流体封入式防振装置とそれに用いられるカバー部材
【課題】カバー部材の第二の取付部材側への組み付け構造が簡単になることに加え、カバー部材が確実に組み付けられることにより、可撓性ゴム膜が好適に保護される、新規な構造の流体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】可撓性ゴム膜52の外周縁部が加硫接着された環状固定金具54には可撓性ゴム膜52と一体形成された被覆ゴム層60が形成されていると共に、可撓性ゴム膜52を外方から覆うカバー部材94の被覆ゴム層60への当接部分には、当接突起108が突設されており、更にカバー部材94の外周縁部上には第二の取付部材14に向かって軸方向に延びる複数の係止片96が設けられ、係止片96が第二の取付金具14の係止用突部80に対して軸方向で抜け止め係止されることにより、当接突起108が被覆ゴム層60に対して軸方向に押し付けられている。
【解決手段】可撓性ゴム膜52の外周縁部が加硫接着された環状固定金具54には可撓性ゴム膜52と一体形成された被覆ゴム層60が形成されていると共に、可撓性ゴム膜52を外方から覆うカバー部材94の被覆ゴム層60への当接部分には、当接突起108が突設されており、更にカバー部材94の外周縁部上には第二の取付部材14に向かって軸方向に延びる複数の係止片96が設けられ、係止片96が第二の取付金具14の係止用突部80に対して軸方向で抜け止め係止されることにより、当接突起108が被覆ゴム層60に対して軸方向に押し付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部の流体室に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、特に、流体室の壁部の一部を構成する可撓性ゴム膜を外方から覆うように配設して保護するカバー部材を備えた流体封入式防振装置とかかるカバー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等の防振装置の一種として、非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置が知られている。この流体封入式防振装置は、第一の取付部材と第二の取付部材が互いに離隔配置されて本体ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、その内部に非圧縮性流体が封入された流体室が形成されている。また、流体室は、第二の取付部材で固定的に支持された仕切部材で仕切られており、仕切部材を挟んだ両側に壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された受圧室と壁部の一部が可撓性ゴム膜で構成された平衡室が形成されていると共に、それら受圧室と平衡室がオリフィス通路によって相互に連通せしめられている。このような構造によれば、振動入力に伴い受圧室と平衡室の間に相対的な圧力変動が生じて、オリフィス通路を通じて流動する流体の共振作用等の流動作用に基づき防振効果が発揮される。かくの如き流体封入式防振装置は、例えば自動車用のエンジンマウントやボデーマウント、デフマウントの他サスペンションメンバマウント等への適用が検討されている。
【0003】
ところで、上述の流体封入式防振装置の可撓性ゴム膜においては、平衡室の容積変化の許容量が十分に確保されるように、薄肉のゴム膜からなり、且つ仕切部材を挟んで受圧室と反対側の外方に向かって張り出すように設けられることが多い。そうすると、可撓性ゴム膜には、他部材や異物が直接に接触等して、予期しない損傷が発生するおそれがあった。
【0004】
そこで、このような問題に対処するために、例えば、特許文献1(特開2007−64248号公報)には、第二の取付部材としての筒状部の一方の開口部を覆蓋する可撓性ゴム膜に対して、外方から覆うように逆カップ状のカバー部材を配設して、可撓性ゴム膜を保護するようにした構造の流体封入式防振装置が提案されている。かかる流体封入式防振装置においては、カバー部材の開口部分が筒状に延び出しており、その先端の開口周縁部において内周面上に突出する鉤状の係止部が形成されている。一方、第二の取付部材としての筒状部の開口周縁部の外周面には、全周に亘って連続して延びる膨出部が、可撓性ゴム膜と一体形成されている。そして、係止部が膨出部を軸方向に跨いで膨出部の下端面に重ね合わせられることにより、係止部が膨出部に係止されて、カバー部材が可撓性ゴム膜に組み付けられている。
【0005】
ところが、上述の特許文献1に示される流体封入式防振装置においては、カバー部材の係止部に係止される膨出部が、可撓性ゴム膜と一体形成されていることから、このゴム製の膨出部のへたりに起因して、カバー部材が防振装置本体に対して回転したり、ガタついたり、外れ易くなったり等して、安定した組み付け状態が実現され難い。特に、流体封入式防振装置が自動車用エンジンマウント等に適用される場合には、マウントが内燃機関の輻射熱や熱気等に晒されると、膨出部のへたりが顕著になる問題があった。そのために、可撓性ゴム膜を確実に保護する信頼性と耐久性が十分に得られ難い問題を内在していた。
【0006】
上述の問題に鑑み、本発明者は、カバー部材だけでなく防振装置本体の係止部分も全て硬質の合成樹脂材や金属材で形成することを検討した。しかしながら、特許文献1の図面に示されている構造では、組み付けの際に、鉤状の係止部を、膨出部を軸方向に乗り越えて係止させる必要がある。そのため、係止部分がゴム材料等を用いて形成されないと容易に変形しないことから、組み付けが困難になり、例えば、組み付けの作業性を向上させるために膨出部を小さくすると、係止部と膨出部の係止状態が容易に解除されてしまうおそれがあることから、実用化が難しかったのである。また、螺子構造や接着等でカバー部材を組み付けることも検討したが、組み付けの際に必要とされる時間や手間が多くなって実用的でなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2007−64248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、カバー部材の第二の取付部材側への組み付け構造が簡単になることに加え、カバー部材が確実に組み付けられることにより、可撓性ゴム膜が好適に保護される、新規な構造の流体封入式防振装置とかかる流体封入式防振装置に用いられるカバー部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、前述の課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
すなわち、本発明の特徴とするところは、第一の取付部材が第二の取付部材に設けた筒状部の一方の開口部側に離隔配置されてそれら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されており、筒状部の一方の開口部が本体ゴム弾性体で流体密に閉塞されると共に筒状部の他方の開口部が可撓性ゴム膜で流体密に閉塞されて非圧縮性流体が封入された流体室が形成され、且つ第二の取付部材で支持された仕切部材で流体室が仕切られることにより本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と可撓性ゴム膜で壁部の一部が構成された平衡室が形成されていると共に、これら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路が設けられた流体封入式防振装置において、第二の取付部材から外周側に突出して周方向に延びる係止用突部が形成されている一方、可撓性ゴム膜の外周縁部に環状固定金具が加硫接着されて環状固定金具が第二の取付部材の筒状部に固定されることにより筒状部の他方の開口部が可撓性ゴム膜で流体密に閉塞されていると共に、可撓性ゴム膜の外周縁部が加硫接着された環状固定金具の内周縁部の外面には被覆ゴム層が可撓性ゴム膜と一体形成されており、更に、可撓性ゴム膜を外方から覆うカバー部材が組み付けられており、カバー部材の外周部分には被覆ゴム層への当接部分に当接突起が少なくとも一つ突設されていると共に、カバー部材の外周縁部には周上の複数箇所において第二の取付部材の筒状部に向かって軸方向に延びる係止片が設けられており、これらの係止片が係止用突部に対して軸方向で抜け出しを阻止する方向に係止されることにより、当接突起が被覆ゴム層に対して軸方向に押し付けられている流体封入式防振装置にある。
【0011】
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、当接突起が被覆ゴム層に対して軸方向(筒状部の軸方向に同じ)に押し付けられることによって、圧縮変形したゴムの弾性がカバー部材に対して軸方向に及ぼされる。これにより、カバー部材の係止片と第二の取付部材側の係止用突部との係止部位に働く軸方向の当接力が大きくされて、カバー部材の組み付け状態が安定する。即ち、係止片が係止用突部に係止された状態下、被覆ゴム層の弾性がカバー部材に及ぼされることによって、カバー部材ががたつき難くなり、可撓性ゴム膜の保護状態が安定して維持される。
【0012】
また、当接突起が被覆ゴム層に対して軸方向に押し付けられて、食い込むように当接することにより、カバー部材の周方向等のガタツキが防止されると共に、カバー部材の可撓性ゴム膜に対する位置決め効果が発揮される。即ち、当接突起と被覆ゴム層の当接部分が、単純な平面形状でなく、凹凸形状とされていることにより、カバー部材の可撓性ゴム膜や環状固定金具等に対する周方向の位置決め力が向上される。
【0013】
さらに、被覆ゴム層が環状固定金具に被着形成されており、当接突起が被覆ゴム層を介して環状固定金具に重ね合わせられるようになっていることから、被覆ゴム層に食い込んだ当接突起が必要以上に食い込んだり、経時的に食い込み量が大きく進行し過ぎることが防止される。これにより、被覆ゴム層の耐久性が向上されて、ゴムの弾性が長期間に亘って安定して得られる。
【0014】
更にまた、カバー部材の係止片が周上の複数箇所に設けられており、全周に亘って連続して延びていないことから、カバー部材における係止片を備えた周上部分には、周方向に連続に延びる筒形状とされた場合に比して、変形許容量が大きくされる。これにより、例えば、カバー部材の組み付け時に、カバー部材の係止片を備えた周上部分を径方向外方に拡開するように変形させて、係止片が係止用突部を乗り越える際の接触抵抗を抑えつつ、係止片と係止用突部を互いに係止することも容易となり、組み付け作業が容易になる。
【0015】
それ故、本発明の流体封入式防振装置によれば、カバー部材における組み付け構造の簡単化と組み付け状態の安定性が両立して高度に達成され得るのである。
【0016】
なお、係止用突部は、第二の取付部材自体に一体形成されている必要はなく、別部品を用いて第二の取付部材の外周側に突出形成されていても良い。例えば、第二の取付部材を防振対象部材に装着固定するためのブラケットに対して係止用突部を形成することも可能であり、或いは可撓性ゴム膜の環状固定金具を利用して係止用突部を形成することも出来る。
【0017】
また、係止片は、周上において少なくとも二つあれば良く、要求される係止強度や製作性、組み付け性、流体封入式防振装置の大きさ等に応じて、その数や各係止片の周方向長さ、隣り合う係止片の周方向間の離隔距離等が適宜に設定変更され得る。
【0018】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材が、可撓性ゴム膜を全体に亘って覆うフルカバー構造とされている構造が、採用されても良い。これによれば、可撓性ゴム膜に対して他部材や異物等が直接に接触することが完全に防止されて、可撓性ゴム膜の保護が一層有利となる。
【0019】
特に本構造では、カバー部材と可撓性ゴム膜の対向面間を密閉領域とすることも可能であり、可撓性ゴム膜の外方に密閉された空気室を形成した構造を採用すれば、かかる密閉状態下での空気ばねの作用により可撓性ゴム膜の弾性変形量が制限されることを利用して、防振装置のばね特性をチューニングすることも可能である。
【0020】
なお、フルカバー構造とは、筒状部の軸方向外方から可撓性ゴム膜を見た時に、環状固定金具で拘束されていない可撓性ゴム膜の全体がカバー部材で覆われて直接に見えないようにする形状のカバー部材の構造をいう。その際、例えば、カバー部材の側壁部や被覆ゴム層の上端部、カバー部材の外周縁部と被覆ゴム層の軸方向対向面間等において、カバー部材と被覆ゴム層との対向面間に形成された領域を外部空間に連通させる、連通孔等の隙間や孔、溝が設けられていても良い。
【0021】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材において、当接突起が先細形状とされている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、当接突起が被覆ゴム層に対して軸方向に押し付けられる際に、より局所的に食い込ませることが出来、それによって、ゴムの弾性がより効果的に得られて、カバー部材の抜け止め効果や回転防止効果が一層有利に向上され得る。
【0022】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材において、当接突起が径方向に延びる形状とされている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、当接突起が被覆ゴム層に対して径方向に延びるように食い込むようになり、カバー部材の周方向のガタツキが一層有利に抑えられる。
【0023】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材の外周部分と被覆ゴム層の対向面間には、当接突起が形成されていない部分において、カバー部材と可撓性ゴム膜との対向面間に形成された領域を外部空間に連通させる大気連通路が形成されている構造が、採用されても良い。これにより、カバー部材と可撓性ゴム膜の対向面間が密閉領域になることが回避されることから、密閉状態下での空気ばね作用による可撓性ゴム膜の弾性変形量の変化に起因して、防振装置のばね特性が変化する問題が解消される。
【0024】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、当接突起が、カバー部材の外周部分において、係止片の形成位置に設けられている構造が、採用されても良い。これにより、当接突起が被覆ゴム層に軸方向に押し付けられることに基づくゴムの弾性が、係止片に効率良く及ぼされることとなり、カバー部材の組み付け状態の更なる安定化が図られ得る。
【0025】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材の外周部分には、被覆ゴム層への当接部分において当接突起とは周上で異なる位置で当接突起よりも大きな当接面をもって被覆ゴム層に当接するスペーサ突部が形成されている構造が、採用されても良い。本構造によれば、カバー部材が係止用突部に組み付けられた状態下、カバー部材が軸方向に撓むように変形することにより、当接突起と周上で異なる位置にあるスペーサ突部が被覆ゴム層に当接され易くなる。これにより、例えば、カバー部材が他部材等に接触して撓むことに伴い、係止片が径方向外方に向かって変形する場合においても、スペーサ突部が被覆ゴム層に当接してカバー部材の撓み変形量が抑えられることにより、係止片の径方向外方に向かう変形量も制限される。要するに、ひとたび係止片と係止用突部が係止されて、カバー部材が係止用突部に組み付けられた本構造の流体封入式防振装置では、外部入力によるカバー部材の過大な撓みが抑えられて、係止片と係止用突部の係止状態が安定して保持されるのであり、それによって、カバー部材の耐久性および係止用突部への組み付け安定性が一層向上され得るのである。
【0026】
さらに、上述の構造では、カバー部材のスペーサ突部および当接突起が被覆ゴム層に当接されると、カバー部材における周方向で隣り合うスペーサ突部と当接突起の間の部分と被覆ゴム層との軸方向間に隙間が生ぜしめられ易くなる。この隙間を、前述のカバー部材と可撓性ゴム膜との対向面間を外部空間に連通させる大気連通路として利用することも可能であり、それによって、大気連通路の形成が簡単とされて、製造効率の向上が有利に図られ得る。
【0027】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、スペーサ突部が、カバー部材の外周部分において周方向で隣り合う当接突起間の周方向中央部分に形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、スペーサ突部の被覆ゴム層への当接領域が十分に確保され、前述のスペーサ突部の被覆ゴム層への当接によるカバー部材の撓み抑え効果が、一層効果的に発揮され得る。
【0028】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、環状固定金具が筒形状とされており、軸方向一方の開口周縁部において第二の取付部材の筒状部に対して固定されるかしめ固定部が形成されていると共に、軸方向他方の開口周縁部において径方向内方に向かって延び出す内フランジ状部が形成されており、この内フランジ状部に対して可撓性ゴム膜の外周縁部が加硫接着されて内フランジ状部の外面に対して被覆ゴム層が被着形成されている構造が、採用されても良い。これにより、環状固定金具が第二の取付部材に確実に固定されると共に、カバー部材の当接突起が、被覆ゴム層を介して環状固定金具の内フランジ状部に重ね合わせられることによって、当接突起の軸方向の押し付け力が被覆ゴム層に安定して及ぼされる。それ故、ゴムの弾性に基づく係止片と係止用突部の係止作用が一層有利に生ぜしめられて、カバー部材の組み付け安定性がより有利に発揮され得る。
【0029】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、第二の取付部材に対してブラケット金具が外嵌固定されていると共に、ブラケット金具の軸方向端縁部が第二の取付部材の外周面上で突出せしめられており、このブラケット金具の突出部分によって係止用突部が構成されている構造が、採用されても良い。かかる構造によれば、防振対象部材と第二の取付部材の間に配されて両部材に固定されるブラケット金具の強度を利用して、高強度な係止用突部が実現されることから、係止片と係止用突部の係止状態が一層安定して、カバー部材の組み付け安定性がより向上され得る。また、カバー部材がブラケット金具を介して第二の取付部材に組み付けられることを換言すると、ブラケット金具が第二の取付部材に外嵌固定されていると共にカバー部材に係止固定されることとなり、その結果、ブラケット金具と第二の取付部材の組み付け状態が一層安定して、延いては流体封入式防振装置の防振対象部材への組み付け安定性が一層向上され得る。
【0030】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材が、合成樹脂材料の一体成形品で構成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、ゴム材料からなるカバー部材に比して、係止用突部との係止に関する必要強度が十分に確保され得ることに加えて、金属材料からなるカバー部材に比して、軽量化や低コスト化等が有利に図られ得る。
【0031】
さらに、本発明の特徴とするところは、前述の流体封入式防振装置に用いられるカバー部材にある。このような本発明に従う構造とされたカバー部材においては、前述の流体封入式防振装置の説明からも明らかなように、当接突起の被覆ゴム層への食い込み状態での当接作用により、カバー部材の係止用突部に対する周方向のガタツキ防止効果や位置決め効果が発揮され得ることに加え、当接突起が被覆ゴム層を介して環状固定金具に重ね合わせられることで、当接突起の被覆ゴム層に対する過大な食い込みの防止効果が発揮され得る。それ故、それら効果の協働作用に基づいて、長期間に亘って抜け止め強度の大きいカバー部材が実現され得るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1〜4には、本発明の流体封入式防振装置に係る一実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。この自動車用エンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で連結された構造を呈している。第一の取付金具12がパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具14が車両ボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットがボデーに対して吊り下げ状態で防振支持されるようになっている。
【0033】
なお、図1〜4では、自動車に装着する前のエンジンマウント10の単体での状態が示されているが、自動車へのマウント装着状態では、パワーユニットの吊り下げによるパワーユニットの分担支持荷重がマウント軸方向(図1中、上下)に入力されることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14がマウント軸方向で離隔方向に相対変位して、本体ゴム弾性体16等が弾性変形する。また、かかる装着状態下、防振すべき主たる振動は、略マウント軸方向に入力されることとなる。以下の説明中、特に断りのない限り、上下方向は、マウント軸方向となる図1中の上下方向をいう。
【0034】
より詳細には、第一の取付金具12が、筒状の固定金具18と上方に向かって開口する器状のカップ金具20を含んで構成されており、固定金具18の上端部分にカップ金具20の中央底部が重ね合わせられて固定されている。この固定金具18の内周面には、螺子溝が設けられている。
【0035】
一方、第二の取付金具14は、大径の略円筒形状の筒状部を備えており、その下部が下方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパを有している。また、第二の取付金具14の上部には、径方向外方に広がる環状の段差部22が形成されていると共に、段差部22の外周縁部には、大径リング状のかしめ部24が立ち上がるようにして一体形成されている。
【0036】
第一の取付金具12の径方向外方に第二の取付金具14が離隔配置されて、両金具12,14が略同心状に位置せしめられている。第一の取付金具12と第二の取付金具14の径方向対向面間には、本体ゴム弾性体16が配設されている。
【0037】
本体ゴム弾性体16は厚肉の略円筒形状を有しており、その外周面が第二の取付金具14の軸方向中間部分から下端部にかけての内周面に加硫接着されている。更に、本体ゴム弾性体16の内周面が、第一の取付金具14における固定金具18の軸方向中間部分から上部にかけての外周面やカップ金具20の外周面に加硫接着されている。即ち、本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた一体加硫成形品として形成されている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16を介して弾性的に連結されていると共に、第二の取付金具14の下方の開口部が、本体ゴム弾性体16および第一の取付金具12によって流体密に覆蓋されている。
【0038】
また、本体ゴム弾性体16の下端面には、第二の取付金具14の下方の開口部と第一の取付金具12の下端部の間に向かって凹状に開口する肉抜き凹所26が形成されていることで、本体ゴム弾性体16の下端部分の応力が軽減されるようになっている。また、本体ゴム弾性体16の外周部分には、外周凹溝28が形成されている。外周凹溝28は、第二の取付金具14の上方の開口部と第一の取付金具12におけるカップ金具20の上部開口との間に向かって凹状に開口する断面で周方向に連続して延びている。また、第二の取付金具14における軸方向中間部分から段差部22にかけての内周面には、本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層30が略全体に亘って被着形成されている。
【0039】
これら第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品には、仕切部材32が組み付けられている。仕切部材32は、オリフィス金具34と可動ゴム膜36を含んで構成されている。
【0040】
オリフィス金具34は、径寸法が異なる大小二つの円筒形状の大径筒部38および小径筒部40が径方向に所定距離を隔てて且つ略同心状に配されて、それら両筒部38,40の下端部分が円環板部42で接続された形態を有していることにより、上方に向かって凹状に開口する断面で周方向に連続して延びており、本実施形態では鉄やアルミニウム、アルミ合金等の金属材を用いて形成されているが、例えば硬質の合成樹脂材等を用いて形成されても良い。特に、オリフィス金具34の小径筒部40の高さ寸法が、大径筒部38の高さ寸法よりも大きくされている。また、大径筒部38の上端部には、径方向外方に向かって円環板形状の鍔状部44が突設されている。
【0041】
また、オリフィス金具34の内側には、弾性ゴム材からなる略円板形状の可動ゴム膜36が配されており、可動ゴム膜36の縁面が、オリフィス金具34の小径筒部40の軸方向中間部分の内周面に加硫接着されている。即ち、可動ゴム膜36が、オリフィス金具34を備えた一体加成形品とされていて、該金具34に対して弾性変形可能に支持されている。
【0042】
さらに、オリフィス金具34の小径筒部40の上端部分には、可動ゴム膜36と一体形成された環状のシールゴム46が、上方に向かって突設されている一方、オリフィス金具34の小径筒部40と大径筒部38の径方向対向面間の環状領域には、可動ゴム膜36およびシールゴム46と一体形成された充填ゴム48が設けられている。充填ゴム48は、その外周面が小径筒部40の外周面や大径筒部38の内周面、円環板部42の上面に加硫接着されて、かかる環状領域に充填されるようにして周方向に所定の長さ(本実施形態では一周弱)で延びている。また、充填ゴム48の上端面が、略平坦形状を有しており、オリフィス金具34の鍔状部44の上面と略同じ高さに位置せしめられて、或いは上端面の外周部分が鍔状部44の上面に被着形成されている。また、図面上に明示されていないが、充填ゴム48の一部が、上方に向かって突出して、小径筒部40の軸方向中間部分から上端部にかけての外周面に加硫接着されていると共に、シールゴム46の外周部分と一体形成されていることにより、大径筒部38と小径筒部40の径方向対向面間の上部外方における小径筒部40およびシールゴム46の径方向外方の領域を、周方向に所定の長さで充填せしめている。これにより、オリフィス金具34における大径筒部38と小径筒部40の径方向対向面間および小径筒部40とシールゴム46の径方向外方の領域において、充填ゴム48で充填されていない領域によって、周方向に所定の長さで螺旋状に延びる周溝50が形成されている。
【0043】
このような仕切部材32が第二の取付金具14の上部開口から入れられて、仕切部材32のオリフィス金具34の大径筒部38が、第二の取付金具14の内側のシールゴム層30を介して第二の取付金具14に嵌め込み固定されている。また、オリフィス金具34の鍔状部44が第二の取付金具14の段差部22に対して軸方向に重ね合わせられていることにより、仕切部材32の第二の取付金具14に対する嵌め込み位置(固定位置)が規定されている。また、第二の取付金具14には、可撓性ゴム膜としてのダイヤフラム52が設けられている。
【0044】
ダイヤフラム52は、変形容易な薄肉のゴム膜からなり、上方に向かって膨らむように湾曲する略円形ドーム状を呈している。また、ダイヤフラム52の外周縁部には、環状固定金具54が設けられている。
【0045】
環状固定金具54は、下方から上方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ付きの略円筒形状を呈しており、鉄やアルミニウム、アルミ合金等の金属材を用いて形成されている。環状固定金具54の上端部分には、径方向内方に延びる内フランジ状部56が一体形成されていると共に、環状固定金具54の下端部分には、径方向外方に延びる外フランジ状のかしめ固定部58が一体形成されている。特に本実施形態では、径方向に広がる幅寸法に関して、かしめ固定部58が、オリフィス金具34の鍔状部44と同じかそれよりも僅かに小さくされている一方、内フランジ状部56が、かしめ固定部58に比して十分に大きくされている。また、内フランジ状部56の内径寸法がオリフィス金具34の小径筒部40の径寸法に比して小さくされている。なお、内フランジ状部56の内周縁部分は、上方に向かって僅かに立ち上がるように曲げられている。このような環状固定金具54は、例えば、薄肉の円板形状の金属板にプレス加工を施すこと等で有利に実現される。そして、ダイヤフラム52の外周縁部が内フランジ状部56の内周縁部に加硫接着されていることによって、ダイヤフラム52が環状固定金具54を備えた一体加硫成形品とされて、環状固定金具54に対して弾性変形可能に支持されている。
【0046】
また、環状固定金具54のかしめ固定部58を除いた内外周面には、略全体に亘ってダイヤフラム52と一体形成されたゴム層が被着形成されており、特に、内フランジ状部56の上面に被着された比較的に厚肉のゴム層が、本実施形態に係る被覆ゴム層60とされている。本実施形態では、環状固定金具54の内周縁部に一体的に設けられた内フランジ状部56の外面において、被覆ゴム層60が周方向に略一定の断面で連続して延びている。被覆ゴム層60の上面が、内フランジ状部56と略平行に延びる平坦な形状とされている。
【0047】
この環状固定金具54を備えたダイヤフラム52が、第二の取付金具14の上部開口から軸方向に入れられて、環状固定金具54のかしめ固定部58が、第二の取付金具14のかしめ部24の内側に収容配置せしめられていると共に、かしめ固定部58より先にかしめ部24に収容されて第二の取付金具14の段差部22に重ね合わせられたオリフィス金具34の鍔状部44に対して、軸方向に重ね合わせられている。そして、かしめ部24にかしめ加工が施されて、鍔状部44とかしめ固定部58が第二の取付金具14にかしめ固定されている。これにより、仕切部材32とダイヤフラム52が、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に固定されていると共に、第二の取付金具14の上方開口部が仕切部材32及びダイヤフラム52によって流体密に閉塞されている。
【0048】
すなわち、第二の取付金具14の一方(図1中、下)の開口部が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されると共に第二の取付金具14の他方(図1中、上)の開口部がダイヤフラム52で流体密に閉塞されて、非圧縮性流体が封入された流体室が形成されている。そして、第二の取付金具14で固定的支持された仕切部材32で流体室が仕切られることにより、仕切部材32を挟んだ一方(図1中、下)の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づき圧力変動が生ぜしめられる受圧室62が形成されている。また、仕切部材32を挟んだ他方(図1中、上)の側には、壁部の一部がダイヤフラム52で構成されて、ダイヤフラム52の弾性変形に基づき容積変化が容易に許容される平衡室64が形成されている。これら受圧室62や平衡室64に封入される非圧縮性流体としては、例えば水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油等が採用されるが、特に流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。受圧室62や平衡室64への非圧縮性流体の封入は、例えば、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材32やダイヤフラム52の組み付けを非圧縮性流体中で行うことによって、好適に実現される。
【0049】
また、オリフィス金具34の鍔状部44と環状固定金具54のかしめ固定部58が第二の取付金具14のかしめ部24にかしめ固定された状態下、オリフィス金具34の小径筒部40の上端部分と環状固定金具54の内フランジ状部56の内周縁部乃至は径方向中間部分が、内フランジ状部56の下面のゴム層およびオリフィス金具34のシールゴム46を介して軸方向に重ね合わせられており、かしめ固定に基づき、内フランジ状部56と小径筒部40の少なくとも一方が軸方向で互いに接近する方向に変位して、内フランジ状部56と小径筒部40の間で当該ゴム層やシールゴム46が軸方向に圧縮変形していることによって、内フランジ状部56と小径筒部40が軸方向に互いに密接状に重ね合わせられて、オリフィス金具34の周溝50の開口が環状固定金具54で流体密に閉塞されている。これにより、環状固定金具54の内周面と周溝50の壁面が協働して、仕切部材32の外周部分を周方向に所定の長さで螺旋状に延びるオリフィス通路66が形成されている。オリフィス通路66の一方の端部が、オリフィス金具34の円環板部42において軸方向に貫設された連通窓68を通じて受圧室62に接続されていると共に、オリフィス通路66の他方の端部が、オリフィス金具34の小径筒部40乃至はシールゴム46において径方向に貫設された図示しない連通窓を通じて平衡室64に接続されている。それによって、受圧室62と平衡室64がオリフィス通路66を通じて相互に連通せしめられて、それら両室62,64間で、オリフィス通路66を通じての流体流動が許容されるようになっている。
【0050】
このオリフィス通路66を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、例えば、該流体の共振作用に基づいてエンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるようにチューニングされている。オリフィス通路66のチューニングは、例えば、受圧室62や平衡室64の各壁ばね剛性、即ちそれら各室62,64を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体16やダイヤフラム52等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、オリフィス通路66の通路長さと通路断面積を調節することによって行うことが可能であり、一般に、オリフィス通路66を通じて伝達される圧力変動の位相が変化して略共振状態となる周波数を、当該オリフィス通路66のチューニング周波数として把握することが出来る。
【0051】
また、仕切部材32における可動ゴム膜36の一方(図1中、下)の面に受圧室62の圧力が及ぼされるようになっていると共に、可動ゴム膜36の他方(図1中、上)の面に平衡室64の圧力が及ぼされるようになっている。即ち、可動ゴム膜36がオリフィス金具34を介して第二の取付金具14および環状固定金具54に固定的に支持された状態で、可動ゴム膜36が受圧室62と平衡室64の圧力差に基づいて弾性変形することにより、受圧室62の圧力変動を吸収する圧力変動吸収機構が構成されている。特に本実施形態では、例えば、アイドリング振動や低速こもり音等に相当する20〜40Hz程度の中周波数域の振動入力に際して、可動ゴム膜36の弾性変形による受圧室62の圧力変動吸収効果に基づく防振効果(低動ばね特性による振動絶縁効果)が有効に発揮されるように、可動ゴム膜36の固有振動数がチューニングされている。
【0052】
また、第二の取付金具14には、ブラケット金具70が組み付けられている。ブラケット金具70は、図5〜8にも示されているように、略有底円筒形状のカップ状部72と、カップ状部72の外面に溶接やボルト等で固着される脚部74の複数を含んで構成されている。脚部74には、必要に応じて、図示しない車両ボデー側部材への固定用ボルトを挿し通すボルト挿通孔76が貫設されている。これら脚部74における数や形状、カップ状部72に対する固定位置等の形態は、自動車における装着スペースや要求されるボデー側部材への組み付け安定性或いは製作性等に応じて適宜に設計変更され得る。また、カップ状部72の底壁部の中央には、第一の取付金具12の固定金具18の外径寸法に比して十分に大きな形状の挿通孔78が貫設されている。更に、カップ状部72の開口周縁部には、突出部分としての径方向外方に突出する外フランジ状部80が一体形成されている。外フランジ状部80の外径寸法が、第二の取付金具14の段差部22の外径寸法に比して大きくされている。
【0053】
このブラケット金具70のカップ状部72の開口部分から第二の取付金具14が軸方向に圧入されて固定されていると共に、第一の取付金具12の固定金具18が、カップ状部72の底部の挿通孔78を通じて該底部よりも下方に突出配置されている。特に本実施形態では、第二の取付金具14の下部が、下方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパを有していることで、第二の取付金具14のブラケット金具70への圧入固定に際して、圧入方向(マウント軸方向)の移動がスムーズに実現されるようになっている。また、第二の取付金具14の下端部分がカップ状部72の底部に軸方向に当接することに加えて、第二の取付金具14の段差部22がカップ状部72の外フランジ状部80に軸方向に当接することにより、第二の取付金具14のブラケット金具70への圧入端位置を規定する当接機構が構成されている。
【0054】
また、第一の取付金具12には、パワーユニット側取付金具82が取り付けられるようになっている。パワーユニット側取付金具82は、図9〜13にも示されているように、長手状の略矩形板状を呈している。パワーユニット側取付金具82の長手方向一方の端部側(図9中、上)には、ボルト挿通孔84が厚さ方向(図10中、上下)に貫設されている一方、長手方向他方の端部側(図9中、下)には、固定用ボルト86が下方に向かって突設されていると共に、複数(本実施形態では2つ)のボルト挿通孔88が厚さ方向に貫設されており、それら固定用ボルト86やボルト挿通孔88が横幅方向(図9中、左右)に並設されている。長手方向一方の端部側のボルト挿通孔84の周縁部には、第一の取付金具12の固定金具18の二面幅形状に対応した形状を有する一対の位置決め突起90,90が上方に向かって突設されている。
【0055】
このパワーユニット側取付金具82の長手方向一方の端部側(図9中、上)がブラケット金具70の脚部74の間に挿し入れられて、ブラケット金具70のカップ状部72の下方に突出する第一の取付金具12の固定金具18の下端部が、一対の位置決め突起90,90の対向面間に挿入されてボルト挿通孔84の周縁部に重ね合わせられている。そして、固定用ボルト92が、下方からボルト挿通孔84を挿通して固定金具18に螺着固定されることによって、パワーユニット側取付金具82の固定用ボルト86等が設けられた長手方向他方の端部側(図9中、下)が、第一の取付金具12から軸直角方向外方(図2中、下または図4中、左)に延びる形態で、パワーユニット側取付金具82が第一の取付金具12に固定されている。
【0056】
而して、パワーユニット側取付金具82の固定用ボルト86が、図示しないパワーユニット側部材に螺着固定されると共に、ボルト挿通孔88,88に図示しない固定用ボルトが挿通されてパワーユニット側部材に螺着固定されることにより、第一の取付金具12が、パワーユニット側取付金具82を介してパワーユニット側に固定されるようになっている。また、ブラケット金具70の脚部74のボルト挿通孔76に図示しない固定用ボルトが挿通されてボデー側部材に螺着固定されることにより、第二の取付金具14が、ブラケット金具70を介して車両ボデー側に固定されるようになっている。これにより、自動車用エンジンマウント10がパワーユニットと車両ボデーの間に介装されて両者を防振連結せしめている。特に、エンジンマウント10の軸方向が略鉛直方向に延びる形態で自動車に装着されて、パワーユニットの分担支持荷重が略マウント軸方向に及ぼされることによって、エンジンマウント10がパワーユニットをボデーに対して吊り下げ状態で支持せしめるのである。
【0057】
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント10が自動車に装着されて、走行時に問題となるエンジンシェイク等の低周波数域の振動が入力されると、受圧室62に比較的に大きな圧力変動が生ぜしめられる。この圧力は大きいため、微振幅にチューニングされた可動ゴム膜36では、受圧室62の圧力を実質的に吸収し得ない。それによって、受圧室62と平衡室64の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動の差によりオリフィス通路66を通じての流体の流動量が効果的に確保されて、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて、エンジンシェイク等の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮される。
【0058】
また、停車時に問題となるアイドリング振動や走行時に問題となる低速こもり音等の中周波数域の振動の入力では、受圧室62に対して小さな振幅の圧力変動が惹起されることとなる。その際、当該振動の周波数域がオリフィス通路66のチューニング周波数よりも高いことから、オリフィス通路66が反共振的な作用によって流体流通抵抗が著しく大きくなって、実質的に閉塞状態となる。そこで、当該中周波数域にチューニングされた可動ゴム膜36の弾性変形に基づいて、受圧室62の圧力変動が吸収されることにより、オリフィス通路66の実質的な閉塞化に起因する著しい高動ばね化が回避されることとなる。それ故、中周波数域の振動に対する良好な防振効果(低動ばね特性に基づく振動絶縁効果)が発揮される。
【0059】
そこにおいて、第二の取付金具14には、ダイヤフラム52を上方から覆うようにして、カバー部材94が組み付けられている。カバー部材94は、図14〜16に示されているように、浅底で略円形の逆カップ形状を有しており、中央部分が略平坦な円板形状とされていると共に、中央部分から外周縁部にかけて径寸法が次第に大きくなるように湾曲している。換言すると、カバー部材94は、上方に向かって膨らむ略円形ドーム状を呈している。カバー部材94の下方に位置する開口周縁部(外周縁部)が径方向外方に向かって突出するような外フランジ形状を有していることにより、開口周縁部の肉厚寸法が、他の部位の肉厚寸法に比して大きくされている。このカバー部材94は、例えば、金属材料にプレス加工を施す等して形成することも可能であるが、要求される製造コストや弾性、耐蝕性等を考慮して、合成樹脂材料を用いて型成形されることが好ましい。
【0060】
カバー部材94の外周縁部には、複数(本実施形態では3つ)の係止片96が設けられている。係止片96は、カバー部材94の外周縁部から外方に延び出す、上板部98と中間板部100と段差部102と下板部104を備えた略段付き板形状を呈しており、下板部104の突出先端部分に係止部106が形成されている。
【0061】
上板部98は、カバー部材94の外周縁部から径方向外方に延び出す略平板形状とされており、カバー部材94の中央部分の円板状部と略平行に延びている。
【0062】
中間板部100は、上板部98の径方向外方の突出先端部分から下方に延び出す略平板形状とされていると共に、下方に行くに従って径方向外方に向かうようにカバー部材94の中心軸に対して傾斜している。特に、中間板部100におけるカバー部材94の中心軸に対する傾斜角度は、ダイヤフラム52に加硫接着された環状固定金具54のテーパの程度と略同じとされている。
【0063】
段差部102は、中間板部100の下方の突出先端部分から径方向外方に延び出す略平板形状とされており、カバー部材94の中央部分の円板状部や上板部98と略平行に延びている。
【0064】
下板部104は、段差部102の径方向外方の突出先端部分から下方に延び出す略平板形状とされており、カバー部材94の中心軸と略平行に延びている。この下板部104の下方の突出先端部分において、径方向内方に屈曲した係止部106が形成されている。即ち、下板部104と係止部106が協働して略断面L字状を有している。
【0065】
なお、上板部98と中間板部100の接続部分や段差部102と中間板部100乃至は下板部104の接続部分が、径方向外方に向かって膨らむような湾曲形状を有していることで、各接続部分を挟んだ両側の部位が滑らかに接続されている。また、これら上下板部98,104や中間板部100、段差部102、係止部106を含んでなる係止片96は、カバー部材94の周方向に沿って湾曲する板状とされている。
【0066】
特に本実施形態では、3つの係止片96,96,96における形状や大きさ、構造等の形態が同一とされていると共に、それら3つの係止片96,96,96がカバー部材94の外周縁部において等間隔に設けられている。即ち、係止片96の周方向の長さ寸法が、カバー部材94の外周縁部の周長に比して所定の長さ(例えば外周縁部の周長の1/20〜1/4の長さ)で小さくされていると共に、各係止片96の周方向間の離隔距離も互いに略同じとされている。
【0067】
このような係止片96の周方向の略中央部分には、カバー部材94の内側となる図16中の軸方向下方に突出するようにして当接突起108が設けられている。当接突起108は、図17にも示されているように、上板部98の下面から下方に向かって幅が小さくなる先細形状である、逆三角形状の断面で突設されており、カバー部材94の外周縁部と係止片96における上板部98と中間板部100の接続部分との間に亘って直線的に連続して延びている。特に、当接突起108は、カバー部材94の径方向に延びている。また、本実施形態では、当接突起108の突出先端部分は、小さな幅の平面形状とされており、係止片96の上板部98等と平行に延びている。なお、当接突起108の先端は、必ずしも平面を有していなくても良く、先尖形状でも良いし、適当な曲率の湾曲形状等でも良い。更に、これら複数(本実施形態では3つ)の当接突起108が、各係止片96の周方向中央部分に形成されていることによって、カバー部材94の外周縁部から径方向外方に延び出す形態で、カバー部材94の周方向に等間隔に形成されている。
【0068】
また、カバー部材94の外周縁部における各係止片96の周方向間の略中央部分には、スペーサ突部110が形成されている。スペーサ突部110は、カバー部材94の周方向に長手状に延びる略矩形ブロック形状を呈しており、カバー部材94の外周縁部から下方に向かって所定の高さで突出している。なお、当接突起108やスペーサ突部110の高さ寸法については、後述するカバー部材94の第二の取付金具14側への組み付け状態で説明する。また、スペーサ突部110の突出方向の先端面が、係止片96の上板部98等と平行に延びる平坦な略矩形状を有していると共に、前述の当接突起108の突出先端部分の平坦面に比して十分に大きくされている。なお、スペーサ突部110の先端は、必ずしも平面を有していなくても良く、先尖形状でも良いし、適当な曲率の湾曲形状等でも良い。これら複数(本実施形態では3つ)のスペーサ突部110が、各係止片96の周方向間の略中央部分に形成されていることによって、カバー部材94の周方向に等間隔に形成されている。
【0069】
要するに、本実施形態に係るカバー部材94では、その外周縁部において当接突起108を備えた係止片96と、スペーサ突部110が周方向で交互に形成されていると共に、周方向で隣り合う係止片96とスペーサ突部110の間の離隔距離が全て略等しくされている。また、カバー部材94や係止片96、当接突起108、スペーサ突部110が、合成樹脂材料の一体形成品で構成されている。
【0070】
特に本実施形態では、カバー部材94や係止片96が、当接突起108やスペーサ突部110に比して大きな形状とされて、且つ比較的に薄肉の合成樹脂材料を用いて形成されていることから、ある程度の大きな弾性を備えている。而して、カバー部材94の外周縁部に一体形成された各係止片96は、カバー部材94の弾性変形に伴い変形することが可能とされており、特に、カバー部材94の中央部分が下方に向かって膨らむように撓むことで、カバー部材94の外周縁部がめくれ上がるように変形し、この変形に伴い係止片96の上板部98と中間板部100の接続部分が盛り上がるように変形して、係止片96の中間板部100から先端の係止部106にかけての部位が、径方向外方に開くように変形せしめることが可能とされている。なお、係止片96において、カバー部材94の外周縁部からの離隔距離が大きくなる部分ほど、カバー部材94から独立して弾性変形可能であることは、勿論である。
【0071】
一方、当接突起108やスペーサ突部110は、係止片96やカバー部材94に比して十分に小さな形状をもって、係止片96やカバー部材94に突出形成されていることにより、その変形許容量が極めて小さくされている。
【0072】
このような構造とされたカバー部材94は、例えば、以下のようにして第二の取付金具14に好適に組み付けられる。
【0073】
先ず、ダイヤフラム52の上方で、カバー部材94の中心軸とエンジンマウント10の中心軸を略同一線上に位置せしめつつ、カバー部材94をダイヤフラム52に向かって軸方向に変位せしめて、カバー部材94における各係止片96の係止部106が、ブラケット金具70の外フランジ状部80を軸方向に乗り越えて、係止部106の下端面が外フランジ状部80の下端面よりも下方に位置せしめられるようにする。
【0074】
このカバー部材94が軸方向に変位する際に、係止部106の内周縁部が外フランジ状部80の外周縁部よりも径方向内方に位置せしめられていることから、係止部106の下端部分が外フランジ状部80の上端部分に当接することとなるが、かかる当接状態下で、カバー部材94が更に軸方向に押し込められるように変位することにより、係止片96の弾性と、係止片96における中間板部100の傾斜作用とが相俟って、係止片96の中間板部100から係止部106にかけての部位が径方向外方に開くように変形する。これにより、係止部106が外フランジ状部80の周縁部等に当接しつつ、外フランジ状部80を軸方向に乗り越えて、係止部106の下端面を外フランジ状部80の下端面よりも下方に位置せしめることが可能となる。
【0075】
また、カバー部材94の軸方向変位に伴い、係止部106が外フランジ状部80を軸方向に乗り越えて係止部106と外フランジ状部80の当接状態が解除されると、係止片96の径方向外方に開く弾性変形が解除されて、係止部106が略初期の径方向位置に位置せしめられる。これにより、係止部106が外フランジ状部80を軸方向に跨いで下方に位置せしめられた状態で、係止部106の内周縁部が外フランジ状部80の外周縁部よりも径方向内方に位置せしめられることとなり、係止部106の上端部分と外フランジ状部80の下端部分が軸方向に重ね合わせられていることで、係止片96(係止部106)が外フランジ状部80に対して軸方向で抜け出しを阻止する方向、即ち図1中、上に向かって係止される係止機構が構成されている。
【0076】
或いは、係止部106と外フランジ状部80を係止させるに先立って、前述の如くカバー部材94の中央部分が下方に向かって凹むように撓ませて、係止片96を径方向外方に変形せしめた状態で、カバー部材94を軸方向に変位させることも可能である。これにより、係止部106の下端部分と外フランジ状部80の上端部分を当接させずに、係止部106が外フランジ状部80を軸方向に跨いだ後に、カバー部材94の変形解除に伴い、係止片96の弾性変形を解除して係止部106と外フランジ状部80を係止させることも出来る。
【0077】
そこにおいて、3つの係止片96,96,96が外フランジ状部80に係止された状態下、各係止片96に設けられた当接突起108が、環状固定金具54の上面に被着された被覆ゴム層60に対して軸方向に重ね合わせられている。ここで、図17にも示されているように、かかる係止状態下、当接突起108の基端部側である係止片96の上板部98と被覆ゴム層60の軸方向間に所定の離隔距離:lが設定されるようになっているが、当接突起108の上板部98から軸方向に突出する高さ寸法:hが当該離隔距離:lよりも大きくされて、h>lとされている。また、被覆ゴム層60が厚肉のゴム弾性材で形成されている一方、当接突起108が小形の合成樹脂材で形成されていて、被覆ゴム層60の変形許容量が当接突起108の変形許容量に比して十分に大きくされている。これにより、当接突起108が、h−lに略相当する軸方向寸法の分だけ被覆ゴム層60に対して軸方向に食い込むように押し付けられて、被覆ゴム層60が軸方向に圧縮変形する。特に、当接突起108が先細形状とされて突出先端面が小さくされていることから、被覆ゴム層60の当接突起108による当接部分が局所的に圧縮変形する。この変形による被覆ゴム層60の弾性が係止片96に及ぼされて、係止片96が上方に向かうように変位することにより、係止部106と外フランジ状部80が軸方向に押し付けられるように密接状態で重ね合わせられて、係止片96が外フランジ状部80に対して軸方向で抜け出しを阻止する方向(図1中、上)に作用する係止力(係止片96と外フランジ状部80の軸方向の当接力)が大きくされている。
【0078】
従って、各係止片96がブラケット金具70の外フランジ状部80に確実に係止されることとなり、係止片96の中間板部100がダイヤフラム52の環状固定金具54の周りに位置せしめられて、カバー部材94がダイヤフラム52の上方に所定の距離を隔てて持ち上げられるようにして複数の係止片96で支持せしめられる。その結果、カバー部材94が、係止片96とブラケット金具70を介して第二の取付金具14に組み付けられて、ダイヤフラム52を略全体に亘って覆って保護するようになっている。上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、第二の取付金具14から外周側に突出して周方向に延びる係止用突部が、ブラケット金具70の外フランジ状部80を含んで構成されている。また、カバー部材94が、ダイヤフラム52を全体に亘って覆うフルカバー構造とされている。
【0079】
特に、係止片96が外フランジ状部80に係止された状態で、図18にも示されているように、カバー部材94に形成された3つのスペーサ突部110,110,110が、被覆ゴム層60に当接されている。即ち、かかる係止状態で、スペーサ突部110のカバー部材94の外周縁部から軸方向に突出する高さ寸法が、カバー部材94の外周縁部と被覆ゴム層60の軸方向の離隔距離と同じかそれよりも大きくされていることにより、スペーサ突部110が被覆ゴム層60に当接している。
【0080】
本実施形態では、係止片96の上板部98の下端面とカバー部材94の外周縁部の下端面が略同じ高さに位置せしめられ、カバー部材94の外周縁部から突出するスペーサ突部110の高さ寸法が、上板部98から下方に突出する当接突起108の高さ寸法に比して小さくされていることにより、スペーサ突部110における被覆ゴム層60との当接部分でのゴムの圧縮変形による弾性が、当接突起108で被覆ゴム層60に当接する部分のものに比して小さくされている。しかしながら、これに限定されるものでなく、例えば、スペーサ突部の高さ寸法を当接突起の高さ寸法よりも大きくして、スペーサ突部と被覆ゴム層の当接部分において、当接突起と被覆ゴム層の当接部分よりも大きな弾性が得られるようにしても良い。或いは、係止片が外フランジ状部に係止されて当接突起が被覆ゴム層に当接された状態下、スペーサ突部が被覆ゴム層に対して軸方向に所定距離を隔てて離れるように位置せしめられるようにし、カバー部材の弾性変形に際して、スペーサ突部が被覆ゴム層に当接されるようにしても良い。
【0081】
また、当接突起108およびスペーサ突部110の被覆ゴム層60と軸方向で対向位置せしめられる下端面に関して、スペーサ突部110が当接突起108よりも大きくされていることにより、スペーサ突部110が当接突起108よりも大きな当接面をもって被覆ゴム層60に当接されている。
【0082】
さらに、本実施形態では、カバー部材94の周方向で交互に形成される当接突起108とスペーサ突部110が被覆ゴム層60に当接された状態下、周方向で隣り合う当接突起108とスペーサ突部110の間に位置せしめられる、カバー部材94の外周縁部においてスペーサ突部110が形成されていない部分や係止片96の上板部98において当接突起108が形成されていない部分が、被覆ゴム層60と軸方向に所定の距離をもって離隔せしめられている。即ち、カバー部材94乃至は係止片96と被覆ゴム層60との軸方向対向面間における当接突起108とスペーサ突部110の周方向間には、隙間が形成されているのであり、この隙間を利用して、カバー部材94の内側におけるカバー部材94とダイヤフラム52との対向面間の領域112を外部空間に連通させる大気連通路114が形成されている。
【0083】
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント10においては、カバー部材94に形成された係止片96がブラケット金具70の外フランジ状部80に係止された状態で、当接突起108が被覆ゴム層60に対して軸方向に押し付けられることによって、係止片96と外フランジ状部80との軸方向に働く抜け止め係止力が大きくされている。これにより、カバー部材94の第二の取付金具14への組み付け状態が安定して、カバー部材94が第二の取付金具14から外れ難くなることから、ダイヤフラム52の保護状態が安定して維持される。
【0084】
また、当接突起108が被覆ゴム層60に軸方向に押し付けられて、食い込むように当接することにより、カバー部材94のダイヤフラム52に対する回転防止効果が有利に発揮され得る。
【0085】
さらに、被覆ゴム層60が環状固定金具54の内フランジ状部56に被着形成されており、当接突起108が被覆ゴム層60を介して環状固定金具54に重ね合わされるようになっていることから、カバー部材94が当接突起108と被覆ゴム層60を介して環状固定金具54に安定して保持されることに加え、被覆ゴム層60に食い込んだ当接突起108が必要以上に食い込むことが防止されて、被覆ゴム層60の耐久性が向上される。その結果、被覆ゴム層60の適度な弾性が長期間に亘って安定して得られて、カバー部材94の組み付け安定性が高度に維持される。
【0086】
更にまた、カバー部材94の係止片96が周上の複数箇所に設けられていると共に、カバー部材94および係止片96が、薄肉の合成樹脂材料を用いて形成されていることにより、係止片96の変形許容量が比較的に大きくされる。これにより、カバー部材94の組み付け時に、係止片96を径方向外方に拡開するように変形させて、係止片96が外フランジ状部80を乗り越える際の接触抵抗を抑えつつ、係止片96と外フランジ状部80を互いに係止することも容易となり、その結果、カバー部材94の第二の取付金具14に対する組み付け作業が容易になる。
【0087】
そのようにカバー部材94の組み付け作業が容易とされていることから、第一の取付金具12がパワーユニット側取付金具82を介してパワーユニットに固定されると共に、第二の取付金具14がブラケット金具70を介して車両ボデーに固定される前の図1〜4に示される如きマウントの単品状態で、カバー部材94が組み付け可能であるのは勿論のこと、例えば、第一の取付金具12や第二の取付金具14がパワーユニットやボデーに固定された自動車への装着状態で、自動車のボンネットを開いて、エンジンルームにおいてダイヤフラム52を上方に向けて配置されたマウント本体に対して、上方からカバー部材94を組み付けることも可能である。これにより、マウント本体を自動車に装着する際に、カバー部材94が他部材に当接することによる損傷等を特別に配慮する必要がなくなって、装着作業が容易になる。
【0088】
特に本実施形態では、当接突起108が逆三角断面でカバー部材94の径方向に延びる先細形状とされていることから、当接突起108を被覆ゴム層60に対して径方向に延びるように局所的に食い込ませることが出来る。それによって、小形の当接突起108で被覆ゴム層60の弾性がより効果的に得られて、カバー部材94における低コスト化や軽量化等が有利に図られつつ、カバー部材94の第二の取付金具14に対する抜け止め効果や回転防止効果が一層有利に発揮され得る。
【0089】
また、本実施形態では、カバー部材94の外周部分において、係止片96が等間隔に3つ形成されていることから、カバー部材94の係止片96による安定した支持状態が実現されることに加え、当接突起108がカバー部材94における係止片96の形成位置に設けられていることから、当接突起108が被覆ゴム層60に軸方向に押し付けられることに基づくゴムの弾性が、係止片96に効率良く及ぼされることとなり、カバー部材94の組み付け状態の更なる安定化が図られ得る。
【0090】
さらに、本実施形態に係るカバー部材94の外周部分には、被覆ゴム層60への当接部分において当接突起108とは周上で異なる位置で当接突起108よりも大きな当接面をもって被覆ゴム層60に当接するスペーサ突部110が形成されている。これにより、例えば、カバー部材94が第二の取付金具14に組み付けられた状態下、カバー部材94の中央部分が他部材等に接触して撓むことに伴い、係止片96が径方向外方に向かって変形する力が作用せしめられた場合にも、スペーサ突部110が被覆ゴム層60に当接していることによって、カバー部材94の外周部分の撓み変形量が制限されることにより、係止片96の径方向外方に向かう変形量も制限される。それ故、係止片96と外フランジ状部80の係止状態が好適に維持されて、カバー部材94の組み付け安定性が一層向上され得るのである。
【0091】
また、スペーサ突部110がカバー部材94の外周縁部における各当接突起108の周方向間の中央部分に位置せしめられていると共に、カバー部材94の外周縁部に等間隔に形成されている。これにより、当接突起108とスペーサ突部110の各被覆ゴム層60に対する当接領域が有効に確保されて、上述の当接による効果が一層有利に発揮され得る。しかも、カバー部材94の外周縁部が、周方向で等間隔に形成された当接突起108およびスペーサ突部110の計6つの突部を介して被覆ゴム層60の周上の複数箇所に当接して支持されていることから、カバー部材94が他部材等に当接した際に、局所的に撓むことも有利に抑えられて、カバー部材94の耐久性が向上され得る。
【0092】
加えて、カバー部材94と被覆ゴム層60の軸方向対向面間において、当接突起108とスペーサ突部110の周方向間に形成される複数の大気連通路112が、周方向の全周に亘って略同じ大きさで形成されることから、カバー部材94とダイヤフラム52の対向面間領域112と外部空間の連通状態が効率良く確保される。これにより、カバー部材94とダイヤフラム52の対向面間領域112が密閉状態になることが好適に回避されて、密閉状態下での空気ばね作用によるダイヤフラム52の弾性変形量の変化に起因して、マウントのばね特性が変化する問題が解消される。
【0093】
更に換言すると、カバー部材94の外周縁部における各当接突起108同士の周方向中央部分において、スペーサ突部110が被覆ゴム層60に当接していることによって、カバー部材94と被覆ゴム層60の軸方向対向面間における周方向で隣り合う当接突起108同士の周方向間の隙間が変形し難くされている。これにより、かかる隙間で構成される大気連通路の形状が好適に保持されて、マウントにおける所期のばね特性が一層安定して得られるのである。
【0094】
また、本実施形態では、第二の取付金具14のブラケット金具70に対する圧入端位置を規定する外フランジ状部80によって、カバー部材94の係止片96が係止される係止用突部が構成されていることから、係止用突部を第二の取付金具14に対して直接に別途形成する必要がなくなって、部品点数の削減に基づく低コスト化が有利に図られ得る。
【0095】
それ故、本実施形態に係る自動車用エンジンマウント10においては、カバー部材94の第二の取付金具14側への組み付け構造が簡単になることに加え、カバー部材94が確実に組み付けられることにより、ダイヤフラム52が極めて有利に保護されるのである。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0097】
例えば、当接突起108や係止片96における形状や大きさ、構造、数、カバー部材94おける配置等の形態は、例示の如き形態に限定されるものでない。具体的に前記実施形態では、それぞれ同一形態の係止片96や当接突起108がカバー部材94の外周縁部において等間隔に3つ形成されていたが、2つ又は4つ以上形成されたり、それらの形状や大きさ、構造等の形態がそれぞれ異ならされたり、係止片や当接突起がカバー部材の外周縁部でそれぞれ不等間隔に形成されても良い。
【0098】
また、当接突起108は、カバー部材94において係止片96の形成位置以外の位置に形成しても良く、或いは係止片96の形成位置に加えて他の位置に形成しても良い。例えば、当接突起108が形成された各係止片96の周方向間に形成されたスペーサ突部110の代わりに、被覆ゴム層60に対して新たに食い込み状態で当接する当接突起を形成することも可能である。また、このことからも、明らかなように、スペーサ突部110は必須の構成要件でない。
【0099】
また、前記実施形態では、カバー部材94がダイヤフラム52を全体に亘って多うフルカバー構造とされていたが、例えばカバー部材94にダイヤフラム52とカバー部材94の対向面間領域112に対する空気抜き用の貫通孔が形成されていること等によって、フルカバー構造とされていなくても良い。
【0100】
また、前記実施形態では、環状固定金具54が、下方から上方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ付きの略円筒形状とされていたが、軸方向に延びる円筒形状や円環板形状とされていても良い。
【0101】
また、第二の取付金具14から外周側に突設されて、カバー部材94の係止片96が係止される係止用突部は、例示の如くブラケット金具70のカップ状部72の開口周縁部において全周に亘って連続して延びる外フランジ状部80で構成される必要は必ずしもなく、例えば、第二の取付金具またはブラケット金具の外周部分において係止片が係止される位置にのみ設けられることによって、周方向で部分的に突出するように形成されることも可能である。また、例えば、複数の係止片の軸方向長さがそれぞれ異ならされることに対応して、複数の係止用突部の形成位置が軸方向で異ならされていても良い。
【0102】
また、仕切部材32に設けられた可動ゴム膜36は必須の構成要件でなく、更にオリフィス通路66の形状や大きさ、構造、数等の形態は、例示の如きものに限定されない。具体的に、仕切部材にオリフィス通路を複数形成して、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振周波数をそれぞれ異なる周波数域にチューニングすることで、複数の周波数域での振動に対する防振効果が得られるようにしても良い。
【0103】
また、前記実施形態では、マウント軸方向で仕切部材32を挟んだ下方に壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成される受圧室62が形成されると共に、仕切部材32を挟んだ上方に壁部の一部がダイヤフラム52で構成された平衡室64が形成されて、本体ゴム弾性体16から下方に突出する第一の取付金具12の固定部(固定金具18)が、パワーユニット側に固定される一方、第二の取付金具14が車両ボデー側に固定されることによって、パワーユニットをボデーに吊り下げ状態で防振支持せしめるマウント構造に対して本発明が適用されていたが、これに限定されない。例えば、特開2003−148548号公報や特開2007−107712号公報にも示されているように、装着状態で上方に位置せしめられる第一の取付金具がパワーユニット側に固定される一方、下方に位置せしめられる第二の取付金具が車両ボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットの支持荷重が第一の取付金具と第二の取付金具をマウント軸方向で相互に接近させる方向に及ぼされる載置タイプのエンジンマウント等に対しても、本発明は同様に適用可能である。即ち、このようなエンジンマウントでは、一般に、上記公報にも記載されているように、第二の取付金具の筒状部の上側開口部が本体ゴム弾性体で流体密に閉塞されていると共に、第二の取付金具の筒状部の下側開口部がダイヤフラムで流体密に閉塞されていることから、本発明に係るカップ状のカバー部材が、ダイヤフラムを鉛直下方から覆うようにして組み付けられる。
【0104】
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用ボデーマウントやデフマウント等の他、自動車以外の各種振動体の防振装置に対して、何れも、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態としての自動車用エンジンマウントの縦断面図であって図2のI−I断面に相当する図。
【図2】同自動車用エンジンマウントの平面図。
【図3】同自動車用エンジンマントの正面図。
【図4】同自動車用エンジンマウントの右側面図。
【図5】同自動車用エンジンマウントの一部を構成するブラケット金具の正面図。
【図6】同ブラケット金具の平面図。
【図7】同ブラケット金具の左側面図。
【図8】同ブラケット金具の右側面図。
【図9】同自動車用エンジンマウントの一部を構成するパワーユニット側取付金具の正面図。
【図10】同パワーユニット側取付金具の右側面図。
【図11】同パワーユニット側取付金具の底面図。
【図12】図9のXII−XII断面図。
【図13】図9のXIII−XIII断面図。
【図14】同自動車用エンジンマウントの一部を構成するカバー部材の平面図。
【図15】同カバー部材の底面図。
【図16】図14のXVI−XVI断面図。
【図17】同自動車用エンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図であって、図4のXVII−XVII断面に対応する図。
【図18】同自動車用エンジンマウントの別の要部を拡大して示す縦断面図。
【符号の説明】
【0106】
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、52:ダイヤフラム、54:環状固定金具、60:被覆ゴム層、62:受圧室、64:平衡室、66:オリフィス通路、80:外フランジ状部、94:カバー部材、96:係止片、108:当接突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部の流体室に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、特に、流体室の壁部の一部を構成する可撓性ゴム膜を外方から覆うように配設して保護するカバー部材を備えた流体封入式防振装置とかかるカバー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等の防振装置の一種として、非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置が知られている。この流体封入式防振装置は、第一の取付部材と第二の取付部材が互いに離隔配置されて本体ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、その内部に非圧縮性流体が封入された流体室が形成されている。また、流体室は、第二の取付部材で固定的に支持された仕切部材で仕切られており、仕切部材を挟んだ両側に壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された受圧室と壁部の一部が可撓性ゴム膜で構成された平衡室が形成されていると共に、それら受圧室と平衡室がオリフィス通路によって相互に連通せしめられている。このような構造によれば、振動入力に伴い受圧室と平衡室の間に相対的な圧力変動が生じて、オリフィス通路を通じて流動する流体の共振作用等の流動作用に基づき防振効果が発揮される。かくの如き流体封入式防振装置は、例えば自動車用のエンジンマウントやボデーマウント、デフマウントの他サスペンションメンバマウント等への適用が検討されている。
【0003】
ところで、上述の流体封入式防振装置の可撓性ゴム膜においては、平衡室の容積変化の許容量が十分に確保されるように、薄肉のゴム膜からなり、且つ仕切部材を挟んで受圧室と反対側の外方に向かって張り出すように設けられることが多い。そうすると、可撓性ゴム膜には、他部材や異物が直接に接触等して、予期しない損傷が発生するおそれがあった。
【0004】
そこで、このような問題に対処するために、例えば、特許文献1(特開2007−64248号公報)には、第二の取付部材としての筒状部の一方の開口部を覆蓋する可撓性ゴム膜に対して、外方から覆うように逆カップ状のカバー部材を配設して、可撓性ゴム膜を保護するようにした構造の流体封入式防振装置が提案されている。かかる流体封入式防振装置においては、カバー部材の開口部分が筒状に延び出しており、その先端の開口周縁部において内周面上に突出する鉤状の係止部が形成されている。一方、第二の取付部材としての筒状部の開口周縁部の外周面には、全周に亘って連続して延びる膨出部が、可撓性ゴム膜と一体形成されている。そして、係止部が膨出部を軸方向に跨いで膨出部の下端面に重ね合わせられることにより、係止部が膨出部に係止されて、カバー部材が可撓性ゴム膜に組み付けられている。
【0005】
ところが、上述の特許文献1に示される流体封入式防振装置においては、カバー部材の係止部に係止される膨出部が、可撓性ゴム膜と一体形成されていることから、このゴム製の膨出部のへたりに起因して、カバー部材が防振装置本体に対して回転したり、ガタついたり、外れ易くなったり等して、安定した組み付け状態が実現され難い。特に、流体封入式防振装置が自動車用エンジンマウント等に適用される場合には、マウントが内燃機関の輻射熱や熱気等に晒されると、膨出部のへたりが顕著になる問題があった。そのために、可撓性ゴム膜を確実に保護する信頼性と耐久性が十分に得られ難い問題を内在していた。
【0006】
上述の問題に鑑み、本発明者は、カバー部材だけでなく防振装置本体の係止部分も全て硬質の合成樹脂材や金属材で形成することを検討した。しかしながら、特許文献1の図面に示されている構造では、組み付けの際に、鉤状の係止部を、膨出部を軸方向に乗り越えて係止させる必要がある。そのため、係止部分がゴム材料等を用いて形成されないと容易に変形しないことから、組み付けが困難になり、例えば、組み付けの作業性を向上させるために膨出部を小さくすると、係止部と膨出部の係止状態が容易に解除されてしまうおそれがあることから、実用化が難しかったのである。また、螺子構造や接着等でカバー部材を組み付けることも検討したが、組み付けの際に必要とされる時間や手間が多くなって実用的でなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2007−64248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、カバー部材の第二の取付部材側への組み付け構造が簡単になることに加え、カバー部材が確実に組み付けられることにより、可撓性ゴム膜が好適に保護される、新規な構造の流体封入式防振装置とかかる流体封入式防振装置に用いられるカバー部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、前述の課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
すなわち、本発明の特徴とするところは、第一の取付部材が第二の取付部材に設けた筒状部の一方の開口部側に離隔配置されてそれら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されており、筒状部の一方の開口部が本体ゴム弾性体で流体密に閉塞されると共に筒状部の他方の開口部が可撓性ゴム膜で流体密に閉塞されて非圧縮性流体が封入された流体室が形成され、且つ第二の取付部材で支持された仕切部材で流体室が仕切られることにより本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と可撓性ゴム膜で壁部の一部が構成された平衡室が形成されていると共に、これら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路が設けられた流体封入式防振装置において、第二の取付部材から外周側に突出して周方向に延びる係止用突部が形成されている一方、可撓性ゴム膜の外周縁部に環状固定金具が加硫接着されて環状固定金具が第二の取付部材の筒状部に固定されることにより筒状部の他方の開口部が可撓性ゴム膜で流体密に閉塞されていると共に、可撓性ゴム膜の外周縁部が加硫接着された環状固定金具の内周縁部の外面には被覆ゴム層が可撓性ゴム膜と一体形成されており、更に、可撓性ゴム膜を外方から覆うカバー部材が組み付けられており、カバー部材の外周部分には被覆ゴム層への当接部分に当接突起が少なくとも一つ突設されていると共に、カバー部材の外周縁部には周上の複数箇所において第二の取付部材の筒状部に向かって軸方向に延びる係止片が設けられており、これらの係止片が係止用突部に対して軸方向で抜け出しを阻止する方向に係止されることにより、当接突起が被覆ゴム層に対して軸方向に押し付けられている流体封入式防振装置にある。
【0011】
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、当接突起が被覆ゴム層に対して軸方向(筒状部の軸方向に同じ)に押し付けられることによって、圧縮変形したゴムの弾性がカバー部材に対して軸方向に及ぼされる。これにより、カバー部材の係止片と第二の取付部材側の係止用突部との係止部位に働く軸方向の当接力が大きくされて、カバー部材の組み付け状態が安定する。即ち、係止片が係止用突部に係止された状態下、被覆ゴム層の弾性がカバー部材に及ぼされることによって、カバー部材ががたつき難くなり、可撓性ゴム膜の保護状態が安定して維持される。
【0012】
また、当接突起が被覆ゴム層に対して軸方向に押し付けられて、食い込むように当接することにより、カバー部材の周方向等のガタツキが防止されると共に、カバー部材の可撓性ゴム膜に対する位置決め効果が発揮される。即ち、当接突起と被覆ゴム層の当接部分が、単純な平面形状でなく、凹凸形状とされていることにより、カバー部材の可撓性ゴム膜や環状固定金具等に対する周方向の位置決め力が向上される。
【0013】
さらに、被覆ゴム層が環状固定金具に被着形成されており、当接突起が被覆ゴム層を介して環状固定金具に重ね合わせられるようになっていることから、被覆ゴム層に食い込んだ当接突起が必要以上に食い込んだり、経時的に食い込み量が大きく進行し過ぎることが防止される。これにより、被覆ゴム層の耐久性が向上されて、ゴムの弾性が長期間に亘って安定して得られる。
【0014】
更にまた、カバー部材の係止片が周上の複数箇所に設けられており、全周に亘って連続して延びていないことから、カバー部材における係止片を備えた周上部分には、周方向に連続に延びる筒形状とされた場合に比して、変形許容量が大きくされる。これにより、例えば、カバー部材の組み付け時に、カバー部材の係止片を備えた周上部分を径方向外方に拡開するように変形させて、係止片が係止用突部を乗り越える際の接触抵抗を抑えつつ、係止片と係止用突部を互いに係止することも容易となり、組み付け作業が容易になる。
【0015】
それ故、本発明の流体封入式防振装置によれば、カバー部材における組み付け構造の簡単化と組み付け状態の安定性が両立して高度に達成され得るのである。
【0016】
なお、係止用突部は、第二の取付部材自体に一体形成されている必要はなく、別部品を用いて第二の取付部材の外周側に突出形成されていても良い。例えば、第二の取付部材を防振対象部材に装着固定するためのブラケットに対して係止用突部を形成することも可能であり、或いは可撓性ゴム膜の環状固定金具を利用して係止用突部を形成することも出来る。
【0017】
また、係止片は、周上において少なくとも二つあれば良く、要求される係止強度や製作性、組み付け性、流体封入式防振装置の大きさ等に応じて、その数や各係止片の周方向長さ、隣り合う係止片の周方向間の離隔距離等が適宜に設定変更され得る。
【0018】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材が、可撓性ゴム膜を全体に亘って覆うフルカバー構造とされている構造が、採用されても良い。これによれば、可撓性ゴム膜に対して他部材や異物等が直接に接触することが完全に防止されて、可撓性ゴム膜の保護が一層有利となる。
【0019】
特に本構造では、カバー部材と可撓性ゴム膜の対向面間を密閉領域とすることも可能であり、可撓性ゴム膜の外方に密閉された空気室を形成した構造を採用すれば、かかる密閉状態下での空気ばねの作用により可撓性ゴム膜の弾性変形量が制限されることを利用して、防振装置のばね特性をチューニングすることも可能である。
【0020】
なお、フルカバー構造とは、筒状部の軸方向外方から可撓性ゴム膜を見た時に、環状固定金具で拘束されていない可撓性ゴム膜の全体がカバー部材で覆われて直接に見えないようにする形状のカバー部材の構造をいう。その際、例えば、カバー部材の側壁部や被覆ゴム層の上端部、カバー部材の外周縁部と被覆ゴム層の軸方向対向面間等において、カバー部材と被覆ゴム層との対向面間に形成された領域を外部空間に連通させる、連通孔等の隙間や孔、溝が設けられていても良い。
【0021】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材において、当接突起が先細形状とされている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、当接突起が被覆ゴム層に対して軸方向に押し付けられる際に、より局所的に食い込ませることが出来、それによって、ゴムの弾性がより効果的に得られて、カバー部材の抜け止め効果や回転防止効果が一層有利に向上され得る。
【0022】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材において、当接突起が径方向に延びる形状とされている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、当接突起が被覆ゴム層に対して径方向に延びるように食い込むようになり、カバー部材の周方向のガタツキが一層有利に抑えられる。
【0023】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材の外周部分と被覆ゴム層の対向面間には、当接突起が形成されていない部分において、カバー部材と可撓性ゴム膜との対向面間に形成された領域を外部空間に連通させる大気連通路が形成されている構造が、採用されても良い。これにより、カバー部材と可撓性ゴム膜の対向面間が密閉領域になることが回避されることから、密閉状態下での空気ばね作用による可撓性ゴム膜の弾性変形量の変化に起因して、防振装置のばね特性が変化する問題が解消される。
【0024】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、当接突起が、カバー部材の外周部分において、係止片の形成位置に設けられている構造が、採用されても良い。これにより、当接突起が被覆ゴム層に軸方向に押し付けられることに基づくゴムの弾性が、係止片に効率良く及ぼされることとなり、カバー部材の組み付け状態の更なる安定化が図られ得る。
【0025】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材の外周部分には、被覆ゴム層への当接部分において当接突起とは周上で異なる位置で当接突起よりも大きな当接面をもって被覆ゴム層に当接するスペーサ突部が形成されている構造が、採用されても良い。本構造によれば、カバー部材が係止用突部に組み付けられた状態下、カバー部材が軸方向に撓むように変形することにより、当接突起と周上で異なる位置にあるスペーサ突部が被覆ゴム層に当接され易くなる。これにより、例えば、カバー部材が他部材等に接触して撓むことに伴い、係止片が径方向外方に向かって変形する場合においても、スペーサ突部が被覆ゴム層に当接してカバー部材の撓み変形量が抑えられることにより、係止片の径方向外方に向かう変形量も制限される。要するに、ひとたび係止片と係止用突部が係止されて、カバー部材が係止用突部に組み付けられた本構造の流体封入式防振装置では、外部入力によるカバー部材の過大な撓みが抑えられて、係止片と係止用突部の係止状態が安定して保持されるのであり、それによって、カバー部材の耐久性および係止用突部への組み付け安定性が一層向上され得るのである。
【0026】
さらに、上述の構造では、カバー部材のスペーサ突部および当接突起が被覆ゴム層に当接されると、カバー部材における周方向で隣り合うスペーサ突部と当接突起の間の部分と被覆ゴム層との軸方向間に隙間が生ぜしめられ易くなる。この隙間を、前述のカバー部材と可撓性ゴム膜との対向面間を外部空間に連通させる大気連通路として利用することも可能であり、それによって、大気連通路の形成が簡単とされて、製造効率の向上が有利に図られ得る。
【0027】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、スペーサ突部が、カバー部材の外周部分において周方向で隣り合う当接突起間の周方向中央部分に形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、スペーサ突部の被覆ゴム層への当接領域が十分に確保され、前述のスペーサ突部の被覆ゴム層への当接によるカバー部材の撓み抑え効果が、一層効果的に発揮され得る。
【0028】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、環状固定金具が筒形状とされており、軸方向一方の開口周縁部において第二の取付部材の筒状部に対して固定されるかしめ固定部が形成されていると共に、軸方向他方の開口周縁部において径方向内方に向かって延び出す内フランジ状部が形成されており、この内フランジ状部に対して可撓性ゴム膜の外周縁部が加硫接着されて内フランジ状部の外面に対して被覆ゴム層が被着形成されている構造が、採用されても良い。これにより、環状固定金具が第二の取付部材に確実に固定されると共に、カバー部材の当接突起が、被覆ゴム層を介して環状固定金具の内フランジ状部に重ね合わせられることによって、当接突起の軸方向の押し付け力が被覆ゴム層に安定して及ぼされる。それ故、ゴムの弾性に基づく係止片と係止用突部の係止作用が一層有利に生ぜしめられて、カバー部材の組み付け安定性がより有利に発揮され得る。
【0029】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、第二の取付部材に対してブラケット金具が外嵌固定されていると共に、ブラケット金具の軸方向端縁部が第二の取付部材の外周面上で突出せしめられており、このブラケット金具の突出部分によって係止用突部が構成されている構造が、採用されても良い。かかる構造によれば、防振対象部材と第二の取付部材の間に配されて両部材に固定されるブラケット金具の強度を利用して、高強度な係止用突部が実現されることから、係止片と係止用突部の係止状態が一層安定して、カバー部材の組み付け安定性がより向上され得る。また、カバー部材がブラケット金具を介して第二の取付部材に組み付けられることを換言すると、ブラケット金具が第二の取付部材に外嵌固定されていると共にカバー部材に係止固定されることとなり、その結果、ブラケット金具と第二の取付部材の組み付け状態が一層安定して、延いては流体封入式防振装置の防振対象部材への組み付け安定性が一層向上され得る。
【0030】
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、カバー部材が、合成樹脂材料の一体成形品で構成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、ゴム材料からなるカバー部材に比して、係止用突部との係止に関する必要強度が十分に確保され得ることに加えて、金属材料からなるカバー部材に比して、軽量化や低コスト化等が有利に図られ得る。
【0031】
さらに、本発明の特徴とするところは、前述の流体封入式防振装置に用いられるカバー部材にある。このような本発明に従う構造とされたカバー部材においては、前述の流体封入式防振装置の説明からも明らかなように、当接突起の被覆ゴム層への食い込み状態での当接作用により、カバー部材の係止用突部に対する周方向のガタツキ防止効果や位置決め効果が発揮され得ることに加え、当接突起が被覆ゴム層を介して環状固定金具に重ね合わせられることで、当接突起の被覆ゴム層に対する過大な食い込みの防止効果が発揮され得る。それ故、それら効果の協働作用に基づいて、長期間に亘って抜け止め強度の大きいカバー部材が実現され得るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1〜4には、本発明の流体封入式防振装置に係る一実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。この自動車用エンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で連結された構造を呈している。第一の取付金具12がパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具14が車両ボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットがボデーに対して吊り下げ状態で防振支持されるようになっている。
【0033】
なお、図1〜4では、自動車に装着する前のエンジンマウント10の単体での状態が示されているが、自動車へのマウント装着状態では、パワーユニットの吊り下げによるパワーユニットの分担支持荷重がマウント軸方向(図1中、上下)に入力されることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14がマウント軸方向で離隔方向に相対変位して、本体ゴム弾性体16等が弾性変形する。また、かかる装着状態下、防振すべき主たる振動は、略マウント軸方向に入力されることとなる。以下の説明中、特に断りのない限り、上下方向は、マウント軸方向となる図1中の上下方向をいう。
【0034】
より詳細には、第一の取付金具12が、筒状の固定金具18と上方に向かって開口する器状のカップ金具20を含んで構成されており、固定金具18の上端部分にカップ金具20の中央底部が重ね合わせられて固定されている。この固定金具18の内周面には、螺子溝が設けられている。
【0035】
一方、第二の取付金具14は、大径の略円筒形状の筒状部を備えており、その下部が下方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパを有している。また、第二の取付金具14の上部には、径方向外方に広がる環状の段差部22が形成されていると共に、段差部22の外周縁部には、大径リング状のかしめ部24が立ち上がるようにして一体形成されている。
【0036】
第一の取付金具12の径方向外方に第二の取付金具14が離隔配置されて、両金具12,14が略同心状に位置せしめられている。第一の取付金具12と第二の取付金具14の径方向対向面間には、本体ゴム弾性体16が配設されている。
【0037】
本体ゴム弾性体16は厚肉の略円筒形状を有しており、その外周面が第二の取付金具14の軸方向中間部分から下端部にかけての内周面に加硫接着されている。更に、本体ゴム弾性体16の内周面が、第一の取付金具14における固定金具18の軸方向中間部分から上部にかけての外周面やカップ金具20の外周面に加硫接着されている。即ち、本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた一体加硫成形品として形成されている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16を介して弾性的に連結されていると共に、第二の取付金具14の下方の開口部が、本体ゴム弾性体16および第一の取付金具12によって流体密に覆蓋されている。
【0038】
また、本体ゴム弾性体16の下端面には、第二の取付金具14の下方の開口部と第一の取付金具12の下端部の間に向かって凹状に開口する肉抜き凹所26が形成されていることで、本体ゴム弾性体16の下端部分の応力が軽減されるようになっている。また、本体ゴム弾性体16の外周部分には、外周凹溝28が形成されている。外周凹溝28は、第二の取付金具14の上方の開口部と第一の取付金具12におけるカップ金具20の上部開口との間に向かって凹状に開口する断面で周方向に連続して延びている。また、第二の取付金具14における軸方向中間部分から段差部22にかけての内周面には、本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層30が略全体に亘って被着形成されている。
【0039】
これら第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品には、仕切部材32が組み付けられている。仕切部材32は、オリフィス金具34と可動ゴム膜36を含んで構成されている。
【0040】
オリフィス金具34は、径寸法が異なる大小二つの円筒形状の大径筒部38および小径筒部40が径方向に所定距離を隔てて且つ略同心状に配されて、それら両筒部38,40の下端部分が円環板部42で接続された形態を有していることにより、上方に向かって凹状に開口する断面で周方向に連続して延びており、本実施形態では鉄やアルミニウム、アルミ合金等の金属材を用いて形成されているが、例えば硬質の合成樹脂材等を用いて形成されても良い。特に、オリフィス金具34の小径筒部40の高さ寸法が、大径筒部38の高さ寸法よりも大きくされている。また、大径筒部38の上端部には、径方向外方に向かって円環板形状の鍔状部44が突設されている。
【0041】
また、オリフィス金具34の内側には、弾性ゴム材からなる略円板形状の可動ゴム膜36が配されており、可動ゴム膜36の縁面が、オリフィス金具34の小径筒部40の軸方向中間部分の内周面に加硫接着されている。即ち、可動ゴム膜36が、オリフィス金具34を備えた一体加成形品とされていて、該金具34に対して弾性変形可能に支持されている。
【0042】
さらに、オリフィス金具34の小径筒部40の上端部分には、可動ゴム膜36と一体形成された環状のシールゴム46が、上方に向かって突設されている一方、オリフィス金具34の小径筒部40と大径筒部38の径方向対向面間の環状領域には、可動ゴム膜36およびシールゴム46と一体形成された充填ゴム48が設けられている。充填ゴム48は、その外周面が小径筒部40の外周面や大径筒部38の内周面、円環板部42の上面に加硫接着されて、かかる環状領域に充填されるようにして周方向に所定の長さ(本実施形態では一周弱)で延びている。また、充填ゴム48の上端面が、略平坦形状を有しており、オリフィス金具34の鍔状部44の上面と略同じ高さに位置せしめられて、或いは上端面の外周部分が鍔状部44の上面に被着形成されている。また、図面上に明示されていないが、充填ゴム48の一部が、上方に向かって突出して、小径筒部40の軸方向中間部分から上端部にかけての外周面に加硫接着されていると共に、シールゴム46の外周部分と一体形成されていることにより、大径筒部38と小径筒部40の径方向対向面間の上部外方における小径筒部40およびシールゴム46の径方向外方の領域を、周方向に所定の長さで充填せしめている。これにより、オリフィス金具34における大径筒部38と小径筒部40の径方向対向面間および小径筒部40とシールゴム46の径方向外方の領域において、充填ゴム48で充填されていない領域によって、周方向に所定の長さで螺旋状に延びる周溝50が形成されている。
【0043】
このような仕切部材32が第二の取付金具14の上部開口から入れられて、仕切部材32のオリフィス金具34の大径筒部38が、第二の取付金具14の内側のシールゴム層30を介して第二の取付金具14に嵌め込み固定されている。また、オリフィス金具34の鍔状部44が第二の取付金具14の段差部22に対して軸方向に重ね合わせられていることにより、仕切部材32の第二の取付金具14に対する嵌め込み位置(固定位置)が規定されている。また、第二の取付金具14には、可撓性ゴム膜としてのダイヤフラム52が設けられている。
【0044】
ダイヤフラム52は、変形容易な薄肉のゴム膜からなり、上方に向かって膨らむように湾曲する略円形ドーム状を呈している。また、ダイヤフラム52の外周縁部には、環状固定金具54が設けられている。
【0045】
環状固定金具54は、下方から上方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ付きの略円筒形状を呈しており、鉄やアルミニウム、アルミ合金等の金属材を用いて形成されている。環状固定金具54の上端部分には、径方向内方に延びる内フランジ状部56が一体形成されていると共に、環状固定金具54の下端部分には、径方向外方に延びる外フランジ状のかしめ固定部58が一体形成されている。特に本実施形態では、径方向に広がる幅寸法に関して、かしめ固定部58が、オリフィス金具34の鍔状部44と同じかそれよりも僅かに小さくされている一方、内フランジ状部56が、かしめ固定部58に比して十分に大きくされている。また、内フランジ状部56の内径寸法がオリフィス金具34の小径筒部40の径寸法に比して小さくされている。なお、内フランジ状部56の内周縁部分は、上方に向かって僅かに立ち上がるように曲げられている。このような環状固定金具54は、例えば、薄肉の円板形状の金属板にプレス加工を施すこと等で有利に実現される。そして、ダイヤフラム52の外周縁部が内フランジ状部56の内周縁部に加硫接着されていることによって、ダイヤフラム52が環状固定金具54を備えた一体加硫成形品とされて、環状固定金具54に対して弾性変形可能に支持されている。
【0046】
また、環状固定金具54のかしめ固定部58を除いた内外周面には、略全体に亘ってダイヤフラム52と一体形成されたゴム層が被着形成されており、特に、内フランジ状部56の上面に被着された比較的に厚肉のゴム層が、本実施形態に係る被覆ゴム層60とされている。本実施形態では、環状固定金具54の内周縁部に一体的に設けられた内フランジ状部56の外面において、被覆ゴム層60が周方向に略一定の断面で連続して延びている。被覆ゴム層60の上面が、内フランジ状部56と略平行に延びる平坦な形状とされている。
【0047】
この環状固定金具54を備えたダイヤフラム52が、第二の取付金具14の上部開口から軸方向に入れられて、環状固定金具54のかしめ固定部58が、第二の取付金具14のかしめ部24の内側に収容配置せしめられていると共に、かしめ固定部58より先にかしめ部24に収容されて第二の取付金具14の段差部22に重ね合わせられたオリフィス金具34の鍔状部44に対して、軸方向に重ね合わせられている。そして、かしめ部24にかしめ加工が施されて、鍔状部44とかしめ固定部58が第二の取付金具14にかしめ固定されている。これにより、仕切部材32とダイヤフラム52が、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に固定されていると共に、第二の取付金具14の上方開口部が仕切部材32及びダイヤフラム52によって流体密に閉塞されている。
【0048】
すなわち、第二の取付金具14の一方(図1中、下)の開口部が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されると共に第二の取付金具14の他方(図1中、上)の開口部がダイヤフラム52で流体密に閉塞されて、非圧縮性流体が封入された流体室が形成されている。そして、第二の取付金具14で固定的支持された仕切部材32で流体室が仕切られることにより、仕切部材32を挟んだ一方(図1中、下)の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づき圧力変動が生ぜしめられる受圧室62が形成されている。また、仕切部材32を挟んだ他方(図1中、上)の側には、壁部の一部がダイヤフラム52で構成されて、ダイヤフラム52の弾性変形に基づき容積変化が容易に許容される平衡室64が形成されている。これら受圧室62や平衡室64に封入される非圧縮性流体としては、例えば水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油等が採用されるが、特に流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。受圧室62や平衡室64への非圧縮性流体の封入は、例えば、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材32やダイヤフラム52の組み付けを非圧縮性流体中で行うことによって、好適に実現される。
【0049】
また、オリフィス金具34の鍔状部44と環状固定金具54のかしめ固定部58が第二の取付金具14のかしめ部24にかしめ固定された状態下、オリフィス金具34の小径筒部40の上端部分と環状固定金具54の内フランジ状部56の内周縁部乃至は径方向中間部分が、内フランジ状部56の下面のゴム層およびオリフィス金具34のシールゴム46を介して軸方向に重ね合わせられており、かしめ固定に基づき、内フランジ状部56と小径筒部40の少なくとも一方が軸方向で互いに接近する方向に変位して、内フランジ状部56と小径筒部40の間で当該ゴム層やシールゴム46が軸方向に圧縮変形していることによって、内フランジ状部56と小径筒部40が軸方向に互いに密接状に重ね合わせられて、オリフィス金具34の周溝50の開口が環状固定金具54で流体密に閉塞されている。これにより、環状固定金具54の内周面と周溝50の壁面が協働して、仕切部材32の外周部分を周方向に所定の長さで螺旋状に延びるオリフィス通路66が形成されている。オリフィス通路66の一方の端部が、オリフィス金具34の円環板部42において軸方向に貫設された連通窓68を通じて受圧室62に接続されていると共に、オリフィス通路66の他方の端部が、オリフィス金具34の小径筒部40乃至はシールゴム46において径方向に貫設された図示しない連通窓を通じて平衡室64に接続されている。それによって、受圧室62と平衡室64がオリフィス通路66を通じて相互に連通せしめられて、それら両室62,64間で、オリフィス通路66を通じての流体流動が許容されるようになっている。
【0050】
このオリフィス通路66を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、例えば、該流体の共振作用に基づいてエンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるようにチューニングされている。オリフィス通路66のチューニングは、例えば、受圧室62や平衡室64の各壁ばね剛性、即ちそれら各室62,64を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体16やダイヤフラム52等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、オリフィス通路66の通路長さと通路断面積を調節することによって行うことが可能であり、一般に、オリフィス通路66を通じて伝達される圧力変動の位相が変化して略共振状態となる周波数を、当該オリフィス通路66のチューニング周波数として把握することが出来る。
【0051】
また、仕切部材32における可動ゴム膜36の一方(図1中、下)の面に受圧室62の圧力が及ぼされるようになっていると共に、可動ゴム膜36の他方(図1中、上)の面に平衡室64の圧力が及ぼされるようになっている。即ち、可動ゴム膜36がオリフィス金具34を介して第二の取付金具14および環状固定金具54に固定的に支持された状態で、可動ゴム膜36が受圧室62と平衡室64の圧力差に基づいて弾性変形することにより、受圧室62の圧力変動を吸収する圧力変動吸収機構が構成されている。特に本実施形態では、例えば、アイドリング振動や低速こもり音等に相当する20〜40Hz程度の中周波数域の振動入力に際して、可動ゴム膜36の弾性変形による受圧室62の圧力変動吸収効果に基づく防振効果(低動ばね特性による振動絶縁効果)が有効に発揮されるように、可動ゴム膜36の固有振動数がチューニングされている。
【0052】
また、第二の取付金具14には、ブラケット金具70が組み付けられている。ブラケット金具70は、図5〜8にも示されているように、略有底円筒形状のカップ状部72と、カップ状部72の外面に溶接やボルト等で固着される脚部74の複数を含んで構成されている。脚部74には、必要に応じて、図示しない車両ボデー側部材への固定用ボルトを挿し通すボルト挿通孔76が貫設されている。これら脚部74における数や形状、カップ状部72に対する固定位置等の形態は、自動車における装着スペースや要求されるボデー側部材への組み付け安定性或いは製作性等に応じて適宜に設計変更され得る。また、カップ状部72の底壁部の中央には、第一の取付金具12の固定金具18の外径寸法に比して十分に大きな形状の挿通孔78が貫設されている。更に、カップ状部72の開口周縁部には、突出部分としての径方向外方に突出する外フランジ状部80が一体形成されている。外フランジ状部80の外径寸法が、第二の取付金具14の段差部22の外径寸法に比して大きくされている。
【0053】
このブラケット金具70のカップ状部72の開口部分から第二の取付金具14が軸方向に圧入されて固定されていると共に、第一の取付金具12の固定金具18が、カップ状部72の底部の挿通孔78を通じて該底部よりも下方に突出配置されている。特に本実施形態では、第二の取付金具14の下部が、下方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパを有していることで、第二の取付金具14のブラケット金具70への圧入固定に際して、圧入方向(マウント軸方向)の移動がスムーズに実現されるようになっている。また、第二の取付金具14の下端部分がカップ状部72の底部に軸方向に当接することに加えて、第二の取付金具14の段差部22がカップ状部72の外フランジ状部80に軸方向に当接することにより、第二の取付金具14のブラケット金具70への圧入端位置を規定する当接機構が構成されている。
【0054】
また、第一の取付金具12には、パワーユニット側取付金具82が取り付けられるようになっている。パワーユニット側取付金具82は、図9〜13にも示されているように、長手状の略矩形板状を呈している。パワーユニット側取付金具82の長手方向一方の端部側(図9中、上)には、ボルト挿通孔84が厚さ方向(図10中、上下)に貫設されている一方、長手方向他方の端部側(図9中、下)には、固定用ボルト86が下方に向かって突設されていると共に、複数(本実施形態では2つ)のボルト挿通孔88が厚さ方向に貫設されており、それら固定用ボルト86やボルト挿通孔88が横幅方向(図9中、左右)に並設されている。長手方向一方の端部側のボルト挿通孔84の周縁部には、第一の取付金具12の固定金具18の二面幅形状に対応した形状を有する一対の位置決め突起90,90が上方に向かって突設されている。
【0055】
このパワーユニット側取付金具82の長手方向一方の端部側(図9中、上)がブラケット金具70の脚部74の間に挿し入れられて、ブラケット金具70のカップ状部72の下方に突出する第一の取付金具12の固定金具18の下端部が、一対の位置決め突起90,90の対向面間に挿入されてボルト挿通孔84の周縁部に重ね合わせられている。そして、固定用ボルト92が、下方からボルト挿通孔84を挿通して固定金具18に螺着固定されることによって、パワーユニット側取付金具82の固定用ボルト86等が設けられた長手方向他方の端部側(図9中、下)が、第一の取付金具12から軸直角方向外方(図2中、下または図4中、左)に延びる形態で、パワーユニット側取付金具82が第一の取付金具12に固定されている。
【0056】
而して、パワーユニット側取付金具82の固定用ボルト86が、図示しないパワーユニット側部材に螺着固定されると共に、ボルト挿通孔88,88に図示しない固定用ボルトが挿通されてパワーユニット側部材に螺着固定されることにより、第一の取付金具12が、パワーユニット側取付金具82を介してパワーユニット側に固定されるようになっている。また、ブラケット金具70の脚部74のボルト挿通孔76に図示しない固定用ボルトが挿通されてボデー側部材に螺着固定されることにより、第二の取付金具14が、ブラケット金具70を介して車両ボデー側に固定されるようになっている。これにより、自動車用エンジンマウント10がパワーユニットと車両ボデーの間に介装されて両者を防振連結せしめている。特に、エンジンマウント10の軸方向が略鉛直方向に延びる形態で自動車に装着されて、パワーユニットの分担支持荷重が略マウント軸方向に及ぼされることによって、エンジンマウント10がパワーユニットをボデーに対して吊り下げ状態で支持せしめるのである。
【0057】
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント10が自動車に装着されて、走行時に問題となるエンジンシェイク等の低周波数域の振動が入力されると、受圧室62に比較的に大きな圧力変動が生ぜしめられる。この圧力は大きいため、微振幅にチューニングされた可動ゴム膜36では、受圧室62の圧力を実質的に吸収し得ない。それによって、受圧室62と平衡室64の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動の差によりオリフィス通路66を通じての流体の流動量が効果的に確保されて、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて、エンジンシェイク等の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮される。
【0058】
また、停車時に問題となるアイドリング振動や走行時に問題となる低速こもり音等の中周波数域の振動の入力では、受圧室62に対して小さな振幅の圧力変動が惹起されることとなる。その際、当該振動の周波数域がオリフィス通路66のチューニング周波数よりも高いことから、オリフィス通路66が反共振的な作用によって流体流通抵抗が著しく大きくなって、実質的に閉塞状態となる。そこで、当該中周波数域にチューニングされた可動ゴム膜36の弾性変形に基づいて、受圧室62の圧力変動が吸収されることにより、オリフィス通路66の実質的な閉塞化に起因する著しい高動ばね化が回避されることとなる。それ故、中周波数域の振動に対する良好な防振効果(低動ばね特性に基づく振動絶縁効果)が発揮される。
【0059】
そこにおいて、第二の取付金具14には、ダイヤフラム52を上方から覆うようにして、カバー部材94が組み付けられている。カバー部材94は、図14〜16に示されているように、浅底で略円形の逆カップ形状を有しており、中央部分が略平坦な円板形状とされていると共に、中央部分から外周縁部にかけて径寸法が次第に大きくなるように湾曲している。換言すると、カバー部材94は、上方に向かって膨らむ略円形ドーム状を呈している。カバー部材94の下方に位置する開口周縁部(外周縁部)が径方向外方に向かって突出するような外フランジ形状を有していることにより、開口周縁部の肉厚寸法が、他の部位の肉厚寸法に比して大きくされている。このカバー部材94は、例えば、金属材料にプレス加工を施す等して形成することも可能であるが、要求される製造コストや弾性、耐蝕性等を考慮して、合成樹脂材料を用いて型成形されることが好ましい。
【0060】
カバー部材94の外周縁部には、複数(本実施形態では3つ)の係止片96が設けられている。係止片96は、カバー部材94の外周縁部から外方に延び出す、上板部98と中間板部100と段差部102と下板部104を備えた略段付き板形状を呈しており、下板部104の突出先端部分に係止部106が形成されている。
【0061】
上板部98は、カバー部材94の外周縁部から径方向外方に延び出す略平板形状とされており、カバー部材94の中央部分の円板状部と略平行に延びている。
【0062】
中間板部100は、上板部98の径方向外方の突出先端部分から下方に延び出す略平板形状とされていると共に、下方に行くに従って径方向外方に向かうようにカバー部材94の中心軸に対して傾斜している。特に、中間板部100におけるカバー部材94の中心軸に対する傾斜角度は、ダイヤフラム52に加硫接着された環状固定金具54のテーパの程度と略同じとされている。
【0063】
段差部102は、中間板部100の下方の突出先端部分から径方向外方に延び出す略平板形状とされており、カバー部材94の中央部分の円板状部や上板部98と略平行に延びている。
【0064】
下板部104は、段差部102の径方向外方の突出先端部分から下方に延び出す略平板形状とされており、カバー部材94の中心軸と略平行に延びている。この下板部104の下方の突出先端部分において、径方向内方に屈曲した係止部106が形成されている。即ち、下板部104と係止部106が協働して略断面L字状を有している。
【0065】
なお、上板部98と中間板部100の接続部分や段差部102と中間板部100乃至は下板部104の接続部分が、径方向外方に向かって膨らむような湾曲形状を有していることで、各接続部分を挟んだ両側の部位が滑らかに接続されている。また、これら上下板部98,104や中間板部100、段差部102、係止部106を含んでなる係止片96は、カバー部材94の周方向に沿って湾曲する板状とされている。
【0066】
特に本実施形態では、3つの係止片96,96,96における形状や大きさ、構造等の形態が同一とされていると共に、それら3つの係止片96,96,96がカバー部材94の外周縁部において等間隔に設けられている。即ち、係止片96の周方向の長さ寸法が、カバー部材94の外周縁部の周長に比して所定の長さ(例えば外周縁部の周長の1/20〜1/4の長さ)で小さくされていると共に、各係止片96の周方向間の離隔距離も互いに略同じとされている。
【0067】
このような係止片96の周方向の略中央部分には、カバー部材94の内側となる図16中の軸方向下方に突出するようにして当接突起108が設けられている。当接突起108は、図17にも示されているように、上板部98の下面から下方に向かって幅が小さくなる先細形状である、逆三角形状の断面で突設されており、カバー部材94の外周縁部と係止片96における上板部98と中間板部100の接続部分との間に亘って直線的に連続して延びている。特に、当接突起108は、カバー部材94の径方向に延びている。また、本実施形態では、当接突起108の突出先端部分は、小さな幅の平面形状とされており、係止片96の上板部98等と平行に延びている。なお、当接突起108の先端は、必ずしも平面を有していなくても良く、先尖形状でも良いし、適当な曲率の湾曲形状等でも良い。更に、これら複数(本実施形態では3つ)の当接突起108が、各係止片96の周方向中央部分に形成されていることによって、カバー部材94の外周縁部から径方向外方に延び出す形態で、カバー部材94の周方向に等間隔に形成されている。
【0068】
また、カバー部材94の外周縁部における各係止片96の周方向間の略中央部分には、スペーサ突部110が形成されている。スペーサ突部110は、カバー部材94の周方向に長手状に延びる略矩形ブロック形状を呈しており、カバー部材94の外周縁部から下方に向かって所定の高さで突出している。なお、当接突起108やスペーサ突部110の高さ寸法については、後述するカバー部材94の第二の取付金具14側への組み付け状態で説明する。また、スペーサ突部110の突出方向の先端面が、係止片96の上板部98等と平行に延びる平坦な略矩形状を有していると共に、前述の当接突起108の突出先端部分の平坦面に比して十分に大きくされている。なお、スペーサ突部110の先端は、必ずしも平面を有していなくても良く、先尖形状でも良いし、適当な曲率の湾曲形状等でも良い。これら複数(本実施形態では3つ)のスペーサ突部110が、各係止片96の周方向間の略中央部分に形成されていることによって、カバー部材94の周方向に等間隔に形成されている。
【0069】
要するに、本実施形態に係るカバー部材94では、その外周縁部において当接突起108を備えた係止片96と、スペーサ突部110が周方向で交互に形成されていると共に、周方向で隣り合う係止片96とスペーサ突部110の間の離隔距離が全て略等しくされている。また、カバー部材94や係止片96、当接突起108、スペーサ突部110が、合成樹脂材料の一体形成品で構成されている。
【0070】
特に本実施形態では、カバー部材94や係止片96が、当接突起108やスペーサ突部110に比して大きな形状とされて、且つ比較的に薄肉の合成樹脂材料を用いて形成されていることから、ある程度の大きな弾性を備えている。而して、カバー部材94の外周縁部に一体形成された各係止片96は、カバー部材94の弾性変形に伴い変形することが可能とされており、特に、カバー部材94の中央部分が下方に向かって膨らむように撓むことで、カバー部材94の外周縁部がめくれ上がるように変形し、この変形に伴い係止片96の上板部98と中間板部100の接続部分が盛り上がるように変形して、係止片96の中間板部100から先端の係止部106にかけての部位が、径方向外方に開くように変形せしめることが可能とされている。なお、係止片96において、カバー部材94の外周縁部からの離隔距離が大きくなる部分ほど、カバー部材94から独立して弾性変形可能であることは、勿論である。
【0071】
一方、当接突起108やスペーサ突部110は、係止片96やカバー部材94に比して十分に小さな形状をもって、係止片96やカバー部材94に突出形成されていることにより、その変形許容量が極めて小さくされている。
【0072】
このような構造とされたカバー部材94は、例えば、以下のようにして第二の取付金具14に好適に組み付けられる。
【0073】
先ず、ダイヤフラム52の上方で、カバー部材94の中心軸とエンジンマウント10の中心軸を略同一線上に位置せしめつつ、カバー部材94をダイヤフラム52に向かって軸方向に変位せしめて、カバー部材94における各係止片96の係止部106が、ブラケット金具70の外フランジ状部80を軸方向に乗り越えて、係止部106の下端面が外フランジ状部80の下端面よりも下方に位置せしめられるようにする。
【0074】
このカバー部材94が軸方向に変位する際に、係止部106の内周縁部が外フランジ状部80の外周縁部よりも径方向内方に位置せしめられていることから、係止部106の下端部分が外フランジ状部80の上端部分に当接することとなるが、かかる当接状態下で、カバー部材94が更に軸方向に押し込められるように変位することにより、係止片96の弾性と、係止片96における中間板部100の傾斜作用とが相俟って、係止片96の中間板部100から係止部106にかけての部位が径方向外方に開くように変形する。これにより、係止部106が外フランジ状部80の周縁部等に当接しつつ、外フランジ状部80を軸方向に乗り越えて、係止部106の下端面を外フランジ状部80の下端面よりも下方に位置せしめることが可能となる。
【0075】
また、カバー部材94の軸方向変位に伴い、係止部106が外フランジ状部80を軸方向に乗り越えて係止部106と外フランジ状部80の当接状態が解除されると、係止片96の径方向外方に開く弾性変形が解除されて、係止部106が略初期の径方向位置に位置せしめられる。これにより、係止部106が外フランジ状部80を軸方向に跨いで下方に位置せしめられた状態で、係止部106の内周縁部が外フランジ状部80の外周縁部よりも径方向内方に位置せしめられることとなり、係止部106の上端部分と外フランジ状部80の下端部分が軸方向に重ね合わせられていることで、係止片96(係止部106)が外フランジ状部80に対して軸方向で抜け出しを阻止する方向、即ち図1中、上に向かって係止される係止機構が構成されている。
【0076】
或いは、係止部106と外フランジ状部80を係止させるに先立って、前述の如くカバー部材94の中央部分が下方に向かって凹むように撓ませて、係止片96を径方向外方に変形せしめた状態で、カバー部材94を軸方向に変位させることも可能である。これにより、係止部106の下端部分と外フランジ状部80の上端部分を当接させずに、係止部106が外フランジ状部80を軸方向に跨いだ後に、カバー部材94の変形解除に伴い、係止片96の弾性変形を解除して係止部106と外フランジ状部80を係止させることも出来る。
【0077】
そこにおいて、3つの係止片96,96,96が外フランジ状部80に係止された状態下、各係止片96に設けられた当接突起108が、環状固定金具54の上面に被着された被覆ゴム層60に対して軸方向に重ね合わせられている。ここで、図17にも示されているように、かかる係止状態下、当接突起108の基端部側である係止片96の上板部98と被覆ゴム層60の軸方向間に所定の離隔距離:lが設定されるようになっているが、当接突起108の上板部98から軸方向に突出する高さ寸法:hが当該離隔距離:lよりも大きくされて、h>lとされている。また、被覆ゴム層60が厚肉のゴム弾性材で形成されている一方、当接突起108が小形の合成樹脂材で形成されていて、被覆ゴム層60の変形許容量が当接突起108の変形許容量に比して十分に大きくされている。これにより、当接突起108が、h−lに略相当する軸方向寸法の分だけ被覆ゴム層60に対して軸方向に食い込むように押し付けられて、被覆ゴム層60が軸方向に圧縮変形する。特に、当接突起108が先細形状とされて突出先端面が小さくされていることから、被覆ゴム層60の当接突起108による当接部分が局所的に圧縮変形する。この変形による被覆ゴム層60の弾性が係止片96に及ぼされて、係止片96が上方に向かうように変位することにより、係止部106と外フランジ状部80が軸方向に押し付けられるように密接状態で重ね合わせられて、係止片96が外フランジ状部80に対して軸方向で抜け出しを阻止する方向(図1中、上)に作用する係止力(係止片96と外フランジ状部80の軸方向の当接力)が大きくされている。
【0078】
従って、各係止片96がブラケット金具70の外フランジ状部80に確実に係止されることとなり、係止片96の中間板部100がダイヤフラム52の環状固定金具54の周りに位置せしめられて、カバー部材94がダイヤフラム52の上方に所定の距離を隔てて持ち上げられるようにして複数の係止片96で支持せしめられる。その結果、カバー部材94が、係止片96とブラケット金具70を介して第二の取付金具14に組み付けられて、ダイヤフラム52を略全体に亘って覆って保護するようになっている。上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、第二の取付金具14から外周側に突出して周方向に延びる係止用突部が、ブラケット金具70の外フランジ状部80を含んで構成されている。また、カバー部材94が、ダイヤフラム52を全体に亘って覆うフルカバー構造とされている。
【0079】
特に、係止片96が外フランジ状部80に係止された状態で、図18にも示されているように、カバー部材94に形成された3つのスペーサ突部110,110,110が、被覆ゴム層60に当接されている。即ち、かかる係止状態で、スペーサ突部110のカバー部材94の外周縁部から軸方向に突出する高さ寸法が、カバー部材94の外周縁部と被覆ゴム層60の軸方向の離隔距離と同じかそれよりも大きくされていることにより、スペーサ突部110が被覆ゴム層60に当接している。
【0080】
本実施形態では、係止片96の上板部98の下端面とカバー部材94の外周縁部の下端面が略同じ高さに位置せしめられ、カバー部材94の外周縁部から突出するスペーサ突部110の高さ寸法が、上板部98から下方に突出する当接突起108の高さ寸法に比して小さくされていることにより、スペーサ突部110における被覆ゴム層60との当接部分でのゴムの圧縮変形による弾性が、当接突起108で被覆ゴム層60に当接する部分のものに比して小さくされている。しかしながら、これに限定されるものでなく、例えば、スペーサ突部の高さ寸法を当接突起の高さ寸法よりも大きくして、スペーサ突部と被覆ゴム層の当接部分において、当接突起と被覆ゴム層の当接部分よりも大きな弾性が得られるようにしても良い。或いは、係止片が外フランジ状部に係止されて当接突起が被覆ゴム層に当接された状態下、スペーサ突部が被覆ゴム層に対して軸方向に所定距離を隔てて離れるように位置せしめられるようにし、カバー部材の弾性変形に際して、スペーサ突部が被覆ゴム層に当接されるようにしても良い。
【0081】
また、当接突起108およびスペーサ突部110の被覆ゴム層60と軸方向で対向位置せしめられる下端面に関して、スペーサ突部110が当接突起108よりも大きくされていることにより、スペーサ突部110が当接突起108よりも大きな当接面をもって被覆ゴム層60に当接されている。
【0082】
さらに、本実施形態では、カバー部材94の周方向で交互に形成される当接突起108とスペーサ突部110が被覆ゴム層60に当接された状態下、周方向で隣り合う当接突起108とスペーサ突部110の間に位置せしめられる、カバー部材94の外周縁部においてスペーサ突部110が形成されていない部分や係止片96の上板部98において当接突起108が形成されていない部分が、被覆ゴム層60と軸方向に所定の距離をもって離隔せしめられている。即ち、カバー部材94乃至は係止片96と被覆ゴム層60との軸方向対向面間における当接突起108とスペーサ突部110の周方向間には、隙間が形成されているのであり、この隙間を利用して、カバー部材94の内側におけるカバー部材94とダイヤフラム52との対向面間の領域112を外部空間に連通させる大気連通路114が形成されている。
【0083】
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント10においては、カバー部材94に形成された係止片96がブラケット金具70の外フランジ状部80に係止された状態で、当接突起108が被覆ゴム層60に対して軸方向に押し付けられることによって、係止片96と外フランジ状部80との軸方向に働く抜け止め係止力が大きくされている。これにより、カバー部材94の第二の取付金具14への組み付け状態が安定して、カバー部材94が第二の取付金具14から外れ難くなることから、ダイヤフラム52の保護状態が安定して維持される。
【0084】
また、当接突起108が被覆ゴム層60に軸方向に押し付けられて、食い込むように当接することにより、カバー部材94のダイヤフラム52に対する回転防止効果が有利に発揮され得る。
【0085】
さらに、被覆ゴム層60が環状固定金具54の内フランジ状部56に被着形成されており、当接突起108が被覆ゴム層60を介して環状固定金具54に重ね合わされるようになっていることから、カバー部材94が当接突起108と被覆ゴム層60を介して環状固定金具54に安定して保持されることに加え、被覆ゴム層60に食い込んだ当接突起108が必要以上に食い込むことが防止されて、被覆ゴム層60の耐久性が向上される。その結果、被覆ゴム層60の適度な弾性が長期間に亘って安定して得られて、カバー部材94の組み付け安定性が高度に維持される。
【0086】
更にまた、カバー部材94の係止片96が周上の複数箇所に設けられていると共に、カバー部材94および係止片96が、薄肉の合成樹脂材料を用いて形成されていることにより、係止片96の変形許容量が比較的に大きくされる。これにより、カバー部材94の組み付け時に、係止片96を径方向外方に拡開するように変形させて、係止片96が外フランジ状部80を乗り越える際の接触抵抗を抑えつつ、係止片96と外フランジ状部80を互いに係止することも容易となり、その結果、カバー部材94の第二の取付金具14に対する組み付け作業が容易になる。
【0087】
そのようにカバー部材94の組み付け作業が容易とされていることから、第一の取付金具12がパワーユニット側取付金具82を介してパワーユニットに固定されると共に、第二の取付金具14がブラケット金具70を介して車両ボデーに固定される前の図1〜4に示される如きマウントの単品状態で、カバー部材94が組み付け可能であるのは勿論のこと、例えば、第一の取付金具12や第二の取付金具14がパワーユニットやボデーに固定された自動車への装着状態で、自動車のボンネットを開いて、エンジンルームにおいてダイヤフラム52を上方に向けて配置されたマウント本体に対して、上方からカバー部材94を組み付けることも可能である。これにより、マウント本体を自動車に装着する際に、カバー部材94が他部材に当接することによる損傷等を特別に配慮する必要がなくなって、装着作業が容易になる。
【0088】
特に本実施形態では、当接突起108が逆三角断面でカバー部材94の径方向に延びる先細形状とされていることから、当接突起108を被覆ゴム層60に対して径方向に延びるように局所的に食い込ませることが出来る。それによって、小形の当接突起108で被覆ゴム層60の弾性がより効果的に得られて、カバー部材94における低コスト化や軽量化等が有利に図られつつ、カバー部材94の第二の取付金具14に対する抜け止め効果や回転防止効果が一層有利に発揮され得る。
【0089】
また、本実施形態では、カバー部材94の外周部分において、係止片96が等間隔に3つ形成されていることから、カバー部材94の係止片96による安定した支持状態が実現されることに加え、当接突起108がカバー部材94における係止片96の形成位置に設けられていることから、当接突起108が被覆ゴム層60に軸方向に押し付けられることに基づくゴムの弾性が、係止片96に効率良く及ぼされることとなり、カバー部材94の組み付け状態の更なる安定化が図られ得る。
【0090】
さらに、本実施形態に係るカバー部材94の外周部分には、被覆ゴム層60への当接部分において当接突起108とは周上で異なる位置で当接突起108よりも大きな当接面をもって被覆ゴム層60に当接するスペーサ突部110が形成されている。これにより、例えば、カバー部材94が第二の取付金具14に組み付けられた状態下、カバー部材94の中央部分が他部材等に接触して撓むことに伴い、係止片96が径方向外方に向かって変形する力が作用せしめられた場合にも、スペーサ突部110が被覆ゴム層60に当接していることによって、カバー部材94の外周部分の撓み変形量が制限されることにより、係止片96の径方向外方に向かう変形量も制限される。それ故、係止片96と外フランジ状部80の係止状態が好適に維持されて、カバー部材94の組み付け安定性が一層向上され得るのである。
【0091】
また、スペーサ突部110がカバー部材94の外周縁部における各当接突起108の周方向間の中央部分に位置せしめられていると共に、カバー部材94の外周縁部に等間隔に形成されている。これにより、当接突起108とスペーサ突部110の各被覆ゴム層60に対する当接領域が有効に確保されて、上述の当接による効果が一層有利に発揮され得る。しかも、カバー部材94の外周縁部が、周方向で等間隔に形成された当接突起108およびスペーサ突部110の計6つの突部を介して被覆ゴム層60の周上の複数箇所に当接して支持されていることから、カバー部材94が他部材等に当接した際に、局所的に撓むことも有利に抑えられて、カバー部材94の耐久性が向上され得る。
【0092】
加えて、カバー部材94と被覆ゴム層60の軸方向対向面間において、当接突起108とスペーサ突部110の周方向間に形成される複数の大気連通路112が、周方向の全周に亘って略同じ大きさで形成されることから、カバー部材94とダイヤフラム52の対向面間領域112と外部空間の連通状態が効率良く確保される。これにより、カバー部材94とダイヤフラム52の対向面間領域112が密閉状態になることが好適に回避されて、密閉状態下での空気ばね作用によるダイヤフラム52の弾性変形量の変化に起因して、マウントのばね特性が変化する問題が解消される。
【0093】
更に換言すると、カバー部材94の外周縁部における各当接突起108同士の周方向中央部分において、スペーサ突部110が被覆ゴム層60に当接していることによって、カバー部材94と被覆ゴム層60の軸方向対向面間における周方向で隣り合う当接突起108同士の周方向間の隙間が変形し難くされている。これにより、かかる隙間で構成される大気連通路の形状が好適に保持されて、マウントにおける所期のばね特性が一層安定して得られるのである。
【0094】
また、本実施形態では、第二の取付金具14のブラケット金具70に対する圧入端位置を規定する外フランジ状部80によって、カバー部材94の係止片96が係止される係止用突部が構成されていることから、係止用突部を第二の取付金具14に対して直接に別途形成する必要がなくなって、部品点数の削減に基づく低コスト化が有利に図られ得る。
【0095】
それ故、本実施形態に係る自動車用エンジンマウント10においては、カバー部材94の第二の取付金具14側への組み付け構造が簡単になることに加え、カバー部材94が確実に組み付けられることにより、ダイヤフラム52が極めて有利に保護されるのである。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0097】
例えば、当接突起108や係止片96における形状や大きさ、構造、数、カバー部材94おける配置等の形態は、例示の如き形態に限定されるものでない。具体的に前記実施形態では、それぞれ同一形態の係止片96や当接突起108がカバー部材94の外周縁部において等間隔に3つ形成されていたが、2つ又は4つ以上形成されたり、それらの形状や大きさ、構造等の形態がそれぞれ異ならされたり、係止片や当接突起がカバー部材の外周縁部でそれぞれ不等間隔に形成されても良い。
【0098】
また、当接突起108は、カバー部材94において係止片96の形成位置以外の位置に形成しても良く、或いは係止片96の形成位置に加えて他の位置に形成しても良い。例えば、当接突起108が形成された各係止片96の周方向間に形成されたスペーサ突部110の代わりに、被覆ゴム層60に対して新たに食い込み状態で当接する当接突起を形成することも可能である。また、このことからも、明らかなように、スペーサ突部110は必須の構成要件でない。
【0099】
また、前記実施形態では、カバー部材94がダイヤフラム52を全体に亘って多うフルカバー構造とされていたが、例えばカバー部材94にダイヤフラム52とカバー部材94の対向面間領域112に対する空気抜き用の貫通孔が形成されていること等によって、フルカバー構造とされていなくても良い。
【0100】
また、前記実施形態では、環状固定金具54が、下方から上方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ付きの略円筒形状とされていたが、軸方向に延びる円筒形状や円環板形状とされていても良い。
【0101】
また、第二の取付金具14から外周側に突設されて、カバー部材94の係止片96が係止される係止用突部は、例示の如くブラケット金具70のカップ状部72の開口周縁部において全周に亘って連続して延びる外フランジ状部80で構成される必要は必ずしもなく、例えば、第二の取付金具またはブラケット金具の外周部分において係止片が係止される位置にのみ設けられることによって、周方向で部分的に突出するように形成されることも可能である。また、例えば、複数の係止片の軸方向長さがそれぞれ異ならされることに対応して、複数の係止用突部の形成位置が軸方向で異ならされていても良い。
【0102】
また、仕切部材32に設けられた可動ゴム膜36は必須の構成要件でなく、更にオリフィス通路66の形状や大きさ、構造、数等の形態は、例示の如きものに限定されない。具体的に、仕切部材にオリフィス通路を複数形成して、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振周波数をそれぞれ異なる周波数域にチューニングすることで、複数の周波数域での振動に対する防振効果が得られるようにしても良い。
【0103】
また、前記実施形態では、マウント軸方向で仕切部材32を挟んだ下方に壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成される受圧室62が形成されると共に、仕切部材32を挟んだ上方に壁部の一部がダイヤフラム52で構成された平衡室64が形成されて、本体ゴム弾性体16から下方に突出する第一の取付金具12の固定部(固定金具18)が、パワーユニット側に固定される一方、第二の取付金具14が車両ボデー側に固定されることによって、パワーユニットをボデーに吊り下げ状態で防振支持せしめるマウント構造に対して本発明が適用されていたが、これに限定されない。例えば、特開2003−148548号公報や特開2007−107712号公報にも示されているように、装着状態で上方に位置せしめられる第一の取付金具がパワーユニット側に固定される一方、下方に位置せしめられる第二の取付金具が車両ボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットの支持荷重が第一の取付金具と第二の取付金具をマウント軸方向で相互に接近させる方向に及ぼされる載置タイプのエンジンマウント等に対しても、本発明は同様に適用可能である。即ち、このようなエンジンマウントでは、一般に、上記公報にも記載されているように、第二の取付金具の筒状部の上側開口部が本体ゴム弾性体で流体密に閉塞されていると共に、第二の取付金具の筒状部の下側開口部がダイヤフラムで流体密に閉塞されていることから、本発明に係るカップ状のカバー部材が、ダイヤフラムを鉛直下方から覆うようにして組み付けられる。
【0104】
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用ボデーマウントやデフマウント等の他、自動車以外の各種振動体の防振装置に対して、何れも、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態としての自動車用エンジンマウントの縦断面図であって図2のI−I断面に相当する図。
【図2】同自動車用エンジンマウントの平面図。
【図3】同自動車用エンジンマントの正面図。
【図4】同自動車用エンジンマウントの右側面図。
【図5】同自動車用エンジンマウントの一部を構成するブラケット金具の正面図。
【図6】同ブラケット金具の平面図。
【図7】同ブラケット金具の左側面図。
【図8】同ブラケット金具の右側面図。
【図9】同自動車用エンジンマウントの一部を構成するパワーユニット側取付金具の正面図。
【図10】同パワーユニット側取付金具の右側面図。
【図11】同パワーユニット側取付金具の底面図。
【図12】図9のXII−XII断面図。
【図13】図9のXIII−XIII断面図。
【図14】同自動車用エンジンマウントの一部を構成するカバー部材の平面図。
【図15】同カバー部材の底面図。
【図16】図14のXVI−XVI断面図。
【図17】同自動車用エンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図であって、図4のXVII−XVII断面に対応する図。
【図18】同自動車用エンジンマウントの別の要部を拡大して示す縦断面図。
【符号の説明】
【0106】
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、52:ダイヤフラム、54:環状固定金具、60:被覆ゴム層、62:受圧室、64:平衡室、66:オリフィス通路、80:外フランジ状部、94:カバー部材、96:係止片、108:当接突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の取付部材が第二の取付部材に設けた筒状部の一方の開口部側に離隔配置されてそれら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されており、該筒状部の一方の開口部が該本体ゴム弾性体で流体密に閉塞されると共に該筒状部の他方の開口部が可撓性ゴム膜で流体密に閉塞されて非圧縮性流体が封入された流体室が形成され、且つ該第二の取付部材で支持された仕切部材で該流体室が仕切られることにより該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と該可撓性ゴム膜で壁部の一部が構成された平衡室が形成されていると共に、これら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路が設けられた流体封入式防振装置において、
前記第二の取付部材から外周側に突出して周方向に延びる係止用突部が形成されている一方、
前記可撓性ゴム膜の外周縁部に環状固定金具が加硫接着されて該環状固定金具が該第二の取付部材の前記筒状部に固定されることにより該筒状部の前記他方の開口部が該可撓性ゴム膜で流体密に閉塞されていると共に、該可撓性ゴム膜の外周縁部が加硫接着された該環状固定金具の内周縁部の外面には被覆ゴム層が該可撓性ゴム膜と一体形成されており、
更に、該可撓性ゴム膜を外方から覆うカバー部材が組み付けられており、該カバー部材の外周部分には該被覆ゴム層への当接部分に当接突起が少なくとも一つ突設されていると共に、該カバー部材の外周縁部には周上の複数箇所において該第二の取付部材の該筒状部に向かって軸方向に延びる係止片が設けられており、これらの係止片が該係止用突部に対して軸方向で抜け出しを阻止する方向に係止されることにより、該当接突起が該被覆ゴム層に対して軸方向に押し付けられていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記カバー部材が、前記可撓性ゴム膜を全体に亘って覆うフルカバー構造とされている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記カバー部材において、前記当接突起が先細形状とされている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
前記カバー部材において、前記当接突起が径方向に延びる形状とされている請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
前記カバー部材の外周部分と前記被覆ゴム層の対向面間には、前記当接突起が形成されていない部分において、該カバー部材と前記可撓性ゴム膜との対向面間に形成された領域を外部空間に連通させる大気連通路が形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項6】
前記当接突起が、前記カバー部材の外周部分において、前記係止片の形成位置に設けられている請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項7】
前記カバー部材の外周部分には、前記被覆ゴム層への当接部分において前記当接突起とは周上で異なる位置で該当接突起よりも大きな当接面をもって該被覆ゴム層に当接するスペーサ突部が形成されている請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項8】
前記スペーサ突部が、前記カバー部材の外周部分において周方向で隣り合う前記当接突起間の周方向中央部分に形成されている請求項7に記載の流体封入式防振装置。
【請求項9】
前記環状固定金具が筒形状とされており、軸方向一方の開口周縁部において前記第二の取付部材の前記筒状部に対して固定されるかしめ固定部が形成されていると共に、軸方向他方の開口周縁部において径方向内方に向かって延び出す内フランジ状部が形成されており、この内フランジ状部に対して前記可撓性ゴム膜の外周縁部が加硫接着されて該内フランジ状部の外面に対して前記被覆ゴム層が被着形成されている請求項1乃至8の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項10】
前記第二の取付部材に対してブラケット金具が外嵌固定されていると共に、該ブラケット金具の軸方向端縁部が該第二の取付部材の外周面上で突出せしめられており、このブラケット金具の突出部分によって前記係止用突部が構成されている請求項1乃至9の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項11】
前記カバー部材が、合成樹脂材料の一体成形品で構成されている請求項1乃至10の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の流体封入式防振装置に用いられるカバー部材。
【請求項1】
第一の取付部材が第二の取付部材に設けた筒状部の一方の開口部側に離隔配置されてそれら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されており、該筒状部の一方の開口部が該本体ゴム弾性体で流体密に閉塞されると共に該筒状部の他方の開口部が可撓性ゴム膜で流体密に閉塞されて非圧縮性流体が封入された流体室が形成され、且つ該第二の取付部材で支持された仕切部材で該流体室が仕切られることにより該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と該可撓性ゴム膜で壁部の一部が構成された平衡室が形成されていると共に、これら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路が設けられた流体封入式防振装置において、
前記第二の取付部材から外周側に突出して周方向に延びる係止用突部が形成されている一方、
前記可撓性ゴム膜の外周縁部に環状固定金具が加硫接着されて該環状固定金具が該第二の取付部材の前記筒状部に固定されることにより該筒状部の前記他方の開口部が該可撓性ゴム膜で流体密に閉塞されていると共に、該可撓性ゴム膜の外周縁部が加硫接着された該環状固定金具の内周縁部の外面には被覆ゴム層が該可撓性ゴム膜と一体形成されており、
更に、該可撓性ゴム膜を外方から覆うカバー部材が組み付けられており、該カバー部材の外周部分には該被覆ゴム層への当接部分に当接突起が少なくとも一つ突設されていると共に、該カバー部材の外周縁部には周上の複数箇所において該第二の取付部材の該筒状部に向かって軸方向に延びる係止片が設けられており、これらの係止片が該係止用突部に対して軸方向で抜け出しを阻止する方向に係止されることにより、該当接突起が該被覆ゴム層に対して軸方向に押し付けられていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記カバー部材が、前記可撓性ゴム膜を全体に亘って覆うフルカバー構造とされている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記カバー部材において、前記当接突起が先細形状とされている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
前記カバー部材において、前記当接突起が径方向に延びる形状とされている請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
前記カバー部材の外周部分と前記被覆ゴム層の対向面間には、前記当接突起が形成されていない部分において、該カバー部材と前記可撓性ゴム膜との対向面間に形成された領域を外部空間に連通させる大気連通路が形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項6】
前記当接突起が、前記カバー部材の外周部分において、前記係止片の形成位置に設けられている請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項7】
前記カバー部材の外周部分には、前記被覆ゴム層への当接部分において前記当接突起とは周上で異なる位置で該当接突起よりも大きな当接面をもって該被覆ゴム層に当接するスペーサ突部が形成されている請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項8】
前記スペーサ突部が、前記カバー部材の外周部分において周方向で隣り合う前記当接突起間の周方向中央部分に形成されている請求項7に記載の流体封入式防振装置。
【請求項9】
前記環状固定金具が筒形状とされており、軸方向一方の開口周縁部において前記第二の取付部材の前記筒状部に対して固定されるかしめ固定部が形成されていると共に、軸方向他方の開口周縁部において径方向内方に向かって延び出す内フランジ状部が形成されており、この内フランジ状部に対して前記可撓性ゴム膜の外周縁部が加硫接着されて該内フランジ状部の外面に対して前記被覆ゴム層が被着形成されている請求項1乃至8の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項10】
前記第二の取付部材に対してブラケット金具が外嵌固定されていると共に、該ブラケット金具の軸方向端縁部が該第二の取付部材の外周面上で突出せしめられており、このブラケット金具の突出部分によって前記係止用突部が構成されている請求項1乃至9の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項11】
前記カバー部材が、合成樹脂材料の一体成形品で構成されている請求項1乃至10の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の流体封入式防振装置に用いられるカバー部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−41666(P2009−41666A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207333(P2007−207333)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]