対してほぼ中立に浮揚性である、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項4】
1種以上の生体活性物質を有する、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項5】
1種以上の添加剤を有する、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項6】
さらに、1種以上のコーティングを含む、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項7】
多数の分布されたボイドを有する、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項8】
コンボリュート状表面を有する、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項9】
1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーとボイド容積とを含むカテーテル送達可能なミクロ粒子であって、該ミクロ粒子は耐圧縮性である、カテーテル送達可能なミクロ粒子。
【請求項10】
前記ミクロ粒子は塞栓剤である、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項11】
前記ミクロ粒子が、粒子のボーラスを送達するのに必要な時間にわたって標的体液に対してほぼ中立に浮揚性である、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項12】
1種以上の生体活性物質を有する、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項13】
1種以上の添加剤を有する、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項14】
さらに1種以上のコーティングを含む、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項15】
多数の分布されたボイドを有する、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項16】
コンボリュート状表面を有する、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項17】
複数のカテーテル送達可能なミクロ粒子を含む塞栓ミクロ粒子のボーラスであって、前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は、耐圧縮性であり、そして1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーとボイド容積とを含む、塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項18】
多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子の密度は、0.9 g/cc〜1.4 g/ccである、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項19】
多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は、標的体液に対して0.6〜1.4の比重を有する、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項20】
治療上効果的な数の多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は、標的体液に対してほぼ中立に浮揚性である、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項21】
多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は、1種以上の生体活性物質を有する、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項22】
多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は所定の外径を有し、そして10%を上回る前記外径の変形に対して抵抗性を有する、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項23】
カテーテル送達可能なミクロ粒子であって:
1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーと、
前記1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーとは異なる第2の材料と、
前記第2の材料が存在するボイド容積と、を含み、そして、
前記ミクロ粒子が耐圧縮性である、
カテーテル送達可能なミクロ粒子。
【請求項24】
ミクロ粒子の製造方法であって、
有機溶剤を提供し;
水溶液中で該有機溶剤と溶媒和ポリマーとを混合し;
該水溶液の有機溶剤飽和点未満で該有機溶剤を維持する量及び条件で、該水溶液中の該有機溶剤を維持し;そして
該飽和点未満で該溶液を維持しながら、該水溶液中でミクロ粒子を形成する
ことを含む、ミクロ粒子の製造方法。
【請求項25】
さらに、該有機溶剤として酢酸エチルを提供することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらに、該有機溶剤として塩化メチレンを提供することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
耐圧縮性に関するミクロ粒子の試験方法であって、
所与の公称断面寸法xを有する、溶液中に懸濁されたミクロ粒子の試料を用意し;
寸法がx未満の有効開口サイズを有する1つ以上の狭窄を含む試験装置を用意し;
ミクロ粒子及び溶液の試料が、受圧下で該試験装置内の該1つ以上の狭窄を通るようにし;
該1つ以上の狭窄の下流で該溶液をサンプリングすることにより、該ミクロ粒子が、該ミクロ粒子に対する永久的な損傷なしに、該狭窄を通るかどうかを見極める、
ことを含み;
該狭窄を通らない寸法xの粒子が、耐圧縮性と見なされる、
耐圧縮性に関するミクロ粒子の試験方法。
【請求項1】
トリメチレンカーボネート部分を有する少なくともポリ(a-ヒドロキシエステル)のコポリマー又は少なくともポリ(a-ヒドロキシエステル)のホモポリマーを含むミクロ粒子であって、該ミクロ粒子がカテーテル送達に適合されている、ミクロ粒子。
【請求項2】
前記ミクロ粒子が塞栓剤である、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項3】
前記ミクロ粒子が、粒子のボーラスを送達するのに必要な時間にわたって標的体液に対してほぼ中立に浮揚性である、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項4】
1種以上の生体活性物質を有する、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項5】
1種以上の添加剤を有する、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項6】
さらに、1種以上のコーティングを含む、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項7】
多数の分布されたボイドを有する、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項8】
コンボリュート状表面を有する、請求項1に記載のミクロ粒子。
【請求項9】
1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーとボイド容積とを含むカテーテル送達可能なミクロ粒子であって、該ミクロ粒子は耐圧縮性である、カテーテル送達可能なミクロ粒子。
【請求項10】
前記ミクロ粒子は塞栓剤である、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項11】
前記ミクロ粒子が、粒子のボーラスを送達するのに必要な時間にわたって標的体液に対してほぼ中立に浮揚性である、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項12】
1種以上の生体活性物質を有する、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項13】
1種以上の添加剤を有する、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項14】
さらに1種以上のコーティングを含む、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項15】
多数の分布されたボイドを有する、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項16】
コンボリュート状表面を有する、請求項9に記載のミクロ粒子。
【請求項17】
複数のカテーテル送達可能なミクロ粒子を含む塞栓ミクロ粒子のボーラスであって、前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は、耐圧縮性であり、そして1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーとボイド容積とを含む、塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項18】
多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子の密度は、0.9 g/cc〜1.4 g/ccである、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項19】
多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は、標的体液に対して0.6〜1.4の比重を有する、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項20】
治療上効果的な数の多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は、標的体液に対してほぼ中立に浮揚性である、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項21】
多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は、1種以上の生体活性物質を有する、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項22】
多数の前記カテーテル送達可能なミクロ粒子は所定の外径を有し、そして10%を上回る前記外径の変形に対して抵抗性を有する、請求項17に記載の塞栓ミクロ粒子のボーラス。
【請求項23】
カテーテル送達可能なミクロ粒子であって:
1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーと、
前記1種以上の生体再吸収可能なベースポリマーとは異なる第2の材料と、
前記第2の材料が存在するボイド容積と、を含み、そして、
前記ミクロ粒子が耐圧縮性である、
カテーテル送達可能なミクロ粒子。
【請求項24】
ミクロ粒子の製造方法であって、
有機溶剤を提供し;
水溶液中で該有機溶剤と溶媒和ポリマーとを混合し;
該水溶液の有機溶剤飽和点未満で該有機溶剤を維持する量及び条件で、該水溶液中の該有機溶剤を維持し;そして
該飽和点未満で該溶液を維持しながら、該水溶液中でミクロ粒子を形成する
ことを含む、ミクロ粒子の製造方法。
【請求項25】
さらに、該有機溶剤として酢酸エチルを提供することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらに、該有機溶剤として塩化メチレンを提供することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
耐圧縮性に関するミクロ粒子の試験方法であって、
所与の公称断面寸法xを有する、溶液中に懸濁されたミクロ粒子の試料を用意し;
寸法がx未満の有効開口サイズを有する1つ以上の狭窄を含む試験装置を用意し;
ミクロ粒子及び溶液の試料が、受圧下で該試験装置内の該1つ以上の狭窄を通るようにし;
該1つ以上の狭窄の下流で該溶液をサンプリングすることにより、該ミクロ粒子が、該ミクロ粒子に対する永久的な損傷なしに、該狭窄を通るかどうかを見極める、
ことを含み;
該狭窄を通らない寸法xの粒子が、耐圧縮性と見なされる、
耐圧縮性に関するミクロ粒子の試験方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2007−516747(P2007−516747A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544115(P2006−544115)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/041886
【国際公開番号】WO2005/058198
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/041886
【国際公開番号】WO2005/058198
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
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