説明

流体分注装置

流体分注装置が、流体リザーバ及び分注アセンブリを含む。分注アセンブリは、流体リザーバから所定量の流体を受け取るように構成された計量チャンバを定めるハウジングと可変部材をと含む。可変部材は静止位置から排出位置へ変形し、この変形により、計量チャンバの容量が変化し、この結果、計量チャンバ内の流体圧力が変化する。計量チャンバ内の流体圧力の上昇により、計量チャンバ内の所定量の流体が排出され、計量チャンバ内の流体圧力の低下により、流体が流体リザーバから計量チャンバに流入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体サンプル処理システムに関し、特に、生体サンプル処理システムで使用することができる流体分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試験を実行する間、組織標本を含む試験スライド上に試薬などの液体を分注することがしばしば必要となる。例えば、潰瘍組織を分析する際には、組織の薄く切り取った部分をスライド上に置き、所定量の液体試薬を組織上に分注するステップを含む様々なステップを通じて処理を行うことができる。事前に選択した一連の試薬を試験スライドに正確に加えるために自動試薬流体分注装置が開発されてきた。
【0003】
公知の試薬分注システムの1つの例が、Krawzak他に付与された米国特許第5、232、664号に示されている。このシステムでは、試薬分注トレイが複数の試薬容器を受け取るとともに、試薬を受け取るためのスライド上に選択した試薬容器を位置決めするための手段を含むことができる。エアシリンダ又は同等のアクチュエータが個々のカートリッジと接触して、バネ付勢した変位部材を動かす。バネ付勢した変位部材がシリンダ内で摺動することによりシリンダ内の試薬量が減少し、この結果試薬流体がスライド上に加えられるようになる。
【0004】
このようなシステムに関連する1つの欠点として、分注システムが、多くの場合シリンダの内側面に密封接触している摺動プランジャを利用する点が挙げられる。この結果、このようなシステムの耐用年数は、プランジャとシリンダとの間の磨耗によって限られるようになる。摺動プランジャ及びシリンダ構成を含むシステムでは、プランジャシールを正確に取り付けて、プランジャの変位方向が変化する間に流体シールが摺動面の間で維持されるようにすることも必要とされる。これらの欠点に即して、プランジャとシリンダとの間の摺動シールに依拠しない試薬分注システムの必要性が存在する。
【0005】
従来の試薬分注システムに関連するさらなる欠点として、取付アセンブリの取付用開口部内の個々のカートリッジが潜在的に位置ずれする点が挙げられる。この欠点に即して、同様の形状の取付用開口部内で自己整合するように形成されたカートリッジを含む試薬分注システムの必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許番号5、232、664
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、摺動プランジャとシリンダとの間の摺動シールを必要とせずに、少量の流体を正確に分注することができる流体分注カートリッジを提供することにより、公知の流体分注装置の上述の及びその他の欠点を大幅に解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、流体リザーバと、可変部材を利用して計量チャンバ内の容量変化を生み出す分注アセンブリとを含む流体分注カートリッジに関する。1つの実施形態では、分注アセンブリは、第1のバルブアセンブリ及び第2のバルブアセンブリなどの計量部品を含み、これらの部品が、計量チャンバ内への及び計量チャンバからの流体の流れを制御する。可変部材は、流体リザーバから計量チャンバへ流入する望ましい流体量を計量すべくバルブ部品と共に動作し、その後、計量した流体を計量チャンバからカートリッジ外部へ排出する。この計量した流体は、流体槽又はスライドなどの任意の所望の対象上に排出することができる。
【0009】
ある実施形態では、計量部品は、外力で作動するポンプアセンブリと連動して、可変部材を排出位置に変形させるべく動作し、これにより、計量チャンバ内で圧力の上昇が生み出されるようになる。この上昇により、計量チャンバと外部環境との間に圧力差が生じ、この圧力差により第2のバルブが開き、計量チャンバの中身を排出できるようになる。ポンプアセンブリから外力が排除されると、可変部材は自身の静止位置へ戻ることができ、リザーバと計量チャンバとの間に圧力差が生み出されるようになる。この圧力差により第1のバルブが開き、流体がリザーバから計量チャンバへ流入できるようになる。
【0010】
可変部材はダイヤフラムであることが好ましく、ポンプアセンブリの変位部材又はピストンがダイヤフラムに結合されて、ピストンの動きによりダイヤフラムが変形するようになることが好ましい。ダイヤフラムが排出位置へ変形することにより、計量チャンバの容量が減少するようになり、その結果圧力の上昇がもたらされる。ピストンをスプリングで付勢して、ダイヤフラムを静止位置に戻すこともできる。ピストンの露出部分に隣接してポンプアセンブリの外側にソレノイドなどのアクチュエータを配置することにより、ソレノイドの動きを利用してピストンを動かすことができる。
【0011】
流体分注カートリッジを配置することができる複数のステーションを含む流体分注システム内で、本発明の流体分注カートリッジを任意で使用することができる。ステーションは取付用開口部を含み、この開口部は、対応する外部アクチュエータアセンブリに隣接するカートリッジを受け入れるような形状にされることが好ましい。カートリッジは、重力に依存して自身のそれぞれの取付用開口部内に収まるものであってもよいが、これらのカートリッジは、任意で取付アセンブリを使用して流体分注装置に解放可能に取り付けられる。取付アセンブリの1つの例は、カートリッジ上に取り付けられたタブを含み、このタブが、それぞれの取付用開口部に隣接するスロットに受け入れられる。タブがスロットに受け入れられたときにスロット内によりきつく嵌まるように、タブはくさび形であってもよい。
【0012】
本発明の追加の態様は、似たような形状のカートリッジを位置合わせするように形成された取付用開口部を含む流体分注装置を含み、カートリッジと開口部との断面輪郭は一致する。1つの実施形態では、カートリッジと取付用開口部との断面輪郭が一致し、この断面輪郭によりカートリッジを一方向にのみ取り付けできるようになる。
【0013】
本発明のこれらの及びその他の特徴及び利点は、全体にわたって同じ参照数字が同じ部品を示す添付図面と共に本発明の以下の詳細説明を読むことにより理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による流体分注装置の実施形態の正面図である。
【図2】ラインA−Aで切り取った図1の流体分注装置の断面図である。
【図3】図1の流体分注装置の分解図である。
【図4】完全に閉鎖した構成における図1の流体分注装置の一部分の断面図である。
【図5】部分的に開放した構成における図1の流体分注装置の一部分の断面図である。
【図6】部分的に開放した構成における図1の流体分注装置の一部分の別の断面図である。
【図7】本発明による流体分注装置の実施形態の正面図である。
【図8】ラインE−Eで切り取った図7の流体分注装置の断面図である。
【図9】図7の流体分注装置の分解図である。
【図10】完全に閉鎖した構成における図7の流体分注装置の一部分の断面図である。
【図11】部分的に開放した構成における図7の流体分注装置の一部分の断面図である。
【図12】部分的に開放した構成における図7の流体分注装置の一部分の別の断面図である。
【図13】本発明による流体分注装置を使用することができる流体分注システムの上面図である。
【図14】図13の流体分注システムの垂直断面図である。
【図15】本発明による流体分注装置を取り付けることができる流体分注システムの一部分の断面図である。
【図16】流体分注システムの一部分の上面図である。
【図17】本発明による流体分注装置を組み込んだ流体分注システムの実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の段落では、添付図面を参照しながら実施例により本発明について詳細に説明する。この説明の全体にわたって、図示の好ましい実施形態及び実施例は、本発明を限定するものではなく、いくつかの例であると見なすべきである。本明細書で使用する「本発明」とは、本明細書に記載する発明の実施形態の任意の1つ及び任意の同等物のことを意味する。さらに、本明細書を通じて「本発明」の様々な(単複の)特徴について言及する場合、特許請求の範囲に記載される全ての実施形態又は方法に、これらの言及した(単複の)特徴が含まれなければならないことを意味するわけではない。
【0016】
図1〜図3は、本発明による流体分注装置10又はカートリッジの好ましい実施形態を示す図である。流体分注カートリッジ10は、一般に、流体分注アセンブリ14と流体連通している流体リザーバ12を含む。流体リザーバ12は、一般に、試薬又は洗浄液などの所定量の流体を入れておくように構成された容器である。リザーバ12は、流体不透過性材料で構成された硬質なハウジングであることが好ましい。流体リザーバ12はまた、交換式の流体ブラダ又はライナ(図示せず)を含むこともできる。リザーバは、化学的不活性プラスチック、例えばポリエチレン又はポリプロピレンなどの、流体を入れておくのに適した任意の材料で構成することができる点も理解されたい。リザーバの材料は、中身が外気により汚染されるのを防ぐためにガス不透過性であることが好ましく、これにより、リザーバに含まれる流体の保存寿命が延びるようになる。ライナ又はブラダを使用した実施形態では、ライナ又はブラダを支持する実質的に硬質なカバーを含むことができる。このような硬質なカバーはまた、取り扱い用の把持面、及びマーキング面を構成することができるので、例えば、表面に記載するか又はラベルを貼ることによりカートリッジ上に情報を記録することができる。
【0017】
リザーバ12は、リザーバ12内部の圧力を外気圧と等しくすることができる圧力バルブ16を含む。具体的には、圧力バルブ16を使用してリザーバ12内の圧力を一定にすることにより、リザーバ12の中身の一部が分注アセンブリ14を通じて分注された後、リザーバ12内に真空が生成されないようにすることができる。圧力バルブ16は、流体をリザーバ12に流入できるようにする任意のバルブであってよい。図示のように、圧力バルブ16は、一方向の「ダックビル」タイプの逆止弁であってもよい。受動逆止弁又は制御弁などの任意のバルブを圧力バルブ16として使用することができる。
【0018】
流体分注アセンブリ14は、一般に、ポンプアセンブリ20、計量チャンバ21、リザーババルブ22、ノズルバルブアセンブリ23、及びノズル19を含む。ポンプアセンブリ20はさらに、可動式ポンプピストン25と、ピストンスプリング26と、ダイヤフラム27などの可変部材とを含み、これらはポンプハウジング24又はキャップと分注アセンブリハウジング29の一部分28との間に収容される。分注アセンブリハウジング29の一部分28とポンプハウジング24とは一体に結合され、ピストン25、ピストンスプリング26、及びダイヤフラム27を収容するポンプキャビティ30を共同して定めるように構成される。本実施形態では、分注アセンブリハウジング29から伸びた複数のタブによってポンプハウジング24を所定の位置に保持することにより、ハウジング24とハウジング29との間に介入するダイヤフラム27を用いてポンプハウジング24を所定の位置にはめ込むことができるようになる。公知のあらゆるメカニズムによって、ポンプハウジング24を分注アセンブリハウジング29に結合することができ、例えば、ハウジング24をハウジング29に接着又は溶接することもできる。
【0019】
ダイヤフラム27は、実質上、静止位置と排出位置との間で変形することができる可撓性部材である。ダイヤフラム27は、分注アセンブリハウジング29の一部分28に結合されるように構成された第1の取付部31と、ピストン25の内部端33に取り付けられるように構成された第2の取付部32とを含む。図2に示すように、ダイヤフラム27は静止位置にあり、この位置では一般にボウル形である。静止位置では、ダイヤフラム27の凹型内面は、計量チャンバ21の一部を形成する変位空間34を定める。計量チャンバ21内の流体がダイヤフラム27を通ってピストン25の方向に流れ出さないように、ダイヤフラム27の第1の取付部31は、分注アセンブリハウジング29の一部分28に固定して結合され、流体密閉されることが好ましい。以下でさらに細述するように、第1の取付部31は、分注アセンブリハウジング29及び計量チャンバ21に対して固定されており、ダイヤフラム27は変形可能であるため、ポンプアセンブリ20は、計量チャンバ21内に圧力変化を生み出すための摺動流体シールを必要としない。
【0020】
ポンプピストン25は、ポンプハウジング24内に摺動自在に収容される。ピストン25の一部がポンプハウジング24から外に伸びることにより、ピストン25の外側部分に力を加えて分注アセンブリ14を作動させることができるようになる。ポンプピストン25の内部端33は、ダイヤフラム27の第2の取付部32に結合される。ピストン25とダイヤフラム27とを結合することにより、ピストン25の平行移動に伴ってダイヤフラム27の第2の取付部32が平行移動するようになる。ダイヤフラム27とピストン25とを結合することができる。図示のように、ダイヤフラム27の第2の取付部32は、ピストン25の円周溝39内に受け入れられる環状フランジ38を含む。円周溝39は、ピストン25の内部端33にほぼ隣接して配置される。
【0021】
ピストン25の外側部分は、ポンプキャビティ30からポンプハウジング24の開口部36を通って伸びる外部端35を含む。本実施形態では、ピストン25の内部端33と外部端35との間の長さは、ダイヤフラム27が静止位置と排出位置との間で動くときに、外部端35が露出されたままになるように選択される(図5に示しており、後述する)。ピストン25の外部端35は、静止位置と排出位置との間でダイヤフラム27を動かすためにピストン25に外力を加えるための面を構成する。
【0022】
ピストン25に外力が加えられない場合は、スプリング26を使用してピストン25の位置を定めることができる。スプリング26は、ダイヤフラム27の第1の取付部32とピストン25のスプリング接触フランジ37との間に介入される。例示の実施形態では、スプリング26は、ダイヤフラム27が静止位置に収まるように、圧縮され、ピストン25を分注アセンブリハウジング29のポンプ部28から離して付勢するように構成される。ピストン25を任意の所望の方向に付勢するようにスプリング26を構成することができる。さらに、必要であれば、スプリング26を複数のスプリング部材に置き換えることもできる。また、ピストン25を所望の位置に付勢するためのスプリング力を提供するようにダイヤフラム27を構成することもできる。さらに、ピストン25及びスプリング26を省略することにより、ダイヤフラム27に直接外力が加わるようにすることもできる。
【0023】
計量チャンバ21は、液体を入れておくように構成されたキャビティであり、リザーババルブ22と、ダイヤフラム27と、ノズルバルブアセンブリ23との間に配置される。計量チャンバ21は、リザーバ12から分注アセンブリ14に流入する所定量の流体をカートリッジ10から排出する前に入れておく空間を提供する。計量チャンバ21は、任意の所望のサイズ又は形状であってもよい。計量チャンバ21は、カートリッジ10の個々の分注サイクル中に分注される容量とほぼ同等の容量を有することが好ましい。
【0024】
リザーバ12から計量チャンバ21内への流体の流れは、通常、計量チャンバ21とリザーバ12との間に配置されるリザーババルブ22によって調整される。本実施形態では、リザーババルブ22は、受動的な一方向の「ダックビル」逆止弁である。ダックビルバルブの変形可能なフラップは、バルブの閉鎖時には互いに密閉し合い、バルブの開放時には互いに離れて隙間を形成する。
【0025】
リザーババルブ22の特性は、リザーバ12と計量チャンバ21との間に所望の圧力差が生じたときに、リザーバ12と計量チャンバ21との間の流体連通を可能にするように選択される。以下でさらに細述するように、ポンプアセンブリの作動を利用して計量チャンバ21内の流体圧力を変化させることにより、計量チャンバ21内の流体圧力がリザーバ12の流体圧力及び周囲環境と異なるようになる。本実施形態では、リザーバ12と計量チャンバ21との間の圧力差が最小となるか又は存在しない場合、或いはリザーバ12内の圧力が計量チャンバ21内の圧力よりも弱い場合、バルブ22が閉じるように構成される。リザーバ12内の圧力が計量チャンバ21内の流体圧力を選択したしきい値差だけ超えると、リザーババルブ22が開く。リザーババルブ22は、任意の公知の受動的な又は能動的なバルブであってもよい。このような能動バルブは、ソレノイドバルブ及び当業で公知の他の任意の能動的に制御されるバルブを含み、バルブコントローラを介して能動バルブの位置を自動又は手動で制御することができる。
【0026】
リザーババルブ22に隣接して任意のフィルタ44が含まれる。フィルタ44は、流体がリザーバ12からリザーババルブ22に流入する前に流体をろ過するように構成される。図示のように、フィルタ44は、リザーババルブ22に破片屑が流入しないような大きさにされた狭いスロットを含むキャップであり、フィルタ44は、リザーババルブ22をハウジング29内に保持する。また一方、例えば、メッシュ又は発泡体製のフィルタなどの任意のフィルタ装置を使用することもできる。
【0027】
ノズルバルブアセンブリ23を使用して、計量チャンバ21からカートリッジ10の外部への流れを調整する。ノズルバルブアセンブリ23は、通常、計量チャンバ21とノズル19との間に配置される。本実施形態では、ノズルバルブアセンブリ23は、ダイヤフラム52及びバルブスプリング56を含む受動バルブである。ダイヤフラム52は、通り抜け開口部53及び突出部54を含む可撓性部材であり、分注アセンブリハウジング29とノズル19との間に介入される。計量チャンバ21内の流体がシール面58とダイヤフラム52との間を流れないように、ダイヤフラム52の周辺は分注アセンブリハウジング29に含まれるシール面58に結合される。通り抜け開口部53が計量チャンバ21の一部と位置合わせされることにより、ダイヤフラム52の下面とノズル19の上面とによって定められる容量の流体が、計量チャンバ21からダイヤフラム52を通過してバルブチャンバ57へ流入できるようになる。
【0028】
突出部54は、ダイヤフラム52の表面からノズル19の方向に伸びる円錐形の突起である。以下でさらに細述するように、流体分注装置14が静止状態又は充填状態にある場合、突出部54は、突出部54の外面が流体導管60の表面を密封するように少なくとも部分的にノズル流体導管60内に伸びる。突出部54とノズル19との間の密封の位置を導管60の内部に置き、シールと導管60の出口との間の空間の容量を最小にすることが好ましい。この容量を最小にすることにより、導管60を詰まらせる可能性のあるこの空間における流体の蒸発の可能性が低減される。突出部54は、導管60の表面を密封するのに適した任意の方法で構成することができる。例えば、流体導管60の断面形状が四角形である場合、突出部54を角錐又は角錐台の形状で作製することなどにより、突出部54を同様に四角形の断面で構成することもできる。
【0029】
スプリング56が分注アセンブリハウジング29とダイヤフラム52とによって定められるキャビティ68内に配置され、開口部69が設けられることにより、スプリング56の圧縮中にキャビティ68から空気を放出することができる。スプリング56は、計量チャンバ内の流体圧力が周囲の圧力と同じか又はこれに近くなると、突出部54を導管60内に付勢するように圧縮して取り付けられ、流体が上記の圧力になったときに液だれを防ぐように選択されることが好ましい。しかしながら、スプリング56はまた、ポンプアセンブリ20の作動によりもたらされる計量チャンバ21及びバルブチャンバ57内の流体圧力の上昇により、ダイヤフラム52の少なくとも一部がスプリング56の付勢力に反して分注アセンブリハウジング29に向かって上向きに動くようにも選択される。突出部54は、ノズル19から離れてダイヤフラム52と共に動き、この動きにより突出部54と導管60との間の流体シールが除去される。この結果、加圧流体は、突出部54を通ってノズル19の導管60を自由に貫流するようになる。
【0030】
ダイヤフラム52及びスプリング56の特性は、計量チャンバ21と外部環境との間に所望の圧力差が生じた場合、ノズルバルブアセンブリ23が計量チャンバ21とノズル19の流体導管60との間に流体連通をもたらすように選択される。本実施形態では、スプリング56は、計量チャンバ21と周囲との間の圧力差が最小となるか又は存在しない場合、ダイヤフラム52を閉鎖位置に保持する(すなわち、計量チャンバ21と導管60との間に流体連通が存在しない)ように構成される。以下でさらに細述するように、ポンプアセンブリ20を作動させて計量チャンバ21及びバルブチャンバ57内の流体圧力を変化させることにより、圧力が外部環境の流体圧力と異なるようになる。ノズルバルブチャンバ57内の流体からダイヤフラム52にかかる力が、スプリング56からダイヤフラム52にかかる力を超えると、ダイヤフラム52が上向きに動かされて、ダイヤフラム突出部54の外面と導管60の内面との間に隙間が生じるようになる。この結果、流体は、計量チャンバ21から導管60を通って流れることができるようになる。さらに、ソレノイド又はその他の能動バルブなどの能動バルブを使用することができ、バルブコントローラを介して能動バルブの位置を自動又は手動で制御することができる。リザーババルブアセンブリ22と同様に、ノズルバルブアセンブリ23は、当業で公知の任意の受動的な又は能動的に制御されるバルブであってもよい。
【0031】
カートリッジ10のからの任意の所望のフロー属性を生み出すようにノズル19及び導管60の構成を選択することができる。例えば、流体の流れる方向を定め、流体を幅広く噴霧し、或いは流体を飛沫化するように分注アセンブリ14を構成することができる。流体導管60の形状を選択することにより、及びポンプアセンブリ20を調整して計量チャンバ21内に所望の圧力上昇を生み出すことにより、ノズル19を通過する加圧流体のフロー属性を望むように選択することができる。ノズル19は、任意の材料で作製することができ、化学的疎水性の硬質プラスチック材料で構成して、排出後に液体の最後の一滴が漏れるのを防止できるようにすることが好ましい。また、図3に示すように、ノズルを分注アセンブリハウジング29にタブで直接結合して、ノズル19を所定の位置にはめ込むようにすることができる。上記とは別に、或いは上記に加えて、ノズル19を接着剤及び/又は溶接により分注アセンブリハウジング29に機械的に結合することができる。さらに、ダイヤフラム52を介してノズルを分注アセンブリハウジング29に結合することもできる。
【0032】
カートリッジ10を組み立てた後、リザーバ12を試薬又は他の液体で望み通りに満たすことができる。一般に、リザーバ12を最初に満たした直後は、計量チャンバ21はほぼ空になる。カートリッジ10の使用準備のために、ポンプアセンブリ20を作動させることにより、分注アセンブリ14に呼び水を行うことができる。以下の説明から理解されるように、ポンプアセンブリ20の作動により計量チャンバ21内の流体圧力が上昇し、この結果、計量チャンバ21の中身がノズル19を通じて排出されることになる。呼び水中、当初計量チャンバ21を占めていた空気が排出され、リザーバ12から流入する液体に置き換えられる。
【0033】
図4〜図6を参照しながら、流体分注アセンブリ14の動作について説明する。動作中、流体分注アセンブリ14は、静止状態(すなわち、完全に閉鎖した状態)、排出状態(すなわち、ノズルバルブが開いて部分的に開放した状態)、又は充填状態(すなわち、リザーババルブが開いて部分的に開放した状態)のうちの1つで構成される。ポンプアセンブリ20のピストン25に外力が加わっていない場合、分注アセンブリ14は静止状態にある。この状態では、リザーババルブ22及びノズルバルブアセンブリ23は閉じられており、リザーバ12から分注アセンブリ14内へ、又は計量チャンバ21から分注アセンブリ14外への流体の流れは存在しない。また、ダイヤフラム27は静止位置にあり、変位空間34は最大容積を有し、スプリング26が圧縮されて、ピストン25を計量チャンバ21から離すように促す。本実施形態では、分注アセンブリ14が静止状態にある場合、リザーバ12及び計量チャンバ21内の流体圧力は、外部の流体圧力とほぼ等しくなる。
【0034】
図5を参照すると、スプリング26によってピストン25に与えられている力を上回るほどの外力をピストン25に加えることにより、分注アセンブリ14を排出状態に置くことができる。この力により、ピストン25が矢印Bの方向に動く。ピストン25が矢印Bの方向へ動くことにより、ダイヤフラム27が、図4に示すボウル形の静止位置から、図5に示すほぼ平らな排出位置へと変形するようになる。ダイヤフラム27の変形により、変位空間34及び計量チャンバ21の容量が減少し、この結果、計量チャンバ21内の流体圧力が上昇する。計量チャンバ21内の流体圧力の上昇に対応して、リザーババルブ22は閉じたままとなる。しかしながら、ノズルバルブアセンブリ23は、計量チャンバ21内の流体圧力が十分に上昇した場合には開くように構成される。この結果、計量チャンバ21内の加圧流体は、矢印Cで示すようにノズル19を通じて排出される。
【0035】
図6を参照すると、ピストン25に対する外力が除去された後、分注アセンブリ14は充填状態に入る。排出中、ピストン25が平行移動し、スプリング26は外力を受けて圧縮される。外力を除去すると、スプリング26の圧縮力により、ピストン25は計量チャンバ21から離れて矢印Dの方向に平行移動する。ピストン25がこの方向へ動くことにより、ダイヤフラム27が排出位置から静止位置へ平行移動するようになる。この変形により、変位空間34の容量が増加する結果となり、これにより計量チャンバ21内に不完全真空(すなわち、リザーバ12内の流体圧力及び外部圧力を下回る計量チャンバ21内の圧力の低下)が生み出される。この不完全真空により、十分な圧力差が得られたときにリザーババルブ22が開き、矢印Eで示すように、流体がリザーバ12から計量チャンバ21へ流入できるようになる。同時に、スプリング56によりダイヤフラム52上に加えられる複合力が、周囲の流体圧力によりダイヤフラム52上に生じる力よりも大きくなるため、ノズルバルブアセンブリ23が閉じられる。この構成では、計量チャンバ21内の圧力がリザーバ12内の流体圧力とほぼ等しくなるまで、流体はリザーバ12から計量チャンバ21へ流入することができる。計量チャンバ21内の圧力がリザーバ12内の流体圧力とほぼ等しくなると、リザーババルブ22が閉じられる。
【0036】
図7〜図8は、本発明による流体分注カートリッジの別の実施形態を示す図である。流体分注カートリッジ110は、前述した実施形態と同様の又は一致する部品を使用しており、このような部品については同様の参照数字で示している。流体分注カートリッジ110は、通常、流体リザーバ112、及び流体リザーバ112と連通する流体分注アセンブリ114を含む。流体リザーバ112は、一般に、試薬又は洗浄液などの所定量の流体を入れておくように構成された容器である。流体リザーバ112は、前の実施形態に関して上述したように構成することができる。
【0037】
リザーバ112はまた、流体をリザーバ112に流入できるようにする圧力バルブ116も含み、この圧力バルブを使用してリザーバ112内の圧力を一定にすることにより、リザーバ112の中身の一部が分注アセンブリ114を通じて分注された後に、リザーバ112内に真空が生成されなくなる。
【0038】
流体分注アセンブリ114は、一般に、ポンプアセンブリ120、計量チャンバ121、リザーババルブアセンブリ122、ノズルバルブアセンブリ123、及びノズル119を含む。リザーババルブアセンブリ122、ノズルバルブアセンブリ123、及びノズル119以外は、流体分注アセンブリ114の部品は上述の部品と同様のものであり、ここでは全詳細は説明しない。ポンプアセンブリ120は、可動式ポンプピストン125、ピストンスプリング126、及びダイヤフラム127を含み、これらは、ポンプハウジング124と分注アセンブリハウジング129の一部分128との間に収容される。
【0039】
ダイヤフラム127は、実質上、静止位置と排出位置との間で変形することができる可撓性部材である。図2に示すように、ダイヤフラム127は静止位置にあり、この位置では一般に凹型ボウルの形状を成して、計量チャンバ121の一部を形成する変位空間134を定める。
【0040】
ポンプピストン125は、ポンプハウジング124内に摺動自在に収容され、ピストン125の一部がポンプハウジング124から外に伸びることにより、ピストン125の外側部分に力を加えて分注アセンブリ114を作動させることができるようになる。ピストン125とダイヤフラム127とが結合することにより、ピストン125の平行移動に伴ってダイヤフラム127の一部が平行移動するようになる。ピストン125に外力が加えられない場合、スプリング126がピストン125を計量チャンバ121から離して位置決めし、この場合、ダイヤフラム127は静止位置に置かれる。
【0041】
計量チャンバ121は、リザーババルブアセンブリ122と、ダイヤフラム127と、ノズルバルブアセンブリ123との間に配置された流体チャンバである。計量チャンバ121は、リザーバ112から流入する所定量の流体をカートリッジ110から排出する前に入れておく空間を提供する。
【0042】
リザーババルブアセンブリ122は、リザーバ112から計量チャンバ121内への流体の流れを調整し、バルブアセンブリ122は、通常、計量チャンバ121とリザーバ112との間に配置される。本実施形態では、リザーババルブアセンブリ122は、ピストン145及びピストンスプリング146を含む受動的な一方向の逆止弁である。ピストン145は密閉位置と開放位置との間で可動であり、ピストンスプリング146はピストン145を閉鎖位置に付勢する。
【0043】
ピストン145及びピストンスプリング146は、分注アセンブリハウジング129とリザーババルブキャップ148とが共同して定めるリザーババルブチャンバ147内に取り付けられる。キャップ148は、ピストン145が開放位置にあるときに、リザーバ112と計量チャンバ121との間に流体連通をもたらすように構成された試薬導管149を含む。キャップ148はシール面150を含み、このシール面は、ピストン145が密閉位置にあるときにバルブピストン145上のシール面151に選択的に隣接して、リザーバ112と計量チャンバ121との間の流体連通を妨げるように構成される。リザーババルブアセンブリ122は、当業で公知の任意の受動的な又は能動的な(すなわち、能動的に制御される)バルブであってもよい。
【0044】
スプリング146の特性は、リザーバ112と計量チャンバ121との間に所望の圧力差が生じたときに、リザーババルブアセンブリ122がリザーバ112と計量チャンバ121との間の流体連通を可能にするように選択される。本実施形態では、スプリング126は、リザーバ112と計量チャンバ121との間の圧力差が最小となるか又は存在しない場合、或いはリザーバ112内の圧力が計量チャンバ121内の圧力よりも弱い場合、ピストン145をシール位置に付勢する(すなわち、リザーバ112と計量チャンバ121との間に流体連通が存在しない)ように構成される。以下でさらに細述するように、ポンプアセンブリ20の作動を利用して計量チャンバ121内の圧力を変化させることにより、計量チャンバ121内の流体圧力をリザーバ112の流体圧力と異なるようにすることができる。スプリング126と計量チャンバ121内の圧力とによってピストン145上に生じる複合力が、リザーバ112内の流体圧力からピストン145上に与えられる力よりも弱い場合、ピストン145が計量チャンバ121に向かって下向きに動かされることにより、シール面150とシール面151との間に隙間が形成されるようになる。この結果、流体がリザーバ112から計量チャンバ121へ流入できるようになる。具体的に言うと、リザーバ112内の圧力が計量チャンバ121内の流体圧力を選択したしきい値差だけ超えると、リザーババルブアセンブリ122が開く。リザーババルブアセンブリ122のピストン145を、バルブキャップのシール面150を密封できる面を含むボール又はその他の任意の部材と置き換えることができる。さらに、ソレノイド又はその他の能動的に制御されるバルブなどの能動バルブを使用することができ、バルブコントローラを介して能動バルブの位置を自動又は手動で制御することができる。
【0045】
ノズルバルブアセンブリ123は、計量チャンバ121からノズル119を通じてカートリッジ110の外側へ流れる流体の流れを調整する。ノズルバルブアセンブリ123は、通常、計量チャンバ121とノズル119との間に配置される。リザーババルブアセンブリ122と同様に、ノズルバルブアセンブリ123は、当業で公知の任意の受動的な又は能動的に制御されるバルブであってもよい。本実施形態では、ノズルバルブアセンブリ123は、バルブピストン155及びバルブスプリング156を含む受動的な一方向の逆止弁であり、これらは、分注アセンブリハウジング129とノズル119とが共同して定めるノズルバルブチャンバ157内に収容される。ピストン155に隣接する分注アセンブリハウジング129にはシール面158が含まれており、この分注アセンブリハウジング129は、ピストン155の上部端に含まれるシール面159で選択的に終端となるように構成される。
【0046】
スプリング156の特性は、計量チャンバ121と外部環境との間に所望の圧力差が生み出されたときに、ノズルバルブアセンブリ123により計量チャンバ121とノズル119の流体導管160との間の流体連通が可能となるように選択される。本実施形態では、スプリング156は、計量チャンバ121と周囲との間の圧力差が最小となるか又は存在しない場合、或いは外部圧力が計量チャンバ121内の圧力よりも高い場合、閉鎖位置になる(すなわち、計量チャンバ121と導管160との間に流体連通が存在しない)ように構成される。ポンプアセンブリ120の作動によって計量チャンバ121内の流体圧力が変化することにより、計量チャンバ121内の圧力が外部環境の流体圧力と異なるようになる。スプリング156と外部圧力とによってピストン155上に生じる複合力が、計量チャンバ121内の流体圧力からピストン155上に与えられる力よりも低い場合、ピストン155がノズル119に向かって下向きに動かされることにより、シール面158とシール面159との間に隙間が形成されるようになる。この結果、流体は、計量チャンバ121からノズル119の導管160を通って流れることができるようになる。ソレノイド又はその他の任意の能動バルブなどの能動バルブを使用することができ、バルブコントローラを介して能動バルブの位置を自動又は手動で制御することができる。
【0047】
流体分注アセンブリ114の動作を図10〜図12に示す。前述の実施形態と同様に、動作中、流体分注アセンブリ114は、静止状態、排出状態、又は充填状態のうちの1つで構成される。流体分注アセンブリ114が図10に示した静止状態にある場合、リザーババルブアセンブリ122及びノズルバルブアセンブリ123は閉じられている。この結果、リザーバ112から流体分注アセンブリ114内へ、或いは計量チャンバ121から流体分注アセンブリ114外への流体の流れは存在しない。この状態では、ダイヤフラム127は静止位置にあり、変位空間134は最大量を有する。また、スプリング126が圧縮されることにより、ピストン125は計量チャンバ121から離れるように促されるようになる。
【0048】
図11を参照すると、ピストン125に外力を加えることにより、流体分注アセンブリ114が排出状態に置かれる。この力により、ピストン125は矢印Fの方向へ動く。ピストン125が矢印Fの方向へ動くことにより、ダイヤフラム127がほぼ平らな排出位置に変形するようになる。ダイヤフラム127の変形により、変位空間134及び計量チャンバ121の容量が減少し、この結果、計量チャンバ121内の流体圧力が上昇する。計量チャンバ121内の流体圧力の上昇に対応して、リザーババルブアセンブリ122は閉じたままとなるが、ノズルバルブアセンブリ123は、計量チャンバ121内の流体圧力が十分に上昇した場合には開くように構成される。この結果、計量チャンバ121内の加圧流体は、矢印Gで示すようにノズル119を通じて排出される。
【0049】
ピストン125から外力が除去された後、分注アセンブリ114は図12に示す充填状態に入る。外力を除去すると、スプリング126の圧縮力により、ピストン125が計量チャンバ121から離れて矢印Hの方向に平行移動し、これによりダイヤフラム127が排出位置から静止位置へ変形する。この変形により、変位空間134の容量が増加する結果となり、これにより計量チャンバ121内に不完全真空が生み出される。この真空により、十分な圧力差が得られたときにリザーババルブアセンブリ122が開き、矢印Iで示すように、流体がリザーバ112から計量チャンバ121へ流入できるようになる。同時に、外部流体圧力及びスプリング156によってピストン150上に加えられる複合力が、計量チャンバ121内部の流体圧力によってピストン155上に生じる力を上回るので、ノズルバルブアセンブリ123は閉じる。この構成では、計量チャンバ121内の圧力がリザーバ112内の流体圧力とほぼ等しくなるまで、流体はリザーバ112から計量チャンバ121へ流入することができる。計量チャンバ121内の圧力がリザーバ112内の流体圧力とほぼ等しくなると、スプリング146の影響でリザーババルブアセンブリ122が閉じる。
【0050】
流体分注カートリッジを、図13及び図14に関連して後述するシステムなどのより大規模な流体分注システムと関連して使用することもできる。特に、カートリッジ10は、位置合わせ面61及びショルダ62を任意で含み、カートリッジ110は、位置合わせ面161及びショルダ162を任意で含み、これらはカートリッジをシステム内で正確に方向合わせするのに役立つものである。以下でさらに細述するように、それぞれの位置合わせ面がシステムの開口部と接することにより、それぞれのノズルの流体導管を所望の流体分注対象と容易に位置合わせできるようになる。さらに、ショルダを使用してノズルと流体分注対象との間の距離を制御することができる。それぞれの位置合わせ面及びショルダが、より大規模な分注システム内でのカートリッジの正確な位置合わせに対して低い許容範囲を有するようにカートリッジ10及び110を製造(すなわち、機械加工又はモールド成形)することができる。さらなる取付機能及び/又は位置合わせ機能をカートリッジに含めることもできる。例えば、カートリッジ10はまた、分注システムの一部に隣接するように構成された位置合わせ面68も含む。また、カートリッジ110は任意で取付タブ163を含み、これについては図15及び図16に関連して以下でさらに細述する。それぞれの流体分注システムで使用するカートリッジを要望通りに位置決めしやすくすることができる任意の形状の位置合わせ支援機能を使用することができる。
【0051】
図13及び図14は、本発明による1又はそれ以上の流体分注カートリッジを組み込んだ流体分注システム70の例示的な実施形態を示す図である。システム70は、一般にカートリッジ取付アセンブリ71及びサンプル支持アセンブリ72を含む。カートリッジ取付アセンブリ71は複数のステーション73を含み、このステーション73に流体分注カートリッジ10が取り付けられる。ステーション73は、流体分注カートリッジを受け入れるとともにアクチュエータアセンブリ75に隣接して配置するように構成された取付用開口部74を含むことが好ましい。カートリッジを受け入れるとともに分注アセンブリを作動させて試薬を要望通りに分注することができる任意の形状の流体分注システム70を使用することができる。
【0052】
流体分注システム70はまた、サンプル支持アセンブリ72上に取り付けられた複数の受取部材76も含む。受取部材76は、カートリッジ10から流体を分注することが望まれる任意のアイテムであってよい。適当な受取部材76の例として、スライド保持トレイ、サンプル容器、及び混合槽が含まれる。受取部材76は、上部に組織サンプルを置いたスライドを保持する顕微鏡用スライド保持トレイであり、スライドは、それぞれのトレイ76上に表面を下にして置かれることが好ましい。このようなシステムでは、流体分注装置10から分注される試薬は、スライド上又はスライドに含まれるサンプル上には分注されずに、むしろスライドトレイ76の受取面上に分注され、任意的に、真空により生じる圧力差又はスライドトレイ76上に置かれたスライド底面の毛管現象などによって流れる。任意で、スライド又は受取部材76の他の部分を選択的に加熱するように構成された加熱パッド77上に受取部材76を取り付けることができる。加熱パッド77を任意でバネ付勢して、受取部材76と過熱パッド77の1又はそれ以上との間の接触性を向上させることができる。
【0053】
受取部材支持アセンブリ72が、通常、カートリッジ取付アセンブリ71の下に位置することにより、重力を利用して上述のようにカートリッジ10から受取部材72に流体を送出することができる。カートリッジ取付アセンブリ71は、静止した受取部材支持アセンブリ72に対して可動であることにより、任意の所望の受取部材76上に流体を分注するようにカートリッジ10を配置することができる。代替の実施形態では、カートリッジ取付アセンブリ71及びサンプル支持アセンブリ72の両方が相互に可動であるため、両方を互いに動かすことにより流体の分注が達成される。図13に示すように、受取部材76は顕微鏡用スライドのような全て同じものであってもよく、或いは、受取部材76は顕微鏡用スライドとサンプル容器のような異なる種類のアイテムを含むものであってもよい。
【0054】
カートリッジ取付アセンブリ71が回転することにより、選択した流体分注カートリッジ10をアクチュエータアセンブリ75のアクチュエータ78、79、80に隣接して配置できるようになる。或いは、アクチュエータ78、79、及び80で示す種類のようなアクチュエータを個々のカートリッジ10に隣接して配置することにより、特定のカートリッジ10を作動させるためにカートリッジ取付アセンブリ71を回転させる必要がなくなる。アクチュエータアセンブリ75は、カートリッジ10に作用して制御された量の流体を放出させる任意のアクチュエータ装置であってよい。例えば、アクチュエータアセンブリ75は、ソレノイドなどの複数の線形アクチュエータを含むことができ、これらがポンプピストン25の外部端35と位置合わせされることにより、アクチュエータの動きにより力が加えられてポンプアセンブリ20内のポンプピストン25が動くようになる。
【0055】
カートリッジ取付アセンブリ71が、サンプル支持アセンブリ72に対して平行移動及び回転の両方を行うことにより、個々のカートリッジ10が、任意の受取部材76の上に選択的に配置できるようになることが好ましい。選択した受取部材76の上にカートリッジ10が配置されると、アクチュエータアセンブリ75がカートリッジ10に作用して、制御された量の流体が受取部材76上に排出される。
【0056】
図13及び図14で分かるように、カートリッジ取付アセンブリ71が支持部材81に回転可能に結合され、アクチュエータアセンブリ75が支持部材81に固定して取り付けられることにより、アクチュエータアセンブリ75に対してカートリッジ10を回転させることができるようになる。支持部材81が水平に平行移動できることにより、カートリッジ10が静止した受取部材76に対して回転と平行移動との両方を行えるようになることが好ましい。このようにして、選択したカートリッジ10を任意の受取部材76の上に選択的に配置することができる。
【0057】
例示の実施形態で分かるように、アクチュエータアセンブリ75は、受取部材76のそれぞれの列82、83、84上に流体を分注するのに使用する3つのアクチュエータ78、79、80を任意で含むことができる。動作中、アクチュエータ78は、列82の受取部材76上に流体を分注するようにされ、アクチュエータ79は、列83の受取部材76上に流体を分注するようにされ、アクチュエータ80は、列84の受取部材76上に流体を分注するようにされる。当然ながら、当業者であれば理解できるように、本発明の範囲から逸脱することなく、任意の個数のアクチュエータ及び/又は受取部材を採用することができる。
【0058】
図14に示すように、システム70は、供給容器85、ごみ容器86、及びバルブ87を任意で含む。供給容器85を使用して、システム70に含まれる流体分配アセンブリを通じて分配することができる、受取部材76を洗浄するための水又は試薬などの液体を入れておくことができる。バルブ87は、受取部材76を洗浄するための液体などの、システム70を貫流する液体の流れの方向を決めるためのスイッチを含むことができる。また、液体が受取部材76の洗浄に使用された後、バルブ87を使用して液体の流れをごみ容器86に向けることができる。
【0059】
カートリッジ10の形状は、カートリッジをカートリッジ取付アセンブリ71内に一方向にのみ取り付けることができるように選択されることが好ましい。例えば、位置合わせ面61で切り取ったカートリッジ10の断面形状をほぼ台形にしてもよく、また、カートリッジ取付アセンブリ71内の取付用開口部74も同様の形状とすることにより、カートリッジ10の取り付けが一方向に限定されるようになる。さらに、取付用開口部74の補完機能の中に受け入れられる1又はそれ以上の鍵66を含むことができる。図13及び図14は、ほぼ台形の断面を有するカートリッジ10の例を示しており、この形状が(図13に示すような)ほぼ台形の取付用開口部74内に収まるようにされる。別の実施形態では、取付用開口部74及びカートリッジ10は、他の同方向の形状を有するか、或いはタブ及びスロットなどのカートリッジ10の取り付けを一方向に限定する配向機能を含む。
【0060】
図15及び図16を参照すると、カートリッジ110に含まれる任意の取付機能について説明している。この取付機能を利用してカートリッジ取付アセンブリ71の対応する取付用開口部74内にカートリッジ110を解放可能に取り付けることができる。図示のように、カートリッジ110は取付タブ163を含み、より大規模なシステム内でカートリッジを位置合わせした後にこの取付タブを使用してカートリッジ110を所定の位置に固定することができる。図示のように、取付タブ163は外側部分164と内側部分165とを含み、これらは、取付タブ163が大まかにT字形の断面を有するように結合する。外側部分164及び/又は内側部分165の寸法がこれらの長さとともに変化することにより、取付タブ163がスロット67内により深く挿入されると、カートリッジ取付アセンブリ71に含まれる取付タブ163と取付スロット67との間のくさび嵌合はより堅固なものとなることができる。
【0061】
図17を参照してわかるように、アクチュエータアセンブリ75は、アクチュエータ78、79、80のうちのいずれか1つを作動させることができるコントローラ90及び制御スイッチ91を使用して作動されることが好ましい。コントローラ90は、プログラム可能なコンピュータであることが好ましい。流体分注システム70のメインコントローラ又は制御システムにコントローラを組み込むこともでき、メイン組織の処理プログラムにアクチュエータ78、79、80を作動させるためのプログラミングステップを含むこともできる。コントローラ90は、アクチュエータアセンブリ75を自動又は手動で作動させることができる任意の装置であってよい。さらに、コントローラ90をカートリッジ取付アセンブリ71に対して動かないように配置することができる。或いは、コントローラ90をカートリッジ取付アセンブリ71に対して動くように配置し、コントローラ90とアクチュエータアセンブリ75との間に有線又は無線通信リンク92を設けるようにしてもよい。アクチュエータアセンブリ75は、作動されると、カートリッジ10のポンプアセンブリ20に機械力93を加えて、分注アセンブリ14が流体の流れ又は滴を受取部材76上に分注するようにする。
【0062】
このようにして、流体分注試薬カートリッジが提供されることが理解される。当業者であれば、本発明を限定するためではなく例示する目的で、本説明において提示した好ましい実施形態以外の実施形態によって本発明を実施することができ、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるということを理解するであろう。本説明において検討した特定の実施形態の同等物によっても同様に本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 流体分注装置
12 リザーバ
14 流体分注アセンブリ
16 圧力バルブ
19 ノズル
20 ポンプアセンブリ
21 計量チャンバ
22 リザーババルブ
23 ノズルバルブアセンブリ
24 ポンプハウジング
25 ピストン
26 ピストンスプリング
27 ダイヤフラム
28 一部分
29 分注アセンブリハウジング
30 ポンプキャビティ
31 第1の取付部
34 変位空間
35 外部端
44 フィルタ
52 ダイヤフラム
54 突出部
56 バルブスプリング
66 鍵
68 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体リザーバと、
前記流体リザーバに流体結合された分注アセンブリと、
を備えた流体分注カートリッジであって、
前記分注アセンブリは、
分注ハウジングと、
可変部材と、
を含み、
前記分注ハウジング及び前記可変部材は共同して計量チャンバを定め、前記可変部材は、第1の計量チャンバ容量に相当する静止位置から、前記第1の計量チャンバ容量よりも小さい第2の計量チャンバ容量に相当する排出位置へ変形するように構成される、
ことを特徴とする流体分注カートリッジ。
【請求項2】
前記流体リザーバと前記計量チャンバとの間に配置されたリザーババルブをさらに備え、該リザーババルブは、前記リザーバから前記計量チャンバへの流体の流入を可能にするように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項3】
前記計量チャンバと前記分注アセンブリの出口との間に配置されたノズルバルブをさらに備え、該ノズルバルブは、前記計量チャンバから前記分注アセンブリ外部への流体の流出を可能にするように構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項4】
前記分注アセンブリに結合された流体ノズルをさらに備え、該ノズルは、前記分注アセンブリの出口を定める流体導管を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項5】
前記可変部材は、前記静止位置ではほぼ凹形であり、前記排出位置ではほぼ平らなダイヤフラムである、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項6】
前記流体リザーバに結合された一方向バルブをさらに備え、該一方向バルブは、周囲から前記リザーバへの流体の流入を可能にするように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項7】
前記可変部材は前記静止位置に付勢される、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項8】
前記分注アセンブリは、前記可変部材の一部に結合されたピストンを含み、該ピストンの平行移動により前記可変部材を前記静止位置と前記排出位置との間で変形させるように構成される、
ことを特徴とする請求項7に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項9】
前記リザーババルブは、前記リザーバから前記分注アセンブリへの流体の流入を可能にするように構成された一方向バルブであり、前記ノズルバルブは、前記分注アセンブリから前記カートリッジ外部への流体の流出を可能にするように構成された一方向バルブである、
ことを特徴とする請求項2に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項10】
前記リザーババルブと前記流体リザーバとの間に介入するフィルタをさらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項11】
前記フィルタは、前記リザーババルブを前記分注ハウジング内に保持するキャップである、
ことを特徴とする請求項10に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項12】
前記分注アセンブリに結合された流体ノズルをさらに備え、該ノズルは前記分注アセンブリの出口を定める流体導管を含み、前記ノズルバルブは前記流体導管の壁を密封する、
ことを特徴とする請求項3に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項13】
前記流体ノズルは疎水性材料で構成される、
ことを特徴とする請求項4に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項14】
水平の断面形状を有する取付部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項15】
前記取付部の前記水平の断面形状は、同形状の受入アセンブリで所定の一方向に受け入れられるように構成される、
ことを特徴とする請求項14に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項16】
前記水平の断面形状はほぼ台形である、
ことを特徴とする請求項14に記載の流体分注カートリッジ。
【請求項17】
各々がカートリッジ取付機能を含む複数の流体分注カートリッジ取付ステーションを有するカートリッジ取付アセンブリと、
リザーバと、計量チャンバ及び変形すると前記計量チャンバの前記容量を変化させるように構成された可変部材を含む流体分注アセンブリとを含む、それぞれの取付ステーションに取り付けられた複数の流体分注カートリッジと、
前記流体分注アセンブリのほぼ下で複数の組織サンプルを支えるように構成されたサンプル支持アセンブリと、
を備え、
前記カートリッジ取付機能は、対応する流体分注カートリッジの対応する水平断面形状に一致する形状にされた、
ことを特徴とする流体分注システム。
【請求項18】
前記カートリッジ取付機能は開口部である、
ことを特徴とする請求項17に記載の流体分注システム。
【請求項19】
前記カートリッジ取付機能は刻み目である、
ことを特徴とする請求項17に記載の流体分注システム。
【請求項20】
前記カートリッジ取付アセンブリは、異なる形状にされたカートリッジ取付機能を有する少なくとも2つの取付ステーションを含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の流体分注システム。
【請求項21】
前記取付ステーションの各々は、カートリッジ取付機能と選択的にかみ合うように構成されたカートリッジ保持機能を含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の流体分注システム。
【請求項22】
前記カートリッジ取付機能は取付タブであり、前記カートリッジ保持機能は、前記取付タブを受け入れるとともに前記取付タブと前記保持機能との間にくさび嵌合を提供するように構成されたスロットである、
ことを特徴とする請求項21に記載の流体分注システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−538426(P2009−538426A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512152(P2009−512152)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/012400
【国際公開番号】WO2007/139892
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508348543)サクラ ファインテック ユー.エス.エイ. インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】