説明

注文通りの性質を有する化学的に結合した生体材料

硬化時及び長期使用に際し寸法変化が最小で機械物性の改良及び半透明性の改良を示す無機接合剤からなる化学的に結合した生体材料。その微細構造を表すアルゴリズムは式(I)で表され、ここでλは平均サイズdの粒子間距離でありVは非反応性接合剤と添加充填剤の体積含有量であり、λは10μmである。本発明はまた、本発明による化学的に結合した生体材料成分を製造する装置に関するものである。
λ = d*(1-VF)/(VF) (I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性水和液と主として無機接合剤システムからなる粉末材を含有する好ましくは歯科或いは整形外科材料用生体材料システムに関し、粉末材はこの水和液で飽和される能力を有し注文通りの微細構造を生成し、硬化時及び長期使用時に非常に高い寸法安定性を示し、高強度で最適の光学物性と高度のミクロ細孔性を得る。本発明はまた、粉末材と水和液のそれぞれに関し且つこの材料製造プロセスと合成に関連するものである。
【現行技術と課題】
【0002】
本発明は水和性接合剤系型の結合材システム、特にカルシウムを主カチオンとするアルミン酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、硫酸塩及びそれらの組み合わせからなる族の化学的に結合したセラミック(英語表現での“化学的に結合したセラミック”(Chemically Bonded Ceramics)所謂CBC−材)からなる接合剤ベースのシステムに関するものである。本発明は特に歯科用生体材料、好ましくは歯科充填材又は根官充填材として、骨セメント及び充填材更にはコーティングを含む着床材の様な整形外科用生体材料として、更には好ましくは成分或いは顆粒としてドラッグデリバリーの輸送材料として開発されたが、同様に電子工学やマイクロメカニックス等での工業用充填材としても利用できる。
【0003】
インプラントとしての充填材の様な人体と相互作用する材料に関して、その材料が出来るだけ生物活性又は生体適合性に出来ていることは強みである。歯科充填材及びインプラントに必要な他の性質は虫歯の穴に簡単に応用出来る取り扱いの容易さであり、良好な造形が可能な成形性があり、フィリング作業が十分に迅速にでき治療後直接点検が可能なように硬化/固化でき、高度の堅さと強度を持ち、耐腐食性であり、充填材と生体壁間の結合が良好で、寸法安定性があり、X線不透過であり、特に歯科充填材として長期使用性及び美観に優れている事である。少なくともこれらの性質の大部分を満足する材料を提供する目的で例えばスウェーデン特許(SE)463,493、スウェーデン特許502,987、WO 00/21489、WO01/76534及びWO 01/76535に提示したものに従って材料を開発した。
【0004】
本発明は具体的には寸法安定性(収縮や膨張を回避する)分野に関し、良好な機械的、光学的、生化学的物性を維持し、その目的は硬化及び長期使用時に膨張ゼロの材料、即ち固化や長期使用時に外形が変化しないか、外形がわずかにしか変化しない材料を提供することである。
【発明の開示】
【0005】
本発明は複雑な物性特性を有する生体材料を提供する事を目的とし、その特性の中心は膨張ゼロで機械物性が得られ、それにより粉末材との反応液で飽和される能力を有する接合剤ベースシステムを水和し化学反応により化学的に結合した材料となる粉末材を提供する事であり、この材料は硬化時及び継続的水和時、硬化熟成時且つ長期使用時に、即ち数年間は最小の寸法変化を示す。膨張ゼロを意味する材料は線形変化が最小であるか、又は周囲体積への加重圧又は引っ張りで定義される膨張圧又は張力で表すと5MPa以下、2MPa以下、さらにより好ましくは1MPa以下である。膨張圧或いは張力は好ましくは光弾性法で測定する。(エルンスト他、(Ernst)Am J Dent 2000年、13巻、69−72頁(2000;13:69−72))。
ゼロ膨張現象と同一物の制御
【0006】
膨張又は収縮分野での寸法安定性は一般に下記のような異なる因子により制御される。
粒子サイズ
結合剤添加物圧縮の度合い
不活性材含有量
これらは上記序文に記述した先行特許や特許出願書や博士論文(エル クラフト(L Kraft)歯科修復材としてのアルミン酸カルシウムベースの接合剤(Calcium aluminate based cement as dental restorative materials)、ウプサラ大学(Uppsala Universite)2002年12月13日(13 Dec 2002)に記載されている。
【0007】
アルミン酸カルシウム水和物(CAH)、リン酸カルシウム水和物(CPH)及びケイ酸カルシウム水和物(CSH)型の化学的に結合したセラミックにおいて、その硬化機構は水との反応により粉末原料を溶解し、イオンを生成し沈着・結晶化する事である。その結果もし化学的に結合したセラミックが閉鎖体積全体又はその一部に存在すると、沈着はこの体積壁上で起こり、気密な結合に膨張を必要としない事を意味する。このことを以下の実施形態実施例2に示す。この結果気密な結合が得られるにもかかわらず生物組織中に応力は生じない。この事は歯科の場合二次的医療が回避出来る事を意味する。周囲壁への機械的影響なしに圧縮力で全体積を充填する事が望ましい。機械的に影響すると周囲体積は膨張力の大きさに依存して可塑変形し或いは破裂する事がある。
【0008】
膨張ゼロを達成するには含有相に形成された平均値に基づいて最大ずれの微細構造場を決定するアルゴリズムを維持することである。膨張ゼロは周囲体積への加重圧又は引っ張りで定義される膨張圧又は張力で表され、5MPa以下、2MPa以下、更により好ましくは1MPa以下である。これは最小寸法変化により達成される。
機械物性
【0009】
強度は特性として線形弾性をもつ(もろい)材料中に存在する最大既存欠陥により制御される。微細構造中の最大ずれが破壊機構の基本式であるσ=1/YxKIC/C1/2で表される引張強度(σ)を制御し、この式でcは最大欠陥、KICは破壊靱性、Yは定数である。気孔良の減少及び気孔サイズの減少は間接的に強度改善に寄与し、より高い堅さとより高い弾性率に寄与する。これら上述の物性は寸法安定性が本発明により制御されると同時に制御される。
微細気孔物性
【0010】
本発明により微細構造を制御すると気孔率に影響して一般に上述の機械物性改善に寄与する。他の効果は微細気孔の範囲とサイズを明確に制御出来る事である。微細気孔は内部化学的収縮に起因する。気孔サイズは一般的微細構造、即ち水和物がどのくらい大きさで生成するかに依存し、言い換えると使用基本システムに依存し、即ち相がどのくらいの速さで生成しいずれの相が生成するかによる。この結果存在相間の平均距離が重要である。補足的水和物相、即ちリン灰石相や他の生物活性相は水和液に添加した物質やイオンに由来する。これら相の形成により基本システムの水和相の拡張は制限され、その結果生成微少気孔サイズも制限される。これら気孔の大きさは全気孔率の90%迄は0.5μm以下で10−100nmの水準に制御できる。気孔率の制御は接合材ベースシステム使用において、特にドラッグデリバリーシステム用輸送材として利用するアルミン酸カルシウム系で根本的に重要である。材料中への分散は気孔システムの液相で起こる。分散は本発明による材料に対する通気孔率で特徴付けられる気孔シスムにより制御され、全気孔率が10%以下、更により好ましくは5%以下、最も好ましくは2%以下である。気孔の主要部は0.5μm以下、最も好ましくは100nm以下(メゾ構造)のミニ細孔として存在する。材料は少成分或いは前もって圧縮した顆粒として存在しても良い。
半透明性
【0011】
本発明による微細構造含有相のサイズを制御する事の重要性は、上節に示したように膨脹をゼロ値に制御し機械物性及び気孔率を制御する事から明らかである。この事は最終製品の微細構造制御において気孔を可視波長範囲0.4−0.8μmに最小化して半透明性の様な光学物性保有材と大いに関連する。気孔率は気孔が最大サイズとして0.4μmであるよう制御しても良い。含有相の大きさも又0.4μm以下か約1μm以上に保つ。
化学的に結合した材料の微細構造の一般的説明
【0012】
微細構造は
結合剤―水和物形成剤
非反応性結合剤
充填剤粒子
細孔(化学的収縮に関連する内部細孔とミニ細孔)
からなる。原料は好ましくは圧縮顆粒形の粉末原料と水、第一に一貫性を制御し生成水和相を制御する少量の促進剤又は試薬添加物を含む水からなる。
膨張に対する微細構造の影響の説明
【0013】
化学的に結合した材料の膨張は制限領域で生成した水和物(反応生成物)に依存する。一般に収縮は関連接合剤システムの水和時に起こり、所謂化学的収縮は水和物生成時に起こるモル容積収縮に依存し、非制限状態では収縮する。領域の制限としては原料の不均一分布、孤立領域の形成、固い構造を引き起こす既成の微細構造がある。即ちもし溶解接合剤粒子近くに水和物で充填される気孔があれば、本体は膨張しない。気孔が水和物で充填されると継続的寸法変化への推進力は減少するケースである(本体はより固くなる)。それ故細かな微細構造(初期粉末の高比表面積)の膨張は減少する。その結果原料の高度な圧縮により膨張は減少し、考慮中の材料では十分多くの水和物が溶解中且つ沈着前に圧縮圧が材料自身に加わる。実際の溶解時間(初期設定)中にかかる圧縮圧により化学収縮し排除又は減少に対応する体積が生じる。材料圧縮の程度は更に増加する。
【0014】
膨張は細かい結晶性均一微細構造生成への必須条件により制御される。以下の事が重要である:水和相の大きさと分布、非反応性接合剤相の大きさ、不活性相(充填剤粒子)の大きさ、含有相の含有量、気孔の大きさと含有量、全含有相の全般的分布、初期圧縮度(高度の圧縮はより細かい微細構造を提供する、水/セメント比(w/c比))、初期化学的収縮の度合い。
【0015】
上記因子が最終微細構造を決める。膨張の度合いは含有相間平均距離を表すアルゴリズムで要約でき、図1と式1を参照の事。平均距離が小さければ小さいほど単一ずれ因子の膨張に対する影響は少ない。従って寸法安定性、強度、光学物性は微細構造の可能な限りの最大ずれにより決まる。図1を参照のこと。
【0016】
微細構造中に存在出来る領域サイズは次式で表される。
λ = d*(1-VF)/(VF) (1)
ここでλは平均サイズdの充填物粒子間距離であり、Vは非反応性相と添加不活性相の体積含有量である。従って式1は最大細孔サイズと生成水和物の大きさを表す。式1の数学的誘導はアンダーウッド イー(Underwood, E)著、定量立体学(Quantitative stereology)、アジソン−ウエズレイ社(Addison-Wesley)、1970年(1970)に記載されている。
【0017】
λが小さいと低膨張となる。従って膨脹は小充填物粒子サイズ(水和体の議論時には非反応性接合材はこの状況で充填物と見なす)及び低含有量の水和物により制御出来る。従って粒子サイズは接合剤の一部が溶解後に得られたサイズを意味する。水対接合剤比を低くすると低い水和物含有量が得られる。実際の製品では非水和材プラス添加不活性充填剤粒子含有量は体積比で50%以上であってはならない。好ましくは非水和材プラス添加不活性充填剤粒子の体積含有量は5−45%の範囲、より好ましくは15−35%内に維持する。
【0018】
添加不活性充填物粒子は平均粒子サイズが5μm以下、更により好ましくは2μm以下で無ければならない。これらは例えばガラス粒子、リン灰石、水滑石、又はベーム石からなる。
【0019】
実施形態実施例1では距離は水和体中の非水和材含有量の関数として表される。低膨張となるには実際にはλ=10μm、好ましくはλ=8μm、更により好ましくはλ=4μm、最も好ましくはλ=2μmであることである。充填剤含有量が低いと容易に高λ値に達する。λが10より大であると膨張が大になるだけでなく、同時に強度に関して或いは高半透明性及び/又はX線不透過性達成に関して問題が生ずる。
【0020】
λは水和物の最大サイズを示す。又距離λは大きさの異なる複数の水和物粒子から組み立てられる場合もある。水和液中のイオンを用いてその場で補足的水和物又は相を形成し、主システム、即ちアルミン酸カルシウムシステム中の生成水和物を分離するのが好ましい。また、水和プロセスはカルシウム高含有アルミン酸カルシウムの反応による水和物の初期生成とアルミニウム高含有アルミン酸カルシウムによる水和物の後期生成により異種水和物及び異なる水和物サイズが混合するのに寄与する。以下を参照のこと。水和物は、非晶性又は部分的非晶性組成の形でも存在できる。水和物の例は:加藤石、ギブサイト、リン灰石、その他のアルミン酸カルシウム水和物、ケイ酸カルシウム水和物など。上記機構により水和物は微細構造のずれについてのサイズの観点からは殆ど重要ではなく、上記式1のサイズは充填剤粒子に関連し水和物ではない事を意味する。
【0021】
全既存相のアルミン酸カルシウムが原料として、即ち純CaO, (CaO)3Al2O3, (CaO)12(Al2O3)7, CaOAl2O3, (CaO)(Al2O3)2, (CaO)(Al2O3)6及び相対的含有量が異なる純Al2O3が使用できる。含有相の含有量は広い範囲で変化できる。主相はCaOAl2O3 と(CaO)(Al2O3)2である。最も好ましい相はCaOAl2O3である。(CaO)3Al2O3, (CaO)12(Al2O3)7, 及び(CaO)(Al2O3)6の各含有量はアルミン酸カルシウム全含有量をもとにづく計算で体積当たり10%以下である。
【0022】
水和体の体積平均粒子サイズ(d)は次式で表される。
d =iΣαidi (2)
ここでαi
iΣαi = ΣVi/VF = 1 (3)
で常に正しく示され、上式でiは水和材中の非水和相数に対応する。αiは相iが非水和相の全占有体積にしめる割合に相当し、換言すると0<αi<1であり全αiの和は1である。αiは相iが占める式1の体積(V)の割合に関連する。di(体積平均粒子サイズ)は好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更により好ましくは3μm以下、更により好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.5μm以下でなければならない。実際には各相のd99は20μm以下、好ましくは10μm以下(体積ベースの粒子サイズ)でなければならい。
【0023】
水和アルミン酸カルシウムベースの材料では、dは下式で表され
d=αC3Ad C3AC12A7d C12A7CA dCACA2 dCA2CA6 dCA6Cd CA dAfiller dfiller
ここでC=CaOでありA=Al2O3でありfillerという項目は添加不活性相(ガラス粒子、酸化物、最初に添加したリン灰石など)の総計である。
【0024】
水和物の体積割合は反応出来る相の量と関連し粉末混合物に加える水量及び固化前の粉末―水混合物への圧縮圧より制御され、その結果その割合は圧縮の度合いにより変化する。
【0025】
好ましくは水和液を原料に添加後の初期反応で好ましくは5分以内に、更により好ましくは2分以内に最も好ましくは1分以内に機械圧を材料にかける。
【0026】
序文に記載した本発明によるとミクロシリカや有機半導体(OPC)のような膨張相殺剤は効果があるが、0.2%以下の膨張ではこれら試薬はそれ自身次第に効果が無くなる。この分野では膨張/寸法安定性は本発明が供与するアルゴリズムにより制御される。
【0027】
本発明の他の形態によると接合剤ベースの系は好ましくはカルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる族のカチオンを有するアルミン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、及びそれらの組み合わせからなる族の化学的に結合したセラミックを含む。接合剤はWO 00/21489に記載のようにセラミック材の長期寸法安定特性付与用の一個又はそれ以上の膨張相殺添加物を含んでも良い。
【0028】
他の実施形態によると粉末材を好ましくは任意の添加物を含む顆粒か或いは出来れば顆粒と末圧縮してない粉末材の形でのみ結合剤相と反応する液と混合し、生成懸濁液を直接充填する虫歯の穴に注入する。好ましくはこの液は懸濁液の妥当な一貫性が得られるように水と、更には粉末材中成分と共に任意の有機形成相と、促進剤、分散剤又はスーパー可塑剤を含む。促進剤は水和反応を加速し好ましくはアルカリ金属塩からなる。最も好ましくはリチウム塩、即ち塩化リチウム、フッ化リチウム、又は炭酸リチウムが用いられる。スーパー可塑剤は好ましくはリグノスルホン酸塩又はクエン酸塩、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)又はヒドロキシカルボキシ基含有化合物、ポリエチレングリコール(PEG)又はPEG含有単位を有する物質からなる。又懸濁液を水抜きし圧縮した実施形態では、促進剤、分散剤又はスーパー可塑剤は勿論使用できるが、同様に材料が生の成形体に圧縮された実施形態では、セラミック材生成時に生の成形体がこの液を吸収するように働く。初期水和反応前は使用水和液の材料全体積に対する体積割合は0.25−0.55の範囲で、リン灰石や主システム中の生成水和物を分離する他相をその場で生成するイオン又はイオン形成物質を含んでも良い。
【0029】
水和の時間的様相も膨張の大きさに関して非常に重要である。アルミン酸カルシウムの存在に加え(上記参照)、これは又促進剤組成及びその含有量により制御される。初期段階では水和材は低弾性率ペーストの可塑性で成形可能な段階にある。これによりどのような寸法変化によっても高圧とはならず形状内部変化による緩和が起こる。これはとりわけ溶解と化学的収縮と共に最初に発生する沈着開始のお陰で可能である。内部化学的収縮は上記のモル体積収縮により起こる。この可塑的時間が許される時間長さは促進剤の助けで制御される。上記によると可塑的変形の時間長さは応用として歯科及び整形外科用では30分間以下、好ましくは20分間以下、最も好ましくは10分間以下に制御される。この時間長さは促進剤の含有量と関連し、塩化リチウムではリチウム含有量が30−150ppmの範囲に相当する。
【0030】
本発明は粉末材から化学的に結合したセラミック材を製造するシステムに関するものであり、粉末材の結合剤相は実質的にカルシウムベースの接合剤システムからなり、そのシステムはその場でのリン灰石形成能を有する。ここでその場でのリン灰石を形成能がある事の意味はこのシステムが例えばリン灰石、ヒドロキシアパタイト又はフッ化アパタイト(それぞれ(Ca5(PO4)3OH及び Ca5(PO4)3F)生成に必要な成分及び任意に他の生物学的に好ましい相からなることであり、このシステムによりこのような相が水和反応中または後に形成できる事を含むことである。その場で生成したリン灰石は主システムのアルミン酸カルシウムを分離する。接合剤システムの主結合材相がアルミン酸カルシウム(Ca−アルミネート)からなるのが特に好ましい。何故ならば
アルミン酸カルシウムは相を安定化する(非溶解でプラークや乳酸の生成を防止する)リン灰石の基本的局所環境を提供する。
アルミン酸カルシウムは過剰に存在し材料中の全細孔内に形成され、この材料を充填するのに寄与する。例えばもしリン灰石のみを使用すると、水が充満した細孔を水和物で充満するには水の変換が少なすぎる。
アルミン酸カルシウムは酸塩基反応により沈着し、水が粉末材と反応して粉末材の溶解が始まる。溶液中にアルミン酸カルシウム、ギブサイト及びリン灰石(もしある種のリンが供給されると)及び多分生体的に好ましい相(方解石、霰石、乳酸塩など)形成に必要な全構成物質が存在する。各物質がその溶解積に達すると、沈殿が起こり始める。沈殿が充填材と歯壁間の微少空間内を含むあらゆる所で起こる。小結晶が歯壁又はその他の生体接触表面の位相表面に沈着し充填材―歯/骨接触域の完全消失に寄与し、微細構造の一体化に至る。
生体液システムにはpH安定化緩衝剤として働くリン酸水素塩が存在する。この水溶液システムは塩基性カルシウム接合剤と反応しリン灰石を形成する。
【0031】
添加剤は球、規則的又は不規則形状、繊維、ウィスカー、平板又は類似形を含むいかなる形態或いは形状を有することが出来る。添加物粒子は10μmより小さく、好ましくは5μmより小さく、更により好ましくは2μmより小さい。
【0032】
懸濁法に関するその他の様態に関しては、参考文献としてWO 01/76534があげられ、その内容はここに参考文献として取り入れてある。生の成形体のその他の形態に関しては参考文献としてWO 01/76535があげられ、その内容は参考文献としてここに取り入れてある。
【0033】
歯科充填材や整形外科組成のような応用に加えて、電子工学、マイクロメカニックス、光学用基質/注型材の様な分野やバイオセンサー技術での応用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】λの概略図を示す。
【図2】平均サイズdの充填剤粒子間距離λを不活性材の体積含有量Vの関数として表したものである。
【図3】水和物が生体壁上に沈降する材料と生体壁間の移行画像を示す。
【図4】本発明による化学的に結合した生体セラミック製造用装置を示す。
【実施例1】
【0035】
図2でλは平均サイズdの充填剤粒子間距離であり(両者共にμm単位)でありVは不活性材、即ち非反応性接合剤プラス添加不活性粒子の体積含有量である。小さなλは低膨脹となる。従ってこれは小さな充填剤粒子サイズ(水和体を議論するときには非反応性接合剤はこの状態では充填剤と見なす)及び低含量の水和物により制御される。従って粒子サイズは一部接合剤が溶解後に得られたサイズを意味する。水和物が低含有量になるには水対接合剤比を低くする。図2では距離は水和体中の非水和材プラス添加不活性粒子の含有量の関数として表す。低膨脹を達成するにはλ=10μm、好ましくはλ=8μm、更により好ましくはλ=4μm、最も好ましくはλ=2μmである事は真実である。
【実施例2】
【0036】
化学的に結合したセラミック材の堅さ、膨脹圧及び剛性へのλの影響を調べるための実験を行った。膨脹圧は光弾性法(エルンスト他(Ernst et al)、Am J Dent2000年、13巻、69−72頁(2000;13:69-72))により測定した。この方法では材料をアラルダイト板中の円形穴に置き水和化用液中に設置する。この光弾性評価では光があたるアラルダイト板に材料を移動した際の張力によるニュートン環の発生を監視する。ニュートン環の直径は膨脹圧と関連する。試料は膨脹の発達を追跡するため数週間保存する。数日後最大圧に到達した。最大圧を確認するため数週間測定を監視した。
【実験シリーズ】
【0037】
a) λ4μmの水和材(体積比50%の水和物で非水和物相の粒子サイズ4μm)
b)λ2μmの水和材(体積比50%の水和物で非水和物相の粒子サイズ2μm)
c)λ0.5μmの水和材(体積比50%の水和物で非水和物相の粒子サイズ0.5μm)
d)λ0.3μmの水和材(体積比50%の水和物で非水和物相の粒子サイズ0.3μm)
e)λ11μmの水和材(体積比50%の水和物で非水和物相の粒子サイズ11μm)
【材料の製造】
【0038】
材料は最終体積が体積比50%の水和物で充填されるような割合で水と粉末混合物を混合して製造した。材料の混合法は以下と図4に記述する。水和体の残りの体積は非水和相(非反応性接合剤と不活性充填剤)からなる。使用接合剤相はCaOAl2O3で、水和相としてギブサイトと加藤石(X線解析により規制されるように)を生成した。不活性充填剤は異なるリン灰石と歯科ガラス混合物であった。この材料混合物は堅さ(ビッカーズ堅さ)、膨脹圧(光弾性法)及び剛性(弾性率)測定前に37℃の水中で2週間保存した。その結果を以下の表に示す。化学的に結合したセラミックの粒子サイズは一次元の直線切片粒子サイズとして測定した。3次元に再計算すると粒子サイズ及びλはやや大きめになった(フルマン(Fullman)による式)。
【0039】
表1

【0040】
この結果は低いλはより高い固さ、より低い膨脹及びより剛性のある材料を与えることを示す。
【0041】
試験a-eでの材料混合法は図4を参考に記述する。
【実施例3】
【0042】
表2.λ及びdによる強度変化、強度はMPa単位。曲げ強度はディスクへのボール落下法で測定。

【実施例4】
【0043】
表3.λ及びdによる半透明性の変化、半透明度は%単位。

【0044】
図3は材料と生体壁間の移行画像を示し、水和物の沈殿がこの生体壁上で起こる。左領域はλが1μm以下の充填剤粒子を有する材料であり、中間領域は生体壁上への沈着を示す充填剤粒子非存在地での水和物沈着を示し、右領域は生体材料でありこの場合はエナメルである。画像中間の沈着領域は厚さ約2μmである。
【0045】
図4は本発明による化学的に結合したバイオセラミックス製造用装置を示す。セラミック材用粉末状混合物1は、透明プラスチックの外ケーシングを有する容器5の中で真空に引くのが好ましい。水和液は容器3に保存する。開ける事が出来る締切りを粉末容器5と液容器3の間に配置し、今の場合液容器は粉末容器内に配置されているので締切りは液容器壁からなる。
【0046】
容器の一つに入った好ましくはセラミック材のボール2を手動或いは機械により振動し、液容器3を壊し粉末状混合物1と液とを混合する。粉末状混合物は容器5の中で真空下にあるので、混合は一瞬に起こる。良好な混合と粘度が得られると、懸濁液は外から開けられる穴4から排出する。この懸濁液を充填すべき体積に塗布する。好都合には粉末は高度に圧縮した顆粒として存在する。
【0047】
本発明は示した実施形態に限定されるのではなく特許請求の範囲内で変化出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機接合剤からなる化学的に結合した生体材料成分で、硬化及び長期使用時に寸法変化が最小で、機械物性の改良及び半透明性の改良を示し、下式で表される微細構造を表すアルゴリズムを特徴とし、
λ = d*(1-VF)/(VF)
ここでλは平均サイズdの充填剤粒子間距離でありVは非反応性接合剤と添加充填剤の体積含有量であり、λは10μmである生体成分。
【請求項2】
λ=8μm、更により好ましくはλ=4μm、最も好ましくはλ=2μmであることを特徴とする請求項1に記載の生体材料成分。
【請求項3】
が50%以下、好ましくは5−45%、更により好ましくは15−35%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生体材料成分。
【請求項4】
周囲体積に5MPa以下、更により好ましくは2MPa以下、更により好ましくは1MPa以下の圧力又は張力がかかることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の生体材料成分。
【請求項5】
無機相がアルミン酸カルシウム及び/又はケイ酸カルシウム及び/又はリン酸カルシウムからなる事を特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の生体材料成分。
【請求項6】
無機相がCaO-Al2O3系、即ちCaO, (CaO)3Al2O3, (CaO)12(Al2O3)7, CaOAl2O3, (CaO)(Al2O3)2, (CaO)(Al2O3)6及び/又は相対的含有量が異なる純Al2O3相からなり、好ましい主な相はCaOAl2O3及び (CAO)(Al2O3)2であり最も好ましい主な相はCaOAl2O3であり、これら相の生成水和物の粒子サイズが3μm以下、更により好ましくは1μm以下最も好ましくは0.5μm以下である事を特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の生体材料成分。
【請求項7】
好ましくはポリアクリル酸エステル又はポリカーボネートの有機相を含み好ましくはその体積含有量が5%以下である事を特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の生体材料成分。
【請求項8】
添加不活性充填剤粒子で粒子サイズが5μm以下、更により好ましくは2μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の生体材料成分。
【請求項9】
添加充填剤粒子がガラス粒子、リン灰石、水滑石及び/又はベーム石からなることを特徴とする請求項8に記載の生体材料成分。
【請求項10】
その場で生成するリン灰石又は主システムの生成水和物を分離するその他の相を含有すること特徴とする請求項1乃至請求項9に記載の生体材料成分。
【請求項11】
全気孔率が10%以下、更により好ましくは5%以下で、直径0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下のミニ微細孔上に全気孔率の少なくとも90%まで分布することを特徴とする請求項1乃至請求項10に記載の生体材料成分。
【請求項12】
このものが歯科材料、好ましくは歯科充填材料又は根官充填材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項11に記載の生体材料成分。
【請求項13】
このものが整形外科材料又は骨セメントであることを特徴とする請求項1乃至請求項12に記載の生体材料成分。
【請求項14】
このものが好ましくはドラッグデリバリー用輸送材料としての一成分であるか又は顆粒形であることを特徴とする請求項1乃至請求項13に記載の生体材料成分。
【請求項15】
前記請求項に従って結合剤相と結合剤相と反応する液を含む粉末材を用いて化学的に結合した生体材料成分製造に関連する装置で、この装置が粉末材を含む第一容器(5)、結合剤相と反応する液を含有する第二容器(3)及びこれら容器(5、3)間で開くことが出来る締切り(3)からなることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−514042(P2006−514042A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563102(P2004−563102)
【出願日】平成15年12月30日(2003.12.30)
【国際出願番号】PCT/SE2003/002090
【国際公開番号】WO2004/058194
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(502370421)ドクサ アクティボラグ (8)
【Fターム(参考)】