説明

活性光線硬化型インクジェットインク、画像形成方法及びインクジェット記録装置

【課題】 文字品質に優れ、色混じりの発生のない、高精細な画像を再現性よく非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク、画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 光酸発生剤、光重合性化合物、顔料、酸価がアミン価よりも大きい分散剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる粒子の粒径を粒径測定機(動的光散乱法)を用いて測定した際、該粒子の平均粒径が0.08〜0.25μmであり、かつ、粒径1μm以上の粗大粒子の個数が6.0×105個/μl未満であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク、画像形成方法及びインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な記録材料に高精細な画像を安定に再現できる活性光線硬化型インクジェットインクを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作製できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷等、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性を改選したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢等を飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てがそろって初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV光)により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でもUVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べて比較的低臭気であり、即乾性、インク吸収性のない記録媒体への記録ができる点で、近年注目されつつあり、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている(例えば特許文献1〜7参照)。
【0005】
用いられる色材としては形成される画像の堅牢性の観点より顔料を分散してもちいることが多い。紫外線などの活性光線により硬化するインクジェットインクにおいて、溶剤系でありながら重合性基由来の極性基が存在するため、顔料と分散剤の吸着が難しい系である。従来の塗料等に比べてインクジェットインクにおいては顔料分散は重要な課題である。微細なノズルより高速に液滴を射出する記録方式であるため、分散が不安定であると吐出が不安定となりインクジェットインクとしては致命的な問題となる。
【0006】
従来の活性光線硬化型インクでは塩基性の分散剤を用い顔料を分散することは広く知られているが、実際に本発明者らが分散を行ったところ安定な分散は得られなかった。また、特許文献6、7、8、9などでは、粗大粒子の個数を規定している(例えば、特許文献6〜9参照。)が、これだけでは、非水系の活性光線硬化型インクにおいては前記分散安定性の問題が残り十分な吐出安定性は達成できない。更にインク中の顔料濃度が5.0%を超えるような場合には、吐出安定性が得られない場合があり、特に高精細な画像形成の際には問題となることがあった。
【特許文献1】特開平6−200204号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特表2000−504778号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2002−188025号公報 (第2〜第7頁、実施例)
【特許文献4】特開2002−60463号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献5】特開2003−252979号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献6】特開平11−140356号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献7】特開2000−204305号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献8】特開2004−59913号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献9】特開2005−187726号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、文字品質に優れ、色混じりの発生のない、高精細な画像を再現性よく非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク、画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0009】
1.光開始剤、光重合性化合物、顔料、酸価がアミン価よりも大きい分散剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる粒子の粒径を粒径測定機(動的光散乱法)を用いて測定した際、該粒子の平均粒径が0.08〜0.25μmであり、かつ、粒径1μm以上の粗大粒子の個数が6.0×105個/μl未満であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク。
【0010】
2.光重合性化合物として、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を含有することを特徴とする前記1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【0011】
3.光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を5〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有することを特徴とする前記1または2に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【0012】
4.25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【0013】
5.顔料が表面処理された有機顔料であり、かつ、分散剤の含有量が該顔料質量の35〜65%であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【0014】
6.顔料の質量濃度が、0.5〜4.8%であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【0015】
7.顔料のアミン価が酸価よりも大きいことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【0016】
8.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインクが着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【0017】
9.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【0018】
10.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【0019】
11.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0020】
12.前記8〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インクジェットインク及び記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、文字品質に優れ、色混じりの発生のない、高精細な画像を再現性よく非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク、画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を更に詳しく説明する。本発明者は、鋭意研究した結果、酸価がアミン価よりも大きい分散剤を用いることで安定な顔料分散性が得られ、それにより安定な吐出性が得られ、更に、得られた活性光線硬化型インク(単にインクともいう)に含まれる粒子の平均粒径が0.08〜0.25μmであり、かつ、粒径1μm以上の粗大粒子の個数が6.0×105個/μl未満にすることで著しく吐出性が安定することを見出した。記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が2〜15plと少ない場合には特に有効である。
【0023】
また、光開始剤として光酸発生剤、光重合性化合物としてエポキシ化合物および/またはオキセタン化合物を用いた光カチオン重合系の場合、前記吐出安定性はより素晴らしい結果が得られることも見出した。
【0024】
本発明における酸価、アミン価は電位差滴定により求めることができる。例えば色材協会誌61,[12] 692〜698(1988)に記載の方法で測定することができる。顔料や分散剤を複数用いる場合はその質量平均として用いることができる。
【0025】
本発明においては、分散剤の酸価はアミン価よりも大きく、その差が1mg/gKOH以上30mg/gKOH未満であることが好ましい。1mg/gKOH未満であればその効果がなく、30mg/gKOH以上であれば熱反応で硬化する懸念がある。分散剤としては低分子量、高分子量のものいずれも使用可能であるが高分子量のものが好ましい。分散剤の好ましい具体例としては味の素ファインテクノ社製アジスパーPB824、味の素ファインテクノ社製アジスパーPB822、味の素ファインテクノ社製アジスパーPB821が挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
本発明に用いられる顔料としては、酸性及びまたは塩基性に表面処理された有機顔料が好ましく用いられ、前記分散剤のインク中における含有量が該顔料質量の35〜65%であることが好ましい。活性光線硬化型インクにおいては、35%未満であると、分散剤が十分に顔料表面全体に吸着できず分散安定性が不十分な場合があり、65%を超えると、顔料表面に吸着されない分散剤がインク中に遊離して、重合阻害を起こし問題となる場合がある。顔料のアミン価は酸価よりも大きいことが好ましく、その差が1mg/gKOH以上10mg/g未満であることが更に好ましい。1mg/gKOH未満であればその効果がなく、10mg/g以上の場合は塩基性処理を過度に行う必要がありコストアップとなるばかりでなく、重合阻害の原因にもなり好ましくない。
【0027】
顔料の具体例として、以下に例えば以下に挙げる顔料においてアミン価が酸価よりおおきなものを用いることができるが本発明はこれらに限定されるものではない。
C.I.Pigment Yellow
1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,81,83,87,93,95,97,98,109,114,120,128,129,138,151,154
C.I.Pigment Red
5,7,12,22,38,48:1,48:2,48:4,49:1,53:1,57:1,63:1,101,112,122,123,144,146,168,184,185,202
C.I.Pigment Violet
19,23
C.I.Pigment Blue
1,2,3,15:1,15:2,15:3,15:4,18,22,27,29,60
C.I.Pigment Green
7,36
C.I.Pigment White
6,18,21
C.I.Pigment Black

上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
【0028】
分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に用いる照射線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0029】
本発明においては、インク化後の顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.25μmとし、かつ、粒径1μm以上の粗大粒子の個数が6.0×105個/μl未満であることが必要である。本発明における平均粒径とは、Malvern Instruments Ltd製Zetasizer Nanoシリーズのような粒径測定機(動的光散乱法)を用いて測定した体積平均粒径値のことを指し、平均粒径が0.08μm未満であると保存後の粒径変動が問題となり、0.25μmを超えると、記録ヘッド内のインク流路での滞留が問題となる。また、本発明における粒径1μm以上の粗大粒子の個数のカウントは、インクを3μm厚さにバー塗布した一定面積膜中の粒径1μm以上の粗大粒子の個数を光学顕微鏡5000倍の倍率でカウントし、インク1μl中の個数に換算したものである。平均粒径は、顔料種、分散剤種、分散条件の選定により調整し、粗大粒子の個数は、ろ過条件(フィルターの選定、多段濾過、遠心分離の有無、など)により適宜調整をすることができる。
【0030】
また本発明のインクにおいては、顔料濃度が0.5〜4.8%であることが好ましい。本発明者は、インク中の顔料濃度が4.8%を越えると吐出安定性が得られにくいことを見出し、前述の平均粒径及び粗大粒子の制御をした場合でも記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が2〜15plと少ない場合には顔料濃度が4.8%以下にすることが吐出安定化のポイントとなることを見出した。顔料濃度が0.5%未満の場合には発色が足らずインクとしての意味がなくなる。
【0031】
また、本発明においては、硬化性及び吐出安定性の向上のために、光重合性化合物として少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を含有することが好ましい。
【0032】
光重合性化合物としては各種公知のカチオン重合性のモノマーが使用出来る。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、特開2001−40068、特開2001−55507、特開2001−310938、特開2001−310937、特開2001−220526に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0033】
エポキシ化合物には、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0034】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0035】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0036】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0037】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0038】
また、本発明においてはAMES及び感作性などの安全性の観点から、オキシラン基をゆうするエポキシ化合物としては、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも一方であることが特に好ましい。
【0039】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0040】
また、本発明においては、更なる硬化性及び吐出安定性の向上のために、光重合性化合物として、オキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、オキシラン基を有する化合物を5〜70質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有することが好ましい。
【0041】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号に紹介されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0042】
本発明で用いることのできるビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0043】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0044】
また、本発明においては、ラジカル重合性化合物も用いることができる。ラジカル重合性化合物としては、公知のあらゆる(メタ)アクリレートモノマー及びまたはオリゴマーを用いることができる。
【0045】
例えば、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の単官能モノマー、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の三官能以上の多官能モノマーが挙げられる。
【0046】
本発明の活性光線硬化型インクには、公知のあらゆる光開始剤を用いることができる。光開始剤としては、光酸発生剤及び光ラジカル発生剤を挙げることができる。
【0047】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0048】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。
【0049】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を、以下に示す。
【0050】
【化1】

【0051】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を、以下に例示する。
【0052】
【化2】

【0053】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
【0054】
【化3】

【0055】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0056】
【化4】

【0057】
また、本発明で用いられる光ラジカル発生剤としては、アリールアルキルケトン、オキシムケトン、チオ安息香酸S−フェニル、チタノセン、芳香族ケトン、チオキサントン、ベンジルとキノン誘導体、ケトクマリン類などの従来公知の光ラジカル発生剤が使用出来る。「UV・EB硬化技術の応用と市場」(シーエムシー出版、田畑米穂監修/ラドテック研究会編集)に詳しい。中でもアシルフォスフィンオキシドやアシルホスフォナートは、感度が高く、開始剤の光開裂により吸収が減少するため、インクジェット方式のように1色当たり5〜12μmの厚みを持つインク画像での内部硬化に特に有効である。具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドなどが好ましい。
【0058】
また、安全性を考慮した選択では、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア(登録商標)1173)が好適に用いられる。好ましい添加量は、インク組成物全体の1〜6質量%、好ましくは2〜5質量%である。
【0059】
本発明のインクにおいては、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【0060】
本発明で用いることのできる記録材料としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0061】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0062】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0063】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
【0064】
本発明の画像形成方法においては、上記のインクをインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0065】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明では、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0066】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0067】
(インクの吐出条件)
インクの吐出条件としては、記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性光線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0068】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。
【0069】
本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜15plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成出来る。
【0070】
(インク着弾後の光照射条件)
本発明の画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜2.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜1.0秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0071】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0072】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0073】
従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、光源の総消費電力が1kW・hrを超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特に、シュリンクラベルなどへの印字では、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用出来ないのが現状であった。
【0074】
本発明では、1時間あたりの消費電力が1kW以下の光源を用いても、高精細な画像を形成出来、且つ、記録材料の収縮も実用上許容レベル内に収められる。1時間あたりの消費電力が1kW未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0075】
次いで、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0076】
以下、本発明の記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明の記録装置はこの図面に限定されない。
【0077】
図1は本発明の記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0078】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0079】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0080】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0081】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0082】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0083】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0084】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0085】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、冷陰極管、熱陰極管及び殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行なえ、好ましい。ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0086】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0087】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0088】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0089】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0090】
本発明のインクは、非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
【0091】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0092】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色の記録ヘッド3を、記録材料Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0093】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、照射手段4が設けられている。
【0094】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録材料Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0095】
以下に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが本発明の実施態様はこれらの例に限定されるわけではない。
【0096】
〈分散剤のアミン価の測定〉
分散剤をメチルイソブチルケトンに溶解し、0.01モル/L過塩素酸メチルイソブチルケトン溶液で電位差滴定を行い、KOHmg/g換算したものをアミン価とした。電位差滴定は平沼産業株式会社製自動滴定装置COM−1500を用いて測定した。
【0097】
〈分散剤の酸価の測定〉
分散剤をメチルイソブチルケトンに溶解し、0.01モル/Lカリウムメトキシド−メチルイソブチルケトン/メタノール(4:1)溶液で電位差滴定を行い、KOHmg/g換算したものを酸価とした。電位差滴定は平沼産業株式会社製自動滴定装置COM−1500を用いて測定した。
【0098】
〈顔料のアミン価の測定〉
顔料に0.01モル/L過塩素酸メチルブチルケトン溶液を加え、超音波分散を行った。その後、遠心分離により上澄み液を0.01モル/Lカリウムメトキシド−メチルイソブチルケトン/メタノール(4:1)溶液で電位差滴定を行い、顔料による過塩素酸減少量をKOHmg/g換算したものをアミン価とした。電位差滴定は平沼産業株式会社製自動滴定装置COM−1500を用いて測定した。
【0099】
〈顔料の酸価の測定〉
顔料に0.01モル/Lテトラブチルアンモニウムヒドロキシド−メチルブチルケトン溶液を加え、超音波分散を行った。その後、遠心分離により上澄み液を0.01モル/L過塩素酸メチルイソブチルケトン溶液で電位差滴定を行い、顔料による0.01モル/Lテトラブチルアンモニウムヒドロキシド減少量をKOHmg/g換算したものを酸価とした。電位差滴定は平沼産業株式会社製自動滴定装置COM−1500を用いて測定した。
【0100】
〈使用した顔料及びそのアミン価と酸価〉
顔料1:Pigment Black 7(三菱化学社製#52、アミン価3mg/g、酸価6mg/g)
顔料1′:Pigment Black 7(三菱化学社製MA7、アミン価3.3mg/g、酸価15.2mg/g)
顔料2:Pigment Blue 15:4(山陽色素社製Cyanine Blue 4044、アミン価8.0mg/g、酸価0.0mg/g)
顔料2′:Pigment Blue 15:4(大日精化社製、アミン価7.8mg/g、酸価1.9mg/g)
顔料3:Pigment Red 122(大日精化社製CFR321、アミン価6.1mg/g、酸価4.1mg/g)
顔料3′:Pigment Violet19(大日精化社製CFR338−3、アミン価5.8mg/g、酸価4.0mg/g)
顔料4:Pigment Yellow 138(大日精化社製CFY340、アミン価5.8mg/g、酸価2.6mg/g)
顔料5:Pigment Yellow 151(ランクセス社製E4GN−GT、アミン価9.1mg/g、酸価6.4mg/g)
顔料6:Pigment Yellow 180(大日精化社製CFY313−2、アミン価4.9mg/g、酸価3.0mg/g)
顔料6′:Pigment Yellow 180(クラリアント社製Novoperm Yellow HG、アミン価4.0mg/g、酸価4.0mg/g)
〈分散液Aの調製〉
以下の組成で顔料を分散した。以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
PB822(味の素ファインテクノ社製分散剤)(酸価18.5mg/g、アミン価15.9mg/g) 8部
テトラエチレングリコールジアクリレート(二官能) 72部
室温まで冷却した後これに上記顔料1、2、3、4をそれぞれ20部を加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Aとした。
【0101】
〈分散液Bの調製〉
以下の組成で顔料を分散した。以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
PB821(味の素ファインテクノ社製分散剤)(酸価30.4mg/g、アミン価10.2mg/g) 9部
OXT211(東亜合成社製オキセタン化合物) 71部
室温まで冷却した後これに上記顔料1、2、3′、4をそれぞれ20部を加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Bとした。
【0102】
〈分散液Cの調製〉
以下の組成で顔料を分散した。以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
ED−251(楠本化成株式会社製分散剤)(酸価19mg/g、アミン価13.4mg/g) 10部
テトラエチレングリコールジアクリレート(二官能) 70部
室温まで冷却した後これに上記顔料1、2、3、4をそれぞれ20部を加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Cとした。
【0103】
〈分散液Dの調製〉
以下の組成で顔料を分散した。以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
PB822(味の素ファインテクノ社製分散剤)(酸価18.5mg/g、アミン価15.9mg/g) 8部
OXT221(東亜合成社製オキセタン化合物) 72部
室温まで冷却した後これに上記顔料1、2、3′、4をそれぞれ20部を加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Dとした。
【0104】
〈分散液Eの調製〉(分散剤が塩基性)
以下の組成で顔料を分散した。以下の化合物をステンレスビーカーに入れ撹拌した。
Disperbyk161(ビックケミー社製製分散剤)(酸価4.4mg/g、アミン価10.9mg/g) 8部
OXT221 72部
これに上記顔料1、2、3、4をそれぞれ20部を加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Eとした。
【0105】
〈分散液Fの調製〉(分散剤が塩基性)
以下の組成で顔料を分散した。以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
ソルスパーズ32000(アビシア株式会社製分散剤)(酸価24.8mg/g、アミン価27.1mg/g) 8部
OXT221 72部
これに上記顔料1、2、3′、4をそれぞれ20部を加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Fとした。
【0106】
〈分散液Gの調製〉(Bk、Y顔料酸価高め)
以下の組成で顔料を分散した。以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
PB822(味の素ファインテクノ社製分散剤)(酸価18.5mg/g、アミン価15.9mg/g) 8部
OXT221(東亜合成社製オキセタン化合物) 72部
室温まで冷却した後これに上記顔料1′、2′、3、6′をそれぞれ20部を加えて、直径
0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Dとした。
【0107】
〈分散液Hの調製〉
以下の組成で顔料を分散した。以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
ヒノアクトKF−1300M(川研ファインケミカル社製分散剤)(酸価26.2mg/g、アミン価17.8mg/g) 15部
OXT221(東亜合成社製オキセタン化合物) 65部
室温まで冷却した後これに上記顔料1、2′、3、5をそれぞれ20部を加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Iとした。
【0108】
〈分散液Iの調製〉
以下の組成で顔料を分散した。以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
PB822(味の素ファインテクノ社製分散剤)(酸価18.5mg/g、アミン価15.9mg/g) 10部
DVE−3(アイエスピー・ジャパン社製ビニルエーテル化合物) 70部
室温まで冷却した後これに上記顔料1、2、3、6をそれぞれ20部を加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Iとした。
【0109】
〈活性光線硬化型インクジェットインク(単にインクともいう)の調製〉
表1、2及び3に記載のインク組成でインクを作製し、遠心分離を3000rpmで1時間かけた後、ADVATEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過を行った。インク組成3、5、8、10、14については、比較として、遠心分離をかけないでADVATEC社製CMF10μmメンブランフィルターで濾過したインクも作製した。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
【化5】

【0114】
表中、インクの記号は下記の通り。
【0115】
K:濃ブラックインク
C:濃シアンインク
M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク
Lk:淡ブラックインク
Lc:淡シアンインク
Lm:淡マゼンタインク
Ly:淡イエローインク。
【0116】
《インクジェット画像形成方法》
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置に、上記調製した各インクセットの1〜3を装填し、表4に記載の記録材料(巾600mm、長さ500mの長尺)へ、下記の条件で画像記録を連
続して行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。そして搬送ガイドプレート(プラテン部)を40℃に加熱しておくことにより、記録材料に着弾後もインクがほぼ40℃を保つようにした。インクは記録材料に着弾した後、キャリッジ両脇に示すランプユニットにより瞬時(着弾後1秒未満)に硬化される。記録後、トータルインク膜厚を測定したところ、2.3〜18μmの範囲であった。本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。なお、インクジェット画像の形成は、27℃、80%RHの環境下で行った。
【0117】
また、全く同様に図2に記載のラインヘッド記録方式のインクジェット記録装置を用い、インクセット4〜9を用いて、表4に記載の記録材料(巾600mm、長さ500mの長尺)へ、画像を形成した。
【0118】
平均粒径は、Malvern Instruments Ltd製Zetasizer Nanoシリーズにて測定した体積平均粒径値である。粒径1μm以上の粗大粒子の個数のカウントは、インクを3μm厚さにバー塗布した一定面積膜中の粒径1μm以上の粗大粒子の個数を光学顕微鏡(KEYENCEデジタルマイクロスコープVHX−100、レンズVH−2100)でカウントし、インクμl中の個数に換算した。
【0119】
【表4】

【0120】
表中の記録材料は以下の通り、
ユポFGS:ユポ社製(商品名)
PET:polyethylene terephthalate
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、1m、10m、50m、100m、出力時に下記の評価を行い、吐出性安定性の評価とした。
【0121】
(文字品質)
Y、M、C、K各色インクを用いて、目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大評価し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
【0122】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
以上により得られた各評価結果を、表5に示す。
【0123】
【表5】

【0124】
本発明の構成は、非常に安定に高精細な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0126】
1 記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
8 照射光源
P 記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光開始剤、光重合性化合物、顔料、酸価がアミン価よりも大きい分散剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる粒子の粒径を粒径測定機(動的光散乱法)を用いて測定した際、該粒子の平均粒径が0.08〜0.25μmであり、かつ、粒径1μm以上の粗大粒子の個数が6.0×105個/μl未満であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項2】
光重合性化合物として、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項3】
光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を5〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項4】
25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項5】
顔料が表面処理された有機顔料であり、かつ、分散剤の含有量が該顔料質量の35〜65%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項6】
顔料の質量濃度が、0.5〜4.8%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項7】
顔料のアミン価が酸価よりも大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項8】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインクが着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インクジェットインク及び記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−104452(P2006−104452A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249026(P2005−249026)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】