説明

活性光線硬化型インクジェットインク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置

【課題】 本発明の目的は、人体に有害なベンゼンの放出がなく、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【解決手段】 光酸発生剤として活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩を含有し、かつ光重合性化合物としてオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に有害なベンゼンの放出がなく、あらゆる記録材料に、様々な印字環境下においても、高精細な画像を安定に再現できる活性光線硬化型インクジェットインク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、例えば、特公平5−54667号、特開平6−200204号、特表2000−504778号において、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている。
【0005】
しかしながら、これらのインクを用いたとしても、記録材料の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、様々な記録材料に対して、高精細な画像を形成することは不可能である。
【0006】
その中でも、特に、カチオン重合性化合物を用いた紫外線硬化型インクジェット用インクが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)が、これらの紫外線硬化型インクジェット用インクは、酸素阻害作用を受けることはないが、分子レベルの水分(湿度)の影響を受けやすい、また人体に有害なベンゼンを放出するといった問題がある。すなわち、上記特許文献1〜3に記載のカチオン重合性化合物を用いた活性光線硬化型インクジェットインク組成物は、光重合性化合物として、例えば、ダウ・ケミカル社製のUVR6110及びUVR6105、ダイセル化学社製のセロキサイド2021が用いられることが多く、これらの化合物は、有害なベンゼンを放出し、印字環境(例えば、温度、湿度)により吐出安定性・硬化性が大きく変動し、また硬化収縮により皺が発生するという課題を抱えている。
【特許文献1】特開2001−220526号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【特許文献2】特開2002−188025号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【特許文献3】特開2002−317139号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、人体に有害なベンゼンの放出がなく、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
(1)光酸発生剤として活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩を含有し、かつ光重合性化合物としてオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0010】
(2)前記ベンゼンを発生しないオニウム塩が、スルホニウム塩であることを特徴とする上記1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0011】
(3)前記ベンゼンを発生しないオニウム塩が、ヨードニウム塩であることを特徴とする上記1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0012】
(4)光酸発生剤として活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩が、下記一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、R1〜R17はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。Xは、非求核性のアニオン残基を表す。ただし、一般式〔1〕におけるR1〜R3が、フェニルチオ基あるいはフェノキシ基であることはない。〕
(5)塩基性化合物を含有することを特徴とする上記1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0015】
(6)ノニオン性の界面活性剤を含有することを特徴とする上記1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0016】
(7)光重合性化合物として、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を含有することを特徴とする上記1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0017】
(8)光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物を0〜40質量%含有することを特徴とする上記1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0018】
(9)前記オキセタン環を有する化合物の1種が、下記一般式(E)で表される化合物であることを特徴とする上記1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0019】
【化2】

【0020】
〔式中、R1〜R6はそれぞれ水素原子または置換基を表す。ただし、R3〜R6で表される基の少なくとも1つは、置換基である。〕
(10)25℃における粘度が、7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0021】
(11)インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【0022】
(12)インクジェット記録ヘッドより、上記1〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【0023】
(13)インクジェット記録ヘッドより、上記1〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【0024】
(14)インクジェット記録ヘッドより、上記1〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式のインクジェット記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0025】
(15) 上記11〜14のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インクジェットインク組成物及びインクジェット記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、本発明の目的は、人体に有害なベンゼンの放出がなく、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0028】
本発明者は、活性光線硬化型インクジェットインク組成物(以下、活性光線硬化型インクあるいは単にインクともいう)において、光酸発生剤として活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩を含有し、かつ光重合性化合物としてオキセタン環を有する化合物を含有する活性光線硬化型インクジェットインク組成物により、飛躍的に吐出安定性および硬化性が改良され、印字環境(例えば、温度、湿度)に影響を受けずに、良好な吐出安定性・硬化性が得られることを見出し、本発明に至った次第である。
【0029】
従来、UVI6992(ダウ・ケミカル社製、トリアリールスルホニウム塩)を中心として、活性光線照射により分解物としてベンゼンを発生する光酸発生剤を用いて、カチオン重合性のインク組成物が調製されていた。しかし、該インク組成物は、ベンゼンを発生するということで食品分野で用いられることが少ないばかりでなく、環境(温度、湿度)により吐出が不安定になるという問題も有り、該インクを用いてインクジェット記録で高精細な画像を形成することは不可能であった。また、ベンゼンを発生しないオニウム塩(光酸発生剤)としては、IRGACURE250(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ジアリールヨードニウム塩)及びCI5102(日本曹達社製、ジアリールヨードニウム塩)などが知られているが、これらを含めて、活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩を用いて安定に吐出が可能なインクジェットインク組成物を実用化した例はなかった。
【0030】
特に、オキセタン環を含有する化合物と合わせて用いる場合、インクジェット記録をする上で重要な特性とされる吐出安定性が非常に良好となり、かつ硬化環境に左右されずにインクが記録材料上に着弾した後のDot径の制御が容易にでき、再現性よく高画質な画像を形成することができる、画期的な構成である。
【0031】
また、活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩を光酸発生剤として用いる場合、塩基性化合物あるいはノニオン性の界面活性剤を併用すると、更に吐出安定性が向上し、好ましい。
【0032】
更に好ましくは、光重合性化合物として、オキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、オキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有することで、前記硬化性及び吐出安定性ともに向上する。
【0033】
また、前記一般式(E)で表されるオキセタン化合物を用いることで、前記硬化性及び吐出安定性ともに格段に向上することを見出した。光重合性化合物としてオキセタン化合物のみ用いる場合、単官能オキセタン化合物とオキセタン環を2個以上有する多官能オキセタン化合物とを併用すると更に好ましい。
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0035】
はじめに、本発明のインクに含有される活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩(光酸発生剤)について説明する。
【0036】
本発明でいう「活性光線照射によりベンゼンを発生しない」とは、実質的にベンゼンを発生しないことを意味し、具体的には、インク組成物中にオニウム塩(光酸発生剤)を5質量%含有したインクを用いて、厚さ15μmで約100m2の画像を印字し、インク膜面を30℃に保った状態で光酸発生剤が十分分解する量の活性光線を照射した際に発生するベンゼンの量が、5μg以下の極微量あるいは皆無であることを指す。該オニウム塩としては、スルホニウム塩あるいはヨードニウム塩が好ましく、S+あるいはI+と結合するベンゼン環に置換基を有するものであれば、上記条件を満たす。
【0037】
該スルホニウム塩としては、前記一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩化合物が好ましく、S+と結合するベンゼン環に置換基をもつものであれば、上記条件を満たす。
【0038】
前記一般式〔1〕〜〔4〕において、R1〜R17はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。ただし、一般式〔1〕におけるR1〜R3が、フェニルチオ基あるいはフェノキシ基であることはない。
【0039】
1〜R17で表される置換基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基等を挙げることができる。
【0040】
Xは、非求核性のアニオン残基を表し、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、B(C654、R18COO、R19SO3、SbF6、AsF6、PF6、BF4等を挙げることができる。ただし、R18およびR19は、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等で置換されていもよいアルキル基もしくはフェニル基を表す。この中でも、安全性の観点から、B(C654、PF6が好ましい。
【0041】
上記化合物は、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Voi.71 No.11,1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0042】
本発明においては、前記一般式〔I〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩が、下記式〔5〕〜〔13〕から選ばれるスルホニウム塩の少なくとも1種であることが、特に好ましい。Xは非求核性のアニオン残基を表し、前述と同様である。
【0043】
【化3】

【0044】
ヨードニウム塩を含めた、例示化合物としては、前記式〔5〕〜〔13〕のXがB(C654、PF6、Br、BF4の他に、下記の化合物が挙げられる。
【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
〔トリアリールスルホニウム塩化合物〕
本発明においては、ベンゼンを発生しないオニウム塩が、下記一般式(T−1)で表されるトリアリールスルホニウム塩化合物である場合も好ましい。
【0050】
この場合においては、下記一般式(T−2)〜(T−5)で表されるトリアリールスルホニウム塩が、特に好ましく、その中でも一般式(T−3)で表されるトリアリールスルホニウム塩が特段に好ましく用いられ、これらの化合物は、光硬化性、安全性、湿度影響性に関し特に優れている。
【0051】
(一般式(T−1)で表される化合物)
【0052】
【化8】

【0053】
T11、RT12はアルキル基または芳香族基を表す。
【0054】
アルキル基としては、直鎖でも分岐を有していても環状になっていてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0055】
芳香族基としては、芳香族炭化水素環基でも芳香族複素環基でもよく、縮合環を有していてもよく、例えば、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)等が挙げられる。
【0056】
上述したアルキル基または芳香族基は、さらに置換基を有していていもよく、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよく、縮合環を有していてもよい。該置換基の例としては、上述したアルキル基の他に、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素芳香族基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよく、また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0057】
T11、RT12で表されるアルキル基または芳香族基は、さらに置換基を有していても有していなくてもよいが、好ましくは、無置換のアルキル基または芳香族基であるか、またはハロゲン原子が置換したアルキル基またはアルコキシ基が置換した芳香族基であり、より好ましくは、無置換のアルキル基または芳香族基であるか、またはフッ素原子が置換したアルキル基、またはアルコキシ基が置換した芳香族基であり、フッ素原子が置換したアルキル基の例としてはフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等を挙げることができる。
【0058】
T1は酸素原子または硫黄原子を表し、ZT1はスルホニウムイオンが結合したベンゼン環に対して、オルト位またはパラ位に結合することが好ましく、パラ位で結合することがより好ましい。
【0059】
T13、RT14は各々アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。
【0060】
アルキル基、芳香族基としては、上述したRT11、RT12と同義の基を表す。
【0061】
アルコキシ基、該アリールオキシ基としては、酸素原子に上述したRT11、RT12と同義の基が一箇所結合した基であり、例としてはアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)等が挙げられる。
【0062】
アルキルチオ基、アリールチオ基としては、硫黄原子に上述したRT11、RT12と同義の基が一箇所結合した基であり、例としては、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)等が挙げられる。上述した芳香族基、アリールオキシ基、アリールチオ基は縮合環を有していてもよい。
【0063】
上述したアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基はさらに置換基を有していていもよく、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよく、縮合環を有していてもよい。該置換基の例としては、上述したRT11の置換基の例と同義の基を挙げることができ、これらの置換基は、さらに置換基によって置換されていてもよく、また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。RT13、RT14で表されるアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基はさらに置換基を有していても、有していなくてもよいが、好ましくは無置換のアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であるか、またはハロゲン原子が置換したアルキル基、またはアルコキシ基が置換した芳香族基であり、より好ましくは、無置換のアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であるか、またはフッ素原子が置換したアルキル基、またはアルコキシ基が置換した芳香族基であり、フッ素原子が置換したアルキル基の例としてはフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等を挙げることができる。
【0064】
mt1は0〜4の整数を表し、好ましく0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2の整数であり、nt1及びpt1は各々1〜5の整数を表し、各々好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは各々1〜2の整数である。
【0065】
複数個のRT12、RT13、RT14、は各々、同じでも異なってもよく、RT11とRT12あるいは複数個のRT12同士が結合して環を形成してもよく、RT12とRT13あるいは複数個のRT13同士が結合して環を形成してもよく、RT12とRT14あるいは複数個のRT14同士が結合して環を形成してもよく、RT12とRT14が結合して環を形成してもよい。RT13の少なくとも一つはスルホニウムイオンが結合したベンゼン環に対して、オルト位またはパラ位に結合することが好ましく、パラ位で結合することがより好ましい。RT14の少なくとも一つはスルホニウムイオンが結合したベンゼン環に対して、オルト位またはパラ位に結合することが好ましく、パラ位で結合することがより好ましい。XT1はPF6-を表す。
【0066】
(一般式(T−2)で表される化合物)
【0067】
【化9】

【0068】
一般式(T−2)において、RT21、RT22、RT23、RT24はアルキル基または芳香族基を表す。アルキル基及び芳香族基としては、上述したRT11と同義の基を表し、複数個のRT21、RT22、RT23、RT24は各々同じでも異なってもよく、RT21とRT22あるいは複数個のRT22同士が結合して環を形成してもよく、RT23とRT25あるいは複数個のRT23同士が結合して環を形成してもよく、RT24とRT26あるいは複数個のRT24同士が結合して環を形成してもよく、RT22とRT23が結合して環を形成してもよく、RT23とRT24が結合して環を形成してもよく、RT22とRT24が結合して環を形成してもよい。
【0069】
T2は酸素原子または硫黄原子を表し、RT25、RT26は各々アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基としては、上述したRT13と同義の基を表し、mt2、nt2及びpt2は各々0〜4の整数を表し、好ましくは各々0〜2の整数であり、各々0か1であることがより好ましい。XT2はPF6-を表す。
【0070】
(一般式(T−3)で表される化合物)
【0071】
【化10】

【0072】
一般式(T−3)において、RT31は炭素数1〜10のアルキル基を表す。アルキル基は直鎖でも分岐を有していても、環状になっていてもよく、例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、tert−アミル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらはさらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては上述したRT11の置換基と同義の基である。RT31は好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
【0073】
T32、RT33は各々炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を表す。アルキル基は上述したRT31と同義の基であり、アルコキシ基は、酸素原子に上述したRT31と同義の基が一箇所結合した基であり、例としてはメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。RT32、RT33は各々好ましくは炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、最も好ましくはメチル基またはメトキシ基である。XT3はPF6-を表す。
【0074】
(一般式(T−4)で表される化合物)
【0075】
【化11】

【0076】
一般式(T−4)において、RT41は炭素数1〜10のアルキル基を表す。アルキル基としては、直鎖でも分岐を有していても、環状になっていてもよく、例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、tert−アミル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらはさらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては上述したRT11の置換基と同義の基である。RT41は好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0077】
T42は置換基を表し、該置換基としては上述したRT11の置換基と同義の基である。
【0078】
mt4は0〜4の整数を表し、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0か1である。
【0079】
T43、RT44は各々炭素数1〜10のアルキル基を表す。アルキル基としては、上述したRT31と同義の基である。RT43、RT44は各々好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。XT4はPF6-を表す。
【0080】
(一般式(T−5)で表される化合物)
【0081】
【化12】

【0082】
一般式(T−5)において、RT51は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。アルキル基としては、上述したRT31の置換基と同義の基である。RT51は好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
【0083】
T52は置換基を表す。置換基としては上述したRT11の置換基と同義の基である。
【0084】
mt5は0〜4の整数を表し、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0か1である。
【0085】
T53、RT54は各々炭素数1〜10のアルキル基を表す。アルキル基としては、上述したRT31と同義の基である。RT53、RT54は各々好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。XT5はPF6-を表す。
【0086】
以下に本発明に用いられる前記一般式(T−1)〜(T−5)で表されるトリアリールスルホニウム塩化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
【化13】

【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
【化16】

【0091】
【化17】

【0092】
これらの化合物は、Bull.Chem.Soc.Jpn.,42,312(1969).、J.Polym.Sci.,Poly.m.Chem.Ed.,17,2877(1979).、特開平11−80118号、特開2002−241474号、米国特許第4404459号記載の方法に準じて合成することができる。例示化合物の合成例を以下に示す。
【0093】
(TAS−1の合成)
塩化カルシウム管、温度計、メカニカル撹拌機をセットしたフラスコに、アニソール209g、塩化アルミニウム112gを氷冷下混合した。氷冷下フラスコ内温を10℃以下に保ちながら塩化チオニル50gを3時間かけて滴下した。その後氷冷下1時間、室温で2時間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチル600mlを加えて分液し、水層を分取した。水層にヘキサフルオロリン酸カリウム90g/純水600ml溶液を少量ずつ加え、生成した結晶を濾取し、粗結晶222.7gを得た(106.3%)。粗結晶に塩化メチレンを500ml加えて溶解した後、活性アルミナにてカラム精製し、溶媒を減圧濃縮後、透明粘性液体192.2gを得た。メタノール600mlを加えて加熱溶解後、室温付近まで放冷後さらに1時間撹拌し、氷水冷却後2時間撹拌した。結晶を濾別し、冷メタノールで洗浄、風乾しTAS−1を得た。収量168.3g(収率80%)。1H−NMR及びマススペクトルにて目的物と同定した。
【0094】
(TAS−2の合成)
塩化カルシウム管、温度計をセットした1Lのフラスコに酸化りん25g、メタンスルホン酸160gを加え、内温80℃前後にて3時間加熱攪拌した。室温まで放冷後、ビス(4−メトキフェニル)スルホキシド44g、フェニルエーテル43gを加え水冷下3時間攪拌した。2Lのコニカルビーカーにヘキサフルオロリン酸カリウム31gを氷水1Lに溶解し、先の反応液をメカニカルスターラーで撹拌しながら少量ずつ加えると、柔らかい白色のアモルファスが生成した。撹拌を停止し、上澄みをデカンテーションで除き、残渣に塩化メチレン1Lを加え、水洗後、塩化メチレン層を減圧濃縮し粗生成物を得た。活性アルミナカラム処理により精製し、溶媒を減圧濃縮後、淡褐色のオイル成分を得た。ヘキサン1000ml加え生じた結晶を濾取し、TAS−2を得た。収量72.4g(収率77%)。1H−NMR及びマススペクトルにて目的物と同定した。
【0095】
(TAS−4の合成)
塩化カルシウム管、温度計をセットした1Lのフラスコに酸化りん32g、メタンスルホン酸150gを加え、内温80℃前後にて3時間加熱攪拌した。室温まで放冷後、ビス(4−メトキフェニル)スルホキシド54g、1−tert−ブチル−4−フェノキシベンゼン46.8gを加え水冷下3時間攪拌した。2Lのコニカルビーカーにヘキサフルオロリン酸カリウム42gを氷水1Lに溶解し、先の反応液をメカニカルスターラーで撹拌しながら少量ずつ加えると、柔らかい白色のアモルファスが生成した。撹拌を停止し、上澄みをデカンテーションで除き、残渣に塩化メチレン1Lを加え、水洗後、塩化メチレン層を減圧濃縮し粗生成物を得た。活性アルミナカラム処理により精製し、溶媒を減圧濃縮後、淡褐色のオイル成分を得た。メタノールを100ml程度加えて再度減圧濃縮し塩化メチレンを完全に除去後、ロータリーポンプにて、減圧乾燥。飴状の堅さに発泡したアモルファスを砕いて、TAS−4を得た。収量60.9g(収率49%)。1H−NMR及びマススペクトルにて目的物と同定した。
【0096】
(TAS−6の合成)
塩化カルシウム管、温度計をセットした1Lのフラスコに酸化りん36g、メタンスルホン酸180gを加え、内温80℃前後にて3時間加熱攪拌した。室温まで放冷後、ビス(4−メトキフェニル)スルホキシド60.6g、トルエン21.3gを加えた。激しく昇温が始まるので、すぐに水冷しそのまま3時間攪拌した。2Lのコニカルビーカーにヘキサフルオロリン酸カリウム49gを氷水1Lに溶解し、先の反応液をメカニカルスターラーで撹拌しながら少量ずつ加えると、茶褐色のヌガー状アモルファスが生成した。撹拌を停止し、上澄みをデカンテーションで除き、残渣に塩化メチレン800mlを加え、さらにヘキサフルオロリン酸カリウム25g/純粋500ml溶液を加えて1時間分散した。水層分離後、塩化メチレン層を減圧濃縮し粗生成物を得た。活性アルミナカラム処理により精製し、溶媒を減圧濃縮後、淡褐色のオイル成分を得た。メタノールを100ml程度加えて再度減圧濃縮し塩化メチレンを完全に除去後、ロータリーポンプにて、減圧乾燥。飴状の堅さに発泡したアモルファスを砕いて、TAS−6を得た。収量78.5g(収率70%)。1H−NMR及びマススペクトルにて目的物と同定した。
【0097】
(TAS−11の合成)
塩化カルシウム管、温度計をセットした1Lのフラスコに酸化りん32g、メタンスルホン酸288gを加え、内温80℃−90℃にて3時間加熱攪拌した。室温まで放冷後、ビス(4−メトキフェニル)スルホキシド78.7g、1−メチル−4−フェニルスルファニルベンゼン(1−methyl−4−phenylsulfanyl−benzene)60.1gを加え、室温下3時間攪拌した。5Lのコニカルビーカーにヘキサフルオロリン酸カリウム55.2gを純粋3Lに溶解し、メカニカルスターラーで撹拌しながら、先の反応液を少量ずつ加えると、柔らかい白色のアモルファスが生成した。撹拌を停止し、上澄みをデカンテーションで除き、飴状の残渣に塩化メチレン600mlを加えて、さらにヘキサフルオロリン酸カリウム25g/純粋500ml溶液を加えて1時間分散した。水層分離後、塩化メチレン層を減圧濃縮し粗生成物を得た。活性アルミナカラム処理により精製し、溶媒を減圧濃縮後、淡褐色のオイル成分を得た。ヘキサンを加えて懸濁し、メカニカルスターラーで激しく撹拌しながら再沈殿後、TAS−11を得た。収量166.0g(収率94%)。1H−NMR及びマススペクトルにて目的物と同定した。
【0098】
(TAS−13の合成)
塩化カルシウム管、温度計をセットした1Lのフラスコに酸化りん32g、メタンスルホン酸288gを加え、内温80〜90℃にて3時間加熱攪拌した。室温まで放冷後、p−トルイルスルホキシド69.1g、アニソール33gを加え室温で3時間攪拌した。5Lのビーカーにヘキサフルオロリン酸カリウム55.2gを純粋3Lに溶解し、先の反応液をメカニカルスターラーで撹拌しながら少量ずつ加えると、ヌガー状のアモルファスが生成した。撹拌を停止し、上澄みをデカンテーションで除き、飴状の残渣に塩化メチレン600mlを加えて、さらにヘキサフルオロリン酸カリウム25g/純粋500ml溶液を加えて1時間分散した。水層分離後、塩化メチレン層に活性炭を加えて脱色し、活性炭を濾別後、減圧濃縮して粗生成物を得た。活性アルミナカラム処理により精製し、溶媒を減圧濃縮後、粗結晶132.6gを得た。イソプロピルアルコール300ml、塩化メチレン10〜30mlを加え、60〜70℃の水浴で加熱分散し、室温付近まで放冷後、イソプロピルアルコール200mlを追加し、室温で1時間撹拌後、結晶を濾取しTAS−13を得た。収量123.7g(収率88%)。1H−NMR及びマススペクトルにて目的物と同定した。
【0099】
本発明に用いられるトリアリールスルホニウム塩(重合開始剤)は、カチオン重合性を有する化合物100質量部に対して、0.2〜20質量部の比率で含有させることが好ましい。重合開始剤の含有量が0.2質量部未満では硬化物を得ることが困難であり、20質量部を越えて含有させても更なる硬化性向上効果はない。これらのトリアリールスルホニウム塩は、1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0100】
本発明においては、更なる吐出安定性の向上のため、塩基性化合物を併用することが好ましい。光酸発生剤として上述したようなヨードニウム塩を用いる場合には、特に有効である。
【0101】
塩基性化合物としては、公知のあらゆるものを用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。
【0102】
塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。
【0103】
塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様に、アルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(例えば、マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
【0104】
塩基性有機化合物としては、アミンならびにキノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物などが挙げられるが、これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0105】
塩基性化合物を存在させる際の濃度は、光重合性モノマーの総質量に対して10〜1000ppm、特に20〜500ppmの範囲であることが好ましい。なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0106】
また、本発明においては、更なる吐出安定性の向上のため、ノニオン性界面活性剤を併用することが好ましい。
【0107】
本発明で使用されるノニオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、第2級アルコールエトキシレート、第1級アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート、オレイルアルコールエトキシレート、ラウリルアルコールエトキシレート、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールオレート、ソルビタンステアリルエステル、ソルビタンオレイルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエステル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどの水酸基含有不飽和単量体が共重合されたアクリル樹脂、等が例示できる。更には、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール、またはグリコールエーテル類等が例示できる。ノニオン性界面活性剤は、単独であってももしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0108】
本発明では、ノニオン性界面活性剤が、分子中にパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤であることが、特に好ましい。本発明で使用される分子中にパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、具体的には、例えば、「サーフロン(SURFLON)S−141」、「サーフロンS−145」、「サーフロンS−381」、「サーフロンS−383」、「サーフロンS−393」、「サーフロンSC−101」、「サーフロンSC−105」、「サーフロンKH−40」、「サーフロンSA−100」(以上、セイミケミカル(株)の製品)、「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−173」、「メガファックF−177」、「メガファックF−178A」、「メガファックF−178K」、「メガファックF−179」、「メガファックF−183」、「メガファックF−184」、「メガファックF−815」、「メガファックF−470」、「メガファックF−471」(以上、大日本インキ化学工業(株)の製品)等が例示できる(参考文献;「13700の化学商品」、p1239−p1242、化学工業日報社(2000))。本発明のインクにおいて、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0109】
本発明のインクにおいては、光重合性化合物としてオキセタン環を有する化合物を含むことが特徴である。
【0110】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物としては、オキセタン環を有する化合物であり、例えば、特開2001−220526号、同2001−310937号に紹介されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0111】
また、本発明においては、更なる硬化性及び吐出安定性向上の観点から、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を含有することが好ましい。
【0112】
光重合性モノマーとしては、各種公知のカチオン重合性のモノマーが使用出来る。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0113】
エポキシ化合物には、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0114】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0115】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0116】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0117】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0118】
本発明においては、脂環式エポキシ化合物としては、下記一般式(A)、(I)〜(VI)で表される化合物であることが好ましい。
【0119】
【化18】

【0120】
【化19】

【0121】
【化20】

【0122】
【化21】

【0123】
【化22】

【0124】
【化23】

【0125】
【化24】

【0126】
前記一般式(A)、(I)〜(VI)において、R100、R101、R102、R103、R104、R105、R106は各々置換基を表す。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。上記置換基の中でも好ましいものは、アルキル基、アルコキシ基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0127】
前記一般式(A)、(I)〜(VI)において、m0、m1、m2、m3、m4、m6は各々0〜2の整数を表し、0または1が好ましい。また、m5は1または2を表す。
【0128】
前記一般式(A)において、L0は、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr0+1価の連結基あるいは単結合を、前記一般式(I)において、L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr1+1価の連結基あるいは単結合を、前記一般式(II)において、L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr2+1価の連結基あるいは単結合を、前記一般式(III)、前記一般式(IV)において、L3、L4は各々主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数8の2価の連結基あるいは単結合を表す。
【0129】
上記主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい2価の連結基の例としては、以下の列挙する基及びこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0130】
メチレン基:[−CH2−]、
エチリデン基:[>CHCH3]、
イソプロピリデン基:[>C(CH32
1,2−エチレン基:[−CH2CH2−]、
1,2−プロピレン基:[−CH(CH3)CH2−]、
1,3−プロパンジイル基:[−CH2CH2CH2−]、
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基:[−CH2C(CH32CH2−]、
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基:[−CH2C(OCH32CH2−]、
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基:[−CH2C(CH2OCH32CH2−]、
1−メチル−1,3−プロパンジイル基:[−CH(CH3)CH2CH2−]、
1,4−ブタンジイル基:[−CH2CH2CH2CH2−]、
1,5−ペンタンジイル基:[−CH2CH2CH2CH2CH2−]、
オキシジエチレン基:[−CH2CH2OCH2CH2−]、
チオジエチレン基:[−CH2CH2SCH2CH2−]、
3−オキソチオジエチレン基:[−CH2CH2SOCH2CH2−]、
3,3−ジオキソチオジエチレン基:[−CH2CH2SO2CH2CH2−]、
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基:[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]、
3−オキソペンタンジイル基:[−CH2CH2COCH2CH2−]、
1,5−ジオキソ−3−オキサペンタンジイル基:[−COCH2OCH2CO−]、
4−オキサ−1,7−ヘプタンジイル基:[−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−]、
3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基:[−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−]、
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基:[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]、
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基:[−CH2CH2OCH2C(CH32CH2OCH2CH2−]、
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基:[−CH2CH2OCH2C(OCH32CH2OCH2CH2−]、
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基:[−CH2CH2OCH2C(CH2OCH32CH2OCH2CH2−]、
4,7−ジオキソ−3,8−ジオキサ−1,10−デカンジイル基:[−CH2CH2O−COCH2CH2CO−OCH2CH2−]、
3,8−ジオキソ−4,7−ジオキサ−1,10−デカンジイル基:[−CH2CH2CO−OCH2CH2O−COCH2CH2−]、
1,3−シクロペンタンジイル基:[−1,3−C58−]、
1,2−シクロヘキサンジイル基:[−1,2−C610−]、
1,3−シクロヘキサンジイル基:[−1,3−C610−]、
1,4−シクロヘキサンジイル基:[−1,4−C610−]、
2,5−テトラヒドロフランジイル基:[2,5−C46O−]
p−フェニレン基:[−p−C64−]、
m−フェニレン基:[−m−C64−]、
α,α′−o−キシリレン基:[−o−CH2−C64−CH2−]、
α,α′−m−キシリレン基:[−m−CH2−C64−CH2−]、
α,α′−p−キシリレン基:[−p−CH2−C64−CH2−]、
フラン−2,5−ジイル−ビスメチレン基:[2,5−CH2−C42O−CH2−]
チオフェン−2,5−ジイル−ビスメチレン基:[2,5−CH2−C42S−CH2−]
イソプロピリデンビス−p−フェニレン基:[−p−C64−C(CH32−p−C64−]
3価以上の連結基としては、上記で列挙した2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基、及びそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0131】
0、L1、L2、L3、L4は各々置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0132】
0、L1、L2としては、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜8の2価の連結基が好ましく、あるいはL0、L1、L2、L3、L4としては各々主鎖が炭素のみからなる炭素数1〜5の2価の連結基がより好ましい。
【0133】
p1、q1は各々0または1を表し、p1+q1が1以上であることが好ましい。p2、q2は各々0または1を表し、各々1が好ましい。p3、p4は各々0または1を表す。
【0134】
以下に、好ましい脂環式エポキシ化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0135】
【化25】

【0136】
【化26】

【0137】
【化27】

【0138】
【化28】

【0139】
【化29】

【0140】
【化30】

【0141】
【化31】

【0142】
【化32】

【0143】
【化33】

【0144】
【化34】

【0145】
本発明に係る上記各脂環式エポキシ化合物においては、分子量を分子内のエポキシ基の総数で除した数値が160〜300であることが好ましい。
【0146】
本発明に係る前記一般式(A)、(I)〜(VI)で表される脂環式エポキシ化合物の合成は、例えば、以下に列挙する特許明細書に記載の方法に準じて行うことができる。
【0147】
A:米国特許2,745,847号明細書
B:米国特許2,750,395号明細書
C:米国特許2,853,498号明細書
D:米国特許2,853,499号明細書
E:米国特許2,863,881号明細書
以下に、上記特許明細書に記載されている方法に準じて、上記例示化合物の合成例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0148】
(合成例1)
例示化合物EP−9:Ethylenglycol−bis−(4−methyl−3,4−epoxy−cyclohexanecarboxylate)の合成
〈Methyl−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の合成〉
公知のDiels−Alder反応によって、イソプレンとアクリル酸メチルを原料に、Methyl−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)を合成した。反応は、文献(J.Organomet.Chem.,285,1985,333−342、J.Phys.Chem.,95,5,1992,2293−2297、Acta.Chem.Scand.,47,6,1993,581−591)あるいは米国特許第1,944,731号明細書等に記載された条件に準じた反応条件で行ない、高収率で目的の化合物を得た。
【0149】
〈Ethylenglycol−bis−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の合成〉
Methyl−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の340g(2mol)と、エチレングリコール62g(1mol)とにトルエンスルホン酸1水和物1gを添加し、80〜90℃で8時間反応した。反応液を重曹水で洗浄した後、減圧蒸留を行い、目的の化合物を得た。収率は92%だった。
【0150】
〈例示化合物EP−9の合成〉
Ethylenglycol−bis−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の306g(1mol)を2Lの三頭フラスコに入れ、内温を35〜40℃に保ったまま、過酢酸含有率が25質量%のアセトン溶液770g(過酢酸192g(2.5mol))を4時間かけて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間後反応した。反応液は−11℃で一晩保存した後、過酢酸の残量を調べ理論量の98%以上が反応していることを確認した。
【0151】
次いで、反応液をトルエン1Lで希釈し、水流アスピレーターによる減圧下で50℃に加熱し溜出物がなくなるまで低沸点成分を溜去し除去した。残った反応組成物を減圧蒸留し、目的の例示化合物EP−9を得た。収率は78%であった。
【0152】
得られた例示化合物EP−9の構造は、NMR、MASS分析で確認した。
【0153】
1H NMR (CDCl3) δ(ppm):1.31(s,6H,CH3−)、1.45〜2.50(m,14H,シクロヘキサン環)、3.10(m,2H,エポキシ根元)、4.10(s,4H,−CH2−O−)
(合成例2)
例示化合物EP−12:Propane−1,2−diol−bis−(4−methyl−3,4−epoxy−cyclohexanecarboxylate)の合成
〈Propane−1,2−diol−bis−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の合成〉
Methyl−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の340g(2mol)と、Propane−1,2−diolの76g(1mol)にトルエンスルホン酸1水和物1gを添加し、80〜90℃で8時間反応した。反応液を重曹水で洗浄した後、減圧蒸留を行い目的の化合物を得た。収率は90%だった。
【0154】
〈例示化合物EP−12の合成〉
Propane−1,2−diol−bis−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の320g(1mol)を2Lの三頭フラスコに入れ、内温を35〜40℃に保ったまま、過酢酸含有率が25質量%のアセトン溶液770g(過酢酸192g(2.5mol))を4時間かけて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間後反応した。反応液は−11℃で一晩保存した後、過酢酸の残量を調べ理論量の98%以上が反応していることを確認した。
【0155】
次いで、反応液をトルエン1Lで希釈し、水流アスピレーターによる減圧下で50℃に加熱し溜出物がなくなるまで低沸点成分を溜去し除去した。
【0156】
残った反応組成物を減圧蒸留し、目的の例示化合物EP−12を得た。収率は75%だった。
【0157】
得られた例示化合物EP−12の構造は、NMR、MASS分析で確認した。
【0158】
1H NMR (CDCl3) δ(ppm):1.23(d,3H,CH3−)、1.31(s,6H,CH3−)、1.45〜2.50(m,14H,シクロヘキサン環)、3.15(m,2H,エポキシ根元)、4.03(m,1H,−O−CH2−)、4.18(m,1H,−O−CH2−)、5.15(m,1H,>CH−O−)
(合成例3)
例示化合物EP−17:2,2−Dimethyl−propane−1,3−diol−bis−(4−methyl−3,4−epoxy−cyclohexanecarboxylate)の合成
〈2,2−Dimethyl−propane−1,3−diol−bis−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の合成〉
Methyl−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の340g(2mol)と、2,2−Dimethyl−propane−1,3−diolの104g(1mol)とに、トルエンスルホン酸1水和物1gを添加し80〜90℃で12時間反応した。反応液を重曹水で洗浄した後、減圧蒸留を行い目的の化合物を得た。収率は86%だった。
【0159】
〈例示化合物EP−17の合成〉
2,2−Dimethyl−propane−1,3−diol−bis−(4−methyl−3−cyclohexenecarboxylate)の348g(1mol)を2Lの三頭フラスコに入れ、内温を40℃に保ったまま、過酢酸含有率が25質量%のアセトン溶液770g(過酢酸192g(2.5mol))を4時間かけて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間後反応した。反応液は−11℃で一晩保存した後、過酢酸の残量を調べ理論量の98%以上が反応していることを確認した。
【0160】
次いで、反応液をトルエン1Lで希釈し、水流アスピレーターによる減圧下で50℃に加熱し溜出物がなくなるまで低沸点成分を溜去し除去した。
【0161】
残った反応組成物を減圧蒸留し、目的の例示化合物EP−17を得た。収率は70%だった。
【0162】
例示化合物EP−17の構造は、NMR、MASS分析で確認した。
【0163】
1H NMR (CDCl3) δ(ppm):0.96(s,6H,CH3−)、1.31(s,6H,CH3−)、1.45〜2.50(m,14H,シクロヘキサン環)、3.00(m,2H,エポキシ根元)、3.87(s,4H,−O−CH2−)
(合成例4)
例示化合物EP−31:1,3−Bis−(4−methyl−3,4−epoxy−cyclohexylmethyloxy)−2−propanolの合成
〈4−Methyl−3−cyclohexenylmethanolの合成〉
公知のDiels−Alder反応によって、イソプレンとアクロレインを原料に、4−Methyl−3−cyclohexenyl aldehydeを合成した。反応は、文献(J.Amer.Chem.Soc.,119,15,1997,3507−3512、Tetrahedron Lett.,40,32,1999,5817−5822)等に記載された条件に準じた反応条件で行ない、高収率で目的の化合物を得た。次いで、この化合物を還元することで4−Methyl−3−cyclohexenylmethanolを高収率で合成した。
【0164】
〈1,2−Bis−(4−methyl−3−cyclohexenylmethyloxy)−2−propanolの合成〉
4−Methyl−3−cyclohexenylmethanolの284g(2mol)と、エピクロルヒドリンを92g(1mol)含むアセトン1L溶液に炭酸カリウムを305g(2.2mol)添加し、50℃で8時間反応した。析出した塩をろ過によって除去し、反応液を減圧濃縮した後、残った粗生物の減圧蒸留を行い目的の化合物を得た。収率は90%だった。
【0165】
〈例示化合物EP−31の合成〉
1,2−Bis−(4−methyl−3−cyclohexenylmethyloxy)−2−propanolの308g(1mol)を2Lの三頭フラスコに入れ、内温を35〜40℃に保ったまま、過酢酸含有率が25質量%のアセトン溶液770g(過酢酸192g(2.5mol))を4時間かけて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間後反応した。反応液は−11℃で一晩保存した後、過酢酸の残量を調べ理論量の98%以上が反応していることを確認した。
【0166】
次いで、反応液をトルエン1Lで希釈し、水流アスピレーターによる減圧下で50℃に加熱し溜出物がなくなるまで低沸点成分を溜去し除去した。
【0167】
残った反応組成物を減圧蒸留し、目的の例示化合物EP−31を得た。収率は83%だった。
【0168】
例示化合物EP−31の構造は、NMR、MASS分析で確認した。
【0169】
1H NMR (CDCl3) δ(ppm):1.31(s,6H,CH3−)、1.4〜2.0(m,14H,シクロヘキサン環)、2.7(s,1H,−OH)、3.10(m,2H,エポキシ根元)、3.45(d,4H,−CH2−O−)、3.50(m,4H,−CH2−O−)、3.92(m,1H,>CH−)
(合成例5)
例示化合物EP−35:Bis−(4−methyl−3,4−epoxy−cyclohexylmethyl)oxalateの合成
〈Bis−(4−methyl−3−cyclohexenylmethyl)succinateの合成〉
4−Methyl−3−cyclohexenylmethanolの284g(2mol)と、コハク酸無水物を100g(1mol)含むトルエン1L溶液とに、トルエンスルホン酸1水和物5gを添加し、生成する水を水分離装置で除去しながら110〜120℃で8時間反応した。反応液を重曹水で洗浄した後、減圧濃縮でトルエンを溜去した。残った粗生物の減圧蒸留を行い目的の化合物を得た。収率は90%だった。
【0170】
〈例示化合物EP−35の合成〉
Bis−(4−methyl−3−cyclohexenylmethyl)succinateの335g(1mol)を2Lの三頭フラスコに入れ、内温を35〜40℃に保ったまま、過酢酸含有率が25質量%のアセトン溶液770g(過酢酸192g(2.5mol))を4時間かけて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間後反応した。反応液は−11℃で一晩保存した後、過酢酸の残量を調べ理論量の98%以上が反応していることを確認した。
【0171】
次いで、反応液をトルエン1Lで希釈し、水流アスピレーターによる減圧下で50℃に加熱し、溜出物がなくなるまで低沸点成分を溜去し除去した。
【0172】
残った反応組成物を減圧蒸留し、例示化合物EP−35を得た。収率は75%だった。
【0173】
例示化合物EP−35の構造は、NMR、MASS分析で確認した。
【0174】
1H NMR (CDCl3) δ(ppm):1.31(s,6H,CH3−)、1.4〜2.0(m,14H,シクロヘキサン環)、3.10(m,2H,エポキシ根元)、2.62(s,4H,−CH2−CO−)、4.05(d,4H,−CH2−O−)
その他の上記で列挙した本発明に係る各脂環式エポキシド化合物も、上記の方法と同様にして収率良く合成できる。
【0175】
また、本発明においては、AMES及び感作性などの安全性の観点から、オキシラン基を有するエポキシ化合物としては、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも一方であることが特に好ましい。
【0176】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0177】
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0178】
更に、本発明においては、公知のビニルエーテル化合物を用いることができる。
【0179】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0180】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0181】
本発明において、好ましくは、光重合性化合物として、オキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、オキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有することであり、この構成とすることにより、硬化性及び吐出安定性がともに向上する。
【0182】
また、本発明においては、更なる硬化性及び吐出安定性の向上のために、前記一般式(E)で表されるオキセタン環を有する化合物を用いることが、特に好ましい。
【0183】
以下、本発明に係る前記一般式(E)で表されるオキセタン環を含有する化合物について説明する。
【0184】
一般式(E)において、R1〜R6はそれぞれ水素原子または置換基を表し、このとき、R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0185】
分子中に1個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0186】
【化35】

【0187】
上記一般式(2)〜(5)において、Zはそれぞれ独立で、酸素または硫黄原子、あるいは主鎖に酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基、R1〜R6は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基、R7及びR8は、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基または3−ブテニル基等の炭素数1〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基またはフェノキシエチル基等のアリール基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基またはペンチルカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基またはブトキシカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基、エトキシカルバモイル基、プロピルカルバモイル基またはブチルペンチルカルバモイル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルバモイル基を表す。
【0188】
本発明で使用するオキセタン環含有化合物としては、上記一般式(2)〜(5)において、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R7及びR8がプロピル基、ブチル基、フェニル基またはベンジル基、Zが酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。また、R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0189】
分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(6)、(7)、(13)で表される化合物を挙げることができる。
【0190】
【化36】

【0191】
上記一般式(6)及び(7)において、mは2、3または4、Zはそれぞれ独立で、酸素または硫黄原子、あるいは酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基またはフリル基、R9は、例えば、下記一般式(8)で示される炭素数1〜12の線形または分枝アルキレン基、線形または分枝ポリ(アルキレンオキシ)基、
【0192】
【化37】

【0193】
一般式(8)において、R10はメチル基、エチル基またはプロピル基等の低級アルキル基を表す。
【0194】
または、下記一般式(9)、(10)及び(11)からなる群から選択される多価基を表す。
【0195】
【化38】

【0196】
上記一般式(9)において、nは0または1〜2000の整数、R11はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基及び下記一般式(12)からなる群から選択される基を表す。
【0197】
【化39】

【0198】
上記一般式(12)において、jは0または1〜100の整数、R13は1〜10個の炭素原子を有するアルキル、R12はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0199】
【化40】

【0200】
上記一般式(10)において、R14は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基、炭素数1〜10個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシレート基またはカルボキシル基を表す。
【0201】
【化41】

【0202】
上記一般式(11)において、R15は酸素原子、硫黄原子、NH、SO、SO2、CH2、C(CH32またはC(CF32を表す。
【0203】
本発明で使用されるオキセタン環を有する化合物として、上記一般式(6)、(7)においては、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R9が、一般式(10)においてR14が水素原子である基、ヘキサメチレン基、一般式(8)においてR10がエチル基、一般式(9)、(12)においてR12及びR13がメチル基、Zは酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0204】
【化42】

【0205】
一般式(13)において、rは25〜200の整数であり、R13は上記一般式(12)におけるR13と同義であり、R16は炭素数1〜4のアルキル基またはトリアルキルシリル基である。R4〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0206】
以下に一般式(E)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0207】
【化43】

【0208】
これらの化合物は「高分子科学と有機化学とのキャッチボール」の第4講に記載の方法をはじめ、下記文献を参考にすることで容易に合成できる。
【0209】
1)Hu Xianming,Richard M.Kellogg,Synthesis,533−538,May(1995)
2)A.O.Fitton,J.Hill,D.Ejane,R.Miller,Synth.,12,1140(1987)
3)Toshiro Imai and Shinya Nishida,Can.J.Chem.Vol.59,2503−2509(1981)
4)Nobujiro Shimizu,Shintaro Yamaoka,and Yuho Tsuno,Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,3853−3854(1983)
5)Walter Fisher and Cyril A.Grob,Helv.Chim.Acta.,61,2336(1978)
6)Chem.Ber.101,1850(1968)
7)“Heterocyclic Compounds with Three−and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)
8)H.A.J.Curless,“Synthetic Organic Photochemistry”,Plenum,New York(1984)
9)M.Braun,Nachr.Chem.Tech.Lab.,33,213(1985)
10)S.H.Schroeter,J.Org.Chem.,34,5,1181(1969)
11)D.R.Arnold,Adv.Photochem.,6,301(1968)
12)“Heterocyclic Compounds with Three−and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)
また、本発明のインクにおいては、オキセタン環を1個含有する単官能オキセタン化合物とオキセタン環を2個以上含有する多官能オキセタン化合物とを併用することが、硬化後の膜強度と記録材料への密着性を向上させる上で更に好ましい。ただし、オキセタン環を5個以上有する化合物を使用すると、インク組成物の粘度が高くなるため、取扱いが困難になったり、またインク組成物のガラス転移温度が高くなるため、得られる硬化物の粘着性が十分でなくなってしまう。本発明で使用するオキセタン環を有する化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0210】
本発明の活性光線硬化型インクは、上述の活性光線硬化型組成物と共に、各種公知の染料及び/または顔料を含有しているが、好ましくは顔料を含有する。
【0211】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
【0212】
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、42、81、83、87、95、109、
C.I Pigment Orange−16、36、38、
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、101、144、146、185、
C.I Pigment Violet−19、23、
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、27、29、60、
C.I Pigment Green−7、36、
C.I Pigment White−6、18、21、
C.I Pigment Black−7、
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明基材での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましいが、吐出量が多くなるため、前述した吐出安定性、記録材料のカール・しわの発生の観点から、自ずと使用量に関しては制限がある。
【0213】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としては、例えば、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明の照射線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0214】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。本発明のインクにおいては、色材濃度としては、インク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0215】
本発明の活性光線硬化型インクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、保存安定性を改良する目的で、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などがあげられる。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0216】
本発明のインクにおいては、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【0217】
本発明で用いることのできる記録材料としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等を挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0218】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0219】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0220】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
【0221】
本発明の画像形成方法においては、上記のインクをインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0222】
本発明では、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0223】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0224】
インクの吐出条件としては、インクジェット記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性光線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0225】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜15plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成出来る。
【0226】
本発明の画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜2.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜1.0秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0227】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0228】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0229】
従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、光源の総消費電力が1kW・hrを超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特に、シュリンクラベルなどへの印字では、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用出来ないのが現状であった。
【0230】
本発明では、254nmの波長領域に最高照度をもつ活性光線を用いることが好ましく、総消費電力が1kW・hr以上の光源を用いても、高精細な画像を形成出来、且つ、記録材料の収縮も実用上許容レベル内に収められる。
【0231】
本発明においては、更に活性光線を照射する光源の総消費電力が1kW・hr未満であることが好ましい。総消費電力が1kW・hr未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0232】
次いで、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0233】
以下、本発明の記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明の記録装置はこの図面に限定されない。
【0234】
図1は、本発明の記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0235】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0236】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0237】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0238】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0239】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0240】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0241】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0242】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、熱陰極管、冷陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。特に、波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管及び殺菌灯は、滲み防止、ドット径制御を効率よく行うことができる点で好ましい。熱陰極管を照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0243】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0244】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0245】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0246】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0247】
本発明のインクは、非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
【0248】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0249】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録材料Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0250】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0251】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録材料Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0252】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0253】
実施例1
《インク組成物セットの調製》
下記の方法に従って、表1〜8に記載の組成からなるインク組成物セット1〜8を調製した。
【0254】
分散剤(PB822 味の素ファインテクノ社製)を3質量部と、表1〜8に記載の各光重合性化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて撹拌、混合して溶解させた。次いで、この溶液に表1〜6に記載の色材を添加した後、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にポリ瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて2時間分散処理を行った。次いで、ジルコニアビーズを取り除き、各光酸発生剤、酸増殖剤、界面活性剤等の各種添加剤を表1〜8に記載の組み合わせで添加し、これをプリンター目詰まり防止のため0.8μmメンブランフィルターで濾過して、インク組成物セット1〜8を調製した。
【0255】
なお、上記調製した各インク組成物セットの各色インク粘度(測定温度:25℃)は、以下の通りである。粘度は、各色インクの最大及び最小粘度での粘度巾で表示した。
【0256】
インク組成物セット1:28〜33mPa・s
インク組成物セット2:31〜34mPa・s
インク組成物セット3:24〜27mPa・s
インク組成物セット4:22〜26mPa・s
インク組成物セット5:28〜33mPa・s
インク組成物セット6:24〜27mPa・s
インク組成物セット7:25〜28mPa・s
インク組成物セット8:27〜31mPa・s
【0257】
【表1】

【0258】
【表2】

【0259】
【表3】

【0260】
【表4】

【0261】
【表5】

【0262】
【表6】

【0263】
【表7】

【0264】
【表8】

【0265】
【化44】

【0266】
表1〜8に記載の各インクと各化合物、表示の詳細は、以下の通りである。
【0267】
K:濃ブラックインク
C:濃シアンインク
M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク
W:ホワイトインク
Lk:淡ブラックインク
Lc:淡シアンインク
Lm:淡マゼンタインク
Ly:淡イエローインク
色材1:C.I.pigment Black 7
色材2:C.I.pigment Blue 15:3
色材3:C.I.pigment Red 57:1
色材4:C.I.pigment Yellow 13
色材5:酸化チタン(アナターゼ型 平均粒径0.20μm)
〔光重合性化合物〕
*E1:脂環式エポキシ化合物
セロキサイド2021P:ダイセル化学工業社製
セロキサイド3000:ダイセル化学工業社製
LDO:ATOFINA社製
*E2:エポキシ化脂肪酸イソブチル
D−55:アデカサイザーD−55(旭電化工業社製 エポキシ化脂肪酸ブチル エポキシ化合物)
E−4030:サンソサイザーE−4030(新日本理化社製 エポキシ化脂肪酸ブチル)
*E3:エポキシ化大豆油
Vikoflex7010:ATOFINA社製
Vikoflex9010:ATOFINA社製
*O:オキセタン化合物
OXT−211:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製)
OXT−221:ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル
(東亞合成社製)
RSOX:東亞合成社製
〔酸増殖剤〕
アクプレス11M:日本ケミックス社製
〔光酸発生剤〕
UVI6992:トリフェニルスルホニウム塩(サイラキュアUVI6992 ユニオンカーバイド社製)プロピレンカーボネート50%溶液
〔界面活性剤〕
F178k:メガファックスF178k パーフルオロアルキル基含有アクリルオリゴマー(大日本インキ化学工業社製)
OP−85R:ノニオンOP−85R(ソルビタンエステル型ノニオン性界面活性剤) ソルビタントリオレエート HLB=1.8(日本油脂社製)
F1405:メガファックスF1405 パーフルオロアルキル基含有エチレンオキサイド付加物(大日本インキ化学工業社製)
F470:メガファックスF470 パーフルオロアルキル基含有アクリルオリゴマー(大日本インキ化学工業社製)
TF907:メガファックスEXP TF907 パーフルオロアルキル基含有エチレンオキサイド付加物(大日本インキ化学工業社製)
〔分散剤〕
PB822:味の素ファインテクノ社製
〔その他〕
*1:γ−カプロラクトン(試薬 関東化学社製)
*2:N−エチルジエタノールアミン(塩基性化合物)
*3:プロピレンカーボネート(試薬 関東化学社製)
*4:トリブチルアミン(塩基性化合物)
*5:γ−ブチロラクトン(試薬 関東化学社製)
《インクジェット画像形成方法》
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物セット1〜3、7を装填し、表9、表10に記載の各表面エネルギーを有する巾600mm、長さ500mの長尺の各記録材料へ、下記の画像記録を連続して行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。各インクが着弾した後、キャリッジ両脇のランプユニットにより、瞬時(着弾後2秒未満)に表9、表10に記載の照射光源Aとして熱陰極管より紫外線照射してインクを硬化した。画像記録後に、総インク膜厚を測定したところ、2.3〜13μmの範囲であった。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0268】
次いで、図2に記載のラインヘッド方式のインクジェット記録装置により、インク組成物セット4〜6、8を用いて、照射光源Bとして2本の低圧水銀ランプ(線光源)より紫外線照射してインクを硬化し、同様にして各画像を形成した。
【0269】
上記2つの方式により、10℃、20%RHの環境下、25℃、50%RHの環境下及び30℃、80%RHの環境下の3条件で印字を行った。
【0270】
なお、表9、表10に記載の各照射光源の詳細は、以下の通りである。
【0271】
照射光源A:熱陰極管(ニッポ社製U字管 光源消費電力1kW・hr未満)
照射光源B:低圧水銀ランプ(岩崎電気社製 特注品)
また、表9、表10に記載の各照射光源の照度は、ウシオ電機社製のURS40で220〜420nmの積算照度を測定して表示した。
【0272】
また、表9、表10に記載の照射位置の詳細は、以下の通りである。
【0273】
*1:記録ヘッド両端(図1方式)
*2:記録材料搬送方向下流位置(図2方式)
また、表9、表10に記載の各記録材料の略称の詳細は、以下の通りである。
【0274】
OPP:oriented polypropylene
PET:polyethylene terephthalate
PVC:polyvinyl chloride
【0275】
【表9】

【0276】
【表10】

【0277】
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、下記の各評価を行った。
【0278】
〔文字品質の評価〕
Y、M、C、K各色インクを用いて、目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大評価し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
【0279】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
〔色混じり(滲み)の評価〕
720dpiで、Y、M、C、K各色1dotが隣り合うように印字し、隣り合う各色dotをルーペで拡大し、滲みによる色混じりを目視観察し、下記の基準に則り色混じりの評価を行った。
【0280】
◎:隣り合うdot形状が真円を保ち、滲みの発生がない
○:隣り合うdot形状はほぼ真円を保ち、ほとんど滲みの発生がない
△:隣り合うdotが少し滲んでいてdot形状が少しくずれているが、ギリギリ使えるレベル
×:隣り合うdotが滲んで混じりあっており、使えないレベル
以上により得られた各評価結果を、表11に示す。
【0281】
【表11】

【0282】
表11より明らかなように、本発明に係る構成からなる画像形成方法は、比較例に対し、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質が優れ、色混じり(滲み)の発生もない高精細な画像を記録することができることが分かる。
【0283】
実施例2
《活性光線硬化型インクジェットインク組成物の調製》
下記組成からなる活性光線硬化型インクジェットインク組成物101を調製した。
【0284】
トリアリールスルホニウム塩化合物:TAS−1 5質量部
エポキシ化合物:EP−17 95質量部
上記トリアリールスルホニウム塩化合物、エポキシ化合物を表12の化合物に変更して、活性光線硬化型インクジェットインク組成物102〜126を調製した。
【0285】
表12に記載の化合物の詳細を以下に示す。
【0286】
UVI6990:トリフェニルスルホニウム塩(サイラキュアUVI6990ユニオンカーバイド社製)
セロキサイド3000:脂環式エポキシ(ダイセルUCB社製)
セロキサイド2021P:脂環式エポキシ(ダイセルUCB社製)
得られた活性光線硬化型インクジェットインク組成物1mlを157cm2のPETフィルムに塗布し、6.1Lの透明密閉容器に入れ、30℃に加熱した状態で、高圧水銀灯を用いて照射エネルギー10mJ/cm2にて20秒間照射を行なった。次いで、密閉容器内のガスを捕集し、ガスクロマトグラフィーによりベンゼンを定量した。ベンゼンの同定はGC−MSにて行ない、ベンゼンの定量は、一定量のベンゼンをガスクロマトグラフィーにて分析して作成した検量線を用いて行なった。ベンゼンの検出量を密閉容器体積1m2当たりの発生質量(μg)で示した。その結果を表12に示す。
【0287】
また、得られた硬化組成物の粘性の変化も合わせて示す。粘性の変化は、光未照射塗膜と光照射後の塗膜を金属スパチュラで触り、実験者の触感から判定した。「ゲル化」とはゲル状の塗膜が形成したことを示し、「増粘」とは、光未照射塗膜と光照射後の塗膜で明らかに粘性に差があることを示し、「わずかに増粘」とは光未照射塗膜と光照射後の塗膜で粘性にわずかに差があることを示し、「増粘せず」とは光未照射塗膜と光照射後の塗膜で触感に有意な差が見られなかったことを示す。
【0288】
【表12】

【0289】
表12から明らかなように、本発明に係るトリアリールスルホニウム塩とエポキシ化合物からなる活性光線硬化型インクジェットインク組成物に紫外線を照射すると、ベンゼン発生を伴わずに、ゲル化が生じ、重合が進行していることを示している。
【0290】
実施例3
《インクジェット用インクの調製》
(インク201の調製)
下記の組成からなるインク201を調製した。インク201は、光酸発生剤を除く各組成物を、サンドグラインダーを用いて4時間分散した後、光酸発生剤を添加し、0.8μmのメンブランフィルターで濾過を行った後、50℃に加熱しながら減圧脱水を行って調製した。
【0291】
C.I.ピグメントレッド184 3質量部
UVI−6990 5質量部
アロンオキセタンOXT−221 70質量部
セロキサイド3000 30質量部
ソルスパース24000(Avecia社製) 1質量部
(インク202〜238の調製)
顔料、光酸発生剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物を下記表13の組成に変更した以外はインク201と同様にして本発明のインク202〜230及び235〜238を得た。
【0292】
【表13】

【0293】
表13に記載の化合物の詳細を以下に示す。
【0294】
〈顔料〉
P0:C.I.ピグメントレッド184
P1:粗製銅フタロシアニン(東洋インク製造社製「銅フタロシアニン」)の250部、塩化ナトリウムの2500部及びポリエチレングリコール(東京化成社製「ポリエチレングリコール300」)の160部を、スチレン製4.55L(1ガロン)のニーダー(井上製作所社製)に仕込み、3時間混練した。次に、この混合物を2.5リットルの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌しスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウム及び溶剤を除き、次いでスプレードライをして乾燥して顔料P1を得た。
【0295】
P2:キナクリドン系赤顔料(Ciba Geigy社製「シンカシアマゼンタRT−355−D」)の250部、塩化ナトリウムの2500部及び「ポリエチレングリコール300」の160部を、スチレン製4.55L(1ガロン)ニーダーに仕込み、P1と同様にして顔料P2を得た。
【0296】
〈エポキシ化合物〉
セロキサイド3000:脂環式エポキシ(ダイセルUCB社製)
セロキサイド2021P:脂環式エポキシ(ダイセルUCB社製)
〈光酸発生剤〉
UVI6990:トリフェニルスルホニウム塩(サイラキュアUVI6990ユニオンカーバイド社製)
PI−1:トリフェニルスルホニウム塩(ドイツ特許第2061280号2頁中記載化合物)
PI−2:トリフェニルスルホニウム塩(米国特許第4407759号表III中記載化合物)
〈オキセタン化合物〉
OXT−221:ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(東亞合成社製)
《インクジェット画像記録及び評価》
上記調製した各インクを用いて、下記の方法に従って画像記録及び得られた画像の評価を行った。
【0297】
〔画像評価A〕
(画像記録)
得られた各インクを、液滴サイズ7plが得られるピエゾタイプのインクジェットノズル(ノズルピッチ360dpi、本発明でいうdpiとは2.54cm当たりのドット数を表す)を、ノズル部分を50℃に加熱制御し、コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いて出射し、マゼンタベタ画像と6ポイントMS明朝体文字を印字した。光源は、308nmに主ピークを持つ蛍光管を用い、光源直下、基材面の照度が10mW/cm2の条件で、着弾後0.3秒後に露光を開始し、0.8秒後に露光を終了させた。なお、露光エネルギーは5mJ/cm2であった。この画像印字を低湿環境(25℃、20%RH)及び高湿環境(25℃、80%RH)にて行った。
【0298】
(画像の評価)
以上のようにして得られた各画像について、下記の評価を行った。
【0299】
〈インク硬化性の評価〉
各環境下で形成した印字画像について、下記の基準に則りインク硬化性の評価を行った。
【0300】
○:露光終了直後に触っても画像はタッキネスがない
△:露光終了直後に触ると画像はタッキネスが若干あるが、1分後にはタッキネスがなくなる
×:露光終了1分後でもタッキネスが残る
〈基材接着性の評価〉
各環境下で形成したベタ画像上に、幅25mmのセロテープ(登録商標)を貼り付けて強く圧着した後、90度の剥離角度で素早く剥離し、隔離後の画像の状態を目視観察し、下記の基準に則り基材接着性の評価を行った。
【0301】
○:テープ剥離でも画像は剥がれない
△:テープ剥離で画像が一部剥がれる
×:テープ剥離で画像が全て剥がれる
〈画像滲み耐性の評価〉
各環境下で形成した6ポイントMS明朝体文字をルーペで観察し、隣り合うドットの状態を観察し、下記の基準に則り画像滲み耐性の評価を行った。
【0302】
○:2ドット間の滲みがほとんどない
△:2ドット間の滲みが僅かに見られる
×:ドットが大きく滲む
以上により得られた結果を表14、15に示す。
【0303】
【表14】

【0304】
【表15】

【0305】
〔画像評価B〕
上記画像評価Aにおいて、インクを印字した後の露光照射開始時間を0.4秒に、また露光照射終了時間を0.9秒後に変更した以外は、同様にして、画像記録及び評価を行った。露光時間、露光エネルギーは画像評価Aと同じくそれぞれ0.5秒間、5mJ/cm2であった。得られた結果を表16、17に示す。
【0306】
【表16】

【0307】
【表17】

【0308】
表14〜17から明らかなように、本発明の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を含有するインクは、比較例に対し、高湿環境下やさまざまな露光環境でも優れたインク硬化性、基材密着性に優れ、滲みのない高品位の画像を得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0309】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0310】
1 インクジェット記録装置
2 ヘッドキャリッジ(遮光)
3 インクジェット記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
P 記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光酸発生剤として活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩を含有し、かつ光重合性化合物としてオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記ベンゼンを発生しないオニウム塩が、スルホニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記ベンゼンを発生しないオニウム塩が、ヨードニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項4】
光酸発生剤として活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩が、下記一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【化1】

〔式中、R1〜R17はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。Xは、非求核性のアニオン残基を表す。ただし、一般式〔1〕におけるR1〜R3が、フェニルチオ基あるいはフェノキシ基であることはない。〕
【請求項5】
塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項6】
ノニオン性の界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項7】
光重合性化合物として、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項8】
光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物を0〜40質量%含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項9】
前記オキセタン環を有する化合物の1種が、下記一般式(E)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【化2】

〔式中、R1〜R6はそれぞれ水素原子または置換基を表す。ただし、R3〜R6で表される基の少なくとも1つは、置換基である。〕
【請求項10】
25℃における粘度が、7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項11】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項14】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式のインクジェット記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インクジェットインク組成物及びインクジェット記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−37112(P2006−37112A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237130(P2005−237130)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【分割の表示】特願2004−116915(P2004−116915)の分割
【原出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】