説明

治療装置

【課題】 腫瘍、特に悪性腫瘍については、各種の治療方法が提案され、実施されているが、未、だ確定的な方法は確立されてはおらず、且つ副作用も多い。
【解決手段】 注射針状にした腫瘍等の内部に貫入可能な針11,12を用意し、この針を腫瘍等104内に貫入させた後、液体を用いて腫瘍内に空洞105を作り、この空洞内を針11の先端内部のヒータにより、高温にして腫瘍細胞を死滅させるものである。これにより、患者にほとんど負担を与えることなく、また正常細胞の遺伝子に一切悪影響を与えることなく腫瘍を治療できる手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腫瘍等治療に関する器具に関し、特に、熱またはレーザ光を発生する機能
を持った注射針状の針を備えた治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腫瘍等の治療としては、1.外科手術、2.放射線、3.抗癌剤(科学療法
)が主であり、その他には温熱療法、体質改善療法、漢方薬などが用いられて来た。また、癌はウイルスであるとする説もあり、免疫により治療できるとされている。
【0003】
従来の技術の問題点としては次のようなものが挙げられる。
【0004】
手術は腫瘍等そのものを切除できるという利点はあるが、本来侵襲的であり、患者
の負担が非常に大きく、痛みに耐えるともに、体力の回復に時間を要し、時には合併症を伴うなど、完全回復が困難な場合もあるという大きな欠点がある。また病変位置によっては、技術の難易度が高い、乃至、手術そのものが不可能という問題もある。
【0005】
放射線治療は、放射線が、通常細胞より、成長能力の高い細胞に対しダメージを与
える度合いが大きいという特性を利用している。しかしながら、放射線は物質に対する貫通能力は非常に強いから、癌に向かってどこから放射線を照射しようとも、正常細胞に何の害を与えずに癌細胞のみを殺すということは到底不可能で、多かれ少なかれ正常細胞が損なわれ、何らかの副作用が生ずるという欠点がある。更に、正常細胞に害を与えるということは、その遺伝情報を破壊し、これを癌細に変化させてしまうおそれがあるという矛盾がある。
【0006】
抗癌剤についても、成長の早い細胞の増殖を抑制するという効果を利用したもので
あり、正常細胞に全く害がないわけではなく、抗癌剤使用による体力低下という大きな問題を持っている。また、癌発生場所によって効果が選択的であるという欠点もある。
【0007】
マイクロ波を利用した高温による治療法は、マイクロ波を体外から腫瘍にのみ当て
て高温を発生させる技術が確立されておらず、マイクロ波発生器を腫瘍の近傍にまで導入可能な腫瘍、例えば前立腺癌や肥大症などにしか利用し得ないという欠点がある。
【0008】
その他の治療法、たとえばある種の茸や薬草などについては、効果再現性が明確で
なく、多数の結果の統計処理によって、ある危険率のもとでの効果判定ができるというもの、更には、単に効果があったという症例のみのものまである。また効果の理論的な説明が明確でないという欠点がある。
【0009】
ウイルス説はワクチンで癌が治療できるとするものである。即ち、癌ウイルスは患者の固体によりそれぞれ異なったウイルスが生ずるので、一般的なワクチンではなく、患者本人から採取したウイルスを固体外部で培養し、そこで生成されたウイルスの毒素のみを、元の固体に投与するというものである。しかしながら、一般にワクチンとは、ウイルスが作る毒素そのものを健康体に植え付け、健康体のうちに、そのウイルスに対する抗体を作っておいて、ウイルスが侵入した時にはすでにこれを駆逐する力を備えていることにより、感染を事前に予防するものである。それ故、たとえば、インフルエンザを発症している人にインフルエンザワクチンを投与しても、病気の治療にはならない。したがって、ワクチンによる治療と言うこと自体に疑問を感じざるを得ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前述したような従来の治療技術の問題点を一挙に解決する手段を提供する
ものである。即ち、患者に対し殆ど浸襲的負担を与えることなく、また正常細胞を害
する、特に正常細胞を異常細胞に変化せしめるという問題は全く生ぜず、腫瘍等の本
体のみを攻撃でき、副作用の殆どない手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.上記の問題を解決するために、生体内部の任意の場所に貫入するに十分な長さをもった注射針状の針の先端内部に、針内の電線を介して生体外部から電力を加えることにより、針の先端部を所要温度に加熱できるヒータと、針内のヒータ付近にヒータ周辺の温度を測定するためのセンサ機能とを備えたことを特徴とする治療装置、という第一の手段が得られる。
【0012】
2.上記の問題を解決するために、生体内部の任意の場所に貫入するに十分な長さをもった注射針状の針の先端内部に、針自身の軸方向とは軸のずれた方向に光を放射するよう先端を加工した光ファイバを備えたことを特徴とする治療装置、という第2の手段が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単かつ経済的な装置で、しかも被治療者の負担を最大限軽減し
て、正常細胞の遺伝子を傷つけることもなく病変部分の細胞、細菌などを駆除することができるから、単に人類のみにとどまらず、家畜等を含むすべての生物の寿命を延長可能であるので、社会福祉に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1の形態は、病変部分のある範囲だけを健康な生体温度より高温化し、
病変組織や細菌等を壊死させようとするものである。一般に動物の細胞は高温に対しての抵抗力は弱く、たかだか42℃程度を超えると細胞は生存できない。特に悪性腫瘍の細胞は、正常細胞に比べて高温耐力が弱いといわれている。本発明はこのような細胞の特性を利用し、腫瘍等の病変細胞を死滅させるような高温を発生させて病変部自体及び細菌等を破壊しようとするものである。
【0015】
次に第2の発明の形態について述べる。レーザが発生する光線(以下レーザ光と記
す)は、コヒーレントであり、そのためエネルギ密度が非常に高く、その照射を受けた部分は光エネルギが高温の熱エネルギに変化するため、レーザ加工、レーザメスなどに使われている。それ故、生物体に直接レーザ光をあてると、細胞を焼損もしくは破壊するので、不用意に生物体にレーザ光を照射することがないよう、十分な注意が必要なこともまた周知のところである。本発明はこのようなレーザ光の特徴を応用して、腫瘍等の病変細胞または細菌等を破壊しようとするものである。
【実施例】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の第1実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1に本発明の基本構造を示す。以下の説明では、簡単のため治療対象は人体に発
生した腫瘍であると仮定する。腫瘍以外の病変組織、或いはウイルスを含む細菌等も壊死させることも勿論可能である。
【0018】
図において1は人体外から腫瘍本体の必要位置まで、皮膚等を介して、注射針を刺
すように外襲的に貫入することができる注射針状の針である。
【0019】
針1は同じ太さでも11と、12に分かれ、11部分は腫瘍内に熱を放射する部分であるので仮にラジエータと呼ぶこととする。ラジエータは熱伝導率の良い金属、例えば銀や銅などを用いて製作する。部分12は、ラジエータを必要部分にまで貫入させるために必要な機械的強度を持たせた部分なので、仮にガイドと呼ぶ。ここからは熱はできるだけ放射させたくないので、熱伝導率の悪い物質、例えばチタンのような金属で作成する。ラジエータ11とガイド12は溶接等による気密接続により一体化させて針1を作成するが、異種金属の接合となる場合は、体液中での電池作用による金属イオン流出防止のため、針1は全体をイオン化傾向の低い物質、例えば金のようなもので一体的にメッキを施すものとする。
【0020】
2は、この針1を人体などに貫入させるために、医師などのオペレータが操作し
やすいように作られた操作部である。
【0021】
3は針のラジエータ11を高温にするためにラジエータ11の内部に組み込まれた発熱体で、電気的に比較的高抵抗を持った物質、4はこの発熱体3に電流を導くために、針のガイド12及び操作部2内に組み込まれた導線であって、その電気抵抗は十分に低く保つものとする。
【0022】
13は針先端の開口部で、腫瘍内に液体を放出、吸収可能な構造とする。
【0023】
発熱体3及び導線4は、針1及び操作部2とは電気的に絶縁されており、発熱体
3の先端のみが、内部で針の先端部分で接続され、針自体も発熱体3の加熱用電流通路の一部になっている。以下説明の簡単化のため、図の1、2、3、4を併せて、熱針と仮称することとする。
【0024】
5は熱針内に電流を伝送するための2本の電線を束ねたコード、5’はコード5と導線4を結ぶコネクタ、6は熱針内の発熱体3に供給する電力を制御するための可変の電圧(または電流)の電源である。
【0025】
7は発熱体3に流れる電流を測定するための電流計、8は発熱体の両端に発生す
る電圧測定のための電圧計である。なお、図1では構成の簡単化のため、前述のように発熱体に供給される電流の帰路は、熱針自体となる例を示してあるが、電流帰路はこれとは別に導線を設けることができることは勿論である。
【0026】
また針1は、この内部が液体の通路になっており、針が腫瘍内に貫入後は先端13より液体を腫瘍内に放出あるいは吸収できるようになっている。9は前述の液体をポンプ10から熱針内に送りこむためのチューブ、10は液体を圧入または吸引するためのポンプである。但し、液体を腫瘍内の所用部分に圧入、吸引することは、別に注射針を用いて行うこともできるので、本発明において必須なものではない。
【0027】
発熱体3は、例えばニクロム線などが考えられる。一般に金属の電気抵抗の温度
係数は正であるので、あらかじめ校正しておくことにより、供給する電圧、電流を測定すれば、ラジエータ11の温度を外部から知りうる。
【0028】
更には、発熱体としてサーミスタなどの半導体を使用すると、抵抗温度係数は負
であるが、温度係数が大きいので、発熱体兼敏感な熱センサとなり得る。また、シリコンダイオードは、その障壁電圧が1℃あたり2mVと良い直線性をもって降下するので、このような半導体類をラジエータ内の細い空間内に作成すれば、ラジエータの温度を精密に測定できる。
【0029】
上述のように、温度の測定方法はいろいろあるが、その1実施例を図1により説
明する。
【0030】
この回路がダイオード14、15である。この場合は加熱用電源には直流を用いることとし、図1の例では導線4から発熱体に向かって、電流帰路である熱針に対し正の電圧を加える。この時ダイオード15は逆方向、ダイオード14は順方向であるから、電流はすべて発熱体を流れる。温度測定時には、加熱用電流を断とし、導線4に負の電圧を加える。これにより、ダイオード15が順方向、14は逆方向となるので、ダイオード15のみに電流が流れる。この時のダイオード15の障壁電圧を測定すれば、前述のようにその値からラジエータの温度をかなり正確に測定し得る。
【0031】
温度測定は連続して行う必要はなく、しかも温度測定はほとんど瞬時に行うことができる。たとえば、ラジエータを加熱中に数秒間に一度、加熱電流を高々0.1秒間断とし、この間に逆方向の電圧を加えて温度測定を行えば十分である。したがって温度測定がラジエータの加熱に影響は無視できる。かくして、導線4一本が、加熱、温度測定の2つの目的に使用できる。
【0032】
このような回路の微細加工技術は、ICなどですでに確立されている。ラジエータの使用温度はたかだか摂氏数十度未満であるので、発熱体あるいは温度センサとして、耐熱性のよくない半導体などを使用したとしても信頼性上問題になることはない。
【0033】
図1の構成の装置を用いての治療方法について図2を用いて説明する。
【0034】
図2において、11および12は前述の熱針のうちのラジエータ及びガイドで、貫入させる部分を示す。101は、例えば人体の皮膚及び筋肉等人体の比較的表面にある部分、102はある臓器で腫瘍のないもの、103は102とは異なる臓器、104は臓器103内に発生した腫瘍である。なお、操作部2、コード5、チューブ9は前述したとおりであるので説明は省略する。
【0035】
腫瘍治療に際しては、予備診断によりあらかじめ選定された長さを有する熱針を用
い、オペレータは、目視、触診、或いはX線、超音波、ファイバスコープなどを介した画像、その他の方法により、ラジエータ11が腫瘍の必要位置に届くように皮膚を介して熱針を所用部分まで貫入させる。
【0036】
次にオペレータは画像等によりチェックしつつ、腫瘍治療に見合った適当量の、人体には無害な液体、例えば生理的食塩水、ある種の油などを、ポンプ10により針1を介してその開口部13から圧入、即ち注射する。この操作により、開口部13を中心とする水滴(適当な言葉が見当たらないので、仮にこう呼ぶ)ができる。この水滴のために腫瘍内には空洞105ができる。その後オペレータは、水滴が必要な温度になるように供給電力を設定し、所定の時間だけラジエータを加熱する。
【0037】
発熱体、ラジエータ、水滴など、したがって、空洞周辺の腫瘍内壁は、発熱体の発熱量と空洞内壁面からの吸熱量が等しくなるようなある温度に向かって時間の指数関数に従って温度が上昇し、ある定温で安定する。
【0038】
次に、水滴を熱した時の腫瘍内の温度分布について述べる。簡単のため、腫瘍を含め人体内では、熱は伝導のみにより伝わり、且つその熱伝導率は一定とする。また、水滴は、針の開口部13の周囲の組織が均一のやわらかさであれば、水滴は球形になる。更に、ラジエータ11は、水滴をどこでも等しい温度で加熱するものとする。また生体内ではどこでも均一かつ一定な温度となるように常に調節されている、換言すれば、余計な発熱は生体の働きにより体外に捨てられるものとすれば、水滴の周囲は無限に広がる熱媒体と同様と考えてよい。
【0039】
このように考えて、水滴から周囲に熱が放散する様子を、ラジエータと直交する面で切ってみれば、熱の流れる方向は図3のように示される。図において105は水滴で、その周囲は腫瘍組織である。図に示した多くの矢印20は水滴から放出される熱の流れ、即ち熱流線である。この熱流線は、水滴を球とすれば、中心から全方向に向かって均等に球外に向かうと考えられる。
【0040】
今、熱流線20の数を単位熱量あたり1本と考えれば、単位面積あたり熱流線が貫く密度はこの単位面積の温度と1対1対応をする。即ち熱流線密度が高いということは、この面積内に流れ込む熱量が多いことを示し、温度が高いことになる。流線の面密度は球中心のからの距離の2乗に反比例するが、これら熱流線の面密度一定部分を結べば等温度面が得られる。この例を図3の31、32で示した。腫瘍組織が壊死するある温度の等温面で囲まれた球内では組織は全部壊死することなる。
【0041】
以上の熱解析は、水滴を球、かつ水滴の温度は均一と仮定して甚だ定性的に述べたが、実際にはラジエータは棒状であり、水滴温度も均一とは限らない。しかし、このような現象を解析する方法は、数学的にはすでにベクトル解析として確立されているので、それを応用することにより等温面を解くことができる。
【0042】
以上のようにラジエータの発熱量、腫瘍内に作った空洞の大きさ、腫瘍を含む体内の熱伝導率が決まれば、ラジエータの周りの等温面は解析的に決定することができる。したがって、必要な水滴の大きさを決定した上で、ラジエータの温度をある値に保った時、腫瘍細胞が生き残れない最低温度の等温面、即ち腫瘍細胞が死滅する体積を計算できることとなる。
【0043】
勿論、ある温度を保ったとしても、その体積内の腫瘍細胞を全滅させるに必要な時間もある。そこで、図1の可変電源6を操作して、ラジエータに加えるべき電力と時間、即ち全放熱量を調整するのがオペレータの役目となる。あるいは、測定温度を可変電源6にフィードバックして温度調整を自動化することは当然考えられるところである。
【0044】
更に言えば、前述の等温面の計算に誤差が生じ、等温面付近で正常細胞が熱の影響を受けたとしても、それは少範囲であること、また、そのこと自体が正常細胞の遺伝子を変化させて癌細胞にしてしまうことがないことは、軽い火傷や灸などが腫瘍の原因となってはいない、など過去の多くの経験から十分に知られたところである。即ち、所定等温面内に正常組織を含んだとしても、それは単に少量の正常細胞が死滅するだけで遺伝子に影響を与えるものではない。
【0045】
一度ある範囲内の腫瘍細胞を死滅させた後には、ポンプ10の操作により水滴の大きさを変化させ、或いは、1回の加熱後、注入した液体を吸収して熱針自体を前後させるなど水滴の場所を変化させて広範囲で腫瘍組織を壊死させることが可能である。更に、ラジエータ11を腫瘍の生きた他の部分に貫入しなおし、これを繰り返せば、全部の腫瘍組織を壊滅させることが可能となる。
【0046】
熱針は外襲的であるとは言え、注射針程度の細さに製作することは簡単であるので、患者に対する負担は、針挿入に伴う多少の痛みを感ずる他はほとんどない。
【0047】
図2では皮膚を介して熱針を外襲的に腫瘍内部まで貫入させる方法について説明したが、本発明による腫瘍治療は外襲的のみの必要はなく、たとえば熱針をファイバスコープ内部、血管カテーテル内部などを通してできる限り腫瘍の近くから腫瘍内部に貫入させ、被治療者の負担を軽減することも勿論可能である。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0049】
図4に本発明の基本形態を示す。図において501は人体外から腫瘍本体の必要位置まで、皮膚を介して外襲的に貫入することができる注射針と同じ機能を有する針であって、その内部に511で示した光ファイバが先端まで挿入されている。同時にこの針を介して、第1の実施の形態で述べたのと同様に液体を放出、吸収することができる構造になっている。
【0050】
509は前述の液体をポンプ510から針内に送りこむためチューブ、510は液体を圧入または吸引するためのポンプである。但し、液体を腫瘍内の所用部分に圧入、吸引することは、別に注射針を用いて行うこともできるので、本発明において必須なものではない。
【0051】
502は、この針を人体などに貫入させるために、医師などのオペレータが操作しやすいように作られた操作部である。
【0052】
503はレーザ光源505から光ファイバ511まで光を伝送するために、光ファイバに外覆等を施し、機械的強度をもたせた光コード、503’は光コード503と針501内の光ファイバ511とを光的に脱着可能とするための光コネクタである。
【0053】
504はは針の先端から照射すべき光強度を調整することができる可変光減衰器、505はガス、半導体などを用いたレーザ光源、506はレーザ光源を駆動する電源を接続、切断するためのスイッチ、507はレーザ光源駆動用電源である。また、光減衰器に代わってレーザ光源を駆動する電源の電圧等を変化させてレーザ出力を調整することもできる。508は光ファイバ511に送出される光パワーを計測する光パワー計である。
【0054】
次に針先端の構造の1例について図5を用いて説明する。
【0055】
図において501、511は図4の針ならびに光ファイバである。光ファイバの先端部分は接着剤など、ファイバを針に固定する部材512を用いて針511に固定するが、その際光ファイバの先端の向きを針の軸とはずらし、あるいはファイバの先端を加工して放射される光の軸と針の軸とをずらすなど、針自体の向きと放射光軸の向きにはある角度を持たせるものとする。また光ファイバ511は複数本とすることもできる。
【0056】
光ファイバはマルチモードファイバを用い、わけてもモード数の多いものを用いると、ファイバ先端からの光ビームはモードごとに異なる進行方向を持つので、光ビームの束が多少の広がりをもって放射される。513、513’はこのような放出光ビームを示す。
【0057】
図4のシステムを用いての治療方法方法を、図6を用いて説明する。図6において、501は前述の針である。101は、例えば人体の皮膚及び筋肉等人体の比較的表面にある部分、102はある臓器で腫瘍のないもの、103は102とは異なる臓器、104は臓器103内に発生した腫瘍である。なお、操作部502、光コード503、チューブ509は前述したとおりであるので説明は省略する。
【0058】
オペレータは腫瘍治療に際しては、実施形態1と同様な方法で治療すべき腫瘍の位置、大きさ等を見極め、画像等により、腫瘍治療に見合った長さを有する針を選定して腫瘍内の適する部分に貫入する。その後、適当量の、人体には無害な液体であって放射するレーザ光に対し透明なもの、例えば生理的食塩水、ある種の油などを、ポンプ10により、針1を介してその先端14から圧入、つまり注射する。この操作により、針先端14を中心とする水滴(この言葉が仮称であることは実施形態1に同じ)ができ、この水滴のために腫瘍内にある大きさの空洞ができる。こうしておいてオペレータはレーザ電源506、光減衰器504を操作して腫瘍内にできた空洞内壁を照射する。
【0059】
光エネルギは光の強さ(光波の振幅)と照射時間に比例するからオペレータは、5の光減衰器或いは電源電圧などを調整して光強度を所要の値に設定し、照射光パワーをパワー計8により調整して、針先端から必要時間照射されたレーザ光により腫瘍組織を壊死させる。
【0060】
次にオペレータは針をその位置で、必要な時間をかけて360度以上回転させる。前述したように放射される光は、針501とは光軸がずれているので、針11を回転させると、空洞内のある円周上の腫瘍細胞が照射され、壊死する。そこで、オペレータは光針を微小間隔だけ前進または後退させ、針の先端位置を変化させて、光コード503がねじれないよう逆方向に360度回転させて同様なことを行う。もし光コネクタ503’が回転可能な構造なら、1方向に無限回回転させることも可能である。つまり、レーザ光で空洞内壁を必要な時間をかけて走査照射するのである。こうすることにより、レーザ光で照射された空洞内壁の組織全体を壊死させることができる。
【0061】
空洞内の全組織を壊死させた後は注入した液体を抜いた後、針先端を腫瘍内の別の位置まで移動させて同様な操作を行えば、広範囲にわたり腫瘍組織を壊死させることができる。これを繰り返すことにより腫瘍組織の全部を比較的短時間で壊死させられる。このような針の回転と先端の移動の時間的組み合わせ、即ち走査は、予備診断により必要な光エネルギ強度がわかっていれば、機械により全自動で行うことができることは勿論である。
【0062】
光ファイバは金属の針内に収容されているから、レーザ光は不要部から外部に漏れることは全くないので、正常細胞に害を与えることない。また、針は外襲的であるとは言え、注射針程度の細さに製作することは簡単であるので、患者に対する負担は、針挿入に伴う多少の痛みを感ずる他はほとんどない。
【0063】
図6では針を外襲的に腫瘍内部まで貫入させる方法について説明したが、本発明による腫瘍治療は外襲的のみの必要はなく、たとえば針をファイバスコープ内部、血管カテーテル内部などを通してできる限り腫瘍の近くから貫入させ、被治療者の負担を軽減することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上述べたように、本発明は医療部門における利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施形態による本発明の基本構成を示す図
【図2】本発明の構成を用いて主要を治療する方法を示す図
【図3】本発明による水滴球から熱が放出される様子と、等温面が得られる様子を示す断面図
【図4】第2の実施形態による本発明の基本構成を示す図
【図5】図4のうち放射する光の軸を針とある角度をなすように取り付ける方法の1実施例を示す図
【図6】本発明の構成を用いて腫瘍を治療する方法を示す図
【符号の説明】
【0066】
1・・・針
2・・・操作部
3・・・発熱体
4・・・導線
5・・・コード
5’・・・コネクタ
6・・・可変電源
7・・・電流計
8・・・電圧計
9・・・チューブ
10・・・ポンプ
11・・・ラジエータ
12・・・ガイド
13・・・針1の開口部
14,15・・・ダイオード
101・・・人体等の比較的外部を構成する部分
102、103・・・臓器
104・・・腫瘍本体
105・・・空洞
20・・・熱流線
30、31・・・等温面の断面図
501・・・針
502・・・操作部
503・・・光コード
503’・・・光コネクタ
504・・・光減衰器
505・・・レーザ光源
506・・・スイッチ
507・・・レーザ用電源
508・・・光パワー計
509・・・チューブ
510・・・ポンプ
511・・・光ファイバ
512・・・光ファイバを針に固定する部材
513、513’・・・光ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内部の任意の場所に貫入するに十分な長さをもった注射針状の針の先端内部に、
針内の電線を介して生体外部から電力を加えることにより、針の先端部を所要温度に加熱できるヒータと、針内のヒータ付近にヒータ周辺の温度を測定するためのセンサ機能とを備えたことを特徴とする治療装置。
【請求項2】
生体内部の任意の場所に貫入するに十分な長さをもった注射針状の針の先端内部に、針自身の軸方向とは軸のずれた方向に光を放射するよう先端を加工した光ファイバを備えたことを特徴とする治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−99923(P2008−99923A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285643(P2006−285643)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(306034907)
【出願人】(301026860)
【出願人】(306034893)
【Fターム(参考)】