説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを用いたフィルム

【課題】硬化塗膜が高い表面硬度と屈曲性とを兼備し、更に、硬化時の耐カール性にも優れる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ウレタン(メタ)アクリレート(A)、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)及び重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、フィルム基材のような薄膜のプラスチック基材に塗工した際にも高い硬度が得られ、且つ、屈曲性にも優れる硬化塗膜が得られるコーティング用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、及び該組成物を硬化させた硬化層を有するフィルム基材に関する。
【背景技術】
【0002】
成型品やディスプレイ等の表面を保護し、傷を付き難くする目的で用いられる保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(以下「PETフィルム」と略記する)やアセチル化セルロース樹脂フィルム(以下「TACフィルム」と略記する)などのプラスチックフィルム基材上に、樹脂製のハードコート剤を塗布してハードコート層を設置して得られる。該ハードコート層に要求される性能は、傷が付き難いよう硬化塗膜が高い硬度を有することに加え、保護フィルムを屈曲部の保護に用いた場合にも割れが生じないよう高い屈曲性を有すること、硬化させた際の硬化収縮によるカールが生じない、所謂耐カール性を有することなどが挙げられる。
【0003】
保護フィルムの耐傷性を向上させるために該ハードコート層をより高硬度化する手法として、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びトリペンタエリスリトールオクタアクリレートを含有してなる樹脂組成物を、厚さ80μmのTACフィルム上に膜厚12μmで塗布して硬化させて得られるフィルムが、鉛筆硬度5H程度の硬度を発現する技術が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、このような樹脂組成物の硬化塗膜は、表面硬度は高いものの、硬化時に生じるカールが大きく、また、硬く脆いものであるために、塗膜を屈曲させた際に割れが生じてしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−286924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、硬化塗膜が高い表面硬度と屈曲性とを兼備し、更に、硬化時の耐カール性にも優れる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)及び重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、硬化塗膜が高い表面硬度と屈曲性及とを兼備し、硬化時の耐カール性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)及び重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて得られる硬化層を有することを特徴とするフィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のハードコート剤と比較して、硬化塗膜の表面硬度と屈曲性とをより高いレベルで兼備し、かつ、硬化時の耐カール性にも優れる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、樹脂組成物の必須成分としてウレタン(メタ)アクリレート(A)を含有することにより、屈曲性に富み、硬化時の耐カール性に優れる硬化塗膜が得られる。
【0011】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、例えば、ポリイソシアネート化合物(a1)と、分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a2)とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A1)や、ポリイソシアネート化合物(a3)と、分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a4)と、ポリオール化合物(a5)とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A2)が挙げられる。
【0012】
まず、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)について説明する。前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の原料に用いる前記ポリイソシアネート化合物(a1)は、各種のジイソシアネートモノマーや、分子内にイソシアヌレート環構造を有するヌレート型ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0013】
前記ジイソシアネートモノマーは、例えば、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
【0014】
シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;
【0015】
1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0016】
前記分子内にイソシアヌレート環構造を有するヌレート型ポリイソシアネート化合物は、例えば、ジイソシアネートモノマーとモノアルコールおよび/又はジオールとを反応させて得られるものが挙げられる。該反応で用いるジイソシアネートモノマーとしては前記した各種のジイソシアネートモノマーが挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。また、該反応で用いるモノアルコールは、ヘキサノール、オクタノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノール、n−ヘプタデカノール、n−オクタデカノール、n−ノナデカノール等が挙げられ、ジオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらモノアルコールやジオールはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0017】
これらポリイソシアネート化合物(a1)の中でも、屈曲性に優れる硬化塗膜が得られる点で、前記ジイソシアネートモノマーが好ましく、前記脂肪族ジイソシアネート及び前記脂環式ジイソシアネートがより好ましい。
【0018】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の原料に用いる前記分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a2)は、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセリンジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート化合物;
【0019】
アクリル酸4−ヒドロキシフェニル、アクリル酸β−ヒドロキシフェネチル、アクリル酸4−ヒドロキシフェネチル、アクリル酸1−フェニル−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシ−4−アセチルフェニル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の分子構造中に芳香環を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0020】
これら分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a2)の中でも、屈曲性に優れ、かつ、高い表面硬度を有する硬化塗膜が得られる点で、グリセリンジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の分子構造中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する脂肪族(メタ)アクリレート化合物が好ましい。更に、より高い表面硬度を示す硬化塗膜が得られる点で、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の分子構造中に(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する脂肪族(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。
【0021】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)を製造する方法は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(a1)と、前記分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a2)とを、前記ポリイソシアネート化合物(a1)が有するイソシアネート基と、前記分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a2)が有する水酸基とのモル比[(NCO)/(OH)]が、1/0.95〜1/1.05の範囲となる割合で用い、20〜120℃の温度範囲内で、必要に応じて公知慣用のウレタン化触媒を用いて行う方法などが挙げられる。
【0022】
前記ポリイソシアネート化合物(a1)と、前記分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a2)とから前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)を製造する際、その反応はペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートや、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど、前記(メタ)アクリレート化合物(a2)以外のアクリレート化合物を含む系で行っても良い。このような方法で得られるウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、具体的には、前記ポリイソシアネート化合物(a1)と、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートとを含有する原料を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートや、前記ポリイソシアネート化合物(a1)と、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートとを含有する原料を反応させて得られるウレタンアクリレート等が挙げられる。該反応で得られる生成物は、屈曲性と高い表面硬度とを兼備する硬化塗膜が得られる点で、重量平均分子量(Mw)が400〜5,000の範囲であることが好ましく、800〜3,500の範囲であることがより好ましい。
【0023】
尚、本発明において、重量平均分子量(Mw)は下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。組成物の重量平均分子量(Mw)は、通常の樹脂と同様の方法で測定することが出来る。
【0024】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0025】
次に、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)について説明する。前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)の原料に用いるポリイソシアネート化合物(a3)は、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の原料として列記した前記ポリイソシアネート化合物(a1)などが挙げられる。
【0026】
これらポリイソシアネート化合物(a3)の中でも、より高い屈曲性を有し、表面硬度も高い硬化塗膜が得られる点で、前記ジイソシアネートモノマーが好ましい。
【0027】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)の原料に用いる分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a4)は、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の原料として列記した前記(メタ)アクリレート化合物(a2)などが挙げられる。中でも、より高い表面硬度を有する硬化塗膜が得られる点で、グリセリンジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の分子構造中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する脂肪族(メタ)アクリレート化合物が好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の分子構造中に(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する脂肪族(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。
【0028】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)の原料に用いるポリオール化合物(a5)は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族ポリオール;
【0029】
ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、1,4−ベンゼンジメタノール、3,3’−ビフェニルジオール、4,4’−ビフェニルジオール、ビフェニル−3,3’−ジメタノール、ビフェニル−4,4’−ジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、ナフタレン−2,6−ジメタノール、4,4’,4’’−メチリジントリスフェノール等の芳香族ポリオール;
【0030】
前記脂肪族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテル変性脂肪族ポリオール;
【0031】
前記芳香族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテル変性芳香族ポリオール;
【0032】
前記脂肪族ポリオールと、ε−カプロラクトン等のラクトン化合物との重縮合によって得られるラクトン変性脂肪族ポリオール:
【0033】
前記芳香族ポリオールと、ε−カプロラクトン等のラクトン化合物との重縮合によって得られるラクトン変性芳香族ポリオール:
【0034】
マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等の脂肪族ジカルボン酸と、前記芳香族ポリオールとを反応させて得られる芳香環含有ポリエステルポリオール;
【0035】
フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びその無水物と、前記脂肪族ポリオールとを反応させて得られる芳香環含有ポリエステルポリオールなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。中でも、屈曲性に富み、硬化時の耐カール性に優れる硬化塗膜が得られる点で、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールS、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びこれらと種々の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテル変性ビスフェノール化合物が好ましい。
【0036】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)を製造する方法は、例えば、ポリオール化合物(a5)とポリイソシアネート化合物(a3)とを、前記ポリオール化合物(a5)が有する水酸基と、ポリイソシアネート化合物(a3)が有するイソシアネート基とのモル比[(OH)/(NCO)]が1/1.5〜1/2.5の範囲となる割合で用い、20〜120℃の温度範囲内で、必要に応じて公知慣用のウレタン化触媒を用いて反応させ、反応生成物としてイソシアネート基含有中間体を得、次いで、該中間体と前記分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a4)とを、前記分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a4)が有する水酸基と、前記中間体が有するイソシアネート基とのモル比[(OH)/(NCO)]が1/0.95〜1/1.05の範囲となるように用い、20〜120℃の温度範囲内で、必要に応じて公知慣用のウレタン化触媒を用いて行う方法等が挙げられる。
【0037】
この他、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)を製造する方法は、例えば、前記ポリオール化合物(a5)、前記ポリイソシアネート化合物(a3)及び前記分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a4)を一括に仕込んで反応させる方法や、ポリイソシアネート化合物(a3)と、前記分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a4)とを反応させた後に、ポリオール化合物(a5)を反応させる方法が挙げられる。
【0038】
前記ポリイソシアネート化合物(a3)と、前記分子構造中に水酸基を一つ有する(メタ)アクリレート化合物(a4)と、前記ポリオール化合物(a5)から前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)を製造する際、その反応はペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートや、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど、前記(メタ)アクリレート化合物(a4)以外のアクリレート化合物を含む系で行っても良い。このような方法で得られるウレタン(メタ)アクリレート(A2)は、具体的には、前記ポリイソシアネート化合物(a1)と、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートと、前記ポリオール化合物(a5)とを含有する原料を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートや、前記ポリイソシアネート化合物(a1)と、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートと、前記ポリオール化合物(a5)とを含有する原料を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。該反応で得られる生成物は、屈曲性と高い表面硬度とを兼備する硬化塗膜が得られる点で、重量平均分子量(Mw)が400〜5,000の範囲であることが好ましく、800〜3,500の範囲であることがより好ましい。
【0039】
これらウレタン(メタ)アクリレート(A)の中でも、屈曲性と表面硬度とをより高いレベルで兼備し、硬化時の耐カール性にも優れる硬化塗膜が得られる点で、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)が好ましい。
【0040】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリロイル基当量は、より高い表面硬度を示し、かつ、硬化時の耐カール性にも優れる硬化塗膜が得られる点で、100〜350g/eqの範囲であることが好ましく、130〜250g/eqの範囲であることがより好ましく、140〜200g/eqの範囲であることが特に好ましい。
【0041】
本発明では、樹脂組成物の必須成分としてトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)を用いることにより、非常に高い表面硬度を示し、かつ、硬化時の耐カール性に優れる硬化塗膜が得られる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、高い表面硬度と屈曲性とを兼備する硬化塗膜が得られる点で、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、前記トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)との質量の比[(A)/(B)]が90/10〜10/90の範囲であることが好ましく、80/20〜40/60の範囲であることがより好ましい。
【0043】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が含有する重合開始剤(C)は、例えば、ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン;キサントン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンなどのキサントン、チオキサントン;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのアシロインエーテル;ベンジル、ジアセチルなどのα-ジケトン;テトラメチルチウラムジスルフィド、p−トリルジスルフィドなどのスルフィド;4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸;3,3′-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノ)クマリン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2,2′−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフオリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4′−メチルジメチルスルフィド、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタ−ル、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリルニ量体、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−[ジ−(エトキシカルボニルメチル)アミノ]フェニル−S−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(4−エトキシ)フェニル−S−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−エトキシ)フェニル−S−トリアジンアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0044】
前記重合開始剤の市販品としては、例えば、イルガキュア−184、同149、同261、同369、同500、同651、同754、同784、同819、同907、同1116、同1664、同1700、同1800、同1850、同2959、同4043、ダロキュア−1173(チバスペシャルティーケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASFF社製)、カヤキュア−DETX、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA〔日本化薬(株)製〕、VICURE−10、同55(STAUFFER Co.LTD製)、TRIGONALP1(AKZO Co.LTD製)、SANDORY 1000(SANDOZ Co.LTD製)、DEAP(APJOHN Co.LTD製)、QUANTACURE−PDO、同ITX、同EPD(WARD BLEKINSOP Co.LTD製)等が挙げられる。
【0045】
前記光重合開始剤は、結晶の析出がなく、かつ、十分な硬化性を発揮する点で、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で用いることが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で用いることがより好ましい。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)、及びトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)に加え、これら以外の(メタ)アクリレート単量体(D)を含有してもよい。
【0047】
前記(メタ)アクリレート単量体(D)は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレートなどのモノ(メタ)アクリレート;
【0048】
ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、などのジ(メタ)アクリレート;
【0049】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2―ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;
【0050】
ぺンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0051】
これら(メタ)アクリレート単量体(D)の中でも、より高い硬度を示す塗膜が得られる点で、前記トリ(メタ)アクリレートまたは4官能以上の(メタ)アクリレートが好ましく、アクリロイル基を有する化合物が好ましく、ぺンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0052】
また、本発明の樹脂組成物が前記(メタ)アクリレート単量体(D)を含有する場合、屈曲性と高い表面硬度とを兼備し、かつ、硬化時の耐カール性にも優れる硬化塗膜が得られる点で、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)、前記トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)及び前記(メタ)アクリレート単量体(D)の合計100質量部中、前記(メタ)アクリレート単量体は60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、更に種々の添加剤を含有しても良い。を添加することができる。これらの化合物としては、例えば、溶剤、光増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0054】
前記溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン等のケトン溶剤;
【0055】
エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル溶剤;
【0056】
ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸−n−ブチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−nーブチル、酢酸−n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のエステル溶剤;
【0057】
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール等のアルコール溶剤;
【0058】
トルエン、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150、スワゾール1800、スワゾール310、アイソパーE、アイソパーG、エクソンナフサ5号、エクソンナフサ6号等の炭化水素溶剤が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)やトリペンタエリスリトールオクタアクリレートの溶解性に優れる点で、前記エステル溶剤が好ましい。
【0059】
前記光増感剤は、例えば、アミン類、尿素類、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物またはニトリル類もしくはその他の含窒素化合物等が挙げられる。
【0060】
前記紫外線吸収剤は、例えば、2−[4−{(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ}−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−{(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ}−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン誘導体、2−(2′−キサンテンカルボキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−o−ニトロベンジロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−キサンテンカルボキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−o−ニトロベンジロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0061】
前記酸化防止剤は、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0062】
前記シリコン系添加剤は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体など如きアルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン類が挙げられる。
【0063】
前記フッ素系添加剤は、例えば、DIC株式会社製「メガファック」シリーズ等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0064】
前記帯電防止剤は、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド又はビス(フルオロスルホニル)イミドのピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、アンモニウム又はリチウム塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0065】
前記種々の添加剤は、その効果を十分発揮し、また紫外線硬化を阻害しない範囲で用いることが好ましく、具体的には、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100質量部中、0.01〜10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0066】
更に本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、フィルム基材への接着性改良等を目的として、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のその他の樹脂を併用することができる。
【0067】
前記その他の樹脂は、例えば、メチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート系共重合物等のアクリル樹脂;ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン系共重合物;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリブタジエンやブタジエン−アクリロニトリル系共重合物などのポリブタジエン樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。該その他の樹脂は、その効果を十分発揮し、また紫外線硬化を阻害しない範囲で用いることが好ましく、具体的には、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100質量部中、10質量部以下の範囲で用いることが好ましい。
【0068】
更に、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、表面硬度と、硬化時の耐カール性により優れる硬化塗膜を得る目的で、シリカ微粒子を含有しても良い。シリカ微粒子の平均粒径(一次粒子径)は、表面硬度と透明性を兼備する硬化塗膜が得られる点で、1〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましい。該シリカ微粒子は、その効果を十分発揮し、また紫外線硬化を阻害しない範囲で用いることが好ましく、具体的には、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100質量部中、50質量部以下の範囲で用いることが好ましい。
【0069】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化時の耐カール性及び屈曲性に優れる塗膜が得られる点で、その固形分中に前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)を10〜90質量%の範囲で含有することが好ましく、20〜60質量%の範囲で含有することが寄り好ましい。
【0070】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、より表面硬度の高い硬化塗膜が得られる点で、その固形文中に前記トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)を10〜50質量%の範囲で含有することが好ましく、15〜40質量%の範囲で含有することがより好ましい。
【0071】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、成形品やディスプレイ等の表面を保護するハードコード剤として用いることが出来る。このとき、成形品やディスプレイに直接塗布し、硬化させて用いても良いし、各種のプラスチックフィルム表面等に塗布し、硬化させて表面保護用フィルムとして用いても良い。
【0072】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて前記表面保護フィルムを製造する際、該樹脂組成物からなる硬化塗膜層の厚さは、塗工する基材や用途によって異なるが、表面硬度が高く、かつ、硬化時の耐カール性にも優れる硬化塗膜となる点で、硬化後の膜厚が1μm〜20μmの範囲であることが好ましく、5μm〜20μmの範囲であることより好ましい。
【0073】
前記プラスチックフィルム基材は、例えば、PETフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、TACフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、エポキシ樹脂フィルム、メラミン樹脂フィルム、ABS樹脂フィルム、AS樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0074】
本発明のコ活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の塗布方法は、例えば、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0075】
照射する活性エネルギー線は、例えば、紫外線や電子線が挙げられる。紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが調整されるが、高圧水銀灯を使用する場合、通常80〜160W/cmの光量を有したランプ1灯に対して搬送速度5〜50m/分で硬化させるのが好ましい。一方、電子線により硬化させる場合、通常10〜300kVの加速電圧を有する電子線加速装置にて、搬送速度5〜50m/分で硬化させるのが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。例中の部及び%は、特に記載のない限り、すべて質量基準である。
【0077】
尚、本願実施例において、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0078】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0079】
製造例1
ウレタン(メタ)アクリレート(A−1)の製造
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー、滴下ロートおよび温度計を備えた2リットルの清浄なセパラブルフラスコに、窒素ガスを吹き込み、フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、フラスコにヘキサメチレンジイソシアネート336g、酢酸ブチル352g、ジブチル錫ジアセテート0.1gおよびメトキノン0.5g加え、攪拌しながら70℃まで昇温した。次いで、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物〔東亞合成(株)社製「M−305」、水酸基価:110.0、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート=60/40(質量%)〕1,071gを1時間かけて加えた。さらに80℃で3時間保持し、ウレタン(メタ)アクリレート(A−1)の酢酸ブチル溶液1,616gを得た。前記ウレタン(メタ)アクリレート(A−1)の各性状値は以下の通りであった。不揮発分:80%、ガードナー粘度(25℃):U、ガードナーカラー:1以下、固形分の重量平均分子量(Mw):1,250、(メタ)アクリロイル当量:153g/eq
【0080】
製造例2
ウレタン(メタ)アクリレート(A−2)の製造
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー、滴下ロートおよび温度計を備えた2リットルの清浄なセパラブルフラスコに、窒素ガスを吹き込み、フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、フラスコにイソホロンジイソシアネート444g、酢酸ブチル379g、ジブチル錫ジアセテート0.1gおよびメトキノン0.5g加え、攪拌しながら70℃まで昇温した。次いで、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物〔東亞合成(株)社製「M−305」、水酸基価:110.0、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート=60/40(%)〕1,071gを1時間かけて加えた。さらに80℃で3時間保持してウレタン(メタ)アクリレート(A−2)の酢酸ブチル溶液1,616gを得た。前記ウレタン(メタ)アクリレート(A−2)の各性状値は以下の通りであった。不揮発分:80%、ガードナー粘度(25℃):O、ガードナーカラー:1以下、固形分の重量平均分子量(Mw):1,300、(メタ)アクリロイル当量:170g/eq
【0081】
トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B−1):大阪有機化学工業株式会社製「ビスコートV#802」(トリペンタエリスリトールオクタアクリレートを55質量%含有する多官能アクリレート組成物)
【0082】
(メタ)アクリレート単量体(D−1):東亞合成株式会社製「アロニックスM−403」(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物)
(メタ)アクリレート単量体(D−2):東亞合成株式会社製「アロニックスM−450」(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物)
【0083】
実施例1
・活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の配合
第1表に示す配合でアクリル(メタ)アクリレート(A−1)、トリペンタエリスリトールオクタアクリレートを含有する多官能アクリレート(B−1)、及び光重合開始剤(BASF株式会社製「イルガキュア184」)を混合し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0084】
・評価サンプル1の製造
前記配合により得た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、70℃で5分乾燥後、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて200mJ/cm照射し、硬化膜厚7μmの塗膜を作成した。
【0085】
・評価サンプル2の製造
基材をガラス板に変更した以外は前記評価サンプル1の製造と同様にし、評価サンプル2を作成した。
【0086】
・評価
得られた評価サンプル1及び2について、以下に記載する各種の評価を行い、結果を表1に示した。
【0087】
評価1:耐カール性の評価
前記評価サンプル1から5cm四方の塗膜を切り出して試験片を得、該試験片について4角の水平からの浮きを測定し、その平均値で評価した。値が小さいほどカールが小さく、耐カール性に優れた塗膜である。
【0088】
評価2:鉛筆硬度の測定
〔鉛筆硬度〕
前記評価サンプル1について、JIS K5600−5−4に準拠し、500g荷重条件下で鉛筆硬度測定を行った。1つの硬度につき5回測定を行い、傷が付かなかった測定が4回以上あった硬度を硬化塗膜の有する硬度とした。
【0089】
評価3:ユニバーサル硬度の測定
前記評価サンプル2について、微小硬度試験機(フィッシャー・インスツルメンツ株式会社製「フィッシャースコープ H100C」)を用い、以下の条件でユニバーサル硬度を測定した。押し込み強さ:100mN、押し込み深さ:1μm、押し込みスピード:1μm/15sec、測定時環境温度:25℃
【0090】
評価4:塗膜の屈曲性の評価
マンドレル試験機(TP技研社製「屈曲試験機」)を用い、評価用サンプルを試験棒に巻きつけた際にサンプルにクラックが生じるか否かを目視確認する試験を行い、クラックが生じない試験棒の最小径を評価結果とした。該最小径が小さいほど、屈曲性の高い塗膜である。
【0091】
実施例2〜8
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の配合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、評価サンプル1及び評価サンプル2を得、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
比較例1〜3
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の配合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、評価サンプル1及び評価サンプル2を得、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)及び重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂組成物が含有する樹脂成分の合計100質量部中、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)を10〜90質量部の範囲で含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリロイル基当量が100〜350g/eqの範囲である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリイソシアネート化合物(a1)と、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートとを含有する原料の反応生成物である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記反応生成物の重量平均分子量(Mw)が400〜5,000の範囲である請求項4記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート(B)に加えて、これら以外の(メタ)アクリレート単量体(D)を含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて得られる硬化層を有するフィルム。

【公開番号】特開2013−23585(P2013−23585A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159864(P2011−159864)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】