説明

活性光線硬化型組成物と活性光線硬化型インク、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置

【課題】 様々な印字環境下においても、皺の発生が無く、文字品質に優れ色混じりのない、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物とインク、画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 光重合性化合物として一般式(1)〜(4)のいずれかで表される単官能脂環式エポキシ化合物と、2官能以上のエポキシ化合物を含有することを特徴とする活性光線硬化型組成物。
【化1】


(Ra、Rb、Rd、Re、Rg、Rh、Rj、Rkは水素、炭素数1〜5のアルキル基または置換アルキル基で、R1〜R32は水素、炭素数1〜5のアルキル基または置換アルキル基を表す。Rc、Rf、Ri、Rlは炭素数2〜10のアルキル基または置換アルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な記録材料に様々な印字環境下においても、高精細な画像を安定に再現できる活性光線硬化型インクジェットインク組成物と活性光線硬化型インク、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。
【0003】
しかしながら、今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されることになり、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙ではない被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつある。これらの技術は、例えば、特許文献1および特許文献2において、紫外線硬化型インクジェットインクとして開示されている。
【0005】
しかし、これらのインクを用いたとしても、記録材料の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、様々な記録材料に対して、高精細な画像を形成することは未だ達成されていない。
【0006】
特に、紫外線硬化型インクジェット用インクにおいて、全体的に見た性能が優れているとされる、例えば、特許文献3〜6に記載されたカチオン重合性化合物を用いたインクは、酸素阻害作用をうけることはないが、分子レベルの水分(湿度)の影響を受けやすいといった問題がある。また、硬化環境によっては硬化収縮による皺の発生が問題となる。
【特許文献1】特開平6−200204号公報(請求項、実施例)
【特許文献2】特表2000−504778号公報(請求項、実施例)
【特許文献3】特開2001−220526号公報(請求項、実施例)
【特許文献4】特開2002−188025号公報(請求項、実施例)
【特許文献5】特開2002−317139号公報(請求項、実施例)
【特許文献6】特開2003−55449号公報(請求項、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、様々な印字環境下においても、皺の発生が無く、文字品質に優れ色混じりの発生がない、高精細な画像を非常に安定に記録することができる、活性光線硬化型インクジェットインク組成物と活性光線硬化型インク、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、鋭意検討した結果、本発明の目的は、下記構成の何れかを採ることにより達成されることがわかった。
【0009】
(請求項1)
光重合性化合物として一般式(1)〜(4)のいずれかで表される単官能脂環式エポキシ化合物と、2官能以上のエポキシ化合物を含有することを特徴とする活性光線硬化型組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)〜(4)中において、Ra、Rb、Rd、Re、Rg、Rh、Rj、Rkは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または置換アルキル基を表すが、RaとRb、RdとRe、RgとRh、RjとRkで表されるそれぞれの対において、同時に水素原子であることはない。R1〜R32は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または置換アルキル基を表す。Rc、Rf、Ri、及びRl、は炭素数2〜10のアルキル基または置換アルキル基を表す。)
(請求項2)
一般式(1)〜(4)のいずれかで表される単官能脂環式エポキシ化合物の分子量が、190〜300であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型組成物。
【0012】
(請求項3)
光重合性化合物として更にオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性光線硬化型組成物。
【0013】
(請求項4)
前記2官能以上のエポキシ化合物が下記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物。
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R100は置換基を表し、m0は0〜2の整数を表す。r0は1〜3の整数を表す。L0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基または単結合を表す。)
(請求項5)
前記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物が、下記一般式(I)または(II)で表される脂環式エポキシド化合物であることを特徴とする請求項4に記載の活性光線硬化型組成物。
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R101は置換基を表し、m1は0〜2の整数を表す。r1は1〜3の整数を表す。L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の連結基または単結合を表す。)
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R102は置換基を表し、m2は0〜2の整数を表す。r2は1〜3の整数を表す。L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の連結基または単結合を表す。)
(請求項6)
光重合性化合物として更にエポキシ化脂肪酸エステルまたはエポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物。
【0020】
(請求項7)
更に、少なくとも1種の塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物。
【0021】
(請求項8)
25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物。
【0022】
(請求項9)
請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物および顔料を含有することを特徴とする活性光線硬化型インク。
【0023】
(請求項10)
インクジェット記録ヘッドより、請求項9に記載の活性光線硬化型インクを記録材料上に噴射し、該記録材料上に着弾させ印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクが着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【0024】
(請求項11)
インクジェット記録ヘッドより、請求項9に記載の活性光線硬化型インクを記録材料上に吐出して該記録材料上に着弾させ印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【0025】
(請求項12)
インクジェット記録ヘッドより、請求項9に記載の活性光線硬化型インクを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出されるインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【0026】
(請求項13)
インクジェット記録ヘッドより、請求項9に記載の活性光線硬化型インクを記録材料上に吐出して、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドより吐出して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0027】
(請求項14)
請求項10〜13のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インク及び記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【0028】
活性光線硬化型組成物において、特許文献3〜6に記載の発明のように、光重合性化合物としてオキセタン環を有する化合物及び脂環式エポキシ化合物を含有するインクはよく知られているが、硬化環境(温度、湿度)により硬化収縮による皺の発生、硬化性の不良などの問題があった。
【0029】
本発明者は、従来用いられてきたダウ・ケミカル社製のUVR6110やダイセル化学工業社製のセロキサイド2021P、セロキサイド3000あるいはセロキサイド2000とは異なった、新規な単官能脂環式エポキシ化合物を併用することにした。
【0030】
その結果、上記の問題を解決するだけでなく、本発明の構成の組成物に顔料を含有させて、活性光線硬化型のインクジェットインクとして用いる場合、インクの保存環境(温度・湿度)の違いによるインク粘度のバラツキが小さくすることができた。また、インクジェット記録をする上で一番の問題とされる吐出安定性が非常に良好で、かつ硬化環境(温度・湿度)に左右されずに、インクが記録材料上に着弾した後のDot径の制御が容易にでき、再現性よく高画質な画像を形成することができる、画期的な効果を得ることができた。
【0031】
更に、オキセタン環を有する化合物と併用したり、エポキシ化脂肪酸エステルまたはエポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも1種と併用することにより、硬化環境(温度・湿度)に左右されずより安定に再現性よく高画質な画像を形成することができる。
【0032】
また、塩基性化合物を用いることで、吐出安定性がより良好となり、特に光重合性化合物が本発明の構成である場合において非常に効果的で、再現性よく高画質な画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、様々な印字環境下においても、皺の発生が無く、文字品質に優れ色混じりの発生がない、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物と活性光線硬化型インク、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0035】
〔単官能脂環式エポキシ化合物〕
本発明においては、光重合性化合物として前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される単官能脂環式エポキシ化合物を含有する。
【0036】
一般式(1)〜(4)における、Ra、Rb、Rd、Re、Rg、Rh、Rj、Rkは水素、炭素数1〜5のアルキル基または置換アルキル基で、RaとRb、RdとRe、RgとRh、RjとRk、がそれぞれ同時に水素原子を表すことはない。R1〜R32は水素、炭素数1〜5のアルキル基または置換アルキル基を表す。Rc、Rf、Ri、及びRl、は炭素数2〜10のアルキル基または置換アルキル基を表す。
【0037】
好ましくは分子量が、190〜300である。190より小さい化合物は、変異原性(AMES)試験などで陽性の度合いが高くなるなど安全衛生上好ましくなく、300を超える化合物は、粘度が大きすぎて取り扱いが困難となる。
【0038】
一般式(1)〜(4)の例示化合物を以下に示すが、本発明の化合物はこの限りではない。
【0039】
【化5】

【0040】
脂環式エポキシ化合物の添加量としては、10〜80質量%含有することが好ましい。10質量%未満であると硬化環境(温度、湿度)により硬化性が著しく変わってしまい実用上問題が生じる。また、80質量%を超えると硬化後の膜物性が弱く、実用上問題が生じる。本発明では、脂環式エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、公知の脂環式エポシキ化合物と2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0041】
また、これらの脂環式エポキシ化合物は、その製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報等の文献を参考にして合成することができる。
【0042】
さらに、本発明の組成物においては、2官能以上のエポキシ化合物、好ましくは前記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物を含有する。更に、前記一般式(A)で表される化合物が前記一般式(I)または(II)で表される脂環式エポキシド化合物であることが好ましい。
【0043】
一般式(A)、(I)または(II)で表される脂環式エポキシ化合物について説明する。
【0044】
一般式(A)、(I)または(II)において、R100、R101、R102、は置換基を表す、置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子、等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、等)、アシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、等)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、等)、等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
【0045】
m0、m1、m2、は0〜2の整数を表し、0または1が好ましい。
【0046】
0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基あるいは単結合を、L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の連結基あるいは単結合を、L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の連結基あるいは単結合を表す。
【0047】
主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15の2価の連結基の例としては、以下の基およびこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0048】
メチレン基[−CH2−]
エチリデン基[>CHCH3]、
イソプロピリデン[>C(CH32
1,2−エチレン基[−CH2CH2−]、
1,2−プロピレン基[−CH(CH3)CH2−]、
1,3−プロパンジイル基[−CH2CH2CH2−]、
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH32CH2−]、
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(OCH32CH2−]、
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH2OCH32CH2−]、
1−メチル−1,3−プロパンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2−]、
1,4−ブタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2−]、
1,5−ペンタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2CH2−]、
オキシジエチレン基[−CH2CH2OCH2CH2−]、
チオジエチレン基[−CH2CH2SCH2CH2−]、
3−オキソチオジエチレン基[−CH2CH2SOCH2CH2−]、
3,3−ジオキソチオジエチレン基[−CH2CH2SO2CH2CH2−]、
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基[−CH(CH3)CH2O−CH(CH3)CH2−]、
3−オキソペンタンジイル基[−CH2CH2COCH2CH2−]、
1,5−ジオキソ−3−オキサペンタンジイル基[−COCH2OCH2CO−]、
4−オキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−]、
3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−]、
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基
[−CH(CH3)CH2O−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]、
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH32CH2OCH2CH2−]、
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(OCH32CH2OCH2CH2−]、
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基
[−CH2CH2OCH2C(CH2OCH32CH2OCH2CH2−]、
4,7−ジオキソ−3,8−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2O−COCH2CH2CO−OCH2CH2−]、
3,8−ジオキソ−4,7−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2CO−OCH2CH2O−COCH2CH2−]、
1,3−シクロペンタンジイル基[−1,3−C58−]、
1,2−シクロヘキサンジイル基[−1,2−C610−]、
1,3−シクロヘキサンジイル基[−1,3−C610−]、
1,4−シクロヘキサンジイル基[−1,4−C610−]、
2,5−テトラヒドロフランジイル基[2,5−C46O−]
p−フェニレン基[−p−C64−]、
m−フェニレン基[−m−C64−]、
α,α′−o−キシリレン基[−o−CH2−C64−CH2−]、
α,α′−m−キシリレン基[−m−CH2−C64−CH2−]、
α,α′−p−キシリレン基[−p−CH2−C64−CH2−]、
フラン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42O−CH2−]
チオフェン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42S−CH2−]
イソプロピリデンビス−p−フェニレン基[−p−C64−C(CH32−p−C64−]
3価以上の連結基としては以上に挙げた2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基およびそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0049】
0、L1、L2は各々置換基を有していても良い。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
【0050】
0、L1、L2としては、各々主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜8の2価の連結基が好ましく、主鎖が炭素のみからなる炭素数1〜5の2価の連結基がより好ましい。
【0051】
以下に、好ましい一般式(A)、(I)または(II)で表される脂環式エポキシドの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
【化6】

【0053】
【化7】

【0054】
本発明の活性光線硬化型組成物においては、2官能以上の脂環式エポキシ化合物の含有量としては、脂環式エポキシ化合物の添加量の10〜80質量%含有することが好ましい。10質量%未満では硬化させる温湿度環境により、硬化性が著しく変わってしまう可能性があり、80質量%を超えると、硬化後の膜物性が弱くなる。好ましくは光重合性化合物としてエポキシ化合物10〜70質量%、オキセタン化合物30〜90質量%の範囲で含有するのが好ましい。
【0055】
〔併用するに適した化合物〕
本発明の硬化性組成物には、更にオキセタン環を有する化合物を用いることが好ましい。用いることのできるオキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号に紹介されているような、公知のオキセタン化合物をいずれも使用することができる。オキセタン化合物の添加量としては5〜80質量%の範囲が好ましい。
【0056】
また、本発明においては、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも一種を用いるのが好ましい。オキセタン化合物およびまたは脂環式エポキシ化合物の系に併用することにより、AMES及び感作性などの安全・環境の観点で好ましいだけでなく、硬化環境(温度、湿度)により硬化収縮による皺の発生、硬化性・吐出性の不良などの従来からの問題点を解決することができる。しかし、添加量が20質量%を超えると、硬化膜強度が不足し問題となることがある。
【0057】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0058】
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0059】
さらに、本発明では塩基性化合物が好ましく用いられる。塩基性化合物を含有することで、吐出安定性が良好となるばかりでなく、低湿下においても硬化収縮による皺の発生が抑制される。
【0060】
塩基性化合物としては、公知のあらゆるものを用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などがあげられる。
【0061】
前記の塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。
【0062】
前記の塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様に、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
【0063】
塩基性有機化合物としては、アミンならびにキノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物などが挙げられるが、これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0064】
塩基性化合物を存在させる際のその濃度は、光重合性モノマーの総量に対して10〜1000質量ppm、特に20〜500質量ppmの範囲であることが好ましい。なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0065】
〔光酸発生剤〕
本発明の活性光線硬化型インクには、公知のあらゆる光酸発生剤を用いることができる。
【0066】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0067】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。
【0068】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を、以下に示す。
【0069】
【化8】

【0070】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を、以下に例示する。
【0071】
【化9】

【0072】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
【0073】
【化10】

【0074】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0075】
【化11】

【0076】
本発明に係るインクは、特開平8−248561号、特開平9−34106号をはじめとして、既に公知となっている活性光線の照射で発生した酸により新たに酸を発生する酸増殖剤を含有することが好ましい。酸増殖剤を用いることで、さらなる吐出安定性向上を可能とする。
【0077】
本発明に係るインクでは、対イオンとしてアリールボレート化合物を有するジアゾニウム、ヨードニウム又はスルホニウムの芳香族オニウム化合物、鉄アレン錯体から選ばれる少なくとも1種の光酸発生剤が含有されることが好ましい。
【0078】
特に、軟包装印刷、ラベル印刷分野においては、上記記録材料のしわの問題、吐出安定性の問題から、活性光線硬化型インクジェット記録が実用化されるまでには至っていなかったが、本発明は、それらの分野でも十分に使用し得る画像形成方法を提示するものである。
【0079】
〔着色剤〕
本発明の活性光線硬化型インクは、上述の活性光線硬化型組成物と共に、着色剤として各種公知の染料及び/または顔料を含有しているが、好ましくは顔料を含有しているものである。
【0080】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
【0081】
C.I.Pigment Yellow1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,81,83,87,93,95,97,98,109,114,120,128,129,138,150,151,154,180,185
C.I.Pigment Red 5,7,12,22,38,48:1,48:2,48:4,49:1,53:1,57:1,63:1,101,112,122,123,144,146,168,184,185,202
C.I.Pigment Violet 19,23
C.I.Pigment Blue 1,2,3,15:1,15:2,15:3,15:4,18,22,27,29,60
C.I.Pigment Green 7,36
C.I.Pigment White 6,18,21
C.I.Pigment Black 7
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明基材での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましい。
【0082】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
【0083】
また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に用いる照射線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0084】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0085】
本発明に係るインクにおいては、着色剤濃度としては、インク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0086】
〔その他の添加剤〕
本発明の活性光線硬化型インクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。
【0087】
〔インクの粘度〕
本発明のインクにおいては、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、良好な硬化性を得るために好ましい。本発明における粘度とは、Physica社製粘弾性測定装置MCR300にて測定したシェアレート1000(1/s)の値である。
【0088】
〔記録材料〕
本発明で用いることのできる記録材料としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。
【0089】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0090】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0091】
〔画像形成方法〕
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
【0092】
本発明の画像形成方法においては、上記のインクをインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0093】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明では、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0094】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0095】
(インクの吐出条件)
インクの吐出条件としては、記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性光線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0096】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。
【0097】
本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜15plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成出来る。
【0098】
(インク着弾後の光照射条件)
本発明の画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0099】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0100】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0101】
従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、光源の総消費電力が1kW・hrを超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特に、シュリンクラベルなどへの印字では、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用出来ないのが現状であった。
【0102】
本発明では、254nmの波長領域に最高照度をもつ活性光線を用いることが好ましく、総消費電力が1kW・hr以上の光源を用いても、高精細な画像を形成出来、且つ、記録材料の収縮も実用上許容レベル内に収められる。
【0103】
本発明においては、更に活性光線を照射する光源の総消費電力が1kW・hr未満であることが好ましい。総消費電力が1kW・hr未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、熱陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0104】
(インクジェット記録装置)
次いで、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0105】
以下、本発明の記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明の記録装置はこの図面に限定されない。
【0106】
図1は本発明の記録装置の要部の構成を示す概念図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0107】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0108】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0109】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0110】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは着色剤、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0111】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管及び殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行なえ、好ましい。低圧水銀ランプを照射手段4の放射線源に用いることで、インクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0112】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0113】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0114】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0115】
本発明のインクは、非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
【0116】
図2は、インクジェット方式の記録装置の要部の構成の他の一例を示す概念図である。
【0117】
図2で示したインクジェット方式の記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色の記録ヘッド3を、記録材料Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0118】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0119】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録材料Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0120】
以下に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。なお、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0121】
《着色剤分散液の調製》
以下の組成で顔料を分散した。
【0122】
下記2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
【0123】
PB822(分散剤:味の素ファインテクノ) 9部
OXT−221(東亞合成) 71部
室温まで冷却した後、これに下記着色剤20部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて下記時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
【0124】
着色剤1:Pigment Black 7(三菱化学、#52) 10時間
着色剤2:Pigment Blue 15:4(山陽色素、シアニンブルー4044) 6時間
着色剤3:Pigment Yellow 180(大日精化、特注)9時間
着色剤4:Pigment Red 122(大日精化、特注) 10時間
着色剤5:酸化チタン(アナターゼ型:粒径0.2μ) 10時間
各々の着色剤に対応した分散液を着色剤分散液1〜5とする。
【0125】
《インク組成物の調製》
表1〜6に記載のインク組成でインクを作製し、ADVATEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過を行った。各インク粘度は下記に示す通りである。
【0126】
〈インク組成1(本発明外;比較用)〉
1着色剤分散液No
2着色剤分散液量
3光重合性化合物(脂環式エポキシ化合物:セロキサイド3000 ダイセル化学工業)
4光重合性化合物(オキサタン化合物:OXT−221 東亜合成)
5光酸発生剤(プロピレンカーボネート50%液:UVI6992 ダウ・ケミカル)
【0127】
【表1】

【0128】
なお、表中の数字は「質量部」を表す(以下の表2〜表6も同様)。
【0129】
各色インク粘度:18〜21mPa・s(25℃)
なお、表1〜6中、下記の如く表示してある。
【0130】
K:濃ブラックインク C:濃シアンインク M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク W:ホワイト
Lk:淡ブラックインク Lc:淡シアンインク Lm:淡マゼンタインク
Ly:淡イエローインク
〈インク組成2(本発明内)〉
1着色剤分散液No
2着色剤分散液量
3光重合性化合物(新規脂環式エポキシ化合物:例示化合物EP−1)
4光重合性化合物(エポキシ化亜麻仁油:Vikoflex9040 ATOFINA)
5光重合性化合物(オキセタン化合物:OXT−221 東亜合成)
6光重合性化合物(脂環式エポキシ化合物:セロキサイド2021Pダイセル化学工業)
7界面活性剤(KF−351 信越シリコーン)
8塩基性化合物(トリイソプロパノールアミン)
9光酸発生剤(プロピレンカーボネート50%液:UVI6992 ダウ・ケミカル)
【0131】
【化12】

【0132】
【表2】

【0133】
各色インク粘度:26〜33mPa・s(25℃)
〈インク組成3(本発明内)〉
1着色剤分散液No
2着色剤分散液量
3光重合性化合物(エポキシ化亜麻仁油:Vikoflex9040 ATOFINA)4光重合性化合物(新規単官能脂環式エポキシ化合物:例示化合物EP−2)
5光重合性化合物(オキセタン化合物:OXT−221 東亜合成)
6光重合性化合物(オキセタン化合物:OXT−212 東亜合成)
7光重合性化合物(新規2官能脂環式エポキシ化合物:例示化合物E−1)
8塩基性化合物(N−エチルジエタノールアミン)
9界面活性剤(KF−352 信越シリコーン)
10光酸発生剤(粉体:DTS−102 みどり化学)
【0134】
【表3】

【0135】
各色インク粘度:25〜30mPa・s(25℃)
〈インク組成4(本発明外;比較用)〉
1着色剤分散液No
2着色剤分散液量
3光重合性化合物(脂環式エポキシ化合物:セロキサイド2021Pダイセル化学工業)
4光重合性化合物(オキセタン化合物:OXT−221 東亜合成)
5光重合性化合物(オキセタン化合物:OXT−212 東亜合成)
6界面活性剤(KF−352 信越シリコーン)
7塩基性化合物(トリブチルアミン)
8光酸発生剤(プロピレンカーボネート50%液:UVI6976 ダウ・ケミカル)
【0136】
【表4】

【0137】
各色インク粘度:33〜38mPa・s(25℃)
〈インク組成5(本発明内)〉
1着色剤分散液No
2着色剤分散液量
3光重合性化合物(新規脂環式エポキシ化合物:例示化合物EP−3)
4光重合性化合物(脂環式エポキシ化合物:セロキサイド2021Pダイセル化学工業)
5光重合性化合物(オキセタン化合物:OXT−221 東亜合成)
6光重合性化合物(オキセタン化合物:OXT−211 東亜合成)
7塩基性化合物(N−エチルジエタノールアミン)
8界面活性剤(SDX−1843 旭電化工業)
9光酸発生剤(SP152 旭電化工業)
【0138】
【表5】

【0139】
各色インク粘度:27〜30mPa・s(25℃)
〈インク組成6(本発明内;より好ましい例)〉
1着色剤分散液No
2着色剤分散液量
3光重合性化合物(オキセタン化合物:OXT−221 東亜合成)
4光重合性化合物(オキセタン化合物:RSOX 東亜合成)
5光重合性化合物(新規単官能脂環式エポキシ化合物:例示化合物EP−1)
6光重合性化合物(エポキシ化大豆油:Vikoflex7010 ATOFINA)
7光重合性化合物(新規2官能脂環式エポキシ化合物:化合物E−3)
8塩基性化合物(トリイソプロパノールアミン)
9界面活性剤(XF42−334 ジーイー 東芝シリコーン)
10光酸発生剤(プロピレンカーボネート50%液:Chivacure9000 Chitec)
【0140】
【表6】

【0141】
各色インク粘度:31〜35mPa・s(25℃)
【0142】
【化13】

【0143】
上記表1〜6にて示されるインク組成1〜6を各々セットにして、インク組成物セット1〜6とする。
【0144】
《インクジェット画像形成方法》
ピエゾ型インクジェットノズル(記録ヘッド3)を備えた図1に記載の構成からなるインクジェット方式の記録装置に、上記調製した各インク組成物セット1〜6を装填し、表7に記載の巾600mm、長さ500mの長尺の各記録材料へ、下記の画像記録を連続して行った。
【0145】
画像データとしては「高精細カラーデジタル標準画像データ『N5・自転車』(財団法人 日本規格協会 1995年12月発行)」を用いた。
【0146】
インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0147】
着弾した後、キャリッジ両脇のランプユニットにより瞬時(着弾後2秒未満)に硬化される。記録後、トータルインク膜厚を測定したところ、2.3〜13μmの範囲であった。なお、インクジェット画像の形成は、上記方法に従って、10℃、20%RHの環境下、25℃、50%RHの環境下及び27℃、80%RHの環境下でそれぞれ行った。
【0148】
なお、表7に記載の各記録材料の略称の詳細は、表7の下に記した通りである。
【0149】
【表7】

【0150】
PET:polyethylene terephthalate
PVC:poly vinyl chloride
また、全く同様に図2に記載のラインヘッド記録方式のインクジェット記録装置を用い、搬送ガイドプレート(プラテン部)を40℃に加熱しておくことにより、記録材料に着弾後もインクがほぼ40℃を保つようにして、インク組成物セット1〜6を用いて、画像を形成した。
【0151】
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、下記の各評価を行った。
【0152】
(文字品質)
Y、M、C、K各色インクを用いて、目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大評価し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
【0153】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
(色混じり(にじみ、皺))
720dpiで、Y、M、C、K各色1dotが隣り合うように印字し、隣り合う各色dotをルーペで拡大し、滲み具合を目視観察し、下記の基準に則り色混じりの評価を行った。
【0154】
◎:隣り合うdot形状が真円を保ち、滲みがない
○:隣り合うdot形状はほぼ真円を保ち、ほとんど滲みがない
△:隣り合うdotが少し滲んでいてdot形状が少しくずれているが、ギリギリ使えるレベル
×:隣り合うdotが滲んで混じりあっており、また、重なり部に皺の発生があり、使えないレベル
以上により得られた各評価結果を、表8示す。
【0155】
【表8】

【0156】
表8に示す結果から明らかなごとく、本発明内の構成では、印字環境によらず、様々な記録材料に対して非常に安定に高精密な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】インクジェット方式の記録装置の要部の構成を示す概念図。
【図2】インクジェット方式の記録装置の要部の構成の他の一例を示す概念図。
【符号の説明】
【0158】
1 記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
4 照射手段
5 プラテン部
P 記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物として一般式(1)〜(4)のいずれかで表される単官能脂環式エポキシ化合物と、2官能以上のエポキシ化合物を含有することを特徴とする活性光線硬化型組成物。
【化1】

(一般式(1)〜(4)中において、Ra、Rb、Rd、Re、Rg、Rh、Rj、Rkは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または置換アルキル基を表すが、RaとRb、RdとRe、RgとRh、RjとRkで表されるそれぞれの対において、同時に水素原子であることはない。R1〜R32は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または置換アルキル基を表す。Rc、Rf、Ri、及びRl、は炭素数2〜10のアルキル基または置換アルキル基を表す。)
【請求項2】
一般式(1)〜(4)のいずれかで表される単官能脂環式エポキシ化合物の分子量が、190〜300であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型組成物。
【請求項3】
光重合性化合物として更にオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性光線硬化型組成物。
【請求項4】
前記2官能以上のエポキシ化合物が下記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物。
【化2】

(式中、R100は置換基を表し、m0は0〜2の整数を表す。r0は1〜3の整数を表す。L0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基または単結合を表す。)
【請求項5】
前記一般式(A)で表される脂環式エポキシ化合物が、下記一般式(I)または(II)で表される脂環式エポキシド化合物であることを特徴とする請求項4に記載の活性光線硬化型組成物。
【化3】

(式中、R101は置換基を表し、m1は0〜2の整数を表す。r1は1〜3の整数を表す。L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の連結基または単結合を表す。)
【化4】

(式中、R102は置換基を表し、m2は0〜2の整数を表す。r2は1〜3の整数を表す。L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の連結基または単結合を表す。)
【請求項6】
光重合性化合物として更にエポキシ化脂肪酸エステルまたはエポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物。
【請求項7】
更に、少なくとも1種の塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物。
【請求項8】
25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型組成物および顔料を含有することを特徴とする活性光線硬化型インク。
【請求項10】
インクジェット記録ヘッドより、請求項9に記載の活性光線硬化型インクを記録材料上に噴射し、該記録材料上に着弾させ印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクが着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
インクジェット記録ヘッドより、請求項9に記載の活性光線硬化型インクを記録材料上に吐出して該記録材料上に着弾させ印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
インクジェット記録ヘッドより、請求項9に記載の活性光線硬化型インクを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出されるインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
インクジェット記録ヘッドより、請求項9に記載の活性光線硬化型インクを記録材料上に吐出して、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドより吐出して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インク及び記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−232888(P2006−232888A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45838(P2005−45838)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】