説明

治療的に有用な分解産物を有するポリアンヒドリド

【課題】改善された分解性と加工性、並びに医療の有用性を有する芳香族アンヒドリドを提供する。
【解決手段】構造(I)


[式中、Arは置換又は非置換の芳香環であり、およびRはアンヒドリド基に対してオルトの各Arに置換した二官能性有機部分である]を有する繰り返し単位を含む芳香族ポリアンヒドリド。オルト置換ビス芳香族ジカルボン酸アンヒドリドモノマーおよびそのオルト置換ビス芳香族ジカルボン酸中間体、並びに組織再構築の基盤となる埋込み剤、芳香族ポリアンヒドリドから製造される薬物送達システム、並びに治療力のある経口投与形態および治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された分解性と加工性、および独特な治療性を有する生体適合性芳香族ポリアンヒドリド(polyanhydrides)に関する。特に、本発明は、オルト置換ビス芳香族カルボン酸アンヒドリドから製造される芳香族ポリアンヒドリドに関する。本発明はまた、本発明の芳香族ポリアンヒドリドの製造に有用なオルト置換ビス芳香族ジカルボン酸に関する。
【背景技術】
【0002】
生体適合性且つ生体分解性の芳香族カルボン酸アンヒドリドが、米国特許4,757,128および4,997,904によって開示されている。しかし、セバシン酸等のより親水性モノマーを含有するコポリマーに含められなければ、従来技術の芳香族アンヒドリドは遅い分解時間並びに比較的不溶性の分解産物をもつ。従来技術の芳香族アンヒドリドの大きな欠点は、ほとんどの有機溶媒に溶けないことである。
【0003】
パラ置換ビス芳香族ジカルボン酸から製造される生体適合性且つ生体分解性芳香族カルボン酸アンヒドリドが米国特許5,264,540によって開示されている。パラ置換様式は、高い溶融およびガラス転移温度となり、従って結局これらのパラ置換ポリマーを加工しにくくさせている。
改善された分解性と加工性、並びに医療の有用性を有する生体適合性且つ生体分解性芳香族アンヒドリドに対する必要性がある。
【発明の開示】
【0004】
この必要性が本発明によって満たされる。オルト置換ビス芳香族カルボン酸アンヒドリドからの芳香族ポリアンヒドリドの製造が生じるポリマーの結晶性をこわし、溶解性と加工性、並びに分解性を高めることがここに見い出された。従って、本発明の1つの観点によれば、式I、即ち
【化3】

[式中、 Arは置換又は非置換の芳香環であり、およびRはアンヒドリド基の各Arオルトに置換した二官能性有機部分である]の構造の中に繰り返し単位を有する芳香族ポリアンヒドリドが提供される。ArおよびRは好ましくは、ポリアンヒ1ドリドの加水分解生成物が医薬活性材料、特にアスピリン等のサリチラート、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン等の非ステロイド性抗炎症性のナフチルプロピオン酸エステル又はフェニルプロピオン酸エステル、又はインドメタシン、インドプロフェン等の他の芳香族抗炎症性化合物に似た化学構造を有するように選択される。特に、 Arは好ましくはフェニル基であり、Rは好ましくは-Z1-R1-Z1-であり、R1は二官能性部分であり、両方のZ1は独立してエーテル基、エステル基、アミド基、アンヒドリド基、炭酸エステル基、ウレタン基又はスルフィド基である。R1は好ましくは、1−20個の炭素原子を含有するアルキレン基、又は(-CH2-CH2-O-)m、(-CH2-CH2-CH2-O-)mおよび(-CH2-CHCH3-O-)mから選択される構造を有する2−20個の炭素原子をもつ基である。
【0005】
本発明のオルト置換ビス芳香族カルボン酸アンヒドリドは、本発明の芳香族アンヒドリドの製造に有用性を有する新規な且つ自明ではない中間化合物である。従って、本発明の別の観点によれば、式II、即ち
【化4】

[式中、 ArおよびR、およばそれらの好ましい種類は式Iに関して上に記載されたものと同じであり、Rはアンヒドリド基に対して各Arオルトに置換している]の構造を有するオルト置換ビス芳香族カルボン酸アンヒドリドが提供される。
【0006】
本発明はまた、オルト置換ビス芳香族カルボン酸アンヒドリドの製造に有用性を有する新規な且つ自明ではない中間化合物であるオルト置換ビス芳香族カルボン酸を含む。従って、本発明の別の観点によれば、HOOC-Ar-R-Ar-COOH、[式中、 ArおよびR、およばそれらの好ましい種類は式Iに関して上記されたものと同じであり、 Rはカルボン酸基に対して各Arオルトに置換している]の構造を有するオルト置換ビス芳香族ジカルボン酸が提供される。
【0007】
本発明の芳香族ポリアンヒドリドは、成形可能な生体適合性で生体分解性ポリマーの必要性を満たす。従って、本発明はまた、本発明の芳香族ポリアンヒドリドを含有する埋込み可能な医療デバイスを含む。芳香族ポリアンヒドリドが治療力のあるサリシチートを生成するべく加水分解するようにArおよびRが選択されると、芳香族ポリアンヒドリドは分解産物が抗血栓性をもつ組織再生のための生体適合性で生体分解性の基盤的埋込み剤として可能な用途を有する。
【0008】
さらに、治療力のあるサリシクラートを生成するために加水分解する芳香族ポリアンヒドリドは、炎症性腸疾患、クローン病等の腸障害を含む特に消化器障害の治療において経口投与のための投与形態を含む抗炎症投与形態として可能な用途を有する。 ArおよびRはまた、芳香族ポリアンヒドリドがイブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン等の化合物およびインドメタシン、インドプロフェン等の他の芳香族抗炎症性化合物に似る治療力のある非ステロイド性抗炎症性のナフチルプロピオネート又はフェニルプロピオネートを生成するべく加水分解するよう選んでもよい。
【0009】
従って、本発明はまた、芳香族ポリアンヒドリドが炎症を軽減するのに有効な量において炎症の場で治療力のあるサリチラートを生成するべく加水分解するようArおよびRが選択される本発明の芳香族ポリアンヒドリドの量を必要な患者に投与することによって炎症を治療する方法を含む。芳香族ポリアンヒドリドを経口的に投与できる。これは、治療力のあるサリチラートが患者の消化管で生成されるので、炎症性腸疾患等の消化器炎症の治療に特に有用である。治療力のあるナフチルプロピオネート又はフェニルプロピオネートを生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドで炎症を治療する方法、並びにインドメタシン、インドプロフェンを生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドで炎症を治療する方法が本発明に含まれる。
【0010】
従って、本発明はまた、治療力のあるサリシクラート、ナフチルプロピオネート、フェニルプロピオネート、インドメタシン又はインドプロフェンを生成するべく加水分解する本発明の芳香族ポリアンヒドリドおよび医薬的に許容される賦形剤から本質的に構成される抗炎症経口投与形態を含む。経口投与形態は、さらに治療力のある分解産物と一緒に投与される生物的又は医薬的に活性な化合物を含有してもよい。
【0011】
ArおよびRは、芳香族ポリアンヒドリドがロサプロストール等の治療力のある抗潰瘍薬、治療力のある抗線維性アミノベンゾアート、およびミドドリン等の治療力のある血管収縮性フェニルエタノールアミンを生成するべく加水分解するように選択されてもよい。従って、本発明はまた、芳香族ポリアンヒドリドがロサプロストール、抗線維性アミノベンゾアート、血管収縮性フェニルエタノールアミンおよびミドドリンを生成するべく加水分解するようにArおよびRを選択する本発明の芳香族ポリアンヒドリドの量を必要な患者に投与することによって治療するための方法を含む。本発明はまた、芳香族ポリアンヒドリドがロサプロストール、抗線維症アミノベンゾアート、血管収縮性フェニルエタノールアミンおよびミドドリンを生成するべく加水分解するようにArおよびRを選択する本発明の芳香族ポリアンヒドリドから本質的に構成される経口投与形態を含む。
【0012】
本発明の他の態様において、芳香族ポリアンヒドリドをGutkowsky et al., J. Biomater. Res., 29, 811-21 (1995)およびHoffman, J. Controlled Release, 6, 297-305 (1987)によって記載されるような効果的な部位特異的又は循環性薬物送達に十分な量の生物的又は医薬的に活性な化合物と組み合わせる。生物的又は医薬的に活性な化合物を物理的に混合したり、ポリマーマトリックス中に埋込んでも又は分散してもよい。あるいは、生物的又は医薬的に活性な化合物を、 Ar環又はRの有機部分に連結する共有結合によって本発明のポリマーの繰り返し単位に付けることがきる。
【0013】
本発明の別の面は、本発明の芳香族ポリアンヒドリドと組み合わせて治療上効果的な量の生物的又は医薬的に活性な化合物を含有する埋込み可能な薬物送達デバイスを、必要な患者の体内に埋込むことによって部位特異的又は全身への薬物送達のための方法を提供する。
【0014】
本発明のより完全な真価およびより多くの他の利点は、本発明の原理を開示する好ましい態様、および請求項、およびそれらを行うためにここに見られる最良の態様の以下の詳細な記載を参照することによって容易に得られる。
【0015】
本発明は、ArおよびRが式Iに関して上に記載されたのと同じである式Iの構造をもつ繰り返し単位を有する改善された改善された分解性と加工性をもつ芳香族ポリアンヒドリドを提供する。Rは好ましくは、-Z1-R1-Z1-の構造を有し、R1は二官能性有機部分であり、両方のZ1はエーテル基、エステル基、アミド基、アンヒドリド基、ウレタン基、カルバメート基、炭酸エステル基又はスルフィド基等から独立して選択される二官能性部分である。R1は、1−20個、好ましくは6個の炭素原子を含有するアルキレン基でもよく、又はR1は、(-CH2-CH2-O-)m、(-CH2-CH2-CH2-O-)mおよび(-CH2-CHCH3-O-)mから選択される構造を有する2−30個、好ましくは6個の炭素原子をもつ基でもよく、又はR1は、構造-R2-Z2-R3-を有してもよく、式中R2およびR3は独立して、(-CH2-CH2-O-)m、(-CH2-CH2-CH2-O-)mおよび(-CH2-CHCH3-O-)mから選択される構造を有する1−19個、又は2−18個の炭素原子を含有するアルキレン基であり、およびZ2はZ1に関して上に記載された二官能性部分から選択される。
【0016】
Arはアルキルアリール基でもよく、ここにおいて二官能性有機部分は各アンヒドリドカルボニル基および対応する芳香環の間に位置する。しかし、好ましくは、各カルボニル基は対応する芳香環に直接置換している。
【0017】
本発明の好ましいポリマーは、 Arがフェニル環であり、Rが-Z1-(-CH2-)n-Z1-、-Z(-CH2-CH2-O-)m-Z1-、-Z(-CH2-CH2-CH2-O-)m-Z1-および-Z(-CH2-CHCH-O-)m-Z1-[式中Z1はエーテル、エステル又はアミド基であり、nは1から20までであって、好ましくは6であり、mは2−20個、好ましくは6個の炭素原子を有するように選択される]から選択される式Iの構造をもつ繰り返し単位を有する。
【0018】
本発明の芳香族ポリアンヒドリドは、Conix, Macromol. Synth., 2, 95-99 (1996)で記載された方法で製造でき、ジカルボン酸を環流温度で過剰の無水酢酸中アセチル化し、生じるカルボン酸無水物を180℃で2−3時間加熱環流する溶融縮合によって行われる。生じるポリマーは、塩化メチレンからジエチルエーテル中の沈殿によって単離される。記載された製法は、ビス芳香族カルボン酸アンヒドリドを芳香族ポリアンヒドリドへ重合するための通常の方法である。
【0019】
本発明に記載の芳香族ポリアンヒドリドは、少なくとも約1,500から約35,000ダルトンの平均分子量をもち、近接した分子量のポリスチレン標準物に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって計算される。
【0020】
本発明の芳香族ポリアンヒドリドは、 Ar、Rおよびそれらの好ましいものが式Iに関して上に記載されたものと同じである式IIの構造をもつオルト置換ビス芳香族カルボン酸アンヒドリドから製造される。上に示されたように、オルト置換ビス芳香族カルボン酸アンヒドリドは、環流温度で過剰の無水酢酸中対応するオルト置換ビス芳香族カルボン酸のアセチル化によって製造される。ジカルボン酸は式IIIの構造を有し、式中Ar、Rおよびそれらの好ましいものが式Iに関して上に記載されたものと同じである。
【0021】
ジカルボン酸は、化学量論比率の構造Z-Ar-COOHを有する芳香族カルボン酸および構造Z 4-R-Z4を有する化合物を反応することによって製造され、式中Arは、Zがカルボン酸基のオルトに置換し、Rは二官能性有機部分であり、 ZおよびZ4は、二官能性有機部分と2つの芳香環との間の所望の連結を与えるべく選択された官能基である。
【0022】
適当なZ官能基およびZ4官能基、およびそれらが本発明のビス芳香族ジカルボン酸を製造するべく反応できる方法は、不適切な実験をすることなく当業者によって容易に決定できる。例えば、Arがフェニル基であり、Rが-O-(CH2)6-O-である式Iの構造を有する芳香族ポリアンヒドリドに対して、出発原料オルト置換ビス芳香族ジカルボン酸をオルトサリチル酸を1,6−ジブロモヘキサンと反応することによって製造してもよい。
【0023】
本発明の芳香族ポリアンヒドリドは、価値ある物理的又は化学的性質をもつ種々の有用なものを製造する合成ポリマーの分野で普通に用いられている公知の方法によって単離できる。新規なポリマーを溶媒注型によって容易に加工でき、種々の医療埋込み剤のデザインのため異なる幾何学的形をもつフィルム、コーティング、皿およびスポンジを与え、そして圧縮成形および押出によって加工してもよい。医療埋込み適用は、血管グラフおよびステント、骨プレート、縫合糸、埋込み可能なセンサー、埋込み可能な薬物送達デバイス、組織再生のステント、および知られている期間内で無害に分解する他のもの等の成形されたものをつくるための芳香族ポリアンヒドリドの用途を含む。
【0024】
本発明のポリマーは、 ArおよびRが治療的に有用なサリチラートを生成すべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドを提供するために選択される式Iの構造をもつ繰り返し単位を有する芳香族ポリアンヒドリドを含む。上に示されたように、サリチラートは、炎症、特に炎症性腸障害等の消化器炎症を治療するために用いてもよい。従って、本発明の埋込み可能又は消化される薬物送達デバイスは、医薬的に許容される賦形剤と組み合わせて、治療力のあるサリチラートを生成するべく加水分解する本発明の芳香族ポリアンヒドリドから本質的に構成される経口投与形態を含む。経口投与形態は、直接又は消化管から血流へ吸収されることによって炎症の場へサリチラートを運ぶように機能する。サリチラートは、ポリマーマトリックス中に他の治療力のある物質と共に加えてもよい。
【0025】
治療力のあるサリチラートの例は、サイモチン酸(thymotic acid)、4,4−スルフィニルジナイリン、4−スルファニルアミドサリチル酸、スルファニル酸、スルファニルベンジルアミン、スルファロキシン酸、スクシスルホン、サリチル硫酸、サルサラート(salsallate)、サリチルアルコール、オルトカイン、メサラミン、ゲンチジン酸、エンフェナミン酸、クレソチン酸、アミノサリチル酸、アミノフェニル酢酸、アセチルサリチル酸等を含むが、それらに限定されない。そのような治療力のあるサリチラートを生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドを提供するArおよびR部分の確定は、不適切な実験をすることなく普通の当業者によって容易に決定できる。
【0026】
ArおよびRはまた、芳香族ポリアンヒドリドが治療力のある非ステロイド性抗炎症性のフェニルプロピオネートおよびナフチルプロピオネート、インドメタシンおよびインドプロフェンを生成するべく加水分解するように選択してもよい。そのような治療力のある抗炎症化合物を生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドを提供するArおよびR部分の確定はまた、不適切な実験をすることなく普通の当業者によって容易に決定できる。
【0027】
ArおよびRはまた、芳香族ポリアンヒドリドが他の治療力のある化合物を生成するべく加水分解するように選択してもよい。例えば、 ArおよびRを、抗潰瘍薬ロサプロストールを生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドを提供するように選択してもよい。 ArおよびRはまた、抗線維性アミノベンゾアートを生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドを提供するように選択してもよい。 ArおよびRはさらに、血管収縮薬ミドドリン並びに血管収縮性フェニルエタノールアミンを生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドを提供するように選択してもよい。再び、そのような治療力のある化合物を生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドを提供するArおよびR部分の確定は、不適切な実験をすることなく普通の当業者によって容易に決定できる。
【0028】
経口投与に対して医薬的に許容される賦形剤はよく知られていて、乳糖、砂糖、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリシン等の希釈剤、シリカ、タルク、ステアリン酸およびその塩等の滑沢剤、ケイ酸マグネシウムアルミニウムコーンスターチ等のでんぷん、メチルセルロース等の結合剤、およびでんぷん、寒天等の崩壊剤、並びに着色料、香料および甘味剤を含む。投与形態は、それ自体知られた方法、例えば通常の混合、顆粒化又は糖衣加工によって製造される。
【0029】
炎症を軽減するために効果的な量の治療力のあるサリチラートを生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドの量は、不適切な実験をすることなく普通の当業者によって容易に決定できる。量は本質的に、効果的な治療を与えるために知られているサリチラートの量に化学量的に対応する。他の治療力のある非ステロイド性抗炎症化合物および他の治療化合物を生成するべく加水分解する芳香族ポリアンヒドリドの経口投与形態は、同様にして製造され、投与される。
【0030】
本発明のオルト置換芳香族ポリアンヒドリドは、細胞培養物に所望の接着を示す。結晶性の崩壊が細胞の接着と成長とを改善すると信じられ、タンパク質、ペプチドおよび細胞との特異的な相互作用を促進することができる。本発明の芳香族ポリアンヒドリドは従って、組織再構築の基盤となる埋込み剤として有用である。ポリマー表面はまた、具体的なペプチドを付けたり、又は組織工学的応用又は埋込みデザインにおいて選択的な細胞応答を引き起こすべきタンパク質を固定するため簡単な化学的手続きによって修飾してもよい。
【0031】
制御された薬物送達システムも製造でき、ここでは生物的又は医薬的に活性な化合物を物理的に混合したり、ポリマーマトリックス中に物理的に埋込んだり又は分散しり、又は芳香族ポリアンヒドリドに共有結合で結合する。共有結合は、1または2以上のAr基又はR部分に反応性官能基を有する芳香族ポリアンヒドリドを提供したり、または共有結合を生成するためにこの芳香族ポリアンヒドリド上の反応性官能基と反応できる誘導されたか又は誘導されていない生物的又は医薬的に活性な化合物とポリアンヒドリドを反応することによってつくられる。従って、生物的又は医薬的に活性な化合物は、エステル基、アミド基等の手段によって芳香族ポリアンヒドリドに連結してもよい。
【0032】
本発明における用途に適当な生物的又は医薬的に活性な化合物の例は、アシクロビル、セフラドリン、マルファラン、プロカイン、エフェドリン、アドリアマイシン、ダウノマイシン、プルムバジン、アトロピン、キニン、ジゴキシン、グアニジン、生物的に活性なペプチド、クロリンe、セファドリン、セファロチン、ペニシリンIV、ニコチン酸、ケモデオキシコール酸、クロラムブシル等を含む。本発明の目的のための生物的に活性な化合物はさらに、細胞伝達物質、生物的に活性なリガンド等を含むものとして定義される。化合物は、普通の当業者によく知られた通常の手法を使用して本発明の芳香族ポリアンヒドリドに共有結合的に結合される。薬物送達化合物はまた、普通の当業者によく知られた通常の手法を使用して、送達されるべき生物的又は医薬的に活性な化合物を本発明の芳香族ポリアンヒドリドと物理的に配合することによって生成してもよい。
【0033】
下に述べられる以下の限定はされない例が本発明のある面を説明している。すべての部とパーセントは、別に述べなければ重量によるものであり、すべての温度は摂氏度である。無水酢酸とエチルエーテル(Fisher Scientific)以外、すべての溶媒および試薬をAldrich Chemicalから得た。すべての溶媒はHPLCグレードであった。すべての他の試薬は分析グレードであり、蒸留又は再結晶によって精製された。
【0034】
すべての化合物は、プロトン核磁気共鳴(NMR)分光法、赤外線(IR)分光法、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、示査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)によって確認された。赤外線分光法をAT1 Mattoson Genesis (M100) FTIR分光計で行った。サンプルをNaClプレート上に溶媒キャスティング(casting)によってつくられた。Hおよび13C NMR分光法は、内部標準としての溶媒とCDCl又はDMSO−d中の溶液においてVarian 200 MHz又はVarian 400 MHz分光計で得た。
【0035】
GCPをPE Series 200 LCポンプの付いたPerkin-Elmer Advanced LC Sample Processor (ISS 200)で行った。データ解析をDEC Celebris 466コンピュターでTurbochrom4ソフトウヱアーを使用して行った。サンプルをテトラヒドロフランに溶かし、0.5mL/minの流速で混合吸着床カラム(PE PLゲル、5μm混合吸着床)を通して溶出した。サンプル(約5mg/mL)をテトラヒドロフランに溶かし、カラム注入の前に0.5 μmのPTFEシリンジフィルターを使用して濾過した。分子量を狭い範囲の分子量のポリスチレン標準品(Polysciences, Inc.)に対して決定した。
【0036】
熱分析を、PE AD-4オ−トバランスおよびPyris 1 DSC分析計のついたTGA 7熱重量分析計からなるPerkin-Elmerシステムで行った。PyrisソフトウヱアーがDEC Venturis 5100コンピュターでデータ解析を行うために使用された。DSCに対しては、5−10mgの平均サンプル重量を10℃/min、窒素の30psiフローで加熱した。TGAに対して、10mgの平均サンプル重量を窒素の8psiフロー下に20℃/minで加熱した。Sessile液滴接触角測定は、蒸留水を使用してNRL Goniometer(Rame-hart)で得られた。塩化メチレン中のポリマーの溶液(10%wt/vol)を30秒間5000rpmでガラススリップ上にスパン(spun)被覆した。
【実施例】
【0037】
例1 1,6−ビス(o−カルボキシフェノキシ)ヘキサンジカルボン酸の製造
サリチル酸(77.12g、0.5580モル)および蒸留水(84mL)の混合物へ水酸化ナトリウム(44.71g、1.120モル)を加えた。反応物を、1,6−ジブロモヘキサン(45.21g、0.2790モル)を滴々と加える前に還流温度にもっていった。還流を23時間続け、その後さらに水酸化ナトリウム(11.17g、0.2790モル)を加えた。混合物をさらに16時間以上還流し、冷却し、濾過し、そしてメタノールで洗浄した。収率は48.8%であった。
【0038】
例2 1,6−ビス(o−カルボキシフェノキシ)ヘキサンモノマー(o−CPH)の製造
例1のジカルボン酸を過剰の無水酢酸中還流温度でアセチル化した。得られるモノマーは過剰のジエチルエーテル中の塩化メチレンから沈殿した。収率は66.8%であった。
【0039】
例3 ポリ(1,6−ビス(o−カルボキシフェノキシ)ヘキサン)(ポリ(o −CPH))の製造
例2のモノマーを、側面に取っ手のある反応容器中真空下に180℃で3時間行われる溶融縮合で重合した。重合容器を頻繁に窒素でフラッシュした。ポリマーは、ジエチルエーテル中の塩化メチレンから沈殿によって単離した。収率は定量的であった。
すべての化合物は、核磁気共鳴分光法、GPC、示査熱量測定(DSC)、熱重量分析、接触角測定、UV分光法、質量分析、元素分析および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって確認された。(o−CPH)モノマーを100℃から300℃の範囲の温度で60分間溶融重縮合によって重合した。生じるポリマーのGPCによる分析は、最低の多分散性指数を伴う最も高い分子量が260℃で起きることを示した。
ポリ(o−CPH)は一般的に、塩化メチレンおよびクロロホルムに溶けたが、ポリ(p−CPH)は溶けなかった。ポリ(o−CPH)はテトラヒドロフラン、アセトンおよび酢酸エチルエステルにわずかに溶けた。
ポリ(o−CPH)、ポリ(p−CPH)および対照としてポリ(乳酸グリコール酸)のディスクをつくり、0.1Mリン酸緩衝液中37℃で4週間置いた。分解媒体を定期的に取り換えた。分解プロフィールは3週時まで直線的であった。
一般に使用されているポリアンヒドリドシステムにおいて、芳香族基はパラ置換である。この置換様式は、より高い溶融温度およびガラス転移温度、および溶解度の減少となり、従って最後はこれらのパラ置換ポリマーを加工するのに困難にする。
ポリ(p−CPH)と違ってポリ(o−CPH)は、より低い融点(143℃に対して65℃)およびガラス転移温度(47℃に対して35℃)の両方をもつ。低沸点溶媒を使用してポリ(o−CPH)を溶液注型することもできるが、ポリ(p−CPH)は比較的多くの有機および水性溶媒に不溶である。この構造修飾は、加水分解物が化学的にアスピリンに似たポリマーを与える。アスピリンはサリチル酸から誘導される抗炎症剤であり、本発明のポリアンヒドリドを合成するために使用された試薬の1つである。従って、このポリマーの分解産物は実際、患者の回復に役立つ。柔軟性と加工の容易さのため、本発明の芳香族ポリアンヒドリドは、創傷治癒のポリマー基盤体として大きな可能性を有する。
【0040】
例4 1,3−ビス(o−カルボキシフェノキシ)プロパンジカルボン酸の製造
1,3−ジブロモプロパン(14.7mL、0.145モル)を、例1で記載された方法を使用してサリチル酸(40.0g、0.290モル)、蒸留水(44mL)および水酸化ナトリウム(23.2g、0.580モル)の混合物へ加えた。4時間後、さらに水酸化ナトリウム(5.79g、0.145モル)を反応混合物へ加えた。さらに4時間還流を継続した後、混合物を冷却し、濾過し、そして例1で記載された方法を用いて洗浄した。収率は37.7%であった。
【0041】
例5 ポリ(1,3−ビス(o−カルボキシフェノキシ)プロパン)の製造
例4のジカルボン酸を例2の方法を用いてアセチル化した。アセチル化されたジカルボン酸を、次いで例3に記載された方法を用いて重合した。得られるポリマーは8,500ダルトンの分子量および2.3の多分散性を有した。
溶媒注型フィルムの接触角測定は、例3のポリマーのヘキシル鎖が例5のより短いプロピル鎖に比べて表面疎水性を増すことを示した。熱的性質の比較が、アルキル鎖を長くする影響を強調した。特に、例3のポリマーは34℃のTと410℃のTをもつが、例5のポリマーは50℃のTと344℃のTをもった。従って、ヘキシル鎖がプロピル鎖に比べてガラス転移温度( T )を減少し、ポリマー鎖の増大した柔軟性を示している。反対の傾向が分解温度( T )で観察され、アルキル鎖が長くなるにつれT は増した。
最適な重縮合条件が例3のポリマーに対して決定された。最適条件は、最高の分子量と最高のTとをもつ粗ポリマー与えるものと定義された。より高い反応温度は、多分散性の増加を伴って分子量値(GPCによる測定)を減少した。縮重合で期待されるように、より長い反応時間はより高い分子量おもつポリマーを与えた。しかし、より長い反応時間で、そのためのTの減少が現われた。これらの結果に基づいて、最適条件は、220℃、真空下150分間と定められた。
【0042】
例6 1,8−ビス[o−(ベンジルカルボキシ)カルボキシフェニル]オクタンジカルボン酸エステルの製造
ポリ(アンヒドリド−エステル)ジカルボン酸モノマーの初めの合成は、例3のポリ(アンヒドリド−エーテル)ジカルボン酸モノマーに対して用いられたのと同じ方法を用いて行われた。しかし、フェノールの反応性はカルボン酸基のベンジル化によって高められていることが見い出された。さらに、有機媒体におけるサリチル酸ベンジルエステルの溶解度は前に進行する反応性を増した。
従って、サリチル酸ベンジルエステル(1.530g、6.720ミリモル)および蒸留テトラヒドロフランを反応フラスコ中不活性雰囲気下一緒にした。氷冷浴を反応フラスコの下に置き、60%水素化ナトリウム(0.4840g、12.10ミリモル)を次いで加えた。1時間後、塩化セバシン酸(0.7850g、3.280ミリモル)を0℃の反応混合物へ滴加した。30分後、反応混合物を真空濾過し、濾液を集め、溶媒を除去して遊離のカルボン酸エステルを白色固体残渣として与えた。精製は、溶媒系として酢酸エチルエステル/塩加メチレン(20/80)のクロマトロンを用いて行われた。
【0043】
例7 ポリ(1,8−ビス(o−ジルカルボキシフェニル)オクタンの重合
ベンジル保護基を除去するために、例6の1,8−ビス[ (ベンジルカルボキシ)カルボキシフェニル]オクタンジカルボン酸エステル(0.06000g、0.9620ミリモル)を反応フラスコ(60.00mL)中の塩化メチレンに溶かした。触媒Pd−C(10%、1.200g)を反応フラスコに加えた。30分後、反応は完了した。反応混合物を濾過し、溶媒を除去して遊離のカルボン酸を白色固体残渣として与え、これを石油エーテルと塩化メチレンを用いて再結晶した。収率は45%であった。
ジカルボン酸を例2に記載された方法を用いてアセチル化し、このアセチル化されたジカルボン酸を次いで、例3に記載された方法を用いて重合した。得られるポリマーは、3,000ダルトンの分子量および1.40の多分散性を有した。
続く重合が、約1.40の対応する多分散性をもつ2,000から5,000ダルトンの範囲の分子量をもつポリマーを与えた。
例7のポリ(アンヒドリド−エステル)を円形ディスクに圧縮成形し、酸性、中性および塩基性条件下にリン酸緩衝塩溶液中に置いた。3週間の分解の検討過程で、酸性および中性の溶液中のポリマーは観察できる変化を示さなかったが、塩基性媒体中のポリマーは時間にわたって有意な形態変化を示した。
【0044】
例8 ポリ[1,8−ビス(o−ジルカルボキシフェニル)オクタン−(1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン]共重合体の製造
例2の1,8−ビス(o−ジルカルボキシフェニル)オクタンを1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサンと例3に記載された方法を用いて共重合した。インビボのマウスの検討で、各マウスに例8の共重合体およびポリ(1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサンの2つのポリマーを埋込んだ。各ポリマーを必要なポリマーの厚さによって1−20Kpsiで1−5分間圧縮成形した。ポリマーを第1上顎臼歯の隣の口蓋歯肉粘膜下に置いた。マウスは、1日、4日そして10日で犠牲にされ、本発明のポリマーのインビボの生体適合性、生体分解性を示し、ポリマー本体の加水分解によりサリチル酸が分解で遊離した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、特に抗炎症性化合物としての種々の医薬適用を有する。
好ましい態様の前記例および記載は、本請求項によって定義される本発明を説明するものであって、制限するものではないと理解されるべきである。容易に理解されるように、上述された特徴の数多くの変形および組む合わせは、本請求項に述べられた本発明から逸脱することなく利用できる。そのような変形は、この発明の精神および範囲から逸脱するとは見なされず、そのようなすべての変形は、本請求項の範囲内に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造、
【化1】

[式中、 Arは置換又は非置換の芳香環であり、Rはアンヒドリド基に対して各Arのオルト位に置換した-Z1-R1-Z1-であり、式中R1は二官能性有機部分であり、Z1はエステル、アミド、ウレタン、カルバメート、および炭酸エステルからなる群から選択される二官能性部分である]を有する繰り返し単位を含む芳香族ポリアンヒドリド。
【請求項2】
R1が、(-CH2-)n、(-CH2-CH2-O-)m、(-CH2-CH2-CH2-O-)m、および(-CH2-CHCH3-O-)m[式中nは1から20までであり、mは、R1が2から20個までの炭素原子をもつように選択される]からなる群から選択される、請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリド。
【請求項3】
nが6である、請求項2に記載の芳香族ポリアンヒドリド。
【請求項4】
R1が-R2-Z2-R3-であり、R2およびR3が二官能性有機部分であり、Z2がエステル、アミド、ウレタン、カルバメート、および炭酸エステルからなる群から選択される二官能性部分である、請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリド。
【請求項5】
R2およびR3が、1−19個の炭素原子を含有するアルキレン基、 (-CH2-CH2-O-)m、(-CH2-CH2-CH2-O-)mおよび(-CH2-CHCH3-O-)m[式中mは2と18の間である]からなる群から独立に選択される、請求項4に記載の芳香族ポリアンヒドリド。
【請求項6】
芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、治療に有効なサリチラート、抗炎症性非ステロイドナフチルプロピオネート又はフェニルプロピオネート、インドメタシン、インドプロフェン、ロサプロスタール、抗線維症アミノベンゾアート、ミドドリン、又は血管収縮性フェニルエタノールアミンを生成するように、Ar及びRを選択する、請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリド。
【請求項7】
芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、サイモチン酸、4,4−スルフィニルジナイリン、4−スルファニルアミドサリチル酸、スルファニル酸、スルファニルベンジルアミン、スルファロキシン酸、スクシスルホン、サリチル硫酸、サルサラート、サリチルアルコール、オルトカイン、メサラミン、ゲンチジン酸、エンフェナミン酸、クレソチン酸、アミノサリチル酸、アミノフェニル酢酸、およびアセチルサリチル酸からなる群から選択される治療に有効なサリチラートを生成するように、Ar及びRを選択する、請求項6に記載の芳香族ポリアンヒドリド。
【請求項8】
芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、イブプロフェン、ケトプロフェン、およびナプロキシンからなる群から選択される治療に有効な非ステロイドナフチルプロピオネート又はフェニルプロピオネートを生成するように、Ar及びRを選択する、請求項6に記載の芳香族ポリアンヒドリド。
【請求項9】
請求項1の芳香族ポリアンヒドリドを含む埋込み可能な医療デバイス。
【請求項10】
デバイスが組織再構築のための基盤となるインプラントである、請求項9に記載の埋込み可能な医療デバイス。
【請求項11】
生物的又は医薬的に活性な化合物を芳香族ポリアンヒドリドと組み合わせて含む請求項9に記載の埋込み可能な医療デバイスであって、活性化合物が治療上効果的な部位特異的又は全身への薬物送達に十分な量存在する、前記デバイス。
【請求項12】
生物的又は医薬的に活性な化合物が、芳香族ポリアンヒドリドに共有結合で結合される、請求項11に記載の埋込み可能な医療デバイス。
【請求項13】
治療上効果的な量の生物的又は医薬的に活性な化合物を請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリドと組み合わせて含む埋込み可能な薬物送達デバイスを、それを必要とする患者の体内に埋込むことを含む、部位特異的又は全身への薬物送達のための方法。
【請求項14】
生物的又は医薬的に活性な化合物が、芳香族ポリアンヒドリドに共有結合で結合される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
生物的又は医薬的に活性な化合物と物理的に混合された請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリドを含む、薬物送達システム。
【請求項16】
請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリドから形成されたポリマーマトリックスへ物理的に埋込まれ、又は分散された生物的又は医薬的に活性な化合物を含む、薬物送達システム。
【請求項17】
請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリドに共有結合で結合した生物的又は医薬的に活性な化合物を含む、薬物送達システム。
【請求項18】
構造、
【化2】

[式中、 Arは置換又は非置換の芳香環であり、Rはアンヒドリド基に対して各Arのオルト位に置換した-Z1-R1-Z1-であり、式中R1は二官能性有機部分であり、Z1はエステル、アミド、ウレタン、カルバメート、および炭酸エステルからなる群から選択される二官能性部分である]を有する、オルト置換ビス芳香族ジカルボン酸アンヒドリド。
【請求項19】
R1が(-CH2-)n、(-CH2-CH2-O-)m、(-CH2-CH2-CH2-O-)m、および(-CH2-CHCH3-O-)m[式中nは1から20までであり、mは、R1が2から20個までの炭素原子をもつように選択される]からなる群から選択される、請求項18に記載の酸アンヒドリド。
【請求項20】
nが6である、請求項19に記載の酸アンヒドリド。
【請求項21】
構造、HOOC-Ar-R-Ar-COOH[ Arは置換又は非置換の芳香環であり、Rは各カルボン酸基に対して両Ar環上のオルト位の-Z1-R1-Z1-であり、式中R1は二官能性有機部分であり、Z1はエステル、アミド、ウレタン、カルバメート、および炭酸エステルからなる群から選択される二官能性有機部分である]を有する、オルト置換ビス芳香族ジカルボン酸。
【請求項22】
R1が(-CH2-)n、(-CH2-CH2-O-)m、(-CH2-CH2-CH2-O-)m、および(-CH2-CHCH3-O-)m[式中nは1から20までであり、mは、R1が2から20個までの炭素原子をもつように選択される]からなる群から選択される、請求項21に記載のジカルボン酸。
【請求項23】
nが6である、請求項22に記載のジカルボン酸。
【請求項24】
請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリドの量を治療を必要とする患者に投与することを含む炎症を治療する方法であって、芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、炎症部位で炎症を軽減するのに有効な量の治療に有効なサリチラート、フェニルプロピオン酸若しくはナフチルプロピオン酸、インドメタシン、又はインドプロフェンを生成するように、ArおよびRが選択される、前記方法。
【請求項25】
芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、サイモチン酸、4,4−スルフィニルジナイリン、4−スルファニルアミドサリチル酸、スルファニル酸、スルファニルベンジルアミン、スルファロキシン酸、スクシスルホン、サリチル硫酸、サルサラート、サリチルアルコール、オルトカイン、メサラミン、ゲンチジン酸、エンフェナミン酸、クレソチン酸、アミノサリチル酸、アミノフェニル酢酸、およびアセチルサリチル酸からなる群から選択される治療に有効なサリチラートを生成するように、ArおよびRを選択する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、イブプロフェン、ケトプロフェン、およびナプロキシンからなる群から選択される治療に有効な抗炎症性非ステロイドナフチルプロピオネート又はフェニルプロピオネートを生成するように、ArおよびRを選択する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
芳香族ポリアンヒドリドが経口的に投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
有効量の請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリドを治療を必要とする患者に投与することを含む治療方法であって、芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、ロサプロストール、抗線維症アミノベンゾアート、ミドドリン、又は血管収縮性フェニルエタノールアミンを生成するように、ArおよびRを選択する、前記方法。
【請求項29】
芳香族ポリアンヒドリドが経口的に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
有効量の請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリド、および医薬的に許容される賦形剤を含む抗炎症性経口投与製剤であって、芳香族ポリアンヒドリドが、加水分解して、治療に有効なサリチラート、フェニルプロピオン酸若しくはナフチルプロピオン酸、インドメタシン、又はインドプロフェンを生成するように、ArおよびRを選択する、前記投与製剤。
【請求項31】
芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、サイモチン酸、4,4−スルフィニルジナイリン、4−スルファニルアミドサリチル酸、スルファニル酸、スルファニルベンジルアミン、スルファロキシン酸、スクシスルホン、サリチル硫酸、サルサラート、サリチルアルコール、オルトカイン、メサラミン、ゲンチジン酸、エンフェナミン酸、クレソチン酸、アミノサリチル酸、アミノフェニル酢酸、およびアセチルサリチル酸からなる群から選択される治療に有効なサリチラートを生成するように、ArおよびRを選択する、請求項30に記載の経口投与製剤。
【請求項32】
芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、イブプロフェン、ケトプロフェン、およびナプロキシンからなる群から選択される治療に有効な抗炎症性非ステロイドナフチルプロピオネート又はフェニルプロピオネートを生成するように、ArおよびRを選択する、請求項30に記載の経口投与製剤。
【請求項33】
ポリアンヒドリドと組み合わせて投与される第2の治療剤をさらに含む、請求項30に記載の経口投与製剤。
【請求項34】
請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリドの量を治療を必要とする患者に経口的に投与することを含む消化器の炎症を治療する方法であって、芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、炎症部位において炎症を軽減するのに有効な量の治療に有効なサリチラートを生成するように、ArおよびRが選択される、前記方法。
【請求項35】
サリチラートが、サイモチン酸、4,4−スルフィニルジナイリン、4−スルファニルアミドサリチル酸、スルファニル酸、スルファニルベンジルアミン、スルファロキシン酸、スクシスルホン、サリチル硫酸、サルサラート、サリチルアルコール、オルトカイン、メサラミン、ゲンチジン酸、エンフェナミン酸、クレソチン酸、アミノサリチル酸、アミノフェニル酢酸、およびアセチルサリチル酸からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1に記載の芳香族ポリアンヒドリドの効果的な量を治療を必要とする患者に投与することを含む治療処置方法であって、芳香族ポリアンヒドリドが加水分解して、ロサプロストール、抗線維症アミノベンゾアート、ミドドリン、又は血管収縮性フェニルエタノールアミンを生成するように、ArおよびRを選択する、前記方法。
【請求項37】
芳香族ポリアンヒドリドが経口的に投与される、請求項36に記載の方法。

【公開番号】特開2008−150367(P2008−150367A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308503(P2007−308503)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【分割の表示】特願2000−510791(P2000−510791)の分割
【原出願日】平成10年9月10日(1998.9.10)
【出願人】(301027454)ラトガーズ,ザ ステート ユニバーシティー オブ ニュージャージー (1)
【Fターム(参考)】