説明

活性酸素除去剤、肌の弾力保持剤、抗酸化作用補助剤

【課題】 細胞膜にて老化の原因となる活性酸素を効果的に除去することができる活性酸素除去剤、肌の弾力を保つ繊維を酵素から守る肌の弾力保持剤、体内にある抗酸化成分の働きを助ける抗酸化作用補助剤を提供する。
【解決手段】 本発明活性酸素除去剤は、フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とすることを特徴とする。本発明の肌の弾力性保持剤は、フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とすることを特徴とする。本発明の抗酸化作用補助剤は、フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化の原因となる活性酸素を除去する活性酸素除去剤、肌の弾力を保つ繊維を酵素(コラゲナーゼ)から守る肌の弾力保持剤、体内にある抗酸化成分の働きを助ける抗酸化作用補助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の老化は、体内で発生するフリーラジカルが、人体を構成している組織に及ぼすダメージに起因している。
このフリーラジカルは、細胞膜を酸化して細胞を老化させるだけでなく、血液中のコレステロールを酸化して動脈硬化を引き起したり、酵素などのタンパク質にダメージを与えて生活習慣病を引き起こす。また、フリーラジカルが遺伝子DNAを傷付けると、悪性腫瘍ができる原因となる。
人間が生きるためには、酸素が不可欠である。その一方で、酸素分子は電子を失ってフリーラジカルという危険な存在となる。したがって、人体は常にフリーラジカルの脅威に曝されている。ところで、このように酸素分子から電子を失いフリーラジカルとなったものが活性酸素である。
【0003】
人間が活性酸素の攻撃を受けても健康でいられるのは、人体が活性酸素に対抗する独自の防御システムを備えているからである。
この防御システムの主役は「抗酸化物質」である。通常、「抗酸化物質」は体内で作り出される酵素やアミノ酸である。
人体の防御システムは、常に酸化物(悪玉)と、抗酸化物質(善玉)との比率(以下、「レドックスレベル」という。)を監視しており、このレドックスレベルが変化すると、正常な値を保つために抗酸化物質が活動を開始する。しかしながら、体内で作り出された抗酸化物質は、すぐに消耗されてしまい、レドックスレベルが正常な値を保てなくなる。そこで、レドックスレベルが正常な値を保つようにするためには、すぐに不足する抗酸化物質を、食品から摂取して補う必要がある。
【0004】
細胞は脂質で満たされた細胞膜に包まれており、細胞膜は分子密度が高いので、活性酸素により大きなダメージを受けてしまう。細胞膜がダメージを受けると、細胞膜に存在するホルモンや神経伝達物質を受け止める部位が正常に機能しなくなる。これが細胞の老化のプロセスである。
したがって、活性酸素によるダメージ(老化)を防ぐには、活性酸素の攻撃から細胞膜を守らなければならない。そのためには、抗酸化物質が適正に機能する必要がある。抗酸化物質に求められる性能は、下記の通りである。
(1)抗酸化物質は、活性酸素に対する親和力が、人体を構成している組織よりも強くなければならない。すなわち、抗酸化物質は、細胞膜が攻撃される前に、細胞膜の表面で活性酸素を吸着することができなければならない。
(2)抗酸化物質は無毒性でなければならない。
(3)抗酸化物質は防護が必要な部位(細胞膜)に辿り着ける能力を持っていなければならない。
【0005】
上記のように細胞膜は脂肪からなるので、抗酸化物質が細胞膜内に入るためには、抗酸化物質が脂溶性でなければならない。さらに、この脂溶性の抗酸化物質は、活性酸素が細胞膜を荒らす前に、活性酸素を不活性化できる位に強力なものでなければならない。
また、細胞膜は、活性酸素の攻撃から細胞を守る防護壁である一方、酸化などによりダメージを受けると炎症性化学物質の温床にもなる。活性酸素は、細胞膜を構成するリン脂質を有害な炎症性化学物質に分解するきっかけをつくる。このようにして生じた炎症性化学物質は、細胞内に進入して、細胞の炎症を起こす。
このように、老化やさまざまな人体へのダメージは、細胞の酸化によって起こる。ゆえに、老化を防ぐためには、常に細胞膜に所定の抗酸化物質が存在する必要がある。
【0006】
従来、種々の抗酸化物質を有効成分として含む組成物が提案されているものの、その抗酸化作用は十分なものではなかった(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】健康通販モンサンテウェブカタログ、「ピクノジェノール商品」
【非特許文献2】NET通販ダイエットコムウェブカタログ、有限会社ノースウェブ、「フランス海岸松の樹皮エキス粒」
【非特許文献3】NET通販ダイエットコムウェブカタログ、有限会社ノースウェブ、「アルファリポ酸」
【非特許文献4】マルマン株式会社ウェブカタログ、「αリポ酸&CoQ10」
【非特許文献5】ロート製薬株式会社ウェブカタログ、「リポQ10E」
【非特許文献6】株式会社トーカ堂フリーダムウェブカタログ、「α−リポ酸&コエンザイムQ−10」
【非特許文献7】株式会社ライフケアマネジメントウェブカタログ、「パインバーク25」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、提案されている組成物は、抗酸化作用が十分ではなかったため、より抗酸化作用が強いものが求められていた。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、細胞膜にて老化の原因となる活性酸素を効果的に除去することができる活性酸素除去剤、肌の弾力を保つ繊維を酵素から守る肌の弾力保持剤、体内にある抗酸化成分の働きを助ける抗酸化作用補助剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の活性酸素除去剤は、フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とすることを特徴とする。
本発明の肌の弾力性保持剤は、フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とすることを特徴とする。
本発明の抗酸化作用補助剤は、フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の活性酸素除去剤によれば、フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とするので、抗酸化作用、抗菌・抗ウイルス作用、免疫能を増強する作用、脂質過酸化抑制作用、心不全防止作用、脳や諸器官、皮膚を活性酸素によるダメージから守る作用などを備えている。特に、脂溶性かつ水溶性のチオクト酸を有しているので、有効成分(チオクト酸)が細胞核を守っている細胞を楽々と通り抜けて、細胞の中核に入っていき、活性酸素の攻撃から細胞を守ることができる。また、本発明の活性酸素除去剤によれば、フラボノイド、ユビキノンおよびチオクト酸は、全て強力な抗酸化剤として機能するだけでなく、生体内において、それぞれの機能する場所(役割)が異なるので、多数の抗酸化物質を摂取しなくても、強力な活性酸素除去作用が得られる。例えば、フラボノイドは心臓血管系を構成する毛細血管壁を強化する重要な物質であるビタミンCの機能を高める。また、ビタミンEやグルタチオンなどの抗酸化物質の産生を活性化させる。ユビキノンは、全ての細胞膜に高濃度存在しており、特に心臓、脳、腎臓、肝臓など活発に働く臓器のミトコンドリアに多く存在している。チオクト酸は、肝臓や腎臓に多く存在している。全ての細胞は、細胞内外の水溶性成分が混じり合わないように、細胞膜脂肪質によりバリアを形成している。また、生体内のネットワーク系抗酸化物質は脂溶性か水溶性のいずれかであり、それぞれ細胞内区画が異なっている。しかし、チオクト酸は水溶性、脂溶性の両方の性質を併せもつため、両部位で抗酸化効果を発揮することができる。
本発明の肌の弾力性保持剤によれば、フラボノイドにより、コラーゲン繊維などの皮膚組織を強化することができるとともに、ユビキノン、チオクト酸により、活性酸素により衰えていく肌にストップをかけることができる。
本発明の抗酸化作用補助剤によれば、細胞内のミトコンドリアにて栄養素をエネルギーへ変換させる際に不可欠なユビキノンを含有し、さらにユビキノンを補佐するチオクト酸を含有している。よって体内で生成されるエネルギー量を増やし、新陳代謝を活発化し、細胞を修復することができるとともに、細胞内にてサイトカインの発生を抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の活性酸素除去剤、本発明の肌の弾力性保持剤および本発明の抗酸化作用補助剤を詳細に説明する。
なお、以下に説明する構成は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
本発明の活性酸素除去剤は、フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とするものである。この活性酸素除去剤は、必要に応じて、その他の成分を含有する。
以下、各成分について説明する。
【0013】
(フラボノイド)
フラボノイドは植物に含まれる色素成分であるポリフェノール混合物群の総称である。フラボノイドは、大きく分けてフラボノール類、イソフラボン類、カテキン類などに分けられる。フラボノイドは植物を起源とするだけでも4000種類以上あるが、動物はフラボノイドを作り出すことができない。よって、食物から摂取しなければならないものである。フラボノイドを含有する主な食物としては、イチョウ葉、レモン、温州みかん、グレープフルーツ、ソバ、リンゴ、ルチン、茶、玉ねぎ、ケール、松樹皮などが挙げられる。フラボノイドの中でも、松樹皮から抽出されたもの(以下、「松樹皮抽出物」と略す。)が好ましい。
松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮抽出物が挙げられる。
【0014】
これらの樹皮抽出物の中でも、構造や鎖の長さの異なるプロアントシアニジン、カテキン、40種類以上の有機酸などの非常に強力な有機抗酸化物質が含まれていることから、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮の抽出物が好ましい。このフランス海岸松の樹皮の抽出物としては、ピクノジェノール(登録商標、ホーファー・リサーチ社製)などが挙げられる。
【0015】
フランス海岸松は、フランスの南西部、ガスコーニュ地方ランドの森で生育している。このフランス海岸松の樹皮は、他の種類の松と比較しても非常に厚く、多くのプロアントシアニジンの混合物を含有することが知られている。
【0016】
プロアントシアニジンとしては、フラバン−3−オールもしくはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮合重合体からなる化合物、または、フラバン−3−オールおよびフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の共重合体からなる化合物が挙げられる。
【0017】
フランス海岸松の樹皮の抽出物は、プロアントシアニジン、カテキン、40種類以上の有機酸などの複合的、相乗的な作用により、活性酸素を除去し、細胞を保護する作用(抗酸化作用)、抗菌・抗ウイルス作用、免疫能を増強する作用などがある。また、フランス海岸松の樹皮の抽出物は、皮膚コラーゲン、エラスチンと結合して皮膚組織を強化する。また、この抗酸化物質は、脆くなった血管を修復し、血管の機能を改善する。また、フランス海岸松の樹皮の抽出物は、心臓発作から静脈血栓症などの循環系障害誘発時の血球の障害を抑制する。さらに、フランス海岸松の樹皮の抽出物は、血液脳関門を通過できるため、脳と神経細胞を酸化から守ることができる。加えて、フランス海岸松の樹皮の抽出物の抗酸化作用はビタミンEの50倍で、活性酸素の攻撃から血管の細胞膜を保護する作用がある。
【0018】
以下、松樹皮抽出物の調製方法を説明する。
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。
水を用いる場合には、温水または熱水を用いることが好ましい。これらの水には、抽出効率を向上させるために、塩化ナトリウムなどの塩を添加することが好ましい。
有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容されるものが用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロエテンなどが挙げられる。
【0019】
これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。特に、水、熱水、エタノール、含水エタノール、含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0020】
水と有機溶媒を用いて松樹皮抽出物を抽出する方法の具体例を以下に示す。
粗い粉末にした100kgのフランス海岸松樹皮を350リットルの沸騰水で12時間抽出処理し、かすを絞り、抽出と絞りの合計液量が250リットルの液を集める。次いで、この液を20℃に冷却して濾過し、濾液に塩化ナトリウムを飽和するまで加える。次いで、沈殿物を濾過して取り除き、濾液を酢酸エチルで3回、各回とも水槽の1/10量を用いて抽出する。その酢酸エチルを集め、無水硫酸ナトリウム(NaSO)により乾燥し、減圧下にて、その量の1/5になるまで蒸留する。次いで、濃縮した溶液を物理的に攪拌しながら3倍量のクロロフォルムに注ぐと、プロアントシアニジンが沈殿するので、それを濾過して集める。次いで、このプロアントシアニジンを酢酸エチルに再び溶解して精製し、クロロフォルム中で新たに沈殿物を得る。最終的にクロロフォルムで洗浄し、50℃を超えない温度にて乾燥し、松樹皮抽出物(プロアントシアニジン)を得た。
【0021】
松樹皮から松樹皮抽出物を抽出する方法としては、特に限定されないが、例えば、超臨界流体抽出法、加温抽出法、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などが用いられる。
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法であり、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程とからなる方法である。
分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離などのうちいずれの分離方法を行ってもよい。
【0022】
超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、これらの中でも、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0023】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、(1)高温で変質・分解する物質にも適用できる、(2)抽出流体が残留しない、(3)溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などを省略でき、工程がシンプルになるなどの点から、好ましい方法である。
【0024】
松樹皮からのフラボノイド複合体の抽出には、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0025】
(ユビキノン)
ユビキノンの化学名は、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカプレニル−ベンゾキノンであり、別名「コエンザイムQ10」とも呼ばれている。また、ユビキノンの分子構造はビタミンKに似ていて、ビタミンと同様の機能を有することから、ビタミン様物質、「ビタミンQ」などとも呼ばれている。
ユビキノンは、ヘキサンなどの非極性溶媒にはよく溶けるものの、アルコールなどの極性溶媒への溶解度は低く、水には溶解し難い。
【0026】
ユビキノンを含むユビキノン同族体は、細菌や植物、動物など、種を超えて存在している。ユビキノンの人体への作用で最も注目されているのは、体内における個々の細胞のエネルギー産生にかかわる必要不可欠の物質であるという点である。
ユビキノンは、ミトコンドリア、リソソームなどの細胞の細胞膜を構成する成分内に存在する。また、ユビキノンは、一部の食品(イワシ、牛肉、豚肉、ほうれん草、乳製品など)にも含まれている。しかし、これらの食品に含まれるユビキノンは微量である上に、加熱によって一部破壊されてしまうことから、食品からユビキノンを補給することは難しい。
【0027】
また、ユビキノンは、ビタミンEやビタミンC以上の抗酸化能力があり、人体を酸化作用から守り、ビタミンEと協同して強力な脂質過酸化抑制を発揮する。しかし、20歳を過ぎると、体内におけるユビキノンの存在量は徐々に減少してしまう。40歳代になると、大部分の人がユビキノン不足の状態となると言われている。
【0028】
また、心臓は、筋肉の塊ともいえる構造であり、膨大なエネルギーが必要である。このため、心臓のユビキノンレベルは体内で最も高い。心臓のユビキノンレベルが下がると、エネルギー産生不足になり、筋肉が衰えた状態となる。こうなると、心臓の機能が低下し、虚血性心疾患、心臓弁膜症、不整脈などの心疾患に起因する心不全を引き起こす。
【0029】
さらに、ユビキノンは、加齢と活性酸素によりどんどん衰えていく肌に、ストップをかけて若返らせる作用がある。ユビキノンを補給し、血流が改善されることにより、体内の抗酸化力が高まり、肌の大敵「活性酸素」が細胞を錆びさせるのを阻止してくれる。また、ユビキノンは、エネルギーを作り出し、細胞を活性化する機能も備えているで、肌の新陳代謝も活発になり、若くてスベスベの美肌を保つことができる。
このように、ユビキノンを食品などから適度に摂取することは非常に望ましい。
【0030】
(チオクト酸)
チオクト酸は、短鎖脂肪酸の末端にジスルフィド構造部分(−S−S−)を有する五員環(1,2−ジチオラン環)が結合した構造をなしている。チオクト酸の化学名は、6,8−ジチオイックオクタン酸であり、α−リポ酸とも呼ばれている。
チオクト酸は、特有の苦味と、僅かに硫黄の臭いがする黄色の結晶である。チオクト酸は、水には極めて溶け難いが、チオクト酸のナトリウム塩は水に溶けてアルカリ性を示す。また、チオクト酸は、エタノール、酢酸エチル、アセトンなどの有機溶媒に溶け易く、ヘキサンなどの石油系の溶剤には溶け難い。
【0031】
チオクト酸は、細胞でエネルギーを作るのに欠かせない物質の1つであり、ミトコンドリアを助け、栄養素から作られるエネルギーの量を増やし、新陳代謝を活発にして、細胞を修復する。また、水にも脂にも溶けるため、「万能」抗酸化物質である。細胞核を守っている細胞を楽々と通り抜け、また水にも溶けるので、細胞の中核に入っていくこともできる。細胞の内と外に浸透し、それがどこであれ、フリーラジカルと闘い、必要な場所を守る。また、チオクト酸は、血液脳関門を通り、脳細胞に到達できる数少ない抗酸化物質であるから、脳を活性酸素によるダメージから守ることができる。
【0032】
チオクト酸は、細胞核の中のNF−kBという転写因子が過剰に活性化することを抑制する能力が、他のどの抗酸化物質よりも優れている。正常に制御されているNF−kBは、さまざまな疾患に対する抵抗力を強化するが、過剰になると免疫能を低下させる。チオクト酸は、NF−kBの過剰活性を抑制し、結果的にサイトカイン(炎症性化学物質)の発生を抑制する。また、チオクト酸は、既に活性したサイトカインが生み出すフリーラジカルも吸い取り、炎症がそれ以上広がるのを抑制する。
また、チオクト酸は、細胞核の中のAP−1という因子を活性化し、その結果、皺や傷が消されていく。また、チオクト酸は、糖の燃焼を高め、加齢と共に起こる脂肪の増加を抑制することも可能である。さらに、チオクト酸は、上述のユビキノンの効果も上げることができる。
【0033】
以下、工業的観点から見た場合、最も通常の方法と考えられるアジピン酸誘導体からの製造方法を例に挙げて、チオクト酸の製造方法を説明する。
出発原料となるアジピン酸モノエステルクロリドを、容易にアジピン酸からアルコールの使用量を制限したモノエステル化反応と続くハロゲン化剤による酸クロリド化反応の二段階で調製する。
アジピン酸モノエステルクロリドとエチレンを無水塩化アルミニウムの存在下、室温にて縮合し、次いで、120℃にて処理することにより、脱ハロゲン化水素が起き、ビニルケトン体が得られる。
このビニルケトン体にチオ酢酸を付加し、そのチオ酢酸付加体のケトン部分を冷却下、水素化ホウ素ナトリウムにより還元する。
還元して得られた化合物のエステル部を苛性ソーダにより加水分解すると、チオールヒドロキシ酸が得られる。
このチオールヒドロキシ酸に、50%ヨウ化水素の存在下にてチオ尿素を加えて、加熱し、ジチオール体を得る。
得られたジチオール体を、例えば、ヨウ素や塩化第二鉄、過酸化水素などの酸化剤により酸化すると、チオクト酸が得られる。
【0034】
(その他の成分)
本発明の活性酸素除去剤は、さらに必要に応じて、抗酸化作用を有する他の成分(他の抗酸化物質)、抗酸化物質の吸収率を向上する成分などを含有し得る。
他の抗酸化物質としては、メロン抽出物、月見草種子エキス、グルタチオン、ビタミンE(トコフェロール類、トコトリエノール類など)、ビタミンCおよびその誘導体、アスタキサンチンなどが挙げられる。
【0035】
メロン抽出物は、メロンから抽出した抗酸化酵素(SOD)を、小麦抽出物のグリアディンでコーティングした抗酸化物質である。胃酸・消化酵素で消化されず、また、これ自体が抗酸化に働くのではなく、免疫機構を利用し体内の抗酸化酵素の生成を促進する性質がある。
【0036】
月見草種子エキスは、有効成分として、没食子酸、エラグ酸、ペンタガロイルグルコース、カテキン、プロアントシアニジンなどのポリフェノールを含有する抗酸化物質である。月見草種子エキスは、抗酸化作用、抗炎症作用、美白効果などを備えている。
【0037】
ビタミンEは、パームヤシや米糠などに多く含まれている抗酸化物質であり、トコフェロール類とトコトリエノール類の2つがある。脂溶性であり、細胞膜の脂質層で作用し、フリーラジカルの発生を抑える。さらにビタミンCやチオクト酸によってリサイクルされる。ビタミンCとの併用で抗酸化力がさらに向上する。
【0038】
アスタキサンチンは、ヘマトコッカスという藻類の一種に含まれており、それが食物連鎖により魚介類の体内に蓄えられ、鮭、イクラ、マス、オキアミ、エビ、カニなどの赤色の素となるカロチノイド系色素の一種である。アスタキサンチンは、体内で必要量だけビタミンAに変わる。抗酸化力はビタミンEの約1000倍、β−カロチンの100倍で、自然界最強の抗酸化作用をもつ物質といわれている。アスタキサンチンをトコトリエノールと併用することにより、美肌効果が向上する。
【0039】
ビタミンCは、水溶性抗酸化物質であり、ビタミンEとの相互作用によって、低比重リポタンパク(LDL)の酸化を抑制する。チオクト酸もビタミンEを再生できるが、ビタミンCはその作用も促進する。また松樹皮抽出物などの抗酸化性フラボノイドとネットワークを形成して相互作用している。
【0040】
抗酸化物質の吸収率を向上する成分としては、例えば、黒胡椒抽出物が挙げられる。黒胡椒抽出物は、黒胡椒またはナガコショウの果実からの抽出物である。黒胡椒抽出物は、ビタミン、ミネラル、ハーブなどの栄養素の吸収率を向上させる。例えば、ユビキノンの吸収率を30〜50%、抗酸化ミネラルのセレンの吸収率を約30%、水溶性のビタミンB6や脂溶性のβ−カロチンなどのビタミンの吸収率を約60%向上させる。
【0041】
本発明の活性酸素除去剤を、食品、医薬品として用いる場合には、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、滑沢剤、湿潤剤、懸濁剤、着色料、香料、栄養成分、食品添加物などの通常食品または医薬品に用いられる種々の成分を目的に応じて含んでいてもよい。
栄養成分としては、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウム、レシチン、などが挙げられる。
食品添加物としては、甘味料(ステビア末など)、酸味料(クエン酸、リン酸など)、調味料(アミノ酸など)などが挙げられる。
【0042】
本発明の活性酸素除去剤においては、フラボノイドを0.00001質量%以上含有することが好ましく、0.0002質量%以上含有することがより好ましい。この本発明の活性酸素除去剤におけるフラボノイドの含有量は、1日当たりの摂取量がプロアントシアニジンの量に換算して、0.1mg以上であることが好ましく、2mg以上、であることがより好ましい。
【0043】
本発明の活性酸素除去剤においては、ユビキノンを0.00001質量%以上含有することが好ましく、0.001質量%以上含有することがより好ましい。この本発明の活性酸素除去剤におけるユビキノンの含有量は、ユビキノンの1日当たりの摂取量に換算して、0.001g以上であることが好ましく、0.1g以上であることがより好ましい。
【0044】
本発明の活性酸素除去剤においては、チオクト酸を0.0001質量%以上含有することが好ましく、0.001質量%以上含有することがより好ましい。この本発明の活性酸素除去剤におけるチオクト酸の含有量は、チオクト酸の1日当たりの摂取量に換算して、0.001g以上であることが好ましく、0.01g以上であることがより好ましい。
【0045】
上記の各成分を当業者が通常用いる方法によって混合し、各種の形態の活性酸素除去剤を調製することができる。例えば、フラボノイド、ユビキノンおよびチオクト酸に賦形剤などを加えて、錠剤などの形状に成形してもよく、あるいは、成形せずに、散剤の形態や、その他の形態としてもよい。その他の形態としては、ハードカプセルなどのカプセル剤、粉末状、顆粒状、ティーバッグ状、飴状、液状、ペースト状などの形態が挙げられる。
【0046】
本発明の活性酸素除去剤を摂取する場合、その摂取方法は、特に限定されない。本発明の活性酸素除去剤を、その形状または好みに応じて、そのまま飲食してもよいし、あるいは水、湯、牛乳などに溶かして飲んでもよいし、成分を浸出させたものを飲んでもよい。
また、本発明の活性酸素除去剤は、皮膚外用剤として、化粧水状、乳液状、クリーム状、パック状、シート状、スティック状、カプセル状などの形態にも使用できる。
【0047】
ところで、活性酸素の有害性は、生理活性物質や生体の重要な組織に直接作用して、様々な障害を引き起こすことである。生体内における活性酸素の攻撃対象は、ほとんどの生体成分である。この生体成分としては、具体的には、脂質、中でも高度不飽和脂肪酸を含む脂質が挙げられる。この高度不飽和脂肪酸を含む脂質は、活性酸素の作用を受けて容易に変成し、重大な機能障害を引き起こす。このような活性酸素の作用によって引き起こされる機能障害は、特に、生活習慣病との関連が強いので、生活習慣病の予防には、活性酸素対策が不可欠となる。しかしながら、生体内における活性酸素の発生を抑制するのは容易なことではない上に、活性酸素は1種類ではない。よって、活性酸素による障害から生体を守るためには、個々の活性酸素に対応する多種多様の抗酸化物質を適切に摂取する必要がある。
【0048】
本発明の活性酸素除去剤によれば、フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とするので、これらの成分の複合的、相乗的作用により抗酸化作用、抗菌・抗ウイルス作用、免疫能を増強する作用、脂質過酸化抑制作用、心不全防止作用、脳や諸器官、皮膚を活性酸素によるダメージから守る作用などを備えている。特に、脂溶性かつ水溶性のチオクト酸を有しているので、有効成分(チオクト酸)が細胞核を守っている細胞を楽々と通り抜けて、細胞の中核に入っていき、活性酸素の攻撃から細胞を守ることができる。また、本発明の活性酸素除去剤によれば、フラボノイド、ユビキノンおよびチオクト酸は、全て強力な抗酸化剤として機能するだけでなく、生体内において、それぞれの機能する場所(役割)が異なるので、多数の抗酸化物質を摂取しなくても、強力な活性酸素除去作用が得られる。
【0049】
また、本発明の肌の弾力性保持剤によれば、フラボノイドにより、コラーゲン繊維などの皮膚組織を強化することができるとともに、ユビキノン、チオクト酸により、活性酸素により衰えていく肌にストップをかけることができる。
【0050】
また、本発明の抗酸化作用補助剤によれば、細胞内のミトコンドリアにて栄養素をエネルギーへ変換させる際に不可欠なユビキノンを含有し、さらにユビキノンを補佐するチオクト酸を含有している。よって体内で生成されるエネルギー量を増やし、新陳代謝を活発化し、細胞を修復することができるとともに、細胞内にてサイトカインの発生を抑制することが可能である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例)
チオクト酸と、ユビキノンと、松樹皮抽出物と、その他の賦形剤(ショ糖脂肪酸エステル、二酸化ケイ素、ビール酵母)、メロン抽出物と、ビタミンE、ビタミンC、月見草種子エキス、アスタキサンチン、胡椒抽出物、ヘスペリジンなどの添加剤を配合して粉末状の活性酸素除去剤を調整し、この粉末をハードカプセルに充填してハードカプセル充填剤とした。
なお、ハードカプセル充填剤の1日の摂取量である3粒当たりに含まれる各成分の量が以下のようになるように、各成分を配合した。
チオクト酸 100mg
ユビキノン 60mg
松樹皮抽出物 40mg
メロン抽出物 80mg
チオクト酸としては、α−リポ酸、立山化成株式会社製を使用した。ユビキノンとしては、コエンザイムQ10、日清ファルマ株式会社製を使用した。松樹皮抽出物としては、ピクノジェノール、スイス・ホーファーリサーチ社製を使用した。
【0053】
肉体疲労、肌荒れ、肥満など酸化が原因で起こり得る症状に悩む26〜59歳の男性14名および28〜63歳の女性19名を被験者とし、各被験者に、それぞれ、このハードカプセル充填剤を1回に1粒、1日に3回(朝昼夜)、2週間摂取させた。
これらの被験者に対して、肌質の検査、体脂肪値の検査、血液検査、感応検査を行った。
【0054】
(肌質の検査)
男性8名および女性5名からなる13名の被験者に対して、ハードカプセル充填剤の摂取前と摂取後(2週間後)の肌質の検査を行った。
肌質の検査方法は、トリプルセンスK10229(株式会社モリテックス社製)にて、午前10時前後に被験者の肌質を測定する方法とした。
評価の基準を、水分、弾力が良好な場合をH、調度良い場合をM、悪い場合をLとした。数値は1〜100までで、高いほど、良好なことを示す。なお、20歳から5歳単位での評価となるので、その年齢幅での評価判定となる。
評価の結果を以下に示す。
水分を表す数値が3上昇した人は1名、6〜10上昇した人は3名、21上昇した人は1名であった。
弾力を表す数値が4上昇した人は1名、5〜10上昇した人は2名、13上昇した人は1名、18上昇した人は1名、29上昇した人は1名、69上昇した人は1名であった。
13名中9名に何らかの肌質改善結果の数値が現れた。
【0055】
(体脂肪値の検査)
男性8名および女性13名からなる21名の被験者に対して、ハードカプセル充填剤の摂取前と摂取後(2週間後)の体脂肪値を測定した。
体脂肪値の測定方法は、体脂肪計HBF−302(オムロン株式会社製)にて、午前10時前後に被験者の体脂肪を測定する方法とした。
結果を以下に示す。
体脂肪値が0.1〜0.5%減少した人は4名、0.6%減少した人は1名、0.7%減少した人は1名、1%減少した人は3名、1.8%減少した人は1名、2〜2.1%減少した人は2名、2.6%減少した人は1名、5%減少した人は1名であった。
21名中14名に体脂肪の減少が確認され、14名の減少率の平均値は1.43%であった。
【0056】
(血液検査)
男性14名および女性19名からなる33名の被験者に対して、ハードカプセル充填剤の摂取前と摂取後(2週間後)の血液検査を行った。
血液検査の方法は、(1)LDHについてはUV法、(2)γ−GTPについては比色法、(3)総コレステロールについては酵素法、(4)HDLコレステロールについては直接法、(5)LDLコレステロールについては酵素的測定法、(5)中性脂肪、遊離脂肪酸については酵素法を用いた。
(表1〜表4に開示していない検査項目については記載しませんでした。)
結果を表1〜表4に示す。
なお、表1〜表4において、各人の上段の数値はハードカプセル充填剤の摂取前の値、下段の数値はハードカプセル充填剤の摂取後の値である。●印は改善された項目を示し、※印は中性脂肪の値が減少したことを示している。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
血液検査の主な結果を以下に示す。
(LDH)
LDHの基準値は、120U/l〜245U/lである。
基準値より数値が高かった5名に、以下に示すように改善が確認された。
男性(40歳) 269→253
女性(63歳) 262→240
女性(56歳) 418→188
女性(32歳) 266→179
女性(30歳) 255→207
【0062】
(γ−GTP)
γ−GTPの基準値は、16U/l〜73U/lである。
基準値より数値が高かった5名に、以下に示すように改善が確認された。
女性(56歳) 245→145
男性(42歳) 187→168
男性(42歳) 108→94
男性(28歳) 90→74
男性(26歳) 100→79
その他の11名にも数値の低下が確認された。
【0063】
(総コレステロール)
総コレステロールの基準値は、150mg/dl〜219mg/dlである。
基準値より数値が高かった高値7名に、以下に示すように改善が確認された。
女性(63歳) 239→230
女性(56歳) 310→204
女性(38歳) 220→215
女性(30歳) 244→204
女性(30歳) 222→190
女性(30歳) 229→211
女性(30歳) 243→228
その他の10名にも数値の低下が確認された。
【0064】
(中性脂肪)
中性脂肪の基準値は、50mg/dl〜149mg/dlである。
基準値より数値が高かった1名に、以下に示すような改善が確認された。
男性(54歳) 178→150
その他の16名にも数値の低下が確認された。
【0065】
上記の結果から、本実施例のハードカプセル充填剤は、肝機能、総コレステロール値、中性脂肪の改善に付与することが確認された。
【0066】
(感応検査)
被験者に、ハードカプセル充填剤の摂取前と摂取後を比較して、改善されたと自覚できる症状を挙げさせた。
結果を以下に示す。
「疲れ難くなった」 2名
「疲れが翌日に残らなくなった」 3名
「冷え性が改善された」 1名
「太り難くなった」 3名
「睡眠が深くなった」 2名
「目覚めが良くなった」 3名
「シワが改善された」 2名
「シミが改善された」 2名
「毛穴の開きが改善された」 2名
「ニキビが減った」 2名
「二日酔いしなくなった」 1名
「足の裏がカサカサになりかけていたのが治った」 1名
「何を飲んでもどんなケアをしても治らなかったニキビが治った」 1名



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とすることを特徴とする活性酸素除去剤。
【請求項2】
フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とすることを特徴とする肌の弾力保持剤。
【請求項3】
フラボノイドと、ユビキノンと、チオクト酸とを有効成分とすることを特徴とする抗酸化作用補助剤。



【公開番号】特開2006−298887(P2006−298887A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127102(P2005−127102)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(505153214)株式会社ドクターカナコ (1)
【Fターム(参考)】