説明

洗浄剤組成物

【課題】 衣料等に付着した泥汚れの除去性に優れ、特に着色成分として難分解性の腐食物質の分解及び除去に優れた洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】 ペクチン分解酵素と、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素源とを含有することを特徴とする洗浄剤組成物である。前記過酸化水素源が、過酸化水素、過酸化水素発生化合物及び過酸化水素産生酵素から選択される少なくとも1種である態様、マンガン化合物を含有する態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛、陶器、ガラス等の硬質表面の汚れ除去、特に衣料に付着した泥汚れ除去効果に優れた洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素は、食品加工や医薬品等の様々な分野で利用されており、特に、衣料用洗剤に代表されるように、洗浄剤組成物への利用した例は数多くある。
このような洗浄剤の作用対象である汚れ物質としては、皮脂等に代表される人体の代謝物由来の汚れと、泥や色素成分等に代表される生活環境由来の汚れとに大別される。
これらの汚れ物質を除去する目的で、洗浄剤組成物中には、通常、界面活性剤が配合されているが、更に汚れ除去効果を増強させるため、洗浄剤組成物中に酵素を添加することが多数試みられている。
例えば、果汁や、泥汚れ中の着色成分を分解する目的で、ペクチナーゼ類を単独で又は酵素以外の洗浄力増強因子と組み合わせて配合した洗浄剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、着色物を酸化還元分解する目的で、酸化還元酵素類を単独で洗浄剤組成物や酵素以外の洗浄力増強因子と組み合わせて配合した洗浄剤組成物が提案されている(特許文献2参照)。しかし、この提案では、衣料などに付着した泥汚れを洗浄除去する効果が充分ではなかった。
【0003】
また、ペクチナーゼや酸化還元酵素を含む複数の酵素群を、組み合わせ可能な洗浄剤成分とした洗浄剤組成物も提案されている(特許文献3参照)。更に、酸化還元酵素を含有する洗浄剤組成物が提案され、染料の分解効果についても記載されている(特許文献4及び特許文献5参照)。
しかし、これらの提案においても、ペクチン分解酵素及び酸化還元酵素のいずれかを単独で使用しただけでは、泥汚れに対する洗浄力は充分でなく、更なる改善が求められている。
【0004】
そこで、本願出願人は、先に、安定化処理されたペクチン分解酵素及び酸化還元酵素を組み合わせて、ペクチン分解酵素及び酸化還元酵素を単独で使用した場合に比べて、衣類等の泥汚れに対する洗浄力が向上した洗浄剤成分について提案している(特許文献6参照)。
しかし、この提案においても、衣料などに付着した泥汚れ除去についての、洗浄除去効果が充分満足できるものではなく、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特公平6−39596号公報
【特許文献2】特開平6−234997号公報
【特許文献3】特表平11−505562号公報
【特許文献4】特表平11−508136号公報
【特許文献5】特表平11−511782号公報
【特許文献6】特開2003−9856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、衣料等に付着した泥汚れの除去性に優れ、特に着色成分として難分解性の腐食物質の分解及び除去に優れた洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ペクチン分解酵素と、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素源とを組み合わせることにより、これらを単独で使用する場合、並びに、ペクチン分解酵素と従来検討されてきたマンガンペルオキシダーゼ以外の酸化還元酵素とを組み合わせて使用する場合に比べ、高い洗浄効果を有し、特に泥汚れ除去に関して有用であることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ペクチン分解酵素と、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素源とを含有することを特徴とする洗浄剤組成物である。
<2> 過酸化水素源が、過酸化水素、過酸化水素発生化合物及び過酸化水素産生酵素から選択される少なくとも1種である前記<1>に記載の洗浄剤組成物である。
<3> 更にマンガン化合物を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、前記諸問題を解決することができ、衣料等に付着した泥汚れの除去性に優れ、特に着色成分として難分解性の腐食物質の分解及び除去に優れた洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の洗浄剤組成物は、ペクチン分解酵素と、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素源とを含有してなり、更に必要に応じて、マンガン化合物、その他の成分を含有してなる。
【0011】
−ペクチン分解酵素−
前記ペクチン分解酵素としては、以下に記述する3態様が挙げられる。
第1の態様としては、ポリガラクツロナーゼと呼ばれるガラクツロン酸のα−1,4グリコシド結合を加水分解する酵素が挙げられる。
第2の態様としては、ガラクツロン酸のα−1,4グリコシド結合を加水分解し、その分解物であるウロン酸の非還元末端のC4及びC5の間に、二重結合を生成させるペクチンリアーゼと呼ばれる酵素が挙げられる。
前記第1の態様及び第2の態様に示した酵素は、更にその基質がペクチンであるか、ペクチン酸であるかによって2分され、また基質の末端に作用するか内部に作用するかによって、2分される。
第3の態様としては、ガラクツロン酸のメチルエステルを分解するペクチンエステラーゼと呼ばれる酵素が挙げられる。
これらのペクチン分解酵素は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記ペクチン分解酵素の力価としては、前記ペクチン分解酵素の構成比にかかわらず、該ペクチン分解酵素により、基質から1μmolのペクチン分解物を生成させる力を1Uとした場合、10U/g以上の力価であるのが好ましく、100U/g以上であるのがより好ましい。
前記力価が10U/g未満であると、衣料等における泥汚れの除去効果が充分でないことがある。
【0013】
前記ペクチン分解酵素の前記洗浄剤組成物中における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
前記含有量が、0.01質量%未満であると、衣料等における泥汚れの除去効果が充分でないことがあり、30質量%を超えると、衣料等の洗浄対象物が着色してしまうことがある。
【0014】
前記ペクチン分解酵素におけるpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて酸性、中性及びアルカリ性のpH領域から適宜選択される。
【0015】
前記ペクチン分解酵素の起源としては、特に制限はなく、植物、細菌、及び菌類等に広く分布しているものを用いることができるが、例えば、バチルス属、シトファガ属、シュードモナス属等の細菌類、トリコスポロン属、エンドマイセス属、エンドマイコプシス属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ピヒア属、ハンセヌラ属、デバリオマイセス属、ハンセニアスポラ属、トルロプシス属、カンジダ属、クルイベロマイセス属等の酵母類、フサリウム属、ガラクトマイセス属、アスペルギルス属、リゾプス属、トラメテス属等の糸状菌類、オレンジ等の果実の皮に存在する酵素、などが挙げられる。
【0016】
前記ペクチン分解酵素としては、上述した諸起源菌を使用した下記市販ペクチナーゼなどが好適に挙げられ、具体的には、スクラーゼS、スクラーゼN(三共株式会社製)、ウルトラペクチネックス(ノボザイムス社製)、ペクチナーゼタナベ(田辺製薬株式会社製)、ペクチナーゼA(天野エンザイム株式会社製)、ペクトリアーゼ(盛進製薬株式会社製)、ペクチナーゼ(長瀬産業株式会社製)、ペクチナーゼSS(ヤクルト株式会社製)などが挙げられる。
また、前記ペクチン分解酵素として、シグマ社などから販売されている研究試薬レベルのペクチナーゼも使用することができる。
更に、前記ペクチン分解酵素として、酵素の遺伝子を適切なプラスミドに組み込んだ遺伝子組み換え体を用いて生産した酵素も用いることができる。
前記ペクチン分解酵素としては、これらの市販品に制限されず、本発明における効果を害しない限り、半精製又は粗製のペクチナーゼを使用することができる。
【0017】
−マンガンペルオキシダーゼ−
前記マンガンペルオキシダーゼは、過酸化水素を受容体とする酸化還元酵素である。該マンガンペルオキシダーゼは、過酸化水素存在下で、メディエータである2価マンガンイオンを3価マンガンイオンに活性化し、更に、この活性化メディエータが種々の対象物質を酸化する。
前記マンガンペルオキシダーゼの力価としては、前記マンガンペルオキシダーゼにより、基質から1μmolの酸化還元生成物を生成させる力を1Uとした場合、0.1U/g以上の力価であるのが好ましく、1U/g以上の力価であるのがより好ましい。前記力価が0.1U/g未満であると、衣料等における泥汚れの除去効果が充分でないことがある。
【0018】
前記マンガンペルオキシダーゼの、前記洗浄剤組成物中における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
前記含有量が、0.01質量%未満であると、泥汚れの除去効果が充分でないことがあり、30質量%を超えると、衣類等の洗浄対象物に着色が起こることがある。
【0019】
前記マンガンペルオキシダーゼの起源としては、特に制限はなく、微生物、細菌、及び、菌類に広く分布しているものを用いることができるが、例えば、バチルス属、ストレプトマイセス属、セリポリオプシス属、ディコミタス属、フレビア属、フィクノポラス属、ファネロケーテ属、チロスポラ属、ペニシリウム属、フナリア属、ラミクロディウム属、シゾフィラム属、ネマトロマ属、レンチナス属、コルチナリウス属、コリオラス属、プレウロタス属、ガノデルマ属、アスペルギルス属、トラメテス属、などの微生物類及びキノコ類等が挙げられる。
【0020】
前記マンガンペルオキシダーゼとしては、これら諸起源菌を使用した市販のマンガンペルオキシダーゼを用いることができる。また、前記マンガンペルオキシダーゼとしては、酵素の遺伝子を適切なプラスミドに組み込んだ遺伝子組み換え体を用いて生産した酵素も使用することができる。
前記マンガンペルオキシダーゼとしては、これらの市販品に制限されず、本発明における効果を害しない限り、半精製又は粗製のマンガンペルオキシダーゼを用いることができる。
【0021】
前記ペクチン分解酵素と前記マンガンペルオキシダーゼとの構成比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記ペクチン分解酵素と前記マンガンペルオキシダーゼとの質量比(ペクチン分解酵素:マンガンペルオキシダーゼ)が、100:1〜1:100の範囲で混合することが好ましい。
【0022】
前記ペクチン分解酵素及び前記マンガンペルオキシダーゼを組み合わせることにより、これらを単独で使用する場合、並びに、ペクチン分解酵素と従来検討されてきたマンガンペルオキシダーゼ以外の酸化還元酵素とを組み合わせて使用する場合に比べ、高い洗浄効果を有し、特に泥汚れ除去に関して有用である。
【0023】
−過酸化水素源−
前記過酸化水素源としては、過酸化水素を発生し得るものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化水素源が、過酸化水素、過酸化水素発生化合物及び過酸化水素産生酵素から選択される少なくとも1種が好適である。
前記過酸化水素としては、過酸化水素水などが挙げられる。前記過酸化水素発生化合物としては、例えば、過炭酸ナトリウム等の過炭酸塩、過ホウ素酸塩、ペルオキシカルボン酸又はその塩などが挙げられる。前記過酸化水素産生酵素としては、例えば、グルコースオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼなどが挙げられる。
【0024】
前記過酸化水素源の前記洗浄剤組成物中における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、洗浄時の過酸化水素量として、前記マンガンペルオキシダーゼを活性化させるために0.1〜1000ppmが好ましく、1〜100ppmがより好ましい。
【0025】
−マンガン化合物−
前記マンガン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸マンガン、塩化マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、などが挙げられる。
前記マンガン化合物は、前記洗浄剤組成物の使用条件下で、2価のマンガンイオンを発生する化合物であり、該2価のマンガンイオンは、前記マンガンペルオキシダーゼのメディエータとして作用し、マンガンペルオキシダーゼによって3価のマンガンイオンに酸化されることによって活性化され、当該3価のマンガンイオンによって、種々の対象物質を酸化する。
前記マンガン化合物は、土壌中に多く含まれるため、衣類等に付着した泥汚れなどから供給されると考えられるため、必須の成分ではないが、前記洗浄剤組成物に予め添加したり、洗浄剤組成物と併用することにより、前記洗浄剤組成物の洗浄能力を向上させる場合がある。
前記マンガン化合物の前記洗浄剤組成物における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.0001〜0.1質量%が好ましい。
【0026】
−その他の成分−
本発明の洗浄剤組成物には、必要に応じて、前記その他の成分として、従来より知られている物質を添加することができ、例えば、酵素の増強剤、界面活性剤、ビルダー、などが挙げられる。
【0027】
前記酵素の増強剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、塩素や臭素のハライドイオン、p−ヒドロキシケイ皮酸、2,4−ジクロロフェノール、バニリン、7−ヒドロキシクマリン、6−ヒドロキシ−2‐ナフトエ酸、p−ヒドロキシベンゼンスルホネート等のフェノール類;2,2‐アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート:ABTS)、10−メチルフェノチアジン、10−エチルフェノチアジン、10−プロピルフェノチアジン、10−フェノチアジンプロピオン酸(PPT)、10−エチルフェノチアジン−4−カルボン酸(EPC)、10−フェノキサジンプロピオン酸(POP)、10−メチルフェノキサジン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記界面活性剤としては、従来より公知のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、がすべて好適に挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、該界面活性剤の前記洗浄剤組成物中における含有量としては、5〜50質量%程度が好ましい。
【0029】
前記アニオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、以下のものが好適に用いられる。
(1)炭素数8〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(2)炭素数10〜20の疎水基を有するアルキル硫酸塩又はアルケニル硫酸塩。
(3)炭素数10〜20の疎水基を有するアルファ−オレフィンスルホン酸塩。
(4)炭素数8〜20の飽和又は不飽和アルファ−スルホ脂肪酸エステル塩。
(5)炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)等の1種のアルキレンオキサイドを平均0.5〜8モル、又はEOとPOとを合わせて平均0.5〜8モル、0.1/9.9〜9.9/0.1のモル比で付加したアルキル硫酸塩。
(6)炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均2〜20モルのエチレンオキサイド付加したエーテルカルボン酸塩。
(7)炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有するスルホコハク酸エステル型アニオン性界面活性剤。
前記アニオン性界面活性剤の塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩、などが挙げられる。
また、前記アニオン系界面活性剤には、牛脂やヤシ由来の脂肪酸塩を添加することもできる。
【0030】
前記ノニオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)炭素数10〜18のアルキル基を有し、エチレンオキサイド(EO)平均付加モル数2〜30のポリエチレンオキサイドアルキル、アルケニルエーテル、ポリエチレンオキサイドポリオキシプロピレンアルキル、アルケニルエーテル、ポリエチレンオキサイドアルキルフェニルエーテル、ポリエチレンオキサイドアルキルアルキルアミン。
(2)炭素数10〜20のアルキル基を有し、エチレンオキサイド(EO)平均付加モル数1〜30のメトキシポリエチレンオキサイドアルカノエート。
(3)炭素数10〜20の高級脂肪酸アルカノールアミド。
(4)炭素数8〜18のアルキル基を有し、グルコースユニットの平均付加モル数1〜3のアルキルポリグルコシド。
(5)炭素数10〜14のアルキル基を有し、グリセリンユニットの平均付加モル数1〜3のアルキルグリセリルエーテル。
(6)アルキルアミンオキシド、アルキルアミドアミンオキシド、アルキルヒドロキシアミンオキシド。
【0031】
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、アルキルスルホベタイン、ヒドロキシアルキルスルホベタイン、アルキルイミダゾリニウムベタイン、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、などが挙げられる。
【0032】
前記ビルダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、A型ゼオライト等の結晶性アルミノ珪酸塩;トリポリリン酸塩等のリン酸塩;エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩等のアミノポリ酢酸塩;アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸;スルホン化カルボン酸などの塩類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸の塩;グルコール酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸や有機酸の塩及びその誘導体;イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、アコニット酸等のピロメット;亜硫酸ナトリウム、などの還元性アルカリ金属塩、ケイ酸塩、炭酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカリ剤及び無機電解質等が挙げられる。
該ビルダーの前記洗浄剤組成物における含有量としては、1〜50質量%程度が望ましい。
【0033】
その他、更に必要に応じて、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム・1水塩等の漂白剤、漂白活性化剤、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ラッカーゼ、オキシダーゼ等の酵素、硫酸ナトリウム等の増量剤、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)及びポリビニルアルコール(PVA)、アミン、両性高分子等の分散剤もしくは色移り防止剤、ホウ素化合物及び亜硫酸ナトリウム等の酵素安定剤、シリコーン/シリカ系等の消泡剤、酸化防止剤、吸油性担体、青味付剤、香料、などの公知の成分を公知の添加量で用いることができる。
【0034】
前記洗浄剤組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、従来より公知の各種洗浄剤組成物の製造方法を用いることができる。
また、前記洗浄剤組成物の形状としては特に制限はなく、粒状、紛状、液状、ペースト状等種々の形状が挙げられる。
また、前記洗浄剤組成物は、衣料洗浄用として、洗濯機等による通常の洗浄条件での使用を始め、予浸洗浄、塗布洗浄等の条件で使用、更には、硬表面洗浄等の条件での使用など、幅広い用途で好適に用いることができる。
【実施例】
【0035】
本発明によれば、洗浄力に優れた洗浄剤組成物が得られる。以下具体的な実施例を示し、本発明の効果を説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0036】
<実験1>
(1)洗浄剤組成物の調製
表1及び表2に示す組成から常法により各洗浄剤組成物を調製した。
(2)泥人工汚垢布の調製
園芸用黒墨土を乾燥、粉砕、分級し、体積平均粒子径(D50)が1〜10μmの泥粒子をイオン交換水中で超音波分散させて1%サスペンジョンとし、結晶性鉱物であるカオリナイトやバーミキュライト等を主成分とする粘土を200℃で30時間乾燥したものを無機汚垢として加えて、汚垢浴を調製した。この汚垢浴中に綿メリヤスニット布((株)谷頭商店製)を浸漬した後、ゴム製2本ロールで水を絞り、汚垢の付着量を均一化した。この布を105℃で30分乾燥し、次いで、ブラッシングにより過剰付着汚れを除去した布を5cm×5cmに裁断し、モデル泥汚染布として評価に用いた。
泥人工汚垢布の調製において、無機物成分を多く含有する赤土ではなく、着色成分として難分解性の腐食物質である有機物成分を多く含む黒土を用いることによって、本発明の洗浄剤組成物による泥汚れの除去効果とともに、腐食物質の分解及び除去効果を評価した。
【0037】
(3)洗浄力試験
Terg−0−tometer(U.S.Testing社製)を使用し、上記汚染布10枚とメリヤス布とを入れて浴比を20倍に合わせ、(1)で調製した洗浄剤組成物を添加して、30℃、120rpm、10分間洗浄した。その後、すすぎ、乾燥工程終了後、反射率を測定し洗浄力(洗浄率)を求めた。この場合、洗浄液は、洗浄剤濃度0.066%のもの900mLを用い、すすぎは900mLの水で5分間の洗浄を2回行った。使用水は硬度3°DHを用いた。
【0038】
(4)評価方法
下記数式1で表されるクベルカムンク式により洗浄率(%)を求めた。なお、洗浄力の評価は、試験布10枚の平均値で行った。なお、標準白布は綿メリヤスニット布((株)谷頭商店製)を表1に記載の配合(酵素なし)の洗浄剤組成物で洗浄したものである。
【0039】
【数1】

ただし、前記数式中、Rは日本電色(株)製の色彩計Σ−9000を用いて測定した反射率である。
【0040】
(使用組成成分)
表1〜表6中の略号の意味及び詳細は以下の通りであり、表中の質量%値は純分換算の値である。なお、EOpはエチレンオキサイドの平均付加モル数を、また、POpはプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す。
LAS:炭素数10〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
α−SF:α−スルホ脂肪酸(炭素数14〜16)メチルエステルナトリウム
AOS:炭素数14〜18のα−オレフィンスルホン酸ナトリウム
石けん:炭素数12〜18のパーム油由来脂肪酸ナトリウム
AE:炭素数12のアルコールエトキシレート(EOp=12)
AEP:炭素数13のアルコールのEO,PO付加物(EOp=12、POp=3)
コポリマー:アクリル酸とマレイン酸のモル比60:40、平均分子量50,000の共重合体のナトリウム塩(独国;BASF社製、商品名ソカランCP7)
ゼオライト:4A型ゼオライト(平均粒子径1.2μm)
蛍光剤:4.4−ビス(スルホスチリル)ビフェニル2ナトリウム/4.4−ビス{(4−アニリノ−6−モノホリノ−1,3,5−トリアジン−2イル)アミノ}スチルペン−2,2−ジスルホン2ナトリウム=1/1の混合物(商品名チノパールCBS/商品名チノパールAMS)
過酸化水素水:過酸化水素含有量30%
【0041】
(使用酵素)
表1〜表6に記載の酵素「A」〜「F」はそれぞれ下記の通りである。
A:スクラーゼS(三共株式会社製)
B:ペクチンリアーゼ(シグマ社製)
C:ラッカーゼ(高研社製)
D:グルコースオキシダーゼ(シグマ社製)
E:ペルオキシダーゼ(和光純薬社製)
F:マンガンペルオキシダーゼ(ジェナバイオサイエンス社製)
また、マンガンペルオキシダーゼ配合時には、前記洗浄剤組成物100%に対し、硫酸マンガンを0.017%添加した。
【0042】
【表1】

※洗浄力は、酵素なしの場合(対照)の洗浄力を100%として相対値で示す。
【0043】
【表2】

※洗浄力は、酵素なしの場合(対照)の洗浄力を100%として相対値で示す。
【0044】
表1及び表2の結果から、ペクチン分解酵素と、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素源との組み合わせにより、衣類に付着した泥汚れに対し、高い洗浄力を示すことが分かった。
【0045】
<実験2>
表3及び表4に示す成分から常法により各洗浄剤組成物を調製した以外は、前記<実験1>と同様にして、泥人工汚垢布3枚を調製した。
得られた泥人工汚垢布3枚を用いて、前記<実験1>と同様にして洗浄力を評価した。
【0046】
【表3】

※洗浄力は、酵素なしの場合(対照)の洗浄力を100%として相対値で示す。
【0047】
【表4】

※洗浄力は、酵素なしの場合(対照)の洗浄力を100%として相対値で示す。
【0048】
表3及び表4の結果から、代表的な液体洗浄剤組成においても、ペクチン分解酵素と、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素源との組み合わせにより、衣類に付着した泥汚れに対し、高い洗浄力を示すことが分かった。
【0049】
<実験3>
表5及び表6に示した組成から常法により各洗浄剤組成物を調製し、前記<実験1>と同様に作製した泥人工汚垢布3枚に塗布し、軽く手もみした後、前記<実験1>と同様に、Terg−0−tometer(U.S.Testing社製)を用いて、市販の衣料用洗剤(商品名:トップ(ライオン(株)製))で、25℃、120rpm、10分間洗浄した。その後、すすぎ、乾燥工程終了後、反射率を測定し洗浄力を評価した。
【0050】
【表5】

※洗浄力は、酵素なしの場合(対照)の洗浄力を100%として相対値で示す。
【0051】
【表6】

※洗浄力は、酵素なしの場合(対照)の洗浄力を100%として相対値で示す。
【0052】
表5及び表6の結果から、洗濯の前処理剤としての酵素の使用においても、ペクチン分解酵素と、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素源との組み合わせにより、高い洗浄力を示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の洗浄剤組成物は、布帛、衣料洗浄用として、洗濯機等による通常の洗浄条件での使用を始め、予浸洗浄、塗布洗浄等の条件で使用、更には、陶器やガラス等の硬質表面洗浄等の条件での使用など、幅広い用途で好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペクチン分解酵素と、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素源とを含有することを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
過酸化水素源が、過酸化水素、過酸化水素発生化合物及び過酸化水素産生酵素から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
更にマンガン化合物を含有する請求項1から2のいずれかに記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−160891(P2006−160891A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354712(P2004−354712)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】