説明

流体機械

【課題】作業効率の向上を図りながら、ケーシングと締結ボルトとの間の熱伝導向上による温度差低減とが可能な流体機械を提供する。
【解決手段】ロータ10の周囲に設けられる円筒状の中間ケーシング11をロータ10の軸線方向に複数に分割し、中間ケーシング11の周囲にロータ10と平行に設けられた複数の締結ボルト12によって一体に連結してなる流体機械1Aであって、締結ボルト12と中間ケーシング11の外周との間に中間ケーシング11の熱を締結ボルト12へ伝達する熱伝導部材13が設けられ、熱伝導部材13は、締結ボルト12と中間ケーシング11との間のロータ10の径方向への間隔が最も狭い位置で周方向に分割されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の流体を扱う輪切型ポンプ等の流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体機械として輪切型ポンプが知られている。この輪切型ポンプは、輪切状の複数の中間ケーシングを、吸込ケーシングと吐出ケーシングとによって軸線方向から挟み込んだ構成をなしている。そして、この軸線方向に平行に設けられた複数の締結ボルトによって締め付けることでケーシングが構成されており、このケーシングの内部に羽根車を収容することでこれらケーシングと羽根車とが一体化されている。
【0003】
このような輪切型ポンプが、例えばIGCC(石炭ガス化複合発電)等に用いられる場合には、輪切型ポンプへの給水温度が250℃以上の高温となるため、特に起動時及び停止時において中間ケーシングに急激な温度変化が生じる。この際、中間ケーシングと締結ボルトとの間は非接触となっているため中間ケーシングと締結ボルトとの間で大きな温度差が発生する。この温度差によって、これら中間ケーシングと締結ボルトとの間に熱伸縮量の差異が生じ、締結ボルトに過度の応力がかかり、各中間ケーシング間の面開きが引き起こされ給水が漏れ出す等の問題があった。
【0004】
このような給水の漏洩を防止するために、上記の中間ケーシング等をさらに外側から覆う外側ケーシングを設けて、ダブルケーシングポンプとする手法が採用されている。また、特許文献1に開示された手法においては、締結ボルトの内部に組み込まれたヒータによって締結ボルトの温度調節を行い、中間ケーシングとの温度差の低減を行なっている。さらに特許文献2には、中間ケーシングと締結ボルトとの間の間隙を埋めるように、これら中間ケーシングと締結ボルトとの両方に接するスペーサを設け、中間ケーシングからスペーサを介して熱が伝達されることによって、中間ケーシングと締結ボルトの温度差の低減を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−243399号公報
【特許文献2】特許第4146020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ダブルケーシングポンプや特許文献1に開示された手法においては、コストアップとなるため好ましくない。また、特許文献2に開示された手法においては、スペーサの設置に手間を要するといった問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、作業効率の向上を図りながら、ケーシングと締結ボルトとの間の熱伝導向上による温度差低減とが可能な流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る流体機械は、回転軸の周囲に設けられる円筒状のケーシングを該回転軸の軸線方向に複数に分割し、前記ケーシングの周囲に前記回転軸と平行に設けられた複数のボルトによって一体に連結してなる流体機械であって、前記ボルトと前記ケーシングの外周との間に該ケーシングの熱をボルトへ伝達する熱伝導部材が設けられ、前記熱伝導部材は、前記ボルトと前記ケーシングとの間の前記回転軸の径方向への間隔が最も狭い位置で周方向に分割されていることを特徴とする。
【0009】
このような熱伝導部材が設けられることによって、ボルトとケーシングとが面接触し、これらの間での熱伝導を向上することが可能となる。また、熱伝導部材は各ボルトとケーシングとの間の最も狭い位置で分割されているため、複数のケーシングがボルトで一体に連結された後に、ケーシングの周方向から上記の最も狭い位置へボルトの両側から挿入するように熱伝導部材を設置することができる。このように、熱伝導部材設置の容易化を行なうとともに、ボルトとケーシングとが確実に面接触されて、これらの間の熱伝導の向上を達成することができる。
【0010】
また、前記熱伝導部材には、放熱フィンが設けられていてもよい。
【0011】
このような放熱フィンによって、ケーシングから外部へ放熱を行うことも可能となり、ケーシングとボルトとの接触部においては、これらの間の熱伝導を向上しながら、一方で、その他の部位においてはケーシングの冷却を促進することができる。
【0012】
さらに、前記熱伝導部材には、前記ボルトとの間及び前記ケーシングとの間に熱伝導性の充填材が設けられていてもよい。
【0013】
このような充填材によって、ケーシングとボルトとの間の密着性をさらに向上して熱伝導の向上を図ることができる。
【0014】
また、前記熱伝導部材が、鋳鉄よりなっていてもよい。
【0015】
鋳鉄は、含有する黒鉛によって振動吸収性、即ち、振動減衰性能に優れているため、流体機械の振動減衰効果も達成でき、流体機械の性能向上につながる。
【0016】
さらに、前記熱伝導部材は前記ケーシングと同一の材料よりなっていてもよい。
【0017】
同一材料とされることによって、異種金属同士が接することによって引き起こされる電食を防ぐことができ、流体機械の耐久性向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の流体機械によれば、熱伝導部材設置の容易化による作業効率向上を図ることができ、ボルトとケーシングとの間の熱伝導向上による温度差低減とを達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係るボイラ給水ポンプを示す全体断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るボイラ給水ポンプの中間ケーシングと締結ボルトと熱伝導部材とロータとを示す断面図であって、図1のA−A断面位置と同じ位置を示すものである。
【図3】本発明の第一実施形態に係るボイラ給水ポンプの中間ケーシングと締結ボルトとの温度変化を示すグラフであって、(a)は熱伝導部材無しの場合を、(b)は熱伝導部材有りの場合を示すものである。
【図4】本発明の第一実施形態に係るボイラ給水ポンプの起動時における締結ボルト応力変化を示すグラフであって、(a)は熱伝導部材無しの場合を、(b)は熱伝導部材有りの場合を示すものである。
【図5】本発明の第一実施形態に係るボイラ給水ポンプの停止時における中間ケーシングの面圧変化を示すグラフであって、(a)は熱伝導部材無しの場合を、(b)は熱伝導部材有りの場合を示すものである。
【図6】本発明の第二実施形態に係るボイラ給水ポンプの中間ケーシングと締結ボルトと熱伝導部材とロータとを示す断面図であって、図1のA−A断面位置と同じ位置を示すものである。
【図7】本発明の第三実施形態に係るボイラ給水ポンプの中間ケーシングと締結ボルトと熱伝導充填材とロータとを示す断面図であって、図1のA−A断面位置と同じ位置を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第一実施形態に係るボイラ給水ポンプ1A(以下、単に給水ポンプ1Aと称する)について説明する。
給水ポンプ1Aは、高温の流体W(水等)を取り扱うのに好適な流体機械である輪切型の多段ポンプとなっている。またこの給水ポンプ1Aにおいては、高圧ボイラへの給水のために多段の羽根車が用いられ、高揚程化が図られている。
【0021】
この給水ポンプ1Aは、図1に示すように、軸線P方向一方側に配置される吸込ケーシング14と、他方側に配置される吐出ケーシング15と、これらの間に挟み込まれて締結ボルト12によって固定される複数の中間ケーシング11とを備えている。
さらに、中間ケーシング11と締結ボルト12との間には熱伝導部材13が設けられている。
【0022】
吸込ケーシング14は、軸線Pを中心とした略円筒状をなす部材であり、内部には軸線P回りに回転可能にロータ(回転軸)10が配置されている。そして、この吸込ケーシング14の径方向外側を向く面には、径方向外側に向かって開口する流体Wの吸込口14aと、この吸込口14aと軸線P方向他方側を向く面に開口する不図示の開口部とを連通する流入路14cが設けられている。
【0023】
また吸込ケーシング14には、軸線P方向一方側を向く面と軸線P方向他方側を向く面との間を貫通する複数(本実施形態では8ケ)のボルト孔14bが同心円上に形成されている。
【0024】
吐出ケーシング15は、吸込ケーシング14同様に、軸線Pを中心とした略円筒状をなしており、内部に軸線P回りに回転可能にロータ10が配置されている。この吐出ケーシング15の径方向外側を向く面には吐出口15aと、この吐出口15aと軸線P方向一方側を向く面に開口する不図示の開口部とを連通する流出路15cが設けられている。さらに、吸込ケーシング14に形成されたボルト孔14bに軸線P方向で対応する位置において、軸線P方向一方側を向く面と軸線P方向他方側を向く面との間を貫通する複数(本実施形態では8ケ)のボルト孔15bが、同心円上に形成されている。
【0025】
中間ケーシング11は、軸線Pを中心とした円筒状をなす部材であって、複数(本実施形態では8ケ)が軸線P方向に重ねられて、吸込ケーシング14と吐出ケーシング15とによって挟まれた状態で配置されている。
【0026】
締結ボルト12は、軸線Pに平行に複数(本実施形態では、8ケ)が設けられ、吸込ケーシング14のボルト孔14bから吐出ケーシング15のボルト孔15bを貫くように挿通されている。そして、締結ボルト12は、吐出ケーシング15の軸線P方向他方側を向く面側にナット16が強固に螺合、固定されることによって、中間ケーシング11を吸込ケーシング14と吐出ケーシング15との間に保持している。なお、締結ボルト12の外周面と中間ケーシング11の外周面とは、直接には接しておらず、また、締結ボルト12のネジ部は、ナット16が螺号される先端部のみに形成されている。
【0027】
次に熱伝導部材13について説明する。
図2に示すように、熱伝導部材13は、中間ケーシング11の外周面と締結ボルト12の外周面との間に設けられる熱伝導性の良好な材料であって、この熱伝導部材13としては、例えば、銅、アルミ、タングステン等が用いられ、一般にはSS400が採用される。
そして、この熱伝導部材13は軸線P方向に延在し、周方向には隣接する二つの締結ボルト12の間の中央で分割されるとともに、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の間隙21の最も狭い部分で分割されている。即ち、熱伝導部材13は、周方向に16ヶに分割されており、締結ボルト12の周方向両側から間隙21に差し込まれて、締結ボルト12の外周面と中間ケーシング11と外周面とが面接触するように設置されている。
【0028】
このような給水ポンプ1Aにおいては、中間ケーシング11と締結ボルト12との間の間隙21を埋めるように熱伝導部材13が設けられ、これら中間ケーシング11と締結ボルト12とが面接触することによって、接触面積が大きくなっている。従って、中間ケーシング11と締結ボルト12との間での熱伝導を向上することが可能となる。
【0029】
また、熱伝導部材13は各締結ボルト12と中間ケーシング11との間の間隙21の最も狭い位置で分割されているため、複数の中間ケーシング11を締結ボルト12によって吸込ケーシング14と吐出ケーシング15の間に挟み込み一体に連結した後に、周方向、即ち、ボルトの両側から挿入するように熱伝導部材13を設置することができる。
【0030】
このように、熱伝導部材13を容易に設置できるとともに、締結ボルト12と中間ケーシング11とが確実に面接触されて、これらの熱伝導の向上を達成することができる。
【0031】
ここで、図3(a)及び図3(b)に示すように、給水ポンプ1Aの起動時において250℃の水を給水ポンプ1Aへ流通させた際、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の間隙21に熱伝導部材13を設置しない場合には、締結ボルト12と中間ケーシング11との温度差は178.2℃であったことに対して、熱伝導部材13を設置した場合には40.5℃となり、温度差を137.7℃低減することが確認できた。
【0032】
また、給水ポンプ1Aの停止時においては、熱伝導部材13無しでは締結ボルト12と中間ケーシング11との温度差は175.5℃であったことに対し、熱伝導部材13有りでは42.9℃となり、温度差を132.6℃低減することが確認できた。
従って、熱伝導部材13を設けることによって、締結ボルト12と中間ケーシング11との間で熱伝導を向上できることがわかる。
【0033】
さらに、図4(a)及び図4(b)に示すように、給水ポンプ1A起動時において同様に、250℃の水を給水ポンプ1Aへ流通させた際、熱伝導部材13無しでは締結ボルト12にかかる応力が締結ボルト12の許容応力を超過してしまうことが確認できる。一方で、熱伝導部材13有りでは締結ボルト12にかかる応力が許容値以下に抑制できることが確認できた。
【0034】
このように熱伝導部材13を設けることによって、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の熱伝導を向上し、これら締結ボルト12と中間ケーシング11との間の温度差を低減できる。また、温度差の低減によって熱伸縮量の差異を低減し、締結ボルト12にかかる応力を抑制することができ、締結ボルト12の破断等の防止が可能となる。
【0035】
次に、図5(a)及び図5(b)に示すように、給水ポンプ1A停止時において同様に、250℃の水を給水ポンプ1Aへ流通させた際、熱伝導部材13無しでは吸込ケーシング14、吐出ケーシング15ともに、中間ケーシング11を押し付ける力、即ち、面圧が必要最低面圧よりも低下してしまうことが確認できる。これに対して、熱伝導部材13有りでは必要最低面圧よりも高い面圧を維持できていることが確認できる。
【0036】
従って、熱伝導部材13を設けることによって、締結ボルト12と中間ケーシング11との間で熱伝導を向上でき、給水ポンプ1A停止時に中間ケーシング11のみが先に温度低下して軸線P方向に収縮することで、吸込ケーシング14及び吐出ケーシング15からの押し付け力である面圧が低下することを防ぐことができる。この結果、複数の中間ケーシング11に面開きによる間隙21が発生することを回避でき、この間隙21からの水モレの発生を回避できる。
【0037】
本実施形態の給水ポンプ1Aによれば、熱伝導部材13が締結ボルト12と中間ケーシング11との間の間隙21の最も狭い位置で分割されていることによって、設置の容易化による作業効率向上を図ることができる。また、熱伝導部材13によって、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の熱伝導向上を達成することができ、これら締結ボルト12と中間ケーシング11との間の温度差低減を達成可能となる。
【0038】
さらに、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の温度差低減によって、締結ボルト12の破断の回避、及び中間ケーシング11の面開きによる水の漏洩防止が可能となる。
【0039】
次に、第二実施形態に係る給水ポンプ1Bについて説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態は、熱伝導部材33が放熱フィン34を有している点で第一実施形態とは異なっている。
図6に示すように、熱伝導部材33は、第一実施形態と同様に、中間ケーシング11の外周面と締結ボルト12の外周面との間に設けられており、この熱伝導部材33としては、熱伝導性の良好な材料、例えば、銅、アルミ、タングステン等が用いられ、一般にはSS400が採用される。
【0040】
また、この熱伝導部材33は、軸線P方向に延在し、周方向に隣接する二つの締結ボルト12の間の中央、及び、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の間隙21の最も狭い部分で分割されることによって周方向に16ヶに分割されて設けられている。そして、締結ボルト12の周方向両側から間隙21に差し込まれて、締結ボルト12の外周面と中間ケーシング11と外周面とが面接触するように設置されている。
【0041】
さらに、熱伝導部材13の径方向外側の面上、即ち、隣接する締結ボルト12同士の間の部分には、径方向外側へ向かって突出するように軸線P方向に平行に延在する放熱フィン34が設けられている。
【0042】
このような給水ポンプ1Bによると、熱伝導部材33を容易に設置できるとともに、締結ボルト12と中間ケーシング11とが確実に面接触されて、これらの熱伝導の向上を達成することができる。さらに、締結ボルト12と中間ケーシング11との非接触部においては、放熱フィン34によって、熱伝導部材33と外界との伝熱面積を増加することによって、中間ケーシング11の冷却効果を向上できる。
【0043】
本実施形態の給水ポンプ1Bによると、熱伝導部材33の設置の容易化による作業効率向上を図ることができるとともに、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の熱伝導向上を達成することができる。さらに、放熱フィン34によって、中間ケーシング11からの放熱を促進することによって中間ケーシング11の過度の温度上昇を抑制して、給水ポンプ1Bの性能向上を達成できる。
【0044】
なお、放熱フィン34は上述の設置位置、形状に限定されず、必要放熱量に応じて適宜位置、形状を選択できる。例えば、本実施形態では放熱フィン34は軸線P方向に延在しているが、周方向に延在して設けてもよい。
【0045】
次に、第三実施形態に係る給水ポンプ1Cについて説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態は、熱伝導部材13に加えて、熱伝導充填材(充填材)43が設けられている点で第一実施形態とは異なっている。
【0046】
図7に示すように、熱伝導充填材43は、熱伝導性を有する例えば、伝熱セメント等の充填材料である。そして、間隙21において熱伝導部材13と締結ボルト12との間、及び熱伝導部材13と中間ケーシング11との間を密着するように設けられている。
【0047】
このような給水ポンプ1Cにおいては、熱伝導部材13と締結ボルト12、及び熱伝導部材13と中間ケーシング11との間の密着性をさらに向上でき、より確実な面接触が可能となるため、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の熱伝導のさらなる向上を達成できる。さらに、熱伝導部材13のガタツキや脱落も防止できる。
【0048】
本実施形態の給水ポンプ1Cによると、熱伝導充填材43によって、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の熱伝導をさらに向上することができる。
【0049】
なお、熱伝導充填材43は、熱伝導部材13と締結ボルト12との間、熱伝導部材13と中間ケーシング11との間のうちいずれか一方に設けられていてもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態についての詳細説明を行なったが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、第一実施形態及び第二実施形態においては、熱伝導部材13が鋳鉄よりなっていてもよい。
ここで鋳鉄とは、炭素及びケイ素を主成分とした合金の総称である。そしてこの鋳鉄は、内部に含有される黒鉛の振動吸収性によって振動減衰能力を有している。従って、鋳鉄を熱伝導部材13に用いることによって給水ポンプ1A、1Bの振動減衰効果を向上することができ、給水ポンプ1A、1Bの性能向上につながる。
なお、鋳鉄の中でも特にねずみ鋳鉄においては、鋳鉄中の黒鉛が片状黒鉛という形態をなしており、この片状黒鉛は特に高い振動減衰能力を有している。
【0051】
そして、上記鋳鉄に含まれる黒鉛は、高い熱伝導性も有しているため、熱伝導部材13に鋳鉄を採用することによって締結ボルト12と中間ケーシング11との間の熱伝導をさらに向上し、これらの間の温度差のさらなる低減が可能となる。
【0052】
また、熱伝導部材13には、中間ケーシング11と同一の材料を採用することもできる。この場合、異種金属間で発生する電食、即ち、ガルバニック腐食の発生を回避することができる。
なお、このガルバニック腐食とは、二つの異なる金属よりなる部材間に水等の電解質溶液が介在した場合に電池のような作用が生じ、二つの異なる金属のうちの電位がマイナスとなる部材の方が選択的に腐食される現象である。
【0053】
従って、熱伝導部材13と中間ケーシング11とを同一の材料とすることによって、締結ボルト12と中間ケーシング11との間の熱伝導を向上するとともに、上述のガルバニック腐食の発生を防止でき、熱伝導部材13、中間ケーシング11の耐久性を向上することができる。
【符号の説明】
【0054】
1A、1B、1C…ボイラ給水ポンプ、10…ロータ(回転軸)、11…中間ケーシング、12…締結ボルト、13…熱伝導部材、14…吸込ケーシング、14a…吸込口、14b…ボルト孔、14c…流入路、15…吐出ケーシング、15a…吐出口、15b…ボルト孔、15c…流出路、16…ナット、21…間隙、33…熱伝導部材、34…放熱フィン、43…熱伝導充填材(充填材)、W…流体、P…軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周囲に設けられる円筒状のケーシングを該回転軸の軸線方向に複数に分割し、前記ケーシングの周囲に前記回転軸と平行に設けられた複数のボルトによって一体に連結してなる流体機械であって、
前記ボルトと前記ケーシングの外周との間に該ケーシングの熱をボルトへ伝達する熱伝導部材が設けられ、
前記熱伝導部材は、前記ボルトと前記ケーシングとの間の前記回転軸の径方向の間隔が最も狭い位置で周方向に分割されていることを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記熱伝導部材は、放熱フィンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記熱伝導部材は、前記ボルトとの間及び前記ケーシングとの間に熱伝導性の充填材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体機械。
【請求項4】
前記熱伝導部材が、鋳鉄よりなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項5】
前記熱伝導部材が、前記ケーシングと同一の材料よりなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53541(P2013−53541A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191528(P2011−191528)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】