説明

波形整形回路及びそれを備えた半導体集積回路

【課題】 入力信号を二値波形に整形して出力する波形整形回路において、入力信号の中間電圧等を基準として上下対称にスレッショルド値を調節することができる波形整形回路を提供すること。
【解決手段】 前記入力信号と閾値との比較結果に応じて第1の電圧又は第2の電圧を出力する比較器と、前記閾値を生成する閾値生成部と、を備え、前記閾値生成部は、基準電圧を生成する基準電圧生成部を有し、前記比較器の出力が第1の電圧のときには前記閾値を基準電圧に対して所定値高い電圧に切り換え、前記比較器の出力が第2の電圧のときには前記閾値を前記基準電圧に対して前記所定値低い電圧に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号を二値波形に整形して出力する波形整形回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アナログ波形の信号等を入力して二値波形に整形する波形整形回路(以下、「コンパレータ回路」ともいう。)においては、入力信号の電圧と閾値とを比較するコンパレータ(以下、「比較器」ともいう。)が用いられている。
【0003】
このような波形整形回路においては、変化の遅い入力信号やノイズの多い入力信号により発生する多重エッジ(出力信号のばたつき)を低減するために、ヒステリシスを有するものが広く用いられている。
【0004】
ヒステリシスを付加する方法として、コンパレータの出力を入力に正帰還させるものが一般的である。図4は、正帰還のコンパレータ回路の基本構成を示したものである。
【0005】
図4に示すように、正帰還のコンパレータ回路100は、コンパレータIC100と、コンパレータIC100の正帰還入力端子と入力Vinとの間に接続される入力抵抗R100と、IC100の出力端子と正帰還入力端子との間に接続される帰還抵抗R101とから構成される。
【0006】
このコンパレータ回路100は、帰還抵抗R101により出力を帰還させる際に発生する入力抵抗R100間の電圧を利用してヒステリシスをもたせている。
【0007】
このヒステリシスを形成するスレッショルド値VthH(コンパレータ回路100の出力をLowからHighとするための閾値。以下、「閾値VthH」ともいう。)、VthL(コンパレータ回路100の出力をHighからLowとするための閾値。以下、「閾値VthL」ともいう。)は以下のように表される。なお、コンパレータ回路100の出力がLowのときの出力電圧をVoutL、Highのときの出力電圧をVoutHとしている。
VthH=(1+R100/R101)Vref−R100/R101×VoutL ・・・(1)
VthL=(1+R100/R101)Vref−R100/R101×VoutH ・・・(2)
【0008】
コンパレータIC100へ供給される電源電圧VDDが一定である場合には、出力電圧VoutH、VoutL共に一定の値となるため、R100及びR101を変更することにより、所望のスレッショルド値VthH、VthLに調節することができる。
【0009】
一方、コンパレータIC100へ供給される電源電圧VDDが一定でない場合には、出力電圧VoutHのレベルが変動することになり、結果として、ヒステリシス値も変動することになる。
【0010】
図5は、出力電圧VoutHの電圧レベルの変動に伴うヒステリシス及び出力電圧波形の変動を示すものである。この図5に示すように、正弦波のアナログ信号が入力されたとき、電源電圧VDDのときにはスレッショルド値VthL、VthHとなり(図5(a)参照)、出力電圧波形は、周期bかつHigh出力パルス幅BWVOUTHのパルス波形(図5(b)参照)となる。一方、電源電圧VDD´のときにはスレッショルド値VthL´となり(図5(a)参照)、出力電圧波形は、周期bかつHigh出力パルス幅BWVOUTH´のパルス波形となる(図5(b)参照)。
【0011】
以上のように、従来の正帰還のコンパレータ回路は、電源電圧VDDに依存してスレッショルド値やヒステリシス幅が変化し、High出力パルス幅が変化する。すなわち、電源電圧VDDによって出力パルスのDuty(デューティー比)が変動することになる。
【0012】
したがって、コンパレータ回路100が、電源回路のばらつきにより電源電圧VDDの変動する状況に置かれるようなときには、Duty(デューティー比)が変動し、安定した波形整形ができない。また、汎用の半導体集積回路にコンパレータ回路100を内蔵するような場合には、多様な電源電圧VDDに対応しなければならず、同様の問題がある。
【0013】
そこで、図6に示すように、電源電圧VDDに依存しないヒステリシスを有するコンパレータ回路200が提案されている(たとえば、特許文献1)。
【0014】
このコンパレータ回路200は、入力される信号と比較するスレッショルド電圧Vthを出力電圧Voutに応じてスイッチSW200を切り換えるものである。そして、可変電圧発生手段によってスレッショルド値VthHを調節可能とし、可変電流発生手段によってスレッショルド値VthLを調節可能することができるように構成されている(図7参照)。
【0015】
このようにコンパレータ回路200は、出力電圧が変動した場合であってもヒステリシスが一定となるように構成されているため、電源電圧の変動によらず安定した波形整形ができるものである。
【特許文献1】特開平10−54853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、特許文献1のコンパレータ回路は、可変電圧発生手段によってスレッショルド値VthHを調節し、可変電流発生手段によってスレッショルド値VthLを調節する構成であるため、その調節を容易に行なうことができなかった。
【0017】
すなわち、スレッショルド値VthH、VthLは、入力信号の信号レベルを考慮して調節されるものであるが、特許文献1のコンパレータ回路では、その入力信号の中間電圧等を基準とすることができないままスレッショルド値VthH、VthLを設定せざるを得なかった。したがって、スレッショルド値VthH、VthLを設定した後に、ヒステリシス幅を調整するためには、可変電圧発生手段と可変電流発生手段とを再度調節する必要があり煩雑であった。
【0018】
特に、正弦波入力時のデューティー比を略50%にするために、入力信号の中間電圧等を基準として上下対称にスレッショルド値VthH、VthLを調節使用とするときには、その作業は煩雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そこで、請求項1に記載の発明は、入力信号を二値波形に整形して出力する波形整形回路において、前記入力信号と閾値との比較結果に応じて第1の電圧又は第2の電圧を出力する比較器と、前記閾値を生成する閾値生成部と、を備え、前記閾値生成部は、基準電圧を生成する基準電圧生成部を有し、前記比較器の出力が第1の電圧のときには前記閾値を基準電圧に対して所定値高い電圧に切り換え、前記比較器の出力が第2の電圧のときには前記閾値を前記基準電圧に対して前記所定値低い電圧に切り換えることを特徴とする。
【0020】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記閾値生成部は、一端が前記基準電圧生成部に接続されると共に、他端が前記比較器に接続される閾値調整用抵抗部を備え、前記比較器の出力が第1の電圧か第2の電圧かによって、前記閾値調整用抵抗部に流す電流の方向を変えることによって前記閾値を切り換えることを特徴とする。
【0021】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明であって、前記閾値調整用抵抗部は、複数の抵抗と、前記複数の抵抗のうち少なくともいずれか一つを選択し、該選択した抵抗を閾値調整用抵抗部の抵抗とする閾値調整用抵抗選択回路とを有することを特徴とする。
【0022】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明であって、前記閾値生成部は、前記閾値調整用抵抗部の他端にそれぞれ接続される第1の定電流回路及び第2の定電流回路を備え、前記比較器の出力が第1の電圧のとき第1の定電流回路から前記閾値調整用抵抗部へ電流を流すと共に、前記比較器の出力が第2の電圧のとき前記閾値調整用抵抗部から第2の定電流回路へ電流を流すことを特徴とする。
【0023】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明であって、第2の定電流回路の電流値は、第1の定電流回路の電流値の略2倍であり、第2の定電流回路への電流を停止することにより第1の定電流回路から前記閾値調整用抵抗部へ電流を流すことを特徴とする。
【0024】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明であって、前記基準電圧生成部は、前記入力信号のピークをホールドして出力するピークホールド回路と、前記入力信号のボトムをホールドして出力するボトムホールド回路とを有し、前記ピークホールド回路の出力と前記ボトムホールド回路の出力との基準の電圧を前記基準電圧とすることを特徴とする。
【0025】
また、請求項7に記載の発明は、入力信号を二値波形に整形して出力する波形整形回路を設けた半導体集積回路において、前波形整形回路は、前記入力信号と閾値との比較結果に応じて第1の電圧又は第2の電圧を出力する比較器と、前記閾値を生成する閾値生成部と、を備え、前記閾値生成部は、基準電圧を生成すると共に、前記比較器の出力が第1の電圧のときには前記閾値を基準電圧に対して所定値高い電圧に切り換え、前記比較器の出力が第2の電圧のときには前記閾値を前記基準電圧に対して前記所定値低い電圧に切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1又は請求項7に記載の発明によれば、比較器の出力が第1の電圧のときには閾値を基準電圧に対して所定値高い電圧に切り換え、比較器の出力が第2の電圧のときには閾値を基準電圧に対して所定値低い電圧に切り換えるので、波形整形回路におけるヒステリシスを形成するスレッショルド値を基準電圧に対して対称にすることができる。したがって、波形整形回路の設計開発時等に、ヒステリシス幅の調節を入力信号の中間電圧(若しくは平均電圧等)を基準として行なうことができる。
【0027】
また、請求項2に記載の発明によれば、閾値生成部は、比較器の出力が第1の電圧か第2の電圧かによって、基準電圧生成部と比較器との間に接続された閾値調整用抵抗部に流す電流の方向を変えることによって閾値を切り換えているので、波形整形回路のヒステリシス幅が閾値調整用抵抗部の抵抗値に応じて可変となる。したがって、閾値調整用抵抗部の抵抗値を調整することによりヒステリシス幅を容易に調節することが可能となる。
【0028】
また、請求項3に記載の発明によれば、複数の抵抗を少なくとも一つを選択により閾値調整用抵抗部の抵抗値の調整を行なうことができるので、ヒステリシス幅の調節が容易となる。
【0029】
また、請求項4に記載の発明によれば、比較器の出力が第1の電圧のとき第1の定電流回路から閾値調整用抵抗部へ電流を流すと共に、比較器の出力が第2の電圧のとき閾値調整用抵抗部から第2の定電流回路へ電流を流すように構成しているので、閾値調整用抵抗部に流れる電流を定電流にすることができ、その結果、閾値調整用抵抗部に流す電流を安定的に供給することができる。
【0030】
また、請求項5に記載の発明によれば、第2の定電流回路への電流を停止することにより第1の定電流回路から閾値調整用抵抗部へ電流を流すように構成しているので、第2の定電流回路の電流出力をオンするかオフするかによって、閾値調整用抵抗部に流れる電流の向きを反転させることができる。しかも、第2の定電流回路の電流値を第1の定電流回路の電流値の略2倍としているため、スレッショルド値VthL及びVthHを基準電圧に対して対称にすることが容易になる。
【0031】
また、請求項6に記載の発明によれば、基準電圧生成部は、ピークホールド回路の出力とボトムホールド回路の出力との中間の電圧を基準電圧とする構成としているので、入力信号に応じて動的に基準電圧を生成することができ、入力信号の電圧レベルにかかわらず、正弦波入力時のデューティー比を略50%とした波形整形回路を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本実施の形態における波形整形回路及び半導体集積回路は、入力信号を二値波形に整形して出力するものであり、入力信号と閾値との比較結果に応じて第1の電圧又は第2の電圧を出力する比較器と、閾値を生成する閾値生成部とを備えている。
【0033】
しかも、閾値生成部は、基準電圧を生成する基準電圧生成部を有し、比較器の出力が第1の電圧のときには閾値を基準電圧に対して所定値高い電圧に切り換え、比較器の出力が第2の電圧のときには閾値を基準電圧に対して所定値低い電圧に切り換えるものである。
【0034】
したがって、波形整形回路におけるヒステリシスを形成する閾値、すなわちスレッショルド値VthL及びVthHを基準電圧に対して対称にすることができる。
【0035】
その結果、波形整形回路の設計開発時等に、ヒステリシス幅の調節を基準電圧を基準として行なうことができる。
【0036】
閾値生成部は、一端が基準電圧に接続されると共に、他端が比較器の入力に接続される閾値調整用抵抗部を備えている。
【0037】
しかも、比較器の出力が第1の電圧か第2の電圧かによって、閾値調整用抵抗部に流す電流の方向を変えることによって閾値を切り換えるようにしている。
【0038】
したがって、波形整形回路のヒステリシス幅が閾値調整用抵抗部の抵抗値に応じて可変となる。
【0039】
その結果、閾値調整用抵抗部の抵抗値を調整することによりヒステリシス幅を容易に調節することが可能となる。
【0040】
また、閾値調整用抵抗部は、複数の抵抗と、前記複数の抵抗のうち少なくともいずれか一つを選択し、該選択した抵抗を閾値調整用抵抗部の抵抗とする閾値調整用抵抗選択回路を有している。
【0041】
したがって、複数の抵抗からの選択により閾値調整用抵抗部の抵抗値の調整を行なうことができる。
【0042】
その結果、ヒステリシス幅の調節が容易となる。しかも、半導体集積回路の外部にこの抵抗を設けることができるようにすれば、波形整形回路を内蔵した半導体集積回路を製造したあとであっても、ヒステリシス幅の調節が可能となる。
【0043】
さらに、閾値生成部は、閾値調整用抵抗部の他端にそれぞれ接続される第1の定電流回路及び第2の定電流回路を備えている。
【0044】
しかも、比較器の出力が第1の電圧のとき第1の定電流回路から閾値調整用抵抗部へ電流を流すと共に、比較器の出力が第2の電圧のとき閾値調整用抵抗部から第2の定電流回路へ電流を流すように構成している。
【0045】
したがって、閾値調整用抵抗部に流れる電流を定電流にすることができ、その結果、閾値調整用抵抗部に流す電流を安定的に供給することができる。
【0046】
また、第2の定電流回路の電流値は、第1の定電流回路の電流値の略2倍であり、第2の定電流回路へ流れる電流を停止することにより第1の定電流回路から閾値調整用抵抗部へ電流を流すように構成している。
【0047】
したがって、第2の定電流回路への電流をオンするかオフするかによって、閾値調整用抵抗部に流れる電流の向きを反転させることができる。しかも、第2の定電流回路の電流値を第1の定電流回路の電流値の略2倍としているため、スレッショルド値VthL及びVthHを基準電圧に対して対称にすることが容易になる。加えて、同一半導体上で第1の定電流回路と第2の定電流回路とを形成すれば、ばらつきを抑制することができ、定電流回路の精度を向上させることができるため、基準電圧に対して対称性を向上させることが可能となる。
【0048】
また、第1の定電流回路は第1のトランジスタにより構成され、第2の定電流回路は第2のトランジスタにより構成されており、第1のトランジスタとカレントミラー回路を構成する第3のトランジスタと、第2のトランジスタとカレントミラー回路を構成する第4のトランジスタとに所定電流を流す第3の定電流回路を設けている。
【0049】
したがって、第3の定電流回路に流す電流によって、第1の定電流回路の電流値と第2の定電流回路の電流値を可変にすることができる。
【0050】
その結果、閾値調整用抵抗を変えることなく、第3の定電流回路の定電流の電流値を変えることにより、ヒステリシス幅の調節が可能となる。しかも、閾値調整用抵抗による調節と合わせて行うことによりヒステリシス幅の調節が容易かつ精度よく可能となる。
【0051】
また、第3の定電流回路は、所定電圧を出力するバッファーアンプと、バッファーアンプの出力と第2の電位との間に接続される調整用抵抗と、バッファーアンプの出力に接続される第5のトランジスタと、第5のトランジスタとカレントミラー回路を構成する第6のトランジスタとを備えている。
【0052】
したがって、バッファーアンプの出力と第2の電位との間に設けられる抵抗を変更することによって、第3の定電流回路の定電流値を変更することができる。
【0053】
その結果、第3の定電流回路の定電流値の変更が容易となる。しかも、半導体集積回路の外部にこの抵抗を設けることができるようにすれば、波形整形回路を内蔵した半導体集積回路を製造したあとであっても、ヒステリシス幅の調節が可能となる。
【0054】
また、上述の基準電圧生成部は、入力信号のピークをホールドして出力するピークホールド回路と、入力信号のボトムをホールドして出力するボトムホールド回路とを有しており、ピークホールド回路の出力とボトムホールド回路の出力との基準の電圧を基準電圧とする構成としている。
【0055】
したがって、入力信号に応じて動的に基準電圧を生成することができ、入力信号の電圧レベルにもかかわらず、正弦波入力時のデューティー比を略50%とした波形整形回路を提供することが可能となる。
【0056】
以下、発明の実施の形態の波形整形回路について、さらに具体的に説明する。図1は本実施の形態における波形整形回路の基本的な回路構成を示す図、図2は本実施形態における波形整形回路の入出力波形を示す図である。なお、この波形整形回路は、半導体集積回路内に設けられるものである。
【0057】
図1に示すように、本実施形態における波形整形回路1は、入力信号Vinを反転入力端子に入力し、閾値Vthを非反転入力端子に入力する比較器IC1と、閾値Vthを生成する閾値生成部2とを有している。
【0058】
比較器IC1は、入力信号と閾値Vthとの比較結果に応じて第1の電圧であるHigh信号(以下、単に「High」と呼ぶこともある)又は第2の電圧であるLow信号(以下、単に「Low」と呼ぶこともある)を出力するコンパレータである。
【0059】
閾値生成部2は、基準電圧Vrefを生成する基準電圧生成部3と、閾値Vthを調整可能な閾値調整用抵抗R1と、この閾値調整用抵抗R1に定電流を流すための第1の定電流回路4及び第2の定電流回路5とを有している。
【0060】
第1の定電流回路4及び第2の定電流回路5は、比較器IC1の出力によって制御される。すなわち、比較器IC1の出力がHighのとき第1の定電流回路4から閾値調整用抵抗R1へ電流I1を流し、比較器IC1の出力がLowのとき閾値調整用抵抗R1から第2の定電流回路5へ電流I1を流すように制御される。
【0061】
このように第1の定電流回路4及び第2の定電流回路5が比較器IC1の出力によって制御されることにより、閾値VthH、VthLは以下式で表される。
VthH=Vref+R1×I1 ・・・(3)
VthL=Vref−R1×I1 ・・・(4)
【0062】
したがって、比較器IC1の出力がLowのときには閾値Vthを基準電圧Vrefに対して所定値(R1×I1)低い電圧VthLへ切り換わり、比較器IC1の出力がHighのときには閾値Vthを基準電圧Vrefに対して所定値(R1×I1)高い電圧VthHへ切り換わる。このように閾値調整用抵抗R1に流す電流の方向を変えることによって、閾値Vthを基準に対称の電圧VthL、電圧VthHとすることができる。
【0063】
以上のように構成された波形整形回路1について、図2を用いてその動作を具体的に説明する。
【0064】
図2(a)は、波形整形回路1に入力される入力信号Vinの電圧波形を表したものであり、本実施形態においては、基準電圧Vrefを中心電圧とした正弦波を入力信号Vinが入力されることとしている。
【0065】
この入力信号Vinが波形整形回路1の比較器IC1の反転入力端子に入力されると、比較器IC1により非反転入力端子に入力された閾値Vthと入力信号Vinとが比較される。そして、入力信号Vinが閾値VthHよりも高いと、比較器IC1の出力電圧がLowとなり、入力信号Vinが閾値VthLよりも低いと、比較器IC1の出力電圧がHighとなる(図2(b)参照)。
【0066】
また、図2(c)は、波形整形回路1の閾値Vth波形を表したものであり、比較器IC1の出力の変化(図2(b)参照)に応じて、閾値Vthの電圧が変化している。すなわち、比較器IC1の出力がLowのときには閾値VthLへ切り換る一方、比較器IC1の出力がHighのときには閾値VthHへ切り換る。
【0067】
以上のように、本実施形態における波形整形回路1によれば、ヒステリシスを形成するスレッショルド値VthL及びVthHを基準電圧Vrefに対して対称(VHYSH=VHYSL)にすることができ、波形整形回路の設計開発時等に、基準電圧を基準にしてヒステリシス幅の調節を行なうことができる。したがって、基準電圧生成部3により基準電圧Vrefとして入力信号の中間電圧(若しくは平均電圧)を生成することにより、正弦波入力時のデューティー比を略50%とすることができる。
【0068】
また、閾値調整用抵抗R1の抵抗値を調整することにより、ヒステリシス幅VHSYを簡単に調節することができるため、波形整形回路1の設計開発が容易となる。さらに、この閾値調整用抵抗R1を半導体集積回路に設けず、外付けの構成とすれば、汎用性の高い半導体集積回路を提供することができる。
【0069】
次に、本実施形態における波形整形回路の具体的な回路構成について、図3を参照しながら詳説する。図3は、本実施形態における波形整形回路1の具体的な回路構成を示す図である。
【0070】
まず、基準電圧生成部3について説明する。この基準電圧生成部3は、図3に示すように、入力信号Vinのピーク電圧をホールドして出力するピークホールド回路31と、入力信号Vinのボトム電圧をホールドして出力するボトムホールド回路32とを有している。
【0071】
このピークホールド回路31のホールド時間はコンデンサC1により調整することができ、このボトムホールド回路32のホールド時間はコンデンサC2により調整することができるように構成されている。なお、コンデンサC1、C2は、半導体集積回路に内蔵せず、外付けできるようにすることにより半導体集積回路の汎用性を向上させることができる。すなわち、ピークホールド回路31及びボトムホールド回路32からそれぞれ半導体集積回路外に端子を出し、これらの端子と第2の電位(VSS)との間にそれぞれコンデンサC1、C2を接続することで、半導体集積回路を製造後であってもホールド時間の調整が可能となる。
【0072】
ピークホールド回路31からの出力は抵抗R4を介して、バッファーアンプIC3の入力に接続され、ボトムホールド回路32からの出力は抵抗R5を介して、バッファーアンプIC3の入力に接続される。ここで、R4及びR5は、同一の抵抗値とすることにより、バッファーアンプIC3の入力との接続点で、ピークホールド回路31の出力電圧とボトムホールド回路32の出力電圧との中間電圧となる。そして、この中間電圧はバッファーアンプIC3でバッファーされ、このようにバッファーされた中間電圧が基準電圧として基準電圧生成部3から出力さる。なお、基準電圧生成部3から出力される基準電圧は、閾値調整用抵抗部6へ入力される。
【0073】
なお、基準電圧生成部3は、上述のようにホールド回路を用いて基準電圧を生成するもの他、入力信号Vinを所定間隔でサンプリングし、そのサンプリングした値を平均化した値に応じた電圧を基準電圧Vrefとしてもよく、これに限られない。
【0074】
次に、閾値調整用抵抗部6について説明する。図3に示すように、閾値調整用抵抗部6は、複数の抵抗R10a〜R10nと、この複数の抵抗R10a〜R10nのうち少なくともいずれか一つを選択し、該選択した抵抗を閾値調整用抵抗部の抵抗とする閾値調整用抵抗選択回路(図3におけるスイッチ部分)とを有している。複数の抵抗を選択することにより、閾値調整用抵抗部6の抵抗値を細かく設定することができる。なお、閾値調整用抵抗部6は、半導体集積回路に内蔵せず、外付けできるようにすることにより半導体集積回路の汎用性を向上させることができる。このとき、閾値調整用抵抗部6は一つの抵抗のみから構成されるようにしてもよく、閾値調整用抵抗選択回路は不要となる。
【0075】
波形整形回路1は、上述のように、比較器IC1の出力がHighのとき第1の定電流回路4から閾値調整用抵抗部6へ電流を流すと共に、比較器IC1の出力がLowのとき閾値調整用抵抗部6から第2の定電流回路5へ電流を流すように構成している。
【0076】
そして、第1の定電流回路4は、第1のトランジスタであるPMOSトランジスタQ1より構成されており、第2の定電流回路5は、第2のトランジスタであるNMOSトランジスタQ5より構成されている。
【0077】
PMOSトランジスタQ1のソースは、第1の電位(本実施形態においては、VDD電位)に接続され、そのドレインは比較器IC1の非反転入力回路に接続される。また、PMOSトランジスタQ1のゲートは、PMOSトランジスタQ3のゲート及びドレインと接続されており、PMOSトランジスタQ1とPMOSトランジスタQ3とで第1のカレントミラー回路が構成される。なお、PMOSトランジスタQ3のソースは第1の電位に接続されている。なお、PMOSトランジスタQ3は第3のトランジスタに対応する。
【0078】
また、NMOSトランジスタQ5のドレインは、NMOSトランジスタQ4のドレイン及びソースを介して、比較器IC1の非反転入力回路に接続され、NMOSトランジスタQ5のソースは、第2の電位(本実施形態においては、VSS電位)に接続されている。また、NMOSトランジスタQ5のゲートおよびドレインは、NMOSトランジスタQ6のゲートと接続されており、NMOSトランジスタQ5とNMOSトランジスタQ6とで第2のカレントミラー回路が構成される。なお、NMOSトランジスタQ6のソースは第2の電位に接続されている。
【0079】
さらに、NMOSトランジスタQ6のドレインは、PMOSトランジスタQ2のドレイン、NMOSトランジスタQ4のゲート及びNMOSトランジスタQ7のドレインに接続されている。なお、NMOSトランジスタQ7のソースは第2の電位に接続され、そのゲートは比較器IC1の出力に接続されている。なお、NMOSトランジスタQ6は第4のトランジスタに対応する。
【0080】
また、PMOSトランジスタQ2のソースは、第1の電位に接続され、そのゲートはPMOSトランジスタQ3のゲート及びドレインに接続されており、PMOSトランジスタQ2とPMOSトランジスタQ3とで第3のカレントミラー回路が構成される。
【0081】
さらに、PMOSトランジスタQ3のドレインは、可変定電流回路7に接続されており、この可変定電流回路7の定電流Iaにより、PMOSトランジスタQ3のソース−ドレイン間に定電流Iaが流れる。そして、第1のカレントミラー回路、第2のカレントミラー回路及び第3のカレントミラー回路により、第1の定電流回路4と第2の定電流回路5に所定の電流が流れる。なお、可変定電流回路7が第3の定電流回路に対応する。
【0082】
ここで、PMOSトランジスタQ1、Q2、Q3は半導体基板上に形成されるものであり、そのトランジスタのMOSサイズは、Q1:Q2:Q3=1:2:2の比で形成される。そのため、第1の定電流回路4は定電流値Ia/2となり、第2の定電流回路5は定電流値Iaとなる。
【0083】
次に、可変定電流回路7について説明する。図3に示すように、可変定電流回路7は、NMOSトランジスタQ8、Q9とからなる第4のカレントミラー回路と、この第4のカレントミラー回路に接続され、PMOSトランジスタQ10、Q11とからなる第5のカレントミラー回路と、この第5のカレントミラー回路に接続された調整用抵抗R2と、出力が第5のカレントミラー回路及び調整用抵抗R2に接続されたバッファーアンプIC2とから構成される。なお、このバッファーアンプIC2の入力は、所定電圧BG(V)に接続される。この所定電圧BGは、バンドギャップであるため、精度よく安定した電圧をバッファーアンプIC2から出力することができる。なお、NMOSトランジスタQ11は第5のトランジスタに、NMOSトランジスタQ10は第6のトランジスタに対応する。
【0084】
このように、可変定電流回路7が構成されているため、調整用抵抗R2に流れる電流と同じ電流がNMOSトランジスタQ8から流れることになる。すなわち、調整用抵抗R2に流れる電流値が可変定電流回路7の定電流値となる。そのため、調整用抵抗R2を変更することで容易にNMOSトランジスタQ8から流れる定電流値を変更することが可能となる。なお、調整用抵抗R2は、半導体集積回路に内蔵せず、外付けできるようにすることにより半導体集積回路の汎用性を向上させることができる。なお、PMOSトランジスタQ10、Q11のMOSサイズ、NMOSトランジスタQ8、Q9のMOSサイズは同等になるように半導体上に形成される。
【0085】
以上のように構成された波形整形回路について、図2を用いてその動作を具体的に説明する。
【0086】
図2(a)は、波形整形回路1に入力される入力信号Vinの電圧波形を表したものであり、この入力信号Vinがこの波形整形回路1に入力されると、上述のように基準電圧生成部3によりこの入力信号Vinに基づいて基準電圧Vrefが生成される。
【0087】
また、この入力信号Vinが波形整形回路1の比較器IC1の反転入力端子に入力されると、比較器IC1により非反転入力端子に入力された閾値Vthと入力信号Vinとが比較される。なお、本実施形態においては、入力信号が入力されるまでは、比較器IC1の出力がLowになるものとし、この閾値Vthは、VthLになるものとする。
【0088】
ここで、閾値Vthにおいて、VthL及びVthHの切り替え動作について説明する。
【0089】
上述のように比較器IC1に入力信号が入力され、この信号がVthH以上の電圧になったとき、比較器IC1の出力はLowとなる。それにより、NMOSトランジスタQ7のゲートにLowの電圧が入力され、NMOSトランジスタQ7がオフ状態になる。このNMOSトランジスタQ7がオフ状態となることにより、NMOSトランジスタQ4がオン状態になり、第1の定電流回路であるPMOSトランジスタQ1と第2の定電流回路であるNMOSトランジスタQ5とがNMOSトランジスタQ4を介して接続される。
【0090】
PMOSトランジスタQ1とNMOSトランジスタQ5とがNMOSトランジスタQ4を介して接続されると、トランジスタQ1からIa/2の電流がトランジスタQ5に流れ込むと共に、閾値調整用抵抗部6からIa/2の電流がトランジスタQ5に流れ込む。これにより、閾値Vthは、基準電圧Vrefから閾値調整用抵抗部6の抵抗値RxにIa/2を乗算したものを減算した値となる(閾値VthL=Vref−Rx×Ia/2)。
【0091】
次に、入力信号がVthL以下の電圧になったとき、比較器IC1の出力はHighとなる。それにより、NMOSトランジスタQ7のゲートにHighの電圧が入力され、NMOSトランジスタQ7がオン状態となる。NMOSトランジスタQ7がオン状態になると、NMOSトランジスタQ4がオフ状態となり、第1の定電流回路であるPMOSトランジスタQ1と第2の定電流回路であるNMOSトランジスタQ5とのNMOSトランジスタQ4を介した接続が切断され、NMOSトランジスタQ5には電流が流れず停止状態になる。
【0092】
NMOSトランジスタQ5の動作が停止状態になると、トランジスタQ1からIa/2電流が閾値調整用抵抗部6へ流れ込む。これにより、閾値Vthは、基準電圧Vrefから閾値調整用抵抗部6の抵抗値RxにIa/2を乗算したものを加算した値となる(閾値VthL=Vref+Rx×Ia/2)。
【0093】
以上のように、本実施形態における波形整形回路1によれば、ヒステリシスを形成するスレッショルド値VthL及びVthHを基準電圧Vrefに対して対称にすることができ、波形整形回路の設計開発時等に、基準電圧Vrefを基準にしてヒステリシス幅VHYSの調節を行なうことができる。しかも、基準電圧生成部3により基準電圧Vrefを入力信号の中間電圧(若しくは平均電圧)を生成することにより、正弦波入力時のデューティー比を略50%とすることができる。
【0094】
さらに、コンデンサC1、C2、抵抗R1、R2、R10a〜R10nを半導体集積回路に内蔵せず、外付け可能とすることにより、波形整形回路1を半導体集積回路に内蔵した場合であっても、汎用性のある半導体集積回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態における波形整形回路の基本的な回路構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における波形整形回路の入出力波形を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における波形整形回路の具体的な回路構成を示す図である。
【図4】従来の正帰還の波形整形回路の基本構成を示す図である。
【図5】図4の回路において出力電圧の電圧レベルの変動に伴うヒステリシス及び出力電圧波形の変動を示す図である。
【図6】従来の他の波形整形回路の構成を示す図である。
【図7】図6の回路において出力電圧の電圧レベルの変動に伴うヒステリシス及び出力電圧波形の変動を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1 波形整形回路
2 閾値生成部
3 基準電圧生成部
4 第1の定電流回路
5 第2の定電流回路
6 閾値調整用抵抗
7 可変定電流回路
8 ピークホールド回路
9 ボトムホールド回路
IC1 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を二値波形に整形して出力する波形整形回路において、
前記入力信号と閾値との比較結果に応じて第1の電圧又は第2の電圧を出力する比較器と、
前記閾値を生成する閾値生成部と、を備え、
前記閾値生成部は、
基準電圧を生成する基準電圧生成部を有し、
前記比較器の出力が第1の電圧のときには前記閾値を基準電圧に対して所定値高い電圧に切り換え、前記比較器の出力が第2の電圧のときには前記閾値を前記基準電圧に対して前記所定値低い電圧に切り換えることを特徴とする波形整形回路。
【請求項2】
前記閾値生成部は、
一端が前記基準電圧生成部に接続されると共に、他端が前記比較器に接続される閾値調整用抵抗部を備え、
前記比較器の出力が第1の電圧か第2の電圧かによって、前記閾値調整用抵抗部に流す電流の方向を変えることによって前記閾値を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の波形整形回路。
【請求項3】
前記閾値調整用抵抗部は、
複数の抵抗と、前記複数の抵抗のうち少なくともいずれか一つを選択し、該選択した抵抗を閾値調整用抵抗部の抵抗とする閾値調整用抵抗選択回路とを有することを特徴とする請求項2に記載の波形整形回路。
【請求項4】
前記閾値生成部は、
前記閾値調整用抵抗部の他端にそれぞれ接続される第1の定電流回路及び第2の定電流回路を備え、
前記比較器の出力が第1の電圧のとき第1の定電流回路から前記閾値調整用抵抗部へ電流を流すと共に、前記比較器の出力が第2の電圧のとき前記閾値調整用抵抗部から第2の定電流回路へ電流を流すことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の波形整形回路。
【請求項5】
第2の定電流回路の電流値は、第1の定電流回路の電流値の略2倍であり、
第2の定電流回路への電流を停止することにより第1の定電流回路から前記閾値調整用抵抗部へ電流を流すことを特徴とする請求項4に記載の波形整形回路。
【請求項6】
前記基準電圧生成部は、
前記入力信号のピークをホールドして出力するピークホールド回路と、
前記入力信号のボトムをホールドして出力するボトムホールド回路とを有し、
前記ピークホールド回路の出力と前記ボトムホールド回路の出力との基準の電圧を前記基準電圧とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の波形整形回路。
【請求項7】
入力信号を二値波形に整形して出力する波形整形回路を設けた半導体集積回路において、
前波形整形回路は、
前記入力信号と閾値との比較結果に応じて第1の電圧又は第2の電圧を出力する比較器と、
前記閾値を生成する閾値生成部と、を備え、
前記閾値生成部は、基準電圧を生成すると共に、前記比較器の出力が第1の電圧のときには前記閾値を基準電圧に対して所定値高い電圧に切り換え、前記比較器の出力が第2の電圧のときには前記閾値を前記基準電圧に対して前記所定値低い電圧に切り換えることを特徴とする半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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