説明

流体吐出装置におけるノズル検査装置、流体吐出装置及びノズル検査方法

【課題】検出用電極に対する流体又は流体の乾燥物等の付着物の付着状況によらず、必要
な検査精度を確保できるノズル検査装置、流体吐出装置及びノズル検査方法を提供する。
【解決手段】キャリッジをポジション1に配置するようにCRモータを駆動してキャップ
の高さを調整することで(S110)、記録ヘッドと検出用電極板とのギャップをSG1
とする。ギャップSG1の状態下で、出荷時測定電位である初期電極電位Voutini対する
検出用電極の電極電位Voutの相対値(=電極電位相対値VPout)を計算し(S130)
、VPout≧VP1の成立時はそのままのギャップSG1とし、VPout≧VP1の不成立
時は、VPout≧VP2が成立すれば、ポジション2へのCR駆動(S170)によりギ
ャップをSG2とする。さらにVPout≧VP2の不成立時は、VPout≧VP3が成立す
れば、ポジション3へのCR駆動(S190)によりギャップをSG3とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出手段のノズル目詰まり等に起因して必要量の流体の吐出が不能となった
不良ノズルの有無を、ノズルから流体を吐出して検査する流体吐出装置におけるノズル検
査装置、流体吐出装置及びノズル検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体吐出装置であるインクジェットプリンタでは、記録ヘッド(吐出手
段)のノズルからインクを吐出することで、用紙等のターゲットに印刷が行われる。ノズ
ル内のインクが増粘したりノズル内に気泡が混入したりすると、インクが必要量のインク
を吐出できなくなる不良ノズルが発生し、印刷画像中にドット抜けが起こるなどの不具合
をもたらす。
【0003】
そのため、この種の不良ノズルの有無を検査するノズル検査装置が開示されている。そ
して、ノズル検査装置が不良ノズルを検出した際は、記録ヘッドのノズルに対しクリーニ
ングを行うようになっていた(例えば特許文献1、2等)。
【0004】
例えば特許文献1のノズル検査装置(ノズル詰まり検出装置)では、記録ヘッド(イン
クジェットヘッド)を第一の電極とし、キャッピング部材のノズル覆い穴内の記録ヘッド
に対向する側壁に第二の電極が設けられ、これら第一及び第二の電極間に電源で電圧を印
加した状態で、記録ヘッドから帯電したインク滴を噴射してこのインク滴の通過により第
一及び第二の電極間の電界強度が変化するのを検知する電界検知部が設けられていた。
【0005】
また、特許文献2には、インク飛行経路に向かって射出したレーザ光のノズルから吐出
されたインク滴による遮光の有無を検出して、不良ノズルの有無を検査するレーザ方式の
ノズル検査装置が開示されている。さらに特許文献2には、インク滴を振動板に吐出した
際に振動板のインク滴による振動の有無を調べることによってドット抜けを検査する振動
板検査法を用いたノズル検査装置も開示されている。
【特許文献1】特開昭59−178256号公報
【特許文献2】特開2002−79693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたノズル検査装置では、第二電極がキャッピング部材
に設けられており、検査時には記録ヘッドからキャッピング部材のノズル覆い穴内の第二
の電極に向けてインク滴を吐出する構成であったため、第二の電極にインクが堆積した状
態でノズル検査が行われる場合もあった。しかし、第二の電極のインクやインク乾燥物等
が堆積した状態下では、インク滴吐出時における電界強度の変化を検出した検出波の振幅
(検出電圧振幅)が小さくなることが分かった。検出波の振幅が小さくなると、正常に必
要量のインク滴が噴射されているにも関わらず、そのときの検出値が正常ノズル判定用の
閾値を超えられなくなり、不良ノズルとして検出される場合があった。このように、第二
の電極に対してインクやインク乾燥物の付着状況によって、必要なノズル検査精度が得ら
れなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、検査用電
極に対する流体又は流体の乾燥物等の付着物の付着状況によらず、必要な検査精度を確保
できる流体吐出装置におけるノズル検査装置、流体吐出装置及びノズル検査方法を提供す
ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ターゲットに対して流体を吐出可能なノズルを有する吐出手段を備えた流体
吐出装置において必要量の流体の吐出が不能な不良ノズルの有無を検査するノズル検査装
置であって、前記吐出手段とギャップを隔てて配置される検査用電極と、前記吐出手段と
前記検査用電極との間に電圧を印加して電界を発生させた状態で、前記吐出手段から前記
検査用電極に対して流体を吐出して該流体の吐出に伴う電界強度の変化を検出した検出値
に基づいて不良ノズルの有無を検査する検査手段と、前記検査手段が必要な検査精度が得
られないものとして設定された検査不能状態にあることを検出する検出手段と、前記検査
手段が検査不能状態にあることが検出された場合は、前記吐出手段と前記検査用電極との
うち少なくとも一方を移動させて前記ギャップを前記検査手段が検査可能状態に移行しう
る広さに調整するギャップ調整手段とを備え、前記検査手段は、前記不良ノズルの有無の
検査を少なくとも前記ギャップ調整手段によるギャップ調整後に行うことを要旨とする。
なお、複数のノズルを検査する場合は、ギャップ調整後にそのうち少なくとも一部のノズ
ル検査が行われれば足りる。
【0009】
この発明によれば、検査手段が必要な検査精度が得られないものとして設定された検査
不能状態にあることが検出手段により検出されると、ギャップ調整手段は、吐出手段と検
査用電極とのうち少なくとも一方を移動させて、吐出手段と検査用電極とのギャップを、
検査手段が検査可能状態に移行しうる広さに調整する。このギャップ調整後、検査手段は
、吐出手段から検査用電極に対して流体を吐出するとともに該流体の吐出に伴う吐出手段
と検査用電極との間の電界強度の変化を検出した検出値に基づいて不良ノズルの有無を検
査する。検査用電極に対する流体又は流体の乾燥物等の付着物の付着状況によらず、必要
な検査精度を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図1〜図8に従って説明する。図1は、外装
ケースを取り外したインクジェット式プリンタの斜視図を示す。
図1に示すように、流体吐出装置としてのインクジェット式プリンタ(以下、「プリン
タ11」という)は、略矩形箱状をなす本体フレーム12を備えている。本体フレーム1
2内の下部には、その長手方向に沿ってプラテン13が設けられている。プラテン13上
には、本体フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモータ(以下、「PFモータ14
」という)の駆動に基づき、図示しない紙送り機構により用紙Pが後方側から給送される
ようになっている。
【0011】
また、本体フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方
向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、キャリッジ16が、ガイ
ド軸15の軸線方向に沿って往復移動自在に支持されている。また、本体フレーム12の
後壁内面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17a及び従動
プーリ17bが回転自在に支持されている。駆動プーリ17aにはキャリッジ16を往復
移動させる際の駆動源となるキャリッジモータ(以下、「CRモータ18」という)の出
力軸が連結されると共に、これら一対のプーリ17a,17b間には、キャリッジ16に
連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。したがって、キャリッジ1
6は、ガイド軸15にガイドされながら、CRモータ18の駆動力により無端状のタイミ
ングベルト17を介して主走査方向に移動可能となっている。
【0012】
キャリッジ16の下面側には記録ヘッド19が設けられる一方、キャリッジ16上には
複数種のインク(流体)を貯留するインクカートリッジ20が着脱可能に装填されている

【0013】
また、記録ヘッド19の下面は、多数個(図5では4つのみ図示)のノズル22が開口
するノズル開口面19a(ノズル形成面)となっており、このノズル開口面19aには複
数個(例えば180個)のノズルが一定ピッチで配列されたノズル列が、インクの種類(
例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4種)と同数(例えば4列)設けられて
いる。各ノズル22は、キャリッジ16及び記録ヘッド19内に形成されたインク供給路
23(図5参照)を介してインクカートリッジ20内と連通している。
【0014】
また、インクカートリッジ20からインク供給路23を介して記録ヘッド19へ供給さ
れたインクは、記録ヘッド19内にノズル22毎に設けられた吐出駆動素子24(図5に
示す)が駆動することにより、ノズル22から噴射(吐出)されるようになっている。吐
出駆動素子24は記録ヘッド19の吐出方式に応じたものが使用され、例えば圧電方式で
あれば圧電素子、静電方式であれば静電駆動素子、インクを膜沸騰させた際の気泡の圧力
でインク滴を吐出させる方式の場合はインクを加熱するヒータ等を挙げることができる。
【0015】
また、図1に示すように、本体フレーム12内において用紙Pが至らない非印刷領域と
なるキャリッジ経路上の右端位置は、プリンタ11の印刷停止中にキャリッジ16が待機
するホームポジションとなっている。このホームポジションに位置する際のキャリッジ1
6の直下には、記録ヘッド19のノズル目詰まりを予防・解消するためのクリーニングを
行うメンテナンス装置25が設けられている。
【0016】
図2はメンテナンス装置の模式正面図である。図2に示すように、メンテナンス装置2
5は、昇降機構26と、キャップ27と、ワイパ28と、ロックレバー29と、吸引ポン
プ30(図5参照)とを備えている。昇降機構26は、本体フレーム12の底面に配置さ
れ上側が開口するハウジング31と、ハウジング31の内側に主走査方向及び上下方向に
位置変化可能な斜め方向に移動可能に取り付けられたスライダ32と、スライダ32をホ
ームポジション側から印刷領域側へ向かう方向へ付勢する付勢バネ33とを備えている。
ここで、印刷領域とは、印刷処理中のキャリッジ16が移動する領域を指す。
【0017】
スライダ32はその一対の両側面(図2において紙面直交方向に対向する二面、但し図
2では片面のみ図示)に2本ずつ(但し片面側の2本のみ図示)の案内ピン32aを有し
、各案内ピン32aはハウジング31の両側面に主走査方向及び上下方向に延びる斜状の
経路で貫通形成された一対のガイド孔31aにそれぞれ係入されている。また、スライダ
32の図2における右端上部には、キャリッジ16と係合可能な所定長さを有するロッド
状の被操作部としての係合部32bが少なくとも一本上方へ突出している。
【0018】
キャップ27は、スライダ32上にバネ34により上方へ付勢された状態で所定高さに
位置決めされており、例えば上昇してノズル開口面19aに当接してしたときにバネ34
の付勢力によりノズル開口面19aに圧接されるようになっている。また、合成ゴム等の
弾性材料からなる短冊板状のワイパ28は、スライダ32上におけるキャップ27に対し
印刷領域側隣位置に配置されている。ワイパ28は、ノズル開口面19aにおける全ノズ
ルを含む所定エリアを払拭可能となっている。
【0019】
キャリッジ16は印刷領域側からホームポジション側へ移動途中で係合部32bに当た
りスライダ32を付勢バネ33の付勢力に抗してホームポジション側へ押し込むことによ
り、スライダ32は両側二本ずつの案内ピン32aが各ガイド孔31aに案内されつつ斜
め上方へスライドする。このとき、キャリッジ16をどの位置で停止させるかによって、
スライダ32を高さ、つまりキャップ27の高さを調整することが可能となっている。本
実施形態では、キャップ27の退避位置(最下降位置)とキャッピング位置(最上昇位置
)との中間範囲でキャップ27を複数段階(本例では三段階)に高さ調整できるように、
キャリッジ16には複数の停止ポジション(本例では3ポジション)が設定されている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態では、キャップ27の三段階の高さ調整の際、案内ピン
32aがガイド孔31aの斜状部おいて二点鎖線及び実線で示す3つの位置A,B,Cに
配置される。案内ピン32aが位置Aに配置される際のキャリッジ16の位置がポジショ
ン1、案内ピン32aが位置Bに配置される際のキャリッジ16の位置がポジション2、
案内ピン32aが位置Cに配置される際のキャリッジ16の位置がポジション3である。
キャリッジ16がポジション1に配置されたときのキャップ高さが、後述するノズル検査
時の正規のキャップ高さである。また、ポジション2とポジション3は、正規のキャップ
高さではノズル検査が正しく行えなくなった場合に、ノズル検査が正しく行われるように
キャップ高さを調整するための位置である。
【0021】
また、ロックレバー29は、ホームポジション側へ移動して停止したキャリッジ16が
、係合部32bを介して付勢バネ33の復元力による押圧力を受けて印刷領域側へ引き戻
されることを、キャリッジ16に当接して規制し、キャリッジ16を所定の停止位置に位
置決めするためのものである。
【0022】
図3は、ロックレバー駆動機構を示す模式側面図である。図3では、ロックレバー29
が少し手前側へ傾いた姿勢にある状態を描いている。図3に示すように、ロックレバー2
9は、主走査方向Xと平行に配置された回動軸35を中心として回動可能に設けられてい
る。回動軸35に固定された歯車36は、PFモータ14の動力を伝達する動力伝達機構
37の出力歯車(図示せず)と噛合しており、PFモータ14の出力軸に嵌着されたピニ
オン38が動力伝達機構37の入力歯車(図示せず)と噛合している。PFモータ14が
用紙搬送方向と反対方向へ逆転駆動されると、ロックレバー29はそのモータ回転量に応
じた回動角だけ回動する。なお、PFモータ14が用紙搬送方向に正転駆動されていると
きは、ロックレバー29はキャリッジ16と係合しない退避位置に保持されるようになっ
ている。
【0023】
図3に示すように、ロックレバー29の先端部には、キャリッジ16と係合可能な4つ
の規制面29a,29b,29c,29dが、主走査方向X(図3における左右方向)に
面の位置が異なるように階段状に形成されている。ここで、ロックレバー29の退避位置
からの回動角をθとおくと、第一規制面29aは、ロックレバー29の回動角θがα度(
第1姿勢角)のときにキャリッジ16と当接して、キャリッジ16をポジション1に位置
規制する。また、第二規制面29bは、ロックレバー29の回動角θがβ度(第2姿勢角
)(但しβ>α)のときにキャリッジ16と当接して、キャリッジ16をポジション2に
位置規制する。さらに第三規制面29cは、ロックレバー29の回動角θがγ度(第3姿
勢角)(但しγ>β)のときにキャリッジ16と当接して、キャリッジ16をポジション
3に位置規制する。なお、第四規制面29dは、ロックレバー29の回動角θがδ度(但
しδ>γ)のときにキャリッジ16と当接して、キャリッジ16をキャップ27がノズル
開口面19aに当接可能なキャッピング位置に位置規制する。
【0024】
次に、プリンタ11の電気的構成を図5に従って説明する。プリンタ11は、制御装置
41と、モータドライバ42,43、ヘッドドライバ44、PFモータ14、CRモータ
18、記録ヘッド19、メンテナンス装置25及び、適切な量のインクの吐出が不能にな
った不良ノズルを検出するためのノズル検査装置45が設けられている。
【0025】
まずキャップ27の構成について説明する。図5に示すように、キャップ27は、上側
が開口する四角箱状のキャップ本体27aと、キャップ本体27aの上部に固着されたリ
ング状の合成ゴム等の弾性部材からなるキャップシール部27bとを備えている。キャッ
プ27内には、吸水性を有する多孔質材料(例えばスポンジ)からなるインク吸収材46
が、キャップ本体27aの内周面に対してほぼ隙間なく装填されている。また、キャップ
27内には、検査用電極としての四角網状の検出用電極47がインク吸収材46の上面に
接触し、かつインク吸収材46を上面から軽く押圧する状態でキャップ27の内側の図示
しない係止部に係止された状態で保持されている。検出用電極47は例えば多数の孔を有
するSUS板よりなり、インク吸収材46の上面ほぼ全体を覆う(但し、その孔から下側
のインク吸収材46が露出状態にある)ように配置されており、記録ヘッド19のノズル
22からキャップ27内に向けて吐出されたインク滴は検出用電極47上に着弾されるよ
うになっている。
【0026】
なお、キャップ27の底面側に突出する管部27cには吸引ポンプ30から延びるイン
ク吸引用チューブ48が接続されている。また、吸引ポンプ30から延びるインク排出用
チューブ49は廃液タンク39(図1に示す)に接続されている。本実施形態では、吸引
ポンプ30は、PFモータ14が印刷中に用紙を搬送する際の駆動方向(正転方向)と逆
方向に逆転駆動されることでポンプ駆動され、キャップ27内に吸引力(負圧)を及ぼす
ように構成されている。
【0027】
キャップ27は、非印刷時における記録ヘッド19のノズル内のインクの増粘や乾燥を
防ぐために記録ヘッド19をキャッピングする。このキャッピング以外に、キャップ27
は、印刷中に例えば一定時間(例えば5〜20秒の範囲内の所定値)毎に定期的にノズル
内の増粘インクを空吐出するフラッシングを行う際のインク滴廃棄場所としても利用され
る。フラッシングでは、印刷中に一定時間経過する度にキャリッジ16がホームポジショ
ンへ移動し、記録ヘッド19の全ノズルからインク滴を一斉にキャップ27内に向かって
空吐出する。ここで、記録ヘッド19の全ノズルのうち印刷に使用される使用ノズルでは
インク滴の吐出によってインクの入れ替えが行われるが、印刷に使用されない不使用ノズ
ルではインクの入れ替えが行われずインクが徐々に増粘し、増粘が進むとやがて吐出不能
な不良ノズルになる。このような不良ノズルの発生を防いで全ノズルが目詰まりのない良
好な状態に保たれるように、制御装置41の制御により定期的にフラッシングを行ってい
る。
【0028】
また、メンテナンス装置25によるノズルのクリーニングが、一定時間経過毎又は一定
時間経過後の電源オン時などに行われる。クリーニングは、キャップ27を記録ヘッド1
9のノズル開口面19aに当接させたキャッピング状態の下で、吸引ポンプ30を駆動さ
せることにより、ノズル開口からインクを強制的に吸引排出させる。フラッシングやクリ
ーニングによりキャップ27内に溜まったインクは、キャップ27が開放された状態で吸
引ポンプ30が駆動される空吸引を行うことで、プラテン13の下側に配置された廃液タ
ンク39(図1に示す)内へ排出されるようになっている。
【0029】
ノズル検査装置45は、上記の検出用電極47と、ノズル検査回路50とを備えている
。ノズル検査回路50は、検出用電極47と記録ヘッド19のノズル開口面19aとの間
に電圧(検査電圧)を印加して両者の間に電界を発生させる電圧印加回路51、検出用電
極47の電位を検出する電極電位検出回路54、検査用インク滴の吐出時における電界強
度の変化を検出するための積分回路55、反転増幅回路56及びA/D変換回路57を備
えている。なお、本例の場合、ノズル検査回路50は、制御装置41が実装されるメイン
基板と電気的に接続されたサブ基板上に実装された例えばASICによりその回路の一部
が構成されている。
【0030】
電圧印加回路51は、DC/DCコンバータ52と、DC/DCコンバータ52に検査
電圧のオン・オフ(出力・非出力)を指示するためのオン・オフ信号を出力するスイッチ
回路53とを備えている。DC/DCコンバータ52には、プリンタ11の電源オン中は
、電源回路58から所定直流電圧(例えば20〜60Vの範囲内の電圧)が供給されてお
り、DC/DCコンバータ52は、入力した所定直流電圧を昇圧して所定直流電圧(検査
電圧Vo)を出力する。このDC/DCコンバータ52の出力端子は、直列に接続された
第1抵抗R1と第2抵抗R2と第3抵抗R3を介して接地(アース)されており、第1抵
抗R1と、第2及び第3抵抗R2,R3とで分圧された電圧が検出用電極47に印加され
るようになっている。
【0031】
一方、記録ヘッド19の下面を覆うように取着されてノズル開口面19aを形成してい
る金属製のノズルプレート(例えばSUS製)は、例えばアース配線を介して金属製の本
体フレーム12に接地(アース)されている。なお、電源回路58は、商用交流電源59
のコンセントに差し込まれた電源プラグを通じて入力された交流電圧(例えば100V)
をその内部のAC/DCコンバータ(図示せず)で変圧及びAC/DC変換して、所定直
流電圧をDC/DCコンバータ52に出力する。
【0032】
また、電極電位検出回路54は、検査用インク滴の非吐出時における検出用電極47の
電位(以下、「電極電位」ともいう)を検出するためのものである。本実施形態では、電
極電位検出回路54による電極電位の検出は、ノズル検査前(つまり検査用インク滴吐出
開始前)に予め行う。電極電位検出回路54は、第2抵抗R2と第3抵抗R3とA/D変
換回路60により構成されており、検出用電極47の電位Voutが第2抵抗R2と第3抵
抗R3とにより分圧された電圧が、A/D変換回路60を介してA/D変換された電極電
位Voutを検出値にもつ検出信号を出力する。
【0033】
また、ノズル検査回路50には、第1抵抗R1と第2抵抗R2との間の電位(つまり検
出用電極47の電位)がコンデンサCを介して入力されるようになっている。このコンデ
ンサCにより、ノズル開口面19aと検出用電極47との間のインク滴の吐出による電界
強度の変化に伴い検出用電極47の電位が変化した際の所定周波数範囲内の周波数成分か
らなる検出波が入力される。ノズル検査回路50は、その検出波を積分して出力する積分
回路55と、積分回路55から出力された信号を反転増幅して出力する反転増幅回路56
と、反転増幅回路56から出力された信号をA/D変換して制御装置41へ検出値を出力
するA/D変換回路57とを備えている。
【0034】
ここで、ノズル検査装置45によるノズル検査の原理を、図6を用いて説明する。一つ
のノズル22からインク滴がキャップ27内の検出用電極47上に吐出されることでノズ
ル検査は行われる。図6(a)に示すように、検査オン状態では、DC/DCコンバータ
52から検査電圧が印加され、ノズル開口面19aが負の電荷に帯電し、検出用電極47
が正の電荷が帯電する。図6(b)に示すように、この検査オン状態で、検査対象のノズ
ル22からインク滴が吐出されると、ノズル22から吐出されたインク滴には負の電荷が
帯電する。そして、負の電荷が帯電するインク滴が検出用電極47に接近するに連れて、
検出用電極47上では、静電誘導によって正の電荷が次第に増加する。その結果、検出用
電極47とノズル開口面19aとの間の電位差は(つまり電界も)、静電誘導に基づく誘
導電圧により、ノズル22からインク滴が吐出されない場合に比べて大きくなる。
【0035】
そして、ノズル22から吐出されたインク滴が検出用電極47上に着弾すると、図6(
c)に示すように、検出用電極47上の正の電荷の一部が、インク滴に帯電していた負の
電荷によって中和される。その結果、検出用電極47と記録ヘッド19のノズル開口面1
9aとの間の電位差(電圧)は、ノズル22からインク滴が吐出されない場合に比べて小
さくなる。その後、検出用電極47と記録ヘッド19のノズル開口面19aとの間の電位
差は、当初の大きさに戻る。
【0036】
積分回路55ではコンデンサCを介して入力された検出波が積分され、さらに反転増幅
回路56で反転増幅され、A/D変換回路57でA/D変換されて制御装置41に検出値
として出力される。ノズルから適切量のインク滴が吐出されたときは、検出波の振幅Vd
(検出電圧振幅)(図6(c)参照)が所定閾値を超えることになる。よって、検出波の
振幅Vdが所定閾値以下の場合は、そのときの検査対象ノズルが、適切量のインク滴を吐
出できない不良ノズルであると判定できる。
【0037】
ところで、検出用電極47が配置されるキャップ27内には、フラッシングやクリーニ
ングの際にインクが排出される。キャップ27内に溜まったインクは空吸引が行われるこ
とで排出はされる。しかし、この空吸引によっても、検出用電極47上のインクは完全に
は取り除かれないので、検出用電極47上にはインクやインク乾燥物が堆積等してインク
層が形成される。このインク層の存在が、例えば記録ヘッド19と検出用電極47との間
の誘電率等に影響し、検出用電極47の電位を低下させる。そして、この電極電位の低下
が、検出波の振幅Vdの低下をもたらし、これがノズル検査精度の低下の原因となる。そ
のため、検出用電極47にインクやその乾燥物等が堆積していると、適切量のインク滴が
吐出されたにも関わらず、検出波の振幅Vdが所定閾値以下になって不良ノズルと判定さ
れる場合が発生する。なお、インク以外に、検出用電極47上に付着する紙粉なども電極
電位の低下の原因となりうる。
【0038】
制御装置41は、印刷制御、メンテナンス制御の他、ノズル検査制御を行う。制御装置
41は、ノズル検査制御において、ノズル検査回路50を制御するとともにノズル検査回
路50から入力した各種検出信号に基づいてノズル検査処理を行う。このノズル検査処理
において、検出用電極47上へのインク層の堆積等に起因する電極電位の低下によるノズ
ル検査精度の低下を防止する処理が行われる。
【0039】
制御装置41は、ノズル検査処理のために、演算部61、比較処理部62、不良ノズル
判定部63、メモリ64及び主制御部65を備えている。演算部61と比較処理部62は
、電極電位検出回路54からの検出値(電極電位Vout)に基づいて必要なノズル検査精
度が得られるかどうかの判定を行う構成部分である。この判定の結果、必要なノズル検査
精度が得られない場合は、主制御部65がキャリッジ16の検査位置を変更することで、
ギャップSGを必要なノズル検査精度が得られる適正な広さに調整する。また、不良ノズ
ル判定部63は、ノズル検査回路50から入力したインク滴吐出時における電界強度の変
化を検出した検出値に基づいて不良ノズルの有無を判定するための構成部分である。メモ
リ64には、比較処理部62が比較判定に用いる閾値、及び不良ノズル判定部63が比較
判定に用いる閾値などの各種データが記憶されている。なお、演算部61、比較処理部6
2及び不良ノズル判定部63が行う処理の詳細な内容は後述する。
【0040】
また、制御装置41は、主制御部65の指示に基づきCRモータ18、PFモータ14
及び記録ヘッド19をそれぞれ駆動制御するCR制御部66、PF制御部67及びヘッド
制御部68を備える。CR制御部66はモータドライバ42を介してCRモータ18を駆
動制御する。PF制御部67はモータドライバ43を介してPFモータ14を駆動制御す
る。また、ヘッド制御部68は、ヘッドドライバ44を介して記録ヘッド19を駆動制御
する。ここで、主制御部65は、印刷制御部71とメンテナンス制御部72とを備える。
印刷制御部71は、各制御部66〜68に指示して各モータ14,18及び記録ヘッド1
9を駆動制御することにより印刷処理を行う。また、制御装置41にはタイマ69が備え
られ、タイマ69はクリーニングを行うべき所定時間間隔や、フラッシングを行うべき所
定時間間隔を計時する。メンテナンス制御部72は、タイマ69からクリーニング実施時
期に達した旨の通知があると、各制御部66,67に指示してモータ14,18を駆動制
御することによりメンテナンス装置25に記録ヘッド19のノズルクリーニングを行わせ
る。また、メンテナンス制御部72は、タイマ69からフラッシング実施時期に達した旨
の通知があると、各制御部66,68に指示してモータ18及び記録ヘッド19を駆動制
御することにより記録ヘッド19にフラッシングを実行させる。また、主制御部65は、
タイマ69からノズル検査実施時期に達した旨の通知を受け付けたとき、あるいは入力操
作部(図示せず)の操作に基づきノズル検査実施要求を受け付けたときには、ノズル検査
回路50に対してノズル検査開始信号を送信する。ノズル検査回路50はノズル検査開始
信号を受け付けると、スイッチ回路53がDC/DCコンバータ52にオン信号を出力し
てこれを駆動させることでノズル検査装置45の検査電圧をオンするようになっている。
【0041】
次に、制御装置41内で行われるノズル検査処理について詳細に説明する。
演算部61は、電極電位検出回路54から入力した電極電位Voutに基づき電極電位相
対値VPoutを演算する。ここで、電極電位相対値VPoutとは、出荷検査時に、DC/D
Cコンバータ52から検査電圧が印加された状態の下で計測された出荷時の検出用電極4
7の電位である初期電極電位Voutiniに対する電極電位Voutの比率を例えば「%」で示
し、式 VPout=Vout/Voutini(%)で表される。
【0042】
比較処理部62は、電極電位相対値VPoutが閾値を超えるか否かを判定する比較処理
を行う。本例では、メモリ64に例えば3つの閾値VP1,VP2,VP3(但し、10
0>VP1>VP2>VP3>0)(%)が記憶されており、メモリ64から読み出した
閾値を用いて、電極電位相対値VPoutが、3つの範囲のうちどの範囲に属しているかを
判定する。すなわち、VPout≧VP1であれば正常範囲、VP1>VPout≧VP2であ
れば第1異常範囲、VP2>VPout≧VP3であれば第2異常範囲、VPout<VP3で
あればエラーと判定する。もちろん、本例では電極電位の属する範囲を、エラーを含めて
4段階で判定したが、2段階以上であれば適宜な段階で判定することができる。主制御部
65は、比較処理部62が判定した電極電位相対値VPoutが属する範囲が第1異常範囲
又は第2異常範囲であると、それぞれに対応する検査位置にキャリッジ16を移動させる
べくCRモータ18を駆動制御する。詳しくは、電極電位相対値VPoutが正常範囲に属
する場合、キャリッジ16のポジション1が検査位置となる。電極電位相対値VPoutが
第1異常範囲に属する場合、キャリッジ16のポジション2が検査位置となる。電極電位
相対値VPoutが第2異常範囲に属する場合、キャリッジ16のポジション3が検査位置
となる。
【0043】
図4は、キャリッジ16の停止ポジションとギャップSGとの関係を示す模式側面図で
ある。キャリッジ16がポジション1に配置されたときはノズル開口面19aと検出用電
極47との間には第1ギャップSG1が確保される。また、キャリッジ16がポジション
2に配置されたときはノズル開口面19aと検出用電極47との間には第1ギャップSG
1より狭いギャップSG2(<SG1)が確保される。さらに、キャリッジ16がポジシ
ョン3に配置されたときはノズル開口面19aと検出用電極47との間には第2ギャップ
SG1より狭いギャップSG3(<SG2)が確保される。なお、本実施形態では、キャ
ップ27を三段階で高さ調整することでギャップSGを調整する構成としたが、四段階以
上の多段階で高さ調整可能な構成とし、ノズル検査時のギャップを4段階以上の範囲で調
整できる構成としてもよい。
【0044】
また、主制御部65は、ノズル検査時にギャップSGの調整を完了すると、ヘッド制御
部68に検査用インク滴の吐出を指示する。ヘッド制御部68はメモリ64から読み込ん
だ検査用吐出データに基づいて記録ヘッド19のノズル22から1滴又は複数滴ずつイン
ク滴を一ノズルずつ順番に吐出させるようになっている。このとき、記録ヘッド19のノ
ズル22からは負に帯電したインク滴が吐出され、その吐出されたインク滴は正に帯電し
た検出用電極47に着弾する。このインク滴の吐出に伴う電界強度の変化が検出波として
コンデンサCを介して積分回路55に入力される。そして、積分回路55に入力された検
出波は、積分回路55、反転増幅回路56及びA/D変換回路57を介して検出波の振幅
Vdの大きさに略比例する検出値として制御装置41の不良ノズル判定部63へ出力され
る。
【0045】
不良ノズル判定部63は、入力した電界強度の変化の大きさを示す検出値が、予め設定
されて閾値K以上であるか否かを判定する。この閾値Kは、適切な量のインク滴がノズル
22から吐出されているか否かを判断するための閾値であって、実験やシミュレーション
などによって予め求められたものである。そして、検出値が閾値Kを超えた場合は、その
検査対象ノズルが不良ノズルではないと判定し、一方、検出値が閾値Kを超えなかった場
合は、その検査対象ノズルを不良ノズルと判定する。
【0046】
不良ノズル判定部63は、不良ノズルと判定する度にその旨を主制御部65に通知する
。主制御部65は、不良ノズル判定部63からの不良ノズルの旨の通知を受け付ける度に
クリーニング実施条件が成立するか否かを判断する。クリーニング実施条件としては、不
良ノズルが所定個数(例えば1個)以上存在する場合、あるいは複数の不良ノズルが群を
なして(例えば隣接して)存在する場合などの条件を挙げることができる。主制御部65
は、クリーニング実行条件が成立した場合は、その時点でノズル検査を中断するか、ある
いはノズル検査を最後まで終了した後、メンテナンス制御部72によりメンテナンス装置
25を動作させて、記録ヘッド19のノズルのクリーニングを実行するようになっている
。なお、本実施形態では、ノズル検査装置45は、検出用電極47、ノズル検査回路50
、制御装置41のうちノズル検査に係る処理(ギャップ調整処理、検査用インク滴吐出処
理、不良ノズル検出処理等)を行う構成部分、CRモータ18及び昇降機構26等により
構成される。
【0047】
次に図7及び図8に示すフローチャートに基づいてノズル検査装置の動作を説明する。
制御装置41は、タイマ69が所定時間を計時して検査時期になると、図7及び図8のフ
ローチャートで示されるノズル検査処理ルーチン(ノズル検査シーケンス)を実行する。
【0048】
まずステップS10では、検査電圧をオンする。主制御部65はノズル検査回路50に
対してノズル検査開始信号を出力すると、ノズル検査回路50内のスイッチ回路53がD
C/DCコンバータ52にオン信号を出力することによりノズル検査装置45の検査電圧
をオンする。本実施形態の場合、DC/DCコンバータ52が出力する検査電圧は一定値
(例えば200〜400Vの範囲内の所定値)に設定されており、検査電圧がオンされる
と、その検査電圧が記録ヘッド19のノズル開口面19aと検出用電極47との間に印加
される。この結果、ノズル開口面19aと検出用電極47との間に印加電圧とギャップS
Gとから決まる所定強さの電界が発生する。このとき検出用電極47の電位はインク層の
堆積状況などに依存する。
【0049】
次のステップS20では、検査ギャップ判定を行う。すなわち、まず初期のギャップS
G1に調整し、このギャップSG1の下で検出用電極47の電位を検出して、その検出値
に基づき検査に適したギャップSGを判定する。判定の結果、検査に適したギャップSG
が初期のギャップSG1と異なる場合は、現在のギャップSG1から検査に適したギャッ
プSGに変更する。
【0050】
ステップS30では、ノズル検査を行う。すなわち、記録ヘッド19からキャップ27
内へ一ノズルずつ順番にインク滴を吐出して、検査対象ノズルが不良ノズルでないかどう
かを検査する。詳しくは、印刷制御部71に検査用吐出データに基づく検査用吐出動作を
指令すると、印刷制御部71は検査用吐出データ(検査用印刷データ)に基づいてヘッド
ドライバ44を介して記録ヘッド19を駆動させ、記録ヘッド19は1滴ずつあるいは複
数滴(例えば3滴)ずつのインク滴を一ノズルずつ順番に吐出する。そして、インク滴の
吐出に伴う電界強度の変化を検出した検出値に基づいてそのときの検査対象ノズルが不良
ノズルであるか否かを一ノズルずつ順番に判定する。
【0051】
ステップS40では、検査電圧をオフする。すなわち、制御装置41がノズル検査回路
50に検査電圧オフを指令すると、スイッチ回路53がDC/DCコンバータ52にオフ
信号を出力することでその検査電圧の出力を停止させる。
【0052】
次に、検査ギャップ判定処理について詳しく説明する。
まずステップS110では、キャリッジ16がポジション1(図4(a)参照)に達す
るまでCRモータ18を駆動する(CR駆動)。続いてステップS120において、PF
モータ14をステップ数St1で指定された回転量だけ駆動させる(PF駆動)。この結
果、キャリッジ16がポジション1に配置されるとともにロックレバー29が第1姿勢角
に配置され、キャリッジ16はロックレバー29の第一規制面29aに当接してポジショ
ン1に位置規制される。これによりキャップ27がノズル開口面19aと検出用電極47
との間隔がギャップSG1となる高さに配置される。このギャップSG1に調整された状
態では、制御装置41にはノズル検査回路50の電極電位検出回路54から、ギャップS
G1の状態下におけるインク滴が吐出される前の電極電位Voutが入力されている。
【0053】
ステップS130では、電極電位相対値VPout=Vout/Voutiniを計算する。
次のステップS140〜S200の処理は、ギャップSGを電極電位相対値VPoutに
応じた広さに調整する処理を行う。詳しくは、検出用電極47の電位が、必要な検査精度
を確保しうる範囲内にあるかどうかを、電極電位相対値VPoutと閾値とを比較すること
により行う。本例では、この比較処理用に3つの閾値VP1,VP2,VP3が用意され
ている。
【0054】
まずステップS140では、VPout≧VP1であるか否かを判断する。VPout≧VP
1が成立した場合は、既にギャップSG1に調整済みなので、当該ルーチンを終了する。
一方、VPout≧VP1が成立しなかった場合は(S140で否定判定)、次にステップ
S150に進む。
【0055】
ステップS150では、VPout≧VP2であるか否かを判断する。VPout≧VP2が
成立した場合は、ステップS170に進んで、キャリッジ16がポジション2(図4(b
)参照)に達するまでCRモータ18を駆動する(CR駆動)。続いてステップS180
において、PFモータ14をステップ数St2で指定された回転量だけ駆動させる(PF
駆動)。この結果、キャリッジ16がポジション2に配置されるとともにロックレバー2
9が第2姿勢角に配置されることによりキャリッジ16はロックレバー29の第二規制面
29bに当接してポジション2に位置規制される。これによりキャップ27がノズル開口
面19aと検出用電極47との間隔がギャップSG2となる高さに配置される。
【0056】
さらにVPout≧VP2が成立しなかった場合は(S150で否定判定)、次にステッ
プS160に進む。ステップS160では、VPout≧VP3であるか否かを判断する。
VPout≧VP3が成立した場合は、ステップS190に進んで、キャリッジ16がポジ
ション3(図4(c)参照)に達するまでCRモータ18を駆動する(CR駆動)。続い
て、ステップS200において、PFモータ14をステップ数St3で指定された回転量
だけ駆動させる(PF駆動)。この結果、キャリッジ16がポジション3に配置されると
ともにロックレバー29が第3姿勢角に配置されることによりキャリッジ16はロックレ
バー29の第三規制面29cに当接してポジション3に位置規制される。これによりキャ
ップ27がノズル開口面19aと検出用電極47との間隔がギャップSG3となる高さに
配置される。
【0057】
また、VPout≧VP3が不成立の場合は(S160で否定判定)、ステップS210
に進んでエラーとする。すなわち、VPout<VP3の場合は、ギャップSGの調整では
対応できないのでエラーとする。
【0058】
このように検査電圧オン時に出荷時の初期電極電位Voutiniに対する電極電位Voutの
相対値である電極電位相対値VPoutを求め、VPout≧VP1が不成立となって必要なノ
ズル検査精度が得られないと判定されれば、その電極電位相対値VPoutに応じたギャッ
プSGに調整することにより、必要なノズル検査精度が確保されるようにする。このため
、検出用電極47にインク層が堆積していても、検出波の振幅Vdが必要な大きさになる
ので、ノズル22から正常に吐出されたインク滴を確実に検出することができる。例えば
、ノズル22からインク滴が正常に吐出されているにも関わらず、検出用電極47のイン
ク堆積が原因で検出波の振幅Vdに応じた検出値が閾値Kを超えず不良ノズルであると判
定される不都合を解消できる。
【0059】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)電極初期電位を検出してその検出値が閾値を下回る場合は、記録ヘッド19と検
出用電極47とのギャップを狭くして電極初期電位を大きくすることで、正常なノズル検
査を行うために必要な検出波の振幅が得られるようにした。よって、検出用電極47に対
するインクやインク乾燥物等の堆積状況に左右されず、必要なノズル検査精度を確保でき
る。この結果、正常にインク滴が吐出されたにも関わらず、不良ノズルと誤検出されたば
かりに不要なクリーニングが実施されてしまうことに起因するインクの無駄な消費および
無駄な待ち時間を回避できる。
【0060】
(2)ロックレバー29を複数段階でキャリッジ16の位置決めができるようにしたの
で、ギャップSGを電極初期電位の検出値に応じた所望の広さに保持できる。よって、安
定した検査結果が得られ、ノズル検査の信頼性が高まる。
【0061】
(3)検出波の振幅をノズル検査が正常に行えるレベルに高める方法としては、印加電
圧を高くする方法でも可能ではある。しかし、本実施形態では、印加電圧は変更せずに、
検出波の振幅が正常にノズル検査可能なレベルにまで高められるようにギャップSGを狭
くする調整を行う方法を採用したので、ノズル検査における消費電力の増加を回避できる
。また、印加電圧を上げるためには、規格電圧の高い電圧印加装置を使用する必要がある
が、本実施形態の構成でれば、規格電圧は同じで済むので、電圧印加装置の大電力化や大
型化を回避できる。
【0062】
(4)検出波の振幅をノズル検査が正常に行えるレベルに高める方法としては、一ノズ
ル検査当たりのインク滴吐出回数を増やす方法でも可能ではある。しかし、本実施形態で
は、インク滴吐出回数は変更せずに、検出波の振幅が正常にノズル検査可能なレベルにま
で高められるようにギャップSGを狭くする調整を行う方法を採用したので、ノズル検査
におけるインク消費量の増加を回避できる。
【0063】
(5)正常なノズル検査ができなくなるほど検出用電極47がインクやその乾燥物の堆
積等により汚れたことを、電極電位の検出結果から検出できる。このため、検出用電極4
7のインク汚れを簡単に検出できるうえ、電極電位と検出波の振幅が略比例する関係にあ
るためその検出精度も比較的高くなる。
【0064】
なお、実施の形態は、上記に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
(変形例1)キャップの移動機構(昇降機構)は、キャリッジ16が移動する際の押し
込み力を利用してスライダを移動させてキャップを往復移動させるスライダ方式に限定さ
れない。例えば図9に示すような電動式昇降装置を採用できる。すなわち、図9に示すよ
うに、昇降装置81は、電動モータ82と、電動モータ82の出力軸82aに連結された
ギヤ列83と、ギヤ列83の出力軸84に一体回転可能に連結された回転カム85と、回
転カム85の回転により昇降するベース部材86とを備えている。回転カム85は、図9
(b)に示すように、出力軸84に対して偏心しており、その外周面(カム面)がベース
部材86の底面と当接している。電動モータ82が正転駆動されて回転カム85が図9に
おける時計方向に回転(正転)すると、ベース部材86を押し上げることでキャップ27
が上昇し、一方、電動モータ82が逆転駆動されて回転カム85が図9における反時計方
向に回転(逆転)すると、ベース部材86が下降してキャップ27が下降する。このよう
な電動式の昇降装置81を用いれば、キャップ27の高さ調整、すなわちギャップSGの
調整を連続的に行うことができる。
【0065】
(変形例2)スライダ方式においてキャップの高さを連続的に変化させる構成も採用で
きる。この場合、ロックレバーを図10に示すような電動式に構成すればよい。図10に
示すように、ロックレバー90を昇降させる電動式の昇降装置91は、電動モータ92と
、モータ92の出力軸92aに連結された差動機構93と、差動機構93の出力歯車(図
示せず)と噛合するギヤ部94aを有する円筒カム94とを備える。円筒カム94の周面
上にはカム溝94bが螺旋状の経路で形成されており、ロックレバー90を支持するカム
フォロア軸90aの基端部がカム溝94bに係入されている。ロックレバー90は上部に
斜状の係合面90bを有し、係合面90bがキャリッジ16の係合面16aに当たること
でキャリッジ16が所定のロック位置(検査位置)に位置決めされる。このとき電動モー
タ92をそのとき決められたギャップSGに応じた回転量だけ駆動させてロックレバー9
0の高さを調整することにより、キャリッジ16のロック位置が調整される。このように
キャリッジ16のロック位置を連続的に調整できることから、キャップ27の高さ調整、
すなわちギャップSGの調整を連続的に行うことができる。
【0066】
(変形例3)前記実施形態では、ギャップを段階的に変化させる調整方法を採用したが
、電極電位相対値VPoutに応じてギャップを連続的に変化させる調整方法も採用できる
。例えば上記変形例1及び変形例2で示したギャップを連続的に調整できる構成において
、図11のグラフで示された、電極電位相対値VPout(%)とギャップSGとの対応関
係を示すマップあるいはテーブルデータをメモリに記憶しておく。そして、ノズル検査時
期に電極電位Vout(初期電位)に基づいて電極電位相対値VPoutを求め、メモリに記憶
されたマップ又はテーブルを参照してそのときの電極電位相対値VPoutに対応するギャ
ップSGを取得し、その取得したギャップとなる位置にキャップ27を配置すべくモータ
(例えばCRモータ18又は電動モータ82等)を駆動制御することで、電極電位相対値
VPoutに応じたギャップSGに連続的に調整する。なお、図11の例では、さらに検査
電圧(印加電圧)を切り換える構成も採用しており、例えば初期印加電圧Voにおいて電
極電位相対値VPoutが下限閾値(例えば50%)以下になると、1段階高い印加電圧V
2(>V1)に変更し、印加電圧V2の下で、電極電位相対値VPoutに応じたギャップ
SGに調整する。また、初期印加電圧V1において電極電位相対値VPoutが上限閾値(
例えば100%)を超えると、1段階低い印加電圧V3(<V1)に変更し、印加電圧V
3の下で、電極電位相対値VPoutに応じたギャップSGに調整する。このように電極電
位相対値VPout(%)が適正範囲(例えば50〜100%)に収まるように印加電圧を
切り換えるので、ギャップ調整だけでは対応できない場合も印加電圧の変更により、検出
波の振幅が適正範囲内に入り、ノズル検査を正確に行うことができる。なお、前記実施形
態において、印加電圧を切り換える機能を追加してもよい。この場合は、電極電位相対値
VPout(%)の属する範囲に応じてギャップSG1,SG2,SG3のうち一つを選択
することになる。なお、上記の印加電圧を切り換える処理を行う制御装置41が印加電圧
調整手段に相当する。
【0067】
(変形例4)ギャップの調整は、記録ヘッドを昇降させる方法でもよい。例えば、プラ
テンギャップ調整装置を用いる。すなわち、図12に示すように、プリンタ11には、ガ
イド軸15を昇降移動させることによりキャリッジ16を昇降移動させて記録ヘッドとプ
ラテンとの間隔であるプラテンギャップを調整するプラテンギャップ調整装置が設けられ
ている。プラテンギャップ調整装置は、プリンタ11の本体フレーム12の一側面に、ガ
イド軸15を昇降させる昇降装置95を備えている。この昇降装置95は、直動型アクチ
ュエータ96と、二本のアームを有するとともに本体フレーム12の側面に回動可能に支
持された回動体98と、一のアームの先端部が直動型アクチュエータ96の駆動ロッド9
7の先端部と連結された回動体98の他のアームの先端部と一端部が係合連結されるとと
もに他端部が図示しない偏心機構を介して本体フレーム12の側面に対し回動可能に支持
された操作レバー99とを有している。直動型アクチュエータ96が駆動されて駆動ロッ
ド97が上下動することにより操作レバー99は基端部を中心に回動する。操作レバー9
9の基端部には管状のガイド軸15内に偏心する状態で挿通された中軸が支持されており
、操作レバー99が回動すると中軸に対しガイド軸15が偏心回動することで、ガイド軸
15が昇降するように構成されている。よって、アクチュエータ96が駆動されて駆動ロ
ッド97が上方へ直動するとガイド軸15が上昇して記録ヘッド19も一緒に上昇し、一
方、アクチュエータ96が駆動されて駆動ロッド97が下方へ直動するとガイド軸15が
下降して記録ヘッド19も一緒に下降する。そして、電極電位相対値VPoutが閾値VP
1未満となったときには、アクチュエータ96の駆動ロッド97の昇降ストロークを制御
することでギャップSGを狭く調整する。
【0068】
(変形例5)検出用電極47にインクが堆積したことに起因して必要なノズル検査精度
が得られない検査不能状態を検出する方法は、電極電位を検出する方法に限定されない。
例えば不良ノズルの検出数が所定閾値を超えた場合は異常と判定してもよい。検出波の振
幅が正常なノズル検査ができないほどに低下した場合、全ノズルがノズル不良として判定
される。このことを利用して、半数以上のノズルが不良ノズルと検出されるなど、不良ノ
ズルの検出数がある閾値を超えたことをもって検査不能状態を検出し、ギャップSGを狭
く調整する構成も採用できる。
【0069】
(変形例6)複数のノズルについてインク滴の吐出を行って得られた検出波の振幅に対
応する検出値のうち最大値(つまり正常ノズルの検出値)が、正常な検査をするために必
要な閾値を超えるか否かを判定してその閾値を下回るようであれば、検査不能状態と判定
して、ギャップを狭く調整する構成でもよい。
【0070】
(変形例7)本実施形態では、各ギャップSG1,SG2,SG3毎に電極電位Vout
が適正範囲にあるか否かを判断するため下限の閾値の他、上限の閾値を設定してもよい。
この構成によれば、ギャップSGを狭く調整してノズル検査を終えた後、次回のノズル検
査時にはメモリに記憶した前回のギャップを採用する。そして、次回のノズル検査時まで
に検出用電極47上に堆積したインク層が除去されて、電極電位Voutが上限の閾値を超
えた場合は、一段階広いギャップに調整し、この調整を電極電位Voutが適正範囲に収ま
るまで行う。このように前回のノズル検査時にギャップ判定処理で求められたギャップを
次回のノズル検査に採用するので、毎回のノズル検査で、ギャップを初期値から調整し直
す必要がなく、ギャップ調整回数を低減できる。なお、メモリとして不揮発性メモリを使
用し、プリンタ11の電源オン時に前回使用したギャップSGを不揮発性メモリから読み
込んで使用する構成としてもよい。
【0071】
(変形例8)ギャップ調整は検査開始前に行う構成に限定されない。例えば検査の途中
や検査終了後にギャップ調整を行ってもよい。例えば検査開始前に電極電位Voutに基づ
き必要に応じてギャップ調整を行った後、検査を開始し、その検査の途中で再び電極電位
Voutに基づき検査不能状態であるか否かの検出を行い、必要であればギャップ調整を行
う。この構成によれば、ノズル検査で吐出されたインク滴が徐々に検出用電極47上に堆
積して検査の途中でやがて検査不能状態に陥る心配があるが、検査途中でも必要な場合に
はギャプ調整するので、ノズル検査の最初から最後まで検査可能状態の下でノズル検査を
正しく行うことができる。例えば検査ノズル数が1000個であれば、100〜500個
内の所定個数のノズル検査を終了する毎に検査ギャップ判定処理を割込処理で行う。
【0072】
(変形例9)検出手段は、検出波の振幅が大きくなり過ぎた検査不能状態を検出できる
ようにし、このような検査不能状態を検出した場合は、検出波の振幅が適正範囲内に収ま
るようにギャップSGを広くする調整をしてもよい。
【0073】
(変形例10)検査高精度を図るため、ギャップ調整機能に加え、一ノズル検査当たり
インク滴数を増やす機能を採用してもよい。
(変形例11)一ノズルずつ順番に検査を行う構成に限定されない。例えば複数ノズル
から一斉にインク滴を吐出して、そのときの電界強度の変化に応じた検出値に基づいて複
数ノズルのうち少なくとも一のノズルが不良ノズルであることを検出する構成も採用でき
る。例えばN個のノズルから一斉(但し、多少吐出タイミングをずらしてもよい。)にイ
ンク滴を吐出する構成とした場合、前記実施形態の構成を採用した場合のノズル検査回数
を実質的に1/Nに低減できる。
【0074】
(変形例12)流体受容部はキャップに限定されず、フラッシングボックスでもよい。
(変形例13)前記実施形態では、インクジェット記録方式のシリアルプリンタに適用
したが、インクジェット記録方式のラインプリンタに適用してもよい。
【0075】
(変形例14)流体受容部の移動方向は昇降に限定されない。例えば吐出手段と検出用
電極とを接近・離間させることが可能に両者のうち少なくとも一方を水平方向に移動させ
てもよい。
【0076】
(変形例15)前記実施形態では、流体吐出装置をインクジェット式記録装置に具体化
したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分
散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して吐出できる固体を
含む)を吐出したりする流体吐出装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプ
レイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造な
どに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液
状体を吐出する液状体吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する液
体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置であっ
てもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐
出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために
紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチング
するために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ゲル(例えば物理
ゲル)などの流状体を吐出する流状体吐出装置、トナーなどの粉体(粉粒体)を例とする
固体を吐出する粉粒体吐出装置(例えばトナージェット式記録装置)であってもよい。そ
して、これらのうちいずれか一種の流体吐出装置に本発明を適用することができる。なお
、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体に
は、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む
)、液状体、流状体、粉粒体(粒体、粉体を含む)などが含まれる。また、上記基板や精
密機械等がターゲットとなる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】一実施形態におけるプリンタの概略斜視図。
【図2】メンテナンス装置の模式側面図。
【図3】ロックレバー駆動機構の模式側面図。
【図4】(a)〜(c)キャリッジのポジションとギャップとの関係を説明する模式側断面図。
【図5】ノズル検査装置を備えたプリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図6】(a)〜(c)ノズル検査の原理を説明する模式図。
【図7】ノズル検査処理を示すフローチャート。
【図8】検査ギャップ判定ルーチンを示すフローチャート。
【図9】(a)(b)変形例におけるキャップの昇降機構を示す模式側断面図。
【図10】変形例におけるロックレバー昇降機構を示す模式側面図。
【図11】電極電位相対値VPoutとギャップとの関係を示すグラフ。
【図12】変形例におけるプリンタを示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0078】
11…流体吐出装置としてのプリンタ、14…搬送手段を構成するPFモータ、16…
キャリッジ、18…ギャップ調整手段を構成するCRモータ、19…吐出手段としての記
録ヘッド、19a…ノズル開口面、22…ノズル、24…吐出素子、25……メンテナン
ス手段としてのメンテナンス装置、26…ギャップ調整手段を構成する昇降機構、27…
キャップ、28…ワイパ、29…ロック手段としてのロックレバー、30…吸引ポンプ、
31…ハウジング、31a…案内手段を構成するガイド孔、32…スライダ、32b…被
操作部としての係合部、33…付勢手段としての付勢バネ、41…ギャップ調整手段を構
成するとともに制御手段としての制御装置、47…検査用電極としての検出用電極、45
…ノズル検査装置、47…検出用電極、51…電圧印加回路(電圧印加手段)、52…D
C/DCコンバータ、53…スイッチ回路、54…検出手段及び電極電位検出手段として
の電極電位検出回路、55…検査手段を構成する積分回路、56…検査手段を構成する反
転増幅回路、57…検査手段を構成するA/D変換回路、58…電源回路、60…A/D
変換回路、61…検出手段を構成する演算部、62…検出手段を構成するとともに判定手
段としての比較処理部、63…検査手段を構成する不良ノズル判定部、64…メモリ、6
5…検査手段及びギャップ調整手段を構成する主制御部、69…タイマ、81…ギャップ
調整手段を構成する昇降装置、91…ギャップ調整手段を構成する昇降装置、95…ギャ
ップ調整手段を構成する昇降装置、R1,R2,R3…抵抗、C…検査手段を構成するコ
ンデンサ、VP1,VP2,VP3…閾値、SG1,SG2,SG3…ギャップ、P…タ
ーゲットとしての用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットに対して流体を吐出可能なノズルを有する吐出手段を備えた流体吐出装置に
おいて必要量の流体の吐出が不能な不良ノズルの有無を検査するノズル検査装置であって

前記吐出手段とギャップを隔てて配置される検査用電極と、
前記吐出手段と前記検査用電極との間に電圧を印加して電界を発生させた状態で、前記
吐出手段から前記検査用電極に対して流体を吐出して該流体の吐出に伴う電界強度の変化
を検出した検出値に基づいて不良ノズルの有無を検査する検査手段と、
前記検査手段が必要な検査精度が得られないものとして設定された検査不能状態にある
ことを検出する検出手段と、
前記検査手段が検査不能状態にあることが検出された場合は、前記吐出手段と前記検査
用電極とのうち少なくとも一方を移動させて前記ギャップを前記検査手段が検査可能状態
に移行しうる広さに調整するギャップ調整手段とを備え、
前記検査手段は、前記不良ノズルの有無の検査を少なくとも前記ギャップ調整手段によ
るギャップ調整後に行うことを特徴とする流体吐出装置におけるノズル検査装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記検査を行う前の流体が吐出されていない非吐出状態における前記
検査用電極の電位を検出する電極電位検出手段と、前記電極電位検出手段の検出値が所定
の閾値を超えていれば検査可能状態であると判定し、前記検出値が前記閾値以下であれば
検査不能状態であると判定する判定手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載
の流体吐出装置におけるノズル検査装置。
【請求項3】
前記ギャップ調整手段は、前記ギャップを前記電極電位検出手段の検出値に応じた広さ
に調整することを特徴とする請求項2に記載の流体吐出装置におけるノズル検査装置。
【請求項4】
前記ギャップ調整手段は、前記検出手段の検出値が、前記検査手段が前記不良ノズルの
有無の検査を正しく行いうるものとして設定された設定範囲に対して電位が小さくなる側
に外れた場合は、前記ギャップを狭くするように調整し、一方、前記検出手段の検出値が
、前記設定範囲に対して電位が大きくなる側に外れた場合は、前記ギャップを広くするよ
うに調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の流体吐出装置にお
けるノズル検査装置。
【請求項5】
前記吐出手段と前記検査用電極との間の印加電圧を調整する印加電圧調整手段を更に備
え、
前記印加電圧調整手段は、前記電極電位検出手段の検出値がギャップの調整により前記
検査手段を前記検査可能状態に移行させうる所定範囲から外れたときは、前記電極電位検
出手段の検出値が前記所定範囲に収まるように前記印加電圧を変更し、
前記印加電圧の変更後に、前記検出手段による変更後の印加電圧の下における検出、及
び該検出により検査不能状態であるとされた場合における前記ギャップ調整手段によるギ
ャップ調整を行うことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の流体吐出装置
におけるノズル検査装置。
【請求項6】
前記吐出手段は、該吐出手段に流体吐出処理を行わせる移動経路に沿ってキャリッジ用
の駆動源の動力により移動可能なキャリッジに設けられ、
前記検査用電極は、前記吐出手段のノズルから吐出した流体を受容可能な流体受容部内
に設けられ、
前記流体受容部を前記吐出手段に対する接近・離間が可能な方向に移動させる移動機構
を備えるとともに、該移動機構は、前記流体受容部を前記吐出手段から離間する方向へ付
勢する付勢手段と、前記流体受容部を支持するとともに前記キャリッジが前記検査手段に
よる検査が行われる検査位置に移動する過程で係合可能な被操作部を有するスライダと、
前記キャリッジが検査位置に移動する過程で前記被操作部を前記付勢手段の付勢力に抗し
て押し込むことにより前記スライダを前記流体受容部が前記吐出手段に接近する方向へ移
動させるように案内し、一方、前記キャリッジが前記検査位置から離れる過程で前記被操
作部に対する押し込みが解除されて前記付勢手段の付勢力により前記スライダを前記流体
受容部が前記吐出手段から離間する方向へ移動させるように案内する案内手段とを有し、
前記キャリッジを前記付勢手段の復帰力に抗して前記検査位置に保持するロック位置と
前記キャリッジと係合不能な退避位置とに配置されるようにロック用の駆動源の動力によ
り動作するロック手段を更に備え、
前記ギャップ調整手段は、前記キャリッジを調整すべきギャップに応じた検査位置に移
動させるキャリッジ移動制御と、前記キャリッジを前記検査位置に位置決めさせるべく前
記ロック手段によるロック位置を調整するロック位置制御とを行う制御手段を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の流体吐出装置におけるノズル検
査装置。
【請求項7】
ターゲットを搬送する搬送手段と、前記ターゲットに流体を吐出する吐出手段とを備え
た流体吐出装置であって、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のノズル検査装置と、
前記搬送手段、前記吐出手段及びノズル検査装置を制御するとともに、ノズル検査を行
うべき検査時期になると、前記ノズル検査装置による検査を実行させる制御手段と
を備えたことを特徴とする流体吐出装置。
【請求項8】
ターゲットに対して流体を吐出可能なノズルを有する吐出手段を備えた流体吐出装置に
おいて必要量の流体の吐出が不能な不良ノズルの有無を検査するノズル検査方法であって

前記吐出手段とギャップを隔てて配置される検査用電極と、前記吐出手段と前記検査用
電極との間に電圧を印加して電界を発生させた状態で、前記吐出手段から前記検査用電極
に対して流体を吐出してそのときの電界強度の変化を検出した検出値に基づいて不良ノズ
ルの有無を検査する検査手段とを有し、
前記検査手段が必要な検査精度が得られないものとして設定された検査不能状態にある
ことを検出する検出ステップと、
前記検査手段が検査不能状態にあることが検出された場合は、前記吐出手段と前記検査
用電極とのうち少なくとも一方を移動させて前記ギャップを前記検査手段が検査可能状態
となる広さに調整するギャップ調整ステップと、
前記ギャップの調整後に、前記吐出手段から前記検査用電極に対して流体を吐出すると
ともに該流体の吐出による電界強度の変化を検出した検出値に基づいて不良ノズルの有無
を検査する検査ステップと、
を備えたことを特徴とする流体吐出装置におけるノズル検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−196291(P2009−196291A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42521(P2008−42521)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】