説明

活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、顔料分散組成物、活性エネルギー線硬化型インキ及び活性エネルギー線硬化型塗料

【解決課題】被分散体の分散性能が高く、且つ、耐薬品性及び光沢性が優れている硬化膜を与える活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤を提供する。
【解決手段】
(A)酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上の極性基又は極性分子鎖と、(B)油脂由来のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として有する分子鎖、及びロジン骨格又は水添ロジン骨格を含む分子鎖から選ばれる1種以上の低極性分子鎖と、(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基とを含む樹脂からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、顔料分散組成物、活性エネルギー線硬化型インキ及び活性エネルギー線硬化型塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型インキ及び塗料は、熱硬化型のインキ及び塗料に比べ、瞬時に高エネルギーの活性エネルギー線を照射することによって硬化するために、長大な熱オーブンラインを必要とせず、しかも無溶剤であるため大気汚染の原因になりかねない大量の有機溶剤放出がない。従来の熱硬化型のインキ及び塗料では、大掛かりな有機溶剤蒸気の回収装置が必要で、通常アフターバーナーと呼ばれる燃焼装置で有機溶剤蒸気をガスバーナーで焼却するため、低減を迫られている炭酸ガスを大気中に放出することになる。また、活性エネルギー線硬化型インキ及び塗料は、熱がかからないため、耐熱性の低いプラスチックなどの被印刷物や、被塗装材料においても変形を起こさない、優れた塗料である。このように省エネルギー、省資源かつ低環境負荷という点で優れていることから、近年、活性エネルギー線硬化型インキ及び塗料が普及してきつつある。
【0003】
また、高エネルギー線である電子線(EB)などの活性エネルギー線照射装置としては、小型化品、廉価製品などが出現してきているものの、高エネルギーであるが故にシールドなどが必要で、小型化、低廉化には限界がある。一方、UV(紫外線)照射装置は、装置を小型化し易いため、特に、UV硬化できる、UV硬化型インキ及び塗料が普及してきている。
【0004】
活性エネルギー線硬化型インキ及び塗料は、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有するモノマー又はオリゴマーや、光開始剤などのインキ又は塗料用原材開発とアプリケーションの研究、ランプ、ランプハウス、電源などの照射装置の開発研究による照射強度アップなど、関連分野全体の底上げによって、現在、従来の熱硬化型塗料及びインキと同等の性能を持つに至っているため、熱硬化型塗料及びインキから、活性エネルギー線硬化型インキ及び塗料への置き換えが進みつつある。
【0005】
活性エネルギー線硬化型インキ及び塗料は、硬化時間がきわめて短く、低温で硬化できる特徴から、短時間硬化を必要とする分野、熱変形し易いプラスチック製品の塗工又は印刷する分野に特化して適用されてきている。特にオンデマンドで印刷できるUV硬化型インクジェットインキは、被塗装又は被印刷物を選ばないことから、プラスチックフイルムへの印刷、携帯電話、液晶表示カラーフィルターなどの電子材料へも応用されている。
【0006】
活性エネルギー線硬化型インキ及び塗料は、着色剤である顔料に、ビヒクル(樹脂、溶剤などの総称)を加えた状態で、インキは印刷に適する粘度に、塗料は塗工に適する粘度に調製される。特にUV硬化型インクジェットインキ及びスプレー塗装用インキなどでは、インキの粘度が低粘度である事が要求される。そのため、顔料が分散したインキに粘度変化などが無く、顔料が低粘度のモノマーに対して良く分散していて低粘度であることが要求される。更に、それに加えて、熱硬化型のインキ又は塗料と同様の硬化塗膜の均質性、特に、耐薬品性及び光沢性に優れていることも要求される。
【0007】
前者の低粘度であることに関しては、顔料が均一に分散された顔料分散組成物は、低粘度であることが経験的に知られている。そのため、活性エネルギー線硬化型のインキ又は塗料の製造に用いられる顔料分散組成物には、インキ又は塗料を調製したときに、顔料が、低粘度のビニル基又は(メタ)アクリロイル基などの活性エネルギー線硬化性を有する単官能又は多官能モノマーに対して良く分散することが要求される。
【0008】
後者の硬化塗膜の均質性に関しては、熱硬化の場合だと、分子運動熱により均質化することや、架橋反応も比較的ゆっくり起こるため架橋構造に偏りが少なく、架橋反応による収縮など塗膜内部の歪みが緩和され易いことから、構造的偏りや強度的偏りが少ない。しかし、活性エネルギー線硬化の場合では、瞬時に硬化するために、架橋構造に偏りが起き、架橋反応による収縮など塗膜内部の歪みが緩和され難く、構造的偏り、強度的偏りが生じる事が報告されている。
【0009】
この歪みや構造的偏りは被塗装物又は被印刷物への密着性低下や、塗膜強度又は耐薬品性の低下の原因となる。このため、分子量の高いオリゴマーや柔軟な構造のポリマーを加えて構造的偏りや歪みを緩和するなど様々な方法が取られている。ところが、そうした高分子化合物を添加すると、組成物の粘度を上げてしまう。
【0010】
例えば、特許文献1では、シナジストによって酸性表面に処理し、塩基性高分子分散剤によって、高分散性を得ている。こうした方法で顔料の高分散性を得ることはできるが、ここで用いられる塩基性高分子分散剤自身は、UV硬化になんら寄与しないために、塗膜の均質性は改善できない。また、硬化塗膜からの分散剤ブリードなどに依って、塗膜性能を低下させる要因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−253155号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、顔料の分散性能が高く、且つ、耐薬品性及び光沢性が優れている硬化膜を与える活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、それを用いる顔料分散組成物、活性エネルギー線硬化型インキ及び活性エネルギー線硬化型塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、(A)酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上の極性基又は極性分子鎖と、(B)油脂由来のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として有する分子鎖、及びロジン骨格又は水添ロジン骨格を含む分子鎖から選ばれる1種以上の低極性分子鎖と、(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と、を含む樹脂からなる活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤が、顔料、染料などの色材との高い分散性と硬化膜の優れた耐薬品性とを両立させることができるばかりか、硬化膜の光沢性も向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)(A)酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上の極性基又は極性分子鎖と、(B)油脂由来のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として有する分子鎖、及びロジン骨格又は水添ロジン骨格を含む分子鎖から選ばれる1種以上の低極性分子鎖と、
(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と
を含む樹脂からなる
ことを特徴とする活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、
(2)前記樹脂がポリウレタン樹脂である上記(1)に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、
(3)前記極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)及び活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)の全部又は一部が、前記樹脂の側鎖に含まれてなる上記(1)または(2)に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、
(4)前記極性基又は極性分子鎖(A)の全部又は一部が、塩基性官能基又は塩基性官能基の中和塩基である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、
(5)前記ノニオン系極性分子鎖が、3以上のオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するポリオキシエチレンエーテル分子鎖であり、前記樹脂の主鎖を構成するか又は前記樹脂の主鎖若しくはその末端に結合する側鎖である上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、(6)前記活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)の全部又は一部が、アクリロイル基又はメタアクリロイル基であり、該アクリロイル基又はメタアクリロイル基の濃度が0.2〜3.0mol/kgである上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、
(7)前記樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、
前記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の少なくとも一部は、極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)又は活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)をその側鎖に含んでなるものであり、
前記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の合計モル数に対する、極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)又は活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の合計モル数の割合が、20〜100モル%である
上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、
(8)前記樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、
前記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の少なくとも一部が、
下記一般式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
(一般式(I)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHであり、aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、下記一般式(II):
【0017】
【化2】

【0018】
(一般式(II)中、dは1〜4の整数、eは5〜30の整数である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖を含む基であるか、又は下記一般式(III):
【0019】
【化3】

【0020】
(一般式(III)中、fは1〜4の整数、gは5〜30の整数、hは正の整数、{h/(h+g)}<0.25である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖を含む基である。)
で表わされる水酸基又は活性水素原子を有する化合物、及び
下記一般式(IV):
【0021】
【化4】

【0022】
(一般式(IV)中、R及びRは、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHであり、pは1〜6の整数、qは1〜3の整数、rは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、
下記一般式(V):
【0023】
【化5】

【0024】
(一般式(V)中、iは4〜30の整数、jは0〜6の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VI):
【0025】
【化6】

【0026】
(一般式(6)中、sは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VII):
【0027】
【化7】

【0028】
(一般式(VII)中、tは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VIII):
【0029】
【化8】

【0030】
(一般式(VIII)中、uは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、
炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエステルを含む基であるか、
炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエーテルを含む基であるか、
炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカーボネートを含む基であるか又は
炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカプロラクトンを含む基である。)
で表わされる水酸基又は活性水素原子を有する化合物
である上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、
(9)前記樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、
前記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の少なくとも一部が、
下記一般式(IX):
【0031】
【化9】

【0032】
(一般式(IX)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHであり、aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、下記一般式(X):
【0033】
【化10】

【0034】
(一般式(X)中、dは1〜4の整数、eは5〜30の整数である。)
で表されるノニオン系極性分子鎖含有基である。)
で表される水酸基又は活性水素原子を有する化合物、及び
下記一般式(XI):
【0035】
【化11】

【0036】
(一般式(XI)中、R10及びR11は、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は活性水素原子であり、且つ、R10及びR11のうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHであり、pは1〜6の整数、qは1〜3の整数、rは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、R12は、下記一般式(XII):
【0037】
【化12】

【0038】
(一般式(XII)中、iは4〜30の整数、jは0〜6の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖含有基である。)
で表される水酸基または活性水素原子を有する化合物である
上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、
(10)顔料と上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤とを含有することを特徴とする顔料分散組成物、(11)顔料と上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ、および
(12)顔料と上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型塗料
を提供するものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、顔料の分散性能が高く、且つ、耐薬品性及び光沢性が優れている硬化膜を与える活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤、それを用いる顔料分散組成物、活性エネルギー線硬化型インキ及び塗料を提供することができる。
【0040】
本発明によれば、特に、表面をフタロシアニンスルフォン酸などのシナジストで酸性に処理したカーボンブラック顔料や、ジアゾカップリングにより表面に酸性基を導入したカーボンブラック顔料や、酸化により表面にフェノール性水酸基やカルボキシル基などの酸性基を導入したカーボンブラック顔料を溶剤や樹脂モノマーなどに好適に分散し得る分散剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤(以下、本発明の分散剤とも記載する。)は、
(A)酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上の極性基又は極性分子鎖と、
(B)油脂由来のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として有する分子鎖及びロジン骨格又は水添ロジン骨格を含む分子鎖から選ばれる1種以上の低極性分子鎖と、
(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と
を含む樹脂からなることを特徴とするものである。
【0042】
すなわち、本発明の分散剤は、1分子中に、極性基又は極性分子鎖(A)と低極性分子鎖(B)と活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)とを必須成分として併せ持つ樹脂により構成されることを特徴とするものである。
【0043】
本発明の分散剤を構成する樹脂は、極性基又は極性分子鎖(A)として、酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基、ノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上を含むものであり、本明細書において、極性基又は極性分子鎖(A)には、上記各基又は分子鎖の反応残基も含まれるものとする。
【0044】
上記酸性官能基は、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、スルホン酸基(−SOH)、リン酸エステル基(リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル基を含む)等が挙げられる。
【0045】
上記酸性官能基の中和塩基は、特に制限されないが、例えば、上記酸性官能基が水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基性化合物により中和された基である。例えば、酸性官能基がカルボキシル基の場合、−COONa、−COONH等が挙げられる。
【0046】
上記塩基性官能基としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族アミン基、脂環族アミン基、複素脂環アミン基、芳香族アミン基等の塩基性含窒素官能基等が挙げられる。
【0047】
上記塩基性官能基の中和塩基としては、特に制限されないが、例えば、上記塩基性官能基が、塩酸、硫酸等の酸性化合物により中和された基が挙げられる。
【0048】
上記ノニオン系極性分子鎖としては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル分子鎖又はポリオキシプロピレンエーテル分子鎖、あるいは、これらの共重合物の分子鎖等のノニオン系極性分子鎖が挙げられる。そして、上記ノニオン系極性分子鎖は、3以上のオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するポリオキシエチレンエーテル分子鎖であり、上記樹脂の主鎖を構成するか又は上記樹脂の主鎖若しくはその末端に結合する側鎖であることが、好ましい。上記ポリオキシエチレンエーテル分子鎖におけるオキシエチレンエーテル繰り返し単位数は、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。
【0049】
また、上記ノニオン系極性分子鎖としては、下記一般式(II):
【0050】
【化13】

【0051】
(一般式(II)中、dは1〜4の整数、eは5〜30の整数である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖であるか、または下記一般式(III):
【0052】
【化14】

【0053】
(一般式(III)中、fは1〜4の整数、gは5〜30の整数、hは正の整数、{h/(h+g)}<0.25である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖であると、顔料の分散性が高くなる点で好ましい。
【0054】
dは1〜3の整数であることがより好ましい。また、eは8〜30の整数であることがより好ましい。
【0055】
fは1〜3の整数であることがよりに好ましい。また、gは8〜30の整数であることがより好ましい。hは1〜10の整数であることがより好ましく、1〜6の整数であることがさらに好ましい。
【0056】
本発明の分散剤において、上記酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基及び塩基性官能基の中和塩基は、上記樹脂の主鎖に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよい。また、本発明の分散剤において、ノニオン系極性分子鎖は、上記樹脂の主鎖又はその末端に結合していてもよく、あるいは、上記樹脂の側鎖に結合していてもよく、あるいは、上記樹脂の主鎖を構成していてもよい。
【0057】
本発明の分散剤を構成する樹脂は、低極性分子鎖(B)として、油脂由来のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として有する分子鎖、あるいは、ロジン骨格又は水添ロジン骨格を含む分子鎖から選ばれる1種以上を含むものである。なお、本明細書において、低極性分子鎖(B)には、上記各低極性分子鎖の反応残基も含まれるものとする。
【0058】
上記炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。また、上記炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として有する分子鎖は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれの分子単位を有するものであってもよい。
【0059】
なお、本発明の分散剤が、炭素数4以上の分子単位として、例えば、炭素数6の分子単位を含む場合、この分子単位としては、炭素数が6のアルキレン基の他に、炭素数が5のアルキレン基にメチル基が結合しているもの、炭素数が2のエチレン基にブトキシ基が結合しているもの等も含まれる。つまり、1つの分子単位中の炭素数が6であることを意味する。
【0060】
また、低極性分子鎖(B)としては、下記一般式(V)
【0061】
【化15】

【0062】
(一般式(V)中、iは4〜30の整数、jは0〜6の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖であるか、下記一般式(VI):
【0063】
【化16】

【0064】
(一般式(6)中、sは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖であるか、下記一般式(VII):
【0065】
【化17】

【0066】
(一般式(VII)中、tは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖であるか、下記一般式(VIII):
【0067】
【化18】

【0068】
(一般式(VIII)中、uは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエステルを含む基であるか、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエーテルを含む基であるか、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカーボネートを含む基であるか、又は炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカプロラクトンを含む基であると、顔料の分散性が高くなる点で好ましい。
【0069】
iは6〜30の整数であることがさらに好ましい。また、jは0〜4の整数であることがより好ましい。
【0070】
sは8〜30の整数であることがさらに好ましい。また、tは8〜30の整数であることがさらに好ましい。uは8〜30の整数であることがさらに好ましい。
【0071】
本発明の分散剤において、低極性分子鎖(B)は、上記樹脂の主鎖又はその末端に結合していてもよく、あるいは、上記樹脂の側鎖に結合していてもよく、あるいは、上記樹脂の主鎖を構成していてもよい。
【0072】
本発明の分散剤を構成する樹脂は、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)を有するものである。
【0073】
本明細書において、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)とは、UV光等の活性エネルギー線を照射することにより、顔料分散剤を含む樹脂組成物を硬化せしめる基のことであり、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基等の不飽和基含有基を挙げることができる。なお、本明細書において、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)には、活性エネルギー線硬化性不飽和基の反応残基も含まれるものとする。
【0074】
本発明の分散剤において、活性エネルギー線硬化性不飽和基は、分散剤を構成する樹脂骨格の主鎖又はその末端に結合していてもよく、あるいは、樹脂骨格の側鎖に結合していてもよく、あるいは、樹脂骨格の主鎖を構成していてもよい。
【0075】
本発明の分散剤において、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)の全部又は一部が、アクリロイル基又はメタアクリロイル基である場合、アクリロイル基又はメタアクリロイル基の濃度は0.2〜3.0mol/kgであることが好ましく、0.2〜2.5mol/kgであることがより好ましく、0.3〜2.5mol/kgであることがさらに好ましく、0.3〜2.0mol/kgであることが特に好ましい。
【0076】
上記アクリロイル基又はメタアクリロイル基の濃度が0.2mol/kg未満であると、十分な耐薬品性(耐溶剤性)を得ることができず、3.0mol/kgを超えると不飽和基濃度が高くなりすぎて硬化塗膜の架橋が多くなりその加工性や密着性が低下する。
【0077】
本発明の分散剤としては、極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)及び活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)の全部又は一部が、上記樹脂の側鎖に含まれてなるものが好ましい。
【0078】
本発明の分散剤を構成する樹脂としては、ポリウレタン樹脂、アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができ、これ等の樹脂のうち、ポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0079】
本発明の分散剤においては、上記樹脂骨格を主鎖として、極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)及び活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)が、上記主鎖の側鎖として、あるいは、上記主鎖に結合している側鎖中に、あるいは、上記主鎖を構成する基または分子鎖として含まれる。
【0080】
本発明の分散剤としては、上記樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、上記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の少なくとも一部は、極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)又は活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)をその側鎖に含んでなるものであり、上記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の合計モル数に対する、極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)又は活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物Yの合計モル数の割合が2官能化合物全体の、20〜100モル%であるものが、顔料の分散性を高める上で好ましい。顔料の分散性を高める上からは、上記2官能化合物Yの合計モル数が25〜80モル%であることがより好ましい。
【0081】
上記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の合計モル数に対する、極性基又は極性分子鎖(A)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物と、低極性分子鎖(B)又は活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物との合計モル数の割合が、2官能化合物全体の20〜100モル%であると、極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)又は活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)が櫛の歯型に側鎖として伸びた分散剤が得られ、極性基又は極性分子鎖(A)により有機溶剤に対する親和性を向上させ、低極性分子鎖(B)により顔料に対する親和性を向上することができるので、顔料を好適に分散することが可能となる。
【0082】
極性基又は極性分子鎖(A)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物と、低極性分子鎖(B)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物との合計モル数の割合は、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物全体の、20〜90モル%であることが好ましく、25〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
【0083】
また、上記低極性分子鎖(B)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物のモル数に対する、上記極性基又は極性分子鎖(A)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物のモル数の比(極性基又は極性分子鎖(A)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物のモル数/低極性分子鎖(B)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物のモル数)は、2/8〜8/2であることが好ましく、3/7〜7/3であることがより好ましく、4/6〜6/4であることがさらに好ましい。
【0084】
上記活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の合計量は、上記樹脂全体の活性エネルギー線硬化性不飽和基濃度が、0.3〜3.0当量/kgとなる量であることが好ましく、0.4〜2.5当量/kgとなる量であることがより好ましく、0.5〜2.0当量/kgとなる量であることがさらに好ましい。
【0085】
本発明の分散剤としては、上記樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、上記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の少なくとも一部が、下記一般式(I):
【0086】
【化19】

【0087】
(ただし、一般式(I)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHであり、aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、後述するノニオン系極性分子鎖を含む基である。)
で表わされる水酸基又は活性水素原子を有する化合物、および下記一般式(IV):
【0088】
【化20】

【0089】
(ただし、R及びRは、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHであり、pは1〜6の整数、qは1〜3の整数、rは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、後述する低極性分子鎖を含む基である。)
で表わされる水酸基又は活性水素原子を有する化合物であるものが挙げられる。
【0090】
なお、本明細書において、活性水素原子を有する基とは、イソシアネート化合物と反応する活性水素原子を有する、水酸基以外の基を意味し、例えば、アミノ基を挙げることができる。
【0091】
分散剤として、イソシアネート化合物と、上記一般式(I)及び一般式(IV)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂を用いた場合、イソシアネート化合物は、その全てが2官能のイソシアネート化合物のみであってもよく、あるいは、2官能のイソシアネート化合物と共に、3官能以上のイソシアネート化合物又は1官能のイソアネート化合物とを組合せたものであってもよい。
【0092】
また、分散剤として、イソシアネート化合物と、上記一般式(I)及び一般式(IV)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂を用いた場合、上記一般式(I)及び一般式(IV)で表される2官能化合物とともに、イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素原子を1つ有する1官能化合物を用いてもよい。この場合、イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素原子を1つ有する1官能化合物は、ポリウレタン樹脂の主鎖の末端部を形成する。
上記一般式(I)
【0093】
【化21】

【0094】
で表される2官能化合物において、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHである。よって、R及びRのうちいずれか一方又は両方が、水酸基を有する。aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよい。
【0095】
aは2〜4の整数であることがさらに好ましい。また、bは1〜2の整数であることがより好ましい。さらに、cは1〜3の整数であることがより好ましい。
【0096】
上記一般式(I)で表される化合物において、Rは、下記一般式(II):
【0097】
【化22】

【0098】
(一般式(II)中、dは1〜4の整数、eは5〜30の整数である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(III):
【0099】
【化23】

【0100】
(一般式(III)中、fは1〜4の整数、gは5〜30の整数、hは正の整数、{h/(h+g)}<0.25である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖を含む基である。
【0101】
d、e、f、g、hのより好ましい範囲およびさらに好ましい範囲は、上述した範囲と同様である。
【0102】
また、上記一般式(IV)
【0103】
【化24】

【0104】
で表される2官能化合物において、R及びRは、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHである。よって、R及びRのうちいずれか一方又は両方が、水酸基を有する。pは1〜6の整数、qは1〜3の整数、rは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよい。
【0105】
pは2〜6の整数であることがより好ましく、2〜4の整数であることがさらに好ましい。また、qは2〜3の整数あることがより好ましい。さらに、rは2〜4の整数であることがより好ましく、2〜3の整数であることがさらに好ましい。
【0106】
上記一般式(IV)中、Rは、下記一般式(V):
【0107】
【化25】

【0108】
(一般式(V)中、iは4〜30の整数、jは0〜6の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VI):
【0109】
【化26】

【0110】
(一般式(VI)中、sは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VII):
【0111】
【化27】

【0112】
(一般式(VII)中、tは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VIII):
【0113】
【化28】

【0114】
(一般式(VIII)中、uは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエステルを含む基であるか、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエーテルを含む基であるか、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカーボネートを含む基であるか又は炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカプロラクトンを含む基である。
【0115】
i、j、s、t、uのより好ましい範囲およびさらに好ましい範囲は、上述した範囲と同様である。
【0116】
本発明の分散剤が、イソシアネート化合物と、上記一般式(I)で表される2官能化合物及び一般式(IV)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂からなるものである場合、該ポリウレタン樹脂中における一般式(I)に由来する構成単位と、一般式(IV)に由来する構成単位の比(一般式(I)に由来する構成単位:一般式(IV)に由来する構成単位)は、1:0.1〜0.1:1であることが好ましく、1:0.3〜0.3:1であることがより好ましく、1:0.5〜0.5:1であることがさらに好ましい。
【0117】
本発明の分散剤が、イソシアネート化合物と、上記一般式で表される2官能化合物及び一般式(IV)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂からなるものである場合、このポリウレタン樹脂は、一般式(I)で表される2官能化合物が、一般式(II)〜(III)で表されるノニオン系極性分子鎖を付与するものであり、一般式(IV)で表される化合物が、一般式(V)〜(VIII)等で表される低極性分子鎖を付与するものである。このため、イソシアネート化合物と、上記一般式(I)及び一般式(IV)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂においては、上記一般式(I)及び一般式(IV)で表される2官能化合物により、極性分子鎖(A)及び低極性分子鎖(B)を付与することになり、極性分子鎖(A)および低極性分子鎖(B)により、それぞれ、有機溶剤に対する親和力および顔料に対する親和力を向上させるととともに、分子鎖の主鎖に対して側鎖として多数の極性分子鎖(A)や低極性分子鎖(B)を有する櫛歯型の構造を有することにより、上記親和力を効果的に発揮して、顔料を好適に分散し得ると考えられる。また、一般式(I)に由来する構成単位や一般式(IV)に由来する構成単位中に含まれるアミノ基やアミド基が、顔料表面の酸性官能基等と弱いイオン的親和性を発揮することによっても、顔料を好適に分散し得ると考えられる。
【0118】
上記一般式(I)で表される2官能化合物及び一般式(IV)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂は、後述する方法により作製することができる。
【0119】
本発明の分散剤としては、上記樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、上記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の少なくとも一部が、下記一般式(IX):
【0120】
【化29】

【0121】
(一般式(IX)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHであり、aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、下記一般式(X):
【0122】
【化30】

【0123】
(一般式(X)中、dは1〜4の整数、eは5〜30の整数である。)
で表されるノニオン系極性分子鎖含有基である。)
で表される水酸基又は活性水素原子を有する化合物、及び
下記一般式(XI):
【0124】
【化31】

【0125】
(一般式(XI)中、R10及びR11は、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は活性水素原子であり、且つ、R10及びR11のうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHであり、pは1〜6の整数、qは1〜3の整数、rは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、R12は、下記一般式(XII):
【0126】
【化32】

【0127】
(一般式(XII)中、iは4〜30の整数、jは0〜6の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖含有基である。)
で表される水酸基または活性水素原子を有する化合物であるものが好ましい。
【0128】
a、b、c、d、e、p、q、r、i、jの好ましい範囲およびより好ましい範囲は、上述した範囲と同様である。
【0129】
本発明の分散剤が、イソシアネート化合物と、上記一般式(IX)で表される2官能化合物及び一般式(XI)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂からなるものである場合、該ポリウレタン樹脂中における一般式(IX)に由来する構成単位と、一般式(XI)に由来する構成単位の比(一般式(IX)に由来する構成単位:一般式(XI)に由来する構成単位)は、1:0.2〜0.2:1であることが好ましく、1:0.3〜0.3:1であることがより好ましく、1:0.5〜0.5:1であることがさらに好ましい。
【0130】
分散剤として、イソシアネート化合物と、上記一般式(IX)及び一般式(XI)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂を用いた場合、イソシアネート化合物は、その全てが2官能のイソシアネート化合物のみであってもよく、あるいは、2官能のイソシアネート化合物と共に、3官能以上のイソシアネート化合物又は1官能のイソアネート化合物とを組合せたものであってもよい。
【0131】
また、分散剤として、イソシアネート化合物と、上記一般式(IX)及び一般式(XI)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂を用いた場合、上記一般式(IX)及び一般式(XI)で表される2官能化合物とともに、イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素原子を1つ有する1官能化合物を用いてもよい。この場合、イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素原子を1つ有する1官能化合物は、ポリウレタン樹脂の主鎖の末端部を形成する。
【0132】
分散剤として、イソシアネート化合物と、上記一般式(IX)で表される2官能化合物及び一般式(XI)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂を用いた場合、このポリウレタン樹脂は、一般式(IX)で表される2官能化合物が、一般式(X)で表されるノニオン系極性分子鎖含有基を付与するものであり、一般式(XI)で表される化合物が、一般式(XII)で表される低極性分子鎖含有基を付与するものである。
【0133】
このため、イソシアネート化合物と、上記一般式(IX)で表される2官能化合物及び一般式(XI)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂においては、上記一般式(IX)及び一般式(XI)で表される2官能化合物により、極性分子鎖(A)及び低極性分子鎖(B)を付与することになる。
【0134】
上記一般式(IX)で表される2官能化合物及び一般式(XI)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂は、後述する方法により作製することができる。
【0135】
さらには、上記一般式(I)で表される2官能化合物と一般式(IV)で表される2官能化合物の一部又は全部に代えて、分子内にノニオン系極性分子鎖(A)と低極性分子鎖(B)を有する側鎖ジオールも同様に顔料分散効果があり、用いることができる。このような化合物としては、下記一般式(I’)
【0136】
【化33】

【0137】
(上記一般式(I’)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHであり、aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、R3’は、下記一般式(II’):
【0138】
【化34】

【0139】
(一般式(II’)中、d’は6〜30の整数、eは5〜30の整数である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖であるか、下記一般式(III’):
【0140】
【化35】

【0141】
(一般式(III’)中、f’は6〜30の整数、gは5〜30の整数、hは正の整数、{h/(h+g)}<0.25である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖であるか、
又は下記一般式(V’):
【0142】
【化36】

【0143】
(一般式(V’)中、i’は6〜30の整数、jは5〜30の整数である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖である。)
を挙げることができる。
【0144】
イソシアネート化合物と、上記一般式(I)で表される2官能化合物及び一般式(IV)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂は、イソシアネート化合物とともに、上記一般式(I)で表わされる2官能化合物及び上記一般式(IV)で表わされる2官能化合物を用いているので、顔料分散剤中に、アミノ基を有している。同様に、上記一般式(IX)で表される2官能化合物及び一般式(XI)で表される2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂は、イソシアネート化合物とともに、上記一般式(IX)で表わされる2官能化合物及び上記一般式(XI)で表わされる2官能化合物を用いているので、顔料分散剤中に、アミノ基を有している。そして、顔料として、酸性官能基を有する顔料を用いた場合、上記顔料分散剤中のアミノ基が、顔料中の酸性官能基と、イオン的親和性を発揮するので、顔料の分散性を高めることができる。
【0145】
また、一般式(I)で表される2官能化合物と一般式(IV)で表される2官能化合物の一部又は全部や一般式(IX)で表される2官能化合物と一般式(XI)で表される2官能化合物の一部又は全部に代えて、一般式(I’)で表される2官能性化合物を用いた場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0146】
本発明の分散剤は、顔料分散組成物や、フォトレジスト組成物等の光硬化性樹脂組成物において、顔料を分散させるための分散剤として、好適に用いることができる。そして、本発明の分散剤を用いることにより、顔料の分散性能が高く、アルカリ現像液による現像性が高く、且つ、耐薬品性に優れる硬化膜を与えることができる。
【0147】
本発明の分散剤は、例えば、上述した極性基又は極性分子鎖(A)を有するジオール(a)と、上述した低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)と、上述した活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)及び水酸基を有する化合物(c)と、二官能以上のイソシアネート化合物(d)との反応によって得ることができる。
【0148】
この方法は、上記極性分子鎖(A)を有するジオール(a)及び低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)とを、二官能以上のイソシアネート化合物(d)を介してブロック的に繋ぐことができる点で好ましい。また、この方法では、ジオール(b)として、側鎖に低極性分子鎖(B)を有するものを用いることにより、低極性分子鎖(B)が櫛の歯型に側鎖として伸びた分散剤が得られる点で、好ましい。
【0149】
そして、ジオール(a)中の酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基、ノニオン系極性分子鎖が、本発明の分散剤の極性基又は極性分子鎖(A)に相当する。また、ジオール(b)中の低極性分子鎖が、本発明の分散剤の低極性分子鎖(B)に相当する。また、化合物(c)中の活性エネルギー線硬化性不飽和基が、本発明の分散剤の活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)に相当する。
【0150】
極性基又は極性分子鎖(A)を有するジオール(a)としては、酸性官能基を有するポリオール化合物(a1)、塩基性官能基を有するポリオール化合物(a2)又はノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物(a3)が挙げられる。
【0151】
酸性官能基を有するポリオール化合物(a1)としては、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、スルホン酸基(−SOH)、リン酸エステル基(リン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基、リン酸トリエステル基を含む)及び硫酸エステル等の酸性官能基並びにそれらが塩基性化合物により中和された基から選ばれる1種以上を有するポリオール化合物が挙げられる。
【0152】
塩基性官能基を有するポリオール化合物(a2)としては、ジアルカノールアミン類などの水酸基と塩基性含窒素基を有する化合物等が挙げられる。
【0153】
ノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物(a3)としては、ポリオキシエチレンエーテル鎖、ポリオキシエチレンエーテル−ポリオキシプロピレンエーテルグリコール共重合分子鎖などのノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物が挙げられる。
【0154】
酸性官能基を有するポリオール化合物(a1)としては、トリメチロールプロパンモノリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ硫酸エステル、二塩基酸成分の少なくとも一部がナトリウムスルホ琥珀酸又はナトリウムスルホイソフタル酸であるポリエステルジオール、リシン、シスチン及び3,5−ジアミノカルボン酸などのジアミノカルボン酸類、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5ジヒドロキシ安息香酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸などのジヒドロキシアルカン酸類、ジヒドロキシアルカン酸類のカプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0155】
塩基性官能基を有するポリオール化合物(a2)としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミンなどのN−モノアルキルジアルカノールアミン類、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド等のカチオン系ジオール;
ジメチルアミノエチルアクリレートとジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどのジアルカノールアミンとのマイケル付加反応物;
エチルアミン、ブチルアミンなどのモノアルキルアミンと2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレートのマイケル付加反応物;
ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミンなどのジアルキルアミノアルキルアミンなどの3級アミンと1級アミンからなるジアミンと2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレートのマイケル付加反応物;
N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモロホリンなどの複素環アミンと1級アミンからなる化合物と2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレートのマイケル付加反応物が挙げられる。
【0156】
ノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物(a3)としては、二塩基酸、ジオール類にエチレンオキサイドを付加して3以上のポリオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するポリオキシエチレンエーテルジオール;
ポリオキシプロピレンエーテルグリコール又はポリオキシブチレンエーテルグリコールとポリオキシエチレンエーテルのブロック共重合ジオールのうちポリオキシエチレンエーテル鎖が60モル%以上を占めるブロック共重合ジオール;
ポリオキシエチレンエーテル鎖が60モル%以上を占めるブロック共重合ジオールポリマージオールとポリオキシエチレンエーテルのブロック共重合ジオールなどが、分子主鎖に極性基を有するジオールの代表として挙げられる。
【0157】
また、ノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物(a3)としては、下記式
【0158】
【化37】

【0159】
(ただし、R13は炭素数4〜27のアルキル基であり、w、xは正の整数であり、w+xは5〜50である。)
で表わされるジオール類が挙げられる。
【0160】
また、ノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物(a3)としては、3以上のポリオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するメトキシポリオキシエチレンエーテルアクリレートなどのアルコキシポリオキシエチレンエーテルアクリレートと、ジエタノールアミン又はジプロパノールアミンなどのジアルカノールアミンとをマイケル付加反応して得られるジオールなどが、分子側鎖に極性分子鎖を有するジオールの代表として挙げられる。
【0161】
このような、ノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物(a3)としては、下記一般式(I)
【0162】
【化38】

【0163】
(ただし、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHであり、aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよい)であり、Rは、下記一般式(II)
【0164】
【化39】

【0165】
(一般式(II)中、dは1〜4の整数、eは5〜30の整数である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(III):
【0166】
【化40】

【0167】
(一般式(III)中、fは1〜4の整数、gは5〜30の整数、hは正の整数、{h/(h+g)}<0.25である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖を含む基である。)
で表される2官能化合物を挙げることができる。
【0168】
上記a、b、c、d、e、f、g、hのより好ましい範囲およびさらに好ましい範囲は上述した範囲と同様である。
【0169】
また、ノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物(a3)としては、下記一般式(IX):
【0170】
【化41】

【0171】
(一般式(IX)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHであり、aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、下記一般式(X):
【0172】
【化42】

【0173】
(一般式(X)中、dは1〜4の整数、eは5〜30の整数である。)
で表されるノニオン系極性分子鎖含有基である。)
で表されるで表される2官能化合物を挙げることができる。
【0174】
上記a、b、c、d、eのより好ましい範囲およびさらに好ましい範囲は上述した範囲と同様である。
【0175】
上記一般式(I)で表される化合物や上記(IX)で表される化合物は、上述したように、例えば、5〜30のポリオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するメトキシポリオキシエチレンエーテルアクリレートと、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどのジアルカノールアミンとをマイケル付加反応することにより作製することができる。
【0176】
低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)としては、油脂由来のアルキル基またはアルケニル基を有するジオール(b)を挙げることができ、油脂由来のアルキル基、アルケニル基を有するジオール(b)としては、ひまし油変性ジオール、ひまし油変性ポリオール等の油脂由来の長鎖ポリオール;グリセリンラウリル酸モノエステル、グリセリンステアリン酸モノエステル、グリセリンオレイン酸モノエステルなどの、グリセリン脂肪酸モノエステルを挙げることができる。
【0177】
低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)としては、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオール(b)を挙げることができ、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオール(b)としては、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、 3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8 −オクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどの両末端に水酸基を有するジオール類、側鎖にエステル基を介して長鎖アルキル基或いはアルケニルを有するジオール類、側鎖にエステル基を介して長鎖アルキル基或いはアルケニル基を有するジオール類などを挙げる事ができる。
【0178】
このような炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオール(b)としては、下記式:
【0179】
【化43】

【0180】
(ただし、R14は、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基である。)
で表わされるジオールや、
側鎖としてエーテル基を介して炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有するジオール、例えば、下記式
【0181】
【化44】

【0182】
(ただし、R14は、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基である。)
で表わされるジオールや、
下記式:
【0183】
【化45】

【0184】
(ただし、vは4〜27の整数であり、11、17、21のいずれかであることが好ましい。)
で表されるジオールを挙げることができる。
【0185】
また、低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)としては、炭素数が4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有する高分子ポリオール(b)が挙げることができ、上記高分子ポリオール(b)としては、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールなどが挙げられる。また、上記高分子ポリオール(b)としては、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリラクトンジオール、ブタジエンジオールなどの高分子ジオール等が挙げられる。さらに、高分子ポリオール(b)としては、ロジン骨格又は水添ロジン骨格を有する化合物のポリマージオールが挙げられる。
【0186】
上記高分子ポリオール(b)は、数平均分子量で300〜5000の範囲のものが好ましい。
【0187】
高分子ポリオール(b)は、好ましくは各分子単位の炭素数がいずれも4以上であって、且つ2種以上の分子単位の炭素数平均が4以上、好ましくは6以上である分子単位を繰り返し単位として2個以上有するものである。
【0188】
ポリエステルポリオール(b)としては、以下のポリオール、ポリオール同効成分のうちの1種又は2種以上と、多塩基酸及びそれら無水物等のうちの1種又は2種以上とが縮合反応することによって得られるものが挙げられる。
【0189】
ポリエステルポリオール(b)の原料である、分子単位の炭素数が4以上のポリオールとしては、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8 −オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキシルジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ひまし油変性ジオール、ひまし油変性ポリオール等を挙げることができる。
【0190】
ポリエステルポリオール(b)の原料である、ポリオール同効成分としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル及びステアリルグリシジルエーテル等のアルキルモノグリシジルエーテル類、並びにアルキルグリシジルエステル(製品名カージュラE10:シェルジャパン社製)等のモノエポキシ化合物のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0191】
ポリエステルポリオール(b)の原料である、多塩基酸及びそれらの無水物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸及びダイマー酸等の脂肪族二塩基酸並びにそれらの無水物、ドデセニル無水琥珀酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及び無水トリメリット酸等の芳香族多塩基酸並びにそれらの無水物、無水ヒドロフタル酸及びジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多塩基酸並びにそれらの無水物等が挙げられる。
【0192】
また、上記ポリオール、上記ポリエステルポリオール(b)などの水酸基末端化合物を出発物質としてε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどのラクトン環を持つモノマーの開環付加重合によって得られるポリエステルポリオールもポリエステルポリオール(b)の例として挙げられる。
【0193】
ポリカーボネートジオール(b)としては、1,6ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどのジオールを原料にしたポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0194】
ポリエーテルポリオール(b)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどを出発物質として、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0195】
ポリラクトンジオールとしては、グリコール、ポリエステルポリオールなどの水酸基末端化合物を出発物質として、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどのラクトン環を持つモノマーの開環付加重合によって得られるポリラクトンジオールが挙げられる。
【0196】
ポリブタジエンジオールとしては、下記式:
【0197】
【化46】

【0198】
(ただし、k=0.2、l=0.2,m=0.6で、nは正の整数である。)
で表されるポリブタジエンジオールPoly bdR−15HT、R−45HT(出光興産社製)や、ポリイソプレンジオールPoly ip(出光興産社製)や、
下記式:
【0199】
【化47】

【0200】
(式中、nは正の整数を示す。)
で表わされるα、ω―ポリブタジエングリコールG−1000、G−2000、G−3000(日本曹達社製)などが挙げられる。
【0201】
ロジン骨格又は水添ロジン骨格を有する化合物のポリマージオール(b)としては、パインクリスタルD−6011、D−6240(荒川化学工業社製)が挙げられる。
【0202】
また、低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)としては、下記一般式(IV)
【0203】
【化48】

【0204】
で表される2官能化合物において、R及びRは、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHであり、pは1〜6の整数、qは1〜3の整数、rは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、下記一般式(V):
【0205】
【化49】

【0206】
(一般式(V)中、iは4〜30の整数、jは0〜6の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VI):
【0207】
【化50】

【0208】
(一般式(VI)中、sは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VII):
【0209】
【化51】

【0210】
(一般式(VII)中、tは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VIII):
【0211】
【化52】

【0212】
(一般式(VIII)中、uは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエステルを含む基であるか、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエーテルを含む基であるか、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカーボネートを含む基であるか又は炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカプロラクトンを含む基である。)
で表される2官能化合物を挙げることができる。
【0213】
上記p、q、r、i、j、s、t、uのより好ましい範囲およびさらに好ましい範囲は、上述した範囲と同様である。
【0214】
また、低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)としては、下記一般式(XI):
【0215】
【化53】

【0216】
(一般式(XI)中、R10及びR11は、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は活性水素原子であり、且つ、R10及びR11のうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHであり、pは1〜6の整数、qは1〜3の整数、rは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、R12は、下記一般式(XII):
【0217】
【化54】

【0218】
(一般式(XII)中、iは4〜30の整数、jは0〜6の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖含有基である。)
で表されるで表される2官能化合物を挙げることができる。
【0219】
上記p、q、r、i、jのより好ましい範囲およびさらに好ましい範囲は上述した範囲と同様である。
【0220】
上記一般式(IV)で表される化合物や上記(XI)で表される化合物は、例えば、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテルアクリレートと、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどのジアルカノールアミンとを反応することにより作製することができる。
【0221】
活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)及び水酸基を有する化合物(c)としては、活性エネルギー線硬化性を有するビニル基又は(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する化合物が挙げられる。
【0222】
ビニル基及び水酸基を有する化合物(c)としては、モノヒドロキシエチルビニルエーテル、モノヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノヒドロキシロビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0223】
(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)としては、モノヒドロキシアクリルメタクリレート、モノヒドロキシトリアクリレート、モノヒドロキシペンタアクリレートや、ジヒドロキシモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0224】
また、これらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン又はε−カプロラクトンを付加重合した化合物等であってもよい。
【0225】
(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)に係るモノヒドロキシアクリルメタクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ライトエステルG−201P(共栄社化学社製)、ライトエステルG−101(共栄社化学社製)、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0226】
(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)に係るモノヒドロキシトリアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。
【0227】
(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)に係るモノヒドロキシペンタアクリレートとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが挙げられる。
【0228】
(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)に係るジヒドロキシモノ(メタ)アクリレートとしては、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0229】
更には、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)としては、(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物に40℃以下の低温でジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどのジアルカノールアミンを反応して得られる(メタ)アクリロイル基が1つと水酸基が2つ同一分子内にあるジオール化合物が挙げられ、この化合物を用いると、分子側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することができる。
【0230】
二官能以上のイソシアネート化合物(d)としては、例えば、1,6ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;該脂肪族ジイソシアネートの三量体;低分子トリオールと該脂肪族イソシアネートのアダクト体等の脂肪族ポリイソシアネートや、あるいは、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート及びノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;該脂環族ジイソシアネートの三量体;低分子トリオールと該脂環族イソシアネートのアダクト体等の脂環族ポリイソシアネートや、あるいは、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネートの三量体;低分子トリオールと該芳香脂肪族イソシアネートのアダクト体等の芳香脂環族ポリイソシアネートや、あるいは、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネート;該芳香族ジイソシアネートの三量体;低分子トリオールと該芳香族イソシアネートのアダクト体等の芳香族ポリイソシアネートや、あるいは、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の3官能以上のポリイソシアネートや、あるいは、コスモネートLL(三井化学(株)製:カルボジイミド化した4,4’− ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物)や、あるいは、カルボジライトV−05(日清紡株式会社製:ポリカルボジイミド基を有する末端脂肪族ポリイソシアネート化合物)等のカルボジイミド基を有するポリイソシアネート化合物類等が挙げられる。また、これらは、2種以上を併用してもよい。
【0231】
以下に、酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上の極性基又は極性分子鎖(A)を有するジオール(a)と、低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)と、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)及び水酸基を有する化合物(c)と、二官能以上のイソシアネート化合物(d)との反応により、本発明の分散剤を製造する方法を例示する。
【0232】
極性基又は極性分子鎖(A)を有するジオール(a)と、低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)と、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)及び水酸基を有する化合物(c)と、二官能以上のイソシアネート化合物(d)のモル比を、それぞれ[a]、[b]、[c]、[d]とすると、以下の(1)〜(3)に示す方法により、本発明の分散剤を得ることができる。
【0233】
すなわち、(1)極性基又は極性分子鎖を有するジオール(a)と低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)と二官能以上のイソシアネート化合物(d)とを反応させる第1段階の反応を行い、イソシアネート基末端のポリウレタン樹脂を得る。
【0234】
第1段階の反応条件:{([a]+[b])/[d]}≦1
次いで、第2段階の反応で、得られたイソシアネート基末端のウレタン樹脂と、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレ−ト、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどの活性エネルギー線硬化性不飽和基及び水酸基を有する化合物(c)とを反応させることにより、活性エネルギー線性不飽和基を側鎖及び末端に有する本発明の分散剤を得ることができる。
【0235】
また、(2)([a]+[b]+ [c])/[d] ≧1とし、1段階の反応で、水酸基末端のポリウレタン樹脂を得ることもできる。
【0236】
さらに、(3)第1段階の反応で、([a]+[b]+ [c])/[d]≦1として反応を行い、一旦イソシアネート基末端のポリウレタン樹脂を得た後、第2段階の反応として、
(3−1)上記イソシアネート基末端のポリウレタン樹脂のイソシアネート基に、極性基又は極性分子鎖(A)を有するジオール(a)、低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)から選ばれる何れかのジオールと反応させ、水酸基末端のポリウレタン樹脂を得るか、
(3−2)上記イソシアネート基末端のポリウレタン樹脂のイソシアネート基に、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)及び水酸基を有する化合物(c)として、1以上の活性エネルギー線硬化性不飽和基と1個の水酸基を含む化合物を反応させて活性エネルギー線硬化性不飽和基末端のポリウレタン樹脂を得るか、
(3−3)上記イソシアネート基末端のポリウレタン樹脂のイソシアネート基に、N,N’−ジメチルエタノールアミンのようなN,N’-ジアルキルアルカノールアミンと反応させ、アミン末端のポリウレタン樹脂を得る
こともできる。
【0237】
また、上記(1)〜(3)に示す方法において、低極性分子鎖(B)を有するジオール(b)と共に、(メタ)アクリロイル基又はビニル基などの不飽和二重結合を有するポリオールを用いることで、分子鎖中に不飽和基を導入することもできる。
【0238】
また、必要に応じ、上記イソシアネート基末端のポリウレタン樹脂に、ジオール、アミン、アミノアルコール等を反応させ、分子鎖を伸長させることもできる。
【0239】
上記(1)〜(3)の反応は、無溶媒下又は有機溶媒中で行われる。反応溶媒としては、イソシアネート基と反応しない公知の任意の溶媒が挙げられ、水分や、塩基、強酸等の不純物が少ない溶媒が好ましい。反応温度は、40〜120℃が好ましく、反応温度が低過ぎると反応時間が長くなり、また、反応温度が高過ぎるとイソシアナートの多量化が起こる可能性がある。
【0240】
上記反応では、必要に応じて、公知の任意の触媒を用いることができる。該触媒としては、ジブチル錫ジサクシネート、ジブチル錫ジラウリレート、オクチル酸第一錫などの錫系触媒、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、DBU塩などのアミン系ウレタン触媒が挙げられる。
【0241】
本発明の分散剤の作製方法としては、酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上の極性基又は極性分子鎖(A)を有する(メタ)アクリルモノマー又はマクロマーと、低極性分子鎖(B)を有する(メタ)アクリルモノマー又はマクロマーとを、分子内に官能基を有する開始剤で共重合させ、末端に官能基を有するポリマーを得、次いで、得られたポリマーと、活性エネルギー線硬化性不飽和基を有し且つ上記末端官能基と反応する官能基を有する化合物とを反応させることにより(メタ)アクリル樹脂骨格を有する分散剤を作製する方法が挙げられる。
【0242】
また、本発明の分散剤の作製方法としては、酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上の極性基又は極性分子鎖(A)を有するジオール(又は二塩基酸)と、低極性分子鎖(B)を有する二塩基酸(又はジオール)とを反応させてポリエステルを得、次いで、得られたポリエステルと、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)を有し且つ酸又は水酸基と反応する官能基を有する化合物とを反応させることによりポリエステル樹脂骨格を有する分散剤を作製する方法が挙げられる。
【0243】
また、本発明の分散剤の作製方法としては、酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上の極性基又は極性分子鎖(A)を有するジオールと、低極性分子鎖(B)を有するジオールと、二官能以上のイソシアネート化合物を反応させてイソシアネート基末端のポリウレタン樹脂を得、次いで、得られたイソシアネート基末端のポリウレタン樹脂と、活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)及び水酸基を有する化合物とを反応させることにより活性エネルギー線性不飽和基末端のポリウレタン樹脂骨格の分散剤を作製する方法が挙げられる。
【0244】
本発明の分散剤は、顔料分散組成物、活性エネルギー線硬化型インキ又は塗料において、顔料、染料等の被分散体を分散させるための分散剤として、好適に用いることができる。そして、本発明の分散剤により、被分散体の分散性能が高く、且つ、耐薬品性及び光沢性が優れている硬化膜を与えることができる。
【0245】
次に、本発明の顔料分散組成物について説明する。
【0246】
本発明の顔料分散組成物は、顔料と本発明の活性エネルギー線不飽和基を有する分散剤とを含有することを特徴とするものである。
【0247】
本発明の顔料分散組成物は、顔料が、本発明の分散剤により分散されてなるものであり、上記顔料と共に染料を含有してもよい。
【0248】
本発明の顔料分散組成物に含まれる顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ピランスロン顔料、チオインジゴ顔料、キノフタロン顔料等の有機顔料、あるいは、これらの顔料の表面に酸性官能基又は酸性官能基の中和塩基を結合させて表面改質された、表面改質顔料が挙げられる。
【0249】
上記顔料のうち、カーボンブラックとしては、チャネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラックと呼ばれるコンタクト法で製造されたカーボンブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラックと呼ばれるファーネスト法で製造されたカーボンブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックと呼ばれるサーマル法で製造されたカーボンブラックが挙げられ、これらのうち、生産性に優れたファーネスブラックがより好ましい。
【0250】
本発明の顔料分散組成物に係る表面改質顔料は、酸性官能基又は酸性官能基の中和塩基により、表面が改質された顔料であることが好ましい。言い換えると、表面改質顔料は、表面に酸性官能基を有するもの、あるいは、酸性官能基の全部又は一部が塩基性化合物により中和されたものであることが好ましい。
【0251】
上記表面改質顔料に結合される酸性官能基又は酸性官能基の中和塩基は、本発明の分散剤に係る酸性官能基又は酸性官能基の中和塩基と同様である。これらのうち、表面改質顔料に係る該酸性官能基としては、カルボキシル基及び水酸基の組合せが好ましい。
【0252】
上記表面改質顔料の例として、顔料がカーボンブラックである表面改質顔料について、以下、説明する。
【0253】
上記した表面に酸性基を有する顔料の例としてカーボンブラックについて挙げると、ジアゾニウム塩のカップリング反応により導入されたスルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基などの酸性基を有するカーボンブラック、更にはカーボンブラック表面を酸化剤によって酸化して得られる酸性カーボンブラックが挙げられ、これらのうち、酸性官能基がカルボキシル基と水酸基であるカーボンブラックが好適である。
【0254】
官能基導入前のカーボンブラックに、酸性官能基を導入し、該酸性官能基が導入されたカーボンブラック、すなわち、表面改質顔料を得る方法としては、官能基導入前のカーボンブラックを、高温下で遊離酸素と接触させて酸化する方法や、オゾン、NOなどの酸化剤によって酸化する方法や、臭素及び水によって常圧下又は加圧下で処理する方法や、硝酸や硫酸などの酸化性の溶液で酸化する方法や、また、これらの方法を組合わせた方法や、過酸化水素によって酸化する方法等の酸化法により、官能基導入前のカーボンブラックに、カルボキシル基又は水酸基を導入する方法が挙げられる。また、官能基導入前のカーボンブラックに、酸化法以外で、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基などの酸性官能基を導入する方法としては、ジアゾカップリング法が挙げられる。酸性官能基が導入されたカーボンブラック又はその酸性官能基の一部若しくは全部が塩基性化合物により中和されたカーボンブラックとしては、キャボット・スペシャリティ社製CAB−O−JET200、CAB−O−JET300、CAB−O−JET400などの水分散性のカーボンブラックが挙げられる。
【0255】
そして、本発明の顔料分散組成物としては、有機溶剤中に、上記顔料が、本発明の分散剤により分散されているものを挙げることができる。また、本発明の顔料分散組成物としては、ビニルモノマー又は(メタ)アクリレートモノマー等の活性エネルギー線硬化性の低粘度モノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、必要に応じて公知任意の樹脂を加えた中に、上記顔料が本発明の分散剤により分散されているものを挙げることができる。さらに、本発明の顔料分散組成物としては、上記顔料が有機溶剤およびモノマー中に本発明の分散剤により分散されているものを挙げることができる。
【0256】
上記活性エネルギー線硬化性の低粘度モノマーとしては、公知のビニルモノマー、(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。活性エネルギー線硬化性の低粘度モノマーは、用途によって適宜選択されるが、例えば、テクノネット社「光硬化技術データブック」材料編に掲載のモノマー、整理番号A−101からA−360に挙げられているアクリレートモノマー、M−101からM305に挙げられているメタクリレートモノマー、C−01からC−24及びT−10に挙げられているビニルモノマー、アリルモノマー等の、ビニル基、アリル基、アクリル基又はメタクリル基を有するモノマーが挙げられる。
【0257】
上記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル系溶剤、酢酸メチルグリコールエーテル、酢酸エチルグリコールエーテル、酢酸ブチルグリコールエーテル、酢酸プロピレングリコールメチルエーテルなどのエステルエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンなど公知任意の有機溶剤が挙げられる。
【0258】
本発明の顔料分散組成物は、重合禁止剤を含有してもよく、重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、P−メトキシフェノール、ニトロソアミン塩等が挙げられる。
【0259】
本発明の顔料分散組成物において、有機溶剤中に上記顔料が分散されている顔料分散組成物は、活性エネルギー線硬化性のリキッドインキ又は塗料に好ましく用いられ、また、活性エネルギー線硬化性の低粘度のモノマー中に上記顔料が分散されている顔料分散組成物は、紫外線硬化型インクジェットインキに好ましく用いられる。
【0260】
活性エネルギー線硬化性の低粘度のモノマー中に該顔料が分散されている顔料分散組成物は、リキッドインキ、塗料、特に紫外線硬化型インクジェットインキとして好適に用いられることができる。
【0261】
本発明の顔料分散組成物のうち、有機溶剤中に顔料が分散されている顔料分散組成物は、必要に応じてさらに活性エネルギー線硬化性モノマー或はオリゴマーを加えて活性エネルギー線硬化性のリキッドインキ又は塗料の製造用に用いることができる。また、活性エネルギー線硬化性の低粘度のモノマー中に顔料が分散されている顔料分散組成物の場合は、紫外線硬化型インクジェットインキの製造に用いることができる。
【0262】
本発明の顔料分散組成物中、顔料の含有量は、適宜選択されるが、5〜35重量%であることが好ましく、7〜15重量%であることがより好ましい。また、本発明の顔料分散組成物中、本発明の分散剤の含有量は、顔料の含有量により、適宜選択される。
【0263】
本発明の顔料分散組成物は、本発明の分散剤および上記顔料を必須成分として、必要に応じ、ビニルモノマー、(メタ)アクリレートモノマー等の活性エネルギー線硬化性化合物や、重合禁止剤を加えた上で、ビーズミルをはじめとするホモジナイザー装置等公知任意の分散機によって分散することにより得ることができる。また、本発明の顔料分散組成物を得る際に、上記顔料と共に、染料を混合してもよい。
【0264】
本発明の顔料分散組成物は、活性エネルギー線硬化型インキ及び活性エネルギー線硬化型塗料製造用の顔料分散組成物(ミルベース)として、特に、紫外線硬化型インクジェットインキ製造用の顔料分散組成物(ミルベース)として、好適に用いられる。
【0265】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化型インキおよび活性エネルギー線硬化型塗料について説明する。
【0266】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、顔料と本発明の分散剤とを含有することを特徴とするものである。
【0267】
特に、本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、紫外線硬化型インクジェットインキとして好適である。また、本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、顔料と共に、染料を含有することができる。
【0268】
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料は、顔料と本発明の分散剤とを含有することを特徴とするものである。本発明の活性エネルギー線硬化型塗料は、上記顔料と共に、染料を含有することができる。
【0269】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型インキと本発明の活性エネルギー線硬化型塗料とでは、同様な点も多いので、インキと塗料で同様な点については、以下、適宜「活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)」と記載する。
【0270】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)は、顔料及び本発明の分散剤の他に、活性エネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤を含有することが好ましい。また、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)は、用途に応じ、塗膜平滑助剤、接着性助剤、重合禁止剤等の助剤又は添加剤、あるいは、表面張力の調整や被印刷材料への接着性調整の目的で樹脂又は添加剤を含有することができる。
【0271】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)に係る顔料は、本発明の顔料分散組成物に係る顔料と同様である。
【0272】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)に係る活性エネルギー線硬化性化合物としては、赤外線、紫外線、電子線、X線等を照射させることにより硬化する樹脂、モノマー又はオリゴマーであれば、特に制限されず、通常、活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)の活性エネルギー線硬化性樹脂、モノマー又はオリゴマーとして用いられる化合物が挙げられる。
【0273】
活性エネルギー線硬化性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、モノマー又はオリゴマー、あるいは、ビニル基を有する樹脂、モノマー又はオリゴマーが挙げられる。具体的には、活性エネルギー線硬化性化合物としては、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、これらの2種類以上を併用してもよい。
【0274】
また、活性エネルギー線硬化性化合物としては、1官能(メタ)アクリレートとして、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の置換基を有する(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム;N−メチルモロホリン等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよい。
【0275】
また、活性エネルギー線硬化性化合物としては、多官能(メタ)アクリレートとして、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5 −ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは2種類以上を併用してもよい。
【0276】
活性エネルギー線硬化性化合物としては、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。本発明の活性エネルギー硬化型インキ(塗料)が、紫外線硬化型インクジェットインキの場合、(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、インクジェットインキの粘度を低く抑えたり、好適な硬化性を得るという観点から、紫外線硬化型インクジェットインキの総量に対して、0〜20質量%であることが好ましい。
【0277】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)に係る光重合開始剤は、通常、活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)に用いられる光重合開始剤であれば、特に制限されないが、分子開裂型又は水素引き抜き型のものが好適である。
【0278】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシフォスフィンオキシド、6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モロフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が併用されてもよいし、さらに水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用されてもよい。
【0279】
また、光重合開始剤に対し、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、活性エネルギー線硬化性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用してもよい。もちろん、光重合開始剤や上記増感剤は、活性エネルギー線硬化性化合物への溶解性に優れ、活性エネルギー線の透過性を阻害しないものが好ましい。
【0280】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)に係る該重合禁止剤としては、特に制限されず、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、p−メトキシフェノール、ニトロソアミン塩等が挙げられる。本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)中、重合禁止剤の含有量は、0.01〜0.5重量%であることが好ましい。
【0281】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)中、各配合物の含有量は、用途により適宜選択されるが、概ね、以下の通りである。
【0282】
顔料の含有量は、カーボンブラック等の顔料を用いる場合には、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)中、1.5〜30重量%であることが好ましく、2〜30重量%であることがより好ましく、3〜25重量%であることがさらに好ましく、3〜20重量%であることが特に好ましい。また、顔料としてチタン白(二酸化チタン)を用いる場合には、顔料の含有量は、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)中、1.5〜60重量%であることが好ましい。
【0283】
また、本発明の分散剤の含有量は、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)中、1〜30重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがより好ましく、顔料100重量部に対して、20〜200重量部であることが適当である。活性エネルギー線硬化性化合物の含有量は、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)中、20〜95重量%であることが好ましく、45〜95重量%であることがより好ましく、顔料100重量部に対して、20〜200重量部であることが適当である。光重合開始剤の含有量は、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)中、2〜20重量%であることが好ましく、4〜15重量%であることがより好ましく、顔料100重量部に対して、1〜20重量部であることが適当である。
【0284】
そして、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)が、紫外線硬化型インクジェットインキの場合、紫外線硬化型インクジェットインキ中の各配合物の含有量は、以下の通りであることが好ましい。
【0285】
すなわち、顔料(染料)の含有量は、カーボンブラック等の顔料を用いる場合には、十分な画像濃度及び印刷画像の耐光性が得られる点で、紫外線硬化型インクジェットインキ中、1.5〜20重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがより好ましく、2〜10重量%であることがさらに好ましい。また、顔料としてチタン白(二酸化チタン)を用いる場合には、顔料の含有量は、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)中、1.5〜35重量%であることが好ましい。
【0286】
また、本発明の分散剤の含有量は、紫外線硬化型インクジェットインキ中、1〜30重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがより好ましく、顔料100重量部に対して、20〜200重量部であることが適当である。活性エネルギー線硬化性化合物の含有量は、紫外線硬化型インクジェットインキ中、20〜95重量%であることが好ましく、45〜90重量%であることがより好ましく、顔料100重量部に対して、40〜95重量部であることが適当である。光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化型インクジェットインキ中、2〜20重量%であることが好ましく、4〜15重量%であることがより好ましく、顔料100重量部に対して、2〜15重量部であることが適当である。
【0287】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)は、用途又は使用状況等に応じて、各配合物の種類又は含有量を適宜選択することによって、必要に応じて、溶剤を含有させて、印刷又は塗工に適する粘度に調節される。
【0288】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)の製造方法は、特に制限されず、例えば、本発明の顔料分散組成物に、活性エネルギー線硬化性化合物(活性エネルギー線硬化性を有するモノマー、オリゴマー又は樹脂)及び光重合開始剤を加え、更に、必要に応じて、その他の塗膜平滑助剤、接着性助剤、重合禁止剤等の助剤又は添加剤を加え、粘度や各配合物の含有量を調節して、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ(塗料)を製造することができる。
【0289】
また、本発明の顔料分散組成物からなるミルベース(高濃度顔料分散体)に対し、塗工・印刷に適する粘度になるように上記活性エネルギー線硬化性化合物や有機溶剤等を加えて製造することもできる。
【0290】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。なお、実施例及び比較例における部並びに表中の各成分量は、重量部を表す。
【実施例】
【0291】
実施例1<分散剤1の合成例>
(1)側鎖PEGジオールの合成
撹拌、乾燥窒素、吹き込み管、冷却管付きのフラスコに、ノニオン系極性分子鎖付与成分であるメトキシポリオキシエチレンエーテルアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレート130A)82部とジエタノールアミン18部を40℃以下で仕込み、60℃まで昇温後3時間反応させ、分子量582の側鎖にノニオン系極性分子鎖であるメトキシポリオキシエチレン鎖を有する側鎖PEGジオールを得た。
(2)ポリウレタン分散剤の合成
撹拌、乾燥空気吹き込み管、冷却管付きのフラスコに酢酸プロピル250部、ジエタノールアミン14.4部を仕込み、攪拌冷却しながら、活性エネルギー線硬化性不飽和基付与成分である2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート (昭和電工社製、カレンズMOI)21.2部を徐々に加えた。45℃で1時間反応後、40℃以下で、低極性分子鎖付与成分であるひまし油ジオールHS−2G−150R(豊国製油社製)58部、低極性分子鎖付与成分であるクラレポリエステルジオールP−1050(数平均分子量994、株式会社クラレ製)85部、低極性分子鎖付与成分であるロジン含有ジオール(荒川化学社製パインクリスタルD−6250)102部、上記(1)で得た側鎖PEGジオール66部、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート38部、イソホロンジイソシアネート76部、メチルエチルケトン83部を加えて70℃にて5時間反応させた。更に活性エネルギー線硬化性不飽和基付与成分として、分子中に水酸基と(メタ)アクリロイル基を有するライトアクリレートG−201P(共栄社化学社製)を28部、酸性官能基付与成分としてN-ジメチルアミノエタノール10部を加え、70℃で1時間反応後、ジブチル錫ラウリレート0.3部、メトキノン0.3部、メチルエチルケトン167部を加え、70℃にて5時間反応させ、40℃まで冷却して、(メタ)アクリロイル基濃度が1meq/g、アミン価が23mg/gの主鎖末端にアミノ基を有するポリウレタン樹脂からなる分散剤1を得た。
【0292】
実施例2 <分散剤2の合成例>
(1)側鎖アミノジオールの合成
撹拌、乾燥窒素吹き込み管、冷却管付きのフラスコに酢酸プロピル214部、N−ジメチルプロピルアミン131部を仕込み35℃以下で4−ヒドロキシブチルアクリレート369部を滴下、及び酢酸プロピルを滴下した。60℃に昇温し、60℃で3時間後、分子側鎖に塩基性官能基であるアミノ基を有する側鎖アミノジオールを得た。
(2)ポリウレタン分散剤の合成
撹拌、乾燥空気吹き込み管、冷却管付きのフラスコに酢酸プロピル250部、ジエタノールアミン12.2部を仕込み、攪拌冷却しながら、活性エネルギー線硬化性不飽和基付与成分である2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製カレンズMOI)18部を徐々に加える。45℃で1時間反応後、40℃以下で低極性分子鎖付与成分であるひまし油ジオールHS−2G−150R(豊国製油社製)43部、低極性分子鎖付与成分であるクラレポリエステルジオールP−1010(数平均分子量994、クラレ社製)140部、低極性分子鎖付与成分であるロジン含有ジオール(荒川化学社製パインクリスタルD−6011)33部、上記(1)で得た側鎖アミノジオール136部、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート39部、イソホロンジイソシアネート91部、メチルエチルケトン98部を加えて60℃にて2時間反応させる。更に、活性エネルギー線硬化性不飽和基付与成分として、分子中に水酸基と(メタ)アクリロイル基を有するライトアクリレートG−201P(共栄社化学社製)を57部加えるとともに、ジブチル錫ラウリレート0.3部、メトキノン0.3部、メチルエチルケトン83部加え70℃にて5時間反応させ、40℃まで冷却して、(メタ)アクリロイル基濃度が1.18meq/g、アミン価が20mg/gのポリウレタン樹脂からなる分散剤2を得た。
【0293】
実施例3<分散剤3の合成例>
(1)側鎖ポリエチレングリコール(PEG)ジオールの合成
撹拌、乾燥窒素、吹き込み管、冷却管付きのフラスコにノニオン系極性分子鎖付与成分であるメトキシポリオキシエチレンエーテルアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレート130A、臭素価34.9Br/100g)82部とジエタノールアミン18部を40℃以下の温度で仕込んだ後、60℃で3時間反応させて、分子量が582で側鎖にノニオン系極性分子鎖であるメトキシポリオキシエチレン鎖を有する側鎖ポリエチレングリコール(PEG)ジオールを得た。
(2)側鎖低極性ジオールの合成
撹拌、乾燥窒素、吹き込み管、冷却管付きのフラスコに低極性分子鎖付与成分であるノニルフェニルポリオキシエチレンエーテルアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートNP−4EA)81部とジエタノールアミン 19部を仕込み70℃にて6時間反応させて、分子量555の側鎖に低極性基を有する側鎖低極性ジオールを得た。
(3)ポリウレタン樹脂の合成
撹拌、乾燥空気吹き込み管、冷却管付きのフラスコに酢酸プロピル250部、ジエタノールアミン8部を仕込み、攪拌冷却しながら活性エネルギー線硬化性不飽和基付与成分である2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)12部を徐々に加えた。45℃で1時間反応後、40℃以下の温度で、低極性分子鎖付与成分であるポリエステルジオール(クラレ社製、P−2050、数平均分子量2066)175部、低極性分子鎖付与成分であるロジン含有ジオール(荒川化学社製、パインクリスタルD−6011)27部、上記1.で得た側鎖ポリエチレングリコール(PEG)ジオール53部、上記2.で得た側鎖低極性ジオール79部、1、6−ヘキサメチレンジイソシアネート40部、イソホロンジイソシアネート63部、メチルエチルケトン83部を加えた後、70℃にて5時間反応させた。さらに活性エネルギー線硬化性不飽和基付与成分として、分子中に水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(共栄社化学社製、ライトアクリレートG−201P)46部を加え、70℃で1時間反応後、ジブチル錫ラウリレート0.03部、メトキノン0.03部、メチルエチルケトン167部を加え、70℃にて5時間反応し、40℃まで冷却して(メタ)アクリロイル基濃度0.92meq/g、側鎖に極性基及び低極性基を有するポリウレタン樹脂からなる分散剤3を得た。
【0294】
実施例4〜実施例10<表面改質カーボンブラック分散組成物の調製例>
(1)カーボンブラックの調製
先ず、以下の方法により表面改質カーボンブラック−1〜表面改質カーボンブラック−3を調製した。
<表面改質カーボンブラック−1(CB−1)の合成>
カーボンブラックとして東海カーボン社製TOKABLACK#8300(N2SA:244m/g、DBP吸収量80cm/100g)を用い、該カーボンブラック150gを濃度2.0Nの過硫酸ナトリウム水溶液3000mlに添加して、反応温度60℃、攪拌速度300rpmで10時間反応させて液相酸化した。酸化処理後のカーボンブラック分散液を、限外濾過膜(旭化成社製AHP−1010、分画分子量50000)で分散液中に残存する塩を分離精製するとともにカーボンブラック濃度を10wt%に濃縮処理した。濃縮後の分散液の電気伝導度は0.6mS/cmであった。その後、濃縮液を乾燥機により水を蒸発除去して、乾燥したカーボンブラックを得、次いで、カッターミキサーで粉砕して目開き300μmの篩を全通するカーボンブラック粉末を製造した。このようにして液相酸化して、表面改質されたカーボンブラック(CB−1)を得た。該CB−1のカルボキシル基量は1450μmol/g、DBP吸収量は80cm/100g、STSA比表面積は240m/gであった。
<表面改質カーボンブラック−2(CB−2)の合成>
カーボンブラックとして東海カーボン社製TOKABLACK#8300(N2SA:244m/g、DBP吸収量80cm/100g)を用い、オゾン発生機(ヤマト科学社製CO−101)により圧力0.02MPa、流量5L/分の条件で8時間オゾン酸化した。このようにして、表面改質されたカーボンブラック(CB−2)を得た。該CB−2のカルボキシル基量は711μmol/g、DBP吸収量は80cm/100g、STSA比表面積は237m/gであった。
<表面改質カーボンブラック−3(CB−3)の合成>
キャボット社製キャボジェット300を乾燥し、ミキサーで粉砕し、表面改質されたカーボンブラック(CB−3)を得た。該CB−3のカルボキシル基量は684μmol/g、DBP吸収量は102cm/100g、STSA比表面積は244m/gであった。
【0295】
なお、カルボキシル基量は下記の方法で測定した。
【0296】
0.976Nの炭酸水素ナトリウム水溶液50ml中にカーボンブラック約2〜5gを入れ、6時間程振とうした後、カーボンブラックを濾過分離し、濾液の滴定試験を行ってカーボンブラック表面に形成されたカルボキシル基量を測定した。
(2)カーボンブラック分散組成物の調製
上記実施例1〜実施例3で得たポリウレタン樹脂からなる3種の分散剤1〜3と、上記3種の表面改質カーボンブラック(CB−1〜CB−3)を用いて、表1に示す組成となるようにカーボンブラック分散組成物(CBミルベース組成物)を作製した。
【0297】
すなわち、ポリウレタン樹脂からなる分散剤1〜分散剤3のいずれか10部(固形分5部)とt−ブチルハイドロキノン0.04部、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジオールのジアクリレート(共栄社化学社製ライトエステル−HPPA)50.3部を空気吹き込み乍ら30mbar、50℃、1時間減圧してポリウレタン分散剤の溶媒を溜去した後、表面改質されたカーボンブラックCB−1〜CB−3のいずれか8部と、フェノキシエチルアクリレート(東亜合成社製アロニックスM−101A)11.2部、2−メトキシエチルアクリレート(大阪有機社製2−MTA)5.6部、1φmmジルコニアビーズ200部をガラス瓶に入れ、ペイントシェーカーにて2時間(実施例10においては5時間)分散し顔料含有率10%のカーボンブラック分散組成物(CBミルベース組成物)を作製した。
【0298】
各CBミルベース組成物の粘度を以下の方法により測定した。また、実施例10においては、CBミルベース中のカーボンブラック凝集体の粒径を以下のとおり測定した。各CBミルベースの組成とともに、結果を表1に記載する。
【0299】
なお、表1中において、各成分量は、表面改質カーボンブラック(CB−1〜CB−3)の重量を10重量部としたときの値に換算し、また、ポリウレタン樹脂からなる分散剤1〜分散剤3)の量は固形分量換算した値としている。
(粘度)
E型粘度計(東機産業社製TVE−20L)を用いて、温度25℃における粘度(mPa・s)を測定した。
(粒径)
ヘテロダインレーザードップラー方式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製UPA model 9340)を用いて測定した。測定は、樹脂組成物中のカーボンブラック粒子凝集体の粒度分布曲線から50%累積度数の値を平均粒径、99%累積度数の値を最大粒径として求めた。なお、測定時、粘度調整の溶媒としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いた。
【0300】
【表1】

【0301】
比較例1〜比較例6<比較カーボンブラック分散組成物の調製>
分散剤1〜分散剤3を用いる代わりに比較高分子分散剤として、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)、ソルスパーズ32000(ルーブリゾール社製)、ソルスパーズ39000(ルーブリゾール社製)を用い、分散剤中の溶媒を溜去しなかった以外は、実施例4〜実施例10と同様にして、表2に示す組成を有する各比較カーボンブラック分散組成物(比較CBミルベース組成物)を得た。
【0302】
各分散組成物の粘度を実施例4〜実施例10と同様にして測定した。また、比較例例1〜比較例3においては、分散組成物中のカーボンブラック凝集体の粒径を実施例4〜実施例10と同様の方法で測定した。各分散組成物の組成とともに、結果を表2に記載する。
【0303】
【表2】

【0304】
実施例11〜実施例17<紫外線硬化型インクジェット(UVIJ)インキの調製例>
表3に示すように、実施例4〜実施例10で調製した各CBミルベース組成物35部、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成社製 アロニックスM−350)17部、ジプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製 APG−100)32部、2−メトキシエチルアクリレート(大阪有機社製 2−MTA)10部、イルガキュア369(チバ・ジャパン社製)6部を攪拌し、濾過することにより、実施例11〜17に係るUVIJインキを得た。
【0305】
<紫外線硬化型インクジェット(UVIJ)インキの硬化>
上記各UVIJインキを用い、0.3mm厚未処理アルミニウム板に#6ドローダウンロッドにてインキを塗布し、アイグラフィックス社製UV照射試験機にて以下の照射条件でUV照射してUV硬化塗膜を形成した。
【0306】
(照射条件)
UVランプ :メタルハライドランプ一灯、コールドミラー集光
照射距離 :150mm
ランプ出力 :160W
コンベア速度:10m
ピーク照度 :845mW/cm
積算光量 :550mJ/cm
また、得られた硬化塗膜の黒色度および光沢(%)を以下の方法で測定するとともに、得られた硬化塗膜の硬化性と耐薬品性の指標としてMEKラビング試験を以下の方法により実施した。結果を表3に示す。
(黒色度)
マクベス濃度計(コルモーゲン社製RD−927)を用いて反射光学的濃度(OD値)を測定した。
(光沢)
BYKガードナー社の60度グロスメーターで測定した。
(MEKラビング)
電子天秤に乗せたUV硬化塗膜の板に、200g程度の荷重が掛かるようにMEKを染み込ませた綿棒を押し当てて、2〜3センチの間を同じ箇所往復させて塗膜を擦り(ラビング)、塗膜が剥がれ下地が見えたときの往復ラビング回数を測定した。
【0307】
【表3】

【0308】
比較例7〜比較例12<比較紫外線硬化型インクジェット(UVIJ)インキの調製例>
CBミルベース組成物として、比較例1〜比較例6で調製した比較ミルベースを用いた以外は、実施例11〜実施例17と同様にして、表4に示す組成を有する比較UVIJインキを得た。
【0309】
得られた上記各比較UVIJインキを用いて、実施例11〜実施例17と同様にしてアルミニウム板上にUV硬化塗膜を形成し、実施例11〜実施例17と同様にして得られた硬化塗膜の黒色度、光沢(%)、MEKラビング回数を測定した。結果を表4に示す。
【0310】
【表4】

【0311】
表1および表2より、本発明の分散剤により、粘度が低く、組成物中に含まれる顔料粒子凝集体の粒径が小さい顔料分散組成物を得ることができることが分かり、この顔料分散組成物をミルベースとして用いることにより、樹脂モノマー等からなるUVIJインキ用ビヒクルに対し高い分散性で顔料を分散し得ることが分かる。
【0312】
また、表3および表4より、本発明の分散剤を含むUVIJインキは、優れた黒色度、光沢および耐ラビング性を有する硬化塗膜を提供し得るものであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸性官能基、酸性官能基の中和塩基、塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖から選ばれる1種以上の極性基又は極性分子鎖と、
(B)油脂由来のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として有する分子鎖、及びロジン骨格又は水添ロジン骨格を含む分子鎖から選ばれる1種以上の低極性分子鎖と、
(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と
を含む樹脂からなる
ことを特徴とする活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤。
【請求項2】
前記樹脂がポリウレタン樹脂である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤。
【請求項3】
前記極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)及び活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)の全部又は一部が、前記樹脂の側鎖に含まれてなる請求項1または請求項2に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤。
【請求項4】
前記極性基又は極性分子鎖(A)の全部又は一部が、塩基性官能基又は塩基性官能基の中和塩基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤。
【請求項5】
前記ノニオン系極性分子鎖が、3以上のオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するポリオキシエチレンエーテル分子鎖であり、前記樹脂の主鎖を構成するか又は前記樹脂の主鎖若しくはその末端に結合する側鎖である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤。
【請求項6】
前記活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)の全部又は一部が、アクリロイル基又はメタアクリロイル基であり、該アクリロイル基又はメタアクリロイル基の濃度が0.2〜3.0mol/kgである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤。
【請求項7】
前記樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、
前記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の少なくとも一部は、極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)又は活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)をその側鎖に含んでなるものであり、
前記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の合計モル数に対する、極性基又は極性分子鎖(A)、低極性分子鎖(B)又は活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)を側鎖に含んでなる水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の合計モル数の割合が、20〜100モル%である
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤。
【請求項8】
前記樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、
前記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の少なくとも一部が、
下記一般式(I):
【化1】


(一般式(I)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHであり、aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、下記一般式(II):
【化2】


(一般式(II)中、dは1〜4の整数、eは5〜30の整数である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖を含む基であるか、又は下記一般式(III):
【化3】


(一般式(III)中、fは1〜4の整数、gは5〜30の整数、hは正の整数、{h/(h+g)}<0.25である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖を含む基である。)
で表わされる水酸基又は活性水素原子を有する化合物、及び
下記一般式(IV):
【化4】


(一般式(IV)中、R及びRは、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHであり、pは1〜6の整数、qは1〜3の整数、rは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、
下記一般式(V):
【化5】


(一般式(V)中、iは4〜30の整数、jは0〜6の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VI):
【化6】


(一般式(VI)中、sは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VII):
【化7】


(一般式(VII)中、tは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、下記一般式(VIII):
【化8】


(一般式(VIII)中、uは5〜30の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖を含む基であるか、
炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエステルを含む基であるか、
炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエーテルを含む基であるか、
炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカーボネートを含む基であるか又は
炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカプロラクトンを含む基である。)
で表わされる水酸基又は活性水素原子を有する化合物
である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤。
【請求項9】
前記樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、
前記水酸基又は活性水素原子を有する2官能化合物の少なくとも一部が、
下記一般式(IX):
【化9】


(一般式(IX)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は活性水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHであり、aは1〜6の整数、bは1〜3の整数、cは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、Rは、下記一般式(X):
【化10】


(一般式(X)中、dは1〜4の整数、eは5〜30の整数である。)
で表されるノニオン系極性分子鎖含有基である。)
で表される水酸基又は活性水素原子を有する化合物、及び
下記一般式(XI):
【化11】


(一般式(XI)中、R10及びR11は、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は活性水素原子であり、且つ、R10及びR11のうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHであり、pは1〜6の整数、qは1〜3の整数、rは1〜4の整数であり、R及びRは同一であっても異なってもよく、R12は、下記一般式(XII):
【化12】


(一般式(XII)中、iは4〜30の整数、jは0〜6の整数である。)
で表わされる低極性分子鎖含有基である。)
で表される水酸基または活性水素原子を有する化合物である
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤。
【請求項10】
顔料と請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤とを含有することを特徴とする顔料分散組成物。
【請求項11】
顔料と請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項12】
顔料と請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有する分散剤とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型塗料。

【公開番号】特開2009−241063(P2009−241063A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60670(P2009−60670)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)
【Fターム(参考)】