説明

流体の混合装置、これを集積化した流体混合装置および流体混合システム

【課題】基板面に対して特定の角度を有して噴出させた流体同士を混合させる流体の混合装置を提供する。
【解決手段】流体を搬送する複数の流路と、該流路に対応し、該流路に連通して設けられた複数の噴出口とを備え、前記複数の噴出口より噴出した流体の進行方向が交差することで複数の流体を混合させる流体の混合装置であって、前記複数の噴出口は基板表面に設けられ、前記噴出口に連通する前記基板中に設けられた流路における中心軸を部分的にずらせることで、前記噴出口の少なくとも一つより噴出する流体の進行方向を前記基板表面に対して傾斜させた流体の混合装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を噴出し、流体同士を混合させる流体の混合装置、これを集積化した流体混合装置および流体混合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタに用いられる顔料等の製造に係る化学工業や医薬品、試薬等の製造に係る医薬品工業の分野では、マイクロミキサー又はマイクロリアクターと呼ばれる微小容器を用いた新しい製造プロセスの開発が進められている。従来のバッチ式の反応装置においては一次生成物が反応装置内で引き続き反応をしてしまうことから、生成物の不均一性を生じることがある。特に微粒子を製造する場合においては、いちど生成した微粒子の一次粒子が反応によりさらに成長して微粒子の大きさに不均一さが生じる可能性がある。
【0003】
それに対しマイクロミキサーでは流体同士がマイクロスケールの流路内を連続的に殆ど滞留することなく流通するため、いちど生成した微粒子が再び反応することを防止でき、微粒子の大きさの均一性を高めることができる。
【0004】
なお、マイクロミキサーとマイクロリアクターとは基本的な構造が共通であるが、特に、複数の溶液を混合する際に化学反応を伴うものをマイクロリアクターと言う場合がある。このことから、マイクロミキサーには、マイクロリアクターが含まれるものとして以下の説明を行う。
【0005】
このようなマイクロミキサーとしては、図15に示すように、2つの流体を高速で混合して固体析出物を生成する方法が開示されている(特許文献1)。
これは、2つの流体がオリフィス101、102に供給され、つづいて末広がり遮蔽部103を高速で通過することにより、ジェット衝突混合室104にて固体析出物を生成する方法である。
【0006】
また、図16に示すように、斜めのノズルが機械加工により形成された金属製のマイクロミキサーが販売されている。
例えば、アイエムエム社製、インピンジング マイクロ ジェット ミキサー(Institut fur Mikrotechnik Mainz社製 Impinging Jet Micro Mixer)がある。
【0007】
これは、ノズル105、106より流体を噴出させ、噴出された流体を空気中で混合させるマイクロミキサーである。
また、特許文献2には、インクジェット記録装置に用いられるインクジェットヘッドが開示されている。このヘッドは、基板に2つの流路をずらせて連結して設け、インクを一方の流路から導入し、連結部に設けられた発熱体でインクを発泡して、他方の流路から吐出するヘッドである。このヘッドからのインクの吐出方向は、基板面に対して直角方向である。また、1つのインクを吐出するものであり、2つ以上の流体を混合することの開示はない。
【特許文献1】特開2002−336667号公報
【特許文献2】特開平9−1808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなマイクロミキサーを用いれば、混合及び反応の場として大容積のタンク等を用いたバッチ法と比較し、微小でかつ狭い粒度分布を有する粒子を生成することができる。
【0009】
しかし、上記のような方法において、さらに粒子の微小化と粒径の均一化を図るためには、さらに混合効率を向上させる必要がある。そのためにはノズルを小径化し流体の絶対量を小さくする必要がある。また、ミキサーの生産性を上げるためには、ノズルを多数作成する必要がある。しかし、一般的な機械加工の方法では、ノズルの小径化に限界がある。ノズルを多数作成する場合、機械加工やレーザー加工では多大な時間を要し、コストアップの要因になる。また、ノズルの位置やサイズに高い精度を求めることは困難である。また、一般的な機械加工では、穴の形状が丸に限定されていた。
【0010】
一方、フォトリソグラフィーとシリコンのドライエッチングを用いれば、直径数十μmでかつ数千ものノズルを高い位置精度で一括に作製することができる。しかし、一般的に基板に対して垂直方向にエッチングされるため、流体を斜めに噴出させるノズルを作成することは困難であった。
【0011】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、基板面に対して特定の角度を有して噴出させた流体同士を混合させる流体の混合装置およびその製造方法を提供するものである。
【0012】
また、上記の流体の混合装置を用いた集積化した流体混合装置を提供するものである。さらに、前記集積化流体混合装置を用いた流体混合システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により提供される流体の混合装置は、流体を搬送する複数の流路と、該流路に対応し、該流路に連通して設けられた複数の噴出口と、を備え、前記複数の噴出口より噴出した流体の進行方向が交差することで複数の流体を混合させる流体の混合装置であって、前記複数の噴出口は基板表面に設けられ、前記噴出口に連通する前記基板中に設けられた流路における中心軸を部分的にずらせることで、前記噴出口の少なくとも一つより噴出する流体の進行方向を前記基板表面に対して傾斜させたことを特徴とする流体の混合装置である。
【0014】
本発明の流体の混合装置は、複数の流路にそれぞれ流体を供給する供給流路を更に有し、第一の流体を噴出させる第一の噴出口が複数設けられ、これに対応して第二の流体を噴出させる第二の噴出口が複数設けられ、第一の噴出口には、第一の供給流路を介して第一の流体が供給され、第二の噴出口には、第二の供給流路を介して第二の流体が供給されるようにして集積化したものを包含する。
【0015】
また、本発明により提供される流体の混合システムは、本発明の混合装置を備えた流体の混合システムであって、前記流体の混合装置に供給する流体を貯留する供給物貯留手段と、前記流体の混合装置に供給する流体の温度を調整する温度制御手段と、前記供給物貯留手段から流体を前記流体の混合装置に搬送する搬送手段と、該搬送手段を制御する流体制御手段と、前記流体の混合装置から流出した流体の温度を調整する温度制御手段と、前記流体の混合装置から流出した流体を貯留する流出物貯留手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明により提供される流体混合装置の製造方法は、基板と、該基板に設けられた流体を噴出する少なくとも2つ以上の流体の噴出手段を有し、該2つ以上の流体噴出手段は互いに噴出する流体の噴出方向が交差して流体を混合するように配置されている流体混合装置の製造方法であって、基板の第一の面よりエッチングを行い第一の流路を形成する工程と、前記基板を第一の面の裏側の第二の面より第一の流路の中心軸と中心軸をずらしてエッチングを行うことで第二の流路を形成し、第一の流路と第二の流路のそれぞれの一方の端部の側部を連結して流体噴出手段を得る工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来のフォトリソグラフィ−とドライエッチングからなる半導体製造技術を用いて微小な流体噴出手段を基板上に作成し、流体を基板面に対して特定の角度で噴出させることができる。これにより、流体を噴出する噴出口(ノズルとも称する)を小径化でき、複数のノズルを高い位置精度で構成した流体噴出手段を用いた集積化流体混合装置を実現できる。また、ノズルを多数作成する場合、従来の一般的な機械加工に比べて加工時間を短縮できるため、コストを低減できる。また、流体噴出手段のノズルの穴の形状は丸に限定されてない。
【0018】
従来、実験的な製造設備により製造された少量の混合物質を大規模の製造設備により多量に製造するためには、新たにプラント設計が必要となり反応の再現性を得るために多大の労力および時間を費やしてきた。本発明の流体混合システムを用いれば、流体混合装置を集積化することで必要とする製造量に対応することができるため、上記の労力および時間を大幅に減少できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の流体の混合装置は、流体を搬送する複数の流路と、該流路に対応し、該流路に連通して設けられた複数の噴出口と、を備え、前記複数の噴出口より噴出した流体の進行方向が交差することで複数の流体を混合させる流体の混合装置であって、前記複数の噴出口は基板表面に設けられ、前記噴出口に連通する前記基板中に設けられた流路における中心軸を部分的にずらせることで、前記噴出口の少なくとも一つより噴出する流体の進行方向を前記基板表面に対して傾斜させたことを特徴とする。
【0020】
前記流体は、互いに平行な第一の流路と第二の流路とを通って前記噴出口に至り、第一の流路と第二の流路はそれぞれの一方の端部で且つそれぞれの流路における中心軸からずれた側部で連結された構成とすることができる。
【0021】
また、複数の噴出口の間に凹みを備えた構成とすることもできる。
そして、複数の噴出口の間に柱構造を備えた構成とすることもできる。
噴出口の周囲は撥水撥油処理されていてもよい。
【0022】
基板は、シリコンを含有する材料からなり、流路は半導体微細加工により形成されていることが好ましい。前記基板は、シリコン、酸化膜、シリコン、酸化膜、シリコンが積層されて構成することもできる。また、第一の流路および第二の流路は耐薬品性を備えていることが好ましい。
【0023】
また、2つの噴出口より噴出させる流体の進行方向をそれぞれ前記基板表面に対して傾斜させて2つの流体を混合させる構成とすることもできる。
また、一つの噴出口に連通する流路が1つが直線状の流路からなり、流体を基板表面に対して垂直方向に噴出する構成とすることもできる。
【0024】
また、複数の流路にそれぞれ流体を供給する供給流路を更に有する構成とすることもできる。
また、少なくとも二種類の流体を混合させる流体の混合装置であって、第一の流体を噴出させる第一の噴出口が複数設けられ、これに対応して第二の流体を噴出させる第二の噴出口が複数設けられ、第一の噴出口には、第一の供給流路を介して第一の流体が供給され、第二の噴出口には、第二の供給流路を介して第二の流体が供給される構成とすることもできる。
【0025】
また、第一及び第二の噴出口を備えた基板と、第一及び第二の供給流路を備えた供給板と、を互いに接合した構成とすることもできる。
また、本発明の流体混合装置の製造方法は、基板と、該基板に設けられた流体を噴出する少なくとも2つ以上の流体の噴出手段を有し、該2つ以上の流体噴出手段は互いに噴出する流体の噴出方向が交差して流体を混合するように配置されている流体混合装置の製造方法であって、基板の第一の面よりエッチングを行い第一の流路を形成する工程と、前記基板を第一の面の裏側の第二の面より第一の流路の中心軸と中心軸をずらしてエッチングを行うことで第二の流路を形成し、第一の流路と第二の流路のそれぞれの一方の端部の側部を連結して流体噴出手段を得る工程を有することを特徴とする。
【0026】
次に、流体混合装置に用いられる流体噴出手段について説明する。
図1は、本発明の流体混合装置に用いられる流体噴出手段の一実施態様を示す概略図である。図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A’線断面図を示す。図1に示す流体噴出手段は傾斜流体噴出手段である。
【0027】
流体混合装置は、基板11と、該基板11に設けられた流体を噴出する少なくとも2つ以上の流体噴出手段201を有し、該2つ以上の流体噴出手段は互いに流体の噴出方向が交差して流体を混合するように配置されている。
【0028】
図1に示す様に、流体噴出手段201は、互に平行な第一の流路12と、第二の流路13を有する。第一の流路12の一方の端部の側部14と、第二の流路13の一方の端部の側部15は開口しており、該側部14と側部15は貫通して連結している。ここで、第一の流路12の中心軸と第二の流路13の中心軸は、互いにずれて配されている。第一の流路12の他方の端部の導入口202から流体を導入し、第二の流路13の他方の端部の噴出口203から、流路12、13の平行方向16に対して傾斜して流体は噴出する。この流体噴出手段201は、傾斜して流体は噴出するので傾斜流体噴出手段と称する。
【0029】
上記の様に、流体噴出手段201は、基板11を貫通する第一の流路12と、第二の流路13からなる流路204を有する。
また、流路204の連結部205により、第一の流路12の導入口202と、第二の流路13の噴出口203とが連結されている。さらに、流路204は、導入口202の断面の中心を結んだ軸207と、噴出口203の断面の中心を結んだ軸208とが一致しないように構成されている。流体を導入口202より特定の圧力により導入することにより、流体は基板面の直角方向に対して特定の角度206を有して噴出口203から噴出される。
【0030】
連結部205の長さは、流路204の導入口202の断面の中心を結んだ軸207と、噴出口203の断面の中心を結んだ軸208の間の距離w13を示す。
図2は、本発明の流体混合装置に用いられる流体噴出手段の他の実施態様を示す断面図である。図2の連結部の長さは、図1の連結部の長さより短い。即ち、図2は、流路204の導入口202の断面の中心を結んだ軸207と、噴出口203の断面の中心を結んだ軸208の間の距離が短い流体噴出手段を示す。
【0031】
噴出の様子について、数値流体計算でシミュレーションを行った。計算結果について図1を用いて説明する。
流体は水とし、基板の厚さt11が200μm、導入口202の幅w11、噴出口203の幅w12が100μm、連結部205の高さh11が50μmとした。ここで、噴出口203から連結部205までの高さh12を10μm、25μm、50μmに変えて計算を行った。
【0032】
その結果、h12が10μmのとき最大噴出角度206は約48°、h12が25μmのとき最大噴出角度206は約35°、h12が50μmのとき最大噴出角度206は約18°であった。いずれの形状の場合も、流速が20m/sを超えると噴出角度が安定することがわかった。噴出角度が安定する流速以上で本発明の装置を運転することが望ましい。
【0033】
流体噴出手段の上記の各部分の数値を以下に示す。
導入口の幅w11は、10μm以上1000μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、特に好ましくは100μm以上500μm以下の範囲とすることが適切である。
【0034】
噴出口の幅w12は、1μm以上500μm以下、好ましくは1μm以上250μm以下、特に好ましくは1μm以上200μm以下の範囲とすることが適切である。
連結部の高さh11は、10μm以上200μm以下、好ましくは10μm以上100μm以下、特に好ましくは40μm以上80μm以下の範囲とすることが適切である。
【0035】
連結部の長さは、5μm以上1000μm以下、好ましくは10μm以上800μm以下、特に好ましくは50μm以上600μm以下の範囲とすることが適切である。
噴出口から連結部までの高さh12は、5μm以上100μm以下、好ましくは10μm以上100μm以下、特に好ましくは10μm以上50μm以下の範囲とすることが適切である。
【0036】
流体の流速は、少なくとも1m/s以上、好ましくは1m/s以上100m/s以下の範囲とすることが適切である。
流体の圧力は少なくとも1kPa以上の圧力で導入することが好ましい。この場合、前記の流速範囲で流体を噴出させることが可能である。
【0037】
噴出角度206は、10°以上80°以下、好ましくは10°以上60°以下、特に好ましくは20°以上45°以下の範囲とすることが適切である。
また、顔料を生成するためには、導入口の幅w11が100μm以上500μm以下、噴出口の幅w12が1μm以上200μm以下、連結部の高さh11が40μm以上80μm以下、噴出口から連結部までの高さh12は、10μm以上50μm以下の範囲が好ましい。
【0038】
本発明に用いる流体は粘度の大きさに関わらず用いることができる。しかし、一般的に流体の粘度が高くなるほど噴出口を通過する際の圧力損失は大きくなる。従って、噴出させる流体の粘度が高い場合は、流路204の断面および連結部205の面積を大きくすることが望ましい。
【0039】
また、本発明の流体噴出手段について、噴出口の断面形状は、特に制限されず、多角形、円、半円、楕円であってもよい。流路の断面形状は、特に制限されず、多角形、円、半円、楕円であってもよい。
【0040】
なお、噴出口の断面形状が円、楕円の場合には、端部の側部14と端部の側部15が重複する面積が噴出口の断面の面積の1/10以上1/2以下であることが好ましい。連結部は四角形とするのが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中における、寸法、形状、材質、作製プロセスは一例であり、本発明の用件を満たす範囲内であれば、設計事項として任意に変更することができる。
【0042】
実施例1
図3および図4は、実施例1の流体混合装置の説明図である。図3は流体混合装置の断面図、図4は図3の噴出口側から観察した図を示す。図3は図4のB−B’線断面図を示す。
【0043】
流体混合装置401は、基板に流体噴出手段402および403を備えており、流体噴出手段402、403は互いに噴出方向が交差するように配置されている。流体噴出手段402および403はいずれも傾斜流体噴出手段である。
【0044】
流体が混合されるまでの経路について、図3および図4を用いて説明する。第1の流体404を導入口406より特定の圧力により導入することにより、第1の流体404は基板面に対して特定の角度を有して噴出口408から噴出される。同様に、第2の流体405を導入口407より特定の圧力により導入することにより、第2の流体405は基板面に対して特定の角度を有して噴出口409から噴出される。噴出された第1の流体404および第2の流体405は、流体混合装置401の下方で交差し混合される。
【0045】
さらに、図4に示すように、流体噴出手段402と流体噴出手段403の間には凹み410が設けられていることが望ましい。これにより、噴出口408の周囲に付着した第1の流体404が、噴出口409へ伝っていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口409の周囲に付着した第2の流体405が、噴出口408へ伝っていくことを防ぐことができる。また、流体噴出手段402と流体噴出手段403の間の凹み410は、流体噴出手段402および流体噴出手段403の周りを囲んでいることが望ましい。その理由は、噴出口408の周囲に付着した第1の流体404が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。尚、凹み410は必須な構成ではない。
【0046】
さらに、図4に示すように、噴出口408、409の周囲411は撥水撥油処理されていることが望ましい。これにより、流体の噴出角度を安定させることができる。例えば、撥水撥油性を有する樹脂をスピンコーターにより成膜し、その後必要な領域のみパターニングすることも可能である。
【0047】
本実施例の流体混合装置は、流体を混合して行われる反応の結果、固体物を生成する反応に特に有効である。その理由は、流路外で反応が生じて固体物が生成するため、流路内につまりが生じることがないためである。
【0048】
実施例2
図12は実施例2の流体混合装置を説明する説明図である。図12(a)は流体混合装置の断面図、図12(b)は図12(a)の噴出口側から観察した図である。図12(a)は図12(b)のF−F’線断面図を示す。
【0049】
流体混合装置1201は、基板に流体噴出手段1202および1203を備えており、流体噴出手段1202、1203は互いに噴出方向が交差するように配置されている。流体噴出手段1202および1203はいずれも傾斜流体噴出手段である。
【0050】
流体が混合されるまでの経路について、図12(a)を用いて説明する。第1の流体1204を導入口1206より特定の圧力により導入することにより、第1の流体1204は基板面に対して特定の角度を有して噴出口1208から噴出される。
【0051】
同様に、第2の流体1205を導入口1207より特定の圧力により導入することにより、第2の流体1205は基板面に対して特定の角度を有して噴出口1209から噴出される。
【0052】
噴出された第1の流体1204および第2の流体1205は、流体混合装置1201の下方で交差し混合される。
さらに、図12(a)に示すように、流体噴出手段1202と流体噴出手段1203の間には柱構造1212が設けられていることが望ましい。これにより、噴出口1208の周囲に付着した第1の流体1204が、噴出口1209へ伝っていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口1209の周囲に付着した第2の流体1205が、噴出口1208へ伝っていくことを防ぐことができる。また、流体噴出手段1202と流体噴出手段1203の間の柱構造1212は、流体噴出手段1202および流体噴出手段1203の周りを囲んでいることが望ましい。これにより、噴出口1208の周囲に付着した第1の流体1204が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口1209の周囲に付着した第2の流体1205が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。尚、1212柱構造は必須な構成ではない。
【0053】
さらに、図12(b)に示すように、噴出口1208、1209の周囲1213は撥水撥油処理されていることが望ましい。これにより、流体の噴出角度を安定させることができる。例えば、撥水撥油性を有する樹脂をスピンコーターにより成膜し、その後必要な領域のみパターニングすることも可能である。
本実施例の流体混合装置は、実施例1と同様に、反応の結果、固体物を生成する反応の場合に特に有効である。
【0054】
実施例3(傾斜流体噴出手段と直線流体噴出手段からなる流体混合装置)
図5は、実施例3の流体混合装置を説明する断面図である。図5(a)は流体混合装置の断面図、図5(b)は図5(a)の噴出口側から観察した図を示す。図5(a)は図5(b)のE−E’線断面図を示す。
【0055】
流体混合装置501は、流体噴出手段502と503を備えた流体混合装置である。流体噴出手段502は傾斜流体噴出手段である。流体噴出手段503は直線状の流路500からなり、流体を直線方向に噴出する直線流体噴出手段である。
【0056】
また、流体噴出手段502と流体噴出手段503は互いに噴出方向が交差するように配置されている。
流体が混合されるまでの経路について、図5(a)を用いて説明する。第1の流体504を導入口506より特定の圧力により導入することにより、第1の流体504は基板面に対して特定の角度を有して噴出口508から噴出される。
【0057】
同様に、第2の流体505を導入口507より特定の圧力により導入することにより、第2の流体505は基板面に対して垂直の方向に噴出口509から噴出される。
噴出された第1の流体504および第2の流体505は、流体混合装置501の下方で交差し混合される。
【0058】
図5(b)に示すように、噴出口508は長方形、噴出口509は円形である。これにより、第2の流体505の噴出方向にズレが生じても、第1の流体504は帯状に噴出されるため、必ず衝突させることができる。
【0059】
さらに、噴出口509は噴出口508の長辺方向に複数配置することにより、第1の流体504と第2の流体505の混合比を変えることができる。なお、噴出口の形状は前記の形状に限定されず、例えば直径の異なる円形の噴出口の組み合わせや、長方形と長方形の組み合わせであってもよい。
【0060】
噴出口508、509の周囲は撥水撥油処理されていることが望ましい。これにより、流体の噴出角度を安定させることができる。また、噴出口508、509の周囲に撥水撥油処理することは必ずしも必要ない。
【0061】
流体噴出手段502と流体噴出手段503の間には凹みが設けられていることが望ましい。これにより、噴出口508の周囲に付着した第1の流体504が、噴出口509へ伝っていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口509の周囲に付着した第2の流体505が、噴出口508へ伝っていくことを防ぐことができる。また、流体噴出手段502と流体噴出手段503の間の凹みは必ずしも必要ない。
【0062】
流体噴出手段502と流体噴出手段503の間には柱構造が設けられていることが望ましい。これにより、噴出口508の周囲に付着した第1の流体504が、噴出口509へ伝っていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口509の周囲に付着した第2の流体505が、噴出口508へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0063】
また、流体噴出手段502と流体噴出手段503の間の柱構造は、流体噴出手段502および流体噴出手段503の周りを囲んでいることが望ましい。
これにより、噴出口508の周囲に付着した第1の流体504が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。
【0064】
同様に、噴出口509の周囲に付着した第2の流体505が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。また、流体噴出手段502と流体噴出手段503の間の柱構造は必ずしも必要ない。
【0065】
第1の流体504の表面張力は第2の流体505の表面張力より大きいことが望ましい。噴出口周辺部に撥水撥油処理がされていても、表面張力の小さい流体は噴出口周辺部に濡れやすい。このため、基板に対して斜めに噴出させると噴出角度が不安定になり、他方の噴出口へ伝っていく恐れがある。そこで、表面張力の小さい流体は基板面に対して垂直に噴出させることにより、他方の噴出口へ流体が伝わっていくことを防ぐことができる。
【0066】
また、表面張力の小さい流体を基板面に対して垂直に噴出させることは必ずしも必要ない。
本実施例の流体混合装置は、実施例1と同様に、反応の結果、固体物を生成する反応の場合に特に有効である。
【0067】
実施例4(噴出口が円弧形状の傾斜流体噴出手段を用いた流体混合装置)
図13は実施例4の流体混合装置の説明図である。
図13(a)および図13(b)は流体混合装置の断面図、図13(c)は図13(a)および図13(b)の噴出口側から観察した図を示す。
【0068】
図13(a)は図13(c)のG−G’線断面図、図13(b)は図13(c)のH−H’線断面図を示す。
流体混合装置1301は、流体噴出手段1302、1303を備えた流体混合装置である。流体噴出手段1302は傾斜流体噴出手段である。流体噴出手段1303は基板を垂直に貫通した流路を有する直線流体噴出手段である。
【0069】
流体噴出手段1302は、噴出口1311が円弧形状の流体噴出手段である。流体噴出手段1302および1303は互いに噴出方向が1つの位置で交差するように配置されている。
【0070】
流体が混合されるまでの経路について、図13(a)を用いて説明する。第1の流体1305を導入口1308より特定の圧力により導入することにより、第1の流体1305は基板面に対して特定の角度を有して噴出口1311から噴出される。
【0071】
同様に、第2の流体1306を導入口1309より特定の圧力により導入することにより、第2の流体1306は基板面に対して垂直の方向に噴出口1312から噴出される。このとき、第1の流体1305は円弧形状でかつ帯状に噴出される。これにより、噴出された第1の流体1305および第2の流体1306は、流体混合装置1301の下方で交差し混合される。
【0072】
噴出口1311、1312の周囲は撥水撥油処理されていることが望ましい。これにより、流体の噴出角度を安定させることができる。また、噴出口1311、1312の周囲に撥水撥油処理することは必ずしも必要ない。
【0073】
流体噴出手段1302と流体噴出手段1303の間には凹みが設けられていることが望ましい。これにより、噴出口1311の周囲に付着した第1の流体1305が、噴出口1312へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0074】
同様に、噴出口1312の周囲に付着した第2の流体1306が、噴出口1311へ伝っていくことを防ぐことができる。また、流体噴出手段1302と流体噴出手段1303の間の凹みは必ずしも必要ない。
【0075】
流体噴出手段1302と流体噴出手段1303の間には柱構造が設けられていることが望ましい。これにより、噴出口1311の周囲に付着した第1の流体1305が、噴出口1312へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0076】
同様に、噴出口1312の周囲に付着した第2の流体1306が、噴出口1311へ伝っていくことを防ぐことができる。また、流体噴出手段1302と流体噴出手段1303の間の柱構造は、流体噴出手段1302および流体噴出手段1303の周りを囲んでいることが望ましい。
【0077】
これにより、噴出口1311の周囲に付着した第1の流体1305が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口1312の周囲に付着した第2の流体1306が他の方向へ伝っていくことを防ぐことができる。また、流体噴出手段1302と流体噴出手段1303の間の柱構造は必ずしも必要ない。
【0078】
第1の流体1305の表面張力は第2の流体1306の表面張力より大きいことが望ましい。噴出口周辺部に撥水撥油処理がされていても、表面張力の小さい流体は噴出口周辺部に濡れやすい。このため、基板に対して斜めに噴出させると噴出角度が不安定になり、他方の噴出口へ伝っていく恐れがある。
【0079】
そこで、表面張力の小さい流体は基板面に対して垂直に噴出させることにより、他方の噴出口へ流体が伝わっていくことを防ぐことができる。また、表面張力の小さい流体を基板面に対して垂直に噴出させることは必ずしも必要ない。
【0080】
本実施例の流体混合装置は、流体噴出手段1302の噴出口1311を円弧形状にすることにより、第1の流体1305を円弧形状でかつ帯状に噴出させることが可能である。これにより、第2の流体1306の噴出方向にズレが生じても、必ず第1の流体1305と衝突させることができる。
【0081】
本実施例の流体混合装置は、実施例1と同様に、反応の結果、固体物を生成する反応の場合に特に有効である。
【0082】
実施例5(2つの位置で交差する流体混合装置)
図6は、実施例5の流体混合装置を説明する断面図である。
【0083】
流体混合装置601は、流体噴出手段602、603、604を備えた流体混合装置である。流体噴出手段602と604は傾斜流体噴出手段である。流体噴出手段603は基板を垂直に貫通した流路を有する直線流体噴出手段である。
【0084】
流体噴出手段602は、噴出口611の断面積が噴出口613の断面積に比べて大きい流体噴出手段である。流体噴出手段602、604、流体噴出手段603は互いに噴出方向が2つの位置で交差するように配置されている。
【0085】
流体が混合されるまでの経路について、図6を用いて説明する。第1の流体605を導入口608より特定の圧力により導入することにより、第1の流体605は基板面に対して特定の角度を有して噴出口611から噴出される。
【0086】
同様に、第2の流体606を導入口609より特定の圧力により導入することにより、第2の流体606は基板面に対して垂直の方向に噴出口612から噴出される。
さらに、第3の流体607を導入口610より特定の圧力により導入することにより、第3の流体607は基板面に対して特定の角度を有して噴出口613から噴出される。このとき、第3の流体607の噴出角度は第1の流体605の噴出角度と異なる。
【0087】
これにより、噴出された第1の流体605および第2の流体606は、流体混合装置601の下方で交差し混合され、つづいて第3の流体607と交差し混合される。
噴出口611、612、613の周囲は撥水撥油処理されていることが望ましい。これにより、流体の噴出角度を安定させることができる。また、噴出口611、612、613の周囲に撥水撥油処理することは必ずしも必要ない。
【0088】
流体噴出手段602と流体噴出手段603の間、および流体噴出手段603と流体噴出手段604の間には凹みが設けられていることが望ましい。
これにより、噴出口611の周囲に付着した第1の流体605が、噴出口612へ伝っていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口612の周囲に付着した第2の流体606が、噴出口611、613へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0089】
同様に、噴出口613の周囲に付着した第3の流体607が、噴出口612へ伝っていくことを防ぐことができる。また、流体噴出手段602と流体噴出手段603の間、および流体噴出手段603と流体噴出手段604の間の凹みは必ずしも必要ない。
【0090】
流体噴出手段602と流体噴出手段603の間、および流体噴出手段603と流体噴出手段604の間には柱構造が設けられていることが望ましい。
これにより、噴出口611の周囲に付着した第1の流体605が、噴出口612へ伝っていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口612の周囲に付着した第2の流体606が、噴出口611、613へ伝っていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口613の周囲に付着した第3の流体607が、噴出口612へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0091】
また、流体噴出手段602と流体噴出手段603の間、および流体噴出手段603と流体噴出手段604の間の柱構造は、流体噴出手段602および流体噴出手段603の周りを囲んでいることが望ましい。
【0092】
これにより、噴出口611および噴出口613の周囲に付着した第1の流体605および第2の流体607が、他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。
また、流体噴出手段602と流体噴出手段603の間、および流体噴出手段603と流体噴出手段604の間の柱構造は必ずしも必要ない。
【0093】
第1の流体605および第3の流体607の表面張力は第2の流体606の表面張力より大きいことが望ましい。噴出口周辺部に撥水撥油処理がされていても、表面張力の小さい流体は噴出口周辺部に濡れやすい。
【0094】
このため、基板に対して斜めに噴出させると噴出角度が不安定になり、他方の噴出口へ伝っていく恐れがある。そこで、表面張力の小さい流体は基板面に対して垂直に噴出させることにより、他方の噴出口へ流体が伝わっていくことを防ぐことができる。
【0095】
また、表面張力の小さい流体を基板面に対して垂直に噴出させることは必ずしも必要ない。
本実施例の流体混合装置は、少なくとも3つ以上の流体噴出手段を、噴出方向が少なくとも2つの位置で交差するように配置することにより、必要な順番で化学反応を実施することが可能である。
【0096】
さらに、本発明の流体混合装置は、任意の数のノズルを配置することで、任意の数の種類の流体を混合する流体混合装置を構成することができる。
【0097】
実施例6(集積化流体混合装置)
図7は、実施例6の集積化流体混合装置を説明する図である。
【0098】
図7(a)は集積化流体混合装置701の断面図である。図7(b)は集積化流体装置701を噴出口側から観察した図である。図7(a)は図7(b)のC−C’線断面図を示す。
【0099】
集積化流体混合装置701は、本発明の流体混合装置を備えた基板702と、2種類の流体を該流体混合装置に供給するための供給流路が形成された供給板703とが互いに接合されたものである。
【0100】
図7(a)を用いて、流体が噴出されるまでの経路を示す。供給板703に形成された流体供給口(図示しない)から第1の反応液が供給流路704に導入される。
第1の反応液は供給流路704を通過し、導入口706を通って、流路708に導入される。流路708を通過した流体は噴出口712から噴出される。第2の反応液は供給流路705を通って、流路709に導入される。
【0101】
流路709を通過した流体は噴出口713から噴出される。これにより、噴出口712および713から噴出された流体は基板702の下方で交差し混合される。
各部の寸法を以下に説明する。供給板703の厚みt61は1000μmであり、供給流路704の幅w61、供給流路705の幅w62はともに500μmである。また、供給流路704、705の深さd61は800μmである。
【0102】
基板702はSOI基板を用いており、シリコン層t64は25μm、シリコン酸化膜層t63は0.5μm、支持基板層t62は200μmである。
基板702に形成される導入口706の幅w63、導入口707の幅w64、噴出口712の幅w65、噴出口713の幅w66は、それぞれ100μmである。さらに、連結部710の高さh61、連結部711の高さh62はそれぞれ50μmである。
【0103】
供給流路704、供給流路705、流路708および流路709はシリコン窒化膜807が成膜されている。これは、アルカリの反応液に対して耐性をもつためである。
噴出口712、713の周囲は撥水撥油処理されていることが望ましい。これにより、流体の噴出角度を安定させることができる。また、噴出口712、713の周囲に撥水撥油処理することは必ずしも必要ない。
【0104】
実施例1と同様に、噴出口712と噴出口713の間には凹みを設けることが望ましい。これにより、噴出口712の周囲に付着した第1の反応液が、噴出口713へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0105】
同様に、噴出口713の周囲に付着した第2の反応液が、噴出口712へ伝っていくことを防ぐことができる。また、噴出口712と噴出口713の間の凹みは必ずしも必要ない。
【0106】
実施例2と同様に、噴出口712と噴出口713の間には柱構造が設けられていることが望ましい。これにより、噴出口712の周囲に付着した第1の反応液が、噴出口711へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0107】
同様に、噴出口711の周囲に付着した第2の流体が、噴出口712へ伝っていくことを防ぐことができる。また、噴出口712と噴出口713の間の柱構造は必ずしも必要ない。
【0108】
次に、本実施例の集積化流体混合装置の作製工程を説明する。図8Aおよび図8Bは、基板702の作製方法を、基板702の断面図にて示したものである。
まず、使用するSOI基板は、活性層801の厚さが25μm、シリコン酸化膜層802の厚さが0.5μm、支持基板層803の厚さが200μmである[図8(a)]。
【0109】
まず、活性層801の側にフォトリソグラフィ法を用いて、フォトレジスト804により噴出口712、713のパターンを形成する。次に、フォトレジスト804をエッチングマスクとしてSOI基板702を、SF6ガスとC48ガスのプラズマによりドライエッチングし、深さ25μmの噴出口を形成する[図8(b)]。
【0110】
次に、BHF(バッファードフッ酸)によりシリコン酸化膜802を除去した後、SF6ガスとC48ガスのプラズマによりドライエッチングし、深さ50μmの連結部710、711を形成する[図8(c)]。
【0111】
次に、支持基板層803の側にフォトリソグラフィ法を用いて、レジスト805により導入口706、707のパターンを形成する[図8(d)]。
次に、活性層801の側にフォトレジスト806を厚さ15μm成膜する。噴出口のパターンを保護するためである[図8(e)]。
【0112】
次に、支持基板層803の側(先ほどのエッチング面の裏側の面側)より、SF6ガスとC48ガスのプラズマによりエッチングを行う。これによりエッチングストッパーであるシリコン酸化膜802に到達するまでドライエッチングし、流路708、709の残りを形成する[図8(f)]。
【0113】
次に、O2プラズマ処理によりフォトレジストを除去した後、液温110℃の硫酸および過酸化水素水の混合溶液により基板を洗浄する[図8(g)]。
最後に、減圧化学的気相成長法(LPCVD法)によりシリコン窒化膜を成膜する[図8(h)]。
【0114】
次に、供給板703の作製工程について説明する。まず、シリコン基板808を用意する。フォトレジスト809により供給流路704、705のパターンを形成する。
次に、フォトレジスト809をエッチングマスクとしてシリコン基板808を、SF6ガスとC48ガスのプラズマによりドライエッチングし、深さ800μmの供給流路を形成する[図8(i)、(j)]
次に、O2プラズマ処理によりフォトレジスト809を除去した後、液温110℃の硫酸および過酸化水素水の混合溶液により基板を洗浄する[図8(k)]。
【0115】
最後に、LPCVD法によりシリコン窒化膜を成膜する[図8(l)]。
以上の方法で作製された基板702および供給板703は基板間直接接合により接合する[図8(m)]。
【0116】
次に、実施例6の集積化流体混合装置701を用いて、マゼンタ顔料の分散体を生成する実施例を示す。
第1の反応液はイオン交換水を使用する。第2の反応液はC.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10質量部にジメチルスルホキシド100質量部を加え懸濁させる。
【0117】
つづいて分散剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを40質量部加え、これらが溶解するまで25質量%水酸化カリウム水溶液を加えていき第2の反応液を調整する。
【0118】
次に、反応条件および反応プロセスについて説明する。
第1の反応液および第2の反応液の温度はともに室温である。第1の反応液は噴出口712より流速50m/sで噴出され、第2の反応液は噴出口713より流速23.3m/sで噴出される。
【0119】
これにより、2つの噴出口より噴出された反応液は基板702の下方で交差し混合される。混合の結果、溶解した顔料が貧溶媒である水との接触により析出する。
さらに、第2の反応液に含まれる分散剤により析出顔料がカプセル化され顔料濃度0.16質量%の顔料分散体が生成する。
【0120】
生成物の平均粒径は、ダイナミック光散乱光度により計測することができる。上記のプロセスで生成した顔料分散体の平均粒径は約40nmである。市販で得られる顔料分散体の平均粒径は、小さいもので約100nmである。従って、本発明の流体混合装置は、従来よりも粒子の微小化が可能である。
【0121】
実施例7(シリコン、酸化膜、シリコン、酸化膜およびシリコンが積層された流体混合装置)
図14は、実施例7の集積化流体混合装置を説明する図である。
【0122】
図14(a)は集積化流体混合装置1401の断面図である。図14(b)は集積化流体装置1401を噴出口側から観察した図である。
図14(a)は図14(b)のI−I’線断面図を示す。集積化流体混合装置1401は、本発明の流体混合装置を備えた基板1402と、2種類の流体を該流体混合装置に供給するための供給流路が形成された供給板1403とが互いに接合されたものである。
【0123】
図14(a)を用いて、流体が噴出されるまでの経路を示す。供給板1403に形成された流体供給口(図示しない)から第1の反応液が供給流路1404に導入される。
第1の反応液は供給流路1404を通過し、導入口1406を通って、流路1408に導入される。流路1408を通過した流体は噴出口1412から噴出される。第2の反応液は供給流路1405を通って、流路1409に導入される。流路1409を通過した流体は噴出口1413から噴出される。これにより、噴出口1412および1413から噴出された流体は基板1402の下方で交差し混合される。
【0124】
各部の寸法を以下に説明する。供給板1403の厚みt91は1000μmであり、供給流路1404の幅w91、供給流路1405の幅w92はともに500μmである。また、供給流路1404、1405の深さd91は800μmである。
【0125】
基板1402は、シリコン層、シリコン酸化膜層、シリコン層、シリコン酸化膜層およびシリコン層が積層された基板を用いて構成されている。
シリコン層t96は100μm、シリコン酸化膜層t95は0.5μm、シリコン層t94は50μm、シリコン酸化膜層t93は0.5μm、シリコン層t92は200μmである。
【0126】
基板1402に形成される導入口1406の幅w93、導入口1407の幅w94、噴出口1412の幅w95、噴出口1413の幅w96は、それぞれ250μmである。さらに、連結部1410の高さは、シリコン層t94と同じ50μmである。
【0127】
噴出口1412、1413の周囲は撥水撥油処理されていることが望ましい。これにより、流体の噴出角度を安定させることができる。また、噴出口1412、1413の周囲に撥水撥油処理することは必ずしも必要ない。
【0128】
実施例1と同様に、噴出口1412と噴出口1413の間には凹みを設けることが望ましい。これにより、噴出口1412の周囲に付着した第1の反応液が、噴出口1413へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0129】
同様に、噴出口1413の周囲に付着した第2の反応液が、噴出口1412へ伝っていくことを防ぐことができる。また、噴出口1412と噴出口1413の間の凹みは必ずしも必要ない。
【0130】
実施例2と同様に、噴出口1412と噴出口1413の間には柱構造を設けることが望ましい。これにより、噴出口1412の周囲に付着した第1の反応液が、噴出口1412へ伝っていくことを防ぐことができる。同様に、噴出口1413の周囲に付着した第2の反応液が、噴出口1412へ伝っていくことを防ぐことができる。また、噴出口1412と噴出口1413の間の柱構造は必ずしも必要ない。
【0131】
本実施例の集積化流体混合装置は実施例6と同様の作製方法で作製することができる。
噴出角度は連結部の高さ1410に依存するため、連結部1410は高い加工精度が求められる。本実施例の集積化流体混合装置は連結部1410の高さがシリコン層t94で規定されるため、連結部1410は高い精度で加工することができる。その理由は以下のとおりである。シリコン酸化膜層t95は導入口1406および導入口1407のエッチングストップ層になる。
【0132】
このため、導入口1406および導入口1407の深さはシリコン層t92およびシリコン酸化膜層t93、シリコン層t94で規定される。
一方、シリコン酸化膜層t93は噴出口1412および噴出口1413のエッチングストップ層になる。このため、噴出口1412および噴出口1413の深さはシリコン層t96およびシリコン酸化膜層t95で規定される。
【0133】
従って、連結部1410の高さはシリコン層t94で規定され、高い精度で加工することができる。
次に、実施例7の集積化流体混合装置1401を用いて、マゼンタ顔料の分散体を生成する実施例を示す。
【0134】
第1の反応液はイオン交換水を使用する。第2の反応液はC.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10質量部にジメチルスルホキシド100質量部を加え懸濁させる。
【0135】
つづいて分散剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを40質量部加え、これらが溶解するまで25質量%水酸化カリウム水溶液を加えていき第2の反応液を調整する。
【0136】
次に、反応条件および反応プロセスについて説明する。第1の反応液および第2の反応液の温度はともに室温である。
第1の反応液は噴出口1412より流速10m/sで噴出され、第2の反応液は噴出口1413より流速10m/sで噴出される。これにより、2つの噴出口より噴出された反応液は基板1402の下方で交差し混合される。
【0137】
混合の結果、溶解した顔料が貧溶媒である水との接触により析出する。さらに、第2の反応液に含まれる分散剤により析出顔料がカプセル化され顔料濃度0.16質量%の顔料分散体が生成する。
【0138】
生成物の平均粒径は、ダイナミック光散乱光度により計測することができる。上記のプロセスで生成した顔料分散体の平均粒径は約40nmである。
市販で得られる顔料分散体の平均粒径は、小さいもので約100nmである。従って、本発明の流体混合装置は、従来よりも粒子の微小化が可能である。
【0139】
実施例8(直線流体噴出手段を1つと傾斜流体噴出手段を4つ用いた流体混合装置)
図9は、実施例8の集積化流体混合装置901を説明する概略図である。図9(a)は断面図、図9(b)は、集積化流体混合装置901の噴出口側から観察した図である。図9(a)は図9(b)のD−D’線断面図を示す。
【0140】
集積化流体混合装置901は流体混合装置を備えた基板902と、流体を供給するための供給流路が形成された供給板903、904とが接合されたものである。基板902に形成された流体混合装置は反応液を噴出させるための流体噴出手段を5つ備えており、それぞれの流体噴出手段は噴出方向が交差するように配置されている。
【0141】
各基板について説明する。供給板903は第2の反応液を供給するための供給流路906と第1の反応液を通過させるための供給流路907が形成されている。
供給板904は第1の反応液を供給するための供給流路905が形成されている。
【0142】
基板902は第1の反応液を噴出させるための流体噴出手段908と、第2の反応液を噴出させるための流体噴出手段909が形成されている。
次に、各基板の材質および寸法を説明する。
【0143】
供給板903、904はシリコンである。供給板903の厚さt71、供給板904の厚さt72はともに500μmである。
供給流路905の幅w71は2000μm、供給流路906の幅w72は1700μmである。供給流路905の深さd71、供給流路906の深さd72はともに400μmである。また、供給流路907の直径φ71は470μm、深さは500μmである。
【0144】
次に、基板902はSOI基板を用いており、シリコン層t73は25μm、シリコン酸化膜層t74は0.5μm、支持基板層t75は200μmである。
流体噴出手段908の直径φ71は470μmである。流体噴出手段909は、導入口の幅w73が100μm、導入口の幅w74が100μm、噴出口の幅w75が100μm、噴出口の幅w76が100μmである。
【0145】
また、流体噴出手段909の噴出口と、流体噴出手段908の噴出口の周囲は撥水撥油処理されていることが望ましい。
これにより、流体の噴出角度を安定させることができる。また、流体噴出手段909の噴出口と流体噴出手段908の噴出口の周囲に撥水撥油処理することは必ずしも必要ない。
【0146】
また、流体噴出手段909の噴出口と流体噴出手段908の噴出口の間には凹みを設けることが望ましい。これにより、流体噴出手段909の噴出口の周囲に付着した第1の反応液が、流体噴出手段908の噴出口へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0147】
同様に、流体噴出手段908の噴出口の周囲に付着した第2の反応液が、流体噴出手段909の噴出口へ伝っていくことを防ぐことができる。
また、流体噴出手段909の噴出口と流体噴出手段908の噴出口の間の凹みは必ずしも必要ない。
【0148】
実施例2と同様に、流体噴出手段909の噴出口と流体噴出手段908の噴出口の間には柱構造を設けることが望ましい。
これにより、流体噴出手段909の噴出口の周囲に付着した第1の反応液が、流体噴出手段908の噴出口へ伝っていくことを防ぐことができる。
【0149】
同様に、流体噴出手段908の噴出口の周囲に付着した第2の反応液が、流体噴出手段909の噴出口へ伝っていくことを防ぐことができる。
また、流体噴出手段909の噴出口と流体噴出手段908の噴出口の間の柱構造は必ずしも必要ない。
【0150】
次に、本実施例の集積化流体混合装置901の作製方法について説明する。基板902、供給板903および904は実施例4と同様、フォトリソグラフィ法とSF6ガスとC48ガスのプラズマによりドライエッチングにより作製する。
【0151】
最後に、基板902、供給板903および904は熱融着法により接合される。
次に、集積化流体混合装置901を用いて、マゼンタ顔料の分散体を生成する実際の例を示す。
【0152】
第1の反応液はC.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部にジメチルスルホキシド100質量部を加え懸濁させる。
つづいて分散剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを40質量部加え、これらが溶解するまで25質量%水酸化カリウム水溶液を加えていき第1の反応液を調整する。第2の反応液はイオン交換水を使用する。
【0153】
第1の反応液は流体噴出手段908より基板に対して垂直に噴出させる。その理由を以下に説明する。第1の反応液は第2の反応液に比べて表面張力が小さく、噴出口周辺部に濡れやすい。
【0154】
仮に、第1の反応液を基板に対して斜めに噴出させると噴出角度が不安定になり、他方の噴出口へ伝わっていく恐れがある。従って、第1の反応液は基板に対して垂直に噴出させる。
【0155】
次に、反応条件および反応プロセスについて説明する。第1の反応液および第2の反応液の温度はともに室温である。第1の反応液は流路908より流速1.4m/sで噴出され、第2の反応液は流路909より流速5.8m/sで噴出される。
【0156】
これにより、5つの噴出口より噴出された流体は流路902の下方で交差し混合される。混合の結果、溶解した顔料が水との接触により析出する。さらに、第2の反応液に含まれる分散剤により析出顔料がカプセル化され顔料濃度0.16質量%の顔料分散体が生成される。
【0157】
生成物の平均粒径は、ダイナミック光散乱光度により計測することができる。
上記のプロセスで生成した顔料分散体の平均粒径は約40nmである。市販で得られる顔料分散体の平均粒径は、小さいもので約100nmである。
従って、本発明の流体混合装置は、従来よりも粒子の微小化が可能である。
【0158】
実施例9(複数の流体混合装置および供給流路を備えた集積化流体混合装置)
図10Aは、実施例6の集積化流体混合装置1001を説明する概略図である。図10Bは、供給板1003の平面図である。
【0159】
図10Cは図10BのE−E’線断面を表す図である。図10Dは図10BのF−F’線断面を表す図である。図10Eは図10AのG−G’線断面の一部を表す図である。
図10Aを用いて集積化流体混合装置1001について説明する。
【0160】
集積化流体混合装置1001は、実施例4で説明した流体混合装置701を複数備えた基板1002と、反応液を供給するための供給流路1008、1009を備えた供給板1003とが互いに接合されたものである。
【0161】
基板1002は流体混合装置701が1250配置されている。供給板1003は第1の反応液1004を供給するための供給口1006と、第2の反応液1005を供給するための供給口1007が形成されている。
【0162】
次に、各基板の材質および寸法を説明する。供給板1003はシリコンであり厚さt81は1000μmである。供給流路1008の幅w81は500μm、深さd81は800μmである。供給流路1009の幅w82は500μm、深さd82は800μmである。
【0163】
供給口1006の直径φ81は1000μm、深さd83は200μmであり、供給流路1008と連結している。同様に、供給口1007の直径φ82は1000μm、深さd84は200μmであり、供給流路1009と連結している。
【0164】
次に、基板1002はSOI基板を用いており、シリコン層t82は25μm、シリコン酸化膜層t83は0.5μm、支持基板層t84は200μmである。流体混合装置701は実施例6で説明したものと同じである。
【0165】
また、基板1002に複数配置された流体混合装置701の噴出口の周囲は撥水撥油処理されていることが望ましい。
これにより、流体の噴出角度を安定させることができる。また、基板1002に複数配置された流体混合装置701の噴出口の周囲に撥水撥油処理することは必ずしも必要ない。
【0166】
また、基板1002に複数配置された流体混合装置701の噴出口と噴出口の間には凹みを設けることが望ましい。これにより、流体混合装置701の噴出口を伝って、第1の反応液が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。
【0167】
同様に、流体混合装置701の噴出口を伝って、第2の反応液が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。
また、基板1002に複数配置された流体混合装置701の噴出口と噴出口の間の凹みは必ずしも必要ない。
【0168】
また、基板1002に複数配置された流体混合装置701の噴出口と噴出口の間には柱構造を設けることが望ましい。これにより、流体混合装置701の噴出口を伝って、第1の反応液が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。
【0169】
同様に、流体混合装置701の噴出口を伝って、第2の反応液が他の方向へ伝わっていくことを防ぐことができる。また、基板1002に複数配置された流体混合装置701の噴出口と噴出口の間の柱構造は必ずしも必要ない。
【0170】
次に、本実施例の集積化流体混合装置1001の作製方法について説明する。基板1002および供給板1003は実施例4と同様、フォトリソグラフィ法とSF6ガスとC48ガスのプラズマによりドライエッチングにより作製する。
【0171】
これにより、基板1002に流体混合装置701を複数一括作製することができる。同様に、供給板1003に供給流路1008、1009を複数一括作製することができる。最後に、基板1002と供給板1003は熱融着法により互いに接合される。
【0172】
次に、図10A乃至図10Eを用いて流体が混合されるまでの経路について説明する。図10Cに示すように、第1の反応液1004はコネクタ1011より供給口1006に導入され、供給流路1008に供給される。
【0173】
また、図10Dに示すように、第2の反応液1005はコネクタ1012より供給口1007に導入され、供給流路1009に供給される。
次に、図10Bに示すように、第1の反応液1004は複数に分岐された供給流路1008に供給される。矢印1013は第1の反応液1004の流れを示している。また、第2の反応液1005は複数に分岐された供給流路1009に供給される。
【0174】
矢印1014は第2の反応液1005の流れを示している。
次に、図10Eに示すように、第1の反応液1004は供給流路1008より流体混合装置701に導入される。
【0175】
また、第2の反応液1005は供給流路1009より流体混合装置701に導入される。最後に、第1の反応液1004および第2の反応液1005は交差し混合される。
図10Aに示すように、個々の流体混合装置701により混合された生成物は矢印1010の方向へ流出される。
【0176】
本発明の集積化流体混合装置1001は、流体混合装置の生産性を上げる場合に特に有効である。その理由は、フォトリソグラフィ−とシリコンのドライエッチングにより、複数の流体混合装置を高い位置精度で一括作製することができるからである。
【0177】
これにより、一般的な機械加工に比べて加工時間を短縮でき、コストアップを抑えることができる。
【0178】
実施例10(流体混合システム)
図11は、前記集積化流体混合装置を用いた流体混合システムの概略図である。
図11に示す流体混合システム1101について説明する。
流体混合システム1101は、流体を搬送するための高圧ガス1102、搬送圧力を制御するためのレギュレータ1103、反応液を貯留する第1の反応液タンク1104と第2の反応液タンク1105を備える。更に、反応液の流量を監視するための流量計1106、第1の反応液と第2の反応液の温度を調整するためのヒータ111と温度計1112を備える。同様に集積化流体混合装置1107から流出した反応液の温度を管理するヒータ113と温度計1114、集積化流体混合装置1107が組み込まれた反応容器1108、反応生成物を回収する回収タンク1110を備える。
【0179】
本実施例の流体混合システムを利用し、マゼンタ顔料の分散体を多量に製造する実際の例について説明する。
第1の反応液タンク1104には実施例4で記載した顔料溶解液、第2の反応液タンク1105にはイオン交換水が貯留されている。それぞれの反応液は25℃で一定になるようにヒータ1111および温度計1112で調整されている。それぞれの反応液は、高圧ガス1102の圧力により反応容器1108へ搬送される。
【0180】
このとき、流量計1106を監視しレギュレータ1103を調節することにより、反応液の流量を制御する。
これにより、顔料溶解液は流速23.3m/s、水は流速50m/sで噴出し、集積化流体混合装置1107の下方、反応容器1108内で交差し混合される。
【0181】
反応容器1108内部は25℃で一定になるようにヒータ1111および温度計1112で調整されている。混合の結果、生成されたマゼンタ顔料の分散体1109は回収タンク1110に回収される。
【0182】
本実施例の流体混合システムにより、毎時1650Lの顔料分散体を製造することができる。
反応液を一定の温度に調整することにより、顔料分散体の平均粒径のばらつきを低減することができる。
【0183】
従来、実験的な製造設備により製造された少量の混合物質を大規模の製造設備により多量に製造するためには、新たにプラント設計が必要となり反応の再現性を得るために多大の労力および時間を費やしてきた。
【0184】
本発明の流体混合システムは、流体混合装置を集積化することで必要となる製造量に対応することができるため、上記の労力および時間を大幅に減少できる。
さらに、本発明の流体混合システムは、任意の数の集積化流体混合装置を配置することで、必要となる製造量に対応した流体混合システムを構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の流体混合装置は、基板面に対して特定の角度を有して流体を噴出させる流体噴出手段を用いて、噴出させた流体同士を混合させることができるので、化学工業、生化学工業、食品工業、製薬工業等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】本発明の流体混合装置に用いられる流体噴出手段の一実施態様を示す概略図である。
【図2】本発明の流体混合装置に用いられる流体噴出手段の他の実施態様を示す概略図である。
【図3】実施例1に用いた流体混合装置を説明する断面図である。
【図4】実施例1に用いた流体混合装置を説明する説明図である。
【図5】実施例3に用いた流体混合装置を説明する断面図である。
【図6】実施例5に用いた流体混合装置を説明する断面図である。
【図7】実施例6に用いた集積化流体混合装置の概略図である。
【図8A】実施例6に用いた集積化流体混合装置の製造方法を示す工程図である。
【図8B】実施例6に用いた集積化流体混合装置の製造方法を示す工程図である。
【図9】実施例8に用いた集積化流体混合装置の概略図である。
【図10A】実施例9に用いた集積化流体混合装置の概略図である。
【図10B】実施例9に用いた集積化流体混合装置の概略図である。
【図10C】実施例9に用いた集積化流体混合装置の概略図である。
【図10D】実施例9に用いた集積化流体混合装置の概略図である。
【図10E】実施例9に用いた集積化流体混合装置の概略図である。
【図11】実施例10に用いた流体混合システムの概略図である。
【図12】実施例2に用いた流体混合装置を説明する概略である。
【図13】実施例4に用いた流体混合装置を説明する概略図である。
【図14】実施例7に用いた集積化流体混合装置の概略図である。
【図15】従来のマイクロミキサーを説明する概略図である。
【図16】従来のマイクロミキサーを説明する概略図である。
【符号の説明】
【0187】
11 基板
12 第一の流路
13 第二の流路
14 第一の流路の端部の側部
15 第二の流路の端部の側部
16 平行方向
101、102 オリフィス
103 末広がり遮蔽部
104 ジェット衝突混合室
105、106 ノズル
201 流体噴出手段
202 導入口
203 噴出口
204 基板を貫通する流路
205 連結部
206 噴出角度
207 導入口断面の重心を結んだ軸
208 噴出口断面の重心を結んだ軸
301 集積化流体噴出手段
302、303 流体噴出手段
304、305 噴出口
306 噴出口の間の凹み
401 流体混合装置
402、403 流体噴出手段
404 第1の流体
405 第2の流体
406、407 導入口
408、409 噴出口
410 流体噴出手段の間の凹み
411 周囲
501 流体混合装置
502、503 流体噴出手段
504 第1の流体
505 第2の流体
506、507 導入口
508、509 噴出口
600 流路
601 流体混合装置
602、603、604 流体噴出手段
605 第1の流体
606 第2の流体
607 第3の流体
608、609、610 導入口
611、612、613 噴出口
701 集積化流体混合装置
702 流体混合装置を備えた基板
703 供給流路を備えた供給板
704 第1の反応液を供給する供給流路
705 第2の反応液を供給する供給流路
706、707 導入口
708、709 流路
710、711 連結部
712、713 噴出口
801 SOI基板の活性層
802 SOI基板のシリコン酸化膜層
803 SOI基板の支持基板層
804、805、806、809 フォトレジスト
807、810 シリコン窒化膜
808 シリコン基板
901 集積化流体混合装置
902 流体混合装置を備えた基板
903、904 供給流路を備えた供給板
905 第1の反応液を供給するための供給流路
906 第2の反応液を供給するための供給流路
907 第1の反応液を通過させるための供給流路
908、909 流体噴出手段
1001 集積化流体混合装置
1002 流体混合装置を複数備えた基板
1003 供給流路を複数備えた供給板
1004 第1の反応液
1005 第2の反応液
1006、1007 供給口
1008、1009 供給流路
1010 生成物
1011、1012 コネクタ
1013 第1の反応液の流れ
1014 第2の反応液の流れ
1101 流体混合システム
1102 高圧ガス
1103 レギュレータ
1104 第1の反応液タンク
1105 第2の反応液タンク
1106 流量計
1107 集積化流体混合装置
1108 反応容器
1109 反応生成物
1110 回収タンク
1111、1113 ヒータ
1112、1114 温度計
1201 流体混合装置
1202、1203 流体噴出手段
1204 第1の流体
1205 第2の流体
1206、1207 導入口
1208、1209 噴出口
1212 柱構造
1213 周囲
1301 流体混合装置
1302、1303 流体噴出手段
1305 第1の流体
1306 第2の流体
1308、1309 導入口
1311、1312 噴出口
1401 集積化流体混合装置
1402 基板
1403 供給板
1404、1405 供給流路
1406、1407 導入口
1408、1409 流路
1410、1411 連結部
1412、1413 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を搬送する複数の流路と、該流路に対応し、該流路に連通して設けられた複数の噴出口と、を備え、前記複数の噴出口より噴出した流体の進行方向が交差することで複数の流体を混合させる流体の混合装置であって、前記複数の噴出口は基板表面に設けられ、前記噴出口に連通する前記基板中に設けられた流路における中心軸を部分的にずらせることで、前記噴出口の少なくとも一つより噴出する流体の進行方向を前記基板表面に対して傾斜させたことを特徴とする流体の混合装置。
【請求項2】
前記流体は、互いに平行な第一の流路と第二の流路とを通って前記噴出口に至り、第一の流路と第二の流路はそれぞれの一方の端部で且つそれぞれの流路における中心軸からずれた側部で連結されている請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項3】
前記噴出口の周囲は撥水または撥油処理されていることを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項4】
前記基板は、シリコンを含有する材料からなり、前記流路は半導体微細加工により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項5】
前記基板は、シリコン、酸化膜、シリコン、酸化膜、シリコンが積層されて構成されていることを特徴とする請求項4に記載の流体の混合装置。
【請求項6】
前記第一の流路および第二の流路は耐薬品性を備えていることを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項7】
前記複数の噴出口の間に凹みを有することを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項8】
前記複数の噴出口の間に柱構造を有することを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項9】
2つの噴出口より噴出させる流体の進行方向をそれぞれ前記基板表面に対して傾斜させて2つの流体を混合させることを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項10】
前記一つの噴出口に連通する流路が1つが直線状の流路からなり、流体を基板表面に対して垂直方向に噴出することを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項11】
前記複数の流路にそれぞれ流体を供給する供給流路を更に有することを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項12】
少なくとも二種類の流体を混合させる流体の混合装置であって、第一の流体を噴出させる第一の噴出口が複数設けられ、これに対応して第二の流体を噴出させる第二の噴出口が複数設けられ、第一の噴出口には、第一の供給流路を介して第一の流体が供給され、第二の噴出口には、第二の供給流路を介して第二の流体が供給される請求項11に記載の流体の混合装置。
【請求項13】
第一及び第二の噴出口を備えた基板と、第一及び第二の供給流路を備えた供給板と、が互いに接合されて構成されたことを特徴とする請求項12に記載の流体の混合装置。
【請求項14】
請求項12に記載の流体の混合装置を備えた流体の混合システムであって、前記流体の混合装置に供給する流体を貯留する供給物貯留手段と、前記流体の混合装置に供給する流体の温度を調整する温度制御手段と、前記供給物貯留手段から流体を前記流体の混合装置に搬送する搬送手段と、該搬送手段を制御する流体制御手段と、前記流体の混合装置から流出した流体の温度を調整する温度制御手段と、前記流体の混合装置から流出した流体を貯留する流出物貯留手段と、を備えたことを特徴とする流体混合システム。
【請求項15】
基板と、該基板に設けられた流体を噴出する少なくとも2つ以上の流体の噴出手段を有し、該2つ以上の流体噴出手段は互いに噴出する流体の噴出方向が交差して流体を混合するように配置されている流体混合装置の製造方法であって、
基板の第一の面よりエッチングを行い第一の流路を形成する工程と、前記基板を第一の面の裏側の第二の面より第一の流路の中心軸と中心軸をずらしてエッチングを行うことで第二の流路を形成し、第一の流路と第二の流路のそれぞれの一方の端部の側部を連結して流体噴出手段を得る工程を有することを特徴とする流体混合装置の製造方法。
【請求項16】
前記基板は、第一の基板と第二の基板とが接合された基板であることを特徴とする請求項15に記載の流体混合装置の製造方法。
【請求項17】
前記基板の第一の基板と第二の基板は、それぞれ異なるシリコン材料からなる請求項16に記載の流体混合装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−196218(P2007−196218A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345018(P2006−345018)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】