説明

活性炭の製造方法、活性炭の製造に用いられる原料の製造方法

【課題】活性炭を製造する上で、良質の原料を安定して確保しつつコストの低減と省エネルギ化を容易に図ることが可能な活性炭の製造方法等を提供する。
【解決手段】本願の活性炭の製造方法は、リグニン質2が細胞壁5中に内包されている木質系の原料1を加圧し、当該リグニン質2を細胞壁5から放出させて前記原料1を加圧成形する工程と、前記加圧形成された原料1に熱処理を施して炭素化処理する工程と、炭素化処理された原料1を賦活処理する工程と、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭の製造方法等に関し、特に、コーヒ飲料などを製造する清涼飲料工場から排出される廃棄物(コーヒ粕など)の有効利用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に活性炭は、例えば、炭素化処理されたヤシ殻や木材、又は石炭などの原料を輸入して製造される。
【0003】
当該原料を用いて活性炭を製造する場合には、図5に示すように、まず、輸入された原料を粉砕して粉末体にした後、当該粉末体にタール、珪藻土等の添加物を混合してバインダするとともに加圧などによって所定の形状に造粒する。そして当該造粒物を段階的に熱処理を施して硬化処理し、その後、高温下で水蒸気などを添加して賦活処理することによって製造されている。
【0004】
一方、コーヒ系飲料・茶系飲料などの製品を製造する清涼飲料工場などでは、当該製品の製造にあたって、活性炭が利用されている。また、当該清涼飲料工場では、コーヒ粕、茶粕などが廃棄物として大量に発生する。現状それらは、有効利用する手段がなく廃棄物として処理されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原料を輸入に頼っている現状では、原料のコストが以前より高くなる傾向があるとともに良質の原料を安定して確保することが困難であるという問題がある。
【0006】
また、清涼飲料工場では、活性炭が利用されている一方で、コーヒ粕・茶粕が廃棄物として排出されており、当該廃棄物の廃棄処理が問題となっている。
【0007】
また、活性炭を製造するための原料として当該廃棄物を再利用することにより、当該廃棄物を廃棄処理する必要がなくなるので環境負荷の低減が図れると共に廃棄物の有効再利用が可能となる。
【0008】
そこで、このような課題の一例を解消するために、本発明は、活性炭を製造する上で、良質の原料を安定して確保しつつコストの低減と環境負荷の低減を容易に図ることが可能な活性炭の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本願請求項1に記載の活性炭の製造方法は、リグニン質(2)が細胞壁(5)中に内包されている木質系の原料(1)を加圧し、当該リグニン質を細胞壁から放出させて前記原料を加圧成形する工程と、前記加圧形成された原料に熱処理を施して炭素化処理する工程と、前記炭素化処理された原料を賦活処理する工程と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の活性炭の製造方法は、請求項1に記載の活性炭の製造方法において、前記原料は、油分を含まない原料であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の活性炭の製造方法は、請求項1に記載の活性炭の製造方法において、前記原料は、油分を含む原料に、油分を含まない原料を加えて混合してなることを特徴とする。また、前記油分を含む原料がコーヒ粕であり、前記油分を含まない原料が茶粕であることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項5に記載の活性炭の製造に用いられる原料の製造方法は、原料を炭素化処理するとともに、賦活処理して製造される活性炭の製造に用いられる原料の製造方法であって、前記原料は、リグニン質が細胞壁中に内包されている木質系の原料を用い、当該原料を加圧し、当該リグニン質を細胞壁から放出させて所定の塊に加圧成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、活性炭を製造するための原料として、本来、清涼飲料工場などから廃棄されるコーヒ粕・茶粕を利用するため、資源の有効利用が可能であるとともに良質の原料を安定して確保することが可能である。また、コーヒ粕などのリグニン質が細胞壁中に内包されている木質系の原料を加圧することによって従来のように原料にタール、珪藻土等の添加物を混合してバインダしなくても所定の硬度を有する成形体を製造できるため、バインダなどの原料にかかるコストを削減できるとともにバインダを添加するための工程の必要性がなくなるので製造コストを低減できる。また、清涼飲料工場では、廃棄物を有効利用する循環型のシステムを構築することができ、廃棄物を廃棄処理する必要がなくなるので省エネルギ化を容易に図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の活性炭の製造方法における製造工程を示すブロック図、図2は本発明に用いられる木質系の原料の内部組織図、図3は加圧成形装置の一例を示す内部構造図である。
【0015】
従来は、例えば、樹木やココナッツの殻などが炭素化された原料を、活性炭を製造するための原料として用いていた。そして、従来は、図5に示すように、樹木やココナッツの殻などが炭素化された原料を輸入し、当該原料を粉砕して粉状にした後に、タールや珪藻土等の添加物を混合してバインダするとともに加圧などによって所定の形状を有する造粒物を製造し、当該造粒物を段階的に熱処理し、その後、賦活処理して活性炭を製造していた。
【0016】
また、従来技術に関し、原料を炭素化しただけではその強度は低く、その後、活性炭を製造するために熱処理、賦活処理すると原料は粉々になってしまうため、熱処理及び賦活処理する前に当該炭素化された原料を粉砕し、その粉砕した原料にタール、珪藻土等の添加物を混合してバインダし、所定の硬度を有する成形体を製造する必要性があった。
【0017】
これに対し、本実施形態では、木質系の原料に含まれるリグニン質に着目し、当該リグニン質を含む木質系の原料を、活性炭を製造するための原料として用いている。そして、本実施形態では、図1に示すように、当該原料を乾燥後に混合し、当該混合した原料を加圧して造粒したものを炭素化処理、賦活処理することで活性炭を製造するようになっている。
【0018】
リグニン質を含む木質系の原料1には、例えば、木材、コーヒ粕、茶粕があり、当該木質系の原料1は、図2に示すように、リグニン質2を内包している細胞壁5と隙間(導管4)が特徴ある組織を有して形成されている。従来のように、原料を単に炭素化しただけでは当該リグニン質2は細胞壁5に内包されたまま炭素化されるためその強度は低くなるが、本実施形態のように、原料1を加圧してリグニン質2を細胞壁5中から放出させることで、細胞壁5の繊維状組織が絡み合うとともに、当該細胞壁5の繊維状組織が当該リグニン質2によって接着されるので加圧によって成形された成形体の強度は高められ、所定の硬度を有する成形体を製造できるので、従来のように原料にタール、珪藻土等の添加物を混合してバインダする必要がなくなる。また、バインダするための添加物を添加する必要性がなくなるため、当該バインダに起因する工程が必要なくなり、炭化物を製造する上でコストを低減できる。
【0019】
また、従来、原料として、樹木やココナッツの殻などを炭素化したものを輸入することによって活性炭を製造していたが、輸入先の気象状況の悪化等により安定して確保することが困難、コストの変動が大きいなどの問題を生じていた。
【0020】
この点に関し、一般にコーヒやお茶を製造する清涼飲料工場からはコーヒ粕や茶粕が廃棄されており、このコーヒ粕や茶粕を、活性炭を製造する原料として有効利用することにより、コストを低く抑えて良質の原料を安定確保することが可能である。また、コーヒ粕や茶粕には、木材と同様にリグニン質が含まれていることがわかっており、活性炭を製造する上で有効に再利用可能である。
【0021】
また、原料を所定の成形体に造粒する工程において、造粒は、例えば、図3に示す加圧成形装置10によって行われる。当該加圧装置10は、例えば、図3に示すように、入口10aに対して出口10b側の開口が狭まって形成された筒体11に原料1a(コーヒ粕、茶粕、木材など)を投入し、当該入口10a側から出口10b側に向かって押圧体12を移動させ、当該原料1aを押し出す装置である。そして、原料1aは、入口10a側から押圧体12によって加圧されるとともに、その周囲(筒体11の内周壁)からも圧力が加えられ、所定の塊15(成形体)となって出口10b側から放出される。
【0022】
このとき、原料としてコーヒ粕のみを投入すると、コーヒ粕は油分を含んでいるため滑りやすく、原料に対して所定の圧力が加わらないまま、出口側から放出される。このように放出される成形物は、所定の塊となるものの、圧力不足により、コーヒ粕に含まれるリグニン質は、いまだ細胞壁中に存在したままとなりバインダ作用を発揮しないため、当該塊は所定の硬度を有しない状態となる。
【0023】
このような状態を解消するため、本実施形態では、コーヒ粕に油分を含まない原料〈例えば、茶粕、木材、ヤシ殻など)を所定の割合で加えるようにしている。これにより、当該油分を含まない原料が滑り止めの役目を果たし、加圧成形装置10の筒体11内に投入された原料には、所定の圧力が加わることとなり、リグニン質を細胞壁から放出させることが可能となる。よって、加圧成形装置10によって加圧処理された原料は所定の硬度を有する塊15(成形体)として出口10b側から放出される。
【0024】
−実施例−
以下に説明する活性炭の製造方法は、例えば、コーヒ系及び茶系飲料を製造する清涼飲料工場から廃棄されるコーヒ粕、茶粕を原料として適用した実施例を示している。本実施例としては、主としてコーヒ粕と茶粕とを混合してなるものを原料として用い、図4に示す活性炭製造装置によって活性炭が製造されるようになっている。図4は本発明に係る活性炭の製造装置の概略構成図である。
【0025】
活性炭製造装置20は、例えば、図4に示すように、コーヒ粕及び茶粕などの原料をそれぞれ貯留する貯留体22、23と、当該それぞれの原料を粉砕するミキサー装置24と、粉砕された原料を乾燥させる乾燥装置26と、コーヒ粕と茶粕とを攪拌しつつ混合する混合装置28と、当該原料を所定形状の成形体に造粒する造粒装置30と、成形体を炭素化・賦活処理する炭素化・賦活処理装置32と、各装置などをそれぞれ連絡するコンベア34と、を含んで構成されている。
【0026】
清涼飲料工場から廃棄されたコーヒ粕、茶粕は、それぞれ貯留体22、23に一時的に収容される。このコーヒ粕、茶粕は、まず、それぞれコンベア34などによってミキサー装置24に運搬されて粉砕された後、所定の水分比率になるまで乾燥装置26で乾燥され、その後、コンベア34などによって一時的に貯留体22a、23aに貯留された後、混合装置28に供給される。
【0027】
次いで、コーヒ粕及び茶粕は、混合装置28にて攪拌されて混合され、コンベア34などによって造粒装置30に運搬される。コーヒ粕及び茶粕が混合された原料は、造粒装置30において、少なくともリグニン質が細胞壁から外部に放出されるまで加圧処理されて所定の塊15からなる成形体として製造され、コンベア34などによって炭素化・賦活処理装置32に運搬される。
【0028】
次いで、成形体は、炭素化・賦活処理装置32の処理室の内部が所定の温度(例えば、450〜650℃)に制御されて熱処理されて炭素化処理される。また、炭素化処理された後に、当該成形体は、処理室の内部において、所定の温度(例えば、700〜750℃)で所定の時間(例えば、30〜40分間)保たれつつ所定の水蒸気又は炭酸ガスが添加されて賦活処理され、活性炭としての成形体が製造される。そして当該活性炭は、コンベア34などによって所定の貯蔵庫に運搬される。
【0029】
なお、炭素化処理するための処理室内部の温度、賦活処理するための処理室の内部における炭素化又は賦活処理するための温度や賦活処理するための時間は製造する活性炭の性質などを考慮して適宜設定されるものである。
【0030】
このように本実施形態の活性炭の製造方法によれば、原料は、一般に清涼飲料工場から排出される廃棄物を利用できるため、コストを低く抑えて良質の原料を安定確保することが可能である。また、リグニン質を含む原料を用いることによって、当該原料によるバインダ作用が期待できるため、バインダに起因する工程が必要なくなり、工程を簡略化できるとともに、その工程に伴う製造設備が不必要となるため製造コストを低減できる。
【0031】
本発明は上述した実施形態に限られず、種々の形態にて実施できる。例えば、本発明は原料としてコーヒ粕を用いるために、油分を有しない原料(茶粕)を用いたが、リグニン質が細胞壁中に内包されており、油分を有しない原料(木材、茶粕など)を用いる場合には、造粒部において、他の原料と混合させることなく、その1種類の原料をそのまま加圧成形し、本実施例の製造方法を用いて活性炭を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る活性炭の製造方法の工程を示すブロック図である。
【図2】本発明に用いられる原料の内部組織図である。
【図3】加圧成形装置の一例を示す内部構造図である。
【図4】本発明に係る活性炭の製造装置の概略構成図である。
【図5】従来の活性炭の製造方法の工程を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
1 原料
2 リグニン質
5 細胞壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニン質が細胞壁中に内包されている木質系の原料を加圧し、当該リグニン質を細胞壁から放出させて前記原料を加圧成形する工程と、
前記加圧形成された原料に熱処理を施して炭素化処理する工程と、
前記炭素化処理された原料を賦活処理する工程と、
を含んで構成される活性炭の製造方法。
【請求項2】
前記原料は、油分を含まない原料であることを特徴とする請求項1に記載の活性炭の製造方法。
【請求項3】
前記原料は、油分を含む原料に、油分を含まない原料を加えて混合してなることを特徴とする請求項1に記載の活性炭の製造方法。
【請求項4】
前記油分を含む原料がコーヒ粕であり、前記油分を含まない原料が茶粕であることを特徴とする請求項3に記載の活性炭の製造方法。
【請求項5】
原料を炭素化処理するとともに、賦活処理して製造される活性炭の製造に用いられる原料の製造方法であって、
前記原料は、リグニン質が細胞壁中に内包されている木質系の原料を用い、
当該原料を加圧し、当該リグニン質を細胞壁から放出させて所定の塊に加圧成形することを特徴とする活性炭の製造に用いられる原料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−50230(P2008−50230A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230417(P2006−230417)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【出願人】(505388333)特定非営利活動法人日本炭化研究協会 (2)
【Fターム(参考)】