説明

流体および微粒子の戻り流量経路を備えたインクポンプ

【課題】インク容器に液体インクをポンプで注入し、上記インク容器から上記液体インクをポンプで吸い出すためのシステムを提供する。
【解決手段】インクジェット式印刷装置に用いられる双方向の密封器のないインクポンプシステム300が、液体インク容器308およびポンプ302を含んでいる。上記ポンプ302は、上記容器308から、インクを供給するためにポンプ室304を介して、上記プリンタの印字ヘッドにインクを移動させ、再循環槽312から上記ポンプ室304を介して上記容器308にインクを移動させる。上記ポンプ室304の上記インクの一部は、上記可動部材を滑らかにするために、上記ポンプ室304の外に引き出され、上記ポンプ室に戻る前にろ過される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、容器に流体をポンプで注入し、上記容器から流体をポンプで吸い出す機械に関するものであり、特に、インク容器に液体インクをポンプで注入し、上記インク容器から上記液体インクをポンプで吸い出すためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体運搬システムが、よく知られており、多くの用途に用いられている。機械において流体を運搬するある特定の用途は、プリンタにおけるインクの運搬である。インクの一般的な例として、水性インクおよび相変化インクまたは固体インクが挙げられる。水性インクは、画像操作に用いられる前の格納時には、液体の形状を保っている。固体インクまたは相変化インクは、通常、シアン、イエロー、マゼンダ、および、ブラックに着色されたペレットまたはスティックとして、固体形状を有している。上記固体インクは、プリンタに挿入され、上記固体インクを融解する融解装置に送られる。融解されたインクは、次の使用を待つ間、その流体形状を維持するために加熱され続ける容器に回収される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
融解されたインクの流量を受け取るために、1つまたは複数の印字ヘッドが、容器に効果的に接続されていてもよい。上記融解されたインクは、上記印字ヘッド内のインクジェット式排出器によって印字ヘッドから受け取り媒体または画像部材に排出される。インクジェット式印刷機器における上記インクジェット式排出器は、インクを画像表面に排出する圧電装置であってもよい。上記インクジェット式排出器は、制御装置が駆動信号で選択的に作動させる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
容器から1つまたは複数の印字ヘッドに供給されたインクは、様々なポンプ構成を用いて上記容器からポンプで吸い出されてもよい。適切なポンプの一構成は、容器から1つまたは複数の印字ヘッドの方へインクを流す、回転する歯車を用いる。他の共通の構成は、上記融解されたインクを容器からポンプで吸い出すための回転部材の代わりに、往復部材を使用する。これらのポンプは、上記容器からポンプで吸い出された上記融解されたインクと上記ポンプの構成要素を直接接しないようにする、1つまたは複数の密封器を用いる。これらの密封器は、通常、エラストマー材料から構成されている。上記隔離されたポンプ構成要素は、さらに、動作中の摩擦を低減するために、滑らかにされていてもよい。
【0005】
動作中に、上記容器において他の構成要素と接触する上記ポンプ構造の可動面は、磨耗する場合がある。上記磨耗した構成要素によって侵食された破片が、上記ポンプ構成要素を損傷する場合があり、さらに、上記印字ヘッドに供給されたインクを汚す場合がある。上記ポンプの可動構成要素が十分に滑らかでない場合、磨耗が速まる場合がある。さらに、プリンタに用いられるインクの化学的性質の中には、共通のポンプ構成に用いられる上記密封器を劣化させてしまうものもあり、その結果潤滑剤が減り、破片がさらに形成されてしまう。上記可動構成要素の磨耗特性を改善し、印字ヘッドに供給される汚染物質を妨げる、インクポンプシステムが、有益であろう。
【0006】
プリンタのインクを移動させるためのポンプシステムが開発された。上記ポンプシステムは、注入口および放出口を有するポンプ室と、インクを格納するように構成された容器であって、流体が流れるように上記ポンプ室の上記注入口に接続された放出口を有する、上記容器と、インクと接するため、および、上記ポンプ室の上記注入口から上記ポンプ室の上記放出口にインクを移動させるために、上記ポンプ室に位置付けられた第1部分、および、上記ポンプ室の外側に位置付けられた第2部分を有する可動部材と、上記ポンプ室の外側に位置付けられた上記可動部材の部分の周りに構成された、溝であって、上記溝は第1端部および第2端部を有しており、上記溝の上記第1端部は、上記ポンプ室に直結されており、上記溝の上記第2端部は、上記容器に直結されており、これにより、上記ポンプ室における上記インクの一部を、上記ポンプ室から移動させることができ、上記ポンプ室の外側の上記可動部材の上記部分を滑らかにし、上記容器に戻す、上記溝とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】中間印刷部材および制御システムを有する、相変化インク画像装置の一実施形態の概略図である。
【図2】インク容器への流体戻り経路を有する反転可能ポンプを備えたインクポンプシステムの概略図である。
【図3】図インク容器への流体戻り経路を有する反転可能ポンプを備えたもう1つのインクポンプシステムの概略図である。
【図4】流体が流れるようにインクポンプに接続されたインク容器の概略図である。
【図5】プリンタのインクをポンプで吸い出すための適切な、2つの歯車を含むポンプ部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の記載および添付図面は、ここに開示したシステムおよび方法の環境、および、上記システムおよび方法の詳細に関して、一般的な理解を図るものである。上記図面では、同じ構成部分に、同じ参照符号が用いられる。本明細書で用いられる「ポンプ室」という用語は、囲い内の空間に言及しており、上記囲いは、上記ポンプ室の1つの開口部から上記ポンプ室のもう1つの開口部に流体を流すことができるように上記流体を移動させる可動部材の少なくとも一部を含んでいる。
【0009】
図1は、融解された相変化インクを用いた、間接印刷またはオフセット印刷のために構成された相変化インク画像装置の一実施形態の側面概略図である。図1の装置10は、例えば通例インクスティックと呼ばれるインクブロック14といった固体形状をした相変化インク、を受け取るように構成されたインク充填器とも呼ばれるインク処理システム12を含んでいる。インク充填器12は、インクスティック14が挿入される給送溝18を含んでいる。単一の給送溝18が図1に見えるが、インク充填器12は、装置10において用いられるインクスティック14のそれぞれの色または色合い用の、個々の給送溝を含んでいる。給送溝18は、溝18の一端部にある融解組立部20の方へインクスティック14を導き、上記スティックはそこで相変化インク融解温度まで加熱されて上記固体インクを融解して液体インクを形成する。任意の適切な融解温度が、上記相変化インクの形成に応じて用いられてもよい。一実施形態では、上記相変化インク融解温度は、およそ100℃から140℃である。上記融解されたインクは、装置10の印刷システム26に送るための融解された形状で、一定量の上記融解されたインクを維持するように構成された容器24において受け取られる。容器24から1つまたは複数の印字ヘッド28に融解されたインクを移動するために、ポンプ25が、容器24および印字ヘッド28に流体が流れるように接続されている。ポンプ25の適切な実施形態は、歯車ポンプ、往復ポンプ、または同様のものを含んでいるが、それらに限定されるものではない。
【0010】
印刷システム26は、融解されたインクの滴を中間面30に排出するように設けられたインクジェット式の少なくとも1つの印字ヘッド28を含んでいる。任意の適切な数の印字ヘッド28が用いられてもよいが、2つの印字ヘッドを図1に示す。中間面30は、ドラムメンテナンスユニット(DMU)としても知られている離型剤塗布組立部38によって回転部材34に塗布される離型剤の層または薄膜を含んでいる。他の実施形態では、回転部材34が可動ベルトまたは回転ベルト、バンド、ローラ、または、他の同様の構造型を含んでいてもよいが、回転部材34を図1のドラムとして示す。挟み込みローラ40は、回転部材34の中間面30に接触して装着されて挟み込み部44を形成する。挟み込み部44を介して、上記複数枚の記録媒体52は、印字ヘッド28のインクの噴出によって中間面30に堆積された上記インクの滴にタイミング調節された位置合わせ精度で給送されるものである。挟み込み部44において、圧力(および場合によっては熱)が生じ、それが中間面30を形成する上記離型剤と共に、表面30から記録媒体52に上記インクの滴の転送を促進し、同時に上記インクが回転部材34に実質的には付着しないようにする。
【0011】
画像装置10は、挟み込み部44を介して媒体を導く装置10において画定された媒体経路50に沿って記録媒体を運搬するように構成されている、媒体供給処理システム48を含んでいる。ここで、上記インクは、中間面30から記録媒体52に転送される。媒体供給処理システム48は、例えば、装置10のタイプおよび大きさの異なる記録媒体を格納および供給するための供給トレイ58といった、少なくとも1つの媒体供給部58を含んでいる。上記媒体供給処理システムは、邪魔板、そらせ板などと同様に、駆動されていても使用されていなくてもよい例えばローラ60といった、媒体経路50に沿って媒体を運搬するための適切な構造を含んでいる。
【0012】
媒体経路50は、中間面30からインクを受け取るために上記媒体が適切な温度で挟み込み部44に達することができるように、上記記録媒体の温度を制御および調節するための1つまたは複数の媒体調整装置を含んでいてもよい。例えば、図1の実施形態では、挟み込み部44に至る前に上記記録媒体を初めのあらかじめ定められた温度にするため、媒体経路50に沿って、予熱組立部64が備えられている。予熱組立部64は、上記媒体を目標予熱温度にするために、接触熱、放射熱、伝導熱、または、対流熱に依存していてもよく、実用的な一実施形態では、目標予熱温度は約30℃から約70℃の範囲である。他の実施形態では、媒体(およびインク)の温度を制御するためにインクが上記媒体に堆積される前、その間、その後に、他の温度調整装置が上記媒体経路に沿って用いられてもよい。
【0013】
制御システム68が、画像装置10の様々なサブシステム、構成要素、および、機能の動作および制御に役立つ。制御システム68は、スキャナシステムまたはワークステーション接続といった、1つまたは複数の画像供給部72に効果的に接続されている。これは、上記供給部から画像データを受け取って管理し、上記プリンタの上記構成要素およびサブシステムに送られる制御信号を生成するためである。いくつかの上記制御信号は、上記画像データに基づいており、これらの信号により、上記プリンタの上記構成要素およびサブシステムは、画像装置10によって媒体上に画像を作り出すための様々な手順および動作を実行する。
【0014】
制御システム68は、制御装置70、電子記憶装置またはメモリ74、および、ユーザーインターフェース(UI)78を含んでいる。制御装置70は、例えば、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、書替え可能ゲートアレイ(FPGA)装置、または、マイクロコントローラといった処理装置を含んでいる。数あるタスクのうちで、上記処理装置は、画像供給部72によって提供された画像を処理する。制御装置70に含まれる上記1つまたは複数の処理装置は、メモリ74に格納されたプログラム学習によって構成されている。制御装置70は、上記プリンタの構成要素およびサブシステムを操作するために、これらの学習を実行する。任意の適切なタイプのメモリまたは電子記憶装置が用いられてもよい。例えば、メモリ74は、読み取り専用メモリ(ROM)といった不揮発性メモリ、または、EEPROMまたはフラッシュメモリといったプログラム可能不揮発性メモリであってもよい。
【0015】
ユーザーインターフェース(UI)78は、操作員と制御システム68との対話を可能にする画像装置10に位置付けられた適切な入力/出力装置を含んでいる。例えば、UI78は、キーパッドおよび表示装置(図示せず)を含んでいてもよい。制御装置70は、ユーザまたは上記装置の操作員によってユーザーインターフェース78に入力される選択および他の情報を示す信号を受け取るために、ユーザーインターフェース78に効果的に連結されている。制御装置70は、ユーザまたは操作員へ選択可能なオプション、機械の状態、消費品の状態などを含む情報を表示するために、ユーザーインターフェース78に効果的に連結されている。制御装置70は、さらに、画像データおよびユーザ対話データを遠隔位置から受け取りするために、例えばコンピュータネットワークといった連通リンク84に連結されていてもよい。
【0016】
制御装置70は、インク処理システム12、印刷システム26、媒体処理システム48、離型剤塗布組立部38、媒体経路50、および、制御装置70に効果的に接続された画像装置10の他の装置および構造、といった装置10の様々なシステムおよび構成要素に出力される制御信号を生成する。制御装置70は、メモリ74に格納されたプログラム学習およびデータに従って、上記制御信号を生成する。上記制御信号は、例えば、上記システム構成要素の作業速度、出力レベル、タイミング、作動、および、他のパラメータを制御し、これにより、画像装置10が、動作モードとして集合的に本書に示される動作の様々な状態、モード、または、レベルで動作する。これらの動作モードは、例えば、起動モードまたはウォームアップモード、シャットダウンモード、様々な印刷モード、メンテナンスモード、および、省電力モードを含んでいる。
【0017】
図2は、第1インク容器208と第2容器212との間でインクを転送するように構成されたポンプ202を含むインク搬送システム200のブロック図を示している。ポンプ202は、軸受部206、および、第1インク容器208および第2インク容器212と流体が流れるように通じたポンプ室204を含んでいる。ポンプ室204は、流体が流れるように軸受部206と連通した開口部を有している。動作中、ポンプ室204に生じた圧力により、軸受部206を貫く方向244に、ポンプ室を通じてインクの一部がポンプで吸い出される。インクは軸受部206の周りに流れ、ポンプ軸または同様のものといった上記軸受部の上記ポンプの可動部分を滑らかにし、次に、上記インクは、上記軸受部を出て、矢印248で示したように第1インク容器208に戻る。
【0018】
インク搬送システム200のポンプ202は、順方向動作モードで、第1容器208から第2容器212にインクを移動させ、逆方向動作モードで第2容器212から第1容器208にインクを移動させるように操作されてもよい。上記順方向動作モードでインクを移動させる場合、流量制限器220が、ポンプ202と第2容器212との間の流体の流れを阻止する。上記逆方向動作モードでインクを移動させる場合、もう1つの流量制限器224が、ポンプ202と上記第1容器との間の流体の流れを阻止する。流量制限器の様々な実施形態が、一方向の逆止め弁、様々な幅および形状をしたインク導管、インクの流れを阻止する多孔質膜、または、流体の流れに対する抵抗を提供する任意の構造または流体経路構成を含んでいる。以下に詳述するように、様々な流量制限器の実施形態が、ポンプ202といったポンプに統合されていてもよいし、あるいは、流体が流れるように上記ポンプと連通しているインク容器といった他の構成要素の中に位置付けられていてもよい。各流量制限器は、ポンプ室204から出たインクの流れを阻止する。従って、ポンプ202が順方向動作モードまたは逆方向動作モードでインクを移動させるとき、ポンプ室204において生じた圧力によって、インクが軸受部206に流される。
【0019】
順方向動作モードでは、ポンプ202は、方向228に第1容器208からインクを引き出す。ポンプ202は、流量制限器220を貫いて方向232および第2容器212にインクを移動させる。ポンプ室204に生じた圧力により、上記インクの一部が軸受部206を貫いて方向244に流される。流量制限器220は、インクを軸受部206に流して第1容器208に戻すことができるようにポンプ室244内の圧力を生じさせる。上記逆方向動作モードでは、ポンプ202は、第2容器212から方向236にインクを引き出す。上記第2動作モードでは、ポンプ202は、方向240に流量制限器224を貫いて第1容器208にインクを移動させる。上記順方向動作モードのように、流量制限器224は、インクを軸受部206に流し、第1容器208に戻すことができるポンプ室244内の圧力を生じさせる。従って、順方向動作モードにおいても、逆方向動作モードにおいても、ポンプ室204内で生じた圧力によってインクが軸受部206に流され、上記インクが第1容器208に戻るときにポンプ202の可動部分を滑らかにする。
【0020】
図3は、インク供給容器308と、印字ヘッド容器310と、再循環槽312との間でインクを転送するように構成されたポンプ302を含んだインク搬送システム300の他の実施形態を示す概略図である。上記ポンプ202と同様に、ポンプ302は、流体が流れるように軸受部306に連通しているポンプ室304を含んでいる。一方向弁356、360、364、368、および、372により、ポンプ室304はインク供給容器308、印字ヘッド容器310、および、再循環槽312と選択的で流体が流れるように連通される。ポンプ室304は、少なくとも1つの注入口の開口部303と、少なくとも1つの放出口の開口部305とを含んでいる。順方向動作モードでは、インクが、注入口303を介してポンプ室304に入り、放出口305を介して出る。他方、逆方向動作モードでは、インクが放出口305を介してポンプ室304に入り、注入口303を介して出る。動作中、ポンプ室304で生じた圧力により、上記ポンプ室を介して移動したインクの一部が、軸受部306を貫いて方向348に流される。インクが軸受部306の周りに流れ、ポンプ軸または同様のものといった上記軸受部において、上記ポンプの可動部分を滑らかにし、続いて、上記軸受部から出て、矢印352で示したように、第1インク容器308に戻る。
【0021】
ポンプ302は、順方向モードおよび逆方向モードで動作する。順方向動作モードでは、ポンプ302は、開いている一方向弁356を介してインク供給容器308と、開いている一方向弁372を介して印字ヘッド容器310とに、流体が流れるように連通している。順方向動作モードでは、一方向弁356および372は、ポンプ302によって生じた圧力に応じて開き、一方向弁360、364、および、368は、閉じたままである。ポンプ302は、インク供給容器308から一方向弁356を介して方向328にインクを引き出し、一方向弁372を介して方向332および印字ヘッド容器310に上記インクを移動させる。印字ヘッド容器310の中のインクは、図1を参照して上記したように、インクジェット式印刷動作に用いられる。図3の例示的実施形態では、一方向弁356は、順方向動作モードにおいて、ポンプ302がかけるわずかな圧力に応じて開くように構成されている。他方、一方向弁372は、ポンプ302から流れるインクに対するあらかじめ定められた抵抗を生じさせるように構成されている。従って、ポンプ室304において生じた圧力により、上記ポンプ室内の上記インクの一部を方向348で軸受部306に流し、軸受部306においてポンプ302の可動部分を滑らかにし、方向352でインク供給容器308に戻る。図3では一方向弁372をボール弁として示しているが、任意の流量制限器が、インクを軸受部306に流すことができるポンプ室302の圧力を生じさせてもよい。
【0022】
ポンプ302は、さらに、再循環槽312からインクを引き出し、上記インクをインク供給容器308に移動させる、逆方向モードで操作するように構成されている。ドロップ・オン・デマンド・インクジェット印刷装置では、再循環槽312は、印字ヘッド容器310から出されるインクを回収してもよいし、あるいは、再循環槽312は、連続ストリームインクジェット印刷装置の連続ストリームで受像器に導かれないインクを取り戻してもよい。ドロップ・オン・デマンド装置は、受像器の画像を形成するために発射信号に応じて、個々のインクの小滴を排出する。他方、連続ストリーム装置は、上記受像器に画像を形成するために選択的にそらされたインクの滴の流れを放射する。上記逆方向動作モードでは、一方向弁360、364、および、368は、ポンプ302によって生じる圧力に応じて開き、他方、一方向弁356および372は、閉じたままである。得られる流体経路により、取り付けポンプ302は、流体が流れるように再循環槽312およびインク供給容器308に連通される。ポンプ302は、再循環槽312から方向336にインクを引き出す。上記インクは、一方向弁360を介して方向344にポンプ室304を出て、インク供給容器308に戻る。流量迂回経路340は、インク供給容器308から一方向弁364を介してインクを循環させ、再循環槽312からのインクと同じ入り口を介して、インクをポンプ室304入らせることができる。
【0023】
図3では、一方向弁360は、流量制限器の機能を果たす。一方向弁360は、ポンプ室304の放出口からインク供給容器308へのインクの流量を制限する、インク流量に対するあらかじめ定められた抵抗を有している。流量迂回経路340により、付加的なインクが、インク供給容器308からポンプ室304に流れることができ、上記ポンプ室に入るインクの流量に対する実効抵抗が低減される。再循環槽312からインク供給容器308へとインクをポンプで吸い出すときに比較的高い流量抵抗を作り出す実施形態では、迂回経路340は、ポンプ室304の放出口305で生じる上記実施されている流量抵抗を低減して、ポンプ室304の放出口と注入口との間に大きな圧力差を与える。一方向弁360からの増加した流量抵抗、および、迂回経路340からの減少した流量抵抗は、軸受部306にインクを流すポンプ室304における陽圧を生じさせる。例示的な一実施形態では、軸受部306およびインク供給容器308における周囲圧力Pは、約14.7psiまたは1気圧である。一方向弁360は、ポンプ室304の注入口303において周囲圧力Pよりも1.0psi上まわる圧力上昇をもたらす流量抵抗を生じさせる。迂回経路340がない場合、一方向弁368は、ポンプ室304の放出口305において周囲圧力Pよりも1.0psi下まわる圧力低下をもたらす流量抵抗を生じさせる。流量迂回経路340は、ポンプ室304の放出口305において上記流量抵抗を効果的に低減する。例示的な迂回経路は、得られる圧力低下が周囲圧力Pより0.5psi下まわるように流量に対する抵抗を低減する。以下の方程式は、Pavgを提供する。ポンプ室304の上記平均圧力Pavgは、上述の例からの特定の値を用いて計算される。
【数1】


従って、ポンプ室304の平均圧力Pavgは周囲圧力よりも大きく、上記圧力室のインクを軸受部306に流し、上記インクがインク供給容器308に戻る前に上記軸受部を滑らかにする。
【0024】
図3の実施形態に対する様々な他の構成および変形例を示す。例えば、上記逆方向動作モードの場合の図3で用いられるものと同様の流量迂回構成が、同様に、上記順方向動作モードに用いられてもよい。簡略化された実施形態が、迂回経路344といった流量迂回経路、または、一方向弁360といった一方向弁を用いてもよい。様々な異なる流量制限装置が、図3のシステムに対して用いるために適合されてもよい。
【0025】
図4は、例えば装置10などの画像装置に対する使用に適した、歯車ポンプ442および流量制限器468を含んだ例示的なインク供給部400を示している。インク供給部400は、インク406の供給を維持するインク容器404を含んでいる。インクフィルタ416は、容器404の幅および深さの全体を覆っている。流量制限器468は、一方向弁として図4で具体化されている。ばね付勢された逆止め弁としてここに示した流量制限器468および一方向弁472は、流体が流れるように容器404をポンプ室420と結合している。上記容器の放出口は、順方向動作モードで一方向弁472を介して、および、逆方向動作モードで一方向弁468を介して、流体が流れるように上記ポンプ室に接続している。ポンプ室420は、流体導管(図示せず)に連結されてもよい放出口424を含んでいる。歯車ポンプ442は、駆動軸としてここに示された、開口部428を介してポンプ室420の外側に伸びる可動部材452のもう1つの部分と共に、歯車ポンプにおいて用いられる歯車としてここに示した、ポンプ室420に配置された可動部材432の一部を含んでいる。駆動軸452は、軸受部436によって形成された溝440を貫いて伸びている。溝440は、軸受部436の一端を形成する開口部428を介してポンプ室420に、流体が流れるように連通されている。他方、軸受部436は、排出路448によって容器404に直接流体が流れるように連通しているように取り付けられた第2端部444を有している。軸受部436の第2端部444は、容器404の床面408のレベルの上のレベルに位置付けられた開口部を含んでいる。流体迂回溝464は、インク容器404の床面408を貫く1つの開口部と、流体が流れるようにポンプ室の放出口424に連通されたもう1つの開口部とを有している。重力付勢された逆止め弁460としてここに示された一方向弁が開いたとき、迂回溝464はポンプ室の放出口424に選択的に流体が流れるように連通される。
【0026】
駆動軸452は、溝440内で動く。ここで、図4の例は、方向480Aおよび480Bにおいて回転できる駆動軸を示している。溝440の直径は、駆動軸452の直径よりも大きい。駆動歯車456においてここに具体化された駆動部材が、電動機474としてここに示したアクチュエータに可動部材452を接続する。電動機474は、異なる2つの方向480Aおよび480Bに上記可動部材を回転させる双方向アクチュエータである。電動機474は、電動機474を選択的に作動させるか、その動作を停止させる制御装置476に効果的に接続されている。いくつかの実施形態では、制御装置476は、電動機474を順方向および逆方向に操作してもよい。制御装置476の機能性は、図1の制御装置70または個々の装置に含まれていてもよい。軸452といった軸と、軸受部の表面436といった軸受部の表面との間の間隙部は、潤滑作用のためポンプ室420のインクを軸受部436と軸452との間に流すことができる溝440を形成している。
【0027】
操作可能な順方向モードでは、制御装置476は、電動機474を作動させて、駆動部材456を噛み合わせ、矢印480Aで示したように駆動軸452を回転させる。ポンプ室420内の可動部材の部分が、歯車432の回転によってここで例示されるように可動し始める。図5は、歯車432が回転するときのポンプ室420の平面図を示している。第2歯車532が、歯車432の歯434を噛み合わせる歯車532の歯534と、方向580に逆回転する歯車532とを備えたポンプ室420に設けられている。図5の例では、歯車532は、歯車432の回転に応じて軸552の周りで自由に回転させることができる。別の実施形態では、電動機といったアクチュエータが、軸552および軸452の両方を噛み合わせてもよい。ポンプ室420内部のインクが、それぞれ矢印582Aおよび582Bで示したように、歯車432および532の周囲を流れる。図5の構成では、歯車432および532の回転は、方向584にポンプ室420へとインクを引き出し、方向588にポンプ室420から上記インクを移動する。上記ポンプは、歯車432および532の回転方向を逆にすることによって、図5の描写とは反対方向にインクを移動してもよい。
【0028】
再び図4を参照すると、順方向動作モードで、一方向弁472が、上記ポンプによって加えられた圧力に応じて開き、方向478にポンプ室420へとインク406を流すことができる。一方向弁460および468は、順方向動作モードでは閉じたままである。上記歯車ポンプは、ポンプ室420から導管(図示せず)を貫いて方向482にインクを移動させる。図2および図3を参照して上記したように、流体が流れるように上記導管を貫いてポンプ室420に連通している流量制限器が、順方向モードで動作する上記ポンプに応じてポンプ室420の陽圧を作り出す流体に対する抵抗を生じさせる。上記陽圧は、ポンプ室420のインクを方向492に開口部428を介して溝440に流す。駆動軸452および歯車432を取り囲む上記液体インクは、上記可動部材を滑らかにし、動作中に上記可動部材に対する摩擦に起因する熱および磨耗を低減する。この構造は、潤滑作用のため流体を収容および循環させ、軸の密封器は不必要になる。上記インクは、開口部444を通って溝440から離れ、方向496で排出路448を越えて容器404に直接流れる。
【0029】
逆方向動作モードでは、制御装置476は、電動機474を作動させ、駆動部材456を噛み合わせ、矢印480Bによって示したように、駆動軸452を回転させる。図4および図5に示した歯車432は、順方向動作モードの反対方向に回転し、ポンプ室の放出口424を通って方向484にインクを引き出す。流量制限器468の一方向弁は、インクの圧力に応じて開き、方向486に容器404へとインクを流すことができ、一方向弁460もまた開き、矢印488および490によって示したように、インク容器404からポンプ室420にインクを流すことができる。逆方向動作モードでは、一方向弁472は閉じたままである。流量制限器468および迂回溝464は、流量制限器468を通るインク容器404におけるインクの流体に対して、ポンプ室の放出口424におけるよりも高い抵抗を生じさせる。迂回溝464は、容器404からポンプ室420の放出口424にインクを供給し、放出口を通る流体への抵抗を低減する。上記注入口において、流量制限器468の一方向弁は、方向486に移動するインクへのあらかじめ定められた抵抗を提供する。この流量抵抗は、逆方向動作モードの間にポンプ室420の陽圧を生じさせ、ポンプ室420のインクを方向492の溝440に流し、軸452を滑らかにすることに続いて方向496に上記インク容器に流す。
【0030】
インク供給部400は、順方向動作モードでも、逆方向動作モードでも、ポンプ室420から軸受部の溝440を通るようにインクを流す。ポンプ442は、密封器のない軸受部436を含んだ密封器のないポンプである。これは、ポンプ室420およびインク容器404から溝440のいくつかまたは全てを隔離する軸受部436の密封器を用いることなく、ポンプ室420が溝440を介して流体を流すことができるようにするためである。本書で用いられる「密封器のない」という用語は、上記ポンプ室の流体を移動させる上記ポンプの可動部材が、上記可動部材の一部を上記流体と接触させない環またはガスケットのような構造を有していないということを意味している。従って、インクは、方向492に上記軸受部の溝に流れ、順方向動作モードでも、逆方向動作モードでも、軸452といった可動部分を滑らかにする。ポンプ室420が軸受部の開口部428の近くの空気を含んでいるときの操作状態では、上記ポンプ室において生じた陽圧は、軸受部の溝440を通る空気を方向492に流す。順方向動作モードでも、逆方向動作モードでも、溝440を介して進むインクが、操作上の磨耗のゆえに上記ポンプの可動部分から侵食される固体の汚染物質を、運んでもよい。これらの汚染物質をフィルタ416が回収し、インク容器404を介してポンプ室420に入らないようにしてもよい。例示的な実施形態では、順方向動作モードでも、逆方向動作モードでも、ポンプ室420を介してポンプで吸い出されたインクの約1パーセントが軸受部436を介して流れる。
【0031】
ここで開示されたインク供給部および画像装置は、インク供給部の例示的な実施形態にすぎず、様々な他の構成要素および実施形態が想定される。軸452は、アクチュエータによって直接駆動されてもよいし、あるいは、1つまたは複数の歯車、ベルト、磁気連結器、または同様のものを介して間接的に駆動されてもよい。歯車432および軸452を含む上記可動部材を歯車ポンプとして示しているが、往復ポンプまたは他の回転ポンプを含む様々なポンプの実施形態が、上述のインク供給部と共に操作するように適応されてもよい。他のポンプ実施形態における可動部材が、図4に示したように上記ポンプ室を介してインクを移動させるために、上記溝および上記ポンプ室内で往復してもよい。軸受部436は、十分に円形の断面を有する溝を有するジャーナル軸受部であってもよいし、あるいは、長方形の形状といった同じまたは他の形状をした断面を有するリニア軸受部であってもよい。軸受部436はさらに、圧力ダム、軸受け筒、軸受パッド、または、当業界に公知の他の軸受部の設計の特徴といった付加的な特徴を含んでいてもよい。図4に示した流量制限器は、付加的なまたはより少ない構成要素を含んでいてもよい。例えば、ポンプ室の放出口424での抵抗が別の実施形態において比較的低い場合、迂回溝464を省略してもよい。他のインク供給部が、順方向動作モードで用いるため、上記ポンプ室と共に統合された付加的な流量制限器を含んでいてもよい。さらに、流量制限器の様々な実施形態を、図4に示した実施形態の変わりに、あるいは、上記実施形態に加えて用いてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入口および放出口を有するポンプ室と、
インクを格納するように構成された容器であって、流体が流れるように上記ポンプ室の上記注入口に接続された放出口を有する、上記容器と、
インクと接するため、および、上記ポンプ室の上記注入口から上記ポンプ室の上記放出口にインクを移動させるために、上記ポンプ室に位置付けられた第1部分、および、上記ポンプ室の外側に位置付けられた第2部分を有する可動部材と、および
上記ポンプ室の外側に位置付けられた上記可動部材の部分の周りに構成された、溝であって、上記溝は第1端部および第2端部を有し、上記溝の上記第1端部は、上記ポンプ室に直結されており、上記溝の上記第2端部は、上記容器に直結されており、これにより、上記ポンプ室における上記インクの一部を、上記ポンプ室から移動させることができ、上記ポンプ室の外側の上記可動部材の上記部分を滑らかにし、上記容器に戻す、上記溝とを含んでいる、プリンタのインクを移動させるためのポンプシステム。
【請求項2】
上記ポンプ室に位置付けられた上記可動部材の上記第1部分は、歯を有する第1歯車であり、上記ポンプ室の外側に位置付けられた上記可動部材の第2部分は、軸であって、上記歯車から、上記軸を回転させるために上記軸を電動器に効果的に接続することができる位置に伸びる上記軸であり、上記ポンプはさらに、
上記ポンプ室内に位置付けられた第2歯車であって、上記第2歯車は、電動器によって回転する上記軸に応じて上記第2歯車を回転させることができる上記第1歯車において上記歯と互いにかみ合う歯を有する、第2歯車を含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
さらに、上記溝は、軸受部内に位置付けられており、上記軸受部は、上記ポンプ室から、上記容器の床面よりも上にある上記容器内の位置まで伸びている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
さらに、
上記可動部材に効果的に接続されている双方向アクチュエータと、
上記双方向アクチュエータに効果的に接続されている制御装置であって、上記可動部材および上記ポンプインクを、上記ポンプ室の上記注入口から上記ポンプ室の上記放出口に、または、上記ポンプ室の上記放出口から上記ポンプ室の上記注入口に移動するために、上記双方向アクチュエータを操作するように構成されている、上記制御装置とを含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
さらに、
上記ポンプ室の上記注入口と上記容器との間に効果的に接続され、上記容器から上記注入口を介して上記ポンプ室にインクを流すことができるように構成され、上記ポンプ室から上記インク容器へのインクの流れを妨げるように構成された、第1一方向弁と、
上記ポンプ室と上記容器との間に効果的に接続され、上記ポンプ室から上記容器にインクを流すことができるように構成され、上記インク容器から上記ポンプ室へのインクの流れを妨げるように構成された、第2一方向弁とを含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
さらに、
流体が流れるように上記容器に連通している第1開口部と、流体が流れるように上記ポンプ室の上記放出口に連通している第2開口部とを有する流体迂回溝、および、
上記流体迂回溝に位置付けられた一方向弁であって、上記ポンプ室の上記放出口から上記ポンプ室を介して上記ポンプ室の上記注入口に移動するインクに応じて、上記容器から上記迂回溝を介して上記ポンプ室の上記放出口にインクを流すことができるように構成された、上記一方向弁、を含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
上記溝を介して移動する上記インクの量は、上記ポンプ室を介して上記可動部材によって移動されるインクの量の約5パーセント未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
上記可動部材は、上記ポンプ室に対して移動する往復部材である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
さらに、上記溝を介して上記容器に戻るインクを、上記インクが上記ポンプ室に戻る前にろ過する位置において、上記容器に位置付けられたフィルタを含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
液体インクを格納するように構成されたインク容器であって、上記インク容器は放出口を含んだ、インク容器と、
注入口と放出口とを有するポンプ室であって、上記ポンプ室の上記注入口は、流体が流れるように上記容器の上記放出口に連結されている、上記ポンプ室と、
上記ポンプ室に配置され、上記ポンプ室を介してインクを移動するように構成された、可動部材と、
上記ポンプ室に効果的に接続された第1端部と、上記インク容器の床面より上の位置で終端する第2端部とを有する軸受部であって、上記軸受部は、上記ポンプ室と上記軸受部の上記第2端部との間で溝を形成している、上記軸受部と、および
上記軸受部の上記溝に位置付けられた駆動軸であって、上記ポンプ室を介してインクを移動させ、上記ポンプ室の上記インクの一部を、間隙部に、および、上記間隙部を介して上記駆動軸と上記軸受部との間に形成された上記溝に移動させるために、上記ポンプ室に上記可動部材を移動するために上記駆動軸が上記可動部材に効果的に接続されている、上記駆動軸とを含んでいる、インクポンプシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−71598(P2012−71598A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199808(P2011−199808)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】