波長特異的な熱放射及び処理を行う方法及びシステム
【課題】様々な産業、医学、民生又は商用環境において、物品を加熱しその温度を上昇又は維持するか、或いは目標物を刺激することが含まれる、種々の処理目的のために特定の熱赤外線(IR)波長放射又はエネルギーを物品に直接注入するシステムを提供する。
【解決手段】このシステムは、具体的に選択した波長で照射するか或いは放射をパルス化するか、又は注入する能力を必要とするか又はその能力から恩恵を受ける作業に特に適用可能である。システムは、特に、より高速で且つ目標物と接触しない環境で機能するときに有利である。
【解決手段】このシステムは、具体的に選択した波長で照射するか或いは放射をパルス化するか、又は注入する能力を必要とするか又はその能力から恩恵を受ける作業に特に適用可能である。システムは、特に、より高速で且つ目標物と接触しない環境で機能するときに有利である。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、種々の加熱、加工、又は処理のために選択された熱赤外線(IR)波長の放射又はエネルギーを目標物に直接注入することに関する。後述するように、そのような目的には、様々な工業、医学、民生又は商用環境において、物品を加熱し、その温度を上昇させ、又は維持すること、或いは目標とする物品に刺激を与えることが含まれる。本明細書で説明する方法及びシステムは、特に、特定の波長の放射線を照射し或いは放射線をパルス化又は注入する能力を必要とするか或いはその能力から恩恵を受ける動作に適用することができる。本発明は、特に、目標物が高速で移動し且つ非接触の環境にある場合に有利である。本発明は、種々の最終用途のために高度にプログラム可能な、選択された狭い波長帯域の赤外線システムを提供する。本発明は、最も好ましい狭い波長帯域の新しい固体放射線放射素子(RED:radiation emitting device)の巧みに設計されたアレイからなる新しく且つ斬新なタイプの赤外線照射システムを教示する。この固体放射線放射素子の一変形例を本明細書の後の方で具体的に説明する。
【0002】
より具体的には、本発明は、目標物の温度に何らかの方法で影響を及ぼすように目標物に最適波長の赤外線を注入する斬新で効率的な方法を対象とする。幾つかの例を挙げると、赤外線を注入する「目標物」は、製造動作中の個別部品から、材料の連続コイル上の処理領域、調理プロセスにある食品、又は医療環境での患者まで、様々なものである。
【0003】
後述する本発明の特定の実施形態は、詳細にはプラスチックボトルプリフォームの再加熱動作に関連する例であるが、この例に含まれる概念は、多数の他のよく知られたシナリオにも適用される。また、この実施形態は、射出成形動作が連続的に実行され、そのすぐ後でブロー成形動作が実行される単段プラスチックボトルブロー成形動作に適用される。この配置では、例えば、本発明の方法及び装置は、既知の技術よりも優れた同様の利点を有するが、プロセスの再加熱セクションへの入口における初期温度の変動に対処するために異なる検出と制御を使用する。
【0004】
一般に、理想的な赤外線加熱システムは、目標物の温度を最小のエネルギー消費で最適に高める。そのようなシステムは、その電力入力を、目標物に向けられた特定の単一又は狭い帯域の波長を有する放射電磁エネルギー出力に直接変換することができる素子を備え、その結果、放射線に含まれるエネルギーは、部分的又は完全に目標物に吸収され熱に変換される。電気入力が放射電磁出力に変換される効率が高くなるほど、システムが達成できる効率が高くなる。放射電磁波が目標物上の望みの領域だけに向けられて当たる効率が高いほど、システムがその動作を実行する効率が高くなる。使用のために選択された放射線放射素子は、目標物に放射線を照射していないときは入力エネルギーも出力エネルギーも無駄にならないように瞬間的に「オン」なり、瞬間的に「オフ」になる特性を備えていなければならない。放射線に晒された目標物が放射電磁エネルギーを吸収しそれを直接熱に変換する効率が高いほど、システムの動作効率が高くなる。システムを最適にするには、1組のシステム出力波長が目標物の吸収特性と一致するように適切に選択するように注意しなければならない。そのような波長は、多くの場合、様々な材料の様々な吸収特性に最適でまた様々な所望の結果に適合するように、本発明の様々な目標とする用途ごとに別々に選択される。
【0005】
これと対照的に、当該技術及び産業分野では、種々の加工と処置のために一連の様々なタイプの放射加熱システムを使用することは周知である。そのような目的にこれまでに利用できた技術は、比較的広帯域スペクトルの放射電磁エネルギーを生成する。そのような技術は、赤外線加熱、処理又は加工システムと呼ばれることがあるが、実際には、それらの技術は、赤外線スペクトルから外れた放射エネルギーを生成する。
【0006】
スペクトルの赤外線部分は、一般に3つの波長区分に分けられる。それらの区分は、一般に、近赤外線、中赤外線(middle-infrared)及び長赤外線(long-infrared)波長帯域として分類される。これらの一般的な領域については正確な分離点が明確に確立されていないが、一般に、近赤外領域が、可視光線から1.5マイクロメートルの範囲であることは受け入れられている。中赤外線領域は、1.5から5マイクロメートルの範囲である。長赤外線領域は、一般に、5から14マイクロメートルの間及びそれ以上であると考えられている。
【0007】
産業、商業及び医学用の加熱、処理又は加工機器でこれまで使用されてきた赤外線源は、赤外線スペクトルの1区分に限定されることが殆どない広帯域の波長を生成する。その広帯域出力は、赤外線スペクトルの特定範囲内でピークになる場合があるが、その波長は、一般に、隣接する領域に大きく入り込む出力テールを有する。
【0008】
例えば、当技術分野で周知で様々なプロセス加熱動作に使用される石英赤外線加熱ランプは、多くの場合0.8〜1マイクロメートルの範囲にピーク出力を生成する。出力は0.8〜1マイクロメートルにピークがあるが、このランプは、紫外線(UV)から可視光、更に約3.5マイクロメートルの中赤外線まで幅広い連続した波長帯域において大きな出力を有する。石英ランプのピーク出力は近赤外線範囲にあるが、かなり大きな出力が可視光範囲と中赤外線範囲の両方にあることは明らかである。従って、既存の広スペクトルの赤外線源では、任意の所定の加熱、加工又は処理用途に最も望ましい、好ましい波長を選択することはできない。既存の赤外線源は、本質的に広スペクトルの処理又は加工のためのものであり、本発明より前は実際的な代替手段がなかったので広く使用されてきた。多くの目標物の主な温度上昇は、一以上の狭帯域波長の熱赤外線エネルギーの吸収によるものである。従って、広帯域赤外線エネルギー出力の多くは無駄になる。
【0009】
それにもかかわらず、石英赤外線ランプは、産業界で個別部品と連続材料加工産業の両方に広く使用されている。石英ランプからの放射を処理中の目標物に導くのを支援するために、一般に、種々のリフレクタを用いる等の種々の方法が使用されている。どの様にしてエネルギーが目標物上に集められるかに関係なく、一般に石英ランプは連続的に通電される。このことは、処理中の目標物が連続的に生産される物品か個別部品かに関係なく当てはまる。この理由は、主に、典型的には通常約数秒である石英ランプの比較的遅い熱応答時間によるものである。
【0010】
エネルギー注入を改善することが特に必要な分野はブロー成形動作である。より具体的には、プラスチックボトル延伸ブロー成形システムは、延伸ブロー成形動作前にプリフォームの熱的状態を制御する。このプロセスの一様相は、当該技術分野で再加熱動作として知られている。再加熱動作では、射出成形又は圧縮成形プロセスで形成されたプリフォームが室温に温度的に安定化される。その後で、プリフォームは延伸ブロー成形システムに送り込まれ、その初期段階で、プリフォームは、熱可塑性プリフォーム材料が後のブロー成形動作に最適な温度まで加熱される。この状態は、プリフォームが、成型機のブロー成形セクションに至る経路に沿って加熱セクション内を移送される間に作られる。ブロー成形セクションでは、プリフォームは、最初に機械的に引き伸ばされ、次に大容量のベッセル又は容器内に吹き込まれる。
【0011】
ブロー成形動作を使用して製造された完成品のコストの大部分は、エネルギー消費コストが占める。より具体的には、延伸ブロー成形機の再加熱セクションでポリエチレンテレフタレート(PET)のプリフォームを周囲温度から105℃まで加熱、即ち熱的状態を調節するために従来技術で必要とされたエネルギー量はかなり多い。製造を効率的に行う如何なる方法においても、延伸ブロー成形システムの熱的状態調節セクションの動作と関連したエネルギー消費率を少なくすることは、経済性と環境の両方の観点から有利であることが明らかであろう。
【0012】
米国特許第5,322,651号は、熱可塑性プリフォームを熱処理する方法の改善について述べている。この特許では、プラスチックプリフォームの熱処理に広帯域赤外線(IR)放射加熱を使用する従来の方法が述べられている。この特許から文章を引用すると、「対流や伝導などの他の加熱方法又は熱処理方法と比較し、また材料の低い熱伝導率を考慮すると、赤外線を使用する加熱は、有利な出力を提供し、高い生産速度を可能にする。」
【0013】
この特許に述べられている従来技術に対する特定の改善は、プリフォームの赤外線加熱中に放射される過剰エネルギーを管理する方法に関するものである。詳細には、この特許自体は、加熱プロセス中に放射され、最終的に(プリフォーム以外の場所での吸収、伝導、及び対流により)移送されるプリフォームの周りの炉容積内の空気の温度を高めるエネルギーに関するものである。高温の空気流によって生じるプリフォームの対流加熱は、プリフォームを不均一に加熱することが分かっており、したがって製造動作に悪影響を及ぼす。特許第5,322,651号は、赤外線加熱動作中のプリフォームの周りの空気流の意図しない加熱の影響を打ち消す方法について述べている。
【0014】
従来技術の赤外線加熱要素及びシステムから目標とするプリフォームへの熱エネルギーの移動は、完全に効率的なプロセスでないことは予想できる。プリフォームの熱的状態を調節するのに消費されるエネルギーの100%が、プリフォームの体積内で熱エネルギーの形になるのが理想的である。前述の参考特許には具体的に言及されていないが、この現在の最新技術のブロー成形機の典型的な変換効率値(移送されるプリフォーム内へ供給されるエネルギー/赤外線加熱要素が消費するエネルギー)は5%〜10%の範囲である。プリフォームの赤外線加熱と関連し変換効率値を改善する方法又は手段の改善はいずれも極めて有利であり、伸張ブロー成形機のユーザにエネルギーコストの大幅な削減を提供する。
【0015】
現在の最新技術のブロー成形機に使用される赤外線加熱要素及びシステムのエネルギー変換効率性能は多くの要因によって決まる。上記したように、PETプリフォーム等の従来の熱可塑性プリフォームが、約105℃の温度に加熱される。これは、通常、最新のブロー成形機では市販の広帯域石英赤外線ランプを使用して達成される。高速/大量生産装置では、そのようなランプは、ワット数の大きなバルブから成る大型のバンクの形態をとる。全てのバンクの石英ランプの合成エネルギー流は、最も高速の装置では数百キロワットに達する極めて大きな電流になる。加熱システム全体のエネルギー変換効率性能に影響を及ぼすこれらのタイプの赤外線加熱要素と関連した2つの因子は、ランプフィラメントの色温度とフィラメントバルブの光透過特性である。
【0016】
現在の最新技術のブロー成形機の熱的状態調節サブシステムの全体的なエネルギー変換性能に大きな影響を及ぼす別の因子は、加熱要素から放出された赤外線をシステム内を移送されているプリフォームの体積内に導くために使用されるフラックス制御又はレンズ手段である。最新のブロー成形機では、石英ランプから放出された赤外線フラックスをプリフォームの体積内に導く幾つかの手段が配置されている。詳細には、金属化リフレクタは、そのようなシステムで無駄になる放射赤外線の量を減少させるために適切な働きをする。
【0017】
赤外線加熱サブシステムのエネルギー変換効率性能に影響を及ぼす別の因子は、通常静的な赤外線加熱要素への入力エネルギーが、加熱システム内を移送されているプリフォームの動きとどの程度同期されるかである。より具体的には、システム内のプリフォームの連続的な移送によってプリフォームがヒータのすぐ近くにないときでも静的な赤外線加熱要素が一定量の入力エネルギーを連続的に消費する場合は、システムのエネルギー変換効率性能が最適化されないことは明らかである。実際には、商用石英ランプの物理的応答時間が遅く、また最新技術のブロー成形機のプリフォーム移送速度が比較的高速なので、ランプ入力電力を個別部品の動きと同期させるようにランプ入力電力を上手く変調し、それにより全体的なエネルギー変換効率性能を改善するいかなる試みも妨げられる。
【0018】
米国特許第5,925,710号、第6,022,920号、及び第6,503,586 B1号は全て、赤外線ランプから放射され、ブロー成形工程で使用される移送中のプリフォームによって吸収されるエネルギーの割合を高める類似の方法を述べている。これらの特許は全て、赤外線加熱要素として石英ランプを使用する最新技術の再加熱ブロー成形機での一般的な方法について様々な詳しさで述べている。再加熱ブロー成形工程では、予め射出成形され室温に安定化されたプリフォームは、ブロー成形動作の直前にブロー温度に再加熱される。以上のこれらの参考特許は、伝導手段又は対流手段ではなく赤外線吸収を使用して、一般には重合体、詳細にはPETをより効率的に加熱する方法について述べている。これらの特許は、PETの測定した吸収係数を波長の関数として図で表している。PETでは、主に1.6マイクロメートルを超える赤外線波長帯域で多数の強い分子吸収帯が生じる。石英ランプは、広いスペクトル全体にわたる放射線を放出することが知られており、正確な放射スペクトルは、プランクの法則によって定義されるようにフィラメント温度によって決定される。
【0019】
既存の最新技術のブロー成形機で使用されるとき、石英ランプは、約3000°Kのフィラメント温度で動作する。この温度では、ランプは、約0.8マイクロメートルにピーク放射を有する。しかしながら、当該技術分野で知られているように、この放射は黒体型放射なので、石英フィラメントは、X線から長赤外線まで連続スペクトルのエネルギーを放射する。30000°Kでは、放射は可視光領域で立ち上がり、0.8マイクロメートルでピークになり、約1.6マイクロメートルから始まるPETの吸収度が大きくなる領域と重なり始めるときに徐々に減少する。
【0020】
これらのどの特許でも述べられていないことは、石英バルブがランプの放射スペクトルに及ぼす影響である。商用石英ランプのバルブの製造に使用される石英材料は、約3.5マイクロメートルの透過上限を有する。この波長を超えると、密閉されたフィラメントから放射されたエネルギーの大部分は、フィラメントを取り囲む石英ガラスシースによって吸収され、従ってプリフォームの加熱に直接利用されない。
【0021】
以上概略的に述べた理由のために、石英ランプを使ってPETプリフォームをブロー成形温度に再加熱する既存の最新技術のブロー成形機では、吸収加熱は、1マイクロメートル〜3.5マイクロメートルの範囲で行われる。以上参照した特許群(第5,925,710号、第6,022,920号、及び第6,503,586 B1号)はすべて、プリフォームの固有吸収特性を変化させ、それにより再加熱プロセスの全体的なエネルギー変換効率性能を改善する様々な方法と手段を述べている。これらの全ての特許においては、専用の添加物を、混合物の吸収率を高めるだけのためにPETプリフォームの原料に加えることが記載されている。これらの記載された方法と手段は、約0.8マイクロメートル〜3.5マイクロメートルの近赤外線範囲で材料の光吸収特性を実現するように設計されている。容器の製造コストを削減するのに極めて有効なプリフォームの吸収特性の変更は、再加熱プロセスの全体的なエネルギー変換効率性能を高める実行可能な手段であるが、完成容器の外観に悪影響も及ぼす。容器の光学的透明度の低下は、しばしば容器の曇りと呼ばれ、そのため、この一般的な手法は、この製造上の問題に対しての最適な解決策ではない。
【0022】
米国特許第5,206,039号は、プリフォームを調整すると共にプロセスの射出段からブロー成形段に移送する改善された手段を含む単段射出成形/ブロー成形システムについて述べている。この特許では、熱可塑性材料の熱的状態を調節するプロセスにそれぞれ大量のエネルギーを加える射出成形機とブロー成形機を独立に運転することは無駄であると述べている。この特許は、単段製造プロセスを使用することによって全体的なエネルギー消費率と製造コストが両方とも減少すると教示している。このエネルギー消費の減少は、主に、ブロー成形動作を可能にするために必要な熱エネルギーのほとんどが、射出成形段の後でプリフォームによって保持されていることによるものである。より具体的には、’039特許で述べられているような単段プロセスでは、射出成形プロセスの後でプリフォームは室温に安定化されない。即ち、プリフォームは、射出成形段から熱的状態調節セクションに直接移行し、次にブロー成形セクションに移動する。
【0023】
’039特許で述べられている熱的状態調節セクションは、少量の熱エネルギーを加えるだけでなく、プリフォームを制御された安定化期間に置くことができる特性を有する。これは、プリフォームをブロー成形温度に加熱するために大量のエネルギーが必要な再加熱ブロー成形機の2段プロセスの熱的状態調節セクションの要件と異なる。単段射出成形機/ブロー成形機の動作は当該技術分野で既知であるが、これらの成型機の完成容器の品質問題は解消されていない。そのような品質問題は、プリフォームの流れがブロー成形段に入るときのプリフォーム間の温度差と関連している。’039特許で述べられている進歩にもかかわらず、従来技術の赤外線加熱及び温度検出手段及び方法を使用すると、プリフォームを射出成形工程から取り出したすぐ後でプリフォームの熱的状態を調節する工程は、あいかわらずブロー成形段に入るプリフォームの熱含有量を変化させることになる。入るプリフォームの熱含有量が変化すると、完成容器の特性と品質が変化する。プリフォームごとに赤外線加熱プロセスを特別に調整することは非効率なので、製造業者は、必要な品質レベルを実現するために再加熱ブロー成形方法を使用することを選択することになる。このため、最も高品質な生産用途については、産業界は相変わらず再加熱方法に依存している。また、プリフォームがしばしば商用コンバータによって製造され、容器をブローし充填する最終ユーザに販売されるので、再熱工程は引き続き一般的に使用されている。
【0024】
操業コストと製品品質の両方の観点からは、ブロー成形機の赤外線加熱セクションの効率及び/又は機能を全体的に改善できる可能性があることは明らかに有利である。最新技術の赤外線加熱サブシステムを改善する幾つかの試みがなされてきたが、明らかに不備な点も残っている。斬新な赤外線加熱要素及び方法の導入により、これらの不備を解消することが本発明の意図である。
【0025】
固体エレクトロニクス分野では、固体放射源(solid-state emitter)又はLEDは当技術分野で周知である。この種の光子又はフラックス放射源は、市販されており、紫外線(UV)から近赤外線まで様々な波長で動作することが知られている。LEDは、適切にNドープされPドープされた半導体で構成される。同じ材料のNドープ領域と直接接して配置されたPドープ領域を含むように適切に処理された半導体は、ダイオードの総称が与えられている。ダイオードは、当技術分野でよく知られているように、多くの重要な電気特性と光電子特性を有する。例えば、当該技術分野では、形成された半導体ダイオードのNドープ領域とPドープ領域の間の物理界面には、材料中に固有バンドギャップが存在することが周知である。このバンドギャップは、N領域の伝導帯内にある電子のエネルギー準位とこれより低い有効なP領域軌道内の電子のエネルギー準位との差に関係するものである。電子がPN接合を越えて流されるとき、N領域伝導軌道からそれより低いP領域軌道への電子エネルギー準位の遷移が起こり始め、そのような電子遷移ごとに光子の放射が生じる。正確なエネルギー準位、或いは放射される光子の波長は、流される電子のエネルギーの低下に対応する。
【0026】
要するに、LEDは、電流を光子に直接変換する放射源として動作する。フィラメントや他の黒体型放射源と違って、出力光子を取り出す前に入力エネルギーを中間形態の熱に変換する必要はない。この電流から光子に直接変換する挙動のために、LEDは、極めて高速で動作する特性を有する。LEDは、極めて高いパルスレートのUV、可視光、及び/又は近赤外線光の生成を必要とする多くの用途でこれまで使用されてきた。LEDの高いパルスレート特性が特に有用であった1つの特定の用途は、自動化された個別部品視覚検知用途である。この用途では、レンズ集束像を形成するために可視光又は近赤外線が使用され、その像が次にコンピュータで検査される。
【0027】
フィラメントを利用する光源と違い、LEDは、使用されている半導体材料の特定のバンドギャップに対応する比較的限定された波長範囲で発光する。LEDのこの特性は、特に、部品照明、状態表示、光通信等の波長選択動作が必要な用途に有用であった。最近になって、より大型の可視照明や、自動車テールランプや交通信号灯などの信号ランプにも、大きなLEDのクラスタが使用されるようになった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、波長の選択性が極めて高くまた従来利用できなかった全く新しい種類の用途と技術のために赤外線を容易に使用できるようにする少量又は大量の赤外線照射装置を実現する。
【0029】
本発明の目的は、改善された赤外線エネルギー変換効率性能を有する熱赤外線加熱システムを備えたモールド成形或いは他の加工又は処理システムを提供することである。
【0030】
本発明の別の目的は、処理対象、即ち目標とする特定の材料に合わせた赤外線浸透深さ性能を有する赤外線加熱システムを提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、種々の用途に最適になるように選択された狭い波長帯域で赤外線を生成する巧みに設計されたREDの組合せを組み込むことができる熱赤外線システムを提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、パルスモードで駆動することができる赤外線加熱システムを提供することであり、前記パルスモードは、特に、製造プロセス中に移送されるときに個々の製造部品に赤外線熱を提供するか、照射目標物の同期追跡を容易にするように適応される。
【0033】
本発明の別の目的は、金属化したリフレクタ要素によってより適切に赤外線を導くことができる赤外線加熱要素を提供することである。
【0034】
本発明の別の目的は、プリフォーム温度測定システムと共に動作してプリフォーム固有の赤外線加熱性能を提供することができる赤外線加熱システムを提供することである。
【0035】
本発明の別の目的は、電流を光子に直接変換する赤外線固体放射源又は放射線放射ダイオード(RED)のアレイとして製造される赤外線加熱要素を提供することである。
【0036】
本発明の更に別の利点は、極めて特異的な単一又は複数の狭い波長帯域において大きな放射出力を有する赤外線照射システムを提供することである。
【0037】
本発明の更に別の利点は、強力な熱赤外線を生成し、且つ位置、強度、波長、ターンオン/ターンオフ率、方向性、パルス周波数、及び製品追跡のうちの少なくとも1つを極めて柔軟にプログラム可能な機能である。
【0038】
本発明の更に別の利点は、現在の広帯域源に比べて入力エネルギー効率が高い熱エネルギー注入方法を容易に行えるようにすることである。
【0039】
ボトルプリフォームを加熱する際の本発明の更に別の利点は、完成容器の視覚的透明さと外観品質を低下させる添加剤を必要とせずに効率的に加熱する能力を維持することにある。
【0040】
本発明の更に別の目的は、プログラム可能性及びパルス化機能と組み合わせて波長選択的赤外線放出の機能を高めることができる、種々の用途のための汎用放射加熱システムを提供することである。
【0041】
本発明の更に別の利点は、定常状態の強度よりもかなり高い瞬間強度を有する極めて高速で高強度のバーストパルスを容易にする能力である。
【0042】
本発明の更に別の利点は、廃熱を、熱を必要とする別の場所に容易に移すことができ、或いは使用環境外に放出して非目標物の加熱を減少させることができることである。
【0043】
本発明の更に別の利点は、RED素子を高密度でパッケージ化して、これまで実際に達成できなかった固体熱赤外線出力レベルを実現できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
波長特異的な照射を行う利点は、仮定的な放射加熱の例を調べることにより説明することができる。可視光範囲から中赤外線範囲までの電磁放射にほぼ透明な材料が、何らかの製造動作を支援するためにプロセス加熱を必要とすると仮定する。また、このほぼ透明な材料が、3.0〜3.25マイクロメートルに位置付けられる狭いが強い分子吸光帯を有すると仮定する。以上の例は、ここで説明する実施形態を産業界で最も有利に応用できる方法を表す。この特定のプロセス加熱用途のパラメータが、放射加熱技術の使用を必要とする場合、現在の最新技術は、約3000°Kのフィラメント温度で動作する石英ランプの使用を必要とする。このフィラメント温度での基本的な物理計算では、有利なエネルギー吸収が起こる3.0〜3.25マイクロメートルの帯域には、石英ランプの全放射エネルギーの約2.1%しかないという結果となる。この開示で説明するような波長特異的な放射エネルギー出力だけを生成する機能は、種々のプロセス加熱用途の効率を大幅に改善する見込みがある。
【0045】
本発明は、広帯域型素子を置き換えるために特定波長の大量の赤外線を直接出力することができる斬新で新しい手法と直接関連する。
【0046】
半導体加工技術の最近の進歩によって、1マイクロメートル(1,000ナノメートル)を超えるほぼ中赤外線範囲で動作する、電子から光子に直接変換する固体放射源が使用可能になった。これらの固体素子は、一般の発光ダイオード(LED)と似た動作をするが、可視光線を放射するのではなく、それより長い中赤外線波長の真の熱赤外線エネルギーを放射する。そのような素子は、便利で低コストの固体素子の作成を妨げていた障壁を打ち破った量子ドット技術を利用する全く新しい種類の素子であり、電子を光子に直接変換する変換器として働くことができ、その出力は疑似単色で且つ中赤外線波長帯域である。
【0047】
この新しい種類の素子を従来のもっと波長の短い素子(LED)と区別するために、これらの素子は、より適切には放射線放射ダイオード(radiance or radiation emitting diode)(RED)と記述される。この素子は、厳しく限定された波長範囲の放射電磁エネルギーを放射する特性を有する。更に、適切な半導体加工作業によって、REDを、特定の放射処理用途に最も有利な特定の波長で放射線を放射するように調整することができる。
【0048】
更に、目標とする赤外線範囲及び場合によってはそれを超える範囲の光子を生成するための小面積の材料ドット又は量子ドットのランダム分散アレイとして形成された逆極性ドープ領域と接触しているドープ平面領域の形成と関係したRED技術の革新が進んできた。この製造技術或いは新規の半導体化合物の開発等の他の技術を十分に利用することにより、本発明に適した疑似単色の固体中赤外線源が得られる。また、代替の半導体技術は、本発明を実施するために適切な構成要素になる中赤外線と長赤外線の両方で利用可能になる。
【0049】
実施形態における電子(又は電流)の光への直接変換は、作成されたダイオード放射源の固有のバンドギャップ及び量子ドット形状と一致する疑似単色と呼ばれることが多い狭帯域波長範囲内で行われる。RED放射源候補の半値帯域幅は20〜500ナノメートルの範囲内のどこかになると予想される。このタイプの赤外線源の狭い帯域幅は、この完全な開示の内容内で示されるような種々の波長特異的な照射用途を支援するはずである。一群のRED素子及びこれら素子を作成する技術は、別の特許出願の主題であり、その出願は、2004年11月16日に出願され「Quantum Dot Semiconductor Device」と題し発明者としてSamar SinharoyとDave Wiltの名前が記載された米国特許出願番号60/628,330号(代理人整理番号:ERI.P.US0002;エクスプレスメールラベル番号EL726091609 US)であり、この出願は、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用される。
【0050】
この出願「Quantum Dot Semiconductor Device」により、半導体素子は当該技術分野で既知である。これらの素子は、電磁放射を電気に変換する光電池で使用される。またこれらの素子は、電気エネルギーを電磁放射(例えば、光)に変換する発光ダイオード(LED)として使用することもできる。ほとんどの半導体用途では、所望のバンドギャップ(電子ボルト)又は所望の波長(ミクロン)が目標とされ、半導体は、その所望のバンドギャップ範囲又は波長範囲に対応できるように作成される。
【0051】
特定の波長の放射又は電子ボルトのエネルギーを達成する能力が重要でないわけではない。実際には、半導体は、特定の材料、そのエネルギーギャプ、その格子定数、及びその固有の放射性能によって限定される。目的に応じて半導体素子を作成するために使用される1つの技術は、二元性化合物又は三元性化合物を使用することである。素子の組成特徴を変化させることにより、技術的に有用な素子が巧みに設計された。
【0052】
また、半導体素子の設計を操作して、素子の挙動を目的に合わせて調整することができる。一例において、半導体素子内に量子ドットを含めることができる。そのようなドットは、キャリアを量子的に閉じ込め、それにより同じ半導体のバルクサンプルよりも光子放射エネルギーが変化すると考えられている。例えば、米国特許第6,507,042号は、量子ドット層を有する半導体素子を教示している。具体的には、この特許は、ヒ化インジウムガリウム(InxGa1-xAs)層上に付着されたヒ化インジウム(InAs)の量子ドットを教示している。この特許は、量子ドット(即ち、InAs)とそのドットを付着させた層(即ち、InxGa1-xAs)との格子不整合の量を制御することによって、量子ドットと関連した光子の発光波長を制御できることを開示している。この特許はまた、InxGa1-xAs基板内のインジウムのレベルを変化させることによって、InxGa1-xAs基板とInAs量子ドットとの格子不整合を制御できるという事実を開示している。InxGa1-xAs基板内のインジウムの量を増やすほど、不整合の度合いが小さくなり、光子放射と関連した波長が長くなる(即ち、エネルギーギャプが小さくなる)。実際には、この特許は、基板内のインジウムの量を約10%〜約20%に高めることにより、関連した光子の波長を約1.1μm〜約1.3μmに長くできることを開示している。
【0053】
米国特許第6,507,042号に開示されている技術は、約1.3μmの波長を有する光子を放射又は吸収することができる素子を提供する際に役立つことが分かっているが、InxGa1-xAs基板内のインジウムの量を高める能力は限られている。換言すると、インジウムのレベルが20%、30%、或いは40%より多くなると、結晶構造内の不完全又は欠陥の程度は限定的になる。これは、特に、InxGa1-xAs基板がヒ化ガリウム(GaAs)基板又はウェーハ上に付着された場合に当てはまる。従って、米国特許第6,507,042号に開示された技術を利用しても、もっと長い波長の光子を放射又は吸収する素子(低いエネルギーギャプ)を実現することはできない。
【0054】
従って、1.3μmより長い波長の光子を放射又は吸収する半導体素子が有することが望ましいので、この特性の半導体素子は相変わらず必要とされている。
【0055】
一般に、REDは、InxGa1-xAs層(xは、約0.64〜約0.72重量パーセントのインジウムのモル分率である)と、前記InxGa1-xAs層上に配置された量子ドット(量子ドットは、InAs又はAlzIn1-zAsから成り、zは、約5重量パーセント未満のアルミニウムのモル分率である)を含む半導体素子を提供する。
【0056】
本発明は、また、InAs又はAIzIn1-zAsから成る量子ドット(zは、約5重量パーセント未満のアルミニウムのモル分率)と、量子ドットの少なくとも一部分と接触するクラッド層(量子ドットと前記クラッド層の格子定数が、最低1.8%から2.4%未満まで整合しない)とから成る半導体素子を含む。
【0057】
半導体素子は、InxGa1-xAsマトリックスクラッディングと呼ばれることがあるヒ化インジウムガリウム(InxGa1-xAs)層上にヒ化インジウム(InAs)又はヒ化アルミニウムインジウム(AlzIn1-zAs(zは0.05以下))の量子ドットを含む量子ドット層を含む。ドットとInxGa1-xAsマトリクス層の格子定数は整合していない。格子不整合は、少なくとも1.8%、他の実施形態では少なくとも1.9%、他の実施形態では少なくとも2.0%、他の実施形態では少なくとも2.05%である。有利には、不整合は、3.2%未満、他の実施形態では3.0%未満、他の実施形態では2.5%、他の実施形態では2.2%未満とすることができる。一以上の実施形態では、InxGa1-xAsマトリックスクラッディングの格子定数はドットの格子定数より小さい。
【0058】
ドットがInxGa1-xAsクラッディングマトリックス上に配置されたこれらの実施形態では、このクラッディングマトリクス層内のインジウムのモル濃度(即ちx)は、約0.55〜約0.80、所望により約0.65〜約0.75、所望により約0.66〜約0.72でよく、及び所望により約0.67〜約0.70とすることができる。
【0059】
一以上の実施形態では、InxGa1-xAsクラッディングマトリックスは、InxGa1-xAsクラッディングマトリックスと格子整合されたヒ化リンインジウム(InP1-yAsy)層上に配置される。一以上の実施形態では、InxGa1-xAsクラッディングが付着されたInP1-yAsy層は、InxGa1-xAsクラッディングと半導体を支持する基板の間にある複数の段階的(連続的又は離散的)InP1-yAsy層のうちの1層である。一以上の実施形態では、基板は、リン化インジウム(InP)ウェーハから成る。半導体は、また、InxGa1-xAsクラッディングと基板の間に配置されたInxGa1-xAs層等の一以上の他の層を含んでもよい。
【0060】
図1に一実施形態を示す。図1並びに他の図は、概略的表現であり、各層又は構成要素の厚さ或いは各層間の相対的厚さ又は寸法は一定の縮尺で描かれていない。
【0061】
素子1000は、基板1020、任意的に設けられる伝導層1025、緩衝構造1030、クラッド層1040、及びドット層1050を有する。当業者が理解するように、幾つかの半導体素子は、動作して電流を電磁放射に変換するか電磁放射を電流に変換する。そのような素子内の電磁放射又は電流を制御する機能は、当該技術分野で既知である。この開示は、必ずしもそのような従来の設計を変更せず、その設計の多くは、半導体素子を製造又は設計する当該技術分野で既知である。
【0062】
一実施形態では、基板1020は、リン化インジウム(InP)から成る。InP基板1020の厚さは250ミクロン超、他の実施形態では300ミクロン超、他の実施形態では350ミクロン超とすることができる。有利には、この厚さは、700ミクロン未満、他の実施形態では600ミクロン未満、他の実施形態では500ミクロン未満とすることができる。
【0063】
一以上の実施形態では、考えられる半導体素子は、必要に応じて、エピタキシャル成長させたリン化インジウム層(InP)を含んでもよい。このエピタキシャル成長させたリン化インジウム層の厚さは、約10nm〜約1ミクロンとすることができる。
【0064】
一実施形態では、任意的に設けられる伝導層1025は、ヒ化ガリウムインジウム(InxGa1-xAs)から成る。この層内のインジウムのモル濃度(即ち、x)は、約0.51〜約0.55、所望により約0.52〜約0.54、所望により約0.53〜約0.535とすることができる。一以上の実施形態では、伝導層1025は、InP基板と格子整合されている。
【0065】
伝導層1025は、所定の素子に十分な導電率を提供するために所定の値にドープされた適切な厚さのものとすることができる。一以上の実施形態では、この厚さは、約0.05ミクロン〜約2ミクロン、所望により約0.1ミクロン〜約1ミクロンとすることができる。
【0066】
一以上の実施形態では、緩衝層1030は、ヒ化リンインジウム(InP1-yAsy)から成る。ある実施形態では、緩衝層1030は、少なくとも2つ、所望により少なくとも3つ、所望により少なくとも4つ、及び所望により少なくとも5つのInP1-yAsy層から成り、各層の格子定数は、層が基板1020から遠くになるほど高くなる。例えば、また図2に示したように、緩衝構造1030は、第1の緩衝層1032、第2の緩衝層1034、及び第3の緩衝層1036を有する。緩衝構造1030の最下層面1031は基板1020と隣接しており、緩衝構造1030の最上平面1039は障壁層1040に隣接している。第2の層1034の格子定数は第1の層1032より大きく、第3の層1036の格子定数は第2の層1034より大きい。
【0067】
当業者が理解するように、緩衝構造1030の個々の層の格子定数は、連続した層の組成を変化させることによって高めることができる。一以上の実施形態では、InP1-yAsy緩衝層中のヒ素の濃度は、連続したそれぞれの層で高くされる。例えば、第1の緩衝層1032は約0.10〜約0.18のモル分率のヒ素(即ち、y)、第2の緩衝層1034は約0.22〜約0.34のモル分率のヒ素、第3の緩衝層1036は約0.34〜約0.40モル分率のヒ素を含む。
【0068】
一以上の実施形態では、隣接した緩衝層の間(例えば、層1032と層1034の間)のヒ素の増加は0.17モル分率未満である。連続した緩衝層間にできる欠陥は、ヒ素含有量を増やすことによる格子定数の変化によるものであり、半導体にとって有害ではないと考えられる。このように徐々に変化する臨界組成を使用する技術は、米国特許第6,482,672号に記載されているように既知であり、この特許は、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用される。
【0069】
一以上の実施形態では、第1の緩衝層1032の厚さは、約0.3〜約1ミクロンである。一以上の実施形態では、最上緩衝層は、一般に格子構造を完全且つ確実に緩和するためにこれより厚い。
【0070】
一以上の実施形態では、緩衝構造1030の最上面1039又はその近く個別の緩衝層(例えば、緩衝層1036)は、約5.869Å〜約5.960Å、所望により約5.870Å〜約5.932Åの格子定数を有するように巧みに設計される。
【0071】
一以上の実施形態では、緩衝構造1030の最下面1031又はその近くの個別の緩衝層(例えば、緩衝層1032)は、臨界組成グレーディング技術の範囲内で巧みに設計されることが好ましい。換言すると、第1の緩衝層(例えば、緩衝層1032)がInPウェーハ上に付着されるので、第1の緩衝層(例えば、層1032)内に存在するヒ素の量は17モル分率より少ない。
【0072】
クラッド層1040は、InxGa1-xAsからなる。一以上の実施形態では、この層は、緩衝構造1030の最上面1039又はその近くの最上緩衝層の平面内格子定数と格子整合されることが好ましい。格子整合という用語は、連続層相互間の格子定数の差が500ppm(即ち、0.005%)の範囲内であることを指す。
【0073】
一以上の実施形態では、クラッド層1040は、約10オングストローム〜約5ミクロン、所望により約50nm〜約1ミクロン、所望により約100nm〜約0.5ミクロンの厚さを有することができる。
【0074】
一以上の実施形態では、量子ドット層1050は、ヒ化インジウム(InAs)から成る。層1050は、濡れ層(wetting layer)1051と量子ドット1052を含むことが好ましい。濡れ層1051の厚さは、1又は2単分子層とすることができる。一実施形態では、層1050の最下面1053とドット1055の最上部から測ったドット1052の厚さは、約10nm〜約200nm、所望により約20nm〜約100nm、所望により約30nm〜約150nmとすることができる。また、一実施形態では、ドット1052の平均直径は、10nm超、所望により40nm超、所望により70nm超とすることができる。
【0075】
一以上の実施形態では、量子層1050は、複数のドット層を有する。例えば、図3に示したように、量子ドット1050は、第1のドット層1052、第2のドット層1054、第3のドット層1056、及び第4のドット層1058を含む。各層は、ヒ化インジウムInAsから成り、それぞれ濡れ層1053、1055、1057及び1059を含む。同様に各ドット層はドット1055を含む。濡れ層とドットを含む各ドット層の特性は、同一でなくてもよいが実質的に類似している。
【0076】
各ドット層1052、1054、1056及び1058の間にはそれぞれ、中間クラッド層1062、1064、1066及び1068が配置されている。これらの中間クラッド層は、InxGa1-xAsから成る。一以上の実施形態では、InxGa1-xAsの中間クラッド層は、クラッド層1040と実質的に類似又は同一である。換言すると、中間クラッド層は、障壁層1040と格子整合されていることが好ましく、障壁層1040は、最上緩衝層1036と格子整合されていることが好ましい。一以上の実施形態では、中間層1062、1064、1066及び1068の厚さは、約3nm〜約50nm、所望により約5nm〜約30nm、所望により約10nm〜約20nmとすることができる。
【0077】
前述のように、量子ドット層を取り囲むそれぞれの異なる層は、電流を操作するように正又は負にドープされてもよい。半導体素子内の電流を操作する技術は、例えば米国特許第6,573,527号、第6,482,672号、及び第6,507,042号に記載されているように当該技術分野で既知であり、これらの特許は、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用される。例えば、一以上の実施形態では、亜鉛、炭素、カドミウム、ベリリウム又はマグネシウムを使用して領域又は層を「p型」にドープすることができる。一方、シリコン、硫黄、テルル、セレン、ゲルマニウム、又はスズを使用して領域又は層を「n型」にドープすることができる。
【0078】
考えられる半導体素子は、当該技術分野で既知の技術を使用することによって作成することができる。例えば、一以上の実施形態では、様々な半導体層は、有機金属気相エピタキシー(OMVPE)を使用することにより作成することができる。一以上の実施形態では、ドット層は、Stranski−Krastanovモード(S−Kモード)等の自己形成技術を使用することにより作成される。この技術は、米国特許第6,507,042号で述べられおり、この特許は、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用される。
【0079】
図4に、量子ドット層を含む放射線放射ダイオード(RED)の一実施形態を示す。RED1100は、ベースコンタクト1105、赤外線リフレクタ1110、半絶縁半導体基板1115、n型横伝導層(LCL)1120、n型緩衝層1125、クラッド層1130、量子ドット層1135、クラッド層1140、p型層1145、p型層1150、及びエミッタコンタクト1155を有する。ベースコンタクト1105、赤外線リフレクタ1110、半絶縁半導体基板1115、n型横伝導層(LCL)1120、n型緩衝層1125、クラッド層1130、量子ドット層1135、及びクラッド層1140は、前述の半導体層と類似している。
【0080】
ベースコンタクト1105は、多数の極めて導電性の高い材料を含むことができる。例示的な材料には、金、金亜鉛合金(特にp領域と隣接するとき)、金ゲルマニウム合金又は金ニッケル合金、或いはクロム金合金(特にn領域と隣接するとき)がある。ベースコンタクト1105の厚さは、約0.5〜約2.0ミクロンとすることができる。金と誘電体材料の間の接着を高めるために、チタン又はクロムの薄層を使用することができる。
【0081】
赤外線リフレクタ1110は、反射材料から成り、必要に応じて誘電体材料から成る。例えば、誘電体材料として酸化シリコンを使用することができ、その上に赤外線反射材料として金を付着させてもよい。リフレクタ1110の厚さは、約0.5〜約2ミクロンとすることができる。
【0082】
基板1115はInPから成る。基板1115の厚さは、約300〜約600ミクロンとすることができる。
【0083】
横伝導層1120は、InP基板1115と格子整合された(即ち、500ppm以内)InxGa1-xAsから成る。また、一以上の実施形態では、層1120はnドープされる。好ましいドーパントはシリコンであり、好ましいドーピング濃度は、約1×1019〜約3×1019/cm3とすることができる。横伝導層1120の厚さは、約0.5〜約2.0ミクロンとすることができる。
【0084】
緩衝層1125は、前述の構造と同じようにInP1-yAsyの3段階の層から成る。層1125はnドープされることが好ましい。好ましいドーパントはシリコンであり、ドーピング濃度は約0.1×109〜約3×109/cm3とすることができる。
【0085】
クラッド層1130は、緩衝層1125の上部(即ち、第3段又はそのサブレイヤ)の平面内格子定数(即ち、500ppm以内)と格子整合されたInxGa1-xAsから成る。一以上の実施形態では、InxGa1-xAsクラッド層1130は、約0.60〜約0.70パーセントモル分率のインジウムから成る。クラッド層1130の厚さは、約0.1〜約2ミクロンである。
【0086】
量子ドット層1135は、本発明の教示に関して前に述べたようなInAsドットから成る。前の実施形態と同じように、各ドット層の間の中間層は、クラッド層1130と類似の(即ち、格子整合された)InxGa1-xAsクラッドを含む。一以上の実施形態では、一以上の連続した中間クラッド層中のインジウムの量は、クラッド層1130或いは前又はそれより低い中間層より少ないインジウムを含んでもよい。
【0087】
クラッド層1140は、緩衝層1125の上部(即ち、第3段又はそのサブレイヤ)と格子整合された(即ち、500ppm以内)InxGa1-xAsから成る。
【0088】
閉込め層1145は、InxGa1-xAs層1140と格子整合されたInP1-yAsyから成る。また、一以上の実施形態では、層1145はpドープされる。好ましいドーパントは亜鉛であり、ドーピング濃度は約0.1×1019〜約4×1019/cm3とすることができる。閉込め層1145の厚さは、約20nm〜約200nmとすることができる。
【0089】
コンタクト層1150は、閉込め層1145と格子整合されたInxGa1-xAsから成る。コンタクト層1150は、pドープされる(例えば、亜鉛がドープされる)ことが好ましい。ドーピング濃度は、約1×1019〜約4×1019/cm3とすることができる。コンタクト層1150の厚さは、約0.5〜約2ミクロンである。コンタクト層1150は、層1155の下を除き表面全体から除去されてもよい。
【0090】
エミッタコンタクト1155は、任意の高導電性材料を含むことができる。一以上の実施形態では、導電性材料には金/亜鉛合金がある。
【0091】
図5に別の実施形態を示す。半導体素子1200は、p領域内にトンネル接合を有する放射線放射ダイオードとして構成されている。この設計は、より低い抵抗接触とより低抵抗の電流分布を提供するので有利である。半導体1200の多くの様相は、図4に示した半導体1100と類似している。例えば、接点1205は接点1105と類似しており、リフレクタ1210はリフレクタ1110と類似しており、基板1215は基板1115と類似しており、横伝導層1220は伝導層1120と類似しており、緩衝層1225は緩衝層1125と類似しており、クラッド層1230はクラッド層1130と類似しており、ドット層1235はドット層1135と類似しており、クラッド層1240はクラッド層1140と類似しており、閉込め層1245は閉込め層1145と類似している。
【0092】
トンネル接合層1247は、閉込め層1245と格子整合されたInxGa1-xAsから成る。トンネル接合層1247の厚さは、約20〜約50nmである。トンネル接合層1247は、pドープされる(例えば、亜鉛で)ことが好ましく、ドーピング濃度は約1×1019〜約4×1019/cm3とすることができる。トンネル接合層1250は、トンネル接合1247に格子整合されたInxGa1-xAsから成る。トンネル接合層1250の厚さは、約20〜約5,000nmである。トンネル接合層1250は、nドープされることが好ましく(例えば、シリコン)、ドーピング濃度は約1×1019〜約4×1019/cm3である。
【0093】
エミッタコンタクト1255は、種々の導電性材料を含むことができるが、クロム金合金、金ゲルマニウム合金、金ニッケル合金等のn領域に好都合な材料から成ることが好ましい。
【0094】
図6にREDの別の実施形態を示す。半導体素子1300は、少なくとも部分的にベースリフレクタがない(例えば、図5に示した1210等のリフレクタがない)ため半導体素子の基板を通して電磁放射を放射することができることを除き、図5に示したREDと同じように放射線放射ダイオードとして構成される。また、図6に示した半導体素子1300は、素子の全表面(又は、実質的に表面全体)を覆う「完全コンタクト」であるエミッタコンタクト/赤外線リフレクタ1355を含む。
【0095】
他の全ての点では、素子1300は、素子1200と類似している。例えば、接点1305は接点1205と類似しており、基板1315は基板1215と類似しており、横伝導層1320は伝導層1220と類似しており、緩衝層1325は緩衝層1225と類似しており、クラッド層1330はクラッド層1230と類似しており、ドット層1335はドット層1235と類似しており、クラッド層1340はクラッド層1240と類似しており、また閉込め層1345は閉込め層1245と類似しており、トンネル接合層1347はトンネル接合層1247と類似しており、トンネル接合層1350はトンネル接合層1250と類似している。
【0096】
考えられる半導体技術は、レーザダイオードの製造に使用することもできる。図7に例示的なレーザを示す。レーザ1600は、金クロム合金等の任意の導電性材料から成ることができるコンタクト1605を有する。コンタクト層1605の厚さは、約0.5ミクロン〜約2.0ミクロンである。
【0097】
基板1610は、約5×1018〜約10×1018/cm3の濃度でnドープされることが好ましいリン化インジウムから成る。基板1610の厚さは、約250〜約600ミクロンである。
【0098】
任意的に設けられるエピタキシャルリン化インジウム層1615は、約0.24×1019/cm3〜約1×1019/cm3の濃度でnドープされることが好ましい。エピタキシャル層615の厚さは、約10nm〜約500nmである。
【0099】
段階的InP1-yAsy層1620は、図2に示した段階的InP1-yAsy緩衝層と類似している。緩衝層1620は、約1×1018〜約9×1018/cm3の濃度でnドープされることが好ましい。
【0100】
層1625と1630は導波路1627を構成する。層1625は、ヒ化リン化インジウムガリウム(In1-xGAxAszP1-z)から成る。層1630は同様にIn1-xGAxAszP1-zから成る。両方の層1625と1630は、層1620の上面と格子整合されている。換言すると、層1625と1630は、約0〜約0.3モル分率のガリウムと0〜約0.8モル分率のヒ素から成る。層1625は、厚さ約0.5〜約2ミクロンであり、約1×1018〜9×1018/cm3の濃度でnドープされる。層1630は、約500〜約1500nmであり、約0.5×1018〜1×1018/cm3の濃度でnドープされている。
【0101】
閉込め層1635、ドット層1640、及び閉込め層1645は、他の実施形態に関して前に述べたドット及び閉込め層と類似している。例えば、閉込め層1635は、図3に示した閉込め層1040と類似しており、ドット層1640は図3に示したドット層1050と類似している。一以上の実施形態では、レーザ素子のドット領域内で使用されるドット層の数は、5ドット層より多く、所望により7ドット層より多く、所望により9ドット層より多い(例えば、サイクル)。閉込め層1635と1645は、約125〜約500nmの厚さを有することができ、また導波路と格子整合される。層1635、1640、及び1645は、ドープされないことが好ましい(即ち、これらの層は真性である)。
【0102】
層1650と1655は導波路1653を構成する。層1625及び1630と同じように、層1650と1655は、緩衝層1620の上面と格子整合されたIn1-xGAxAszP1-zから成る。層1650は、約500〜約1500nmであり、約0.5×1018〜約1×1018/cm3の濃度でpドープされている。層655は、約1〜約2ミクロンの厚さであり、約1×1018〜約9×1018/cm3の濃度でpドープされている。
【0103】
一実施形態では、層1660は、緩衝層1620と類似した緩衝層である。即ち、ヒ素のモル分率は、各段階が量子ドットから遠くなるほど減少する。層1660は、1×1018〜9×1018/cm3の濃度でpドープされることが好ましい。
【0104】
層1665はリン化インジウム(InP)から成る。層1665の厚さは、厚さ約200〜約500nmであり、約1×1019〜約4×1019/cm3の濃度でpドープされることが好ましい。
【0105】
層1670は、前の実施形態で説明した他のコンタクト層と類似のコンタクト層である。
【0106】
他の実施形態では、層1660、1665、及び1670は、他の実施形態に関して説明した他の構成と類似している。例えば、これらの層は、図4に示した層1145、1150及び1155と類似している。代替として、層1660、1665及び1670の代わりに、図5に示した1245、1247、1250及び1255と類似の層を使用することができる。これらの素子の実施形態の範囲と精神を逸脱しない様々な修正及び変更は、当業者に明らかになるであろう。
【0107】
当然ながら、一形態において、この本発明が、説明したようなRED要素を含むことを理解されたい。しかしながら、様々な他の素子技術を使用できることを理解されたい。例えば、1.6マイクロメートル〜5.0マイクロメートルの範囲で動作する実験用の中赤外線LEDは知られているが、商用的に現実的でない。更に、種々の半導体レーザ及びレーザダイオードを適切な修正により使用することができる。当然ながら、便利な波長の限られた帯域幅の照射線を効率的に生成することができる他の技術を開発することができる。
【0108】
本発明を特定の用途のため実施するには、適切な量の照射線を得るために通常は多数の適切な素子を配置する必要がある。この場合も、一形態において、そのような素子はRED素子になる。本発明のほとんどの加熱用途では、そのような素子は、一般に、ある種の高密度x×yアレイ又は複数x×yアレイで配置され、そのいくつかは、個別RED素子のカスタマイズされた構成の形をとることがある。アレイは、本発明の特定の実施態様に使用される素子のタイプとサイズ、必要出力、及び必要波長により、単一素子から、より一般には数百、数千又は無限数の素子アレイまでの範囲とすることができる。RED素子は、通常、少なくとも熱放散能力を有する(ない場合には専用の熱除去装置を有する)回路基板に取り付けられる。RED素子は、多くの場合、そのような回路基板上に極めて高密度/接近配置で取り付けられる。高出力用途に必要な場合には、ダイ取り付け及び回路基板構造の最近の革新技術を利用して密度を最大にすることができる。例えば、そのような目的には、フリップチップに使用されるような技術が有利である。RED素子の効率は、この特有なダイオード素子としては高いが、電気エネルギー入力の大部分は局所的な熱に直接変換される。個々の素子の過熱と焼損を防ぐために、この無駄な熱は半導体接合部から放出されなければならない。高密度アレイに場合は、能動及び/又は受動冷却機能を有するフリップチップ及びチップオンボードパッケージ技術が使用されることが多い。実用性と位置決めの融通性のために、しばしば複合回路基板が使用される。また、x×yアレイは、例えば1マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲の少なくとも2つの異なる特定波長の赤外線を提供するRED素子の混合物から成ってもよい。
【0109】
ほとんどの用途では、RED素子は、様々な異なるサイズのアレイの形態で配置するのが有利であり、アレイのいくつかは、特定タイプの目標物に放射線をより良く照射するために本質的に三次元又は非平面とすることができる。これは、少なくとも以下のような理由のためである。
1.複数の素子の出力を組み合わせることにより十分な出力を提供する。
2.単一素子が適切に照射できる面積よりも大きい面積にわたる出力の十分な「広がり」を提供する。
3.RED素子アレイのプログラム可能性をアプリケーションにもたらす機能を提供する。
4.本明細書で述べた多くの機能的理由のために様々な特定の波長に調整した素子をアレーの形態に組み合わせることができるようにする。
5.出力の「幾何学形状」を特定のアプリーケションの条件に合わせ易くする。
6.素子の取り付け位置、放射角度及びコストをアプリーケションの条件に合わせ易くする。
7.移動する目標物に対する出力の同期又は他の「出力運動」を容易にする。
8.共通の制御回路での素子群の駆動に対応する。
9.多段加熱技術に対応する。
【0110】
ダイオードの典型的な最終用途のために、ダイオードは、接合部の大きさを小さくすることによってコストを最少にするように製造されてきた。従って、これによりコストに直接関連する必要半導体ウェーハ面積が少なくなる。RED素子の最終用途は、より多くの光子の形の実質的な放射エネルギー出力を必要とすることがある。大きな光子生成フットプリント(photon producing footprint)接合領域を形成する創造的な方法でREDを製造できることがこれまで理論的に示されてきた。そのような製造方法によって、より高い中赤外線放射出力を極めて効果的に持続できるRED素子を作成することができる。そのような素子が利用できる場合には、本発明を実施するのに必要なRED素子の絶対数を少なくすることができる。しかしながら、本発明の多くの用途と関連する高出力の場合は、素子の数を単一素子に減少させることは必ずしも望ましくなくまた実際的でもない。本発明は、より低出力の用途、単一波長用途、或いは十分な出力性能を有するRED素子を製造できる場合には、単一素子で実施することができる。
【0111】
同様に、RED素子アレイを集積回路として製造することもできる。そのような実施態様では、REDは、1枚のシリコンや他の適切な基板の領域内に配列されるが、チップ上に光子変換照射位置として機能する複数の接合部を有する。このREDは、電気接続にボールグリッドアレイを使用する他の集積回路パッケージと類似することがある。その場合、そのような素子パッケージは、制御システムへの接続と制御システムによる制御のために必要な電気接続を容易にするアレイとして使用することができる。この場合も、設計パラメータは、電流化学的性質により破壊が起こり始める前に約100℃〜105℃に達してはならない接合部温度の制御である。将来の化合物は耐熱性が高くなることが予想されるが、熱は常に使用される素子の臨界破損範囲より低く維持されなければならない。素子は、更に、回路基板上に単独又は複数で配置されてもよく、用途とコストの必要に応じてより高レベルの素子アレイとして配列されてもよい。
【0112】
RED素子を照射アレイに配置する最良の構成を設計する際、素子のフォームファクタにかかわらず、設計者は変量の全体的な範囲を考慮しなければならない。目標とする用途の点から検討される変量の幾つかには、パッケージング、配置し易さ、コスト、電子接続性、プログラム可能性の制御、冷却、配置環境、電源供給経路、電力供給、ストリング電圧、ストリング形状、照射要件、安全性、及び当業者が理解するであろう多くの他の変量がある。
【0113】
製品の製造に使用される全ての原材料は、電磁スペクトルの範囲内の様々な波長における特定の吸収及び透過特性と関連付けられてきた。また、各材料は、特徴的な赤外線反射及び放射特性を有するが、そのような特性を検討するには時間はかからず、それは、本発明の実施が吸収/透過特性によって更に促進されるからである。任意の特定の材料に関して所定の波長での吸収率を測定し表にすることができる。次にその吸収率を、本明細書の後の方でより詳しく説明し例示するように、種々の波長にわたってグラフで示すことができる。各タイプの材料が、様々な波長で特徴的な吸収又は透過特性を有するので、加熱プロセスを最適化するには、そのような材料特性を知ることが極めて有用である。ある材料がある波長範囲で極めて高い透過率を有する場合は、その材料をその波長範囲で加熱しようとするのは極めて非効率的であることを理解されたい。これと反対に、ある材料がある波長を過度に吸収する場合は、放射熱を加えると材料の表面が加熱されることになる。非効率的な熱伝導体の材料では、熱放射は、通常、材料内を均一に加熱するのに最適な方法ではない。
【0114】
様々な材料が波長で異なる特定の吸収又は透過特性を有することは、長年当技術分野で周知であった。しかしながら、特定波長又は波長の組み合わせを指定することができる高出力赤外線源がなかったので、従来は、既存の加熱又は加工動作の多くを完全に最適化することができなかった。特定波長の赤外線を製品に与えることが実際的でなかったので、多くの製造業者は、そのような特定の製品が最も望ましく加熱又は加工される波長を分かっていない。
【0115】
これは、プラスチック産業における例によって説明される。図9と図10を参照し、プラスチック飲料容器を延伸ブロー成形するポリエチレンテレフタレート(産業界で知られているようなPET樹脂材料)の透過曲線を調べることによって、PET材料が長波長領域で極めて吸収性が高く、可視光及び近赤外線波長領域で極めて透過性が高いことが分かる。その透過率は、1マイクロメートル〜5マイクロメートルの間で劇的に変化する。透過率は、その範囲内で劇的に変化するだけでなく、0.1マイクロメートル以内で頻繁且つ突然にまた非常に大きく変化する場合が多い。
【0116】
例えば、PETは、2.9マイクロメートルに極めて強い吸収を有する。即ち、2.9マイクロメートルの赤外線がPETに導入されると、光は材料の表面又は外被でほとんど全て吸収される。材料の外側面だけを加熱したい場合は、この波長を使用することができる。PETは、熱伝導性が極めて低く(低い熱伝導率を有する)、また延伸ブロー成形動作ではPET材を内部から全体的に均一に深く加熱することが望ましいので、これは、PETを適切に加熱するのに適さない波長である。
【0117】
別の状態を見ると、PET材は、1.0マイクロメートル(1000ナノメートル)に極めて高い透過率を有する。即ち、PETの表面に当たるこの波長の放射線の大部分がPETを透過し、優先的な加熱をすることなく出て、従って大部分が無駄になる。電磁エネルギーの透過率は、誘電体材料全体の厚さの関数として指数関数的に減少するので、材料の厚さは、所定の材料に最適な波長の選択に大きな影響を及ぼすことに注意されたい。
【0118】
ここではPET熱可塑性材料を例として使用したが、この原理は、様々な産業で使用される種々の異なるタイプの材料並びに異なるタイプのプロセスに当てはまることを理解されたい。極めて異なる例として、にかわ又は接着剤積層システムが挙げられる。この例にでは、接着される母材が、特定の赤外線波長の透過性が極めて高いと仮定する。使用される熱硬化性接着剤は、その同じ波長で極めて吸収性が高い。接着剤/積層物サンドイッチをこの特定の有利な波長で照射することによって、隣りの母材ではなく接着剤が加熱されるので、加工が更に最適化される。このような波長の相互作用を選択的に選択することによって、産業界内の様々な幅広い種類の加工又は加熱用途の範囲内での最適ポイントが見つかる。
【0119】
従来、特定の波長において比較的高密度の赤外線を生成する機能は単純に産業界で利用できなかった。従って、このタイプの加熱又は加工の最適化が可能でなかったので、この最適化は、ほとんどの製造業者によって意図されていない。そのような波長特異的な赤外線出力が可能ならば全く新しい方法及びプロセスが見つかることが予想される。本発明は、そのような新しいプロセスを実際的のものにし、種々の用途のための広い融通性を有する実施技術を提供する。本発明の第1の利用が産業界にあると予想されるが、また商業、医学、民生及び他の分野にも多数の用途があるであろうことが分かる。
【0120】
本発明が、現在幅広く使用されている広帯域の石英赤外線加熱バルブや他の従来の加熱システムの代替として極めて有効であることが予想される。そのような石英バルブは、熱成形動作の準備としてのプラスチック材料シートの加熱を含む一連の動作に使用される。本発明は、石英赤外線ランプや他の従来の加熱システムの既存の機能の代替として利用できるだけでなく、実質的に追加機能を加えると考えることができる。
【0121】
本発明はそれどころか、放射エネルギーを連続通電モード或いはパルスモードで生成することができる。本発明の基本的なRED素子は、マイクロ秒の極めて高速の応答時間を有するので、エネルギーを必要とするとき即ち目標とする部品が目標とする領域内にあるときにエネルギーをオンにし、部品が目標領域になくなったときにエネルギーをオフにするため素子のエネルギー効率を高めることができる。
【0122】
赤外線源にパルス通電することができる付加機能によって、多くの放射加熱用途の全体的なエネルギー効率を大幅に改善することができる。例えば、単独又はアレイの赤外線素子(RED)の通電時間を適切に変調することによって、大きな赤外線アレイ源を通り過ぎるときに個別の目標物を追跡することができる。即ち、目標とする素子に最も近い赤外線素子が、通電される素子になる。目標とする部品又は領域が前進するときに「エネルギー波(energizing wave)」をアレイの下流側に通過させることができる。
【0123】
熱成形される材料を加熱する場合に、成形の程度が低いか全く成形されない領域よりも成形の程度が高い領域に多くの熱を加えることが望ましいことがある。赤外線源アレイの構成を正確に設計することによって、全ての素子に同時に通電できるだけでなく、加熱する領域の形状に対応するように極めて戦略的に素子に通電することができる。例えば、生産ラインを連続的に移動させるために、加熱する目標領域と同期した動きでプログラム可能に移動させることができる所望の熱プロファイルの特別形状の領域をプログラムすることが最も望ましいことがある。図17に示したような加熱を必要とする額縁形の領域を検討する。この場合、所望の放射強度の素子(402)の類似の額縁形アレイを有することができ、このアレイは、目標とする熱成形シート(401)の動きと同期してプログラム可能に下流に移動する。エンコーダを使用して熱成形シート(401)等の製品の動きを追跡することによって、周知の電子工学同期技術を使用して、プログラマブルコントローラ又はコンピュータの命令に従って適切な素子を所望の強度で作動させることができる。所望の出力強度を得るために、アレイ内の素子を制御システムによって「連続」モード又は「パルス」モードで通電することができる。いずれのモードも、最も望ましい出力条件に対する時間の関数として強度を変調することができる。この制御は、素子グループの制御でもよく、個別のRED素子に対する制御でもよい。特定の用途では、個別のRED素子に対する粒状制御が必要ない場合がある。そのような例では、RED素子を最も望ましい形状の列(string)を構成するように配線することができる。次に、それらの列又は列群を、用途要件の要求に応じてプログラム可能に制御することができる。実用性から、最も都合のよい電圧の印加を容易にし且つ個別の素子制御のコストを削減するためにRED素子を群単位又は列単位で駆動することが必要な場合がある。
【0124】
REDの列又はアレイは、電流をオープンループ構成で単純に供給することによって制御されてもよく、より高度な制御が使用されてもよい。特定用途の事実集約的評価によって、適切な赤外線照射制御の量とレベルが決定される。複雑又は厳密な制御が要求される限り、制御回路は、入力電流、電圧又は固有出力を連続的に監視し変調する。最も望ましい放射出力又は結果の監視は、赤外線アレイの出力、或いは赤外線の目標物と関連したパラメータを直接測定することによって実施することができる。これは、単純な熱電対又は高温計を含む技術から、例えば赤外線カメラの形をとる更に高度な技術まで、様々な技術によって実行することができる。当業者は、本発明の特定の用途に経済的に妥当な特定の閉ループ監視技術を推奨することができるであろう。
【0125】
直接と間接の両方の監視方法を実施することができる。例えば、形成可能温度範囲まで高めるために特定の材料を加熱する場合は、材料を形成するために必要な力を測定し、そのデータを、赤外線放射アレイを変調するためのフィードバックの少なくとも一部分として使用することが望ましい場合がある。本発明の出力の最適化と制御を容易にするために、多くの他の直接又は間接のフィードバック手段が可能である。
【0126】
本明細書で述べるような本発明の放射熱源の形状、強さ及び通電時間は、細かくプログラム可能であり、極めて高レベルのプログラム可能なカスタム化をするのに向いていることをよく理解されたい。特定の部品上の適正な位置に熱を導くために、その部品用に熱源の特別注文の形状又は構成を設計し作成することは、産業界ではよくあることである。本発明の柔軟なプログラム可能性によって、単一のプログラム可能な加熱パネルをほとんど無限数の特注パネルと柔軟に置き換えることができる。産業界は、種々様々な赤外線炉及び加工システムで溢れている。そのような炉は、様々な種類とタイプの塗料、コーティング、スラリの硬化、及び他の目的に使用される。また、これらの炉は、種々様々な積層ラインにおいて、材料の熱融着、或いはにかわ、接着剤、表面処理剤、又は「サンドイッチ状」積層物に追加される様々な層を硬化するために使用することができる。
【0127】
種々様々な乾燥用途に他の炉が使用されることがある。例えば、2つの部分からなる飲料缶(two-piece beverage can)の産業では、飲料缶の内部にコーティングを噴霧し、次にそれをコンベヤによって「大量」に長い硬化炉内を連続的に移動させるのが一般的である。硬化していない内部コーティングは、塗布したときは白ペンキの外観を有するが、硬化後はほとんど透明になる。このような様々な乾燥及び硬化用途において、本発明により、乾燥させ、処理し又は硬化しなければならない材料に最も容易且つ適切に吸収される一波長又は波長の組み合わせを選択することができる。いくつかの用途では、プロセスを改善するために、存在する波長よりも存在しない波長が重要なことがある。望ましくない波長は、乾燥、加熱、結晶粒構造の変化、或いは多くの他の有害な結果によって材料に悪影響を及ぼすことがあるが、本発明では、より最適なプロセスにより、これらを回避できる。
【0128】
基板、即ち母材に実質的に悪影響を及ぼすことなく目標とする材料の温度を高めて硬化又は乾燥させることが望ましいことが多い。母材がそのような処理によって破損し得ることはよくあることである。目標とする材料内に熱を導入しつつ母材に熱を導入しないことがより望ましい。本発明は、この種の選択的加熱を容易にする。
【0129】
本発明の別の応用分野を見てみると、医療産業は、種々の可視光治療と近赤外線治療を試みてきた。ある特定の波長の電磁エネルギーが治癒を刺激し促進することが理論的に示されている。また、ある特定の波長を有する光線が、酵素、ホルモン、抗体、及び身体内の他の化学物質の生成を刺激し、また不活発な器官の活動を刺激することが仮定されている。そのような仮定の特定の詳細、処置方法又は長所を調べることはこの特許の範囲外である。しかしながら、本発明は、種々のそのような治療モダリティを容易にすることができる波長選択可能でプログラム可能な固体中赤外線源を提供することができる。
【0130】
しかしながら、従来、医療界には、中赤外線波長帯域の高出力の波長特異的な放射を生成する実際的な方法がなかったことは真実である。本発明は、そのような狭帯域の波長特異的な赤外線照射を可能にし、医療用に容易に使用できる小型軽量で安全で便利な形態で可能にする。
【0131】
医療では、照射に使用される特定波長又は波長の組み合わせを選択できることに、極めて重要な幾つかの利点がある。産業用の製造材料と同じように、有機材料は、特徴的な透過/吸収スペクトル曲線を有する。動物、植物又は人体組織は、極めて有利に活用することができる固有の吸収/透過ウィンドウを示す。
【0132】
人体の大部分は基本的に水からなる。従って、水の透過/吸収曲線は、多くの人体組織を大雑把に近似化するのによい出発点である。広範囲にわたる研究によって、人間、動物及び植物内の全ての種類の組織の正確な曲線を作成することができる。また、器官又は組織から得ようとする様々な種類の治癒や刺激の関係を作成し、それを透過/吸収曲線と関連付けることができる。一波長又は波長の組み合わせを慎重に選択することによって、種々の疾病と疾患に効果のある可能性のある療法を開発することができる。
【0133】
治療することが望ましい組織又は器官には、極めて表面近くにあるものもあり、体内の深くにあるものもある。人体組織の吸収特性により、非侵襲的技術ではそのような深い部分に到達できない可能性がある。目標組織の近くに照射源を配置するために何らかの形の侵襲的技術を使用しなければならないであろう。本発明の照射アレイは、照射アレイが種々の侵襲的又は非侵襲的治療に使用するのに適したサイズ及び/又は形状のものになるように、設計することができる。治療の技術、モダリティ及び構成は本明細書の説明の範囲を超えるが、本発明は、中赤外線波長帯域で固体波長選択照射を利用可能にする最初のものである。これは、種々のモダリティと治療のタイプに構成することができる。極めて柔軟な形態とプログラム可能性により、個別の治療に適した角度、強度及び波長が得られるように特定の身体サイズと体重に合わせて構成することができる。
【0134】
赤外線は、痔疾治療から皮膚治療まで多数の医療用途に利用されている。広帯域赤外線源で現在行われている赤外線療法の一例は、赤外線凝固治療と呼ばれている。更に、糖尿病性末梢神経障害は、赤外線ランプ処置で治療されることがある。テニス肘や他の類似の病気は、現在、やはり広帯域赤外線ランプで治療されることが多い。本発明の特定波長の放射を生成する能力とパルス照射を生成する能力を組み込むことにより、これらの治療を実質的に改善することができる。また、患者の寛容度と快適さを高めることができる。本発明は、また、本質的に安全な電圧で電力供給することができる医療機器の製造を容易にする。
【0135】
照射エネルギーのパルス化は、多くの医療用途と関連した重要な点であることが分かるであろう。連続照射は組織を過熱させる可能性があるが、パルス照射は、過熱、不快又は組織破損といった有害作用なしに十分な刺激を提供することが分かるであろう。マイクロ秒又はもっと速いターンオン時間により極めて高速で素子/アレイをパルス駆動できることは、別の有用な特性を提供する。アレイが極めて短いデューティサイクルで活動化される場合は、アレイの破損なしに極めて高い強度の放射パルスが可能になると予想され、これは、そのような短いパルス時間では半導体接合の過熱が起こる時間がないからである。これにより瞬間強度の合計が大きくなり、より多くの組織内への浸透を促進することができる。
【0136】
また、パルス化が行われる周波数が重要であることが分かるであろう。文献では、人間に対する特定の周波数の照射が、治癒効果或いは有害な効果を有することが知られている。例えば、可視光の特定の振幅変調周波数又は周波数の組み合わせは、人間に吐き気を引き起こす場合があり、更に他の振幅変調周波数又は周波数の組み合わせは、てんかん性発作を引き起こす場合がある。更に医学研究が進むにつれて、実際には、特定波長又は波長の組み合わせと共にパルス周波数、波形又は周波数の組み合わせが、様々な放射線治療の成功に極めて大きな影響があることが分かった。本発明を利用する治療モダリティの多くは、本発明を研究者や開業医が利用できなかったのでまだ理解もしていないし、気が付いてもいない可能性が高い。
【0137】
本発明の別の用途は、食品の調理加工又は演出にある。人間の歴史全体を通して、食品の調理に極めて広範囲の異なるタイプのオーブンや加熱システムが使用されてきたことは確かである。そのようなオーブンや加熱システムのほとんどは周知なので、そのようなオーブンと加熱システム全体について説明することは本特許出願の範囲外である。とりわけ非赤外線/非熱源の料理技術を利用する電子レンジ調理を除いて、実質的に全ての他の料理技術は、様々なタイプの広帯域発熱源を利用する。そのようなオーブンに使用される赤外線加熱源及び要素は広帯域源である。そのような加熱源には、特定の調理状況又は調理製品に最も有利な特定波長の赤外線エネルギーを生成する能力がない。
【0138】
他の材料について前述したように、植物性及び動物性食品には固有の吸収スペクトル曲線がある。そのような固有の吸収曲線は、固有の波長での特定の食品の吸収性と透過性に関係する。対象食品に照射する特定の波長又はいくつかの慎重に選択した波長を選択することによって、望みの調理特徴を修正したり最適化したりすることができる。放射エネルギーを最も効率的に使用すると、加熱又は調理コストを削減することができる。
【0139】
例えば、特定の食品の外側面を加熱したり焦げ目を作ったりしたい場合、本発明は、その特定の食品が極めて高い吸収率を有する波長の選択を可能にする。その結果、選択された波長の放射線が照射されたとき、赤外線エネルギーは全て、表面の極めて近くで吸収され、従って表面だけに望みの加熱及び/又は焦げ目付け処理が行われる。この逆に、表面を加熱するのではなく食品内部の極めて深くから食品を調理したい場合は、望みの調理結果が得られるように特定の食品の透過率が高くなる一波長又は特定波長の組み合わせを選択することができる。従って、放射エネルギーは、望みの深さに浸透するときに徐々に吸収される。
【0140】
電磁波が非金属材料中を移動する場合、この波の強度I(t)は、以下の式で示されるように移動距離tの関数として減少することに注意されたい。
【0141】
I(t)=I0(e−αt)
【0142】
この式では、I0はビームの初期強度であり、αはその材料の比吸光係数である。時間tが大きくなるとき、ビームの強度は、最初のビーム内の放射エネルギーがホスト材料に吸収されることにより生じる指数関数的減衰を受ける。この理由で、最適な調理結果を達成するために赤外線加熱を使用すると、食品の厚さ、加える赤外線強度、照射波長、及び材料吸収率の間に複雑な相互作用が起こる。
【0143】
異なる波長の放射線を照射するRED素子を組み合わせることによって、調理結果を更に最適化することができる。そのような多波長アレイ内では、放射エネルギーの吸収が低く従って熱を深く浸透させることができる波長の第1の素子タイプが選択される。放射エネルギーの吸収が大きく従って表面の加熱が促進される第2の素子タイプが選択される。アレイを完成させるには、これらの2つの両極端の吸収率の中間の波長の第3のRED素子タイプが選択される考えられる。そのようなアレイに含まれる3種類のRED放射源の相対的放射出力レベルを制御することによって、調理する食品の重要な特性を最適化することができる。
【0144】
制御システムに色センサ、温度センサ、及び場合によっては視覚センサを接続することによって閉ループを形成し、望みの調理結果を更に最適化することができる。そのような環境下では、対象となる可能性のある正確なパラメータを確認し、制御システムは最も望ましい適切な波長、強度及び方向で照射を行うことでそれに応答することができる。視覚センサを利用し組み込むことによって、調理している食品の位置とサイズを実際に見て、それに従って前述のようにオーブンの出力を最適化することができる。水分センサとの組み合わせで使用されるときは、その組み合わせに応じて望みの水分を維持することができる。したがって、本発明が、適切なセンサとコントローラの「知能」との組み合わせで将来のスマートオーブンをどの様に実現できるかを理解することができる。当然ながら、本発明を対流式オーブンや電子レンジの機能を含む従来の調理技術と組み合わせて、そのような技術の最良の組合せを得ることができる。本発明の技術を従来の調理技術と共に最適化するようにスマート制御システムを設計することができる。
【0145】
また、ある食品に吸収され別の食品にはあまり吸収されない波長を選択することによって、食品の盛り合わせに行われる加熱の量を細かく選択することができる。従って、選択可能な様々な波長の組み合わせ及び強度を変化させることによって、種々の具体的に設計された調理結果を得られることが分かる。
【0146】
本発明のどの応用例の場合も、様々なレンズ又はビームガイド装置を使用して照射エネルギーを望みの方向に導くことができる。これは、個別にレンズが付けられたRED素子から素子に接近して取付けられたマイクロレンズアレイまで、一連の様々な実施態様の形をとることができる。選択されたビームガイド装置は、案内又は導かれる放射線の波長で機能するように適切に選択されなければならない。回折、屈折及び反射についてよく理解された技術を利用することによって、エネルギーをRED素子のアレイの様々な部分から望みの方向に導くことができる。通電した特定の素子をプログラム可能に制御し、その強度を変調することによって広範囲の照射選択性を得ることができる。定常状態又はパルスモードを選択し、また更にどの素子をいつパルス化するかをプログラミングすることによって、機能を更に高めることができる。
【0147】
この開示は、主に1.0〜3.5マイクロメートルの範囲の放射エネルギーの印加について述べているが、当業者には、赤外線のより長い波長や可視光領域までのもっと短い波長を含む他の動作波長で類似の材料加熱効果を得ることができることは明らかなはずである。開示した発明の精神は、放射源が可視光から長赤外線まで動作可能と考えられる放射加熱のために電子から光子に直接変換する固体放射源の応用例を含む。特定のタイプの用途には、中赤外線範囲以外の他の波長の放射線を照射する他の波長選択可能な素子を本発明に組み込むことが望ましい場合がある。
【0148】
図8は、単一のRED部品10の説明図を示す。RED10はスタック20を含む。スタック20は、図1〜図7と関連して示した半導体層スタックなどの様々な構成をとることができる。少なくとも一形態において、RED10のコンタクト40(例えば、コンタクト1105、1205及び1305に対応する)は、ワイヤ80によってスタック20に接続されている。ボンディングワイヤ80とスタック20を介して電流60が流されるとき、スタック20の構成と一致する固有エネルギー又は波長を有する光子70が放射される。
【0149】
LEDを製造する際に学んだ半導体の智恵の多くをREDに適用できるので、新しいRED素子の発展を支援する類似点に言及することは有用である。LEDのエネルギー変換効率(光エネルギー出力/電気エネルギー入力)の大幅な改善は、LEDが一般市場に導入されるまで何年にもわたって行われてきた。スペクトルの可視光部分と近赤外線部分で動作する市販のLEDで10%を超えるエネルギー変換効率が達成された。本発明は、様々な加熱システム内の主赤外線加熱要素として1マイクロメートル〜3.5マイクロメートルの範囲内のどこかで動作する新しいREDの使用を意図している。本出願は、ブロー成形システムの特定の実施態様を示す。
【0150】
図9と図10は、厚さ10ミルのPETの断面内で透過する赤外線エネルギーの相対的な割合を波長の関数として示している。石英透過範囲内(3.5マイクロメートル以内)で、2.3マイクロメートル、2.8マイクロメートル、及び3.4マイクロメートルを含む幾つかの波長において、強い吸収帯(透過がほとんどない波長帯域)があることが明らかである。本発明と関連した基本的な概念は、ブロー成形機の熱的状態調節セクション内の基本的な加熱要素として1マイクロメートル〜3.5マイクロメートル内の特定の波長で動作するように設計され選択されたRED要素を使用することである。
【0151】
図11a、図11b、及び図11cは、適切なREDヒータ要素100内に一緒にパッケージ化された個別のRED放射源10の例示的な集合を示す。本発明のこの実施形態では、RED10は、Nドープ領域が陰極バス120に直接取り付けられるように物理的に取り付けられている。陰極バス120は、理想的には銅や金等の材料で製造され、これらは両方とも熱と電気の良導体である。RED10の対応する領域は、ボンドワイヤ80を介して陽極バス110に接続されている。理想的には、陽極バスは、陰極バスと同じ熱特性と電気特性を有する。RED10内に電流(I)を流す2本のバスバーの両端に外部から入力電圧が生成され、その結果、170で示したような赤外線光子又は放射エネルギーの放射が起こる。好ましい実施形態では、放射エネルギーをREDヒータ要素100から望ましい方向に導くためにリフレクタ130が使用される。RED10の物理的大きさが小さいので、放射される放射エネルギー170を望ましい方向に容易に導くことができる。この説明は、より大きなコイルフィラメントの場合に比較のために適用される。放射源の物理的サイズと、生じた放射フラックスを従来のレンズ手段を使用して導く能力との関係は当該技術分野で周知である。
【0152】
赤外線エネルギー170を生成するプロセスで生じる廃熱をREDヒータ要素100から放出するためにヒートシンク140が使用される。ヒートシンク140は、産業界で既知の様々な手段を使用して実施することができる。これらの手段には、受動放熱、対流空気冷却を使用する能動放熱、水又は液体冷却を使用する能動放熱がある。例えば、液体ジャケットによる液体冷却は、放射光子に変換されなかった大量の電気エネルギーから生成されるかなりの量の熱を放出できるという利点を有する。この熱は、液体媒体によって屋外場所或いは熱が必要とされる別の領域に伝えることができる。熱が工場の外又は別の場所に放出される場合は、空調/冷房エネルギーを実質的に減少させることができる。
【0153】
更に、本発明のこの実施形態では、必要に応じてバルブ150が使用される。ここで利用されるバルブ150の主な機能は、RED10とボンディングワイア80の破損を防ぐことである。バルブ150は、可視光から3.5マイクロメートルにわたる透過範囲を有する石英で作成されることが好ましい。しかしながら、RED10の動作波長を超える透過範囲を有するガラスなどの他の光学材料も使用することができる。
【0154】
図12aと図12bに、ブロー成型機内のREDヒータ要素100の一配置を示す。このシステムでは、プリフォーム240は、移送システム220によって熱監視調節システム210に入る。少し前に射出成形されたプリフォーム240は、室温で熱監視調節システム210に入る。或いは、プリフォーム240は、単段射出成形/ブロー成形システムで行われるように射出成形工程から直接来る。代替として、プリフォームは、幾つかの他のプロセスのうちの1つのプロセスによって作成されてもよい。このようなプリフォームの製造形態やタイミングにかかわらず、このセクションに入る時、プリフォーム240は、内部に様々な量の潜熱を含むことになる。
【0155】
移送システム220によって送られた後で、プリフォーム240は、コンベヤ250によって熱監視調節システム210を通して移送される。そのようなコンベヤは産業内で周知である。プリフォーム240は、熱監視調節システム210内を移動するとき、一連のREDヒータ要素100から放射された放射赤外線エネルギー170が当てられる。そのようなREDヒータ要素100から放射される赤外線エネルギー170は、ブロー成形システム230に向かうプリフォーム240によって直接吸収される。供給又は駆動電流及び/又は他の設計目標に応じて、エネルギーが連続的なものとされたりパルス化されたりすることを理解されたい。制御システム280のような制御システムは、一形態で、この機能を制御する。所望により、制御システムは、システムを推奨定常状態電流レベルより実質的に高い電流レベルでパルス動作させてパルス動作における瞬間放射強度を高くし、また関連センサ機能からの入力信号に応じてパルス動作のタイミングを決定するように動作する。
【0156】
本発明により示された方法と手段を使用するブロー成型機の好ましい実施形態では、対流冷却システム260が使用されることも好ましい。このシステムは、処理中にプリフォーム240の近くの空気と機構から廃熱を除去する。これを行うために伝導冷却装置を使用することもできる。プリフォームを対流及び/又は伝導によって加熱することは、全体的な熱的状態調節プロセスに有害であることが当該技術分野で知られている。これは、PETは熱伝導性が極めて低く、プリフォームの外周部が加熱されると、加熱が不均一になり、中心の温度が低すぎ且つ表皮の温度が高すぎるからである。
【0157】
また、好ましいシステム実施形態には、温度センサ270(単一箇所温度測定センサで可能な様相(aspect)を超える少なくとも1つの様相で目標物を監視することができるインテリジェントセンサ又はカメラの形をとることができる)と温度制御システム280が含まれる。好ましいブロー成形機設計のそのような様相は、特に、一段ブロー成形システムの特性に適用可能である。一段ブロー成形システムでは、プリフォーム240は、射出成形段で得られた潜熱エネルギーを含んだ状態で熱監視調節システム210に入る。温度を監視しそれにより到来するプリフォーム240(又は、そのプリフォームの特定の小区分)の熱含有量を監視することによって、温度監視制御システム280は、プリフォーム固有(又は、小区分固有)の加熱条件を生成し、次にその条件を駆動信号の形で個別のREDヒータ要素100に伝えることができる。RED放射源10の固体の性質及び関連する高速応答時間は、特に、電気供給電流又はオン時間を時間又はプリフォームの動きの関数として変調するのに適している。また、REDアレイの小区分を制御してもよいことを理解されよう。
【0158】
そのような出力制御を行うために使用される温度制御システム280は、産業用PC、特別注文の埋め込みロジック、又は産業用プログラマブルロジックコントローラ(PLC)として実施することができ、これら3つ全ての性質と動作は産業内で周知である。280として示したような制御システムは、本明細書内の目的を果たす様々な形で構成することができる。しかしながら、幾つかの例として、システムは、REDアレイ内において各波長ごとに作動される素子のオン/オフ状態、電流の流れ、及び位置を制御することができる。
【0159】
図13〜図16は本発明による方法を示す。これらの方法が、適切なソフトウェアとハードウェアの組み合わせ及び技術を使用して実施できることをを理解されたい。例えば、上記のハードウェア要素は、温度制御システム280に記憶され実行されるソフトウェアルーチンによって制御される。
【0160】
次に図13を参照すると、熱可塑性プリフォームを熱処理する好ましい方法300を示し、動作の基本的ステップを概略的に示す。プリフォーム240は、温度監視制御システム210内をコンベヤ250によって移送される(段階305)。当然ながら、移送を示す全ての実施形態では、放射線に晒されるために物品を位置決めする単純な手段(移送があってもなくてもよい)を使用できることを理解されたい。プリフォーム240は、熱監視調節システム210に含まれるREDヒータ要素100を使用して照射される(段階310)。熱監視調節システム210内の空気及び機械部品からの廃熱を除去するために、対流冷却システム260が使用される(段階315)。
【0161】
図14に、熱可塑性プリフォームを処理する別の方法301を概略的に示す。方法301では、REDヒータ要素100を使用してプリフォーム240を照射する工程(段階310)が、段階320と置き換えられている。方法301の段階320で、プリフォーム240は、熱監視調節システム210内の移動と同期してパルス照射される。この同期したパルス照射は、プリフォームに最も近いRED素子だけが所定の瞬間に通電されるので、エネルギー効率を実質的に高める。一形態では、パルスエネルギーの最大出力は、個々の目標物の移動と同期してタイミングが決められる。
【0162】
図15に、熱可塑性プリフォームを処理する更に別の方法302を概略的に示す。この方法302では、到来するプリフォーム240の温度が、温度センサ270を使用して測定される。これは、システムに入るときにプリフォーム240の潜熱エネルギーを推測するために行われる(段階325)。次に、プリフォーム240は、熱監視調節システム210内をコンベヤ250によって移送される(段階305)。温度制御システム280は温度センサ270から提供される温度情報を使用して、REDヒータ要素100に印加される好ましい制御信号を生成する(段階330)。次に、好ましい制御信号は、温度制御システム280からREDヒータ要素100に伝えられる(段階335)。次に、プリフォーム240は、熱監視調節システム210に含まれるREDヒータ要素100を使用して照射される(段階310)。次に、対流冷却システム260を使用して、熱監視調節システム210内の空気と機械部品から廃熱を除去する(段階315)。
【0163】
図16に、熱可塑性プリフォームを処理する別の方法303を概略的に示す。方法303では、REDヒータ要素100を使用してプリフォーム240を照射するプロセス段階310が、段階320と置き換えられている。方法303の段階320で、プリフォーム240は、熱監視調節システム210内の動きと同期してパルス照射される。
【0164】
以上の説明は、単に本発明の特定の実施形態の開示を提供しており、本発明をこの特定の実施形態に限定するためのものではない。従って、本発明は、前述の用途又は実施形態のみに限定されない。本明細書では、本発明の多くの応用例を概略的述べ、1つの応用例の実施形態を詳細に述べた。当業者であれば、本発明の範囲以内にある代替応用例と特定の実施形態を考え得ることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の一実施形態で実施された例示的な半導体素子の一部分の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態で実施された例示的な半導体素子の緩衝層の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態で実施された例示的な半導体素子の量子ドット層の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態で実施された量子ドット層を含む放射線放射ダイオードの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態で実施された量子ドット層を含む放射線放射ダイオードの断面図である。
【図6】本発明の一実施形態で実施された量子ドット層を含む放射線放射ダイオードの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態で実施された量子ドット層を含むレーザダイオードの断面図である。
【図8】単一RED半導体素子の図形表現である。
【図9】厚さ10ミルのPETの断面を透過する赤外線エネルギーの相対比率を波長の関数として示したグラフである。
【図10】厚さ10ミルのPETの断面を透過する赤外線エネルギーの相対比率を波長の関数として示したグラフである。
【図11a】RED加熱要素内に一緒にパッケージ化された個別のRED放射源の代表的な集合体を示す図である。
【図11b】RED加熱要素内に一緒にパッケージ化された個別のRED放射源の代表的な集合体を示す図である。
【図11c】RED加熱要素内に一緒にパッケージ化された個別のRED放射源の代表的な集合体を示す図である。
【図12a】ブロー成形機内のRED加熱要素の好ましい配置を示す図である。
【図12b】ブロー成形機内のRED加熱要素の好ましい配置を示す図である。
【図13】本発明によって示されるようなプリフォームの熱処理の好ましい方法を示す図である。
【図14】本発明による熱可塑性プリフォームの熱処理の代替方法を示す図である。
【図15】本発明による熱可塑性プリフォームの熱処理の代替方法を示す図である。
【図16】本発明による熱可塑性プリフォームの熱処理の代替方法を示す図である。
【図17】動的に移送される部品に有利に適用されるRED加熱要素を示す図である。
【符号の説明】
【0166】
10:RED、20:スタック、40:コンタクト、60:電流、70:光子、80:ボンディングワイヤ。
【背景技術】
【0001】
本発明は、種々の加熱、加工、又は処理のために選択された熱赤外線(IR)波長の放射又はエネルギーを目標物に直接注入することに関する。後述するように、そのような目的には、様々な工業、医学、民生又は商用環境において、物品を加熱し、その温度を上昇させ、又は維持すること、或いは目標とする物品に刺激を与えることが含まれる。本明細書で説明する方法及びシステムは、特に、特定の波長の放射線を照射し或いは放射線をパルス化又は注入する能力を必要とするか或いはその能力から恩恵を受ける動作に適用することができる。本発明は、特に、目標物が高速で移動し且つ非接触の環境にある場合に有利である。本発明は、種々の最終用途のために高度にプログラム可能な、選択された狭い波長帯域の赤外線システムを提供する。本発明は、最も好ましい狭い波長帯域の新しい固体放射線放射素子(RED:radiation emitting device)の巧みに設計されたアレイからなる新しく且つ斬新なタイプの赤外線照射システムを教示する。この固体放射線放射素子の一変形例を本明細書の後の方で具体的に説明する。
【0002】
より具体的には、本発明は、目標物の温度に何らかの方法で影響を及ぼすように目標物に最適波長の赤外線を注入する斬新で効率的な方法を対象とする。幾つかの例を挙げると、赤外線を注入する「目標物」は、製造動作中の個別部品から、材料の連続コイル上の処理領域、調理プロセスにある食品、又は医療環境での患者まで、様々なものである。
【0003】
後述する本発明の特定の実施形態は、詳細にはプラスチックボトルプリフォームの再加熱動作に関連する例であるが、この例に含まれる概念は、多数の他のよく知られたシナリオにも適用される。また、この実施形態は、射出成形動作が連続的に実行され、そのすぐ後でブロー成形動作が実行される単段プラスチックボトルブロー成形動作に適用される。この配置では、例えば、本発明の方法及び装置は、既知の技術よりも優れた同様の利点を有するが、プロセスの再加熱セクションへの入口における初期温度の変動に対処するために異なる検出と制御を使用する。
【0004】
一般に、理想的な赤外線加熱システムは、目標物の温度を最小のエネルギー消費で最適に高める。そのようなシステムは、その電力入力を、目標物に向けられた特定の単一又は狭い帯域の波長を有する放射電磁エネルギー出力に直接変換することができる素子を備え、その結果、放射線に含まれるエネルギーは、部分的又は完全に目標物に吸収され熱に変換される。電気入力が放射電磁出力に変換される効率が高くなるほど、システムが達成できる効率が高くなる。放射電磁波が目標物上の望みの領域だけに向けられて当たる効率が高いほど、システムがその動作を実行する効率が高くなる。使用のために選択された放射線放射素子は、目標物に放射線を照射していないときは入力エネルギーも出力エネルギーも無駄にならないように瞬間的に「オン」なり、瞬間的に「オフ」になる特性を備えていなければならない。放射線に晒された目標物が放射電磁エネルギーを吸収しそれを直接熱に変換する効率が高いほど、システムの動作効率が高くなる。システムを最適にするには、1組のシステム出力波長が目標物の吸収特性と一致するように適切に選択するように注意しなければならない。そのような波長は、多くの場合、様々な材料の様々な吸収特性に最適でまた様々な所望の結果に適合するように、本発明の様々な目標とする用途ごとに別々に選択される。
【0005】
これと対照的に、当該技術及び産業分野では、種々の加工と処置のために一連の様々なタイプの放射加熱システムを使用することは周知である。そのような目的にこれまでに利用できた技術は、比較的広帯域スペクトルの放射電磁エネルギーを生成する。そのような技術は、赤外線加熱、処理又は加工システムと呼ばれることがあるが、実際には、それらの技術は、赤外線スペクトルから外れた放射エネルギーを生成する。
【0006】
スペクトルの赤外線部分は、一般に3つの波長区分に分けられる。それらの区分は、一般に、近赤外線、中赤外線(middle-infrared)及び長赤外線(long-infrared)波長帯域として分類される。これらの一般的な領域については正確な分離点が明確に確立されていないが、一般に、近赤外領域が、可視光線から1.5マイクロメートルの範囲であることは受け入れられている。中赤外線領域は、1.5から5マイクロメートルの範囲である。長赤外線領域は、一般に、5から14マイクロメートルの間及びそれ以上であると考えられている。
【0007】
産業、商業及び医学用の加熱、処理又は加工機器でこれまで使用されてきた赤外線源は、赤外線スペクトルの1区分に限定されることが殆どない広帯域の波長を生成する。その広帯域出力は、赤外線スペクトルの特定範囲内でピークになる場合があるが、その波長は、一般に、隣接する領域に大きく入り込む出力テールを有する。
【0008】
例えば、当技術分野で周知で様々なプロセス加熱動作に使用される石英赤外線加熱ランプは、多くの場合0.8〜1マイクロメートルの範囲にピーク出力を生成する。出力は0.8〜1マイクロメートルにピークがあるが、このランプは、紫外線(UV)から可視光、更に約3.5マイクロメートルの中赤外線まで幅広い連続した波長帯域において大きな出力を有する。石英ランプのピーク出力は近赤外線範囲にあるが、かなり大きな出力が可視光範囲と中赤外線範囲の両方にあることは明らかである。従って、既存の広スペクトルの赤外線源では、任意の所定の加熱、加工又は処理用途に最も望ましい、好ましい波長を選択することはできない。既存の赤外線源は、本質的に広スペクトルの処理又は加工のためのものであり、本発明より前は実際的な代替手段がなかったので広く使用されてきた。多くの目標物の主な温度上昇は、一以上の狭帯域波長の熱赤外線エネルギーの吸収によるものである。従って、広帯域赤外線エネルギー出力の多くは無駄になる。
【0009】
それにもかかわらず、石英赤外線ランプは、産業界で個別部品と連続材料加工産業の両方に広く使用されている。石英ランプからの放射を処理中の目標物に導くのを支援するために、一般に、種々のリフレクタを用いる等の種々の方法が使用されている。どの様にしてエネルギーが目標物上に集められるかに関係なく、一般に石英ランプは連続的に通電される。このことは、処理中の目標物が連続的に生産される物品か個別部品かに関係なく当てはまる。この理由は、主に、典型的には通常約数秒である石英ランプの比較的遅い熱応答時間によるものである。
【0010】
エネルギー注入を改善することが特に必要な分野はブロー成形動作である。より具体的には、プラスチックボトル延伸ブロー成形システムは、延伸ブロー成形動作前にプリフォームの熱的状態を制御する。このプロセスの一様相は、当該技術分野で再加熱動作として知られている。再加熱動作では、射出成形又は圧縮成形プロセスで形成されたプリフォームが室温に温度的に安定化される。その後で、プリフォームは延伸ブロー成形システムに送り込まれ、その初期段階で、プリフォームは、熱可塑性プリフォーム材料が後のブロー成形動作に最適な温度まで加熱される。この状態は、プリフォームが、成型機のブロー成形セクションに至る経路に沿って加熱セクション内を移送される間に作られる。ブロー成形セクションでは、プリフォームは、最初に機械的に引き伸ばされ、次に大容量のベッセル又は容器内に吹き込まれる。
【0011】
ブロー成形動作を使用して製造された完成品のコストの大部分は、エネルギー消費コストが占める。より具体的には、延伸ブロー成形機の再加熱セクションでポリエチレンテレフタレート(PET)のプリフォームを周囲温度から105℃まで加熱、即ち熱的状態を調節するために従来技術で必要とされたエネルギー量はかなり多い。製造を効率的に行う如何なる方法においても、延伸ブロー成形システムの熱的状態調節セクションの動作と関連したエネルギー消費率を少なくすることは、経済性と環境の両方の観点から有利であることが明らかであろう。
【0012】
米国特許第5,322,651号は、熱可塑性プリフォームを熱処理する方法の改善について述べている。この特許では、プラスチックプリフォームの熱処理に広帯域赤外線(IR)放射加熱を使用する従来の方法が述べられている。この特許から文章を引用すると、「対流や伝導などの他の加熱方法又は熱処理方法と比較し、また材料の低い熱伝導率を考慮すると、赤外線を使用する加熱は、有利な出力を提供し、高い生産速度を可能にする。」
【0013】
この特許に述べられている従来技術に対する特定の改善は、プリフォームの赤外線加熱中に放射される過剰エネルギーを管理する方法に関するものである。詳細には、この特許自体は、加熱プロセス中に放射され、最終的に(プリフォーム以外の場所での吸収、伝導、及び対流により)移送されるプリフォームの周りの炉容積内の空気の温度を高めるエネルギーに関するものである。高温の空気流によって生じるプリフォームの対流加熱は、プリフォームを不均一に加熱することが分かっており、したがって製造動作に悪影響を及ぼす。特許第5,322,651号は、赤外線加熱動作中のプリフォームの周りの空気流の意図しない加熱の影響を打ち消す方法について述べている。
【0014】
従来技術の赤外線加熱要素及びシステムから目標とするプリフォームへの熱エネルギーの移動は、完全に効率的なプロセスでないことは予想できる。プリフォームの熱的状態を調節するのに消費されるエネルギーの100%が、プリフォームの体積内で熱エネルギーの形になるのが理想的である。前述の参考特許には具体的に言及されていないが、この現在の最新技術のブロー成形機の典型的な変換効率値(移送されるプリフォーム内へ供給されるエネルギー/赤外線加熱要素が消費するエネルギー)は5%〜10%の範囲である。プリフォームの赤外線加熱と関連し変換効率値を改善する方法又は手段の改善はいずれも極めて有利であり、伸張ブロー成形機のユーザにエネルギーコストの大幅な削減を提供する。
【0015】
現在の最新技術のブロー成形機に使用される赤外線加熱要素及びシステムのエネルギー変換効率性能は多くの要因によって決まる。上記したように、PETプリフォーム等の従来の熱可塑性プリフォームが、約105℃の温度に加熱される。これは、通常、最新のブロー成形機では市販の広帯域石英赤外線ランプを使用して達成される。高速/大量生産装置では、そのようなランプは、ワット数の大きなバルブから成る大型のバンクの形態をとる。全てのバンクの石英ランプの合成エネルギー流は、最も高速の装置では数百キロワットに達する極めて大きな電流になる。加熱システム全体のエネルギー変換効率性能に影響を及ぼすこれらのタイプの赤外線加熱要素と関連した2つの因子は、ランプフィラメントの色温度とフィラメントバルブの光透過特性である。
【0016】
現在の最新技術のブロー成形機の熱的状態調節サブシステムの全体的なエネルギー変換性能に大きな影響を及ぼす別の因子は、加熱要素から放出された赤外線をシステム内を移送されているプリフォームの体積内に導くために使用されるフラックス制御又はレンズ手段である。最新のブロー成形機では、石英ランプから放出された赤外線フラックスをプリフォームの体積内に導く幾つかの手段が配置されている。詳細には、金属化リフレクタは、そのようなシステムで無駄になる放射赤外線の量を減少させるために適切な働きをする。
【0017】
赤外線加熱サブシステムのエネルギー変換効率性能に影響を及ぼす別の因子は、通常静的な赤外線加熱要素への入力エネルギーが、加熱システム内を移送されているプリフォームの動きとどの程度同期されるかである。より具体的には、システム内のプリフォームの連続的な移送によってプリフォームがヒータのすぐ近くにないときでも静的な赤外線加熱要素が一定量の入力エネルギーを連続的に消費する場合は、システムのエネルギー変換効率性能が最適化されないことは明らかである。実際には、商用石英ランプの物理的応答時間が遅く、また最新技術のブロー成形機のプリフォーム移送速度が比較的高速なので、ランプ入力電力を個別部品の動きと同期させるようにランプ入力電力を上手く変調し、それにより全体的なエネルギー変換効率性能を改善するいかなる試みも妨げられる。
【0018】
米国特許第5,925,710号、第6,022,920号、及び第6,503,586 B1号は全て、赤外線ランプから放射され、ブロー成形工程で使用される移送中のプリフォームによって吸収されるエネルギーの割合を高める類似の方法を述べている。これらの特許は全て、赤外線加熱要素として石英ランプを使用する最新技術の再加熱ブロー成形機での一般的な方法について様々な詳しさで述べている。再加熱ブロー成形工程では、予め射出成形され室温に安定化されたプリフォームは、ブロー成形動作の直前にブロー温度に再加熱される。以上のこれらの参考特許は、伝導手段又は対流手段ではなく赤外線吸収を使用して、一般には重合体、詳細にはPETをより効率的に加熱する方法について述べている。これらの特許は、PETの測定した吸収係数を波長の関数として図で表している。PETでは、主に1.6マイクロメートルを超える赤外線波長帯域で多数の強い分子吸収帯が生じる。石英ランプは、広いスペクトル全体にわたる放射線を放出することが知られており、正確な放射スペクトルは、プランクの法則によって定義されるようにフィラメント温度によって決定される。
【0019】
既存の最新技術のブロー成形機で使用されるとき、石英ランプは、約3000°Kのフィラメント温度で動作する。この温度では、ランプは、約0.8マイクロメートルにピーク放射を有する。しかしながら、当該技術分野で知られているように、この放射は黒体型放射なので、石英フィラメントは、X線から長赤外線まで連続スペクトルのエネルギーを放射する。30000°Kでは、放射は可視光領域で立ち上がり、0.8マイクロメートルでピークになり、約1.6マイクロメートルから始まるPETの吸収度が大きくなる領域と重なり始めるときに徐々に減少する。
【0020】
これらのどの特許でも述べられていないことは、石英バルブがランプの放射スペクトルに及ぼす影響である。商用石英ランプのバルブの製造に使用される石英材料は、約3.5マイクロメートルの透過上限を有する。この波長を超えると、密閉されたフィラメントから放射されたエネルギーの大部分は、フィラメントを取り囲む石英ガラスシースによって吸収され、従ってプリフォームの加熱に直接利用されない。
【0021】
以上概略的に述べた理由のために、石英ランプを使ってPETプリフォームをブロー成形温度に再加熱する既存の最新技術のブロー成形機では、吸収加熱は、1マイクロメートル〜3.5マイクロメートルの範囲で行われる。以上参照した特許群(第5,925,710号、第6,022,920号、及び第6,503,586 B1号)はすべて、プリフォームの固有吸収特性を変化させ、それにより再加熱プロセスの全体的なエネルギー変換効率性能を改善する様々な方法と手段を述べている。これらの全ての特許においては、専用の添加物を、混合物の吸収率を高めるだけのためにPETプリフォームの原料に加えることが記載されている。これらの記載された方法と手段は、約0.8マイクロメートル〜3.5マイクロメートルの近赤外線範囲で材料の光吸収特性を実現するように設計されている。容器の製造コストを削減するのに極めて有効なプリフォームの吸収特性の変更は、再加熱プロセスの全体的なエネルギー変換効率性能を高める実行可能な手段であるが、完成容器の外観に悪影響も及ぼす。容器の光学的透明度の低下は、しばしば容器の曇りと呼ばれ、そのため、この一般的な手法は、この製造上の問題に対しての最適な解決策ではない。
【0022】
米国特許第5,206,039号は、プリフォームを調整すると共にプロセスの射出段からブロー成形段に移送する改善された手段を含む単段射出成形/ブロー成形システムについて述べている。この特許では、熱可塑性材料の熱的状態を調節するプロセスにそれぞれ大量のエネルギーを加える射出成形機とブロー成形機を独立に運転することは無駄であると述べている。この特許は、単段製造プロセスを使用することによって全体的なエネルギー消費率と製造コストが両方とも減少すると教示している。このエネルギー消費の減少は、主に、ブロー成形動作を可能にするために必要な熱エネルギーのほとんどが、射出成形段の後でプリフォームによって保持されていることによるものである。より具体的には、’039特許で述べられているような単段プロセスでは、射出成形プロセスの後でプリフォームは室温に安定化されない。即ち、プリフォームは、射出成形段から熱的状態調節セクションに直接移行し、次にブロー成形セクションに移動する。
【0023】
’039特許で述べられている熱的状態調節セクションは、少量の熱エネルギーを加えるだけでなく、プリフォームを制御された安定化期間に置くことができる特性を有する。これは、プリフォームをブロー成形温度に加熱するために大量のエネルギーが必要な再加熱ブロー成形機の2段プロセスの熱的状態調節セクションの要件と異なる。単段射出成形機/ブロー成形機の動作は当該技術分野で既知であるが、これらの成型機の完成容器の品質問題は解消されていない。そのような品質問題は、プリフォームの流れがブロー成形段に入るときのプリフォーム間の温度差と関連している。’039特許で述べられている進歩にもかかわらず、従来技術の赤外線加熱及び温度検出手段及び方法を使用すると、プリフォームを射出成形工程から取り出したすぐ後でプリフォームの熱的状態を調節する工程は、あいかわらずブロー成形段に入るプリフォームの熱含有量を変化させることになる。入るプリフォームの熱含有量が変化すると、完成容器の特性と品質が変化する。プリフォームごとに赤外線加熱プロセスを特別に調整することは非効率なので、製造業者は、必要な品質レベルを実現するために再加熱ブロー成形方法を使用することを選択することになる。このため、最も高品質な生産用途については、産業界は相変わらず再加熱方法に依存している。また、プリフォームがしばしば商用コンバータによって製造され、容器をブローし充填する最終ユーザに販売されるので、再熱工程は引き続き一般的に使用されている。
【0024】
操業コストと製品品質の両方の観点からは、ブロー成形機の赤外線加熱セクションの効率及び/又は機能を全体的に改善できる可能性があることは明らかに有利である。最新技術の赤外線加熱サブシステムを改善する幾つかの試みがなされてきたが、明らかに不備な点も残っている。斬新な赤外線加熱要素及び方法の導入により、これらの不備を解消することが本発明の意図である。
【0025】
固体エレクトロニクス分野では、固体放射源(solid-state emitter)又はLEDは当技術分野で周知である。この種の光子又はフラックス放射源は、市販されており、紫外線(UV)から近赤外線まで様々な波長で動作することが知られている。LEDは、適切にNドープされPドープされた半導体で構成される。同じ材料のNドープ領域と直接接して配置されたPドープ領域を含むように適切に処理された半導体は、ダイオードの総称が与えられている。ダイオードは、当技術分野でよく知られているように、多くの重要な電気特性と光電子特性を有する。例えば、当該技術分野では、形成された半導体ダイオードのNドープ領域とPドープ領域の間の物理界面には、材料中に固有バンドギャップが存在することが周知である。このバンドギャップは、N領域の伝導帯内にある電子のエネルギー準位とこれより低い有効なP領域軌道内の電子のエネルギー準位との差に関係するものである。電子がPN接合を越えて流されるとき、N領域伝導軌道からそれより低いP領域軌道への電子エネルギー準位の遷移が起こり始め、そのような電子遷移ごとに光子の放射が生じる。正確なエネルギー準位、或いは放射される光子の波長は、流される電子のエネルギーの低下に対応する。
【0026】
要するに、LEDは、電流を光子に直接変換する放射源として動作する。フィラメントや他の黒体型放射源と違って、出力光子を取り出す前に入力エネルギーを中間形態の熱に変換する必要はない。この電流から光子に直接変換する挙動のために、LEDは、極めて高速で動作する特性を有する。LEDは、極めて高いパルスレートのUV、可視光、及び/又は近赤外線光の生成を必要とする多くの用途でこれまで使用されてきた。LEDの高いパルスレート特性が特に有用であった1つの特定の用途は、自動化された個別部品視覚検知用途である。この用途では、レンズ集束像を形成するために可視光又は近赤外線が使用され、その像が次にコンピュータで検査される。
【0027】
フィラメントを利用する光源と違い、LEDは、使用されている半導体材料の特定のバンドギャップに対応する比較的限定された波長範囲で発光する。LEDのこの特性は、特に、部品照明、状態表示、光通信等の波長選択動作が必要な用途に有用であった。最近になって、より大型の可視照明や、自動車テールランプや交通信号灯などの信号ランプにも、大きなLEDのクラスタが使用されるようになった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、波長の選択性が極めて高くまた従来利用できなかった全く新しい種類の用途と技術のために赤外線を容易に使用できるようにする少量又は大量の赤外線照射装置を実現する。
【0029】
本発明の目的は、改善された赤外線エネルギー変換効率性能を有する熱赤外線加熱システムを備えたモールド成形或いは他の加工又は処理システムを提供することである。
【0030】
本発明の別の目的は、処理対象、即ち目標とする特定の材料に合わせた赤外線浸透深さ性能を有する赤外線加熱システムを提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、種々の用途に最適になるように選択された狭い波長帯域で赤外線を生成する巧みに設計されたREDの組合せを組み込むことができる熱赤外線システムを提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、パルスモードで駆動することができる赤外線加熱システムを提供することであり、前記パルスモードは、特に、製造プロセス中に移送されるときに個々の製造部品に赤外線熱を提供するか、照射目標物の同期追跡を容易にするように適応される。
【0033】
本発明の別の目的は、金属化したリフレクタ要素によってより適切に赤外線を導くことができる赤外線加熱要素を提供することである。
【0034】
本発明の別の目的は、プリフォーム温度測定システムと共に動作してプリフォーム固有の赤外線加熱性能を提供することができる赤外線加熱システムを提供することである。
【0035】
本発明の別の目的は、電流を光子に直接変換する赤外線固体放射源又は放射線放射ダイオード(RED)のアレイとして製造される赤外線加熱要素を提供することである。
【0036】
本発明の更に別の利点は、極めて特異的な単一又は複数の狭い波長帯域において大きな放射出力を有する赤外線照射システムを提供することである。
【0037】
本発明の更に別の利点は、強力な熱赤外線を生成し、且つ位置、強度、波長、ターンオン/ターンオフ率、方向性、パルス周波数、及び製品追跡のうちの少なくとも1つを極めて柔軟にプログラム可能な機能である。
【0038】
本発明の更に別の利点は、現在の広帯域源に比べて入力エネルギー効率が高い熱エネルギー注入方法を容易に行えるようにすることである。
【0039】
ボトルプリフォームを加熱する際の本発明の更に別の利点は、完成容器の視覚的透明さと外観品質を低下させる添加剤を必要とせずに効率的に加熱する能力を維持することにある。
【0040】
本発明の更に別の目的は、プログラム可能性及びパルス化機能と組み合わせて波長選択的赤外線放出の機能を高めることができる、種々の用途のための汎用放射加熱システムを提供することである。
【0041】
本発明の更に別の利点は、定常状態の強度よりもかなり高い瞬間強度を有する極めて高速で高強度のバーストパルスを容易にする能力である。
【0042】
本発明の更に別の利点は、廃熱を、熱を必要とする別の場所に容易に移すことができ、或いは使用環境外に放出して非目標物の加熱を減少させることができることである。
【0043】
本発明の更に別の利点は、RED素子を高密度でパッケージ化して、これまで実際に達成できなかった固体熱赤外線出力レベルを実現できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
波長特異的な照射を行う利点は、仮定的な放射加熱の例を調べることにより説明することができる。可視光範囲から中赤外線範囲までの電磁放射にほぼ透明な材料が、何らかの製造動作を支援するためにプロセス加熱を必要とすると仮定する。また、このほぼ透明な材料が、3.0〜3.25マイクロメートルに位置付けられる狭いが強い分子吸光帯を有すると仮定する。以上の例は、ここで説明する実施形態を産業界で最も有利に応用できる方法を表す。この特定のプロセス加熱用途のパラメータが、放射加熱技術の使用を必要とする場合、現在の最新技術は、約3000°Kのフィラメント温度で動作する石英ランプの使用を必要とする。このフィラメント温度での基本的な物理計算では、有利なエネルギー吸収が起こる3.0〜3.25マイクロメートルの帯域には、石英ランプの全放射エネルギーの約2.1%しかないという結果となる。この開示で説明するような波長特異的な放射エネルギー出力だけを生成する機能は、種々のプロセス加熱用途の効率を大幅に改善する見込みがある。
【0045】
本発明は、広帯域型素子を置き換えるために特定波長の大量の赤外線を直接出力することができる斬新で新しい手法と直接関連する。
【0046】
半導体加工技術の最近の進歩によって、1マイクロメートル(1,000ナノメートル)を超えるほぼ中赤外線範囲で動作する、電子から光子に直接変換する固体放射源が使用可能になった。これらの固体素子は、一般の発光ダイオード(LED)と似た動作をするが、可視光線を放射するのではなく、それより長い中赤外線波長の真の熱赤外線エネルギーを放射する。そのような素子は、便利で低コストの固体素子の作成を妨げていた障壁を打ち破った量子ドット技術を利用する全く新しい種類の素子であり、電子を光子に直接変換する変換器として働くことができ、その出力は疑似単色で且つ中赤外線波長帯域である。
【0047】
この新しい種類の素子を従来のもっと波長の短い素子(LED)と区別するために、これらの素子は、より適切には放射線放射ダイオード(radiance or radiation emitting diode)(RED)と記述される。この素子は、厳しく限定された波長範囲の放射電磁エネルギーを放射する特性を有する。更に、適切な半導体加工作業によって、REDを、特定の放射処理用途に最も有利な特定の波長で放射線を放射するように調整することができる。
【0048】
更に、目標とする赤外線範囲及び場合によってはそれを超える範囲の光子を生成するための小面積の材料ドット又は量子ドットのランダム分散アレイとして形成された逆極性ドープ領域と接触しているドープ平面領域の形成と関係したRED技術の革新が進んできた。この製造技術或いは新規の半導体化合物の開発等の他の技術を十分に利用することにより、本発明に適した疑似単色の固体中赤外線源が得られる。また、代替の半導体技術は、本発明を実施するために適切な構成要素になる中赤外線と長赤外線の両方で利用可能になる。
【0049】
実施形態における電子(又は電流)の光への直接変換は、作成されたダイオード放射源の固有のバンドギャップ及び量子ドット形状と一致する疑似単色と呼ばれることが多い狭帯域波長範囲内で行われる。RED放射源候補の半値帯域幅は20〜500ナノメートルの範囲内のどこかになると予想される。このタイプの赤外線源の狭い帯域幅は、この完全な開示の内容内で示されるような種々の波長特異的な照射用途を支援するはずである。一群のRED素子及びこれら素子を作成する技術は、別の特許出願の主題であり、その出願は、2004年11月16日に出願され「Quantum Dot Semiconductor Device」と題し発明者としてSamar SinharoyとDave Wiltの名前が記載された米国特許出願番号60/628,330号(代理人整理番号:ERI.P.US0002;エクスプレスメールラベル番号EL726091609 US)であり、この出願は、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用される。
【0050】
この出願「Quantum Dot Semiconductor Device」により、半導体素子は当該技術分野で既知である。これらの素子は、電磁放射を電気に変換する光電池で使用される。またこれらの素子は、電気エネルギーを電磁放射(例えば、光)に変換する発光ダイオード(LED)として使用することもできる。ほとんどの半導体用途では、所望のバンドギャップ(電子ボルト)又は所望の波長(ミクロン)が目標とされ、半導体は、その所望のバンドギャップ範囲又は波長範囲に対応できるように作成される。
【0051】
特定の波長の放射又は電子ボルトのエネルギーを達成する能力が重要でないわけではない。実際には、半導体は、特定の材料、そのエネルギーギャプ、その格子定数、及びその固有の放射性能によって限定される。目的に応じて半導体素子を作成するために使用される1つの技術は、二元性化合物又は三元性化合物を使用することである。素子の組成特徴を変化させることにより、技術的に有用な素子が巧みに設計された。
【0052】
また、半導体素子の設計を操作して、素子の挙動を目的に合わせて調整することができる。一例において、半導体素子内に量子ドットを含めることができる。そのようなドットは、キャリアを量子的に閉じ込め、それにより同じ半導体のバルクサンプルよりも光子放射エネルギーが変化すると考えられている。例えば、米国特許第6,507,042号は、量子ドット層を有する半導体素子を教示している。具体的には、この特許は、ヒ化インジウムガリウム(InxGa1-xAs)層上に付着されたヒ化インジウム(InAs)の量子ドットを教示している。この特許は、量子ドット(即ち、InAs)とそのドットを付着させた層(即ち、InxGa1-xAs)との格子不整合の量を制御することによって、量子ドットと関連した光子の発光波長を制御できることを開示している。この特許はまた、InxGa1-xAs基板内のインジウムのレベルを変化させることによって、InxGa1-xAs基板とInAs量子ドットとの格子不整合を制御できるという事実を開示している。InxGa1-xAs基板内のインジウムの量を増やすほど、不整合の度合いが小さくなり、光子放射と関連した波長が長くなる(即ち、エネルギーギャプが小さくなる)。実際には、この特許は、基板内のインジウムの量を約10%〜約20%に高めることにより、関連した光子の波長を約1.1μm〜約1.3μmに長くできることを開示している。
【0053】
米国特許第6,507,042号に開示されている技術は、約1.3μmの波長を有する光子を放射又は吸収することができる素子を提供する際に役立つことが分かっているが、InxGa1-xAs基板内のインジウムの量を高める能力は限られている。換言すると、インジウムのレベルが20%、30%、或いは40%より多くなると、結晶構造内の不完全又は欠陥の程度は限定的になる。これは、特に、InxGa1-xAs基板がヒ化ガリウム(GaAs)基板又はウェーハ上に付着された場合に当てはまる。従って、米国特許第6,507,042号に開示された技術を利用しても、もっと長い波長の光子を放射又は吸収する素子(低いエネルギーギャプ)を実現することはできない。
【0054】
従って、1.3μmより長い波長の光子を放射又は吸収する半導体素子が有することが望ましいので、この特性の半導体素子は相変わらず必要とされている。
【0055】
一般に、REDは、InxGa1-xAs層(xは、約0.64〜約0.72重量パーセントのインジウムのモル分率である)と、前記InxGa1-xAs層上に配置された量子ドット(量子ドットは、InAs又はAlzIn1-zAsから成り、zは、約5重量パーセント未満のアルミニウムのモル分率である)を含む半導体素子を提供する。
【0056】
本発明は、また、InAs又はAIzIn1-zAsから成る量子ドット(zは、約5重量パーセント未満のアルミニウムのモル分率)と、量子ドットの少なくとも一部分と接触するクラッド層(量子ドットと前記クラッド層の格子定数が、最低1.8%から2.4%未満まで整合しない)とから成る半導体素子を含む。
【0057】
半導体素子は、InxGa1-xAsマトリックスクラッディングと呼ばれることがあるヒ化インジウムガリウム(InxGa1-xAs)層上にヒ化インジウム(InAs)又はヒ化アルミニウムインジウム(AlzIn1-zAs(zは0.05以下))の量子ドットを含む量子ドット層を含む。ドットとInxGa1-xAsマトリクス層の格子定数は整合していない。格子不整合は、少なくとも1.8%、他の実施形態では少なくとも1.9%、他の実施形態では少なくとも2.0%、他の実施形態では少なくとも2.05%である。有利には、不整合は、3.2%未満、他の実施形態では3.0%未満、他の実施形態では2.5%、他の実施形態では2.2%未満とすることができる。一以上の実施形態では、InxGa1-xAsマトリックスクラッディングの格子定数はドットの格子定数より小さい。
【0058】
ドットがInxGa1-xAsクラッディングマトリックス上に配置されたこれらの実施形態では、このクラッディングマトリクス層内のインジウムのモル濃度(即ちx)は、約0.55〜約0.80、所望により約0.65〜約0.75、所望により約0.66〜約0.72でよく、及び所望により約0.67〜約0.70とすることができる。
【0059】
一以上の実施形態では、InxGa1-xAsクラッディングマトリックスは、InxGa1-xAsクラッディングマトリックスと格子整合されたヒ化リンインジウム(InP1-yAsy)層上に配置される。一以上の実施形態では、InxGa1-xAsクラッディングが付着されたInP1-yAsy層は、InxGa1-xAsクラッディングと半導体を支持する基板の間にある複数の段階的(連続的又は離散的)InP1-yAsy層のうちの1層である。一以上の実施形態では、基板は、リン化インジウム(InP)ウェーハから成る。半導体は、また、InxGa1-xAsクラッディングと基板の間に配置されたInxGa1-xAs層等の一以上の他の層を含んでもよい。
【0060】
図1に一実施形態を示す。図1並びに他の図は、概略的表現であり、各層又は構成要素の厚さ或いは各層間の相対的厚さ又は寸法は一定の縮尺で描かれていない。
【0061】
素子1000は、基板1020、任意的に設けられる伝導層1025、緩衝構造1030、クラッド層1040、及びドット層1050を有する。当業者が理解するように、幾つかの半導体素子は、動作して電流を電磁放射に変換するか電磁放射を電流に変換する。そのような素子内の電磁放射又は電流を制御する機能は、当該技術分野で既知である。この開示は、必ずしもそのような従来の設計を変更せず、その設計の多くは、半導体素子を製造又は設計する当該技術分野で既知である。
【0062】
一実施形態では、基板1020は、リン化インジウム(InP)から成る。InP基板1020の厚さは250ミクロン超、他の実施形態では300ミクロン超、他の実施形態では350ミクロン超とすることができる。有利には、この厚さは、700ミクロン未満、他の実施形態では600ミクロン未満、他の実施形態では500ミクロン未満とすることができる。
【0063】
一以上の実施形態では、考えられる半導体素子は、必要に応じて、エピタキシャル成長させたリン化インジウム層(InP)を含んでもよい。このエピタキシャル成長させたリン化インジウム層の厚さは、約10nm〜約1ミクロンとすることができる。
【0064】
一実施形態では、任意的に設けられる伝導層1025は、ヒ化ガリウムインジウム(InxGa1-xAs)から成る。この層内のインジウムのモル濃度(即ち、x)は、約0.51〜約0.55、所望により約0.52〜約0.54、所望により約0.53〜約0.535とすることができる。一以上の実施形態では、伝導層1025は、InP基板と格子整合されている。
【0065】
伝導層1025は、所定の素子に十分な導電率を提供するために所定の値にドープされた適切な厚さのものとすることができる。一以上の実施形態では、この厚さは、約0.05ミクロン〜約2ミクロン、所望により約0.1ミクロン〜約1ミクロンとすることができる。
【0066】
一以上の実施形態では、緩衝層1030は、ヒ化リンインジウム(InP1-yAsy)から成る。ある実施形態では、緩衝層1030は、少なくとも2つ、所望により少なくとも3つ、所望により少なくとも4つ、及び所望により少なくとも5つのInP1-yAsy層から成り、各層の格子定数は、層が基板1020から遠くになるほど高くなる。例えば、また図2に示したように、緩衝構造1030は、第1の緩衝層1032、第2の緩衝層1034、及び第3の緩衝層1036を有する。緩衝構造1030の最下層面1031は基板1020と隣接しており、緩衝構造1030の最上平面1039は障壁層1040に隣接している。第2の層1034の格子定数は第1の層1032より大きく、第3の層1036の格子定数は第2の層1034より大きい。
【0067】
当業者が理解するように、緩衝構造1030の個々の層の格子定数は、連続した層の組成を変化させることによって高めることができる。一以上の実施形態では、InP1-yAsy緩衝層中のヒ素の濃度は、連続したそれぞれの層で高くされる。例えば、第1の緩衝層1032は約0.10〜約0.18のモル分率のヒ素(即ち、y)、第2の緩衝層1034は約0.22〜約0.34のモル分率のヒ素、第3の緩衝層1036は約0.34〜約0.40モル分率のヒ素を含む。
【0068】
一以上の実施形態では、隣接した緩衝層の間(例えば、層1032と層1034の間)のヒ素の増加は0.17モル分率未満である。連続した緩衝層間にできる欠陥は、ヒ素含有量を増やすことによる格子定数の変化によるものであり、半導体にとって有害ではないと考えられる。このように徐々に変化する臨界組成を使用する技術は、米国特許第6,482,672号に記載されているように既知であり、この特許は、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用される。
【0069】
一以上の実施形態では、第1の緩衝層1032の厚さは、約0.3〜約1ミクロンである。一以上の実施形態では、最上緩衝層は、一般に格子構造を完全且つ確実に緩和するためにこれより厚い。
【0070】
一以上の実施形態では、緩衝構造1030の最上面1039又はその近く個別の緩衝層(例えば、緩衝層1036)は、約5.869Å〜約5.960Å、所望により約5.870Å〜約5.932Åの格子定数を有するように巧みに設計される。
【0071】
一以上の実施形態では、緩衝構造1030の最下面1031又はその近くの個別の緩衝層(例えば、緩衝層1032)は、臨界組成グレーディング技術の範囲内で巧みに設計されることが好ましい。換言すると、第1の緩衝層(例えば、緩衝層1032)がInPウェーハ上に付着されるので、第1の緩衝層(例えば、層1032)内に存在するヒ素の量は17モル分率より少ない。
【0072】
クラッド層1040は、InxGa1-xAsからなる。一以上の実施形態では、この層は、緩衝構造1030の最上面1039又はその近くの最上緩衝層の平面内格子定数と格子整合されることが好ましい。格子整合という用語は、連続層相互間の格子定数の差が500ppm(即ち、0.005%)の範囲内であることを指す。
【0073】
一以上の実施形態では、クラッド層1040は、約10オングストローム〜約5ミクロン、所望により約50nm〜約1ミクロン、所望により約100nm〜約0.5ミクロンの厚さを有することができる。
【0074】
一以上の実施形態では、量子ドット層1050は、ヒ化インジウム(InAs)から成る。層1050は、濡れ層(wetting layer)1051と量子ドット1052を含むことが好ましい。濡れ層1051の厚さは、1又は2単分子層とすることができる。一実施形態では、層1050の最下面1053とドット1055の最上部から測ったドット1052の厚さは、約10nm〜約200nm、所望により約20nm〜約100nm、所望により約30nm〜約150nmとすることができる。また、一実施形態では、ドット1052の平均直径は、10nm超、所望により40nm超、所望により70nm超とすることができる。
【0075】
一以上の実施形態では、量子層1050は、複数のドット層を有する。例えば、図3に示したように、量子ドット1050は、第1のドット層1052、第2のドット層1054、第3のドット層1056、及び第4のドット層1058を含む。各層は、ヒ化インジウムInAsから成り、それぞれ濡れ層1053、1055、1057及び1059を含む。同様に各ドット層はドット1055を含む。濡れ層とドットを含む各ドット層の特性は、同一でなくてもよいが実質的に類似している。
【0076】
各ドット層1052、1054、1056及び1058の間にはそれぞれ、中間クラッド層1062、1064、1066及び1068が配置されている。これらの中間クラッド層は、InxGa1-xAsから成る。一以上の実施形態では、InxGa1-xAsの中間クラッド層は、クラッド層1040と実質的に類似又は同一である。換言すると、中間クラッド層は、障壁層1040と格子整合されていることが好ましく、障壁層1040は、最上緩衝層1036と格子整合されていることが好ましい。一以上の実施形態では、中間層1062、1064、1066及び1068の厚さは、約3nm〜約50nm、所望により約5nm〜約30nm、所望により約10nm〜約20nmとすることができる。
【0077】
前述のように、量子ドット層を取り囲むそれぞれの異なる層は、電流を操作するように正又は負にドープされてもよい。半導体素子内の電流を操作する技術は、例えば米国特許第6,573,527号、第6,482,672号、及び第6,507,042号に記載されているように当該技術分野で既知であり、これらの特許は、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用される。例えば、一以上の実施形態では、亜鉛、炭素、カドミウム、ベリリウム又はマグネシウムを使用して領域又は層を「p型」にドープすることができる。一方、シリコン、硫黄、テルル、セレン、ゲルマニウム、又はスズを使用して領域又は層を「n型」にドープすることができる。
【0078】
考えられる半導体素子は、当該技術分野で既知の技術を使用することによって作成することができる。例えば、一以上の実施形態では、様々な半導体層は、有機金属気相エピタキシー(OMVPE)を使用することにより作成することができる。一以上の実施形態では、ドット層は、Stranski−Krastanovモード(S−Kモード)等の自己形成技術を使用することにより作成される。この技術は、米国特許第6,507,042号で述べられおり、この特許は、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用される。
【0079】
図4に、量子ドット層を含む放射線放射ダイオード(RED)の一実施形態を示す。RED1100は、ベースコンタクト1105、赤外線リフレクタ1110、半絶縁半導体基板1115、n型横伝導層(LCL)1120、n型緩衝層1125、クラッド層1130、量子ドット層1135、クラッド層1140、p型層1145、p型層1150、及びエミッタコンタクト1155を有する。ベースコンタクト1105、赤外線リフレクタ1110、半絶縁半導体基板1115、n型横伝導層(LCL)1120、n型緩衝層1125、クラッド層1130、量子ドット層1135、及びクラッド層1140は、前述の半導体層と類似している。
【0080】
ベースコンタクト1105は、多数の極めて導電性の高い材料を含むことができる。例示的な材料には、金、金亜鉛合金(特にp領域と隣接するとき)、金ゲルマニウム合金又は金ニッケル合金、或いはクロム金合金(特にn領域と隣接するとき)がある。ベースコンタクト1105の厚さは、約0.5〜約2.0ミクロンとすることができる。金と誘電体材料の間の接着を高めるために、チタン又はクロムの薄層を使用することができる。
【0081】
赤外線リフレクタ1110は、反射材料から成り、必要に応じて誘電体材料から成る。例えば、誘電体材料として酸化シリコンを使用することができ、その上に赤外線反射材料として金を付着させてもよい。リフレクタ1110の厚さは、約0.5〜約2ミクロンとすることができる。
【0082】
基板1115はInPから成る。基板1115の厚さは、約300〜約600ミクロンとすることができる。
【0083】
横伝導層1120は、InP基板1115と格子整合された(即ち、500ppm以内)InxGa1-xAsから成る。また、一以上の実施形態では、層1120はnドープされる。好ましいドーパントはシリコンであり、好ましいドーピング濃度は、約1×1019〜約3×1019/cm3とすることができる。横伝導層1120の厚さは、約0.5〜約2.0ミクロンとすることができる。
【0084】
緩衝層1125は、前述の構造と同じようにInP1-yAsyの3段階の層から成る。層1125はnドープされることが好ましい。好ましいドーパントはシリコンであり、ドーピング濃度は約0.1×109〜約3×109/cm3とすることができる。
【0085】
クラッド層1130は、緩衝層1125の上部(即ち、第3段又はそのサブレイヤ)の平面内格子定数(即ち、500ppm以内)と格子整合されたInxGa1-xAsから成る。一以上の実施形態では、InxGa1-xAsクラッド層1130は、約0.60〜約0.70パーセントモル分率のインジウムから成る。クラッド層1130の厚さは、約0.1〜約2ミクロンである。
【0086】
量子ドット層1135は、本発明の教示に関して前に述べたようなInAsドットから成る。前の実施形態と同じように、各ドット層の間の中間層は、クラッド層1130と類似の(即ち、格子整合された)InxGa1-xAsクラッドを含む。一以上の実施形態では、一以上の連続した中間クラッド層中のインジウムの量は、クラッド層1130或いは前又はそれより低い中間層より少ないインジウムを含んでもよい。
【0087】
クラッド層1140は、緩衝層1125の上部(即ち、第3段又はそのサブレイヤ)と格子整合された(即ち、500ppm以内)InxGa1-xAsから成る。
【0088】
閉込め層1145は、InxGa1-xAs層1140と格子整合されたInP1-yAsyから成る。また、一以上の実施形態では、層1145はpドープされる。好ましいドーパントは亜鉛であり、ドーピング濃度は約0.1×1019〜約4×1019/cm3とすることができる。閉込め層1145の厚さは、約20nm〜約200nmとすることができる。
【0089】
コンタクト層1150は、閉込め層1145と格子整合されたInxGa1-xAsから成る。コンタクト層1150は、pドープされる(例えば、亜鉛がドープされる)ことが好ましい。ドーピング濃度は、約1×1019〜約4×1019/cm3とすることができる。コンタクト層1150の厚さは、約0.5〜約2ミクロンである。コンタクト層1150は、層1155の下を除き表面全体から除去されてもよい。
【0090】
エミッタコンタクト1155は、任意の高導電性材料を含むことができる。一以上の実施形態では、導電性材料には金/亜鉛合金がある。
【0091】
図5に別の実施形態を示す。半導体素子1200は、p領域内にトンネル接合を有する放射線放射ダイオードとして構成されている。この設計は、より低い抵抗接触とより低抵抗の電流分布を提供するので有利である。半導体1200の多くの様相は、図4に示した半導体1100と類似している。例えば、接点1205は接点1105と類似しており、リフレクタ1210はリフレクタ1110と類似しており、基板1215は基板1115と類似しており、横伝導層1220は伝導層1120と類似しており、緩衝層1225は緩衝層1125と類似しており、クラッド層1230はクラッド層1130と類似しており、ドット層1235はドット層1135と類似しており、クラッド層1240はクラッド層1140と類似しており、閉込め層1245は閉込め層1145と類似している。
【0092】
トンネル接合層1247は、閉込め層1245と格子整合されたInxGa1-xAsから成る。トンネル接合層1247の厚さは、約20〜約50nmである。トンネル接合層1247は、pドープされる(例えば、亜鉛で)ことが好ましく、ドーピング濃度は約1×1019〜約4×1019/cm3とすることができる。トンネル接合層1250は、トンネル接合1247に格子整合されたInxGa1-xAsから成る。トンネル接合層1250の厚さは、約20〜約5,000nmである。トンネル接合層1250は、nドープされることが好ましく(例えば、シリコン)、ドーピング濃度は約1×1019〜約4×1019/cm3である。
【0093】
エミッタコンタクト1255は、種々の導電性材料を含むことができるが、クロム金合金、金ゲルマニウム合金、金ニッケル合金等のn領域に好都合な材料から成ることが好ましい。
【0094】
図6にREDの別の実施形態を示す。半導体素子1300は、少なくとも部分的にベースリフレクタがない(例えば、図5に示した1210等のリフレクタがない)ため半導体素子の基板を通して電磁放射を放射することができることを除き、図5に示したREDと同じように放射線放射ダイオードとして構成される。また、図6に示した半導体素子1300は、素子の全表面(又は、実質的に表面全体)を覆う「完全コンタクト」であるエミッタコンタクト/赤外線リフレクタ1355を含む。
【0095】
他の全ての点では、素子1300は、素子1200と類似している。例えば、接点1305は接点1205と類似しており、基板1315は基板1215と類似しており、横伝導層1320は伝導層1220と類似しており、緩衝層1325は緩衝層1225と類似しており、クラッド層1330はクラッド層1230と類似しており、ドット層1335はドット層1235と類似しており、クラッド層1340はクラッド層1240と類似しており、また閉込め層1345は閉込め層1245と類似しており、トンネル接合層1347はトンネル接合層1247と類似しており、トンネル接合層1350はトンネル接合層1250と類似している。
【0096】
考えられる半導体技術は、レーザダイオードの製造に使用することもできる。図7に例示的なレーザを示す。レーザ1600は、金クロム合金等の任意の導電性材料から成ることができるコンタクト1605を有する。コンタクト層1605の厚さは、約0.5ミクロン〜約2.0ミクロンである。
【0097】
基板1610は、約5×1018〜約10×1018/cm3の濃度でnドープされることが好ましいリン化インジウムから成る。基板1610の厚さは、約250〜約600ミクロンである。
【0098】
任意的に設けられるエピタキシャルリン化インジウム層1615は、約0.24×1019/cm3〜約1×1019/cm3の濃度でnドープされることが好ましい。エピタキシャル層615の厚さは、約10nm〜約500nmである。
【0099】
段階的InP1-yAsy層1620は、図2に示した段階的InP1-yAsy緩衝層と類似している。緩衝層1620は、約1×1018〜約9×1018/cm3の濃度でnドープされることが好ましい。
【0100】
層1625と1630は導波路1627を構成する。層1625は、ヒ化リン化インジウムガリウム(In1-xGAxAszP1-z)から成る。層1630は同様にIn1-xGAxAszP1-zから成る。両方の層1625と1630は、層1620の上面と格子整合されている。換言すると、層1625と1630は、約0〜約0.3モル分率のガリウムと0〜約0.8モル分率のヒ素から成る。層1625は、厚さ約0.5〜約2ミクロンであり、約1×1018〜9×1018/cm3の濃度でnドープされる。層1630は、約500〜約1500nmであり、約0.5×1018〜1×1018/cm3の濃度でnドープされている。
【0101】
閉込め層1635、ドット層1640、及び閉込め層1645は、他の実施形態に関して前に述べたドット及び閉込め層と類似している。例えば、閉込め層1635は、図3に示した閉込め層1040と類似しており、ドット層1640は図3に示したドット層1050と類似している。一以上の実施形態では、レーザ素子のドット領域内で使用されるドット層の数は、5ドット層より多く、所望により7ドット層より多く、所望により9ドット層より多い(例えば、サイクル)。閉込め層1635と1645は、約125〜約500nmの厚さを有することができ、また導波路と格子整合される。層1635、1640、及び1645は、ドープされないことが好ましい(即ち、これらの層は真性である)。
【0102】
層1650と1655は導波路1653を構成する。層1625及び1630と同じように、層1650と1655は、緩衝層1620の上面と格子整合されたIn1-xGAxAszP1-zから成る。層1650は、約500〜約1500nmであり、約0.5×1018〜約1×1018/cm3の濃度でpドープされている。層655は、約1〜約2ミクロンの厚さであり、約1×1018〜約9×1018/cm3の濃度でpドープされている。
【0103】
一実施形態では、層1660は、緩衝層1620と類似した緩衝層である。即ち、ヒ素のモル分率は、各段階が量子ドットから遠くなるほど減少する。層1660は、1×1018〜9×1018/cm3の濃度でpドープされることが好ましい。
【0104】
層1665はリン化インジウム(InP)から成る。層1665の厚さは、厚さ約200〜約500nmであり、約1×1019〜約4×1019/cm3の濃度でpドープされることが好ましい。
【0105】
層1670は、前の実施形態で説明した他のコンタクト層と類似のコンタクト層である。
【0106】
他の実施形態では、層1660、1665、及び1670は、他の実施形態に関して説明した他の構成と類似している。例えば、これらの層は、図4に示した層1145、1150及び1155と類似している。代替として、層1660、1665及び1670の代わりに、図5に示した1245、1247、1250及び1255と類似の層を使用することができる。これらの素子の実施形態の範囲と精神を逸脱しない様々な修正及び変更は、当業者に明らかになるであろう。
【0107】
当然ながら、一形態において、この本発明が、説明したようなRED要素を含むことを理解されたい。しかしながら、様々な他の素子技術を使用できることを理解されたい。例えば、1.6マイクロメートル〜5.0マイクロメートルの範囲で動作する実験用の中赤外線LEDは知られているが、商用的に現実的でない。更に、種々の半導体レーザ及びレーザダイオードを適切な修正により使用することができる。当然ながら、便利な波長の限られた帯域幅の照射線を効率的に生成することができる他の技術を開発することができる。
【0108】
本発明を特定の用途のため実施するには、適切な量の照射線を得るために通常は多数の適切な素子を配置する必要がある。この場合も、一形態において、そのような素子はRED素子になる。本発明のほとんどの加熱用途では、そのような素子は、一般に、ある種の高密度x×yアレイ又は複数x×yアレイで配置され、そのいくつかは、個別RED素子のカスタマイズされた構成の形をとることがある。アレイは、本発明の特定の実施態様に使用される素子のタイプとサイズ、必要出力、及び必要波長により、単一素子から、より一般には数百、数千又は無限数の素子アレイまでの範囲とすることができる。RED素子は、通常、少なくとも熱放散能力を有する(ない場合には専用の熱除去装置を有する)回路基板に取り付けられる。RED素子は、多くの場合、そのような回路基板上に極めて高密度/接近配置で取り付けられる。高出力用途に必要な場合には、ダイ取り付け及び回路基板構造の最近の革新技術を利用して密度を最大にすることができる。例えば、そのような目的には、フリップチップに使用されるような技術が有利である。RED素子の効率は、この特有なダイオード素子としては高いが、電気エネルギー入力の大部分は局所的な熱に直接変換される。個々の素子の過熱と焼損を防ぐために、この無駄な熱は半導体接合部から放出されなければならない。高密度アレイに場合は、能動及び/又は受動冷却機能を有するフリップチップ及びチップオンボードパッケージ技術が使用されることが多い。実用性と位置決めの融通性のために、しばしば複合回路基板が使用される。また、x×yアレイは、例えば1マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲の少なくとも2つの異なる特定波長の赤外線を提供するRED素子の混合物から成ってもよい。
【0109】
ほとんどの用途では、RED素子は、様々な異なるサイズのアレイの形態で配置するのが有利であり、アレイのいくつかは、特定タイプの目標物に放射線をより良く照射するために本質的に三次元又は非平面とすることができる。これは、少なくとも以下のような理由のためである。
1.複数の素子の出力を組み合わせることにより十分な出力を提供する。
2.単一素子が適切に照射できる面積よりも大きい面積にわたる出力の十分な「広がり」を提供する。
3.RED素子アレイのプログラム可能性をアプリケーションにもたらす機能を提供する。
4.本明細書で述べた多くの機能的理由のために様々な特定の波長に調整した素子をアレーの形態に組み合わせることができるようにする。
5.出力の「幾何学形状」を特定のアプリーケションの条件に合わせ易くする。
6.素子の取り付け位置、放射角度及びコストをアプリーケションの条件に合わせ易くする。
7.移動する目標物に対する出力の同期又は他の「出力運動」を容易にする。
8.共通の制御回路での素子群の駆動に対応する。
9.多段加熱技術に対応する。
【0110】
ダイオードの典型的な最終用途のために、ダイオードは、接合部の大きさを小さくすることによってコストを最少にするように製造されてきた。従って、これによりコストに直接関連する必要半導体ウェーハ面積が少なくなる。RED素子の最終用途は、より多くの光子の形の実質的な放射エネルギー出力を必要とすることがある。大きな光子生成フットプリント(photon producing footprint)接合領域を形成する創造的な方法でREDを製造できることがこれまで理論的に示されてきた。そのような製造方法によって、より高い中赤外線放射出力を極めて効果的に持続できるRED素子を作成することができる。そのような素子が利用できる場合には、本発明を実施するのに必要なRED素子の絶対数を少なくすることができる。しかしながら、本発明の多くの用途と関連する高出力の場合は、素子の数を単一素子に減少させることは必ずしも望ましくなくまた実際的でもない。本発明は、より低出力の用途、単一波長用途、或いは十分な出力性能を有するRED素子を製造できる場合には、単一素子で実施することができる。
【0111】
同様に、RED素子アレイを集積回路として製造することもできる。そのような実施態様では、REDは、1枚のシリコンや他の適切な基板の領域内に配列されるが、チップ上に光子変換照射位置として機能する複数の接合部を有する。このREDは、電気接続にボールグリッドアレイを使用する他の集積回路パッケージと類似することがある。その場合、そのような素子パッケージは、制御システムへの接続と制御システムによる制御のために必要な電気接続を容易にするアレイとして使用することができる。この場合も、設計パラメータは、電流化学的性質により破壊が起こり始める前に約100℃〜105℃に達してはならない接合部温度の制御である。将来の化合物は耐熱性が高くなることが予想されるが、熱は常に使用される素子の臨界破損範囲より低く維持されなければならない。素子は、更に、回路基板上に単独又は複数で配置されてもよく、用途とコストの必要に応じてより高レベルの素子アレイとして配列されてもよい。
【0112】
RED素子を照射アレイに配置する最良の構成を設計する際、素子のフォームファクタにかかわらず、設計者は変量の全体的な範囲を考慮しなければならない。目標とする用途の点から検討される変量の幾つかには、パッケージング、配置し易さ、コスト、電子接続性、プログラム可能性の制御、冷却、配置環境、電源供給経路、電力供給、ストリング電圧、ストリング形状、照射要件、安全性、及び当業者が理解するであろう多くの他の変量がある。
【0113】
製品の製造に使用される全ての原材料は、電磁スペクトルの範囲内の様々な波長における特定の吸収及び透過特性と関連付けられてきた。また、各材料は、特徴的な赤外線反射及び放射特性を有するが、そのような特性を検討するには時間はかからず、それは、本発明の実施が吸収/透過特性によって更に促進されるからである。任意の特定の材料に関して所定の波長での吸収率を測定し表にすることができる。次にその吸収率を、本明細書の後の方でより詳しく説明し例示するように、種々の波長にわたってグラフで示すことができる。各タイプの材料が、様々な波長で特徴的な吸収又は透過特性を有するので、加熱プロセスを最適化するには、そのような材料特性を知ることが極めて有用である。ある材料がある波長範囲で極めて高い透過率を有する場合は、その材料をその波長範囲で加熱しようとするのは極めて非効率的であることを理解されたい。これと反対に、ある材料がある波長を過度に吸収する場合は、放射熱を加えると材料の表面が加熱されることになる。非効率的な熱伝導体の材料では、熱放射は、通常、材料内を均一に加熱するのに最適な方法ではない。
【0114】
様々な材料が波長で異なる特定の吸収又は透過特性を有することは、長年当技術分野で周知であった。しかしながら、特定波長又は波長の組み合わせを指定することができる高出力赤外線源がなかったので、従来は、既存の加熱又は加工動作の多くを完全に最適化することができなかった。特定波長の赤外線を製品に与えることが実際的でなかったので、多くの製造業者は、そのような特定の製品が最も望ましく加熱又は加工される波長を分かっていない。
【0115】
これは、プラスチック産業における例によって説明される。図9と図10を参照し、プラスチック飲料容器を延伸ブロー成形するポリエチレンテレフタレート(産業界で知られているようなPET樹脂材料)の透過曲線を調べることによって、PET材料が長波長領域で極めて吸収性が高く、可視光及び近赤外線波長領域で極めて透過性が高いことが分かる。その透過率は、1マイクロメートル〜5マイクロメートルの間で劇的に変化する。透過率は、その範囲内で劇的に変化するだけでなく、0.1マイクロメートル以内で頻繁且つ突然にまた非常に大きく変化する場合が多い。
【0116】
例えば、PETは、2.9マイクロメートルに極めて強い吸収を有する。即ち、2.9マイクロメートルの赤外線がPETに導入されると、光は材料の表面又は外被でほとんど全て吸収される。材料の外側面だけを加熱したい場合は、この波長を使用することができる。PETは、熱伝導性が極めて低く(低い熱伝導率を有する)、また延伸ブロー成形動作ではPET材を内部から全体的に均一に深く加熱することが望ましいので、これは、PETを適切に加熱するのに適さない波長である。
【0117】
別の状態を見ると、PET材は、1.0マイクロメートル(1000ナノメートル)に極めて高い透過率を有する。即ち、PETの表面に当たるこの波長の放射線の大部分がPETを透過し、優先的な加熱をすることなく出て、従って大部分が無駄になる。電磁エネルギーの透過率は、誘電体材料全体の厚さの関数として指数関数的に減少するので、材料の厚さは、所定の材料に最適な波長の選択に大きな影響を及ぼすことに注意されたい。
【0118】
ここではPET熱可塑性材料を例として使用したが、この原理は、様々な産業で使用される種々の異なるタイプの材料並びに異なるタイプのプロセスに当てはまることを理解されたい。極めて異なる例として、にかわ又は接着剤積層システムが挙げられる。この例にでは、接着される母材が、特定の赤外線波長の透過性が極めて高いと仮定する。使用される熱硬化性接着剤は、その同じ波長で極めて吸収性が高い。接着剤/積層物サンドイッチをこの特定の有利な波長で照射することによって、隣りの母材ではなく接着剤が加熱されるので、加工が更に最適化される。このような波長の相互作用を選択的に選択することによって、産業界内の様々な幅広い種類の加工又は加熱用途の範囲内での最適ポイントが見つかる。
【0119】
従来、特定の波長において比較的高密度の赤外線を生成する機能は単純に産業界で利用できなかった。従って、このタイプの加熱又は加工の最適化が可能でなかったので、この最適化は、ほとんどの製造業者によって意図されていない。そのような波長特異的な赤外線出力が可能ならば全く新しい方法及びプロセスが見つかることが予想される。本発明は、そのような新しいプロセスを実際的のものにし、種々の用途のための広い融通性を有する実施技術を提供する。本発明の第1の利用が産業界にあると予想されるが、また商業、医学、民生及び他の分野にも多数の用途があるであろうことが分かる。
【0120】
本発明が、現在幅広く使用されている広帯域の石英赤外線加熱バルブや他の従来の加熱システムの代替として極めて有効であることが予想される。そのような石英バルブは、熱成形動作の準備としてのプラスチック材料シートの加熱を含む一連の動作に使用される。本発明は、石英赤外線ランプや他の従来の加熱システムの既存の機能の代替として利用できるだけでなく、実質的に追加機能を加えると考えることができる。
【0121】
本発明はそれどころか、放射エネルギーを連続通電モード或いはパルスモードで生成することができる。本発明の基本的なRED素子は、マイクロ秒の極めて高速の応答時間を有するので、エネルギーを必要とするとき即ち目標とする部品が目標とする領域内にあるときにエネルギーをオンにし、部品が目標領域になくなったときにエネルギーをオフにするため素子のエネルギー効率を高めることができる。
【0122】
赤外線源にパルス通電することができる付加機能によって、多くの放射加熱用途の全体的なエネルギー効率を大幅に改善することができる。例えば、単独又はアレイの赤外線素子(RED)の通電時間を適切に変調することによって、大きな赤外線アレイ源を通り過ぎるときに個別の目標物を追跡することができる。即ち、目標とする素子に最も近い赤外線素子が、通電される素子になる。目標とする部品又は領域が前進するときに「エネルギー波(energizing wave)」をアレイの下流側に通過させることができる。
【0123】
熱成形される材料を加熱する場合に、成形の程度が低いか全く成形されない領域よりも成形の程度が高い領域に多くの熱を加えることが望ましいことがある。赤外線源アレイの構成を正確に設計することによって、全ての素子に同時に通電できるだけでなく、加熱する領域の形状に対応するように極めて戦略的に素子に通電することができる。例えば、生産ラインを連続的に移動させるために、加熱する目標領域と同期した動きでプログラム可能に移動させることができる所望の熱プロファイルの特別形状の領域をプログラムすることが最も望ましいことがある。図17に示したような加熱を必要とする額縁形の領域を検討する。この場合、所望の放射強度の素子(402)の類似の額縁形アレイを有することができ、このアレイは、目標とする熱成形シート(401)の動きと同期してプログラム可能に下流に移動する。エンコーダを使用して熱成形シート(401)等の製品の動きを追跡することによって、周知の電子工学同期技術を使用して、プログラマブルコントローラ又はコンピュータの命令に従って適切な素子を所望の強度で作動させることができる。所望の出力強度を得るために、アレイ内の素子を制御システムによって「連続」モード又は「パルス」モードで通電することができる。いずれのモードも、最も望ましい出力条件に対する時間の関数として強度を変調することができる。この制御は、素子グループの制御でもよく、個別のRED素子に対する制御でもよい。特定の用途では、個別のRED素子に対する粒状制御が必要ない場合がある。そのような例では、RED素子を最も望ましい形状の列(string)を構成するように配線することができる。次に、それらの列又は列群を、用途要件の要求に応じてプログラム可能に制御することができる。実用性から、最も都合のよい電圧の印加を容易にし且つ個別の素子制御のコストを削減するためにRED素子を群単位又は列単位で駆動することが必要な場合がある。
【0124】
REDの列又はアレイは、電流をオープンループ構成で単純に供給することによって制御されてもよく、より高度な制御が使用されてもよい。特定用途の事実集約的評価によって、適切な赤外線照射制御の量とレベルが決定される。複雑又は厳密な制御が要求される限り、制御回路は、入力電流、電圧又は固有出力を連続的に監視し変調する。最も望ましい放射出力又は結果の監視は、赤外線アレイの出力、或いは赤外線の目標物と関連したパラメータを直接測定することによって実施することができる。これは、単純な熱電対又は高温計を含む技術から、例えば赤外線カメラの形をとる更に高度な技術まで、様々な技術によって実行することができる。当業者は、本発明の特定の用途に経済的に妥当な特定の閉ループ監視技術を推奨することができるであろう。
【0125】
直接と間接の両方の監視方法を実施することができる。例えば、形成可能温度範囲まで高めるために特定の材料を加熱する場合は、材料を形成するために必要な力を測定し、そのデータを、赤外線放射アレイを変調するためのフィードバックの少なくとも一部分として使用することが望ましい場合がある。本発明の出力の最適化と制御を容易にするために、多くの他の直接又は間接のフィードバック手段が可能である。
【0126】
本明細書で述べるような本発明の放射熱源の形状、強さ及び通電時間は、細かくプログラム可能であり、極めて高レベルのプログラム可能なカスタム化をするのに向いていることをよく理解されたい。特定の部品上の適正な位置に熱を導くために、その部品用に熱源の特別注文の形状又は構成を設計し作成することは、産業界ではよくあることである。本発明の柔軟なプログラム可能性によって、単一のプログラム可能な加熱パネルをほとんど無限数の特注パネルと柔軟に置き換えることができる。産業界は、種々様々な赤外線炉及び加工システムで溢れている。そのような炉は、様々な種類とタイプの塗料、コーティング、スラリの硬化、及び他の目的に使用される。また、これらの炉は、種々様々な積層ラインにおいて、材料の熱融着、或いはにかわ、接着剤、表面処理剤、又は「サンドイッチ状」積層物に追加される様々な層を硬化するために使用することができる。
【0127】
種々様々な乾燥用途に他の炉が使用されることがある。例えば、2つの部分からなる飲料缶(two-piece beverage can)の産業では、飲料缶の内部にコーティングを噴霧し、次にそれをコンベヤによって「大量」に長い硬化炉内を連続的に移動させるのが一般的である。硬化していない内部コーティングは、塗布したときは白ペンキの外観を有するが、硬化後はほとんど透明になる。このような様々な乾燥及び硬化用途において、本発明により、乾燥させ、処理し又は硬化しなければならない材料に最も容易且つ適切に吸収される一波長又は波長の組み合わせを選択することができる。いくつかの用途では、プロセスを改善するために、存在する波長よりも存在しない波長が重要なことがある。望ましくない波長は、乾燥、加熱、結晶粒構造の変化、或いは多くの他の有害な結果によって材料に悪影響を及ぼすことがあるが、本発明では、より最適なプロセスにより、これらを回避できる。
【0128】
基板、即ち母材に実質的に悪影響を及ぼすことなく目標とする材料の温度を高めて硬化又は乾燥させることが望ましいことが多い。母材がそのような処理によって破損し得ることはよくあることである。目標とする材料内に熱を導入しつつ母材に熱を導入しないことがより望ましい。本発明は、この種の選択的加熱を容易にする。
【0129】
本発明の別の応用分野を見てみると、医療産業は、種々の可視光治療と近赤外線治療を試みてきた。ある特定の波長の電磁エネルギーが治癒を刺激し促進することが理論的に示されている。また、ある特定の波長を有する光線が、酵素、ホルモン、抗体、及び身体内の他の化学物質の生成を刺激し、また不活発な器官の活動を刺激することが仮定されている。そのような仮定の特定の詳細、処置方法又は長所を調べることはこの特許の範囲外である。しかしながら、本発明は、種々のそのような治療モダリティを容易にすることができる波長選択可能でプログラム可能な固体中赤外線源を提供することができる。
【0130】
しかしながら、従来、医療界には、中赤外線波長帯域の高出力の波長特異的な放射を生成する実際的な方法がなかったことは真実である。本発明は、そのような狭帯域の波長特異的な赤外線照射を可能にし、医療用に容易に使用できる小型軽量で安全で便利な形態で可能にする。
【0131】
医療では、照射に使用される特定波長又は波長の組み合わせを選択できることに、極めて重要な幾つかの利点がある。産業用の製造材料と同じように、有機材料は、特徴的な透過/吸収スペクトル曲線を有する。動物、植物又は人体組織は、極めて有利に活用することができる固有の吸収/透過ウィンドウを示す。
【0132】
人体の大部分は基本的に水からなる。従って、水の透過/吸収曲線は、多くの人体組織を大雑把に近似化するのによい出発点である。広範囲にわたる研究によって、人間、動物及び植物内の全ての種類の組織の正確な曲線を作成することができる。また、器官又は組織から得ようとする様々な種類の治癒や刺激の関係を作成し、それを透過/吸収曲線と関連付けることができる。一波長又は波長の組み合わせを慎重に選択することによって、種々の疾病と疾患に効果のある可能性のある療法を開発することができる。
【0133】
治療することが望ましい組織又は器官には、極めて表面近くにあるものもあり、体内の深くにあるものもある。人体組織の吸収特性により、非侵襲的技術ではそのような深い部分に到達できない可能性がある。目標組織の近くに照射源を配置するために何らかの形の侵襲的技術を使用しなければならないであろう。本発明の照射アレイは、照射アレイが種々の侵襲的又は非侵襲的治療に使用するのに適したサイズ及び/又は形状のものになるように、設計することができる。治療の技術、モダリティ及び構成は本明細書の説明の範囲を超えるが、本発明は、中赤外線波長帯域で固体波長選択照射を利用可能にする最初のものである。これは、種々のモダリティと治療のタイプに構成することができる。極めて柔軟な形態とプログラム可能性により、個別の治療に適した角度、強度及び波長が得られるように特定の身体サイズと体重に合わせて構成することができる。
【0134】
赤外線は、痔疾治療から皮膚治療まで多数の医療用途に利用されている。広帯域赤外線源で現在行われている赤外線療法の一例は、赤外線凝固治療と呼ばれている。更に、糖尿病性末梢神経障害は、赤外線ランプ処置で治療されることがある。テニス肘や他の類似の病気は、現在、やはり広帯域赤外線ランプで治療されることが多い。本発明の特定波長の放射を生成する能力とパルス照射を生成する能力を組み込むことにより、これらの治療を実質的に改善することができる。また、患者の寛容度と快適さを高めることができる。本発明は、また、本質的に安全な電圧で電力供給することができる医療機器の製造を容易にする。
【0135】
照射エネルギーのパルス化は、多くの医療用途と関連した重要な点であることが分かるであろう。連続照射は組織を過熱させる可能性があるが、パルス照射は、過熱、不快又は組織破損といった有害作用なしに十分な刺激を提供することが分かるであろう。マイクロ秒又はもっと速いターンオン時間により極めて高速で素子/アレイをパルス駆動できることは、別の有用な特性を提供する。アレイが極めて短いデューティサイクルで活動化される場合は、アレイの破損なしに極めて高い強度の放射パルスが可能になると予想され、これは、そのような短いパルス時間では半導体接合の過熱が起こる時間がないからである。これにより瞬間強度の合計が大きくなり、より多くの組織内への浸透を促進することができる。
【0136】
また、パルス化が行われる周波数が重要であることが分かるであろう。文献では、人間に対する特定の周波数の照射が、治癒効果或いは有害な効果を有することが知られている。例えば、可視光の特定の振幅変調周波数又は周波数の組み合わせは、人間に吐き気を引き起こす場合があり、更に他の振幅変調周波数又は周波数の組み合わせは、てんかん性発作を引き起こす場合がある。更に医学研究が進むにつれて、実際には、特定波長又は波長の組み合わせと共にパルス周波数、波形又は周波数の組み合わせが、様々な放射線治療の成功に極めて大きな影響があることが分かった。本発明を利用する治療モダリティの多くは、本発明を研究者や開業医が利用できなかったのでまだ理解もしていないし、気が付いてもいない可能性が高い。
【0137】
本発明の別の用途は、食品の調理加工又は演出にある。人間の歴史全体を通して、食品の調理に極めて広範囲の異なるタイプのオーブンや加熱システムが使用されてきたことは確かである。そのようなオーブンや加熱システムのほとんどは周知なので、そのようなオーブンと加熱システム全体について説明することは本特許出願の範囲外である。とりわけ非赤外線/非熱源の料理技術を利用する電子レンジ調理を除いて、実質的に全ての他の料理技術は、様々なタイプの広帯域発熱源を利用する。そのようなオーブンに使用される赤外線加熱源及び要素は広帯域源である。そのような加熱源には、特定の調理状況又は調理製品に最も有利な特定波長の赤外線エネルギーを生成する能力がない。
【0138】
他の材料について前述したように、植物性及び動物性食品には固有の吸収スペクトル曲線がある。そのような固有の吸収曲線は、固有の波長での特定の食品の吸収性と透過性に関係する。対象食品に照射する特定の波長又はいくつかの慎重に選択した波長を選択することによって、望みの調理特徴を修正したり最適化したりすることができる。放射エネルギーを最も効率的に使用すると、加熱又は調理コストを削減することができる。
【0139】
例えば、特定の食品の外側面を加熱したり焦げ目を作ったりしたい場合、本発明は、その特定の食品が極めて高い吸収率を有する波長の選択を可能にする。その結果、選択された波長の放射線が照射されたとき、赤外線エネルギーは全て、表面の極めて近くで吸収され、従って表面だけに望みの加熱及び/又は焦げ目付け処理が行われる。この逆に、表面を加熱するのではなく食品内部の極めて深くから食品を調理したい場合は、望みの調理結果が得られるように特定の食品の透過率が高くなる一波長又は特定波長の組み合わせを選択することができる。従って、放射エネルギーは、望みの深さに浸透するときに徐々に吸収される。
【0140】
電磁波が非金属材料中を移動する場合、この波の強度I(t)は、以下の式で示されるように移動距離tの関数として減少することに注意されたい。
【0141】
I(t)=I0(e−αt)
【0142】
この式では、I0はビームの初期強度であり、αはその材料の比吸光係数である。時間tが大きくなるとき、ビームの強度は、最初のビーム内の放射エネルギーがホスト材料に吸収されることにより生じる指数関数的減衰を受ける。この理由で、最適な調理結果を達成するために赤外線加熱を使用すると、食品の厚さ、加える赤外線強度、照射波長、及び材料吸収率の間に複雑な相互作用が起こる。
【0143】
異なる波長の放射線を照射するRED素子を組み合わせることによって、調理結果を更に最適化することができる。そのような多波長アレイ内では、放射エネルギーの吸収が低く従って熱を深く浸透させることができる波長の第1の素子タイプが選択される。放射エネルギーの吸収が大きく従って表面の加熱が促進される第2の素子タイプが選択される。アレイを完成させるには、これらの2つの両極端の吸収率の中間の波長の第3のRED素子タイプが選択される考えられる。そのようなアレイに含まれる3種類のRED放射源の相対的放射出力レベルを制御することによって、調理する食品の重要な特性を最適化することができる。
【0144】
制御システムに色センサ、温度センサ、及び場合によっては視覚センサを接続することによって閉ループを形成し、望みの調理結果を更に最適化することができる。そのような環境下では、対象となる可能性のある正確なパラメータを確認し、制御システムは最も望ましい適切な波長、強度及び方向で照射を行うことでそれに応答することができる。視覚センサを利用し組み込むことによって、調理している食品の位置とサイズを実際に見て、それに従って前述のようにオーブンの出力を最適化することができる。水分センサとの組み合わせで使用されるときは、その組み合わせに応じて望みの水分を維持することができる。したがって、本発明が、適切なセンサとコントローラの「知能」との組み合わせで将来のスマートオーブンをどの様に実現できるかを理解することができる。当然ながら、本発明を対流式オーブンや電子レンジの機能を含む従来の調理技術と組み合わせて、そのような技術の最良の組合せを得ることができる。本発明の技術を従来の調理技術と共に最適化するようにスマート制御システムを設計することができる。
【0145】
また、ある食品に吸収され別の食品にはあまり吸収されない波長を選択することによって、食品の盛り合わせに行われる加熱の量を細かく選択することができる。従って、選択可能な様々な波長の組み合わせ及び強度を変化させることによって、種々の具体的に設計された調理結果を得られることが分かる。
【0146】
本発明のどの応用例の場合も、様々なレンズ又はビームガイド装置を使用して照射エネルギーを望みの方向に導くことができる。これは、個別にレンズが付けられたRED素子から素子に接近して取付けられたマイクロレンズアレイまで、一連の様々な実施態様の形をとることができる。選択されたビームガイド装置は、案内又は導かれる放射線の波長で機能するように適切に選択されなければならない。回折、屈折及び反射についてよく理解された技術を利用することによって、エネルギーをRED素子のアレイの様々な部分から望みの方向に導くことができる。通電した特定の素子をプログラム可能に制御し、その強度を変調することによって広範囲の照射選択性を得ることができる。定常状態又はパルスモードを選択し、また更にどの素子をいつパルス化するかをプログラミングすることによって、機能を更に高めることができる。
【0147】
この開示は、主に1.0〜3.5マイクロメートルの範囲の放射エネルギーの印加について述べているが、当業者には、赤外線のより長い波長や可視光領域までのもっと短い波長を含む他の動作波長で類似の材料加熱効果を得ることができることは明らかなはずである。開示した発明の精神は、放射源が可視光から長赤外線まで動作可能と考えられる放射加熱のために電子から光子に直接変換する固体放射源の応用例を含む。特定のタイプの用途には、中赤外線範囲以外の他の波長の放射線を照射する他の波長選択可能な素子を本発明に組み込むことが望ましい場合がある。
【0148】
図8は、単一のRED部品10の説明図を示す。RED10はスタック20を含む。スタック20は、図1〜図7と関連して示した半導体層スタックなどの様々な構成をとることができる。少なくとも一形態において、RED10のコンタクト40(例えば、コンタクト1105、1205及び1305に対応する)は、ワイヤ80によってスタック20に接続されている。ボンディングワイヤ80とスタック20を介して電流60が流されるとき、スタック20の構成と一致する固有エネルギー又は波長を有する光子70が放射される。
【0149】
LEDを製造する際に学んだ半導体の智恵の多くをREDに適用できるので、新しいRED素子の発展を支援する類似点に言及することは有用である。LEDのエネルギー変換効率(光エネルギー出力/電気エネルギー入力)の大幅な改善は、LEDが一般市場に導入されるまで何年にもわたって行われてきた。スペクトルの可視光部分と近赤外線部分で動作する市販のLEDで10%を超えるエネルギー変換効率が達成された。本発明は、様々な加熱システム内の主赤外線加熱要素として1マイクロメートル〜3.5マイクロメートルの範囲内のどこかで動作する新しいREDの使用を意図している。本出願は、ブロー成形システムの特定の実施態様を示す。
【0150】
図9と図10は、厚さ10ミルのPETの断面内で透過する赤外線エネルギーの相対的な割合を波長の関数として示している。石英透過範囲内(3.5マイクロメートル以内)で、2.3マイクロメートル、2.8マイクロメートル、及び3.4マイクロメートルを含む幾つかの波長において、強い吸収帯(透過がほとんどない波長帯域)があることが明らかである。本発明と関連した基本的な概念は、ブロー成形機の熱的状態調節セクション内の基本的な加熱要素として1マイクロメートル〜3.5マイクロメートル内の特定の波長で動作するように設計され選択されたRED要素を使用することである。
【0151】
図11a、図11b、及び図11cは、適切なREDヒータ要素100内に一緒にパッケージ化された個別のRED放射源10の例示的な集合を示す。本発明のこの実施形態では、RED10は、Nドープ領域が陰極バス120に直接取り付けられるように物理的に取り付けられている。陰極バス120は、理想的には銅や金等の材料で製造され、これらは両方とも熱と電気の良導体である。RED10の対応する領域は、ボンドワイヤ80を介して陽極バス110に接続されている。理想的には、陽極バスは、陰極バスと同じ熱特性と電気特性を有する。RED10内に電流(I)を流す2本のバスバーの両端に外部から入力電圧が生成され、その結果、170で示したような赤外線光子又は放射エネルギーの放射が起こる。好ましい実施形態では、放射エネルギーをREDヒータ要素100から望ましい方向に導くためにリフレクタ130が使用される。RED10の物理的大きさが小さいので、放射される放射エネルギー170を望ましい方向に容易に導くことができる。この説明は、より大きなコイルフィラメントの場合に比較のために適用される。放射源の物理的サイズと、生じた放射フラックスを従来のレンズ手段を使用して導く能力との関係は当該技術分野で周知である。
【0152】
赤外線エネルギー170を生成するプロセスで生じる廃熱をREDヒータ要素100から放出するためにヒートシンク140が使用される。ヒートシンク140は、産業界で既知の様々な手段を使用して実施することができる。これらの手段には、受動放熱、対流空気冷却を使用する能動放熱、水又は液体冷却を使用する能動放熱がある。例えば、液体ジャケットによる液体冷却は、放射光子に変換されなかった大量の電気エネルギーから生成されるかなりの量の熱を放出できるという利点を有する。この熱は、液体媒体によって屋外場所或いは熱が必要とされる別の領域に伝えることができる。熱が工場の外又は別の場所に放出される場合は、空調/冷房エネルギーを実質的に減少させることができる。
【0153】
更に、本発明のこの実施形態では、必要に応じてバルブ150が使用される。ここで利用されるバルブ150の主な機能は、RED10とボンディングワイア80の破損を防ぐことである。バルブ150は、可視光から3.5マイクロメートルにわたる透過範囲を有する石英で作成されることが好ましい。しかしながら、RED10の動作波長を超える透過範囲を有するガラスなどの他の光学材料も使用することができる。
【0154】
図12aと図12bに、ブロー成型機内のREDヒータ要素100の一配置を示す。このシステムでは、プリフォーム240は、移送システム220によって熱監視調節システム210に入る。少し前に射出成形されたプリフォーム240は、室温で熱監視調節システム210に入る。或いは、プリフォーム240は、単段射出成形/ブロー成形システムで行われるように射出成形工程から直接来る。代替として、プリフォームは、幾つかの他のプロセスのうちの1つのプロセスによって作成されてもよい。このようなプリフォームの製造形態やタイミングにかかわらず、このセクションに入る時、プリフォーム240は、内部に様々な量の潜熱を含むことになる。
【0155】
移送システム220によって送られた後で、プリフォーム240は、コンベヤ250によって熱監視調節システム210を通して移送される。そのようなコンベヤは産業内で周知である。プリフォーム240は、熱監視調節システム210内を移動するとき、一連のREDヒータ要素100から放射された放射赤外線エネルギー170が当てられる。そのようなREDヒータ要素100から放射される赤外線エネルギー170は、ブロー成形システム230に向かうプリフォーム240によって直接吸収される。供給又は駆動電流及び/又は他の設計目標に応じて、エネルギーが連続的なものとされたりパルス化されたりすることを理解されたい。制御システム280のような制御システムは、一形態で、この機能を制御する。所望により、制御システムは、システムを推奨定常状態電流レベルより実質的に高い電流レベルでパルス動作させてパルス動作における瞬間放射強度を高くし、また関連センサ機能からの入力信号に応じてパルス動作のタイミングを決定するように動作する。
【0156】
本発明により示された方法と手段を使用するブロー成型機の好ましい実施形態では、対流冷却システム260が使用されることも好ましい。このシステムは、処理中にプリフォーム240の近くの空気と機構から廃熱を除去する。これを行うために伝導冷却装置を使用することもできる。プリフォームを対流及び/又は伝導によって加熱することは、全体的な熱的状態調節プロセスに有害であることが当該技術分野で知られている。これは、PETは熱伝導性が極めて低く、プリフォームの外周部が加熱されると、加熱が不均一になり、中心の温度が低すぎ且つ表皮の温度が高すぎるからである。
【0157】
また、好ましいシステム実施形態には、温度センサ270(単一箇所温度測定センサで可能な様相(aspect)を超える少なくとも1つの様相で目標物を監視することができるインテリジェントセンサ又はカメラの形をとることができる)と温度制御システム280が含まれる。好ましいブロー成形機設計のそのような様相は、特に、一段ブロー成形システムの特性に適用可能である。一段ブロー成形システムでは、プリフォーム240は、射出成形段で得られた潜熱エネルギーを含んだ状態で熱監視調節システム210に入る。温度を監視しそれにより到来するプリフォーム240(又は、そのプリフォームの特定の小区分)の熱含有量を監視することによって、温度監視制御システム280は、プリフォーム固有(又は、小区分固有)の加熱条件を生成し、次にその条件を駆動信号の形で個別のREDヒータ要素100に伝えることができる。RED放射源10の固体の性質及び関連する高速応答時間は、特に、電気供給電流又はオン時間を時間又はプリフォームの動きの関数として変調するのに適している。また、REDアレイの小区分を制御してもよいことを理解されよう。
【0158】
そのような出力制御を行うために使用される温度制御システム280は、産業用PC、特別注文の埋め込みロジック、又は産業用プログラマブルロジックコントローラ(PLC)として実施することができ、これら3つ全ての性質と動作は産業内で周知である。280として示したような制御システムは、本明細書内の目的を果たす様々な形で構成することができる。しかしながら、幾つかの例として、システムは、REDアレイ内において各波長ごとに作動される素子のオン/オフ状態、電流の流れ、及び位置を制御することができる。
【0159】
図13〜図16は本発明による方法を示す。これらの方法が、適切なソフトウェアとハードウェアの組み合わせ及び技術を使用して実施できることをを理解されたい。例えば、上記のハードウェア要素は、温度制御システム280に記憶され実行されるソフトウェアルーチンによって制御される。
【0160】
次に図13を参照すると、熱可塑性プリフォームを熱処理する好ましい方法300を示し、動作の基本的ステップを概略的に示す。プリフォーム240は、温度監視制御システム210内をコンベヤ250によって移送される(段階305)。当然ながら、移送を示す全ての実施形態では、放射線に晒されるために物品を位置決めする単純な手段(移送があってもなくてもよい)を使用できることを理解されたい。プリフォーム240は、熱監視調節システム210に含まれるREDヒータ要素100を使用して照射される(段階310)。熱監視調節システム210内の空気及び機械部品からの廃熱を除去するために、対流冷却システム260が使用される(段階315)。
【0161】
図14に、熱可塑性プリフォームを処理する別の方法301を概略的に示す。方法301では、REDヒータ要素100を使用してプリフォーム240を照射する工程(段階310)が、段階320と置き換えられている。方法301の段階320で、プリフォーム240は、熱監視調節システム210内の移動と同期してパルス照射される。この同期したパルス照射は、プリフォームに最も近いRED素子だけが所定の瞬間に通電されるので、エネルギー効率を実質的に高める。一形態では、パルスエネルギーの最大出力は、個々の目標物の移動と同期してタイミングが決められる。
【0162】
図15に、熱可塑性プリフォームを処理する更に別の方法302を概略的に示す。この方法302では、到来するプリフォーム240の温度が、温度センサ270を使用して測定される。これは、システムに入るときにプリフォーム240の潜熱エネルギーを推測するために行われる(段階325)。次に、プリフォーム240は、熱監視調節システム210内をコンベヤ250によって移送される(段階305)。温度制御システム280は温度センサ270から提供される温度情報を使用して、REDヒータ要素100に印加される好ましい制御信号を生成する(段階330)。次に、好ましい制御信号は、温度制御システム280からREDヒータ要素100に伝えられる(段階335)。次に、プリフォーム240は、熱監視調節システム210に含まれるREDヒータ要素100を使用して照射される(段階310)。次に、対流冷却システム260を使用して、熱監視調節システム210内の空気と機械部品から廃熱を除去する(段階315)。
【0163】
図16に、熱可塑性プリフォームを処理する別の方法303を概略的に示す。方法303では、REDヒータ要素100を使用してプリフォーム240を照射するプロセス段階310が、段階320と置き換えられている。方法303の段階320で、プリフォーム240は、熱監視調節システム210内の動きと同期してパルス照射される。
【0164】
以上の説明は、単に本発明の特定の実施形態の開示を提供しており、本発明をこの特定の実施形態に限定するためのものではない。従って、本発明は、前述の用途又は実施形態のみに限定されない。本明細書では、本発明の多くの応用例を概略的述べ、1つの応用例の実施形態を詳細に述べた。当業者であれば、本発明の範囲以内にある代替応用例と特定の実施形態を考え得ることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の一実施形態で実施された例示的な半導体素子の一部分の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態で実施された例示的な半導体素子の緩衝層の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態で実施された例示的な半導体素子の量子ドット層の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態で実施された量子ドット層を含む放射線放射ダイオードの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態で実施された量子ドット層を含む放射線放射ダイオードの断面図である。
【図6】本発明の一実施形態で実施された量子ドット層を含む放射線放射ダイオードの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態で実施された量子ドット層を含むレーザダイオードの断面図である。
【図8】単一RED半導体素子の図形表現である。
【図9】厚さ10ミルのPETの断面を透過する赤外線エネルギーの相対比率を波長の関数として示したグラフである。
【図10】厚さ10ミルのPETの断面を透過する赤外線エネルギーの相対比率を波長の関数として示したグラフである。
【図11a】RED加熱要素内に一緒にパッケージ化された個別のRED放射源の代表的な集合体を示す図である。
【図11b】RED加熱要素内に一緒にパッケージ化された個別のRED放射源の代表的な集合体を示す図である。
【図11c】RED加熱要素内に一緒にパッケージ化された個別のRED放射源の代表的な集合体を示す図である。
【図12a】ブロー成形機内のRED加熱要素の好ましい配置を示す図である。
【図12b】ブロー成形機内のRED加熱要素の好ましい配置を示す図である。
【図13】本発明によって示されるようなプリフォームの熱処理の好ましい方法を示す図である。
【図14】本発明による熱可塑性プリフォームの熱処理の代替方法を示す図である。
【図15】本発明による熱可塑性プリフォームの熱処理の代替方法を示す図である。
【図16】本発明による熱可塑性プリフォームの熱処理の代替方法を示す図である。
【図17】動的に移送される部品に有利に適用されるRED加熱要素を示す図である。
【符号の説明】
【0166】
10:RED、20:スタック、40:コンタクト、60:電流、70:光子、80:ボンディングワイヤ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業用途における硬化、処理、または乾燥方法であって、
少なくとも1つのアイテムの少なくとも1つの所望の吸収特性と一致する少なくとも1つの狭波長帯域において放射エネルギーを放射するように動作する、少なくとも1つの狭帯域放射装置を含む少なくとも1つのアレイを提供することと、
前記アイテムに所望の加工効果を生じさせるように、前記少なくとも1つの狭帯域放射アレイを制御することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記アイテムが、塗料、被膜、スラリ、糊、接着剤、表面処理剤、および飲料缶被膜のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アレイが高度にプログラム可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フィードバック技術を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
硬化、処理、または乾燥で使用するためのシステムであって、
少なくとも1つのアイテムの少なくとも1つの所望の吸収特性と一致する少なくとも1つの狭波長帯域において放射エネルギーを放射するように動作する、少なくとも1つの狭帯域放射装置を含む少なくとも1つのアレイと、
前記少なくとも1つのアイテムに所望の加工効果を生じさせるように、前記少なくとも1つのアレイを制御するように動作するコントローラと、
を含むシステム。
【請求項6】
前記アイテムが、塗料、被膜、スラリ、糊、接着剤、表面処理剤、および飲料缶被膜のうちの少なくとも1つである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記アレイが、個別の装置の出力強度、アレイ全体の出力強度、放射の方向、放射の二次元パターン、放射の波長、2つ以上の波長の相対混合、放射出力のタイミングのうちの少なくとも1つを制御するように高度にプログラム可能である、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
フィードバック技術を実行する、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
材料を硬化、溶融、または積層する方法であって、
少なくとも積層において使用される材料の少なくとも1つの所望の吸収特性と一致する少なくとも1つの狭波長帯域において放射エネルギーを放射するように動作する、少なくとも1つの狭帯域放射装置を含む少なくとも1つのアレイを提供することと、
積層を得るために前記材料において所望の加工効果を生じさせるように、前記少なくとも1つの狭帯域放射アレイを制御することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記材料が、積層材料層、糊、接着剤、被膜、または表面処理剤のうちの少なくとも1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アレイが高度にプログラム可能である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
フィードバック技術を実行する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
材料を硬化、溶融、または積層するためのシステムであって、
少なくとも積層において使用される材料の少なくとも1つの所望の吸収特性と一致する少なくとも1つの狭波長帯域において放射エネルギーを放射するように動作する、少なくとも1つの狭帯域放射装置を含む少なくとも1つのアレイと、
積層を形成するために前記材料において所望の加工効果を生じさせるように、前記少なくとも1つのアレイを制御するように動作するコントローラと、
を含むシステム。
【請求項14】
前記材料が、積層材料層、糊、接着剤、被膜、または表面処理剤のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムが、プログラム可能のうちの少なくとも1つであり、フィードバックシステムを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのアレイが、2つの明らかに異なる狭波長帯域において放射エネルギーを放射する狭帯域放射装置を含み、その各々が前記標的アイテムにおいて自身の関連した異なる吸収係数を有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項17】
狭帯域放射装置が、狭い、または極めて限定された帯域のみに放射エネルギーを放射するように動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
狭帯域放射装置が、狭い、または極めて限定された帯域のみに放射エネルギーを放射するように動作する、請求項5に記載のシステム。
【請求項19】
狭帯域放射装置が、狭い、または極めて限定された帯域のみに放射エネルギーを放射するように動作する、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
狭帯域放射装置が、狭い、または極めて限定された帯域のみに放射エネルギーを放射するように動作する、請求項13に記載のシステム。
【請求項1】
工業用途における硬化、処理、または乾燥方法であって、
少なくとも1つのアイテムの少なくとも1つの所望の吸収特性と一致する少なくとも1つの狭波長帯域において放射エネルギーを放射するように動作する、少なくとも1つの狭帯域放射装置を含む少なくとも1つのアレイを提供することと、
前記アイテムに所望の加工効果を生じさせるように、前記少なくとも1つの狭帯域放射アレイを制御することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記アイテムが、塗料、被膜、スラリ、糊、接着剤、表面処理剤、および飲料缶被膜のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アレイが高度にプログラム可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フィードバック技術を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
硬化、処理、または乾燥で使用するためのシステムであって、
少なくとも1つのアイテムの少なくとも1つの所望の吸収特性と一致する少なくとも1つの狭波長帯域において放射エネルギーを放射するように動作する、少なくとも1つの狭帯域放射装置を含む少なくとも1つのアレイと、
前記少なくとも1つのアイテムに所望の加工効果を生じさせるように、前記少なくとも1つのアレイを制御するように動作するコントローラと、
を含むシステム。
【請求項6】
前記アイテムが、塗料、被膜、スラリ、糊、接着剤、表面処理剤、および飲料缶被膜のうちの少なくとも1つである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記アレイが、個別の装置の出力強度、アレイ全体の出力強度、放射の方向、放射の二次元パターン、放射の波長、2つ以上の波長の相対混合、放射出力のタイミングのうちの少なくとも1つを制御するように高度にプログラム可能である、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
フィードバック技術を実行する、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
材料を硬化、溶融、または積層する方法であって、
少なくとも積層において使用される材料の少なくとも1つの所望の吸収特性と一致する少なくとも1つの狭波長帯域において放射エネルギーを放射するように動作する、少なくとも1つの狭帯域放射装置を含む少なくとも1つのアレイを提供することと、
積層を得るために前記材料において所望の加工効果を生じさせるように、前記少なくとも1つの狭帯域放射アレイを制御することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記材料が、積層材料層、糊、接着剤、被膜、または表面処理剤のうちの少なくとも1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アレイが高度にプログラム可能である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
フィードバック技術を実行する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
材料を硬化、溶融、または積層するためのシステムであって、
少なくとも積層において使用される材料の少なくとも1つの所望の吸収特性と一致する少なくとも1つの狭波長帯域において放射エネルギーを放射するように動作する、少なくとも1つの狭帯域放射装置を含む少なくとも1つのアレイと、
積層を形成するために前記材料において所望の加工効果を生じさせるように、前記少なくとも1つのアレイを制御するように動作するコントローラと、
を含むシステム。
【請求項14】
前記材料が、積層材料層、糊、接着剤、被膜、または表面処理剤のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムが、プログラム可能のうちの少なくとも1つであり、フィードバックシステムを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのアレイが、2つの明らかに異なる狭波長帯域において放射エネルギーを放射する狭帯域放射装置を含み、その各々が前記標的アイテムにおいて自身の関連した異なる吸収係数を有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項17】
狭帯域放射装置が、狭い、または極めて限定された帯域のみに放射エネルギーを放射するように動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
狭帯域放射装置が、狭い、または極めて限定された帯域のみに放射エネルギーを放射するように動作する、請求項5に記載のシステム。
【請求項19】
狭帯域放射装置が、狭い、または極めて限定された帯域のみに放射エネルギーを放射するように動作する、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
狭帯域放射装置が、狭い、または極めて限定された帯域のみに放射エネルギーを放射するように動作する、請求項13に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図12a】
【図12b】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図12a】
【図12b】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−96543(P2012−96543A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246408(P2011−246408)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【分割の表示】特願2007−544552(P2007−544552)の分割
【原出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(501401283)プレスコ テクノロジー インコーポレーテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】PRESSCO TECHNOLOGY INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【分割の表示】特願2007−544552(P2007−544552)の分割
【原出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(501401283)プレスコ テクノロジー インコーポレーテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】PRESSCO TECHNOLOGY INC.
【Fターム(参考)】
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