説明

法留め基礎と法覆い壁の連結方法と連結構造

【課題】 法留め基礎と法覆い壁の下端がほぼ法面に沿う引き離し方向に移動しても、それらの上下の重なりを維持し、両者の間に、法面の土砂が流出する隙間を生じ難くする。
【解決手段】 法面Nの下端に構築する法留め基礎1と、法面の面上に構築する法覆い壁11を連結するに当たり、法留め基礎は、壁載せ面7をほぼ法面に沿って形成し、可動連結具21の一端側22を取り付け、法覆い壁は、下端を法留め基礎の壁載せ面に載せて重ね、可動連結具の他端側23を取り付け、可動連結具は、法覆い壁の下端と法留め基礎をほぼ法面に沿う引き離し方向に移動可能に連結する構成にし、その移動可能範囲を、法覆い壁の下端と法留め基礎の壁載せ面の上下の重なりが維持される範囲内にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面の下端に構築する法留め基礎と、法面の面上に構築する法覆い壁とを連結する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、海岸や水路などの護岸は、法面の下端に法留め基礎を、法面の面上に法覆い壁をそれぞれ構築し、法覆い壁の下端を法留め基礎の上部に接続する。法留め基礎と法覆い壁との接続には、連結材を用いる固定式と、連結材を用いない接触式がある。
【0003】
接触式は、法留め基礎に壁留め斜面を法面と直交する方向に沿って形成し、法留め基礎の壁留め斜面に法覆い壁の下端の端面を突き合わせる。法留め基礎と法覆い壁は、面接触するだけである。接触式は、特許文献1に例示されている。
【0004】
固定式は、連結材の一端側を法覆い壁の下端に、連結材の他端側を法留め基礎にそれぞれ埋没して固着する。法留め基礎と法覆い壁は、連結材を介して固定される。固定式は、特許文献2に例示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−111735号公報
【特許文献2】特開2001−81756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[背景技術の課題]
法留め基礎や法覆い壁が設置されている地盤が変動したり、法留め基礎や法覆い壁に外力が加わったりすると、法留め基礎と法覆い壁を引き離す力が作用することがある。例えば、法覆い壁の上部が沈下すると、法覆い壁の下端が法面を登る方向に引っ張られ、法覆い壁の下端と法留め基礎をほぼ法面に沿う方向に引き離す力が作用する。また、法留め基礎が法覆い壁と反対側に倒れようとすると、法覆い壁の下端と法留め基礎をほぼ法面に沿う方向に引き離す力が作用する。
【0007】
そのような力が作用すると、接触式の法留め基礎と法覆い壁の下端は、ほぼ法面に沿う方向に引き離され、両者の間に隙間が生じる。その隙間からは、法面の土砂が流出する。法面が侵食されることになる。
【0008】
また、そのような引き離し力が強力に作用すると、固定式の法留め基礎と法覆い壁の下端は、連結材を埋没した連結部分が破損する。その上、法留め基礎と法覆い壁の下端は、ほぼ法面に沿う方向に引き離されて、それらの間に隙間が生じる。その隙間からは、法面の土砂が流出する。法留め基礎、法覆い壁や法面が崩壊することになる。
【0009】
[課題を解決するための着想]
法覆い壁の下端と法留め基礎は、ほぼ法面に沿う面で上下に重ね、ほぼ法面に沿う引き離し方向に移動可能に連結する。そして、その移動可能範囲内で、法覆い壁の下端と法留め基礎の一方又は両方がほぼ法面に沿う引き離し方向に移動しても、法覆い壁の下端と法留め基礎の重なりを維持することにした。すると、法覆い壁の下端と法留め基礎の間には、法面の土砂が流出する隙間が生じ難い。
【0010】
具体的には、法留め基礎は、壁載せ面をほぼ法面に沿って形成する。法覆い壁は、下端を法留め基礎の壁載せ面に載せて重ねる。法覆い壁の下端と法留め基礎は、ほぼ法面に沿う引き離し方向に移動可能に連結する。その移動可能範囲は、法覆い壁の下端と法留め基礎の壁載せ面の重なりが維持される範囲内にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1)法面の下端に構築する法留め基礎と、法面の面上に構築する法覆い壁とを連結する方法であって、
法覆い壁の下端と法留め基礎は、ほぼ法面に沿う面で上下に重ね、ほぼ法面に沿う引き離し方向に移動可能に連結し、その移動可能範囲内で法覆い壁の下端と法留め基礎の一方又は両方がほぼ法面に沿う引き離し方向に移動しても、法覆い壁の下端と法留め基礎の上下の重なりを維持することを特徴とする法留め基礎と法覆い壁の連結方法。
【0012】
2)法面の下端に構築する法留め基礎と、法面の面上に構築する法覆い壁とを連結する構造であって、
法留め基礎は、壁載せ面をほぼ法面に沿って形成し、可動連結具の一端側を取り付け、
法覆い壁は、下端を法留め基礎の壁載せ面に載せて重ねる構成にし、可動連結具の他端側を取り付け、
可動連結具は、法覆い壁の下端と法留め基礎をほぼ法面に沿う引き離し方向に移動可能に連結する構成にし、その移動可能範囲を、法覆い壁の下端と法留め基礎の壁載せ面の上下の重なりが維持される範囲内にしていることを特徴とする法留め基礎と法覆い壁の連結構造。
【0013】
3)上記2)の法留め基礎と法覆い壁の連結構造において、
法留め基礎は、法覆い壁の下端の端面と向き合う壁向き面を形成し、
可動連結具は、一端側と他端側を法留め基礎の壁向き面側と法覆い壁の下端の端面側に取り付けていることを特徴とする。
【0014】
4)上記2)の法留め基礎と法覆い壁の連結構造において、
可動連結具は、一端側と他端側を法留め基礎の壁載せ面側と法覆い壁の下端の裏面側に取り付けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
法覆い壁の下端と法留め基礎は、移動可能範囲内でほぼ法面に沿う引き離し方向に移動しても、それらの上下の重なりを維持する。両者の間に、法面の土砂が流出する隙間が生じ難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1例(図1〜図3参照)]
本例は、河川、海岸や水路などの護岸において、図1と図2に示すように、法面Nの下端に法留め基礎1を構築し、法面Nの面上に法覆い壁11を構築している。法留め基礎1は、壁載せ面7をほぼ法面Nに沿って形成し、可動連結具21の一端側を取り付けている。法覆い壁11は、下端を法留め基礎1の壁載せ面7に載せて重ね、可動連結具21の他端側を取り付けている。可動連結具21は、法覆い壁11の下端と法留め基礎1をほぼ法面Nに沿う引き離し方向に移動可能に連結している。その移動可能範囲は、図3に示すように、法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の上下の重なりが維持される範囲内に限定している。
【0017】
法留め基礎1は、平板状の基礎盤2の上に基礎ブロック3を設置している。基礎ブロック3は、既製コンクリートであり、前壁4と後壁5を並列し、前壁4と後壁5の間に複数の梁6を掛け渡している。法面N側の後壁5は、上部に、壁載せ面7と壁向き面8からなる逆三角形状断面の連結溝を左右方向に貫通して形成している。壁載せ面7は、法面Nと傾斜角ないし勾配がほぼ同じの斜面であり、ほぼ法面Nに沿って形成している。壁向き面8は、壁載せ面7と直交する斜面であり、ほぼ法面Nと直交する面に沿って形成している。基礎ブロック3の前壁4と後壁5の間の空間には、現場打ちのコンクリート9を充填している。中詰めコンクリート9には、梁6を埋没している。
【0018】
法覆い壁11は、多数の覆いブロック12を千鳥状に配列して多数の棒13で結合している。覆いブロック12は、既製コンクリートであり、方形の平板であって、表面に凸部を形成している。多数の覆いブロック12は、左右方向に並べ、覆いブロック12の横列を前後方向ないし上下方向に多段に並べ、覆いブロック12の奇数段目の横列と偶数段目の横列を覆いブロック12の半幅分左右方向にずらしている。結合棒13は、鉄筋であり、各段の覆いブロック12を前後方向ないし上下方向にほぼ法面Nに沿って縦に貫通している。結合棒13の下端は、法覆い壁11の下端の端面から突出している。多数の結合棒13は、法覆い壁11の左右方向の等間隔位置をそれぞれ同様に貫通している。
【0019】
法面Nは、勾配が緩く、土砂の斜面であり、その斜面上にシート状の吸出防止材Bを敷いている。吸出防止材Bで被覆された法面Nは、法留め基礎1の壁載せ面7に接続している。法留め基礎1の壁載せ面7と法面N上の吸出防止材Bの上には、調整砂Sを層状に敷いている。調整砂Sの上には、法覆い壁11を設置している。法覆い壁11は、裏面を調整砂Sの表面に重ねている。法覆い壁11の下端は、調整砂Sを介して法留め基礎1の壁載せ面7に載せている。法覆い壁11の下端の端面と法留め基礎1の壁向き面8は、それらの間に隙間を設け、向き合わせている。
【0020】
可動連結具21は、筒22に棒23の一端側を嵌合し、棒23の他端側を筒22の片端から突出し、筒22内の棒23の端に抜止片を固定し、筒22の棒突出端に抜止片を固定している。筒22と棒23は、相対的に長手方向に沿って移動して棒23の突出量が増減する構造である。移動可能範囲は、棒23の抜止片が筒22の抜け止めに当って棒23の突出量が最大になる上限と、棒23の抜止片が筒22の閉鎖端に当って棒23の突出量が最小になる下限との間に限定されている。
【0021】
筒22は、法留め基礎1の上部に埋没して固着し、筒22の棒突出端を法留め基礎1の壁向き面8に露出している。なお、図示しないが、筒22の外周には、抜止環を突出して同心状に固定している。可動連結具21の一端側の筒22は、法留め基礎1の壁向き面8側に取り付けている。棒23は、法留め基礎1の壁向き面8から突出した部分を、法覆い壁11の下端の前に配置し、法覆い壁11の下端の端面から突出した結合棒13の下端に溶接して固着している。可動連結具21の他端側の棒23は、法覆い壁11の下端の端面側に取り付けている。筒22と棒23は、ほぼ法面Nに沿って前後方向ないし上下方向に配置している。
【0022】
法覆い壁11の各結合棒13は、それぞれ、同様に可動連結具21で法留め基礎1に連結している。法覆い壁11の下端の端面と法留め基礎1の壁向き面8の間の隙間には、現場打ちのコンクリート24を充填している。隙間詰めコンクリート24には、多数の可動連結具21の棒23の突出部分と法覆い壁11の多数の結合棒13の突出下端を埋没して固着している。
【0023】
本例の護岸において、法覆い壁11は、図3に一部を示すように、上部が沈下すると、下端が法面Nを登る引き離し方向に引っ張られて移動し、法留め基礎1の壁向き面8から遠ざかる。その際、可動連結具21は、棒23の突出量が増加して伸長し、棒23の突出部分に固着した隙間詰めコンクリート24と法留め基礎1の壁向き面8の間に隙間が生じる。しかし、法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の上下の重なりが維持される。可動連結具21は、棒23の突出量が最大になって移動可能範囲の上限になっても、法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の上下の重なりが維持される。法覆い壁11の下端と法留め基礎1の間に、法面Nの土砂が流出する隙間が生じない。
【0024】
可動連結具21が移動可能範囲の上限まで伸長した最長状態で、法覆い壁11の下端を更に引き離し方向に引っ張る力が作用すると、可動連結具21は、法覆い壁11下端のそれ以上の引き離しに抵抗する。法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の重なりを維持しようとする。
【0025】
[第2例(図4〜図7参照)]
本例は、第1例における可動連結具21を「ボルトと長孔を用いる連結具31」に変更し、第1例における法覆い壁11の覆いブロック12を「凸部のないブロック16」に変更している。その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0026】
法覆い壁11は、図4と図5に示すように、覆いブロックを、表面に凸部のない平板のブロック16にしている。少なくとも最下段の覆いブロックは、表面に凸部のない平板のブロック16にしている。
【0027】
可動連結具31は、図4〜図6に示すように、箱体32の底板に長孔33を貫通し、長孔33にボルト34を貫通し、ボルト34の頭部を箱体32の内に、ボルト34のねじ部を箱体32の外にそれぞれ配置している。
【0028】
ボルト34用のインサート35は、法留め基礎1の上部に埋没して固着し、ねじ孔の開口を法留め基礎1の壁載せ面7に露出している。可動連結具31の一端側のインサート35は、法留め基礎1の壁載せ面7側に取り付けている。
【0029】
箱体32は、法覆い壁11の最下段の覆いブロック16の下端に埋没して固着し、長孔33付きの底板を覆いブロック16の裏面に露出している。箱体32は、覆いブロック16の表面側に開口している。可動連結具31の他端側の箱体32は、法覆い壁11の下端の裏面側に取り付けている。ボルト34のねじ部は、長孔33と層状の調整砂Sを貫通してインサート35にねじ込んで固定している。箱体32の開口は、蓋板36で閉鎖している。長孔33の長手方向は、ほぼ法面Nに沿って前後方向ないし上下方向に配置している。
【0030】
箱体32とボルト34は、相対的に長孔33の長手方向に沿って移動する構造である。移動可能範囲は、長孔33の前下端がボルト34に当って箱体32の後上方向へのずれが最大になる上限と、長孔33の後上端がボルト34に当って箱体32の後上方向へのずれが最小になる下限との間に限定されている。
【0031】
法覆い壁11の最下段の各覆いブロック16は、それぞれ、同様に可動連結具31で法留め基礎1に連結している。法覆い壁11の下端の端面から突出した多数の結合棒13の下端には、横通し棒17を掛け渡し溶接して固定している。法覆い壁11の下端の端面と法留め基礎1の壁向き面8の間の隙間には、現場打ちのコンクリート24を充填している。隙間詰めコンクリート24には、多数の結合棒13の突出下端と横通し棒17を埋没して固着している。
【0032】
本例の護岸において、法覆い壁11の下端は、法面Nを登る引き離し方向に引っ張られると、図7に示すように、法面Nを登る方向に移動し、法留め基礎1の壁向き面8から遠ざかる。その際、可動連結具31は、ボルト34が移動せずに、箱体32が法面Nを登る方向に移動し、法覆い壁11の下端に固着した隙間詰めコンクリート24と法留め基礎1の壁向き面8の間に隙間が生じる。しかし、法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の上下の重なりが維持される。可動連結具31は、箱体32の長孔33の前下端がボルト34に当たって移動可能範囲の上限になっても、法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の上下の重なりが維持される。法覆い壁11の下端と法留め基礎1の間に、法面Nの土砂が流出する隙間が生じない。
【0033】
可動連結具31が移動可能範囲の上限までずれた最大ずれ状態で、法覆い壁11の下端を更に引き離し方向に引っ張る力が作用すると、可動連結具31は、法覆い壁11下端のそれ以上の引き離しに抵抗する。
【0034】
[第3例(図8と図9参照)]
本例は、第2例における可動連結具31を「ボルトと丸孔を用いる連結具41」に変更している。その他の点は、第2例におけるのと同様である。
【0035】
可動連結具41は、図8に示すように、箱体42の側板に円形の丸孔43を貫通し、丸孔43に植込みボルト44を貫通し、植込みボルト44の一端の植込み用ねじ部を箱体42の外に、植込みボルト44の他端のナット用ねじ部を箱体42の内にそれぞれ配置し、植込みボルト44のナット用ねじ部にナット45を螺合している。箱体42とナット45付き植込みボルト44は、相対的に丸孔43の貫通方向に沿って移動する構造である。移動可能範囲は、箱体42の丸孔43付き側板がナット45に当って最長になる上限と、箱体42の反対側の側板が植込みボルト44のナット用ねじ部に当って最短になる下限との間に限定されている。
【0036】
植込みボルト44用のインサート46は、法留め基礎1の上部に埋没して固着し、ねじ孔の開口を法留め基礎1の壁向き面8に露出している。箱体42は、法覆い壁11の最下段の覆いブロック16の下端に埋没して固着し、丸孔43付きの側板を覆いブロック16の下端の端面に露出している。箱体42は、覆いブロック16の表面に開口している。植込みボルト44の植込み用ねじ部は、丸孔43を貫通してインサート46にねじ込んで固定している。箱体42の開口は、蓋板47で閉鎖している。
【0037】
可動連結具41の一端側の植込みボルト44は、法留め基礎1の壁向き面8側に取り付けている。可動連結具41の他端側の箱体42は、法覆い壁11の下端の端面側に取り付けている。丸孔43の貫通方向と植込みボルト44の軸心方向は、ほぼ法面Nに沿って前後方向ないし上下方向に配置している。
【0038】
法覆い壁11の最下段の各覆いブロック16は、それぞれ、同様に可動連結具41で法留め基礎1に連結している。法覆い壁11の下端の端面と法留め基礎1の壁向き面8の間の隙間には、現場打ちのコンクリート24を充填している。隙間詰めコンクリート24には、植込みボルト44の中央部を埋没している。
【0039】
本例の護岸において、法覆い壁11の下端は、法面Nを登る引き離し方向に引っ張られると、図9に示すように、法面Nを登る方向に移動し、法留め基礎1の壁向き面8から遠ざかる。その際、可動連結具41は、箱体42が法面Nを登る方向に移動し、法覆い壁11の下端に固着した隙間詰めコンクリート24と法留め基礎1の壁向き面8の間に隙間が生じる。しかし、法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の上下の重なりが維持される。可動連結具41は、箱体42の丸孔43付き側板がナット45に当たって移動可能範囲の上限になっても、法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の上下の重なりが維持される。
【0040】
可動連結具41が移動可能範囲の上限まで伸長した最長状態で、法覆い壁11の下端を更に引き離し方向に引っ張る力が作用すると、可動連結具41は、法覆い壁11下端のそれ以上の引き離しに抵抗する。
【0041】
[第4例(図10参照)]
本例は、第3例における可動連結具41を「アイボルトを用いる連結具51」に変更している。その他の点は、第3例におけるのとほぼ同様である。
【0042】
可動連結具51は、図10に示すように、基礎側のアイボルト52と壁側のアイボルト53及び串刺し棒54を備えている。
【0043】
基礎側アイボルト52用のインサート55は、法留め基礎1の上部に埋没して固着し、ねじ孔の開口を法留め基礎1の壁向き面8に露出している。基礎側アイボルト52は、ねじ部を基礎側のインサート55にねじ込んで固定し、環状部を法留め基礎1の壁向き面8から突出している。可動連結具51の一端側の基礎側アイボルト52は、法留め基礎1の壁向き面8側に取り付けている。
【0044】
壁側アイボルト53用のインサート56は、法覆い壁11の最下段の覆いブロック16の下端に埋没して固着し、ねじ孔の開口を覆いブロック16の下端の端面に露出している。壁側アイボルト53は、ねじ部を壁側のインサート56にねじ込んで固定し、環状部を覆いブロック16の下端の端面から突出している。可動連結具51の他端側の壁側アイボルト53は、法覆い壁11の下端の端面側に取り付けている。
【0045】
基礎側アイボルト52の環状部と壁側アイボルト53の環状部は、左右に配置し、串刺し棒54を左右方向に貫通している。串刺し棒54の外径は、アイボルト52、53の環状部の内径の数分の一である。両アイボルト52、53は、軸心方向をほぼ法面Nに沿って前後方向ないし上下方向に配置している。
【0046】
基礎側アイボルト52と壁側アイボルト53は、相対的に軸心方向に沿って移動する構造である。移動可能範囲は、両アイボルト52、53の環状部の先端内面が串刺し棒54に当って最長になる上限と、基礎側アイボルト52又は壁側アイボルト53の環状部の先端外面が法覆い壁11の下端の端面又は法留め基礎1の壁向き面8に当って最短になる下限との間に限定されている。
【0047】
法覆い壁11の最下段の各覆いブロック16は、それぞれ、同様に可動連結具51で法留め基礎1に連結している。串刺し棒54は、各可動連結具51に共通する部品である。法覆い壁11の下端の端面と法留め基礎1の壁向き面8の間の隙間には、第3例における現場打ちのコンクリート24を充填しない。その隙間には、何も充填しない、又は、砂を充填する。
【0048】
本例の護岸において、法覆い壁11の下端は、法面Nを登る引き離し方向に引っ張られると、法面Nを登る方向に移動する。その際、法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の上下の重なりが維持される。可動連結具51が移動可能範囲の上限になっても、法覆い壁11の下端と法留め基礎1の壁載せ面7の上下の重なりが維持される。可動連結具51が移動可能範囲の上限になった最長状態で、法覆い壁11の下端を更に引き離し方向に引っ張る力が作用すると、可動連結具51は、法覆い壁11下端のそれ以上の引き離しに抵抗する。
【0049】
[第5例(図11参照)]
本例は、第4例における可動連結具51を「串刺し棒54に代えてチェーンの輪を用いる連結具61」に変更している。その他の点は、第4例におけるのと同様である。
【0050】
可動連結具61は、図11に示すように、基礎側アイボルト52の環状部と壁側アイボルト53の環状部にチェーン62を通し、チェーン62を輪にしている。チェーン62の輪の周長を調整して移動可能範囲を増減することができる。
【0051】
[第6例(図12参照)]
本例は、第4例における可動連結具51を「串刺し棒54に代えてシャックルを用いる連結具65」に変更している。その他の点は、第4例におけるのと同様である。
【0052】
可動連結具65は、図12に示すように、基礎側アイボルト52の環状部と壁側アイボルト53の環状部にシャックル66のU字形体を通し、シャックル66のU字形体の開口部に軸を横断して固定し、シャックル66を閉鎖している。シャックル66の大きさ調整して移動可能範囲を増減することができる。
【0053】
[変形例]
1)上記の実施形態において、法覆い壁11は、多数の覆いブロック12、16を結合するに当たり、多段の覆いブロック12、16に結合棒13を串刺し状に貫通しているが、覆いブロックの隣同士をシャックルや溶接で結合する。また、法覆い壁11は、ブロック12、16を結合した壁に代え、現場打ちのコンクリート壁にする。
2)上記の実施形態において、法留め基礎1は、基礎盤2を用いるが、基礎盤2を用いない。また、法留め基礎1は、既製コンクリートの基礎ブロック3と現場打ちの中詰めコンクリート9で構築しているが、既製コンクリートのみ、又は、現場打ちコンクリートのみで構築する。
3)上記の実施形態において、法面Nと法留め基礎1の壁載せ面7の上には、調整砂Sを層状に敷いているが、調整砂Sを用いない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態の第1例における法留め基礎と法覆い壁の連結構造の縦断側面図で、図2のA−A線断面図。
【図2】同連結構造の平面図。
【図3】同連結構造の法覆い壁下端が法留め基礎から法面に沿う方向に引き離された状態の縦断側面図。
【図4】第2例における法留め基礎と法覆い壁の連結構造の縦断側面図で、図5のB−B線断面図。
【図5】同連結構造の部分平面図。
【図6】同連結構造の可動連結具の開蓋状態の拡大平面図。
【図7】同連結構造の法覆い壁下端が法留め基礎から法面に沿う方向に引き離された状態の縦断側面図。
【図8】第3例における法留め基礎と法覆い壁の連結構造の縦断側面図。
【図9】同連結構造の法覆い壁下端が法留め基礎から法面に沿う方向に引き離された状態の縦断側面図。
【図10】第4例における法留め基礎と法覆い壁の連結構造の部分縦断側面図。
【図11】第5例における法留め基礎と法覆い壁の連結構造の部分縦断側面図。
【図12】第6例における法留め基礎と法覆い壁の連結構造の部分縦断側面図。
【符号の説明】
【0055】
N 法面
B 吸出防止材
S 調整砂
1 法留め基礎
2 基礎盤
3 基礎ブロック
4 前壁
5 後壁
6 梁
7 壁載せ面
8 壁向き面
9 中詰めコンクリート
11 法覆い壁
12 覆いブロック
13 結合棒
16 覆いブロック
17 横通し棒
21 可動連結具
22 筒
23 棒
24 隙間詰めコンクリート
31 可動連結具
32 箱体
33 長孔
34 ボルト
35 インサート
36 蓋板
41 可動連結具
42 箱体
43 丸孔
44 植込みボルト
45 ナット
46 インサート
47 蓋板
51 可動連結具
52 基礎側アイボルト
53 壁側アイボルト
54 串刺し棒
55 基礎側インサート
56 壁側インサート
61 可動連結具
62 チェーン、チェーンの輪
65 可動連結具
66 シャックル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面の下端に構築する法留め基礎と、法面の面上に構築する法覆い壁とを連結する方法であって、
法覆い壁の下端と法留め基礎は、ほぼ法面に沿う面で上下に重ね、ほぼ法面に沿う引き離し方向に移動可能に連結し、その移動可能範囲内で法覆い壁の下端と法留め基礎の一方又は両方がほぼ法面に沿う引き離し方向に移動しても、法覆い壁の下端と法留め基礎の上下の重なりを維持することを特徴とする法留め基礎と法覆い壁の連結方法。
【請求項2】
法面の下端に構築する法留め基礎と、法面の面上に構築する法覆い壁とを連結する構造であって、
法留め基礎は、壁載せ面をほぼ法面に沿って形成し、可動連結具の一端側を取り付け、
法覆い壁は、下端を法留め基礎の壁載せ面に載せて重ねる構成にし、可動連結具の他端側を取り付け、
可動連結具は、法覆い壁の下端と法留め基礎をほぼ法面に沿う引き離し方向に移動可能に連結する構成にし、その移動可能範囲を、法覆い壁の下端と法留め基礎の壁載せ面の上下の重なりが維持される範囲内にしていることを特徴とする法留め基礎と法覆い壁の連結構造。
【請求項3】
法留め基礎は、法覆い壁の下端の端面と向き合う壁向き面を形成し、
可動連結具は、一端側と他端側を法留め基礎の壁向き面側と法覆い壁の下端の端面側に取り付けていることを特徴とする請求項2に記載の法留め基礎と法覆い壁の連結構造。
【請求項4】
可動連結具は、一端側と他端側を法留め基礎の壁載せ面側と法覆い壁の下端の裏面側に取り付けていることを特徴とする請求項2に記載の法留め基礎と法覆い壁の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−266889(P2008−266889A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107046(P2007−107046)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(592086880)丸栄コンクリート工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】