説明

流体吐出装置、ノズル検査方法、及び、ノズル検査プログラム

【課題】ノズルの状態の判定精度を向上させることを課題とする。
【解決手段】流体吐出装置は、ノズル23から流体(FL1)を吐出する吐出手段U1と、前記ノズル23から吐出される流体(FL1)による電気的変化(ΔV1)を検出する電気的変化検出手段U2と、検出される電気的変化(ΔV1)と閾値Vrefとを対比して前記ノズル23の状態が正常であるか否かを判定する判定手段U3とを備えている。前記判定手段U3は、前記閾値Vrefを変えて該変えた閾値Vrefと、前記検出される電気的変化(ΔV1)と、を対比して前記ノズル23の状態が正常であるか否かを判定可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから流体を吐出する流体吐出装置、ノズル検査方法、及び、ノズル検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の流体吐出装置は、ノズルから吐出される流体による電圧変化に基づいてノズルを検査し、ノズルが目詰まり状態等の場合にクリーニング等のメンテナンスを実行している。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の流体吐出装置は、複数のノズル列と1対1に対応してクリーニングボックスが設けられ、各クリーニングボックスに電極が配置され、ノズルから吐出される流体による電圧変化の検出手段に接続する電極を切り替えて流体が吐出されたか否かを判定する。
特許文献2に記載の流体吐出装置は、ノズル検査を行う際、ノズルからインク滴がキャップ内に吐出されるよう印刷ヘッドを制御し、複数の電極のうちインク滴が吐出された電極からの電圧信号とインク滴が吐出されなかった電極からの電圧信号とを差動をとって得られる電圧信号と閾値とを比較することによりノズルから正常にインク滴が吐出されたか否かを判定する。
特許文献3に記載の流体吐出装置は、不良ノズルの有無を検査する検査手段で必要な検査精度が得られない検査不能状態にあることが検出された場合、吐出手段と検査用電極とのギャップを検査手段が検査可能状態に移行しうる広さに調整する。
特許文献4に記載の流体吐出装置は、電極から入力した電圧信号のピーク値をホールドし、該ホールドしたピーク値を積算し、ノズルの検査が指示されたとき、ノズルから所定数の液滴が吐出されるよう吐出ヘッドを制御し、該制御に伴って前記積算により得られた値に基づいてノズルの吐出状態を判定する。
特許文献5に記載の流体吐出装置は、ノズルの検査を行う際のインターバル期間のタイミングであって電気的変化の主要な信号波形の後ろに付随する残留波形を打ち消すカウンター波形を発生させるタイミングで、いずれかのノズルからインクが吐出されるよう印刷ヘッドを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226616号公報
【特許文献2】特開2009−226620号公報
【特許文献3】特開2009−196291号公報
【特許文献4】特開2009−226619号公報
【特許文献5】特開2010−179543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ノズルの状態が正常でない場合には、ノズルから流体が吐出されない目詰まり状態の他、流体の吐出方向が不安定である等の不安定状態がある。また、ノズルの状態が正常であっても、ノズルと電極とのギャップ(隙間)にばらつきが生じる等により、ノズルから吐出される流体による電圧変化等の電気的変化にばらつきが生じることが判った。この電気的変化のばらつきを考慮して電気的変化と対比する閾値を低くすると、不安定状態のノズルが正常状態であると判定されてメンテナンスが実行されない場合が生じる。一方、電気的変化と対比する閾値を高くすると、正常状態のノズルが正常状態でないと判定されて不必要なメンテナンスが実行される場合が生じる。
【0006】
以上を鑑み、本発明の目的の一つは、ノズルの状態の判定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段及びその作用・効果】
【0007】
上記目的の一つを達成するため、本発明は、ノズルから流体を吐出する吐出手段と、
前記ノズルから吐出される流体による電気的変化を検出する電気的変化検出手段と、
検出される電気的変化と閾値とを対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定する判定手段とを備え、
前記判定手段が前記閾値を変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定可能とされていることを態様の一つとしている。
【0008】
すなわち、閾値が変えられて電気的変化と対比されてノズルの状態が正常であるか否かが判定されるので、正常状態のノズルによる電気的変化のばらつきに応じてノズルの状態を判定することができる。従って、本態様は、ノズルの状態の判定精度を向上させることができる。
【0009】
ここで、上記流体吐出装置は、例えば、プリンター単体に設けられてもよいし、プリンターと外部装置とに跨って設けられてもよい。
上記電気的変化には、ノズルから吐出される流体による電圧変化や電流変化等が含まれる。
上記閾値は、1回以上の判定で最終的にノズルの状態が正常であるか否かを判定することができる閾値であればよく、1回のみの判定でノズルの状態が正常であるか否かを判定する閾値に限定されない。また、閾値は、検出される電気的変化と対比する対象であればよく、デジタル値、階調値、アナログ量、等が含まれる。
【0010】
ところで、前記判定手段は、前記閾値を前記検出される電気的変化との対比結果に基づいて変えてもよい。すると、ノズルの状態が正常であるか否かを判定するための閾値が電気的変化との対比結果に基づいて変わるので、ノズルの状態の判定精度を好適に向上させることができる。
また、前記判定手段は、前記電気的変化検出手段に設けられる電極と前記ノズルとの距離等に基づいて前記閾値を変えてもよい。
【0011】
前記ノズルが複数設けられる場合、前記判定手段は、変えられる前記閾値の下限とされた下限値を前記ノズル毎に検出される電気的変化と対比し、前記下限値よりも低い電気的変化が検出されたノズルの状態を正常でないと判定し、前記下限値よりも低い電気的変化が存在しない場合に前記閾値を前記下限値よりも大きい値に変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態を判定してもよい。電気的変化が閾値の下限値よりも低い場合、この低い電気的変化が検出されたノズルの状態は正常でないと判定するのが妥当である。一方、閾値の下限値よりも低い電気的変化が存在しない場合、より正確に各ノズルの状態を判定するためには閾値を下限値から大きくして判定するのが妥当である。従って、本態様は、ノズルの状態の判定精度を向上させる好適な例を提供することができる。
ここで、電気的変化が下限値よりも低いことには、電気的変化が下限値以下であること、電気的変化が下限値よりも小さいこと、の両方が含まれる。
【0012】
また、前記判定手段は、変えられる前記閾値の上限とされた上限値を前記ノズル毎に検出される電気的変化と対比し、前記上限値よりも低い電気的変化が存在しない場合に前記複数のノズルの状態が正常であると判定し、前記上限値よりも低い電気的変化が存在する場合に前記閾値を前記上限値よりも小さい値に変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態を判定してもよい。閾値の上限値よりも低い電気的変化が存在しない場合、複数のノズルの状態は正常であると判定するのが妥当である。一方、閾値の上限値よりも低い電気的変化が存在する場合、より正確に各ノズルの状態を判定するためには閾値を上限値から小さくして判定するのが妥当である。従って、本態様も、ノズルの状態の判定精度を向上させる好適な例を提供することができる。
【0013】
前記判定手段は、変えられる前記閾値の下限及び上限を除いて前記閾値を変える際に降順又は昇順となるように前記閾値を変えてもよい。ノズルの状態が正常であるか否かを判定するための閾値が降順又は昇順に変えられて電気的変化と対比されるので、本態様は、ノズルの状態の判定処理を効率よく実行することができる。
【0014】
前記判定手段は、前記閾値を前記検出される電気的変化との対比結果に基づいて変えた際に前記複数のノズルの中から前記対比結果に基づいて選択したノズルについて、前記変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して状態を判定してもよい。ノズルの状態が正常であるか否かを判定するための閾値が変えられた際に対比結果に基づいて選択されたノズルについて状態が判定されるので、本態様は、ノズルの状態の判定処理を迅速化させることができる。
【0015】
前記判定手段は、前記複数のノズルに含まれる一部のノズルについて、前記閾値を変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記複数のノズルによる電気的変化と対比する閾値を決定し、該決定した閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定してもよい。一部のノズルについて前記変えられた閾値と電気的変化との対比により複数のノズルによる電気的変化と対比する閾値が決定され、複数のノズルについて前記決定された閾値と電気的変化とが対比されて状態が判定されるので、本態様も、ノズルの状態の判定処理を迅速化させることができる。
【0016】
上述した態様は、ノズル検査装置、印刷装置、印刷制御装置、これらの装置を備えるシステム、例えば判定工程といった工程を備えるノズル検査方法、流体吐出方法、印刷方法、印刷制御方法、例えば判定機能といった機能を備えるノズル検査プログラム、流体吐出プログラム、印刷プログラム、印刷制御プログラム、これらのプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な媒体、等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)〜(d)はノズル検査方法の概念を模式的に例示する図。
【図2】本発明の一実施形態に係る流体吐出装置を適用したプリンター20の構成の概略を例示する図。
【図3】印刷ヘッド24の電気的接続を模式的に例示する図。
【図4】ノズル検査装置50の構成の概略を例示する図。
【図5】ノズル検査処理を例示するフローチャート。
【図6】第一のノズル判定処理を例示するフローチャート。
【図7】ノズル単位判定処理を例示するフローチャート。
【図8】(a)は第一のノズル判定処理の各ステップと閾値Vrefとの対応関係を例示する図、(b)は第一のノズル判定処理の各処理と電圧変化ΔV1との対応関係を例示する図。
【図9】(a)〜(l)はノズルの状態の判定結果を例示する図。
【図10】第二のノズル判定処理を例示するフローチャート。
【図11】(a)は第二のノズル判定処理の各ステップと閾値Vrefとの対応関係を例示する図、(b)は第二のノズル判定処理の各処理と電圧変化ΔV1との対応関係を例示する図。
【図12】(a)〜(l)はノズルの状態の判定結果を例示する図。
【図13】第三のノズル判定処理の概念を模式的に例示する図。
【図14】第三のノズル判定処理を例示するフローチャート。
【図15】第三のノズル判定処理を例示するフローチャート。
【図16】(a)〜(d)は第三のノズル判定処理において閾値決定の概念を模式的に例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)ノズル検査方法の概略:
まず、図1〜4を参照して本発明の一態様に係るノズル検査方法の概略を説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る流体吐出装置を適用したインクジェット式のプリンター20の構成の概略を示している。プリンター20は、図3に示される吐出手段U1を備えるとともに、図4に示されるノズル検査装置50を備えている。吐出手段U1は、ノズル列(ノズル群)43に含まれる各ノズル23からインク(流体)FL1を吐出する。ノズル検査装置50に含まれる電気的変化検出手段U2は、各ノズル23から吐出されるインクFL1による電圧変化(電気的変化)ΔV1を検出する。ノズル検査装置50に含まれる判定手段U3は、検出される電圧変化ΔV1と閾値Vrefとを対比してノズル23の状態が正常であるか否かを判定する。この判定手段U3は、閾値Vrefを変えて該変えた閾値Vrefと、検出される電圧変化ΔV1と、を対比してノズル23の状態が正常であるか否かを判定可能とされている。
【0019】
上記閾値は、検出される電圧変化といった電気的変化と対比する対象であればよく、検出される電気的変化がデジタル値で表される場合にはデジタル値の閾値、検出される電気的変化が階調値で表される場合には階調値の閾値、検出される電気的変化が電圧状態といったアナログで表される場合にはアナログの閾値、等、種々の態様が含まれる。
【0020】
ノズル23の状態が正常でない場合には、目詰まり状態の他、不安定状態がある。ここで、目詰まり状態は、ノズルからインク滴が吐出していない状態であり、所謂ドット抜けが発生する状態である。不安定状態は、ノズルからインク滴が吐出しているものの、インク滴の飛行方向が異常な状態を意味している。例えば、印刷面に対してインク滴が垂直に飛行せずに曲がったり、一つのノズルから複数の方向にインク滴が飛び散ったりしている異常吐出状態がある。不安定状態の原因としては、吐出インクのミストが発生してノズル面に付着すること等が考えられる。
【0021】
目詰まり状態の場合、ノズルからインクが吐出されない結果、図1(b)に示すノズルn=3のように、検出される電圧変化ΔV1が非常に小さくなる。ここで、図1(a)〜(d)において、横軸はノズル番号を示し、縦軸は検出される電圧変化ΔV1を示し、0<下限値(Vlow)<Vref4<Vref3<Vref2<Vref1<上限値(Vtyp)の関係がある。目詰まり状態の場合、電圧変化ΔV1の閾値Vrefを下限値Vlowに設定しても、目詰まり状態のノズルは正常でないと判定されることになる。
不安定状態の場合、ノズルからインクが正常な方向に吐出されない結果、図1(b)に示すノズルn=5のように、検出される電圧変化ΔV1が中途半端に小さくなる。この場合、閾値Vrefを下限値Vlowに設定すると、不安定状態のノズルは正常であると判定されることになる。
【0022】
また、ノズル23の状態が正常であっても、図1(a)に示すように全体として電圧変化ΔV1が高い場合もあれば、図1(c)に示すように全体として電圧変化ΔV1が低い場合もあり、ノズル23から吐出されるインクFL1による電圧変化ΔV1にばらつきが生じることが判った。このばらつきは、ノイズ(外乱)による測定値のばらつきもあるが、図4に示すノズル23と電極52との隙間(ギャップ)GA1に生じるばらつきの要因が大きいことが判った。特に、電極52を入れたキャップ41を昇降装置90で上下動させる等、ノズル面(ノズルプレート27)と電極52との距離(隙間GA1)を変える機構を有するプリンターでは、吐出インクによる電圧変化ΔV1のばらつきが生じやすい。正常状態のノズルが正常状態でないと判定されないように、例えば、図1(c)の場合に合わせて閾値を比較的低いVref4に設定すると、図1(b)に示すノズルn=5は不安定状態であるにもかかわらず、正常状態と判定され、クリーニング等のメンテナンスが実行されないことになる。一方、図1(a)の場合に合わせて閾値を比較的高いVref2に設定すると、図1(c)に示す各ノズルは正常状態であるにもかかわらず、正常状態でないと判定され、不必要なメンテナンスが実行されることになる。
【0023】
そこで、本ノズル検査方法は、必要に応じて、閾値Vrefを変えて該変えた閾値Vrefと、検出される電圧変化ΔV1と、を対比してノズル23の状態が正常であるか否かを判定する。全体として電圧変化ΔV1が高い図1(a)の各ノズルの吐出状態が正常であるか否かを判定する場合、例えば、比較的高い閾値Vref1,Vref2を用いることにより各ノズルの状態が正常であると判定することができる。図1(b)の各ノズルの吐出状態が正常であるか否かを判定する場合も、例えば、比較的高い閾値Vref1,Vref2及び上限値を用いることによりノズルn=3,5の状態が正常でないと判定することができる。全体として電圧変化ΔV1が低い図1(c)の各ノズルの吐出状態が正常であるか否かを判定する場合、例えば、比較的低い閾値Vref2,Vref3,Vref4を用いることにより各ノズルの状態が正常であると判定することができる。図1(c)の各ノズルの吐出状態が正常であるか否かを判定する場合も、例えば、比較的低い閾値Vref2,Vref3,Vref4を用いることによりノズルn=3,5の状態が正常でないと判定することができる。
以上より、本態様は、ドット抜け検出の誤検出を抑制することができ、ノズル23の状態の判定精度を向上させることができる。
【0024】
特に、図4に示すコントローラー70のように電圧検出回路56の検出電圧を直接入手することができず閾値Vrefとの対比結果を表すOKかNGかの判定信号Voutしか入手することができない場合、全体として電圧変化ΔV1が高いのか低いのかを判断するのは即座にはできない。本ノズル検査方法は、電圧変化ΔV1と対比する閾値Vrefを変えることにより、電圧変化ΔV1の高低の傾向を把握して精度良くノズル23の状態が正常であるか否かを判定することができる。
【0025】
(2)プリンターの構成:
図2に例示するプリンター20は、紙送り機構31、プリンター機構21、キャッピング装置40、図4に示すノズル検査装置50、コントローラー70、操作パネル79、等を備える。紙送り機構31は、駆動モーター33による紙送りローラー35の駆動により記録紙M1を搬送方向DR2へ搬送する。
【0026】
プリンター機構21は、キャリッジモーター34a、従動ローラー34b、キャリッジベルト32、キャリッジ22、インクカートリッジ26、印刷ヘッド24、等を備え、紙送り機構31によりプラテン38上に搬送された記録紙M1に印刷ヘッド24からインク滴を吐出して印刷を行う。キャリッジモーター34aは、メカフレーム80に対してキャッピング装置40とは反対側に配置されている。従動ローラー34bは、メカフレーム80に対してキャッピング装置40側に配置されている。キャリッジベルト32は、キャリッジモーター34aと従動ローラー34bとに架設されている。キャリッジ22は、キャリッジモーター34aの駆動に伴ってキャリッジベルト32によりガイド28に沿って主走査方向DR1に往復動する。インクカートリッジ26は、水(溶媒)に染料又は顔料といった着色剤を含有したイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクを個別に収容し、キャリッジ22に搭載されている。キャリッジ22の背面にはキャリッジ22の位置を検出するリニア式エンコーダー36が配置され、このリニア式エンコーダー36によりキャリッジ22のポジションが管理される。
【0027】
図3に例示する印刷ヘッド24は、ノズルプレート27、キャビティプレート25、振動板49、圧電素子48、マスク回路47、を備える。ノズルプレート27は、ステンレス製等とされ、複数個のノズル23を搬送方向DR2に並べたノズル列43が形成されている。図3の例では、C,M,Y,Kのノズル23C,23M,23Y,23Kが色毎に180個ずつ1列に配置された複数列のノズル列43C,43M,43Y,43Kが示されている。キャビティプレート25は、ノズルプレート27、振動板49と共にノズル23に連通するインク室29を形成する。圧電素子48は、ジルコニアセラミック製といったセラミック製等とされ、振動板49のキャビティプレート25とは反対側に接合されている。圧電素子48には、ピエゾ素子等を用いることができる。マスク回路47は、ヘッド駆動用基板30上に形成され圧電素子48に駆動信号を出力する駆動回路とされている。印刷ヘッド24は、コントローラー70の制御に従って、マスク回路47から圧電素子48に電圧を印加して圧電素子48でインク室29の上壁を押し下げることによりインクを加圧してインク滴を吐出する。本印刷ヘッド24及びコントローラー70は、吐出手段U1を構成する。
【0028】
マスク回路47は、ヘッド駆動波形生成回路60により生成された原信号ODRVと印刷信号PRTnとを入力し、これらの信号ODRV,PRTnに基づいて駆動信号DRVnを生成して圧電素子48に出力する。信号PRTn,信号DRVnの末尾のnは、ノズル列に含まれるノズルを特定するための番号である。ヘッド駆動波形生成回路60は、原信号ODRVとして1画素分の区間内、すなわち、キャリッジ22が1画素の区間を横切る時間内において3つのパルスP1,P2,P3を繰り返し単位とした信号をマスク回路47に出力する。マスク回路47は、別途入力した印刷信号PRTnに基づいて原信号ODRVに含まれる3つのパルスのうち不要なパルスをマスクすることにより必要なパルスのみを駆動信号DRVnとして圧電素子48に出力する。例えば、第1パルスP1のみが圧電素子48に出力されるとノズル23から1ショットのインク滴が吐出されて記録紙M1に小ドットが形成され、パルスP1,P2が圧電素子48に出力されるとノズル23から2ショットのインク滴が吐出されて記録紙M1に中ドットが形成され、パルスP1,P2,P3が圧電素子48に出力されるとノズル23から3ショットのインク滴が吐出されて記録紙M1に大ドットが形成される。むろん、駆動波形の大きさを変えてドットの大きさを変えることも可能である。
【0029】
図4に例示するキャッピング装置40は、キャップ41、吸引ポンプ45、大気開放バルブ46、昇降装置90、を備え、プラテン38の一端となるホームポジションに対向する位置に設けられている。キャップ41は、略直方体等とされ、上部が開口している。吸引ポンプ45は、キャップ41の底部に接続された伸縮性のチューブ45aに取り付けられている。大気開放バルブ46は、キャップ41の底部に接続された伸縮性のチューブ46aに取り付けられている。昇降装置90は、キャップ41の上面とノズルプレート27面との当接とその解除とを行うためにキャップ41を昇降させる。キャッピング装置40は、ノズル23内のインクの増粘(乾燥)を抑制するために、印刷休止中に印刷ヘッド24をキャッピング装置40に対向するホームポジションに移動させた状態でキャップ41を上昇させてノズルプレート27を封止する。また、キャッピング装置40は、所定のタイミングでノズルプレート27を封止した状態で大気開放バルブ46を閉じ、吸引ポンプ45を駆動することにより、印刷ヘッド24とキャップ41とにより形成される内部空間を負圧にしてノズル23内のインクを強制的に吸引する。この処理は、クリーニングと呼ばれる。
【0030】
図4に例示するノズル検査装置50は、電極52、電圧印加回路54、電圧検出回路56、比較回路57、等を備える。電極52、電圧印加回路54、及び、電圧検出回路56は、電気的変化検出手段U2を構成する。比較回路57及びコントローラー70は、判定手段U3を構成する。
電極52は、キャップ41内に配置されている。電極52は、メッシュ状のステンレス等とすることができる。電極52の上側には、インク滴が着弾するインク吸収体(例えば導電性スポンジ)が設けられてもよい。電極52の下側には、下方に透過したインクを吸収するインク吸収体(例えばフェルトといった不織布)が設けられてもよい。ノズル検査装置50は、ノズル23から帯電したインク滴(FL1)をキャップ41内に吐出することによってインク滴(FL1)がキャップ41に着弾する際に電極52に生じる電圧変化ΔV1を検出することにより、ノズル23からインク滴(FL1)が正常に吐出されたか否かを判定する。
【0031】
電圧印加回路54は、プリンター20の内部で引き回される数ボルトの電気配線の電圧を昇圧回路で数百ボルトや千数百ボルトの直流電圧に昇圧した高圧電源Veが抵抗回路R1(例えば1MΩの抵抗素子)とスイッチSW1とを順に介して電極52に接続されている。スイッチSW1をオンにすると電極52と高圧電源Veとを接続することができ、スイッチSW1をオフにすると電極52から高圧電源Veを切り離してグランドに接地することができる。一方、印刷ヘッド24のノズルプレート27は、メカフレーム80と共にグランドに接地されている。従って、スイッチSW1がオンの時、ノズルプレート27と電極52との間には電位差が生じる。
【0032】
電圧検出回路56は、電極52に接続され、電極52で発生する電圧変化を検出するための回路とされている。検出する電圧変化は、電圧検出回路56に入力される電圧信号の最高電圧と最低電圧との差などとすることができる。また、電圧検出回路56は、入力されるアナログ電圧をA/D変換部(アナログ−デジタル変換部)でデジタル値に変換してもよい。帯電したインク滴がキャップ41に着弾する際に電極52に生じる電圧変化を大きくするため、電極52に生じた電圧波形のピーク値を抽出してホールドし、該ホールドしたピーク値を積算し、該積算した電圧信号を増幅してもよい。このような増幅信号も、本技術の電圧変化(電気的変化)ΔV1に含まれる。
【0033】
比較回路57は、電圧検出回路56で検出される電圧変化ΔV1と対比するための閾値Vrefをコントローラー70から入力して保持する。そして、電圧変化ΔV1と閾値Vrefとを対比して、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも高い(閾値Vrefから高い側である)時にハイレベルHの電圧の判定信号(対比結果)Voutをコントローラー70へ出力し、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも低い(閾値Vrefから低い側である)時にローレベルLの電圧の判定信号(対比結果)Voutをコントローラー70へ出力する。ここで、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも高いことには、電圧変化ΔV1が閾値Vref以上であること、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも大きいこと、の両方が含まれる。電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも低いことには、電圧変化ΔV1が閾値Vref以下であること、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも小さいこと、の両方が含まれる。比較回路57は、閾値Vrefを閾値レジスターに記憶し、電圧変化ΔV1のデジタル値と閾値レジスターの閾値Vrefとを電圧比較部で比較し、比較結果(対比結果)を比較結果レジスターに記憶し、この比較結果レジスターの比較結果を判定信号Voutとしてコントローラー70へ出力してもよい。この比較結果は、例えば、電圧変化のデジタル値が閾値Vrefよりも高い時にHを表す「1」とし、電圧変化のデジタル値が閾値Vrefよりも低い時にLを表す「0」とすればよい。
以上より、コントローラー70は、比較回路57から入力されるH又はLの2値の判定信号Voutに基づいて電圧変化ΔV1の閾値Vrefを変え、該変えた閾値Vrefと電圧変化ΔV1との対比結果が表された判定信号Voutに従ってノズル23の状態が正常であるか否かを判定する。
【0034】
電極52に生じる電圧変化ΔV1は、ノズル23からインク滴が吐出されなかったり通常よりも小さかったりしたときには正常にインク滴が吐出されたときに比べて小さくなる。そこで、これを区別する閾値Vrefを設定することにより、ノズル23の状態が正常であるか否かを判定することができる。
【0035】
図2,4に例示するコントローラー70は、CPU(Central Processing Unit)72、ROM(Read Only Memory)73、RAM(Random Access Memory)74、不揮発性メモリー75、I/F(インターフェイス)76、入出力ポート、等を備え、プリンター20全体を制御する。ROM73は、ノズル検査プログラムを含む各種処理プログラムを記憶している。このノズル検査プログラムは、コンピューターであるコントローラー70を判定手段U3として機能させる。ノズル検査プログラムは、コンピューター読み取り可能な外部の記録媒体に記録されてもよい。RAM74は、印刷バッファー領域が設けられており、この印刷バッファー領域にホスト装置10からI/F76を介して送られてきた印刷データを一時的に記憶する。不揮発性メモリー75には、フラッシュメモリー等を用いることができる。I/F76は、ホスト装置10からの印刷ジョブを入力したり、ホスト装置10への印刷ステータス情報等を出力したりする。入力ポートには、比較回路57からの判定信号Vout、リニア式エンコーダー36からのキャリッジ22のポジション信号、等が入力される。コントローラー70は、マスク回路47や圧電素子48を含む印刷ヘッド24への制御信号、スイッチSW1への切替信号、ヘッド駆動波形生成回路60への制御信号、駆動モーター33への駆動信号、キャリッジモーター34aへの駆動信号、昇降装置90への駆動信号、閾値Vref、等を出力ポートから出力する。本コントローラー70は、吐出手段U1及び判定手段U3の一部を構成する。
ホスト装置10は、パーソナルコンピューター等のコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、等が考えられる。
【0036】
次に、図5を参照して、コントローラー70で行われるノズル検査処理の例を説明する。この処理は、例えば、ノズル検査が指示されたときに実行される。ノズル検査の指示には、ユーザーからプリンター20へのノズル検査を指示するための所定の操作入力、ホスト装置10からプリンター20へのノズル検査を指示するための所定の信号入力、等が含まれる。また、電源投入時、ホスト装置10から印刷ジョブを受信した時、記録紙M1への1ページの印刷終了時、記録紙M1への所定ページ数の印刷終了時、キャリッジ主走査の所定パス数の終了時、等にノズル検査処理を実行してもよい。
【0037】
ノズル検査処理が開始すると、コントローラー70は、キャリッジモーター34aを駆動してキャリッジ22をホームポジションに移動させる(ステップS102。以下、「ステップ」の記載を省略)。これにより、印刷ヘッド24のノズルプレート27とキャッピング装置40とが互いに向かい合う状態となる。S104では、スイッチSW1をオン側に切り替えて電圧印加回路54をオンにし、電極52に高圧電源Veの電圧を印加する。S106では、メンテナンス処理の実行回数を表すカウンターCをRAM74に設け、このカウンターCに1を代入する。S108では、後述するノズル判定処理を行い、判定結果をRAM74等のメモリーに格納する。このS108を行うコントローラー70は、比較回路57とともに判定手段U3を構成する。
【0038】
S110では、ノズル、好ましくは全ノズルの状態が正常であるか否かを判断する。例えば、RAM74等のメモリーに格納された判定結果が正常であることを表す情報であるか否かを判断すればよい。条件成立時、コントローラー70は、スイッチSW1をオフ側に切り替えて電圧印加回路54をオフにして電極52から切り離し(S120)、ノズル検査処理を終了させる。
【0039】
正常状態でないノズルが存在する条件不成立時、コントローラー70は、カウンターCがカウンター閾値Crefを超えているか否かを判断する(S112)。カウンター閾値Crefは、メンテナンス処理の繰り返し回数の上限として設定されるものであり、例えば2回等のように定められる。C≦Crefの場合、コントローラー70は、例えばクリーニング処理といったメンテナンス処理を行う(S114)。クリーニング処理では、ノズルプレート27を封止した状態で印刷ヘッド24とキャップ41とにより形成される内部空間を負圧にしてノズル23内のインクを強制的に吸引する。これにより、ノズル23内に詰まったインクが吸引除去される。メンテナンス処理の際には、ワイピング処理など吸引動作を含まないメンテナンス処理を行ってもよい。ワイピング処理は、キャップ41の傍ら等に設けられるワイパーでノズル面(ノズルプレート27)を拭き取る処理である。メンテナンス処理後、コントローラー70は、カウンターCに1を加え(S116)、処理をS108に戻す。
【0040】
一方、S112でC>Crefであった場合、メンテナンス処理を繰り返したにもかかわらずノズル23の状態が正常にならないため、コントローラー70は、操作パネル79の表示部にノズルの異常状態が解消されない旨のエラー表示を行う(S118)。その後、コントローラー70は、電圧印加回路54をオフにして(S120)、ノズル検査処理を終了させる。
【0041】
(3)第一のノズル判定処理:
次に、図6〜9を参照して、S108で行われ得る第一のノズル判定処理を説明する。本処理は印刷ヘッド24に設けられた全ノズル23を対象として行われるが、簡略化のため、ノズル列43C,43M,43Y,43Kのいずれか一つ(例えばノズル列43K)の180ノズル(23K)を対象として説明する。なお、ノズル列43別にノズル判定処理を行う場合には、ノズル列43C,43M,43Y,43Kのそれぞれについて図6のノズル判定処理を行えばよい。ここで、紙面の都合上、判断処理を六角形で示し、閾値よりも高いことを「以上」と記載し、閾値よりも低いことを「以下」で記載している。従って、「以上」の記載は「より大」であることが含まれ、「以下」の記載は「より小」であることが含まれる。また、図6のフローチャートに示される「a」は、ノズルの全数Ntに対して閾値Vrefよりも高いノズルの数Nuの割合Nu/Ntを百分率で示している。「b」は、全ノズルから選択された評価ノズルの数Neに対して閾値Vrefよりも高いノズルの数Nuの割合Nu/Neを百分率で示している。「NG判定」は、目詰まり状態や不安定状態といった正常状態でないノズルが含まれているとの判定を示している。これらの前提は、以下の説明でも同様である。
本処理は、概略、最初に下限値Vlowを閾値Vrefに設定して各ノズルの状態を判定し、必要に応じて次に上限値Vtypを閾値Vrefに設定して各ノズルの状態を判定し、必要に応じてさらにVr1、Vr2、Vr3(0<Vlow<Vr3<Vr2<Vr1<Vtyp)の降順に閾値Vrefに設定して各ノズルの状態を判定する。
【0042】
用意する閾値の数や値は、プリンターの機種等に応じて様々に設定可能である。図8(a)に示す例では、Vlow=0.3Vtyp、Vr1=0.8Vtyp、Vr2=0.6Vtyp、Vr3=0.4Vtyp、であることが示されている。図8(b)は、図6のノズル判定処理の各処理の切り替わりがどのような電圧変化ΔV1であるときに行われるかを示している。
【0043】
第一のノズル判定処理が開始すると、コントローラー70は、下限値Vlowを閾値Vrefとして比較回路57へ出力することにより閾値Vrefを下限値Vlowに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる(S210)。このとき、コントローラー70は、図7に示すノズル単位判定処理を行ってノズル毎に電圧変化ΔV1と閾値Vrefとの対比結果を表す判定信号Voutを入力して対応する情報をRAM74等のメモリーに格納する。
【0044】
図7に示すノズル単位判定処理が開始すると、コントローラー70は、判定対象ノズルの設定回数を表すカウンターnをRAM74に設け、このカウンターnに1を代入する(S132)。S134では、第nノズルから所定ショット数のインク滴が吐出されるように印刷ヘッド24を制御する。前記所定ショット数は、マスク回路47から圧電素子48に全パルスP1〜P3を出力する処理を8回繰り返す計24ショット等、プリンターの機種等に応じて設定すればよい。このとき、電圧検出回路56は、第nノズルからのインク滴吐出により生じる電圧変化ΔV1を検出する。比較回路57は、この電圧変化ΔV1と閾値Vrefとを対比し、ΔV1がVrefよりも高い場合にHの判定信号Voutを生成してコントローラー70へ出力し、ΔV1がVrefよりも低い場合にLの判定信号Voutを生成してコントローラー70へ出力する。
【0045】
コントローラー70は、入力ポートに入力される判定信号Voutの状態を読み(S136)、判定信号Voutの状態に応じて処理を分岐させる(S138)。コントローラー70は、判定信号Voutの状態がLであれば第nノズルを正常状態でないノズルとしてRAM74等のメモリーに登録する(S140)。S142では、カウンターnがカウンター閾値Nrefを超えているか否かを判断する。カウンター閾値Nrefは、状態を判定するノズル数として設定されるものであり、180の全ノズルの状態を判定する場合には180に定められる。n≦Nrefの場合、コントローラー70は、カウンターnに1を加え(S144)、処理をS134に戻す。一方、n>Nrefの場合、コントローラー70は、ノズル単位判定処理を終了させる。このようにして、ノズル毎に正常状態であるか否かが判定される。
【0046】
S210においてa<100%の場合、正常状態でないノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をRAM74等のメモリーに格納して(S212)、ノズル判定処理を終了させる。例えば、180の判定信号Voutに1〜180のLの信号が含まれる場合、a<100%となる。図9(a)に示すように、a<100%は、判定したノズルに目詰まり状態と考えられる下限値Vlow以下のノズルが含まれることを意味する。この場合、図5のS114でクリーニングといったメンテナンス処理が行われ得る。
【0047】
a=100%の場合、図8(b)の「S210→S220」に示すように、全ノズルの電圧変化ΔV1が下限値Vlow以上であることを意味する。この場合、S220において、上限値Vtypを閾値Vrefとして比較回路57へ出力することにより閾値VrefをVtypに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる。
このようにして、プリンター20は、下限値Vlowをノズル毎に検出される電圧変化ΔV1と対比し、下限値Vlowよりも低い電圧変化ΔV1が検出されたノズルの状態を正常でないと判定し、下限値Vlowよりも低い電圧変化ΔV1が存在しない場合に閾値Vrefを下限値Vlowよりも大きい値に変えて該変えた閾値Vrefと電圧変化ΔV1とを対比してノズル23の状態を判定する。
【0048】
S220においてa=100%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をRAM74等のメモリーに格納して(S222)、ノズル判定処理を終了させる。例えば、180の全判定信号VoutがHである場合、a=100%となる。図9(b)に示すように、a=100%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられる上限値Vtyp以上のノズルであることを意味する。この場合、図5のノズル検査処理でメンテナンス処理は行われない。
【0049】
0%<a<100%の場合、判定したノズルにVtyp以上のノズルもあればVtyp以下のノズルもあることを意味する。この段階では、ノズル毎の電圧変化ΔV1がVtyp付近の正常範囲内でばらついているだけであるのか、不安定状態や目詰まり状態のノズルが存在するのか、判らない。そこで、S224において、Vr1=0.8Vtypを閾値Vrefとして比較回路57へ出力することにより閾値VrefをVr1=0.8Vtypに設定し、Vtyp以下の評価ノズルについてのみ比較回路57から判定信号Voutを入手して、b=Nu/Neに応じて処理を分岐させる。このとき、コントローラー70は、図7に示すようなノズル単位判定処理を行って評価ノズル毎に電圧変化ΔV1と閾値Vrefとの対比結果を表す判定信号Voutを入力して対応する情報をRAM74等のメモリーに格納する。
【0050】
S224においてb=100%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をRAM74等のメモリーに格納して(S226)、ノズル判定処理を終了させる。図9(c)に示すように、b=100%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられるVr1=0.8Vtyp以上のノズルであることを意味する。
b<100%の場合、図9(d)に示すように、一部のノズルはVr1=0.8Vtyp以下である一方、一部のノズルはVtyp以上である。正常状態と考えられるVtyp以上のノズルを基準とすると、Vr1=0.8Vtyp以下のノズルは不安定状態又は目詰まり状態と考えられるノズルであることを意味する。そこで、コントローラー70は、正常状態でないノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をRAM74等のメモリーに格納して(S228)、ノズル判定処理を終了させる。
【0051】
S220においてa=100%の場合、図8(b)の「S220→S230」に示すように、全ノズルの電圧変化ΔV1がVlow〜Vtypであることを意味する。この場合、S230において、Vr1=0.8Vtypを閾値Vrefとして比較回路57へ出力することにより閾値VrefをVr1=0.8Vtypに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる。設定する閾値は、S224で設定する閾値と異なっていてもよい。
このようにして、プリンター20は、上限値Vtypを電圧変化ΔV1と対比し、上限値Vtypよりも低い電圧変化ΔV1が存在しない場合に複数のノズルの状態が正常であると判定し、上限値Vtypよりも低い電圧変化ΔV1が存在する場合に閾値Vrefを上限値Vtypよりも小さい値に変えて該変えた閾値Vrefと電圧変化ΔV1とを対比してノズルの状態を判定する。
【0052】
S230においてa=100%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をRAM74等のメモリーに格納して(S232)、ノズル判定処理を終了させる。図9(e)に示すように、a=100%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられる0.8Vtyp〜Vtypのノズルであることを意味する。
【0053】
0%<a<100%の場合、Vr1以上のノズルとVr1以下のノズルの両方が存在する。この場合、S234において、閾値VrefをVr2=0.6Vtypに設定し、Vr1=0.8Vtyp以下の評価ノズルについてのみ比較回路57から判定信号Voutを入手して、b=Nu/Neに応じて処理を分岐させる。b=100%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S236)、ノズル判定処理を終了させる。図9(f)に示すように、b=100%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられるVr2〜Vtypのノズルであることを意味する。
b<100%の場合、図9(g)に示すように、一部のノズルはVr2=0.6Vtyp以下である一方、一部のノズルはVr1=0.8Vtyp以上である。正常状態と考えられる0.8Vtyp以上のノズルを基準とすると、0.6Vtyp以下のノズルは不安定状態又は目詰まり状態と考えられるノズルであることを意味する。そこで、コントローラー70は、正常状態でないノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S238)、ノズル判定処理を終了させる。
【0054】
S230においてa=100%の場合、図8(b)の「S230→S240」に示すように、全ノズルの電圧変化ΔV1がVlow〜0.8Vtypであることを意味する。この場合、S240において、閾値VrefをVr2=0.6Vtypに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる。設定する閾値は、S234で設定する閾値と異なっていてもよい。a=100%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S242)、ノズル判定処理を終了させる。図9(h)に示すように、a=100%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられる0.6Vtyp〜0.8Vtypのノズルであることを意味する。
【0055】
0%<a<100%の場合、Vr2以上のノズルとVr2以下のノズルの両方が存在する。この場合、S244において、閾値VrefをVr3=0.4Vtypに設定し、Vr2=0.6Vtyp以下の評価ノズルについてのみ比較回路57から判定信号Voutを入手して、b=Nu/Neに応じて処理を分岐させる。b=100%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S246)、ノズル判定処理を終了させる。図9(i)に示すように、b=100%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられるVr3〜Vr1のノズルであることを意味する。
b<100%の場合、図9(j)に示すように、一部のノズルはVr3=0.4Vtyp以下である一方、一部のノズルはVr2=0.6Vtyp以上である。正常状態と考えられる0.6Vtyp以上のノズルを基準とすると、0.4Vtyp以下のノズルは不安定状態又は目詰まり状態と考えられるノズルであることを意味する。そこで、コントローラー70は、正常状態でないノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S248)、ノズル判定処理を終了させる。
【0056】
S240においてa=100%の場合、図8(b)の「S240→S250」に示すように、全ノズルの電圧変化ΔV1がVlow〜0.6Vtypであることを意味する。この場合、S250において、閾値VrefをVr3=0.4Vtypに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる。設定する閾値は、S244で設定する閾値と異なっていてもよい。0%<a≦100%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S252)、ノズル判定処理を終了させる。図9(k)に示すように、0%<a≦100%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられるVlow〜0.6Vtypのノズルであることを意味する。
【0057】
a=0%の場合、図9(l)に示すように、全ノズルの電圧変化ΔV1がVlow〜0.4Vtypであることを意味する。しかし、全体に電圧変化ΔV1が小さいので、コントローラー70は、正常状態でないノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S254)、ノズル判定処理を終了させる。むろん、プリンターの機種等によっては全ノズルの状態が正常であると判定してもよい。
【0058】
以上説明したように、閾値Vrefが電圧変化ΔV1との対比結果(判定信号Vout)に基づいて変えられて電圧変化ΔV1と対比されることにより、ノズルの状態が正常であるか否かが判定される。従って、本態様は、正常状態のノズルによる電圧変化ΔV1のばらつきに応じてノズルの状態を判定することができ、ノズルの状態の判定精度を向上させることができる。
また、閾値Vrefの下限及び上限を除いて降順となるように閾値Vrefが変わるので、本態様は、ノズルの状態の判定処理を効率よく実行することができる。
さらに、S224,S234,S244の処理は複数のノズルの中から判定信号Voutに基づいて選択したノズルについてのみ行われるので、本態様は、ノズルの状態の判定処理を迅速化させることができる。
【0059】
(4)第二のノズル判定処理:
次に、図10〜12を参照して、S108で行われ得る第二のノズル判定処理を説明する。本処理は、概略、最初に上限値Vtypを閾値Vrefに設定して各ノズルの状態を判定し、必要に応じて次に下限値Vlowを閾値Vrefに設定して各ノズルの状態を判定し、必要に応じてさらにVr1、Vr3、Vr5(0<Vlow<Vr1<Vr3<Vr5<Vtyp)の昇順に閾値Vrefに設定して各ノズルの状態を判定する。用意する閾値の数や値は、プリンターの機種等に応じて様々に設定可能である。図11(a)に示す例では、Vlow=0.3Vtyp、Vr1=0.5Vtyp、Vr2=0.6Vtyp、Vr3=0.7Vtyp、Vr4=0.8Vtyp、Vr5=0.9Vtyp、であることが示されている。図11(b)は、図10のノズル判定処理の各処理の切り替わりがどのような電圧変化ΔV1であるときに行われるかを示している。
【0060】
第二のノズル判定処理が開始すると、コントローラー70は、閾値Vrefを上限値Vtypに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる(S310)。このとき、コントローラー70は、図7に示すノズル単位判定処理を行ってノズル毎に電圧変化ΔV1と閾値Vrefとの対比結果を表す判定信号Voutを入力して対応する情報をメモリーに格納する。S310においてa=100%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S312)、ノズル判定処理を終了させる。図12(a)に示すように、a=100%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられる上限値Vtyp以上のノズルであることを意味する。この場合、図5のノズル検査処理でメンテナンス処理は行われない。
【0061】
a<100%の場合、図11(b)の「S310→S320」に示すように、判定したノズルに上限値Vtyp以下のノズルが含まれていることを意味する。この場合、S320において、閾値Vrefを下限値Vlowに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる。
このようにして、プリンター20は、上限値Vtypを電圧変化ΔV1と対比し、上限値Vtypよりも低い電圧変化ΔV1が存在しない場合に複数のノズルの状態が正常であると判定し、上限値Vtypよりも低い電圧変化ΔV1が存在する場合に閾値Vrefを上限値Vtypよりも小さい値に変えて該変えた閾値Vrefと電圧変化ΔV1とを対比してノズルの状態を判定する。
【0062】
S320においてa<100%の場合、正常状態でないノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S322)、ノズル判定処理を終了させる。図12(b)に示すように、a<100%は、判定したノズルに目詰まり状態と考えられる下限値Vlow以下のノズルが含まれることを意味する。この場合、図5のS114でクリーニングといったメンテナンス処理が行われ得る。
【0063】
a=100%の場合、図11(b)の「S320→S330」に示すように、全ノズルの電圧変化ΔV1が下限値Vlow以上であることを意味する。この場合、S330において、閾値VrefをVr1=0.5Vtypに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる。
このようにして、プリンター20は、下限値Vlowをノズル毎に検出される電圧変化ΔV1と対比し、下限値Vlowよりも低い電圧変化ΔV1が検出されたノズルの状態を正常でないと判定し、下限値Vlowよりも低い電圧変化ΔV1が存在しない場合に閾値Vrefを下限値Vlowよりも大きい値に変えて該変えた閾値Vrefと電圧変化ΔV1とを対比してノズル23の状態を判定する。
【0064】
S330においてa=0%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S332)、ノズル判定処理を終了させる。図12(c)に示すように、a=0%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられるVlow〜0.5Vtypのノズルであることを意味する。
【0065】
0%<a<100%の場合、Vr1以上のノズルとVr1以下のノズルの両方が存在する。この段階では、ノズル毎の電圧変化ΔV1がVr1付近の正常範囲内でばらついているだけであるのか、不安定状態のノズルが存在するのか、判らない。そこで、S334において、閾値VrefをVr2=0.6Vtypに設定し、Vr1=0.5Vtyp以上の評価ノズルについてのみ比較回路57から判定信号Voutを入手して、b=Nu/Neに応じて処理を分岐させる。このとき、コントローラー70は、図7に示すようなノズル単位判定処理を行って評価ノズル毎に電圧変化ΔV1と閾値Vrefとの対比結果を表す判定信号Voutを入力して対応する情報をメモリーに格納する。b=0%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S336)、ノズル判定処理を終了させる。図12(d)に示すように、b=0%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられるVlow〜Vr2のノズルであることを意味する。
b>0%の場合、図12(e)に示すように、一部のノズルはVr1=0.5Vtyp以下である一方、一部のノズルはVr2=0.6Vtyp以上である。正常状態と考えられる0.6Vtyp以上のノズルを基準とすると、0.5Vtyp以下のノズルは不安定状態の可能性が大きいノズルであることを意味する。そこで、コントローラー70は、正常状態でないノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S338)、ノズル判定処理を終了させる。
【0066】
S330においてa=100%の場合、図11(b)の「S330→S340」に示すように、全ノズルの電圧変化ΔV1が0.5Vtyp以上であることを意味する。この場合、S340において、閾値VrefをVr3=0.7Vtypに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる。a=0%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S342)、ノズル判定処理を終了させる。図12(f)に示すように、a=0%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられる0.5Vtyp〜0.7Vtypのノズルであることを意味する。
【0067】
0%<a<100%の場合、Vr3以上のノズルとVr3以下のノズルの両方が存在する。この場合、S344において、閾値VrefをVr4=0.8Vtypに設定し、Vr3=0.7Vtyp以上の評価ノズルについてのみ比較回路57から判定信号Voutを入手して、b=Nu/Neに応じて処理を分岐させる。b=0%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S346)、ノズル判定処理を終了させる。図12(g)に示すように、b=0%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられるVr1〜Vr4のノズルであることを意味する。
b>0%の場合、図12(h)に示すように、一部のノズルはVr3=0.7Vtyp以下である一方、一部のノズルはVr4=0.8Vtyp以上である。正常状態と考えられる0.8Vtyp以上のノズルを基準とすると、0.7Vtyp以下のノズルは不安定状態の可能性が大きいノズルであることを意味する。そこで、コントローラー70は、正常状態でないノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S348)、ノズル判定処理を終了させる。
【0068】
S340においてa=100%の場合、図11(b)の「S340→S350」に示すように、全ノズルの電圧変化ΔV1が0.7Vtyp以上であることを意味する。この場合、S350において、閾値VrefをVr5=0.9Vtypに設定し、全ノズルについて比較回路57から判定信号Voutを入手して、a=Nu/Ntに応じて処理を分岐させる。a=0%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S352)、ノズル判定処理を終了させる。図12(i)に示すように、a=0%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられる0.7Vtyp〜0.9Vtypのノズルであることを意味する。
【0069】
0%<a<100%の場合、Vr5以上のノズルとVr5以下のノズルの両方が存在する。この場合、S354において、閾値Vrefを上限値Vtypに設定し、Vr5=0.9Vtyp以上の評価ノズルについてのみ比較回路57から判定信号Voutを入手して、b=Nu/Neに応じて処理を分岐させる。b=0%の場合、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S356)、ノズル判定処理を終了させる。図12(j)に示すように、b=0%は、判定した全ノズルが正常状態と考えられるVr3〜Vtypのノズルであることを意味する。
b>0%の場合、図12(k)に示すように、一部のノズルはVr5=0.9Vtyp以下である一方、一部のノズルは上限値Vtyp以上である。正常状態と考えられるVtyp以上のノズルを基準とすると、0.9Vtyp以下のノズルは不安定状態の可能性が大きいノズルであることを意味する。そこで、コントローラー70は、正常状態でないノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S358)、ノズル判定処理を終了させる。
【0070】
S350においてa=100%の場合、図11(b)の「S350→S360」及び図12(l)に示すように、全ノズルの電圧変化ΔV1が0.9Vtyp以上であることを意味する。この場合、コントローラー70は、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S360)、ノズル判定処理を終了させる。
【0071】
以上説明したように、閾値Vrefの下限及び上限を除いて昇順となるように閾値Vrefが変わるので、本態様は、ノズルの状態の判定処理を効率よく実行することができ、ノズルの状態の判定精度を向上させることができる。
また、S334,S344,S354の処理は複数のノズルの中から判定信号Voutに基づいて選択したノズルについてのみ行われるので、本態様は、ノズルの状態の判定処理を迅速化させることができる。
【0072】
(5)第三のノズル判定処理:
次に、図13〜16を参照して、S108で行われ得る第三のノズル判定処理を説明する。本処理は、概略、ノズル列に含まれる一部のノズルについて、閾値を変えて該変えた閾値と電圧変化ΔV1とを対比して全ノズルによる電圧変化ΔV1と対比する閾値Vrefを決定し、該決定した閾値Vrefと電圧変化ΔV1とを対比してノズルの状態が正常であるか否かを判定する。
【0073】
図13は、第三のノズル判定処理の概念を模式的に例示している。
例えば、1列が180ノズルの印刷ヘッドの場合、5%の9ノズルを先に検査することにする。先に検査する9ノズルは、初期設定のノズルでもよいし、ランダムに選択されるノズルでもよい。ここで、先に検査するノズルを「指定ノズル」と呼ぶことにし、全ノズル23の番号をnで表し、指定ノズルの番号をNo.で表すことにする。図13の例では、n=1、n=21、…、n=161の9ノズルが指定ノズルNo.1、No.2、…、No.9とされている。次に、指定ノズル毎に、閾値Vrefを上限値Vtyp、0.9Vtyp、0.8Vtyp、…の順に変えてノズル検査を行い、指定ノズルの状態がNGから正常、すなわち、判定信号VoutがLからHに切り替わる電圧変化ΔV1のレベルを求める。このレベルを、限界信号レベルと呼ぶことにする。限界信号レベルは、上限値Vtypの10%刻みで求まる。
以上の結果から、全ノズルに対して行うノズル検査の閾値Vrefを決定し、この決定した閾値Vrefに変えて全ノズル(例えば180ノズル)の検査を行う。閾値Vref以下のノズルは、目詰まり状態又は不安定状態であると判定される。
【0074】
図13の中段左側に示すように指定ノズルの電圧変化ΔV1が全体に高い場合、全ノズルの電圧変化ΔV1も全体に高い可能性が大きい。この場合、図13の中段右側に示すように、閾値Vrefを比較的高く設定してノズル検査を行うことにする。
一方、図13の下段左側に示すように指定ノズルの電圧変化ΔV1が全体に低い場合、全ノズルの電圧変化ΔV1も全体に低い可能性が大きい。この場合、図13の下段右側に示すように、閾値Vrefを比較的低く設定してノズル検査を行うことにする。
【0075】
図14,15は、S108で行われる第三のノズル判定処理をフローチャートにより例示している。ノズル判定処理が開始すると、コントローラー70は、判定対象の指定ノズルの設定回数を表すカウンターNをRAM74に設け、このカウンターNに1を代入する(S402)。S404では、カウンターNがカウンター閾値Nsを超えているか否かを判断する。カウンター閾値Nsは、状態を判定する指定ノズル数として設定されるものであり、指定ノズルが9ノズルであればNs=9に定められる。N≦Nsの場合、コントローラー70は、比較回路57の閾値Vrefを上限値Vtypに設定し、閾値Vrefの設定回数を表すカウンターKをRAM74に設け、このカウンターKに1を代入する(S406)。S408では、指定ノズルNo.Nから所定ショット数のインク滴が吐出されるように印刷ヘッド24を制御し、入力ポートに入力される判定信号Voutの状態を読む。このとき、電圧検出回路56は、指定ノズルNo.Nからのインク滴吐出により生じる電圧変化ΔV1を検出する。比較回路57は、この電圧変化ΔV1と閾値Vrefとを対比し、ΔV1がVrefよりも高い場合にHの判定信号Voutを生成してコントローラー70へ出力し、ΔV1がVrefよりも低い場合にLの判定信号Voutを生成してコントローラー70へ出力する。S410では、判定信号Voutの状態に応じて処理を分岐させる。
【0076】
判定信号Voutの状態がL、すなわち、電圧変化ΔV1が閾値Vref以下である場合、コントローラー70は、比較回路57の閾値Vrefを{1−(K/10)}Vtypに変え、カウンターKに1を加える(S416)。これにより、設定される閾値Vrefが上限値Vtypの10%刻みで小さくなる。S418では、K/10が下限値Vlowよりも小さいか否かを判断する。K/10<Vlowの場合、指定ノズルNo.Nが目詰まり状態と考えられる。そこで、コントローラー70は、正常状態でない指定ノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S420)、ノズル判定処理を終了させる。この場合、図5のS114でクリーニングといったメンテナンス処理が行われ得る。一方、K/10≧Vlowの場合、コントローラー70は、処理をS408に戻す。
S410において判定信号Voutの状態がH、すなわち、電圧変化ΔV1が閾値Vref以上であった場合、コントローラー70は、現在の閾値Vrefを限界信号レベルが表された指定ノズルNo.N値としてRAM74等のメモリーに格納し(S412)、カウンターNに1を加えて(S414)、処理をS404に戻す。これにより、Ns=9個の指定ノズルNo.1〜No.Nsについて、限界信号レベルを表す指定ノズルNo.N値が得られる。
【0077】
S404においてN>Nsの場合、コントローラー70は、処理を図15のS432に進める。S432では、No.1値からNo.Ns値までの指定ノズルNo.N値の相加平均(平均値A)を求める。S434では、指定ノズルNo.Nの最大値Max(No.1値,…,No.Ns値)を平均値Aで割ったMax率を求める。
S436では、Max率が所定倍率MF1以下であるか否かを判断する。MF1は、1よりも大きい所定倍率であり、1.2等とされる。Max率≦MF1の場合、コントローラー70は、平均値Aに所定倍率MF2を乗じた値を閾値Vrefとして決定し、Vref=A×MF2を比較回路57へ出力し(S442)、処理をS444に進める。MF2は、0よりも大きく1よりも小さい所定倍率であり、0.8等とされる。A×MF2が比較回路57へ出力されることにより、比較回路57の閾値Vrefが変えられることになる。
【0078】
S436においてMax率>MF1の場合、コントローラー70は、平均値Aよりも大きい指定ノズルNo.N値の相加平均(平均値B)を求める(S438)。S440では、平均値Bに所定倍率MF2を乗じた値を閾値Vrefとして決定し、Vref=B×MF2を比較回路57へ出力する。上述したように、MF2は、0よりも大きく1よりも小さい所定倍率であり、0.8等とされる。B×MF2が比較回路57へ出力されることにより、比較回路57の閾値Vrefが変えられることになる。
【0079】
図16(a)〜(d)は、上述したステップS432〜S442における閾値決定の概念を模式的に例示している。ここで、各指定ノズルの電圧変化ΔV1、平均値A,B、A×MF2、B×MF2は、上限値Vtypを100%とする百分率で示している。また、白丸は正常状態であるとの判定、×印は正常状態でないとの判定、黒丸は正常状態であるとの誤判定を示している。
図16(a)の場合、A=93.3%であるので、Max率は100/93.3=107.1%となる。このMax率はMF1=1.2よりも小さいので、Vref=A×MF2=74.7%となる。各指定ノズルの電圧変化ΔV1と閾値Vrefとの対比結果は、電圧変化ΔV1が閾値Vrefよりも低い指定ノズルNo.3のみ正常状態でないとの判定となる。むろん、指定ノズルについての対比結果の傾向は、全ノズルについての対比結果に当てはまる。100%の電圧変化ΔV1に対して60%の電圧変化ΔV1のノズルは不安定状態と考えられ、Vref=74.7%は適切な閾値と考えられる。
【0080】
図16(b)の場合、目詰まり状態と考えられる20%の電圧変化ΔV1の指定ノズルが多く含まれ、A=57.8%である。ここで、A×MF2=46.2%を閾値Vrefとすると、20%の電圧変化ΔV1のノズルは正常状態でないと判定されるものの、60%の電圧変化ΔV1のノズルは正常状態であると判定されてしまう。100%の電圧変化ΔV1に対して60%の電圧変化ΔV1のノズルは不安定状態と考えられ、閾値Vref=46.2%は適切でないと考えられる。そこで、上述したS436〜S440でB×MF2を閾値Vrefとして設定することにしている。図16(b)の例では、Max率100/57.8=173.1%がMF1=1.2よりも大きいので、平均値Bが計算され、Vref=B×MF2=70.4%となる。従って、60%の電圧変化ΔV1の指定ノズルNo.3は、正常状態でないとの判定となる。このように、平均値A以下の指定ノズルNo.N値を除いた平均値Bに所定倍率MF2を乗じることにより、閾値Vrefを適切にすることができる。
【0081】
図16(c)の場合、不安定状態と考えられる60%の電圧変化ΔV1の指定ノズルが多く含まれ、A=66.7%である。ここで、A×MF2=53.3%を閾値Vrefとすると、60%の電圧変化ΔV1のノズルが正常状態であると判定されてしまう。しかし、Max率100/66.7=150.0%がMF1=1.2よりも大きいので、平均値Bが計算され、Vref=B×MF2=72.0%となる。従って、60%の電圧変化ΔV1のノズルは、正常状態でないとの判定となる。
図16(d)の場合、全体に電圧変化ΔV1が小さく、目詰まり状態と考えられる20%の電圧変化ΔV1の指定ノズルが多く含まれ、A=47.8%である。ここで、A×MF2=38.2%を閾値Vrefとすると、不安定状態と考えられる40%の電圧変化ΔV1のノズルが正常状態であると判定されてしまう。しかし、Max率60/47.8=125.6%がMF1=1.2よりも大きいので、平均値Bが計算され、Vref=B×MF2=44.6%となる。従って、40%の電圧変化ΔV1のノズルは、正常状態でないとの判定となる。
【0082】
上述したようにして閾値Vrefを設定したコントローラー70は、図7に示すノズル単位判定処理を行ってノズル毎に電圧変化ΔV1と閾値Vrefとの対比結果を表す判定信号Voutを入力して対応する情報をメモリーに格納する(S444)。S446では、全ノズルの電圧変化ΔV1が閾値Vref以上であったか否かを判断する。閾値Vref以下となったノズルが含まれていれば、コントローラー70は、正常状態でない指定ノズルが含まれているとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S448)、ノズル判定処理を終了させる。この場合、図5のS114でクリーニングといったメンテナンス処理が行われ得る。一方、全ノズルの電圧変化ΔV1が閾値Vref以上であれば、全ノズルの状態が正常であるとの判定結果を表す情報をメモリーに格納して(S450)、ノズル判定処理を終了させる。
【0083】
以上説明したように、一部のノズル23について、変えられた閾値Vrefと電圧変化ΔV1との対比により複数のノズル23による電圧変化ΔV1と対比する閾値Vrefが決定され、複数のノズル23について、決定された閾値Vrefと電圧変化ΔV1とが対比されて状態が判定される。従って、本態様も、ノズル23の状態の判定処理を迅速化させることができる。
むろん、全ノズルに対する指定ノズルの割合や、指定ノズルNo.N値を求めるための閾値の刻み値や、所定倍率MF1,MF2は、プリンターの機種等に応じて適宜変更可能である。
【0084】
(6)変形例:
上述した実施形態は、以下のような形態に変更することもできる。
上記キャップ41は、ノズル列毎など複数のボックスに分割されてもよい。この場合、ボックス毎に電極5を設けてもよく、ボックス単位でクリーニング等のメンテナンス処理を行ってもよい。また、ノズル検査はフラッシング領域等の領域で行われてもよく、この領域に電極52を設けてもよい。
電気的変化を検出する電気的変化検出手段は、ノズル23から吐出される流体による電流変化を検出する回路等で構成されてもよい。
【0085】
上述した処理は、ホスト装置10等、プリンターに接続される外部装置で行われてもよい。この場合、外部装置にノズル検査装置が設けられ、プリンターと外部装置とに跨って流体吐出装置が設けられる。むろん、プリンターと外部装置とが協働して上述した処理を行ってもよい。この場合、プリンターと外部装置とに跨ってノズル検査装置及び流体吐出装置が設けられる。すなわち、プリンターと外部装置を含むシステムで本発明の流体吐出装置を構成してもよい。
上述した処理の各ステップの順番は、適宜、変更可能である。例えば、図5のノズル検査処理において、S114のメンテナンス処理の前にS116のカウンターCの加算処理を行ってもよい。
図6,10のノズル判定処理において、判定信号Voutに基づいて選択したノズルについてのみ行われるS224,S234,S244,S334,S344,S354の処理は、時間がかかるものの全ノズルについて行ってもよい。
【0086】
上述した実施形態では先に電気的変化の閾値Vrefを下限値Vlowや上限値Vtypに設定した後にVlow〜Vtypの途中段階に設定したが、先に閾値VrefをVlow〜Vtypの途中段階に設定して電気的変化と対比した後に下限値Vlowや上限値Vtypに設定して電気的変化と対比し最終的にノズル23の状態が正常であるか否かを判断してもよい。
上述した実施形態では閾値Vrefの下限及び上限を除いて降順又は昇順となるように閾値Vrefを変えたが、これに限定されない。例えば、下限及び上限を除く最初の閾値Vrefを(Vtyp−Vlow)/2に設定し、次に(Vtyp−Vlow)/4単位で閾値Vrefを下側又は上側にずらし、その次に(Vtyp−Vlow)/8単位で閾値Vrefを下側又は上側にずらしてもよい。このようにすれば、ノズル23の状態の判定処理を効率よく実行することができると考えられる。
【0087】
上述した実施形態では閾値Vrefを電気的変化(ΔV1)との対比結果(Vout)に基づいて変えているが、電極52とノズル23との距離(隙間GA1)等に基づいて閾値Vrefを変えてもよい。例えば、キャップ41又は印刷ヘッド24に電極52とノズル23との距離を測定する測距センサーを設け、この測距センサーの検出距離に基づいても、閾値Vrefを変えてノズル23の状態が正常であるか否かを判定することができる。
また、電圧検出回路56で検出される電圧変化ΔV1の値を読み取り可能なコントローラーを用いる場合も、上述した処理を行うことにより、閾値Vrefを変えてノズル23の状態が正常であるか否かを判定することができ、ノズル23の状態の判定精度を向上させることができる。すなわち、本態様は、コントローラーが電圧変化の値を読み取ることができるか否かにかかわらず実施可能であるという、良好な汎用性を有する。
【0088】
印刷装置は、カラーのインクジェット式プリンターの他、単色機、ドットインパクト式プリンター、レーザープリンター、スキャナーや測色機といった読取手段を備える複合機、記録紙の幅方向一杯に長く形成された印刷ヘッドに対して記録紙を搬送して印刷を行うラインプリンター、等でもよい。記録媒体は、紙の他、樹脂シート、金属製フィルム、布、フィルム基板、樹脂基板、半導体ウェハ、光ディスクや磁気ディスクといった記憶媒体、等でもよい。記録媒体の形状は、カットシートの他、長尺状、立体形状、等でもよい。
【0089】
本発明を適用可能な流体吐出装置は、プリンターの他、微小量の液滴を噴射(吐出)する液体吐出ヘッド等を備える液体吐出装置等、インク以外の流体を吐出する装置でもよい。ここでいう液滴は、液体吐出装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くもの等を含まれる。ここでいう液体は、液体吐出装置が吐出させることができるような材料であればよく、例えば、物質が液相であるときの状態のものとして、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、等が含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子といった固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたもの等が含まれる。インクや液晶等は、液体の代表的な例である。前記インクは、一般的な水性インク及び油性インク、並びに、ジェルインク、ホットメルトインク、等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置には、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造等に用いられる電極材や色材といった材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する装置が含まれる。また、液体吐出装置には、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する装置、捺染装置、マイクロディスペンサ、時計やカメラといった精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)等を形成するために紫外線硬化樹脂といった透明樹脂液を基板上に吐出する装置、基板等をエッチングするために酸やアルカリといったエッチング液を吐出する装置、等が含まれる。
また、流体は、非気体の流体が好ましいものの、トナー等の粉粒体でもよい。
【0090】
なお、一つのノズルを対象として閾値を変えてノズルの状態が正常であるか否かを判定する態様も、本発明に含まれる。例えば、繰り返し検出される電気的変化にばらつきがある場合、閾値を変えて電気的変化と対比することにより、繰り返し検出される電気的変化のばらつきが小さい正常状態のノズルであるか否かを判定することができる。
むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる装置、システム、方法、プログラム、等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0091】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、ノズルの状態の判定精度を向上させる技術等を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0092】
10…ホスト装置、20…プリンター、21…プリンター機構、22…キャリッジ、23…ノズル、24…印刷ヘッド、27…ノズルプレート、40…キャッピング装置、41…キャップ、43…ノズル列(ノズル群)、50…ノズル検査装置、52…電極、54…電圧印加回路、56…電圧検出回路、57…比較回路、60…ヘッド駆動波形生成回路、70…コントローラー、80…メカフレーム、90…昇降機構、DR1…主走査方向、DR2…搬送方向、FL1…インク(流体)、GA1…隙間、U1…吐出手段、U2…電気的変化検出手段、U3…判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから流体を吐出する吐出手段と、
前記ノズルから吐出される流体による電気的変化を検出する電気的変化検出手段と、
検出される電気的変化と閾値とを対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定する判定手段とを備え、
前記判定手段が前記閾値を変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定可能とされている、流体吐出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記閾値を前記検出される電気的変化との対比結果に基づいて変える、請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項3】
前記ノズルが複数設けられ、
前記判定手段は、変えられる前記閾値の下限とされた下限値を前記ノズル毎に検出される電気的変化と対比し、前記下限値よりも低い電気的変化が検出されたノズルの状態を正常でないと判定し、前記下限値よりも低い電気的変化が存在しない場合に前記閾値を前記下限値よりも大きい値に変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態を判定する、請求項1又は請求項2に記載の流体吐出装置。
【請求項4】
前記ノズルが複数設けられ、
前記判定手段は、変えられる前記閾値の上限とされた上限値を前記ノズル毎に検出される電気的変化と対比し、前記上限値よりも低い電気的変化が存在しない場合に前記複数のノズルの状態が正常であると判定し、前記上限値よりも低い電気的変化が存在する場合に前記閾値を前記上限値よりも小さい値に変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態を判定する、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項5】
前記判定手段は、変えられる前記閾値の下限及び上限を除いて前記閾値を変える際に降順又は昇順となるように前記閾値を変える、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルが複数設けられ、
前記判定手段は、前記閾値を前記検出される電気的変化との対比結果に基づいて変えた際に前記複数のノズルの中から前記対比結果に基づいて選択したノズルについて、前記変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して状態を判定する、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項7】
前記ノズルが複数設けられ、
前記判定手段は、前記複数のノズルに含まれる一部のノズルについて、前記閾値を変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記複数のノズルによる電気的変化と対比する閾値を決定し、該決定した閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定する、請求項1又は請求項2に記載の流体吐出装置。
【請求項8】
前記電気的変化が前記ノズルから吐出される流体による電圧変化である、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項9】
ノズルから吐出される流体による電気的変化を検出し、検出される電気的変化と閾値とを対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定するノズル検査方法であって、
前記閾値を変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定する、ノズル検査方法。
【請求項10】
ノズルから吐出される流体による電気的変化を検出し、検出される電気的変化と閾値とを対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定するノズル検査プログラムであって、
前記閾値を変えて該変えた閾値と、前記検出される電気的変化と、を対比して前記ノズルの状態が正常であるか否かを判定する機能をコンピューターに実現させる、ノズル検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−213966(P2012−213966A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81691(P2011−81691)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】