説明

流体噴射装置

【課題】噴射する流体に触れる部品を減らし、再利用する場合の洗浄の煩雑さを解消し、廃却する場合は廃却する部品コストを削減する構造の流体噴射装置を提供する。
【解決手段】流体噴射装置は、圧力を発生させる圧力発生部20と、圧力伝播媒体208を介して圧力を伝播させる圧力伝播管203と、圧力伝播管203で伝播された圧力によって容積が変更可能な流体室204と、流体室204に流体を供給する流体供給部205と、流体室204に連通し、流体を噴射する噴射管206と、圧力伝播管203と流体室204との間を区画し、圧力伝播管203で伝播された圧力に応じて流体室204の容積を変更させる隔壁210と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子を伸張させてダイアフラムを変形し、ダイアフラムの変形により流体室の容積を周期的に縮小して流体室内の内部圧力を高め、流体をパルス状に噴射する流体噴射装置というものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−82202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、ダイアフラムを変形させて流体室の容積を縮小し、流体室内の圧力を高めて流体を噴射させる構造であり、圧力室から流体が噴射されるまでの圧力伝達経路全体と流体の流路とは全く同一となる。ここで、ダイアフラム、圧力室、パイプ等は流体に接した部品となる。流体に接した部品は再利用する場合には分解洗浄しなければならず、そのための作業は煩雑で、微細な構造の場合は充分に洗浄ができない。医療機器として使用する場合に汚れの残留や細菌やウイルスの感染防止のために洗浄を行った上に滅菌処理も必要となり、洗浄部品が多いことは作業の煩雑さに加え、安全上のリスクの虞もある。
【0005】
また、流体に接した部品を再利用しない場合は、流体に接した部品はすべて廃棄することになり、部品コストが高くなるという問題がある。医療廃棄物を増やすことは、自然環境保護の観点から問題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる流体噴射装置は、圧力を発生させる圧力発生部と、圧力伝播媒体を介して前記圧力を伝播させる圧力伝播管と、前記圧力伝播管で伝播された圧力によって容積が変更可能な流体室と、前記流体室に流体を供給する流体供給部と、前記流体室に連通し、前記流体を噴射する噴射管と、前記圧力伝播管と前記流体室との間を区画し、前記圧力伝播管で伝播された圧力に応じて前記流体室の容積を変更させる隔壁と、を有することを特徴とする。
【0008】
これによれば、流体供給部から流体室、噴射管を経由する流体の流路と、圧力伝播管との間を隔壁で区画した構造であるため、流体に接触する部品が減る。具体的には、圧力発生部と圧力伝播管とに噴射する流体が触れることはない。したがって、圧力発生部と圧力伝播管とを再利用する場合には洗浄や廃棄する必要性がなくなる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる流体噴射装置において、前記流体室は、前記圧力伝播管の内部に形成され、管構造を有していることを特徴とする。
【0010】
これによれば、流体室が圧力伝播管の内部に形成されているため、流体室に対して一面からの圧力ではなく複数面又は周方向からの加圧をすることができる。また、流体室が管構造を有するため、流体の流路に突起部や隅部などの流体流動を変化させる部分を減らすことができ、気泡の発生を抑制する構造が達成できる。さらに、隔壁に発生する応力は等分布応力となるので局所的な応力集中が発生せず、長時間にわたって隔壁を繰り返し変形させても応力集中に起因する破損がなく、耐久性を向上させることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる流体噴射装置において、前記隔壁は、ダイアフラムであることを特徴とする。
【0012】
これによれば、薄いシート状のダイアフラムは、圧力伝播管内の圧力伝播媒体の形状変形に追従しやすいことから、流体室の容積の変更を効率よく行うことができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる流体噴射装置において、前記圧力発生部は、容積が変更可能な圧力室と、前記圧力室の容積を変更させる圧電素子と、を有することを特徴とする。
【0014】
これによれば、圧電素子により圧力室の容積を可変する場合、短ストロークで高応力の流体噴射装置が実現できる。したがって、小型化、高出力を両立させることが可能となる。また、圧電素子は印加する電圧によってその伸張量を自在にコントロールできるため、流体の噴射条件をきめ細かくコントロールすることが可能となる。また、ストロークが短いことから流体噴射周期を短くできるため、単位時間あたりの流体噴射回数を増やすことが可能となり、より効率的な流体噴射装置の駆動を行うことが可能となる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる流体噴射装置において、前記圧力発生部は、容積が変更可能な圧力室と、前記圧力室の容積を変更させるソレノイドと、を有することを特徴とする。
【0016】
これによれば、ソレノイドにより圧力室の容積を可変する場合、長ストロークで大容量の流体噴射装置が実現できる。したがって、1回の駆動で大流量、高エネルギーの流体噴射を必要とする場合に有利である。また、圧電素子よりも低コストで物理的な強度が強く、高信頼性の流体噴射装置が実現できる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる流体噴射装置において、圧力を発生させる圧力発生部と、固体で形成された圧力伝播媒体の変位によって前記圧力を伝播させる圧力伝播管と、前記圧力伝播管で伝播された圧力によって容積が変更可能な流体室と、前記流体室に流体を供給する流体供給部と、前記流体室に連通し、前記流体を噴射する噴射管と、を有することを特徴とする。
【0018】
これによれば、固体で形成された圧力伝播媒体の変位によって流体室に圧力を伝播するため、圧力発生部と圧力伝播管とに噴射する流体が触れることはない。したがって、圧力発生部と圧力伝播管とを再利用する場合には洗浄や廃棄する必要性がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係る手術具としての流体噴射装置を示す断面図。
【図2】第1実施例に係る圧力発生部及び噴射管を示す断面図。
【図3】第2実施例に係る圧力発生部及び噴射管を示す断面図。
【図4】実施形態2に係る手術具としての流体噴射装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明で参照する図は、各部材を認識可能な程度の大きさで図示するため、各部材の尺度や形状は実際とは異ならしめている部分がある。また、各実施形態はともに、医療機器としての流体噴射装置を説明するため、流体は生理食塩水(液体)である。さらに、各実施形態とも、医療機器に好適な流体噴射装置として説明するが、切除・切開・剥離・破砕などの機能においては、医療分野での活用に限定するものではない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る手術具としての流体噴射装置を示す断面図である。図1において、流体噴射装置1は、液体209を収容する流体供給容器2と、流体供給手段としての流体供給ポンプ10と、流体供給ポンプ10から供給される液体209を流体供給部205に導く流体供給チューブ4と、流体供給チューブ4によって導かれた液体209を流体室204に供給する流体供給部205と、流体供給部205に連通された流体室204と、圧力発生部20と、圧力発生部20に連通する圧力伝播管203と、圧力伝播管203と流体室204とを区画隔離するダイアフラム207と、流体室204と連通する噴射管206とを含む。また、圧力室202と圧力伝播管203とは圧力伝播媒体208で満たされている。
【0022】
次に、図1を参照して本実施形態の流体噴射装置1の動作について説明する。まずこの流体噴射装置1が噴射する液体209の流れに沿って説明する。
【0023】
流体供給容器2はこの流体噴射装置1が噴射する液体209を貯留する容器である。本実施形態による流体噴射装置1は手術具として使われる例であるため、流体供給容器2に貯留する液体209は生理食塩水である。図1では流体供給容器2を箱型で図示してある。医療現場で使用する場合の流体供給容器2は、滅菌処理され、また普及していて入手しやすい点滴バッグの様な形態であることが望ましい。
【0024】
流体供給ポンプ10は流体供給容器2に貯留している液体209を吸い上げ(又は吸い出し)て流体室204に供給するためのポンプである。本実施形態では流体供給容器2に貯留している液体209を流体供給チューブ4に送り出す働きをする。流体噴射装置1が安定的に性能を発揮するためには定流量型のポンプが望ましい。例えば、プランジャー型のポンプやギアポンプ等が望ましい。
【0025】
流体供給ポンプ10は、流体供給容器2に貯留している液体209を吸い上げ(又は吸い出し)て流体供給チューブ4に液体209を送り出す。流体供給チューブ4に送り出された液体209は流体供給部205から流体室204に流入する。この時、流体供給部205の流路の一部は一定の流路抵抗と一定のイナータンスを持つキャピラリー(毛細管)形状であることが望ましい。
【0026】
さらに続けて流体供給ポンプ10を動作させると、流体室204に流れ込んだ液体209は流体室204全体を満たす。流体室204を満たしてもさらに供給される液体209は噴射管206に流れ込んで行く。噴射管206の先端は噴射開口部300で外部に開放しており、液体209は噴射開口部300から外部に流れ出していく。この時点では、流体供給ポンプ10の発生する液体209の流量に応じた量の液体209が噴射開口部300から流れ出ている状態であり、後述する噴射速度と比較すると非常に遅い速度での流出となっている。
【0027】
続いて、圧力発生部20から液体209に噴射するための圧力を伝達する経路について説明する。
【0028】
本実施形態では圧電素子211の駆動により圧力を発生させる。圧電素子211は電圧を加えると伸張するタイプの物を使い、外部から駆動電圧を印加して圧電素子211を伸張させる。
【0029】
圧電素子211が伸張すると、圧力室202の容積が縮小される構造となっている。圧力室の構成はシリンダーとピストン、ダイアフラム等の方式が考えられる。本実施形態ではダイアフラムの例を図示してある。
【0030】
圧力室202と、それに連通する圧力伝播管203の内部には圧力伝播媒体208が密閉収容されている。容積が縮小した圧力室202は内部の圧力が上昇する。この時圧力室202で発生した圧力は圧力伝播媒体208を伝わり、圧力伝播管203内部の圧力伝播媒体208にも伝わる。圧力伝播媒体208を非圧縮性流体材料とした場合、パスカルの原理により圧力室202と圧力伝播管203の内面はすべて同じ圧力が加わることとなる。
【0031】
一方、圧力伝播管203の流体室204側の端部は、流体室204と圧力伝播管203とを区画隔離し可撓性を有する隔壁で仕切られている。本実施形態ではダイアフラム207として図示している。圧力伝播管203内の圧力が高まると、ダイアフラム207は流体室204側に変形して押し出される。ダイアフラム207が流体室204側に変形することで、流体室204の容積は縮小されて流体室204の圧力は上昇する。
【0032】
流体室204の圧力が上昇すると、行き場を失った液体209は噴射管206を通り噴射開口部300から噴射される。この時、噴射される液体209の噴射速度や噴射量は流体室204の容積変化の早さと量で決まる。
【0033】
流体室204より先端方向は出口流路を兼ねる噴射管206であって、噴射開口部300が開口された構造となっている。また、流体室204には流体供給部205が液体209の入口流路として接続されている。入口流路側の合成イナータンスは、接続流路側(出口流路側)の合成イナータンスよりも大きくなるよう、長さ、内径が設定されている。
【0034】
(本実施形態の効果)
圧電素子211の駆動は印加する電圧波形によりその伸張の速度や量をコントロールすることができる。圧電素子211の伸張速度と伸張量はこれまで説明した通りの経路で流体室204の容積変化と圧力上昇を発生させることから、圧電素子211に印加する電圧波形によって噴射開口部300から噴射される液体209の速度や量をコントロールできる。
【0035】
また、液体209は圧力室202、圧力伝播管203のいずれにも接触しない構造であるため、液体209に接した部品が減り、洗浄再利用する部品、又は廃棄する部品を減らすことが可能となる。
【0036】
(第1実施例)
次に、図2を参照して本実施例について説明する。
図2は、本実施例に係る圧力発生部20及び噴射管206を示す断面図である。図2は、本実施形態に係る手術具としての流体噴射装置5を例示する構成説明図である。本実施形態の図1において説明した流体供給容器2、流体供給ポンプ10、流体供給チューブ4、流体供給部205、流体室204、噴射管206、及び噴射開口部300、圧電素子211については図2の本実施例と構成も働きも同じであるため、説明を省略する。
【0037】
また、図2において、本実施形態の図1において説明した流体供給容器2、流体供給ポンプ10、流体供給チューブ4、については省略した。以降、図1の本実施形態と図2の本実施例との違いのある部分を中心に説明する。
【0038】
図2において、圧電素子211と圧力室202は可撓性を有する隔壁であるダイアフラム210によって区画隔離されている。圧電素子211の駆動により圧力を発生させる際、可撓性を有するダイアフラム210は圧電素子の伸張に柔軟に追従し、滑らかな動作で圧力室202の形状を変化させ、効率よく圧電素子211の動作を圧力室202の容積変化に変換することができる。
【0039】
圧力室202と、それに連通する圧力伝播管203の内部には圧力伝播媒体208が密閉収容されている。容積が縮小した圧力室202は内部の圧力が上昇する。この時圧力室202で発生した圧力は圧力伝播媒体208を伝わり、圧力伝播管内部の圧力伝播媒体208にも伝わる。
【0040】
本実施例では圧力伝播媒体として、シリコンオイルを使うことが望ましい。シリコンオイルは長期安定性もあり、水の様に溶存気体の気化による気泡発生等が少なく、信頼性の高い流体噴射装置5を実現できるため望ましい。また、変形するために必要なエネルギーも小さく圧力を効率よく伝達することができるため、エネルギーのロスも少なく、より小型で高出力の流体噴射装置5を実現できる。
【0041】
一方、圧力伝播管203の流体室204側の端部は、流体室204と圧力伝播管203とを区画隔離し可撓性を有する隔壁で仕切られている。本実施形態ではダイアフラム207として図示している。圧力伝播管203内の圧力が高まると、ダイアフラム207は流体室204側に変形して押し出される。ダイアフラム207が流体室204側に変形することで、流体室204の容積は縮小されて流体室204の圧力は上昇する。
【0042】
流体室204の圧力が上昇すると、行き場を失った液体209は噴射管を通り噴射開口部300から噴射される。この時、噴射される液体209の噴射速度や噴射量は流体室204の容積変化の早さと量で決まるが、圧力室202の構成に柔軟性があり可撓性を有するダイアフラム210を使い、圧力伝達ロスの少ない圧力伝播媒体としてシリコンオイルを使うことで、圧電素子211の動作が流体室204の動作にダイレクトに反映される流体噴射装置5を実現できる。これは制御性の良い流体噴射装置5を実現することと同意である。
【0043】
なお、流体供給部205、流体室204、噴射管206、噴射開口部300の部分の構成と動作、働きは本実施形態の図1と同様である。
【0044】
(本実施例の効果)
圧電素子211の駆動は印加する電圧波形によりその伸張の速度や量をコントロールすることができる。圧電素子211の伸張速度と伸張量はこれまで説明した通りの経路で流体室204の容積変化と圧力上昇を発生させることから、圧電素子に印加する電圧波形によって噴射開口部300から噴射される液体209の速度や量をコントロールできる所は本実施形態の例と同様である。本実施例では、圧力室202の構成に柔軟性があり可撓性を有するダイアフラム210を使い、圧力伝達ロスの少ない圧力伝播媒体としてシリコンオイルを使うことで、圧電素子211の動作が流体室204の動作にダイレクトに反映される液体噴射装置を実現できる。
【0045】
また、液体209は圧力室、圧力伝播管のいずれにも接触しない構造であるため、液体209に接した部品が減り、洗浄再利用する部品、又は廃棄する部品を減らすことが可能となる点も。本実施形態の例と同様である。
【0046】
(第2実施例)
次に、図3を参照して本実施例について説明する。
図3は、本実施例に係る圧力発生部及び噴射管を示す断面図であり、手術具としての流体噴射装置6を例示する構成説明図である。本実施形態の図1において説明した流体供給容器2、流体供給ポンプ10、流体供給チューブ4、流体供給部205、流体室204、噴射管206、噴射開口部300、及び圧電素子211については図2の第1実施例と構成も働きも同じであるため、説明を省略する。
【0047】
また、図3において、本実施形態の図1において説明した流体供給容器2、流体供給ポンプ10、流体供給チューブ4、については省略した。以降、図2の第1実施例と図3の本実施例との違いのある部分を中心に説明する。
【0048】
本実施例においては、圧力伝播媒体は流体ではなく、非体積圧縮性の弾性材料で変形性は有するが体積圧縮性はなく、流動性や水に対する可溶性もない材料としてシリコーン樹脂を採用した例である。
【0049】
本実施例の圧力伝播媒体208は流動性がなく、隙間や穴があっても流れ出すことはない材料を選定した場合の例である。したがって、第1実施例の構成に含まれていた区画隔離を目的とするダイアフラム210とダイアフラム207がない構造となっている。
【0050】
圧力室202と圧力伝播管203とには圧力伝播媒体208が密閉封入されているが、液漏れの心配はなくパッキンやシール材、又は接合部を封止するための接着剤等も不要となる。また、区画隔離するための部品が不要となり部品コストや組立てコストが下げられる。
【0051】
圧力室202から圧力伝播管203及び圧力伝播媒体208の動作や働きについては第1実施例と全く同様である。
【0052】
圧力伝播管203を満たす圧力伝播媒体208は流体室204に開口露出している。圧力伝播管203内の圧力上昇により圧力伝播媒体208は開口露出部表面が変形する。圧力伝播媒体208の開口露出表面の変形は流体室204の容積を縮小させる。
【0053】
流体室204には流体供給部205から液体209が供給される。その結果、流体供給部205と、流体室204と噴射管206は液体209で満たされた状態となっている。
【0054】
流体室204の容積が縮小されると、流体室204の圧力は高まり、噴射管206から液体209が噴射される。
【0055】
以上の説明の通り、図3の本実施例では、圧電素子211を変位させることで、結果的に噴射管206から液体209を噴射する機能を実現できる。圧力伝播媒体208は流体ではなく、非体積圧縮性の弾性材料で変形性は有するが体積圧縮性は無く、流動性や水に対する可溶性もない材料を使うことで、ダイアフラム等の脆弱部品や液漏れ対策部品を使う必要がなくなる。
【0056】
(実施形態2)
次に、本実施形態に係る流体噴射装置について図4を参照して説明する。前述した実施形態1が隔壁として平面形状のダイアフラム207を用いていることに対して、本実施形態は、流体室204が圧力伝播媒体208内に包含される構造で構成されていることを特徴としている。なお、実施形態1と同じ機能要素には同じ符号を附している。
【0057】
図4は、本実施形態に係る圧力発生部の内、噴射管206付近を示す断面図であり、手術具としての流体噴射装置7を示す断面図である。実施形態1の図1において説明した流体供給容器2、流体供給ポンプ10、流体供給チューブ4、流体供給部205、流体室204、噴射管206、噴射開口部300、及び圧電素子211については図1の実施形態1と構成も働きも同じであるため、説明を省略する。
【0058】
また、図4において、実施形態1の図1において説明した流体供給容器2、流体供給ポンプ10、流体供給チューブ4、圧電素子211については省略した。
本実施形態においては、実施形態1の図2の圧力伝播管203の中に、隔壁からなる管構造の流体室204を包含配置した構造となっている。実施形態1と同様に流体室204と流体供給ポンプ10とは流体供給部205によって接続され、流体供給ポンプ10からの液体209の供給が行われる。また、流体室204は噴射管206と連通接続された構造となっている。
【0059】
管状の隔壁からなる流体室204は、圧力伝播管203の内部に形成され、圧力伝播媒体208内に包含配置されている。実施形態1で説明した通りの働きにより圧力伝播管203内の圧力伝播媒体208の圧力が上昇する。そのため、流体室204は押圧されて内容積を縮小させる。その結果、流体室204内の圧力が上昇して噴射管206から液体209が噴射される。
【0060】
本実施形態の流体室204は圧力伝播媒体208の圧力上昇によって隔壁92が流体室204側に変形し(二点鎖線で図示)、流体室204の容積を急激に縮小し、流体室204内の圧力が急激に高まり噴射管206内を伝播して、先端の噴射開口部300からパルス化された液体209が高速で噴射される。
【0061】
(本実施形態の効果)
流体室204の容積を変更して液体209を噴射させる構造では、流体室204内に気泡が存在すると容積を縮小した際に気泡が収縮してしまい流体室204内を所定の圧力にすることができない。液体209の流路に突起部や隅部などの流体流動を変化させる部分があると、その部分に気泡が発生しやすいことが知られている。本実施形態では、流体室204が管構造であることから、流体室204と噴射管206とを滑らかに連通させることができ、流体室204及び噴射管206の流路内で気泡の発生を抑制することができる。
【0062】
また、平坦部分を持たないような管構造であっても、隔壁に発生する応力は等分布応力となるので局所的な応力集中が発生せず、長時間にわたって隔壁を繰り返し変形させても応力集中に起因する破損がなく、耐久性を向上させることができる。
【0063】
(医療器具)
なお、医療器具として前述した実施形態1又は実施形態2の流体噴射装置を用いることが可能である。流体噴射装置は、液体209を微小液滴にしてパルス状に高速で噴射することができる。このような流体噴射は、生体組織の切除・切開する場合に、血管等の細管組織を温存できるなど手術具として、細管組織を損傷しない洗浄具等の医療器具として有効である。
【符号の説明】
【0064】
1,5,6,7…流体噴射装置 2…流体供給容器 4…流体供給チューブ 10…流体供給ポンプ 20… 圧力発生部 202…圧力室 203…圧力伝播管 204…流体室 205…流体供給部 206…噴射管 207…ダイアフラム 208…圧力伝播媒体 209…液体 210…ダイアフラム(隔壁) 211…圧電素子 300…噴射開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を発生させる圧力発生部と、
圧力伝播媒体を介して前記圧力を伝播させる圧力伝播管と、
前記圧力伝播管で伝播された圧力によって容積が変更可能な流体室と、
前記流体室に流体を供給する流体供給部と、
前記流体室に連通し、前記流体を噴射する噴射管と、
前記圧力伝播管と前記流体室との間を区画し、前記圧力伝播管で伝播された圧力に応じて前記流体室の容積を変更させる隔壁と、
を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記流体室は、前記圧力伝播管の内部に形成され、管構造を有していることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置において、
前記隔壁は、ダイアフラムであることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の流体噴射装置において、
前記圧力発生部は、
容積が変更可能な圧力室と、
前記圧力室の容積を変更させる圧電素子と、
を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の流体噴射装置において、
前記圧力発生部は、
容積が変更可能な圧力室と、
前記圧力室の容積を変更させるソレノイドと、
を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
圧力を発生させる圧力発生部と、
固体で形成された圧力伝播媒体の変位によって前記圧力を伝播させる圧力伝播管と、
前記圧力伝播管で伝播された圧力によって容積が変更可能な流体室と、
前記流体室に流体を供給する流体供給部と、
前記流体室に連通し、前記流体を噴射する噴射管と、
を有することを特徴とする流体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−144990(P2012−144990A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1722(P2011−1722)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】