説明

流体吐出用リング電極

流体吐出システムのポンプ室を駆動する方法、システム、及び装置が開示する。一実施形態では、ポンプ室を駆動するアクチュエータは、一対の駆動電極と連続基準電極との間に連続圧電層を含む。一対の駆動電極は、内側電極と、内側電極を囲む外側電極とを含む。アクチュエータは更にコントローラーに接続される。コントローラーは、流体吐出サイクル中、第1の期間にポンプ室を膨張させるために外側電極に負の電圧差パルスを印加し、次にポンプ室を収縮して液滴を吐出するために第1の期間後の第2の期間に内側電極に別の負の電圧差パルスを印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は圧電的に作動される流体吐出に関する。
【背景技術】
【0002】
流体吐出システムは通常、流体供給源からノズルアセンブリまでの流体通路を含み、ノズルアセンブリは液滴が吐出されるノズルを含む。圧電アクチュエータ等のアクチュエータにより流体通路内の流体を加圧することにより液滴吐出を制御することができる。吐出される流体は例えば、インク、エレクトロルミネセント材料、生体化合物、又は電気回路形成用材料であってもよい。
【0003】
インクジェットプリンタ内の印字ヘッドモジュールは流体吐出システムの一例である。印字ヘッドモジュールは通常、対応するインク通路アレイ及び関連アクチュエータを有する一列のノズル又はノズルアレイを有し、各ノズルからの液滴吐出を一つ又は複数のコントローラーにより独立に制御することができる。印字ヘッドモジュールは、インク通路が形成された半導体印字ヘッドボデイ(以下、印字ヘッドボデイ)と、印字ヘッドボデイに貼り付けられた圧電アクチュエータと、を含むことができる。印字ヘッドボデイに貼り付けられる別の層によりノズルを画定することができる。印字ヘッドボデイは、インク通路に沿ったポンプ室を画定するようにエッチングされるシリコン基板で作られうる。ポンプ室の片側は、圧電アクチュエータにより駆動されるとポンプ室を撓ませて膨張又は収縮させるのに十分に薄い膜である。圧電アクチュエータはポンプ室の上の膜上に支持される。圧電アクチュエータは、一対の対向電極により圧電層に印加される電圧に応じて幾何学的形状を変える(すなわち、作動する)圧電材料の層を含む。圧電層の作動により膜を撓ませ、そして膜が撓むことによりインク通路に沿ったポンプ室内のインクを加圧し、最終的にノズルからインク液滴を吐出する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書は流体吐出に関する技術について述べる。通常、リング電極と一様な分極方向を有する圧電材料とを含む圧電アクチュエータは、単極電圧波形により作動することができる。
【0005】
一態様では、流体吐出システムは、室が中に形成された基板と、室の壁を形成し、撓むことにより室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜と、膜上に支持されたアクチュエータと、を含む。アクチュエータは駆動電極層と基準電極層間に配置された圧電層を含む。圧電層は、室に跨る連続平面圧電材料であってこの連続平面圧電材料にほぼ垂直な一様な分極方向を有する連続平面圧電材料を含む。駆動電極層は、内側電極と内側電極を囲む外側電極とを含む複数の駆動電極を含む。基準電極層は、内側電極に跨る第1の部分と外側電極に跨る第2の部分とを有する基準電極を含む。複数の駆動電極の少なくとも一つと基準電極間の電圧差の生成により連続平面圧電材料内に電界を生成し、電界は連続平面圧電材料を作動して膜を撓ませる。
【0006】
実施態様は次の特徴の一つ又は複数を含んでいてもよい。コントローラーは複数の駆動電極及び基準電極に電気的に接続され、液滴を吐出する動作サイクル中、コントローラーは室を膨張させる第1の期間に複数の駆動電極内の第1の電極と基準電極間に第1の電圧差パルスを生成し、第1の期間後の、室を収縮する第2の期間に複数の駆動電極内の第1の電極とは異なる第2の電極と基準電極間に第2の電圧差パルスを生成するように動作可能であってもよい。第1の電圧差パルスと第2の電圧差パルスはそれぞれ、分極方向とほぼ同じ方向に向いた電界を生成してもよい。複数の駆動電極内の第1の電極は外側電極であり、複数の駆動電極内の第2の電極は内側電極であってもよい。
【0007】
膜は基板に接着される別の層であってもよい。
【0008】
内側電極は膜の中央部の上に配置され、外側電極は内側電極を囲む膜の周辺部の上に配置されてもよい。
【0009】
内側電極と外側電極は膜の上に配置された唯一の駆動電極であってもよい。
【0010】
膜はDの横方向寸法を有し、内側電極はDの約2/3の横方向寸法を有してもよい。外側電極はリング状であってよく、リングは内側横方向寸法と外側横方向寸法を有し、リングの内側横方向寸法は内側電極の横方向寸法より大きくてもよい。リングの外側横方向寸法は膜の横方向寸法より大きくてもよい。内側電極の横方向寸法と外側電極の内側横方向寸法は、最大容積変位が室の膨張と収縮間に実現されようにされてもよい。内側電極の横方向寸法と外側電極の内側横方向寸法はまた、等しい容積変位が室の膨張と収縮間に実現されるようにされてもよい。
【0011】
連続平面圧電材料はジルコニウム酸チタン酸鉛(PZT)膜であってもよい。
【0012】
一態様では、流体吐出システムは、室が中に形成された基板と、室の壁を形成し、撓むことにより室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜と、膜上に支持されたアクチュエータと、を含む。アクチュエータは、駆動電極層と基準電極層間に配置された圧電層を含む。圧電層は、室に跨る連続平面圧電材料であってこの連続平面圧電材料にほぼ垂直な一様な分極方向を有する連続平面圧電材料を含む。駆動電極層は連続平面圧電材料に接触する駆動電極を含む。駆動電極はリングの形をしており、膜の周辺部の上に配置され、駆動電極層内の膜の上の唯一の駆動電極である。基準電極層は、少なくとも駆動電極により覆われた領域に跨る基準電極を含む。複数の駆動電極と基準電極との間に電圧差を生成することにより連続平面圧電材料内に電界を生成し、電界は連続平面圧電材料を作動して膜を撓ませる。
【0013】
実施態様は次の特徴の一つ又は複数を含んでよい。流体吐出システムは更に、駆動電極と基準電極に電気的に接続されたコントローラーを含んでもよい。液滴を吐出する動作サイクル中、コントローラーはある期間駆動電極と基準電極との間に電圧差を生成して室を膨張させ、この期間の後に上記電圧差を除去して室を収縮するように動作可能であってもよい。連続平面圧電材料の一様な分極方向は基準電極層から駆動電極層に向かい、電圧差は負の電圧差であってもよい。又、連続平面圧電材料の一様な分極方向は室から離れる方向に向いてもよい。
【0014】
膜はDの横方向寸法であってもよい。駆動電極は内側横方向寸法と外側横方向寸法を有し、駆動電極の外側横方向寸法は膜の横方向寸法より大きくてもよい。駆動電極の内側横方向寸法は、最大容積変位が室の膨張と収縮間に実現されるようにされていてもよい。連続平面圧電材料はジルコニウム酸チタン酸鉛(PZT)膜であってもよい。
【0015】
一態様では、流体吐出システムは、室が中に形成された基板と、室の壁を形成し、撓むことにより室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜と、膜上に支持されたアクチュエータと、を含む。アクチュエータは、駆動電極層と基準電極層間に配置された圧電層を含む。圧電層は、室に跨る平面圧電材料であってこの平面圧電材料にほぼ垂直な一様な分極方向を有する平面圧電材料を含む。駆動電極層は複数の駆動電極を含む。複数の駆動電極は内側電極と内側電極を囲む外側電極とを含む。基準電極層は基準電極を有し、基準電極は内側電極に跨る第1の部分を有する基準電極と外側電極に跨る第2の部分とを含む。流体吐出システムは更に、一対の駆動電極と基準電極に電気的に接続されたコントローラーを含む。液滴を吐出する動作サイクル中、コントローラーは室を膨張させる第1の期間に複数の駆動電極内の第1の電極と基準電極間に第1の電圧差パルスを生成するように動作可能である。コントローラーは更に、第1の期間の後、室を収縮する第2の期間に複数の駆動電極内の第1の電極とは異なる第2の電極と基準電極間に第2の電圧差パルスを生成するように動作可能であってもよい。
【0016】
実施態様は次の特徴の一つ又は複数を含んでいてもよい。第1の電圧差パルスと第2の電圧差パルスはそれぞれ、分極方向とほぼ同じ方向に向いた電界を生成してもよい。複数の駆動電極内の第1の電極は外側電極であり、複数の駆動電極内の第2の電極は内側電極であってもよい。
【0017】
連続平面圧電材料の一様な分極方向は基準電極層から駆動電極層に向かってもよく、第1の電圧差パルスは負の電圧差パルスであり、第2の電圧差パルスは別の負の電圧差パルスであってもよい。連続平面圧電材料の一様な分極方向は室から離れる方向に向いていてもよい。平面圧電材料の一様な分極方向は室の方向に向いていてもよい。
【0018】
平面圧電材料の一様な分極方向は駆動電極層から基準電極層に向き、第1の電圧差パルスは正の電圧差パルスであり、第2の電圧差パルスは別の正の電圧差パルスであってもよい。連続平面圧電材料の一様な分極方向は室から離れる方向に向いていてもよい。平面圧電材料の一様な分極方向は室の方向に向いていてもよい。
【0019】
第1の電圧差パルスと第2の電圧差パルスはそれぞれ、分極方向のほぼ反対方向に向いた電界を生成してもよい。複数の駆動電極内の第1の電極は内側電極であり、複数の駆動電極内の第2の電極は外側電極である。
【0020】
平面圧電材料の一様な分極方向は基準電極層から駆動電極層に向き、第1の電圧差パルスは正の電圧差パルスであり、第2の電圧差パルスは別の正の電圧差パルスであってもよい。連続平面圧電材料の一様な分極方向は室から離れる方向に向いていてもよい。平面圧電材料の一様な分極方向は室の方向に向いていてもよい。
【0021】
平面圧電材料の一様な分極方向は駆動電極層から基準電極層に向き、第1の電圧差パルスは負の電圧差パルスであり、第2の電圧差パルスは別の負の電圧差パルスであってもよい。連続平面圧電材料の一様な分極方向は室から離れる方向に向いていてもよい。平面圧電材料の一様な分極方向は室の方向に向いていてもよい。
【0022】
一態様では、流体吐出システムは、室が中に形成された基板と、室の壁を形成し、撓むことにより室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜と、膜上に支持されたアクチュエータと、を含む。アクチュエータは駆動電極層と基準電極層間に配置された圧電層を含む。圧電層は、室に跨る平面圧電材料であってこの連続平面圧電材料にほぼ垂直な一様な分極方向を有する平面圧電材料を含む。駆動電極層は平面圧電材料に接触する駆動電極を含む。駆動電極はリングの形をしており、膜の周辺部の上に配置され、駆動電極層内の膜の上の唯一の駆動電極である。基準電極層は、少なくとも駆動電極により覆われた領域に跨る基準電極を含む。流体吐出システムは更に、駆動電極と基準電極に電気的に接続されたコントローラーを含む。液滴を吐出する動作サイクル中、コントローラーはある期間駆動電極と基準電極との間に電圧差を生成して室を膨張させ、この期間の後に上記電圧差を除去して室を収縮するように動作可能であるとよい。
【0023】
実施態様は次の特徴の一つ又は複数を含んでよい。連続平面圧電材料の一様な分極方向は基準電極層から駆動電極層に向かってよい。電圧差は負の電圧差であってもよい。連続平面圧電材料の一様な分極方向は室から離れる方向に向いていてもよい。平面圧電材料の一様な分極方向は室の方向に向いていてもよい。
【0024】
平面圧電材料の一様な分極方向は駆動電極層から基準電極層に向いていてもよい。電圧差は正の電位であってもよい。連続平面圧電材料の一様な分極方向は室から離れる方向に向いていてもよい。平面圧電材料の一様な分極方向は室の方向に向いていてもよい。
【0025】
一態様では、ポンプ室の作動方法は、ある期間圧電アクチュエータの駆動電極と基準電極との間に負の電圧差を生成してポンプ室を膨張させる工程と、この期間後に負の電圧差を除去してポンプ室を収縮する工程と、を含む。ポンプ室は基板内に形成される空胴である。空胴は、撓むことによりポンプ室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜により覆われる。圧電アクチュエータは膜上に支持され、平面圧電材料、駆動電極、及び基準電極を含む。駆動電極と基準電極は平面圧電材料の両側に配置される。駆動電極はリングの形をしており、膜の周辺部の上に配置され、膜の上の唯一の駆動電極である。平面圧電材料は室に跨り、平面圧電材料にほぼ垂直でありかつポンプ室から離れる方向に向いた一様な分極方向を有する。基準電極は膜と駆動電極の間に配置される。基準電極は少なくとも駆動電極により覆われた一つの領域に跨る。
【0026】
一態様では、流体吐出システムは、室と膜を有する基板を含む。膜は室の片側を覆い、撓むことにより室を膨張又は収縮させるように動作可能である。流体吐出システムは更に、膜上にアクチュエータを含む。アクチュエータは駆動電極層と基準電極層間に配置された圧電層を含む。圧電層はアクチュエータに接触する膜の表面にほぼ垂直な一様な分極方向を有する。駆動電極層は複数の駆動電極を含む。複数の駆動電極は内側電極と内側電極を囲む外側電極とを含む。流体吐出システムは更に、内側電極と外側電極に単極波形を供給するためにアクチュエータに電気的に接続されたコントローラーを含む。
【0027】
実施態様は次の特徴の一つ又は複数を含んでよい。液滴を吐出する動作サイクル中、コントローラーは室を膨張させる第1の期間に複数の駆動電極内の第1の電極と基準電極間に第1の電圧差パルスを生成し、室を収縮する第2の期間に複数の駆動電極内の第2の電極と基準電極間に第2の電圧差パルスを生成するように動作可能であるとよい。第2の電極は第1の電極とは異なってもよく、第2の期間は第1の期間後であってもよい。第1の電圧差パルスと第2の電圧差パルスはそれぞれ、分極方向とほぼ同じ方向に向いた電界を生成してもよい。複数の駆動電極内の第1の電極は外側電極であり、複数の駆動電極内の第2の電極は内側電極であってもよい。
【0028】
一態様では、流体吐出システムは、室と膜を有する基板を含む。膜は室の片側を覆い、撓むことにより室を膨張又は収縮させるように動作可能である。流体吐出システムは更に、膜上にアクチュエータを含む。アクチュエータは、駆動電極層と基準電極層間に配置された圧電層を含む。圧電層は、アクチュエータに接触する膜の表面にほぼ垂直な一様な分極方向を有する。駆動電極層は圧電材料に接触する駆動電極を含む。駆動電極はリングの形をしており、室の上の膜の周辺部の上に配置され、駆動電極層内の膜の上の唯一の駆動電極である。流体吐出システムは更に、駆動電極に単極波形を供給するためにアクチュエータに電気的に接続されたコントローラーを含む。
【0029】
アクチュエータに印加される単極波形は、分極電界とほぼ同じ方向にある圧電層内の電界を生成してもよい。
【0030】
一態様では、流体吐出システムは、室と膜を有する基板を含む。膜は室の片側を覆い、撓むことにより室を膨張又は収縮させるように動作可能である。流体吐出システムは更に、膜上にアクチュエータを含む。アクチュエータは、駆動電極層と基準電極層間に配置された圧電層を含む。圧電層はアクチュエータに接触する膜の表面にほぼ垂直な一様な分極方向を有する。駆動電極層は複数の駆動電極を含む。複数の駆動電極は内側電極と内側電極を囲む外側電極とを含む。流体吐出システムは更に、内側電極と外側電極に単極波形を供給するためにアクチュエータに電気的に接続されたコントローラーを含む。
【0031】
実施態様は次の特徴の一つ又は複数を含んでよい。液滴を吐出する動作サイクル中、コントローラーは室を膨張させる第1の期間に複数の駆動電極内の第1の電極と基準電極間に第1の電圧差パルスを生成し、第1の期間の後の、室を収縮する第2の期間に複数の駆動電極内の第1の電極とは異なる第2の電極と基準電極間に第2の電圧差パルスを生成するように動作可能であるとよい。第1の電圧差パルスと第2の電圧差パルスはそれぞれ、分極方向とほぼ同じ方向に向いた電界を生成してもよい。複数の駆動電極内の第1の電極は外側電極であり、複数の駆動電極内の第2の電極は内側電極であってもよい。一態様では、流体吐出システムは、室と膜を有する基板を含む。膜は室の片側を覆い、撓むことにより室を膨張又は収縮させるように動作可能である。流体吐出システムは更に、膜上にアクチュエータを含む。アクチュエータは駆動電極層と基準電極層間に配置された圧電層を含む。圧電層はアクチュエータに接触する膜の表面にほぼ垂直な一様な分極方向を有する。駆動電極層は圧電材料に接触する駆動電極を含む。駆動電極はリングの形をしており、室の上の膜の周辺部の上に配置され、駆動電極層内の膜の上の唯一の駆動電極である。流体吐出システムは更に、駆動電極に単極波形を供給するためにアクチュエータに電気的に接続されたコントローラーを含む。
【0032】
アクチュエータに印加される単極波形は、分極電界とほぼ同じ方向にある圧電層内の電界を生成してもよい。
【0033】
開示された技術は次の利点の一つ又は複数を提供することができる。リング状駆動電極は、流体吐出サイクル中の正の駆動電圧を不要にし、アイドル中に静止負バイアスを維持する必要を無くすことができる。二重電極設計は、アクチュエータ内の圧電層がアイドル中に予備圧縮状態よりむしろ中立の弛緩状態のままでいることを許容する。これにより圧電材料の疲労を低減することができる。例えば、各流体吐出サイクル中に負の駆動電圧だけを圧電層に印加する必要がある。圧電層の内部に生成される電界は、全流体吐出サイクル中、圧電材料の分極方向と同じ方向に向くことができる。圧電アクチュエータ内の圧電材料の疲労と減極を低減することができる。
【0034】
二重電極設計は、単一電極設計と比較して、所与の駆動電圧に対してより大きな全容積変位を提供することができる。あるいは、流体吐出サイクル中に必要な所与の容積変位については、駆動電圧を単一電極設計と比較しほぼ2分の1だけ低減することができる。
【0035】
二重電極設計による容積変位効率の増加は、より小さなアクチュエータ膜が流体吐出に十分な容積変位を実現できるようにし、ノズル密度を増加することができる。更に、低減された膜領域により流体吐出の膜強度を改善することもできる。
【0036】
他の態様、特徴、及び利点は本明細書と添付図面からそして特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】例示的流体吐出システムの概略断面図である。
【図2A】中央駆動電極を有する例示的流体吐出システムの概略断面図である。
【図2B】中央駆動電極を有する例示的流体吐出システムの概略上面図である。
【図2C】図2A〜2Bの流体吐出システムにおける液滴吐出サイクルの例示的駆動電圧波形である。
【図2D】図2A〜2Bの流体吐出システムにおける液滴吐出サイクルの別の例示的駆動電圧波形である。
【図3A】リング状駆動電極を有する例示的流体吐出システムの概略断面図である。
【図3B】リング状駆動電極を有する例示的流体吐出システムの概略上面図である。
【図3C】図3A〜3Bの流体吐出システムにおける液滴吐出サイクルの例示的駆動電圧波形である。
【図4A】中央駆動電極と連続基準電極間に印加された正の電圧下の圧電気膜の撓みを例示する。
【図4B】リング状駆動電極と基準電極との間に印加された正の電圧下の圧電気膜の撓みを例示する。
【図5A】内側駆動電極(例えば、中央電極)と内側駆動電極を囲む外側駆動電極(例えば、リング状電極)とを含む二重電極圧電アクチュエータの概略図である。
【図5B】図5Aの二重電極圧電アクチュエータを利用する流体吐出システムにおける流体吐出サイクル中の中央電極とリング状電極上の例示的駆動電圧波形を例示する。
【図6】1ボルト当たり容積変位と、ポンプ室の横方向寸法に関連する中央駆動電極とリング状駆動電極の横方向寸法と、の相関を例示するプロットである。
【図7】ポンプ室内の1ボルト当たり容積変位(dV/dU)とポンプ室半径に対する駆動電極半径の百分率(%)との相関を例示するプロットである。
【図8A】連続PZT層の上に例示的リング状電極を有する圧電アクチュエータである。
【図8B】リング状電極と基準電極間の印加電圧下の図8AのPZT層の撓みを例示する。
【0038】
様々な図面における同じ参照符号及び名称は同じ要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、例示的流体吐出システム(例えば、印字ヘッドモジュール100)の概略断面図である。
【0040】
印字ヘッドモジュール100は、複数の圧電アクチュエータ構造体120と、複数の通路が形成されるモジュール基板110と、を含む。
【0041】
モジュール基板110はシリコン基板等のモノリシック半導体ボディであってもよい。シリコン基板を通る各通路は、吐出すべき流体(例えば、インク)の流路を定める(図1の断面図には一つの流路と一つのアクチュエータだけが示される)。各流路は、流体入口112、ポンプ室114、ディセンダ116、及びノズル118を含むことができる。流路は、更に、流体がノズル118を通って吐出されていないときでもインクが流路中を流れるように、再循環経路119を含みうる。ポンプ室114は、モジュール基板110内に形成された空胴である。ポンプ室114の片側は、ポンプ室114を膨張又は収縮させて流路に沿って流体をポンプ移動させるように撓むことができる薄膜123である。薄膜123の領域は、薄膜123を支持するポンプ室114のエッジにより画定することができる。別の言い方をすれば、薄膜123の横方向形状は、膜下のポンプ室114の周辺部により画定される。薄膜123は、ポンプ室114の開放側上のモジュール基板110に対して薄膜層122を接合(例えば、接着(例えば、シリコン−シリコン溶着))することによって、形成可能である。あるいは、薄膜123は、ポンプ室114のエッチング中にそのまま残されたモノリシック半導体基板の薄い部分であってもよい。圧電アクチュエータ構造体120は、ポンプ室114の上に配置され、薄膜123の露出側に支持される。
【0042】
圧電アクチュエータ構造体120は、第1の電極層(例えば、基準電極層124(例えばアースに接続される))と、第2の電極層(例えば、駆動電極層128)と、第1の電極層と第2の電極層との間に配置された圧電層126と、を含む。圧電アクチュエータ構造体120は、薄膜123を含むモジュール基板110上に支持される(例えば、接着される)。いくつかの実施態様では、圧電アクチュエータ構造体120は、別個に製作され、次にモジュール基板110に固定される(例えば、接着される)。いくつかの実施態様では、圧電アクチュエータ構造体120は、モジュール基板110(又は薄膜層122)上に層を連続的に蒸着することにより、ポンプ室の上の適所に作ることができる。
【0043】
圧電層126は、第1の電極層と第2の電極層との間の圧電層に印加された電圧に応じて、幾何学的形状を変えるかあるいは曲がる。圧電層126の曲がりは薄膜123を撓ませ、薄膜123は次にポンプ室114内の流体を加圧し、流体をディセンダ116に制御可能に通過させ、ノズル118から液滴を吐出する。したがって関連アクチュエータを有する各流路は、個々に制御可能な流体吐出装置をもたらす。
【0044】
この例では、第1の電極層は基準電極層124である。基準電極層124は一つ又は複数の基準電極を含む。基準電極は連続的であってもよく、随意的に複数のアクチュエータに跨ることができる。連続基準電極は、圧電層126と薄膜層122の露出面(すなわち、薄膜123を含むモノリシックモジュール基板の露出面)との間に配置された単一の連続導電層であってもよい。薄膜123は、基準電極層124及び圧電層126をポンプ室114内の流体から分離する。駆動電極層128は、圧電層126の基準電極層124とは反対側にある。駆動電極層128は、圧電アクチュエータ構造体120の駆動電極として機能するパターン化導電部品を含む。
【0045】
駆動電極及び基準電極は、流体吐出サイクル中の適切な時に適切な持続時間の間圧電層126に電圧差を供給するコントローラー130に対して、電気的に接続される。第1の電極と第2の電極との間の電圧差は、第2の電極(所謂「基準電極」)に印加された電圧に対する第1の電極(所謂「駆動電極」)に印加された電圧の測定値である。基準電極がアースに接続される場合、駆動電極と基準電極との間の駆動電圧差は駆動電極に印加される電圧に等しい。「駆動電圧」、「駆動電圧差」という用語は交換可能に使用される。通常、基準電極上の電位は一定に保持されるか、あるいは動作中(例えば、パルス発射中)すべてのアクチュエータにわたって同じ電圧波形により共通制御される。
【0046】
負の電圧差は、駆動電極上の印加電圧が基準電極上の印加電圧より低いときに存在する。正の電圧差は、駆動電極上の印加電圧が基準電極上の印加電圧より高いときに存在する。このような実施態様では、駆動電極に印加された「駆動電圧」又は「駆動電圧パルス」は、圧電駆動に望ましい駆動電圧波形を実現するために、基準電極に印加された電圧に対して測定される。
【0047】
薄膜123のコンプライアンスは、圧電層126の作動によりポンプ室114の上の薄膜123を撓めて、ポンプ室114内の流体を加圧できるようにされる。
【0048】
圧電層126は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)膜等のほぼ平面な圧電材料を含むことができる。圧電材料の厚さは、圧電層が印加電圧に応じて撓むことができる範囲にある。例えば、圧電材料の厚さは、約0.5〜25マイクロメートルの範囲、例えば約1〜7マイクロメートルであってもよい。圧電材料は、ポンプ室114の上の薄膜123の領域を越えて延在することができる。圧電材料は、モジュール基板内の複数のポンプ室に跨ることができる。あるいは、圧電材料は、異なるアクチュエータの圧電材料を互いにセグメント化してクロストークを低減するために、ポンプ室の上に重ならない領域内に切れ目を含むことができる。
【0049】
圧電材料の薄膜は、スパッタリングにより薄膜層122上に蒸着することができる。スパッタ蒸着のタイプとしては、マグネトロンスパッタ蒸着(例えば、高周波スパッタリング)、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング、イオンアシスト蒸着、高ターゲット利用スパッタリング(high−target−utilization sputtering)、ハイパワーインパルスマグネトロンスパッタリング(high power impulse magnetron sputtering)を挙げることができる。スパッタ圧電材料(例えば、圧電薄膜)は大きな蒸着状態分極(as−deposited polarization)を有することができる。圧電材料をスパッタリングするために使用されるいくつかの環境は、スパッタリング中に直流(DC)電界を印加する。DC電界は、負の電圧が圧電材料の露出側に印加されるときに生じる配向に圧電材料を分極させる。図1に示す構成では、このような方法を使用して作製された圧電層の分極方向は、基準電極層124から駆動電極層128に(例えば、平面圧電層126にほぼ垂直方向に)向く。
【0050】
圧電材料が分極されると、圧電材料への電界の印加により圧電材料を移動させることになる。例えば、図1の駆動電極と基準電極との間の負の電圧差は、分極方向とほぼ同じ方向に向いた圧電層126内の電界を生じる。電界に応じて、駆動電極と基準電極との間の圧電材料は垂直方向に膨張し横方向に収縮してポンプ室の上の圧電フィルムを撓ませる。あるいは、図1の駆動電極と基準電極との間の正の電圧差は、分極方向とほぼ反対方向に向いた圧電層126内の電界を生じる。電界に応じて、駆動電極と基準電極との間の圧電材料は、垂直方向に収縮し横方向に膨張してポンプ室の上の圧電フィルムを反対方向に撓ませる。撓みの方向と形状は、駆動電極の形状と、ポンプ室の上の膜を越えて跨る圧電膜の固有曲げモード(natural bending mode)とに依存する。
【0051】
ポンプ室内の容積変位を改善するための駆動電極の設計と最適化については、以下の章で更に詳細に検討する。
【0052】
中央電極
図2Aは、駆動電極層内に中央駆動電極210を有する例示的流体吐出システム100の概略断面図である。図2Bは、図2Aに示すのと同じ例示的流体吐出システム100の概略上面図である。
【0053】
図2A〜2Bの例示的流体吐出システム100は、埋め込まれたポンプ室114を有するモジュール基板110を含む。ポンプ室114は、流体入口とノズルとの間の流路(図示せず)に接続される。ポンプ室114の上側は薄膜123により覆われる。この例では、膜は横方向(すなわち、基板110の平坦面に平行な方向)寸法Dを有する。
【0054】
圧電アクチュエータ構造体は薄膜123の上に置かれ支持される。アクチュエータ内の圧電材料は、圧電層126の底面から上面に向いた方向に分極される。駆動電極層は、圧電層126の上面に接触する中央駆動電極210を含む。中央駆動電極は、横方向寸法Rcを有する単一導電部品(例えばディスク)である。この単一電極設計では、中央駆動電極210は、駆動電極層内のすべての他の駆動電極を除いたポンプ室の上に位置する。いくつかの実施態様では、中央駆動電極は最大撓みを実現するために膜の中央部の上に置かれることが好ましい。中央駆動電極の横方向寸法Rcは、Dの画分(例えば、Dの2/3又はDの3/4)からDよりわずかに大きい寸法(例えば、Dより最大約10%大きい寸法)までの範囲にあってもよい。基準電極層は、圧電層126と薄膜層122の上面との間に配置される基準電極220を含む。基準電極は、駆動電極により突き出た領域(すなわち、中央駆動電極210)に少なくとも跨ることができる。いくつかの実施態様では、基準電極はまた、複数のポンプ室の上の複数のアクチュエータの駆動電極に跨ることができる。
【0055】
圧電アクチュエータは、駆動電極210及び基準電極220に電気的に接続されたコントローラー130により制御される。コントローラー130は、流体吐出サイクル中にアクチュエータ膜を望ましい方向に撓ませるために、駆動電極210に適切な電圧パルスを供給する一つ又は複数の波形生成器を含むことができる。コントローラー130は更に、駆動電圧パルスのタイミング、持続時間、及び強さを制御するためのコンピュータ又はプロセッサに接続することができる。
【0056】
図2A〜2Bに示すような中央駆動電極を使用する場合、圧電層に印加される負の電圧差は分極方向Pとほぼ同じ方向に向いた電界Eを生成する。電界は、主として駆動電極下の圧電材料内及びポンプ室114の上の膜の中央部に形成される。電界に応じ、圧電材料は垂直方向に膨張し横方向に収縮する。その結果、膜の中央部は凹形状(アクチュエータ側から見て)を形成する傾向があり、したがって内向きに(室に向かって)撓み、ポンプ室114を収縮させる。あるいは、圧電材料に印加された正の電圧差は圧電材料の分極方向の反対方向に向いた電界を生成する。電界に応じて、圧電材料は垂直方向に収縮し横方向に膨張する。その結果、膜の中央部は凸形状(アクチュエータ側から見て)を形成する傾向があり、したがって外方に(室から離れる方向に)撓み、ポンプ室114を膨張させる。
【0057】
図2Cは、図2A〜2Bの液滴吐出システムにおける流体吐出サイクルの例示的駆動電圧波形である。通常、流体吐出サイクル中、ポンプ室は最初に膨張して流体源から流体を吸い込み、次に収縮してノズルから液滴を吐出する。したがって、中央駆動電極(例えば図2A〜2Bに示されるもの)及び基準電極を利用する流体吐出システムを使用する場合、流体吐出サイクルは、ポンプ室114を膨張させるために駆動電極に正の電圧パルスを最初に印加することと、次にポンプ室114を収縮させるために駆動電極に負の電圧パルスを印加することと、を含む。あるいは、図2Cに示すように、大きさVと持続期間T1の単一の正の電圧パルスが、ポンプ室を膨張させ流体を吸い込むために駆動電極に印加され、パルスの最後に、ポンプ室は膨張状態から収縮し弛緩状態に戻り液滴を吐出する。
【0058】
中央駆動電極を使用することによりポンプ室を弛緩状態から膨張させるには、正の電圧差が中央駆動電極と基準電極との間の圧電層に印加される必要がある。このような正の駆動電圧差の使用に関する一つの欠点は、圧電層内に生成される電界が圧電材料の分極方向の反対方向に向くということである。正の電圧差の繰り返し印加は、圧電層の減極を引き起こし時間とともにアクチュエータの効果を低下させる。
【0059】
正の駆動電圧差の使用を避けるためには、駆動電極を基準電極に対し静止負バイアスで維持し、流体吐出サイクルの膨張段階中だけ中立状態に戻すことができる。図2Dに、静止負バイアスを利用する例示的駆動電圧波形を示す。この代案では、ポンプ室は、アイドル中の中央駆動電極上の静止負バイアスにより予備圧縮状態(pre−compressed state)に保たれる。流体吐出サイクル中、負の電圧バイアスは期間T1の間中央駆動電極から除去され、次の流体吐出サイクルの開始までに再印加される。負バイアスが中央駆動電極から除去されると、ポンプ室は予備圧縮状態から弛緩状態に膨張し流体入口から流体を吸い込む。期間T1後、負バイアスは中央駆動電極に再印加され、ポンプ室は弛緩状態から予備圧縮状態に収縮し、ノズルから液滴を吐出する。この別の駆動方法は、駆動電極と基準電極との間の正の電圧差を印加する必要性を無くす。しかしながら静止負バイアスと一定の内部ストレスに長い間晒されると、圧電材料の劣化を引き起こす可能性がある。
【0060】
リング状駆動電極を利用する代替設計は、基準電極に対する駆動電極上の正の駆動電圧差又は静止負バイアスのいずれかの使用を回避する。リング状駆動電極設計の詳細について以下の章で説明する。
【0061】
リング電極
図3Aは、リング状駆動電極310を有する例示的流体吐出システム100の概略断面図である。図3Bは、図3Aに示されたのと同じ例示的流体吐出システム100の概略上面図である。
【0062】
図3A〜3Bの例示的流体吐出システム100は、埋め込まれたポンプ室114を有するモジュール基板110を含む。ポンプ室114は、流体入口とノズルとの間の流路(図示せず)に接続される。いくつかの実施態様では、ポンプ室114の上側は薄膜123により覆われる。膜は横方向寸法Dを有する。
【0063】
圧電アクチュエータ構造体は膜の上に置かれ、膜上に支持される。アクチュエータ内の圧電材料は、底面から圧電層126の上面に向いた方向(すなわち、膜にほぼ垂直な方向)に分極される。駆動電極層は、圧電層126の上面に接触するリング状駆動電極310を含む。
【0064】
リング状駆動電極310は、中央に間隙又は開口を有する導電部品(例えば円形リング)である。リング状駆動電極は、導電部品の外側形状と導電部品内の開口(又は間隙)の内側形状とにより特徴付けられてもよい。内側形状と外側形状は必ずしも幾何学的に相似又は同心である必要が無い。しかしながらいくつかの実施態様では、リングの幅はリングの全体又はほとんどの部分の周囲でほぼ一様であってもよい。
【0065】
この単一電極設計では、リング状駆動電極310は、駆動電極層内のすべての他の駆動電極を除いたポンプ室の上に位置する。リング状駆動電極の開口は、ポンプ室114の上の膜の中央部の上に置かれる。リング状駆動電極の導電部は膜の周辺部の上に置かれる。ポンプ室の上の膜の全周315は図3A〜3Bに示すように、リング状電極310により完全に覆われる。図3A〜3Bでは、リング状駆動電極の外縁と内縁は、ポンプ室の上の膜の全周に位置合わせ(すなわち、全周と並列に)される。
【0066】
リング状駆動電極310は、開口の内側形状の内側横方向寸法Rinと導電部品の外側形状の外側横方向寸法Routとにより特徴付けられてもよい。リング状駆動電極Rinの内側横方向寸法は、Dの画分(例えば、Dの2/3又はDの3/4)から外側横方向寸法Routよりわずかに小さい寸法の範囲にあってもよい。リング状駆動電極の外側横方向寸法RoutはD以上であり、Dより大きくてもよい(例えばDより約10%大きくてもよい)。いくつかの実施態様では、約150マイクロメートルの横方向寸法を有するポンプ室については、リング状電極の外側横方向寸法はポンプ室の横方向寸法より約5〜10マイクロメートル大きい。
【0067】
基準電極層は、圧電層126と薄膜層122の上面との間に配置された基準電極220を含む。基準電極220は、上部駆動電極(すなわちリング状駆動電極310)により突き出た領域に少なくとも跨ることができる。いくつかの実施態様では、基準電極は、リング状駆動電極により囲まれた中央領域を覆うために、上部駆動電極により覆われた領域を越えて跨ることができる。いくつかの実施態様では、基準電極はまた、一つ又は複数のアクチュエータに跨ることができる。
【0068】
圧電アクチュエータは、駆動電極310と基準電極220に電気的に接続されたコントローラー130により制御される。コントローラー130は、液滴吐出サイクル中に、アクチュエータ膜を望ましい方向に撓ませるために駆動電極210に適切な電圧パルスを供給する一つ又は複数の波形生成器を含むことができる。コントローラー130は更に、駆動電圧パルスのタイミング、持続時間、及び強さを制御するためのコンピュータ又はプロセッサに接続することができる。
【0069】
図3A〜3Bに示すようなリング状駆動電極と基準電極を使用すると、圧電層に印加された負の電圧差は分極方向とほぼ同じ方向に向いた電界を生成する。電界は、主としてリング状駆動電極の下と膜の周辺部の上の圧電材料内に形成される。電界に応じて、リング状駆動電極下の圧電材料は垂直方向に膨張し横方向に収縮する。その結果、膜の中央部は凸形状(アクチュエータ側から見て)を形成する傾向があり、したがって外方に(室から離れる方向に)撓み、ポンプ室114を膨張させる。あるいは圧電層に印加された正の電圧差は、分極方向の反対方向に向いた電界を生成する。電界に応じて、駆動電極下の圧電材料は垂直方向に収縮し横方向に膨張する。その結果、膜の中央部は凹形状(アクチュエータ側から見て)を形成する傾向があり、したがって内向きに(室に向かって)撓み、ポンプ室114を収縮させる。
【0070】
リング状駆動電極下の膜の撓みは、同じ電圧差が駆動電極と基準電極との間の圧電層に印加された場合、中央駆動電極下のものと反対方向である。これは圧電膜中に存在する固有曲げモードのためである。リング状駆動電極下の圧電膜の局所的振る舞いは中央駆動電極下のものと似ているが、駆動電極により覆われた領域を越えて延在する圧電膜を使用することにより、更なる撓みが、駆動電極下に生成された張力のために膜の中央領域の上の圧電材料内に生成される。このような撓みは、圧電層がリング状電極の内縁においてセグメント化された場合、自然には発生しないであろう。
【0071】
図3Cは、図3A〜3Bの流体吐出システムにおける流体吐出サイクルの例示的駆動電圧波形である。リング状駆動電極は中央駆動電極として反対の撓みを生成するので、図2Cの正の電圧差を置換しそしてポンプ室内の同じ流体吐出サイクルを実現するために負の駆動電圧差を使用することができる。更に、ポンプ作用を実現するために駆動電極上に静止負バイアスを維持する必要性も無い。図3A〜3Bに示すように流体吐出システム100における流体吐出サイクル中、大きさ−Vの負の電圧パルスが最初に、期間T1の間リング状駆動電極310に印加され、ポンプ室114は膨張して流体源から流体を吸い込み、次に、負の電圧パルスの最後に、ポンプ室114は収縮し膨張状態から弛緩状態に移りノズルから液滴を吐出する。
【0072】
リング状駆動電極は上述の中央駆動電極の欠点を解決する。負の電圧パルスは流体吐出用駆動信号として使用することができ、静止バイアスに晒されることは無く、したがってリング状駆動電極はアクチュエータ内の圧電材料の寿命を改善することができる。
【0073】
図4Aに、円形の中央駆動電極と基準電極との間に印加される正の電圧差下の圧電膜の撓みを示す。図4Bに、環状リング状駆動電極と基準電極との間に印加される正の電圧差下の圧電膜の撓みを示す。
【0074】
図4Aでは、1Vの正の電圧差が円形の圧電膜の中央部に印加され、端はアースに保持される。ポンプ室の半径は150マイクロメートル、中央の全変位は約7.1nm、全容積膨張は142×10−18である。
【0075】
図4Bでは、1Vの正の電圧差が圧電膜の端に印加され、中央領域はアースに保持される。ポンプ室の半径もまた150マイクロメートル、中央の全変位は約−4.6nm、全容積収縮は98×10−18である。
【0076】
中央電極とリング電極を有する二重電極設計(Dual Electrode Design)
単一の中央駆動電極と単一のリング状駆動電極とを組み合わせて二重電極設計を行うことができる。ポンプ室を初めに膨張させ次に収縮させるために、零静止バイアスの単極(例えば負の)電圧パルスをリング状駆動電極と中央駆動電極に連続的に印加することができる。図2A〜図3Cに示された単一電極設計とは異なり、ポンプサイクル中に必要な全容積変位が膨張段階と収縮段階の間で分割されるので、ポンプ電圧差は二重電極設計において効果的に低下される。更に、所与の駆動電圧差については、二重電極下のポンプ室の大きさは、二重電極により生成される大きな膜撓みのために単一電極設計におけるものより著しく小さくすることができる。したがって高密度のポンプ室とノズルを、二重電極設計を利用する印字ヘッドモジュール内に詰め込むことができ、高い印刷分解能をもたらすことができる。
【0077】
図5Aは、内側駆動電極(例えば、中央電極)、内側駆動電極を囲む外側駆動電極(例えば、リング状電極)、及び対向する基準電極を含む二重電極の圧電アクチュエータの概略図である。
【0078】
図5Aでは、内側駆動電極510と外側駆動電極520とは、電極間で間隙により互いに絶縁される。この例では、内側駆動電極510は円形導電ディスクであり、外側駆動電極520は導電環状リングである。内側駆動電極の横方向寸法Rは外側駆動電極の内側横方向寸法Rinより小さい。外側駆動電極の外側寸法Routは、ポンプ室の上の膜の横方向寸法以上である。
【0079】
内側及び外側駆動電極は圧電層126の上面に配置される。内側駆動電極510はポンプ室の上の膜の中央部の上に配置される。外側駆動電極520はポンプ室の上の膜の全周の上に配置される。外側駆動電極は膜の全周を覆う。外側駆動電極520の内縁と外縁は位置合わせされ、ポンプ室壁から間隔をあけて配置される。
【0080】
圧電層126の底面は基準電極530に接触する。基準電極530の底面はアクチュエータ膜122に接触する。基準電極530は連続的であってもよく、内側及び外側駆動電極の両方に跨る。基準電極530はまた、複数のアクチュエータの駆動電極に跨ることができる。あるいは基準電極はまた、内側及び外側駆動電極に対応する内側及び外側部分にセグメント化されてもよく、これらの部分は個別に制御可能であってもよい。複数のアクチュエータの基準電極の内側部分は、第1の共通基準電圧に電気的に接続され共通制御されてもよく、複数のアクチュエータの基準電極の外側部分は第2の共通基準電圧に電気的に接続され共通制御され(しかし、内側部分とは切り離され)てもよい。
【0081】
内側駆動電極510、外側駆動電極520、及び基準電極530は、コントローラー130に接続される。コントローラー130は、ポンプ室の上の圧電膜を作動するのに適切な駆動電圧を供給することができる。いくつかの実施態様では、外側駆動電極520は、内側駆動電極510にアクセスできるようにする一つ又は複数の小さなスリット(リングの幅を横断するスリット)を有することができる。例えば、外側駆動電極520の幅を横切るスリットを、内側駆動電極510とコントローラー130間の導電路を収容するために使用することができる。スリットの幅が外側駆動電極の大きさに比較して小さければスリットの存在は駆動電極の動作に実質的な影響を与えなく、外側駆動電極は依然として内側駆動電極510をほぼ囲うことができる。あるいはコントローラー130に接続された内側電極510に接続するために外側駆動電極520の上又はその下に絶縁導電路を配置することができる。
【0082】
この特定の例では、二重電極圧電アクチュエータは、PZT膜(例えば、膜を越えて跨る連続PZT膜)で作られた圧電層を含む。PZT膜は厚さ約5マイクロメートルであり、底面から上面に向いた分極方向(すなわち、膜に対しほぼ垂直な方向)を有する。PZT膜の厚さは約0.5マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲であってもよい。膜層は厚さ約11マイクロメートルのシリコン膜である。膜層の可撓性部分がポンプ室の上の膜を形成する。ポンプ室と膜はそれぞれ150マイクロメートルの横方向寸法を有する。内側駆動電極はポンプ室の横方向寸法の約3分の2(2/3)の半径を有する。外側電極は、少なくともポンプ室の横方向寸法(又は、膜の横方向寸法)以上である外側寸法を有する。
【0083】
図5Bは、図5Aに示す二重電極圧電アクチュエータを利用する流体吐出システムにおける流体吐出サイクルの基準電極に対する内側駆動電極と外側駆動電極(すなわち、この例の内側電極と外側電極の両方に跨る連続基準電極)上の例示的駆動電圧波形を示す。
【0084】
二重電極設計では、駆動電極はアイドル中、中立状態に保たれる。静止バイアスは基準電極に対するいかなる駆動電極にも印加されない。流体吐出サイクル中、第1の負の電圧パルスが期間T1中にポンプ室を膨張させるために外側駆動電極に印加され、次に、第2の負の電圧パルスが期間T2中にポンプ室を収縮するために内側駆動電極に印加される。図5Bは、ポンプサイクル中の基準電極に対し駆動電極に印加された駆動電圧と膜の形状との対応を示す。同じ駆動電圧大きさVに対して、二重電極アクチュエータにより生じる全容積変位は、同じ駆動電圧下の内側駆動電極と外側駆動電極の全容積変位の和である。いくつかの実施態様では、内側駆動電極と外側駆動電極に印加される駆動電圧は、特定の設計及び/又は動作要件に依存して同じ又は異なる大きさであってもよい。
【0085】
駆動電圧パルスは、内側及び外側駆動電極と基準電極に電気的に接続されたコントローラー130により供給することができる。コントローラー130は負の電圧パルスの波形を生成する又は得るように動作可能である。コントローラーは、各電極上の駆動パルスのタイミング、持続時間、大きさ、及び時間遅れを制御する制御信号を受信又は生成することができる。駆動電圧パルスの持続時間は、アクチュエータ膜が最大撓みに達するのに必要な時間に基づき決定することができる。第1の駆動電圧パルスと第2の駆動電圧パルス間の時間遅れは、膜が膨張状態から弛緩状態に戻るのにかかる時間に基づき決定することができる。
【0086】
圧電アクチュエータの最適化と変形態様
駆動電極とポンプ室の相対的大きさは、単一電極設計(中央駆動電極又はリング状駆動電極)と二重電極設計(内側駆動電極と内側駆動電極を囲む外側駆動電極)の両方において実現することができる全容積変位に影響を与える。最大全容積変位は、電極サイズを調整することにより特定形状の電極に対して実現することができる。
【0087】
図6は1ボルト当たり容積変位と、ポンプ室の横方向寸法に関連する中央駆動電極とリング状駆動電極の横方向寸法と、の相関を示すプロットである。このプロットでは、ポンプ室の寸法はポンプ室の上の膜の寸法と同一である(すなわち、ポンプ室の壁は膜に対し垂直である)。
【0088】
これらのプロットは、ポンプ室の上のアクチュエータ膜の中央に置かれた円形(すなわち、円形ディスク又は環状リング)の電極のものである。ポンプ室は半径150マイクロメートルを有する。アクチュエータ膜は厚さ11マイクロメートルである。圧電層は厚さ5マイクロメートルである。プロットに示される正確な値はこの特定な構成に固有であるが、容積変位と電極サイズとの相関は、他の大きさと形状の電極とポンプ室を例証するものである。
【0089】
プロットの水平軸はポンプ室の中央からの距離を示す。示された最大距離は150マイクロメートル(ポンプ室の半径)である。左側の垂直軸は電極の容量(F)である。右側の垂直軸は1ボルト当たり容積変位(m/ボルト)である。曲線601は円形の中央電極の容量と円形の中央電極の半径との相関である。曲線602は円形のリング状電極の容量と円形のリング状電極の内径との相関である。曲線603は曲線601と曲線602の和である。曲線604は円形の中央電極の容積変位と円形中央電極の半径との相関である。曲線605は円形のリング状中央電極の容積変位と円形のリング状電極の内径との相関である。曲線606は曲線604と605の和である。
【0090】
曲線604は、中央電極上の正の駆動電圧が正の容積変位を生ずる(すなわち、室が膨張する)ことを示す。最大膨張は、円形電極の半径がポンプ室半径の約3分の2(2/3)である約100マイクロメートルに達すると生じる。中央電極の半径がポンプ室半径の3分の2(2/3)に達する前、容積変位は電極半径とともに増加し、半径がポンプ室半径の2/3に達した後、容積変位は電極半径と共に減少し始める。図6は最大ポンプ室半径の電極半径だけを示すが、ポンプ室半径をわずかに越える電極半径が依然としてポンプ室内の容積変位を生じ得ることはポンプ室半径における非零容積変位から分かる。
【0091】
曲線605は、リング状駆動電極上の正の駆動電圧が負の容積変位を生ずる(すなわち、ポンプ室は収縮する)ことを示す。最大収縮は、リング状電極の内径が約112マイクロメートルに達すると生じる。リング状駆動電極の外径はこのプロットのポンプ室半径と同じである。しかしながら外径はポンプ室半径よりわずかに大きくてよく、又それが好ましい。例えば、半径150マイクロメートルを有するポンプ室については、リング状駆動電極の外径は155〜160マイクロメートルであってもよい。
【0092】
リング状電極は最大容積変位に関し中央電極に比し効率が落ちるということがわかる。例えば、円形の中央電極の最大容積変位は半径rc1=100マイクロメートルにおいて約1.9×10−16/ボルトである。円形のリング状電極の最大容積変位は、内径rre=112マイクロメートルにおいて約1.7×10−16/ボルトである。一つの二重電極設計では、中央駆動電極の半径とリング状駆動電極の内径は両方ともポンプ室内の最大容積変位を実現するように選択される。この特別な例では、このような設計は、中央駆動電極とリング状駆動電極間に約12マイクロメートルの間隙を必要とする。
【0093】
別の二重電極設計では、内側駆動電極(例えば、中央駆動電極)の半径と外側駆動電極(例えば、リング状駆動電極)の内径は、容積変位が二つの駆動電極について等しくなるようにされる。リング状駆動電極の内径がrreである場合、中央駆動電極の半径はrc2=80マイクロメートルである。1ボルト当たり容積変位は、リング状駆動電極と中央駆動電極について1.7×10−16/ボルトで大きさが同じになるだろう。この設計では、電極間には約32マイクロメートルの間隙がある。
【0094】
ポンプ室と駆動電極の相対的大きさに加えて、最大容積変位はまた、圧電層の厚さにわずかに影響される。図7は、ポンプ室内の1ボルト当たり容積変位(dV/dU)とポンプ室半径に対する中央駆動電極半径の百分率(%)との相関を例示するプロットである。通常、1ボルト当たり容積変位は中央駆動電極の半径がポンプ室半径の約2/3に達するとピークに達する。しかしながらPZT膜の厚さに依存してピークはわずかにずれる。例えば、厚いPZT膜ではピークはわずかに小さな電極半径側にずれ、薄いPZT膜ではピークはわずかに大きな電極半径側にずれる。通常、1ボルト当たり容積変位はPZT膜厚が増加すると低下する。中央駆動電極の可能な設計領域はポンプ室半径の約60%〜80%である。容積変位の十分な柔軟性とポンプ室内の流体を加圧するのに十分な強度の両方を維持するために、PZT膜の厚さは0.5マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0095】
図6と図7のプロットは円形内側電極及び/又は環状リング状外側電極のものであるが、同様の寸法の相関を他の形状の電極について見出すことができる。例えば、外側電極のリング形状は円形に制限されなく、むしろ開口中央部を有する他の形状(例えば、楕円形、多角形、正方形、矩形、三角形等々)を含むことができる。更に、いくつかの実施態様では、リング形状は(例えば、内側電極をコントローラーに接続する通路を収容するために)、リングの幅にわたって切断された間隙を含むことができる。いくつかの実施態様では、リング状駆動電極は、もはや単一導電部品ではなくなるようにリングの幅にわたって切断された2つ以上のスリットを有することができる。このような実施態様では、リング状電極のいくつかのセグメントは共通制御信号に結び付けられるか、あるいは単一のリング状駆動電極として機能するように同期制御されてよい。このような実施態様では、このようなスリットはスリットの幅及び/又は数がリングの大きさに対しわずかである場合、リング状駆動電極の効果を実質的に変えず、したがってリング状電極のセグメントはリング状駆動電極のセグメントで囲まれた中央領域を依然として実質的に囲む。
【0096】
同様に、内側駆動電極は円形ディスクに制限されなく、任意の形状(例えば、楕円形、多角形、正方形、矩形、又は三角形等々)を有することができる。いくつかの実施態様では、切れ目が内側駆動電極の領域に比較して小さく、かつ内側電極のすべてのセグメントが共通制御信号に結び付けられるかあるいは単一の中央駆動電極として機能するように同期制御される限り、内側駆動電極は一つ又は複数の切れ目を含むことができる。いくつかの実施態様では、内側駆動電極は、その中に一つ又は複数の開口(例えば、リング、開口リング、又は孔を有するディスク)を含むことができる。一つ又は複数の開口の存在は、開口が内側駆動電極の大きさに対し数及び大きさにおいてわずかである場合、内側駆動電極の動作を実質的に妨害しない。
【0097】
駆動電極の位置はまた、圧電アクチュエータの性能に影響を与え得る。中央駆動電極及び/又は内側駆動電極は、ポンプ室の上の膜の中央部のほぼ上に配置されてもよい。図2〜図5に示す設計では、円形の中央駆動電極又は内側駆動電極はポンプ室の上の膜の中央に配置される。中央駆動電極又は内側駆動電極の位置は、いくつかの実施態様ではわずかに変えることができる(例えば、ポンプ室の形状又は流体吐出装置の他の部品の位置に対処するために)。通常、内側駆動電極を膜の中央部の上に置くことにより、より大きな膜の撓みを実現することができる。しかしながら駆動電極の特定の設計とポンプ室の形状に依存して、中央部からの一定のオフセットが望ましい場合がある。
【0098】
同様に、リング状駆動電極及び/又は外側駆動電極は、膜の中央部のほぼ上にその開口を有する膜の周辺部の上に配置することができる。図3〜図5に示す設計では、リング状駆動電極及び/又は外側駆動電極はポンプ室壁の全周にほぼ整合された内縁と外縁を有し、ポンプ室の周囲全体(又は、周囲のほぼ全体)を覆う。リング状駆動電極及び/又は外側駆動電極のこのような整合された位置決めは整合されない位置決めより大きな膜撓みを許容することができる。
【0099】
リング状電極の内周と外周は必ずしも幾何学的に相似又は同心である必要は無い。しかしながらいくつかの実施態様では、リングの幅はリング全体の周囲で、あるいはリングの大部分の周囲でほぼ一様である。同様に、内側電極の外周とリング状電極の内周は必ずしも幾何学的に相似又は同心である必要が無い。しかしながらいくつかの実施態様では、内側電極と外側電極間の間隙は内側電極全体の周囲でほぼ一様であってもよい。
【0100】
基準電極は、それぞれがアクチュエータのそれぞれの内側又は外側駆動電極と対向する部分間でセグメント化されてよい。基準電極はまた連続であってよく、アクチュエータの内側及び外側駆動電極の両方に跨ることができる。いくつかの設計では、連続基準電極は複数のアクチュエータの電極に跨ることができる。いくつかの設計では、複数のアクチュエータの基準電極、又は単一のアクチュエータの基準電極のセグメント化部分は、共通制御信号に結び付けられるかあるいは同期制御されてよい。
【0101】
圧電材料は連続であってよく、ポンプ室の上の全領域にわたって及びそれを越えて跨ることができる。いくつかの実施態様では、連続圧電材料はいくつかのアクチュエータに跨ることができる。あるいは圧電材料は、異なるアクチュエータの圧電材料を互いにセグメント化してクロストークを低減するために、ポンプ室の上に重ならない領域内に切れ目を含むことができる。
【0102】
図8Aに、連続PZT層の上に別の例示的リング状電極800を有する圧電アクチュエータを示す。図8Bは、図8Aの例示的リング状電極800下のPZT層の撓みを示す。
【0103】
この設計では、リングの形状は、リングの内縁810により形成された内側形状とリングの外縁820により形成された外側形状とにより画定される。リングの内側形状は、外部電圧源又はコントローラー130に接続される六角形の一頂点がわずかに細長く丸い以外は、ほぼ六角形である。リングの外側形状は内側形状のものと類似しており、内側形状と外側形状は、リングの幅(W)が電圧源又はコントローラー130に接続する側を除いてリングの周囲でほぼ同じとなるようにほぼ同心である。
【0104】
図8Aのリング状電極800は、連続圧電膜840の上面で、かつポンプ室の上に置かれる。ポンプ室端830はリング状電極800の真下にある。リングの形状はまた、ポンプ室の形状に厳密に追随する。したがってリングはポンプ室の上の膜の全周にほぼ整合される。連続基準電極は圧電膜840とシリコン基板850間に配置される。
【0105】
図8Bは、負の電圧が基準電極に対しリング状駆動電極800に印加された場合の圧電(例えば、PZT)膜の撓みのシミュレーション結果を示す。膜は外方に(ポンプ室から離れる方向に)撓み、ポンプ室は膨張する。
【0106】
二重電極設計における内側及び外側駆動電極の設計と、単一電極設計におけるリング状電極の設計はまた、圧電膜の静的撓みと動的撓みが0Hzとポンプ室機械共振周波数とにおいてほぼ同じでなければならないことを考慮することができる。
【0107】
上記で検討した駆動電圧は単純な矩形電圧パルスであるが、更に多くの複雑な電圧を、例えば、吐出される液滴の大きさ、速度、又は数を制御するために印加することができる。
【0108】
上記例について検討された圧電材料はポンプ室から離れる方向の分極方向を有するが、いくつかの実施態様では、ポンプ室の方向に向いた分極方向を有する予備焼成圧電層(例えば、モジュール基板に接着される前に焼成されるバルク圧電材料)を膜に貼り付けることができる。このような実施態様では、同じポンプ作用を実現するために同様に電圧パルスを反転することができるであろう。
【0109】
上記考察は、駆動電極層が圧電層の露出側の上に置かれ基準電極層が圧電層と膜層間に配置された構成について言及したが、駆動電極と基準電極層の位置は反転されてもよい。ポンプ室に対する圧電材料の所与の分極方向(すなわち、ポンプ室から離れる方向又はポンプ室に向かう方向のいずれか)については、同じポンプ作用を実現するために基準電極に対し駆動電極に印加される電圧パルスを同様に反転できるであろう。
【0110】
各構成における各駆動電極上の適切なポンプ電圧パルスの選択は、以下の外側(例えば、リング状)駆動電極と内側(例えば、中央)駆動電極の基本的な振る舞いに基づいてよい。
【0111】
リング状駆動電極の基本的な振る舞いは次の通りである。リング状駆動電極と基準電極との間に印加される電圧差がリング状駆動電極と基準電極との間の圧電材料の分極方向と同じ方向に向く電界を生成するとポンプ室は膨張し、リング状駆動電極と基準電極との間に印加される電圧差がリング状駆動電極と基準電極との間の圧電材料の分極方向と反対方向に向く電界を生成するとポンプ室は収縮する。
【0112】
中央駆動電極の基本的な振る舞いは次の通りである。中央駆動電極と基準電極との間に印加される電圧差が中央駆動電極と基準電極との間の圧電材料の分極方向と同じ方向に向く電界を生成するとポンプ室は収縮し、中央駆動電極と基準電極との間に印加される電圧差が中央駆動電極と基準電極との間の圧電材料の分極方向と反対方向に向く電界を生成するとポンプ室は膨張する。
【0113】
駆動電極と基準電極との間の電圧差が圧電材料の分極方向と同じ方向に向く電界を生成することができる4つの状況が存在する。
【0114】
第1に、圧電材料の分極方向がポンプ室から離れる方向に向く場合、分極方向がまた基準電極層から駆動電極層向くように電極が配置されると、駆動電極と基準電極との間の負の電圧差は圧電材料の分極方向と同じ方向に向く電界を生成する。
【0115】
第2に、圧電材料点の分極方向がポンプ室から離れる方向に向く場合、分極方向が駆動電極層から基準電極層に向くように電極が配置されると、圧電電界の分極方向と同じ方向に向く電界を生成するために駆動電極と基準電極との間に正の電圧差が必要である。
【0116】
第3に、圧電材料の分極方向がポンプ室の方向に向く場合、分極方向が又基準電極層から駆動電極層向くように電極が配置されると、駆動電極と基準電極との間の負の電圧差は圧電材料の分極方向と同じ方向に向く電界を生成する。
【0117】
第4に、圧電材料の分極方向がポンプ室の方向に向く場合、分極方向が駆動電極層から基準電極層に向くように電極が配置されると、圧電電界の分極方向と同じ方向に向く電界を生成するために駆動電極層と基準電極層間に正の電圧差が必要である。
【0118】
同様に、駆動電極と基準電極との間の電圧差が圧電材料の分極方向と反対方向に向く電界を生成することができる4つの状況が存在する。
【0119】
ポンプサイクル中、膨張及び収縮段階の両方の間圧電材料の分極方向と同じ方向に向く電界を有することが時には好ましい(例えば、二重電極設計例において)。いくつかの実施態様では、ポンプサイクルの膨張段階の間だけ分極方向と同じ方向に向く電界を有することが可能であり、収縮は印加電界の無い膜の自然緩和により行われる。分極方向と同じ方向に向いた電界の印加は圧電材料の減極と疲労を低減するのを助けるが、実際には、この選好は他の目標を実現するために見合わせられることがある。
【0120】
ポンプサイクル中、最初にポンプ室を膨張させ次に収縮させることが好ましい。単一のリング状駆動電極を使用する場合、分極方向と同じ方向に向く電界を、最初にポンプ室を膨張させる期間Tの間生成し、次にポンプ室をその弛緩状態に戻すために除去することができる。更なる収縮については、膨張期間後、分極方向の反対方向に向く電界を期間Tの間印加することができるが、これは圧電材料を劣化する傾向がある。
【0121】
内側駆動電極と外側駆動電極を有する二重電極設計を使用する場合、ポンプ室を膨張させるために、第1の期間T1の間、第1の電圧差が、外側駆動電極と基準電極との間に印加され圧電材料の分極方向と同じ方向に向く電界を生成し、次にポンプ室を収縮するために、第2の期間T2の間、第2の電圧差が、内側駆動電極と基準電極との間に印加され圧電材料の分極方向と同じ方向を向く電界を生成する。全ポンプサイクル(例えば、膨張及び収縮期間)中、圧電材料内に生成された電界は分極方向と同じ方向を向くので、この動作順序は圧電材料の減極を低減する。いくつかの実施形態では、例えば、最初に、分極方向の反対方向に向いた電界を生成して室を膨張させるために内側電極上に第1の電圧差を印加し、次に、分極方向の反対方向に向いた別の電界を生成して室を収縮するために外側駆動電極上に第2の電圧差を印加することにより電圧印加を反転することが可能である。しかしながらこの動作順序は圧電材料の減極を増加し、圧電アクチュエータの寿命と効果を低減するであろう。
【0122】
本明細書及び特許請求範囲を通して「前」と「後」、「上」と「底」、又は「水平」と「垂直」等の用語の使用は、本明細書に記載の印字ヘッドモジュールと他の要素の様々な部品の相対的位置又は配向を識別するためのものであって、印字ヘッドモジュールの重力に対する特定の配向を意味するものではない。
【0123】
本明細書は多くの特定の実施態様詳細を含むが、これらは、特許請求範囲に明示的に示されない限り、任意の発明又は請求され得るものの範囲の制限としてではなく特定の発明の特定の実施形態に固有と考えられる特徴の説明として解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室が中に形成された基板と、
前記室の壁を形成し、撓むことにより前記室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜と、
前記膜上に支持されたアクチュエータであって、駆動電極層と基準電極層との間に配置される圧電層を含むアクチュエータと、を備え、
前記圧電層は、前記室に跨る連続平面圧電材料であって前記連続平面圧電材料にほぼ垂直な一様な分極方向を有する連続平面圧電材料を含み、
前記駆動電極層は、内側電極と前記内側電極を囲む外側電極とを含む複数の駆動電極を有し、
前記基準電極層は、前記内側電極に跨る第1の部分と前記外側電極に跨る第2の部分とを有する基準電極を含み、前記複数の駆動電極の少なくとも一つと前記基準電極との間の電圧差の生成により前記連続平面圧電材料に電界を生じさせ、前記電界は前記連続平面圧電材料を作動して前記膜を撓ませる流体吐出システム。
【請求項2】
前記複数の駆動電極及び前記基準電極に対して電気的に接続されるコントローラーを更に含む請求項1に記載の流体吐出システムであって、
液滴を吐出する動作サイクル中、前記コントローラーは、前記室を膨張させる第1の期間に前記複数の駆動電極のうちの第1の電極と前記基準電極との間に第1の電圧差パルスを生成し、前記室を収縮させる第2の期間に前記複数の駆動電極のうちの第2の電極と前記基準電極との間に第2の電圧差パルスを生成し、前記第2の電極は前記第1の電極とは異なり、前記第2の期間は前記第1の期間の後であるように、動作可能である、請求項1に記載の流体吐出システム。
【請求項3】
前記第1の電圧差パルス及び前記第2の電圧差パルスは、それぞれ、前記分極方向とほぼ同じ方向に向いた電界を生成し、前記複数の駆動電極のうちの前記第1の電極は前記外側電極であり、前記複数の駆動電極のうちの前記第2の電極は前記内側電極である、請求項2に記載の流体吐出システム。
【請求項4】
前記膜は、前記基板に接着された別の層である、請求項1に記載の流体吐出システム。
【請求項5】
前記内側電極は前記膜の中央部の上に配置され、前記外側電極は前記内側電極を囲む前記膜の周辺部の上に配置される、請求項1に記載の流体吐出システム。
【請求項6】
前記内側電極及び前記外側電極は、前記膜の上に配置される唯一の駆動電極である、請求項1に記載の流体吐出システム。
【請求項7】
前記膜はDの横方向寸法を有し、前記内側電極はDの約2/3の横方向寸法を有する、請求項1に記載の流体吐出システム。
【請求項8】
前記外側電極はリングの形状であり、前記リングは内側横方向寸法と外側横方向寸法を有し、前記リングの前記内側横方向寸法は前記内側電極の前記横方向寸法より大きい、請求項7に記載の流体吐出システム。
【請求項9】
前記リングの前記外側横方向寸法は前記膜の前記横方向寸法より大きい、請求項8に記載の流体吐出システム。
【請求項10】
前記内側電極の前記横方向寸法と前記外側電極の前記内側横方向寸法とは、前記室の膨張と収縮との間で最大容積変位が実現されるようになっている、請求項9に記載の流体吐出システム。
【請求項11】
前記内側電極の前記横方向寸法と前記外側電極の前記内側横方向寸法とは、前記室の膨張と収縮との間で等しい容積変位が実現されるようになっている、請求項8に記載の流体吐出システム。
【請求項12】
前記連続平面圧電材料はジルコニウム酸チタン酸鉛(PZT)膜である、請求項1に記載の流体吐出システム。
【請求項13】
室が中に形成された基板と、
前記室の壁を形成し、撓むことにより前記室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜と、
前記膜上に支持されたアクチュエータと、を備え、
前記アクチュエータは、駆動電極層と基準電極層との間に配置される圧電層を含み、
前記圧電層は、前記室に跨る連続平面圧電材料であって前記連続平面圧電材料にほぼ垂直な一様な分極方向を有する連続平面圧電材料を含み、
前記駆動電極層は前記連続平面圧電材料に接触する駆動電極を含み、前記駆動電極は、リングの形状を有し、前記膜の周辺部の上に配置され、前記駆動電極層における膜の上の唯一の駆動電極であり、
前記基準電極層は、少なくとも前記駆動電極により覆われた領域に跨る基準電極を含み、前記駆動電極と前記基準電極間の電圧差の生成により前記連続平面圧電材料に電界を生じさせ、前記電界は前記連続平面圧電材料を作動して前記膜を撓ませる流体吐出システム。
【請求項14】
前記駆動電極と前記基準電極に電気的に接続されるコントローラーを更に含み、液滴を吐出する動作サイクル中、前記コントローラーは、ある期間前記駆動電極と前記基準電極との間に電圧差を生成して前記室を膨張させ、前記期間の後に前記電圧差を取り除いて前記室を収縮するように動作可能である、請求項13に記載の流体吐出システム。
【請求項15】
前記連続平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記基準電極層から前記駆動電極層に向かい、前記電圧差は負の電圧差である、請求項14に記載の流体吐出システム。
【請求項16】
前記連続平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室から離れる方向に向く、請求項15に記載の流体吐出システム。
【請求項17】
前記膜はDの横方向寸法を有し、前記駆動電極は内側横方向寸法と外側横方向寸法とを有し、前記駆動電極の前記外側横方向寸法は前記膜の前記横方向寸法より大きい、請求項13に記載の流体吐出システム。
【請求項18】
前記駆動電極の前記内側横方向寸法は、前記室の膨張と収縮との間で最大容積変位が実現されるようになっている、請求項17に記載の流体吐出システム。
【請求項19】
前記連続平面圧電材料はジルコニウム酸チタン酸鉛(PZT)膜である、請求項18に記載の流体吐出システム。
【請求項20】
室が中に形成された基板と、
前記室の壁を形成し、撓むことにより前記室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜と、
前記膜上に支持されたアクチュエータであって、前記アクチュエータは駆動電極層と基準電極層との間に配置された圧電層を含み、前記圧電層は前記室を越えて跨る平面圧電材料であって前記平面圧電材料にほぼ垂直な一様な分極方向を有する平面圧電材料を含み、前記駆動電極層は内側電極と前記内側電極を囲む外側電極とを含む複数の駆動電極を有し、前記基準電極層は前記内側電極に跨る第1の部分と前記外側電極に跨る第2の部分とを有する基準電極を含むアクチュエータと、
前記駆動電極のペアー及び前記基準電極に電気的に接続されたコントローラーであって、液滴を吐出する動作サイクル中、前記室を膨張させる第1の期間に前記複数の駆動電極のうちの第1の電極と前記基準電極との間に第1の電圧差パルスを生成し、前記第1の期間の後の前記室を収縮する第2の期間に前記複数の駆動電極のうちの前記第1の電極とは異なる第2の電極と前記基準電極との間に第2の電圧差パルスを生成するように、動作可能であるコントローラーと、を備える流体吐出システム。
【請求項21】
前記第1の電圧差パルス及び前記第2の電圧差パルスは、それぞれ、前記分極方向とほぼ同じ方向に向いた電界を生成し、前記複数の駆動電極のうちの前記第1の電極は前記外側電極であり、前記複数の駆動電極のうちの前記第2の電極は前記内側電極である、請求項20に記載の流体吐出システム。
【請求項22】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記基準電極層から前記駆動電極層に向き、前記第1の電圧差パルスは負の電圧差パルスであり、前記第2の電圧差パルスは別の負の電圧差パルスである、請求項21に記載の流体吐出システム。
【請求項23】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室から離れる方向に向く、請求項22に記載の流体吐出システム。
【請求項24】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室のほうに向く、請求項22に記載の流体吐出システム。
【請求項25】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記駆動電極層から前記基準電極層に向き、前記第1の前記電圧差パルスは正の電圧差パルスであり、前記第2の電圧差パルスは別の正の電圧差パルスである、請求項21に記載の流体吐出システム。
【請求項26】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室から離れる方向に向く、請求項25に記載の流体吐出システム。
【請求項27】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室のほうに向く、請求項25に記載の流体吐出システム。
【請求項28】
前記第1の電圧差パルス及び前記第2の電圧差パルスは、それぞれ、前記分極方向のほぼ反対方向に向いた電界を生成し、前記複数の駆動電極のうちの前記第1の電極は前記内側電極であり、前記複数の駆動電極のうちの前記第2の電極は前記外側電極である、請求項20に記載の流体吐出システム。
【請求項29】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記基準電極層から前記駆動電極層に向き、前記前記第1の前記電圧差パルスは正の電圧差パルスであり、前記第2の電圧差パルスは別の正の電圧差パルスである、請求項28に記載の流体吐出システム。
【請求項30】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室から離れる方向に向く、請求項29に記載の流体吐出システム。
【請求項31】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室のほうに向く、請求項29に記載の流体吐出システム。
【請求項32】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記駆動電極層から前記基準電極層に向き、前記第1の電圧差パルスは負の電圧差パルスであり、前記第2の電圧差パルスは別の負の電圧差パルスである、請求項28に記載の流体吐出システム。
【請求項33】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室から離れる方向に向く、請求項32に記載の流体吐出システム。
【請求項34】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室のほうに向く、請求項32に記載の流体吐出システム。
【請求項35】
室が中に形成された基板と、
前記室の壁を形成し、撓むことにより前記室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜と、
前記膜上に支持されたアクチュエータであって、前記アクチュエータは駆動電極層と基準電極層との間に配置された圧電層を含み、前記圧電層は前記室を越えて跨る平面圧電材料であって前記平面圧電材料にほぼ垂直な一様な分極方向を有する平面圧電材料を含み、前記駆動電極層は前記平面圧電材料に接触する駆動電極を含み、前記駆動電極はリングの形をして前記膜の周辺部の上に配置されており前記駆動電極層内の膜の上の唯一の駆動電極であり、前記基準電極層は少なくとも前記駆動電極により覆われた領域に跨る基準電極を含むアクチュエータと、
前記駆動電極及び前記基準電極に電気的に接続されたコントローラーであって、液滴を吐出する動作サイクル中、前記コントローラーは、ある期間駆動電極と前記基準電極との間に電圧差を生成して前記室を膨張させ、前記期間の後に前記電圧差を取り除いて前記室を収縮するように動作可能であるコントローラーと、を備える流体吐出システム。
【請求項36】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記基準電極層から前記駆動電極層に向き、前記電圧差は負の電圧差である、請求項35に記載の流体吐出システム。
【請求項37】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室から離れる方向に向く、請求項36に記載の流体吐出システム。
【請求項38】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室のほうに向く、請求項36に記載の流体吐出システム。
【請求項39】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記駆動電極層から前記基準電極層に向き、前記電圧差は正の電位である、請求項35に記載の流体吐出システム。
【請求項40】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室から離れる方向に向く、請求項39に記載の流体吐出システム。
【請求項41】
前記平面圧電材料の前記一様な分極方向は前記室のほうに向く、請求項39に記載の流体吐出システム。
【請求項42】
ポンプ室の作動方法であって、
前記ポンプ室を膨張させる期間に圧電アクチュエータの駆動電極と基準電極との間に負の電圧差を生成する工程であって、前記ポンプ室は基板内に形成された空胴であり、前記空胴は、撓むことにより前記ポンプ室を膨張又は収縮させるように動作可能な膜により覆われ、前記圧電アクチュエータは前記膜上に支持されて平面圧電材料、駆動電極、及び基準電極を含み、前記駆動電極及び前記基準電極は前記平面圧電材料の両側に配置され、前記駆動電極はリングの形をして前記膜の周辺部の上に配置されており前記膜の上の唯一の駆動電極であり、前記平面圧電材料は前記室を越えて跨っており前記平面圧電材料にほぼ垂直な方向である前記ポンプ室から離れる方向に向いた一様な分極方向を有し、前記基準電極は前記膜と前記駆動電極との間に配置されており前記駆動電極により覆われた少なくとも一つの領域に跨る、工程と、
前記期間後に前記負の電圧差を取り除いて前記ポンプ室を収縮する工程と、を含むポンプ室の作動方法。
【請求項43】
室と膜とを有する基板であって、前記膜は、前記室の片側を覆っており撓むことによって前記室を膨張又は収縮させるように動作可能である、基板と、
前記膜上のアクチュエータであって、前記アクチュエータは、駆動電極層と基準電極層との間に配置される圧電層を含み、前記圧電層は、前記アクチュエータに接触する前記膜の表面にほぼ垂直な一様な分極方向を有し、前記駆動電極層は、内側電極と前記内側電極を囲む外側電極とを含む複数の駆動電極を有する、アクチュエータと、
前記内側電極及び前記外側電極に単極波形を供給するように、前記アクチュエータに電気的に接続されるコントローラーと、を備える流体吐出システム。
【請求項44】
液滴を吐出する動作サイクル中、前記コントローラーは、前記室を膨張させる第1の期間に前記複数の駆動電極のうちの第1の電極と前記基準電極との間に第1の電圧差パルスを生成し、前記第1の期間の後の前記室を収縮する第2の期間に前記複数の駆動電極のうちの前記第1の電極とは異なる第2の電極と前記基準電極との間に第2の電圧差パルスを生成するように動作可能である、請求項43に記載の流体吐出システム。
【請求項45】
前記第1の電圧差パルス及び前記第2の電圧差パルスは、それぞれ、前記分極方向とほぼ同じ方向に向いた電界を生成し、前記複数の駆動電極のうちの前記第1の電極は前記外側電極であり、前記複数の駆動電極のうちの前記第2の電極は前記内側電極である、請求項44に記載の流体吐出システム。
【請求項46】
室と膜とを有する基板であって、前記膜は、前記室の片側を覆っており撓むことによって前記室を膨張又は収縮させるように動作可能である、基板と、
前記膜上のアクチュエータであって、前記アクチュエータは、駆動電極層と基準電極層との間に配置される圧電層を含み、前記圧電層は、前記アクチュエータに接触する前記膜の表面にほぼ垂直な一様な分極方向を有し、前記駆動電極層は前記圧電材料に接触する駆動電極を含み、前記駆動電極はリング状であって前記室の上の前記膜の周辺部の上に配置されており前記駆動電極層内の前記膜の上の唯一の駆動電極である、アクチュエータと、
前記駆動電極に単極波形を供給するように、前記アクチュエータに電気的に接続されるコントローラーと、を備える流体吐出システム。
【請求項47】
前記アクチュエータに印加される前記単極波形は、前記分極電界とほぼ同じ方向である前記圧電層に電界を生成する、請求項46に記載の流体吐出システム。
【請求項48】
室と膜とを有する基板であって、前記膜は、前記室の片側を覆っており撓むことによって前記室を膨張又は収縮させるように動作可能である、基板と、
前記膜上のアクチュエータであって、前記アクチュエータは、駆動電極層と基準電極層との間に配置される圧電層を含み、前記圧電層は前記アクチュエータに接触する前記膜の表面にほぼ垂直な一様な分極方向を有し、前記駆動電極層は内側電極と前記内側電極を囲む外側電極とを含む複数の駆動電極を有する、アクチュエータと、
前記内側電極及び前記外側電極に単極波形を供給するように前記アクチュエータに電気的に接続されるコントローラーと、を備える流体吐出システム。
【請求項49】
液滴を吐出する動作サイクル中、前記コントローラーは、前記室を膨張させる第1の期間に前記複数の駆動電極のうちの第1の電極と前記基準電極との間に第1の電圧差パルスを生成し、前記第1の期間の後の前記室を収縮する第2の期間に前記複数の駆動電極のうちの前記第1の電極とは異なる第2の電極と前記基準電極との間に第2の電圧差パルスを生成するように動作可能である、請求項48に記載の流体吐出システム。
【請求項50】
前記第1の電圧差パルス及び前記第2の電圧差パルスは、それぞれ、前記分極方向とほぼ同じ方向に向いた電界を生成し、前記複数の駆動電極のうちの前記第1の電極は前記外側電極であり、前記複数の駆動電極のうちの前記第2の電極は前記内側電極である、請求項49に記載の流体吐出システム。
【請求項51】
室と膜とを有する基板であって、前記膜は、前記室の片側を覆っており撓むことによって前記室を膨張又は収縮させるように動作可能である、基板と、
前記膜上のアクチュエータであって、前記アクチュエータは、駆動電極層と基準電極層との間に配置される圧電層を含み、前記圧電層は前記アクチュエータに接触する前記膜の表面にほぼ垂直な一様な分極方向を有し、前記駆動電極層は前記圧電材料に接触する駆動電極を含み、前記駆動電極はリング状であって前記室の上の前記膜の周辺部の上に配置されており前記駆動電極層の前記膜の上の唯一の駆動電極である、アクチュエータと、
前記駆動電極に単極波形を供給するように、前記アクチュエータに電気的に接続されるコントローラーと、を備える流体吐出システム。
【請求項52】
前記アクチュエータに印加される前記単極波形は、前記分極電界とほぼ同じ方向へ前記圧電層に電界を生成する、請求項51に記載の流体吐出システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2012−518907(P2012−518907A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551209(P2011−551209)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/024544
【国際公開番号】WO2010/096531
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】