説明

注型成形品エジェクト装置

【課題】排出口を有する成形品を容易に脱型させることができる注型成形品エジェクト装置を提供することである。
【解決手段】上金型2と下金型3の間のキャビティ13内で成形品10が形成されると、成形品10の排出口10a部分に配置された閉塞板4で上金型2と成形品10を押圧し、成形品10から上金型2を外すと共に成形品10を部分的にリフトさせる。すなわち成形品10は自身の弾性によって変形し、排出口10a付近の部位が下金型3から剥離し、排出口10a付近以外の部位は下金型3に付着した状態を保っている。そのため、成形品10と下金型3の間には隙間11が形成される。そして、成形品10と下金型3の間の隙間11に加圧気体12を供給する。加圧気体12は隙間11にくさびのように入り込み、成形品10は下金型3から滑らかに脱型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出口を有する成形品を脱型させる注型成形品エジェクト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
注型成形によって成形品を成形後、金型に付着した成形品を金型から離脱させるエジェクト装置が例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、複数のエジェクタピンで成形品を押圧し、金型から成形品を離脱させる構成が開示されている。特許文献1に開示されている構成を採用することにより、成形品の複数箇所をエジェクタピンで押圧して、成形品を金型から離脱させ易くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−118436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金型から成形品を取り出す作業を短時間で完了することは、成形サイクルを短くする上で重要である。しかし急ぐあまり、無理に成形品を脱型しようとすると、成形品の表面に傷が付く恐れがある。特に成形品が排出口を有するものである場合には、脱型時に金型に密着している排出口部分は損傷し易い。
【0005】
特許文献1に開示されている構成によって、排出口を有する成形品を脱型させようとしても、複数のエジェクタピンが局部的に成形品を押圧してさらに押し出すので、排出口部分を損傷させずに脱型するのは容易ではない。
【0006】
そこで本発明は、排出口を有する成形品を容易に脱型させることができる注型成形品エジェクト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、上金型と下金型の間に形成されるキャビティに成形材料を充填し、排出口を有する成形品を成形する成形装置に設けられる注型成形品エジェクト装置であって、下金型における成形品の排出口を形成する部位に閉塞部材を設け、前記閉塞部材は閉塞部と本体部と受け部とを有しており、閉塞部と本体部は一体に上金型に接近及び離間する方向に往復移動が可能であり、受け部は成形品を成形する際に閉塞部を着床させて支持する機能を有しており閉塞部は上金型と密着しており、本体部は内部に加圧気体を通す気体通路と、当該気体通路と連通する3以上の複数のノズルとを有しており、前記複数のノズルは、本体部の周囲に配置されており、前記複数のノズルから噴射された加圧気体が、下金型と成形品の間に侵入可能であることを特徴とする注型成形品エジェクト装置である。
【0008】
請求項1の発明では、上金型と下金型の間に形成されたキャビティに成形材料が充填されて成形品が成形されると、閉塞部材の閉塞部が上金型と成形品を押し上げることにより、上金型が成形品から外れ、また、成形品が弾性変形の範囲で変形し、下金型と成形品の間に隙間を形成することができる。すなわち、成形品が有する弾性のために、成形品が下金型から部分的に剥離し、両者の間に局部的に若干の隙間が形成される。
【0009】
そして、閉塞部材の本体部は内部に加圧気体を通す気体通路と、当該気体通路と連通する3以上の複数のノズルとを有しており、複数のノズルは本体部の周囲に配置されているので、各ノズルから加圧気体が略均等に噴射された結果、加圧気体が本体部の周囲の複数箇所から均等に噴射される。尚、各ノズルから噴射される加圧気体は均等に噴射されることが望ましいものである。又、各ノズルは水平面上に配置されていても良く、上下方向に位置がずれていてもよいもので、特に限定されるものでない。
【0010】
また、閉塞部と本体部は一体に移動可能であるので、閉塞部が成形品を押圧した結果、比較的柔軟な成形品が弾性変形し、下金型と成形品の間に隙間が生じている。
【0011】
よって、加圧気体は本体部と受け部の間から下金型と成形品の間の隙間に侵入する。
【0012】
その結果、加圧気体は未だ接着状態の下金型と成形品の間にくさびのように割り込んでいき、両者を滑らかに引き剥がす。そして、成形品は下金型から円滑に脱型される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の注型成形品エジェクト装置によれば、排出口を有する成形品を容易に脱型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】成形装置の断面図であり、(a)は上金型及び下金型に対して注型成形品エジェクト装置を装着する直前の状態を示しており、(b)は(a)の状態から注型成形品エジェクト装置を装着し、さらにキャビティに成形材料が充填されて成形品が成形された状態を示しており、(c)は(b)の状態から注型成形品エジェクト装置の閉塞部で上金型と成形品を押圧し、上金型を外し、さらに成形品を弾性変形の範囲で変形させて下金型と成形品の間に隙間を生じさせた状態を示しており、(d)は(c)の隙間に加圧気体を侵入させて成形品を脱型させた状態を示す。
【図2】(a)は注型成形品エジェクト装置の閉塞部と本体部の斜視図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図3】(a)は図1(b)の部分拡大図であり、(b)は図1(c)の部分拡大図であり、(c)は図1(d)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の注型成形品エジェクト装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0016】
図1(a)に示すように成形装置20は、上金型2,下金型3,注型成形品エジェクト装置1を有している。上金型2と下金型3は上下に対向配置され、間にはキャビティ13が形成されている。成形装置20は、これらとは別に図示しない成形剤をキャビティ13に供給する成形剤供給装置を有している。
【0017】
下金型3には開口3aが設けられている。この開口3aに注型成形品エジェクト装置1が挿通される。開口3aに注型成形品エジェクト装置1を挿通すると、キャビティ13は密封される。
【0018】
次に、本発明の特徴的な構成である注型成形品エジェクト装置1を説明する。
【0019】
注型成形品エジェクト装置1は、閉塞板4(閉塞部),本体部5,円筒受け部9を備えている。
【0020】
閉塞板4は、円形の板部材で構成されている。閉塞板4の直径は、下金型3の開口3aの内径と略同径である。すなわち閉塞板4は、ちょうど下金型3の開口3aを通過することができる直径を有する円形の板部材である。
【0021】
閉塞板4の下面には本体部5が一体固着されている。本体部5の上部は逆円錐形状であり、本体部5の上部は逆円錐面5aを有している。図2(b)に示すように、本体部5の内部には複数の気体通路15が放射状に設けられている。また、逆円錐面5aには、複数のノズル8が等間隔に設けられている。すなわち、各気体通路15は、逆円錐面5aの各ノズル8に連通している。
【0022】
本体部5の下部にはシリンダ6が設けられている。シリンダ6は、図示しない昇降機構によって昇降が可能である。すなわち、シリンダ6と一体の本体部5及び閉塞板4は、昇降することができる。
【0023】
シリンダ6の内部には、エアチューブ7が配置されている。エアチューブ7の上端は、本体部5の気体通路15に接続されている。すなわち、エアチューブ7を介して加圧気体12を気体通路15に供給することができ、さらに各ノズル8から加圧気体12を噴射することができる。
【0024】
最後に、円筒受け部9について説明する。
【0025】
円筒受け部9の上端面には閉塞板4が着床する。すなわち、円筒受け部9の上端面は、閉塞板4を支持する。図示していないが、円筒受け部9の上端面にはOリング(パッキン)が設けられている。よって、円筒受け部9の上端面に閉塞板4が着床すると、両者間は液密が保たれる。また、円筒受け部9の外径は、閉塞板4の外径と同じである。
【0026】
円筒受け部9の内部にはすり鉢状の傾斜面9aが設けられている。傾斜面9aは、本体部5の逆円錐面5aと近接対向する。すなわち、傾斜面9aの中心軸と逆円錐面5aの中心軸は一致しており、傾斜面9aと逆円錐面5aの間の距離(隙間)は一定である。図3(a)では、傾斜面9aと逆円錐面5aとが接している状態を示しているが、両者間に若干の隙間を設けてもよい。ただし、傾斜面9aの最下端部の内径は、シリンダ6の外径と略等しく、両者間には隙間がない。ここで、Oリングを設けることによって両者間に隙間が生じないようにしてもよい。すなわち、円筒受け部9とシリンダ6の間は、気密が保たれている。
【0027】
また、円筒受け部9は、図示しない駆動機構によって上下移動が可能である。
【0028】
次に、成形装置20の動作を説明する。
【0029】
成形装置20は、図1(a)に示すように上金型2と下金型3とを組み合わせ、さらに下金型3の開口3に注型成形品エジェクト装置1を挿通し、閉塞板4を上金型2の下面2aに密着させる。その結果、キャビティ13は外部と遮断される。
【0030】
そして図1(b)及び図3(a)に示すようにキャビティ13内に成形剤(例えば樹脂剤)を充填する。成形剤はやがて固化し、キャビティ13内で成形品10が形成される。
【0031】
成形品10が形成されると、図1(c)及び図3(b)に示すように、図示しない昇降機構を駆動してシリンダ6,本体部5,閉塞板4を若干上昇させる。これによって、上金型2の下面2aは閉塞板4に押圧されて上金型2が若干リフトされる。また、閉塞板4は、成形品10の排出口10a付近を押圧して若干リフトさせる。
【0032】
上金型2が成形品10から外れ、成形品10の排出口10a付近と下金型3の間には隙間11が形成される。すなわち、成形品10は、大半の部分が下金型3に貼り付いた状態である。すなわち成形品10は、自身の有する弾性変形の限度内で変形し、排出口10a部分は下金型2から剥離し、外周側へいくにつれて下金型3の上面3bに近付き、外側の部分は上面3bに付着している。換言すると、閉塞板4は、成形品10が塑性変形したり、破損しない程度に成形品10を上方へ押圧する。このとき、本体部5の逆円錐面5aと円筒受け部9のすり鉢状の傾斜面9aの間には逆円錐形状の環状の空間16が形成されている。空間16の下端は、円筒受け部9とシリンダ6が当接して(又はOリングで)閉塞されている。
【0033】
次に、図示しない加圧気体供給源(コンプレッサ)から加圧気体12を供給する。加圧気体12は、エアチューブ7,気体通路15を介して各ノズル8から噴射される。各ノズル8から噴射された加圧気体12は、空間16から隙間11に侵入し、さらに上金型2と成形品10の間に入り込む。その結果、図1(d)及び図3(c)に示すように、成形品10は下金型3から脱型される。
【0034】
以上説明したように、本発明の注型成形品エジェクト装置1を実施すると、成形品10と下金型3の間に加圧気体12を吹き込むことにより、成形品10を傷付けることなく容易に成形品10を脱型することができる。
【0035】
ノズル8が、本体部5の周囲に均等に配置されると、本体部5の周囲(空間16)には加圧気体12が均等に供給され、加圧気体12が空間16から隙間11へ均等に流れる。その結果、空間16内で加圧気体12による乱流が生じにくくなり、本体部5が振動せず、成形品10の脱型が良好に行われる。ノズル8の個数は3個以上であればよいが、6〜8個以上であれば加圧気体12の流れがさらに安定し好ましい。
【0036】
排出口10aを有する成形品10としては、例えば浴槽部材,洗面ボウル,シンク等があり、これらを注型成形する際に、本発明が実施可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 注型成形品エジェクト装置
2 上金型
3 下金型
4 閉塞板
5 本体部
6 シリンダ
7 エアチューブ
8 ノズル
9 円筒受け部
10 成形品
10a 排出口
11 隙間
12 空気流
13 キャビティ
15 本体部内の気体通路
16 本体部の逆円錐面と円筒金型のすり鉢状の傾斜面の間の空間
20 成形装置
21 閉塞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型と下金型の間に形成されるキャビティに成形材料を充填し、排出口を有する成形品を成形する成形装置に設けられる注型成形品エジェクト装置であって、下金型における成形品の排出口を形成する部位に閉塞部材を設け、前記閉塞部材は閉塞部と本体部と受け部とを有しており、
閉塞部と本体部は一体に上金型に接近及び離間する方向に往復移動が可能であり、
受け部は成形品を成形する際に閉塞部を着床させて支持する機能を有しており
閉塞部は上金型と密着しており、本体部は内部に加圧気体を通す気体通路と、当該気体通路と連通する3以上の複数のノズルとを有しており、前記複数のノズルは、本体部の周囲に配置されており、
前記複数のノズルから噴射された加圧気体が、下金型と成形品の間に侵入可能であることを特徴とする注型成形品エジェクト装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−22890(P2013−22890A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161582(P2011−161582)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】