説明

活性エネルギー線硬化性組成物および該硬化性組成物の安定化方法

【課題】保存安定性に優れたラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物および該硬化性組成物の安定化方法を提供する。
【解決手段】ロジンまたはロジン誘導体で表面処理された顔料を用い、全組成物に対するアビエチン酸の割合が0〜0.3質量%に調整されていることを特徴とするラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジンまたはロジン誘導体で表面処理された顔料を用いるラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物および該硬化性組成物の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インキ、塗料等の色材分野において、分散性、流動性、光沢、鮮明性等の適性を付与するため、ロジンまたはロジン誘導体で表面処理を施した顔料を用いることが一般的に行われている(非特許文献1)。また、近年、インキ、塗料に限らず、種々の分野でラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物を顔料で着色することが行われている。しかし、活性エネルギー線硬化性組成物に用いられる専用の顔料は開発されていないため、一般用途の顔料をこれらの組成物に分散させて、その都度、性能を確認しながら使用しているのが現状である。そのような顔料のなかで、ロジンまたはロジン誘導体で表面処理された顔料(以下、ロジン表面処理顔料ともいう)は分散性、流動性、光沢等の点では有用であるが、ロジン表面処理顔料を分散させた活性エネルギー線硬化性組成物は、往々にして保存時において組成物中のオリゴマー/モノマーが重合して固化してしまうことが多く、安定性の問題がある。そのため、ロジン表面処理顔料を使用する場合、各顔料メーカーの顔料の中から保存安定性の良いものを実験的に確認して使用しているのが現状である。
【0003】
このように、活性エネルギー線硬化性組成物への使用に適したロジン表面処理顔料について客観的な選択基準はなく、また、活性エネルギー線硬化性組成物への使用に適したものとして選択した顔料を用いた場合でも、活性エネルギー線硬化性組成物の保存安定性は顔料のロット毎にばらつくことが多く、保存安定性に関する客観的な基準の確立や、保存安定性に優れた顔料の開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ピグメントハンドブック第3巻第157頁〜167頁(1973年発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために、各種ロジンと各種ラジカル重合性オリゴマー/モノマーとの混合系における保存安定性について各種検討を行い、後述の参考例1に示すように、ロジン中のアビエチン酸量と混合系の保存安定性の間には、明確な相関関係が認められることを見出した。また、反応機構は必ずしも明確ではないが、反応生成物としてモノマーとアビエチン酸の共重合体が得られることから、アビエチン酸がモノマーの重合開始剤として作用していることを見出した。この明確な相関関係はロジン処理顔料とオリゴマー/モノマーとの混合系においても、同様に明確に認められることを見出した(参考例2)。これらの検討結果に基づき、顔料中にアビエチン酸が含まれないか、またはその含有が少量の場合にはラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物の保存安定性が優れることを見出し、本発明に到達した。また、本発明者らは、顔料中のアビエチン酸の含有率を下げる簡便な方法を見出すことにも成功した。すなわち、本発明は、保存安定性に優れたラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物および該硬化性組成物の安定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ロジンまたはロジン誘導体で表面処理された顔料を用い、全組成物に対するアビエチン酸の割合が0〜0.3質量%に調整されていることを特徴とするラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0007】
また、前記顔料が、空気中または酸素雰囲気下で加熱することによりアビエチン酸の含有率を減少させたものであることが好ましい。
【0008】
また、加熱温度が60〜140℃であることが好ましい。
【0009】
本発明は、ラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物に配合するロジンまたはロジン誘導体により表面処理された顔料中のアビエチン酸の含有率を0〜1.0質量%に調整することを特徴とするラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物の安定化方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、ロジン表面処理顔料を配合したにもかかわらず保存安定性に優れる。また、本発明の安定化方法によれば、活性エネルギー線硬化性組成物の保存安定性を害さないロジン表面処理顔料の種類の幅を拡げることができる。さらに、活性エネルギー線硬化性組成物に用いるロジン表面処理顔料の選定に際して、使用前にその適否を判断することが可能になる。また、ロジン表面処理顔料に加熱処理を施すことにより、顔料中のアビエチン酸の含有率を簡便に低減させることができ、活性エネルギー線硬化性組成物に適したロジン表面処理顔料の安定供給が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、ロジンまたはロジン誘導体により表面処理された顔料を含有する。
【0013】
本発明で用いる顔料としてはインキ、塗料等の色材分野に適用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、Pigment Yellow 12, 13, 14, 17, 83等の黄色ジスアゾ顔料、Pigment Yellow 109, 110等のイソインドリノン顔料、Pigment Red 7, 8等の赤色不溶性アゾ顔料、Pigment Red 48:1, 48:2, 52:1, 53:1, 53:2, 57:1等のアゾレーキ顔料、Pigment Red 122等のキナクリドン系顔料、Pigment Blue 15:1, Pigment Green 7, Pigment Green 36等のフタロシアニン系顔料等のロジン表面処理顔料が市販されている。これらの市販のロジン表面処理顔料をそのまま活性エネルギー線硬化性組成物に用いる場合には、顔料のロット毎に硬化性組成物の保存安定性を確認しながら使用しているのが現状である。
【0014】
顔料を表面処理するロジンまたはロジン誘導体としては、ロジン、不均化ロジン、水添ロジンおよびそれらの誘導体があげられる。
【0015】
ロジンまたはロジン誘導体による表面処理方法としては、従来公知の方法でよく、特に限定されないが、例えば、顔料の水性スラリーにロジンのアルカリ塩溶液を加えた後、アルカリ土類塩や酸などでロジンを不溶化し、顔料表面に析出させる方法や、Pigment Red 57:1の場合などは、色素のカップリング反応と同時にロジン塩を析出させる方法があげられる。
【0016】
顔料に対するロジンまたはロジン誘導体の配合量は、特に限定されないが、市販の有機顔料では、通常、顔料100質量部に対して数〜10数質量部程度用いられている。1質量部未満だと、分散性、流動性、光沢等のロジン表面処理の効果が得られず、20質量部を超えると、顔料としての濃度が低下し、より多量の顔料を必要とするため、好ましくない。
【0017】
ロジンは天然の生松脂からテルペンなどの揮発性成分を取り除いた樹脂酸であり、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸などの共役樹脂酸、ビマール酸、デヒドロアビエチン酸などの非共役樹脂酸などの混合物である。そのため、産地、採取時期、採取方法などによりこれらの樹脂酸の組成が大きく異なることが知られている。
【0018】
本発明者らは、参考例1および2に示したように、ロジン中のアビエチン酸とラジカル重合性モノマーが反応して高分子化することを見出し、また、ロジン表面処理顔料を用いた活性エネルギー線硬化性組成物の保存安定性の不均一性は樹脂酸の組成、特に、樹脂中のアビエチン酸の含有量の違いによるものであることを見出した。
【0019】
これらの知見に基づき、本発明においては、ロジンまたはロジン誘導体により表面処理された顔料は、アビエチン酸の含有率が0〜1.0質量%に調整されたものを用いる。これによって、活性エネルギー線硬化性組成物中のアビエチン酸の含有率は、顔料濃度が高い場合でも0.3%以下であり、保存中の活性エネルギー線硬化性組成物は安定化される。
【0020】
また、本発明において「調整する」とは、特に限定されず、特定の手段・方法によって、ロジン表面処理顔料中のアビエチン酸の含有率を1.0質量%を超えた範囲から0〜1.0質量%に低減すること、およびアビエチン酸の含有率が0〜1.0質量%に低減されたロジン表面処理顔料を選択することを含む。
【0021】
アビエチン酸の含有率を0〜1.0質量%に調整する方法としては、特に限定されないが、空気中または酸素雰囲気下で、ロジン表面処理顔料を加熱する方法が好ましい。加熱によってアビエチン酸量は減衰し、代わりに酸化生成物であるデヒドロアビエチン酸量が増加する。このアビエチン酸のデヒドロアビエチン酸への酸化反応は酸素不存在下では起こらない。このデヒドロアビエチン酸は、活性エネルギー線硬化性組成物の保存安定性に悪影響を及ぼさない。
【0022】
顔料の加熱温度は、特に限定されないが、実用的には60℃以上、140℃以下である。加熱温度が60℃未満では、アビエチン酸の含有率が減少しない、もしくは、減少しても、きわめて長時間を要し、実用的ではない。また、140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。加熱温度が140℃を超えると、ロジンの酸化による着色傾向が見受けられ、好ましくない。特に、白色顔料等への適用には多少の影響が懸念される。
【0023】
活性エネルギー線硬化性組成物中のロジンまたはロジン誘導体により表面処理された顔料の含有率は、特に限定されないが、硬化性組成物の分散性、流動性等を適正に付与するという理由から数〜50質量%が好ましい。
【0024】
また、本発明のラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物は、公知のラジカル重合性オリゴマー/モノマーを含有する。ラジカル重合性オリゴマーとしては、特に限定されないが、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレート等があげられる。ラジカル重合性のモノマーとしても、色材用途に用いられる公知の1官能、2官能および多官能のモノマーを何らの限定なく用いることができる。
【0025】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、用途に応じて、その分野で通常使用されている、石油樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの非ラジカル重合性樹脂を併用してもよい。
【0026】
さらに本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、用途に応じて、その分野で通常使用されている各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、光開始剤、光増感剤、充填剤、ワックス、レベリング剤、帯電防止剤、重合禁止剤等を配合してもよい。
【0027】
本発明において「安定化」とは、活性エネルギー線硬化性組成物が保存中に変質しないこと、あるいは性状の変化が少ないことを意味し、具体的には保存中において固化が防止されること、および、結果として固化が生じないことを含む。
【0028】
以下、本発明を、参考例および実施例に基づいて、その原理および実用上の性能を説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各例中の部および%は質量基準によるものである。
【実施例】
【0029】
(固化状態の判定方法)
試料の固化状態(固化度)は試験管を傾けて、その流動性を目視で判定した。判定は0〜10点の11段階とし、完全に全体が固化したものを10点とし、固化の程度が低下するにつれて、点数も低下し、固化が全く見られなかったものを0点とした。
【0030】
(アビエチン酸およびデヒドロアビエチン酸の定量法)
試薬のアビエチン酸およびデヒドロアビエチン酸をそれぞれ20mg秤量し、テトラヒドロフラン10mlに溶解させる。これらの溶液10μlを下記の測定条件にて、液体クロマトグラフに導入した。保持時間35分近くに溶出するアビエチン酸および保持時間31分近くに溶出するデヒドロアビエチン酸のピーク面積を標準として絶対検量線法で定量した。
測定条件:
カラム:(株)島津製作所製のVP−ODS(250×4.6mm i.d.)
移動相:A液 水
B液 メタノール
グラジェント溶出法:
B液濃度:30%(0分)→100%(30分)→100%(40分)→30%(50分)
カラム温度:40℃
流速:1.0ml/min
測定波長:254nm
ロジン表面処理顔料および活性エネルギー線硬化性組成物中のアビエチン酸およびデヒドロアビエチン酸の測定の場合には、試料200mgを秤量し、テトラヒドロフラン10mlを加えて超音波洗浄器で約30分間分散した。分散液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ろ液の10μlを液体クロマトグラフに導入した。
【0031】
参考例1(アビエチン酸共存下のアクリルモノマーの保存安定性)
フェノキシジエチレングリコールアクリレート(PDGA、東亜合成(株)製)100部に対し、表1に示す配合量のアビエチン酸(和光純薬(株)製)を配合した試料を調製し、60℃のオーブン中で密栓し、2週間保存して固化状態を判定した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の結果から、固化の程度はアビエチン酸の濃度に依存していることがわかる。アビエチン酸量が少ないほど固化の進行は遅く、アビエチン酸が0.5部の場合には全く固化は起きなかった。また、実験番号7で得られた固化物をテトラヒドロフランに溶解させ、GPCの測定を行ったところ、重量平均分子量約10000の高分子化合物が生成していた。この高分子化合物を分取し、熱分解ガスクロマトグラフィーを行ったところ、この高分子化合物はPDGAとアビエチン酸の共重合体であった。詳細な反応機構は不明だが、アビエチン酸がPDGAと反応してPDGAの重合が進行したものと思われる。これらの結果から、アビエチン酸の含有率を一定量以下に制限すれば保存中のアクリルモノマーの重合による固化現象は回避でき、事前にアビエチン酸量を低減すれば、保存安定性を確保できることがわかる。なお、PDGAを用いた場合の固化現象と同様の傾向が、2官能モノマーであるポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、EO4モルビスフェノールAジアクリレート、および3官能モノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレートを用いた場合でも観察された。
【0034】
参考例2 ロジン表面処理顔料中のアビエチン酸によるPDGAの保存安定性に及ぼす影響
参考例1で得られたPDGAの保存安定性に及ぼす影響が、ロジン表面処理顔料においても認められることを確認するために、市販のロジン表面処理顔料とPDGAの混合物を作成し、保存性を確認した。すなわち、PDGA100部と市販の各種Pigment Red 48:2 50部を混合分散した。これをガラス製のスクリュー管に入れ、密栓し、60℃のオーブン中で5週間保存して固化状態を判定した。顔料A〜Gおよび混合物中のアビエチン酸含有率(%)、混合物の固化度を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2の結果から、アクリルモノマーと市販の顔料との混合物においても、固化の程度はロジン表面処理顔料中のアビエチン酸の含有率に依存していることが裏付けられた。
【0037】
参考例3
アビエチン酸の含有率を低減させる手段として、空気中または酸素雰囲気下で加熱処理する方法を検討した。具体的には、ガラス製の50ml容のビーカーにアビエチン酸を約1g入れ、蓋をしないまま、60、80、100、120、140または160℃のオーブン中で24時間加熱処理した。加熱処理したアビエチン酸をそれぞれ10mgずつ秤量してメタノールに溶解し、1mg/mlの濃度に調整した後、前述した液体クロマトグラフ測定条件でアビエチン酸の残存率を測定し、同様にして、デヒドロアビエチン酸の増加率(%)を測定した。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
表3の結果から、アビエチン酸の含有率は空気中での加熱温度の上昇とともに減衰し、代わりに酸化生成物のデヒドロアビエチン酸が増加したことがわかった。
【0040】
実施例1
この結果から、アビエチン酸そのものは加熱処理を施すことによって含有率が低減できることがわかったので、ロジンで表面処理された顔料A〜Fについて同様に空気中で140℃にて加熱処理を行い、得られた加熱処理顔料30部、ジアリルフタレート樹脂(ダイソー(株)製)10部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート35部、pーノニルフェノキシアクリレート20部、光開始剤(4、4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン)3部、光開始剤(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)2部、重合禁止剤(ハイドロキノン)0.1部を混合攪拌し、常法に従って3本ロールミルにて分散させ、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。加熱処理後の顔料のアビエチン酸含有率および組成物中のアビエチン酸の含有率と、60℃、5週間での保存安定性を調べた結果を表4に示す。保存安定性は固化度で表示した。
【0041】
実施例2〜9および比較例1〜3
未処理の顔料A、および加熱処理された、または加熱処理されていない顔料B〜Fを用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性組成物を得た。これらの組成物中のアビエチン酸量および保存安定性を表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
表4の結果からわかるように、顔料の加熱処理によって顔料中のアビエチン酸量はほぼ1/3に減少している。また、加熱処理の有無に関わらず、顔料中のアビエチン酸量が1.0%以下、すなわち、組成物中のアビエチン酸が0.3%以下の場合には組成物の保存性は良好である。さらに、実施例7、8、9および比較例1、2、3の結果から、アビエチン酸量が多くて組成物の保存安定性が悪い場合には、顔料の加熱処理により、アビエチン酸量を1.0%以下に下げることができ、保存安定性を改善できることがわかる。
【0044】
比較例4
市販のロジン表面処理顔料Pigment Yellow 14 15部、ジアリルフタレート樹脂(ダイソー(株)製)15部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート35部、p−ノニルフェノキシアクリレート30部、光開始剤(4、4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン)3部、光開始剤(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)2部、重合禁止剤(ハイドロキノン)0.1部を混合攪拌し、常法に従って3本ロールミルにて分散させて黄色の活性エネルギー線硬化性組成物を得た。顔料中のアビエチン酸量、組成物中のアビエチン酸量および保存安定性を表5に示す。
【0045】
実施例10、11および比較例5、6
ロジン表面処理顔料Pigment Yellow 14を加熱温度および加熱時間を変えて処理した以外は比較例4とまったく同一手順で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。これらの顔料および組成物中のアビエチン酸量、組成物の保存安定性を表5に示す。
【0046】
【表5】

【0047】
表5の結果から、Pigment Yellow 14を用いる場合でも、顔料の加熱処理が組成物の保存安定性の改善に有効であることがわかる。また、組成物中のアビエチン酸量は0.3%以下に調整することが必要であることがわかる。60℃の加熱においては、20日間の日時が必要であった。このことから60℃未満の温度での加熱は実用上あり得ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジンまたはロジン誘導体で表面処理された顔料を用い、全組成物に対するアビエチン酸の割合が0〜0.3質量%に調整されていることを特徴とするラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記顔料が、空気中または酸素雰囲気下で加熱することによりアビエチン酸の含有率を減少させたものであることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
加熱温度が60〜140℃であることを特徴とする請求項2記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
ラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物に配合するロジンまたはロジン誘導体により表面処理された顔料中のアビエチン酸の含有率を0〜1.0質量%に調整することを特徴とするラジカル重合型活性エネルギー線硬化性組成物の安定化方法。

【公開番号】特開2013−6883(P2013−6883A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120701(P2011−120701)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(592057961)マツイカガク株式会社 (8)
【Fターム(参考)】