説明

流体供給システム

【課題】 人為的ミスによる供給システムのトラブルあるいは消費設備への被害の波及などを防止するために、操作性がよくかつ簡易な構成によって、液化ガスなどの充填容器を迅速かつ安全に保守管理を行うことができる流体供給システムを提供すること。
【解決手段】 充填容器1、設置部2、接合部3a、配管部3、消費設備4、プロセス制御部7を有し、流体の属性などの情報aが書き込まれた情報記録部Aが充填容器1の一部に配設され、配管系の情報bが書き込まれた情報記録部Bが接合部3a等のいずれかに配設され、消費設備4の情報cが書き込まれた情報記録部Cがプロセス制御部7に配設されるとともに、情報の適合性がある場合に、消費設備4に流体を供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給システムに関するもので、例えば、高圧容器に充填された各種気体や液化ガスあるいは液体を供給する流体供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造プロセスをはじめ各種製造プロセスにおいて、各種気体や液化ガスあるいは液体(これらを総称して、以下「流体」という)が充填された高圧容器が多く用いられ、流体の消費設備である半導体製造装置や各種のプロセス装置(以下「プロセス装置」という)では、これらの流体を気体状態あるいは液体状態で受け入れて使用される。このとき、流体を充填した容器は、供給設備に収納され、供給配管を介してプロセス装置に送り出され、消費によって所定量以下の残量となったときに交換される。ここで、半導体製造装置などでは複数の種類の流体を使用することが多く、供給設備に複数の充填容器を配設しているため、準備された充填容器を正しく交換する必要がある。しかしながら、一部のガス種では充填容器の導出口の口金等が違い接続できないものもあるが、多くの場合、口金等が共通でどの充填容器でも問題なく接続できてしまうことから、人為的な操作ミスに基づく接続ミスなどが発生する可能性があった。このため、こうした人為的ミスなどを防止するために、従前から充填容器を管理する方法や供給システム全体の管理方法について工夫されてきた。
【0003】
具体的には、図5(a)〜(c)に示すような、各種ガスを充填した高圧ガス容器の管理を確実に行うことができ、また、これにより充填設備における充填ラインの状態も把握することが可能な高圧ガス容器の管理方法が提案されている。つまり、複数系統の充填台A,Bと、該複数系統の充填台A,Bに設けられた複数の充填口A1〜A30,B1〜B30とを有するガス充填設備でガスを充填した高圧ガス容器110を管理するにあたり、ガスの種類102等のガス情報及び充填日105等の管理情報とともに、充填番号107を印刷したラベル101を前記高圧ガス容器110に貼付する。前記充填番号107は、前記充填台A,Bの系統数及び充填口A1〜A30,B1〜B30の数と、ガス充填時に入力された高圧ガス容器110の本数とから各高圧ガス容器110の充填順序を算出し、該算出された充填順序に基づく充填番号107を前記ラベル101に印刷する。ここで、103は充填圧力、104は容量、106は製造会社、108はバーコードを示す(例えば特許文献1参照)。
【0004】
一方、図6に示すように、液化ガスを充填する高圧容器の底面部を検査する底面検査の管理装置が提案されている。つまり、予め、高圧容器201の固有番号、容器種別、製造時期を入力しておくとともに、容器種別に応じて製造時期に所定期間(15年または8年)を加えて底面検査の不要な充填期限を充填期限算出部207aにて算出し、これらのデータを記憶部208に記憶する。充填の際にバーコードリーダ204から高圧容器201の固有対応番号を読み取って、充填期限が現時点より前であった際に期限切れであることを警報部209で通知する。底面検査を行って底面検査合格通知信号が入力された場合には更新データ算出部によりその固有番号の充填期限に所定期間を加えて新しい充填期間に更新するものである。ここで、202は充填装置、203はバーコードラベル、205は制御部、206はキー入力部、207bは更新データ算出部を示す(例えば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平07−280190号公報
【特許文献2】特開平05−256400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような液化ガス供給装置では、以下の課題が生じることがあった。
(a)上記のように、ガス種の混同防止や製造履歴等のトレーサビリティ確保のために、バーコードを有した高圧ガス容器用充填ラベルも考案されているが、固定のバーコードリーダを備えた集合装置では高圧ガス容器の取り付けに際して、位置依存性つまり容器バルブの口金方向が一定であるので、充填ラベル貼り付け位置も固定されてものとなり、高圧ガス容器表面でこの固定位置以外の場所に添付された充填ラベルは、バーコードリーダでは読取不可能となってしまうという課題があった。
(b)また、特に図6のような高圧容器の検査管理装置にあっては、装置側は常に同一条件であり、高圧容器の良否によって充填の可否を判断するものであり、通常の供給装置のように消費設備の状況によって、現時点での適合性についての判断を行う機能は全く有していない。従って、例えば液化ガスを消費する製造プロセスにおいて、ガス種の変更に伴う配管系の交換などにおいては、全く対応できないのが実情であった。
(c)標準ガス等の高圧容器が交換された場合、交換したガスの情報(混合率、成分等)は、その作業時に入力され上位の情報システムに登録・保存されている。しかし、実際に容器を交換する作業時にその情報を用いることはなく、利用可能なシステムもなかった。
【0007】
本発明の目的は、人為的ミスによる供給システムのトラブルあるいは消費設備への被害の波及などを防止するために、操作性がよくかつ簡易な構成によって、液化ガスなどの充填容器を迅速かつ安全に保守管理を行うことができる流体供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す流体供給システムによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明は、流体が充填された充填容器と、該充填容器を固定する設置部と、前記充填容器の導出口と密嵌的に接続する接合部と、該接合部を一端とする配管部と、前記流体を消費する設備と、を有する流体供給システムにおいて、
充填された前記流体の属性や充填条件を含む情報aが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Aと、前記接合部および配管部を含む配管系の適用が可能な流体の属性や受入条件を含む情報bが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Bと、前記流体を消費する設備が必要とする流体の属性や受入条件を含む情報cが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Cと、情報a〜bのいずれかあるいはいずれもを読み取る情報読取部と、情報aと情報bの適合性および情報aと情報cの適合性を判断する情報処理部を有し、
前記情報記録部Aが前記充填容器の一部に配設され、前記情報記録部Bが前記接合部、配管部、情報読取部あるいは情報処理部のいずれかに配設され、前記情報記録部Cが前記プロセス制御部に配設されるとともに、前記情報の適合性がある場合に、前記消費設備に流体を供給することを特徴とする。
【0010】
既述のように、充填容器が一般の高圧容器の場合には、充填される主成分が特定の種類について、導出口の口金が特殊な形状に定められていることがあり、容器の色を充填する成分によって区別することがある。例えば、口金については、アセチレンの場合には専用の形状であり、水素やメタンなどの可燃性ガスの多くは左回転雌ネジが有する形状である。容器の色彩については、水素は赤、二酸化炭素は緑、一酸化炭素は青、アンモニアは白などとなっていることがある。従って、使用する流体がこうした特殊な成分の場合には、接合部の取合部をこれに適合する形状にすれば、人為的な接続ミスは生じないが、こうした特殊な成分の使用は、一般的ではなく、多種の充填容器を扱う場合には人為的な接続ミスを避けることは必ずしも容易ではない。また、口金と接合部の取合部の形状が異なる場合に強引に取り付けようとした場合には、一方あるいは両方の形状が破損することがあり、その後の使用時のシール不良による充填物の漏洩や腐食の発生などの原因となることがある。従って、本システムにおいては、充填容器に充填された前記流体の属性や充填条件を含む客観的な情報aと、接続する接合部以降の配管部を含む配管系の適用が可能な流体の属性や受入条件を含む情報bと、流体を消費する設備が必要とする流体の属性や受入条件を含む情報cを準備し、人為的な判断に委ねるのではなく、その適合性を自動的に判断できるシステムによって、こうした課題に対応するものである。
【0011】
具体的には、充填容器の底面などその一部に、情報aが読み取り可能に書き込まれた2次元コードもしくはICタグ等の情報記録部Aを配備し、接合部、配管部、情報読取部あるいは情報処理部のいずれかに、情報bが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Bを配備し、情報cが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Cをプロセス制御部に配備し、両方の情報を読み出して適合性を判断する仕組みを装備することによって、人為的ミスのない、操作性がよくかつ簡易な流体供給システムを構成し、液化ガスなどの充填容器を迅速かつ安全に保守管理することが可能となった。
【0012】
ここで、「流体」とは、使用条件において気体または液体あるいは混同体を形態とするものをいい、「流体の属性」とは、流体の種類(複数種の場合は全て)、組成(濃度)、沸点や融点、蒸気圧、腐蝕性あるいは毒性などが含まれる。
【0013】
本発明は、上記流体供給システムであって、前記充填容器が窪み形状の底部を有するとともに、該底部に前記情報記録部Aが配設され、前記情報読取部が前記設置部に配設されることを特徴とする。
【0014】
従前の方法においては、充填容器の外周面などに敷設された2次元コードの破損や読み取り装置との位置関係が不安定であったため、重要な情報を有効に利用できないという課題があった。本発明は、充填容器の多くが有しながら従来殆ど利用されていなかった、底部の窪み部分という固有の形状を有効に利用し、充填容器および内部の流体に関する情報が書き込まれた情報記録部Aをここに配設することによって、破損するおそれがあった情報記録部Aを保護し、確実にこうした情報を容器と一体化することができた。また、情報読取部を充填容器の底部が接する設置部に配設することによって、情報記録部Aが2次元コードのようなスキャニングを必要とするような場合であっても外部の影響を遮断した近接状態で、正確に情報を読み取ることができ、正確な適合性の判断を行うことが可能となった。
【0015】
本発明は、上記流体供給システムであって、前記適合性の判断情報として、充填容器の内部圧力あるいは重量の実測値を含む充填容器の稼働時の情報d、および前記消費設備の稼働状況の情報eを、前記情報読取部に入力するとともに、情報処理部において前記消費設備への流体供給の適合性を判断することを特徴とする。
【0016】
本システムにおいては、充填容器と配管系との適合性および充填容器と消費設備との適合性を判断することが重要であるとともに、実稼動時の充填容器から供給されうる流体の状態とプロセス装置における流体の消費状態との適合性を正確かつ迅速に判断することが重要である。従って、充填容器に関する情報として充填容器の内部圧力あるいは重量の実測値を含む情報dを用い、プロセス装置に関する情報としてプロセス装置の稼働状況の情報eを用いることによって、人為的な判断に委ねることなく、正確な適合性の判断を行うことが可能となった。
【0017】
本発明は、上記流体供給システムであって、前記充填容器から前記消費設備への流体の供給を、下記のプロセス
(1)前記充填容器を前記設置部に設置する
(2)前記設置部に設けられた設置操作を認識する検知部から設置信号が発信される
(3)前記設置信号を前記情報読取部または/および情報処理部において受信する
(4)前記情報読取部によって、前記情報記録部Aに書き込まれた情報a、前記情報記録部Bに書き込まれた情報bおよび前記情報記録部Cに書き込まれた情報cの読み取りを実施する
(5)前記情報処理部において、読み取られた情報aと情報b、および情報aと情報cを比較し適合性を判断する
(6)適合性があるとの判断の場合、前記充填容器の導出口を前記接合部と接続する
(7)前記流体を充填容器から配管部を介して前記消費設備に供給する
によって実施することを特徴とする。
【0018】
上記のように、本システムにおいては、充填容器と配管系との適合性および充填容器と消費設備との適合性に加え、実稼動時の充填容器とプロセス装置との適合性を正確かつ迅速に判断することが重要である。前者にあっては、充填容器およびこれに充填された流体に係る情報aと、流体の属性や受入条件を含む配管系の情報bおよび必要とする流体の属性や受入条件を含むプロセス装置の情報cを基に、充填容器と配管系の接続作業を適合性の判断の実行の基準点とするもので、各情報を比較することによって、人為的な接続ミスを排除して、搬入された充填容器が適切に接続され、配管部を介してプロセス装置に適切な流体を供給することができる。
【0019】
本発明は、上記流体供給システムであって、前記プロセス(1)〜(5)の後に、下記のプロセス
(6a)充填容器1の導出口1bに接合部3aを接続する
(7a)前記導出口を開とする
(8a)前記情報処理部において、前記情報dおよび情報eを比較し適合性を判断する
(9a)適合性があるとの判断の場合、前記流路開閉弁を開とする
(10a)前記流体を充填容器から配管部を介して前記消費設備に供給する
によって実施することを特徴とする。
【0020】
本システムは、搬入された充填容器が適切に配管系と接続された状態で、実稼動時の充填容器とプロセス装置との適合性を正確かつ迅速に判断するものである。実稼動時において、充填容器の内部圧力あるいは重量の実測値を含む充填容器の情報と、プロセス装置の稼働状況の情報を基に、充填容器からプロセス装置への流体供給開始操作を適合性の判断の実行の基準点とするもので、両情報を比較することによって、人為的な接続ミスを排除するとともに、実稼動条件に対し、搬入された充填容器が適切な状態であることを見定めた上で、配管部を介してプロセス装置に適切な流体を供給することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、人為的ミスによる供給システムのトラブルあるいは消費設備への被害の波及などを防止することができるとともに、操作性がよくかつ簡易な構成によって、液化ガスなどの充填容器を迅速かつ安全に保守管理を行うことができる流体供給システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ここでは、流体が充填された充填容器と、充填容器を固定する設置部と、充填容器の導出口と密嵌的に接続する接合部と、接合部を一端とする配管部と、流体を消費する設備と、該流体消費設備を制御管理するプロセス制御部とを有し、充填された流体の属性や充填条件を含む情報aが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Aと、接合部および配管部を含む配管系の適用が可能な流体の属性や受入条件を含む情報bが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Bと、流体を消費する設備が必要とする流体の属性や受入条件を含む情報cが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Cと、情報a〜bのいずれかあるいはいずれもを読み取る情報読取部と、両方の情報の適合性を判断する情報処理部を有することを基本とする。情報記録部Aが充填容器の一部に配設され、情報記録部Bが接合部、配管部、情報読取部あるいは情報処理部のいずれかに配設され、前記情報記録部Cが前記プロセス制御部に配設されるとともに、情報の適合性がある場合に、消費設備に流体を供給する。
【0023】
<本発明に係る流体供給システムの基本構成例>
図1は、本発明に係る流体供給システム(以下「本システム」という)を例示する概略図である。本システムは、特定の流体が充填された充填容器1が、その底部1aを設置部2によって保持された状態で設置される。充填容器1は、その上部に設けられた導出口1bから内部の流体を供出する。導出口1bには、接合部3aが接続され、さらに接合部3aに繋がる配管部3によって消費設備であるプロセス装置4に繋がり、充填容器1からの流体が供給される。充填容器1から供出された流体は、減圧弁5によって供給圧力を調整され、流路開閉弁6によってプロセス装置4への供給のON/OFFが制御される。プロセス装置4におけるこうした機能は、プロセス制御部7によって制御管理される。
【0024】
ここで、本システムの対象となる流体としては、上記のように充填容器1からプロセス装置4に供給するシステムが適用できる各種気体や液化ガスあるいは液体を含むもので、具体的には、酸素や水素あるいはアルゴンなどの圧縮ガス、半導体製造プロセスで使用される特殊材料ガス(NH,BCL,CL,SiHCL,Si、HF、C、WF等に代表される蒸気圧の低い液化ガス)二酸化炭素などの液化ガス、あるいは水添反応用の水や種々の冷媒などを挙げることができ、液化ガスを液体状態で供給する場合などが含まれる。
【0025】
また、充填容器1の取り外しあるいは取り付け操作において、導出口1bと接合部3aの間を不活性ガスなどによってパージすることが好ましい。また、長期間未使用後の使用再開においても同様である。流体の気化による環境の汚染あるいは空気中の酸素や水分などとの反応や空気中の粉塵等による流路の汚染防止を図るためである。パージは、実際に使用する流体によることが好ましいが、高価あるいは吸着性などの特性によって長時間あるいは大量のパージガスが必要となる場合には、窒素や清浄空気など不活性ガスなどを使用することも好適である。パージ操作は、手動あるいは情報処理部8によって自動的に制御してもよい。
【0026】
上記各部での制御処理情報は、情報処理部8によって制御管理される。本システムは、充填容器1に充填された流体の属性や充填条件を含む情報aと接合部3aおよび配管部3を含む配管系の適用が可能な流体の属性や受入条件を含む情報bの適合性を判断するとともに、情報aとプロセス装置4が必要とする流体の属性や受入条件を含む情報cの適合性を判断し、各情報の適合性がある場合に、プロセス装置4に流体を供給することを特徴とする。具体的には、以下の情報を処理する場合を挙げることができる。
【0027】
(a−1)充填容器1の設置あるいは交換は、図1においては、設置部2の側部に設けられたレバー式のスイッチ2a(例えばリミットスイッチ)によって検知される。スイッチ2aの位置および機能はこれに限定されるものではなく、例えば、設置部2の載置面2bに光センサ(図示せず)を設け、充填容器1の設置に伴う光の遮断によって検知する方法等種々の方法を適用することが可能である。スイッチ2aからの充填容器1の設置信号を情報処理部8に送信されると、(a−2)以下の情報の読み込みを実施する。
【0028】
(a−2)充填容器1およびこれに充填された流体に係る情報aには、流体の充填条件として、容器番号、容器容量、流体の充填量(重量または換算容積)、充填圧力、充填日、使用期限などに加え、流体の属性として、流体の種類(複数種の場合は全て)、組成(濃度)、沸点や融点、蒸気圧、腐蝕性あるいは毒性などが含まれる。こうした情報の全てあるいは一部が、2次元コードもしくはICタグ等の情報記録部Aに読み取り可能に書き込まれ、充填容器1に装備される。情報記録部Aとして2次元コードを用いた場合は、情報読取部8aはスキャナを用いて情報aを読み取ることができ、ICタグを用いた場合には、情報読取部8aをその周囲所定距離の範囲に設けることによって、機能させることができる。
【0029】
このとき、充填容器1が窪み形状の底部1aを有する場合には、情報aが書き込まれた情報記録部Aを底部に配設することが好ましい。通常充填容器1が高圧容器の場合には、その底部1aは、耐圧強度および設置時の安定性を確保するために、図2(A),(B)に例示するように、内向きに半球形状あるいは周辺部から内側へ折り返し窪み形状とすることが多い。従って、本システムでは、こうした窪み形状部1cに情報記録部Aを配設することによって、従前の方法では移送時や保守時などに、剥がれたり破損するおそれがあった情報記録部Aを保護し、確実に充填容器1に係る情報aを容器と一体化することができた。
【0030】
また、情報aを読み取る情報読取部8aは、載置面2bに配設されることが好ましい。充填容器1の設置に伴い、情報記録部Aと情報読取部8aの近接を図ることができるとともに窪み部分に設けられた情報記録部Aに対する外乱影響を低減することができ、さらに各位置を限定することが可能なので読み出しの精度が向上する。読み取られた情報aは、情報読取部8aから情報処理部8に送信される。
【0031】
以上のように、充填容器1の底部1aへ2次元コードもしくはICタグを配設することによって、従前のような固定コードリーダに対する位置依存性がなくなり読取ミスを防止できる。また、2次元コードもしくはICタグにより、従前のような充填容器1を接合部3aに接続する際の情報入力の必要がなくなるため、入力ミスという人為的なミスの防止が可能になり、さらに人為的な接続ミスをも防止することができる。
【0032】
(b)配管系の適用が可能なプロセス装置4が必要とする流体の属性や受入条件を含む情報bには、上記情報aに対応して、流体の種類、組成、充填圧力、さらには沸点や融点、腐蝕性あるいは毒性などが含まれる。こうした情報は、上記同様、2次元コードもしくはICタグ等の情報記録部Bに読み取り可能に書き込まれ、接合部3a、配管部3、情報読取部8b(図示せず)あるいは情報処理部8のいずれかに装備される。情報記録部Bは、図1においては情報処理部8に内蔵したシステムを例示するが、これに限定されるものではなく、例えば、充填容器1の収納設備内に表示部を有した情報記録部Bを配備し、適合性の表示とともに、情報bあるいは情報aを確認することができるシステムとすることも可能である。また、図1においては、情報読取部8bは必ずしも必要とされず、情報記録部Bの情報を直接情報処理部8に送信することができる。さらに、情報記録部BがICタグの場合、情報読取部8aが情報読取部8bの機能を兼用し、機能のコンパクト化を図ることが可能である。
【0033】
(c)プロセス装置4が必要とする流体の属性や受入条件を含む情報cには、上記情報aに対応して、流体の充填量、流体の種類、組成、充填圧力、さらには沸点や融点、腐蝕性あるいは毒性などが含まれる。こうした情報は、プロセス制御部7に装備された情報記録部Cに読み取り可能に書き込まれる。情報記録部Cは、図1においてはプロセス制御部7に内蔵したシステムを例示するが、これに限定されるものではなく、例えば、情報処理部8に配備すること、あるいは充填容器1の収納設備内に表示部を有した情報記録部Cを配備し、適合性の表示とともに、情報a〜cの一部あるいは全部を確認することができるシステムとすることも可能である。また、情報記録部Cをプロセス装置4の近傍に配備し、直接情報処理部8に送信することができる。
【0034】
本システムにおいては、基本的に上記(a−1)〜(c)の情報を基に適合性の判断を行うことが可能であるが、さらに、適合性の判断情報として、充填容器1の内部圧力P1あるいは重量W1の実測値を含む充填容器1の稼働時の情報d、およびプロセス装置4の稼働状況の情報eを用いることが好ましい。プロセス装置4の稼働において、その完成までに流体の供給停止あるいは供給圧力(流量)の低下などの異常があれば取り返しがつかない事態となる。これは、予め書き込みがされた充填容器1に係る情報aと実動時の状態の相違(書き込みミスを含む)あるいは配管部3等の供給配管系やプロセス装置4での当初の予定外の自体の発生などによるものであり、緊急の場合には流路開閉弁6を閉とし供給を停止することや予備の充填容器1の準備などが必要となる。
【0035】
(d)充填容器1の稼働時の情報dとして、現実の供給圧力(内部圧力P1)および充填容器1内の流体の残存量を把握することが好ましい。前者については、配管部3に設けられた圧力センサ9によって充填容器1の内部圧力P1を検出することができる。また、圧縮ガスの場合には、当該内部圧力P1によって、充填容器1内の残存ガス量を把握することが可能である。充填容器1の充填物が液化ガスや液体の場合には、気相の内部圧力P1は直接残存量を意味しないため、現実に充填容器1内に残存する流体の量は、その重量W1の実測値で把握することが好ましい。具体的には、充填容器1および接合部3aや配管部3等を含む重量を実測し、これらの重量を除く流体の正味重量W1を算出する。こうした情報dは、直接情報処理部8に送信される。重量W1は、情報d、情報処理部8に送信された情報aおよび使用開始時の総重量の値を基に算出することができる。
【0036】
ここで、充填容器1の重量測定は、設置部2の載置面2aの裏面側にロードセル(図示せず)が配置されることが好ましい。載置面2aに掛かる充填容器1の重量を正確に受けることができるタイプであれば特に制限はないが、載置面2aの4つの角部に略等間隔にセル部を配置するタイプ(図示せず)などが好適である。各セル部での押圧を、歪ゲージあるいはダイヤフラムの変位などによって出力変換され、情報処理部8に送信される。
【0037】
(e)プロセス装置4の稼働状況の情報eは、プロセス制御部7から情報処理部8に送信される。情報eの内容は、情報cに含まれない実動中のプロセス装置4における流体の特性(流体の組成、温度、流量、圧力など)や運転状態(製造プロセスの進捗工程、運転時間など)に関するものである。現在までに消費した流体の量およびさらに必要とされる流体の量を情報dと比較しその適合性を判断し制御する。上記(c)同様、緊急の場合には流路開閉弁6を閉とし供給を停止することや予備の充填容器1の準備などが必要となる。
【0038】
〔適合性の判断〕
本システムにおける適合性の判断は、基本的には、情報aと情報b、情報aと情報cおよび情報dと情報eを比較し、各項目の記載事項、数値あるいは符号が一致するか否かを基準とする。例えば、情報aと情報bの比較において、ガス種として情報bでは腐蝕性のないガスを予定していたが、情報aでHFを含むガスが搬入された場合には、不適合とすることができる。また、情報aと情報cの比較において、ガス種として情報cでは窒素ベースの3%HFを予定していたが、情報aで窒素ベースの2%HFが搬入された場合には、不適合とすることができる。こうした実際に稼動しない状態で適合条件を比較判断することから、静的な適合条件といえる。一方、流体の圧力条件として情報dでは充填容器1の内部圧力P1が送信され、情報eとしてプロセス装置4への供給圧力P2が送信され、P1>P2の場合は適合と判断され、P1≦P2の場合は不適合とすることができる。こうした実際に稼動した状態で適合条件を比較判断することから、動的な適合条件といえる。
【0039】
<本システムを用いた流体供給方法>
上記第1構成例に係る本システムにおいて、充填容器1からプロセス装置4への流体の供給方法を、図3(A)〜(C)に例示する。ここでは、実稼動状態で充填容器1内の流体の減少によって充填容器1の交換が必要となった場合をスタートとして、後述する本システムの特徴である2つのステップを含め、概括的に説明する。図3(A)〜(C)において、右欄が現場での操作内容、左欄は上記情報処理部8への情報送信および情報処理部8からの各部への操作指示送信の内容を示している。
【0040】
〔本システムを用いた流体供給方法のプレステップ〕
図3(A)に示すように、下記のプロセスによって、実稼動状態からの本システムを用いた流体供給方法のプレステップを構成することができる。
(i)充填容器1の内部圧力が一定値以下になったことを、圧力センサ9(圧力スイッチ)が検知する
(ii)流路開閉弁6が閉となり、プロセス装置4への流体の供給が停止される
(iii)導出口1bを閉とし、接合部3aを充填容器1から取り外す
(iv)充填容器1を設置部2から取り外す
(v)このときスイッチ2a(「設置操作を認識する検知部」に相当)はOFFとなる
【0041】
以上の操作において、(iv)充填容器1の取り外し時点で、導出口1bと接合部3aの間を不活性ガスなどによってパージすることが好ましい。また、新たな充填容器1の設置後においても同様である。パージは、流路開閉弁6や圧力センサ9からの信号などを利用し情報処理部8からの指令による自動制御としてもよい。
【0042】
〔本システムを用いた流体供給方法の第1ステップ〕
図3(B)に示すように、本システムを用いた流体供給方法の第1ステップとして、下記のプロセスによって構成することができる。
(1)充填容器1を設置部2に設置する
(2)設置部2に設けられたスイッチ2aから設置信号が発信される
(3)設置信号を情報読取部8aまたは/および情報処理部8において受信する
(4)情報読取部8aによって、情報記録部Aに書き込まれた情報a、情報記録部Bに書き込まれた情報bおよび前記情報記録部Cに書き込まれた情報cの読み取りを実施する
(5)情報処理部8において、読み取られた情報aと情報b、および情報aと情報cを比較し適合性を判断する
(6)適合性があるとの判断の場合、充填容器1の導出口1bを接合部3aと接続し、流体の種類の相違など不適合があるとの判断の場合、アラームを発報し、再度(1)〜(5)を繰り返す
(7)流体を充填容器1から配管部3を介してプロセス装置4に供給することが可能となる
【0043】
この流体供給方法の第1ステップは、充填容器1の導出口1bと接合部3aの接続作業を適合性の判断の実行の基準点とするもので、上記のように静的な適合条件の判断を基準とする。つまり、情報aと情報bおよび情報aと情報cを比較することによって、人為的な接続ミスを排除して、搬入された充填容器1が適切に接続され、適切な流体が配管部3を介してプロセス装置4に供給される。
【0044】
〔本システムを用いた流体供給方法の第2ステップ〕
本システムを用いた流体供給方法の第2ステップとして、図3(C)に示すように、下記のプロセスによって構成することができる。
(6a)充填容器1の導出口1bに接合部3aを接続する
(7a)導出口1bを開とする
(8a)情報処理部8において、例えば圧力センサ9からの信号などの情報dおよび情報eを比較し適合性を判断する
(9a)適合性があるとの判断の場合、流路開閉弁6を開とし、充填容器1の内部圧力P1が低いなどの不適合があるとの判断の場合、流路開閉弁6を閉としたままで、アラームを発報し、(6a)〜(8a)を繰り返す
(10a)流体を充填容器1から配管部3を介してプロセス装置4に供給することが可能となる
【0045】
ここで、新たな充填容器1の設置が完了し、配管接続後、導出口1bを開けて配管内の圧力の上昇が認められ、かつプロセス装置4側への導入可能な状態となれば、流路開閉弁6を開く方向に制御する。充填容器1の内部圧力P1が低いなどの不適合があればアラームを発報し、流路開閉弁6は開かない。また、導出口1bの開け忘れの際は圧力の上昇がないのでやはり流路開閉弁6は開かない。さらに、充填容器1に充填された流体によってパージし、その後導出口1bを閉めた場合、スイッチ2aおよび圧力センサ9の出力は正常であり流路開閉弁6が開くが、プロセス装置4への供給操作開始後の圧力低下を検知することができる。このとき、流路開閉弁6を閉としアラームを発報することによって、導出口1bが閉であることを認識し、安全性を確保した状態で正常な操作に戻すことができる。
【0046】
この流体供給方法は、充填容器1からプロセス装置4への流体供給のための流路開閉弁6の操作を適合性の判断の実行の基準点とするもので、上記の静的な適合条件の判断に対して動的な適合条件の判断といえる。情報dと情報eを比較することによって、人為的な接続ミスを排除するとともに、実稼動条件に対し、搬入された充填容器1が適切な状態であることを見定めた上で、適切な流体が配管部3を介してプロセス装置4に供給される。
【0047】
<本発明に係る流体供給システムの他の構成例>
図4は、本発明に係る流体供給システムの他の構成例(第2構成例)を示す概略図である。本システムは、基本的は、第1構成例と同様の構成であるが、複数の接合部31a,32a,33a、配管部31,32,33および配管部31,32,33の中間に流路開閉弁61,62,63が設けられた配管系を有するプロセス装置4への流体供給システムを形成する。
【0048】
半導体製造プロセスなどの大規模の製造プロセスにおいては、種類の異なる流体が充填された複数の充填容器が収納された流体供給設備からプロセス装置4(単数、複数を問わない)に複数の流体を供給することが多い。こうした供給システムにおいては、上記以上に人為的な接続ミスや操作ミスを防止すべく、複数の接合部から適合する接合部を選択する必要があり、また、プロセス装置4についても複数の稼働状態からの適合する選択を行うことが必要となる場合がある。本システムは、こうした場合においても、充填容器およびプロセス装置の両方について初期的(静的)な情報から稼動状態の情報までを入手し、その適合性を判断する機能を有することから、従前ではできなかった自動的かつ正確な判断を行うことが可能となった。
【0049】
具体的には、図4に示すように、充填容器1を設置部2に配備することによって、これと適合する配管系(例えば、接合部31a、配管部31、減圧弁61)を自動的に選択することができ、接続作業を行うことによって自動的にプロセス装置4への供給を行うことができる。一般的には、複数の充填容器と複数の配管系との組み合わせになるが、こうした場合においても、適合性の判断を基に「1つの充填容器1について複数の配管系からの選択」が基本となることから、本システムを広く各種製造プロセスに適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記においては、主として半導体あるいは各種製造プロセスに用いる液化ガスなどの供給システムについて述べたが、本発明は、こうした産業用のみならず病院のガス供給設備などの民生用の流体供給システムにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る流体供給システムの基本構成例を示す概略図
【図2】本発明に係る充填容器への情報記録部Aの取付状態を例示する説明図
【図3】本システムを用いた流体供給方法を例示する説明図
【図4】本発明に係る流体供給システムの他の構成例を示す概略図
【図5】従来技術に係る高圧ガス容器の管理方法を例示する概略図
【図6】従来技術に係る高圧容器の検査の管理装置を例示する概略図
【符号の説明】
【0052】
1 充填容器
1a 底部
1b 導出口
1c 窪み形状部
2 設置部
2a スイッチ(リミットスイッチ)
2b 載置面
3 配管部
3a 接合部
4 プロセス装置(消費設備)
5 減圧弁
6 流路開閉弁
7 プロセス制御部
8 情報処理部
8a 情報読取部
9 圧力センサ
A,B 情報記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が充填された充填容器と、該充填容器が設置される設置部と、前記充填容器の導出口と密嵌的に接続する接合部と、該接合部を一端とする配管部と、前記流体を消費する設備と、該流体消費設備を制御管理するプロセス制御部と、を有する流体供給システムにおいて、
充填された前記流体の属性や充填条件を含む情報aが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Aと、前記接合部および配管部を含む配管系の適用が可能な流体の属性や受入条件を含む情報bが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Bと、前記流体を消費する設備が必要とする流体の属性や受入条件を含む情報cが読み取り可能に書き込まれた情報記録部Cと、情報a〜bのいずれかあるいはいずれもを読み取る情報読取部と、情報aと情報bの適合性および情報aと情報cの適合性を判断する情報処理部を有し、
前記情報記録部Aが前記充填容器の一部に配設され、前記情報記録部Bが前記接合部、配管部、情報読取部あるいは情報処理部のいずれかに配設され、前記情報記録部Cが前記プロセス制御部に配設されるとともに、前記情報の適合性がある場合に、前記消費設備に流体を供給することを特徴とする流体供給システム。
【請求項2】
前記充填容器が窪み形状の底部を有するとともに、該底部に前記情報記録部Aが配設され、前記情報読取部が前記設置部に配設されることを特徴とする請求項1記載の流体供給システム。
【請求項3】
前記適合性の判断情報として、充填容器の内部圧力あるいは重量の実測値を含む充填容器の稼働時の情報d、および前記消費設備の稼働状況の情報eを、前記情報読取部に入力するとともに、情報処理部において前記消費設備への流体供給の適合性を判断することを特徴とする請求項1または2記載の流体供給システム。
【請求項4】
前記充填容器から前記消費設備への流体の供給を、下記のプロセス
(1)前記充填容器を前記設置部に設置する
(2)前記設置部に設けられた設置操作を認識する検知部から設置信号が発信される
(3)前記設置信号を前記情報読取部または/および情報処理部において受信する
(4)前記情報読取部によって、前記情報記録部Aに書き込まれた情報a、前記情報記録部Bに書き込まれた情報bおよび前記情報記録部Cに書き込まれた情報cの読み取りを実施する
(5)前記情報処理部において、読み取られた情報aと情報b、および情報aと情報cを比較し適合性を判断する
(6)適合性があるとの判断の場合、前記充填容器の導出口を前記接合部と接続する
(7)前記流体を充填容器から配管部を介して前記消費設備に供給する
によって実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流体供給システム。
【請求項5】
前記プロセス(1)〜(5)の後に、下記のプロセス
(6a)充填容器1の導出口1bに接合部3aを接続する
(7a)前記導出口を開とする
(8a)前記情報処理部において、前記情報dおよび情報eを比較し適合性を判断する
(9a)適合性があるとの判断の場合、前記流路開閉弁を開とする
(10a)前記流体を充填容器から配管部を介して前記消費設備に供給する
によって実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−8187(P2009−8187A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170808(P2007−170808)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)
【Fターム(参考)】