説明

波長変換レーザ発振器

【課題】 高調波のレーザ光をモニタするパワーモニタを校正することができるとともに、パワーモニタを別途追加することなく基本波の出力をモニタすることができる波長変換レーザ発振器を得る。
【解決手段】 高調波レーザ光を出力するときに、この高調波レーザ光の出力を測定する第1の測定手段と、高調波レーザ光を出力するときに、波長変換素子を透過した基本波レーザ光の出力を測定するとともに、高調波レーザ光を出力しないときには、高調波レーザ光と基本波レーザ光の出力をともに測定する第2の測定手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波長変換素子を用いたレーザ発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ出力モニタ装置による測定値をレーザ装置にフィードバックしパワー制御を行うレーザ装置においては、光軸等のズレによりモニタ用の光センサへのビーム入射位置が変化した場合、当該センサの再校正が必須となる。この再校正を行う装置として、ビームスプリッタから取り出された出力光の一部を光センサで受光し、レーザ出力をモニタするレーザ装置において、出力光を標準パワーメータに直接入力し、光センサの出力を校正するレーザ出力モニタ装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−16424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、LBO等の波長変換素子を用い、基本波となるレーザ光の波長を2倍や3倍の高調波に変換して出力する波長変換レーザ発振器が存在する。この波長変換レーザ発振器の寿命は、基本波と波長変換素子の劣化に大きく起因する。そのため、基本波と波長変換素子の劣化を判断するために、パワーモニタを用いた基本波の出力の監視を常時行う必要がある。しかし、特許文献1の構成を波長変換レーザ発振器に適用した場合、高調波用の光センサや標準パワーメータ以外に、基本波の出力監視用のパワーモニタが別途必要になるため、装置が複雑になるという問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、高調波のレーザ光をモニタするパワーモニタを校正することができるとともに、パワーモニタを別途追加することなく基本波の出力をモニタすることができる波長変換レーザ発振器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る波長変換レーザ発振器においては、高調波レーザ光を出力するときに、この高調波レーザ光の出力を測定する第1の測定手段と、高調波レーザ光を出力するときに、波長変換素子を透過した基本波レーザ光の出力を測定するとともに、高調波レーザ光を出力しないときには、高調波レーザ光と基本波レーザ光の出力をともに測定する第2の測定手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、高調波レーザ光を出力するときに、波長変換素子を透過した基本波レーザ光の出力を測定するとともに、高調波レーザ光を出力しないときには、高調波レーザ光と基本波レーザ光の出力をともに測定する測定手段を備えたことにより、当該測定手段は基本波のモニタと高調波のパワーモニタの校正を兼ねることができる。このため、別途追加でパワーモニタを設けること無く2つのパワーモニタで、高調波の出力の制御を行えるとともに、高調波の出力測定用パワーモニタの校正を行うことができ、更に基本波のモニタも行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1を示す波長変換レーザ発振器の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1である波長変換レーザ発振器の動作を示すフローチャート図である。
【図3】この発明の実施の形態2を示す波長変換レーザ発振器の構成図である。
【図4】この発明の実施の形態3を示す波長変換レーザ発振器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における波長変換レーザ発振器の構成を示すものである。ここで、波長変換レーザ発振器とは、YAG等をレーザ素子とした固体レーザから出力されたレーザビーム(以下、基本波もしくは単にωと記載する)が、波長変換素子によって波長が2倍の第2次高調波(以下、2ωと記載する)や波長が3倍の第3次高調波(以下、3ωと記載する)に変換されるレーザ発振器のことである。なお、第4次以上の高調波も存在する。本実施の形態においては、波長変換素子の一例であるLBO結晶を2個用い、所望の高調波としての第3次高調波とその基本波の出力を標準でモニタする波長変換レーザ発振器について説明する。
【0010】
図1(a)は、波長変換レーザ発振器から3ωが出力されている状態を示したものであり、外部シャッタ4が閉じている状態である。一方、図1(b)は、波長変換レーザ発振器からは3ωは出力されておらず、3ωの出力をモニタする標準パワーモニタ8の校正を行う状態を示したものであり、外部シャッタ4が開いている状態である。ここで、外部シャッタ14はωと2ωを透過し、3ωを全反射するミラーであり、例えば表面のコーティングにより透過や反射する波長をコントロールされている。
【0011】
まず、図1(a)について説明する。図1(a)において、例えばYAGレーザ発振器からなる基本波レーザ発振器1から出射されたω100は、第1のLBO結晶2に入射される。第1のLBO結晶2によって、ω100の1部は、2ω200に変換される。変換されなかったω101と変換された2ω200は同軸上に出射され、第2のLBO結晶3に入射する。第2のLBO結晶によって、一部のω101と2ω200が3ω300に変換される。第2のLBO結晶3で変換されなかったω102と2ω201、および変換された3ω300は同軸上に出射され、外部シャッタ4に入射される。外部シャッタ4はω102および2ω201を透過し、3ω300を反射する。
【0012】
外部シャッタ4を透過したω102および2ω201は、ミラー5に入射する。ミラー5はωを透過し2ωを全反射するミラーであり、例えば表面のコーティングにより透過や反射する波長をコントロールされている。よって、ω102はミラー5を透過し、2ω201はミラー5により反射される。ミラー5を透過したω102は、校正用パワーモニタ6へ入射し、ミラー5を反射した2ω201は、ダンパ7に入射する。校正用パワーモニタ6はサーモパイルで、時定数が十分落ち着くのを待ってからω102の出力を測定する。校正用パワーモニタ6は、ω102の出力を測定し、測定値Aを制御装置10に送る。制御装置10においては、測定値Aは後述するように標準パワーモニタ8の校正に用いられるが、校正以外に基本波レーザ発振器1の監視にも用いられる。例えば、測定値Aが低下した場合、基本波レーザ発振器1に不具合が発生した場合が考えられるので、制御装置10は警告等を発する。
【0013】
一方、外部シャッタ4にて反射した3ω300は、全反射ミラー9により反射され、波長変換レーザ発振器外に3ω301として出射される。この全反射ミラー9はごく一部のレーザ光を透過するので(透過率1%とする)、透過した3ω302は標準パワーモニタ8に入射される。標準パワーモニタ8はフォトダイオードであり、例えばフォトダイオードで測定した複数のレーザ光パルスの平均値を出力値として用いる。標準パワーモニタ8は、3ω302の出力を測定し、測定値Bを制御装置10に送る。
【0014】
次に、図1(b)について説明する。図1(b)において、外部シャッタ4が開いている。この場合、ω100、101、102と、2ω200、201の光路は、図1(a)と同じである。一方、3ω300は、外部シャッタ4が開いているためミラー5に入射する。ここでミラー5は、ωを透過し2ωを全反射するが、更に3ωを透過するように設定されている。よって、よってω102と3ω300はミラー5を透過し、2ω201はミラー5によって反射される。ω102と3ω300は、校正用パワーモニタ6へ入射する。一方、2ω201は、ダンパ7に入射される。校正用パワーモニタ6は、ω102と3ω300の合計の出力を測定し、測定値Cを制御装置10に送る。
【0015】
次に、本実施の形態における波長変換レーザ発振器の動作、特に標準パワーモニタ8の校正動作について説明する。
波長変換レーザ発振器は、3ωを出力する通常の動作時には、図1(a)に示すように外部シャッタ4は閉じており、3ωの出力を標準パワーモニタ8で測定し、その測定値を制御装置10にて所望の出力値と比較し、基本波レーザ発振器1の出力にフィードバック制御を行う。そして、この標準パワーモニタ8を校正する場合には、図2に示すフローにて動作する。以下、図2のフローチャートに従って説明する。
【0016】
まず、外部シャッタ4を閉じて、3ωを出力する状態、すなわち図1(a)の状態とする(S01)。
次に、標準パワーモニタ8の測定値Bを制御装置10にて記憶する(S02)。
次に、校正用パワーモニタ6の測定値Cを制御装置10にて記憶する(S03)。
なお、S02とS03は、いずれを先に処理してもよく、同時に処理してもかまわない。
次に、外部シャッタ4を開いて、3ωを外部に出力しない状態、すなわち図1(b)の状態とする(S04)。
次に、校正用パワーモニタ6の測定値Aを制御装置10にて記憶する(S05)。
なお、S01からS03までの処理と、S04からS05までの処理とは、いずれを先に行っても良い。
【0017】
次に、制御装置10にて、AとCの差分を計算しEとする(E=A−C)(S06)。すなわち、Cはωと3ωの合計の出力測定値であり、Aはωの出力測定値であるので、Eは3ωの出力測定値となる。
次に、制御装置10にて、EとBの差分を計算しFとする(F=E−B)(S07)。ここで、Bは標準パワーモニタ8の測定値であるが、全反射ミラー9での1%の透過光(3ω302)を測定している。一方、Eは第2のLBOで発生した3ω300そのままの出力の測定値なので、EとBの差分を計算する場合、制御装置10内にて標準パワーモニタ8の測定値を100倍にしたものをBとしてEとの差分を計算する。もちろん、全反射ミラー9の透過率によって、測定値を何倍にしたものをBとするかは適宜設定すればよい。
【0018】
次に、制御装置10にて、Fが0より大きいか否かを判断する(S08)。
理想的にはBとEは等しいはずであるが、Fが0より大きい場合、すなわちBがEよりも小さい場合、標準パワーモニタ8においてレーザ光の光軸ずれが発生し、標準パワーモニタ8での測定値が実際のレーザ光の出力よりも小さく測定されたと判断する。この場合、標準パワーモニタ8の測定値BにE/BをかけたD(D=B×E/B)を標準パワーモニタ8の校正後の測定値として、制御装置10にて3ωの出力フィードバック制御に用いるべく、E/Bを校正係数として制御装置10は記憶する(S09)。
一方、Fが0より小さい場合、すなわちBがEよりも大きい場合、標準パワーモニタ8におけるレーザ光の光軸ずれではFは0より小さくなることはないので、光軸ずれ以外の問題が考えられる。この場合は、バックグラウンドを含む標準パワーモニタ8の測定誤差である可能性が高いため、校正係数は1として制御装置10は記憶する(S10)。
F=0の場合も、BとEは等しいので校正は不要であり、校正係数は1とする。校正係数が1の場合は、D=Bとなる。
【0019】
以上により、標準パワーセンサ8の校正のための校正係数を求めることができる。そして、3ωを出力する通常の動作時には、制御装置10において、別途求めて記憶しておいた校正係数を標準パワーモニタ8の測定値BにかけたDを所望の出力値と比較し、基本波レーザ発振器1の出力にフィードバック制御を行う。
なお、標準パワーモニタ8の測定値Bに校正係数をかけたDは、3ωのフィードバック制御に用いられるだけでなく、3ωの出力値が必要な場合に用いられ、単に出力を表示する場合にも用いられる。
【0020】
また、本実施の形態においては、外部シャッタ4はωと2ωを透過し3ωを反射し、ミラー5はωと3ωを透過し2ωを反射するとしたが、その逆に、外部シャッタ4はωと2ωを反射し3ωを透過し、ミラー5はωと3ωを反射し2ωを透過するとしてもよい。結果的に、外部シャッタ4にてωおよび2ωと3ωが分離でき、ミラー5にてωおよび3ωと2ωが分離できれば良い。
【0021】
本実施の形態においては、上記構成と動作によって次の効果が得られる。
校正用パワーモニタ6は、波長変換レーザ発振器のビームON時(3ω出力時)にωの出力をモニタし、波長変換レーザ発振器のビームOFF時(3ω停止時)にωと3ωの出力をモニタすることで、ωのモニタと3ωの標準パワーモニタ8の校正を兼ねることが可能となる。これにより、別途追加でパワーモニタを設けること無く2つのパワーモニタで、3ωの出力の制御を行えるとともに、3ωの出力測定用標準パワーモニタ8の校正を行え、更にωのモニタも行うことができる。また、パワーモニタを追加する必要が無いので、装置が複雑になることを防止することができる。
【0022】
実施の形態2.
図3は、この発明を実施するための実施の形態2における波長変換レーザ発振器の構成を示すものである。
実施の形態1においては、第3次高調波を出力する場合を例に説明したが、図3は、例えば第4次高調波(以下、4ωと記載する)を発生する波長変換レーザ発振器に本願発明を適用したものである。図3(a)は、波長変換レーザ発振器から4ωが出力されている状態を示したものであり、外部シャッタ41が閉じている状態である。一方、図3(b)は、波長変換レーザ発振器からは4ωは出力されておらず、4ωの出力をモニタする標準パワーモニタ8の校正を行う状態を示したものであり、外部シャッタ41が開いている状態である。
【0023】
図3において、実施の形態1の図1と同構成のものに関しては同じ符号を付している。ここでは、図1と異なっている点について説明する。本実施の形態では、第3次高調波を発生する波長変換素子3の後段に、更に4ωを発生する波長変換素子20を配置している。また、外部シャッタ41はωと2ωおよび3ωを透過し、4ωを全反射するミラーであり、ミラー51はωと4ωを透過し、2ωと3ωを全反射するミラーである。全反射ミラー91は4ωの一部を透過し大部分を反射するミラーである。
【0024】
図3(a)に示すごとく、4ωを外部に出力する場合には、外部シャッタ41が閉じた状態となり、波長変換素子20を透過したω103は、外部シャッタ41およびミラー51を透過し、校正用パワーモニタ6に入射する。また、波長変換素子20を透過した2ω202および3ω301は、外部シャッタ41を透過しミラー51で反射され、ダンパ7に入射する。波長変換素子20で発生した4ω400は、外部シャッタ41で反射され、全反射ミラー91で一部(例えば1%)が透過し、透過した4ω402は標準パワーモニタ8に入射する。一方、全反射ミラー91を反射した大部分の4ω401は、レーザ発振器外部に出力されて加工等に用いられる。標準パワーモニタ8の4ωの測定値を用いて、制御装置10において出力のフィードバック制御を行う点は、3ωと4ωの違いはあるが実施の形態1と同様な制御である。
【0025】
次に、図3(b)に示すごとく、4ωを外部に出力せずに、標準パワーモニタ8を校正する場合には、外部シャッタ41が開いた状態となり、波長変換素子20を透過したω103および波長変換素子20で発生した4ω400は、ミラー51を透過し、校正用パワーモニタ6に入射する。波長変換素子20を透過した2ω202および3ω301は、ミラー51で反射され、ダンパ7に入射する。よって、校正用パワーモニタ6では、ω103と4ω400の合計の出力を測定する。
【0026】
これにより、校正用パワーモニタ6において、4ωの出力時にはωの出力を測定し、校正時には4ωとωの合計の出力を測定するので、その差分から4ωの出力を得ることができる。この4ωの出力を用いて、標準パワーモニタ8を校正するのである。これは、3ωと4ωの違いはあるが、実施の形態1と同様な校正方法である。よって、実施の形態1と同様に別途追加でパワーモニタを設けることなく、ωのモニタと標準パワーモニタ8の校正を行うことができるという効果を有する。
【0027】
なお、実施の形態1と同様に、外部シャッタ41ではω、2ωおよび3ωと4ωが分離できればよく、ミラー5ではωおよび4ωと2ωおよび3ωが分離できればよく、いずれを反射するかもしくは透過するかは上記説明と逆でも良く適宜設定すればよい。
【0028】
本実施の形態では、第4高調波を例にして説明を行ったが、本願発明は更なる高調波を出力するレーザ発振器にも適用可能である。例えば図3において、基本波レーザ発振器1と外部シャッタとの間に所望の高調波が得られる波長変換素子を配置し、外部シャッタ41は所望の波長のレーザ光のみを反射し、その他の波長のレーザ光は透過する構成とし、その後段のミラー51は基本波と所望の高調波を透過し、その他の波長のレーザ光を反射する構成とすればよい。このようにすれば、外部シャッタ41が閉じているときは、校正用パワーモニタ6は基本波のみを測定し、外部シャッタ41が開いているときは、基本波と所望の高調波の合計の出力を測定することができ、実施の形態1同様に、パワーモニタを追加することなく、基本波のモニタを行うとともに標準パワーモニタ8の校正を行うことができる。
【0029】
実施の形態3.
図4は、この発明を実施するための実施の形態3における波長変換レーザ発振器の構成を示すものである。
実施の形態1および2においては、校正用パワーモニタ6で常にωを測定していた。これは、波長変換レーザ発振器の寿命に基本波の劣化が大きく起因するからである。一方、波長変換素子の劣化も波長変換レーザ発振器の寿命に起因することになるが、複数の波長変換素子が備わっている場合は、ωの測定だけでは波長変換素子に問題があることは分かっても、いずれの波長変換素子が劣化しているのかを判断できないという問題がある。そこで、本実施の形態においては、いずれの波長変換素子が劣化しているかを、パワーモニタの数を増やさずに判断できるようにしたものである。
【0030】
図4において、実施の形態1の図1と同構成のものに関しては同じ符号を付している。ここでは、図1と異なっている点について説明する。本実施の形態では、ωと3ωを透過し2ωを反射するミラー5を、2ωを透過しωを反射するミラー52に切り替えることができるように構成されている。また、ミラー52は、3ωについては透過しても反射してもどちらでもかまわない。切り替え手段としては、例えば図4において紙面垂直方向にミラー5とミラー52を並んで配置し、紙面垂直方向にスライドして切り替わる構成でもよく、適宜適切な切り替え手段を適用すればよい。
【0031】
本実施の形態においては、通常はミラー5がレーザ光の光路中に配置され、実施の形態1の図1と全く同じ構成となり、実施の形態1と同様にωと3ωをモニタすることができるとともに、標準パワーモニタ8の構成を行うことができる。一方、波長変換素子である第1のLBO結晶2の劣化を判断する場合には、ミラー5をミラー52に切り替えて、図4のような構成とする。この場合、ミラー52はωを反射し2ωを透過するので、ωがダンパ7に入射し、2ωが校正用パワーモニタ6に入射する。これにより2ωの出力を測定することができる。
【0032】
次に、3ωの出力低下が起こったときの原因の切り分けについて説明する。3ωの出力低下の原因としては、以下の3点が考えられる。
(1)基本波発振器の劣化によるωの出力低下。
(2)第1のLBO結晶2の劣化による2ωの出力低下。
(3)第2のLBO結晶3の劣化による3ωの出力低下。
図1(a)の構成によりωを測定している状態では、(1)について判断が可能であるが、ωの出力が変化していない場合は、図4の構成に切り替え2ωを測定する。2ωが変化していれば(2)が原因であり、2ωも変化していないようであれば(3)が原因と考えられる。
【0033】
このように、通常はωを校正用パワーモニタ6で測定し、波長変換素子の劣化を確認したいときには、2ωを校正用パワーモニタ6で測定できるようにミラー5とミラー52を切り替えることで、簡単な構成で容易に、複数の波長変換素子がある場合いずれの波長変換素子が劣化しているか判断することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、波長変換素子を2つ備え3ωを出力する波長変換レーザ発振器を例に説明したが、例えば図3に示したような4ωを出力する波長変換レーザ発振器に適用しても良い。この場合は、図3において、ミラー51を2ωを透過するミラーと3ωを透過するミラーとの合計3枚のミラーを切り替えるようにすれば、いずれの波長変換素子が劣化しているかの判断が可能となる。もちろん、さらに高調波を出力する波長変換レーザ発振器にも適用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 基本波レーザ発振器
2 第1のLBO結晶
3 第2のLBO結晶2
4、41 外部シャッタ
5、51、52 ミラー
6 校正用パワーモニタ
7 ダンパ
8 標準パワーモニタ
9、91 全反射ミラー
10 制御装置
100、101、102、103 基本波(ω)
200、201、202 第2次高調波(2ω)
300、301、302 第3次高調波(3ω)
400、401、402 第4次高調波(4ω)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波レーザ光を複数の波長変換素子により所望の高調波レーザ光に変換し出力する波長変換レーザ発振器において、
前記高調波レーザ光を前記レーザ発振器から出力するときに、この高調波レーザ光の出力を測定する第1の測定手段と、
前記高調波レーザ光を前記レーザ発振器から出力するときに、前記波長変換素子を透過した前記基本波レーザ光の出力を測定し、前記高調波レーザ光を前記レーザ発振器から出力しないときには、前記高調波レーザ光と前記基本波レーザ光の出力をともに測定する第2の測定手段と、
を備えた波長変換レーザ発振器。
【請求項2】
前記波長変換素子から出力される所望の高調波レーザ光とそれ以外のレーザ光を分離するかもしくは分離しないかを切り替えることにより、分離するときにはこの所望の高調波レーザ光を出力し、分離しないときにはこの所望の高調波レーザ光を出力しないとする切り替え手段を備えた請求項1に記載の波長変換レーザ発振器。
【請求項3】
前記切り替え手段により前記所望の高調波レーザ光とそれ以外のレーザ光が分離された場合には、前記それ以外のレーザ光からさらに前記基本波レーザ光を分離し、前記切り替え手段により前記所望の高調波レーザ光とそれ以外のレーザ光が分離されない場合には、前記所望の高調波レーザ光とそれ以外のレーザ光から前記所望の高調波レーザ光と前記基本波レーザ光を分離する分離手段を備え、
この分離手段により分離された前記基本波レーザ光または前記所望の高調波レーザ光と前記基本波レーザ光を前記第2の測定手段が測定する請求項2に記載の波長変換レーザ発振器。
【請求項4】
前記所望の高調波レーザ光を出力しないときの、前記第2の測定手段が測定した、前記所望の高調波レーザ光と基本波レーザ光の出力値と、
前記所望の高調波レーザ光を出力するときの、前記第2の測定手段が測定した、基本波レーザ光の出力値と、
の差分から得られる前記所望の高調波レーザ光の出力値を用い、前記第1の測定手段の校正を行う制御装置を備えた請求項1乃至3いずれかに記載の波長変換レーザ発振器。
【請求項5】
前記所望の高調波レーザ光を出力するときの、前記第1の測定手段が測定した、所望の高調波レーザ光の出力値を用いて、前記所望の高調波レーザ光の出力を制御する制御装置を備えた請求項1乃至4いずれかに記載の波長変換レーザ発振器。
【請求項6】
前記所望の高調波レーザ光を出力するときの、前記第1の測定手段が測定した、基本波レーザ光の出力値を用いて、前記基本波レーザ発振器の不具合を判断する制御装置を備えた請求項1乃至5いずれかに記載の波長変換レーザ発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−276927(P2010−276927A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130506(P2009−130506)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】