説明

治療薬を標的送達するための経口速溶性薄膜

本発明は、pH感受性ポリマー微粒子内に封入される生物活性成分を含有している速溶性薄膜片を記載している。この微粒子は、薄膜内に組み込まれていて、その中に封入されている成分の保護をもたらす。本発明は更に、膜形成及びマイクロカプセル化の間に含まれる治療薬剤の生物活性を保持しつつ、pH感受性ポリマー微粒子内に封入されている生物活性成分を速溶性膜片に組み込む方法を記載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年7月1日出願の米国仮特許出願第61/133,672号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に取り込まれている。
【0002】
本明細書において引用されている全ての参照文献は、印刷形態、電子形態、コンピュータ可読記憶媒体、又はその他の形態の何れであっても、その全てが参照により明確に取り込まれていて、本発明の実施に利用できる。これらは、これに限定されないが、要約、記事、雑誌、出版物、教科書、論文、技術的なデータシート、製造会社の使用説明書、記述、製品規格、製品仕様書、インターネットのウェブサイト、データベース、特許、特許出願、及び特許公開を包含している。
【0003】
本発明は、pH感受性ポリマー微粒子に封入された生物活性成分を含有している速溶性の薄膜片を記載している。微粒子は、薄膜内に埋め込まれていて、中に封入されている成分を保護する。
本発明は更に、薄膜形成及びマイクロカプセル化の間に治療薬剤の生物活性を保持しつつ、pH感受性ポリマー微粒子内に封入されている生物活性成分を速溶性の薄膜片に組み込む方法を記載している。
【背景技術】
【0004】
口腔内へ送達される薬剤について経口薄膜が開発されている。それらは、最初は口臭予防目的及びデンタルケア製品用に、速やかに溶解してその内容物を口腔内に放出するように設計されている。最近になってやっと、経口薄膜が、デンタルケア製品及びインフルエンザ治療薬を含む、通常の市販薬のようなより複雑な成分用の潜在的担体として確認されている。経口薄膜は、経口投与に広く用いられている錠剤及び液滴の潜在的代替物として確認されている[3,5,8〜19]。しかしながら、これらの経口薄膜を作成する工程は、生物活性タンパク質からDNAナノ粒子/遺伝子の担体及び弱毒化生ウィルスに至る多種多様の治療薬を包装するように調整されていない。市販膜の製造工程は、潜在的生物学的薬物を変性してそれらの生物活性を損なう可能性のある高温及びその他の過激な条件を必要としている。更に、これらの口腔薄膜は、主として薬物を口腔内へ送達するように設計されている、すなわち、胃腸管に沿って標的化した送達のための機能性を更には含んでいない[8〜19」
【0005】
経口送達薄膜片は、唾液及び口腔組織との接触で速やかに湿って溶解することにより、含有している医薬成分を放出するように設計されている。これの薄膜の主成分は、1つ又はそれ以上の親水性ポリマーで、それらの幾つかは優れた粘膜接着特性を有している。このような場合、重合薄膜は完全に溶解するまで口腔組織に強く接着する。速い溶解性及び粘膜接着性は患者のコンプライアンス及び含有する治療薬の投与の改善に対する重要なキー特性である[3、5]。このような薄膜片は医薬成分(すなわち、アセトアミノフェン、デンタルケア製品及び口臭予防剤)を送達するための便利な方法を提供する。
【0006】
標的の組織が小腸である薬物の送達については、現在入手できる薄膜片は、単なる便宜さ以上の更なる機能性をもたらさない。胃腸(GI)管を通って送達される薬物は、胃腔内の低pH(強酸性)及び厳しい酵素環境に曝される。タンパク質の薬物、核酸及びワクチンは、これらの条件に耐性ではなく、変性及び分解して、それらの生物活性の重大な損失につながる。これらの生物活性成分をコーティングするものとしてpH感受性ポリマーを用いることは胃腔における保護をもたらすだろう。胃酸から治療薬物を保護するためのpH感受性ポリマーの使用は、経口用錠剤で多年に渡って用いられている。オイドラギット(Eudragit、登録商標)のようなpH感受性ポリマーを用いる錠剤医薬のコーティングは、嚥下した錠剤の改善された生物活性をもたらすのに役立つことが示されている。更に、オイドラギッド(登録商標)ポリマーは、インスリン及びその他の生物活性分子を胃腸管の厳しい条件を通って送達するためのマイクロカプセルを製造するためにも用いられている[1、2]。これらのマイクロカプセルは、その封入されている化合物を、マクロスケールで錠剤を保護するのと対照的に、マイクロスケールで保護する。
【0007】
ワクチンの経口送達の場合、バイエルのパッチ(Payer's patch)が位置する小腸への標的化送達が、抗原表示細胞(M細胞)への送達、すなわち上皮を越える輸送、を改善するばかりではなく、分泌性IgAを潜在的に増大し、そして粘膜経路を通り感染する感染症に対する保護と最も関連する、粘膜免疫性を増強する可能性がある[4、7]。
【0008】
選択的に小腸へ送達される薄膜に挿入されるべき候補治療薬は、pH感受性ポリマーからなる保護層で「コーティング」されなければならない。このような治療薬の薄膜への単なる埋込は、摂取によるこれらの厳しい環境に対してこれらを脆弱にするだけである。
【0009】
更に、薄膜内への処理後の、貯蔵を通して、製品安定性を保持することも必要である。貯蔵安定性の保持、並びに配布及び投与の手順の簡易化が、大規模な治療及び予防的治療を実施するために重要となる。室温で安定な乾燥粉末のような、処方前の且つ安定化された製剤の薄膜内への組み込みが、貯蔵安定な最終用量の提示をもたらすこの送達方式の更なる特性となるであろう。
【発明の概要】
【0010】
一態様では、本発明は、
a)1つ又はそれ以上の水溶性ポリマー;
b)1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー;1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子;又はこれらの混合物;及び
c)1つ又はそれ以上の生物活性剤:
を含有してなる(ここで、当該微粒子が存在するときは、当該生物活性剤は当該微粒子内に独立して封入されている)、速溶性薄膜組成物を提供する。
【0011】
ある特定の態様では、本発明の速溶性薄膜組成物は、1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー及び1つ又はそれ以上pH感受性微粒子を含有している(ここで、、当該生物活性剤は当該微粒子内に独立して封入されている)。
【0012】
ある特定の態様では、本発明の速溶性薄膜組成物は更に、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を含有している。
【0013】
別の態様では、本発明は、pH感受性微粒子に封入されている生物活性剤が、弱毒化生ウィルス、不活化ウィルス、ウィルス様粒子、細菌、核酸、タンパク質、抗体、酵素、抗原、成長因子、サイトカイン、小分子薬物又はこれらの組み合わせである、速溶性薄膜を提供する。
別の態様では、pH感受性微粒子に封入されている生物活性剤は、それぞれのpH感受性微粒子内のものと同一であってよい。
別の態様では、速溶性薄膜は、異なった生物活性剤を封入しているpH感受性微粒子を含んでいてもよい。
更に別の態様では、本発明は、速溶性薄膜組成物を提供し、そこでは生物活性剤が遺伝子を対象に送達できるもので、これに限定されないが、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、レトロウィルス、パラミクソウィルス、サルモネラ細菌、リステリア細菌、赤痢菌、大腸菌、DNA又はRNAを含んでいる。
更に別の態様では、本発明は、pH感受性微粒子に封入されていない追加の治療薬を更に含有している速溶性薄膜を提供する。
【0014】
その他の態様では、本発明の薄膜のpH感受性微粒子は、オイドラギット型の共重合体のような、メタクリル酸又はアクリル酸の共重合体;プルロニックポリマー;キトサン、キトサン誘導体又はこれらの組み合わせを含有している。
ある特定の態様では、pH感受性微粒子は、これに限定されないが、オイドラギット(登録商標)L100−55を包含する、オイドラギット(登録商標)Lポリマー、及びこれに限定されないが、オイドラギット(登録商標)S100を包含する、オイドラギット(登録商標)Sポリマーの混合物を含有している。
ある態様では、オイドラギット(登録商標)Lポリマー及びオイドラギット(登録商標)Sポリマーは、約1:10〜約10:1、約1:5〜約5:1、約2:3〜約3:2、又は約3:2の重量比である。
別の態様では、pH感受性微粒子は、オイドラギット型の共重合体、プルロニック(登録商標)F−68及びキトサン又はキトサン誘導体の混合物を含有している。
ある特定の態様では、プルロニック(登録商標)F−68の重量パーセントは、約1%〜約50%、約1%〜約25%、又は約1%〜約20%である。
ある特定の態様では、キトサン又はキトサン誘導体の重量パーセントは、約1%〜約50%、約1%〜約25%、又は約1%約20%である。
【0015】
その他の態様では、本発明の薄膜のpH感受性微粒子は、界面活性剤(これに限定されないが、ツイン20(Tween-20)又はツイン80(Tween-80)を包含する)、糖(これに限定されないが、マンニトール又はトレハロースを含有する)、緩衝塩(これに限定されないが、リン酸カルシウム一塩基、又はリン酸カルシウム二塩基を包含する)又はこれらの組み合わせを更に含有している。
【0016】
その他の態様では、本発明は、
a)1つ又はそれ以上の水溶性ポリマー;
b)1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー;1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子、又はこれらの組み合わせ;及び
c)1つ又はそれ以上のポリカチオン−DNAナノ粒子(ここにおいて、当該微粒子が存在するときは、当該ナノ粒子は当該微粒子内に独立して封入されている);
を含有してなる、速溶性薄膜を提供する。
【0017】
ある特定の態様では、本発明の速溶性薄膜組成物は、1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー及び1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子(ここで、当該ナノ粒子は当該微粒子内に独立して封入されている)を含有している。
【0018】
その他の態様では、本発明は、
a.1つ又はそれ以上の生物活性剤、1つ又はそれ以上の水溶性ポリマー及び1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマーのエマルジョンを形成すること;
b.エマルジョンを膜形成溶液中に分散させること;及び
c.当該分散物から膜を形成すること:
の工程を含有してなる、1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子を含有している速溶性薄膜組成物を製造する方法を提供する。
【0019】
ある特定の態様では、本発明の膜は、平面上に押し出し成型又は鋳型成型して、層流、加熱又は真空下で当該膜を乾燥することによって形成される。
【0020】
その他の態様では、本発明は、
a.1つ又はそれ以上の生物活性剤を含有しているpH感受性微粒子を膜形成溶液中に分散させること;及び
b.当該分散物から膜を形成すること:
の工程を含有してなる、1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子を含有している速溶性薄膜組成物を製造する方法を提供する。
【0021】
ある特定の態様では、本発明の膜は、平面上に押し出し又は鋳造して、層流、加熱又は真空下で当該膜を乾燥することによって形成される。
【0022】
別の態様では、1つ又はそれ以上の生物活性剤を含有しているpH感受性微粒子は、
a.生物活性剤とpH感受性ポリマーの懸濁液又は溶液を調製すること;
b.この溶液又は懸濁液を低圧ガスを用いて混合チャンバーに流すこと;
c.超音波ノズル条件下で液滴の気体懸濁液を形成すること;
d.液滴を粉末粒子に乾燥すること:
によって形成される。
【0023】
更に別の態様では、本発明は、
a.1つ又はそれ以上の溶融押出可能なポリマーの溶液を溶融するまで加熱すること;
b.pH感受性微粒子をポリマーの溶液と混合すること;及び
c.混合物を膜に圧縮すること:
を含有してなる、1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子を含有している速溶性薄膜組成物を製造する方法を提供する。
【0024】
ある特定の態様では、ポリマーの溶液を、混合工程前にpH感受性微粒子を溶融或いは破壊しない温度まで冷却する。
【0025】
更に別の態様では、本発明は、
a.1つ又はそれ以上の生物活性剤を含有していてもよいpH感受性ポリマーの第1懸濁液又は溶液をエレクトロスピンしてメッシュを形成すること;
b.生物活性剤とpH感受性ポリマーの第2懸濁液又は溶液をエレクトロスプレーして膜を形成すること:
を含有してなる、1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子を含有している速溶性薄膜組成物を製造する方法を提供する。
【0026】
ある態様では、第1懸濁液又は溶液をエレクトロスピンする工程を膜上で繰り返して、膜の上に1つ又はそれ以上の更なるメッシュ層を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、代表的な薄膜片設計の説明図である。
【図2】図2は、薄膜加工工程、及び本明細書に記載されている方法Iを用いる3層の組成物のフローチャート表示である。
【図3】図3は、本明細書に記載されている方法Iで製造したローダミン標識ウシ血清アルブミン(rh−BSA)を封入したマイクロカプセルの2つの蛍光顕微鏡画像を示す。ローダミン標識BSAを微粒子に封入して粒子を可視化した。脱イオン水(pH5.5)に溶解して薄膜片から微粒子を回収した。
【図4】図4は、それぞれ胃及び小腸のpH条件に相当する、pH4.0及びpH7.3緩衝液中での、本明細書に記載されている方法Iで製造した薄膜片から回収したマイクロカプセル由来の、ローダミン標識BSA(rh−BSA)の放出のグラフである。微粒子は、何れかの緩衝液に多数の時点で懸濁した。それぞれの時点で、放出されたrh−BSAを含有している緩衝液を回収し、蛍光強度を測定して、BSAの放出量と関連付けた。
【図5】図5は、本明細書の実施例VIIに記載されているエレクトロスピン及びエレクトスプレーの手順を示す図解入り概略図である。
【図6】図6は、本明細書の実施例VIIに記載されている方法を用いて製造したPVP不織メッシュ膜の表面を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例VIIIに記載されているロタバックス(Rotavax)を封入しているオイドラギット微粒子層を示す2つの走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の経口薄膜は2つの主要な機能:膜が組み込まれている微粒子を口腔内に放出することを可能にする速溶性及び粘膜接着特性、封入されている生物活性成分を胃腔内で保護してそれらを小腸内に放出することを可能にする、微粒子のpH感受性特性:をもたらす。更なる機能は、乾燥粉末形態のような、処方前、安定化前の製剤を組み込むこと、及び膜製造工程を通して、更には最終産物の長期貯蔵を通しての製品の安定性を改善することである。
図1は薄膜の設計を説明している。
【0029】
以前は、薄膜は、送達される生物活性剤に対するプロテアーゼ及びpHの保護をもたらすような機能成分を有していなかった。生物活性剤を、pH感受性ポリマー(ポリメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、メタクリル酸、セルロース誘導体、及びこれらのグループの組み合わせ及び派生物)でコーティングするか、或いはこれらをナノ及びマイクロ粒子内に封入して保護をもたらすことができる。更に、本発明の膜組成物内のこの保護システムは、口腔内で溶解して胃腸管に向かう生物活性剤の標的化送達を可能にする。標的化送達のための膜形成ポリマーと組み合わせたオイドラギット(登録商標)微粒子の使用は、経口薄膜用の新規な組成物である。
【0030】
経口薄膜システムは、錠剤及び液滴のような経口薬剤送達の従来方法の代替え方法として多くの注目を集めてきている。特に、幼児及び高齢の患者に対しては、錠剤の嚥下が困難で、液体の吐き出しに対して感受性であることが従来の方法を不都合にしている。経口薄膜は速溶性及び粘膜接着性であるように設計される。粘膜接着性は、完全に溶解するまで薄膜を口腔内に保持させて吐き出す可能性を低下させ、それによって投与効率及び患者コンプライアンスを潜在的に改善する。経口薄膜は、市販薬での使用に採用されているが、これらの薄膜は口腔内送達より高次の機能性を何ら有さずに、単純なままである。上記のような更なる機能性を有している経口薄膜は、より有益であって、胃腸管内の酸又は酵素に感受性がある多くの生物活性剤の経口送達に対して好ましい。
【0031】
薄膜組成物
本発明の一態様は、
a)1つ又はそれ以上の水溶性ポリマー;
b)1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー;1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子、又はそれらの混合物;及び
c)1つ又はそれ以上の生物活性剤(ここで、当該微粒子が存在するときは、当該生物活性剤は当該微粒子内に独立して封入されている):
を含有してなる、速溶性薄膜組成物を提供する。
【0032】
ある特定の態様では、本発明の速溶性薄膜組成物は、1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー及び1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子(ここで、当該生物活性剤は当該微粒子内に独立して封入されている)を含有している。
【0033】
本明細書で用いられている用語「水溶性ポリマー」は、水性溶液に可溶である、ポリマー組成物を示す。本発明の膜組成物において有用な水溶性ポリマーは、これに限定されないが、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカントゴム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレート共重合体、カルボキシビニルポリマー、アミラーゼ、高アミラーゼ澱粉、ヒドロキシプロピル化高アミラーゼ澱粉、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、レバン、エルシナン、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク分離物、乳漿タンパク分離物、及びカゼインを包含する。
【0034】
本明細書で用いられている用語「粘膜接着性ポリマー」は、優れたインビボ粘膜吸着速度、安全性及び分解性を有しているポリマーを示す。本発明で用いられる粘膜接着性ポリマーは、合成されてもよく、或いは天然の物質であってもよい。天然の粘膜接着性ポリマーは、これに限定されないが、キトサン、ヒアルロン酸塩、アルギン酸塩、ゼラチン、コラーゲン、及びこれらの誘導体を包含できる。合成粘膜接着性ポリマーの例は、これに限定されないが、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(L−リジン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(メタクリル酸 2−ヒドロキシエチル)、及びこれらの誘導体及び共重合体を包含できる。
【0035】
本明細書で用いられている用語「pH感受性微粒子」は、1つ又はそれ以上の化合物を封入でき、それによって胃腔内において微粒子の内容物に保護をもたらす粒子を示す。特に、pH感受性ポリマーは、胃媒液には溶解しないが、製剤が胃から出た後の何れかの段階で溶解するように、その溶解性がpHに依存している粒子を示す。このような粒子は、オイドラギット型の共重合体のような、メタクリル酸又はアクリル酸の共重合体;プルロニックポリマー;キトサン、キトサン誘導体又はこれれらの組み合わせを含有することができる。「オイドラギット型の共重合体」は、これに限定されないが、Rohm Co. Ltd. (Germany)で製造される、オイドラギット(登録商標)L100、オイドラギット(登録商標)S100、オイドラギット(登録商標)RL100、オイドラギット(登録商標)RS100、オイドラギット(登録商標)E100、オイドラギット(登録商標)L100−55、オイドラギット(登録商標)EPO、オイドラギット(登録商標)RL PO、オイドラギット(登録商標)RS PO等のような、ポリメタクリル酸ポリマーを示す。
【0036】
ある特定の態様では、pH感受性微粒子は、これに限定されないが、オイドラギット(登録商標)L100−55を包含する、オイドラギット(登録商標)Lポリマーと、これに限定されないが、オイドラギット(登録商標)S100を包含する、オイドラギット(登録商標)Sポリマーの混合物を含有している。
ある態様では、オイドラギット(登録商標)Lポリマーとオイドラギット(登録商標)Sポリマーは、約1:10〜約10:1、約1:5〜約5:1、約2:3〜約3:2、又は約3:2の重量比である。
別の態様では、pH感受性微粒子は、オイドラギット型の共重合体、プルロニック(登録商標)F−68、及びキトサン又はキトサン誘導体の混合物を含有している。ある特定の態様では、プルロニック(登録商標)F−68の重量パーセントは、約1〜約50%、約1〜約25%、又は約1%〜約20%である。ある特定の態様では、キトサン又はキトサン誘導体の重量パーセントは、約1〜約50%、約1〜約25%、又は約1%〜約20%である。
【0037】
その他の態様では、本発明の薄膜のpH感受性微粒子は更に、界面活性剤(これに限定されないが、ツイン20又はツイン80を包含する)、糖(これに限定されないが、マンニトール又はトレハロースを包含する)、緩衝塩(これに限定されないが、リン酸カリウム一塩基、リン酸カリウム二塩基を包含する)又はこれらの組み合わせを含有している。
【0038】
本発明の薄膜組成物は更に、固体且つ可食の酸を微粒子内のpHを保持するために包含することができる。固体且つ可食の酸は、これに限定されないが、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸及び乳酸を包含する。
【0039】
本発明のある実施態様では、微粒子内の及び/又は活性生物医薬成分(ABI)の安定性におけるpHを制御する緩衝液は、ABIが個体に投与されたときに、胃液のpHを上げるpH緩衝液としても作用できる。このような場合は、緩衝液が高濃度且つ好ましいpH値よりやや高めであることが好ましい。例えば少なくとも1リットル当たり1ミリ当量(mEq/L)、好ましくは10mEq/L又はそれ以上、20mEq/L、50mEq/L、100mEq/L、500mEq/L、1000mEq/L、2000mEq/L又はそれ以上である、製剤の総緩衝能を有することが望ましい。
ある実施態様では、必要としている患者に制酸剤をABIの投与とは別に投与する場合は、緩衝能を下げることができる。個々の用量の緩衝能が患者の胃液を約0.5mEq〜4mEq、0.8mEq〜2mEq又は約1mEqに上げることが好ましい。別の緩衝組成物なしで、薄膜に組み込まれているABIを個体に投与すべきときは、薄膜を含んでいる緩衝液が、個体の胃腔のpHを4以上に上げる適切な緩衝能を提供することが好ましい。
緩衝剤は例えば、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、重炭酸アンモニウム、リン酸塩、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウム、塩基性炭酸アルミニウムゲル、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、ハイドロタルサイト、スクラルファート、次サリチル酸ビスマス、等であってよい。
【0040】
本発明の薄膜組成物は更に、当該技術分野で周知の薬学的に許容される賦形剤及び担体を包含できる。適切な賦形剤は、特に、乳糖、蔗糖、マンニトール又はソルビトールを包含する糖のような充填剤;例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、ゼラチン、トラガラントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリ(ビニルピロリドン)(PVP)のようなセルロース調製物である。所望により、架橋ポリ(ビニルピロリドン)、寒天、又はアルギン酸或いはアルギン酸ナトリウムのようなその塩、のような崩壊剤を加えてもよい。
【0041】
典型的な薄膜片の全体組成は:

成分 機能 重量%
アルギン酸ナトリウム(低粘度) 膜形成、粘膜接着性 40〜50%
ポリエチレンオキシド
(MW 4000KDa) 柔軟性、粘膜接着性 10〜15%
ポリビニルアルコール(MW 150KDa) 柔軟性、
溶解時間の調整
界面活性剤 20〜25%
クエン酸 唾液の刺激、pHの保持 5〜15%
着香剤 香味マスキング 0.1〜2%
オイドラキット(登録商標)L−100−55 pH感受性及び標識化送達 1〜10%
オイドラキット(登録商標)S100 pH感受性の調節及び
標識化送達 0.5〜5%
ポリオール類 生物活性剤の安定化剤 0.2〜2%
プルロニック(登録商標)F−68 界面活性剤及び
放出速度の調節 0〜3%
ツイン20又はツイン80 界面活性剤 <0.1%
生物活性成分 治療薬及びワクチン <0.1%
これらの成分は微粒子の形態中に含まれている。
を包含することができる。
【0042】
本発明の速溶性薄膜組成物は、特定の適用に適合するように何れの形状又は大きさにも形成することができる。一般に、本発明の薄膜組成物は、口腔へ投与するために成型してその大きさにする。特に、本発明の速溶性薄膜組成物は、例えば、長方形、正方形、三角形、台形、円形、ハート形、星形、又は涙の滴形の形態にすることができる。
同様に、本発明の速溶性薄膜組成物は、最初に、約500μm〜約1,500μm、又は約20mm〜約60mmの厚さを有していて、乾燥すると、約3μm〜約250μm、又は0.1mm〜10mmの厚さを有している。望ましくは、乾燥膜は、約2mm〜8mm、より望ましくは、約3mm〜6mmの厚さを有している。
【0043】
生物活性物質
本発明の速溶性薄膜組成物は、1つ又はそれ以上の生物活性物質を封入しているpH感受性微粒子を含有している。生物活性物質は、これに限定されないが、弱毒化生ウィルス、不活化ウィルス、ワクチンとして又は送達媒体として用いられるウィルス様粒子、細菌ワクチン、核酸、タンパク質、抗体、酵素、抗原、成長因子、サイトカイン、及び小分子薬剤又はこれらの組み合わせを包含する。
【0044】
本発明の薄膜組成物は弱毒化生ウィルス、不活化ウィルス、ワクチンとして又は送達媒体として用いられるウィルス様粒子を包含できる。例えば、pH感受性微粒子は、これに限定されないが、ピコルナウィルス(例えば、ポリオウィルス、口蹄疫ウィルス)、カリシウィルス(例えば、SARSウィルス、及びネコ伝染性腹膜炎ウイルス)、トガウィルス(例えば、シンドビス・ウィルス、ウマ脳炎ウィルス、チクングンヤ熱ウィルス、風疹ウィルス、ロスリバー・ウィルス(Ross River virus)、ウシ下痢症ウィルス、ブタコレラ・ウィルス)、フラビウィルス(例えば、デング熱ウィルス、西ナイルウィルス、黄熱病ウィルス、日本脳炎ウィルス、セントルイス脳炎ウィルス、ダニ媒介性脳炎ウィルス)、コロナウィルス(例えば、ヒト・コロナウィルス(風邪)、ブタ胃腸炎ウィルス)、ラブドウィルス(例えば、狂犬病ウィルス、水疱性口内炎ウィルス)、フィロウィルス(例えば、マーブルグ・ウィルス(Marburg virus)、エボラウィルス)、パラミクソウィルス(例えば、風疹ウィルス、イヌ・ジステンパー・ウィルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザ・ウィルス、呼吸器合胞体ウイルス、ニューカッスル病ウィルス、牛疫ウィルス)、オルトミクソウィルス(例えば、ヒト・インフルエンザ・ウィルス、鳥インフルエンザ・ウィルス、ウマ・インフルエンザ・ウィルス)、ブニヤウィルス(例えば、ハンタ・ウィルス(hantavirus)、ラクロス・ウィルス(LaCrosse virus)、リフトバレ(リ)ー熱ウィルス(Rift Valley fever virus))、アレナウィルス(例えば、ラッサ・ウィルス(Lassa virus)、マチュポ・ウィルス(Machupo virus))、レオウィルス(例えば、ヒト・レオウィルス、ヒト・ロタウィルス)、ビルナウィルス(例えば、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、魚類膵臓壊死ウィルス)、レトロウィルス(例えば、HIV 1、HIV 2、HTLV−1、HTLV−2、ウシ白血病ウィルス、ネコ免疫不全ウィルス、ネコ肉腫ウィルス、マウス乳癌ウィルス)、肝炎ウィルス(例えば、B型肝炎ウィルス)、パルボウィルス(例えば、ヒト・パルボウィルスB、イヌ・パルボウィルス、ネコ汎白血球減少症ウィルス)、パポバウィルス(例えば、ヒト・パピローマウィルス、SV40、ウシ・パピローマウィルス)、アデノウィルス(例えば、ヒト・アデノウィルス、イヌ・アデノウィルス、ウシ・アデノウィルス、ブタ・アデノウィルス)、ヘルペスウィルス(単純ヘルペス・ウィルス、水痘帯状ヘルペス・ウィルス、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス、ヒト・サイトメガロ・ウィルス、ヒト・ヘルペス・ウィルス 6)、及びポックスウィルス(例えば、牛痘、鶏痘ウイルス、アライグマ・ポックスウィルス、スカンク・ポックスウィルス、サル・ポックスウィルス、ウシ・ポックスウィルス、伝染性軟属腫ウイルス)を包含するウィルスワクチンを封入できる。
【0045】
本明細書の組成物又は製剤が、これに限定されないが、継代細胞培養、再集合、感染性クローンに突然変異の組み込み、逆遺伝子、その他の組み換えDNA又はRNA操作を含んでいる、何れかの方法で弱毒化されているウィルスに関しているということを当業者は認識できるだろう。更に、他の実施態様が、これに限定されないが、組み換えフラビウィルス、組み換えアデノウィルス、組み換えポックスウィルス、組み換えレトロウィルス、組み換えアデノ随伴ウィルス及び組み換えヘルペスウィルスを包含する、何れかの別のタンパク質又はRNAを発現するように遺伝子組み換えされたウィルスに関しているということを当業者は認識できるだろう。このようなウィルスを、伝染性疾患に対するワクチン、腫瘍性疾患を治療するワクチン、或いはタンパク質又はRNA発現を誘発するウィルス(例えば、遺伝子治療、アンチセンス治療、リボザイム治療又は小規模RNA抑制治療)として用いることができる。
【0046】
ある実施態様では、本明細書の組成物は、トガウィルス、フラビウィルス、コロナウィルス、ラブドウィルス、フィロウィルス、パラミクソウィルス、オルトミクソウィルス、ブニヤウィルス、アレナウィルス、レトロウィルス、肝炎ウィルス、ヘルペスウィルス又はポックスウィルス属のエンベロープ膜を有するウィルス(エンベロープウィルス)を1つ又はそれ以上含有することができる。
ある特定の実施態様では、組成物は、トガウィルス、フラビウィルス、コロナウィルス、ラブドウィルス、フィロウィルス、パラミクソウィルス、オルトミクソウィルス、ブニヤウィルス、アレナウィルス、又はレトロウィルス属のエンベロープRNAウィルスを1つ又はそれ以上含有している。
別の実施態様では、本明細書の組成物は、トガウィルス、フラビウィルス、コロナウィルス、又はレトロウィルス属のエンベロープ、プラス鎖RNAウィルスを1つ又はそれ以上含有することができる。
ある特定の実施態様では、組成物は、生の弱毒化されたフラビウィルス(例えば、デング熱ウィルス、西ナイルウィルス、黄熱病ウィルス又は日本脳炎ウィルス)を1つ又はそれ以上含有できる。
【0047】
本発明の薄膜組成物は弱毒化生、又は不活化全細胞細菌ワクチンを含有することができる。例えば、pH感受性微粒子は、これに限定されないが、ブルセラワクチン、百日咳ワクチン、ペストワクチン、リケッチアワクチン、ブドウ球菌ワクチン、ジフテリア−破傷風−百日咳ワクチン、ヘモフィルスワクチン、コレラワクチン、炭疽病ワクチン、ライム病ワクチン、赤痢菌ワクチン、大腸菌ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、ジフテリア−破傷風ワクチン、レンサ球菌ワクチン、サルモネラ菌ワクチン、ジフテリア−破傷風−無細胞百日咳ワクチン、結核ワクチン、コレラワクチン、虫歯ワクチン、淋病ワクチン、インフルエンザワクチン、髄膜炎菌ワクチン、百日咳ワクチン、トラコーマワクチン、及び結核ワクチンを包含する細菌ワクチンを封入することができる。
【0048】
本発明の薄膜組成物は治療用核酸を含有することができる。例えば、pH感受性微粒子は、これに限定されないが、MDA−7、APC、CYLD、HIN−1、KRAS2b、p16、p19、p21、p27、p27mt、p53、p57、p73、PTEN、Rb、ウテログロビン、Skp2、BRCA−1、BRCA−2、CHK2、CDKN2A、DCC、DPC4、MADR2/JV18、MEN1、MEN2、MTS1、NF1、NF2、VHL、WRN、WT1、CFTR、C−CAM、CTS−1、zacl、ras、MMAC1、FCC、MCC、FUS1、Gene26(CACNA2D2)、PL6、Beta(BLU)、Luca−1(HYAL1)、Luca−2(HYAL2)、123F2(RASSF1)、101F6、Gene21(NPRL2)、aSEM A3ポリペプチド、MelanA(MART−I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、MAGE−1、MAGE−3、BAGE、GAGE−1、GAGE−2、p15(58)、CEA、RAGE、NY−ESO(LAGE)、SCP−1、Hom/Mel−40、PRAME、p53、H−Ras、HER−2/neu、BCR−ABL、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR、エプスタインバールウィルス抗原、EBNA、ヒト・パピロマウィルス(HPV)抗原E6及びE7、TSP−180、MAGE−3、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6、p185erbB2、p185erbB−3、c−met、mn−23H1、PSA、TAG−72−4、CA 19−9、CA72−4、CAM 17.1、NuMa、K−ras、β−カテニン、CDK4、Mum−1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43−9F、5T4、791Tgp72、α−フェトプロテイン、β−HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15−3(CA27.29\BCAA)、CA 195、CA 242、CA−50、CAM43、CD68\KP1、CO−029、FGF−5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、MOV18、NB/70K、NY−CO−1、RCAS1、SDCCAG16、TA−90(Mac−2結合タンパク質\シクロフィリンC−関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TPS、INGI、ママグロビン、サイクリンB1、S100、BRCA1、BRCA2、腫瘍免疫グロブリンイディオタイプ、腫瘍T−細胞受容体クローン型、MUC−1、インスリン、インターフェロンα、インターフェロンγ又は上皮成長因子受容体をコードする核酸を包含する、核酸を封入することができる。
【0049】
本発明の薄膜組成物は治療用タンパク質を含有することができる。例えば、pH感受性微粒子は、これに限定されないが、ヒトインスリン、メチオニル−ヒト成長ホルモン、ヒトインスリン類縁体、小胞刺激ホルモン、グルカゴン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒトβ型ナトリウム利尿ペプチド、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン類縁体、インターフェロン、EPO、G−CSF、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン、コンセンサスインターフェロン、血小板由来成長因子、インターフェロン類縁体、骨形態形成タンパク質、ヒトtPA、修飾ヒトtPA、尿酸酸化酵素、血液因子タンパク質、CD3、CD20、腫瘍壊死因子、HER受容体、CD33、CD52、CD11a、上皮成長因子受容体、又は血管内皮成長因子を包含する、タンパク質を封入することができる。
【0050】
本発明の薄膜組成物は低分子干渉RNAを含有することができる。例えば、pH感受性微粒子は、これに限定されないが、膵炎関連タンパク質、アンドロゲン受容体タンパク質、VEGFタンパク質、白血病融合タンパク質、インターロイキン、又は熱ショックタンパク質を包含するタンパク質に特異的なsiRNAを封入することができる。
【0051】
本発明の薄膜組成物は成長因子を含有することができる。例えば、pH感受性微粒子はEGF、FGF、GMCSF、HGH、IL−1、PDGF又はTGF−8を封入することができる。
【0052】
本発明の薄膜組成物はサイトカインを含有することができる。サイトカインの例は、これに限定されないが、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン(Epo)、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、プロラクチン、及びインターフェロン(INF、例えばINF−α及びINF−γ)を包含する。
【0053】
本発明の薄膜組成物は低分子の薬剤を含有することができる。低分子の薬剤は、これに限定されないが、抗生物質、抗嘔吐剤、抗鬱薬、及び抗真菌剤、抗炎症剤、抗ウィルス剤、抗癌剤、免疫調節薬及びアルキル化剤を包含する。このような低分子薬剤は、追加の治療用薬剤に関連して、以下に詳細に記載されている。
【0054】
本発明の薄膜組成物は、ポリカチオンDNAナノ粒子を含有することができる。ナノ粒子のポリカチオン部分は合成したもの又は天然のものでよい。ポリカチオンDNAナノ粒子は、これに限定されないが、キトサン−DNAナノ粒子、PEI−DNAナノ粒子、ポリリン酸エステル−DNAナノ粒子又はこれらの混合物を包含する。
【0055】
追加の治療用薬剤
本発明の特定の組成物は、更に追加の治療用薬剤(すなわち、pH感受性微粒子に封入されている生物活性剤以外の治療用薬剤)を含有している。治療用薬剤は、これに限定されないが、制酸剤、抗生物質、抗嘔吐薬、抗鬱薬、抗真菌剤、抗炎症剤、抗ウィルス剤、抗癌剤、免疫調節薬、β−インターフェロン、ホルモン、又はサイトカインを包含する。
【0056】
本発明の薄膜組成物は、制酸剤と組み合わせて製剤化できる。例えば、これらは、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、次サリチル酸ビスマス、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、ジヒドロキシアルミニウム炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、重炭酸ナトリウム、シメチコン、グリシン、又はこれらの組み合わせを用いて製剤化できる。
【0057】
本発明の薄膜組成物は抗生物質と組み合わせて製剤化できる。例えば、これらは、マクロライド(例えば、トブラマイシン)、セファロスポリン(例えば、セファレキシン、セフラジン、セフロキシム、セフプロジル(cefprozil)、セファクロル、セフィキシム
又はセファドロキシル)、クラリスロマイシン(例えば、クラリスロマイシン)、エリスロマイシン(例えば、エリスロマイシン)、ペニシリン(例えば、ペニシリンV)又はキノロン(例えば、オフロキサシン、シプロフロキサイシン又はノルフロキサシン)、アミノグリコシド抗生物質(例えば、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ネオマイシン、ネオマイシン、ウンデシレン酸、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソミシン、及びスペクチノマイシン)、アムフェニコール抗生物質(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、及びチアムフェニコール)、アンサマイシン抗生物質(例えば、リファミド及びリファンピン)、カルバセフェム(例えば、ロラカルベフ)、カルバペネム(例えば、ビアペネム及びイミペネム)、セファロスポリン(例えば、セファクロール、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、及びセフピローム)、セファマイシン(例えば、セフブペラゾン、セフメタゾール、及びセフミノクス)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム、カルモナム、及びチゲモナム)、オキサセフェム(例えば、フロモキセフ、及びモキサラクタム)、ペニシリン(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、ベカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリン酸ナトリウム、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ペナムシリン、ペネタメートヨウ化水素酸塩、ペニシリン o−ベネタミン、ペニシリン0、ペニシリンV、ベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン、ペニメピサイクリン、及びフェンシヒシリンカリウム)、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン、及びリンコマイシン)、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンズラシジン、エンビオマイシン、テトラサイクリン(例えば、アピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、及びデメクロサイクリン)、2,4−ジアミノピリミジン(例えば、ブロジモプリム)、ニトロフラン(例えば、フラルタドン、及びフラゾリウムクロライド)、キノロン及びその類縁体(例えば、シノキサシン、クリナフロキサシン、フルメキン、及びグレパグロキサシン)、スルホンアミド(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、ノプリルスルファミド、フタリルスルファセタミド、スルファクリソイジン、及びスルファシチン)、スルホン(例えば、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、及びソラスルホン)、サイクロセリン、ムピロシン及びツベリンを用いて製剤化できる。
【0058】
本発明の薄膜組成物は抗嘔吐薬と組み合わせて製剤化できる。適切な抗嘔吐薬は、これに限定されないが、メトクロプロミド、ドンペリドン、プロクロペラジン、プロメタジン、クロルプロマジン、トリメトベンザミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、ヒドロキシジン、アセチルロイシン、モノエタノールアミン、アリザピリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ビエタナウチン、ブロモプリド、ブクリジン、クレボプリド、サイクリジン、ジメンヒドリナート、ジフェニドール、ドラセトロン、メクリジン、メタラタール、メトピマジン、ナビロン、オキシペルンジル、ピパマジン、スコポラミン、スルピリド、テトラヒドロカンナビノール、トリエチルペラジン、チオプロペラジン、トロピセトロン、及びこれらの混合物を包含する。
【0059】
本発明の薄膜組成物は抗鬱剤と組み合わせて製剤するか或いは製剤化できる。適切な抗鬱剤は、これに限定されないが、ビネダリン、カロキサゾン、シタロプラム、ジメタザン、フェンカミン、インダルピン、塩酸インデロキサジン、ネホパム、ノミフェンシン、オキシトリプタン、オキシペルチン、パロキセチン、セルトラリン、チアゼシム、トラゾドン、ベンモキシン、イプロクロジド、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、オクタモキシン、フェネルジン、コチニン、ロリシプリン、ロリプラム、マプロチリン、メトラリンドール、ミアンセリン、ミルタゼピン、アジナゾラム、アミトリプチリン、アミトリプチリンオキシド、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デメキシプチリン、デシプラミン、ジベンゼピン、ジメタクリン、ドチエピン、ドキセピン、フルアシジン、イミプラミン、イミプラミン N−オキシド、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、メタプラミン、ノルトリプチリン、ノキシプチリン、オピプラモール、ピゾチリン、プロピゼピン、プロトリプチリン、キヌプラミン、チアネプチン、トリミプラミン、アドラフィニル、ベナクチジン、ブプロピオン、ブタセチン、ジオキサドロール、デュロキセチン、エトペリドン、フェバルバメート、フェモキセチン、フェンペンタジオール、フルオキセチン、フルボキサミン、ヘマトポルフィリン、ヒペリシン、レボファセトペラン、メジホキサミン、ミルナシプラン、ミナプリン、モクロベミド、ネファゾドン、オキサフロザン、ピベラリン、プロリンタン、ピリスクシデアノール、リタンセリン、ロキシンドール、塩化ルビジウム、スルピリド、タンドスピロン、トザリノン、トフェナシン、トロキサトン、トラニルシプロミン、L−トリプトファン、ベンラファキシン、ビロキサジン、及びジメルジンを包含する。
【0060】
本発明の薄膜組成物は抗真菌剤と組み合わせて製剤化できる。適切な抗真菌剤は、これに限定されないが、アンホテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、(鞘内の、)フルシトシン、ミコナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチン、テルコナゾール、チオコナゾール、シクロピロクス、エコナゾール、ハロプログリン、ナフチフィン、テルビナフィン、ウンデシレン酸塩、及びグリセオフルジンを包含する。
【0061】
本発明の薄膜組成物は抗炎症剤剤と組み合わせて製剤化できる。有用な抗炎症剤は、これに限定されないが、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサレート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、メフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナック、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルビノプロフェン、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ドロキシカム、ピボキシカム、テノキシカム、ナブメトム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アンチピリン、アミノピリン、アパゾン及びニメスリドのような、非ステロイド性抗炎症薬;これに限定されないが、ジレウトン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム及びアウラノフィンを包含する、ロイコトリエン拮抗薬;これに限定されないが、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン誘導体、デソニド、デソキシマタゾン、デキサメタゾン、フルニソリド、フルコキシノリド、フルランドレノリド、ハルシノシド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メトプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フロ酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、及びトリアムシノロンヘキサセトニドを包含する、ステロイド類;及び、これに限定されないが、メトトレキサート、コルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾン及びベンスブロマロンを包含する、その他の抗炎症剤を包含する。
【0062】
本発明の薄膜組成物はその他の抗ウィルス剤と組み合わせて製剤化できる。有用な抗ウィルス剤は、これに限定されないが、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤及びヌクレオシド類縁体を包含する。抗ウィルス剤は、これに限定されないが、ジドブジン、アシクロビル、ガングシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、及びリバビリンを包含し、更にホスカルネット、アマンタジン、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、アンプレナビル、ロピナビル、リトナビル、α−インターフェロン;アデホビル、クレバジン、エンテカビル、プレコナリルも包含する。
【0063】
本発明の薄膜組成物は免疫調節薬と組み合わせて製剤化できる。免疫調節薬は、これに限定されないが、メトトレキセート、レフルノミド、シクロホスファミド、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナール、マロノニトリロアミンド(例えば、レフルナミド)、T細胞受容体調節薬、及びサイトカイン受容体調節薬、ペプチド模倣薬、及び抗体(例えば、ヒト、ヒト化、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、Fvs、ScFvs、Fab或いはF(ab)2断片、又はエピトープ結合断片)、核酸分子(例えば、アンチセンス核酸分子及び三重らせん)、小分子、有機化合物及び無機化合物を包含する。
T細胞受容体調節薬の例は、これに限定されないが、抗T細胞受容体抗体(例えば、抗CD4抗体(例えば、cM−T412(Boeringer)、IDEC−CE9.1(登録商標、IDEC and SKB)、mAB4162W94、オルトクローン(Orthoclone)及びOKTcdr4a(Janssen-Cilag))、抗CD3抗体(例えば、ヌビオン(Nuvion; Product Design Labs.)、OKT3(Johnson & Johnson)、又はリツキサン(IDEC))、抗CD5抗体(例えば、抗CD5リシン−結合免疫抱合体)、抗CD7抗体(例えば、CHH−380(Novartis))、抗CD8抗体、抗CD40リガンドモノクローナル抗体(例えば、IDEC−131(IDEC))、抗CD52抗体(例えば、CAMPATH 1H(Ilex))、抗CD2抗体、抗CD11a抗体(例えば、ザネリム(Genentech))、及び抗B7抗体(例えば、IDEC−114(IDEC))及びCTLA4−免疫グロブリンを包含する。
サイトカイン受容体調節薬の例は、これに限定されないが、可溶性サイトカイン受容体(例えば、TNF−α受容体の細胞外ドメイン又はその断片、IL−1β受容体の細胞外ドメイン又はその断片、及びIL−6受容体の細胞外ドメイン又はその断片)、サイトカイン又はその断片(例えば、インターロイキン(IL)−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15、TNF−α、インターフェロン(IFN)−α、INF−β、INF−γ、及びGM−CSF)、抗サイトカイン受容体抗体(例えば、抗INF受容体抗体、抗IL−2受容体抗体(例えば、ゼナパックス(Protein Design Labs))、抗IL−4受容体抗体、抗IL−6受容体抗体、抗IL−10受容体抗体、及び抗IL−12受容体抗体)、抗サイトカイン抗体(例えば、抗IFN抗体、抗TNF−α抗体、抗IL1β抗体、抗IL−6抗体、抗IL−8抗体(例えば、ABX−IL−8(Abgenix))、抗IL−12抗体)を包含する。
【0064】
本発明の薄膜組成物はサイトカインと組み合わせて製剤化できる。サイトカインの例は、これに限定されないが、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン(Epo)、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、プロラクチン、及びインターフェロン(IFN)(例えば、IFN−α、IFN−γ)を包含する。
【0065】
本発明の薄膜組成物はホルモンと組み合わせて製剤化できる。ホルモンの例は、これに限定されないが、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出ホルモン、ACTH、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、視床下部放出因子、インスリン、グルカゴン、エンケファリン、バソプレシン、カルシトニン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、合成及び天然オピオイド、インスリン甲状腺刺激ホルモン、及びエンドルフィンを包含する。
【0066】
本発明の薄膜組成物は、インターフェロンβ−1a及びインターフェロンβ−1bを包含するが、これに限定されない、β−インターフェロンと組み合わせて製剤化できる。
【0067】
本発明の薄膜組成物は、特にリンパ系を標的とする、これに限定されないが、グリコール酸ナトリウム;カプリン酸ナトリウム;N−ラウリル−D−マルトピラノシド;EDTA;混合ミセル;及びMuranishi Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst., 7-1-33(これはその全てが参照により本明細書に取り込まれている)に報告されているようなものを包含する、吸収促進剤と組み合わせて製剤化できる。その他の公知の吸収促進剤も用いることができる。従って、本発明は、本発明の硫酸化多糖類及び1つ又はそれ以上の吸収促進剤を含有している医薬組成物も包含している。
【0068】
追加の治療薬は、相加的に、より好ましくは相乗的に作用することができる。
好ましい実施態様では、本発明の化合物を含有している組成物は、同一組成物の一部であるか又は本発明の化合物を含有しているものと異なった組成物にある、別の治療薬の投与と同時に投与される。
別の実施態様では、本発明の化合物は、別の治療薬の投与の前或いはその後に投与される。
別個の実施態様では、本発明の化合物は、、以前に又は現在、別の治療薬、特に抗ウィルス剤の治療を受けていない患者に投与される。
【0069】
pH感受性微粒子を含有している薄膜片を加工する方法
3つの加工方法は、水性緩衝液に溶解するか、或いは乾燥粉末及び微粒子中に封入されているかの何れかの生物活性剤を封入することを開示している。
【0070】
第一は、薬剤含有微粒子を乾燥経口用薄膜に形成して組み込む一段階工程である。この一段階工程は、適合二相エマルジョン溶媒蒸発工程で、そこでは1つの反応器及び1つの乾燥工程だけが必要であって;微粒子及び薄膜が同時に形成される。機能的な経口薄膜を形成するための多段階工程は高コスト及び複雑な物流管理のために一段階方法より魅力的でないので、この一段階工程は工業的な検討にとって有利である。
【0071】
一方、pH感受性粒子及び経口薄膜を別々に形成することができる。生物活性剤が最初に乾燥粉末形態中にあるか或いは乾燥粉末形態中で処理される必要がある場合は、粉末又は微粒子を膜形成溶液に封入して方法IIに従って処理することができる。乾燥微粒子中に、pH感受性ポリマーを、上記のように保護及び標的化送達成分として含有することができる。上記のその他の微粒子送達の改変法もこの工程に適用できる。
【0072】
第三は、エレクトロスピニング及びエレクトロスプレー技術を用いて薄膜を形成して、膜にpH感受性微粒子中の生物活性成分を組み込むことである。この処理は、ポリマー溶液に高電圧を加えてポリマー噴流を生成することから成っている。噴流が空中を移動すると、噴流は反発する静電力下で伸長して、直径50nm〜10μmの線維を形成し、ランダムな線維メッシュをもたらし、次いで薄膜を形成する。薄膜の特性(機械的特性及び溶解特性)は、膜組成及び膜構造(膜形成に用いられた層の厚さ及び層の数を包含している)によって調節ができる。
【0073】
方法I:水溶液に溶解又は懸濁している生物活性成分をカプセル化して薄膜を形成する二相エマルジョン溶媒の蒸発工程。
この方法は、マイクロカプセル化と膜形成を一段階工程に結び付ける(図2)。生物活性剤(例えば、タンパク質、核酸又はウィルス)を、それらの溶液又は懸濁液からカプセル化するように設計されている。
【0074】
本明細書に記載されている工程は、改良した二相エマルジョン溶媒蒸発方法である。この種の方法に関する更なる情報は、Jain D, Majumdar DK and Panda AK., 2006. に見出すことができる。3つの独立した相を用いて二つのエマルジョンを形成する:内部水相、有機相、外部水相。3つの相の組成は以下の通りである。
【0075】
内部水相:
・蔗糖:5〜10%w/v
・ツイン20:0.5〜5%w/v
・生物活性剤:ワクチン、又は核酸、タンパク質治療薬又は小分子薬物
・溶媒;リン酸カリウム緩衝液、pH7.4、10〜25mM
【0076】
有機相:
・オイドラギット(登録商標)L100−55:3〜30mg/mL
・オイドラギット(登録商標)S100:2〜20mg/mL
・プルロニックF−68:0〜〜20mg/mL
・塩化メチレン:33〜70%v/v
・エタノール:0〜50%v/v
・イソプロパノール:0〜50%v/v
【0077】
外部水相(膜形成溶液):
・アルギン酸ナトリウム(低粘度):1〜3%w/v
・ポリビニルアルコール(124,000〜186,00Da、99%加水分解):0.25〜0.75%w/v
・ポリエチレングリコール(4,000,000Da):0.5〜1.5%w/v
・クエン酸:0.25〜0.75%w/v
・香味マスキング剤:0.01〜0.1%w/v
・溶媒:脱イオン水
【0078】
上記のポリマー成分の種類及び量は例示的なものであって、製剤化する生物活性剤の種類又は量に基づいて、或いは当業者の技術範囲内のあらゆるその他の因子に基づいて、容易に改変できるということを当業者は認識できるだろう。
【0079】
最初に、生物活性剤及び各種の賦形剤を含有している内部水相は、微粒子の溶解時間を調節するためにオイドラギット型ポリマーと賦形剤ポリマーを含有している有機相と、1:5〜1:20(水相:有機相)の容量比で、ボルテックス(vortexing)することによって乳化させて、10〜25℃で第1エマルジョンを形成させる。次いで、膜形成ポリマーと賦形剤を含有している外部水相を、第1エマルジョンと、50:1〜5:1(外部水相:有機相)の容量比で、10〜25℃で1〜5分間ボルテックスすることによって乳化させて、第2エマルジョンを作出する。次いでこの2相エマルジョンをポリジメチルシロキサンの平らな表面上で乾燥して、及びチャンバー内で10〜60℃の対流空気で5〜10時間乾燥する。次いでこの膜を2cm×3cm又はその他の望ましい形状に切断する。
【0080】
方法II.薄膜片への乾燥微粒子の封入。
生物活性成分を含有している生体分解性又は生体吸収性微粒子を、スプレー乾燥又は凍結乾燥方法を用いて乾燥粉末として直接作成して、続いて溶媒キャスティング又は固体分散による溶融/混合方法によって速溶性経口薄膜を産生することができる。これらの微粒子を、微粒子が酸性環境中では安定であるのに対して、中性pHでは解離し、分解して溶解するようなpH感受性を有するようにすることができる。そのような例の1つは、pH5.5以下では固体のままであってpH7.2以上では溶解する、オイドラギット(登録商標)微粒子(重量比が3:2の Eudragit L100-55 及び Eudragit S100)である。微粒子の産生、及び生体活性成分(タンパク質薬物、及びDNA複合体)の安定化賦形剤(蔗糖及びトレハロース、グリセロールのようなポリオール類、界面活性剤、小電荷アミノ酸)とのカプセル化は、超音波スプレー乾燥を用いる単一工程を用いて処理された。微粒子は、バイエルのパッチへの取り込みを増強するために、100nm〜500μm範囲、好ましくは1〜10μm範囲の大きさを有している。
【0081】
特に、スプレー乾燥する溶液は水溶液又は水性/有機エマルジョンの何れかである。
【0082】
水溶液の組成は次の通りである。

成分 濃度
オイドラギット(登録商標)L100−55 0〜10(w/v)%
オイドラギット(登録商標)S100 0〜10(w/v)%
蔗糖 2〜20(w/v)%
トレハロース 1〜10(w/v)%
グリセロール 0.01〜0.1(v/v)%
プルロニックF68 0.01〜0.1(w/v)%
リン酸カリウム 10〜75mM
水酸化カリウム 0〜500mM
生物活性剤 0〜1(w/v)%
溶媒 最小必須培地
【0083】
水性/有機エマルジョンは次の通りである。

水溶液:
成分 濃度
蔗糖 3〜30(w/v)%
トレハロース 1.5〜15(w/v)%
グリセロール 0.01〜0.1(v/v)%
プルロニックF68 0.01〜0.1(w/v)%
リン酸カリウム 10〜100mM
生物活性剤 0〜1(w/v)%
溶媒 最小必須培地

有機溶液:
成分 濃度
オイドラギット(登録商標)L100−55 0〜10(w/v)%
オイドラギット(登録商標)S100 0〜10(w/v)%
溶媒、ジクロロメタン 33〜70(v/v)%
溶媒、エタノール 0〜50(v/v)%
溶媒、イソプロパノール 0〜50(v/v)%
【0084】
上記のポリマー成分の種類及び量は例示的なものであって、製剤化する生物活性剤の種類又は量に基づいて、或いは当業者の技術範囲内のあらゆるその他の因子に基づいて、容易に改変できるということを当業者は認識できるだろう。
【0085】
乾燥粉末微粒子は、搭載されている生物活性剤(1〜10mg)と共に、室温で1〜5分ボルテックスすることによって膜形成溶液中に分散される(個体含量2〜20%)。次いで混合物を平らなポリジメチルシロキサン表面に流し込み、続いて風乾又は真空乾燥の何れかで、5〜10時間、10〜60℃で乾燥する。次いでこの膜を2cm×3cm又はそのたの望ましい形状に切断する。
【0086】
方法III.組み込み微粒子を有する薄膜片のエレクトロスピニング/エレクトロスプレー形成。
ポリマー溶液に高電圧を加えてポリマー噴流を産生することによるエレクトロスピニング及びエレクトロスプレー技術を介して、薄膜が形成されてpH感受性微粒子中の生物活性成分が組み込まれる。噴流が空中を移動すると、噴流は反発する静電力下で伸長して、ランダムな線維メッシュをもたらし、次いで薄膜を形成する。
【0087】
エレクトロスピニング及びエレクトロスプレーのために調製されるポリマー溶液は以下の通りである。

溶液I(速溶性薄膜形成用):

成分 濃度
PVP 2〜40(w/v)%
生物活性剤 0.5〜30(w/v)%
溶媒、イソプロパノール 30〜98(v/v)%

溶液II(pH感受性微粒子形成用):

成分 濃度
オイドラギット(登録商標)L100−55 2〜25(w/v)%
生物活性剤 0.5〜30(w/v)%
溶媒、イソプロパノール 50〜98(v/v)%
【0088】
本明細書に記載されているポリマー成分の種類及び量並びにポリマー層の数は例示的なものであって、製剤化する生物活性剤の種類又は量に基づいて、或いは当業者の技術範囲内のその他のあらゆる因子に基づいて、容易に改変できるということを当業者は認識できるだろう。
【0089】
ポリマー溶液Iを注射器に入れて注射ポンプに取り付ける。高電圧直流電源を金属注射針に繋いで、約5〜30kVに設定する。次いで溶液Iを針から吸い上げ、ポリマー線維を作り出して、接地標的上で採取する。スピニングを、線維メッシュの厚さが約50ミクロン〜約1mmに達するまで続ける。
【0090】
次いで溶液IIを注射器に入れて、上記と同じ方法を用いて荷電する。次いで溶液をPVPメッシュに、生体活性薬剤の目的とする組み込み濃度が達成されて、微粒子層が50〜200ミクロンの厚さに達するまで、エレクトロスプレーする。
【0091】
必要により、溶液I由来のポリマーメッシュの更なる層を、膜の厚さを増すために最初の2つの層の上にスピニングしてもよい。
【0092】
スピニング工程を補助するために、採取装置を約−1〜−10Vの負電位で荷電してもよい。最終的な膜を、引き続いて真空乾燥又は風乾する。
【実施例】
【0093】
上記のポリマー成分の種類及び量は例示的なものであって、製剤化する生物活性剤の種類又は量に基づいて、或いは当業者の技術範囲内のその他のあらゆる因子に基づいて、容易に改変できるということを当業者は認識できるだろう。
【0094】
実施例I.
ロタバックス(ロタウィルスのワクチン)微粒子を含有する薄膜片(2cm×3cm×100μm)の製造、二相エマルジョン溶媒蒸発工程(方法I)によって製造した。
【0095】
最初に、以下の溶液を調製した:

相1.以下のものを混合して内部水相を作成した。
・ 97μLの最小必須培地
・ 3μLのツイン−20(100%)
・ 7mgの蔗糖
・ 0.19mgのリン酸カリウム(二塩基)
・ 0.5mgのウシ血清アルブミン
・ 1×10単位のロタバックス(ロタウィルス)〜1用量
・総容量:100μL
【0096】
相2.以下のものを混合して有機相を作成した。
・ 166.5μLの塩化メチレン
・ 200.0μLのエタノール
・ 133.5μLのイソプロパノール
・ 6mgのオイドラギット(登録商標)L100−55
・ 4mgのオイドラギット(登録商標)S100
・ 総容量:500μL
【0097】
相3.以下のものを混合して外部水相を作成した。
・ 50mgのアルギン酸ナトリウム(低粘度)
・ 12.5mgのポリビニルアルコール(124〜186kDa、99%加水分解)
・ 25mgのポリエチレンオキシド(4000kDa)
・ 12.5mgのクエン酸
・ 5mLの蒸留水
・ 総容量:5mL
【0098】
相2溶液をホウケイ酸ガラス容器に入れた。相2溶液を容器内で同時にボルテックスさせながら、内部水相(相1溶液)を容器内にゆっくり滴下した。こうして第1エマルジョンを形成した。次いで、この第1エマルジョンを相3溶液(外部水相)に、10〜25℃でボルテックスさせながら、ゆっくり滴下した。この二相エマルジョン溶液をポリジメチレンシロキサンでコーティングした平面に流して、表面積を2cm×3cmに集約した。この溶液を20〜30℃で5〜8時間層流下で乾燥した。乾燥した溶液は速溶性薄膜をもたらした。
【0099】
実施例II.
酵素治療のモデルとしてアミラーゼを含有している薄膜片(2cm×3cm×100μm)の製造(方法I)。
【0100】
最初に、以下の溶液を調製した。

相1.以下のものを混合して内部水相を作成した。
・ 97μLの最小必須培地
・ 3μLのツイン−20(100%)
・ 7mgの蔗糖
・ 0.19mgのリン酸カリウム(二塩基)
・ 0.5mgのウシ血清アルブミン
・ 5mgのアミラーゼ
・ 総容量:100μL
【0101】
相2.以下のものを混合して有機相を作成した。
・ 166.5μLの塩化メチレン
・ 200.0μLのエタノール
・ 133.5μLのイソプロパノール
・ 6mgのオイドラギット(登録商標)L100−55
・ 4mgのオイドラギット(登録商標)S100
・ 総容量:500μL
【0102】
相3.以下のものを混合して外部水相を作成した。
・ 50mgのアルギン酸ナトリウム(低粘度)
・ 12.5mgのポリビニルアルコール(124〜186kDa、99%加水分解)
・ 25mgのポリエチレンオキシド(4000kDa)
・ 12.5mgのクエン酸
・ 5mLの蒸留水
・ 総容量:5mL
【0103】
相2溶液をホウケイ酸ガラス容器に入れた。相2溶液を容器内で同時にボルテックスさせながら、内部水相(相1溶液)を容器内にゆっくり滴下した。こうして第1エマルジョンを形成した。次いで、この第1エマルジョンを、相3溶液(外部水相)に、10〜25℃でボルテックスさせながら、ゆっくり滴下した。この二相エマルジョン溶液をポリジメチレンシロキサンでコーティングした平面に流して、表面積を2cm×3cmに集約した。この溶液を20〜30℃で5〜8時間層流下で乾燥した。乾燥した溶液は速溶性薄膜をもたらした。
【0104】
実施例III.
DNA/PEIナノ粒子を含有している薄膜片(2cm×3cm×100μm)の製造(方法I)。
最初に、以下の溶液を調製した。

相1.以下のものを混合して内部水相を作成した。
・ 97μLの最小必須培地
・ 3μLのツイン−20(100%)
・ 7mgの蔗糖
・ 0.19mgのリン酸カリウム(二塩基)
・ 0.5mgのウシ血清アルブミン
・ 100μgのDNA/PEIナノ粒子
・ 総容量:100μL
【0105】
相2.以下のものを混合して有機相を作成した。
・ 166.5μLの塩化メチレン
・ 200.0μLのエタノール
・ 133.5μLのイソプロパノール
・ 6mgのオイドラギット(登録商標)L100−55
・ 4mgのオイドラギット(登録商標)S100
・ 総容量:500μL
【0106】
相3.以下のものを混合して外部水相を作成した。
・ 50mgのアルギン酸ナトリウム(低粘度)
・ 12.5mgのポリビニルアルコール(124〜186kDa、99%加水分解)
・ 25mgのポリエチレンオキシド(4000kDa)
・ 12.5mgのクエン酸
・ 5mLの蒸留水
・ 総容量:5mL
【0107】
相2溶液をホウケイ酸ガラス容器に入れた。相2溶液を容器内で同時にボルテックスさせながら、内部水相(相1溶液)を容器内にゆっくり滴下した。こうして第1エマルジョンを形成した。次いで、この第1エマルジョンを、相3溶液(外部水相)に、10〜25℃でボルテックス(キシング)させながら、ゆっくり滴下した。この二相エマルジョン溶液をポリジメチレンシロキサンでコーティングした平面に流して、表面積を2cm×3cmに集約した。この溶液を20〜30℃で5〜8時間層流下で乾燥した。乾燥した溶液は速溶性薄膜をもたらした。
【0108】
実施例IV.
治療薬剤を有しているスプレー乾燥した微粒子を含有している薄膜片(2c×3cm×100μm)の製造(方法II)
A.スプレー乾燥工程
生物活性剤、pH感受性ポリマー及び安定化賦形剤を含有している製剤を、超音波ノズルを通してスプレー乾燥して、保護及び標的化機能を作り出した。スプレーする製剤は、水溶液又は水性/有機エマルジョンの何れかであった。
【0109】
水溶性溶液用の製剤は次の通りである。

成分 濃度
オイドラギット(登録商標)L100−55 8.33(w/v)%
オイドラギット(登録商標)S100 8.33(w/v)%
蔗糖 17.5(w/v)%
トレハロース 7.5(w/v)%
グリセロール 0.0625(v/v)%
プルロニックF68 0.05(w/v)%
リン酸カリウム 62.5mM
水酸化カリウム 416.7mM
生物活性剤(BSA) 0.5(w/v)%
溶媒 最小必須培地
【0110】
水性/有機エマルジョン用の製剤は次の通りである。

水相
成分 濃度
蔗糖 26.25(w/v)%
トレハロース 11.25(w/v)%
グリセロール 0.0938(v/v)%
プルロニックF68 0.075(w/v)%
リン酸カリウム 93.75mM
生物活性剤 0〜1(w/v)%
溶媒 最小必須培地
【0111】
有機相
成分 濃度
オイドラギット(登録商標)L100−55 10(w/v)%
オイドラギット(登録商標)S100 10(w/v)%
ジクロロメタン 40.0(v/v)%
エタノール 33.3(v/v)%
イソプロパノール 26.7(v/v)%
【0112】
製剤を0.75〜3mL/分の間の流速及び低圧(5〜100psi)で超音波ノズルへ送り出した、これは低い剪断力での噴霧化及び、高い固体含量及び高い粘度範囲でのスプレー乾燥を可能にした。加圧ガスを用いて、好ましくはその超臨界状態で、小さくて狭い液滴粒度分布を保持しながら、製剤を噴霧化した。これは、加熱ストレスを減少して生物活性の損失を最小にする、液滴のより速い乾燥を可能にした。噴霧プルームと同時に起こる、注入された乾燥、加熱ガスの流れが、製剤を乾燥して乾燥微粒子を形成する。スプレー乾燥工程は、25℃の室温、3%の湿度、40〜50℃のノズル温度、そして30〜40℃のコレクター温度で実施される。
【0113】
B.薄膜片の形成
スプレー乾燥した粉末を実施例Iで示されている相3溶液と混合して、10〜30℃で簡単にボルテックスした。次いでこの懸濁液をポリジメチルシロキサンでコーティングした平面に流し入れて、表面積を2cm×3cmに集約した。この溶液を20〜30℃で5〜8時間層流下で乾燥して、速溶性薄膜を得た。
【0114】
実施例VI.
膜から微粒子の放出。
約100〜200mgのポリマー及び賦形剤を含有しているそれぞれの膜を、1〜2分間ボルテックス又は撹拌して蒸留水に溶解した。微粒子の塊を500〜1000rpmで1分間遠心分離して採取した。
【0115】
これらの微粒子を含有している薄膜片の完全溶解後のオイドラギット(登録商標)粒子の粒径分布を示すヒストグラムは、大部分の微粒子が7〜10μmの直径を有していたことを立証した。粒径分布はZ2コールターカウンター(Z2 Coulter Counter)を用いて分析した。
【0116】
実施例VII.
ロタバックス(ロタウィルスワクチン)及び制酸剤(MgO)を有する二層膜の製造。
最初に以下の溶液を調製した。
100mgのポリビニルピロリドン(PVP)、100mgのMgO及び1.5mLのイソプロパノールを室温で混合して、PVP/制酸剤溶液を調製した。
1gのロタバックス(ロタウィルス)乾燥粉末、1gのオイドラギットL100−55及び10.5mLのイソプロパノールを混合してロタバックス溶液を調製した。
【0117】
制酸剤溶液を1mLの注射器に入れて1mL/時間でアルミニウム箔の裏打ち上にエレクトロスピンさせた。膜を20分間真空乾燥した。続いて、ロタバックス溶液を制酸剤膜の上に、全ての溶液を消費するまで、5mL/時間でエレクトロスピンさせた。裏打ちから剥がして白色の膜を得て、適当な大きさに切断した。
【0118】
実施例VIII.
オイドラギット微粒子に封入したロタバックス(ロタウィルスワクチン)を有する二層膜の製造。
最初に、以下の溶液を調製した。
1gのポリビニルピロリドン(PVP)及び10mLのイソプロパノールを混合してPVP溶液(10%)を調製した。
0.4g[0.2g〜2.5g]のオイドラギット(登録商標)L100−55及び10mLのイソプロパノールを混合してオイドラギット(登録商標)溶液(4%、これは2〜25%、w/vに変動できる)を調製した。
1gのロタバックス(ロタウィルス)、500μLのイソプロパノール及び10mLのオイドラギッド(登録商標)溶液を混合して、ロタバックス溶液を調製した。
【0119】
1mLの10%(w/v)PVP溶液を1mLの注射器に入れて、溶液に+10kV(5〜25kV)の電圧で荷電し、そして採取板(アルミニウム箔の裏打ち)に−3kVを荷電して、1mL/時間でエレクトロスピンを行った。目的の厚さ又は組み入れレベルを達成するまでこの工程を繰り返すことができる。次いで不織メッシュ膜を20分間真空乾燥した。ロタバックス溶液を1mLの注射器に入れて、PVP膜上に、1mL/時間及び12kVでエレクトロスピンした。目的とする厚さ又は生物活性成分に対する組み込みレベルに到達するまでこの工程も繰り返すことができる。次いで二層膜を20分間真空乾燥し、アルミニウム箔を剥がして、適当な大きさに切断した。
【0120】
均等物
当業者は通常の実験以上のものを用いずに、本明細書に記載されている発明の特定な実施態様の多くの均等物を認識又は確認できるだろう。このような均等物は以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0121】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1つ又はそれ以上の水溶性ポリマー;
b)1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー;1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子、又はこれらの混合物;及び
c)1つ又はそれ以上の生物活性剤:
を含有してなり、当該微粒子が存在するときには、当該生物活性剤が独立して当該微粒子の内部に封入されている、速溶性薄膜組成物。
【請求項2】
1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー及び1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子を含有してなり、当該生物活性剤が独立して当該微粒子の内部に封入されている、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項3】
1つ又はそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含有してなる、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項4】
水溶性ポリマーが、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカントゴム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレート共重合体、カルボキシビニルポリマー、アミラーゼ、高アミラーゼ澱粉、ヒドロキシプロピル化高アミラーゼ澱粉、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、レバン、エルシナン、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク分離物、乳漿タンパク分離物、又はカゼインである、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項5】
水溶性ポリマーがポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールである、請求項4に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項6】
粘膜接着性ポリマーが、キトサン、ヒアルロン酸塩、アルギン酸塩、ゼラチン、コラーゲン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(L−リジン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(メタクリル酸 2−ヒドロキシエチル)、及びこれらの塩、誘導体又は共重合体である、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項7】
粘膜接着性ポリマーが、アルギン酸ナトリウム又はポリエチレンオキシド又はこれらの組み合わせである、請求項6に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項8】
生物活性剤が、弱毒化生ウィルス、不活化ウィルス、ウィルス様粒子、細菌、核酸、タンパク質、抗体、酵素、抗原、成長因子、サイトカイン、小分子薬物又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項9】
生物活性剤が、弱毒化生ウィルス、不活化ウィルス、ウィルス様粒子、又はバクテリアである、請求項8に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項10】
生物活性剤が遺伝子を対象に送達できる、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項11】
遺伝子を送達できる生物活性剤が、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、レトロウィルス、パラミクソウィルス、サルモネラ菌、リステリア菌、赤痢菌、大腸菌、DNA又はRNAである、請求項10に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項12】
pH感受性微粒子の全てが同一の生物活性剤又は生物活性剤の組み合わせを含有している、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項13】
pH感受性微粒子に封入されていない追加の治療薬剤を更に含有してなる、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項14】
追加の治療薬剤が、制酸剤、抗生物質、抗嘔吐薬、抗鬱薬、抗真菌剤、抗炎症剤、抗ウィルス剤、抗癌剤、免疫調節薬、β−インターフェロン、ホルモン、サイトカイン又はこれらの組み合わせである、請求項13に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項15】
pH感受性微粒子が、約0.05μm〜約500μmの粒径を有している、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項16】
pH感受性微粒子が、メタクリル酸又はアクリル酸の共重合体;プルロニックポリマー;キトサン、キトサン誘導体又はこれらの組み合わせを含有してなる、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項17】
メタクリル酸又はアクリル酸の共重合体が、オイドラギット型の共重合体である、請求項16に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項18】
オイドラギット型の共重合体が、オイドラギット(登録商標)Lポリマー及びオイドラギット(登録商標)Sポリマーの混合物である、請求項17に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項19】
オイドラギット(登録商標)Lポリマーが、オイドラギット(登録商標)L100−55である、請求項18に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項20】
オイドラギット(登録商標)Sポリマーが、オイドラギット(登録商標)S100である、請求項18に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項21】
オイドラギット(登録商標)Lポリマー及びオイドラギット(登録商標)Sポリマーが、約1:10〜約10:1の重量比で存在する、請求項18に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項22】
オイドラギット(登録商標)Lポリマー及びオイドラギット(登録商標)Sポリマーが、約3:2の重量比で存在する、請求項21に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項23】
pH感受性微粒子が、オイドラギット型の共重合体及びプルロニック(登録商標)F−68の混合物を含有してなる、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項24】
プルロニック(登録商標)F−68の重量百分率が約1%〜約20%である、請求項23に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項25】
pH感受性微粒子が、オイドラギット型の共重合体、プルロニック(登録商標)F−68、及びキトサン又はキトサン誘導体の混合物を含有してなる、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項26】
緩衝液を更に含有してなる、請求項1に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項27】
緩衝液が、哺乳動物の胃酸を緩衝するのに十分な量で存在している、請求項26に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項28】
緩衝液が、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、重炭酸アンモニウム、リン酸塩、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウム、塩基性炭酸アルミニウムゲル、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、ハイドロタルサイト、スクラルファート、又は次サリチル酸ビスマスである、請求項26に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項29】
キトサン又はキトサン誘導体の重量百分率が約1%〜約20%である、請求項23に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項30】
pH感受性微粒子が、界面活性剤、糖、緩衝塩又はこれらの組み合わせを更に含有してなる、請求項16に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項31】
界面活性剤が、8〜20の親水親油バランスを有している、請求項30に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項32】
界面活性剤が、ツイン−20又はツイン−80である、請求項31に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項33】
糖がマンニトール又はトレハロースである、請求項30に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項34】
緩衝塩が、リン酸カリウム一塩基又はリン酸カリウム二塩基である、請求項30に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項35】
a)1つ又はそれ以上の水溶性ポリマー;
b)1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー;1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子、又はこれらの混合物;及び
c)1つ又はそれ以上のポリカチオン−DNAナノ粒子:
を含有してなり、当該微粒子が存在するときには、当該ナノ粒子が独立して当該微粒子内に封入されている、速溶性薄膜組成物。
【請求項36】
1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマー及び1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子を含有してなり、当該ナノ粒子が独立して当該微粒子内に封入されている、請求項35に記載の速溶性薄膜組成物。
【請求項37】
a.1つ又はそれ以上の生物活性剤、1つ又はそれ以上の水溶性ポリマー及び1つ又はそれ以上の粘膜接着性ポリマーのエマルジョンを形成すること;
b.エマルジョンを膜形成溶液中に分散すること;及び
c.当該分散液から膜を形成すること:
の工程を含有してなる、1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子微粒子を含有している速溶性薄膜組成物を製造する方法。
【請求項38】
押し出すか或いは平面上に広げることによって膜を形成し、そして当該膜を層流、加熱又は真空下で乾燥する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
a.1つ又はそれ以上の生物活性剤を含有しているpH感受性微粒子を膜形成溶液中に分散すること;及び
b.当該分散液から膜を形成すること:
の工程を含有してなる、1つ又はそれ以上のpH感受性微粒子を含有している速溶性薄膜組成物を製造する方法。
【請求項40】
押し出すか或いは平面上に広げることによって膜を形成し、そして当該膜を層流、加熱又は真空下で乾燥する、請求項97に記載の方法。
【請求項41】
1つ又はそれ以上の生物活性剤を含有しているpH感受性微粒子が:
a.生物活性剤及びpH感受性ポリマーの懸濁液又は溶液を調製すること;
b.溶液又は懸濁液を低圧ガスを用いて混合チャンバーに流すこと;
c.超音波ノズル条件下で液滴のガス状懸濁液を形成すること;及び
d.液滴を乾燥して粉末粒子にすること:
によって形成される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
a.1つ又はそれ以上の溶融押出可能なポリマーの溶液を溶融するまで加熱すること;
b.pH感受性微粒子をポリマーの溶液と混合すること;及び
c.混合物を圧縮して膜にすること:
の工程を含有してなる、1つ又はそれ以上のpH感受性粒子を含有している速溶性薄膜組成物を製造する方法。
【請求項43】
混合工程の前にポリマーの溶液を、pH感受性微粒子を溶融或いは破壊しない温度まで冷却する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
a.1つ又はそれ以上の生物活性剤を含有していてもよいpH感受性ポリマーの第1懸濁液又は溶液をエレクトロスピンさせてメッシュを形成すること;及び
b.生物活性剤及びpH感受性ポリマーの第2懸濁液又は溶液をエレクトロスプレーして膜を形成すること:
の工程を含有してなる、1つ又はそれ以上のpH感受性粒子を含有している速溶性薄膜組成物を製造する方法。
【請求項45】
膜上に第1懸濁液又は溶液のエレクトロスピンを繰り返して膜上に1つ又はそれ以上の追加のメッシュ層を形成すること:
の工程を更に含有してなる、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−526888(P2011−526888A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516265(P2011−516265)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/088300
【国際公開番号】WO2010/002418
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(505045908)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (21)
【Fターム(参考)】