説明

治療薬の皮内送達法

本発明は、1種または数種の生物活性作用物質、特に治療薬を対象となる皮膚の皮内区画に送達するための方法および装置に関する。本発明は、皮内送達によってアクセスしたリンパ管構造を通して治療薬などの生物活性作用物質を送達する、改良された方法を提供する。本発明に従って送達される治療薬には、抗腫瘍薬、化学療法剤、抗体、抗生物質、抗血管新生薬、抗炎症薬および免疫療法薬が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。本発明に従って送達された治療薬は、改善された全身分配および特定の組織への改善された送達を含む、改善された生体利用効率を有する。本発明の方法に従って送達された治療薬は、腹腔内、筋肉内および皮下送達を含む他の薬物送達法に比べて、改善された臨床的有用性および治療効力を有する。本発明の方法は、用量の節減、薬効の増大、副作用の低減、転移の可能性の低減および生存期間の延長を含む、従来の薬物送達法に勝る利益および改善を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、それぞれその全体が参照によって本明細書に組み込まれる2004年3月3日出願の特許文献1および2003年8月26日出願の特許文献2の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、1種または数種の生物活性作用物質(biologically active agent)、特に治療薬を対象となる皮膚の皮内区画に送達するための方法および装置に関する。本発明は、皮内送達によってアクセスしたリンパ管構造を通して治療薬などの生物活性作用物質を送達する、改良された方法を提供する。本発明に従って送達される治療薬には、抗腫瘍薬、化学療法剤、抗体、抗生物質、抗血管新生薬、抗炎症薬および免疫療法薬が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。本発明に従って送達された治療薬は、改善された全身への分布および特定の組織への改善された送達を含む、改善された生体利用効率(bioavailability)を有する。本発明の方法に従って送達された治療薬は、腹腔内、筋肉内および皮下送達を含む他の薬物送達法に比べて、改善された臨床的有用性および治療効力を有する。本発明の方法は、用量の低減、薬効の増大、副作用の低減、転移可能性の低減および生存期間の延長を含む、従来の薬物送達法に勝る利益および改善を提供する。
【背景技術】
【0003】
治療薬や医薬 (drugs)といった薬剤(pharmaceutical agents)を効率的かつ安全に投与することの重要性は長く認識されている。バイオテクノロジー産業から生まれたタンパク質などの大分子の十分な生体利用効率および再現可能な吸収を確保することに関連した困難が最近明らかとなっている(非特許文献1)。従来の針の使用は、長きにわたって、皮膚を通した投与によって、ヒトおよび動物に薬剤を送達するための1つの方法を提供してきた。一般に注射は、大部分の生物療法の望ましい効果を一般に弱める経口送達に伴う厳しい条件を回避できる。注射はさらに経口投与よりも速く治療効果をあげることができる。従来の針に伴う使いやすさを向上させ、かつ患者の不安および/または痛みを軽減すると同時に、再現可能でかつ効力のある針ベースの注射による送達を達成するために相当な努力がなされている。さらに、ある種の経皮送達系は針をまったく使用せず、これらは、単純な疎水性吸着;化学的メディエーター;またはイオン導入電流(iontophoretic currents)、電気穿孔法(electroporation)、熱穿孔法(thermal poration)、超音波導入法(sonophoresis)などの外部駆動力に依拠して、角質層(皮膚の最外層)を破り、皮膚表面を通して薬剤を送達する。しかし、このような送達系は一般に、皮膚バリアーを高い再現性では通過せず、または薬剤を皮膚の表面から所与の深さに送達しない。その結果、臨床成績は一定しない。したがって針などを用いた角質層の機械的な破壊は、皮膚の表面を通して薬剤を投与する最も再現性の高い方法を提供すると考えられており、投与された薬剤留置(placement)の制御および信頼性を提供する。
【0004】
皮膚の表面下に薬剤を送達する方法はもっぱら、経皮注射または経皮注入、すなわち皮膚を通した皮膚の下の部位への薬剤の送達を含んでいた。経皮注射および経皮注入には、皮下、筋肉内または静脈内投与経路が含まれ、これらのうち、筋肉内(IM)および皮下(SC)注射は最も一般的に使用されている。
【0005】
解剖学上、身体の外表面は主要な2種類の組織層、外側の表皮とその下の真皮とからなり、これらが合わさって皮膚を構成している(非特許文献2参照)。表皮は5つの層(layers or starata)に細分され、その全厚は75〜150μmである。表皮の下には真皮があり、真皮は2つの層、乳頭真皮と呼ばれる最も外側の部分と、網状真皮と呼ばれるより深部の層とを含む。乳頭真皮は、巨大な微小循環性血管叢およびリンパ管叢を含む。対照的に網状真皮は相対的に無細胞、無血管であり、密度の高い膠原性および弾性結合組織からなる。表皮および真皮の下には皮下組織[ヒポデルミス(hypodermis)とも呼ばれる]があり、皮下組織は結合組織と脂肪組織からなる。皮下組織の下には筋肉組織がある。
【0006】
先に述べたとおり、皮下組織および筋肉組織はともに、治療薬を含む薬剤を投与する部位として一般に使用されている。しかし真皮が薬剤投与の標的部位とされることはまれにしかなく、これは少なくとも1つには、皮内区画内(intradermal compartment)に針を正確に留置することが困難であるためである。さらに、真皮、特に乳頭真皮が高度の血管分布を有することは知られているとはいえ、この高い血管分布を利用して、皮下投与に比べて改善された投与薬剤の吸収分析結果(absorption profile)を得ることができるであろうことはこれまで理解されてこなかった。
【0007】
Mantouxツベルクリン試験において、皮膚表面下での皮内区画の領域内への投与を行う1つの方法が日常的に使用されている。この方法では、27または30ゲージ針を使用して精製ツベルクリンタンパクを浅い角度で皮膚の表面に注射する(非特許文献3)。しかし、この注射の留置には一定の不確実性が伴うため、試験結果が偽陰性になることがある。さらに、この試験は注射部位での反応を引き出すための局所注射を含み、このMantoux法は、薬剤の全身投与のための皮内注射の使用には結びつかなかった。
【0008】
いくつかのグループが、「皮内」注射と特徴づけられたものによる全身投与に関して報告している。このような1つの報告では、皮下注射と、「皮内」注射と記述されたものとの間の比較研究が実施された(非特許文献4)。試験された薬剤は、分子量約3600のタンパク質、カルシトニンである。この薬物は皮内注射されたと述べられているが、この注射では4mm針が使用され、これが角度60で基部まで押し込まれた。これによって注射薬剤(injectate)は深さ約3.5mmのところに留置され、したがって注射薬剤は、血管の発達した乳頭真皮というよりはむしろ、網状真皮の下部かまたは皮下組織内に留置されたと考えられる。このグループが実際に、皮下組織ではなく網状真皮の下部に注射したとした場合、薬剤は、比較的に血管が少ない網状真皮でゆっくりと吸収されるか、または皮下領域へ拡散して、機能上は皮下投与/吸収と同じ結果を与えると予想される。このような事実上のまたは機能上の皮下投与が起こっていることは、皮下投与とここで皮内投与と特徴づけられたものとの間で、最高血漿中濃度に到達した時点で、それぞれのアッセイ時の濃度および曲線下の面積に差がないと報告されていることを説明すると考えられる。
【0009】
同様に、Bressolleらは、4mm針を使用した「皮内」注射と特徴づけられたものによって、セフタジジムナトリウム(sodium ceftazidime)を投与した(非特許文献5)。これによれば、皮膚表面から深さ4mmのところに注射され、事実上のまたは機能上の皮下注射が実施されたと考えられる。ただし、セフタジジムナトリウムは親水性で比較的に低分子量なので、この場合には良好な皮下吸収が予想されたであろう。
【0010】
皮内薬物送達装置として記述されたものについて別のグループが報告している(特許文献3)。注射は低速でなされるとされ、注射部位は、表皮の下のある領域、すなわち表皮と真皮の境界面かあるいは真皮または皮下組織の内部とすることを意図している。しかしこの文献は、真皮内への選択的投与を示唆する事項をなんら教示しておらず、このような選択的投与に起因する可能な薬物動態上の利点も示唆していない。
【0011】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/550197号明細書
【特許文献2】米国特許仮出願第60/497702号明細書
【特許文献3】米国特許第5007501号明細書
【特許文献4】国際公開第02/02179A1号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願第09/606909号明細書
【特許文献6】米国特許第5800420号明細書
【特許文献7】国際公開第01/02178号パンフレット
【特許文献8】米国特許第6494865号明細書
【特許文献9】米国特許第6569143号明細書
【特許文献10】米国特許出願第417671号明細書
【特許文献11】米国特許出願第10/429973号明細書
【特許文献12】米国特許第5279586号明細書
【特許文献13】米国特許出願第09/027607号明細書
【特許文献14】国際公開第00/09135号パンフレット
【特許文献15】米国特許出願第10/299012号明細書
【特許文献16】米国特許第6019968号明細書
【特許文献17】米国特許第5985320号明細書
【特許文献18】米国特許第5985309号明細書
【特許文献19】米国特許第5934272号明細書
【特許文献20】米国特許第5874064号明細書
【特許文献21】米国特許第5855913号明細書
【特許文献22】米国特許第5290540号明細書
【特許文献23】米国特許第4880078号明細書
【特許文献24】国際公開第92/19244号パンフレット
【特許文献25】国際公開第97/32572号パンフレット
【特許文献26】国際公開第97/44013号パンフレット
【特許文献27】国際公開第98/31346号パンフレット
【特許文献28】国際公開第99/66903号パンフレット
【非特許文献1】Cleland et al, Curr. Opin. Biotechnol. 12: 212-219, 2001
【非特許文献2】Physiology, Biochemistry, and Molecular Biology of the Skin, Second Edition, L.A. Goldsmith, Ed., Oxford University Press, New York, 1991
【非特許文献3】Flynn et al., Chest 106: 1463-5, 1994
【非特許文献4】Autret et al., Therapie 46:5-8, 1991
【非特許文献5】Bressolle et al., J. Pharm. Sci. 82:1175-1178, 1993
【非特許文献6】the Physicians' Desk Reference (56th ed., 2002)
【非特許文献7】Fishman et al., 1985, Medicine, 2d Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia
【非特許文献8】Murphy et al., 1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books U.S.A., Inc., United States of America
【非特許文献9】Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co. N.J. current edition
【非特許文献10】Relevance of Tumor Models for Anticancer Drug Development (1999, eds. Fiebig and Burger)
【非特許文献11】Contributions to Oncology (1999, Karger)
【非特許文献12】The Nude Mouse in Oncology Research (1991, eds. Boven and Winograd)
【非特許文献13】Anticancer Drug Development Guide (1997 ed. Teicher)
【非特許文献14】Brunda, M., J. Exp. Med., 178: 1223-1230 (1993)
【非特許文献15】Leonard et al., Blood, 90: 2541-2548 (1997)
【非特許文献16】Cordaro, T., J. Immunology, 168: 651-660 (2002)
【非特許文献17】Fogler et al., J. Immonology, 161: 6014-6021 (1998)
【非特許文献18】Gao et al., J. Exp. Med., 198(3): 4330442 (2003)
【非特許文献19】Harada et al., Int. J. Cancer, 75: 400-405 (1998)
【非特許文献20】Jenne et al., Cancer Research, 60: 4446-4452 (2000)
【非特許文献21】Park et al., J. Immunology, 170: 1197-1201(2003)
【非特許文献22】Tannenbaum et al., J. Immunology, 156: 693-699 (1996)
【非特許文献23】Tsung et al., J. Immunology, 158: 3359-3365 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、薬剤、特に治療薬を投与する効率的かつ安全な方法および装置が引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、1種または数種の生物活性作用物質、好ましくは治療薬を対象となる皮膚に投与するための方法であって、生物活性作用物質が対象となる皮膚の皮内区画に送達される方法を提供する。好ましい一実施形態では、本発明に従って送達される治療薬に、抗腫瘍薬、化学療法剤、抗体、抗生物質、抗血管新生薬、抗炎症薬および免疫療法薬が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0014】
本発明は、皮内区画に送達された作用物質が、局所リンパ系に迅速に輸送され、全身に分布し、より深い組織に分布するという発明者の発見に部分的に基づく。本発明に基づく治療薬の皮内送達は、真皮の静脈網とリンパ管網の両方に直接にアクセスすることができ、固有の全身薬物動態学的結果を提供することができる。これらの脈管網にアクセスすることによって、改善された臨床的有用性および治療効力を含む治療上の利点を達成することができる。ただし、治療上の利点はこれらに限定されるわけではない。具体的には、皮内区画へ治療薬を投与すると、腹腔内送達を含む他の薬物送達法に比べて治療効果が高まることを発明者は見出した。
【0015】
具体的な一実施形態では、本発明が、抗腫瘍薬、化学療法剤、抗体、抗生物質、抗血管新生薬、抗炎症薬、免疫療法薬および抗ウイルス薬を含む治療薬を送達するための改良された方法であって、改善された臨床的有用性および治療効力を有する方法を提供する。
【0016】
本発明の方法に従って投与された治療薬などの生物活性作用物質は、真皮の静脈網とリンパ管網の両方を通して迅速に輸送される。本発明の方法に従って送達された治療薬は、皮内区画内に置かれ、高い生体利用効率で投与部位のリンパ組織に分配され、続いてより大きく広がったリンパ管送達によって全身循環に分配される。この治療薬送達方法は、癌腫瘍成長および転移、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、免疫障害ならびに代謝障害を含む障害を、両方の脈管網を利用して治療するのに特に有用である。ただし、障害はこれらに限定されるわけではない。
【0017】
本発明に基づく治療薬の皮内送達は、真皮の静脈網とリンパ管網の両方に直接にアクセスすることができ、固有の全身薬物動態学的結果を提供することができる。腫瘍などの標的の近傍のこれらの脈管網にアクセスすることによって、治療上の利点を達成することができる。皮内投与された治療薬はさらに、リンパ管網が介在する免疫細胞にアクセスすることもできる。皮内送達された治療薬はさらに、多くの現行の治療と同様の方法で、全身に分配され、広範囲に散在する部位および器官に到達するという追加の利益を提供する。
【0018】
本発明は、皮膚組織、リンパ組織(例えばリンパ節)、粘膜組織、生殖組織、頚部組織、膣組織、および異なるタイプの組織からなり特定の機能を実行する身体の任意の部分(すなわち器官、例えば肺、脾臓、大腸、胸腺)を含む特定の組織に対する生物活性作用物質の生体利用効率を高める改良された方法を提供する。ただし、組織および器官はこれらに限定されるわけではない。いくつかの実施形態では、組織が、環境と相互作用し、または環境にアクセス可能な任意の組織、例えば皮膚、粘膜組織を含む。本発明が包含する他の組織には、血液リンパ系(Haemolymphoid system)、リンパ組織{例えば上皮関連リンパ組織および粘膜関連リンパ組織すなわちMALT[MALTはさらに、器官形成性(organized)粘膜関連リンパ組織(O−MALT)と散在性(diffused)リンパ組織(D−MALT)とに分けることができる]}、1次リンパ組織(例えば胸腺および骨髄)、2次リンパ組織[例えばリンパ節、脾臓、消化組織、呼吸組織および尿生殖組織(Urigenital)]などがある。ただし、これらに限定されるわけではない。2次MALTには、消化管関連リンパ組織(GALT)、気管支関連リンパ組織(BALT)および尿生殖器系が含まれることを当業者は理解するであろう。具体的にはMALTには、リンパ節;脾臓;口蓋(palentine)扁桃線、鼻咽頭扁桃線などの上皮表面に関連した組織;小腸、ならびに呼吸器系及び尿生殖器系の種々の小節におけるパイヤー斑;皮膚および眼の結膜が含まれる。O−MALTには、扁桃線(口蓋、舌、鼻咽頭および耳管)の咽頭周囲リンパ輪、食道小節、ならびに、十二指腸から肛門管までの消化管全体にわたって散らばる同様のリンパ組織が含まれる。
【0019】
本発明に基づく生物活性作用物質の皮内送達は、多くの利益の中でとりわけ、局所リンパ管への迅速な取込み、送達された作用物質の特定の組織に対する改善されたターゲティング(targeting)および蓄積、ならびに改善された全身および組織生体利用効率を提供する。このような利益は、抗腫瘍薬、抗体、抗生物質などの治療薬の送達のために特に有用である。本発明の方法に基づく作用物質の皮内送達は、皮内区画およびリンパ管区画ならびにより深い組織内に作用物質を蓄積し、これらの区画および組織での作用物質の迅速かつ生物学的に有意な濃縮化(concentration)をもたらす。
【0020】
皮内送達を使用した様々な治療薬の直接的リンパ管ターゲティングによって、用量の節減、薬効の増大、副作用の低減、転移の可能性の低減および生存期間の延長を含む有益な治療結果が実現される。本発明は、疾患を治療するための改良された方法を提供し、本発明のこれらの送達方法は、治療薬の全身送達および局所送達を可能にする。その結果、本発明は、蓄積される治療薬の量、組織生体利用効率、送達された治療薬のより速い発現および浄化率(clearance)を改善することによって、癌などの疾患を治療するための改良された方法を提供する。本発明は、疾患、特に癌の治療のために少なくとも1種の治療薬を投与するための方法であって、制御された速度、量および圧力で対象となる皮膚の皮内区画内に治療薬を送達し、もって、治療薬がID区画内に配置され、リンパ管構造によって取り込まれるようにすることを含む方法を提供する。
【0021】
本発明はさらに、蓄積される治療薬の量、組織生体利用効率、送達された治療薬のより速い発現および浄化率を改善することによって、身体の特定の組織および器官に局限された疾患、例えばそれらの組織および器官の感染、具体的には呼吸感染のような疾患の治療のための改良された方法をも提供する。本発明は、疾患、特に感染症の治療のために少なくとも1種の治療薬を投与するための方法であって、治療薬が皮内区画内に蓄積され、リンパ管構造によって取り込まれるように、制御された速度、量および圧力で対象となる皮膚の皮内区画内に治療薬を送達することを含む方法を提供する。
【0022】
本明細書で使用されるとき、皮内区画への送達または皮内送達は、血管がよく発達した乳頭真皮に生物活性作用物質がすぐに到達し、毛細血管および/またはリンパ管の中に迅速に吸収されて、全身にわたって生物学的に利用可能となるような方法で、生物活性作用物質を真皮内に投与することを意味する。これは、真皮の上部領域、すなわち乳頭真皮に生物活性作用物質を留置し、または生物活性作用物質が乳頭真皮内に直ちに拡散するように比較的に血管が少ない網状真皮の上部に生物活性作用物質を留置することによって達成することができる。乳頭真皮の下の網状真皮内にあり、真皮と皮下組織との間の境界面からは十分に上方にあるこの真皮区画への生物活性作用物質の制御された送達は、(乳頭真皮中の)(障害のない)微細毛細血管床および微細毛細リンパ管床への生物活性作用物質の効率的な(外側へ向かう)移動を可能にするはずであり、生物活性作用物質はそこで、他の皮膚組織区画によって移動中に取り込まれることなくこれらの微細毛細管を通して吸収され、全身に循環される。いくつかの実施形態では、生物活性作用物質を主に、少なくとも約0.3mm、より好ましくは少なくとも約0.4mm、最も好ましくは少なくとも約0.5mmの深さで、約2.5mmまで、より好ましくは約2.0mmまで、最も好ましくは約1.7mmまでの深さに留置することによって、生物活性作用物質は迅速に吸収される。特定の作用機構によって結び付けようとする意図はないが、生物活性作用物質を主に、これよりも深く、かつ/あるいは網状真皮の下部に留置すると、血管の少ない網状真皮または皮下区画で生物活性作用物質がゆっくりと吸収されるので、リンパ管による生物活性作用物質の取込みの効果が低下する可能性がある。
【0023】
本発明の方法に基づく生物活性作用物質のID送達に関連した改良された利益は、微小装置ベースの注射システムだけでなく、他の伝達方法、例えば、流体または粉末のID区画内への無針(needle−less or need-free)のバリスティック・インジェクション(ballistic injection);微小装置を通した強化されたイオン導入法(ionotophoresis);流体、固体または他の投薬形の皮膚内への直接配置などを使用して達成することができる。特定の実施形態では、生物活性作用物質の投与が、対象となる皮膚の皮内区画内に針またはカニューレを挿入することによって達成される。
【0024】
3.1 定義
本明細書で使用されるとき、「皮内」(intradermal)とは、血管がよく発達した乳頭真皮に生物活性作用物質がすぐに到達し、毛細血管および/またはリンパ管の中に迅速に吸収されて、全身にわたって生物学的に利用可能となるような方法で、生物活性作用物質を真皮内に投与することを指す。これは、真皮の上部領域(すなわち乳頭真皮)に、または比較的血管が少ない網状真皮の上部に、生物活性作用物質を留置し、もって、該物質が乳頭真皮内に直ちに拡散するようにすることで達成することができる。乳頭真皮の下の網状真皮内にあり、真皮と皮下組織との間の境界面からは十分に上方にあるこの真皮区画への生物活性作用物質の制御された送達は、(乳頭真皮内の)(損傷を受けていない)微細毛細血管床および微細毛細リンパ管床への生物活性作用物質の効率的な(外側へ向かう)移動を可能にするはずであり、生物活性作用物質はそこで、他の皮膚組織区画によって移動中に取り込まれることなく、これらの微細毛細管を通して体循環中に吸収される。いくつかの実施形態では、生物活性作用物質を主に、少なくとも約0.3mm、より好ましくは少なくとも約0.4mm、最も好ましくは少なくとも約0.5mmの深さから、約2.5mm以下、より好ましくは約2.0mm以下、最も好ましくは約1.7mm以下の深さに留置することによって、生物活性作用物質は迅速に吸収される。特定の作用機構によって束縛される意図はないが、生物活性作用物質を主に、これよりも深く、かつ/あるいは網状真皮のより浅い部分またはSC区画内に留置すると、リンパ管による取込みの効果が劣る結果となろう。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「皮内送達」(intradermal delivery)とは、それぞれその全体が参照によって本明細書に組み込まれるPettisらの特許文献4(PCT/US01/20782)および特許文献5によって記述されているとおり、皮内区画への作用物質の送達を意味する。
【0026】
本明細書で使用されるとき、皮下送達(subcutaneous delivery)とは、深さ2.5mm超のところの対象となる皮膚の皮下層内に作用物質を配置することを指す。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「薬物動態、薬力学および生体利用効率」(pharmacokinetics,phamacodynamics and bioavailability)とは、Pettisらの特許文献4(PCT/US01/20782、優先日2000年6月29日)によって記述されているとおりである。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「改善された薬物動態」(improved pharmocokinetics)とは、所与の作用物質投与量に関して、従来の投与法と比べたときの、生体利用効率の増大、遅延時間(Tlag)の短縮、Tmaxの短縮、より迅速な吸収速度、より迅速な発現および/またはCmaxの増大を意味する。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「生体利用効率」(bioavailability)とは、投与された所与の作用物質投与量のうち血液区画に到達した量の合計を意味する。これは一般に、濃度対時間プロットの曲線下面積として測定される。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「組織」(tissue)とは、協力して機能を果たす細胞群または細胞層を指し、これには、皮膚組織、リンパ組織(例えばリンパ節)、粘膜組織、生殖組織、頚部組織、膣組織、その他異なるタイプの組織からなり特定の機能を果たす身体の部分、すなわち器官が含まれ、該器官には肺、脾臓、大腸、胸腺が含まれる。ただし、組織および器官はこれらに限定されるわけではない。本明細書で使用されるとき、組織は、環境と相互作用し、または環境にアクセス可能な任意の組織、例えば皮膚、粘膜組織を含む。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「組織生体利用効率」(tissue−bioavailability)とは、生体内(in vivo)の特定の組織内で生物学的に利用可能な作用物質の量を意味する。これらの量は一般に、例えば結合、標識化、検出、輸送、安定性、生物学的効果、あるいは診断および/または治療に有用な測定可能な他の特性に関係しうる活性として測定される。これに加えて「組織生体利用効率」の定義はさらに、特定の組織内での使用に用いることのできる作用物質の量を含むことを理解されたい。「組織生体利用効率」には、特定の組織に蓄積された作用物質の総量、特定の組織に与えられた作用物質の量、特定の組織の質量/体積あたりの蓄積された作用物質の量、および特定の組織の特定の質量/体積中に単位時間あたりに蓄積された作用物質の量が含まれる。組織生体利用効率は、生体内の特定の組織あるいは組織の集合、例えば身体の脈管構造および/または様々な器官(すなわち、異なるタイプの組織からなり、特定の機能を果たす身体の部分。その例には脾臓、胸腺、肺、リンパ節、心臓および脳が含まれる)を構成する組織あるいは組織の集合、の中で利用可能な作用物質の量を含む。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「遅延時間」(lag time)とは、作用物質の投与と、測定または検出可能な血中または血漿中濃度に達した時点との間の遅延を意味する。Tmaxとは、作用物質の最高血中濃度に達するまでの時間を表す値であり、Cmaxとは、所与の用量および投与法で到達する最高血中濃度である。発現時間は、Tlag、TmaxおよびCmaxの関数であり、これらのパラメータはすべて、生物学的効果を実現するのに必要な血中(または標的組織)濃度を達成するのに要する時間に影響を与える。TmaxおよびCmaxは、グラフによって表現された結果の目視によって決定することができ、これらは、作用物質の2種類の投与法を比較するための十分な情報を提供することができることが多い。しかし、これらの数値は、数学モデルおよび/または当業者に知られている他の手段を使用した動態解析によってより正確に決定することができる。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「従来の送達」(conventional delivery)とは、皮下送達と同様のまたは皮下送達よりも遅い改善された生物学的動態および生物学的動力学を有し、あるいは有すると考えられる、任意の物質の任意の送達法を意味する。従来の送達には例えば、Grossの特許文献6に記載されている方法などの皮下、イオン導入および皮内送達法が含まれる。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「障害」(disorder)と用語「疾患」(disease)とは、対象の状態を指すために交換可能に使用される。疾患は、身体機能、系または器官の一切の中断、停止または障害を含む。
【0035】
本明細書で使用されるとき、用語「癌」(cancer)とは、異常な無制御の細胞成長に起因する新生物または腫瘍を指す。本明細書で使用されるとき、癌は明示的に白血病およびリンパ腫を含む。用語「癌」は、末梢部位に転移する可能性を有し、非癌化細胞の表現型形質とは異なる表現型形質、例えば軟寒天などの3次元培地でのコロニーの形成、あるいは3次元基底膜または細胞外基質プレパラートでの管状網またはクモの巣状基質(weblike matrices)の形成を示す細胞を伴う疾患を指す。非癌化細胞は軟寒天にコロニーを形成せず、3次元基底膜または細胞外基質プレパラートでははっきりと識別できる球状構造を形成する。癌細胞はその発達中に、様々な機構を介してではあるが、一組の特徴的な機能的能力を獲得する。このような能力には、細胞自然死(apoptosis)の回避、成長信号の自足、抗成長信号に対する無感受、組織浸潤/転移、限りない複製潜在性、および血管形成の持続が含まれる。用語「癌細胞」とは、前悪性癌細胞と悪性癌細胞の両方を包含する。いくつかの実施形態では、癌が、限局されたままの良性腫瘍を指す。他の実施形態では、癌が、近隣の体構造に浸潤し、これを破壊し、末端の部位に広がった悪性腫瘍を指す。他の実施形態では癌が特定の癌抗原に関連する。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「対象」(subject)と用語「患者」(patient)とは交換可能に使用される。本明細書で使用されるとき、対象は、好ましくは非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ネズミなど)、霊長類(例えばサルおよびヒト)などの哺乳類であり、最も好ましくはヒトである。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「治療有効量」(therapeutically effective amount)とは、疾患または障害を治療しまたは処置するのに十分な治療薬の量を指す。治療有効量は、疾患の発症を遅らせまたは最小限に抑える、例えば癌の広がりを遅らせまたは最小限に抑えるのに十分な治療薬の量を指すことができる。治療有効量はさらに、疾患の治療または処置において治療上の利益を提供する治療薬の量を指すこともできる。さらに、本発明の治療薬に関する治療有効量は、疾患の治療または処置において治療上の利益を提供するための、単独で使用される治療薬の量、または他の治療と組み合わせて使用される治療薬の量を意味する。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「予防薬」(”prophylactic agent" and ”prophylactic agents”)とは、障害の予防、あるいは障害の再発または進展の予防に使用することができる任意の作用物質を指す。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「予防有効量」(prophylactically effective amount)とは、過剰増殖性の疾患、特に癌の再発または進展を予防するのに十分な予防薬の量、あるいは、過剰増殖性の疾患の素因を持つ患者、例えば癌の遺伝的素因を持つ患者または以前に発癌物質に暴露された患者を含む患者におけるこのような疾患の発生を予防するのに十分な予防薬の量を指すことができる。ただし、患者はこれらに限定されるわけではない。予防有効量はさらに、疾患の予防において予防上の利益を提供する予防薬の量をも指すことができる。さらに、本発明の予防薬に関する予防有効量は、疾患の予防において予防上の利益を提供するための、単独で使用される予防薬の量、または他の作用物質と組み合わせて使用される予防薬の量を意味する。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「治療」(”treat”,”treating” and ”treatment”)とは、疾患または障害の症状の根絶、軽減または改善を指す。いくつかの実施形態では、治療とは、1種または数種の治療薬の投与に起因する、原発性、限局性または転移性癌組織の根絶、除去、変異または制御を指す。ある種の実施形態では、このような用語が、癌を持つ対象に1種または数種の治療薬を投与することによって、癌の進展を最小限に抑えまたは遅らせることを指す。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「処置」(”manage”,”managing” and ”management”)とは、予防または治療薬の投与によって対象が得る有益な効果のうち、この投与によって疾患の治癒には至らないものを指す。ある種の実施形態では、疾患を「処置」して疾患の進行または悪化を防ぐために、対象に、1種または数種の予防または治療薬が投与される。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「予防」(”prevent”,”preventing” and ”prevention”)とは、予防または治療薬の投与に起因する、対象の障害の1つまたは複数の症状の再発または発症の予防を指す。
【0043】
本明細書で使用されるとき、句「副作用」(side effects)は、予防または治療薬の望ましくない作用および有害作用を包含する。有害作用は常に望ましくないが、望ましくない作用が常に有害とは限らない。予防または治療薬に起因する有害作用は、有害であり、または不快であり、または危険である可能性がある。化学療法による副作用には、便秘、神経および筋肉作用、腎臓および膀胱の一時的または永続的な損傷、インフルエンザ様症状、体液貯留、ならびに一時的または永続的な不妊はもとより、早発性および遅発性の下痢、鼓腸などの胃腸毒性、悪心、嘔吐、食欲不振、白血球減少、貧血、好中球減少、衰弱、腹部痙攣、発熱、痛み、体重減少、脱水、脱毛、呼吸困難、不眠、めまい、粘膜炎、口内乾燥(xerostomia)、腎不全が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。放射線治療による副作用には、疲労、口内乾燥(dry mouth)および食欲不振が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。生物療法/免疫療法による副作用には、投与部位の発疹または腫脹、発熱、悪寒、疲労などのインフルエンザ様症状、消化管の問題、およびアレルギー反応が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。ホルモン療法による副作用には、悪心、受胎能の問題、うつ、食欲不振、眼の問題、頭痛および体重の変動が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。患者が一般的に経験するこの他の望まれない作用は当技術分野において数多く知られており、これらについては例えばその全体が参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献6を参照されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明は、1種または数種の生物活性作用物質、好ましくは治療薬を対象となる皮膚に投与するための方法であって、生物活性作用物質が対象となる皮膚の皮内区画に送達される方法を提供する。本発明は、このような治療薬が皮内区画に送達されると、これらが、皮下送達および筋肉内送達を含む従来の送達法に比べてより迅速に局所リンパ系へ輸送され、したがって本明細書に開示された利益を提供するという発明者による予想外の発見に、部分的に基づいている。特定の作用機構によって束縛される意図はないが、本発明の方法に従って送達された治療薬は、生体内で、局所リンパ系を通して全身の血液循環およびより深い組織環境へ輸送される。
【0045】
本発明は、生物活性作用物質の改良された送達方法を提供し、この方法は、多くの利益の中でとりわけ、局所リンパ管への迅速な取込み、特定の組織に対する改善されたターゲティング、すなわち特定の組織、すなわち協力して特定の機能を果たす細胞群または細胞層、への送達された治療薬の改善された蓄積、改善された全身生体利用効率、改善された組織生体利用効率、投与される作用物質の予め選択された量(volume)の改良された蓄積、改善された組織特異的な動態、迅速な生物学的および薬物的力学(PD)(biological and pharmaco−dynamics)、ならびに迅速な生物学的および薬物的動態(PK)(biological and pharmacokinetics)を提供する。本発明の方法のこのような利益は、特に治療薬の送達のために有用である。本発明の方法に基づく治療薬の皮内送達は、皮内区画およびリンパ管区画内に治療薬を蓄積し、したがってこれらの区画内に治療薬の迅速で生物学的に有意な濃縮を生み出す。
【0046】
皮内送達された治療薬は、特定の組織における改善された、組織生体利用効率を有し、この特定の組織には、粘膜層;皮膚組織;リンパ組織(例えばリンパ節);粘膜組織;生殖組織;頚部組織;膣組織;および異なるタイプの組織であって特定の機能を果たす身体の任意の部分すなわち器官(器官には肺、脾臓、大腸、胸腺が含まれる)が含まれる。ただし、組織および器官はこれらに限定されるわけではない。いくつかの実施形態では、組織が、環境と相互作用しまたは環境にアクセス可能な任意の組織、例えば皮膚、粘膜組織を含む。本発明が包含する他の組織には、血液リンパ系、リンパ組織{例えば上皮関連リンパ組織および粘膜関連リンパ組織すなわちMALT[MALTはさらに、器官形成性(organized)粘膜関連リンパ組織(O−MALT)と散在性(diffused)リンパ組織(D−MALT)とに分けることができる]}、1次リンパ組織(例えば胸腺および骨髄)、2次リンパ組織(例えばリンパ節、脾臓、消化組織、呼吸組織および尿生殖組織)などがある。ただし、これらに限定されるわけではない。2次MALTには、消化管関連リンパ組織(GALT)、気管支関連リンパ組織(BALT)および尿生殖器系が含まれることを当業者は理解するであろう。具体的にはMALTには、リンパ節;脾臓;口蓋扁桃線、鼻咽頭扁桃線などの上皮表面に関連した組織;小腸ならびに呼吸器系及び尿生殖器系の種々の小節におけるパイヤー斑;皮膚および眼の結膜が含まれる。O−MALTには、扁桃線(口蓋、舌、鼻咽頭および耳管)の咽頭周囲リンパ輪、食道小節、ならびに、十二指腸から肛門管までの消化管全体にわたって散らばる同様のリンパ組織;組織;および異なるタイプの組織からなり特定の機能を実行する身体の部分(すなわち器官、器官には肺、脾臓、大腸、胸腺が含まれ、器官はこれらに限定されるわけではない)が含まれる。
【0047】
本発明の方法に基づく治療薬の送達は、同じ治療薬が皮下(SC)または筋肉内区画に送達されたときに比べて、改善された組織生体利用効率を提供する。本発明の方法に従って送達された治療薬の改善された組織生体利用効率は、用量の節減、薬効の増大および副作用の低減を含む有益な治療結果をもたらすため、治療薬を送達するときに特に有用である。
【0048】
本発明の方法に従って送達された治療薬は皮内区画内に蓄積され、最初に投与部位に限局したリンパ組織に高い生体利用効率で分配され、続いてより大きく広がったリンパ管送達によって体循環に分配される。いくつかの実施形態では、本発明の方法が、より深い組織の疾患、障害または感染の治療に特に有効である。
【0049】
いくつかの実施形態では、ID送達後に特定の組織に蓄積される生物活性作用物質の濃度が、特定の組織50マイクログラムあたり約5ナノグラム、特定の組織50マイクログラムあたり10ピコグラム、特定の組織50マイクログラムあたり29ナノグラム、特定の組織50マイクログラムあたり10ピコグラムから特定の組織50マイクログラムあたり29ナノグラム、特定の組織50マイクログラムあたり10ピコグラムから特定の組織50マイクログラムあたり150ナノグラム、または特定の組織50マイクログラムあたり10ピコグラムである。
【0050】
本発明は、SC送達、筋肉内送達、静脈内送達、表皮送達などの皮内送達以外の経路によって送達されたときに比べて、生物活性作用物質が特定の組織においてより高い組織生体利用効率を有するように、生物活性作用物質、特に治療薬を皮内送達するための方法を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って送達された生物活性作用物質、特に治療薬が、静脈内に送達されたときに比べて、組織生体利用効率を含めて同様の生体利用効率を有する。
【0051】
本発明は、より深い組織区画、例えばSCに送達されたときに比べて、生物活性作用物質が特定の組織においてより高い、組織生体利用効率を有するように、生物活性作用物質、特に治療薬を皮内送達するための方法を含む。好ましくは、本発明の方法に従って送達される生物活性作用物質は、癌(例えばリンパ腫、白血病、乳癌、黒色腫、肺癌、腎臓癌および結腸直腸癌)、転移、腫瘍成長または感染症を含む疾患の治療、予防、発症または進行の遅延、あるいは疾患の管理のために投与される治療薬である。ただし、疾患はこれらに限定されるわけではない。
【0052】
本発明は、より深い組織区画、例えばSCに送達されたときに比べて生物活性作用物質がより高い治療効力を有するように、生物活性作用物質、特に治療薬を皮内送達するための方法を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って送達された生物活性作用物質、特に治療薬は、静脈内に送達されたときに比べて、同様の治療効力を有する。
【0053】
本発明は、少なくとも1種の治療薬を予め選択された用量で投与することを含む、疾患の治療、予防または管理方法であって、この予め選択された用量が、SC、IM、IVなどの他の送達経路によって従来送達されていた治療薬の用量に比べて、少なくとも半分、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1に低減される方法を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明が、治療が必要な、対象となるヒトの癌、癌転移または腫瘍成長を治療、予防または管理する方法であって、対象となるヒトの皮膚のID区画に治療薬を送達することを含む方法を含む。癌、癌転移または腫瘍成長の治療、予防または管理のための作用物質の皮内送達は、同じ作用物質がID送達以外の経路(例えばSC、IM、IV、表皮)によって送達されたときに比べて、腫瘍成長をより低減させる。いくつかの実施形態では、癌、癌転移または腫瘍成長の治療、予防または管理のための作用物質の皮内送達が、作用物質がID送達以外の経路によって送達されたときに比べて、ヒト対象の寿命の中央値を増加させる。
【0055】
本発明によって教示されるように皮内区画を直接の標的とすることは、皮下送達を含む生物活性作用物質の従来の送達方法に比べて、治療薬を含む該生物活性作用物質の効果のより迅速な発現、および組織生体利用効率を含むより高い生体利用効率を提供する。本発明の方法に従って送達された作用物質は、真皮の微細毛細血管および微細毛細リンパ管に選択的にアクセスする制御された皮内投与によって迅速に吸収され、全身に分配され、したがってそれらの作用物質はそれらの有益効果を、皮下投与などの従来の投与方法よりも迅速に発揮することができることを発明者は見出した。
【0056】
本明細書で使用されるとき、皮内区画への送達または皮内送達は、血管がよく発達した乳頭真皮に生物活性作用物質がすぐに到達し、毛細血管および/またはリンパ管の中に迅速に吸収されて、全身にわたって生物学的に利用可能となるような方法で、生物活性作用物質を真皮内に投与することを意味する。これは、真皮の上部領域、すなわち乳頭真皮に生物活性作用物質を留置し、または生物活性作用物質が乳頭真皮内に直ちに拡散するように比較的に血管が少ない網状真皮の上部に生物活性作用物質を留置することによって達成することができる。乳頭真皮の下の網状真皮内にあり、真皮と皮下組織との間の境界面からは十分に上方にあるこの真皮区画への生物活性作用物質の制御された送達は、(乳頭真皮の)(損傷を受けていない)微細毛細血管床および微細毛細リンパ管床への生物活性作用物質の効率的な(外側へ向かう)移動を可能にするはずであり、生物活性作用物質はそこで、他の皮膚組織区画によって移動中に取り込まれることなくこれらの微細毛細管を通して体循環中に吸収される。いくつかの実施形態では、生物活性作用物質を主に、少なくとも約0.3mm、より好ましくは少なくとも約0.4mm、最も好ましくは少なくとも約0.5mmの深さから、約2.5mm以下、より好ましくは約2.0mm以下、最も好ましくは約1.7mm以下の深さに留置することによって、生物活性作用物質は迅速に吸収される。特定の作用機構によって束縛される意図はないが、生物活性作用物質を主に、これよりも深く、かつ/あるいは網状真皮の下部に留置すると、血管の少ない網状真皮または皮下領域で生物活性作用物質がゆっくりと吸収されるので、リンパ管による生物活性作用物質の取込みの効果が劣る結果となろう。
【0057】
5.1 皮内投与の方法
本発明は、本明細書に記述され例示された治療薬または治療物質を対象となる皮膚の皮内区画に、好ましくは皮内区画を突き抜けることなく皮内区画を選択的かつ特異的に標的とすることによって皮内送達するための方法を含む。最も好ましい一実施形態では、皮内区画を直接の標的とする。送達すべき治療薬を含む製剤が調製されると、製剤は一般に、皮内区画送達用の注射装置、例えば注射器へ移される。本発明の方法に基づく本発明の製剤の送達は、皮内区画を特異的かつ選択的に標的とし、好ましくは直接の標的とすることによって、IMおよびSCを含む従来の送達法よりも、治療薬の治療的および臨床的効力を改善させる。本発明の皮内送達法は、改善された薬物動態、局所リンパ管への迅速な取込み、特定の組織に対する改善されたターゲティング、および改善された組織生体利用効率を含む利益および改善を提供する。もっとも、該利益及び改善はこれらに限られない。本発明の方法は、皮内区画内の改善された吸収取込みなど、改善された薬物動態を提供する。本発明の製剤はボーラス(bolus)としてまたは注入によって皮内空間に送達することができる。
【0058】
本発明は、SC送達、筋肉内送達、静脈内送達、表皮送達などの皮内送達以外の経路によって送達されたときに比べて,生物活性作用物質が特定の組織においてより高い組織生体利用効率を有するように、生物活性作用物質、特に治療薬を皮内送達するための方法を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って送達された生物活性作用物質、特に治療薬が、静脈内に送達されたときに比べて、組織生体利用効率を含め同様の生体利用効率を有する。
【0059】
本発明は、より深い組織区画、例えばSCに送達されたときに比べて,生物活性作用物質が特定の組織においてより高い組織生体利用効率を有するように、生物活性作用物質、特に治療薬を皮内送達するための方法を含む。好ましくは、本発明の方法に従って送達される生物活性作用物質は、癌(例えばリンパ腫、白血病、乳癌、黒色腫、肺癌、腎臓癌および結腸直腸癌)、転移、腫瘍成長または感染症を含む疾患の治療、予防、発症または進行の遅延、あるいは疾患の管理のために投与される治療薬である。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0060】
本発明は、より深い組織区画、例えばSCに送達されたときに比べて、生物活性作用物質がより高い治療効力を有するように、生物活性作用物質、特に治療薬を皮内送達するための方法を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って送達された生物活性作用物質、特に治療薬が、静脈内に送達されたときに比べて、同様の治療効力を有する。
【0061】
本発明は、少なくとも1種の治療薬を予め選択された用量で投与することを含む、疾患の治療、予防または管理方法であって、この予め選択された用量が、SC、IM、IVなどの他の送達経路によって従来通りに送達される治療薬の用量に比べて、少なくとも半分、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1に低減される方法を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明が、治療が必要な対象となるヒトの癌、癌転移または腫瘍成長を治療、予防または管理する方法であって、対象となるヒトの皮膚のID区画に治療薬を送達することを含む方法を含む。癌、癌転移または腫瘍成長の治療、予防または管理のための作用物質の皮内送達は、同じ作用物質がID送達以外の経路(例えばSC、IM、IV、表皮)によって送達されたときに比べて、腫瘍成長をより低減させる。いくつかの実施形態では、癌、癌転移または腫瘍成長の治療、予防または管理のための作用物質の皮内送達が、作用物質がID送達以外の経路によって送達されたときに比べて、対象となるヒトの寿命の中央値を増加させる。
【0063】
本発明によれば、直接皮内投与は、例えば皮内区画を標的として正確に狙うための、極微針ベースの注射および注入系または当業者に知られている他の手段を使用して達成することができる。具体的な装置には、図9〜11に例示された装置はもちろんのこと、いずれもその全体が参照によって本明細書に組み込まれる2002年1月10日公開の特許文献7、2002年1月10日公開の特許文献4、2002年12月17日発行の特許文献8および2003年5月27日発行の特許文献9に開示された装置が含まれる。マイクロカニューレおよび極微針に基づく方法および装置は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2000年6月29日出願の特許文献5にも記載されている。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる1999年10月14日出願の特許文献10に記載された装置および方法を使用した皮内送達に対して標準スチールカニューレを使用することもできる。これらの方法および装置は、カニューレの全長、または深さを制限するハブ機構から露出したカニューレの長さによって規定される限界貫入深さ(一般に10μmから2mm)を有する小ゲージ(30G以下)の「マイクロカニューレ」を通した作用物質の送達を含む。
【0064】
本発明の皮内送達の対象は哺乳類、好ましくはヒトである。本発明の方法に従って送達される生物活性作用物質は、通常は長さ約300μmから約5mmの針またはカニューレによって皮内区画内に送達することができる。針またはカニューレの長さが約300μmから約1mmであり、放出口が、対象となる皮膚の深さ1mmから3mmのところに挿入されることが好ましい。30から36ゲージ、好ましくは31〜34ゲージの小ゲージ針またはカニューレが使用されることが好ましい。針またはカニューレの放出口は、0.3mm(300um)から1.5mmの深さに挿入されることが好ましい。
【0065】
本発明によれば、直接皮内投与は、例えば皮内区画を標的として正確に狙う極微針ベースの注射および注入系または当業者に知られている他の任意の手段を使用して達成することができる。具体的な装置には、図9〜11に例示された装置はもちろんのこと、いずれもその全体が参照によって本明細書に組み込まれる2002年1月10日公開の特許文献7、2002年1月10日公開の特許文献4、2002年12月17日発行の特許文献8および2003年5月27日発行の特許文献9に開示された装置が含まれる。マイクロカニューレおよび極微針に基づく方法および装置は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2000年6月29日出願の特許文献5にも記載されている。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる1999年10月14日出願の特許文献10に記載された装置および方法を使用した皮内送達に対して標準スチールカニューレを使用することもできる。これらの方法および装置は、カニューレの全長、すなわち深さを制限するハブ機構から露出した部分のカニューレの全長によって規定される限界貫入深さ(一般に10μmから2mm)を有する小ゲージ(30G以下)の「マイクロカニューレ」を通した作用物質の送達を含む。
【0066】
本皮内投与法は、皮内空間を標的として正確に狙う極微針ベースの注射および注入系または他の手段を含む。この皮内投与方法は、微小装置ベースの注射手段だけではなく、流体または粉末の皮内空間内への無針バリスティック・インジェクション、Mantoux型皮内注射、微小装置を通した強化されたイオン導入、流体・固体または他の投薬形の皮膚内への直接蓄積などの他の送達方法も包含する。
【0067】
特定の一実施形態では、本発明の製剤が、Mantoux型皮内注射を使用して対象となる皮膚の皮内区画に投与される。例えばその全体が参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献3を参照されたい。特定の一実施形態では、本発明の製剤が、以下の例示的な方法を使用して対象の皮膚となる皮内区画に送達される。製剤を注射器、例えば20ゲージ針を有する1ml無ラテックス注射器の中に引き込み、注射器の充填が済んだ後、針を皮内投与用の30ゲージ針に取り替える。対象となる皮膚、例えばマウスの皮膚に、針の先端面取り部(bevel)を上に向けて可能な最も浅い角度で接近し、皮膚をきつく引っ張る。1回の注射量を5〜10秒かけてゆっくりと押し出し、典型的な「水泡(bleb)」を形成させ、続いて針をゆっくりと引き抜く。1つの注射部位だけを使用することが好ましい。注射量は100μl以下であることがより好ましい。これは1つには、注射量がこれよりも大きいと、周囲の組織空間、例えば皮下空間への漏れを増大させる可能性があるからである。
【0068】
本発明は、従来の知られているすべてタイプの注射針、カテーテルまたは極微針の使用を包含し、単独でまたは複数の針アレイとして使用される。本明細書で使用されるとき用語「針」(”needele” and ”needles”)は、すべてのこのような針状構造体を包含する。本明細書で使用されるとき用語「極微針」(”microneedles”)は、構造体が事実上円筒形であるときに、約30ゲージよりも小さい構造体、一般に31〜50ゲージの構造体を包含する。用語極微針が包含する非円筒形の構造体はしたがって同等の直径を有するものであり、これには角錐、長方形、八角形、くさび形および他の幾何形状が含まれる。
【0069】
本発明は、皮膚に直接に貫入して、真皮空間内の標的位置に本発明の製剤を直接に送達する、バリスティック流体インジェクション装置、粉末ジェット送達装置、圧電、電動、電磁気支援送達装置、ガス支援送達装置を含む。
【0070】
本発明の製剤が、対象となる皮膚の皮内空間を通り越してしまうことなく皮内空間内の所望の標的深さに侵入する限りにおいて、本発明の製剤を標的である皮内空間に送達する実際の方法は重要ではない。最適な実際の侵入深さは対象となる皮膚の厚さによって異なる。ほとんどの場合、皮膚の深さ約0.5〜2mmのところに侵入させる。皮内送達装置および方法の如何にかかわらず、本発明の方法が、本発明の製剤を少なくとも0.5mmから2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下、最も好ましくは1.7mm以下の深さのところを標的にすることが好ましい。いくつかの実施形態では、製剤が、角質層のすぐ下にあり、表皮および上部真皮を含む標的深さ、例えば深さ約0.025mmから約2.5mmのところに送達される。皮膚の特定の細胞を標的とするための好ましい標的深さは、標的とする具体的な細胞および具体的な対象となる皮膚の厚さによって異なる。例えばヒトの皮膚の真皮空間のランゲルハンス細胞(Langerhan’s cells)を標的とするためには、送達が少なくとも部分的に、ヒトにおいては一般に約0.025mmから約0.2mmの範囲にある表皮組織の深さを包含する必要があると考えられる。
【0071】
本発明に従って送達されまたは投与される製剤には、生体内形成賦形剤(in−situ forming vehicle)はもちろんのこと、薬剤として許容される希釈剤または溶媒に溶解した製剤溶液;懸濁液;ゲル;懸濁または分散させたマイクロ粒子、ナノ粒子などの微粒子が含まれる。
【0072】
他の好ましい実施形態では、本発明が、対象となる皮膚上の注射部位を選択すること、および生物活性作用物質、特に治療薬を送達装置から対象となる皮膚の中へ押し出す前に、対象となる皮膚上の注射部位を清浄化することを含む。この方法はさらに、生物活性作用物質、特に本発明の治療薬を送達装置に充填することを含む。この方法はさらに、リミッタ部(the limier portion)の皮膚接触面(skin engaging surface)を対象となる皮膚に押し付け、圧力を加え、それによって対象となる皮膚を伸ばし、生物活性作用物質を注入した後に針カニューレを皮膚から引き抜くことを含む。さらに、皮膚の中に先端(forward tip)を挿入するステップは、皮膚の深さ約1.0mmから約2.0mm、最も好ましくは深さ1.5mm+0.2〜0.3mmのところに先端を挿入することによって定義される。
【0073】
好ましい一実施形態では、動物の皮膚の中に先端を挿入するステップがさらに、皮膚に対して、約15度以内での概ね垂直な角度で、最も好ましくは皮膚に対して、約5度以内での概ね90度の角度で、皮膚の中に先端を挿入することによって定義され、皮膚接触面に対して固定された方位角はさらに概ね垂直として定義される。この好ましい実施形態では、リミッタが針カニューレを取り囲み、該リミッタは概ね平らな皮膚接触面を有する。さらに送達装置は、外筒と、外筒の中に受け入れられるプランジャとを有する注射器を含み、該プランジャは、送達装置から針カニューレの先端を通して作用物質を押し出すために押し下げることができる。
【0074】
好ましい一実施形態では、生物活性作用物質、特に治療薬を送達装置から押し出すことがさらに、第1の手で皮下注射針をつかみ、第2の手の人さし指でプランジャを押し下げ、第1の手で皮下注射針をつかみ、第2の手の親指で皮下注射針の上のプランジャを押し下げることによって作用物質を送達装置から押し出すことによって定義され、動物の皮膚の中へ先端を挿入するステップがさらに、リミッタで動物の皮膚を押圧することによって定義される。この方法はさらに、針カニューレおよびリミッタを含む針アセンブリを注射器の外筒の先端に取り付けるステップを含んでもよく、針アセンブリを取り付ける前に、外筒の先端からキャップを取り外すことによって外筒の先端を露出させるステップを含んでもよい。あるいは、対象となる皮膚の中へ針の先端を挿入するステップがさらに、第1の手で皮下注射針をつかむと同時に、動物の皮膚に対してリミッタを押し付け、それによって動物の皮膚を伸ばし、第1の手の人さし指でプランジャを押し下げることによって作用物質を押し出し、または第1の手の親指でプランジャを押し下げることによって作用物質を押し出すことによって定義される。この方法はさらに、作用物質が対象となる皮膚の中に注入された後で、対象となる皮膚から針カニューレの先端を引き抜くことを含む。さらにこの方法は、皮膚の好ましくは深さ約1.0mmから約2.0mm、最も好ましくは1.5mm+0.2〜0.3mmのところに先端を挿入することを含む。
【0075】
この皮内投与法のある特徴が臨床的に有用なPK/PDおよび用量の正確さを提供することが分かった。例えば、皮膚の中に針の放出口を留置することが、PK/PDパラメータにかなりの影響を及ぼすことが分かった。斜端を有する従来の針または標準ゲージの針の放出口は比較的に大きな露出高さ(放出口の垂直高さ)を有する。皮内区画内の所望の深さに針先が留置されても、針放出口の大きな露出高さのため、送達された作用物質は皮膚表面に近いずっと浅い位置に蓄積される。その結果、作用物質は、皮膚によって生み出される背圧および注射または注入による流体の累積によって高まった圧力によって皮膚から流れ出し、皮下組織などの皮膚のより圧力の低い領域に漏れやすい。すなわち、より深い位置で、より大きな露出高さを有する針放出口は依然として効率的に密閉されるのに対し、皮内区画内のより浅い深さに置かれたときに同じ露出高さを有する放出口は効率的には密閉されない。一般に、針放出口の露出高さは0から約1mmである。0mmの露出高さを有する針放出口は先端面取り部を持たず、針放出口は針の先端にある。この場合、放出口の深さは針の貫入深さと同じである。先端面取り部または針の側面の開口によって形成された針放出口は、測定可能な露出高さを有する。単一の針が真皮区画に作用物質を送達するのに適した2つ以上の開口または放出口を有することができることを理解されたい。
【0076】
注射または注入の圧力を制御することによって、ID投与中に生じる高い背圧を克服できることも分かった。液体界面に一定の圧力を直接にかけることによって、より一定の送達速度を達成することができ、これにより、吸収を最適化し、改善された薬物動態を得ることができる。送達速度および送達体積を制御してさらに、送達部位における膨疹(wheal)の形成を防ぎ、背圧が真皮アクセス手段を皮膚から押し出し、かつ/または皮下領域に押し込むことを防ぐことができる。これらの効果を得るための適当な送達速度および送達体積は、通常の技能のみを使用して実験的に決定することができる。複数の針間の大きな間隔は、より広い流体分布および高い送達速度またはより大きな流体体積を可能にする。
【0077】
本発明を実施するのに有用な投与方法には、ヒトまたは動物対象への生物活性作用物質のボーラス送達および注入送達(bolus and infusion delivery)が含まれる。ボーラス投与(bolus dose)は、比較的に短い時間、一般に約10分未満の間に単一の体積単位として送達される1回の投与である。注入投与(infusion administration)は、一定または可変の選択された速度で、比較的に長い時間、一般に約10分を超える時間の間に流体を投与することを含む。作用物質を送達するため、対象となる皮膚に隣接して、皮内区画内への直接的な標的アクセスを提供する真皮アクセス手段が留置され、皮内区画内へ作用物質が送達または投与され、そこで作用物質は局所的に作用し、または血流によって吸収され、全身に分配されることができる。真皮アクセス手段は、送達すべき作用物質を収容する貯蔵容器に接続することができる。
【0078】
貯蔵容器から皮内区画内への送達は、送達すべき作用物質に外圧または他の駆動手段を適用せずに受動的に、および/または圧力または他の駆動手段を適用して能動的に実施することができる。好ましい圧力発生手段の例には、ポンプ、注射器、ペン(pens)、エラストマー膜、ガス圧、圧電、電動、電磁気または浸透ポンピング、皿ばね(Belleville spring)またはワッシャ、あるいはこれらの組合せが含まれる。所望により、作用物質の送達速度を圧力発生手段によって可変に制御することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明が、皮膚内の2つ以上の区画または深さに送達する利点を組み合わせることによって、投与された生物活性作用物質の薬物動態を制御するための方法を含む。具体的には本発明は、生物活性作用物質、特に本明細書に記載された治療薬を浅いSCおよびID区画に送達して、ID送達によって達成される同様の部分と、SC送達によって達成される同様の部分とを有する混成pK分析結果(hybrid pK profile)を得るための方法を提供する。これは、作用物質のより低い長期にわたる循環レベルはもちろんのこと、生物活性作用物質、特に治療薬の迅速で高いピーク発現レベルを提供する。このような方法が、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2003年5月6日出願の特許文献11に開示されている。いくつかの実施形態では、生物活性作用物質、特に治療薬が、2つ以上の区画を含む1つまたは複数の部位に送達される。他の実施形態では、生物活性作用物質、特に治療薬が、それぞれが1つまたは複数の区画を含む複数の部位に送達される。
【0080】
本発明の方法は、生理学的モデル、規則ベースのモデル(rules based methods)または移動平均法(moving average methods)、治療薬物動態モデル、モニタリング信号処理アルゴリズム、予測制御モデルあるいはこれらの組合せを含む論理構成要素を有するアルゴリズムを使用した、生物活性作用物質、特に治療薬の制御された送達を含む。
【0081】
本発明の方法は、改善されたPK結果を達成するために、浅いSC送達とID送達とを組み合わせた方法を含む。このような結果は1つの送達区画だけを使用していては達成できない。適当な装置構成および/または投薬法による複数部位への蓄積は、固有の有益な結果を達成することができる。根底にある技術原理は、極微針送達のPK結果は、投与された流体の蓄積部の深さおよびパターンに固有であり、このような蓄積は、装置設計およびエンジニアリングによって、またはID区画の流体過負荷(fluid overloading)などの技法によって機械的に制御することができるというものである。
【0082】
さらに、本発明は、皮下注射用の長さ5mm未満の針(または極微針)を含む。深さ約3mmへの浅いSC送達は、従来の技法を使用した深いSC送達とほとんど同じPKを与える。浅いSC送達のみを利用してより制御された分析結果を得ることはこれまで利用されてこなかった。実際、以前には、5mm未満の深さはSC区画の範囲に含まれないと考えられていた。
【0083】
装置設計または技法による複合送達は、2相性のまたは複合した動的分析結果(biphasic or mixed kinetic profiling)を与える。装置長さ30の小さな相違(1mm対2mm対3mm)はPK結果の劇的な相違をもたらす。ID区画内に針の端を置くとみなされることの多い針の長さを用いてSCに似た分析結果を得ることができる。浅いSC送達はPK結果において、標準のSC送達よりも一貫しており、均一である。標的組織深さの限界は、とりわけ、針またはカニューレ放出口が挿入される深さ、放出口の露出高さ(垂直高さ)、投与される体積、および投与速度によって制御される。適当なパラメータは当業者が過度の実験なしで決定することができる。
【0084】
5.1.1 皮内投与用の装置
本発明の治療薬を含む生物活性作用物質は、当技術分野で知られている任意の装置および方法、またはいずれもその全体が参照によって本明細書に組み込まれる2002年1月10日公開の特許文献7、2002年1月10日公開の特許文献4、2002年12月17日発行の特許文献8および2003年5月27日発行の特許文献9に開示された任意の装置および方法を使用して投与される。
【0085】
本発明の方法に基づく皮内投与用の装置は、皮内空間内の所望の深さへの皮膚貫入を制御する構造手段を有することが好ましい。これは、最も典型的には、針が取り付けられた支持構造または基盤(platform)の形態をとることができる、真皮アクセス手段の軸と結合した拡張領域またはハブの手段によって達成される。真皮アクセス手段としての極微針の長さは、製造プロセス中に容易に変更され、普通は2mm未満に製作される。注射または注入中の痛みおよび他の感覚をさらに軽減させるため、極微針は非常に鋭く、ごく小さなゲージ値を有する。本発明ではこれらを別個の単一内腔の極微針として使用し、あるいは、送達速度または所与の時間内に送達される物質の量を増大させるために、複数の極微針を直線配列または2次元配列に組み立てまたは製造することができる。針はその中の物質を、針の端部または針の側面から放出し、あるいはその両方から放出することができる。極微針は、ホルダー(holders)、ハウジング(housings)などの様々な装置に組み込むことができ、このような装置がさらに貫入深さを制限する働きをしてもよい。本発明の真皮アクセス手段はさらに、送達前の物質を含む貯蔵容器、あるいは薬物または他の物質を圧力をかけて送達するためのポンプまたは他の手段を含むことができる。あるいは、真皮アクセス手段を収容する装置を、外部のこのような追加の構成要素に連結してもよい。
【0086】
この皮内投与法は、皮内空間を標的として正確に狙う、極微針ベースの注射および注入系、または他の手段を含む。この皮内投与法は、微小装置ベースの注射手段だけではなく、流体または粉末の皮内空間内への無針バリスティック・インジェクション、微小装置を通した強化されたイオン導入電流、流体・固体または他の投薬形の皮膚内への直接蓄積などの他の送達方法も包含する。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明が、皮内注射を実施する際に使用される針アセンブリを含む送達装置を提供する。針アセンブリは、注射器などの事前充填可能な容器に取り付けることができるアダプタを有する。針アセンブリはこのアダプタによって支持され、アダプタから外側に延びた前端を備える中空体を有する。リミッタが針を取り囲み、アダプタから針の前端に向かって延びている。該リミッタは、ヒトなどの動物の皮膚に受け入れられるように適合された皮膚接触面を有する。針の前端は皮膚接触面から、選択された距離だけ延び、それによってリミッタは、針が動物の皮膚に貫入することができる量または深さを制限する。
【0088】
特定の一実施形態では、本発明の方法で使用される皮下注射針アセンブリが、治療薬を含む生物活性作用物質を対象となる皮膚、好ましくはヒト対象の皮膚内へ送達する改良された方法を対象とする本発明を実行するのに必要な要素を備え、この方法が、送達装置を用意するステップを含み、この装置が、前方に針先(forward needle tip)を有しかつ送達装置内に含まれる作用物質と流体連絡した針カニューレと、針カニューレを取り囲むリミッタ部とを含み、このリミッタ部が皮膚接触面を備え、針カニューレの針先が、リミッタ部の皮膚接触面から約0.5mmから約3.0mm延びており、針カニューレが、リミッタ部の皮膚接触面の平面に対して固定された方位角を有し、さらに、動物の皮膚の中に針先を挿入するステップと、皮膚の表面をリミッタ部の皮膚接触面と係合させ、もって、リミッタ部の皮膚接触面が、動物の皮膚の真皮層の中への針カニューレ先端の貫入を制限するステップと、針カニューレの先端を通して薬物送達装置から動物の皮膚内へ物質を押し出すステップとを含む。
【0089】
特定の一実施形態では、本発明が、図9〜図10に開示された薬物送達装置を含み、これらの図は、皮内注射を実施する本発明の方法を実施するために使用することができる薬物送達装置の一例を示す。図9〜10に示された装置10は、注射器外筒60に取り付けることができる針アセンブリ20を含む。その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献12、特許文献13および特許文献14に開示されているタイプのペンを含め、この他の形態の送達装置を使用してもよい。
【0090】
針アセンブリ20は、針カニューレ24を支持するハブ22を含む。図9に最もよく示されているとおり、リミッタ26が針カニューレ24を概ね取り囲むように、リミッタ26がハブ22の少なくとも一部分を受け入れる。
【0091】
ハブ22の一端30は注射器の受入部32に固定することができる。設計された針アセンブリを備える様々なタイプの注射器を、本発明に従って皮内送達する物質を収容するために使用することができ。そのいくつかの例が後に示される。ハブ22の反対端は、リミッタ26の中の当接面(abutment surfaces)36に対して入れ子式に受け入れられる延長部(extensions)34を含むことが好ましい。構造的保全性を提供し、針アセンブリ20の取扱いを容易にするため、リミッタ26上に複数のリブ(ribs)38が提供されることが好ましい。
【0092】
構成要素のサイズを適切に設計することによって、針24の前端または先端40とリミッタ26上の皮膚接触面42との間の距離「d」を厳密に制御することができる。距離「d」は約0.5mmから約3.0mmであることが好ましく、約1.5mm±0.2mm〜0.3mmであることが最も好ましい。針カニューレ24の前端40が皮膚接触面42からこの範囲の距離だけ先に延びているときに、皮内注射が確保される。このとき針は、動物の一般的な真皮層を越えてさらに貫入することができないからである。一般に、皮膚の外層である表皮は50〜200ミクロンの厚さを有し、皮膚の内層であるより厚い真皮は1.5〜3.5mmの厚さを有する。真皮層の下には皮下組織[subcutaneous tissue、時に皮下組織層(hypodermis layer)とも呼ばれる]および筋肉組織がこの順に存在する。
【0093】
図9に最もよく示されているとおり、リミッタ26は、そこから針カニューレ24の前端40を突き出すための開口44を含む。開口44と前端40の寸法関係は、特定の状況の要件に応じて制御することができる。図示の実施形態では、動物の皮膚に対して針アセンブリ20を安定に留置するために、皮膚接触面42が全体に平らないし平坦であり、かつ連続している。具体的には示されていないが、安定性を高め、または針先40への針保護体(needle shield)の取付けを容易にするために、この全体に平らな皮膚接触面42に、リブの形態の隆起した部分またはみぞの形態のへこんだ部分を持たせると有利な場合がある。さらに、リミッタ26の側面に沿ったリブ38を、皮膚接触面42の平面を越えて延ばしてもよい。
【0094】
皮膚接触面42の形状または輪郭の如何にかかわらず、対象となる皮膚に対する注射器の安定化を容易にするため、皮膚と接触する十分に全体に平らないし平坦な表面積を含む実施形態が好ましい。最も好ましい配置では、皮膚接触面42が、皮膚表面に対して概ね垂直な向きに注射器を維持することを容易にし、注射中に皮膚に対して圧力を加えることを容易にする。したがって、この好ましい実施形態では、リミッタが少なくとも5mmの寸法または外径を有する。主要な寸法は、用途およびパッケージングの制約に左右されるが、都合のよい直径は15mm未満、より好ましくは11〜12mmである。
【0095】
図9および10は、ハブ22がリミッタ26とは別個に作られたツーピース型のアセンブリを示しているが、本発明とともに使用される装置はこのような配置に限定されないことに留意することは重要である。図9および10に示した例の代替は、1つのプラスチック材料片からハブ22とリミッタ26を一体に形成することである。さらに、接着剤または他の方法で、ハブ22をリミッタ26に、図10に示した位置で固定して組み立てた後に、針アセンブリ20が1つのユニットとなるようにすることも可能である。
【0096】
ハブ22とリミッタ26とを有することは、皮内針が実際の製造に向いたものなるという利点を提供する。好ましい針サイズは、一般に30ゲージまたは31ゲージ針として知られている小ゲージ皮下注射針である。このような小径針は、動物の真皮層を越えて過度に貫入することを防ぐために針を短くするという課題を与える。リミッタ26およびハブ22は、注射中に個体の組織に貫入する針の有効長よりもはるかに長い全長を有する針24を利用することを容易にする。本明細書に従って設計された針アセンブリでは、製造および組立てプロセス中に相対的に長い針を取り扱うことができるため、製造が強化され、一方で、皮内注射を達成するために短い針を使用する利点も得られる。
【0097】
図11は、装置10を形成するために注射器60などの薬物容器に固定された針アセンブリ20を示している。当技術分野では知られているように、全体に円筒形の注射器胴体62はプラスチックまたはガラスから製作することができる。注射器胴体62は、注射中に投与される物質を収容するための貯蔵容器64を提供する。当技術分野で知られているとおり、プランジャ棒66は、一端に手動活性化フランジ(manual activation flange)68を有し、反対端にストッパ70を有する。プランジャ棒66を貯蔵容器64の中で手動で移動させると、希望どおりに貯蔵容器64内の物質が針の端40から押し出される。
【0098】
知られている様々な方法で、ハブ22を注射器胴体62に固定することができる。一例では、ハブ22の内側と注射器胴体62の放出口部分72の外側との間に締りばめ(interference fit)が提供される。他の例では、注射器60の端にハブ22を固定するために従来のLuer型のはめあい配置(Luer fit arrangement)が提供される。図9〜11から理解できるとおり、設計されたこのような針アセンブリは、様々な従来の注射器型に容易に適合可能である。
【0099】
本発明は、様々な注射器タイプとともに使用されるように適合可能な、皮内針注射器を提供する。したがって、本発明は、大量生産規模での皮内針の経済的な製造および組立を容易にする大きな利点を提供する。
【0100】
針カニューレ24を挿入する前に、動物の皮膚の注射部位が選択され、清浄化される。注射部位の選択および清浄化に続いて、皮膚接触面42が皮膚と接触するまで、針カニューレ24の前端40が概ね90度の角度で動物の皮膚の中へ挿入される。皮膚接触面42は、針カニューレ42が皮膚の真皮層を突き抜け、皮下層に物質を注入することを防ぐ。
【0101】
針カニューレ42が皮膚の中に挿入されている間に物質が皮内に注入される。物質は、かなり前に注射器60に予め充てんし、注射を実施する直前までその中に保存することができる。個人の好みおよび注射器のタイプに応じて、注射を実行する方法のいくつかの変形を利用することができる。いずれにしても、針カニューレ42の貫入は約1.5mm以下になるのが最も好ましい。皮膚接触面42が、それ以上の貫入を防ぐことができるからである。
【0102】
また、皮内注射の実施中、針カニューレ42の前端40は、皮膚の真皮層の中に埋まり、その結果、物質の注射中に相応の背圧が生じる。この背圧は76psi程度となることがある。この圧力に到達するための、注射器のプランジャ棒66に使用者が加えなければならない力を最小限にするために、0.183″(4.65mm)以下といった小さな内径を有する注射器外筒60が好ましい。したがって本発明の方法は、注射を実施するために物質が注射器から押し出されるときの、真皮層の背圧に打ち勝つ十分な力を生み出す、十分な幅の内径を有する注射器を選択することを含む。
【0103】
さらに、皮内注射は少量の物質、すなわち0.5ml以下、好ましくは約0.1ml程度の物質を用いて実施されるので、注射が完了した後にストッパ70と注射器の肩部との間に捕らえられて無駄になる物質を生み出すデッドスペースを最小限に抑えるため、小さな内径を有する注射器外筒60が好ましい。さらに、0.1ml程度の少量の物質が使用されるので、ストッパを挿入するプロセス中に、物質の液面とストッパ70の間の空気ヘッドスペースを最小限に抑えるために、小さな内径を有する注射器外筒が好ましい。さらに、小さな内径は、注射器の外筒の中の物質の量を調べる能力、目に見えるようにする能力を高める。
【0104】
5.2 本発明の方法に基づく障害の治療
本発明は、疾患、障害または感染に関連した1つまたは複数の症状を防ぎ、治療しまたは改善させるために、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトに1種または数種の治療薬を、対象となる皮膚のID区画に送達することによって投与することを含む。本発明の方法は、リンパ系の疾患または障害、原発性または転移性の腫瘍性疾患(すなわち癌)および感染症の治療または予防に特に有用である。治療薬は、当技術分野で知られている、または本明細書に記載された薬剤として許容される組成物または製剤として提供することができる。
【0105】
本発明は、治療、予防または管理が必要な対象の疾患または障害を治療、予防または管理する方法であって、治療有効量または予防有効量の1種または数種の治療薬を前記対象となる皮膚の皮内区画に投与することを含む方法を包含する。
【0106】
本発明は、従来の送達経路、例えばIM、IVまたはSCに比べて、治療薬がより有効となるように、対象の皮内区画に治療薬を送達することによって、対象の疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに、対象の感染症を治療または予防するための方法であって、感染因子またはその細胞受容体に結合する治療上または予防有効量の1種または数種の治療薬を投与することを含む方法を包含する。本発明の分子によって治療または予防できる感染症は、ウイルス、細菌、真菌、原虫およびウイルスを含む感染因子によって引き起こされる。ただし、感染因子はこれらに限定されるわけではない。
【0108】
本発明に基づく生物活性作用物質の皮内送達は、多くの利益の中でとりわけ、局所リンパ管への迅速な取込み、送達された作用物質の特定の組織に対する改善されたターゲティングおよび蓄積、ならびに改善された全身および組織生体利用効率を提供する。このような利益は、抗腫瘍薬、抗体、抗生物質などの治療薬の送達のために特に有用である。本発明の方法に基づく作用物質の皮内送達は、皮内区画およびリンパ管区画ならびにより深い組織内に作用物質を蓄積し、これらの区画および組織での作用物質の迅速かつ生物学的に有意な濃縮をもたらす。
【0109】
皮内送達を使用した様々な治療薬物実体の直接的なリンパ管ターゲティングによって、用量の節減、薬効の増大、副作用の低減、転移の可能性の低減および生存期間の延長を含む有益な治療結果が実現される。本発明の送達方法が、治療薬の全身および限局的な蓄積双方を可能にするという点で、本発明は、疾患を治療するための改良された方法を提供する。その結果、本発明は、感度、蓄積される治療薬の量、組織生体利用効率、送達された治療薬のより速い発現および浄化率を改善によって、癌などの疾患を治療するための改良された方法を提供する。本発明は、疾患、特に癌の治療のために少なくとも1種の治療薬を投与するための方法であって、治療薬がID区画内に蓄積され、リンパ管構造によって取り込まれるように、制御された速度、量および圧力で対象となる皮膚の皮内区画内に治療薬を送達することを含む方法を提供する。
【0110】
本発明はさらに、感度、蓄積される治療薬の量、組織生体利用効率、送達された治療薬のより速い発現および浄化率の改善によって、身体の特定の組織および器官に局限された疾患、例えばそれらの組織および器官の感染、例えば呼吸感染の治療のための改良された方法を提供する。本発明は、疾患、特に感染症の治療のために、少なくとも1種の治療薬を投与するための方法であって、治療薬が皮内区画内に蓄積され、リンパ管構造によって取り込まれるように、制御された速度、量および圧力で対象となる皮膚の皮内区画内に治療薬を送達することを含む方法を提供する。
【0111】
具体的な一実施形態では、本発明が、抗腫瘍薬、化学療法剤、抗体、抗血管新生薬、抗炎症薬、免疫療法薬などを送達するための改良された方法であって、改善された臨床的有用性および治療効力を有する方法を提供する。原発癌病巣の従来の治療は通常、原発塊の手術による切除、腫瘍組織を殺すための局所放射線治療、または腫瘍を殺すための抗腫瘍薬の全身投与によって達成される。最初の2つの方法は、範囲がより局所的であり、治療に使用できるときには非標的器官の損傷を潜在的に最小限に抑えることができるという利点を有する。反対に、この治療は限局されるので、原発腫瘍から転移し、他の組織内に限局された転移細胞に作用する潜在力は限定的である。抗腫瘍性全身治療は、原発腫瘍だけでなく散在した腫瘍細胞に作用する潜在力を有するが、この全身送達は、健全な器官、組織および系に損傷を与える可能性を増大させる。
【0112】
本発明に基づく抗体、抗腫瘍薬などの治療薬の皮内送達は、真皮の静脈網とリンパ管網の両方に直接にアクセスすることができ、固有の全身薬物動態学的結果を提供することができる。腫瘍などの標的の近傍のこれらの脈管網にアクセスすることによって、治療上の利点を達成することができる。皮内送達された抗腫瘍薬は、腫瘍の近傍に物理的に留置されるので、この副作用(adverse events)である全身的な毒性に比べて限局された効果が増強され、それによって投与量および副作用の低減につながる。同様に、腫瘍は転移移動に主として全身の脈管構造を使用するため、皮内送達された抗腫瘍薬はこれらの転移細胞を標的とすることができ、転移の可能性を低減させることができる。皮内投与された治療薬はさらに、リンパ管網が介在する免疫細胞にアクセスすることができ、
これによって免疫学的細胞の成熟および抗癌細胞(T、B、NK、マクロファージなど)の腫瘍部位への輸送に影響を与えることもできる。皮内送達された抗腫瘍薬はさらに、多くの現行の治療と同様の方法で全身に分配され、広範囲に散在する部位および器官に到達する追加の利益を提供する。本発明は、リンパ、粘膜、肺、脾臓、胸腺または大腸組織を含む特定の組織に対する生物活性作用物質の生体利用効率を高める改良された方法を提供する。ただし、組織はこれらに限定されるわけではない。本発明に基づく生物活性作用物質の皮内送達は、多くの利益の中でとりわけ、局所リンパ管への迅速な取込み、送達された作用物質の特定の組織に対する改善されたターゲティングおよび蓄積、ならびに改善された全身および組織生体利用効率を提供する。このような利益は、抗腫瘍薬、抗体、抗生物質などの治療薬の送達のために特に有用である。本発明の方法に基づく作用物質の皮内送達は、皮内区画およびリンパ管区画ならびにより深い組織内に作用物質を蓄積し、これらの区画および組織での作用物質の迅速かつ生物学的に重要なな濃縮化をもたらす。
【0113】
皮内治療はある種の癌に対してより大きな利益を提供することができる。末梢の癌、あるいは対象とする脈管構造に高度に限局され、対象とする脈管構造内に存在し、または対象とする脈管構造に関連した癌は、このタイプの治療から最大の利益を享受することができる。格別の利益を得る特定の癌には、黒色腫および他の皮膚癌(肉腫など)、リンパ腫または他のリンパ組織の癌、乳癌または他の末梢軟部組織ないし皮下空間の癌、リンパ管と連絡した脾臓の癌、および白血病または他の脈管構造の癌が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。身体、または器官、または最小限の薬物輸送機構を有する恵まれた生物学的空間(privileged biological spaces、脳、脊柱など)内の深部に限局された癌に対する効果にも利益を有することができる。具体的には、本発明に従って皮内送達された抗腫瘍薬を使用して、肺癌を治療することもできる。
【0114】
皮内送達された抗腫瘍薬の効果の向上は、効果の生物学的機構が異なる抗腫瘍薬ごとに異なる可能性がある。例えば細胞傷害性薬物は、全身分配の前のより大きな初期腫瘍局在化効果および腫瘍死滅効果を示し、それによって標的組織の死滅を高め、副作用を最小限に抑える。しかし細胞傷害性薬物では、投与直後の死または壊死から投与部位の組織を保護する製剤が必要となると考えられる。周囲の組織を保護する短命のリポソーム、粒子または他の担体の中に、細胞傷害薬をカプセル封入することによって、皮内投与の利益を強化することができる。腫瘍に対する宿主反応を開始させ、または抑制されていた反応を刺激する薬物は、やはり腫瘍近傍に反応を限局化することによって、潜在的により大きな利益をもたらすと考えられる。免疫系、ケモカイン(chemokines)、サイトカイン(cytokines)および他の免疫増強物質に作用する薬物(IL−12を用いる例は適例である)は、この送達経路によっておそらく格別の利益を有すると考えられる。腫瘍の化学的及び的ターゲティングを含む薬物(例えば腫瘍特異抗体、腫瘍表面マーカを標的とする受容体および腫瘍特異受容体に結合するマーカ)は、腫瘍細胞を物理的および化学的に標的とするため、これらの使用は潜在的に最も大きな利益を享受するであろう。この種類の薬物には、治療抗体(therapeutic antibody)、腫瘍特異的ターゲティングマーカを担持した細胞傷害性薬物または他の薬物を担持した粒子、または腫瘍に結合して固有の生物学的機構(例えば細胞免疫応答または補体によって媒介された抗腫瘍反応)によって攻撃する他の作用物質が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0115】
本発明の方法はさらに、腫瘍細胞を含む抗腫瘍薬を投与し、これによって将来の腫瘍攻撃に対抗するワクチン効果を提供することを含む。
【0116】
本発明は、蓄積される治療薬の量、組織生体利用効率、送達された治療薬のより速い発現および浄化率改善によって、疾患、例えば癌を治療するための改良された方法を提供する。本発明は、疾患、特に癌の治療のために少なくとも1種の治療薬を投与するための方法であって、治療薬がID区画内に蓄積され、リンパ管構造によって取り込まれるように、制御された速度、量および圧力で対象となる皮膚のID区画内に治療薬を送達することを含む方法を提供する。
【0117】
本発明の方法および組成物によって治療または予防することができる癌および関連障害には以下のものが含まれる:急性白血病;急性リンパ性白血病;骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単核球性白血病、赤白血病などの急性骨髄性白血病;骨髄異形成症候群;慢性骨髄球(顆粒球)性白血病、慢性リンパ性白血病、毛様細胞白血病などの慢性白血病(ただし、これらに限られない)を含む白血病(ただし、これらに限られない);真正赤血球増加症;ホジキン病、非ホジキン病などのリンパ腫(ただし、これらに限られない);くすぶり型(smoldering)多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性プラズマ細胞腫、骨髄外性プラズマ細胞腫などの多発性骨髄腫;ヴァルデンストレーム・マクログロブリン血症;重大性未定の単クローン性高ガンマグロブリン血症;良性単クローン性高ガンマグロブリン血症;重鎖病;肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨線維肉腫、脊索腫、骨膜性肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫などの骨および結合組織の肉腫(ただし、これらに限られない);神経膠腫、神経膠星状細胞腫、脳幹神経膠腫、脳室上衣細胞腫、乏突起神経膠腫、非神経膠腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫を含む脳腫瘍(ただし、これらに限られない);腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、髄様乳癌、粘液性乳癌、管状乳癌、乳頭状乳癌、パジェット病および炎症性乳癌を含む乳癌;褐色細胞腫および副腎皮質癌を含む副腎癌(ただし、これらに限られない);乳頭状または濾胞状甲状腺癌、髄様甲状腺癌、未分化甲状腺癌などの甲状腺癌;インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、カルチノイドまたはランゲルハンス島細胞腫瘍を含む膵臓癌(ただし、これらに限られない);クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症および尿崩症を含む下垂体癌(ただし、これらに限られない);虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、毛様体黒色腫などの眼黒色腫および網膜芽細胞腫を含む眼癌(ただし、これらに限られない);扁平上皮癌、腺癌および黒色腫を含む膣癌(ただし、これらに限られない);扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫およびパジェット病を含む外陰部癌(ただし、これらに限られない);扁平上皮癌および腺癌を含む子宮頚癌(ただし、これらに限られない);子宮内膜癌および子宮肉腫を含む子宮癌(ただし、これらに限られない);卵巣上皮癌、境界腫瘍、生殖細胞腫瘍および支質腫瘍を含む卵巣癌(ただし、これらに限られない);扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、プラズマ細胞腫、いぼ状癌およびえん麦細胞(小細胞)癌を含む食道癌(ただし、これらに限られない);腺癌、カビ状(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫および癌肉腫を含む胃癌(ただし、これらに限られない);大腸癌;直腸癌;肝細胞癌および肝芽細胞腫を含む肝臓癌(ただし、これらに限られない);腺癌を含む胆嚢癌(ただし、これらに限られない);乳頭状、結節性およびびまん性を含む胆管癌(ただし、これらに限られない);非小細胞肺癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および肺小細胞癌を含む肺癌(ただし、これらに限られない);胚腫瘍、精上皮腫、未分化、古典的(典型的)、精母細胞、非精上皮腫、胎生期癌、奇形腫、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)を含む精巣癌(ただし、これらに限られない);腺癌、平滑筋肉腫および横紋筋肉腫を含む前立腺癌(ただし、これらに限られない);陰茎癌;扁平上皮癌を含む口腔癌(ただし、これらに限られない);鼻癌;腺癌、粘液性類表皮癌および腺様嚢胞癌を含む唾液腺癌(ただし、これらに限られない);扁平上皮細胞癌およびいぼ状癌を含む咽頭癌(ただし、これらに限られない);基底細胞癌、扁平上皮癌および黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端部黒子黒色腫を含む皮膚癌(ただし、これらに限られない);腎細胞癌、腺癌、副腎腫、線維肉腫、移行上皮癌[腎盂および/または尿管(uterer)]を含む腎臓癌(ただし、これらに限られない);ウィルムス腫瘍;移行上皮癌、扁平上皮細胞癌、腺癌、癌肉腫を含む膀胱癌(ただし、これらに限定されるわけではない)。癌にはさらに、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌および乳頭状腺癌が含まれる。(このような障害については、非特許文献7および非特許文献8を参照されたい)。
【0118】
したがって本発明の方法および組成物は、様々な癌または他の異常増殖性疾患の治療または予防にも有用であり、これには以下のものが含まれる(ただし、これらに限られない):膀胱、胸、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、前立腺、子宮頚、甲状腺および皮膚を含む癌腫;扁平上皮癌を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含むリンパ系統の造血器腫瘍;急性および慢性の骨髄性白血病および前骨髄球性白血病を含む脊髄系統の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌、神経芽腫および神経膠腫を含むその他の腫瘍;神経膠星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞状癌および奇形癌を含むその他の腫瘍。細胞自然死の異常に起因する癌を本発明の方法および組成物によって治療することも企図される。このような癌には例えば、濾胞性リンパ腫、p53突然変異を有する癌、胸・前立腺および卵巣のホルモン依存性腫瘍、および家族性腺腫性ポリポーシス、骨髄異形成症候群などの前癌性病変が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。特定の実施形態では、卵巣、膀胱、胸、大腸、肺、皮膚、膵臓または子宮における(化生、形成異常などの)悪性または異常増殖性の変化あるいは過増殖性の障害が、本発明の方法および組成物によって治療または予防される。他の特定の実施形態では、本発明の方法および組成物によって肉腫、黒色腫または白血病が治療または予防される。
【0119】
本発明はさらに、対象の感染症を治療または予防するための方法であって、治療上または予防上の有効量の1種または数種の作用物質を、対象となる皮膚のIDに投与することを含む方法を包含する。本発明の分子によって治療または予防できる感染症は、ウイルス、細菌、真菌、原虫およびウイルスを含む感染因子によって引き起こされる。ただし、感染因子はこれらに限定されるわけではない。
【0120】
本発明の方法を使用して治療または予防することができるウイルス病には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純ヘルペスI型(HSV−I)、単純ヘルペスII型(HSV−II)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、痘瘡、エプスタイン−バーウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)によるウイルス病、およびウイルス性髄膜炎、脳炎、デング熱または痘瘡などのウイルス病の病原因子が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0121】
いくつかの実施形態では本発明が、呼吸器病または呼吸器障害、特に呼吸器感染(ウイルス性および細菌性)を治療または予防する方法であって、治療が必要な対象の皮内区画に有効な量の治療薬を投与することを含む方法を含む。本発明は、上気道(例えば鼻、耳、洞および咽喉)および下気道(例えば気管、気管支および肺)の呼吸感染を治療または予防する方法を含む。上気道感染を引き起こすウイルスの例には、ライノウイルスならびにインフルエンザウイルスA型およびB型が含まれる。下気道ウイルス感染の例には、パラインフルエンザウイルス感染(「PIV」)、RSウイルス(「RSV」)、および細気管支炎が含まれる。下気道感染を引き起こす細菌の例には、肺炎連鎖球菌性肺炎を引き起こす肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)および結核を引き起こすヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)が含まれる。真菌によって引き起こされる呼吸器感染には、全身性カンジダ症、ブラストミセス症、クリプトコックス症、コクシジオイデス真菌症およびアスペルギルス症が含まれる。呼吸器感染は1次感染でも2次感染でもよい。
【0122】
本発明は、任意のウイルス感染に起因する、または任意のウイルス感染に関連した呼吸器病または障害を予防、管理、治療または改善する方法であって、有効な量の本発明の方法に基づく1種または数種の治療薬を投与することを含む方法を提供する。ウイルス感染を引き起こすウイルスの例には、レトロウイルス[例えばヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)I型およびII型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)]、ヘルペスウイルス[例えば単純ヘルペスウイルス(HSV)I型およびII型、エプスタイン−バーウイルス、HHV6〜HHV8、サイトメガロウイルス]、アレナウイルス(例えばラッサ熱ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹ウイルス、ヒトRSウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、hMPVおよび肺炎ウイルス)、アデノウイルス、ブンヤウイルス(例えばハンタウイルス)、コロナウイルス、フィロウイルス(例えばエボラウイルス)、フラビウイルス[例えばC型肝炎ウイルス(HCV)、黄熱病ウイルスおよび日本脳炎ウイルス]、ヘパドナウイルス[例えばB型肝炎ウイルス(HBV)]、オルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルスA、BおよびC型、PIV)、パポバウイルス(例えば乳頭腫ウイルス)、ピコルナウイルス(例えばライノウイルス、エンテロウイルスおよびA型肝炎ウイルス)、ポックスウイルス、レオウイルス(例えばロタウイルス)、トガウイルス(例えば風疹ウイルス)、およびラブドウイルス(例えば狂犬病ウイルス)が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。ウイルス感染に対する生物反応には、抗体濃度の上昇、T細胞の増殖および/または浸潤の増大、B細胞の増殖および/または浸潤の増大、上皮過形成、およびムチン産生が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。本発明はさらに、感冒、ウイルス性咽頭炎、ウイルス性喉頭炎、ウイルス性クループ、ウイルス性気管支炎、インフルエンザ、パラインフルエンザウイルス病(「PIV」)(例えばクループ、細気管支炎、気管支炎、肺炎)、ならびにRSウイルス(「RSV」)、メタニューモウイルス(metapneumavirus)およびアデノウイルスの疾患(例えば熱性呼吸器病、クループ、気管支炎、肺炎)などのウイルス性呼吸器感染を予防、治療、管理または改善する方法であって、有効な量の1種または数種の治療薬を投与することを含む方法を提供する。
【0123】
好ましい実施形態では本発明が、疾患または障害、特に呼吸器病を治療する方法であって、その疾患の治療薬の標準用量を鼻腔内(IN)送達と全身送達の間で分割する方法を含む。当業者は最適な用量分割比を日常的な実験によって決定することができる。IN/IM送達の場合、5/95から30/70までの比が好ましい。発明者は、これによって、治療薬、例えば組織(生体外のウイルスの高力価を中和する濃度に合致した肺組織など)中の抗体、の迅速な濃度確保につながることを見出した。また、用量を分割しても、投与後数週間は維持する必要があるような予防濃度の損失は検出されなかった。
【0124】
本発明の方法に関連して、本発明の方法を使用して治療または予防することができる細菌によって引き起こされる細菌症には、ミコバクテリア、リケッチア、マイコプラスマ、ナイセリア、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)、ライム病(Borrelia burgdorferi)、炭疽菌(Bacillus anthracis、炭疽)、破傷風、連鎖球菌、ブドウ球菌、ミコバクテリウム、破傷風、百日咳、コレラ、ペスト、ジフテリア、クラミジア、黄色ブドウ球菌(S.aureus)およびレジオネラが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0125】
本発明の方法に関連して、本発明の方法を使用して治療または予防することができる原虫症には、レーシュマニア(leishmania)、コクジジア(kokzidioa)、トリパノソーマまたはマラリアが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0126】
本発明の方法に関連して,本発明の方法を使用して治療または予防することができる寄生虫によって引き起こされる寄生虫症には、クラミジアおよびリケッチアが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0127】
5.3 本発明に従って投与される作用物質
本発明は、疾患または障害の治療、予防または管理のための生物活性作用物質、特に治療薬を含む。本発明の方法において使用することができる生物活性作用物質の例には、免疫グロブリン[例えば多重特異的(Multi−specific)Ig、単鎖Ig、Igフラグメント]、タンパク質、ペプチド[例えばペプチド受容体、PNA、セレクチン、結合タンパク質(マルトース結合タンパク質、グルコース結合タンパク質)]、ヌクレオチド、核酸[例えばPNAS、RNA、修飾されたRNA/DNA、アプタマー(aptamer)]、受容体(例えばアセチルコリン受容体)、酵素(例えばグルコースオキシダーゼ、HIVプロテアーゼおよび逆転写酵素)、炭水化物(例えばNCAM、シアル酸)、細胞(例えばインスリンおよびグルコースに反応する細胞)、バクテリオファージ(例えば繊維状ファージ)、ウイルス(例えばHIV)、化学特異的作用物質[例えばシプタンド(Cyptand)、クラウンエーテル、ボロネート(Boronate)]が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0128】
本発明は抗腫瘍薬を投与するための方法を提供する。このような抗腫瘍薬には、サイトカイン、血管新生阻害薬、古典的な抗癌剤および治療抗体を含む様々な作用物質が含まれる。本発明に従って使用することができるサイトカイン免疫調節剤およびホルモンには、インターフェロン、インターロイキン(IL−1、−2、−4、−6、−8、−12)および細胞増殖因子が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0129】
本発明の方法および組成物において使用することができる血管新生阻害薬には、アンギオスタチン(Angiostatin)(プラスミノゲンフラグメント)、抗血管新生性抗トロンビンIII、アンギオザイム(Angiozyme)、ABT−627、Bay 12−9566、ベネフィン(Benefin)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、BMS−275291、軟骨由来阻害薬(CDI)、CAI、CD59補体フラグメント、CEP−7055、コル(Col)3、コンブレタスタチン A−4(Combretastatin A−4)、エンドスタチン(Endostatin、コラーゲンXVIIIフラグメント)、フィブロネクチンフラグメント、Gro−β、ハロフギノン(Halofuginone)、ヘパリナーゼ、ヘパリン六糖フラグメント、HMV833、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、IM−862、インターフェロンα/β/γ、インターフェロン誘導タンパク質(IP−10)、インターロイキン−12、クリングル5(Kringle 5、プラスミノゲンフラグメント)、マリマスタット(Marimastat)、メタロプロテイナーゼ阻害薬(TIMP)、2−メトキシエストラジオール、MMI270(CGS27023A)、MoAb IMC−1C11、ネオバスタット(Neovastat)、NM−3、パンゼム(Panzem)、PI−88、胎盤リボヌクレアーゼ阻害薬、プラスミノゲン活性化因子阻害薬、血小板第4因子(PF4)、プリノマスタット(Prinomastat)、プロラクチン16kDフラグメント、プロリフェリン関連タンパク質(PRP)、PTK787/ZK222594、レチノイド、ソリマスタット(Solimastat)、スクアラミン(Squalamine)、SS3304、SU5416、SU6668、SU11248、テトラヒドロコルチソール−S、テトラチオモリブデート、サリドマイド、トロンボスポンジン−1(TSP−1)、TNP−470、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−b)、バスクロスタチン(Vasculostatin)、バソスタチン[Vasostatin、カルレティクリン(calreticulin)フラグメント]、ZD6126、ZD6474、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬(FTI)およびビスホスホネートが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0130】
本発明の方法に従って使用することができる他の抗癌剤には、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン(ambomycin)、酢酸アメタントロン(ametantrone acetate)、アミノグルテチミド、アムサクリン(amsacrine)、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン(asperlin)、アザシチジン、アゼテパ(azetepa)、アゾトマイシン(azotomycin)、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルトアミド(bicalutamide)、塩酸ビサントレン(bisantrene hydrochloride)、ビスナフィドジメシレート(bisnafide dimesylate)、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム(brequinar sodium)、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カルステロン、カラセミド、カルベチメル(carbetimer)、カルボプラチン、カルムスチン、塩酸カルビシン、カルゼレシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン(cirolemycin)、シスプラチン、クラドリビン、クリスナトールメシレート(crisnatol mesylate)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デクソルマプラチン(dexormaplatin)、デザグアニン、デザグアニンメシレート(dezaguanine mesylate)、ジアジクオン(diaziquone)、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、ズアゾマイシン(duazomycin)、エダトレキセート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール(erbulozole)、塩酸エソルビシン(esorubicin hydrochloride)、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロキスウリジン(floxuridine)、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホスキダン(fosquidone)、ホストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモホシン、インターロイキン(組換えインターロイキン12ないしrIL12を含む)、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンα−n1、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−Ia、インターフェロンγ−Ib、イプロプラチン(iproplatin)、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン(mitocarcin)、ミトクロミン、ミトギリン(mitogillin)、ミトマルシン、マイトマイシン、ミトスペル、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペガスパルガーゼ、ペリオマイシン(peliomycin)、ペンタムスチン(pentamustine)、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィメルナトリウム(porfimer sodium)、ポルフィロマイシン、プレドニマスチン(prednimustine)、塩酸プロカルバジン、プロマイシン、塩酸プロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレトイミド(rogletimide)、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルホセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフル、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキセート、トリメトレキセートグルクロネート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン(vindesine sulfate)、硫酸ビネピジン(vinepidine sulfate)、硫酸ビングリシネート(vinglycinate sulfate)、硫酸ビンロイロシン(vinleurosine sulfate)、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン(vinrosidine sulfate)、硫酸ビンゾリジン(vinzolidine sulfate)、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、塩酸ズルビシン(zorubicin hydrochloride)が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。他の抗癌剤には、20−エピ−1,25ジヒドロキシビタミンD3、5−エチニルウラシル、アビラテロン、アクラルビシン、アシルフルベン、アデシペノール(adecypenol)、アドゼレシン、アルデスロイキン、ALL−TK拮抗薬、アルトレタミン、アンバムスチン、アミドキス(amidox)、アミホスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管新生阻害薬、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリキス(antarelix)、抗ドーサライジング(anti−dorsalizing)形態形成タンパク質−1、抗男性ホルモン、前立腺癌、抗エストロゲン、抗腫瘍薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アフィジコリングリシネート(aphidicolin glycinate)、細胞自然死遺伝子モジュレータ、細胞自然死レギュレータ、アプリン酸、ara−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスラクリン(asulacrine)、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1(axinastatin 1)、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザセトロン、アザトキシン(azatoxin)、アザチロシン、バッカチンIII誘導体、バラノール(balanol)、バチマスタット、BCR/ABL拮抗薬、ベンゾクロリン(benzochlorins)、ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine)、βラクタム誘導体、βアレチン、βクラマイシンB、ベツリン酸、bFGF阻害薬、ビカルタミド、ビスアントレン(bisantrene)、ビスアジリジニルスペルミン(bisaziridinylspermine)、ビスナフィド、ビストラテンA(bistratene A)、ビゼレシン、ブレフレート(breflate)、ブロピリミン、ブドチタン、ブチオニンスルホキシイミン、カルシポトリオール(calcipotriol)、カルフォスチンC、カンプトセシン誘導体、カナリポキスIL−2(canarypox IL−2)、カペシタビン、カルボキサミドアミノトリアゾール、カルボキサミドトリアゾール、CaRest M3、CARN700、軟骨由来阻害薬、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害薬(ICOS)、カスタノスペルミン、セクロピンB、セトロレリキス(cetrorelix)、クロルン、クロロキノキサリンスルホンアミド(chloroquinoxaline sulfonamide)、シカプロスト、シス−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA(collismycin A)、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベスシジン816、クリスナトール、クリプトフィシン8(cryptophycin 8)、クリプトフィシンA誘導体、クラシンA(curacin A)、シクロペンタントラキノン(cyclopentanthraquinones)、シクロプラタム、シペマイシン(cypemycin)、シタラビンオクホスフェート(cytarabine ocfosfate)、細胞溶解因子、シトスタチン(cytostatin)、ダクリキシマブ(dacliximab)、デシタビン、デヒドロジデムニンB(dehydrodidemnin B)、デスロレリン、デキサメタゾン、デキシホスファミド(dexifosfamide)、デキスラゾキサン、デキスベラパミル(dexverapamil)、ジアジクオン(diaziquone)、ジデムニンB(didemnin B)、ジドキス(didox)、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、9−ジヒドロタキソール(9−dihydrotaxol)、ジオキサマイシン(dioxamycin)、ジフェニルスピロムスチン(diphenyl spiromustine)、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドロロキシフェン、ドロナビノール、ズオカルマイシンSA(duocarmycin SA)、エブセレン、エコムスチン、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エレメン、エミテフル、エピルビシン(epirubicin)、エプリステリド、エストラムスチン類似体、エストロゲン作動薬、エストロゲン拮抗薬、エタニダゾール、リン酸エトポシド、エキセメスタン、ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール(flavopiridol)、フレゼラスチン、フルアステロン、フルダラビン、塩酸フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin hydrochlorid)、ホルフェニメキス(forfenimex)、ホルメスタン(formestane)、ホストリエシン(fostriecin)、ホテムスチン(fotemustine)、ガドリニウムテキサフィリン(gadolinium texaphyrin)、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリキス(ganirelix)、ゼラチナーゼ阻害薬、ゲムシタビン、グルタチオン阻害薬、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン(idramantone)、イルモホシン、イロマスタット(ilomastat)、イミダゾアクリドン(imidazoacridones)、イミキモド、免疫刺激ペプチド、インスリン様増殖因子−1受容体阻害薬、インターフェロン作動薬、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン、ヨードドキソルビシン、4−イポメアノール、イロプラクト(iroplact)、イルソグラジン、イソベンガゾール(isobengazole)、イソホモハリコンドリンB(isohomohalicondrin B)、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラライドF、ラメラリン−Nトリアセテート、ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトルスタチン(leptolstatin)、レトロゾール、白血病抑制因子、白血球αインターフェロン、ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミソール、リアロゾール、線形ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド7
(lissoclinamide 7)、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロニダミン、ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン(lurtotecan)、ルテチウムテキサフィリン(lutetium texaphyrin)、リソフィリン、細胞溶解ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害薬、基質メタロプロテアーゼ阻害薬、メノガリル、メルバロン(merbarone)、メテレリン、メチオニナーゼ、メトクロプラミド、MIF阻害薬、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、不適正塩基対2本鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン類似体、ミトナフィド(mitonafide)、ミトトキシン(mitotoxin)線維芽細胞成長因子−サポリン、ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン、モノホスホリルリピドA+myobacterium細胞壁sk、モピダナオール(mopidanaol)、多発性薬剤耐性遺伝子阻害薬、多発性腫瘍サプレッサ1ベースの治療、カラシ抗癌剤、ミカペルオキシドB(mycaperoxide B)、ミコバクテリウム細胞壁抽出物、ミリアポロン(myriaporone)、N−アセチルジナリン、N置換ベンズアミド、ナファレリン、ナグレスチプ(nagrestip)、ナロキソン+ペンタゾシン、ナパビン(napavin)、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン(nemorubicin)、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン(nisamycin)、一酸化窒素モジュレータ、窒素酸化物抗酸化剤、ニトラリン(nitrullyn)、O6−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オンダンセトロン、オラシン(oracin)、経口サイトカイン誘導物質、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキザウノマイシン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン(palauamine)、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン(parabactin)、パゼリプチン、ペグアスパルガーゼ、ペルデシン、ペントサンポリサルフェートナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール(pentrozole)、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、フェニルアセテート、ホスファターゼ阻害薬、ピシバニール、塩酸ピロカルピン、ピラルビシン、ピリトレキシム、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノゲン活性化因子阻害薬、白金錯体、白金化合物、白金−トリアミン錯体、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニゾン、プロピルビスアクリドン、プロスタグランジンJ2、プロテアソーム阻害薬、プロテインAベースの免疫モジュレータ、タンパク質キナーゼC阻害薬、タンパク質キナーゼC阻害薬、マイクロアルガル(microalgal)、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害薬、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害薬、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン抱合体(pyridoxylated hemoglobin polyoxyethylene conjugate)、ラフ(raf)拮抗薬、ラルチトレキセド、ラモセトロン、ラス癌遺伝子ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害薬、ラス癌遺伝子阻害薬、ラス癌遺伝子−GAP阻害薬、脱メチル化レテリプチン、レニウムRe186エチドロネート、リゾキシン、リボザイム、RIIレチナミド、ログレチミド、ロヒツキン(rohitukine)、ロムルチド(romurtide)、ロキニメキス、ルビギノンB1(rubiginone B1)、ルボキシル、サフィンゴール、サイントピン(saintopin)、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、Sdi 1様作用薬、セムスチン、老化由来阻害薬1、センスオリゴヌクレオチド、信号伝達阻害薬、信号伝達モジュレータ、単鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ナトリウムボロカプテート、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルホス酸、スピカマイシンD、スピロムスチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1(spongistatin 1)、スクアラミン(squalamine)、幹細胞阻害薬、幹細胞分裂阻害薬、スチピアミド(stipiamide)、ストロメリシン阻害薬、スルフィノシン(sulfinosine)、超活性(superactive)血管作用性腸管ペプチド拮抗薬、スラジスタ(suradista)、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフル、テルラピリリウム(tellurapyrylium)、テロメラーゼ阻害薬、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド(tetrachlorodecaoxide)、テトラゾミン(tetrazomine)、タリブラスチン(thaliblastine)、チオコラリン(thiocoraline)、トロンボポイエチン、トロンボポイエチン様作用薬、チマルファシン、チモポイエチン受容体作動薬、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、エチルエチオプルプリンスズ(tin ethyl etiopurpurin)、チラパザミン、二塩化チタノセン、トプセンチン(topsentin)、トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害薬、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリメトレキセート、トリプトレリン、トロピセトロン、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害薬、チルホスチン、UBC阻害薬、ウベニメクス、尿生殖洞由来増殖阻害因子、ウロキナーゼ受容体拮抗薬、バプレオチド、バリオリンB、ベクター系、赤血球遺伝子治療、ベラレソール、ベラミン、ベルディンス、ベルテポルフィン、ビノレルビン、ビンキサルチン、バイタクシン、ボロゾール、ザノテロン(zanoterone)、ゼニプラチン、ジラスコルブおよびジノスタチンスチン・スティマラマーが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。好ましい追加の抗癌剤は5−フルオロウラシルおよびロイコボリンである。
【0131】
本発明の方法に従って投与することができる抗腫瘍薬の他の例には治療抗体が含まれ、これには、急性腎同種移植拒絶予防用の免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体であるZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)(Roche Pharmaceuticals、スイス)、ネズミ抗17−IA細胞表面抗原IgG2a抗体であるPANOREX(商標)(Glaxo Wellcome/Centocor)、ネズミ抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体であるBEC2(ImClone System)、キメラ抗EGFR IgG抗体であるIMC−C225(ImClone System)、ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体であるVITAXIN(商標)(Applied Molecular Evolution/MedImmune)、ヒト化抗CD33 IgG抗体であるSmart M195(Protein Design Lab/Kanebo)、ヒト化抗CD22 IgG抗体であるLYMPHOCIDE(商標)(Immunomedics)、ヒト化抗ICAM3抗体であるICM3(ICOS Pharm)、霊長類化抗CD80抗体であるIDEC−114(IDEC Pharm/Mitsubishi)、ヒト化抗CD40L抗体であるIDEC−131(IDEC/Eisai)、霊長類化抗CD4抗体であるIDEC−151(IDEC)、霊長類化抗CD23抗体であるIDEC−152(IDEC/Seikagaku)、ヒト化抗CD3 IgGであるSMART抗CD3(Protein Design Lab)、ヒト化抗補体因子5(C5)抗体である5G1.1(Alexion Pharm)、ヒト化抗TNF−α抗体であるD2E7(CAT/BASF)、ヒト化抗TNF−α FabフラグメントであるCDP870(Celltech)、霊長類化抗CD4 IgG1抗体であるIDEC−151(IDEC Pharm/SmithKline Beecham)、ヒト抗CD4 IgG抗体であるMDX−CD4(Medarex/Eisai/Genmab)、ヒト化抗TNF−α IgG4抗体であるCDP571(Celltech)、ヒト化抗α4β7抗体であるLDP−02(LeukoSite/Genentech)、ヒト化抗CD4 IgG抗体であるOrthoClone OKT4A(Ortho Biotech)、ヒト化抗CD40L IgG抗体であるANTOVA(商標)(Biogen)、ヒト化抗VLA−4 IgG抗体であるANTEGREN(商標)(Elan)、およびヒト抗TGF−β2抗体であるCAT−152(Cambridge Ab Tech)が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0132】
本発明において使用することができる特に好ましい生物活性作用物質は治療抗体である。本発明は、モノクローナル抗体、多重特異的抗体、ヒト抗体、ネズミ抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、ポリクローナル抗体、ラクダ化(camelized)抗体、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合2重特異的Fv(sdFv)、イントラボディ(intrabodies)、および抗イディオタイプ(抗ID)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗Idおよび抗抗Id抗体を含む)、ならびに本明細書に開示された治療抗体および当技術分野で知られている治療抗体のエピトープ結合フラグメントを包含する。本発明が包含する治療抗体には、転移性乳癌の患者を治療するためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体であるHERCEPTIN(登録商標)[トラスツズマブ(Trastuzumab)](Genentech、米カリフォルニア州)、血栓形成を予防するための血小板上の抗糖タンパクIIb/IIIa受容体であるREOPRO(登録商標)(アブシキシマブ)(Centocor)、急性腎同種移植拒絶の予防用の免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体であるZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)(Roche Pharmaceuticals、スイス)、ネズミ抗17−IA細胞表面抗原IgG2a抗体であるPANOREX(商標)(Glaxo Wellcome/Contocor)、ネズミ抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体であるBEC2(ImClone System)、キメラ抗EGFR IgG抗体であるIMC−C225(ImClone System)、ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体であるVITAXIN(商標)(Applied Molecular Evolution/MedImmune)、ヒト化抗CD52 IgG1抗体であるCampath 1H/LDP−03(Leukosite)、ヒト化抗CD33 IgG抗体であるSmart M195(Protein Design Lab/Kanebo)、キメラ抗CD20 IgG1抗体であるRITUXAN(商標)(IDEC Pharm/Genentech、Roche/Zettyaku)、ヒト化抗CD22 IgG抗体であるLYMPHOCIDE(商標)(Immunomedics)、ヒト化抗ICAM3抗体であるICM3(ICOS Pharm)、霊長類化抗CD80抗体であるIDEC−114(IDEC Pharm/Mitsubishi)、放射性同位元素で標識されたネズミ抗CD20抗体であるZEVALIN(商標)(IDEC/Schering AG)、ヒト化抗CD40L抗体であるIDEC−131(IDEC/Eisai)、霊長類化抗CD4抗体であるIDEC−151(IDEC)、霊長類化抗CD23抗体であるIDEC−152(IDEC/Seikagaku)、ヒト化抗CD3 IgGであるSMART抗CD3(Protein Design Lab)、ヒト化抗補体因子5(C5)抗体である5G1.1(Alexion Pharm)、ヒト化抗TNF−α抗体であるD2E7(CAT/BASF)、ヒト化抗TNF−α FabフラグメントであるCDP870(Celltech)、霊長類化抗CD4 IgG1抗体であるIDEC−151(IDEC Pharm/SmithKline Beecham)、ヒト抗CD4 IgG抗体であるMDX−CD4(Medarex/Eisai/Genmab)、ヒト化抗TNF−α IgG4抗体であるCDP571(Celltech)、ヒト化抗α4β7抗体であるLDP−02(LeukoSite/Genentech)、ヒト化抗CD4 IgG抗体であるOrthoClone OKT4A(Ortho Biotech)、ヒト化抗CD40L IgG抗体であるANTOVA(商標)(Biogen)、ヒト化抗VLA−4 IgG抗体であるANTEGREN(商標)(Elan)、およびヒト抗TGF−β2抗体であるCAT−152(Cambridge Ab Tech)が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。当業者は、本明細書に開示された抗体を予防的に(prophilactically and preventatively))使用して、疾患状態、例えば癌、腫瘍成長、癌の転移または感染症の発現または進行を防ぎまたは遅らせることができることを理解されたい。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明が、特定の気道病原体、例えばパラインフルエンザ、インフルエンザA型、インフルエンザB型、クラミジアまたはアデノウイルスに対して特異的な抗体を包含する。好ましい実施形態では本発明が、ネズミRSV特異抗体(RSV48)、ヒト化パリビズマブまたはこれらのキメラ誘導体を完全に包含する。
【0134】
本発明に従って使用することができる他の抗体の例を下表1に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
【表4】

【0139】
【表5】

【0140】
本発明の組成物に使用することができる治療薬には、化学療法剤、放射線療法剤、ホルモン療法剤、免疫療法剤、免疫調節剤、抗炎症薬、抗生物質、抗ウイルス薬および細胞傷害薬が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0141】
抗炎症薬の非限定的な例には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド性抗炎症薬、β作動薬、抗コリン作動薬およびメチルキサンチンが含まれる。NSAIDの例には、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ[CELEBREX(商標)]、ジクロフェナク[VOLTAREN(商標)]、エトドラク[LODINE(商標)]、フェノプロフェン[NALFON(商標)]、インドメタシン[INDOCIN(商標)]、ケトロラク[ketoralac、TORADOL(商標)]、オキサプロジン[DAYPRO(商標)]、ナブメントン[RELAFEN(商標)]、スリンダク[CLINORIL(商標)]、トルメンチン[tolmentin、TOLECTIN(商標)]、ロフェコキシブ[VIOXX(商標)]、ナプロキセン[ALEVE(商標)、NAPROSYN(商標)]、ケトプロフェン[ACTRON(商標)]およびナブメトン[RELAFEN(商標)]が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。このようなNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素(例えばCOX−1および/またはCOX−2)を阻害することによって機能する。ステロイド性抗炎症薬の例には、糖質コルチコイド、デキサメタゾン[DECADRON(商標)]、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン[DELTASONE(商標)]、プレドニゾロン、トリアムシノロン、アズルフィジン(azulfidine);およびプロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン(leukotriene)などのエイコサノイドが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0142】
免疫調節剤の例には、メトトレキサート、ENBREL、REMICADE(商標)、レフルノミド、シクロホスファミド、シクロスポリンA、マクロライド系抗生物質[例えばFK206(タクロリムス)]、メチルプレドニゾロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド、ミコフェノレートモフェチル(mycophenolate mofetil)、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナル、マロノニトリロアミド[malononitriloamide、例えばレフルナミド(leflunamide)]、T細胞受容体モジュレータ、サイトカイン受容体モジュレータ、コルチコステロイド、サイトカイン作動薬、サイトカイン拮抗薬およびサイトカイン阻害薬が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0143】
抗生物質の例には、マクロライド[例えばトブラマイシン(Tobi(登録商標)]、セファロスポリン[例えばセファレキシン(Keflex(登録商標)]、セフラジン[Velosef(登録商標)]、セフロキシム[Ceftin(登録商標)]、セフプロジル[Cefzil(登録商標)]、セファクロル[Ceclor(登録商標)]、セフィキシム[Suprax(登録商標)]またはセファドロキシル[Duricef(登録商標)]、クラリスロマイシン[例えばクラリスロマイシン(Biaxin(登録商標))]、エリスロマイシン[例えばエリスロマイシン(EMycin(登録商標))]、ペニシリン[例えばペニシリンV(V−Cillin K(登録商標)またはPen Vee K(登録商標))]またはキノロン(例えばオフロキサシン(Floxin(登録商標)、シプロフロキサシン(Cipro(登録商標))またはノルフロキサシン(Noroxin(登録商標))]、アミノ配糖体抗生物質(例えばアプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ネオマイシン、ネオマイシン、ウンデシレネート、ネチルミシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソミシンおよびスペクチノマイシン)、アムフェニコール抗生物質[例えばアジダムフェニコール(azidamfenicol)、クロラムフェニコール、フロルフェニコールおよびチアムフェニコール]、アンサマイシン抗生物質[例えばリファミド(rifamide)およびリファンピン]、カルバセフェム(例えばロラカルベフ)、カルバペナム(例えばビアペネムおよびイミペネム)、セファロスポリン[例えばセファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン(cefazedone)、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミドおよびセフピロム]、セファマイシン(例えばセフブペラゾン、セフメタゾールおよびセフミノクス)、モノバクタム[例えばアズトレオナム、カルモナムおよびチゲモナム(tigemonam)]、オキサセフェム(例えばフロモキセフおよびモキサラクタム)、ペニシリン[penicilluius、例えばアミジノシリン(amdinocillin)、アミジノシリン ピボキシル(amdinocillin pivoxil)、アモキシシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、エピシリン(epicillin)、フェンベニシリン(fenbenicillin)、フロキサシリン(floxacillin)、ペナムクシリン(penamccillin)、ペネサメートヒドリオジド(penethamate hydriodide)、ペニシリンO−ベネトアミン(benethamine)、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラブアミン(hydrabamine)、ペニメピシクリン(penimepicycline)、フェンシヒシリンカリウム(phencihicillin potassium)]、リンコサミド(例えばクリンダマイシンおよびリンコマイシン)、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンズラシジン(enduracidin)、エンビオマイシン、テトラサイクリン[例えばアピサイクリン(apicycline)、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン(clomocycline)およびデメクロサイクリン]、2,4−ジアミノピリミジン(例えばブロジモプリム)、ニトロフラン[例えばフラルタドンおよびフラゾリウムクロリド(furazolium chloride)]、キノロンおよびその類似体[例えばシノキサシン、クリナフロキサシン(clinafloxacin)、フルメキンおよびグレパグロキサシン(grepagloxacin)]、スルホンアミド[例えばアセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、ノプリルスルファミド(noprylsulfamide)、フタリルスルファセタミド、スルファクリソイジンおよびスルファシチン]、スルホン(例えばジアシモスルホン、グルコスルホンナトリウムおよびソラスルホン)、シクロセリン、ムピロシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン、バンコマイシン、トリメトプリムスルファメトキサゾールおよびチュベリンが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0144】
抗ウイルス薬の例には、ホスカルネット、アマンタジン、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、アンプレナビル、ロピナビル、リトナビル、αインターフェロン、アデフォビル、クレバジン(clevadine)、エンテカビル、プレコナリル、リバビリン、リマンタジン、アマンタジン、ノイラミニダーゼ阻害薬および多数の脂質誘導体薬物、天然脂肪酸、リン脂質またはドコサヘキサエン酸(DHA)はもちろんのこと、プロテアーゼ阻害薬、ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬およびヌクレオシド類似体、ジドブジン、アシクロビル、ガングシクロビル(gangcyclovir)、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、リバビリンが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0145】
本発明とともに使用することができる他の治療薬には、α−1抗トリプシン、抗血管新生薬、アンチセンス、ブトルファノール、カルシトニンおよび類似体、セレダーゼ(Ceredase)、COX−II阻害薬、皮膚用薬、ジヒドロエルゴタミン、ドーパミン作動薬および拮抗薬、エンケファリンおよび他のオピオイドペプチド、上皮成長因子、エリトロポイエチンおよび類似体、卵胞刺激ホルモン、G−CSF、グルカゴン、GM−CSF、グラニセトロン、成長ホルモンおよび類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモン拮抗薬、ヒルジンおよびヒルログ(Hirulog)などのヒルジン類似体、IgEサプレッサ、インスリン、インスリノトロピン(insulinotropin)および類似体、インスリン様増殖因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体化ホルモン、黄体化ホルモン放出ホルモンおよび類似体、ヘパリン、低分子量ヘパリンおよび他の天然、修飾または合成グリコアミノグリカン、M−CSF、メトクロプラミド、ミダゾラム、モノクローナル抗体、PEG化(Pegylated)抗体、PEG化(Pegylated)タンパク質あるいは親水性ないし疎水性ポリマーまたは追加の官能基で修飾された任意のタンパク質、融合タンパク質、単鎖抗体フラグメント、あるいは付加したタンパク質・巨大分子またはそれらの追加の官能基との任意の組合せである単鎖抗体フラグメント、麻薬性鎮痛薬、ニコチン、非ステロイド系抗炎症薬、オリゴ糖、オンダンセトロン、副甲状腺ホルモンおよび類似体、副甲状腺ホルモン拮抗薬、プロスタグランジン拮抗薬、プロスタグランジン、組換え体可溶性受容体、スコポラミン、セロトニン作動薬および拮抗薬、シルデナフィル(Sildenafil)、テルブタリン、血栓溶解薬、組織プラスミノゲン賦活剤、TNFおよびTNF拮抗薬、担体/アジュバント有りまたは無しで予防薬および治療抗原を含むワクチン{サブユニットタンパク質、ペプチドおよび多糖、多糖抱合体、トキソイド、遺伝子ベースのワクチン[弱毒化性・再集合化(reassortant)・不活化化]、全細胞、ウイルスおよび細菌ベクターを含むが、これらに限定されない}であって以下に関係するワクチン、すなわち、嗜癖、関節炎、コレラ、コカイン嗜癖、ジフテリア、破傷風、HIB、ライム病、脳脊髄膜炎菌、麻疹、耳下腺炎、風疹、水痘、黄熱、RSウイルス、ダニ媒介日本脳炎、肺炎球菌、連鎖球菌、腸チフス、インフルエンザ、A、B、CおよびE型肝炎を含む肝炎、中耳炎、狂犬病、ポリオ、HIV、パラインフルエンザ、ロタウイルス、エプスタイン−バーウイルス、CMV、クラミジア、分類不能型ヘモフィルス(non−typable haemophilus)、カタル球菌、ヒト乳頭腫ウイルス、BCGを含む結核症、淋病、喘息、アテローム性動脈硬化症、マラリア、大腸菌(E.coli)、アルツハイマー病、ピロリ菌(H.Pylori)、サルモネラ菌(salmonella)、糖尿病、癌、単純ヘルペス、ヒト乳頭腫などに関係するワクチン、ならびに感冒薬、抗嗜癖薬、抗アレルギー薬、抗嘔吐薬、抗肥満症薬、抗骨粗しょう症薬、抗感染薬、鎮痛薬、麻酔薬、食欲抑制薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗鬱薬、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗片頭痛製剤、抗動揺病製剤、制吐薬、抗腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱剤、抗コリン作用薬、ベンゾジアゼピン拮抗薬、全身・冠動脈・末梢および大脳を含む血管拡張薬、骨刺激薬、中枢神経系興奮薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制薬、筋弛緩薬、副交感神経遮断薬、副交感神経様作用薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドおよび他の巨大分子、精神刺激薬、鎮静剤、性的機能不全および精神安定薬などのすべての主要な治療薬を含む他の物質が含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0146】
5.3.1 組成物
本発明は、1種または数種の生物活性作用物質、特に治療薬を、溶液、微粒子、および溶液と微粒子の混合物の形態で含む組成物(または製剤)を含む。本発明の方法で使用する組成物は任意の種から得ることができ、または当業者に知られている組換えDNA技術によって生成することができる。1種または数種の生物活性作用物質を含む組成物は、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマなどを含む様々な動物種から得ることができる。ただし、動物種はこれらに限定されるわけではない。このような作用物質の化学状態を標準組換えDNA技術によって変更して、様々な結合状態にある様々な化学式の作用物質を生産することができる。
【0147】
送達または投与される生物活性作用物質の形態には、薬剤において許容される希釈剤または溶媒に溶解した製剤溶液、乳濁液、懸濁液、ゲル、懸濁または分散させたマイクロ粒子・ナノ粒子などの微粒子が含まれ、それらの生体内形成賦形剤(in-situ forming vehicle)ももちろん含まれる。本発明の組成物は皮内送達に適した任意の形態をとることができる。一実施形態では本発明の皮内組成物が流動可能/注射可能な媒質の形態の組成物、すなわち注射器またはペンで注射することができる低粘度組成物である。この流動可能/注射可能な媒質は液体とすることができる。あるいはこの流動可能/注射可能な媒質は、微粒子物質を懸濁させて、媒質の流動性が注射可能な状態に維持されるようにした、例えば媒質を注射器で投与することができるようにした液体である。
【0148】
いくつかの実施形態では本発明の製剤が、治療有効量の作用物質と、1種または数種の他の添加剤とを含む。本発明の製剤中で使用することができる添加剤には例えば、湿潤剤、乳化剤、インスリンの4次構造を変化させる作用物質またはpH緩衝剤が含まれる。本発明の製剤は、糖類、ポリオールなどの1種または数種の他の賦形剤を含むことができる。薬剤において許容される担体、希釈剤および他の賦形剤の追加の例が、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献9に記載されている。
【0149】
送達または投与される治療薬の形態には、薬剤において許容される希釈剤または溶媒に溶解した製剤溶液、乳濁液、懸濁液、ゲル、懸濁または分散させたマイクロ粒子・ナノ粒子などの微粒子が含まれ、それらの生体内形成賦形剤ももちろん含まれる。本発明の製剤は皮内送達に適した任意の形態をとることができる。一実施形態では本発明の皮内製剤が流動可能/注射可能な媒質の形態の製剤、すなわち注射器またはインスリンペンで注射することができる低粘度製剤である。この流動可能/注射可能な媒質は液体とすることができる。あるいはこの流動可能/注射可能な媒質は、微粒子物質を懸濁させて、媒質の流動性が注射可能な状態に維持されるようにした、例えば媒質を注射器で投与することができるようにした液体である。
【0150】
本発明の皮内製剤は単位剤形として調製することができる。1バイアルあたりの単位投与量は例えば製剤0.1から0.5mlを含む。いくつかの実施形態では本発明の皮内製剤の単位剤形が、製剤を50μlから100μl、50μlから200μl、または50μlから500μl含む。必要ならば、それぞれのバイアルに無菌希釈剤を加えることによってこれらの製剤を所望の濃度に調整することができる。本発明の方法に従って投与される製剤は、皮内空間が過供給の状態になり、SC区画などの他の1つまたは複数の区画に製剤が分配される可能性がある量では投与されない。
【0151】
本発明の方法において使用される治療薬は液体または粉末の形態をとることができる。製剤が鼻腔内に投与される特定の実施形態では、液体製剤が、液滴またはエーロゾル化された治療薬、例えば抗体を含むであろう。
【0152】
治療薬の粉末製剤は、例えばその全体が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献15に記載されている、当技術分野で知られている様々な方法、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法または噴霧凍結乾燥(SFD)法によって調製された粉末を含むであろう。
【0153】
治療薬の粉末製剤は純粋にその治療薬からなることができ、あるいは1種または数種の追加の成分を含むことができる。一般に、対象とする治療薬は最初に、従来の様々な液体を使用した液体製剤として製剤することができる。この液体は、例えば水(例えば注射可能な等級の水)などの水性の液体、あるいは従来の様々な緩衝液であることが好ましく、塩を含んでいてもまたは含んでいなくてもよい。緩衝液のpHは一般に、選択の治療薬のタンパク質または他のタイプの成分が安定するように選択され、当業者が突き止めることができる。緩衝液のpHは一般に生理的pHの範囲にあるが、一部のタンパク質はより広い範囲のpH、例えば酸性のpHで安定であることができる。したがって液体製剤の好ましい初期pH範囲は約1から約10であり、約3から約8であることがより好ましく、約5から約7であることが特に好ましい。使用することができる適当な緩衝液は多数あることを当業者には理解できるであろう。適当な緩衝液には、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウムおよび炭酸アンモニウムが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。緩衝液は一般にモル濃度約1mMから約2Mで使用され、約2mMから約1Mであることが好ましく、約10mMから約0.5Mであることがより好ましく、50から200mMであることが特に好ましい。溶液中に存在する場合、塩は一般に、モル濃度約1mMから約2Mで使用され、約2mMから約1Mであることが好ましく、約10mMから約0.5Mであることがより好ましく、50から200mMであることが特に好ましい。適当な塩にはNaClが含まれる。ただし、これに限定されるわけではない。
【0154】
液体製剤は様々な形態、例えば溶液、懸濁液、油/水型または水/油/水型乳濁液などの乳濁液、スラリーまたはコロイドの形態をとることができる。
【0155】
液体製剤は任意選択で、薬剤において許容される1種または数種の従来の賦形剤を含むことができる。「賦形剤」は一般に、有効薬剤成分(active pharmaceutical ingredient:API)の製剤の効力を高めるために加えられる化合物または物質を指す。その例には例えば、噴霧凍結乾燥プロセスまたは噴霧凍結大気圧乾燥プロセス中のタンパク質の安定性を保証しまたは増大させるため、およびその後の粉末生成物の長期安定性および流動性のために加えられる凍結保護剤および溶解保護剤が含まれる。適当な保護剤は一般に、比較的に自由に流動する微粒子固体であり、水と接触して濃化したりまたは重合したりせず、患者によって吸入されたりまたは他の方法で患者の体内に導入されたりしたときに実質上無害であり、治療薬とあまり相互作用せず、治療薬の生物活性を変化させない。適当な賦形剤には、ヒトおよびウシ血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質;単糖(例えばガラクトース、D−マンノース、ソルボースなど)、二糖(例えばラクトース、トレハロース、スクロースなど)、シクロデキストリンおよび多糖(例えばラフィノース、マルトデキストリン、デキストランなど)を含む炭水化物;疎水性アミノ酸(例えばトリプトファン、チロシン、ロイシン、フェニルアラニンなど)はもちろんのこと、グルタミン酸一ナトリウム、グリシン、アラニン、アルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸;ベタインなどのメチルアミン;硫酸マグネシウムなどの賦形剤塩;3価以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、グルセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどのポリオール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;Pluronics;界面活性剤;ならびにこれらの組合せが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。好ましい賦形剤には例えばトレハロース、スクロースおよびマンニトールが含まれる。他の種類の賦形剤、粘膜接着剤(mucoadhesive)は、APIと粘膜表面との接触を増大させるために使用されることが多い。粘膜接着剤の例には、例えばキトサン、デルマタン硫酸、コンドロイチンおよびペクチンが含まれる。さらに、APIの溶解性を向上させる従来の補助溶媒を、本明細書に開示されたSFDプロセスに適した液体製剤に加えることができる。
【0156】
粘膜接着剤が使用されるとき、それらは一般に、約1から95重量%の範囲で使用され、約1から50重量%であることが好ましく、約5から50重量%であることがより好ましく、約5から20%であることが特に好ましい。凍結保護剤は一般に約5重量%から約95重量%の濃度で使用される。
【0157】
本発明の乾燥粉末を、患者に送達される粉末中の治療薬の濃度を低減させるために使用される増量剤または担体と組み合わせることができる。すなわち、単位用量あたりより多くの物質を含むことが望ましい場合がある。増量剤を使用して粉末の取扱い性を向上させることもできる。適当な増量剤は(吸水を避けるために)一般に結晶性であり、これにはラクトースおよびマンニトールが含まれる。ただし、これに限定されるわけではない。したがってラクトースなどの増量剤が加えられる場合、これらは様々な比率で加えることができ、対象となる治療薬と増量剤の比が約99:1から約1:99であることが好ましく、約1:5から約5:1であることがより好ましく、約1:10から約1:20であることが特に好ましい。
【0158】
本発明は、本発明の組成物を、本明細書に開示された皮内投与とそれ以外の送達経路とを組み合わせて投与することを含み、他の送達経路には、例えば皮下−皮内境界面、鼻腔内(IN)、非経口投与(例えば筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外、粘膜(例えば鼻腔内および経口経路)、腫瘍内、腫瘍周囲、局所および表皮経路が含まれる。本発明の組成物は、都合のよい任意の経路(例えば注入またはボーラス注入)によって、上皮または粘膜皮膚内膜(例えば口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通した吸収などにより投与することができ、他の生物活性作用物質と一緒に投与することができる。投与は全身または局所投与とすることができる。さらに、例えば吸入器またはネブライザおよびエーロゾル化剤を含む製剤の使用によって、肺からの投与も使用することができる。例えばそれぞれその全体が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27および28を参照されたい。
【0159】
5.3.2 治療に対する有用性の特性評価
本発明の組成物、予防薬または治療薬のいくつかの態様は、ヒトに使用する前に、所望の治療活性に関して、生体外で、細胞培養系で、および齧歯類動物モデル系などの動物モデル系で試験されることが好ましい。例えば、特定の組成物の投与が望ましいかどうかの判定に使用することができるアッセイには細胞培養アッセイが含まれ、このアッセイでは、患者の組織試料を培養によって成長させ、これを本発明の薬剤組成物に暴露しまたは他の方法で本発明の薬剤組成物と接触させ、組織試料に対する当該組成物の効果を観察する。組織試料は患者から生検によって得ることができる。この試験は、個々の患者にとって治療上最も有効な予防または治療分子の識別を可能にする。様々な特定の実施形態では、自己免疫性または炎症性障害に関与する細胞タイプのうちの代表的な細胞(例えばT細胞)を用いて生体外アッセイを実施して、本発明の薬剤組成物が当該細胞タイプに対して望ましい効果を有するかどうかを判定することができる。
【0160】
ヒトに使用する前に、適当な動物モデル系で予防および/または治療薬の組合せを試験することができる。このような動物モデル系には、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギなどが含まれる。ただし、これらに限定されるわけではない。当技術分野で周知の任意の動物系を使用することができる。本発明の特定の実施形態では、予防および/または治療薬の組合せがマウスモデル系で試験される。このようなモデル系は広く使用されており、当業者には周知である。予防および/または治療薬は繰り返し投与することができる。この方法のいくつかの態様を変更することができる。前記態様には、予防および/または治療薬を投与する期間(temporal regime)、このような予防および/または治療薬を別々に投与するのか、あるいは混合剤として投与するのか、などが含まれる。
【0161】
本発明の予防および/または治療手順(protocols)の毒性および効力は、細胞培養または実験動物での標準製薬学手法、例えばLD50(母集団の50%が死亡する用量)およびED50(母集団の50%に対して治療上有効な用量)を決定するための製薬学的手法によって判定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、これは比LD50/ED50で表すことができる。大きな治療指数を示す予防および/または治療薬が好ましい。有毒な副作用を示す予防および/または治療薬を使用してもよいが、障害を持つ組織部位を標的としてこのような予防および/または治療薬を送達する送達系を設計して、障害を持たない細胞に対する潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を低減させるように注意しなければならない。
【0162】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータを、ヒトに使用する予防および/または治療薬の用量範囲を処方する際に使用することができる。このような予防および/または治療薬の用量が、ED50を含むある循環濃度範囲内にあり、毒性をほとんどまたはまったく持たないことが好ましい。用量は、この範囲内で、使用される剤形および利用される投与経路に応じて変更することができる。本発明の方法で使用される任意の作用物質について、治療上有効な用量を細胞培養アッセイによって最初に推定することができる。動物モデルでは、細胞培養で決定されたIC50(すなわち症状の最大抑制の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成する用量を処方することができる。このような情報を使用してヒトに対して有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中濃度は、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0163】
ヒト異種移植片を有するSCIDマウスモデル・トランスジェニックマウス・ヌードマウスなどの癌研究用の様々な実験動物モデル、ハムスター・ウサギなどの動物モデル(これらは、当該技術分野で公知であり、また、全体が参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12および非特許文献13に記載されている)を使用することによって、本発明に従って使用される治療薬の抗癌作用も決定することができる。
【0164】
腫瘍細胞株または悪性細胞株の細胞を使用して、治療薬および方法をスクリーニングすることができる。当技術分野の多くの標準アッセイを使用して、このような細胞の生存および/または増殖を評価することができる。例えば、細胞増殖は、H−チミジンの取込みを測定することによって、細胞を直接に計数することによって、あるいはプロトオンコジーン(例えばfos、myc)などの知られている遺伝子の転写活性または細胞周期マーカの変化を検出することによってアッセイすることができ、細胞生存率はトリパンブルー染色法によって評価することができ、分化は、形態の変化、軟寒天での増殖不良および/またはコロニー形成、あるいはまたは3次元基底膜または細胞外基質プレパラートでの管状網の形成に基づいて視覚的に評価することができる。
【0165】
さらに、当業者に知られている任意のアッセイを使用して、本明細書に開示された癌、炎症性障害または自己免疫症の治療または予防のための組合せ治療の予防上および/または治療上の有用性を評価することもできる。
【実施例】
【0166】
6.1 100ng用量を使用したIL−12の抗腫瘍活性に対する送達経路の影響
6.1.1 手順
C57BL/6Jマウス(Charles Rivers Labs,Inc)の右上側腹部に、1×10個のB16F10黒色腫細胞(ATCC)をSC接種した。腫瘍接種1週間後(7日目)に、無作為にマウスを選び出し、PBS溶液50μl中のrmIL−12(R&D Systems)100ngを腫瘍接種部位の近くにIDまたはSC注射することによって、またはIP注射によって処置した(n=25/条件)。PBS溶液50μlだけを使用した追加のID対照条件も実施した。ID処置は、34G、1mmの針を用い、修正Mantoux法を使用して投与した。SCおよびIP投与は、標準の25G×3/4インチ針で実施した。処置は1日おきに13日目まで合計4回続けた。mm(長さ×幅)で表した腫瘍測定値を、7、11、14、18、21、25および28日目に集めた。IL−12およびIFN−γの分析のため、0、14、21および28日目に血液試料を集めた。CD49b(NK)細胞のFACS分析のため、条件ごとに5匹のマウスから、流入領域リンパ節(draining lymph node)および脾臓組織試料を14および24日目に集めた。採血またはFACS分析に使用していない各条件10匹の予め選択しておいたマウスの死亡率データを集めた。死亡率は、自然死または腫瘍サイズ400mm超による安楽死によって決定した。統計データはt−検定:不等分散を過程した2標本(Two−Sample Assuming Unequal Variances)を使用して計算した。例えば、ともに参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献14および非特許文献15を参照されたい。
【0167】
6.1.2 FACS分析
各処置群5匹のマウスから、右側表面の鼠径流入領域リンパ節(DLN)および脾臓を別々に切除し、DLNは、冷HBSS(Invitrogen Life Technologies、Carlsbad、米カリフォルニア州)を含むペトリ皿にとった。脾臓は、冷赤血球溶解緩衝液(016M NHClおよび10mM KHCO、Sigma、St.Louis、米ミズーリ州)10mlの中に入れた。DLNおよび脾臓はそれぞれ機械的破壊によって処置して、単個細胞浮遊液とした。得られた細胞溶液の1:20希釈を使用して細胞数を計数した。細胞を1500rpm、15分間、4℃の遠心処置にかけた。上澄みは吸引し、細胞は、HBSS緩衝液5mlで1回洗浄し、同じ条件を使用して再び遠心処置した。上澄みを吸引し、細胞を、フロー染色(flow staining)のため、Pharmingen染色液緩衝液(Pharmingen、BD Biosciences、San Jose、米カリフォルニア州)に2〜4×10細胞/mlの密度で再懸濁させた。再懸濁細胞約1×10個(25μl)を96ウェルプレートのウェルに加えた。このウェルの細胞に染色カクテル(25μl、staining cocktail)を加え、ピペット操作によって混合した。このカクテルは、適切なものとして、Pharmingen染色液緩衝液中の以下の標識抗体の組合せからなり、濃度はそれぞれ0.01mg/mlである:FITC−CD49b(Pan−NK細胞、クローンDX5、Pharmingen、BD Biosciences、San Jose、米カリフォルニア州)、PE−CD19(Pan B細胞、クローン1D3、Pharmingen、BD Biosciences、San Jose、米カリフォルニア州)、CY5PE−B220(顆粒球および単球、クローンRA3−6B2、Pharmingen、BD Biosciences、San Jose、米カリフォルニア州)、APC−CD4(Tヘルパー細胞、クローンRM4−5、Pharmingen、BD Biosciences、San Jose、米カリフォルニア州)、およびAPC−CY7−CD8(細胞傷害性T細胞、クローンBC−CD8a、Biocarta、San Diego、米カリフォルニア州)。この細胞/染色液混合物を4℃の暗所で1時間培養した。これらのウェルをFacsFlow緩衝液(Pharmingen、BD Biosciences、San Jose、米カリフォルニア州)150μlで洗浄し、1500rpm、5分、4℃の遠心処置にかけた。上澄みを吸引し、洗浄を繰り返した。洗浄した細胞を冷FacsFlow緩衝液1mlに再懸濁させ、氷に載せ、FACS Vantage SEを使用したフローサイトメトリによって分析されるまで暗所に置いた。細胞分析は、B細胞を排除し、CD4+細胞、CD8+細胞およびCD49b+(NK細胞)を定量するように設計した。例えば、いずれも参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献16、17、18、19、20および21を参照されたい。
【0168】
6.1.3 腫瘍成長
図1に示すとおり、ID送達されたIL−12だけが、腫瘍成長の抑制に対して有意な効果を示した。18日目には、ID投薬条件において、腫瘍サイズの有意な(p<0.0002)低下がIP送達に対して見られた。同様の効果が、ID送達PBS条件(p<0.0000005)およびSC条件(p<0.00003)に対しても見られた。この有意な傾向はこの試験の終了時、すなわち28日目まで続いた。
【0169】
この試験におけるIL−12投与量は、文献に開示された有効IP投与量の1/2から1/10である。例えば非特許文献22および23を参照されたい。これによって、この試験において見られたIL−12のIP投薬での反応の欠如を説明することができる。これによって、他の発表された処置に比べて用量を低減する効果があることを示している。リンパ管を直接の標的とすることによる低用量はコストの低減を意味し、おそらくは副作用の低減を示唆していると考えられる。
【0170】
6.1.4 死亡率
図2に示すとおり、28日目において、ID送達によってIL−12を投与した群の死亡率(10匹中7匹生存)は、IP送達またはSC送達によってIL−12を投与した他の群の死亡率(いずれも10匹中3匹生存)よりも低かった。ID送達によってIL−12を投与した群に対して示された死亡率はさらに、ID送達によってPBSだけを投与した群の死亡率(10匹中3匹生存)よりも低かった。したがってIL−12のID送達は、他の経路による送達または対照と比べたときに、28日目において、200%を超える生存性を示す。
【0171】
6.1.5 NK細胞数
IFN−γはIL−12送達の治癒作用であると考えられる。IL−12は、NKおよびT細胞からのIFN−γ産生を増大させ、NK細胞の増殖および分化を促進することが示されている。したがってNK細胞の増加はIL−12治療の効力の増強を示す。特定の理論によっては限定されないが、NK細胞の増加は、NK細胞の増強された増殖または分化、IFN−γの増強された産生および放出、腫瘍伝播部位へのより大きなターゲティング、リンパ管取込み経路を介した免疫調節プロセスの効果的なターゲティングによるより良好な効力、および/または以上の組合せによって引き起こされると考えられる。
【0172】
図3に示すとおり、IL−12治療計画完了の翌日(14日目)の他の条件に対するID送達群のNK細胞の増加は明らかであり、24日目にはID群での相対的な減少が見られたが、それでも24日目の他の条件よりも相対的に増加している。
【0173】
6.1.6 統計データ
t−検定から得られた以下の18日目と28日目の統計データは、試験された他のすべて送達に対するIL−12のID送達の有意性を示している。
【0174】
【表6】

【0175】
【表7】

【0176】
6.2 IL−12の抗腫瘍活性に対するIDおよびIP送達の効果
C57BLマウスに、100万個のB16F10黒色腫細胞(ATCC,Inc.)を皮下(SC)接種した。処置は、腹腔内(IP)または皮内(ID)(腫瘍側)投与として与えた接種後7日目の2段階(10および100ng)のIL−12注射によって開始した。IL−12投与は1日おきに合計4回繰り返した。対照として、同じ量の完全培地(complete medium、PBS)を腫瘍側にID注射した。血清および組織試料のため、真の陰性(true negative)試験(n=15/条件)もあわせて実施した。7、11、14、18および21日目に体重および腫瘍サイズを測定した。さらに、IL−12分析のため血液試料を週に1回集めた。腫瘍の直角方向の2つの直径をデジタル式カリパスで測定し、腫瘍細胞接種後の日数に対して平均腫瘍サイズをプロットした。
【0177】
6.2.1 IL−12の10ng投与における腫瘍サイズに対するIDおよびIP送達の効果
処置後の最初の測定である11日目の測定では、ID投与条件(77mm)の成長速度は、IP投与条件(68mm)と同様であった。14日目、ID処置したマウスの腫瘍は56%増大して120mmとなり、IP処置したマウスの腫瘍は以前の測定から63%増大して113mmとなった。これらの処置群はともに、11日目と14日目にそれぞれ平均腫瘍サイズ74mmおよび126mm(70%)を与えたPBS処置と比べても同様の腫瘍サイズを示した。しかし、18日目、ID処置マウスの腫瘍は6%縮小(112mm)し、IP処置マウスの腫瘍は82%増大(206mm)した。21日目、ID条件では121%増大して250mmとなり、IP条件では27%増大して262mmとなった。このIDおよびIP条件の平均腫瘍サイズは、21日目で259mmであったPBS投与マウスと同様であった。ID送達がIPよりも有利であったのは、IL−12の10ng投与では18日目だけであった。IL−12注射は13日目に終了しており、より幅広いまたはより頻度が高い投薬スケジュールにわたって処置が与えられた場合にはこの有利性はより顕著となる可能性がある。
【0178】
6.2.2 IL−12の100ng投与における腫瘍サイズに対するIDおよびIP送達の効果
処置後の最初の測定である11日目の測定では、IP投与条件(70mm)と比べたときに、ID投与条件(54mm)において平均成長速度の低減が見られた。14日目、ID処置したマウスの腫瘍は39%増大して75mmとなり、IP処置したマウスの腫瘍は以前の測定から80%増大して126mmとなった。ID処置群だけが、11日目と14日目にそれぞれ平均腫瘍サイズ74mmおよび126mm(70%)を与えたPBS処置に比べてより小さな腫瘍サイズおよび成長速度を示した。21日目までに、ID条件では89%増大して142mmとなり、IP条件では139%増大して302mmとなった。IL−12の100ng投与では、平均腫瘍成長速度はIP条件よりもID条件で低く、最終的な平均ID腫瘍サイズはIPよりも47%小さかった。
【0179】
このID処置群とIP処置群の腫瘍サイズの差は、IDではIPよりも少ない用量を投与して、同じかまたはより良好な全身性の反応を得ることができることを示唆しており、これは用量の節減および効力の増大を意味する。注射量の低減はさらに、高注射量で見られる副作用の量および重症度を低下させるはずである。腫瘍負荷が小さいことはさらに転移活性の低下および生存率の向上を意味する。
【0180】
6.3 IL−12の腫瘍活性に対するID送達部位の効果
C57BLマウスに、100万個のB16F10黒色腫細胞(ATCC,Inc.)を皮下(SC)接種した。処置は、腫瘍側または反対側にID投与として与えた接種後7日目の100ngのIL−12注射によって開始した。IL−12投与は1日おきに合計4回繰り返した。対照として、同じ量の完全培地(PBS)を腫瘍側にID注射した。血清および組織試料のため真の陰性(n=15/条件)試験もあわせて実施した。7、11、14、18および21日目に体重および腫瘍サイズを測定した。さらに、IL−12分析のため血液試料を週に1回集めた。T細胞、B細胞およびNK細胞のため、14日目および24日目に流入領域リンパ節および脾臓試料を集め、GP100FACS分析を実行した。腫瘍の直角方向の2つの直径をデジタル式カリパスで測定し、腫瘍細胞接種後の日数に対して平均腫瘍サイズをプロットした。
【0181】
6.3.1 結果
腫瘍の隣に投与したID条件と反対側に投与したID条件との間の腫瘍サイズの有意な差は18日目に初めて見られた。14日目の75mmからそれぞれ、反対側注射(IDcs)が実施された腫瘍は91%増大し(143mm)、腫瘍側注射(IDts)が実施された腫瘍は68%だけ増大して126mmとなった。21日目までに、IDcsはさらに29%増大し、IDtsは14%だけ増大して142mmとなった。これらのID条件はともに、21日目の平均腫瘍サイズが259mmであったPBS処置されたマウスに比べて有意に改善された。IDts条件の最終的な腫瘍サイズはIDcs条件よりも23%小さく、腫瘍に関連したリンパ管を直接の標的とすることの利点を証明している。
【0182】
腫瘍注射部位の近くに皮内投与された100ngのIL−12注射は、全体の腫瘍成長を最も低減させた。特定の理論によっては限定されないが、これは、腫瘍の輸送、転移および免疫応答に関与する系である腫瘍流入領域リンパ節を他の条件よりも効率的に標的とするID注射の能力を証明している。反対側に投与されたIL−12のID注射は、腫瘍の近くに投与されたID注射ほどには有効ではなかったが、IP条件よりも効果はあった。特定の理論によっては限定されないが、これは、腫瘍に直接に関係するリンパ管にアクセスしなくても、リンパ管を直接の標的とすることによって、免疫応答が達成されるためである可能性がある。
【0183】
6.4 ID送達を使用した肺組織のターゲティング
RSV特異性モノクローナル抗体48(RSV MAB48)の組織および循環濃度を測定することによって、筋肉内(IM)送達経路とID送達経路とを比較した。RSV MAB48は、精製RSV融合タンパク質でBalb/cマウスに免疫性を与えることによって産生させた。初回抗原刺激を受けた(primed)B細胞を集め、PEG法によって653骨髄腫株と融合させた。当業者なら、当技術分野で周知の方法を使用して他の適当なモノクローナル抗体を得ることができる。
【0184】
肺組織を集め、抗体の存在についてアッセイした。肺試料は、注射後3時間、24時間、7日、14日、21日および28日目に集めた。望ましい試料採取を達成するためこの試験は6段階で実施した。それぞれの組織収集時および経路ごとに2回の繰り返しないし2匹のマウスを指定し、それぞれの時点で組織回収のため2つの試料が提供されるようにした。
【0185】
6.4.1 詳細な手順
6.4.1.1 ELISA用の肺組織溶解質の調製
肺を組織回収し、0.9%NaClですすぎ、−20℃で凍結し、−20℃のVacutainer(登録商標)(5ml)の中でアッセイまで保管した。溶解の前に、組織を解凍し、ハンクス平衡塩溶液(4ml)および移送用ピペットを使用して、肺表面から残った血液を完全にすすぎ流した。次いでハンクス平衡塩溶液を容器から除去し、廃棄した。CHO 2x溶解緩衝液1ml[1mMフェニルメタンスルホニルフルオリド、0.25Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンヒドロクロリド、PH/mV/温度計と水酸化ナトリウムペレットを使用してpH8.0に調整、0.05M塩化ナトリウム、0.5%Nonidet(登録商標)P40代用品(Substitute)溶液、0.5%デオキシコール酸ナトリウムを含んでいる]をそれぞれの肺のセットに加えた。Vacutainerを安定に保持し、可変速ホモジナイザを肺溶液の中へ下ろして、ブレードを肺塊の上に置いた。可変速ホモジナイザに20から30秒かけて、肺組織を完全に破砕した。過度のホモジネーションおよび抗体を劣化させる可能性がある熱の発生が起こらないように注意した。超音波処置のため、このホモジナイザにかけた肺組織溶液を、Falcon(登録商標)Blue Max(商標)15mlポリスチレンプラスチックコニカルチューブに移した。これを氷上で3回、約30秒超音波処置した。次いで、ホモジナイザおよび超音波処置にかけたこの肺組織懸濁液をマイクロ遠心管に移し、Marathon Micro H Fisher Scientificマイクロ遠心機に入れて15分間回転させた。その後、上澄みを取り出し、タンパク質および抗体のアッセイまで−20℃で保管した。沈殿は廃棄した。
【0186】
6.4.1.2 アッセイ標準
BCA(ビシンコニン酸、bicinchoninic acid)試薬(Pierce Cat #23225)を使用して総タンパク質量のアッセイを実施した。
【0187】
未処置のコトンラット(抗体未投与)から肺組織を採取し、前述のとおりに溶解させ、回収された全体を5本のバイアルに分け、4本のバイアルに既知量(それぞれ300μg/ml、30μg/ml、3μg/mlおよび300ng/ml)のRSV MAB48を加えることによってアッセイ標準を作製した。陰性対照のために残りの1本のバイアルにはMABを加えなかった。MABを加えた試料およびMABを加えなかった対照試料はそれぞれELISA試料緩衝液で希釈して、1:100から1:10までの対数希釈溶液を作製した。
【0188】
6.4.1.3 ELISAアッセイ
Zymed Rabbit抗マウスIgG2aストック(500μg/ml、カタログ番号61−0200、ロット番号20168583)を、カーボネート・コーティング緩衝液(Sigma)で3μg/mlに希釈した。96ウェルプレートのウェル(内側60ウェルのみ)を、3μg/ml Zymed Rabbit抗マウスIgG2aカーボネート溶液100μlで覆い、ふたをして、COインキュベータの中に1時間置いた。覆いに用いた溶液をウェルから捨て、紙タオルにプレートを押し当てて、残存する、覆いに用いた溶液を除去した。PBS/Tween20(Sigma P3563)中の5%乾燥粉乳250μlで非特異部位をブロックした。プレートをパラフィルムで覆い、COインキュベータ(37℃)中で2時間インキュベートした。前記ブロックに用いた溶液を捨て、プレートをPBS/Tween20で3回洗浄し、紙タオルにプレートを押し当てて残存するすべての洗浄液を除去した。試料およびRSV 48.4.1対照(1次抗体)を適切に希釈して標準曲線に当てはめた。標準曲線は、300ng/100μlウェル、100ng/100μlウェル、30ng/100μlウェル、10ng/100μlウェル、3ng/100μlウェル、1ng/100μlウェル、0.3ng/100μlウェルのRSV MAB48およびブランクからなる。PBS/Tween20中の0.5%乾燥乳に試料を、各希釈2反復で希釈し、100μlをそれぞれのウェルに加えた。プレートは次いで、COインキュベータ中で1時間インキュベートした。
【0189】
1次抗体溶液を捨て、プレートをPBS/Tween20で3回洗浄し、紙タオルにプレートを押し当てて残存する洗浄液を除去した。次いでHRP抱合体(conjugate)100μlをそれぞれのウェルに加えた(ヤギ抗マウス抱合体プール、goat anti−mouse conjugate pool)。HRP抱合体プールを調製するため、抗IgG2a(Southern Biotech)2μ1および抗IgG(Sigma)4μ1を、粉乳0.5%(w/v)を含むPBS/Tween20溶液30mlに加えた。それぞれのウェルにこの溶液100マイクロリットルを加えた。ふたをしたプレートをCOインキュベータ(37℃)中で1時間インキュベートした。次いでこの2次抗体溶液を捨て、プレートをPBS/Tween20で4回洗浄し、紙タオルにプレートを押し当てて残存する洗浄液を除去した。TMB(Sigma T8665)基質100マイクロリットルをそれぞれのウェルに加え、暗所で30分間顕色させた。0.5M HSO200マイクロリットルをそれぞれのウェルに加え、450ナノメートルの吸光度を読み取った。
【0190】
未処理のOD値に(Microsoft Excelの)予測機能を適用することによって、抗体の実際の重量を決定した。この予測機能は、既存の値を使用することによって将来の値を計算しまたは予測する。例えば所与のx値に対する予測値がy値であるとする。既知の値は、既存のx値とy値であり、新しい値は直線回帰を使用することによって予測される。
【0191】
6.4.1.4 モデル抗体
この単一経路ID対IM試験で使用される抗体(RSV MAB48)はネズミIgG2aである。RSV MAB48は融合タンパク質を認識し、組織培養実験において感染をブロックすることが示されている。該抗体は腹水の中で繁殖させ、Zymed Protein−Aカラムで精製し、1/10PBS中で透析して、抗体溶解度を失うことなくできるだけ多くの賦形剤を除去した。
【0192】
6.4.1.5 投与量
各マウスに15mg/kg体重で注射した。重量のほぼ半分が賦形剤であるとすると、コトンラットに、実際には約7.5mg/kgの抗体を投与したことになる。
【0193】
IMおよびID注射に対する試料計算は以下のように示される。
コトンラット重量=98.9グラム
15mg/kgで抗体溶液75μlを投与するためには、1.48mg/75μ1の濃度が必要である。
注射器無効分を含めるため、200μl中に3.94mgを入れ、75μlを投与した。
6.4.1.6 送達装置および方法
IMおよびID注射は30GのBD針を使用して実行した。IM注射は、後脚の筋肉をつまんで深さを出すことによって実行した。斜端(bevel)が筋肉の中に埋まるようにある角度で針を挿入し、IM注射量を送達した。これは筋肉内で触知可能だった。ID注射は、可能な最も浅い角度で入り、注射の前に斜端を上に向けて「水疱(bleb)」を生み出すことによって実行した。
【0194】
6.4.2 結果
注射後3時間、24時間、7、14、21および28日目の肺組織のアッセイから、ID投与されたマウスから得られた肺組織の器官抗体が、IM投与されたマウスから得られた肺組織の器官抗体に比べて増強されていることが、最初のアッセイ、すなわち注射後3時間から観察された(図4)。この増強が観察された最後の時点は注射後21日であった。注射後28日目、ID投与マウスとIM投与マウスとの間に器官抗体の差がないことが観察された。
【0195】
最も大きなパーセント差は注射後3時間で記録され、ID送達マウスは、肺の中の抗体がIM送達マウスよりも350%多いことを示した。6つの時点のすべてのアッセイを総合した全体の増強は約18%であった(ID投与マウス約57ngに対して、IM投与マウス約48ng)。さらに、3時間後のID試料は、肺の中での抗体のより速い発現を示し、1週目のID試料は、肺の中の抗体のより高いピークレベル(Cmax)を示した。
【0196】
このデータは、ID送達が、投与抗体量を増大させることなく標的組織(肺)内の抗体の濃度をより高くすることでできることを証明している。したがって、同様の保護濃度を達成するのに、皮内送達では、筋肉内送達に比べて少ない抗体送達量ですむ。コストの利点に加えて、肺の中の標的最低値(target trough value)を維持するのにより少ない量の物質でよい場合には、ヒト抗マウス抗体(HAMA)などの望ましくない副作用を引き出すリスクが低下する。特定の理論によっては限定されないが、この増強された生体利用効率は、有効化合物のより良好な吸収を促進し、かつ/または薬物の望ましくない劣化を最小限に抑えるように、ある組織部位を注射の標的にしたことによると考えられる。
【0197】
6.5 用量分割2経路試験
6.5.1 実験設計
コトンラットで実施された社内での予備的な生体利用効率試験で、抗体の直接鼻腔内投与によって肺組織内の抗体のピーク濃度をより高くすることができることが証明された。この観察は、抗体の治療濃度と予防濃度の両方を得るための用量分割2経路戦略(split−dose dual route strategy)の形成につながった。この試験はBalb/cマウスで実行した(群n=5)。
【0198】
最適なIN送達量およびその後の試料採取時間を決定するため、始めに一連の予備実験を実施した。肺材料の収集は、その時間調整を除いてセクション6.4で説明したとおりに実施した。この試験のマウスは異なるRSV特異MAB[Palivizumab(パリビズマブ)]を投与されるため、肺アッセイのELISAはセクション6.4で説明した方法とは異なる。これらの予備実験において、Balb/cマウスの群は、15mg/kg体重のSynagis Palivizumab(シナギス・パリビズマブ)を3回の別々のIN投与量で投与された。投与後、1、3および5時間目に肺組織を集めた。試験群および対照群ごとに5匹のマウスを使用した。それぞれのマウスから肺組織全体を集め、溶解緩衝液中でホモジナイズし、遠心分離によって清澄化し、上澄みを、固定化RSV−FPペプチドに対する酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)にかけた。同じ試験または対照群の肺ホモジネートはアッセイのため一緒にした。
【0199】
6.5.2 ELISA手順
ELISAは、以下の例示的なELISA手順を使用して実行した。
1.RSV F64量体ペプチド貯蔵物(stock)1mg/mlを冷凍庫から取り出す。カーボネート・コーティング緩衝液(Sigma)を用いて貯蔵物を10μg/mlに希釈する。
2.96ウェルプレートのウェル(内側の60ウェルのみ)を、10μg/ml RSV FP64量体100μlで覆う。ふたをし、COインキュベータの中に1時間置く。
3.ウェルの覆いに用いた溶液を流しに捨て、プレートを紙タオルに押し当てて残存する覆いに用いた溶液を除去する。非特異部位を、PBS/Tween20(Sigma P3563)中の5%乾燥粉乳250μlでブロックする。プレートをパラフィルムで覆い、COインキュベータ(37℃)の中で2時間インキュベートする。
4.ブロックに用いた溶液を流しに捨て、プレートをPBS/Tween20で3回洗浄する。プレートを紙タオルに押し当てて残存する洗浄液を除去する。
5.試料を希釈して標準曲線に合わせる。標準曲線には、300ng/100μl(ウェル)、100ng/ウェル、30ng/ウェル、10ng/ウェル、3ng/ウェル、1ng/ウェル、0.3ng/ウェルおよびブランクのパリビズマブを使用する。PBS−Tween20中の0.5%乾燥乳で試料を希釈する。希釈ごとに2反復で行う。それぞれのウェルに100μlを入れる。COインキュベータの中でプレートを1時間インキュベートする。
6.1次抗体溶液を流しに捨て、プレートをPBS/Tween20で3回洗浄する。プレートを紙タオルに押し当てて残存する洗浄液を除去する。
7.それぞれのウェルにHRP抱合体100μlを加える(ヤギ抗ヒトIg)。HRP抱合体の通常在庫(working stock)を調製するため、粉乳を0.5%(w/v)含むPBS/Tween−20溶液30mlに抗ヒトIg(Promega)2μlを加える。攪拌し、それぞれのウェルに100μlを加える。ふたをしたプレートをCOインキュベータ(37℃)の中で1時間インキュベートする。
8.2次抗体溶液を流しに捨て、プレートをBS/Tween20で4回洗浄する。プレートを紙タオルに押し当てて残存する洗浄液を除去する。
9.TMB(Sigma T8665)基質100μlをそれぞれのウェルに加え、暗所で30分発色させる。
10.0.5M HSO200μlをそれぞれのウェルに加え、450ナノメートルの吸光度を読む。
【0200】
未処理のOD値に(Microsoft Excelの)予測機能を適用することによって、抗体の実際の重量を決定する。
【0201】
6.5.3 送達装置および方法
30GのBD針(再注文番号305106)を使用してIM注射を再び実行した。IM注射部位は、後脚の筋肉をつまんで深さを出すことによって準備した。針は、斜端が筋肉の中に十分に埋まるような角度に挿入した。注射量を送達した。これは筋肉内で触知可能だった。
【0202】
IN用量は、使い捨て先端が固定されたP200 Raninピペットマンを用いて投与した。
【0203】
6.5.4 結果
図5は、鼻腔内投与量の増大と一致した肺抗体濃度の一様な増大を示している。IN送達された抗体は短命だった。しかし、100μl群で検出された抗体のピーク濃度は、他の送達経路で記録された濃度の少なくとも2倍である。これらの知見は、コトンラットの試験で得られた以前の観察と一致していた。IN送達された抗体はすぐに消失するが、この試験に含まれる抗体濃度および器官量の場合、正常な親和力を有する抗体なら数分間存在すればよい。
【0204】
上記の知見を利用して、IM送達されたパリビズマブの生体利用効率を、IN経路とIM経路の間で分割した用量と比べた。Balb/c(群n=5)マウスは、シナギス・パリビズマブを15mg/kg体重の割合で投与された。すべてのIMおよびIN注射量は75μlであった。肺組織は、投与後1時間および1週間目に集めた。セクション6.4で先に説明したとおりに、それぞれのマウスから肺組織全体を集め、溶解緩衝液中でホモジナイズし、遠心分離によって清澄化した。清澄化したすべてのホモジネートに対してBCAタンパク質アッセイを実施し、等タンパク質ベースでの試験組織と対照組織の比較を可能にした。清澄化した肺ホモジネートを群ごとに一緒にし、RSV−FPペプチドで覆ったELISAプレートウェルに入れた。図6は、望ましい結果と望ましくない結果の例を示している。
【0205】
図7は、15%IN/85%IMの用量分割によって、直後に肺抗体濃度はかなり上昇するが、1週間後に存在していなければならない予防濃度の低減は見られないことを示している。以前に、1週間後の競合する抗体濃度は、1か月後に持続する濃度の信頼できる指標であることが判明した。IN/IM群から集められた肺組織中に見られた抗体の量は、生体外でアッセイしたときの感染を中和する抗体の濃度に一致している。対照的に、標準IM投与では1時間後も検出可能な抗体の量に達しなかった。1週間後、IM群とIN/IM群の肺抗体の濃度は同等であった。図8は、抗体濃度6μg/mlが多数のウイルスを生体外でブロックすることができることを示している。
【0206】
6.5.4.1 投与後1時間
図4に示すように、用量分割2経路送達戦略では、清澄化した肺組織ホモジネート1mlあたり>6μgである、肺組織内におけるシナギス・パリビズマブの治療濃度が達成された。対照的に、シナギス・パリビズマブの標準IM送達では、肺ホモジネート中に抗体は検出できなかった。
【0207】
6.5.4.2 投与後1週間
分割経路送達戦略によって、清澄化した肺組織ホモジネート1mlあたり>100ng(標準TM送達で一般に達成される抗体の予防濃度)の、肺組織中のシナギス・パリビズマブの濃度が達成された。
【0208】
この2経路戦略は、長期予防濃度を犠牲にすることなく肺組織内の抗体の治療濃度を達成する。これらはすべてFDAが承認した標準用量を用いて達成された。RSV疾患特異的抗ウイルス薬および抗炎症薬を、同じ用量分割2経路法によって同時に投与することもできる。
【0209】
6.6 ウイルスの感染
続行する試験で、発明者は、IN送達された標準パリビズマブ用量の15%で、既存の感染を消散させることができることを証明した。マウスに1.3×10のプラーク形成単位を感染させた。感染3時間後、試験群を1回量のパリビズマブ IN(〜2.25mg/kg)で処置し、対照群には食塩水を与えた。感染3日後、肺組織を集め、ホモジナイズした。得られたホモジネートをHep−2単層上へ分配し、この培養の生存可能ウイルスの形跡を監視した。それぞれのマウスから回収されたホモジネート全体の量は約1.5から2mlであり、それぞれの試験ウェルに入れた量は100μlであった。下表に示すように、プラーク形成単位は観察されず、シナギス INは感染を消散させた。
【0210】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】IL−12による腫瘍成長の抑制に対するIL−12投与経路の影響を示す図である。
【図2】腫瘍をもつマウスの死亡率に対するIL−12投与経路の影響を示す図である。
【図3】FACS分析によって決定されたDLN中で検出されたNK細胞パーセントに対するIL−12投与経路の影響を示す図である。
【図4】IDおよびIM送達後のRSV特異抗体の肺濃度を示す図である。この面積グラフは、3時間、24時間、1週、2週、3週および4週の動物から集められた肺組織で検出された抗体の量を示す。
【図5】Balb/cモデルの最適なIN送達量および肺摘出時間の決定を示す図である。
【図6】用量を分割することによる2つの可能な生体利用効率の結果を示す図である。
【図7】肺組織溶解物中のシナギス(synagis)を示す図である。
【図8】シナギス・プラーク測定法(synagis plaque assay)の結果を示す図である。
【図9】本発明に従って設計された針アセンブリの分解透視図である。
【図10】図9の実施形態の部分断面図である。
【図11】注射装置を形成するために注射器の胴体に取り付けられた図9の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療が必要なヒト対象の癌を治療するための方法であって、前記ヒト対象の皮膚の皮内区画に少なくとも1種の治療薬を送達することを含み、前記治療薬は、前記治療薬が皮内送達以外の経路によって送達されたときに比べて、前記腫瘍の成長をより低減させることを特徴とする方法。
【請求項2】
ヒト対象の癌を治療するための方法であって、前記ヒト対象の皮膚の皮内区画に少なくとも1種の治療薬を送達することを含み、前記治療薬は、前記治療薬が皮内送達以外の経路によって送達されたときに比べて、前記ヒト対象の寿命の中央値を増加させることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記皮内送達以外の経路は皮下送達であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記皮内送達以外の経路は筋肉内送達であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記皮内送達以外の経路は静脈内送達であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記皮内送達以外の経路は表皮送達であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記癌は、リンパ腫、白血病、乳癌、黒色腫、肺癌、腎臓癌および結腸直腸癌からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の治療薬をヒト対象に投与するための方法であって、皮内送達以外の経路によって前記治療薬が送達されたときに比べて、前記治療薬が特定の組織においてより高い組織生体利用効率を有するように、前記ヒト対象の皮膚の皮内区画内に前記治療薬を送達することを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記治療薬は、癌、癌の転移、腫瘍成長または感染症からなる群から選択された疾患の治療のために投与されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
疾患の予防のために少なくとも1種の治療薬をヒト対象に投与するための方法であって、皮内送達以外の経路によって前記治療薬が送達されたときに比べて、前記治療薬が特定の組織においてより高い組織生体利用効率を有するように、前記ヒト対象の皮膚の皮内区画内に前記治療薬を送達することを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
予防される前記疾患は、癌、癌の転移、腫瘍成長または感染症からなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
疾患状態の発症または進行を遅らせるために少なくとも1種の治療薬をヒト対象に投与するための方法であって、皮内送達以外の経路によって前記治療薬が送達されたときに比べて、前記治療薬が特定の組織においてより高い組織生体利用効率を有するように、前記ヒト対象の皮膚の皮内区画内に前記治療薬を送達することを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記疾患状態は、癌、癌の転移、腫瘍成長または感染症からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記治療薬は、抗癌剤、抗腫瘍薬および化学療法剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項1、2、8、10または12に記載の方法。
【請求項15】
前記治療薬は、抗体、ワクチンおよび細胞療法からなる群から選択されることを特徴とする請求項1、2、8、10または12に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体は、予防抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ネズミ抗体、ヒト抗体、キメラ抗体または抗体フラグメントからなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記治療薬は、血管新生阻害薬、サイトカインまたはケモカインからなる群から選択されることを特徴とする請求項1、2、8、10または12に記載の方法。
【請求項18】
前記サイトカインはインターロイキンまたはインターフェロンであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記インターロイキンはインターロイキン−12であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記治療薬は針またはカニューレによって送達されることを特徴とする請求項1、2、8、10または12に記載の方法。
【請求項21】
前記針または前記カニューレの放出口は約300μmから約3mmの深さに挿入されることを特徴とする請求項1、2、8、10または12に記載の方法。
【請求項22】
前記針またはカニューレは30〜36ゲージであることを特徴とする請求項1、2、8、10または12に記載の方法。
【請求項23】
前記針またはカニューレは31〜34ゲージであることを特徴とする請求項1、2、8、10または12に記載の方法。
【請求項24】
前記治療薬は、0から1mmの露出高さを有する放出口を有する少なくとも1つの小ゲージ中空針を通して送達され、前記物質の送達が深さ0.3mmから2mmまでの間で起こるように、前記放出口は、深さ0.3mmから2mmまでの間の皮膚に挿入されることを特徴とする請求項1、2、8、10または12に記載の方法。
【請求項25】
前記特定の組織は、リンパ組織、粘膜組織、リンパ節、皮膚組織、生殖組織、頚部組織、膣組織、肺、脾臓、大腸、胸腺、骨髄、血液リンパ組織およびリンパ組織からなる群から選択されることを特徴とする請求項8、10または12に記載の方法。
【請求項26】
前記リンパ組織は、上皮関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、1次リンパ組織、2次リンパ組織から選択されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記特定の組織50μgあたり前記治療薬約10pgから約30ngが、前記特定の組織に蓄積されることを特徴とする請求項8、10または12に記載の方法。
【請求項28】
前記特定の組織50μgあたり前記治療薬約10pgから約15ugが、前記特定の組織に蓄積されることを特徴とする請求項8、10または12に記載の方法。
【請求項29】
前記特定の組織50μgあたり前記治療薬約1cgから約30ngが、前記特定の組織に蓄積されることを特徴とする請求項8、10または12に記載の方法。
【請求項30】
治療が必要なヒト対象の癌を治療するための方法であって、前記ヒト対象の皮膚の皮内区画に予め選択された用量の少なくとも1種の治療薬を送達することを含み、前記予め選択された用量は、皮内送達以外の経路によって送達される用量に比べて少なくとも1/2に低減されることを特徴とする方法。
【請求項31】
前記治療薬はインターロイキン−12であることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
治療が必要なヒト対象の癌を治療するための方法であって、皮内送達以外の経路によって同じ治療薬が送達されたときに比べて、前記治療薬がより速い発現を有するように、前記ヒト対象の皮膚の皮内区画に少なくとも1種の治療薬を送達することを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
前記治療薬はインターロイキン−12であることを特徴とする請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−503435(P2007−503435A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524624(P2006−524624)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/019118
【国際公開番号】WO2005/023328
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】