説明

活性炭フィルタの再生処理装置および活性炭フィルタの再生処理方法

【課題】
活性炭フィルタから脱離した揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを通気パイプに流通させる際に発生する臭気を帯びた水を除去するとともに、揮発性有機化合物ガスの酸化反応により生成する窒素酸化物を除去することができる、活性炭フィルタの再生処理装置および活性炭フィルタの再生処理方法を提供する。
【解決手段】
活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを加熱により脱離させて、この活性炭フィルタを再生処理する活性炭フィルタの再生処理装置において、前記揮発性有機化合物ガスを分解する白金触媒反応器と、除湿器と、窒素酸化物成分を除去する酸性ケミカルフィルタ装置と、前記活性炭フィルタ、前記白金触媒反応器、前記除湿器および前記酸性ケミカルフィルタ装置のそれぞれの構成要素の順に沿って、それぞれの構成要素内のガスを吸引する吸引機とを備えたことを特徴とする活性炭フィルタの再生処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスを脱離させることにより活性炭フィルタを再生する、活性炭フィルタの再生処理装置および活性炭フィルタの再生処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の活性炭フィルタの再生処理装置は、特許文献1に記載された空気清浄装置に利用されている。
【0003】
この空気清浄装置は、第1の流路に、被処理ガスを含む空気を通過させて前記被処理ガスを物理的に吸着・濃縮させる被処理ガス吸着濃縮部を設け、この被処理ガス吸着濃縮部を通して、被処理ガスを除去した空気を送出する空気清浄装置において、前記第1の流路とは別に設けた第2の流路に、前記第1の流路における前記被処理ガスを含む空気と比較して清浄な空気を前記被処理ガス吸着濃縮部に流して、前記被処理ガス吸着濃縮部に吸着・濃縮された被処理ガスを脱離するための被処理ガス脱離部と、この被処理ガス脱離部により脱離された被処理ガスを含む空気を流し、前記脱離された被処理ガスが分解除去されるための脱離ガス分解除去部とを設けている。
【0004】
そして、上記した空気清浄装置の具体例としては、前記被処理ガス吸着濃縮部の事例として活性炭フィルタ、前記被処理ガス脱離部の事例として加熱装置、および前記脱離ガス分解除去部の事例として、被処理ガスを粗く分解除去する白金触媒を用いた酸化触媒反応器と、精細に分解除去する事例として漏光型光触媒反応器との直列接続の組み合わせが、それぞれ記載されている。
【0005】
そして、上記した空気清浄装置の作用に関しては、第1の流路において、被処理ガス吸着濃縮部(活性炭フィルタ)に空気中の被処理ガスを物理的に吸着・濃縮させて、被処理ガスを除去することにより、清浄な空気を送出し、第2の流路において、この被処理ガス吸着濃縮部(活性炭フィルタ)に吸着・濃縮された被処理ガスを脱離して、この脱離した被処理ガスを分解除去することにより、この被処理ガス吸着濃縮部(活性炭フィルタ)を被処理ガスが吸着・濃縮される前の状態に近づけて、再生処理させることが記載されている。
【特許文献1】特開平2004−329499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した空気清浄装置は、被処理ガス中に、揮発性有機化合物ガスを含む場合に、次のような問題点があることが本発明者等によって見出された。
【0007】
上記した空気清浄装置の第1の流路に、上記揮発性有機化合物ガスを含む空気を流した場合、この揮発性有機化合物ガスだけではなく、空気中の湿気、すなわち水分子ガス(この水分子ガスとは気体のH2Oのことである。以下同じ。)も同時に、活性炭フィルタに吸着される。そして、この揮発性有機化合物ガスを含む空気を活性炭フィルタに流し続けると、活性炭フィルタに揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが多量に吸着されて、高濃度に濃縮された状態となる。
【0008】
そして、活性炭フィルタは、活性炭フィルタ加熱装置により加熱されて、この活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが活性炭フィルタから脱離する。この脱離した揮発性有機化合物ガスと水分子ガスは、上記した空気清浄装置の第2の流路において、白金触媒側に流出する。
【0009】
脱離した水分子ガスが白金触媒の入口側に配設された通気パイプを通過するときに、この水分子ガスは、先の加熱による高温状態から常温状態に急激に冷却されることから、飽和蒸気圧差により、大部分の水分子ガスが凝集して液体の水となる。
【0010】
この液体の水は、それ自体については無臭であることから問題にはならないが、活性炭フィルタから脱離した揮発性有機化合物ガスが上記した通気パイプを通過するときに、この揮発性有機化合物ガスの一部が液体の水に溶け込んで、この水が褐色を呈し、臭気を帯びる。
【0011】
このような臭気を帯びた水をそのまま外部に排出することは、空気清浄装置として不適当であるから、本発明の第1の課題は、臭気発生の原因となる、活性炭フィルタから脱離した水分子ガスを除去することである。
【0012】
また、活性炭フィルタから脱離した揮発性有機化合物ガスを構成する成分のうち、窒素原子を有さない有機化合物については、白金触媒で分解除去した場合に数ppm以上のオーダーで粗分解除去されて、水分子ガスおよび二酸化炭素(ガス)を生成し、これら生成したガスはそのまま排出しても問題とならない。
【0013】
しかしながら、活性炭フィルタから脱離した揮発性有機化合物ガスを構成する成分のうち、窒素原子を有する有機化合物については、これを白金触媒の酸化反応により分解除去した場合、水分子ガスおよび二酸化炭素のガス以外に、窒素酸化物(NOx)のガスを発生し、この窒素酸化物は、その規制値(0.06ppm)を越えたとき、そのまま排出することができない。
そこで、本発明の第2の課題は、活性炭フィルタから脱離した揮発性有機化合物ガスが窒素原子を有する有機化合物を含む場合に、白金触媒の酸化反応により発生する窒素酸化物を除去することである。
【0014】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、活性炭フィルタから脱離した水分子ガスを通気パイプに流通させる際、水分子ガスの一部が冷却され、凝集して液体の水となり、この液体の水に揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込むことにより発生する「臭気を帯びた水(液体)」を除去するとともに、揮発性有機化合物ガス中に含まれる窒素原子を有する有機化合物の酸化反応により生成する窒素酸化物を除去することができる、活性炭フィルタの再生処理装置および活性炭フィルタの再生処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような事情のもと、本発明者が鋭意検討したところ、特定の構成を有する活性炭フィルタの再生処理装置を用いることによって上記課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、
(1)活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを加熱により脱離させて、この活性炭フィルタを再生処理する活性炭フィルタ再生処理装置において、
前記脱離させた揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが冷却されて、この水分子ガスの一部が凝集して得られた液体の水に、前記揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込んだ当該液体の水を加熱して、再度ガス化した揮発性有機化合物ガスと共に、前記脱離させた揮発性有機化合物ガスを、加熱された白金触媒の酸化反応により、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスに分解する白金触媒反応器と、
前記した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを冷却する冷却部と、この冷却部により前記水分子ガスが冷却されて、一部の前記水分子ガスが凝集して得られた液体の水を溜めるための水タンク部と、この水タンク部の水面上方の空間を通過した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスの高湿度を低湿度に調整する湿度調整部とを有する除湿器と、
前記除湿器により得られた、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含む低湿度ガスを流して、この低湿度ガス中に含まれる窒素酸化物成分を除去する酸性ケミカルフィルタ装置と、
前記活性炭フィルタ、前記白金触媒反応器、前記除湿器および前記酸性ケミカルフィルタ装置のそれぞれの構成要素の順に沿って、それぞれの構成要素内のガスを吸引する吸引機とを備えたことを特徴とする活性炭フィルタ再生処理装置、
【0017】
(2)前記酸性ケミカルフィルタ装置と前記吸引機と間に漏光型光触媒フィルタ装置を配設したことを特徴とする上記(1)に記載の活性炭フィルタ再生処理装置、および
【0018】
(3)活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを加熱により脱離させて、この活性炭フィルタを再生処理する活性炭フィルタの再生処理方法において、
前記脱離させた揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが冷却されて、前記水分子ガスの一部が凝集して得られた液体の水に、前記揮発性有機化合物ガスが溶け込む揮発性有機化合物ガス溶解工程と、
前記液体の水を加熱して、再度ガス化した揮発性有機化合物ガスと共に、前記脱離させた揮発性有機化合物ガスを、加熱された白金触媒により酸化反応させて、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを生成する白金触媒反応工程と、
前記した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを冷却して、前記水分子ガスの一部を凝集して液体の水にすると共に、前記水分子ガスの残余の部分、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを低湿度に調整する除湿工程と、
前記除湿工程により得られた、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含む低湿度のガス中に含まれる窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去工程を含むことを特徴とする活性炭フィルタの再生処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、活性炭フィルタから脱離させた揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが冷却されて、この水分子ガスの一部が凝集して得られた液体の水に、前記揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込んだ当該液体の水を加熱して、再度ガス化した揮発性有機化合物ガスと共に、前記脱離させた揮発性有機化合物ガスを、白金触媒の酸化反応により、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスに分解することにより、揮発性有機化合物ガスを有効に除去することができ、揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込んだ臭気を帯びた液体の水の発生を阻止することができる。
【0020】
そして、上記した水分子ガスと二酸化炭素と窒素酸化物の3成分を含むガスを除湿器により高湿度ガスから低湿度ガスに変えて、この低湿度ガスを酸性ケミカルフィルタに流していることから、窒素酸化物を効率よく除去することができる。なお、水分子ガスは飲料レベルの液体の水となり、二酸化炭素はそのまま排出可能である。
【0021】
また、本発明によれば、白金触媒の酸化反応と光触媒作用とを組み合わせることにより、白金触媒の酸化反応により分解しきれなかった揮発性有機化合物ガスを有効に除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
先ず、本発明の活性炭フィルタの再生処理装置について説明する。
【0023】
本発明の活性炭フィルタの再生処理装置は、活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを加熱により脱離させて、この活性炭フィルタを再生処理する活性炭フィルタ再生処理装置であって、
前記脱離させた揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが冷却されて、この水分子ガスの一部が凝集して得られた液体の水に、前記揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込んだ当該液体の水を加熱して、再度ガス化した揮発性有機化合物ガスと共に、前記脱離させた揮発性有機化合物ガスを、加熱された白金触媒の酸化反応により、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスに分解する白金触媒反応器と、
前記した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを冷却する冷却部と、この冷却部により前記水分子ガスが冷却されて、一部の前記水分子ガスが凝集して得られた液体の水を溜めるための水タンク部と、この水タンク部の水面上方の空間を通過した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスの高湿度を低湿度に調整する湿度調整部とを有する除湿器と、
前記除湿器により得られた、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含む低湿度ガスを流して、この低湿度ガス中に含まれる窒素酸化物成分を除去する酸性ケミカルフィルタ装置と、
前記活性炭フィルタ、前記白金触媒反応器、前記除湿器および前記酸性ケミカルフィルタ装置のそれぞれの構成要素の順に沿って、それぞれの構成要素内のガスを吸引する吸引機とを備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明において、揮発性有機化合物ガスとは、その一部が水に溶解した場合に臭気を帯びた水を発生し得るガスであって、窒素原子を有する有機化合物を構成成分として含むガスを意味する。
このような揮発性有機化合物ガスとしては、タバコの喫煙時に空気中に放出されるタバコ煙等を挙げることができ、この空気中に放出されるタバコ煙には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニコチン等が含まれている。
【0025】
活性炭フィルタは、揮発性有機化合物ガスを活性炭フィルタに吸着させるための流路に、その揮発性有機化合物ガスを含む空気を流した場合に、その揮発性有機化合物ガスを捕獲して吸着するに適合した構造を有するものであればよく、例えば、ハニカム型活性炭フィルタが好適である。ハニカム型活性炭フィルタの体積は、そのフィルタの流路に流す揮発性有機化合物ガスの濃度および流量に応じて適宜決定される。
【0026】
活性炭フィルタは、揮発性有機化合物ガスを吸着する際に、空気中の湿気、即ち、水分子ガスをも同時に吸着することから、この活性炭フィルタを加熱した場合、この活性炭フィルタから揮発性有機化合物ガスと共に、水分子ガスを脱離させることになる。
【0027】
このように加熱脱離された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスは、これらガスを次の白金触媒反応器に流入されるためのパイプ(後述する図1に示すパイプP2)の通過時において、このパイプの外気が常温であることから急激に冷却され、特に、水分子ガスの大部分(約90%以上)は、急激な温度低下に伴う飽和蒸気圧差によって、凝集して液体の水となり、加熱離脱された揮発性有機化合物ガスの一部がこの液体の水に溶け込むように作用する。なお、水分子ガスの残余の部分(約10%未満)は、水分子ガスとして次の白金触媒反応器を通過する。
【0028】
したがって、白金触媒反応器には、脱離した揮発性有機化合物ガスおよび水分子ガスと共に、揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込んだ液体の水が流入する。
【0029】
この白金触媒反応器は、白金触媒の周辺に配置されたヒーターの加熱により、揮発性有機化合物ガスの酸化反応を促進して、この揮発性有機化合物ガスを粗分解し、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを生成する。
【0030】
次に、揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込んだ液体の水については、上記ヒーターの加熱により、再度、ガス化された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを生成し、この揮発性有機化合物ガスは、先の脱離した揮発性有機化合物ガスと同様、白金触媒の酸化反応により粗分解されて、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを生成する。なお、白金触媒の酸化反応による揮発性有機化合物ガスの粗分解では、揮発性有機化合物ガスを有効に分解除去することができる。
【0031】
白金触媒反応器内で、再度、ガス化した水分子ガスは、先に脱離した水分子ガスとともに、白金触媒反応器を通過するが、次の除湿器と接続するためのパイプ(後述する図1に示すP3)の通過時において、このパイプの外気が常温であることから、水分子ガスが冷却され、急激な温度低下に伴う飽和蒸気圧差によって、その大部分(約90%以上)が凝集して液体の水となる。
【0032】
白金触媒反応器においては、揮発性有機化合物ガスが粗分解されて、除去されることから、揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込んだ液体の水の発生を阻止することができ、その結果、液体の水をそのまま排出することが可能となる。なお、水分子ガスの残余の部分は、水分子ガスとして次の除湿器に流入する。
【0033】
また、白金触媒の酸化反応により生成した二酸化炭素は、そのまま排出することができる。
【0034】
白金触媒反応器の具体例としては、例えば、ステンレス製ハニカムの表面に白金触媒を担持させたものを複数直列接続して、密閉容器内に収納し、この密閉容器の外周に断熱材を介してヒーターを配置したものを挙げることができ、所定時間(例:2時間)所定温度(例;250〜350℃)に保温できるように設計されている。白金触媒の白金担持量、体積、表面積、保温時間および保温する温度等については、脱離した揮発性有機化合物ガスの濃度および流量に応じて適宜決定される。
【0035】
次に、除湿器は、前記した白金触媒反応器から流出する水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを冷却する冷却部と、この冷却部により水分子ガスが冷却されて凝集した液体の水を溜める水タンク部と、この水タンク部の水面上方の空間を通過する水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスが相対湿度100%の高湿度状態にあるのに対して、低湿度、例えば、25℃換算で相対湿度50%以下に調整するための湿度調整部とを有している。
【0036】
このような除湿器により、水タンク部の水面上方の空間を通過した、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを高湿度ガスから低湿度ガスに変換させて、次の酸性ケミカルフィルタを通過させる際に、酸性ケミカルフィルタによる吸着作用を損なう原因となるフィルタ表面への湿度の悪影響を除去することができる。また、冷却部における水分子ガスの冷却により、大部分(約90%以上)の水分子ガスが液体の水となって水タンク部に一旦溜められ、この水タンク部内の水は外部に排出される。
【0037】
酸性ケミカルフィルタは、上記した除湿器により、低湿度となった水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスのうち、窒素酸化物(NO、NO2等のNOx)を吸着して、除去するものである。なお、水分子ガスおよび二酸化炭素は、酸性ケミカルフィルタと作用せず、そのまま酸性ケミカルフィルタの出口側に流出される。
【0038】
酸性ケミカルフィルタの具体例としては、例えば、入口側から出口側に向かって、粒状のNO酸化触媒および粒状のNO2化学吸着材をそれぞれ層状に密閉容器内に詰めてなる酸性ケミカルフィルタを挙げることができ、この酸性ケミカルフィルタに窒素酸化物を流した場合、粒状のNO酸化触媒からなる層の通過時において、この窒素酸化物のうち、NO2は素通りし、NOは酸化されてNO2となり、NO酸化触媒からなる層に引き続く粒状のNO2化学吸着材からなる層において、NO2が吸着されて、結局、窒素酸化物が除去されたガスが出口側に流出する。
【0039】
吸引機は、前記活性炭フィルタ、前記白金触媒反応器、前記除湿器および前記酸性ケミカルフィルタ装置のそれぞれの構成要素の順に沿って、それぞれの構成要素内のガスを含めて、比較的清浄な空気(例えば、揮発性有機化合物ガスを除去した空気)を流すための吸引装置であり、市販の吸引ポンプが好適である。
【0040】
漏光型光触媒フィルタ装置は、前述した白金触媒反応器が揮発性有機化合物ガスを粗分解するものであるのに対して、この白金触媒反応器では分解除去しきれなかった揮発性有機化合物ガスを精細に分解するものであり、例えば、光触媒を担持した光ファイバを多数束ねてなる漏光型光触媒フィルタが好適である。
【0041】
次に、本発明の活性炭フィルタの再生処理方法について説明する。
【0042】
本発明の活性炭フィルタの再生処理方法の発明は、活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを加熱により脱離させて、この活性炭フィルタを再生処理する活性炭フィルタの再生処理方法であって、
前記脱離させた揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが冷却されて、前記水分子ガスの一部が凝集して得られた液体の水に、前記揮発性有機化合物ガスが溶け込む揮発性有機化合物ガス溶解工程と、
前記液体の水を加熱して、再度ガス化した揮発性有機化合物ガスと共に、前記脱離させた揮発性有機化合物ガスを、加熱された白金触媒により酸化反応させて、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを生成する白金触媒反応工程と、前記した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを冷却して、前記水分子ガスの一部を凝集して液体の水にすると共に、前記水分子ガスの残余の部分、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを低湿度に調整する除湿工程と、前記除湿工程により得られた、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含む低湿度のガス中に含まれる窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去工程を含むことを特徴とする。
【0043】
本発明の活性炭フィルタの再生処理方法は、本発明の活性炭フィルタの再生処理装置を用いることにより実現することができ、本発明の活性炭フィルタの再生処理方法において、白金触媒反応工程、除湿工程、窒素酸化物除去工程において用いられる装置および処理条件は、それぞれ、上記した白金触媒反応器、除湿器、酸性ケミカルフィルタ装置で説明したと同様である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
なお、本実施例において、被処理ガス中の揮発性有機化合物ガスの濃度とは、被処理ガス中の総揮発性有機化合物(TVOC)の濃度を意味し、以下に示す方法により算出したものである。
すなわち、揮発性有機化合物ガスの濃度が高い(例えばppmオーダー)場合はガスクトマトグラフ((株)島津製作所製)を、揮発性有機化合物ガスの濃度が低い(例えば、ppbオーダー)場合は捕集管により濃縮操作を行った後にガスクトマトグラフ質量分析計(アジレント・テクノロジ社製)を用いることによりクロマトグラムを得、検出された各ピークの面積をトルエン換算して各有機化合物の濃度を算出し、その総和を揮発性有機化合物ガスの濃度とした。
図1は、本発明の実施例である活性炭フィルタ再生処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【0045】
この活性炭フィルタ再生処理装置は、活性炭フィルタと加熱炉を含む活性炭フィルタ加熱装置10と、白金触媒とヒーターを含む白金触媒反応器20と、冷却部と水タンク部と低湿度調整部を含む除湿器30と、NO酸化触媒とNO2化学吸着材を含む酸性ケミカルフィルタ装置40と、漏光型光触媒フィルタ装置50と、吸引機60の各構成要素と共に、各構成要素を連結するためのパイプP1〜P7を備えている。
【0046】
活性炭フィルタ加熱装置10は、図2に示すように、図面上、上側面、右側面および下側面を有する断面U字状の加熱炉本体1と、左側面を開閉可能な加熱炉扉2と、活性炭フィルタ3と、この活性炭フィルタ3を収納した容器4と、加熱炉本体1と加熱炉扉2により構成される内壁に配設されたヒーター5と、ガラス繊維製の断熱材6と、加熱炉本体1の図面上、右側面の下方部分と上方部分に貫通挿入されたガス導入用パイプP1およびガス排出用パイプP2を備えている。
【0047】
活性炭フィルタ3は、市販のハニカム型活性炭(大きさ:150×150×30mm)を24個、容器4内に配列したものであり(図面では手前の12個を示した)、この活性炭フィルタ3は、被処理ガスとしてタバコ煙を含むガスを処理した空気清浄装置において使用され、その活性炭フィルタ3の表面には、揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが既に吸着されている。
【0048】
容器4の底部は、スリット状または網状に形成されて、通気性を得ていることから、パイプP1から導入された空気は、この容器4の底部を通って活性炭フィルタ3の流路に流すことができる。なお、パイプP1に導入される空気は、活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスを除去して、この活性炭フィルタを再生するために流すものであることから、揮発性有機化合物ガスを除去した程度の比較的清浄な空気であることが求められ、この空気の流量は吸引機60により調整され、本例では2リットル/分に設定した。
【0049】
このような活性炭フィルタ3を収納した容器4を、加熱炉扉2を開けて、加熱炉本体1の内部空間に収納し、加熱炉扉2を閉めて加熱炉を密閉状態にする。そして、加熱炉内のヒーター5に所定電圧を印加して、図示略した温度制御器により約260℃の高温に約1時間かけて昇温して、活性炭フィルタ3を加熱することにより、活性炭フィルタ3に吸着されていた揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを脱離させる。そして、脱離させた揮発性有機化合物ガスと水分子ガスは、活性炭フィルタ3の流路をその上方に向かって通過して、パイプP2から排出される。
【0050】
なお、約260℃の高温を約2時間保持した後、ヒーター5への印加電圧を断つが、その間、活性炭フィルタ3が約260℃の高温に達した時に、揮発性有機化合物ガスは、その脱離量が最大となり、最高濃度となってパイプP2から排出される。
【0051】
加熱脱離された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスは、パイプP2を通過したとき、このパイプP2が外気の常温に曝されて、白金触媒反応器20に入る直前のパイプP2内の温度が約90℃となって、冷却される。
【0052】
この冷却により、急激な温度低下による飽和蒸気圧差が生じて、水分子ガスの大部分(約90%以上)が凝集して液体の水となり、残余(約10%以下)の水分子ガスが気体としてそのまま通過する。そして、この液体の水は、揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込んで、臭気を帯びた液体となり、次の白金触媒反応器20に、揮発性有機化合物ガスと水分子ガスと共に、臭気を帯びた液体が流入する。
【0053】
次に、白金触媒反応器20は、図3に示すように、ステンレス製ハニカムの表面に白金を担持させた白金触媒ユニット(大きさ:100×100×50mm)を3個直列に配設してなる白金触媒21と、この白金触媒21を収納したステンレス製の密閉容器22と、この密閉容器22の外側面に配設したヒーター23と、このヒーター23を保温するガラス繊維製の断熱材24と、前述した脱離した揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを密閉容器22内に導入するためのパイプP2と、白金触媒の酸化反応により揮発性有機化合物ガスが分解して生成したガスを排出するためのパイプP3とを備えている。
【0054】
白金触媒21を収納した密閉容器22は、白金触媒21の温度を図示略した温度検知器により検知し、図示略した温度制御器によりヒーター23に流す電流を制御して、250℃〜350℃の範囲内の一定の高温度(本例:300℃)に保持した状態で、白金触媒の酸化反応を得る。
【0055】
そこで、パイプ2により、前述した揮発性有機化合物ガスと水分子ガスと共に、臭気を帯びた液体を、密閉容器22内の白金触媒21の手前の空間に導入したとき、前述した300℃の高温に曝されて、上記臭気を帯びた液体が再度ガス化して揮発性有機化合物ガスと水分子ガスとなり、密閉容器22に導入された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスと一緒になって、白金触媒21の流路を流れて、揮発性有機化合物ガスが白金触媒の酸化反応により、水分子ガスと二酸化炭素と窒素化合物の3成分を含むガスに分解生成され、この3成分を含むガスがパイプP3から排出される。なお、白金触媒21の流路を流れた水分子ガスは、白金触媒の酸化反応を受けずに、そのまま通過して、パイプP3から排出される。
【0056】
揮発性有機化合物ガスが白金触媒の酸化反応により分解されて、生成した水分子ガスと、白金触媒21の流路をそのまま通過した水分子ガスは、白金触媒反応器20の排出パイプP3を通過して、このパイプP3が外気の常温に曝されて、次の除湿器30に入る直前のパイプP3内の温度が約90℃となって、冷却されるから、大部分(約90%以上)の水分子が凝集して液体の水となるが、その段階では、3ppm以上の濃度まで揮発性有機化合物ガスが除去されていることから、この揮発性有機化合物ガスが液体の水に溶け込むようなことがなく、この液体の水は無色、無臭で、そのまま排出可能であり、また飲み水検査により、飲用に適合した水であることが確認された。
【0057】
また、揮発性有機化合物ガスが白金触媒の酸化反応により分解されて生成した二酸化炭素もそのまま排出可能である。
【0058】
パイプP3より、次の除湿器30に流入する物質は、先の白金触媒の酸化反応により揮発性有機化合物ガスを分解して生成した、水分子と二酸化炭素と窒素酸化物の3成分を含むガスと、水分子が冷却により凝集した液体の水である。
【0059】
除湿器30は、図4(A)に示すように、主たる構成として、パイプP3より流入した水分子と二酸化炭素と窒素酸化物の3成分を含むガスおよび液体の水を常温までに冷却する冷却部310を有するとともに、上記3成分のガスのうち、水分子ガスの大部分(約90%以上)を冷却して得られた液体の水と、先に流入した液体の水とを溜めるための水溜め321と、この水溜め321の水面の上方に、水分子の残余部分(約10%以下)と二酸化炭素と窒素酸化物の3成分を含むガスを通過させるための空間322を設けた水タンク部320を有し、また、通過させた水分子ガスを相対湿度50%以下の低湿度ガスに調整する湿度調整部330とを有し、この低湿度ガスがパイプP4より排出される。
【0060】
図4(B)は、図4(A)に示す冷却部310のY−Y線箇所の水平パイプP01〜P11およびファン313を切断した断面とその周辺のアルミニウム製薄板312を示す図である。
【0061】
冷却部310は、放熱性の銅製パイプ311(内径:4.76φmm、全長3m)を、水平方向に配列される11本の水平パイプP01〜P11と、水平パイプP01〜P11のうち隣接する両端を連結する10本のUターンパイプPu01〜Pu10とに加工し、アルミニウム製薄板312(横:50mm、高さ:200mm、厚さ:0.1mm)を千鳥状に11箇所穴あけ加工したものを40枚用意して、この薄板312を約5mm間隔で平行に林立させた状態で、上記した11本の水平パイプP01〜P11を上記した11箇所の千鳥状に位置する穴に貫通させた状態で、40枚のアルミニウム製薄板312と11本の水平パイプP01〜P11とを溶接して、構成されている。なお、図4(A)に示したアルミニウム製薄板312の数は、27枚しか描かれていないが、実際には、上記したとおり40枚である。
【0062】
このような銅製パイプ311の構成をガスの流れに沿って説明すると、図4(A)の図面において、水平に配列した1本目の水平パイプP01と、この水平パイプP01の右側端部に1本目のUターンパイプPu01の一端を接続し、その他端を紙面上奥行側に向かって下降させて、2本目の水平パイプP02の右側端部に接続し、この水平パイプP02の左側端部に2本目のUターンパイプPU02の一端を接続し、その他端を図面上紙面側に向かって下降させて、3本目の水平パイプP03の右側端部に接続し、以下同様、3本目以降のUターンパイプPu03〜Pu10と4本目以降の水平パイプP04〜P11とを交互に接続する。
【0063】
なお、図4(B)の図面において、ガスの流れの向きは、水平パイプP01、P03、P05、P07、P09およびP11を示す円内の×印が手前から奥行に向かい、水平パイプP02、P04、P06、P08およびP10を示す円内の・印が奥行から手前に向かうことを示す。
【0064】
その結果、冷却部310のガス流路は、水平面から上方に進行することなく、水平面内と下降方向に向けて進行する。
【0065】
図4(B)に示すアルミニウム製薄板312の左側面に設置されたファン313を作動して、アルミニウム製薄板312に風を吹き付けることにより、冷却部310全体が冷却され、その冷熱伝導により銅製パイプ311の内部も常温に冷却される。
【0066】
一方、パイプP3を通じて、流入した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物を含む3成分のガスは、上記した銅パイプ311の冷却により常温付近まで冷却され、温度低下による飽和蒸気圧差が生じて、水分子ガスのうち大部分(約90%以上)は、凝集した液体の水となり、先にパイプP3より流入した液体の水と合流して、残余(約10%以下)の水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分のガスと共に、連結パイプP12を通して、次の水タンク部320に流入する。
【0067】
合流した液体の水(常温)は、水タンク部320の水溜め321に収納され、その残余部分(約10%以下)の水分子ガスは、相対湿度が100%の高湿度ガスを維持して、二酸化炭素および窒素酸化物のガスと共に、水溜め321の水面上方の空間322を通過して、連結パイプP13を通じて、次の湿度調整部330に流入する。なお、水溜め321内の液体の水は、図示略されたドレイン等により外部に排出される。
【0068】
湿度調整部330は、密閉容器331内に、4本のアルミニウム製円柱棒332(直径:10φmm、高さ:50mm)を収納するように、この4本の円柱棒332を林立させて保持するアルミニウム製基台333の中間部をこの密閉容器331の天井壁に埋設し、この基台333の円柱棒332側の略半分が密閉容器331内に収納され、この基台333の背面側の略半分が密閉容器331の外部にあり、この基台333の背面に接するようにペルチェ素子334の冷却面を設置し、このペルチェ素子334の発熱面に接するようにヒートシンク335を設置し、このヒートシンク335の周辺にこれを空冷するためのファン336を設置してある。
【0069】
ペルチェ素子334に所定の直流電圧(本例:9V)を印加すると、発熱面が発熱し(本例の最高温度:50℃)、その熱をヒートシンク335が吸収することにより、冷却面が冷却され(本例の最低温度:−10℃)、この冷却面の温度はペルチェ素子334の電流を制御して行われる。
【0070】
ヒートシンク335は、アルミニウム製基板に多数のアルミニウム製片を林立させた構造体であり、この多数のアルミニウム製片が放熱面となり、ファン336の風を受けて、強制冷却され、ペルチェ素子334の発熱面から熱を吸収する。
【0071】
このように強制冷却されたヒートシンク335と接したペルチェ素子334の発熱面から熱を吸収して、それに応じて、ペルチェ素子334の冷却面が冷却され、その冷却面と熱伝導性のあるアルミニウム製基台333および4本のアルミニウム製円柱棒332を冷却する。
【0072】
そこで、ペルチェ素子334に流す電流を制御して、本例の4本のアルミニウム製円柱棒332の先端部付近(密閉容器331内に入ったパイプP13付近)の温度が約15℃、密閉容器331内のアルミニウム製基台333付近の温度が2℃となるように調整した結果、ガスを含む空気の流量を2リットル/分としたとき、密閉容器331内の平均温度が約12℃となり、パイプP4から排出される水分子ガスの相対湿度は、常温(25℃)換算で相対湿度43%まで低湿度化することができた。
【0073】
このように低湿度化された水分子ガスは、二酸化炭素および窒素酸化物のガスと共に、パイプP4を通じて、次の酸性ケミカルフィルタ装置に流入する。
【0074】
酸性ケミカルフィルタ装置40は、図5に示すように、ステンレス製の密閉容器(内径:50φmm、長さ:250mm)内部の導入用パイプP4側の導入側空間41と、排出用パイプP5側の排出側空間44とを設けた中央領域に、導入パイプP4側に向けて粒状(粒径:3φmm、長さ:10mm)のNO酸化触媒42(日本ピュアテック(株)製ピュアライトグレード「E3」)からなる層と、NO酸化触媒42からなる層に引き続く、粒状(粒径:3φmm、長さ:10mm)のNO2化学吸着材43(日本ピュアテック(株)製ピュアライトグレード「02」)からなる層をそれぞれ内壁に接するように設け、それぞれの粒状物の粒径に応じて、粒状物間にガス流路となる隙間を形成している。
【0075】
低湿度化された水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスは、パイプP4を通じて、導入側空間41に導入されて、窒素酸化物(NOx)のうち、NO2はNO酸化触媒42からなる層のガス流路を素通りするが、NOはNO酸化触媒42からなる層のガス流路を通過するときに、酸化反応を受けて、NO2となって通過する。
【0076】
そして、このNO2は、NO2化学吸着材43からなる層のガス流路を通過するときに、このNO2化学吸着材43の表面に吸着されて、その結果、窒素酸化物(NOx)が除去された、残りの水分子ガスと二酸化炭素が排出用パイプP5を通じて排出される。
【0077】
なお、酸性ケミカルフィルタ装置40に導入される直前の窒素酸化物中のNO2濃度は最大で300ppmを観測したが、酸性ケミカルフィルタ装置40の排出用パイプP5から排出されたガスでは、検出限界の1ppm以下であったことから、窒素酸化物が酸性ケミカルフィルタ装置40に十分に吸着され、除去されたことが判明した。
【0078】
次に、パイプP5を通じて、水分子ガスと二酸化炭素の2成分を含むガスは、漏光型光触媒フィルタ装置50に流入する。このとき、前述した白金触媒反応器20の酸化反応により分解除去しきれなかった3ppm未満の濃度の微量な揮発性有機化合物ガス(以下、この3ppm未満の濃度の揮発性有機化合物ガスを「微量な揮発性有機化合物ガス」という。)も、前述した除湿器30、酸性ケミカルフィルタ装置40を通過して、この漏光型光触媒フィルタ装置50に流入する。
【0079】
漏光型光触媒フィルタ装置50は、その長手方向の断面を図6(A)に示し、同装置に使用された光触媒ガラスファイバ束500を構成する多数の光触媒ガラスファイバのうち、隣接する2本の光触媒ガラスファイバ501,502の長手方向の一部断面を図6(B)に示した。
【0080】
なお、この漏光型光触媒フィルタ装置50は、水分子ガスと二酸化炭素の2成分を含むガスについてはそのまま通過させ、微量な揮発性有機化合物ガスを光触媒反応により分解除去することから、光触媒反応に関しては、この微量な揮発性有機化合物ガスについて説明する。
【0081】
光触媒ガラスファイバ束500は、各ガラスファイバ(501a,502a,・・・)の外側面(501a1,502a1,・・・)に石英ガラス球503が複数積み重ねられて分布して形成された外表面上に二酸化チタン層504を担持して、光触媒ガラスファイバ(501,502,・・・)を多数(本実施の形態においては、13,000本)束ねることによって形成される。
【0082】
そして、複数の石英ガラス球503が母体となって多数形成された空隙部505が、図6(B)に実線矢印で示す、ガスを含む空気の流路となり、この空気はこの空隙部505を通過する。なお、図6(B)では、一断面を示していることから、微量な揮発性有機化合物ガスを含む空気の流路が閉鎖されているように示されているが、他の断面において連通している。
【0083】
多数束ねられた光触媒ガラスファイバ束(501,502,・・・)は、図6(A)に示すようにアルミ製反応器ケース51に挿入収納される。
一方、ブラックライト52a、52bにより放射された紫外光は、図6(A)に示すガラス窓53a、53bを透過して、それぞれ、光触媒ガラスファイバ束500の入射部500a、500bに入射される。
【0084】
光触媒ガラスファイバ(501、502、・・・)の内部へ入射した紫外光は、図6(B)に白抜き矢印で示すとおり、内部を伝播し、各ガラスファイバ(501a、502a、・・・)と石英ガラス球503の外側面(501a1、502a1、・・・)上に形成された二酸化チタン層504に漏れ出し、光触媒作用を活性化させる。
【0085】
微量な揮発性有機化合物ガスを含む空気(実線矢印で示す)は、パイプP5を通じて、反応器ケース51の一方のフランジ部54aに形成された導入口54inより導入され、光触媒ガラスファイバ束500内に形成された空隙部505を流通し、その流通する際に、揮発性有機化合物ガスが活性化した二酸化チタン層504と接触して、このガスが二酸化チタン層18に捕獲され、このガスを分解する。
【0086】
そして、分解後の清浄な空気は、反応器ケース51の他方のフランジ部54b形成された空気排出口540UTに接続されたパイプP6を通じて外部に排出され、この清浄な空気中の揮発性有機化合物ガスの含有量は1ppb(10-3ppm)以下であった。
【0087】
次に、吸引機60は、図1において、活性炭フォリタ加熱装置10、白金触媒反応器20、除湿器30、酸性ケミカルフィルタ装置40および漏光型光触媒フィルタ装置50と、これら装置を連結するパイプP1〜P5を通じて、揮発性有機化合物ガスと水分子を含むガスを流通させるための空気を吸引するものであり、市販の吸引ポンプ(例;(株)榎本マイクロポンプ社製、DM-707ST-20-V)を使用し、ガス流量調整器(例;コフロック(株)製、2410-T-S-K1-1/8)およびガス流量計(例;コフロック(株)製、RK1050-15-S-1/8-Air-3L/min)を取り付けて、ガス量を0.5リットル/分〜25リットル/分まで調整可能である。
【0088】
なお、本実施例においては、空気清浄装置から活性炭フィルタを取り外した後、これを活性炭フィルタ加熱装置に収納して加熱したが、例えば、加熱装置と一体化した活性炭フィルタを用いることにより、空気清浄装置から活性炭フィルタを取り外すことなく、再生処理することもできる。
【0089】
この場合、それぞれ活性炭フィルタを通過する、揮発性有機化合物ガスを含むガスのラインと活性炭フィルタを再生するガスのラインを独立に設けておき、揮発性有機化合物ガスの吸着時においては揮発性有機化合物ガスを含むガスのラインを開放しつつ活性炭フィルタを再生するガスのラインを閉鎖しておき、活性炭フィルタの再生時においては、揮発性有機化合物ガスを含むガスのラインを閉鎖しつつ、活性炭フィルタを再生するガスのラインを開放することにより再生ガスを通過させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、脱離した揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを通気パイプに流通させる際、水分子ガスの一部が冷却されて液体の水となり、この液体の水に揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込むことにより発生する「臭気を帯びた水(液体)」を除去するとともに、揮発性有機化合物ガスの酸化反応により生成する窒素酸化物を除去し得る、活性炭フィルタの再生処理装置および活性炭フィルタの再生処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例である活性炭フィルタ再生処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例の一構成要素である活性炭フィルタ加熱装置の一部断面を示す図である。
【図3】本発明の実施例の一構成要素である白金色版反応器の一部断面を示す図である。
【図4】本発明の実施例の一構成要素である除湿器を示し、図4(A)は除湿器の冷却部、水タンク部および湿度調整部を示す図であり、図4(B)は図4(A)に示した冷却部のY−Y線断面を示す図である。
【図5】本発明の実施例の一構成要素である酸性ケミカルフィルタ装置の断面を示す図である。
【図6】図6(A)は本発明の実施例の一構成要素である漏光型光触媒フィルタ装置の断面を示し、図6(B)はこの漏光型光触媒フィルタ装置に使用された光触媒ガラスファイバ束の断面を示す。
【符号の説明】
【0092】
3 活性炭フィルタ
10 活性炭フィルタ加熱装置
20 白金触媒反応器
23 ヒーター
30 除湿器
310 冷却部
320 水タンク部
321 水溜め
322 水面上方の空間
330 湿度調整部
40 酸性ケミカルフィルタ装置
50 漏光型光触媒フィルタ装置
60 吸引機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを加熱により脱離させて、この活性炭フィルタを再生処理する活性炭フィルタの再生処理装置において、
前記脱離させた揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが冷却されて、この水分子ガスの一部が凝集して得られた液体の水に、前記揮発性有機化合物ガスの一部が溶け込んだ当該液体の水を加熱して、再度ガス化した揮発性有機化合物ガスと共に、前記脱離させた揮発性有機化合物ガスを、加熱された白金触媒の酸化反応より、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスに分解する白金触媒反応器と、
前記した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを冷却する冷却部と、この冷却部により前記水分子ガスが冷却されて、一部の前記水分子ガスが凝集して得られた液体の水を溜めるための水タンク部と、この水タンク部の水面上方の空間を通過した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスの高湿度を低湿度に調整する湿度調整部とを有する除湿器と、
前記除湿器により得られた、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含む低湿度ガスを流して、この低湿度ガス中に含まれる窒素酸化物成分を除去する酸性ケミカルフィルタ装置と、
前記活性炭フィルタ、前記白金触媒反応器、前記除湿器および前記酸性ケミカルフィルタ装置のそれぞれの構成要素の順に沿って、それぞれの構成要素内のガスを吸引する吸引機とを備えたことを特徴とする活性炭フィルタの再生処理装置。
【請求項2】
前記酸性ケミカルフィルタ装置と前記吸引機と間に漏光型光触媒フィルタ装置を配設したことを特徴とする請求項1に記載の活性炭フィルタの再生処理装置。
【請求項3】
活性炭フィルタに吸着された揮発性有機化合物ガスと水分子ガスを加熱により脱離させて、この活性炭フィルタを再生処理する活性炭フィルタの再生処理方法において、
前記脱離させた揮発性有機化合物ガスと水分子ガスが冷却されて、前記水分子ガスの一部が凝集して得られた液体の水に、前記揮発性有機化合物ガスが溶け込む揮発性有機化合物ガス溶解工程と、
前記液体の水を加熱して、再度ガス化した揮発性有機化合物ガスと共に、前記脱離させた揮発性有機化合物ガスを、加熱された白金触媒により酸化反応させて、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを生成する白金触媒反応工程と、
前記した水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを冷却して、前記水分子ガスの一部を凝集して液体の水にすると共に、前記水分子ガスの残余の部分、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含むガスを低湿度に調整する除湿工程と、
前記除湿工程により得られた、水分子ガス、二酸化炭素および窒素酸化物の3成分を含む低湿度のガス中に含まれる窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去工程を含むことを特徴とする活性炭フィルタの再生処理方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−181527(P2006−181527A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379795(P2004−379795)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(592032430)HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社 (44)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】