説明

泡沫状フッ素塗布剤

【課題】 高濃度のフッ化物イオンを含有するにもかかわらず、長時間低温の環境に放置、貯蔵しておいても白濁や沈殿を生じないで、性状安定性に優れ、泡安定性および使用感に優れ、かつ人体や環境に安全であるフッ素塗布剤を提供する。
【解決手段】 フッ化物イオンを供給するフッ化物、リン酸イオン、アニオン界面活性剤および水酸基を有する化合物を3種以上配合してなる液体組成物を、多孔質膜を有するフォーマー容器に充填してなる泡沫状フッ素塗布剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気と混合して多孔質膜を通過させることにより泡沫状として吐出する泡沫状フッ素塗布剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯のエナメル質表面にフッ化物を塗布するとエナメル質表面層のフッ素濃度が増加し、う蝕の発生を予防することができる。従来からフッ素塗布剤として、液体状またはゲル状の塗布剤が用いられている。しかし、液体状のものは綿球に染み込ませて歯面に塗布する方法がとられるため、処置に時間がかかり、効率性に問題がある。またゲル状のものは、ゲルを乗せたトレーを噛ませるトレー法を用いるため、簡便である反面、粘性が高いため行き渡り難い。さらにフッ素の急性中毒の危険性を考慮し、その使用量はできるだけ少なくなるようにしなければならない。
【0003】
このような点を解決するため、最近、液体状フッ素塗布剤に噴射剤を配合してエアゾール容器に充填し、泡沫化する方法が提案された(特許文献1及び2参照)。泡沫化することにより、泡と歯の接触する面積を損なうことなく使用量を大きく減量することができる。しかし噴射剤として通常可燃性ガスが使用されており、口腔内での安全性に問題があるだけでなく、容器を容易に廃棄できないか、または再利用できない等といった環境の点からも好ましくない。一方、噴射剤を使用せずに泡沫化するには、組成物を空気と混合して多孔質膜を通過させることにより泡沫状として吐出する構造のフォーマー容器を用いる方法がある。該容器に充填した組成物は、「口腔用」分野において多数の特許が開示されており、また一般的な洗浄剤として開示されている技術がある(特許文献3〜6)。さらにエアゾール容器を用いず、フォーマー容器を用いた、フッ化物イオンを供給するフッ化物、リン酸イオン、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤を含有する口腔用の泡沫状フッ素塗布剤が開示されている(特許文献7参照)。

【特許文献1】米国特許第4770634号明細書
【特許文献2】米国特許第5071637号明細書
【特許文献3】特開平10-087456号公報
【特許文献4】特開平10-087460号公報
【特許文献5】特開平10-114636号公報
【特許文献6】特開平10-114637号公報
【特許文献7】特開平11-116451号公報
【0004】
しかし、単純にこれらの泡沫製剤にフッ素塗布剤で通常使用されているような高濃度フッ素を添加した場合、長時間低温の環境に放置、貯蔵しておくと、液体組成物が沈殿を生成したり白濁を生じたりし、フォーマー容器から泡沫状に吐出されなかったり、あるいは吐出されたとしても泡質が低下したり、フッ素塗布剤が公衆衛生の場においても歯科医療の場においても広く一般の人々に対して必要とされるものであるにもかかわらず製品化するのにコストがかかりすぎたりする等、実際使用できるような品質の泡沫状フッ素塗布剤を供給することができていない。特に長期間に、低温での環境下で貯蔵される場合に、沈殿等の析出物があると、泡沫状に吐出することが出来なくなるため、低温域でも安定な泡沫製剤が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記事情に鑑みなされたもので、空気と混合して多孔質膜を通過させることにより泡沫状として吐出するフォーマー容器に充填した組成物において、低コストで、安定な泡保持力を有し、使用感に優れ、人体や環境に安全であり、なおかつ、高濃度のフッ化物イオンを含みながら、長時間低温の環境に放置、貯蔵しておいても白濁や沈殿を生じないで性状が安定である泡沫状フッ素塗布剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、
フッ化物イオンを供給するフッ化物、
リン酸イオン、
アニオン界面活性剤を、各々、特定量含み
さらに水酸基を有する化合物を3種以上含有することによって、
白濁や沈殿を生じない性状安定性の良い泡沫状フッ素塗布剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
フッ化物イオンを0.5〜2質量%供給するフッ化物、
リン酸イオン0.01〜10質量%、
アニオン界面活性剤0.2〜5.0質量%含み
さらに水酸基を有する化合物を3種以上含む液体組成物を、
多孔質膜を有するフォーマー容器に充填してなり、この容器から吐出させる時、泡沫状となることを特徴とする泡沫状フッ素塗布剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高濃度のフッ化物イオンを含有しながら吐出する泡が安定な泡保持力を有し、使用感に優れ、人体や環境に安全であり、かつ長時間低温の環境に放置、貯蔵しておいても白濁や沈殿を生じない性状の安定した泡沫状フッ素塗布剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の泡沫状フッ素塗布剤に用いるフッ化物は、フッ化物イオンを0.5〜2質量%供給する量を含有する。フッ化物イオンが0.5質量%より少なければ、エナメル質のフッ素の取込効果が小さく、2質量%より多ければフッ化物塗布剤としては不安定である。用いるフッ化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化銅、フッ化亜鉛、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ジルコニウム、フッ化スズ、フッ化水素酸、モノフルオルリン酸ナトリウム、モノフルオルリン酸カリウム、フッ化チタンナトリウム、フッ化チタンカリウム、N’−オクタデシルトリメチレンジアミン−N,N,N’−トリス(2−エタノール)−ジヒドロフロライドや9−オクタデセニルアミン−ヒドロフロライド、ヘキシルアミンハイドロフルオライド、ラウリルアミンハイドロフルオライド、グリシンハイドロフルオライド、アラニンハイドロフルオライド、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム、フルオロシラン、フッ化ジアンミン銀などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、好ましくはフッ化ナトリウム、フッ化水素酸のいずれか一方又は両方が選ばれる。
【0010】
また、本発明の泡沫状フッ素塗布剤はリン酸イオン0.01〜10質量%、さらに好ましくは、0.05〜5質量%を含有する。リン酸イオンが0.01質量%より少ないと、エナメル質の脱灰が著しくなり、10質量%を超えるとエナメル質の溶解を抑制する効果がそれ程増加しなくなり不経済であり、使用感が著しく劣る。これらのリン酸イオンを供給するリン酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素アンモニウム、リン酸三カルシウム、リン酸ジグリセリル二ナトリウム、リン酸ジセチル、リン酸ジセチルアルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸セチル、リン酸トレオイル、リン酸トリステアリル、リン酸トリパルミチル、リン酸二水素アンモニウム、リン酸マグネシウムなどが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、好ましくは、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウムが選ばれる。
【0011】
本発明の泡沫状フッ素塗布剤に用いるアニオン界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えば、天然または合成の高級脂肪酸塩や、アルキル硫酸系、カルボン酸系、アミノ酸系、スルホコハク酸系、リン酸系界面活性剤などが挙げられる。好ましくはアルキル硫酸系、またアミノ酸系、スルホコハク酸系界面活性剤が選ばれる。その配合量は0.2〜5.0質量%であり、好ましくは0.3〜3質量%であり、さらに好ましくは0.3〜1質量%である。配合量が0.2質量%に満たないと良質な泡が得られず、また5質量%を超えると口腔内組織への刺激が強く香味を損なう。
【0012】
このうち、アルキル硫酸系界面活性剤としては、炭素数8〜18のアルキル基を有する硫酸およびその塩で、その塩がナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩またはトリエタノールアミンの塩のものが選ばれる。
具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、オクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
その中でも、デシル硫酸ナトリウム、デシル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウムが特に好ましい。これらのアルキル硫酸塩化合物の場合アルキル鎖長に分布を持つものを用いてもよい。
【0013】
アミノ酸系界面活性剤としては、炭素数8〜18の飽和または不飽和のアシル基を有するアミノ酸およびその塩で、塩がナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩またはトリエタノールアミン塩であるものが選ばれる。
具体的には、ヤシ油脂肪酸グリシンカリウムなどのN−アシルグリシンおよびその塩、オクタノイルサルコシンナトリウム、デカノイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシントリエタノールアミンなどのアシルサルコシンおよびその塩、
N−オクタノイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、N−デカノイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、N−パルミトイル−N−メチル−β−アラニンナトリウムなどのN−アシル−N−メチル−β−アラニンおよびその塩;N−オクタノイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−デカノイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ラウロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−パルミトイル−N−メチルタウリンなどのN−アシル−N−メチルタウリンおよびその塩;N−オクタノイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−デカノイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ココイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールなどのN−アシル−L−グルタミン酸およびその塩などが挙げられ、
N−アシルグリシンおよびその塩、N−アシルサルコシンおよびその塩、およびN−アシル−N−メチル−β−アラニンおよびその塩が好ましく、中でも、ヤシ油脂肪酸グリシンカリウムなどのN−アシルグリシンおよびその塩が特に好ましい。またアルキル鎖長に分布を持つものを用いてもよい。これらアニオン界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合せて配合することができる。
【0014】
更には、上記記載のアニオン界面活性剤のうちアルキル基、アシル基の炭素数が8以上11以下の鎖長を有するアニオン界面活性剤が、液体組成物中に含まれるアニオン界面活性剤の全量のうちの10〜35%であることが好ましく、15〜25%であることが更に好ましい。さらにアニオン界面活性剤のアルキル基、アシル基の炭素数が10であることが更に好ましい。この場合、炭素数が特定の長さのアニオン界面活性剤を用いてもよいし、このような比率になるような炭素数の分布を持つアニオン界面活性剤を用いても良い。
【0015】
本発明の泡沫状フッ素塗布剤に用いる水酸基を持つ化合物は、特に限定されるものではないが、アルコール類、多価アルコール類、糖及び糖アルコール類、ポリオキシエチレン基を有する化合物、フェノール類が選ばれる。
用いる水酸基を持つ化合物としては、アルコール類、多価アルコール類、糖及び糖アルコール類、ポリオキシエチレン基を有する化合物類、フェノール類から選ばれ、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール類;ソルビトール、キシリトール、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、トレハロース、ラクチトール糖及び糖アルコール類;ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等のポリオキシエチレン基を有する化合物類;チモール、カルバクロール、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、レゾルシノール、オイゲノール、イソオイゲノール、サリチル酸、サリチル酸エステル、ヒドロキシ安息香酸エステルのフェノール類が選ばれる。
これらのうち、好ましくは、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、トレハロース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒドロキシ安息香酸エステルが選ばれ、更に好ましくは、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、トレハロース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒドロキシ安息香酸エステルが選ばれる。
これらは3種以上、好ましくは4種以上を組み合せて配合される。これら水酸基を含む化合物が2種以下の場合は、使用に耐えうる粘度、溶解性、使用感を有する液体組成物を調製することができない。
【0016】
その配合量の合計は3〜17質量%であり、さらに好ましくは5〜15質量%である。配合量が3質量%に満たない場合でも、17質量%を超える場合でも、使用に耐えうる粘度、溶解性、使用感を有する液体組成物を調製することができない。
【0017】
本発明の泡沫状フッ素塗布剤には、前記成分の他に、通常口腔用組成物に用いられる成分、例えば前記以外の界面活性剤、湿潤剤、一価アルコール、増粘剤、香料、甘味剤、pH調整剤、防腐剤、色素等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。しかし、本発明の泡沫状フッ素塗布剤は、多孔質膜を有するフォーマー容器に充填して用いるため、多孔質膜の目詰まりを引き起こすような研磨剤等水不溶性粉体は配合しない。
【0018】
前記以外の界面活性剤としては、カルボキシベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系などの両性界面活性剤;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系などの非イオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩系、アミン塩系のカチオン界面活性剤などが挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて必要に応じて配合することができる。
口腔刺激を低く抑えるためには、界面活性剤の配合量は少ないことが好ましい。その場合、アニオン界面活性剤の配合量が0.2〜1質量%とすることができるが、非イオン界面活性剤を含まないようにすると、更に泡もちが良い製剤にすることができる。
【0019】
増粘剤としては、例えば、カラゲナン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム等のアルカリ金属アルギネート、キサンタンガム、トラガカントガム、アラビアガム等のガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム等の無機粘結剤などが挙げられ、これらは、組成物の25℃における粘度が100cps以下となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。100cpsを超えると、組成物が多孔質膜を通過し難くなり、泡が吐出されない場合がある。これら増粘剤の配合量は、通常、組成物全量に対して0.01〜5質量%である。
【0020】
香味剤としては、例えば、メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油などが挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.05〜3質量%、好ましくは0.05〜1質量%である。
【0021】
さらに、甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、ρ−メトキシシンナミックアルデヒドなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全体に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0022】
本発明のフッ素塗布剤は、これらの成分を混合し、通常の方法に従って製造することができ、得られた組成物は多孔質膜を有するフォーマー容器に充填される。本発明のフッ素塗布剤を充填するフォーマー容器は、容器に加圧して組成物を空気と混合し、多孔質膜を通過させることにより、泡沫状として吐出するものであれば何れでもよい。例えば加圧する方法が、軟質容器の胴部を手指で押圧するタイプのスクイーズフォーマーや、ポンプ機構を備えたキャップの頭部を手指で押圧するタイプのポンプフォーマーなどが挙げられる。
【0023】
さらに、本発明の泡沫状フッ素塗布剤は、通常のフッ化物ゲル等で使用される歯科用フッ素トレー等を用いた、トレー法に用いることができる。例えば「本泡沫状フッ素塗布剤を前述のようにフォーマー容器から泡沫状として、歯科用フッ素トレーに適量吐出させる。そしてそのトレーを塗布させる人の口腔内に挿入し、トレーと歯牙とを重ねあわせ、1分から5分程度、軽く噛ます。」という使用方法が考えられる。
【0024】
長時間低温の環境に放置、貯蔵しておいても白濁や沈殿を生じない性状安定性の良い泡沫状フッ素塗布剤を得るために液体組成物中のナトリウムイオンの量を2質量%以下にすることが更に好ましい。内容物全体のナトリウムイオンは、組成物を調製する際、種々のpH調整剤や界面活性剤、粘稠剤等の原料から供給される。通常、このような組成物においてナトリウムを無配合することは困難である。本発明は、泡沫状の組成物を構成する際に、使用する原料を選択することにより、全体として配合されるナトリウムイオンの量を2質量%以下にする。
【実施例】
【0025】
つぎに、試験例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の配合量はいずれも質量%を意味する。
【0026】
試験例1:水酸基を有する化合物による低温安定性、性状、泡もち評価
下記成分と表1に示す実施例1〜9及び比較例1〜4の各成分から液体組成物を常法により調製し、下記の評価基準を用いて、低温安定性については調製後5℃で1ヶ月放置後のものについて、性状については調製後直ぐに評価をおこなった。泡もちについては、調製後直ぐと、常温に1ヶ月放置した後とに、組成物をフォーマー容器に充填し泡末状にして、100mlのグラスに吐出し、吐出後直ぐから5分後の嵩高さの減少量を評価した。結果を表1下段に示す。

成分 配合量(質量%)
フッ化ナトリウム 2.0
リン酸 0.02
リン酸水素ナトリウム 0.2
水酸基を有する化合物 表1
ラウリル硫酸ナトリウム 表1
甘味剤 0.2
香料 0.1
残部 精製水
合計 100.0

調製された泡沫状フッ素塗布剤を、性状、泡もち及び低温安定性を評価した。
低温安定性 ○: 沈殿が認められなかった
×: 沈殿が認められた
性状 ○: 製剤調製後、透明均一な液体
×: 製剤調製後、不透明または不均一な液体
泡もち ○: 嵩の減少率が80%以上100%
△: 嵩の減少率が60%以上80%未満
×: 嵩の減少率が60%未満
総合評価 ○: 低温安定性、性状、泡もちの全ての評価が○であったもの
△: 低温安定性、性状の評価が○で、泡もちの評価に△のあるもの
×: 各評価において1つでも×があったもの
総合評価で△以上である、低温安定性、性状に合格し泡もちが△以上の評価のものを合格とした。

【0027】
【表1】

【0028】
表1の結果より、実施例1〜9はすべて、低温において白濁・沈殿を生じることなく性状が安定していることがわかった。加えて性状、調製後及び常温1ヶ月後の評価における泡もちにおいても要求品質を満足していることが認められた。それに対して、比較例1〜4はすべて低温において白濁や沈殿が生じることが認められた。
【0029】
試験例2:アニオン界面活性剤のアルキル基炭素数による低温安定性、性状、泡もち評価
下記成分と表2に示す実施例10〜14及び比較例5〜8の各成分から液体組成物を常法により調製し、試験例1と同様の評価を用いて評価を行なった。結果を表2下段に示す。

成分 配合量(質量%)
フッ化ナトリウム 2.0
リン酸 0.02
リン酸水素ナトリウム 0.2
エタノール 0.5
グリセリン 5.0
ポリエチレングリコール 1.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
アルキル硫酸ナトリウム(アルキル基の炭素数の構成は表2) 0.5
甘味剤 0.2
香料 0.1
精製水 残部
合計 100.0

【0030】
【表2】

【0031】
表2の結果より、実施例10〜14はすべて、1ヶ月の低温放置後、白濁・沈殿を生じることなく性状が安定していることがわかる。それに対して、比較例5〜8は、低温において白濁や沈殿が生じるか、または泡もちにおいて著しい劣ることが認められた。
【0032】
試験例3:アニオン界面活性剤の配合量による低温安定性、性状、泡もち、口腔内刺激、香味評価
下記成分と表3に示す実施例15〜20及び比較例9〜10の各成分から液体組成物を常法により調製し、低温安定性、性状、泡もちについては試験例1と同様の評価を用いて評価を行い、泡のきめ、口腔内刺激、香味立ち評価及び総合評価については下記の評価基準を用いて評価を行なった。結果を表3下段に示す。

成分 配合量(質量%)
フッ化ナトリウム 2.0
リン酸 0.02
リン酸水素ナトリウム 0.2
エタノール 0.5
グリセリン 5.0
ポリエチレングリコール 1.0
アルキル硫酸ナトリウム(実施例12) 表3
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体 表3
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 表3
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
甘味剤 0.2
香料 0.1
精製水 残部
合計 100.0

泡のきめ ○: 均一で細かい
△: 大きな泡がやや混じる
×: 大きな泡が非常に多い
口腔内刺激 ○: 口腔粘膜に異常がない
△: 口腔粘膜に変性が認められる
×: 口腔粘膜の剥離が認められる
香味立ち ○: 香味立ちが良好
△: 香味立ちがやや悪い
×: 香味立ちが非常に悪く、実使用に耐えない
総合評価 ○: 評価項目の全が○であったもの
△: 低温安定性、性状の評価が○で、泡もち、泡のきめ、口腔内刺
激及び香味立ちの評価に少なくとも1つ△のあるもの
×: 各評価において1つでも×があったもの
総合評価で△以上である、低温安定性、性状に合格し泡もち、泡のきめ、口腔内刺激及び香味立ちが△以上の評価のものを合格とした。

【0033】
【表3】

【0034】
表3の結果より、実施例15〜20はすべて、低温安定性、性状、泡もち、泡のきめ、口腔内刺激、香味立ちの評価において製品としての致命的な問題は認められなかった。それに対して、比較例9〜10においては、いくつかの評価項目において致命的な問題が認められた。
【0035】
実施例21
下記の各成分から常法に従ってフッ素塗布剤を調製し、多孔質膜を有するポンプ式フォーマー容器に充填した。
成分 配合量(質量%)
フッ化ナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
リン酸 0.02
リン酸水素二カリウム 0.15
エタノール 5.0
濃グリセリン 5.0
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体 5.0
パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.2
サッカリンナトリウム 0.3
香料 0.5
精製水 残部
合計 100.0
【0036】
実施例22
下記の各成分から常法に従ってフッ素塗布剤を調製し、多孔質膜を有するポンプ式フォーマー容器に充填した。
成分 配合量(質量%)
フッ化ナトリウム 2.0
アルキル硫酸ナトリウム 0.4
(全アルキル硫酸ナトリウムにおけるC10アルキル硫酸ナトリウムの割合が17.5%)
リン酸水素ナトリウム 0.2
リン酸 0.05
プロピレングリコール 1.5
濃グリセリン 5.0
ポリエチレングリコール 0.8
パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.1
精製水 残部
合計 100.0
【0037】
実施例23
下記の各成分から常法に従ってフッ素塗布剤を調製し、多孔質膜を有するポンプ式フォーマー容器に充填した。
成分 配合量(質量%)
フッ化ナトリウム 2.0
フッ化水素酸 0.3
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
(アルキル基に分布を持っているラウリル硫酸ナトリウムで、アルキル基のそれぞれの炭素数ごとの割合が、全ラウリル硫酸ナトリウム配合量に対して、C8が3%、C10が17.5%、C12が70%、C14が12%)
スルホコハク酸ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルニナトリウム 1.0
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体 5.5
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 0.5
リン酸三カリウム三水和物 3.0
クエン酸三カリウム二水和物 1.0
香料 1.0
エタノール 2.5
ソルビット 10.0
サッカリンナトリウム 0.6
水 残部
合計 100.0
【0038】
実施例24
下記の各成分から常法に従ってフッ素塗布剤を調製し、多孔質膜を有するポンプ式フォーマー容器に充填した。
成分 配合量(質量%)
フッ化ナトリウム 2.0
リン酸 0.03
リン酸水素ニカリウム 0.18
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
(アルキル基に分布を持っているラウリル硫酸ナトリウムで、アルキル基のそれぞれの炭素数ごとの割合が、全ラウリル硫酸ナトリウム配合量に対して、C10が17.5%、C12が70%、C14が12.5%)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体 5.0
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 1.0
グリセリン 5.0
サッカリンナトリウム 0.2
香料 1.0
水 残部
合計 100.0
【0039】
上記記載の実施例21〜24は5℃に1ヶ月放置後も白濁や沈殿を生じることなく、性状が安定しており、調製後も常温放置1ヶ月後も良好な泡もちであり、泡のきめ、口腔内刺激、香味立ちなどがよく、良好な使用感であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物イオンを0.5〜2質量%供給するフッ化物、
リン酸イオン0.01〜10質量%、
アニオン界面活性剤0.2〜5.0質量%を含み、
水酸基を有する化合物を3種以上含む液体組成物を、
多孔質膜を有するフォーマー容器に充填して、この容器から吐出させる時、泡沫状となることを特徴とする泡沫状フッ素塗布剤。
【請求項2】
請求項1記載の水酸基を有する化合物を3種以上配合したときの配合量の合計が、液体組成物における配合量が、3〜17質量%である請求項1記載の泡沫状フッ素塗布剤。
【請求項3】
請求項1記載の水酸基を有する化合物を3種以上配合したときの配合量の合計が、液体組成物における配合量が、5〜15質量%である請求項1記載の泡沫状フッ素塗布剤。
【請求項4】
液体組成物中に水酸基を有する化合物を4種以上含む請求項1〜3記載の泡沫状フッ素塗布剤。
【請求項5】
アルキル基又はアシル基の炭素数が8以上11以下のアニオン界面活性剤を、組成物中のアニオン界面活性剤の総含有量のうち10〜35%である請求項1〜4記載の泡沫状フッ素塗布剤。
【請求項6】
アルキル基又はアシル基の炭素数が8以上11以下のアニオン界面活性剤を、組成物中のアニオン界面活性剤の総含有量のうち15〜25%である請求項1〜5記載の泡沫状フッ素塗布剤。
【請求項7】
請求項5又は6記載のアニオン界面活性剤のアルキル基又はアシル基の炭素数が10である請求項1〜6記載の泡沫状フッ素塗布剤。

【公開番号】特開2007−137773(P2007−137773A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329515(P2005−329515)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】