説明

洗浄剤組成物

【課題】肌への刺激が少ない洗浄剤組成物は、種々開発されているが、特に敏感肌の人、アトピー性体質の人、シャンプー回数が多いヘアサロン従業者等の手荒れ等に対しては、いずれも刺激が少ないというだけであって、根本的に肌を保護するものではなかった。ここでは、肌の保湿成分であるヒアルロン酸の分解を阻止することにより、手荒れを効果的に防止する。
【解決手段】陰イオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤が0.5〜30.0重量%に対し、シソ科植物であるレモンバーム(メリッサ)から抽出したレモンバームエキスを0.01〜10重量%の割合で含有させることにより、両者の相乗効果により洗浄力を損なうことなく、肌に対する刺激や悪影響を低減したシャンプーなどへの利用が可能な洗浄剤組成物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンプーなどに好適に利用される低刺激性の洗浄剤組成物に関し、詳しくは抗アレルギー効果を有する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低刺激性の洗浄剤組成物としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩に、N−アシルサルコシン塩、N−アシルメチルタウリン塩、N−アシルグルタミン酸塩といったアミノ酸系界面活性剤を併用したものが知られている。しかしながら、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩に、アミノ酸系界面活性剤を併用した場合、起泡性や泡持続性が低下し、かつ泡質も粗くなるという問題点があった。そこで、この点を改善するために、アミノ酸系界面活性剤としてN−アシルアラニン塩型界面活性剤を用いたものが開発されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この他に植物性有効成分であるカホクザンショウ抽出物を、化粧品的に許容し得る他の賦形剤と共に用いたものもあった。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−47148号公報(第2頁)
【特許文献2】特表2003−530332号公報(第3−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の洗浄剤組成物のうち、前者のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩に、N−アシルアラニン塩型界面活性剤を併用したものは、低刺激性のシャンプーにおける泡質、起泡性および泡持続性の改善を目的としたものであり、皮膚の保湿性の向上や、抗アレルギー性の向上を目的としたものではなかった。そのため、従来の一般的なシャンプーに比し、低刺激ではあるものの、肌の弱い人や職業的に常時、接するヘアーサロンの従事者などにおいては、依然として手荒れや肌荒れを引き起こすおそれがあり、抜本的な改善には至っていないという問題点があった。
【0005】
また、後者のカホクザンショウ抽出物を用いたものは、サンショウ抽出物が備えている局所麻酔活性や鎮静効果を利用し、特に肌への刺激が強い毛髪処理剤を使用した際の掻痒感や刺激などの不快感を軽減しようとしたものである。したがって、これも本質的に肌を保護し、肌への悪影響を改善したものではなく、使用に伴う手荒れや肌荒れが依然として生じるという問題点を有していた。
【0006】
本発明は、上記従来の洗浄剤組成物が有していた問題点の解決を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題点を解決するために、本発明のうち、請求項1記載の発明は、レモンバームエキスと陰イオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の一種または二種以上を含有させて洗浄剤組成物を構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、レモンバームエキスの含量と、陰イオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の含量を、界面活性剤0.5〜30.0重量%に対し、レモンバームエキス0.01〜10重量%に限定したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成中、陰イオン界面活性剤を、N−アシルアラニン塩型界面活性剤、又はN−アシルグルタミン酸塩型界面活性剤、N−アシルタウリン塩型界面活性剤、N−アシルサルコシン塩型界面活性剤、N−アシルスレオニン塩型界面活性剤、N−アシルグリシン塩型界面活性剤などのアシルアミノ酸系界面活性剤と、限定したことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成中、両性界面活性剤をベタイン型又はイミダゾリン誘導体型両性界面活性剤と、限定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、レモンバームエキスに陰イオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の一種または二種以上を含有させて洗浄剤組成物を構成することとしたので、両者が相乗的に作用し、洗浄剤組成物本来の洗浄力を損なうことなく、肌への刺激や悪影響が低減されるという効果を奏する。
【0012】
また、請求項2〜4では、請求項1記載の発明の構成において、両者の混合割合や、使用する界面活性剤の種類を限定することにより、上記請求項1記載の発明の効果がより顕著に現れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で用いるレモンバームエキスは、シソ科の植物で学名Melissa Officinalis の葉から水、エタノール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ジエチレングリコール、エチルエーテル、その他の溶媒、又はこれらの混液、又はこれらの溶媒もしくは混液に尿素を含有する溶液にて抽出して得られる抽出液、若しくはそれらを凍結乾燥して得られる粉末で、好ましくは薬効成分であるロズマリン酸を分画抽出したエキスを用いるが、必ずしもこの限りではない。
【0014】
本発明において用いられるアシルアミノ酸系界面活性剤としては、通常化粧料に用いられるアシルアミノ酸系界面活性剤であれば特に制限はない。
【0015】
上記レモンバームエキスと併用し得るアシルアミノ酸系界面活性剤(以下(a)成分という)について、(a)成分で表されるアシル基としては、炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸より誘導され、例えば、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸によるアシル基が挙げられ、この他にヤシ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の天然より得られる混合脂肪酸あるいは、合成により得られる脂肪酸(分岐脂肪酸を含む)によるアシル基であっても良い。
【0016】
また塩としては、ナトリウムやカリウム、カルシウムやマグネシウム等の金属、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、アンモニア塩及びリジン・アルギニン等の塩基性アミノ酸が挙げられる。
【0017】
(a)成分は、アシル酸性アミノ酸塩、アシル中性アミノ酸塩等が挙げられる。また、これらのアシルアミノ酸系界面活性剤は光学活性体またはラセミ体のいずれでも良い。具体的には、N−アシルメチルタウリン塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルスレオニン塩、N−アシルアラニン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルグルタミン酸塩等が挙げられる。これらのうち、N−アシルアラニン塩及びN−アシルメチルタウリン塩が好ましい。
【0018】
また、上記アシルアミノ酸系界面活性剤と併用し得る両性界面活性剤としては、特に制限はなく、従来からシャンプー組成物に使用されている両性界面活性剤が適宜、選択される。
【0019】
例えば、カルボキシベタイン型、アミドベタイン型、スルホベタイン型、ヒドロキシスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型、ホスホベタイン型、アミノカルボン酸塩型、イミダゾリン誘導体型等が挙げられるが、これらのうち、アミドベタイン型とイミダゾリン誘導体型の使用が好ましい。
【0020】
本発明では、これらのうち、一種または二種以上を選択して用いる。なお、洗浄剤組成物全量における配合量としては、0.5〜30.0重量%が望ましく、その中でも特に1〜25重量%の範囲が好ましい。
【0021】
本発明に係る洗浄剤組成物は、透明液状、乳濁した不透明液状のいずれの形態でも提供され得る。また、本発明の洗浄剤組成物には、本発明の特徴を損なわない範囲で、他の界面活性剤、油分、コンディショニング剤、保湿剤、増粘剤、乳濁剤、色素、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤等の一般的な成分を配合することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の洗浄剤組成物を、シャンプーを例に詳細に説明する。
【0023】
ここにおいて、使用されるシャンプーの基剤としては、従来一般的に使用されているものであれば、どのようなものであっても良く、両性あるいは陰イオン界面活性剤を主体とし、これに種々の賦形剤、たとえば乳化剤、酸化防止剤、増粘剤、香料、染料、防腐剤などを添加したものが、好適に使用し得る。
【0024】
ここでは、一般に入手可能で、市場で比較的低刺激と評価されているシャンプー剤2種(シャンプー剤A,シャンプー剤B)と、種々の界面活性剤及びレモンバームエキスのそれぞれの刺激抑制効果(表1参照)及び前記シャンプー剤や界面活性剤に、レモンバームエキスを併用したときの相乗効果(表2参照)について検証を行った。
【0025】
なお、上記シャンプー剤Aの主な成分は、ココイルグルタミン酸塩、ココイルメチルタウリン塩、ココアンホ酢酸塩であり、シャンプー剤Bの主な成分は、ラウロイルメチルアラニン塩とココイルメチルタウリン塩である。
【0026】
また、界面活性剤については、シャンプー剤に添加されている賦形剤の影響を排除し、界面活性剤自体の違いによる効果の検証を行った。
【0027】
上記シャンプー液及び界面活性剤水溶液に添加するレモンバームエキスは、シソ科植物のレモンバーム(別名:メリッサ/Melissa officinalis )から薬効成分を抽出したものであり、乾燥凍結粉末の形態で一般に入手可能なものである。
【0028】
なお、レモンバーム自体は、従来から種々の薬効を有することが知られており、古くから葉を揉んで傷口に当てることにより、傷の手当てに用いたり、あるいはハーブ茶として飲用するという用途に用いられていた。しかしながらこれらは、いずれもレモンバームの薬効成分を直接的に利用するものであり、本願の洗浄剤組成物のように、界面活性剤の悪影響を抑えるために、間接的に利用するものではなかった。つまり、シャンプーの基剤である界面活性剤は、その強い界面活性作用ゆえに頻繁に触れると多少の肌荒れや手荒れが生じることは避けがたいと考えられていたが、レモンバームエキスを併用する事により、その洗浄効果を損なうことなく、肌荒れや手荒れが効果的に防止されるということが知見された。そのメカニズムは、およそ次のように考えられる。
【0029】
一般に手荒れの原因は、長時間の洗浄により、皮膚の表面を保護した保湿成分が失われることにより、皮膚が損傷を受け易くなるためと考えられる。ここにおいて、皮膚の表面を保護する保湿成分はヒアルロン酸と言われ、このヒアルロン酸を加水分解する酵素がヒアルロニダーゼである。このヒアルロニダーゼは、抗原進入時に生成される抗体が、粘膜に多く分布する肥満細胞の感作時に活性化され、ヒスタミンなどの物質を脱顆粒させるときに働く酵素である。したがって、このヒアルロニダーゼを阻害することでアレルギーの抑制が可能となり、同時にかゆみや保湿成分の分解も抑制されるからだと考えられる。
【0030】
下記表1は、市販シャンプー剤A,B及びココアンホプロピオン酸塩、ココアンホ酢酸塩、コカミドプロピルベタイン、ラウロイルメチルアラニン塩及びレモンバームエキスが有するヒアルロニダーゼ阻害率を測定したもので、表2は、上記各試料にレモンバームエキスを含有させたときのヒアルロニダーゼ阻害率を測定したものである。
【0031】
なお、このヒアルロニダーゼ阻害率の測定は、Morgan- Elson 法に準拠して行った。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
上記表1及び表2から明らかなように、何れの場合も単独で使用するよりもレモンバームエキスを含有させた場合のほうが、ヒアルロニダーゼ阻害効果が高いことが解る。とりわけ、陰イオン界面活性剤であるラウロイルメチルアラニン塩にレモンバームエキスを含有させた場合、その効果が顕著に現れた。
【0035】
以上のように肌荒れを引き起こす原因は、皮膚表面を保護する保湿成分であるヒアルロン酸量の低下であるといえる。このヒアルロン酸を分解する酵素がヒアルロニダーゼであり、このヒアルロニダーゼの生成を阻止することにより、本発明の洗浄剤組成物は、肌荒れや手荒れを効果的に防止するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レモンバームエキスと陰イオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の一種または二種以上を含有することを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
レモンバームエキスの含量が0.01〜10重量%、陰イオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の含量が0.5〜30.0重量%である請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
陰イオン界面活性剤が、N−アシルアラニン塩型界面活性剤、又はN−アシルグルタミン酸塩型界面活性剤、N−アシルタウリン塩型界面活性剤、N−アシルサルコシン塩型界面活性剤、N−アシルスレオニン塩型界面活性剤、N−アシルグリシン塩型界面活性剤などのアシルアミノ酸系界面活性剤である請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
両性界面活性剤が、ベタイン型又はイミダゾリン誘導体型両性界面活性剤である請求項1記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−298955(P2006−298955A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117936(P2005−117936)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(500315884)株式会社ナンバースリー (7)
【Fターム(参考)】