説明

活性薬剤の送達のための粒子

活性剤をカチオン性及びアニオン性ポリマーのマトリクスでコートした100ミクロン未満の粒子は、活性剤を皮膚及び粘膜などの組織に送達するための効率的なビヒクルである。かかる粒子は、化合物を皮膚へ、殆ど刺激を伴わずに送達することができる。従来技術の局所配合物は、典型的には、有意の皮膚刺激を引き起こすという不都合を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レチノイン酸などの局所用レチノイドは、座瘡、光線性角化症、乾癬、皮膚癌並びにメラノーマの光損傷及び化学的予防などの皮膚病を治療するために用いられてきた[Griffiths等、N Eng J Med 329:530-534 (1993); Halpern等、{Advances in the biology and treatment of cutaneous melanoma, Boston, MA, November 6-7th (1998); Kligman, J Am Acad Dermatol 39;S2-S7 (1998); Stam-Postuma, Melanoma Research 8:539-48 (1998); Varani等、J Inv Dermatol 114:480-486 (2000)中}]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
皮膚病の治療のための局所的レチノイン酸の一つの副作用は、増大する刺激である。局所的治療(全トランス−レチノイン酸、ATRA、レチノイン酸)は、患者の90%で刺激を誘発し(Gilchrest, J Am Acad Dermatol 36:S27-S36 (1997))、そして他の副作用には、まだら紅斑、局所的腫脹、乾皮症、及び鱗状剥離が含まれる。刺激は、部分的に、皮膚に外因性の非生理的量のトレチノインを用いてトレチノイン依存性経路に負担をかけすぎたことに帰せられてきた(Siegenthaler等、[Retinoids: From Basic Science To Clinical Applications, M.A. Livrea and G. Vidali (編)、Birkhauser Verlag, スイス国、Basel, p.329-335, (1994)中])。例えば、経口投与と比較して、レチノイン酸の局所的送達は、真皮区画のレチノイン酸の濃度を10〜100倍増大させる(Lehman等、J Invest Dermatol 91:56-61 (1988))。この刺激は、約50%の患者が治療を中止してしまう理由でありうる(Stam-Postuma等、Melanoma Research 8:539-48 (1998))。この刺激の高い発生率(乏しいコンプライアンスへと導く)は、その利用を妨げうる。それ故、刺激を低下させる如何なる手段でも、任意の局所用配合物に非常に望ましい属性と思われる。従来技術においては、皮膚層への放出を遅くするための多孔性ミクロスフェア(Microsponge(登録商標))中のレチノイン酸の捕捉は、活性成分の皮膚への放出を制御することによって刺激のレベルの低下を生じた(Won等、米国特許第5,955,109号(1999))。しかしながら、この送達システムを含む配合物は、微細な乾燥した残留物を皮膚表面に沈積させる傾向があり、これは、美容的に許容しえない。
【0003】
極めて刺激的であることに加えて、レチノイド及びビタミンD3などの化合物の局所投与には、それらの水不溶性及び光不安定性の問題がある。低い溶解度は、これらの薬物の許容しうるビヒクルへの組込みを制限し、それらの光不安定性は、局所投与された薬物を効果のないものにしうる。不溶性の問題は、これらの薬物は、一般に刺激性である添加剤及び可溶化剤なしでは局所投与できないことを意味する。人が、これらの薬物を局所的に塗布した場合、それらは、上皮及び真皮層である標的組織に到達する前に角質層を横切らなければならない。活性剤が、更に全身循環へ浸透することは、ある種のサイトカイン例えばIL−1αの放出の引き金となり二次的な刺激性の応答を生じるので避けるべきである。
【0004】
これらの活性剤により引き起こされる刺激の故に、数年にわたって、慣用の局所用配合物(例えば、ゲル、クリーム及びローション)を置き換えることへの要求がある。この問題は、不溶性の薬物をキャリアー溶液に、如何に、潜在的に刺激的な添加剤及び/又は可溶化剤を用いずに混合するかということである。加えて、如何に薬物を、該薬物を安定化させて、患者に一層容易に許容される薬剤中に「マスクする」かという問題がある。
【0005】
キトサンを局所用配合物の成分として企図しても、以前の配合物は、上記の問題のすべてを改善してはいない。
【0006】
Grandmontagne等(米国特許第6,242,099号(2001))において、疎水性物質を包み込んだキトサン又はキチン誘導体から作られたマイクロカプセルが、アニオン性界面活性剤及びキトサンを利用して作られた。このアニオン性界面活性剤は、疎水性物質を乳化させること並びにキトサンポリマーを沈殿させることの2つの役割を演じている。このキトサンは、更に、架橋により処理され又はアセチル化によってキチンを形成した。この発明において、マイクロカプセルの形成は、有害な皮膚反応例えば紅斑及び浮腫を引き起こしうるアニオン性界面活性剤の使用を必要とする。キトサンを沈殿させるための界面活性剤の利用は又、ドイツ国特許出願DE19712978A1及びDE19756452A1にも開示されており、そこには、キトサン又はキトサン誘導体を油体と混合し、これらの混合物をアルカリ性界面活性剤溶液中に沈殿させることによって作られたミクロスフェアが記載されている。
【0007】
Garces等は、活性成分とアニオン性ポリマーのエマルジョンをキトサンによりカプセル封入することによって作られた直径0.1〜5mmのマイクロカプセル(米国特許出願第2003/0064106号)を記載している。これらのマイクロカプセルは、初期エマルジョンを形成して活性成分を可溶化するための乳化剤を含む方法により得られた。
【0008】
従って、従来技術のカプセル封入方法は、キトサンベースの微粒子の製造において、決定的に重要な工程として、界面活性剤及び/又は乳化剤に依存した。これらの界面活性剤(特に、アニオン性界面活性剤)は、増大した皮膚刺激及び他の有害な皮膚反応に寄与しうる。加えて、これらの微粒子は、局所塗布後に、美容的に許容できない残留物を残す。それ故、これらの問題を克服する配合物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の簡単な説明
本願の発見は、水不溶性活性剤は、投与(例えば、局所投与、経皮投与、経粘膜投与)に適した微粒子又はナノ粒子(包括的には、粒子)の形態で送達できるという発見に基づくものである。それは、皮膚若しくは粘膜への若しくはそれらを透過する改良された輸送特性及び/又は投与部位における減少した刺激を有している。これらの主題の組成物は、不溶性の活性剤(例えば、レチノイン酸)の、刺激を引き起こす溶媒又は界面活性剤例えばエタノール及びポリエトキシル化ひまし油(ポリ(アクリル酸)ゲルにて希釈)を含むエマルジョンでの投与の必要性を回避する(例えば、Technical Bulletin ME 142e, Tretinoin for the Pharmaceutical Industry, 1998年10月、BASF Corporationを参照されたい)。活性剤単独又はこれらの他の配合物中と比較して、本発明のシステムは、有害な皮膚反応例えば紅斑及び腫脹を減じ又は排除する。従って、この発明の組成物は、この発明によらなければ反応を引き起こす活性剤例えばレチノイン酸、レチノール及びカルシポトリエンを送達することができる。
【0010】
ある具体例において、この発明は、水不溶性の又は僅かに水溶性の活性剤の投与のための組成物であって、100ミクロン以下の平均直径を有する粒子を含む当該組成物を提供する。ある具体例において、これらの粒子は、1ミクロン未満の、例えば10〜500nm又は20〜300nmの直径を有するナノ粒子である。これらの粒子は、活性剤を含む内部コア(例えば、主に固体粒子として)及び、カチオン性(例えば、高度に粘性のキトサン)又はアニオン性ポリマーを含むマトリクスから形成される外側コーティングを含む。この外側コーティングのマトリクスは、これらのポリマーの化学的架橋よりは、イオン性又は他の非共有結合性相互作用によって形成される。
【0011】
ある具体例において、この発明は、刺激性の活性剤の送達に有用な組成物を提供する。かかる組成物は、刺激性活性剤を含む内部コア及び、カチオン性ポリマー(例えば、高い粘度のキトサンバイオポリマー)及びアニオン性ポリマーを含むマトリクスから形成された外側コーティングを有する粒子を含む。ある具体例においては、この活性剤は、刺激性で且つ水不溶性又は僅かしか水に溶けない。
【0012】
典型的具体例において、この発明の組成物は、活性剤のエマルジョン(例えば、適当な分散剤中)及びカチオン性ポリマーの水溶液から形成され、アニオン性ポリマーの存在下で、典型的には6.0より大きいpH値で、激しく攪拌する条件下で沈殿させて、微粒子及び/又はナノ粒子を形成する。この粒子サイズは、例えば高圧ホモジェナイザー(例えば、ミクロフルイダイザー)を用いて小さくすることができる。2回以上高圧ホモジェナイザーを通すことにより、所望のサイズの粒子を得ることができる。
【0013】
他の典型的具体例において、この発明の組成物は、カチオン性ポリマーを水溶液中に溶解させ、それを、適当な分散剤中で活性剤(例えば、レチノイン酸)と混合して、活性剤粒子を含むエマルジョンを形成し、次いで、それを、所望のサイズの粒子が得られるまで、直接高圧ホモジェナイザーを通過させることにより製造される。粒子の形成を促進するために、他の薬剤(例えば、アニオン性ポリマー)を、好ましくは皮膚に刺激的でない薬剤を、このエマルジョンに加えることができる。
【0014】
ある具体例において、この発明の配合物は、直径1ミクロン未満の、好ましくは500nm未満の、そして好ましくは20nmより大きい粒子を含む。かかる粒子は、一般に、角質層を横切るだけ十分に小さいが、皮膚組織に保持されるだけ十分に大きい。
【0015】
本発明は又、ここに記載した組成物の、ここに開示した病気又は状態を治療するための医薬の製造における利用をも含む。
【0016】
水不溶性の活性剤の粒子懸濁液の形態での局所的送達は、活性成分の一層大きな安定性及び、皮膚の外側層である角質層における粒子の増大した透過を与える。
【0017】
図面の簡単な説明
図1は、レチノイン酸が、ナノ粒子に含有された場合には、40℃で安定であることを示している。
図2は、フランツ拡散セルを利用した皮膚外植片モデルによってレチノイン酸の透過を、遊離のレチノイン酸又はキトサンに捕捉されたレチノイン酸について、高分子量キトサン(HMW)の濃度の関数として示している。
図3は、200時間後のレチノイン酸の皮膚分布(ATRA)を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の説明
予想外にも、カチオン性ポリマー(例えば、高粘度キトサン)を最初に、適当な分散剤中に分散させた水不溶性活性成分の存在下で混合してマトリクスを形成すれば、このマトリクスは、その後、激しい攪拌条件下で、アニオン性ポリマーの存在下で沈殿して、角質層又は外側皮膚層を透過するミクロン又はサブミクロンサイズの粒子を形成することができるということが見出された。このキトサンベースの微粒子又はナノ粒子の製法は、皮膚刺激又は他の有害な反応を引き起こしうる界面活性剤又は乳化剤の利用を回避する。
【0019】
本発明は、水に不溶性又は僅かに溶解性の活性剤例えば医薬例えばレチノイドが、ポリマー製キャリアーに組み込まれて、薬物の好適な組織分布、延長された半減期、制御された薬物放出及び薬物毒性の減少などの利点を与える組成物を提供する。加えて、この発明の典型的な組成物は、活性剤の持続的放出を与える。出願人は、如何なる特定の理論に拘束されることも望まないが、持続的放出は、活性剤を、カチオン性及びアニオン性ポリマーのマトリクス中に沈殿させることによって得られると考えられる。その上、この発明の典型的な組成物は、皮膚にポリマー性残留物を残さない局所的送達用ビヒクルとして役立つ。この残留物のないことは、皮膚の角質層又は外側層中への一層大きな透過を可能にすると考えられるある種のカチオン性ポリマーの皮膚表面への生体接着性によるものでありうる。皮膚刺激を減らす送達用ビヒクルの能力と一致して、動物研究において、この発明の典型的な組成物は、紅斑及び浮腫の統計的に一層低いレベルを示している(実施例参照)。
【0020】
キトサン(カチオン性ポリマーの例)を局所用医薬又は化粧用配合物において利用する能力は、予期されなかった。以前の実験において、出願任は、キトサンは、アニオン性ポリマー及び/又は6より大きいpHと適合性でないことを見出した。これらの条件下で、キトサンは、典型的には、美容上許容できない比較的大きい粒子を最終的局所用配合中に含むゲル複合体の形態で沈殿する。これは、キトサンがアニオン性ポリマーの存在下及び6より大きいpHで不溶性の沈殿を形成することを示す文献と一致する(Hydagen(登録商標)CMFについてのCognis Company の文献及びKytamer(商標)PCについてのAmerchol Company の文献を参照されたい)。
【0021】
上記の利点は、更に、マイクロカプセルより一層小さいナノ粒子を利用することにより増強することができる。マイクロカプセルは、1〜100ミクロン例えば1〜50ミクロン、1〜20ミクロン又は1〜10ミクロンの平均直径を有する。典型的には、ナノ粒子は、1ミクロン未満又は500nm未満の例えば20〜500nm、20〜300nm、50〜200nm又は50〜150nmの平均直径を有する。好ましくは、これらの粒子の90%より多く、95%より多く、97%より多く、98%より多く又は99%より多くが、これらの範囲の一つに入る。好ましくは、粒子の均一性は、特定の平均直径を有する群内の粒子が、該平均直径の50%以内例えば25%以内で(又は、10%以内でさえ)ある個々の直径を有するようなものである。
【0022】
ここで用いる場合、用語「活性剤」は、身体に導入された場合に、それが適用された組織の外観に効果を有し又は身体機能の経路を変更する任意の物質を指す。
【0023】
用語「水不溶性」は、水に不溶性の又は僅かに水溶性の任意の活性剤を指す。僅かに溶ける化合物は、25℃で0.1mg/ml未満の、好ましくは0.05mg/ml未満の溶解度を有する。水不溶性の化合物は、25℃で0.01mg/ml未満の溶解度を有する。
【0024】
用語「刺激性」は、皮膚に塗布した際に浮腫及び/又は紅斑を引き起こす活性剤を指す。典型的には、刺激性活性剤は、1.0より大きい、一層典型的には、2.0より大きい累積刺激インデックス(以下で説明する)を有する。
【0025】
用語「医薬活性剤」は、薬物即ち身体に適用され又は導入された場合に、何かしら身体の機能を変更する(例えば、細胞過程を変える)物質を指す。水不溶性又は僅かに水溶性の医薬活性剤の例には、抗炎症剤(例えば、NSAIDS、ホルモン及びオータコイド例えばコルチコステロイド)、抗座瘡剤(例えば、レチノイド)、抗しわ剤、抗瘢痕剤、抗乾癬剤、抗増殖剤(例えば、抗湿疹剤)、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗敗血症剤(例えば、抗菌剤)、局所麻酔剤、抗片頭痛剤、角質溶解剤、毛髪育成刺激剤、増毛阻止剤、及び他の皮膚の病気及び状態を治療するための薬剤が含まれるが、これらに限られない。ある活性剤は、一つより多くの範疇に属する。
【0026】
レチノイドの例には、レチノイン酸(シス及びトランスの両方)、レチノール、アダパレン、ビタミンA及びタザロテンなどの化合物が含まれるが、これらに限られない。レチノイドは、座瘡、乾癬、酒さ、しわ並びにメラノーマ及び光線性角化症などの皮膚癌及び癌前駆体の治療において有用である。
【0027】
非ステロイド性抗炎症剤には、サリチル酸、サリチル酸エステル、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、メフェナム酸、フロクタフェニン、トルメチン、ゾメピラック、ジクロフェナク、ピロキシカムなどが含まれる。
【0028】
オータコイド及びホルモンコア(抗炎症剤に限られない)には、ステロイド、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、ロイコトリエン、アンギオテンシン(カプトプリル)、並びに医薬的に活性なペプチド例えばセロトニン、エンドルフィン、バソプレッシン、オキシトシンなどが含まれる。僅かに水溶性のステロイドには、エストロゲン及びコルチコステロイドが含まれる。抗炎症性コルチコステロイドには、プロゲステロン、ヒドロコーチゾン、プレドニゾン、フルドロコルチゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、フルオシノロンなどが含まれる。
【0029】
局所麻酔剤には、ベンゾカイン、テトラカイン、リドカイン、ブピバカイン、それらの塩酸塩などが含まれる。
【0030】
一般的抗敗血症剤には、アクリジン色素、ブロノポル、クロルヘキシジン、フェノール、ヘキサクロロフェン、有機水銀、有機過酸化物(過酸化ベンゾイル)、第四級アンモニウム化合物などが含まれる。
【0031】
抗生物質剤には、ペニシリン、セファロスポリン、シクロスポリン、バンコマイシン、バシトラシン、シクロセリン、ポリミキシン、コリスチン、ナイスタチン、アンホテリシンB、ムピロシム、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルミシン、スペクチノマイシン、クリンダマイシン、リファンピシン、ナリジキシン酸、フルシトシン、グリゼオフルビンなどが含まれる。スルファニルアミド抗菌剤には、スルファニルアミド、スルファセタミド、スルファダイアジン、スルフィソキサゾール、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、ピリメタミンなどが含まれる。
【0032】
抗菌剤には、ビダラビン、アシクロバー、リバビリン、アマンタジンヒドロクロリド、リマンタジン、イドキシウリジン、インターフェロンなどが含まれる。
【0033】
抗真菌剤には、ミコナゾール、ケトコナゾール、テルビナフィン、トルナフテート、ウンデシル酸、及び他のモルホリン、イミダゾール及びこれらの誘導体を含むヘテロ環式化合物が含まれる。
【0034】
角質溶解剤には、過酸化ベンゾイル、アルファヒドロキシ酸、果実酸、グリコール酸、サリチル酸、アゼライン酸、トリクロロ酢酸、乳酸及びピロクトンが含まれる。
【0035】
抗片頭痛剤には、トリプタン例えばスマトリプタンが含まれる。
【0036】
抗脱毛剤(増毛剤)には、ナイアシン、ニコチン酸のエステル及び塩、並びにミノキシジルが含まれる。
【0037】
座瘡の治療に特に有用な化合物には、アゼライン酸(抗座瘡性を有する脂肪族二酸)、アントラリン(抗真菌性及び抗乾癬性を有するジフェノール化合物)、及びマソプロコール(抗酸化性を有し、光線性角化症の治療にも有用であるノルジヒドログアヤク脂酸、テトラフェノール化合物)及びこれらの類似体(例えば、アウストラロバイリグナン6、オキソアウストロバイリグナン6,4’−O−メチル−7,7’−ジオキソアウストロバイリグナン6、マセリグナン、デメチルジヒドログアヤク脂酸、3,3’,4−トリメトキシ−4’−メトキシリグナン、サウルレニン、4−ヒドロキシ−3,3’,4−トリメトキシリグナン及びイソアンウリグナン)が含まれる。
【0038】
増殖性疾患(例えば、癌、乾癬)に対して特に効果的である活性剤には、アリトレチノイン(9−シス−レチノイン酸)の残基;アミフォスチン、ベキサロテン(4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8,−ペンタメチル−2−ナフタレニル)エテニル]安息香酸);ブレオマイシン;カペシタビン(5’−デオキシ−5−フルオロ−シチジン);クロラムブシル;ブレオマイシン;BCNU;カラドリビン;シタラビン;ダウノルビシン;ドセタキセル;ドキソルビシン;エピルビシン;エストラムスチン;エトポシド;エキセメスタン(6−メチレンアンドロスタ−1,4−ジエン−3,17−ジオン);フルダラビン;5−フルオロウラシル;ゲムシタビン;ヒドロキシウレア;イダルビシン;イリノテカン;メルファラン;メトトレキセート;ミトキサントロン;パクリタキセル;ペントスタチン;ストレプトゾシン;テモゾラミド;テニポシド;トムデクス;トポテカン;バルルビシン(N−トリフルオロアセチルアドリアマイシン−14−バレレート);及びビノレルビンが含まれる。本発明における一種以上の成分として適した抗代謝活性剤には、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(FUDR)、Ara−C(シタラビン)、ゲムシタビン、メルカプトプリン、並びに他の改変ヌクレオチド及びヌクレオシドが含まれる。抗代謝製化合物は、細胞内の正常な代謝過程を、例えば、それらに責任を有する酵素と結合することにより邪魔をし、一般に、増殖性疾患を治療するのに有用である。
【0039】
抗湿疹剤には、ピメクロリムス及びタクロリムスが含まれる。
【0040】
本発明での使用に適した抗乾癬活性剤には、レチノイド(レチノイン酸の異性体及び誘導体、並びに他のレチノイン酸レセプターに結合する化合物例えば、レチノイン酸、アシトレチン、13−シス−レチノイン酸(イソトレチノイン)、9−シス−レチノイン酸、トコフェリル−レチノエート(レチノイン酸(トランス及びシス)のトコフェロールエステル)、エトレチネート、モトレチニド、1−(13−シス−レチノイルオキシ)−2−プロパン、1−(13−シス−レチノイルオキシ)−3−デカノイルオキシ−2−プロパン、1,3−ビス−(13−シス−レチノイルオキシ)−2−プロパン、2−(13−シス−レチノイルオキシ)−アセトフェノン、13−シス−レチノイルオキシメチル−2,2−ジメチルプロパノエート、2−(13−シス−レチノイルオキシ)−n−メチル−アセタミド、1−(13−シス−レチノイルオキシ)−3−ヒドロキシ−2−プロパノン、1−(13−シス−レチノイルオキシ)−2,3−ジオレオイルプロパノン、スクシンイミジル 13−シス−レチノエート、及びタザロテンを含む)、サリチル酸(モノアンモニウム塩)、アントラリン、6−アザウリジン、ビタミンD誘導体(ロカルトロール(Roche Laboratories)、EB1089(24α,26α,27α−トリホモ−22,24−ジエン−1α,25−(OH)2−D3)、KH1060(20−エピ−22−オキサ−24α,26α,27α−トリホモ−1α,25−(OH)2−D3)、MC1288、GS1558、CB1093、1,25−(OH)2−16−エン−D3、1,25−(OH)2−16−エン−23−イン−D3、及び25−(OH)2−16−エン−23−イン−D3、22−オキサカルシトリオール;1α−(OH)D5(イリノイ大学)、ZK161422及びZK157202(Institute of Medical Chemistry-Schering AG)、アルファカルシドール、カルシフェジオール、カルシポトリオール(カルシポトリエン)、マクサカルシトリオール、コレカルシフェロール、ドキセルカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、ファレカルシトリオール、レクサカルシトール、マクサカルシトール、パリカルシトール、セカルシフェロール、セオカルシトール、タカルシトール、カルシポトリエン、カルシトリオール、及び他の米国特許第5,994,332号に開示された類似体を含むが、これらに限られない)、ピロガロール、及びタカルシトールが含まれる。
【0041】
皮膚疾患用の更なる医薬活性剤には、抗ヒスタミン剤、カプサイシン、レシキモド及びイミキモドが含まれる。更なる医薬活性剤には、抗原例えばタンパク質(糖タンパク質及び脂質タンパク質を含む)例えば破傷風毒素及びジフテリア毒素、炭水化物、ウイルス粒子及び全弱毒化又は不活化したウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)が含まれる。
【0042】
用語「治療用活性剤」は、ここで用いる場合、身体内の過程を変えるか又は関心ある組織(例えば、皮膚)の美的外観を変えるが、技術的に薬物(医薬活性剤)とは考えられない、不溶性又は僅かに水溶性の物質を指す。治療活性剤の例には、ビタミン及びビタミン誘導体、皮膚着色剤及び漂白剤、皮膚保護剤、保湿剤、脱毛剤、石鹸及び他の洗浄剤、軟化剤、保湿剤及び剥皮剤が含まれるが、これらに限られない。
【0043】
ビタミン及びその誘導体には、ビタミンA、アスコルビン酸(ビタミンC)、アルファ−トコフェロール(ビタミンE)、7−デヒドロコレステロール(ビタミンD)、ビタミンK、アルファ−リポ酸、脂溶性抗酸化剤などが含まれる。
【0044】
本発明における活性剤として適した典型的な皮膚保護剤には、アラントイン及びエスクリンが含まれる。
【0045】
脱色剤には、ハイドロキノン及びコウジ酸が含まれる。
【0046】
他の治療活性剤には、シーバクトン油及び芳香油例えばオレンジ油が含まれる。
【0047】
用語「色素産生性」は、ここで用いる場合、水不溶性又は僅かに水溶性の日焼け止め剤を指す。日焼け止め剤の例は、オクチルメトキシシンナメート及び関連エステル、オクチルサリチレート及びエステル、パラアミノ安息香酸及びエステル、ベンゾフェノン例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジルジフェニルアクリレート、アントラニレート、トリアジン、ベンジリデンカンファー及び誘導体である。本発明の活性剤として適した更なる典型的な日焼け止め剤には、アクチノキノール、p−及び4−ジメチルアミノ安息香酸が含まれる。
【0048】
ある具体例において、この組成物は、一種より多くの活性剤を含み(即ち、少なくとも一種の追加の活性剤を含む)、それは、医薬的に活性、色素産生性又は治療上活性であってよい。例えば、組成物は、レチノイドを医薬的活性剤として含み且つビタミンEを治療的活性剤として含む。
【0049】
この発明は、主として、レチノイドに関して論ずるであろう。しかしながら、送達システムで用いることのできる任意の活性剤を、本発明の組成物及び方法において用いることができるということは理解されるべきである。好ましくは、この活性剤は、水不溶性物質である。典型的な剤には、レチノイド、例えばレチノイン酸及びレチノール(ビタミンA)、カルシポトリエン、及び他の皮膚の刺激を引き起こすことが公知の活性剤が含まれる。
【0050】
用語「局所的」は、ここで用いる場合、当分野で公知であり且つ本発明の組成物の上皮表面(皮膚、鼻粘膜、及び上気道系粘膜、消化器粘膜及び胃腸の粘膜を含む)への適用を含む。
【0051】
用語「カチオン性ポリマー」は、ここで用いる場合、送達される活性剤の放出を助成する送達システムの成分を包含する。好適なカチオン性ポリマーは、少なくとも約100,000ダルトンの、一層好ましくは少なくとも約250,000ダルトンの、最も好ましくは少なくとも約300,000ダルトンの分子量を有する高粘度のキトサンである。一具体例において、この発明での利用に適したカチオン性ポリマーは、100〜2000amu当たり一の正電荷(又は、皮膚に適用した際に正に帯電しうる部分)を有する。かかるポリマーの例には、アルブミン、ゼラチン、澱粉、DEAE−セルロース、カチオン性グアール及びDEAE−デキストランが含まれる。DEAE−デキストラン及びカチオン性グアールは、第三アミノ基を有する。カチオン性グアールのINCI名は、グアールヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドであり、DEAE−デキストランは、ジエチルアミノエチル−デキストランである。かかるカチオン性ポリマーの更なる例は、一つ以上の疎水性領域を有するものであり、米国特許第6,264,937号、6,299,868号及び6,726,906号(これらの内容を、参考として、本明細書中に援用する)に開示されている。
【0052】
適当なカチオン性ポリマー例えばキトサン及び引用した特許に開示されたポリマーは、しばしば、脂質と結合する高い能力を有する。例えば、経口脂肪摂取イン・ビボアッセイで試験した場合、キトサンの脂質に対する許容量は、他の生物分解性多糖類例えばメチルセルロース(脂肪許容量128)と比較して、5380相対単位である(Watanabe等、1992)。
【0053】
カチオン性ポリマーは、好ましくは、例えばグルタルアルデヒド又は二価の架橋剤と共有結合性架橋されない。加えて、この発明で用いるカチオン性ポリマーは、好ましくは、生物分解性である。
【0054】
キトサンは、カビ、甲殻類の外骨格及び藻類から抽出される天然物質のキチンの脱アセチル化により誘導される天然の、生物分解性の、カチオン性多糖であって、傷の治癒の促進剤として以前に記載されている(Balassa, 米国特許第3,632,754号(1972);Balassa, 米国特許第3,911,116号(1975))。キトサンは、高いパーセンテージのグルコサミン(典型的には、70〜99%)及びN−アセチルグルコサミン(典型的には、1〜30%)(分子量10,000〜約1,000,000ダルトンの直鎖状糖鎖を形成する)を有するポリマーのファミリーを包含する。典型的には、この発明で用いるキトサンは、70〜100%グルコサミン(例えば、70〜90%グルコサミン又は80〜100%グルコサミン、一層典型的には85〜95%グルコサミン)のものである。キトサンは、そのカチオン性グルコサミン基によって、アニオン性タンパク質例えば皮膚のケラチンと相互作用して、幾らかの生体接着性を与える。加えて、脱アセチル化されてない場合には、キトサンのアセタミド基は、疎水性相互作用の標的であり、ある程度、その生体接着性に寄与する(Muzzarelli等、(Chitin and Chitinases Jolles P 及び Muzzarelli RAA (編)、Birkhauser Verlag Publ., スイス国、Basel, p.251-264 (1999)中))。
【0055】
用語「高粘度」キトサンは、ブルックフィールドLVT粘度計を用いて、25℃で、適当なスピンドルを用いて30rpmで測定した場合に、1%溶液(1%酢酸中)について少なくとも約100cpsの見かけ粘度を有するキトサン生体高分子を指す。このキトサン溶液の粘度は、当業者によって、例えばLi等、Rheological Properties of aqueous suspensions of chitin crystallites. J Colloid Interface Sc 183:365-373, 1996に記載された方法によって容易に測定することができる。加えて、粘度は、Philipofの方程式:V=(1+KC)8(式中、Vは、cpsでの粘度であり、Kは、定数であり、Cは、画分として表した濃度である)(No.198−1029−997GW、Dow Chemical Companyより)によって評価することができる。ある具体例において、この高粘度キトサンは、好ましくは、少なくとも100cpsより大きい、一層好ましくは少なくとも500cpsより大きい粘度を有する。一般に、活性剤のこの発明の組成物からの放出は、カチオン性ポリマーの粘度を増す(濃度を増すか分子量を増すことによって)ことにより、おそくなる。
【0056】
これらのキトサンの所望の粘度は、その濃度(即ち、キトサンのパーセンテージ及び/又は分子量)を下記の表に示したように操作することにより達成することができる。表中のLMVは、50kDa未満の分子量を有するキトサンであり、MMWは、50〜250kDaの分子量を有するキトサンであり、HMWは、250kDaより大きい分子量を有するキトサンである:
【0057】
【表1】

【0058】
好適な具体例において、このキトサンは、少なくとも300,000ダルトン(例えば、300〜1,000kDa、500〜1,000kDa)の分子量を有する。好適具体例において、このキトサンは、少なくとも1重量%の、典型的には少なくとも約2重量%の濃度を有する。特に好適な具体例において、この生体高分子は、少なくとも約300,000ダルトン(例えば、300〜1,000kDa、500〜1,000kDa)の分子量及び少なくとも2重量%の濃度を有する高粘度キトサンを包含する。
【0059】
用語「分散剤」は、ここで用いる場合、水不溶性又は僅かに水溶性の活性剤を懸濁させるが、キトサン又は該活性物質と化学反応しない任意の適当な剤を包含する。好ましくは、この活性剤は、分散剤と適合性であるが、該分散剤に自由に溶解性ではなく、好ましくは、粒子の少なくとも70%、例えば少なくとも80%又は90%は溶解しない。例えば、この活性剤は、典型的には、該分散剤に、微粒子又はナノ粒子の製造に用いられる条件下で、約1〜10%可溶性である。適当な分散剤は、典型的には、活性剤が自由に可溶性である溶媒より0.5〜5単位低い極性指数値を有する(水が、9の極性指数を有する場合)。特に、レチノイン酸及び他の類似の溶解特性を有する活性剤のための分散剤の例には、大豆油、ジブチルヘキサンジオエート、ココグリセリド、2〜30炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族エステル(例えば、ココカプリレート/カプレート)、ココヤシ油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、2〜30炭素原子を有するアルキル、アリール若しくは環式エーテル、4〜30炭素原子を有する脂環式若しくは芳香族炭化水素、1〜30炭素原子を有するアルキル若しくはアリールハリドが含まれる。一般に、活性剤粒子の一層大きい割合(例えば、50%、60%、70%、80%より大きい又は90%さえ超える割合)が、水溶液中よりも、適当な分散剤中に分配する。
【0060】
高圧ホモジェナイゼーション後に、これらのカチオン性生体高分子は、アニオン性ポリマー例えばポリアクリレート(カルボマー)ゲル又は他の型のアニオン性ゲルと錯体を形成して、該生体高分子にコートされた薬物粒子を更に安定化することができる。しかしながら、このアニオン性ポリマー含有量は、好ましくは、中性又は負の電荷を有するナノ粒子を生じず、ナノ粒子中に負の電荷より一層多数の正の電荷が存在する。典型的には、正電荷の負電荷に対する比は、1:1〜5:1(例えば、1.5:1〜4:1又は1.5:1〜2.5:1)である。
【0061】
或は、カチオン性ポリマーのアニオン性ポリマーに対する所望の比は、ナノ粒子組成物の粘度を測定することにより決定することができる。典型的には、このナノ粒子組成物の粘度は、アニオン性ポリマーの添加後に、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍大きくなる。
【0062】
用語「アニオン性ポリマー」は、キトサンなどのカチオン性ポリマーと錯体を形成することのできる負に帯電したポリマーを指す。アニオン性ポリマーは、一般に、カルボキシレート、ホスホネート、ホスフェート、及びスルホネートなどの基を、多糖、ポリアクリレート又はポリエチレンなどの主鎖又は主鎖の部分に直接又は間接に結合して有している。アニオン性ポリマーの例には、ポリ(アクリル酸)及び誘導体、キサンタンガム、アルギネート(例えば、アルギン酸ナトリウム)、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、カラギーナン、ポリビニルアルコール、硫酸化グリコサミノグリカン例えばコンドロイチン硫酸及びデルマタン硫酸が含まれる。アニオン性ポリマーの分子量は、当業者によって選択されうるが、一般には、50,000〜1,000,000ダルトンである。典型的には、アニオン性ポリマーの1%溶液の粘度は、50,000〜100,000cpsである。この発明で用いられるアニオン性ポリマーは、カチオン性ポリマーとの間で、非共有結合性架橋を造ることができる。
【0063】
この発明の微粒子を製造するために、一具体例は、第一工程において、カチオン性ポリマー(例えば、キトサン)の粘性水溶液と水不溶性の活性剤又は水不溶性活性剤を含む油成分とのマトリクスを、激しい攪拌により(例えば、ホモジェナイザー例えばY型ホモジェナイザーにより生成されるような、100ミクロン以下の平均直径の粒子を生成するのに十分な剪断作用を生じる攪拌)形成することを含む。キトサンに関して、その分子量は、好ましくは、100,000ダルトンより大きく、濃度は、2重量%より大きい。このマトリクスを、次いで、アニオン性ポリマー溶液を、激しく攪拌しながら、例えば6より大きいpH(例えば、pH6〜8)で加えることにより沈殿させ、これは、微粒子の生成を生じる。沈殿した粒子の粘度は、典型的には、少なくとも50,000cps(例えば、少なくとも100,000cps)である。これらの粒子のサイズは、高圧ホモジェナイザーを用いて小さくすることができる。
【0064】
他の具体例において、粒子は、最大20,000psiの圧力まで達する高圧ホモジェナイザー例えばミクロフルイダイザー(Model M−110Y;Microfludics Corporation, マサチューセッツ、Newton在)を利用して製造される。高圧(例えば、3000psi以上、例えば少なくとも5000psi又は少なくとも10000pusiの圧力)で懸濁液を圧迫して微細なチャンネル、メッシュ又はふるいを通過させ、それにより、粒子サイズを小さくさせることのできる剪断力を生成する他のホモジェナイザー例えばフレンチプレスも又、適している。高圧ホモジェナイザーを用いれば、水性カチオン性ポリマー溶液中の脂質の混合物中に懸濁させた固体の活性成分のエマルジョンを造ることが可能である。このホモジェナイザーを2回以上通過させることは、所望の粒子サイズを達成するために必要でありうる。このポリマー/脂質エマルジョンは、微視的薬物粒子の周囲に単層を形成し、それにより、安定な懸濁液を形成する。アニオン性ポリマーをこの懸濁液に加えて、マトリクスを沈殿させる。アニオン性ポリマーの添加後の粒子サイズの低下は、沈殿したマトリクスを、ホモジェナイザー(例えば、Z型ホモジェナイザー)を通過させることにより達成することができる。
【0065】
微粒子又はナノ粒子の製法の全部又は部分を、有利には、特にアニオン性ポリマーによる沈殿の前の工程において、不活性大気中で行なう。典型的には、不活性大気は、窒素、ヘリウム、アルゴン及び他の不活性気体の一種以上よりなる。水素も又、活性成分が酸化に敏感であるが還元には敏感でない場合には、存在してよい。例えば、ミクロフルイダイザーは、窒素大気下に維持することができる。
【0066】
上記の不活性大気と別々でも又は組合せても、微粒子又はナノ粒子の製法の全部又は部分は、適宜、光の非存在下で行われる。もしすべての光を排除できないならば、一層長波長の光(例えば、赤い光)が、化合物に対する光のダメージを最少にするため好適である。光の排除は、感光性化合物特にレチノイドに対して望ましいことである。
【0067】
ある具体例においては、この組成物は、防腐剤を含む。典型的には、この防腐剤は、抗酸化剤である。典型的な抗酸化剤には、BHT、BHA、ビタミンE及び他のトコフェロール並びにビタミンC(アスコルビン酸)が含まれる。特定の具体例においては、抗酸化剤の活性剤(例えば、レチノイド例えばレチノイン酸)に対する重量比は、約1:3〜3:1例えば約1:2〜2:1(例えば、1.5:1〜1:1.5)である。
【0068】
アニオン性ポリマーにより安定化された微粒子及び/又はナノ粒子の形成後に、それらの微粒子及び/又はナノ粒子を含む組成物を、典型的には、適当なビヒクルに加えて、医薬配合物(例えば、ゲル、クリーム又はローション)を調製する。好ましくは、このビヒクルは、これらの微粒子又はナノ粒子を破壊せずに、安定化させる。ビヒクルの好適な成分の例は、高分子粘度増強剤例えばヒドロキシエチルセルロース及び/又はキレート剤例えばEDTAである。ビヒクルは又、有利には、防腐剤例えば抗酸化剤及び/又は抗菌剤をも含む。加えて、このビヒクルは、好ましくは、それを投与する組織を刺激せず、或はダメージを与えない。例えば、局所用配合物用ビヒクルは、典型的には、エタノール、イソプロパノール、乳化剤及び界面活性剤を含まない。
【0069】
この発明の医薬配合物は、典型的には、少なくとも100,000(例えば、少なくとも200,000)cpsの粘度を有する。例えば、医薬配合物は、100,000〜500,000cps(例えば、200,000〜300,000cps)の粘度を有することができる。
【0070】
医薬配合物は、不活性大気下で、調製し及び/又はパッケージ化することができる。
【0071】
この発明の医薬配合物は、様々な経路により、例えば、局所的に、経皮的に又は経粘膜的に投与(例えば、鼻内投与、頬投与)することができる。典型的には、この発明の医薬配合物は、皮膚又は粘膜などの表面に投与される。
【0072】
用いる水不溶性活性剤の量は、適用部位で所望の結果を達成するのに製薬的及び治療的に十分な量を送達するのに必要な量となろう。実際には、これは、特定の医薬、病気の重さ及び他の因子に依って変化する。一般に、これらの活性剤の最終的配合中の濃度は、該最終配合重量に対して0.0001〜20パーセント以上変化しうる。レチノイドに関して、好適投与量は、レチノールは、0.01〜1%であり、全トランスレチノイン酸は、0.01〜0.1%である。典型的には、水不溶性活性剤の量は、最終配合物中の微粒子又はナノ粒子組成物の10重量%以下に相当する。
【0073】
この発明の組成物で治療することのできる病気及び状態には、座瘡、乾癬、脂漏性皮膚炎、皮膚の加齢及び光加齢(光ダメージ)、しわ、光線性角化症、メラノーマ、毛の成長異常(例えば、禿、多毛症)、いぼ、乾燥肌及び/又は鱗状肌並びに酒さが含まれる。
【0074】
組成物により引き起こされる相対的刺激は、治療インデックスに類似した「刺激インデックス」を測定することにより評価することができる。この刺激インデックスは、刺激の効力に対する比である。刺激インデックスの測定方法は、当分野で公知であり、以下に、実施例7に記載してある(即ち、ニュージーランド白ウサギにおけるDraize試験)。
【0075】
刺激は、化合物の濃度に対して対数尺でプロットした5ポイントスケールの紅斑として測定することができる。該5ポイントスケールは、下記の通りである:
【0076】
【表2】

【0077】
効果(例えば、座瘡に対する効果)は、濃度に対する座瘡病変の大きさの減少を測定(対数プロット)することにより評価される。
【0078】
従来技術の製剤は、典型的には、約1〜4の刺激インデックスを有している。この発明のナノ粒子を用いた製剤は、一般に、10より大きい刺激インデックス(例えば、10〜20又は10〜15)を有する。
【0079】
刺激は又、パッチ試験アッセイ(Cattaneo及びDemierre, Drug Del. Technol. 1:45(2001)及びQueille-Roussel等、Clin Ther. 23(2):205-12(2003)参照。これらの内容を、参考として本明細書中に援用する)によって測定することもできる。このパッチ試験アッセイを利用して、累積刺激インデックスを測定することができる(白色ワセリンが負の対照として役立ち、慣用のトレチノイン配合物は、約2.0〜2.5のインデックスを有する)。この発明の組成物は、典型的には、1.5未満のインデックスを有し、有利には、このインデックスは、1.0未満であり、0.5又は0.25未満でさえある。刺激は又、Fluhr等、Br.J.Dermatol. 145:696-703(2001)(内容を参考として本明細書中に援用)に記載された方法によって評価することもできる。これらの方法には、レーザードップラー拡散イメージング(LDI)、レーザードップラー流量測定(LDF)、経上皮水分損失、視覚的評点(VS)、比色測定、メキサメーターヘモグロビンスケール(Mexa Hb)及びキャパシタンスが含まれる。LDI、LDF、Mexa Hb及びVSは、特に、レチノイン酸により引き起こされる刺激の程度の測定に有用である。
【0080】
組成物の毒性は、例えば、MTTアッセイにより測定することができる。この発明の組成物は、MTTアッセイにおいて、少なくとも90%の例えば少なくとも95%、98%又は99%の実行可能性を有している。
【0081】
粒子含有製剤は、典型的には、皮膚によって、容易に取り込まれ、それで、活性剤の吸収は増大して、ゴースティングは最少となる。一例において、0.5〜5重量%(例えば0.5〜2%又は2〜5%)の活性剤が、製剤の適用後24時間以内に皮膚に送達される。ゴースティングは、皮膚と粘着テープに残っている製剤を取り除いて、製剤の活性剤及び他の部分の量を測定することによって測定することができる。典型的には、この発明の粒子を含む製剤は、慣用の製剤と比較して、少なくとも25%の、少なくとも50%の、又は少なくとも75%少ない、皮膚上の製剤からの残留物を有する。好ましくは、この発明の粒子からの残留物は、これらの粒子を投与した1時間後に、眼によって検出されえず且つ/又は上記の方法を用いて測定されえない。
【0082】
実施例に示したように、粒子中の活性剤は、例えば、酸化及び光のダメージに対して安定化させることができる。例えば、投与のための粒子及び/又は配合物中の活性剤は、好ましくは、40℃で少なくとも2週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月又は1年間の半減期を有する。この半減期は、同じ貯蔵条件下で、粒子に含まれていない活性剤の半減期より、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%大きいものであってよい。
【0083】
この発明の粒子は、一般に、物理的に安定であり、それで、これらの粒子の分離は、これらの粒子の形成及びそれらの組成物での投与に関連した剪断力の存在下であっても、ゆっくり起きる。例えば、粒子は、6ヵ月の期間にわたって、50%未満、75%未満、80%未満又は90%未満の分離を有しうる。
【0084】
この発明を、今から、下記の非制限的実施例を参照して、一層詳細に説明する:
【実施例】
【0085】
実施例1.
レチノイン酸粒子の製造
固体粒子の形態の水不溶性全トランスレチノイン酸(ATRA)(2重量%)を、高粘度のキトサン溶液[2.1重量% グリコール酸及び0.03重量% 水酸化ナトリウム中のProtasan UP B 80/500(FMC Biopolymers Inc.; 755cpsの見かけ粘度)の3重量%溶液]に、大豆油(17重量%)の存在下で、激しい混練により混合させて、マトリクスを形成した。このマトリクスの粘度は、最初、25℃で、適当なスピンドルを1.5rpmで用いて、ブルックフィールドLVT粘度計で測定して、215,000cpsであった。このエマルジョンを、次いで、ポリ(アクリル酸)溶液(0.5重量%)と、pH6.3で混合して、均質化して、10ミクロンより小さいサイズのレチノイン酸微粒子を含むゲルを作成した。
【0086】
実施例2
レチノイン酸粒子の安定性
最終的ゲル配合物中のレチノイン酸の濃度を、HPLCにより測定した。レチノイン酸を含む局所用製剤50マイクロリットルを、5ミリリットルのアセトニトリルの存在下で20分間震盪させてから、5分間、4000rpmで遠心分離した。次いで、その上清のアリコート20マイクロリットルを、Zorbax SB−C18 Guardカートリッジ(4.6×12.5mm)を備えたZorbax SB−C18カラム(4.6mm×75mm、3.5ミクロン)に注入し、5%酢酸及び0.02%トリエタノールアミンを含む70%アセトニトリル水溶液を移動相(1ml/分)として用いて操作して、340nmで検出した。較正は、50〜5,000ng/mlで直線的であった。
【0087】
このレチノイン酸の安定性を、3ヵ月にわたって測定した。このレチノイン酸は、このキトサン微粒子中で、高度に安定であった。初期レチノイン酸濃度を、測定したところ、タイム0で0.052%であり、3ヵ月の時点で0.05%であった。
【0088】
実施例3
レチノイン酸粒子を含むゲル配合物を含む前臨床研究
3ヵ月の前臨床研究を、上記のように、Draize試験を利用してレチノイン酸ゲルの適用後の皮膚反応の重さを測定するためにマウスとウサギの両方において着手した。これらの動物(40匹のニュージーランド白ウサギと140匹のCD−1マウス)を、表1、2及び3に示したように、5つの群に分けた。
【0089】
試験化合物を、実施例1で説明したように、0.05重量%の濃度の微粒子形態のレチノイン酸を含むように配合して、ヒト投与量の100倍及び500倍で適用した(第3及び第4群)。ビヒクルゲル及びレチノイン酸を含まないキトサン微粒子を含むビヒクルゲル(第1及び第2群)は、負の対照としての機能を果たし、標準的エマルジョン配合中の、ヒト投与量の500倍の市販の、0.05%クリーム(Renova0.05%レチノイン酸)(第5群)は、陽性対照としての機能を果たした。表1に示したように、ウサギの研究において、この陽性対照は、これらの動物にとって刺激が強すぎるということが間もなく明らかとなり、これらの陽性対照群の毒性を処理するために3つのステップが採られた:(1)陽性対照用投与量を、適用の10日目以降、ヒト投与量の500倍から100倍にし;(2)陽性対照用の第二の適用部位が、第一の部位が治癒するのを待つ間、必要とされ(約2週間)そして(3)最大の不快を示した動物には、ブプレノルフィンの筋肉注射をした(8匹の動物中2匹)。表1に示したように、この微粒子送達システムは、単独で、紅斑又は浮腫を引き起こさなかったし、治療第3及び4群は、第5群と比較して、統計的に有意に低い刺激及び浮腫レベルを示した。
【0090】
【表3】

【0091】
第二の適用部位を、一層低い投与量(ヒト投与量の100倍)で、更に14日間にわたって、Renova(登録商標)で処理した後、紅斑及び浮腫のレベルは、ヒト投与量の100倍及び500倍の試験化合物を有意に超えていた(表2)。
【0092】
【表4】

*第二の部位に10日目から適用開始
【0093】
マウスでの研究において、治療の10日後に、ヒト投与量の100倍を受けた陽性対照群(第5群−Renova(登録商標))は、ヒト投与量の500倍の試験化合物で治療された第4群より有意に多い紅斑を有した(表3):
【0094】
【表5】

【0095】
これらの前臨床結果は、ウサギ及びマウスでの研究の両方において、この試験化合物が、市販のレチノイン酸製剤(Renova(登録商標)0.05%)よりも有意に刺激が少ないことを示している。これらの結果は、座瘡、光傷害などの皮膚病及びメラノーマの防止のためのレチノイン酸治療を受けている患者のコンプライアンスを増大させる潜在能力を強く示唆している。
【0096】
実施例4
アルファ−リポ酸粒子の製造。
僅かに水溶性の物質アルファリポ酸(1.5重量%)を、高粘度キトサン水溶液(8.3重量%、40,000cps)及び大豆油(0.8重量%)と激しい攪拌下で混合した。次いで、このエマルジョンのpHを、激しい攪拌条件下で、トリエタノールアミンを用いて6.3に高めて、キトサンマトリクスを沈殿させた(この手順では、アニオン性ポリマーは用いなかった)。これらの微粒子のサイズは、5ミクロンであった。次いで、このエマルジョンを、ミクロフルイダイザー(登録商標)を5回通過させて、直径約500nmの粒子サイズを得た。このミクロフルイダイザーは、このエマルジョンを、非常に微細な細孔のフィルターを高圧(1000psiより高圧)で押し通して、粒子サイズの減少を引き起こす。
【0097】
実施例5
オクチルメトキシシンナメート日焼け止め剤粒子の製造。
僅かに水溶性の日焼け止め剤オクチルメトキシシンナメート(7.5重量%、40,000cps)を、先ず、高粘度キトサン水溶液(10重量%)と混合して、水中油(O/W)エマルジョンを形成した。次いで、このエマルジョンを、キサンタンガム水溶液(40重量%)と混合して、この日焼け止め剤/キトサン(O/W)エマルジョンの粘度を更に増大させた。別の容器内で、極微小酸化亜鉛(9重量%)を、70℃に加熱したココグリセリド(12重量%)、ラルリルグルコシド(3重量%)、ポリグリセリル−2−ジポリヒドロキシステレート(1重量%)及びセテアリル硫酸ナトリウム(1重量%)を含む油性溶液と混合した。次いで、この日焼け止め剤/キトサン(O/W)エマルジョンと極微小酸化亜鉛含有油性溶液を、高速ミキサーを用いて一緒に混合した。この日焼け止め剤の最終的なpHは、7.0であり、これは、該日焼け止め剤を含む微粒子形態のキトサンマトリクスの沈殿を引き起こした。次いで、この混合物を、40℃より低温に冷却した後に、防腐剤を加えた。
【0098】
実施例6
ナノ剤粒子の製造
キトサンヒドロゲルを、300kDaより大きい分子量を有する3%w/w キトサンを、2%w/w グリコール酸及び0.3%w/w 水酸化ナトリウムを含む水溶液に溶解させることによって製造した。6グラムのBHTを、50グラムの大豆油に溶解させて、この溶液を250グラムのヒドロゲルに攪拌せずに加えた。粉末形態の5グラムのレチノイン酸を、油層に加えて、穏やかな条件下でヒドロゲルと混合させて第一のエマルジョンを形成した。200グラムの塩溶液(0.9% NaCl)を第一のエマルジョンに加えてから、高圧ホモジェナイザーを通過させて、粒子サイズを低下させた。粒子サイズの低下は、高圧ホモジェナイザー(110Yミクロフルイダイザー)を通過させる回数の関数であり;2回通過は、所望のサイズを達成するのに十分であった(3回以上も採用できるが)。その結果生成した生成物は、懸濁液(液体中の粒子)及び/又はエマルジョン(液体中の液滴)のサブミクロンサイズのトレチノイン化合物よりなっている。粒子サイズを、20nmまでの粒子サイズを測定することのできるHoliba LA910粒子分析器を用いて測定した。これらの生体高分子/脂質は、微視的な薬物粒子の周囲に単層を形成しており、これは、それらが安定な懸濁液を形成することを可能にする。このナノ粒子組成物を、更に、標準的アニオン性ゲル中で混合して、下記するような最終的調整物を作成した。
【0099】
トレチノインゲル配合物 %
トレチノイン ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・0.05
大豆油 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.5
ブチル化ヒドロキシトルエン ・・・・・・・・・・・・0.06
キトサン(80%脱アシル化、
MW>500Da・・・・・・・・・・・・・ 0.076
グリコール酸 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05
水酸化ナトリウム ・・・・・・・・・・・・・・・・・0.0076
塩化ナトリウム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.018
エデト酸二ナトリウム ・・・・・・・・・・・・・・・0.095
カルボマー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.475
トロラミン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.57
プロピレングリコール ・・・・・・・・・・・・・・・0.56
イミダゾリジニルウレア ・・・・・・・・・・・・・・0.3
メチルパラベン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.11
プロピルパラベン ・・・・・・・・・・・・・・・・・0.03
精製水 q.s
【0100】
ゲル配合物
成分 重量%
A 脱イオン水 92.8
EDTA二ナトリウム 0.1
カルボマー 0.5
B トリエタノールアミン 0.6
C トレチノインナノ粒子 5.0
D 防腐剤 1.0
全量 100.0%
【0101】
A部の成分の重量を測って、ミキサーを備えた適当な容器に入れた。この混合物を、室温で、均一になるまで混合した。B部を加えて、ゲルを中和した。C部成分を、別々に、激しい攪拌条件下で、均一な混合物が形成されるまで加えた。D部を、最終調製物に加えた。
【0102】
図1に示したように、3% 高分子量キトサン(HMW)に捕捉されたレチノイン酸は、40℃で高度に安定であった。これは、レチノイドの歴史的不都合である光化学的不安定性を改善するものである。光の影響下で、特に高温において、この物質は、急速に分解される。様々な方法で、この不十分な安定性の問題を解決する試みが為されてきた。例えば、次のようなものが含まれる:この物質の不活性な条件下での貯蔵、抗酸化剤例えばビタミンE又はBHTの添加、及び光を通さないパックの利用。しかしながら、レチノイドのマトリクス中への捕捉のみが何らかの実際的価値を有しうることが判明したということが見出されている。種々のマトリクス物質の比較は、キトサンマトリクスが、明らかに他の物質より優れていることを示した。キトサンベースのナノ粒子をレチノイドの送達システムとして採用した場合、スキンケア用調製物も又、市販のレチノイド送達システムを含む製品より有意に大きい活性を示す。
【0103】
最終的活性剤含有ゲルも又、それらのレチノイン酸を保持する容量について、界面活性剤(0.5% Volpo)を含むリン酸緩衝液との平衡化後に試験した。全トランス−レチノイン酸(ATRA)の放出を、HPLC(HP1090)によりモニターして、キトサン(90%脱アセチル化、360,000ダルトン)では533ng/mgであり、カチオン性グアールでは426ng/mgであり、DEAE−デキストランでは183ng/mgであることがそれぞれ見出された(アラビアゴムの19ng/mgと比較して)。
【0104】
局所適用されたレチノイドの吸収及び皮膚内のレチノイドの分布に対するビヒクルの役割を、Lehman PA, Slattery JT及びFranz TJ. Percutaneous Absorption of Retinoids: Influence of Vehicle, Light Exposure, and Dose. J Invenst Dermatol, 91:56-61, 1988に記載されたFranz 拡散セルを利用して調べた。この装置を用いて、皮膚を、ばねクランプによって、レセプターチャンバーとチムニートップの間に固定した。これらのセルは、上皮の1.0cm2部分を周囲の温度、光、熱及び湿度に露出させつつ、真皮は、下部チャンバー周囲のジャケット内を循環する水によって37℃に維持された5mlのレセプター溶液につかっている。このレセプター溶液は、0.5%Volpo(非イオン性界面活性剤)を含む等張のpH7.3〜7.4のリン酸緩衝塩溶液(PBS)であった。Volpoは、活性成分のレセプター溶液における溶解性を確実にするために用いた。このレセプター溶液は、連続的に、モーター上の磁石によって攪拌された。100マイクロリットルの投与量溶液を、使い捨てピペットチップを使用する較正陽性排水ピペッターを用いて適用した。このレセプター溶液を、24時間の研究の最後に、HPLCによりアッセイした。
【0105】
皮膚表面は、残留薬物を除去するためにその適用の24時間後に、常にアセトンで洗浄された。24時間の研究の終りに、その皮膚をチャンバーから取り出して50ml ポリプロピレン製ねじキャップ付き遠心チューブに入れた(該チューブは、光を排除するためにアルミフォイルで包んである)。5mlのアセトニトリルを加えて、30分間さかさまにすることにより混合し、これらのバイアルを5分間4000rpmで遠心分離した。その有機層を、HPLCによりアッセイした。HPLCは、Hewlett Packard HP1090システムで行なった。次いで、その上清の20μlのアリコートを、Zorbax SB−C18 Guardカートリッジ(4.6×12.5mm)を備えたZorbax SB−C18カラム(4.6×75m、3.5μm)に注入して、5%氷酢酸及び0.02%トリエチルアミンを含む70%アセトニトリル水溶液を移動相(1ml/分)として用いて操作して、350nmで検出した。較正は、5〜1000ng/mlの試料について直線的であった。
【0106】
最終結果において、レチノイン酸をエタノール及びクレモフォアに溶解させて含む慣用の配合をナノ粒子配合と比較した場合、皮膚層内のレチノイン酸の量は、0.05% レチノイン酸及び0.5% レチノイン酸添加のレベルにおいて、これらの配合物間で有意に異なっていない(P=0.05)。加えて、Rhinoマウスモデルを用いた効力試験(Kligman AM, The effect on rhino mouse skin of agents which influence keratinization and exfoliation. J Invest Dermatol 1979, 73:354-358)は、ナノ粒子調製物は、慣用の配合と類似の効果を0.05%レチノイン酸濃度レベルで有することを示している。これらの結果は、ナノ粒子は、以前は、角質層を横切るとは考えられていなかったの故に、予想外である。しかしながら、皮膚透過及び効力の研究の両者は、レチノイン酸が、この様式で送達された場合、ミクロ粒子形態及びナノ粒子形態において、バイオアベイラブルであることを示している。
【0107】
レチノイン酸をエタノール及びクレモフォアに溶解させて含む慣用の配合をナノ粒子を用いる配合と比較した場合、以前に記載されたFranzセルアッセイにより得られた皮膚を透過する量は、0.05%レベルで有意に異ならない。Rhinoマウスモデルを用いた効力試験(Kligman AM, The effect on rhino mouse skin of agents which influence keratinization and exfoliation. J Invest Dermatol 1979, 73:354-358)は、ナノ粒子調製物が慣用の配合と類似の効果を有することを示している。
【0108】
加えて、レチノール(又は、レチノイン酸)を含むキトサンナノ粒子は、マイクロカプセルの粒子サイズが小さい場合、皮膚との一層高度の融合を与えることが示されている。かかるナノ粒子を形成するためのかなりのサイズ減少は、典型的には、上記のミクロフルイダイザー又は高圧ホモジェナイザーを用いる押出し成形によって得られる。
【0109】
実施例7
トレチノイン配合の刺激に関する比較
活性化合物を運ぶのに用いられるこのビヒクルは、刺激に対して絶大な効果を有している。エタノールは、3%のLD50及び、一般に、5〜10%(LD50)より大きい値で見出される刺激を有する。非イオン性界面活性剤は、1%より小さいLD50を有する。慣用の配合は、しばしば、これらのLD50値を超える界面活性剤濃度を有する。それ故、慣用のトレチノイン配合例えば界面活性剤と可溶化剤を含むトレチノイン皮膚軟化剤クリームは、かなりの皮膚刺激を生じるであろうことを予想することは妥当なことである。他方、この方法により得られたトレチノインのナノ粒子は、下記の実施例に示したように有意に刺激が低下している。しかしながら、従来技術の組成物は、これらの剤を可溶化のために必要とし、それらの使用は不可避であった。
【0110】
粒子サイズを1ミクロン未満に減少させるためのミクロフルイダイザー装置を用いて得られたレチノイン酸ナノ粒子を含むゲル配合物に関する前臨床的研究
レチノイン酸ゲルの適用後の皮膚反応の重さを、マウスとウサギの両方で、上記のように、Draize試験を利用して測定するための3ヵ月の前臨床的研究に取りかかった。これらの動物(40匹のニュージーランド白ウサギ及び140匹のCD−1マウス)を、表1、2及び3に示したように、5つの群に分けた。
【0111】
この試験化合物を、実施例6で説明したナノ粒子形態のレチノイン酸を0.05重量%濃度含むように配合して、ヒト投与量の100倍及び500倍で適用した(第3及び4群)。このビヒクルゲル及びレチノイン酸を含まないナノ粒子を含むビヒクルゲル(第1及び2群)は、負の対照として機能し、ヒト投与量の500倍の標準的エマルジョン配合中の市販の0.05%クリーム(第5群)は、陽性対照として機能した。ウサギでの研究において表1に示したように、陽性対照は、これらの動物に対して刺激が強すぎるということが間もなく明らかとなり、これらの陽性対照群の毒性を処理するために3つのステップが採られた:(1)陽性対照用投与量を、適用の10日目以降、ヒト投与量の500倍から100倍にし;(2)陽性対照用の第二の適用部位が、第一の部位が治癒するのを待つ間、必要とされ(約2週間)そして(3)最大の不快を示した動物には、ブプレノルフィンの筋肉注射をした(8匹の動物中2匹)。表3に示したように、この微粒子送達システムは、単独で、紅斑又は浮腫を引き起こさなかったし、治療第3及び4群は、第5群と比較して、統計的に有意に低い刺激及び浮腫レベルを示した。
【0112】
【表6】

【0113】
第二の適用部位を、一層低い投与量(ヒト投与量の100倍)で、更に14日間にわたって、このクリームで処理した後、紅斑及び浮腫のレベルは、ヒト投与量の100倍及び500倍の試験化合物を有意に超えていた(表4)。
【0114】
【表7】

*第二の部位に10日目から適用開始
【0115】
マウスでの研究において、治療の10日後に、ヒト投与量の100倍を受けた陽性対照群(第5群−慣用のクリーム)は、ヒト投与量の500倍の試験化合物で治療された第4群より有意に多い紅斑を有した(表5):
【0116】
【表8】

【0117】
これらの前臨床結果は、ウサギ及びマウスでの研究の両方において、この試験化合物が、慣用のレチノイン酸クリーム配合よりも有意に刺激が少ないことを示している。これらの結果は、座瘡、光傷害などの皮膚病及びメラノーマの防止のためのレチノイン酸治療を受けている患者のコンプライアンスを増大させる潜在能力を強く示唆している。
【0118】
実施例8
ナノ粒子の長期の安定性
実施例6で調製した0.05% トレチノインを含むナノ粒子ゲル中のトレチノインの安定性を、203日間にわたって測定した。調製後、該ゲルを、周囲条件下で、室温(25℃)で貯蔵した。
【0119】
ゲルの調製後、周期的間隔で、該ゲルのアリコートをHPLCにより分析して、残っているトレチノインの濃度を測定した。結果は、下記の通りであった:
【0120】
【表9】

【0121】
これらのデータは、200日間にわたって、トレチノインの目に見えた損失はなかったことを示している。典型的には、トレチノインの有意の画分が、この期間にわたって、酸化に失われたであろう。
【0122】
実施例9
皮膚透過性研究
皮膚透過性の研究を、皮膚外植片及び、遊離のレチノイン酸又はキトサンに捕捉されたレチノイン酸を含有するゲル中に全トランス−レチノイン酸を0.1%濃度で含む配合物を利用して行なった。装置は、並行して操作される37℃の一定温度に維持された6つのFranz拡散セル(PermeGear Inc.)よりなった。0.04μCiの3H−ATRAを含む各配合物約200mg/cm2を各皮膚試料(1cm2)の上皮側に適用した。各配合物を、三連で試験した。この皮膚の真皮面を、0.05% Volpo(Croda, Inc.)を含む緩衝塩溶液よりなるレセプター溶液で潅流した。一日おきに、500μLのレセプター溶液をサンプリングして、速度論的データを得た。200時間の実施の最後に、2×500μLの1%酢酸溶液(無水アルコール中)を含む表面洗浄液をこの皮膚表面に適用した。この皮膚試料を、一晩、4mLのSolvable(Packard Instruments)中で消化した。次いで、これらのレセプター用液(5mL)、表面洗浄液、及び消化された皮膚層の全内容物を、3H計数のために、Ultima Goldシンチレーション液(Packard Instruments)と混合した。
【0123】
遊離のレチノイン酸を含む配合物は、最初の50〜120時間で多量の薬物を皮膚を通して送達したが、キトサンに捕捉された配合物は、レチノイン酸をずっとゆっくりと一定の速度で送達した(初期遅れ後)。経皮的輸送におけるポリマー濃度の効果を調べ、2%を超えるバイオポリマー濃度で水平になることが見出された(図2)。
【0124】
皮膚透過性の研究の最後に、種々の皮膚区画内の活性剤の分布を評価したところ、バイオポリマーマトリクス配合物から経皮的に透過した薬物の量は、遊離の薬物配合を用いて得られたものより40%低いことが分かった。しかしながら、これらの皮膚層を薬物含有量について評価したところ、有意の差異は、なかった(図3)。
【0125】
これらの結果は、キトサンベースの送達システムが、全身的吸収を40%減じることができたが、皮膚(治療作用の部位)によるレチノイン酸の取込みを邪魔しなかったことを示している。これらの結果に基づいて、このキトサン捕捉されたレチノイン酸配合物は、遊離のレチノイン酸を含む組成物における減少した刺激を示すはずである。
【0126】
実施例10
ビタミンE保湿性ゲル
成分 重量%
A 脱イオン水 86.8
EDTAナトリウム 0.1
アルギン酸ナトリウム(Protanal LF10/60; FMC Biopolymer) 1.0
アロエ・バルバデンシス
(Activera(登録商標)100-200C; Active Organics) 0.5
キサンタンガム(Keltrol(登録商標)T; CP Kelco) 0.5
B トリエタノールアミン 0.1
C ビタミンE Chitosphere(商標) 10.0
D 防腐剤 1.0
総計 100.0
【0127】
A部の成分の重量を測って、ミキサーを備えた適当な容器に入れる。この混合物を、室温で、均一になるまで混合する。B部を加えて、pHを7.0に調節する。C部成分を、別々に、激しい攪拌条件下で、均一な混合物が形成されるまで加える。D部を加えて、最終調製物を形成する。
【0128】
この発明を、その好適な具体例を参照して詳細に説明したが、改変物及び変形物が、記載され及び請求されている発明の精神及び範囲内にあるということは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】レチノイン酸が、ナノ粒子に含有された場合には、40℃で安定であることを示している図である。
【図2】フランツ拡散セルを利用した皮膚外植片モデルによってレチノイン酸の透過を、遊離のレチノイン酸又はキトサンに捕捉されたレチノイン酸について、高分子量キトサン(HMW)の濃度の関数として示している図である。
【図3】200時間後のレチノイン酸の皮膚分布(ATRA)を示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性の又は僅かに水溶性の活性剤の投与のための組成物であって、該組成物は、100ミクロン以下の平均直径を有する粒子を含み、該粒子は、活性剤を含む内部コア及び、カチオン性及びアニオン性ポリマーを含むマトリクスから形成される外側コーティング含む当該組成物。
【請求項2】
刺激性の活性剤の投与のための組成物であって、該組成物は、100ミクロン以下の平均直径を有する粒子を含み、該粒子は、活性剤を含む内部コア及び、カチオン性及びアニオン性ポリマーを含むマトリクスから形成される外側コーティングを含み、活性剤単独より刺激の少ないことを特徴とする当該組成物。
【請求項3】
活性剤が、25℃の水中で、0.1mg/mL未満の溶解度を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
粒子が、10ミクロン未満の平均直径を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
粒子が、平均直径1ミクロン未満である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
粒子が、平均直径500nm未満である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
粒子が、平均直径20〜300nmである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
活性剤を、適当な分散剤に懸濁させる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
分散剤を、大豆油、鉱油、オリーブ油、アーモンド油、ココヤシ油、サフラワー油、綿実油、ジブチルヘキサンジオエート、ココグリセリド、ココカプリレート/カプレート、2〜30炭素原子を有するアルキル、アリール及び環式エーテル、4〜30炭素原子を有する脂環式及び芳香族炭化水素、1〜30炭素原子を有するアルキル又はアリールハリド、3〜30炭素原子を有するケトン並びに揮発性分散剤よりなる群から選択する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
カチオン性ポリマーが、キトサンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
キトサンが、高粘度キトサンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
キトサンが、少なくとも約100,000ダルトンの分子量を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
粒子が、(a)活性剤を含む高粘度キトサンポリマーの水溶液を適当な分散剤に分散させて含むエマルジョンを形成し、(b)エマルジョンをアニオン性ポリマーと錯体を形成させることにより沈殿させ、適宜pHを6.0より高めることによって、激しい攪拌条件下で得られる、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
粒子を得ることが、更に、エマルジョンの沈殿後に粒子サイズを減少させることを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
アニオン性ポリマーを、ポリ(アクリル酸)及びその誘導体、アルギン酸ナトリウム及びポリビニルアルコールよりなる群から選択する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項16】
活性剤が、医薬的、色素産生的又は治療的活性剤である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項17】
活性剤を、抗炎症剤、抗座瘡剤、抗しわ剤、抗瘢痕剤、抗乾癬剤、抗増殖剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗敗血症剤(例えば、抗菌剤)、局所麻酔剤、角質溶解剤、抗片頭痛剤、毛髪育成刺激剤及び増毛阻止剤よりなる群から選択する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
活性剤が、皮膚病の治療に用いられる医薬的活性剤である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項19】
医薬的活性剤が、レチノイドである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
レチノイドが、レチノイン酸である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
0.001〜5重量%のレチノイン酸含量を有することを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
活性剤が、ビタミンA、D、E及びK並びにこれらの脂溶性誘導体、アルファリポ酸、脂溶性抗酸化剤、芳香油及びシーバクトン油よりなる群から選択する治療剤である、請求項16に記載の組成物。
【請求項23】
活性剤が、色素産生剤即ち水不溶性日焼け止め剤である、請求項16に記載の組成物。
【請求項24】
色素産生剤が、オクチルメトキシシンナメートである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
実質的に界面活性剤を含まない、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項26】
0.1〜10重量%の粒子を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項27】
ゲル、クリーム又はローションの形態である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項28】
活性剤の局所投与用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項29】
活性剤の経皮的投与用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項30】
活性剤の経粘膜投与用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項31】
MTTアッセイにおいて、少なくとも90パーセントの細胞生存度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
ニュージーランド白ウサギにおいて、10より大きい刺激インデックスを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項33】
活性剤が、2.0以上の累積刺激インデックスを有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項34】
0.5以下の累積刺激インデックスを有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項35】
マトリクスが、ヒトの皮膚上に、投与の1時間後に、可視的残留物を残さない、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
皮膚の病気又は状態を治療する方法であって、請求項1に記載の組成物を、該皮膚の病気又は状態を患っている患者に投与することを含む、当該方法。
【請求項37】
皮膚の病気又は状態が、座瘡である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
皮膚の病気又は状態が、癌又は癌前駆体である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
癌又は癌前駆体が、メラノーマ又は光線性角化症である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
皮膚の病気又は状態が、乾癬、脂漏性皮膚炎、加齢、光損傷、毛の成長異常、いぼ、乾燥肌、鱗状肌又は酒さである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
組成物が、レチノイドを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
レチノイドが、レチノイン酸である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
100ミクロン未満の平均直径を有し且つ水不溶性の又は僅かに水溶性の活性剤を含む内部コア並びにカチオン性及びアニオン性ポリマーを含むマトリクスから形成される外側コーティング含む粒子を含む組成物を製造する方法であって、下記を含む当該方法:
活性剤を含むカチオン性ポリマーの水溶液を、適当な分散剤に分散させてエマルジョンを形成し、
該エマルジョンを、アニオン性ポリマーと錯体形成させ及び適宜pHを6.0より高くすることによって沈殿させ、そして
適宜、沈殿したエマルジョンのサイズを減少させる。
【請求項44】
100ミクロン未満の平均直径を有し且つ水不溶性の又は僅かに水溶性の活性剤を含む内部コア並びにカチオン性及びアニオン性ポリマーを含むマトリクスから形成される外側コーティング含む粒子を含む組成物を製造する方法であって、下記を含む当該方法:
カチオン性ポリマーの水溶液中に、脂質の混合物中に懸濁させた活性剤のエマルジョンを、高圧ホモジェナイザーを用いて造り、
該エマルジョンにアニオン性ポリマーを加える。
【請求項45】
100ミクロン未満の平均直径を有し且つ刺激性の活性剤を含む内部コア並びにカチオン性及びアニオン性ポリマーを含むマトリクスから形成される外側コーティング含む粒子を含む組成物を製造する方法であって、下記を含む当該方法:
活性剤を含むカチオン性ポリマーの水溶液を、適当な分散剤に分散させてエマルジョンを形成し、
該エマルジョンを、アニオン性ポリマーと錯体形成させ及び適宜pHを6.0より高くすることによって沈殿させ、そして
適宜、沈殿したエマルジョンのサイズを減少させる。
【請求項46】
100ミクロン未満の平均直径を有し且つ刺激性の活性剤を含む内部コア並びにカチオン性及びアニオン性ポリマーを含むマトリクスから形成される外側コーティング含む粒子を含む組成物を製造する方法であって、下記を含む当該方法:
カチオン性ポリマーの水溶液中に、脂質の混合物中に懸濁させた活性剤のエマルジョンを、高圧ホモジェナイザーを用いて造り、
該エマルジョンにアニオン性ポリマーを加える。
【請求項47】
カチオン性ポリマーが、キトサンである、請求項43〜46の何れか一つに記載の方法。
【請求項48】
キトサンが、高粘度キトサンである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
アニオン性ポリマーが、ポリ(アクリレート)である、請求項43〜46の何れか一つに記載の方法。
【請求項50】
少なくとも一つの工程を、不活性大気中で行なう、請求項43〜46の何れか一つに記載の方法。
【請求項51】
少なくとも一つの工程を、光の非存在下で行なう、請求項43〜46の何れか一つに記載の方法。
【請求項52】
沈殿したエマルジョンのサイズを、高圧ホモジェナイザーを用いて減少させる、請求項43又は45に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも2回の、高圧ホモジェナイザー通過を含む、請求項52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−536259(P2007−536259A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511619(P2007−511619)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/015789
【国際公開番号】WO2005/107710
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506368936)イヴレア ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】