説明

活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いた積層体

【課題】
本発明の目的は、防眩性、ハードコート性、密着性、特に、耐光性試験後の基材との密着性に優れ、経時安定性および塗工適性に優れた活性エネルギー線硬化性組成物、及びそれを用いた積層体を提供することにある。

【解決手段】
(メタ)アクリレート化合物と、疎水性シリカとを含んでなるトリアセチルセルロース透明基材塗工用の活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記疎水性シリカが、
4%懸濁時のpHが、6.5〜8.5、
見掛比重が、0.16〜0.27g/ml、
ジブチルアミン吸着量が、3〜40m−mol/kg、
である活性エネルギー線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、コンピューター、カーナビゲーションシステム、車載用計器盤、携帯電話等の画像表示装置として用いられる、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ、CRTディスプレイ等各種ディスプレイにおいて、ディスプレイ最表面に、画像の映り込みや、光の反射を防止するために設けるなどに、特に有用な活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CRT、PDP、LCD、ELD等の画像表示装置、特にPDP、LCD、ELDなどの表面がフラットな画像表示装置には、室内照明や、太陽光の入射等による、表示画面への操作者等の影の映り込みが画像の視認性を著しく妨げるという問題があった。
【0003】
各種ディスプレイ表面の耐擦傷性、耐薬品性及び画像の映り込みや、光の反射を防止する防眩性等を付与、向上させるために、例えば、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルサルフォン、トリアセチルセルロースなどの透明基材の一方の面に、紫外線硬化型樹脂からなる硬化塗膜を設け、更にこの塗膜中に光拡散剤を分散配合した組成物を用いることは知られている。これらの基材のなかでは、光透過度が高く、光に対しての歪みもない等の点から、トリアセチルセルロース透明基材が優れたものである。
【0004】
防眩性の塗工層は、ヘイズを高くする光拡散剤として、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等の無機粉末、ポリエチレン粒子、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリカーボネート粒子などの有機微粒子等の中から適宜に選択して使用され、特にシリカ粉末は紫外線に対して透過度が高く、バインダーとして多用される紫外線硬化性樹脂の硬化を阻害することもない優れたものである。そして、分散性を向上するために粒子表面を有機物による処理を施したものが好んで用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
光拡散剤を分散するバインダーは、基材シートに対する接着、表面強度、特に耐擦傷性をもたせるために、反応型のワニスが用いられ、活性エネルギー線硬化性組成物のなかから、設備的な面から取扱いが容易なエチレン性不飽和二重結合を多数有する紫外線硬化性樹脂を用いることが一般的である。しかしながら、これらエチレン性不飽和二重結合を多数有する紫外線硬化性樹脂は、硬化収縮が大きく基材との密着性が悪くなる傾向がある。さらに、防眩フィルムの信頼性試験として、耐光性試験を実施した後に基材との密着性がさらに低下するという問題がある。これは、耐光性試験にて照射される紫外線にてハードコート層の硬化がさらに進み、硬化収縮が増大し密着性が低下したと考えられる。
【0006】
トリアセチルセルロース透明基材への密着性を向上させる目的で、トリアセチルセルロース透明基材を溶解する溶剤を用いた塗工液から形成された防眩性フィルムが特許文献4及び5に記載されている。しかしながら、単にトリアセチルセルロース透明基材を溶解する溶剤を使用しただけでは、塗工後の密着性は良好となるが、耐光性試験後の密着性が不良であったり、溶解しすぎるとハードコート性を維持できないなど満足できる手段ではなかった。
【特許文献1】特公昭63−40282号公報
【特許文献2】特公平4−65095号公報
【特許文献3】特開平5−162261号公報
【特許文献4】特開平11-209717号公報
【特許文献5】特開2002-169001号公報
【特許文献6】特公昭62−21815号公報
【特許文献7】特公平2−60696号公報
【特許文献8】特開平8−3476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した各種ディスプレイ表面の耐擦傷性、耐薬品性及び防眩性の付与目的で該フイルム面に上記公報に述べられる組成物をもって硬化塗膜を設けたものは、耐擦傷性は満足されるものの、表面未処理や無機処理のシリカを含有する系は耐薬品性で白化し、有機物処理のうちワックス処理タイプは表面被覆が十分でないため未処理シリカと同様な耐薬品性で白化し実用性に乏しく、またアルコキシド化合物、シランカップリング剤、クロロシラン等の表面反応処理シリカは、特許文献6、7に使用例が見られる様に耐薬品性は優れるものの透明性が良好なため、防眩効果が乏しく総てを十分満足されるものではなかった。
【0008】
更に、上記のこれらシリカを紫外線硬化性樹脂に分散させた塗工液は短時間にシリカが沈降するため塗工液の均一性が損なわれるといった塗工液安定性に問題があった。
【0009】
また、LCDのカラー化、高精細化に伴い、防眩性の塗工層は、高ヘイズであると同時に緻密な形状が求められるようになってきた。そして、光拡散剤としては、最適のシリカ粉末を樹脂100重量部に対して10重量部以下であったのに対し、10重量部以上、場合によっては30重量部に相当する多量のものを含有させる必要が生じた。従来のバインダーに単に、シリカ粉末を増量したものは、塗工層と基材シートであるトリアセチルセルロース透明基材との接着力が低下し、防眩性を満たしても、接着力や耐擦傷性に劣るという問題点があった。
【0010】
また、防眩性塗工層の塗工液はシリカ粉末を多量に含むことにより粘度上昇することが避けられず、作業性が非常に悪くなるとともに、膜厚ムラ、塗工スジなど塗工適性が著しく阻害されるといった問題があった。更に、シリカ同士が凝集しやすくなるため塗工液の経時安定性が損なわれるといった問題があった。
【0011】
本発明は、防眩性塗工層の塗工液の経時安定性および塗工適性に優れ、光透過度が高く、光に対しての歪みもないトリアセチルセルロース透明基材に使用して、上記の目的に合致した、高ヘイズ性に形成した防眩シートの要件を満たすととともに、接着力、耐薬品性及び耐擦傷性の低下のない優れた防眩性シートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者等は塗工液の分散安定性が良好で、防眩性の塗工層の耐擦傷性、耐薬品性及び防眩性を同時に満足させる活性エネルギー線硬化性組成物を得るべく鋭意研究を重ねた結果、(メタ)アクリレート化合物に特定の疎水性シリカを配合することによって、良好な結果を得ることができるということを知見し本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリレート化合物と、疎水性シリカとを含んでなるトリアセチルセルロース透明基材塗工用の活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記疎水性シリカが、
4%懸濁時のpHが、6.5〜8.5、
見掛比重が、0.16〜0.27g/ml、
ジブチルアミン吸着量が、3〜40m−mol/kg、
である活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、(メタ)アクリレート化合物が、ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの重量比が30:70〜97:3である上記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、疎水性シリカの2次粒子の平均粒子径が、0.5〜5μmである上記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、さらに、屈折率及び/または平均粒子径の異なる透光性微粒子を2種以上含む上記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、透光性微粒子が、一次粒子の平均粒子径0.1〜10μmである上記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、さらに、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤する1種以上の有機溶剤とトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない1種以上の有機溶剤とを含んでなる混合溶剤を含む上記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤する有機溶剤が1,3−ジオキソランであり、且つ、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない有機溶剤がトルエンであり、さらに前記溶剤の重量比が10:90〜40:60の範囲である上記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0020】
また、本発明は、さらに、アミン価が10〜120mgKOH/gである樹脂を含む上記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分を50重量%に調整したときの粘度が、EL型回転粘度計で25℃の液体温度にて測定したときに、2〜9mPa・sである上記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、上記活性エネルギー線硬化性組成物を含む樹脂組成物層をトリアセチルセルロース透明基材に上に形成してなる積層体に関する。
【0023】
また、本発明は、樹脂組成物層の厚みが、1〜20μmである上記積層体に関する。
【0024】
また、本発明は、上記活性エネルギー線硬化性組成物をトリアセチルセルロース透明基材に塗工後、活性エネルギー線照射することを特徴とする積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は(メタ)アクリレート化合物に特定の疎水性シリカを分散させることで塗工液の均一分散性に優れ、なおかつ経時安定性が良好な活性エネルギー線硬化性組成物を得ることを可能とし、トリアセチルセルロース透明基材上に塗工するため、特定の組合せの(メタ)アクリレート化合物と疎水性シリカ、透光性微粒子、光開始剤及び有機溶剤よりなるものである。また、トリアセチルセルロース透明基材上で前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなる積層体は、たとえば、微細凸凹形状を形成されている防眩層を成し、耐光試験後の密着性に優れ、耐擦傷性、耐溶剤性、鉛筆硬度等の塗膜硬度に優れた防眩性フィルムとして用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0027】
本発明におけるトリアセチルセルロース透明基材としては、トリアセチルセルロースを溶剤に溶解することで調整されたトリアセチルセルロースドープを単層流延、複数層共流延のいずれかの流延方法により流延することにより作成されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることが好ましい。トリアセチルセルロース透明基材の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱い等の作業性、薄層性等の点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0028】
本発明における疎水性シリカは、アルカリ金属珪酸塩と鉱酸とを反応させて得られた沈殿珪酸をシリコーン油等で有機処理した疎水性シリカであって4%懸濁時のpHが、6.5〜8.5、見掛比重が、0.16〜0.27g/ml、ジブチルアミン吸着量が、3〜40m−mol/kgである。
【0029】
pHが6.5未満であると塗膜の耐薬品性、特に耐アルカリ性、たとえばNaOHに対する耐性が悪くなり、8.5を超える場合は耐酸性が悪くなる。
【0030】
見掛比重が0.16g/ml未満であると、均一に分散することができず、塗液の粘度が高くなり、0.27g/mlを超えると、シリカが沈降し易く、また塗膜の透明性に不具合が生じる。
【0031】
ジブチルアミン吸着量が3m−mol/kg未満であるとシリカの疎水性が強くなりすぎるため、シリカ同士の凝集が起こりやすく、40m−mol/kgを超えると親水性が強くなるため、(メタ)アクリレート化合物との親和性が悪く、良好な分散体が得られない。
【0032】
上記の反応に用いられるアルカリ金属珪酸塩は、主に珪酸ナトリウムである。また、鉱酸の主なるものは、硫酸、塩酸及びりん酸等である。沈殿珪酸を処理するのに用いられるシリコーン油としては、例えば、ジメチルシリコーン油、メチルフェニルシリコン油、メチルハイドロジエンシリコーン油、メチルビフェニルシリコーン油等が挙げられる。沈殿珪酸とシリコーン油との混合処理は、通常の混合機であればどのような形式のものを用いてもよいが、上記のような微粉と液体とを混合する場合液体の付着力による凝集粒が生じないような混合装置を用いるのが好ましい。このような装置としては、ボールミルあるいは流動式混合機等が挙げられる。本発明で用いるこの様な疎水性シリカは、[ニップシール、SSグレード]等の商品名で市場から入手し得るものである。
【0033】
本発明者は、この様な疎水性シリカを配合した活性エネルギー線硬化性組成物は分散安定性に優れ、経時でのシリカの沈降や粘度安定性が良好で、プラスチックフイルム等に塗工すると耐擦傷性、耐薬品性及び防眩性の向上に非常に有効であることを知見したのであるが、これは全く予想しなかった作用効果である。
【0034】
これらの疎水性シリカは防眩効果を最大にすると共に、透明性も良好にするという観点から平均二次粒径が0.5〜5μmであることが好ましい。0.5μm未満であると、得られる防眩性フィルムの表面光沢が高くなり防眩効果を得ることができず、5μmより大きいと透視性が悪化する。さらに、好ましくは1.0〜3.5μmである。尚、粒径はコールターマルチサイザー(ベックマン・コールター(株))を用い、アパーチャーサイズを30μmとして測定したものである。
【0035】
上記疎水性シリカは、下記(メタ)アクリレート化合物100重量部に対し0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部の割合で使用される。
【0036】
本発明で使用する(メタ)アクリレート化合物は、これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、特に、1分子中にアクリロイル基を3〜4個有し、トリアセチルセルロースフィルムとの濡れ性が非常に良好であるペンタエリスルトールテトラアクリレートとペンタエリスルトールトリアクリレートとの混合物を主成分として用いることが好ましい。 ペンタエリスルトールテトラアクリレートとペンタエリスルトールトリアクリレートの重量比が30:70〜97:3であることが望ましく、さらに望ましくは、40:60〜97:3であることが望ましい。
【0037】
活性エネルギー線硬化性組成物の中のペンタエリスルトールテトラアクリレートの含有量が多くなると鉛筆硬度や耐擦傷性及び耐光性試験後の密着性に優れる反面、ペンタエリスルトールテトラアクリレートの強い結晶性により活性エネルギー線硬化性組成物の保存中に析出が生じて問題となることがある。具体的には、活性エネルギー線硬化性組成物中のペンタエリスルトールテトラアクリレート成分が、97重量%を超えると析出を生じ、活性エネルギー線硬化性組成物のペンタエリスルトールテトラアクリレート成分が、40重量%より少ないと鉛筆硬度や耐擦傷性及び耐光性試験後の密着性が問題となることがある。
【0038】
活性エネルギー線硬化性組成物中には、硬化や硬度・密着性などに影響を与えない範囲で各種の添加剤や主成分の副生成物(例えばペンタエリスリトールジアクリレート等)を共存させることができる。活性エネルギー線硬化性組成物中の主成分の割合としては、100〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは100〜90重量%が好ましい。
【0039】
本発明における透光性微粒子は、表面に凸凹を形成及び/またはコーティング層中で光を散乱して防眩性を付与するものであり、有機微粒子及び/または無機微粒子を用いることができる。また、これらの透光性微粒子は、表面凸凹や屈折率をコントロールするために2種類以上の粒子を組み合わせてもよい。透光性微粒子を2種類以上配合することで、様々な用途に要求される曇価の光制御特性に対し、任意に調整を可能とすることができる。
【0040】
本発明における有機微粒子は、例えばスチレンビーズ、アクリルビーズ、スチレン-アクリルビーズ、メラミンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、シリコーンビーズ、フッ素ビーズ、フッ化ビニリデンビーズ、塩ビビーズ、エポキシビーズ、ナイロンビーズ、フェノールビーズ、ポリウレタンビーズ等が挙げられる。これらの有機微粒子の粒子径は、一次粒子の平均粒子径が0.1〜10μmであることが好ましく、2〜6μmであることがより好ましい。一次粒子の平均粒子径が0.1μm未満では、光を散乱する効果が不足するために得られる防眩性が不十分であり、10μmを超えると防眩層内部での光の散乱効果が減少するため映像のギラツキを生じやすい。なお、一次粒子の平均粒子径は、粒子の平均粒径は、例えば、電気抵抗法で測定できる。
【0041】
本発明における有機微粒子は水及び有機溶剤に不溶のものが好ましく、形状は不定形でも球状でもよい。
【0042】
有機微粒子の添加量は、活エネルギー線硬化性組成物全体量に対して、0.1〜40重量%が好ましく、0.1〜30重量%がさらに好ましい。0.1重量%未満では十分な防眩性が得られず、40重量%を超えると防眩性は良好だが白ぼけが出やすくなり好ましくはない。
【0043】
本発明における無機微粒子としては、例えば、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。これら無機微粒子の二次粒子径の平均粒子径は、0.5〜3.0μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましい。また、これらの無機微粒子の形状は不定形でも球状でもよい。これらの無機微粒子の添加量は、活性エネルギー線硬化性組成物全体量に対して0.1〜40重量%が好ましく、0.1〜30重量%がさらに好ましい。なお、二次粒子の平均粒子径は、例えば、電気抵抗法で測定できる。
【0044】
上記、疎水性シリカ及び透光性微粒子の分散は組成物が十分均一になるまで通常の手段で達成され、分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライタ、スーパーミル、ディソルバー、ホモミキサー、サンドミルなどの公知の分散機が挙げられる。
【0045】
本発明におけるトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-プチロラクトン等のエステル類;その他、2-メトキシ酢酸メチル、2-エトキシ酢酸メチル、2-エトキシ酢酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1,2-ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられるがこれらに限定するものではない。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
本発明におけるトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤の混合溶媒とするときは、溶剤全体の10〜40重量%が好ましい。混合溶剤中のトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤の混合重量比が10重量%未満であると密着性の維持が満足できなくなりやすい、溶剤中のトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤の混合比混合重量比が40重量%を超えると鉛筆硬度の低下を招きやすい。
【0048】
さらに、塗工時の蒸発速度などの塗工適正とトリアセチルセルロース透明基材への溶解膨潤性のバランスを考慮すると、混合溶剤としては、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順する有機溶剤としては1,3-ジオキソラン、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨順しない有機溶剤としてはトルエン、の組合せであることが好ましい。
【0049】
本発明で用いるアミン価が10〜120mgKOH/gである樹脂としては、顔料分散効果を有するものであればよく、特に限定されないが、ポリエステル系顔料分散剤、アクリル樹脂系顔料分散剤、ウレタン樹脂系顔料分散剤が好ましく、なかでも分子中に、アミノ基を有する分散剤が特に好ましい。これらアミン価が10〜120mgKOH/gである樹脂のアミン価(樹脂固形分に対する値。以下も同様とする。)は、通常10〜120mgKOH/gであるが、塗膜の耐酸性等を考慮するとなかでも10〜60mgKOH/gが好ましい。
【0050】
ポリエステル系顔料分散剤の具体的製造例としては、特開昭61−174939号公報に記載されているように、ε−カプロラクトン、ラウリン酸及びチタン酸テトラブチルの混合物を、チッソ雰囲気下に170〜180℃で20時間攪拌して生成物を得、これと乾燥ポリエチレンイミンの混合物を、チッソ雰囲気下に120℃で8時間攪拌することによって得る方法が挙げられる。
【0051】
また、ポリエステル系顔料分散剤としては、例えばソルスパ−ズ3000、6000、9000、13240、17000、24000(いずれもICI社製)、BYK−9077(Byk−Chemie社製)などが市販されている。
【0052】
アクリル樹脂系顔料分散剤の具体的製造例としては、特開平1−164429号公報に記載されているように、キシレン、n−ブタノ−ル中にイソボルニ−ルメタクリレ−ト、ブチルアクリレ−ト、スチレン、アクリロニトリル、ビニルイミダゾ−ル、t−ブチルベルベンゾエイトを加えて重合させることによって得る方法が挙げられる。
【0053】
また、アクリル樹脂系顔料分散剤としては、例えばEFKAポリマ−100、400、401(EFKA−Chemicals社製)などが市販されている。ウレタン樹脂系顔料分散剤の具体的製造例としては、ヨ−ロッパ特許出願公開第311157号公報に記載されているように、ビニルトルエン、メタクリル酸イソブチル、2−エチルヘキシルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート及びポリエチレングリコールモノメタクリレートからなる重合体にイソホロンジイソシアネートを反応させ、続いてポリエチレングリコールモノメタクリレート及び1−(3−アミノプロピル)イミダゾールを反応させることによってアクリル変性ウレタン樹脂系顔料分散剤を得る方法や、特開昭60−166318号公報に記載されているように、ε−カプロラクトンとn−オクタノールから合成されるポリエステルにディスモジュールILを反応させ、続いて1,12−ジアミノドデカン及びN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンを反応させることによってポリエステル変性ウレタン樹脂系顔料分散剤を得る方法などが挙げられる。
【0054】
また、ポリエステル変性ウレタン樹脂系顔料分散剤としては、例えばDisperbyk−160シリーズ(Byk−Chemie社製)、EFKA−40シリーズ(EFKA−Chemicals社製)、Bolchigen SN−88(Borchers社製)などが市販されている。
【0055】
塩基性基含有樹脂型顔料分散剤の重量平均分子量が1000未満では十分な立体障害が得られず、分散効果は低下し、重量平均分子量が100000より大きくても逆に凝集作用が生じる場合があり好ましくない。また、顔料分散剤のアミン価が10mgKOH/g 未満では疎水性シリカとの相互作用が十分ではなく分散効果は得られにくい。一方、顔料分散剤のアミン価が120mgKOH/g を越えると疎水性シリカへの親和部に比べ、立体障害層が少なくなり、十分な分散効果が得られにくい。塩基性基含有顔料分散剤は、いわゆる疎水性シリカ分散ベース組成物中において、疎水性シリカに対して、固形分換算値にて、1〜50重量パーセント、好ましくは3〜30重量パーセントが適当である。
【0056】
活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分を50重量%に調整したときの粘度が、EL型回転粘度計で25℃の液体温度にて測定したときに、2〜9mPa・sである場合に、ベースフィルム基材に活性エネルギー線硬化性組成物中の活性エネルギー線硬化性バインダーが前記混合溶剤と共にベースフィルム基材にしみ込み易くなり、よりベースフィルム基材に対する密着性が向上するため、耐光性試験後の密着性も良好となる。
【0057】
当該粘度が、2mPa・s未満ではトリアセチルセルロース透明基材に対するしみ込みが多くなり、防眩層の膜厚が薄くなりすぎるため十分なハードコート性が得られにくい。また、9mPa・sを超えるとトリアセチルセルロース透明基材に対するしみ込みが少なく、耐光性試験後の密着性が不十分となりやすい。
【0058】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を活性エネルギー線で硬化させる場合には、通常、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤の種類は特に制限はなく、例えばアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アントアキノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ミヒラーズケトン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、チオキサン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられ、これらの光重合開始剤は2種以上を適宜併用することもできる。これらの光重合開始剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性組成物全体に対して、0.1〜20重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。
【0059】
本発明で使用される活性エネルギー線硬化性組成物には、さらに光増感剤、レベリング剤、チキソトロピー剤等を含有することができる。
【0060】
光増感剤としては、例えばn-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ポリ-n-ブリルホスフィン等が挙げられ、これらの光増感剤は2種以上を適宜併用することもできる。
【0061】
本発明の積層体は、トリアセチルセルロース透明基材上に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し樹脂組成物層を形成した後、活性エネルギー線硬化させてなる。前記樹脂組成物層は、防眩層として機能しうる。
【0062】
本発明における活性エネルギー線硬化性組成物をトリアセチルセルロース透明基材上に塗工して積層体を形成する方法としては、活性エネルギー線硬化性組成物をバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法等の塗工方法でトリアセチルセルロース透明基材に塗工した後、必要に応じ溶剤を乾燥させ、さらに活性エネルギー線を照射することにより、塗工した活性エネルギー線硬化性組成物を架橋硬化させることによって形成される。
【0063】
架橋硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光、X線、γ線等のが挙げられる。
【0064】
例えば、前記紫外線としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線を用いることができる。このようにして形成される防眩層の膜厚はハードコート性を保有していれば特に限定されないが、通常1〜20μm、好ましくは3〜7μmの厚みとする。
【0065】
トリアセチルセルロース透明基材上に、本発明における活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなる防眩層の微細凸凹形状の表面に、画面表示のコントラストや白ぼけをさらに改善する方法として、前記防眩層の屈折率よりも低い屈折率の低屈折率層を設けることもできる。これら低屈折率層には、例えば、ポリシロキサン構造を有するものが用いられ、好ましくはフッ素含有ポリシロキサン構造を有するものである。このような低屈折率層は、例えばフッ素含有アルコキシシランにより形成することができる。低屈折率層の厚さは0.05〜0.15μmとするのが好ましい。低屈折率層は適宜な方法にて防眩層の表面に形成することができる。形成方法としては、積層体の形成と同様の方法を使用できる。
【0066】
このようにして、トリアセチルセルロース透明基材上に表面に微細な凹凸を有する防眩層を形成することにより作成された本発明の積層体は、全光線透過率85%以上、かつ、ヘイズ値3.0〜60.0%の光学特性を有していることが好ましく、また、全光線透過率90%以上、ヘイズ値4.0〜45.0%の光学特性を有していることがさらに好ましい。全光線透過率は85%を下回ると、コントラストの高い画像表示ができなくなる。ヘイズ値は3.0%未満となると、充分な防眩性が得られず、また60.0%を超えると、白ぼけが出やすくなるため好ましくない。
【0067】
また、前記積層体である防眩性フィルムのトリアセチルセルロース透明基材には、光学素子を接着することができる。光学素子としては、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償付き偏光板等が挙げられ、これらは積層体として用いることができる。光学素子の接着は、接着に応じてアクリル系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤やホットメルト系接着剤などの透明性や耐候性等に優れる適宜な接着層を用いることができる。
【0068】
偏光板としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素や染料等を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等の偏向フィルムが挙げられる。位相差板としては、前記透明基材で例示したポリマーフィルムの一軸または2軸延伸フィルムや液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。位相差板は、2層以上の延伸フィルムから形成されていてもよい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板と位相差板を積層することにより形成しうる。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板側の面に防眩層を形成している。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら具体例のみに限定されるものではない。なお、例中[部][%]とあるのは、それぞれ[重量部][重量%]を示す。
[合成例1] ペンタエリスリトールテトラアクリレートの合成
撹拌機、温度計、ディーンスターク装置を取り付けた反応器に、ペンタエリスリトール27.2部、アクリル酸63.4部、トルエン100部、酸性触媒パラトルエンスルホン酸3部及び重合禁止剤ハイドロキノンモノメチルエーテル0.08部を仕込んだ後、空気を吹き込みかつ撹拌しながら加熱した。7時間還流させ水14.2部を留出させた。反応終了後、反応液に10%水酸化ナトリウム水溶液50部を加え室温で撹拌した後静置し、下層(水層)を分離して、過剰量のアクリル酸を除去した。反応液を、水層が中和するまで水洗した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.028部加え、トルエンを減圧蒸留によって留去、濃縮した。この溶液を、シリカゲルカラム−移動相トルエンで処理し、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02部加え、溶媒をトルエンで減圧蒸留した。収量61部、ガスクロマトグラフ・13C−NMRで測定したところ、ペンタエリスルトールテトラアクリレートとペンタエリスルトールトリアクリレートの重量比は99:1であった。
【0070】
ガスクロマトグラフ測定条件
装置:SHIMAZDU GCMS-QP5050A
カラム:DB−5 0.25IDmm×30m df=0.25mm
検出温度:250℃
注入温度:150℃
オーブン温度:50℃1分間保持−昇温速度10℃/min−250℃
[配合例1]
表1に示される割合で合成例に示したペンタエリスリトールテトラアクリレート及び/またはアロニックスM306(東亞合成社製:ペンタエリスルトールテトラアクリレートとペンタエリスルトールトリアクリレートの重量比が35:65)100部を、トルエン80部及びまたは1,3-ジオキソラン34部に溶解し、さらに光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)5部を加え、高速ディスパーにて2000rpmで5分撹拌した。
さらに、この溶液に塩基性分散剤(BYK168、ビックケミー社製)1.5部を加え、疎水性シリカ(SS-50B、東ソーシリカ製)10部を加え、高速ディスパーにて4000rpmで30分撹拌し、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。上記疎水性シリカ及として下記の物性のものを使用した。
疎水性シリカ(NIPSIL SS50B(日本シリカ工業製))は
・4%懸濁時のpHが、7.6、
・見掛比重が、0.2g/ml、
・ジブチルアミン吸着量が、10m−mol/kg
・平均粒子径が、2.1μm
である。
【0071】
[配合例2〜11]
表1に示すように、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及び/またはアロニックスM306、トルエン、1,3-ジオキソラン、光重合開始剤、塩基性分散剤、疎水性シリカの種類と添加量を変えた以外は配合例1と同様な方法で活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
疎水性シリカ(NIPSIL SS50F(日本シリカ工業製))は
・4%懸濁時のpHが、7.3、
・見掛比重が、0.17g/ml、
・ジブチルアミン吸着量が、24m−mol/kg
・平均粒子径が、1.4μm
疎水性シリカ(NIPSIL SS178(日本シリカ工業製))は
・4%懸濁時のpHが、7.5、
・見掛比重が、0.29g/ml、
・ジブチルアミン吸着量が、13m−mol/kg
・平均粒子径が、3.5μm
疎水性シリカ(NIPSIL SS115(日本シリカ工業製))は
・4%懸濁時のpHが、11.5、
・見掛比重が、0.2g/ml、
・ジブチルアミン吸着量が、2m−mol/kg
・平均粒子径が、2.5μm
疎水性シリカ(NIPSIL SS70(日本シリカ工業製))は
・4%懸濁時のpHが、7.5、
・見掛比重が、0.38g/ml、
・ジブチルアミン吸着量が、11m−mol/kg
・平均粒子径が、5.1μm
である。
【0072】
【表1】

【0073】
[実施例1〜5]
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製)に活性エネルギー線硬化性組成物(1)〜(5)をバーコーターで塗工し、70℃〜1分で乾燥後させた。その後、窒素パージによって0.3重量%以下酸素濃度雰囲気にて、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射量400mJ/cm2で照射して塗工層を硬化させ、厚さ5.5μmの防眩層を形成した。得られた防眩フィルムの評価結果を表2に示した。
[比較例1〜4、実施例6,7]
実施例1〜5と同様に活性エネルギー線硬化性組成物(6)〜(11)を塗工硬化させ、防眩層を形成した。得られた防眩フィルムの評価結果を表2に示した。
【0074】
また、実施例1〜7及び比較例1〜4の全光線透過率は、85%以上であった。測定は、ヘイズメーターNDH-2000(日本電色社製)測定装置を用いた。
【0075】
【表2】

【0076】
(1)分散安定性:活性エネルギー線硬化性組成物を25℃で静置し、7日後のビーズ沈澱の有無を目視判定した。
(2)粘度:EL型粘度計を用いて測定。(at25℃)
(3)ヘイズ値:ヘイズメーターNDH-2000(日本電色社製)を用いてヘイズ値を
測定。
(4)鉛筆硬度:JIS K5400による。
(5)密着性試験:JIS K5400の碁盤目テープ法(間隔1mm)による。
(6)耐光性試験後の密着性試験:スーパーUV耐光性試験機(ダイプラーメタルウエザー、型式:KU-R5CI-A、光源:メタルハライドランプ)にて、63℃-45%RH-65mW/cm-24時間の条件にて耐光性試験を実施後、JIS K5400の碁盤目テープ法(間隔1mm)により、密着性試験を実施。
(7)耐擦傷性:スチールウール#0を用い、500g/10往復評価
◎ : 非常に良好
○ : 良好
△ : やや劣る
× : 劣る
(8)防眩性:作成した防眩フィルムにルーバーなしのむき出しの蛍光灯を写し、その反射像のボケの程度を目視判定した。
【0077】
◎:蛍光灯の輪郭が全くわからない
○:蛍光灯の輪郭がわずかにわかる
△:蛍光灯はぼやけているが輪郭は識別できる
×:蛍光灯が殆どぼやけない(防眩性無し)
(9)耐薬品性:各薬品を塗膜面に滴下後にふき取り、その表面変化の状態を観察した。
【0078】
3N-NaOH:滴下後15分間放置
1N-HCl:滴下後15分間放置
他の溶剤 :滴下後10時間放置
【0079】
表2に示される結果から以下のことが明らかである。実施例1〜5の本発明で特定される活性エネルギー線硬化性組成物は均一分散性に優れ、なおかつ分散安定性が良好であり、これら組成物を塗工してなる防眩フィルムは、耐光試験後の密着性が良好であり、かつ防眩性、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐薬品性を同時に満たす。一方、比較例1〜4は、組成物の分散安定性が不良及びまたは耐光性試験後の密着性、防眩性、耐擦傷性、耐薬品性がいずれかが不足である。
【0080】
実施例6,7は、組成物の分散安定性、防眩性、耐擦傷性、耐薬品を同時に満たし、用途によっては使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の積層体は、表示面に傷が付きにくく、外光の写り込みが少なく、さらに耐光性試験等における信頼性に優れるので画像表示装置に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート化合物と、疎水性シリカとを含んでなるトリアセチルセルロース透明基材塗工用の活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記疎水性シリカが、
4%懸濁時のpHが、6.5〜8.5、
見掛比重が、0.16〜0.27g/ml、
ジブチルアミン吸着量が、3〜40m−mol/kg、
である活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリレート化合物が、ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの重量比が30:70〜97:3である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
疎水性シリカの2次粒子の平均粒子径が、0.5〜5μmである請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、屈折率及び/または平均粒子径の異なる透光性微粒子を2種以上含む請求項1〜3のいずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
透光性微粒子が、一次粒子の平均粒子径0.1〜10μmである請求項4記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
さらに、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤する1種以上の有機溶剤とトリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない1種以上の有機溶剤とを含んでなる混合溶剤を含む請求項1〜5のいずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤する有機溶剤が1,3−ジオキソランであり、且つ、トリアセチルセルロース透明基材を溶解または膨潤しない有機溶剤がトルエンであり、さらに前記溶剤の重量比が10:90〜40:60の範囲である請求項6記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項8】
さらに、アミン価が10〜120mgKOH/gである樹脂を含む請求項1〜7のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項9】
活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分を50重量%に調整したときの粘度が、EL型回転粘度計で25℃の液体温度にて測定したときに、2〜9mPa・sである請求項1〜8いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物を含む樹脂組成物層をトリアセチルセルロース透明基材に上に形成してなる積層体。
【請求項11】
樹脂組成物層の厚みが、1〜20μmである請求項10記載の積層体。
【請求項12】
請求項1〜9いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物をトリアセチルセルロース透明基材に塗工後、活性エネルギー線照射することを特徴とする積層体の製造方法。






【公開番号】特開2008−222767(P2008−222767A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59874(P2007−59874)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】